JP2020007208A - 無機ナノシートの水分散液の製造方法並びに積層体及びその製造方法 - Google Patents

無機ナノシートの水分散液の製造方法並びに積層体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明では、粒子径の大きな無機ナノシートを含む分散液を簡便に得るための製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】層状無機化合物の劈開物である無機ナノシートが水に分散した液に有機溶媒を添加し、前記無機ナノシートの凝集体を生成する工程、前記凝集体を前記水及び有機溶媒と共に濾材に通し、前記凝集体を濾取する工程、濾取した前記凝集体と水を混合し、該凝集体を形成する無機ナノシートを再分散させた液を濾材に通して、再分散無機ナノシートを含む濾液を取得する工程を含む、無機ナノシートの水分散液の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、無機ナノシートの水分散液の製造方法並びに積層体及びその製造方法に関する。
雲母やベントナイト鉱物に代表される層状無機化合物を、水などの分散媒中で単層まで剥離して分散させた後、必要に応じて有機物や高分子などのバインダー化合物などを添加して薄く引き伸ばし、乾燥することで、ナノシートを含む薄い積層体を得られることが報告されている(非特許文献1)。この積層体は、ナノシートの積層構造に基づくガスバリア性、耐熱性、寸法安定性など複数の優れた特性を示し、ナノシートの元素組成によっては、光学的透明性や半導体特性などをも示すことから、産業界において注目を集めている。
例えば特許文献1、2では、フッ素化ヘクトライトの分散液などの無機ナノシート分散液を遠心分離し、沈降物を除去するとともに、上澄みを捨てて、中間層を取得している。また、特許文献3では、合成ヘクトライトの分散液を遠心分離し、下部に沈降した少量の固形物(主として不純物)以外の、上層の分散液を取り出し、この分散液の下層の液晶相状態にある水分散液のみを抽出している。特許文献1〜3のいずれについても、これらの方法によって、アスペクト比の高い無機ナノシートが得られることが記載されている。
特開2011−230504号公報 特開2011−213111号公報 特開2010−155752号公報
蛯名武雄著 未来材料第6号22−25(2006) Chem. Commun., 2010, 46, 4166−4168 鬼形正伸著 粘土科学第46巻第2号, 131−138(2007)
層状無機化合物を劈開して得られる無機ナノシートは、通常、大小様々なアスペクト比(つまり様々な粒子径)のもので構成されている。例えば、無機ナノシートをガスバリア材料として用いる場合、無機ナノシートのアスペクト比が大きい(つまり粒子径が大きい)ほど、迷路効果の増大によりガスバリア性が向上することから、アスペクト比の大きい無機ナノシートを選択的に取得できることが望ましい。上記特許文献1、2によれば、遠心分離操作によって沈降物と上澄みを除去して、中間層(液晶相)のみを取得することで、例えばアスペクト比が3200程度の高アスペクト比を有する無機ナノシートを得ている。また特許文献3でも、同様に、無機ナノシートの分散液を、遠心分離操作によって下部の沈殿と、液晶相、非液晶相に分離しており、液晶相の平均粒子径が249nm程度であることが記載される。しかし、特許文献1〜3の方法では、上澄み(非液晶相)、中間層(液晶相)、沈降物の3層に分離した液の、中間層を取得しており、上澄みや沈降物が混入しないように中間層のみを取り出すことには慎重を要する。
また、特許文献3に、下部の沈殿物が主に不純物であることが記載されている通り、特許文献1〜3のように、遠心分離操作などの大きな重力加速度を印加する場合には、最下層に不純物が沈降する。但し、最下層に沈降して分離除去できるのは、比較的粒子径の大きな不純物(特に非劈開性不純物)であり、粒子径の小さい不純物の一部は中間層(液晶相)に混在すると考えられる。
ここで、非特許文献2によれば、層状無機化合物の中でもとりわけ合成雲母、もしくは合成スメクタイトには、方珪石(クリストバライト)などの非劈開性不純物が含まれていることが、層状無機化合物のX線回折より示唆されている。このような不純物を含む層状無機化合物から無機ナノシートを得てガスバリアフィルムを作製した場合、ガスバリア層のヘーズが高く、例えばディスプレイなど光学用途に用いるうえで問題となることが考えられる。従って、特許文献1〜3のような方法で得られる液晶相(中間層)を用いて、ガスバリアフィルムのような材料を作製しても、粒子径の小さな不純物に由来してヘーズが十分に小さくならないという問題が生じると考えられる。
そこで、本発明では、粒子径の大きな無機ナノシートを含む分散液を簡便に得るための製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の好ましい態様において、不純物の低減された無機ナノシートを含む分散液を得ると共に、全光線透過率やヘーズ値で評価される光学特性に優れる材料を得ることを目的とする。
上記課題を達成した本発明は以下の通りである。
[1]層状無機化合物の劈開物である無機ナノシートが水に分散した液に有機溶媒を添加し、前記無機ナノシートの凝集体を生成する工程、
前記凝集体を前記水及び有機溶媒と共に濾材に通し、前記凝集体を濾取する工程、
