JP2020007394A - 耐摺動摩耗部材用液晶性樹脂組成物及びそれを用いた耐摺動摩耗部材 - Google Patents
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本発明の耐摺動摩耗部材用液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂、(B)硫酸バリウム、及び(C)エポキシ基含有共重合体を含有する。
本発明で使用する(A)液晶性樹脂とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の少なくとも1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の少なくとも1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド等が挙げられる。更に上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
(B)硫酸バリウムは、(C)エポキシ基含有共重合体と組み合わせて用いることにより、本発明の液晶性樹脂組成物から得られる成形体の機械的強度及び耐熱性を維持しつつ、同成形体の摺動摩耗性を低減させることに寄与する。(B)硫酸バリウムは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の液晶性樹脂組成物は、(C)エポキシ基含有共重合体を含有する。(C)エポキシ基含有共重合体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。(C)エポキシ基含有共重合体としては、特に限定されず、例えば、(C1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体及び(C2)エポキシ基含有スチレン系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。(C)エポキシ基含有共重合体は、(B)硫酸バリウムと組み合わせて用いることにより、本発明の液晶性樹脂組成物から得られる成形体の摺動摩耗性を低減させることに寄与する。
本発明の液晶性樹脂組成物は、(D)繊維状充填剤を含有することにより、耐熱性に更に優れる成形体を与えることができる。(D)繊維状充填剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明に任意成分として用いる(E)カーボンブラックは、樹脂着色に用いられる一般的に入手可能なものであれば、特に限定されるものではない。通常、(E)カーボンブラックには一次粒子が凝集して出来上がる塊状物が含まれているが、50μm以上の大きさの塊状物が著しく多く含まれていない限り、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体の表面に多くのブツ(カーボンブラックが凝集した細かいブツブツ状突起物(細かい凹凸))は発生しにくい。上記塊状物粒子径が50μm以上の粒子の含有率が20ppm以下であると、成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい。好ましい含有率は5ppm以下である。
本発明の液晶性樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の重合体、その他の充填剤、一般に合成樹脂に添加される公知の物質、即ち、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等も要求性能に応じ適宜添加することができる。
本発明の耐摺動摩耗部材用液晶性樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、上記(A)〜(C)成分、及び、場合により(D)成分を配合して、これらを1軸又は2軸押出機を用いて溶融混練処理することで、耐摺動摩耗部材用液晶性樹脂組成物の調製が行われる。
上記のようにして得られた本発明の液晶性樹脂組成物は、成形性の観点から、溶融粘度が90Pa・sec未満であることが好ましい。溶融時の流動性が高く、成形性に優れる点も本発明の液晶性樹脂組成物の特徴の一つである。上記溶融粘度は、より好ましくは80Pa・sec以下であり、更により好ましくは75Pa・sec以下である。上記溶融粘度の下限は特に限定されず、例えば、30Pa・sec以上でよく、40Pa・secでもよい。本明細書において、溶融粘度としては、液晶性樹脂の融点よりも10〜20℃高いシリンダー温度、せん断速度1000sec−1の条件で、ISO 11443に準拠した測定方法で得られた値を採用する。
本発明の液晶性樹脂組成物を用いて、耐摺動摩耗部材を製造する。本発明の耐摺動摩耗部材は、従来と同等の機械的強度及び耐熱性を有しつつ、摺動摩耗性が低減されている。本発明の耐摺動摩耗部材は、使用時に2つ以上の部材が動的に接触するような部品に用いることができ、具体的には、例えば、FPCコネクター等のコネクター;メモリーカードソケット等のソケット;レンズホルダー等のカメラモジュール用部品;リレー等に用いることができる。
・液晶性ポリエステルアミド樹脂
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレットを得た。得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で2時間の熱処理を行って、目的のポリマーを得た。得られたポリマーの融点は336℃、350℃における溶融粘度は19.0Pa・sであった。なお、上記ポリマーの溶融粘度は、後述する溶融粘度の測定方法と同様にして測定した。
