JP2019534376A - 磁気熱量材料のパラメーターの制御変動 - Google Patents

磁気熱量材料のパラメーターの制御変動 Download PDF

Info

Publication number
JP2019534376A
JP2019534376A JP2019511845A JP2019511845A JP2019534376A JP 2019534376 A JP2019534376 A JP 2019534376A JP 2019511845 A JP2019511845 A JP 2019511845A JP 2019511845 A JP2019511845 A JP 2019511845A JP 2019534376 A JP2019534376 A JP 2019534376A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetocaloric
magnetocaloric materials
formula
materials
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019511845A
Other languages
English (en)
Inventor
マート,ヨハン テル
マート,ヨハン テル
ミスラ,スモハン
アステン,ダフィット ファン
アステン,ダフィット ファン
レーシンク,ベルナルト
ヘルメス,ヴィルフリート
ツァイリンガー,ミヒャエル
ゼーラー,ファビアン
シールレ−アルント,カルシュティン
ブリュック,エッケハルト
タン グエン,ヴァン
タン グエン,ヴァン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
BASF SE
Original Assignee
BASF SE
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by BASF SE filed Critical BASF SE
Publication of JP2019534376A publication Critical patent/JP2019534376A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F1/00Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties
    • H01F1/01Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials
    • H01F1/012Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials adapted for magnetic entropy change by magnetocaloric effect, e.g. used as magnetic refrigerating material
    • H01F1/015Metals or alloys
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C30/00Alloys containing less than 50% by weight of each constituent
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F25REFRIGERATION OR COOLING; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS; MANUFACTURE OR STORAGE OF ICE; LIQUEFACTION SOLIDIFICATION OF GASES
    • F25BREFRIGERATION MACHINES, PLANTS OR SYSTEMS; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS
    • F25B21/00Machines, plants or systems, using electric or magnetic effects
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F41/00Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C2202/00Physical properties
    • C22C2202/02Magnetic
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F25REFRIGERATION OR COOLING; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS; MANUFACTURE OR STORAGE OF ICE; LIQUEFACTION SOLIDIFICATION OF GASES
    • F25BREFRIGERATION MACHINES, PLANTS OR SYSTEMS; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS
    • F25B2321/00Details of machines, plants or systems, using electric or magnetic effects
    • F25B2321/002Details of machines, plants or systems, using electric or magnetic effects by using magneto-caloric effects
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02BCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO BUILDINGS, e.g. HOUSING, HOUSE APPLIANCES OR RELATED END-USER APPLICATIONS
