[実施の形態1]
図1は、内視鏡10の外観図である。本実施の形態の内視鏡10は、上部消化管向けの軟性鏡である。内視鏡10は、操作部20および挿入部30を有する。操作部20は、起上操作レバー21、チャンネル入口22および湾曲ノブ23を有する。操作部20は、図示しないビデオプロセッサ、光源装置および表示装置等に接続されている。
挿入部30は長尺であり、一端が操作部20に接続されている。挿入部30は、操作部20側から順に軟性部12、湾曲部13および内視鏡用キャップ50を有する。軟性部12は、軟性である。湾曲部13は、湾曲ノブ23の操作に応じて湾曲する。内視鏡用キャップ50は、湾曲部13に連続する硬性の先端部31(図2参照)を覆っている。
本実施の形態の内視鏡10は、内視鏡用キャップ50を先端部31から着脱することが可能である。内視鏡用キャップ50は、外装部材であるカバー52および起上台80(図2参照)を有する。内視鏡用キャップ50の構造の詳細については後述する。
以後の説明では、挿入部30の長手方向を挿入方向と記載する。同様に、挿入方向に沿って操作部20に近い側を操作部側、操作部20から遠い側を先端側と記載する。
図2は、挿入部30の先端の斜視図である。図3は、挿入部30の先端から処置具先端部41が突出した状態を示す説明図である。図1から図3を使用して、本実施の形態の内視鏡10の構成を説明する。
湾曲部13の先端に配置された先端部31は、一方の側に挿入方向に沿って並んだ観察窓36および照明窓37を有する。照明窓37は、観察窓36よりも先端側に配置されている。先端部31は、他方の側の操作部側に、チャンネル出口35を有する。チャンネル出口35の先端側に、起上部83が配置されている。先端部31を覆うカバー52は、観察窓36、照明窓37および起上部83に対応する部分に略長方形の窓部53を有する。
照明窓37は、図示しない光源装置から出射した照明光を照射する。観察窓36を通して、照明光により照らされた範囲を光学観察することが可能である。本実施の形態の内視鏡10は、光学観察が可能な視野方向が挿入方向に対して交差する方向である、いわゆる側視型である。内視鏡10は、視野方向が若干先端側に傾いた前方斜視型、または視野方向が若干操作部側に傾いた後方斜視型であっても良い。
チャンネル入口22とチャンネル出口35との間は、軟性部12および湾曲部13の内部を通るチャンネル34により接続されている。チャンネル入口22から処置具40を処置具先端部41側から挿入することにより、チャンネル出口35から処置具先端部41を突出させることができる。
図3に実線で示すように、処置具先端部41は起上部83の上で緩く曲がりながら突出する。図1に矢印で示すように起上操作レバー21を操作することにより、後述するようにレバー60が動き、レバー60に連動して起上台80が動く。起上台80が動くことにより、図1および図3に矢印で示すように、起上台80の上の処置具先端部41が操作部20側に屈曲する。処置具先端部41の動きは、観察窓36を介して図示しない撮像素子等により撮影され、図示しない表示装置に表示される。
処置具40は、たとえば高周波ナイフ、鉗子または造影チューブ等の処置用の機器である。なお、チャンネル34に挿入する機器は処置用の機器に限定されない。たとえば、超音波プローブ、極細内視鏡等の観察用の機器をチャンネル34に挿入して使用する場合もある。以後の説明では、観察用の機器も含めて処置具40と記載する。
図4は、内視鏡用キャップ50の斜視図である。図4は、内視鏡用キャップ50を内視鏡10への取付側から見た斜視図である。内視鏡用キャップ50は、カバー52、台座70および起上台80を有する。カバー52は、一端に開口端部56を、他端に底を有する有底筒型である。カバー52は、窓部53の開口端部56側に、内側に向けて突出する突出部49を有する。カバー52の材料の詳細については後述する。
台座70は、カバー52の窓部53に対向する内面から窓部53に向けて立ち上がる第1壁77および第1壁77のカバー52側からカバー52の内面に沿って延びる第2壁78を有する。第1壁77は、広面がカバー52の軸方向と平行である板状である。
台座70は、第1壁77を貫通する起上台取付孔76を有する。台座70は、起上台取付孔76に起上台80を回動可能に取り付けた状態で、カバー52の内面に接着または溶着等により固定されている。回動は、所定の角度の範囲内での回転運動を意味する。
内視鏡用キャップ50は、一回の内視鏡検査に使用した後に廃棄される、いわゆるシングルユースである。内視鏡用キャップ50は、たとえば放射線滅菌、高圧蒸気滅菌、過酸化水素プラズマ滅菌またはエチレンオキサイドガス滅菌等、任意の滅菌手段により滅菌された状態で供給される。
カバー52は、樹脂の基材にフィラーを混入した、いわゆるフィラー入り樹脂製である。カバー52は、滅菌手段に耐え得る材料により形成される。表1は、内視鏡用キャップ50に適した各種の滅菌手段、および、それぞれの滅菌手段に耐え得る基材の例を示す。なお、表1に示す基材はいずれも硬質のプラスチックであり、いわゆるエンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックを含む。
表1において、放射線滅菌にはガンマ線滅菌および電子線滅菌の両方を含む。カバー52の材料の基材は、表1に示す樹脂に他の樹脂を組み合わせて変性した樹脂であっても良い。カバー52の材料の基材は、表1に示す複数の樹脂を組み合わせた共重合体であっても良い。