濾取した前記凝集体と水を混合し、該凝集体を形成する無機ナノシートを再分散させた液を濾材に通して、再分散無機ナノシートを含む濾液を取得する工程を含む、無機ナノシートの水分散液の製造方法。
[2]前記再分散無機ナノシートを含む濾液から前記有機溶媒を除去する工程を更に含む[1]に記載の製造方法。
[3]前記有機溶媒の、温度25℃での水に対する溶解度が5質量%以上であって、1気圧での沸点が300℃以下である[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記有機溶媒は、炭素数が4以下の脂肪族アルコールである[3]に記載の製造方法。
[5]前記層状無機化合物は不純物を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記不純物は、X線回折分析において2θ=21〜24°及び/又は2θ=10〜13°にピークを有する物質である[5]に記載の製造方法。
[7]層状無機化合物の劈開物である無機ナノシートが水に分散した液の固形分濃度は、0.1質量%以上、6質量%以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られた無機ナノシートの水分散液を基材に塗布した後、乾燥して基材上に無機ナノシートを含む膜を形成する基材と膜の積層体の製造方法。
[9]前記無機ナノシートの水分散液を濃縮して液晶相状態としてから基材に塗布する[8]に記載の製造方法。
[10]基材と、該基材の上に形成された無機ナノシートを含む膜との積層体であって、ヘーズ値が1.0%以下である積層体。
[11]波長400〜800nmの全光線透過率が80%以上である[10]に記載の積層体。
[12]前記無機ナノシートの平均粒子径が768nm以上である[10]又は[11]に記載の積層体。
本発明によれば、無機ナノシートが水に分散した液に有機溶媒を添加しているため、粒子径の大きな無機ナノシートを選択的に凝集させることができ、さらに得られた凝集体(通常、ゲル状である)を再度水に分散することができるため、粒子径の大きなナノシートが水に分散した液を得ることができる。また好ましい態様においては、二度の濾過によって粒子径の大きな不純物及び粒子径の小さな不純物の両者を粒子径の大きな無機ナノシートと分離することができ、この無機ナノシートの水分散液を用いて得られた材料(膜)のヘーズ値を良好にできる。
本発明に係る無機ナノシートの水分散液の製造方法は、無機ナノシートの凝集体生成工程(1)、凝集体の濾取工程(2)、再分散無機ナノシートを含む濾液の取得工程(3)を含む。これら工程について、以下に詳述する。
(1)無機ナノシートの凝集体生成工程
本工程では、層状無機化合物の劈開物である無機ナノシートが水に分散した液に有機溶媒を添加し、前記無機ナノシートの凝集体を生成する。層状無機化合物の劈開物である無機ナノシートには、様々な粒子径の無機ナノシートが含まれるが、有機溶媒を添加することによって、大きな粒子径を有する無機ナノシートが凝集体を形成する。なお、このとき、非劈開性の不純物は凝集せず分散を維持(特に粒子径の小さな不純物)、あるいは沈降する(特に粒子径の大きな不純物)。本発明では、後の工程で、該凝集体を濾取して水を添加し、該凝集体を形成する粒子径の大きな無機ナノシートを水に再分散させて濾過しており、粒子径の大きな無機ナノシート(以下、大粒径無機ナノシートと呼ぶ場合がある)が水に分散した液を取得することができる。また、前記凝集体の濾取工程の際に、粒子径の小さな不純物は濾液の方に含ませることができ、また無機ナノシートを再分散させた液を濾過して濾液として取得する際に、粒子径の大きな不純物は濾材上に濾取することができ、粒子径の小さな不純物も粒子径の大きな不純物も共に、大粒径無機ナノシートと分離することが可能である。
無機ナノシートとは、ナノオーダー又はサブナノオーダーの最小単位層(1層、1シート)を1つ又は複数有する無機微粒子を意味し、1つのシート(1つの層)から形成される単層構造の無機微粒子であってもよく、複数のシート(複数の層)から形成される積層構造の無機微粒子であってもよい。
前記無機ナノシートは、粘土鉱物などの劈開(剥離)可能な層状無機化合物を劈開(剥離)することによって得られる。粘土鉱物は、通常、Al−O八面体(AlO6)またはMg−O八面体(MgO6)の二次元的なつながり(八面体シートまたは八面体層)やSi−O四面体(SiO4)の二次元的なつながり(四面体シートまたは四面体層)を含む。こうした粘土鉱物としては、八面体シートと四面体シートの割合が1対1で構成される粘土(1:1型粘土)が挙げられ、例えばカオリナイト族がこれに該当する。また粘土鉱物としては、八面体シートが四面体シートに挟まれた構造を有する粘土(2:1型粘土)も挙げられ、パイロフィライト族、スメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族、脆雲母族、及び緑泥石族などがこれに含まれる。
前記層状無機化合物としては、スメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族、脆雲母族、及び緑泥石族などが好ましく、有機溶媒中での劈開のしやすさという観点からスメクタイト族、バーミキュライト族、及び雲母族がより好ましく、合成のしやすさや透明性の高さの観点からスメクタイト族及び雲母族がよりさらに好ましい。
また前記層状無機化合物としては、フッ素化された粘土鉱物も好ましく、雲母族としては、フッ素化雲母が好ましい。フッ素化物は、合成が容易であるという利点を有する他、透明性が高いため、本発明の効果を大きく受けることができる。
