JP2020002821A - エンジンのピストン - Google Patents

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小山 秀行
Hideyuki Koyama
秀行 小山
新吾 松延
Shingo Matsunobe
新吾 松延
久美子 坂口
Kumiko Sakaguchi
久美子 坂口
莉菜 金子
Rina Kaneko
莉菜 金子
良憲 田中
Yoshinori Tanaka
良憲 田中
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Abstract

【課題】樹脂皮膜が施されているピストンにおいて、さらなる鋭意研究により、凹部へのエンジンオイルの供給を改善することができる、エンジンのピストンを提供する。【解決手段】エンジンのピストンにおいて、スカート部1の表面1aに斑点状に複数の円形の樹脂皮膜2が分散配置され、隣合う樹脂皮膜2,2どうしの間のスカート部の表面1a及び隣合う樹脂皮膜2,2によりなる凹部3で網目状溝4が形成されるとともに、ピストン周方向8に複数の樹脂皮膜2が所定間隔を空けて配置されて形成される樹脂皮膜列5が、ピストン移動方向6に複数配列され、ピストン移動方向6で隣合う樹脂皮膜列5,5どうしが、ピストン周方向8で互いに半ピッチ位置ズレする状態で配置されている。【選択図】図2

Description

本発明は、スカート部に施される樹脂コーティングの工夫により、より低フリクション化を目指したエンジンのピストンに関するものである。
従来、図5に示されるように、エンジンのピストンとして、スカート部101の表面に、樹脂皮膜102と凹部103とを備えたものがある。(例えば、特許文献1参照)
この種のピストンによれば、樹脂皮膜102でスカート部101のプロフィールが最適化され、ピストンスラップ音が低減されるとともに、凹部103に溜まったエンジンオイルでスカート部101の摩擦が低減される利点がある。
しかしながら、この従来技術では、図5に示されるように、一連の樹脂皮膜102にスポット状に複数の凹部103が配置されているため、エンジンオイルによるスカート部の摩擦低減機能が不十分であった。
即ち、図5に示されるように、一連の樹脂皮膜102にスポット状に複数の凹部103が配置されているため、凹部103が樹脂皮膜102に囲まれ、凹部103へのエンジンオイルの供給が困難である。このため、凹部103に十分な量のエンジンオイルが保持されず、エンジンオイルによるスカート部101の摩擦低減機能が不十分であった。
特許第4749399号公報(図1参照)
本発明の目的は、樹脂皮膜が施されているピストンにおいて、さらなる鋭意研究により、凹部へのエンジンオイルの供給を改善することができる、エンジンのピストンを提供する点にある。
本発明は、エンジンのピストンにおいて、
スカート部の表面に斑点状に分散配置されている樹脂皮膜と、隣り合う前記斑点状の樹脂皮膜どうしの間の前記スカート部の表面及び前記隣り合う樹脂皮膜により形成される凹部と、によりなる網目状溝が設けられ、
前記樹脂皮膜は角のない丸まった形状に設定されていることを特徴とする。
例えば、ピストン径方向視で円形をなす樹脂皮膜をピストン周方向に配列して樹脂皮膜列を形成し、その樹脂皮膜列の複数をピストン移動方向にも並べるとともに、ピストン移動方向で隣り合う樹脂皮膜列をピストン周方向で互いに半ピッチ位置ズレさせる構成が挙げられる。
本発明によれば、スカート部の広域に亘って、エンジンオイルの保持領域を形成することができる。スカート部の表面に、斑点状に樹脂皮膜が分散配置され、樹脂皮膜どうしの間に形成される凹部で網目状溝が形成されているので、スカート部の広域に亘って、エンジンオイルの保持領域を形成することができる。
スカート部の表面が複数個に分かれてテクスチャリングされることにより、エンジオイルのピストン移動方向通路を設けることができ、エンジンオイルを各部により有効に供給することができる。凹部によって網目状溝が形成されているので、ピストンの往復運動を利用して凹部にオイルを積極的に供給することができる。
ピストンの移動により、スカート部の表面や凹部にあるオイルは、ピストン移動方向で隣合う樹脂皮膜に当り、一部は跳ね返されるとともに、一部は樹脂皮膜に沿って円弧状に流れるようになる〔図2(B)を参照〕。その際、樹脂皮膜は角のない丸まった形状に設定されているので、ピストンとシリンダとの摩擦によって樹脂皮膜が削れることを抑制できて長寿命化できるとともに、オイルが滞り易くなりオイル保持が良くなる。
その結果、樹脂皮膜が施されているピストンにおいて、樹脂皮膜を角のない丸い形状とする工夫により、オイル保持が改善されて長寿命化できるようになり、凹部へのエンジンオイルの供給が改善されるエンジンのピストンを提供することができる。
シリンダに内嵌されたピストンなどを示す縦断面図 (A)はピストンの側面図、(B)は樹脂皮膜のコーティングパターン及び配置間隔を示す図 (A)はピストン移動方向視によるスカート部の断面図(B)は網目状溝でのオイルの流れ方を示す要部の側面図 樹脂皮膜の別形状を示し、(A)は長円形(角丸長方形)、(B)は楕円形 従来技術に係るピストンの側面図
以下に、本発明によるエンジンのピストンの実施の形態を、立形ディーゼルエンジンのピストンについて、図面を参照しながら説明する。各図において、簡単のため、円筒面であるスカート部1の樹脂皮膜2は、いずれも展開した形状として描いてある。以下、潤滑油であるエンジンオイルは、単にオイルと略称する。
図1に示されるように、立形ディーゼルエンジン及びそのピストンは、シリンダブロック(図示省略)におけるシリンダ14の上部にシリンダヘッド15が組み付けられている。ピストン12は、シリンダ14に内嵌され、コネクティングロッド16を介してクランク軸17が連動連結されている。17aはクランク軸17におけるクランク部である。シリンダヘッド15には、吸気弁18と排気弁19と燃料インジェクタ20が取り付けられている。
図1及び図2に示されるように、このピストン12は、ピストンリング13(図2では図示省略)が装備されるピストンヘッド部12Aと、その下方のピストンロワー部12Bとを有している。