表1において、たとえば、PA、PEおよびPPは結晶性樹脂であり、ABS、PC、PEI、PMMAおよびPSは非晶性樹脂である。一般的に、結晶性樹脂は非晶性樹脂に比べてフィラーを充填しやすい傾向がある。具体的には、非晶性樹脂に充填可能なフィラーの量の上限は30重量パーセント程度である。結晶性樹脂は材料によっては40から60重量パーセント程度のフィラーを充填可能である。
なお、表1に挙げた樹脂の他にも、任意の樹脂を基材に使用できる。結晶性樹脂には、表1に挙げた樹脂の他に、たとえばLCP(Liquid Crystal Polymer)、PBT(Polybutylene terephthalate)、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)、PET(Polyethyleneterephthalate)、POM(Polyacetal)およびPPS(Polyphenylene Sulfide)が挙げられる。非晶性樹脂には、表1に挙げた樹脂の他に、たとえばPES(Polyethersulfone)およびPMMA(Polymethyl Methacrylate)が挙げられる。
基材に混入されるフィラーの形状は、たとえば短繊維状、粒子状、または、フレーク状等である。複数の形状または寸法のフィラーが混在していても良い。フィラーの材質は、たとえばガラス、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、マイカ、酸化シリコン等の、鉱物を主原料とする化合物である。フィラーの材質は、ステンレス鋼またはアルミニウム等の金属であっても良い。
フィラーは、たとえば炭素繊維、カーボンナノチューブ、または、フラーレン等の、炭素系材料の粉体であっても良い。フィラーは、アラミド繊維、すなわち繊維状に形成した芳香族ポリアミド等の合成繊維であっても良い。複数の材質のフィラーが混在していても良い。フィラーの一部は、基材を所望の色に着色する非透光性の顔料を兼ねても良い。フィラーの量については後述する。
カバー52は、基材とフィラーとが配合された原料ペレットを用いて射出成形により形成される。カバー52は、基材の原料ペレットを溶融した後に、所望のフィラーを混合した後に、射出成形により形成されても良い。
図5は、起上台80の斜視図である。図4および図5を使用して、起上台80の構成を説明する。起上台80は、起上台軸82、起上部83およびレバー連結部81を有する。起上台軸82は、割り溝を有する円柱形の軸である。起上台軸82は、端部に一回り太い抜け止めを有する。起上台軸82の中心軸と交差する方向に、起上部83が配置されている。起上部83は、一面に起上台軸82から遠い側が広くなったスプーン状の窪み部84を有する。
起上部83の起上台軸82側に、レバー連結部81が設けられている。レバー連結部81は、起上台軸82と同軸の円筒面の内面に、起上台軸82と交差する向きに設けられた丸穴である。さらに具体的には、起上台軸82の中心線と、レバー連結部81の中心線とは直交する。レバー連結部81は、角穴、楕円形穴等でも良い。レバー連結部81は、起上部83を貫通しても良いし、貫通しなくても良い。以後の説明では、凹状のレバー連結部81を連結凹部と記載する場合がある。
起上台軸82は、起上台取付孔76に挿入されている。起上台80は、起上台軸82まわりに台座70に対して回動可能である。起上台軸82の端部に設けられた抜け止めが、一旦挿入された起上台軸82が起上台取付孔76から外れることを防止する。窪み部84は、窓部53に対向して配置されている。
図4および図5を使用して、内視鏡用キャップ50の組立方法について説明する。まず、起上台80を台座70に回動可能に取り付ける。具体的には、起上台取付孔76に起上台軸82を挿入する。次に、台座70をカバー52の内面に固定する。具体的には、第2壁78の一面に接着剤を塗布した台座70を、開口端部56側からカバー52の内面に挿入する。第2壁78の接着剤を塗布した面を、カバー52の内面に押し付けた状態で、接着剤を硬化させる。起上台軸82を起上台取付孔76に挿入する際の方向と、台座70をカバー52に挿入する方向とは交差している。
図6は、内視鏡用キャップ50取付前の挿入部30の先端の斜視図である。先端部31は、略円柱形状であり、中心からずれた位置に先端側から操作部側に向けて設けられた溝により、光学収容部33とレバー室69とに分かれている。チャンネル出口35は、溝の底に開口している。チャンネル出口35の近傍に棒状の起上台連結部61が露出している。起上台連結部61については後述する。
先端部31は、挿入部30の長手方向に沿った第1平面部321を有する。第1平面部321の光学収容部33側には、観察窓36および照明窓37が配置されている。観察窓36の操作部側には、観察窓36に水および空気を噴射して清掃するノズル38が設けられている。光学収容部33の外側には、第2平面部322が設けられている。
レバー室69は中空である。レバー室69は、光学収容部33側に支持壁68を有する。先端部31は、操作部側の外周にキャップ固定溝39を有する。