(I)4−ヒドロキシ安息香酸(HBA);1380g(60モル%)
(II)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸(HNA);157g(5モル%)
(III)テレフタル酸(TA);484g(17.5モル%)
(IV)4,4’−ジヒドロキシビフェニル(BP);388g(12.5モル%)
(V)4−アセトキシアミノフェノール(APAP);126g(5モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);110mg
アシル化剤(無水酢酸);1659g
・硫酸バリウム1:(堺化学工業(株)製、メディアン径0.6μm)
・硫酸バリウム2:(堺化学工業(株)製、メディアン径2μm)
・エポキシ基含有オレフィン系共重合体:ボンドファースト2C(住友化学(株)製、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレートの含有量6質量%)
・繊維状充填剤:NYGLOS 8(NYCO Materials社製、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)、数平均繊維長136μm、平均繊維径8μm)
・カーボンブラック:VULCAN XC305(キャボットジャパン(株)製、平均粒子径20nm、粒子径50μm以上の粒子の割合が20ppm以下)
・離型剤:ペンタエリスリトールテトラステアレート(エメリーオレオケミカルズジャパン(株)製)
上記成分を、表1に示す割合で二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)を用いて、シリンダー温度350℃にて溶融混練し、耐摺動摩耗部材用液晶性樹脂組成物ペレットを得た。
実施例及び比較例の液晶性樹脂組成物の溶融粘度を、上記ペレットを用いて測定した。具体的には、キャピラリー式レオメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1D:ピストン径10mm)により、シリンダー温度350℃、せん断速度1000sec−1の条件での見かけの溶融粘度をISO 11443に準拠して測定した。測定には、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。結果を表1に示す。
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、130mm×13mm×0.8mmの曲げ試験片を作製した。この試験片を用いて、ASTM D790に準拠し、曲げ強度、曲げ弾性率、及び破断歪を測定した。このうち、曲げ弾性率及び曲げ強度の測定結果を表1に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度: 350℃
金型温度: 90℃
射出速度: 33mm/sec
保圧: 50MPa
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、測定用試験片(4mm×10mm×80mm)を得た。この試験片を用いて、ISO75−1,2に準拠した方法で荷重たわみ温度を測定した。なお、曲げ応力としては、1.8MPaを用いた。結果を表1に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度: 350℃
金型温度: 80℃
射出速度: 33mm/sec
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、測定用ピン(直径10mm、長さ10mm)及び測定用試験片(80mm×80mm×1mm)を得た。図1に示す通り、測定用試験片上で測定用ピンに荷重をかけ、下記の往復摺動条件で往復摺動試験を行った後、測定用ピンと測定用試験片との合計の質量減少量を算出して、摺動摩耗量とした。結果を表1に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度: 350℃
金型温度: 80℃
射出速度: 33mm/sec
〔往復摺動条件〕
すべり速度:5cm/sec
ストローク:20mm
荷重:9.8N(1kg重)
往復回数:3000回
Claims (5)
- (A)液晶性樹脂、
(B)硫酸バリウム、及び
(C)エポキシ基含有共重合体
を含有し、
前記(B)硫酸バリウムのメディアン径は、10μm以下である耐摺動摩耗部材用液晶性樹脂組成物。 - 前記(A)液晶性樹脂の含有量は、53.5〜78質量%であり、
前記(B)硫酸バリウムの含有量は、20〜40質量%であり、
前記(C)エポキシ基含有共重合体の含有量は、2.0〜6.5質量%である
請求項1に記載の組成物。 - 更に、(D)繊維状充填剤を含有する請求項1に記載の組成物。
- 前記(A)液晶性樹脂の含有量は、33.5〜73質量%であり、
前記(B)硫酸バリウムの含有量は、20〜40質量%であり、
前記(C)エポキシ基含有共重合体の含有量は、2.0〜6.5質量%であり、
前記(D)繊維状充填剤の含有量は、5〜20質量%である
請求項3に記載の組成物。 - 請求項1から4のいずれかに記載の組成物からなる耐摺動摩耗部材。
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