    • Y02B30/00Energy efficient heating, ventilation or air conditioning [HVAC]

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Power Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Hard Magnetic Materials (AREA)

Abstract

同一の化学量論を有するが異なるキュリー温度を有する少なくとも2個の磁気熱量材料を含むキット、同一の化学量論を有するが異なるキュリー温度を有する少なくとも2個の磁気熱量材料を含む磁気熱量再生器、および同一の化学量論を有するが異なるキュリー温度を有する少なくとも2個の磁気熱量材料を製造する方法が記載される。

Description

本発明は、同一の化学量論を有するZ個(Zは少なくとも2である)の磁気熱量材料を含むキットであって、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる、キットに関し;同一の化学量論を有するZ個(Zは少なくとも2である)の磁気熱量材料を含む磁気熱量再生器であって、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる、磁気熱量再生器に関し;同一の化学量論を有するZ個(Zは少なくとも2である)の磁気熱量材料を製造する方法であって、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる、方法に関する。
用語「磁気熱量材料」は、磁気熱量効果、すなわち前記材料を変化する外部磁場に曝露することによって引き起こされる温度変化を呈する材料を意味する。磁気熱量材料のキュリー温度付近で前記磁気熱量材料に外部磁場を印加すると、磁気熱量材料のランダムに配向された磁気モーメントの整列が生じ、磁場相転移が生じる。このことは磁界誘発による材料のキュリー温度の上昇として説明することもできる。この磁気相転移は磁気エントロピーの損失を意味し、断熱条件下では、磁気エントロピーの損失を補償する磁気熱量材料の格子エントロピーおよび電子エントロピーの合計の増加をもたらす(その結果、その全エントロピーは一定のままとなる)。したがって、断熱条件下で外部磁場を印加すると、格子振動が増大し、磁気熱量材料の加熱が起こる。
磁気熱量効果の技術的応用において、発生した熱は、熱伝達媒体(例えば、水)の形態によるヒートシンクへの熱伝達によって磁気熱量材料から除去される。その後に外部磁場を除去すると、キュリー温度が低下して通常の値に戻り、従って、磁気モーメントがランダム配置に戻る。これにより、磁気エントロピーが増大し、磁気エントロピーの増大を補償する磁気熱量材料の格子エントロピーおよび電子エントロピーの和が減少する。したがって、断熱条件下で外部磁場を除去すると、格子振動が減少し、磁気熱量材料の冷却が起こる。磁化と消磁を含む上記のプロセスサイクルは通常、技術的応用において周期的に実行される。
再生器(再生熱交換器とも呼ばれる)は、少なくとも1種の蓄熱材料、および蓄熱材料に熱を伝達できる高温の熱伝達流体と蓄熱材料から熱を吸収できる低温の熱伝達流体に交互に蓄熱材料を接触させるための固定具を含むタイプの熱交換器である。高温の熱伝達流体を蓄熱材料に接触させると、高温の熱伝達流体からの熱が蓄熱材料に伝達されて間欠的に蓄積される。次に、その熱を熱交換材料に伝達した熱伝達流体は、蓄熱材料から熱を吸収する低温の熱伝達流体と置き換えられる。
磁気熱量再生器において、蓄熱材料の機能は、磁気熱量効果を示す材料(磁気熱量材料)によって実現される。磁気熱量再生器は、前記磁気熱量材料に磁場を反復して印加し、前記磁場を除去するための手段を含む。技術的応用において、磁気熱量再生器は通常、高温側熱交換器と低温側熱交換器との間に配置される。磁気熱量再生器全体にまたがる温度勾配は、低温側熱交換器と高温側熱交換器との間に確立され、低温側熱交換器から高温側熱交換器へと熱が「ポンピング」される。
磁気再生器サイクルは、磁場が印加されていない状態から始まる、4つの段階で構成される。第1に、磁場を印加すると、磁気熱量効果によって磁気再生器が加熱され、それによって磁気熱量蓄冷器内の低温の熱伝達流体が加熱される。第2に、熱伝達流体は、低温側熱交換器から高温側熱交換器への方向に磁気熱量再生器を通って流れる。次に、熱伝達流体から高温側熱交換器へと熱が放出される。第3に、磁場を除去すると、磁気熱量効果によって磁気再生器が冷却され、それによって磁気熱量再生器内の高温の熱伝達流体が冷却される。最後に、熱伝達流体は、高温側熱交換器から低温側熱交換器への方向に磁気熱量再生器を通って流れる。冷却された熱伝達流体は、低温側熱交換器から熱を奪い、低温側熱交換器は、他の物体またはシステムを冷却するために使用することができる。
材料の磁気熱量効果は温度と共に変化し、前記材料のキュリー温度付近で最大となることが知られている。したがって、磁気熱量再生器の性能を最適化するために、磁気熱量再生器全体にまたがる伝熱流体の流路の各位置において、キュリー温度が、上記の温度勾配によって前記位置について決定された温度と一致することが望ましい。これらの好ましい条件に近づけるために、磁気熱量再生器は、異なるキュリー温度を有する3以上の異なる磁気熱量材料、好ましくは5〜100の異なる磁気熱量材料を含むカスケードを含むことが好ましく、ここで、前記カスケードにおいて、前記磁気熱量材料は、キュリー温度の上昇順または降下順に連続して配置され、すなわち、最も高いキュリー温度を有する磁気熱量材料がカスケードの一方の末端に配置され、2番目に高いキュリー温度を有する磁気熱量材料が配置され、以下同様となり、最も低いキュリー温度を有する磁気熱量材料がカスケードの反対側の末端に配置される。最も高いキュリー温度を有する磁気熱量材料が位置するカスケードの末端は、磁気熱量カスケードの高温側に対応し、最も低いキュリー温度を有する磁気熱量材料が位置するカスケードの末端は、磁気熱量カスケードの低温側に対応する。