図7は、内視鏡用キャップ50取付前の挿入部30の先端の斜視図である。図7は、レバー室蓋67(図11参照)を外し、レバー室69の内部をみえるようにした状態を示す。レバー室69の内部に、回動連結部64およびワイヤ固定部65が収容されている。ワイヤ固定部65は、起上ワイヤ24の端部に連結されている。
起上ワイヤ24は、挿入部30を通って起上操作レバー21(図1参照)に連結されている。さらに具体的には、起上ワイヤ24は、起上ワイヤ24の外径よりも若干太い内径を有する図示しない案内管に挿通されている。図示しない案内管は、挿入部30を長手方向に貫通する。そのため、起上操作レバー21の操作に連動して起上ワイヤ24の先端が進退する。起上ワイヤ24は、本実施の形態の回動部の一例である。起上ワイヤ24は、起上操作レバー21により遠隔操作される。
図8は、レバー60の斜視図である。レバー60は、レバー軸63、起上台連結部61、回動連結部64、ワイヤ固定部65および2個のOリング62を有する。
レバー軸63は、円柱形の軸である。レバー軸63の側面からレバー軸63の中心軸と交差する方向に、円柱形の起上台連結部61が突出している。レバー軸63の端部から、レバー軸63の中心軸と交差し、かつ、起上台連結部61の突出方向とは異なる方向に、回動連結部64が突出している。回動連結部64の端部に割り溝を有するワイヤ固定部65が設けられている。レバー軸63の、起上台連結部61と回動連結部64とに挟まれた部分に、2個のOリング62が固定されている。
図9は、レバー60の分解斜視図である。起上台連結部61は、一端に雄ねじを有する。レバー軸63は、側面に雌ねじを有する。Oリング62を通したレバー軸63を、支持壁68に設けた孔に通した後に、起上台連結部61の雄ねじとレバー軸63の雌ねじとを結合することにより、レバー60が支持壁68に回動可能に支持される。起上台連結部61の端部に設けられた平面部をラジオペンチ等の工具で保持して回すことにより、起上台連結部61とレバー軸63とを強固に結合することができる。
図10は、挿入部30の先端の側面図である。図10は、内視鏡用キャップ50を取り付けた挿入部30の先端を、窓部53側から見た図である。内視鏡用キャップ50は、先端部31の先端側から押し込むことにより、挿入部30に固定されている。レバー室69の先端側の端面は、内視鏡用キャップ50の底に当接する。窓部53内に、観察窓36、照明窓37および起上部83がみえる。
図11は、図10のXI−XI線による挿入部30の断面図である。レバー室69は、レバー室蓋67により封止されている。レバー軸63が支持壁68を貫通する孔は、2個のOリング62により封止されている。以上の構造により、レバー室69の内部への水等が浸入が防止されている。
図11中の観察窓36の下側には、レンズ等の観察光学系が配置されている。観察光学系を介して図示しない撮像素子が撮影した映像は、図示しないビデオプロセッサで処理されて、表示装置に表示される。
図11中の観察光学系の下側には、ライトガイドファイバ371が配置されている。ライトガイドファイバ371は、照明窓37に接続されている。ライトガイドファイバ371は、図示しない光源装置から照明窓37に照明光を導く。
カバー52は、第2平面部322に対応する平面部を内面に有する。第2平面部322とカバー52の平面部が当接することにより、内視鏡用キャップ50の回転を防止する。
図12は、図11のXII−XII線による挿入部30の断面図である。XII−XII断面は、レバー軸63の中心軸および起上台軸82の中心軸を通り、挿入部30の長手方向に沿った断面である。図11および図12に示すように、レバー軸63の中心軸と、起上台軸82の中心軸とは、同軸に配置されている。レバー60は、内視鏡10の挿入部30の先端に、レバー軸63まわりに回動可能に設けられている。
起上台連結部61が、レバー連結部81に挿入されている。起上台連結部61とレバー連結部81とにより、レバー60と起上台80とが連結されている。すなわち、レバー軸63を中心としてレバー60が回動する場合には、起上台80もレバー60と一体になって回動する。レバー軸63の中心軸と、起上台軸82の中心軸とが、同軸に配置されているため、起上台80はレバー60と滑らかに連動する。
以上に説明したように、内視鏡用キャップ50を内視鏡10の先端部31に装着した際、起上台80はレバー60に連結される。ここで連結は、レバー60が回動した場合に、起上台80がレバー60と共に回動する状態を意味する。
以後の説明では、図12に示すような突起状の起上台連結部61を起上突起と記載する場合がある。起上突起は、図5を使用して説明した連結凹部に挿入可能な形状である。
カバー52は、内面に開口端部56の縁に沿って延びる取付突起55を有する。取付突起55は、開口端部56側の方が、カバー52の底側に比べてなだらかな傾斜を有する。取付突起55は、先端部31の外周部に設けられたキャップ固定溝39と係合する。
開口端部56側の傾斜がゆるやかであるので、挿入部30の先端に内視鏡用キャップ50を押し込む際には、比較的容易に取付突起55がキャップ固定溝39に入る。一方、底側の傾斜が急であるので、一旦固定された内視鏡用キャップ50は、挿入部30から外れにくい。なお、挿入部30の先端に内視鏡用キャップ50を押し込んだ後、内視鏡用キャップ50の開口端部56および挿入部30に医療用テープ等を巻きつけても良い。このようにすることにより、内視鏡用キャップ50をさらに強固に固定することができる。