さらに層状無機化合物としては、劈開性が良好であり、透明性も高く、層状無機化合物を構成する無機ナノシートの平均粒子径が大きい(平均アスペクト比が高い)ものがより好ましい。このような層状無機化合物には、フッ素化ヘクトライト、フッ素化雲母、膨潤性雲母などが含まれる。前記フッ素化ヘクトライト及びフッ素化雲母(例えば、NTS−5、トピー工業株式会社製)は、溶融法によって合成できる。なお前記層状無機化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ところで前記層状無機化合物を形成する各シート(各層)の間には、通常、層間イオンが存在している。原料層状無機化合物の層間イオンは特に規定されるものではないが、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、または水素原子の一部またはすべてが有機置換されたアンモニウムイオンであると、ナノシートの剥離が進行しやすいため好ましい。層間イオンとしては、例えばリチウムイオン、またはナトリウムイオンが好ましく、特にナトリウムイオンが好ましい。
前記粘土鉱物は、天然粘土、合成粘土のいずれであってもよいが、合成粘土が好ましい。天然粘土は、前記層間イオンとして鉄イオンを含んでいることがあり、褐色であることが多いのに対して、合成粘土では、層間の不純物イオン含有量を少なくでき、着色を抑制できる。そのため、合成粘土を用いると、無機ナノシートの水分散液から得られる材料(膜)に高い透明性を付与できる。
前記層状無機化合物から得られる無機ナノシートにおいて、1層(1シート)当たりの厚み(以下、「単位厚みT」と称する場合がある)は、例えば、0.2nm以上、1.1nm以下、好ましくは0.9nm以上、1.1nm以下である。一般に、2:1型粘土であるスメクタイト族及び雲母族の粘土鉱物においては、ナノシートの単位厚みTは0.96nm程度であることが知られている(日本化学会・編、高木克彦;高木慎介・著、共立出版、化学の要点シリーズ11巻、層状化合物)。本明細書では、特に断りのない限り、2:1型構造をとるスメクタイト族粘土鉱物及び雲母族粘土鉱物におけるナノシートの単位厚みTは0.96nmとして取り扱う。また、前記スメクタイト族及び雲母族以外の粘土鉱物の場合には、単位厚みTは、無機ナノシートのみの粉末に対して、又は測定に際して基材の影響が十分排除できる基材(例えば平滑な樹脂基板、雲母の剥離面、またはシリコンウェハ等)上へ、ナノシートのみを固形分として含有する分散液を滴下した後、十分乾燥させた後に得られた膜に対して、X線回折法等の公知の測定方法により得られる値である。
また層状無機化合物の劈開物である無機ナノシート(大小様々な粒子径を含む)の平均粒子径は例えば600〜1300nm程度である。
無機ナノシートの平均粒子径は、無機ナノシートの水分散液を調製し、動的光散乱法によって求めることができ、より詳細には散乱光が減衰するまでの時間に基づいて求められる。
本発明の分散液中で、層状無機化合物が劈開物である無機ナノシートとして存在していることの確認は、小角X線散乱測定によって行うことができる。粒子径D、厚さLのディスク状粒子コロイドであって、十分に希釈され、粒子が互いに独立している、つまり粒子間相互作用のないコロイド中では、理論上、散乱強度Iと散乱ベクトルの大きさQ(Q=(4πsinθ)/λ、ただしθ:散乱角、λ:入射光の波長)との間に、1/D<Q<1/Lの領域でI∝Q-2の関係、Q<1/Dの領域でI∝Q0の関係がある。(中戸晃之・宮元展義・著、シーエムシー出版、機能性粘度素材の最新動向、粘土コロイドが形成する液晶とゲル)。
無機ナノシートの凝集体生成工程(1)では、まず層状無機化合物の劈開物である無機ナノシートが水に分散した液を得る。なお、本明細書において水分散液とは、分散媒が水を主とする分散液を意味し、全分散媒を100質量%としたときの水の割合は50質量%超であり、好ましくは70質量%以上である。
無機ナノシートが水に分散した液を得るためには、まず無機ナノシートの原料である層状無機化合物と水とを用意する。層状無機化合物を水中(または有機溶媒中)で劈開することで無機ナノシートを得ることができるが、分散媒である水と層状無機化合物を単に混合するだけでは無機ナノシートの分散性が不十分な場合がある。層状無機化合物を形成する単位層(無機ナノシートの単位層)の平均粒子径が大きくなると(つまり平均アスペクト比が大きくなる)、相互作用する面積が大きくなったり、電荷密度が大きくなったりすることに起因して、単位層の面同士の結合力が大きくなることが考えられる。そうすると、層状無機化合物を無機ナノシートまで劈開することが困難となるか、また劈開できた場合であっても、無機ナノシートを水中で高度に分散させることが難しい場合がある。したがって、無機ナノシートの分散性が良好な水分散液を得るためには、磁気回転子などを用いる撹拌、衝突型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー等の公知の微分散装置を用いた微分散処理を行うことが好ましい。このような微分散装置を用いることによって、層状無機化合物に機械的な力を付与でき、層状無機化合物の劈開を促進できる。また、このような機械的な力を層状無機化合物に付与することで、層状無機化合物の液晶転移を促進できる場合がある。層状無機化合物の中でも、特に、合成されたフッ素化雲母は平均アスペクト比が大きいことなどに起因して、単位層間が強固に結合されている場合が多い。従って、合成されたフッ素化雲母に上記した微分散処理を行うことは、効果的である。このような無機ナノシートが水に分散した水分散液は市販されているものがあり、市販品をそのまま用いてもよいし、市販品に更に上述したような微分散処理や、分離及び抽出処理を行ってもよい。