このような磁気熱量カスケードにおいて、各磁気熱量材料(最初のものを除く)のそのキュリー温度に近い温度までの、加熱に対応した冷却が、先行する磁気熱量材料によって引き起こされ、各磁気熱量材料(最後のものを除く)は、後続の磁気熱量材料のそのキュリー温度に近い温度までの、加熱に対応した冷却を引き起こす。言い換えれば、第1の磁気熱量材料が、第2の磁気熱量材料を、第2の磁気熱量材料のキュリー温度に近い温度まで、加熱に対応して冷却し、カスケードに含まれる任意の更なる磁気熱量材料についても同様となる。このようにすると、達成される冷却効果は、単一の磁気熱量材料を含む磁気熱量再生器と比較して、大幅に増大し得る。
異なる温度で磁気熱量効果を呈する、3つ以上の異なる磁気熱量材料、好ましくは5〜100個の異なる磁気熱量材料を含むカスケードであって、前記磁気熱量材料がキュリー温度の上昇順または降下順に連続して配置されたカスケードは、米国特許出願公開第2014/0202171A1号および米国特許第8,763,407B2号に記載されている。ここでは、キュリー温度の変動は、カスケード内の磁気熱量材料の化学量論を変えることによって実現される。好ましくは、そのようなカスケードにおいて、2つの連続する磁気熱量材料間のキュリー温度の差は0.5〜6Kである。
しかし、キュリー温度は化学量論の変化に非常に敏感であるので、6K以下の幅でキュリー温度の所望の変動を実現するには、化学量論の非常に小さな変動が必要とされる。残念ながら、それぞれの特定のキュリー温度に対する所望の化学量論を、要求される精度で達成することは、極めて困難であり、化学量論が異なる多数の磁気熱量材料の製造は、対応する多数の異なる前駆体混合物を製造し処理する必要があるため、複雑である。
H.Yuら(Journal of Alloys and Compounds、649巻(2015)、1043〜1047頁)は、Mn1.15Fe0.850.52Si0.450.03のキュリー温度のような構造および磁気熱量特性に対する熱処理の影響を調べた。1つの磁気熱量装置内で異なるキュリー温度を有する組成物Mn1.15Fe0.850.52Si0.450.03の材料の組み合わせは、この論文では検討されていない。
関連する従来技術はCN104357727Aにも記載されている。
米国特許出願公開第2014/0202171A1号 米国特許第8,763,407B2号 CN104357727A
H.Yuら、Journal of Alloys and Compounds、649巻(2015)、1043〜1047頁
驚くべきことに、下記の式(I)によって定義される化学量論を有する磁気熱量材料について、前記磁気熱量材料の製造中に行われる熱処理の温度を変えることによって、キュリー温度を極めて正確に調整することができることが見出された。この知見により、同一の化学量論で異なるキュリー温度を有する複数の磁気熱量材料の製造が可能となり、その結果、上述の困難が排除される。
本発明の一態様によれば、式(I)
(MnFe1−x2+uSi (I)
による組成のZ個の磁気熱量材料を含むキットであって、
式中、
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0≦z≦0.15、好ましくは0.003≦z≦0.12
0≦r≦0.1、好ましくは0.005≦r≦0.07
0≦w≦0.1、好ましくは0.01≦w≦0.08
(y+v+w)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
(y+v+w+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1であり、
Z≧2であり、
u、x、y、v、z、r、およびwは、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて同一であり、
ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる、キットが提供される。
式(I)による組成の磁気熱量材料は、本明細書において、式(I)による磁気熱量材料とも呼ばれる。
図1は、表3に列挙された試料に関する、1Tの磁場下における2K/分の速度での加熱および冷却中の温度の関数としての磁化を示す。 図2は、表3に列挙した試料について、1T(図2a)および2T(図2b)の磁場変化下における磁気エントロピー変化の温度依存性を示す。 図3は、表4に列挙された試料に関する、1Tの磁場下における2K/分の速度での加熱および冷却中の温度の関数としての磁化を示す。 図4は、表4に列挙した試料に関する、1T(図a)および2T(図4b)の磁場変化下における磁気エントロピー変化の温度依存性を示す。
したがって、本発明によるキットは、式(I)で定義される同一の化学量論を有する、Z個の少なくとも2つの磁気熱量材料を含み、ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料の他のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる。本明細書で使用するとき、式(I)によって定義される同一の化学量論とは、前記キットにおける前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて、変数x、u、y、v、r、zおよびwが同じ値を有する(すなわち、xは1番目からZ番目までの材料の全てに対して同じであり、uは1番目からZ番目までの材料の全てに対して同じであり、yは1番目からZ番目までの材料の全てに対して同じであり、vは1番目からZ番目までの材料の全てに対して同じであり、rは1番目からZ番目までの材料の全てに対して同じであり、zは1番目からZ番目までの材料の全てに対して同じであり、wは1番目からZ番目までの材料の全てに対して同じである)ことを意味する。言い換えれば、本発明によるキットにおけるZ個の磁気熱量材料は、上記で定義された式(I)の範囲内に入る1つの同じ実験式によって定義される。