図13は、図10のXIII−XIII線によるカバー52の断面図である。図13においては、カバー52以外の部材は図示を省略する。突出部49の、カバー52の中心側を向く面は平面である。第1平面部321と突出部49とが当接することにより、内視鏡用キャップ50の回転を防止する。
カバー52は、内面に略三角形断面の切欠部54を有する。図10に破線で示すように、切欠部54は、窓部53の縁と、開口端部56との間にわたって形成された溝である。
図14は、内視鏡用キャップ50を挿入部30の先端に取り付ける工程を説明する断面図である。起上操作レバー21を操作して、起上台連結部61を挿入部30の先端側に向ける。内視鏡用キャップ50内の起上台80も、レバー連結部81を開口端部56側に向ける。
この状態で、内視鏡用キャップ50を先端部31に先端側から押し込む。カバー52が一時的に拡がり、取付突起55がキャップ固定溝39に係合する。これにより、内視鏡用キャップ50が先端部31に固定される。起上台連結部61がレバー連結部81に入ることにより、レバー60と起上台80とが一体になって回動可能になる。前述のように、レバー室69の先端側の端面とカバー52の底、第1平面部321と突出部49、および第2平面部322とカバー52の内面に設けられた平面がそれぞれ当接する。この構造により、内視鏡用キャップ50の回転およびがたつきが防止される。
図15は、図10のXV−XV線による挿入部30の断面図である。図16は、起上台80を起上した内視鏡10の断面図である。図15および図16を使用して、起上台80の動きを説明する。
図15に示す状態では、起上台80はカバー52の内側に収容されている。窪み部84は、チャンネル出口35から突出した処置具先端部41を図15の上方向にゆるやかに曲げることが可能な位置に配置されている。
起上操作レバー21が動くことにより、起上操作レバー21に接続された起上ワイヤ24が操作部側に引っ張られる。起上ワイヤ24に引っ張られて、レバー60がレバー軸63を軸として回動する。起上台連結部61がレバー連結部81と連結しているため、起上台80もレバー60と一体となって、立ち上がるように回動する。その結果、起上台80と窓部53との間の距離が変化する。
図16は、起上台80が回動した状態を示す。起上台80に押されて、チャンネル出口35から突出した処置具先端部41が操作部側に屈曲する。図16に示すように、起上台80が立ち上がるように回動することを、以下の説明では「起上台80が起上する」と表現する場合がある。起上した起上台80に押されて処置具先端部41が屈曲することを、以下の説明では「処置具40が起上する」と表現する場合がある。起上操作レバー21の操作により、処置具40の起上の程度を調整することができる。
本実施の形態の内視鏡10の使用方法の概要を説明する。内視鏡10は、内視鏡用キャップ50を外し、洗浄等を行った状態で保管されている。内視鏡用キャップ50は、滅菌パックに入った状態で提供される。ユーザは、滅菌パックから内視鏡用キャップ50を取り出し、内視鏡10の先端部31に取り付ける。
ユーザは、挿入部30を検査対象者の口から挿入する。観察窓36を介して撮影した映像を見ながら、ユーザは挿入部30の先端を目的部位に誘導する。ユーザは、目的に応じた処置具40等をチャンネル入口22から挿入する。処置具先端部41が挿入部30の先端から突出し、目的部位の近傍に位置することを確認した後に、ユーザは起上操作レバー21を操作して、処置具先端部41を目的部位に誘導する。必要な処置等を行った後に、ユーザは処置具40をチャンネル34から抜去する。ユーザは内視鏡10を検査対象者から抜去して、検査または処置を終了する。
カバー52は、切欠部54を利用して破断することにより、容易に取り外すことができる。たとえば、ユーザは窓部53から指等を差し込み、切欠部54に沿って開口端部56に向けてカバー52を外側に捲りあげるようにして、カバー52を破断する。本実施の形態の内視鏡用キャップ50は、いわゆるシングルユースであり、一回使用した後に廃棄される。
ユーザは、内視鏡用キャップ50を外した後の内視鏡10に対して、次回の使用に備えて洗浄等の処理を行う。図6に示すように、内視鏡用キャップ50を外した後の内視鏡10には起上台80が付いていない。起上台80を固定する際に用いる起上台連結部61は、図6に示すように、先端部31に露出している。レバー室69は、レバー室蓋67およびOリング62により封止されているので、起上ワイヤ24の経路には体液等が付着しない。
カバー52を構成する樹脂材料の、基材とフィラーの配合例について説明する。図17は、樹脂材料の応力−ひずみ曲線である。横軸は歪みであり、単位はパーセントである。縦軸は応力である。縦軸は、符号Aで示す応力歪み線図の最大値により無次元化した相対値を示す。
図17に示す応力ひずみ曲線は、後述する5種類の樹脂材料について、JIS(Japan Industrial Standard)K7141−1:2005「プラスチック−比較可能なマルチポイントデータの取得及び提示−第1部:機械的特性」に沿って引張試験により測定されたデータである。