次に、工程(1)では、無機ナノシートが水に分散した液に有機溶媒を添加して、前記無機ナノシートの凝集体を生成する。非特許文献3には、モンモリロナイトなどの層状ケイ酸塩は、水分子と接触すると、水分子が層間の交換性陽イオンを水和することで膨潤することが記載されている。さらに水分子が増えると巨視的な水和層を形成し、水和層の拡大により層間が広がり、ナノシート単位への剥離分散が起こる。一方、有機溶媒については、溶媒分子がナノシート層間に疎水性相互作用により取り込まれ、さらに交換性陽イオンを溶媒和するが、溶媒和層は一層あるいは二層程度しか形成できず、水などの場合に見られる剥離分散には至らない。このとき層状無機化合物は、巨視的にはゲル状に凝集した外観となる。したがって無機ナノシートが水に分散した液に有機溶媒を添加することにより、前記した作用に起因して無機ナノシートが凝集体を形成すると考えられる。また、無機ナノシートの凝集性は、無機ナノシートの粒子径と相関しており、無機ナノシートの粒子径が大きいほど、有機溶媒を添加した際に凝集体を形成しやすい。このようにして形成した無機ナノシートの凝集体を、ガラスフィルターや濾紙など、適切な孔径を有する濾材を用いて濾取することで、粒子径の大きな無機ナノシートを選択的に取得できる。
更に、本発明において用いる有機溶媒は、無機ナノシートの水分散液と混合しやすいという観点からは、水と相溶性を持つ有機溶媒であることが好ましく、例えば温度25℃での水に対する溶解度が5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、特に水と全ての割合で自由に混和する有機溶媒であることが好ましい。
また、前記有機溶媒は、後の工程で除去しやすいという観点から1気圧での沸点が300℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは100℃以下、特に85℃以下が好ましく、沸点の下限は特に限定されないが、例えば45℃である。
有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒;アセトンなどのケトン系溶媒;酢酸、無水酢酸等の酸系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ギ酸エチルなどのエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの硫黄系溶媒が挙げられ、また、有機溶媒の分子量は150以下であることも好ましい。
有機溶媒は、水との相溶性、無機ナノシートの層間カチオンの溶媒和によるゲル状態の得やすさ、減圧脱揮等による除去のしやすさの観点から、アルコール系溶媒であることが好ましく、水との相溶性の観点から、特に炭素数が4以下の1価の脂肪族アルコールであることが好ましい。炭素数が4以下の1価の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールなどの飽和アルコール、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、プロパルギルアルコールなどの不飽和アルコールが挙げられる。
有機溶媒は1種類のみ用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。2種以上組み合わせて用いる場合には、温度25℃での水に対する溶解度が5質量%以上であり、かつ1気圧での沸点が300℃以下である有機溶媒(第1有機溶媒と呼ぶ)と、第1有機溶媒以外の溶媒を組み合わせて用いてもよく、この時、全溶媒中の第1有機溶媒は70質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
無機ナノシートの水分散液と有機溶媒の質量比は、無機ナノシートの凝集体が形成できる限り限定されないが、前記水分散液1に対して有機溶媒の質量比が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、更に好ましくは0.8以上であり、また6以下が好ましく、より好ましくは3以下であり、更に好ましくは2以下である。前記質量比を0.1以上とすることで無機ナノシートの凝集体を十分に形成でき、6以下とすることで、小さな粒子径の無機ナノシートは凝集させることなく、大きな粒子径の無機ナノシートを凝集させることができる。また前記質量比を6以下にすることは、凝集体への不純物の取り込みを抑制できる点でも有利である。
無機ナノシートの水分散液に有機溶媒を添加して、ゲル状態を得る操作は特に限定されず、前記分散液に有機溶媒を添加してもよいし、前記有機溶媒に分散液を添加してもよい。このとき、添加される側を磁気回転子や撹拌翼などで撹拌することが好ましく、分散液と有機溶媒を均一に混合することができるとともに、局所的な凝集により不純物が凝集体に取り込まれるのを抑制できるため好ましい。
無機ナノシートの水分散液の固形分濃度は、例えば0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また6質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下が好ましい。層状無機化合物が不純物を含む場合は、前記固形分とは、不純物も含む意味である。