本発明によるキットにおいて、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれは、式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれから分離され、式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のいずれかと相互混合することが防止された態様で提供される。これは、式(I)に従う前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれを別個のパッケージもしくは容器中で提供するか、別個の部分品もしくは成形体の形態で(例えば、プレート、シートもしくはブロックの形態で)提供することにより、または別の好適な手段により、達成され得る。
式(I)による磁気熱量材料の化学量論を決定するための方法は、当該技術分野において公知であり、蛍光X線分析(XRF)、中性子回折、波長分散X線分析(WDX)、および誘導結合プラズマ(ICP)のような湿式化学的方法を含む。好ましくは、式(I)による磁気熱量材料の化学量論を決定するための方法はICPである。
一般に、式(I)による磁気熱量材料中の元素の比率は、前記磁気熱量材料を製造するために使用される前駆体の混合物中の前記元素の比率に実質的に類似している(さらなる詳細については下記を参照されたい)。したがって、式(I)による磁気熱量材料中の元素の比率は、前記磁気熱量材料を製造するために使用される前駆体の混合物中の前記元素の比率によって制御し、その比率から導き出すことができる。
キュリー温度Tcは、示差走査熱量測定(DSC)ゼロ磁界測定から、比熱容量が最大値になる磁気相転移の領域の温度として、または印加磁場下での温度の関数としての磁化の記録から、dM/dTが最大値になる温度として、決定される。
好ましくは、本発明によるキットにおいて、Z(同一の化学量論を有するが異なるキュリー温度を有する磁気熱量材料の数)は、3〜100、好ましくは5〜100の範囲である。
好ましくは、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料は、220K〜330K、好ましくは250K〜320K、さらに好ましくは290K〜320Kの範囲のキュリー温度を有する。
上記で定義した式(I)による組成の磁気熱量材料、および前記磁気熱量材料を製造する方法は、上記の通り知られている。
マンガン、鉄、ケイ素およびリンを含有する磁気熱量材料は、WO2011/083446A1および米国特許出願公開第2011/0220838A1号に開示されている。これらの特許出願の実施例は、化学量論のわずかな変動がキュリー温度の著しい変化をもたらすことを示している。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、およびホウ素を含有する磁気熱量材料は、WO2015/018610、WO201/018705およびWO2015/01867に開示されている。これらの出願の実施例は、ホウ素含有量のわずかな変動がキュリー温度の著しい変化をもたらすことを示している。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、窒素および任意にホウ素を含有する磁気熱量材料は、WO2017/072334A1として公開された未公開欧州特許出願第15192313.3−1556号に開示されている。この特許出願の実施例は、窒素含有量のわずかな変動がキュリー温度の著しい変化をもたらすことを示している。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、炭素、および任意にホウ素および窒素の一方または両方を含有する磁気熱量材料は、未公開欧州特許出願第16173919.8−1556号に開示されている。この特許出願の実施例は、炭素含有量のわずかな変動がキュリー温度の著しい変化をもたらすことを示している。
したがって、これらの文献のいずれも、上記式(I)による磁気熱量材料を開示しているが、化学量論以外の何らかの手段によってキュリー温度を調節または制御できることを開示または示唆してはいない。しかし、上記の特許出願の実施例により示されるように、化学量論のわずかな変動がキュリー温度の著しい変化を引き起こす可能性があるので、この手法は上述の欠点を有する。
理論に拘泥するものではないが、式(I)による組成の磁気熱量材料がその製造中に供される熱処理の温度を変えると、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれ存在し得る異なる相の分布に影響を及ぼすことがあり、さらには、相の前記分布は、キュリー温度に影響を及ぼし、典型的に、熱ヒステリシスおよびエントロピー変化のような磁気熱量材料の技術的応用に関連する他のパラメーターにも影響を与えると考えられている。
式(I)による組成を有する磁気熱量材料では、以下の相:
(i)空間群P−62mを有する結晶格子を有する組成MXの六方晶構造を有する相
(ii)空間群Fm−3mを有する結晶格子を有する組成MXの立方晶構造を有する相
(iii)空間群P6/mcmを有する結晶格子を有する組成Mの六方晶構造を有する相
のうち1つ、2つ、または全てが存在してもよく、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表す。
相(ii)および(iii)は二次相とも呼ばれる。相(i)、(ii)および(iii)の存在は、X線回折または電子線二次回折(EBSD)によって確認することができる。EBSDにより、走査型電子顕微鏡写真に見られる粒子に結晶構造を直接割り当てることができる。
実験式(全体的な式)である式(I)によって定義される磁気熱量材料の化学量論は、前記磁気熱量材料中に存在する全ての相(i)、(ii)および(iii)にわたり平均化されると理解される。
通常、磁気熱量材料の製造において、焦点は、磁気熱量効果を最大にするために、相(i)の含有量を最大にすることにある。しかし、驚くべきことに、磁気熱量特性の全てが必ずしも相(i)の含有量が最大になる位相分布においてそれらの最大値を有するわけではないので、上記で定義した特定量の二次相(ii)および(iii)の一方または両方を含むと、対応して相(i)の含有量が減少するにもかかわらず、所望の磁気熱量効果を損なわないことが見出された。したがって、主相(i)ならびに二次相(ii)および(iii)の含有量を調節することは、キュリー温度を調節し、熱ヒステリシスおよびエントロピー変化のような、磁気熱量材料の技術的応用に関連する他のパラメーターを調節するための手段を提供する。