引っ張り試験に用いた試験片は、ISO(International Organization for Standardization)3167「Plastics - Multipurpose test specimens」に規定される多目的試験片A型であり、厚さは4ミリメートルである。引っ張り試験の条件は、つかみ具間距離が115ミリメートル、引っ張り速度が毎分20ミリメートルである。
表2は、図17中にAからEの符号で示すそれぞれの応力歪み線図に対応する樹脂材料の配合を示す。なお、変性PPEは、非晶性樹脂である。
表2において、フィラーの量は基材に対する重量パーセントで示す。カーボン微粒子は、樹脂材料を黒色に着色する顔料であり、いわゆるカーボンブラックである。樹脂材料を着色することにより、基材のロット間で生じる樹脂色の相違を隠し、製造時期にかかわらず同一の外観のカバー52を製造できる。カーボン微粒子の直径は、数ナノメートルから数百ナノメートル程度であり、図17に示す応力歪み曲線等の機械的物性にほとんど影響を及ぼさない。顔料は、本実施の形態の第1フィラーの一例である。
カバー52の色は黒に限定しない。カーボン微粒子の代わりに、任意の顔料または染料を使用することにより、任意の色のカバー52を形成できる。顔料または染料は、図17に示す応力歪み曲線等の機械的物性にほとんど影響を及ぼさないものを選択することが望ましい。
表2中のガラス短繊維は、太さの中央値が2マイクロメートル、長さの中央値が30マイクロメートル程度の、いわゆるウィスカ状のガラスである。ガラス短繊維の長さは、カバー52の最薄部の厚さ未満であることが望ましく、カバー52の最薄部の厚さの半分未満であることがさらに望ましい。ガラス短繊維は、透光性のガラス製である。ガラス短繊維は、本実施の形態の第2フィラーの一例である。
表2中の炭酸カルシウム粒子は、直径が数百マイクロメートル程度の略球状の粒子である。炭酸カルシウム粒子の直径は、カバー52の最薄部の厚さ未満であることが望ましく、カバー52の最薄部の厚さの半分未満であることがさらに望ましい。炭酸カルシウム粒子は、本実施の形態の第2フィラーの一例である。
ここで、フィラーの寸法の測定方法について説明する。フィラーの寸法は、樹脂材料の断面を電子顕微鏡または光学顕微鏡を用いて光学的に観察して測定する。フィラーの形状がウィスカ状である場合、断面に略真円形に露出しているフィラーの最大外寸を測定する。複数のフィラーの最大外寸を測定し、その中央値をフィラーの太さの代表値に使用する。
その後、フィラーの太さと略一致する均一な太さで断面に露出しているフィラーの長さを測定する。複数のフィラーの長さを測定し、その中央値をフィラーの太さの代表値に使用する。
フィラーの形状が略球形またはフレーク状等の粒子状である場合、所定の面積の範囲に露出しているフィラーの寸法が最大になる方向の長さを測定する。複数の範囲においてそれぞれフィラーの寸法が最大になる方向の長さを測定し、その中央値をフィラーの粒径の代表値に使用する。
図17を使用して説明を続ける。符号A、すなわちフィラーがカーボン微粒子だけであるサンプルは、ひずみが10パーセント付近になるまで引っ張った場合に、応力の最大値を示す。以後応力が低下しながら39パーセント程度のひずみまで伸びた後に、破断する。
符号B、すなわちカーボン微粒子に加えて10重量パーセントのガラス短繊維フィラーを有するサンプルは、歪みが4.5パーセント弱に達するまで歪みと応力とがほぼ比例し、歪みが5パーセント弱で破断する。最大応力は、符号Aのサンプルの最大応力の約1.6倍である。
符号C、すなわちカーボン微粒子に加えて20重量パーセントのガラス短繊維フィラーを有するサンプルは、歪みが4パーセント弱に達するまで歪みと応力とがほぼ比例し、歪みが4パーセント程度で破断する。最大応力は、符号Aのサンプルの最大応力の約2.3倍である。
符号D、すなわちカーボン微粒子に加えて30重量パーセントのガラス短繊維フィラーを有するサンプルは、歪みが3.5パーセント弱に達するまで歪みと応力とがほぼ比例し、歪みが3.5パーセント程度で破断する。最大応力は、符号Aのサンプルの最大応力の約2.25倍である。
符号E、すなわちカーボン微粒子に加えて20重量パーセントの炭酸カルシウム粒子を有するサンプルは、歪みが4パーセント弱に達するまで歪みと応力とがほぼ比例し、歪みが4パーセント程度で破断する。最大応力は、符号Aのサンプルの最大応力の約1.75倍である。
符号Aから符号Dまでを比較して説明する。10重量パーセント以上のガラス短繊維を加えることにより樹脂の最大応力が高まるとともに、所定の歪みを越えると急激に破断する。ガラス短繊維の量が20パーセントを越えた場合、ガラス短繊維の量の増加による、応力歪み曲線の変化は少ない。
符号Cと符号Eとを比較して説明する。フィラーの材料および形状が異なる場合、最大応力の値は異なるが、応力が最大になるひずみ量、および、樹脂が破断する歪み量はほぼ同一である。
以上により、着色用の顔料に加えてガラス短繊維のフィラーを加えた樹脂を用いてカバー52を形成することにより、強い応力に耐えるとともに、所定量を超えるひずみを与えると伸びずに破断するカバー52を得ることができる。
カバー52に所定以上の応力を加わると破断するため、内視鏡用キャップ50を内視鏡10から取り外す際に、切欠部54を確実に破断させることができる。一見して、破壊されていることが判る状態になるため、ユーザが再使用可能であると誤認することを防止できる内視鏡用キャップ50を提供できる。