(2)凝集体の濾取工程
前記工程(1)で生成した無機ナノシート(大粒径)の凝集体は、水及び有機溶媒と共に濾材に通すことによって濾取する。本工程によって、大粒径の無機ナノシートの凝集体を選択的に取得することができる。濾材の種類としては、濾紙(セルロース)、メンブレンフィルター、焼結ガラスフィルター、ガラス繊維フィルター、多孔性金属フィルターなどが挙げられ、これら濾材は漏斗や専用のガラス器具などと共に用いてもよい。濾材の孔径は、得ようとする無機ナノシートの粒子径に合わせて適宜選択することができるが、例えば1〜150μm程度とすることができ、好ましくは50〜100μmである。
(3)再分散無機ナノシートを含む濾液の取得工程
前記工程(2)において濾材で濾取した凝集体と水を混合することで、凝集体を形成していた大粒径無機ナノシートを再度分散させることができる。上述した通り、有機溶媒分子を取り込み、ゲル状態にある層状無機化合物に、層状無機化合物の剥離分散を起こしえる水などの溶媒を添加混合していくと、その割合が増えていくにつれて層状無機化合物は再度分散する。このように、無機ナノシートは、分散媒の種類・比率に応じて、分散およびゲル状態を可逆的に制御することができる。水に再分散させたナノシート分散液は更に濾材を通すことで、濾液として大粒径の無機ナノシートが分散した液を得ることができる。凝集体と水との混合方法は特に限定されず、濾材上に堆積した凝集体に水を加えてもよいし(このとき、工程(2)で用いた濾材が、本工程(3)における濾材としても機能する)、凝集体を濾材から採取してフラスコなどの容器中で水と撹拌混合してもよい。濾材は、特に限定されないが、前記工程(2)で用いたものを再度用いてもよいし、前記工程(2)で挙げたものと同様のものを工程(2)の濾材とは別に用意して用いることができる。
また、層状無機化合物が天然鉱物である場合、酸化ケイ素や炭酸カルシウムなどの不純物が含まれている場合があり、また合成された鉱物である場合には、合成時に方珪石や角閃石などの非劈開性不純物が含まれていることがある。これらの不純物は、無機ナノシートを含む膜を製造した場合に、光の散乱に寄与してヘーズ値上昇の要因となるため、可能な限り除去されることが好ましい。不純物の存在はX線回折分析によって確認することができ、例えば方珪石に由来するピークは2θ=23°に観察され、角閃石に由来するピークは2θ=11°に観察され、合成された層状無機化合物はこれら不純物の少なくとも一方を含んでいる場合がある。本発明では、前記凝集体を濾取する工程(2)において、粒子径の小さな不純物は濾液の方に含まれるため、凝集体(大粒径無機ナノシート)と粒子径の小さい不純物を分離することができ、また(3)再分散無機ナノシートを含む濾液の取得工程において、大粒径無機ナノシートが分散した液を再度濾材に通しているため、粒子径の大きな不純物を濾取することで、大粒径無機ナノシートと粒子径の大きな不純物を分離することができる。なお、非劈開性不純物の方珪石や角閃石は、凝集過程で凝集体に一部取り込まれることもあるが、溶媒の種類や比率によらず分散するため、適切な孔径を有する濾材を用いて濾過することにより、前記凝集体と分離することができる。
本発明の製造方法を実施することにより得られる大粒径無機ナノシートの平均粒子径は、768nm以上が好ましく、1152nm以上がより好ましく、1536nm以上が特に好ましい。本発明により得られる無機ナノシートの水分散液を用いて水蒸気ガスバリアフィルムを製造する場合には、上記のような粒子径とすることよって水蒸気ガスバリア性を向上できるため有利である。また、無機ナノシートの平均粒子径は、4608nm以下が好ましく、3840nm以下がより好ましく、3072nm以下が特に好ましい。このようにすることで、劈開性及び分散性を向上できる。
本発明の製造方法により得られる大粒径無機ナノシートの平均アスペクト比は例えば700以上、4000以下である。平均アスペクト比(R)を100以上とすることで、例えば無機ナノシートをガスバリアフィルムに用いた場合には水蒸気ガスバリア性を向上できる。平均アスペクト比(R)は800以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1600以上がさらに好ましい。また平均アスペクト比(R)を4000以下にすることで、劈開性や分散性を維持でき、かつ分散液の粘度上昇を避けることができる。平均アスペクト比(R)は、4000未満が好ましく、3200以下がより好ましい。
前記平均アスペクト比(R)は、下記式によって定義される値である。
R=D/T
(式中、Dは、無機ナノシートの平均粒子径(nm)を表す。Tは無機ナノシートの単位厚み(nm)を表す。)なお、無機ナノシートが複数の最小単位層から形成される積層構造である場合には、ナノシートの平均アスペクト比は、層状無機化合物の最小単位層当たりに換算された平均アスペクト比を意味する。