ピストンロワー部12Bは、ピストンヘッド部12Aのような円筒形ではなく、ピストン移動方向6の方向視で円弧面を呈するスカート部1の一対と、それらの間のピン連結部12pとを備える異形部分である。
スカート部1は、スラスト側12aと反スラスト側12bとのそれぞれに位置する状態に形成されている。
スカート部1は、図1及び図2に示されるように、ピストン移動方向6でクランク軸側の端縁が傾斜している周方向端部1A,1Aと、それらの間で、かつ、クランク軸側に突出した周方向中央部1Bとを有する形状に形成されている。つまり、スカート部1は、ピストン周方向8で中央に寄るに従って下方に延びる形状に設定されている。図1は、ピストン12が下方に移動中の状態を描いたものである。なお、26は、ピストンリング13(図1を参照)を装着するための周溝であり、27はオイル孔である。
ピストン12のスカート部1の表面1aには、樹脂皮膜2と、隣り合う樹脂皮膜2,2どうしの間の表面1a及び隣り合う樹脂皮膜2,2により形成される凹部3とが設けられている。ピストン12本体の素材には、鋳鉄またはアルミ合金等の金属が用いられている。樹脂皮膜2には、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が用いられている。樹脂皮膜2には、遷移金属酸化物、グラファイト等の無機固体潤滑剤が含まれている。
次に、スカート部1に施されている樹脂皮膜2や凹部3、或いは樹脂皮膜2のコーティングパターンなどについて説明する。
図1や図2(A),(B)に示されるように、スカート部1の表面1aに斑点状に複数の樹脂皮膜2が分散配置され、隣り合う前記樹脂皮膜2,2どうしの間の前記表面1a及び隣り合う前記樹脂皮膜2,2によりなる凹部3で網目状溝4が形成されている。網目状溝4は、多数の樹脂皮膜2どうしの間により形成され、網目状溝4の底面は、樹脂皮膜2で覆われていない表面1a、即ち、スカート部1の金属表面1aで形成されている。
スカート部1に形成されている斑点状の樹脂皮膜2及び凹部3(及び網目状溝4)は、ピストン12のスラスト側12aと反スラスト側12bとに存在している。スラスト側12aとは、爆発工程においてクランク軸17の回転方向とコネクティングロッド16の傾斜とによりピストン12が下降する時に、爆発圧力でピストン12がシリンダ14に押し付けられる側を言い、反スラスト側12bはその反対側を言う。
図1,2に示されるように、斑点状に分散配置されている樹脂皮膜2は、ピストン径方向視で円形(角のない丸まった形状の一例)に設定され、全ての樹脂皮膜2の径rは互いに等しい値に設定されている。そして、隣り合う樹脂皮膜2,2が若干の隙間、即ち間隔dを空けて縦横に規則正しく配列する状態でピストン12のスカート部1の表面1aに形成されている。なお、間隔dは凹部3の幅でもある。
詳しくは、ピストン周方向8に複数の樹脂皮膜2が所定間隔dを空けて配置されて形成される樹脂皮膜列5が、ピストン移動方向6に複数配列され、ピストン移動方向6で隣り合う樹脂皮膜列5,5どうしは、ピストン周方向8で互いに半ピッチ位置ズレする状態で配置されている。
図2(A),(B)に示されるように、樹脂皮膜列5のピストン周方向8の配列ピッチをbとすると、ピストン移動方向6で隣り合う樹脂皮膜2,2どうしの位置はピストン周方向8でb/2ずれている。また、ピストン移動方向6で斜めに隣り合う樹脂皮膜2,2どうしの中心間隔(=ピッチ)もbである。つまり、隣合う3つの樹脂皮膜2,2,2がトライアングル(正三角形)状に配置されるのを基本として、多数の円形の樹脂皮膜2による水玉模様状に配置されるコーティングパターンである。
図3(B)に示されるように、ピストン周方向8及びピストン移動方向6で斜めに互いに隣り合う樹脂皮膜2,2どうしの間隔dは、樹脂皮膜2の径rの0.075〜0.75の範囲(0.075r≦d0.75r)に設定されている。例えば、樹脂皮膜2の径(直径)rが4mmの場合、間隔dは0.3〜3mm(例:1mm)に設定される。なお、樹脂皮膜2の径や間隔dは、任意に設定することが可能である。
ピストン移動方向で隣り合う樹脂皮膜列5,5どうしをピストン周方向8に半ピッチずらす構成により、図3(B)に示されるように、ピストン周方向で隣り合う樹脂皮膜2,2の間の凹部3である溝部分7は、そのピストン移動方向の両端に樹脂皮膜2が丁度存在する位置関係となっている。詳しくは、溝部分7の端は、樹脂皮膜2のピストン周方向8の中心に対向している。
従って、ピストン12の移動により、溝部分7(=凹部3)に取り込まれたオイルは、図3(B)に矢印で示されるように、ピストン移動方向で隣合う樹脂皮膜列5の樹脂皮膜2に当って左右に(ピストン周方向に)分かれ、樹脂皮膜2に沿って凹部3において円弧状に流れるようになる。
図3(A)に示されるように、樹脂皮膜2の厚みは3〜20μmが望ましく、一例として10μmである。なお、図3(A)は分かり易くするために誇張して描いてある。
例えば、正六角形の樹脂皮膜を亀甲状に並べた場合に比べて、樹脂皮膜2に尖った角がなく丸い形状とされているので、ピストン12とシリンダ14との摩擦に対して樹脂皮膜2の削れることが抑制されて長持ちするようになる。加えて、凹部3(溝部分7)におけるオイルが流れ難くなる。詳しくは、突き当り部(樹脂皮膜2のピストン周方向の中心部)でオイルが滞り易くなりオイル保持が良くなる。その結果、流体動圧効果がはっきりと得られ、油圧が上がって油膜が厚くなり、摩擦が減じられて低フリクション化が図れて燃費改善に寄与できる。
〔別実施形態〕
樹脂皮膜2の形状としては、図4(A)に示されるように、ピストン移動方向6に長い長円形(角丸長方形)の樹脂皮膜2や、図4(B)に示されるように、ピストン移動方向6に長い楕円形の樹脂皮膜でもよい。また、ピストン周方向8に長い長円形や楕円形でもよく、要は、角のない丸まった形状であればよい。
ピストン移動方向6で隣り合う樹脂皮膜列5,5のピストン周方向8への位置ズレは、ピストン周方向に1/4ピッチなど、半ピッチ以外の量でもよい。
1 スカート部
1a 表面
2 樹脂皮膜
3 凹部
4 網目状溝
5 樹脂皮膜列
6 ピストン移動方向
8 ピストン周方向
d 樹脂皮膜どうしの間隔
r 樹脂皮膜の径