本発明による好ましいキットにおいて、
式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれは、
(i)80%〜100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
(ii)0%〜20%の質量分率の、空間群Fm−3mを有する結晶格子を持つ組成MXの立方晶構造を有する相
および
(iii)0%〜20%の質量分率の、空間群P6/mcmを有する結晶格子を持つ組成Mの六方晶構造を有する相
を含み、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表し、
前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて、相(i)、(ii)および(iii)の質量分率の合計は100%であり、
式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれは、式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれに対して、相(i)、(ii)および(iii)のうちの少なくとも2つの質量分率が異なる。
したがって、本発明によるキットは、式(I)によって定義される同一の化学量論を有するZ個の少なくとも2つの磁気熱量材料を含み、ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれは、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料の他のそれぞれに対して、上記で定義した相(i)、(ii)および(iii)のうち少なくとも2つの質量分率が異なる。
相(i)、(ii)および(iii)の質量分率は、X線回折データのリートベルト精密化によって決定することができる。
本発明による好ましいキットにおいて、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のうち少なくとも1種は、
(i)80%〜<100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相、および
(ii)>0%〜20%の質量分率の、空間群Fm−3mを有する結晶格子を持つ組成MXの立方晶構造を有する相
を含み、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表し、
式(I)による前記磁気熱量材料において、相(i)および(ii)の質量分率の合計は100%である。
あるいは、本発明による好ましいキットにおいて、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のうち少なくとも1種は、
(i)80%〜<100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相、および
(iii)>0%〜20%の質量分率の、空間群P6/mcmを有する結晶格子を持つ組成Mの六方晶構造を有する相
を含み、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表し、
式(I)による前記磁気熱量材料において、相(i)および(iii)の質量分率の合計は100%である。
あるいは、本発明による好ましいキットにおいて、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のうち少なくとも1種は、
(i)80%〜<100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
(ii)>0%〜20%の質量分率の、空間群Fm−3mを有する結晶格子を持つ組成MXの立方晶構造を有する相
および
(iii)>0%〜20%の質量分率の、空間群P6/mcmを有する結晶格子を持つ組成Mの六方晶構造を有する相
を含み、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表し、
式(I)による前記磁気熱量材料において、相(i)、(ii)および(iii)の質量分率の合計は100%である。
さらに、上記の任意のタイプの本発明によるキットは、
(i)100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
を含む、式(I)による1種の磁気熱量材料を含んでもよく、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表す。
本明細書で用いるとき、
(i)100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
を含む、式(I)による磁気熱量材料は、上記で定義した二次相(ii)および(iii)のいずれも含まない、式(I)による磁気熱量材料である。
したがって、ある場合には、本明細書に記載の本発明によるキットは、
(i)100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
を含む、式(I)による1種の磁気熱量材料を含み、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表す。
より具体的には、本発明による、そのような種類の好ましいキットは、式(I)によるZ個の磁気熱量材料を含み、ここで、
式(I)による前記Z個の磁気熱量材料の1種は、
(i)100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
を含み、
式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれは、