さらに、本発明は、前記した(3)再分散無機ナノシートを含む濾液の取得工程の後に、(4)有機溶媒の除去工程を有していることが好ましい。前記工程(1)で形成した無機ナノシートの凝集体では、無機ナノシートの層間に有機溶媒が入り込んでいるため、前記工程で再分散させた無機ナノシートの水分散液にも有機溶媒が含まれており、この有機溶媒を取り除くことが好ましい。有機溶媒の除去方法は特に限定されないが、減圧加熱脱揮することで、有機溶媒を除去できると共に、水分散液を濃縮することができ、濃縮することで液晶性の無機ナノシート分散液を得ることができる。濃縮後の無機ナノシート分散液の固形分濃度は、例えば0.8質量%〜6質量%である。前記特許文献1〜3では、無機ナノシートの分散液を重力のかかる環境下におくことで高アスペクト比(粒子径が大きい)ナノシートを液晶相に転移させていたが、本発明では前記工程(3)までで、粒子径の小さい無機ナノシートや沈降性の不純物を除去し、大粒径の無機ナノシートを高純度で取得できるため、減圧加熱脱揮などの方法によって簡便に液晶相転移できる。
なお、沈降性不純物や、粒子径の小さいナノシートの除去が不十分である場合には、本発明の上記工程(1)〜(3)、更には工程(4)を繰り返し行ってもよい。また工程(1)の前、もしくは工程(3)の後に、分散液を重力下で静置することによって、粒子径の大きい不純物を沈降させ、デカンテーションによって分離することで、不純物除去効率を高めることもできる。静置時間は、粒子の大きさに応じて種々変更することができる。またこの操作過程で、従来技術のように無機ナノシート分散液が液晶相と非液晶相に転移している必要はない。沈降性不純物の存在割合については、X線回折(XRD)によって存在割合を確認することができる。
本発明の製造方法により得られた無機ナノシートの水分散液は、必要に応じて濃縮を行って液晶相状態としてから、基材に塗布して、乾燥させ(例えば80〜200℃で30分〜2時間)、無機ナノシートを含む膜を得ることができる。このようにして得られる膜は、不純物が低減されているため、ヘーズ値で評価される光学特性が良好である。また、本発明の無機ナノシートを含む膜は、通常、無機ナノシートの積層膜である。
本発明の無機ナノシートを含む膜を形成させるための基材は、無機系材料であっても、有機系材料であってもよい。有機系材料としては、例えば塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化塩化ビニル樹脂、プロピレン−塩ビ共重合体などの含塩素系樹脂;ポリスチレン樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)などのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂;ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などのポリイミド系樹脂;ポリアミド樹脂(ナイロン);ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などのポリスルホン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂などのポリ(メタ)アクリレート系樹脂;非晶性ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィン系樹脂等のオレフィン系樹脂;フッ素樹脂;トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;エチレンビニルアセテート樹脂等を挙げることができ、これらは特に可視光透過性に優れている。耐熱性の観点からは、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂及びフッ素樹脂が好ましく、透明性・耐熱性・耐溶剤性の観点からはポリエチレンナフタレート樹脂が好ましく、透明性、耐溶剤性、コストの観点からはポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。無機系材料としては、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属;これら金属を含む合金;セラミックス;ガラスなどが挙げられ、透明性の観点からはガラスが好ましい。
本発明の積層体は、ヘーズ値が1.0%以下であり、好ましくは0.5%以下であり、また400〜800nmの全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。より好ましい態様において、無機ナノシートを含む膜を透過する光の光路長が1μm以上(且つ20μm未満)であり、基材の光路長が1mm以上(通常2mm以下)の場合において、波長400〜800nmの全光線透過率が85%以上を示すことが好ましく、更に前記膜の光路長が20μm以上(通常50μm程度以下)であり、基材の光路長が1mm以上(通常2mm以下)の場合において、波長400〜800nmの全光線透過率が80%以上を示すことが好ましく、90%以上であることがより好ましく、更に好ましくは92%以上であり、特に好ましくは94%以上である。
本発明の積層体のヘーズは、無機ナノシートを含む膜の光路長が1μm以上(且つ20μm未満)であり、基材の光路長が1mm以上(通常2mm以下)の場合において、0.5%以下であることが好ましく、光路長が20μm以上(通常50μm程度以下)であり、基材の光路長が1mm以上(通常2mm以下)の場合において、1.0%以下であることが好ましく、より好ましくは0.7%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。また、無機ナノシートを含む膜の厚みは特に限定されないが、例えば0.05〜50μm程度であり、触針式表面形状測定器や、集束イオンビーム(FIB)によって切断して断面TEMによって測定することもできる。また、基材の厚みは、0.5mm〜10mm程度であってもよい。