Claims (6)

  1. スカート部の表面に斑点状に複数の樹脂皮膜が分散配置され、隣り合う前記樹脂皮膜どうしの間の前記表面及び隣り合う前記樹脂皮膜によりなる凹部で網目状溝が形成されるとともに、前記樹脂皮膜は角のない丸まった形状に設定されているエンジンのピストン。
  2. ピストン周方向に複数の前記樹脂皮膜が所定間隔を空けて配置されて形成される樹脂皮膜列が、ピストン移動方向に複数配列され、
    ピストン移動方向で隣り合う前記樹脂皮膜列どうしが、ピストン周方向で互いに位置ズレする状態で配置されている請求項1に記載のエンジンのピストン。
  3. ピストン移動方向で隣り合う前記樹脂皮膜列どうしは、ピストン周方向で互いに半ピッチで位置ズレされている請求項2に記載のエンジンのピストン。
  4. 前記樹脂皮膜のピストン径方向視での形状が円形に設定されている請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジンのピストン。
  5. 互いに隣り合う前記樹脂皮膜の径rが互いに等しく設定されている請求項4に記載のエンジンのピストン。
  6. 互いに隣り合う前記樹脂皮膜どうしの間隔dは、前記樹脂皮膜の径rの0.075〜0.75の範囲(0.075r≦d≦0.75r)に設定されている請求項5に記載のエンジンのピストン。
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