(i)80%〜<100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
(ii)≦20%の質量分率の、空間群Fm−3mを有する結晶格子を持つ組成MXの立方晶構造を有する相
および
(iii)≦20%の質量分率の、空間群P6/mcmを有する結晶格子を持つ組成Mの六方晶構造を有する相
を含み、
式(I)による前記Z−1個の磁気熱量材料のそれぞれにおいて、前記相(ii)および(iii)の少なくとも一方の質量分率は、>0であり、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表し、
式(I)に従う前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて、相(i)、(ii)および(iii)の質量分率の合計は100%であり、
式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれは、式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれに対して、相(i)、(ii)および(iii)のうちの少なくとも2つの質量分率が異なる。
他の場合において、本明細書に記載の本発明によるキットは、
(i)100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
を含む、式(I)による磁気熱量材料を含まず、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表す。
より具体的には、本発明による、そのような種類の好ましいキットは、式(I)によるZ個の磁気熱量材料を含み、ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれは、
(i)80%〜<100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
(ii)≦20%の質量分率の、空間群Fm−3mを有する結晶格子を持つ組成MXの立方晶構造を有する相
および
(iii)≦20%の質量分率の、空間群P6/mcmを有する結晶格子を持つ組成Mの六方晶構造を有する相
を含み、
式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれにおいて、前記相(ii)および(iii)の少なくとも一方の質量分率は、>0であり、
各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表し、
式(I)に従う前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて、相(i)、(ii)および(iii)の質量分率の合計は100%であり、
式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれは、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれに対して、相(i)、(ii)および(iii)のうち少なくとも2つの質量分率が異なる。
驚くべきことに、二次相(ii)および(iii)の両方は、相(i)とは対照的に、非金属元素Xが占める位置に有意な量のPを示さないことが見出された。このことにより、PとSiとの間の比率の幅広い変動が可能になる。さらに、Siの含有量は、式(I)によって定義される平均化学量論と比較して、前記二次相において富化される。したがって、二次相の総量は、相(i)中の非金属位置にどれだけのSiが残存するかを決定し、さらには、重要な磁気熱量特性Tを主に決定する。
さらに好ましくは、上記のいずれかのタイプによるキットにおいて、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のうち少なくとも1種は、
− 前記相(i)中のリンの原子分率と
− 前記相(ii)中のリンの原子分率と
の比が、3以上、好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、
かつ/または
− 前記相(i)中のリンの原子分率と
− 前記相(iii)中のリンの原子分率と
の比が、3以上、好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、
ここで、各場合におけるリンの原子分率は、前記相中のFe、Mn、P、Si、C、NおよびBの原子数の合計を基準とする。
さらに好ましくは、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のうち少なくとも1種において、
前記相(ii)中で、リンの原子分率は、前記相(ii)中のFe、Mn、P、Si、C、NおよびBの原子数の合計を基準として、5原子%以下、好ましくは4原子%、好ましくは3原子%以下であり、
かつ/または
前記相(iii)中で、リンの原子分率は、前記相(iii)中のFe、Mn、P、Si、C、NおよびBの原子数の合計を基準として、5原子%以下、好ましくは4原子%、好ましくは3原子%以下である。
相(i)、(ii)および(iii)中のリンの原子分率は、エネルギー分散型X線分光分析法(EDX)、二次イオン質量分析法(SIMS)、広域X線吸収微細構造(EXAFS)、X線吸収端近傍構造(XANES)またはレーザー誘起プラズマ分光法(LIPS)によって決定することができる。磁気熱量材料内の相の粒径が1μmを下回らない限り、EDXが最も便利であり十分な感度を有する方法である。極微細磁気熱量材料は、SIMSによって分析することができる。
上記の相(i)、(ii)および(iii)は、Hoeglinら、RSC Adv.、2015、5巻、8278〜8284頁に、FeMnP1−xSi(0≦x≦1)という系に関して記載されている。ここで、図1による相図は、x=0.50において、「FeP型」と呼ばれる単相から、「FeP型」、「FeSi型」および「MnSi型」と呼ばれる共存相を有する三相領域への転移を示している。