全光線透過率およびヘーズは、日本工業規格に規定された「JIS K7361−1 プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」、「JIS K7136 プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠し、空気でバックグラウンド測定を行って、空気の全光線透過率を100%、空気のヘーズを0%として、算出される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下の実施例及び比較例における分散液及び積層体の物性は、下記の方法で評価した。
(1)ガラス基材と、ガラス基材上に作製したナノシートとの積層体のヘーズ
全光線透過率及びヘーズは、ヘーズメーターHZ−V3(スガ試験機株式会社製)を用いてJIS K7361−1及びJIS K7136に基づいて測定した。バックグラウンドとして空気を測定後、当該サンプルを3点用意し、それぞれの測定結果の平均を求めた。
(2)分散液中のナノシートの平均粒子径
分散液中のナノシートの平均粒子径は、粒子径・ゼータ電位測定装置ゼータサイザーナノZS(Malvern Panalytical社製)を用いて、動的光散乱法によって決定した。液温25℃にて、装置の減衰器が10に自動設定される濃度に調製した水分散液を7回連続で測定し、3回目以降の測定のキュムラント解析結果に基づく平均粒子径のうち、平均に最も近い3点の平均粒子径の算術平均値を算出し、その値を分散液中のナノシートの平均粒子径とした。
実施例1
層状無機化合物としては、溶融法によって合成され、主たる層間イオンがナトリウムイオンであるフッ素化四珪素雲母の分散液A(商品名:NTS−5、トピー工業株式会社製、固形分濃度6.0質量%)を用いた。分散液A130gをコニカルビーカーに秤量した後、純水556gを添加し、希釈して固形分濃度を1.1質量%とした分散液686gを、磁気回転子を用いて2時間撹拌した。その後一晩静置したところ、沈降性不純物及び白濁した上層に分離したので、デカンテーションにより上層637gを取得した。これを孔径20〜25μmのガラスフィルターで吸引濾過し、粗大な粒子が除去されたフッ素化四珪素雲母の水分散液Bを得た。固形分濃度は0.80質量%であった。
前記分散液Bのうち350gを別のコニカルビーカーに秤量し、純水を1050g加えて同様に1時間撹拌した。その後一晩放置したところ、沈降性不純物及び白濁した上層に分離したので、デカンテーションにより上層1380gを取得し、フッ素化四珪素雲母の水分散液Cを得た。固形分濃度は0.15質量%であった。ゼータサイザーナノZSを用いて測定した分散液Cを測定した結果、平均粒子径は1050nmであった。
分散液Cを別のコニカルビーカーに移し、磁気回転子を用いて撹拌しながらエタノール1060gを、10分かけて少しずつ加えた。エタノールを加えるごとに発熱し、分散液の粘性が増し、細かいゲル状に凝集した固形物が見られるようになった。エタノール全量を添加した後、撹拌をさらに1時間続けた。
ゲル状凝集物を含む分散液を、孔径50〜100μmのガラスフィルターで吸引濾過し、濾液である分散液Dと濾物(前記凝集物)に分離した。その後、濾物を十分量の純水中で撹拌することで再度分散させ、上記したのと同じガラスフィルター(孔径50〜100μm)で吸引濾過し、分散液Eを得た。コニカルビーカーに集めた分散液Eの固形分濃度を0.2質量%に調製し、一晩静置したところ、沈降性不純物層と、濁りの少ない上層に分離したので、デカンテーションにより上層220gを取得した。取得した上層を、ロータリーエバポレーターで60℃、70Torrにて減圧加熱脱揮し、固形分濃度が0.26質量%の分散液Fを148g得た。
ゼータサイザーナノZSを用いて測定した分散液F中のナノシートの平均粒子径は1550nm(アスペクト比に換算すると1550/0.96≒1615)であった。すなわち、分散液C中のナノシートを一旦凝集させ、凝集物を濾別することで、粒子径の大きな成分を分散液Fとして選択的に取得できたことがわかった。濾液である分散液D中の平均粒子径は920nmであり、粒子径の小さな成分はガラスフィルターを透過したことが分かった。
分散液Fをさらに減圧脱揮により濃縮して、固形分濃度を1.0質量%にすると、分散液は液晶相に転移した。この液晶相状態にある水分散液を、表面をUVオゾン処理で清浄にした厚さ1.1mmのソーダガラス基板上に塗布し、オーブンを用いて180℃で1時間乾燥することで、ガラス基材とナノシートの積層体を得た。このガラス基板込みの積層体の全光線透過率は95%であり、ヘーズは0.30%であった。ガラス基板の全光線透過率が91%、ヘーズが0.15%であることから、ナノシート積層体が高い光学的透明性を有していることが示された。
分散液A、C、D、Fをスクリュー管に採取し、オーブンを用いて180℃で1時間加熱乾燥することで得た固形物をXRDで分析したところ、分散液A、C、Dでは方珪石に由来する2θ=23°のピークが大きく観測されたのに対し、分散液ではノイズと遜色ないレベルに小さく、不純物である方珪石が大幅に除去されていることが分かった。
比較例1