カバー52が大きく伸びずに破断するため、内視鏡用キャップ50を内視鏡10から取り外す際に、ユーザはカバー52が破断した際の手ごたえを明確に感じる。そのため、スムーズに内視鏡用キャップ50を外す操作を行える内視鏡用キャップ50を提供できる。
ガラス短繊維のフィラーの量は、基材に対して10重量パーセント以上であることが望ましい。ガラス短繊維のフィラーの量は、基材に対して20重量パーセント以上30重量パーセント以下であることがさらに望ましい。ガラス短繊維のフィラーの量は、基材に対して20重量パーセント程度であることがさらに望ましい。いずれの場合も、フィラーの量の精度は、所定のフィラー量に対して±30パーセント程度である。
図示を省略するが、変性PPEの代わりに表1に示す各基材を用いた場合も、図17と同様の傾向を示す。さらに、短繊維状のフィラーの代わりに、直径数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度の粒子状またはフレーク状のフィラーを使用した場合、および、長さが数ミリメートル、直径が数マイクロメートルから数十マイクロメートルの繊維状のフィラーを使用した場合についても、図17と同様の傾向を示す。
ガラスの代わりに前述の種々の材質のフィラーを使用した場合も、図17と同様の傾向を示す。フィラーは、透光性、吸光性、または、光反射性のいずれであっても良い。
すなわち、外寸が数マイクロメートルから数百マイクロメートルのオーダーの第2フィラーを10重量パーセント以上、望ましくは20重量パーセントから30重量パーセント以下、さらに望ましくは20重量パーセント程度含む樹脂をカバー52の材料に使用することが望ましい。第2フィラーの外寸は、数マイクロメートルから数十マイクロメートルのオーダーであることがさらに望ましい。
または、平均長さが数ミリメートル、直径が数マイクロメートルから数十マイクロメートルの繊維状の第2フィラーを10重量パーセント以上、望ましくは20重量パーセントから30重量パーセント以下、さらに望ましくは20重量パーセント程度含む樹脂をカバー52の材料に使用することが望ましい。
本実施の形態によると、ユーザが誤って再使用することを防止できるシングルユース用の内視鏡用キャップ50を提供できる。
起上台80および起上ワイヤ24付近の複雑な構造を洗浄するための特別な洗浄作業等が不要であるので、症例間の処理時間が短く、効率良く運用することができる内視鏡10を提供することができる。
本実施の形態の内視鏡10は、起上台80を備えており側視型であるので、十二指腸および膵胆管領域の診断および処置用に適している。特に、ERCP(Endoscopic Retrograde Cholangio Pancreatography)、EST(Endoscopic Sphincterotomy)、EBD(Endoscopic Biliary Drainage)等の手技を実施する場合には、本実施の形態の内視鏡10が適している。これらの手技では、十二指腸壁にある十二指腸乳頭部および十二指腸乳頭部に開口する膵管および総胆管等の内部に処置具40を誘導して、処置等を行うためである。
なお、側視型の内視鏡10を、側視内視鏡と呼ぶ場合がある。同様に、十二指腸および膵胆管領域の診断等に適した内視鏡10を、十二指腸内視鏡と呼ぶ場合がある。
本実施の形態によると、使用後にカバー52を破断して挿入部30から取り外すので、誤って再使用することを防止できる内視鏡用キャップ50を提供することができる。本実施の形態によると、起上台80および内視鏡用キャップ50を着脱可能な内視鏡10を提供することができる。本実施の形態によると、起上台80を備えない通常の内視鏡と同様の手順で洗浄等の処理を行うことが可能な、起上台80を備える内視鏡10を提供することができる。
本実施の形態によると、台座70とカバー52とが別体であるので、それぞれの形状が単純である。そのため、たとえば射出成形等により安価に製造することが可能である。
回動部には、起上ワイヤ24の代わりに伸縮可能なSMA(Shape memory alloy)アクチュエータを使用しても良い。このようにする場合には、SMAアクチュエータの一端をワイヤ固定部65に、他端を先端部31に固定する。SMAアクチュエータの周囲にヒータを配置する。ヒータは、起上操作レバー21の動きに連動して作動するようにする。
ヒータが作動してSMAアクチュエータが縮むことにより、レバー60および起上台80が回動する。回動部には、その他任意のリニア型のアクチュエータを使用することができる。
回動部には、小型モータ等の回動型のアクチュエータを使用しても良い。小型モータをレバー室69に配置し、モータ軸とレバー軸63とを連結することにより、レバー60を回動させることが可能である。
回動部にアクチュエータを使用する場合には、たとえば音声制御等のユーザの手を使わない手段を用いて起上台80を操作しても良い。
内視鏡用キャップ50は、レバー連結部81を開口端部56の側に向けた状態で、起上台80とカバー52または台座70とを粘着材等により仮固定した状態で提供されても良い。このようにすることにより、内視鏡用キャップ50を挿入部30に取り付ける前に起上台80の向きを確認する手間を省き、簡便に使用できる内視鏡用キャップ50を提供することができる。