Hoeglinの刊行物は、化学量論を変えずに、組成FeMnP1−xSi(0≦x≦1)の磁気熱量材料における上記の相の分布を変えることによって、キュリー温度を変えることができることを開示していない。実際に、キュリー温度の変動に関しては、化学量論を変化させる周知の手法のみがHoeglinによって開示されている。Hoeglinら、RSC Adv.、2015、5巻、8278〜8284頁は、「Fe2P型」と呼ばれる相と「FeSi型」および「MnSi型」と呼ばれる相との間での、PおよびSiの分布に関するデータを提供していないことにも留意されたい。実際に、FeP型構造がP/Si比の広範囲の変動に耐えることは周知であるので(この点に関しては、Hoeglinらによって研究された広範囲のxを考慮する)、同じことが二次相についても期待できる。
マンガン、鉄、ケイ素およびリンを含有する磁気熱量材料、ならびにそれらの製造方法は、WO2011/083446A1および米国特許出願公開第201/0220838A1号に開示されている。マンガン、鉄、ケイ素およびリンを含有する、式(I)による組成の好ましい磁気熱量材料は、式(Ia)
(MnFe1−x2+uSi (Ia)
による組成を有し、
式中、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0.95≦(y+v)≦1.05、好ましくは0.98≦(y+v)≦1.02である。
マンガン、鉄、ケイ素、リンおよびホウ素を含有する磁気熱量材料、ならびにそれらの製造方法は、WO2015/018610、WO201/018705およびWO 2015/01867に開示されている。マンガン、鉄、ケイ素、リンおよびホウ素を含有する、式(I)による組成の好ましい磁気熱量材料は、式(Ib)
(MnFe1−x2+uSi (Ib)
による組成を有し、
式中、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0.005≦w≦0.1、好ましくは0.01≦w≦0.08
0.95≦(y+v+w)≦1.05、好ましくは0.98≦(y+v+w)≦1.02である。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、窒素および任意にホウ素を含有する磁気熱量材料、ならびにそれらの製造方法は、WO2017/072334A1として公開された未公開欧州特許出願第15192313.3−1556号に開示されている。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、窒素および任意にホウ素を含有する好ましい磁気熱量材料は、式(Ic)
(MnFe1−x2+uSi (Ic)
による組成を有し、
式中、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0.001≦r≦0.1、好ましくは0.005≦r≦0.07
0≦w≦0.1、好ましくは0.01≦w≦0.08
(y+v+w)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
(y+v+w+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1である。
マンガン、鉄、ケイ素、リンおよび窒素を含有する、式(I)による組成の好ましい磁 気熱量材料は、式(Id)
(MnFe1−x2+uSi (Id)
による組成を有し、
式中、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0.001≦r≦0.1、好ましくは0.005≦r≦0.07
(y+v)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
(y+v+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1である。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、窒素およびホウ素を含有する、式(I)による組成の好ましい磁気熱量材料は、
式(Ie)
(MnFe1−x2+uSi (Ie)
による組成を有し、
式中、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0.001≦r≦0.1、好ましくは0.005≦r≦0.07
0.005≦w≦0.1、好ましくは0.01≦w≦0.08
(y+v+w)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
(y+v+w+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1である。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、炭素、ならびに任意にホウ素および窒素の一方または両方を含有する磁気熱量材料、ならびにそれらの製造方法は、未公開欧州特許出願第16173919.8−1556号に開示されている。
マンガン、鉄、ケイ素、リンおよび炭素を含有する、式(I)による組成の好ましい磁気熱量材料は、式(If)
(MnFe1−x2+uSi (If)
による組成を有し、
式中、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0.001≦z≦0.15、好ましくは0.003≦z≦0.12
0.95≦(y+v)≦1.05、好ましくは0.98≦(y+v)≦1.02である。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、炭素およびホウ素を含有する、式(I)の組成の好ましい磁気熱量材料は、式(Ig)
(MnFe1−x2+uSi (Ig)
の組成を有し、
式中、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0.001≦z≦0.15、好ましくは0.003≦z≦0.12
0.005≦w≦0.1、好ましくは0.01≦w≦0.08
0.95≦(y+v+w)≦1.05、好ましくは0.98≦(y+v+w)≦1.02
である。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、炭素および窒素を含有する、式(I)による組成の好ましい磁気熱量材料は、式(Ih)