実施例1でエタノールを加えて凝集させた後、ガラスフィルターで濾別した後の濾液である分散液Dを、実施例1の分散液Fと同様に減圧脱揮により濃縮して、固形分濃度を1.2質量%にしたところ、分散液は液晶相に転移した。この液晶相状態にある水分散液を、実施例1と同様にしてソーダガラス基板上に塗布して、ガラス基材とナノシートの積層体を得た。この積層体の全光線透過率は83%であり、ヘーズは4.0%であり、実施例1の場合よりもヘーズが大きく、透明性が低いことが分かった。
比較例2
実施例1で示した、エタノールを添加する前の分散液Cを、実施例1の分散液Fと同様に減圧脱揮により濃縮して、固形分濃度を1.2質量%にしたところ、分散液は液晶相に転移した。この液晶相状態にある水分散液を、実施例1と同様にしてソーダガラス基板上に塗布して、ガラス基材とナノシートの積層体を得た。この積層体の全光線透過率は86%であり、ヘーズは3.0%であり、実施例1の場合よりもヘーズが大きく、透明性が低いことが分かった。
比較例3
実施例1に記載の分散液B400gを、50ml遠沈管8本に分配し、遠心分離装置KUBOTA6200(久保田商事株式会社製)を用い、ローター番号AF−5008C、50ml遠沈管を用い、1000rpmで3分間遠心分離を行って、上層をデカンテーションにより取得した。上層の取得重量は375g、固形分濃度は1.7質量%であった。取得した上層375gに純水141gを加えて固形分濃度1.2質量%に希釈した。続けて、希釈した上層を12000G(重力加速度)で15分間遠心分離を行ったところ、分散液上層、無機ナノシートが液晶相に転移した層、沈降性不純物層の三層に分離した。上層の大半をデカンテーションで排出した後、残りの上層をスポイトを用いて注意深く除去し、続いて液晶相に転移した層を、沈降性不純物層を採取しないよう注意深く採取した。無機ナノシートの液晶相の固形分濃度は1.8質量%であった。
ゼータサイザーナノZSを用いて測定した、前記液晶相中の無機ナノシートの平均粒子径は1150nmであり、実施例1における分散液F中の無機ナノシートの平均粒子径(1550nm)よりも小さいことが分かった。
前記液晶相(a)を、固形分濃度1.2質量%に希釈し、表面をUVオゾン処理で清浄にした厚さ1.1mmのソーダガラス基板上に塗布し、オーブンを用いて180℃で1時間乾燥することでガラス基材とナノシートの積層体を得た。この積層体の全光線透過率は88%であり、ヘーズは1.2%であり、実施例1の場合よりもヘーズが大きく、透明性が低いことが分かった。
本発明の方法によれば、遠心分離によって無機ナノシート分散液を液晶相転移させる従来の方法に比べて、簡便に大きな粒子径の無機ナノシートが得られるという効果を有し、更に光の散乱の原因となる不純物を低減できるという効果も奏することができるため、無機材料、とりわけガスバリア材料、光学材料などに有用である。大きな粒子径を選択的に取得できるという利点は、本発明により得られる無機ナノシートの分散液を原料としたガスバリアフィルムに、迷路効果による優れたガスバリア性を付与できる。更に本発明は、不純物を低減できるという効果も有しているため、ディスプレイの視認側及び有機EL照明の光取り出し側に、本発明の無機ナノシート分散液から得られるガスバリアフィルムを用いることもできる。

Claims (12)

  1. 層状無機化合物の劈開物である無機ナノシートが水に分散した液に有機溶媒を添加し、前記無機ナノシートの凝集体を生成する工程、
    前記凝集体を前記水及び有機溶媒と共に濾材に通し、前記凝集体を濾取する工程、
    濾取した前記凝集体と水を混合し、該凝集体を形成する無機ナノシートを再分散させた液を濾材に通して、再分散無機ナノシートを含む濾液を取得する工程を含む、無機ナノシートの水分散液の製造方法。
  2. 前記再分散無機ナノシートを含む濾液から前記有機溶媒を除去する工程を更に含む請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記有機溶媒の、温度25℃での水に対する溶解度が5質量%以上であって、1気圧での沸点が300℃以下である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記有機溶媒は、炭素数が4以下の脂肪族アルコールである請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記層状無機化合物は不純物を含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記不純物は、X線回折分析において2θ=21〜24°及び/又は2θ=10〜13°にピークを有する物質である請求項5に記載の製造方法。
  7. 層状無機化合物の劈開物である無機ナノシートが水に分散した液の固形分濃度は、0.1質量%以上、6質量%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により得られた無機ナノシートの水分散液を基材に塗布した後、乾燥して基材上に無機ナノシートを含む膜を形成する基材と膜の積層体の製造方法。
  9. 前記無機ナノシートの水分散液を濃縮して液晶相状態としてから基材に塗布する請求項8に記載の製造方法。
  10. 基材と、該基材の上に形成された無機ナノシートを含む膜との積層体であって、ヘーズ値が1.0%以下である積層体。
  11. 波長400〜800nmの全光線透過率が80%以上である請求項10に記載の積層体。
  12. 前記無機ナノシートの平均粒子径が768nm以上である請求項10又は11に記載の積層体。
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