仕様の異なる複数の種類の内視鏡用キャップ50から、ユーザが手技に応じた仕様の内視鏡用キャップ50を選択して使用するようにしても良い。たとえば、起上台80の回動可能範囲を狭く制限するストッパを設けた内視鏡用キャップ50が提供されても良い。回動可能範囲を狭くすることにより、たとえば超音波プローブまたは極細内視鏡等の高価で精密な機器を組み合わせて使用する場合に、過剰な屈曲による機器の破損を防止することができる。
窪み部84が、処置具先端部41の外径に沿う形状である場合には、起上時に処置具40が左右にぶれにくく、操作しやすい傾向がある。窪み部84の形状の異なる起上台80を有する複数の種類の内視鏡用キャップ50が提供されても良い。たとえば、細い処置具40を保持しやすい形状の窪み部84を備える内視鏡用キャップ50を使用することにより、ガイドワイヤ等の細い処置具40を精密に操作しやすくなる。
このようにすることにより、用途に適した内視鏡用キャップ50をユーザが選択して使用することが可能な内視鏡10を提供することができる。
内視鏡用キャップ50は、台座70および起上台80を備えなくても良い。このようにする場合、内視鏡用キャップ50は、カバー52のみにより構成される。起上台80は、内視鏡用キャップ50とは独立して提供され、着脱される。起上台80は、内視鏡10の先端から取り外されずに、内視鏡10と共に洗浄等の処理が行われても良い。
内視鏡10は、先端に超音波振動子を備えるいわゆる超音波内視鏡でも良い。この場合には、内視鏡用キャップ50は、底に超音波振動子を挿通する孔を有することが望ましい。内視鏡10は、下部消化管向けの内視鏡でも良い。内視鏡10は、硬性の挿入部30を備えるいわゆる硬性鏡でも良い。内視鏡10は、エンジンおよび配管等の検査等に使用する、いわゆる工業用内視鏡でも良い。
レバー連結部81が突起状であり、起上台連結部61がレバー連結部81に対応する凹部であっても良い。
[実施の形態2]
本実施の形態は、台座70とカバー52とを一体に形成した内視鏡用キャップ50に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
図18は、実施の形態2の挿入部30の断面図である。図18は、図10に示すXI−XI線と同様の位置で切断した断面を示す。本実施の形態においては、台座70は、カバー52の内面に一体に形成されている。
たとえば、3Dプリンタを使用することにより、この種のカバー52を製作することが可能である。複数の材料を印刷することが可能な3Dプリンタを使用することにより、台座70およびカバー52と、台座70に対して回動可能な起上台80とを同時に製作することも可能である。
カバー52を構成する樹脂のフィラーに、たとえば、黒鉛、滑石または窒化ホウ素等の、摺動性向上機能を備える材料を用いても良い。台座70と起上台80との間の摺動性が高まるため、起上操作時の動作が滑らかになる。
本実施の形態によると、使用する部品の数が少ない内視鏡用キャップ50を提供することができる。
[実施の形態3]
本実施の形態は、カバー52の外面に切欠部54を有する内視鏡用キャップ50に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
図19は、実施の形態3のカバー52の断面図である。図19は、図10に示すXIII−XIII線と同様の位置で切断した断面を示す。カバー52は、外面に略三角形断面の切欠部54を有する。切欠部54は、窓部53の縁と開口端部56との間にわたって形成された溝である。
本実施の形態によると、ユーザは、切欠部54の位置を視覚および触覚により確認することができる。そのため、カバー52を破断可能な場所をユーザが容易に発見することが可能な内視鏡用キャップ50を提供することができる。なお、実施の形態1のように切欠部54をカバー52の内面に設ける場合には、カバー52の表面に切欠部54の位置を示すマークを入れることにより、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
[実施の形態4]
本実施の形態は、カバー52の内面および外面に切欠部54を有する内視鏡用キャップ50に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
図20は、実施の形態4のカバー52の断面図である。図20は、図10に示すXIII−XIII線と同様の位置で切断した断面を示す。カバー52は、第1切欠部541および第2切欠部542の2本の切欠部54を有する。
第1切欠部541は、カバー52の外面に設けられた略三角形断面の溝である。第2切欠部542は、カバー52の内面に設けられた略三角形断面の溝である。第1切欠部541および第2切欠部542は、窓部53の縁と開口端部56との間との間にわたって形成された溝である。第1切欠部541の溝の底と第2切欠部542の溝の底とは近接している。
本実施の形態によると、ユーザは、第1切欠部541の位置を視覚および触覚により確認することができる。第1切欠部541の先端近傍でカバー52の肉厚が薄くなっている。そのため、ユーザがさらに容易にカバー52を破断して取り外すことができる内視鏡用キャップ50を提供することができる。
[実施の形態5]
本実施の形態は、窓部53の縁に切欠部54を有する内視鏡用キャップ50に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
図21は、実施の形態5の挿入部30の先端の側面図である。図21は、内視鏡用キャップ50を取り付けた挿入部30の先端を、窓部53側から見た図である。本実施の形態のカバー52は、窓部53の開口端部56側の縁に、略三角形の切欠部54を有する。
切欠部54が、カバー52と先端部31とを結合する取付突起55(図12参照)を横切らないため、内視鏡10の使用中には内視鏡用キャップ50の固定強度が高い。一方、内視鏡10の使用終了後に、ユーザが、窓部53の縁を広げる方向に力を加えることにより、切欠部54の先端を基点にカバー52が破断する。これにより、内視鏡用キャップ50を容易に取り外すことができる。
本実施の形態によると、固定強度が高く、使用後は容易に破断して取り外すことが可能な内視鏡用キャップ50を提供することができる。
[実施の形態6]
本実施の形態は、窓部53の縁およびカバー52の外面に切欠部54を有する内視鏡用キャップ50に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
図22は、実施の形態6の挿入部30の先端の側面図である。図22は、内視鏡用キャップ50を取り付けた挿入部30の先端を、窓部53側から見た図である。本実施の形態のカバー52は、第1切欠部541および第3切欠部543の2つの切欠部54を有する。
第1切欠部541は、カバー52の外面に設けられた略三角形断面の溝である。第1切欠部541の幅は、開口端部56近傍で広くなっている。第1切欠部541は、窓部53の縁と開口端部56との間にわたって形成された溝である。
第3切欠部543は、窓部53の開口端部56側の縁に設けられた略三角形の切欠きである。第3切欠部543は、第1切欠部541と重なる位置に設けられている。
本実施の形態によると、ユーザが、窓部53の縁を広げる方向に力を加えることにより、第3切欠部543の先端を基点にして、第3切欠部543に連続する第1切欠部541に沿ってカバー52が破断する。これにより、内視鏡用キャップ50をさらに容易に取り外すことができる。そのため、ユーザが容易にカバー52を破断して取り外すことができる内視鏡用キャップ50を提供することができる。
[実施の形態7]
本実施の形態は、窓部53の縁と開口端部56との間に一列にならんだ小孔状の切欠きの列を有する内視鏡用キャップ50に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
図23は、実施の形態7の挿入部30の先端の側面図である。図23は、内視鏡用キャップ50を取り付けた挿入部30の先端を、窓部53側から見た図である。本実施の形態のカバー52は、第3切欠部543および第4切欠部544の2つの切欠部54を有する。
第3切欠部543は、窓部53の開口端部56側の縁に設けられた略三角形の切欠きである。第4切欠部544は、第3切欠部543の先端部近傍と開口端部56との間に一列にならんだ小孔状の切欠きの列である。第4切欠部544は、たとえばレーザ光を用いてカバー52に孔を空けるレーザ加工により製作することができる。
たとえば、黒鉛等の加工用レーザ光を吸収しやすい吸光性のフィラーを使用することにより、レーザ光の吸収率が高まり、低出力のレーザ光でも容易にレーザ加工できる。
本実施の形態によると、ユーザが、窓部53の縁を広げる方向に力を加えることにより、第3切欠部543の先端を基点に第4切欠部544に沿ってカバー52が破断する。これにより、内視鏡用キャップ50を容易に取り外すことができる。そのため、ユーザが容易にカバー52を破断して取り外すことができる内視鏡用キャップ50を提供することができる。
第4切欠部544は、2列以上にならんだ切欠きの列でも良い。第4切欠部544は、カバー52を貫通しない切欠きの列でも良い。
[実施の形態8]
本実施の形態は、カバー52の外面および開口端部56の縁に切欠部54を有する内視鏡用キャップ50に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
図24は、実施の形態8の挿入部30の先端の側面図である。図24は、内視鏡用キャップ50を取り付けた挿入部30の先端を、窓部53側から見た図である。本実施の形態のカバー52は、第1切欠部541および第5切欠部545の2つの切欠部54を有する。
第1切欠部541は、カバー52の外面に設けられた略三角形断面の溝である。第1切欠部541の幅は、開口端部56近傍で広くなっている。第1切欠部541は、窓部53の縁と開口端部56との間にわたって形成された溝である。
第5切欠部545は、開口端部56側の縁から窓部53に向けて設けられた略三角形の切欠きである。第5切欠部545は、第1切欠部541と重なる位置に設けられている。
本実施の形態によると、ユーザが、開口端部56側から第5切欠部545の縁を広げる方向に力を加えることにより、第5切欠部545の先端を基点に第1切欠部541に沿ってカバー52が破断する。これにより、内視鏡用キャップ50をさらに容易に取り外すことができる。そのため、ユーザがさらに容易にカバー52を破断して取り外すことができる内視鏡用キャップ50を提供することができる。
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。