(MnFe1−x2+uSi (Ih)
による組成を有し、
式中、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0.001≦z≦0.15、好ましくは0.003≦z≦0.12
0.001≦r≦0.1、好ましくは0.005≦r≦0.07
(y+v)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
(y+v+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1である。
マンガン、鉄、ケイ素、リン、炭素、ホウ素および窒素を含有する、式(I)による組成の好ましい磁気熱量材料は、式(Ii)
(MnFe1−x2+uSi (Ii)
による組成を有し、
式中、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0.001≦z≦0.15、好ましくは0.003≦z≦0.12
0.001≦r≦0.1、好ましくは0.005≦r≦0.07
0.005≦w≦0.1、好ましくは0.01≦w≦0.08
(y+v+w)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
(y+v+w+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1である。
本発明による好ましいキットは、上記に定義された好ましい特徴の2つ以上の組み合わせを示すものである。
本発明の第2の態様によれば、式(I)
(MnFe1−x2+uSi (I)
による組成のZ個の磁気熱量材料を含む磁気熱量再生器であって、
式中、
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0≦z≦0.15、好ましくは0.003≦z≦0.12
0≦r≦0.1、好ましくは0≦r≦0.07
0≦w≦0.1、好ましくは0≦w≦0.08
(y+v+w)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
(y+v+w+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1であり、
Z≧2であり、
u、x、y、v、z、r、およびwは、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて同一であり、
ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる、磁気熱量再生器が提供される。
したがって、本発明による磁気熱量再生器は、式(I)で定義される同一の化学量論を有する、Z個の少なくとも2つの磁気熱量材料を含み、ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料の他のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる。本明細書で使用するとき、式(I)によって定義される同一の化学量論とは、前記磁気熱量再生器における前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて、変数x、u、y、v、r、zおよびwが同じ値を有することを意味する。言い換えれば、本発明による磁気熱量再生器のZ個の磁気熱量材料は、上記に定義された式(I)の範囲内に入る1つの同じ実験式によって定義される。
好ましくは、本発明による磁気熱量再生器は、式(I)
(MnFe1−x2+uSi (I)
による組成のZ個の磁気熱量材料を含むカスケードを含み、
式中、
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0≦z≦0.15、好ましくは0.003≦z≦0.12
0≦r≦0.1、好ましくは0≦r≦0.07
0≦w≦0.1、好ましくは0≦w≦0.08
(y+v+w)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
(y+v+w+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1であり、
Z≧3であり、
u、x、y、v、z、rおよびwは、式(I)による組成の前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて同一であり、
ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なり、
前記カスケードにおいて、式(I)による前記磁気熱量材料は、キュリー温度の上昇順または降下順に連続して配置されている。
したがって、本発明による磁気熱量再生器は、式(I)で定義される同一の化学量論を有する、Z個の少なくとも2つの磁気熱量材料を含むカスケードを含み、ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料の他のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる。本明細書で使用するとき、式(I)によって定義される同一の化学量論とは、前記カスケードにおける前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて、変数x、u、y、v、r、zおよびwが同じ値を有することを意味する。言い換えれば、本発明による磁気熱量再生器のカスケードにおけるZ個の磁気熱量材料は、上記に定義された式(I)の範囲内に入る1つの同じ実験式によって定義される。
カスケード内の異なる磁気熱量材料の数およびそれらのキュリー温度は、所望の用途で扱われる温度範囲に応じて選択される。好ましくは、最も高いキュリー温度を有する磁気熱量材料と最も低いキュリー温度を有する磁気熱量材料との間のキュリー温度の差は、前記温度範囲に対応する。
好ましくは、本発明による磁気熱量再生器において、前記カスケード内で、Z(同一の化学量論を有するが異なるキュリー温度を有する磁気熱量材料の数)は、3〜100、好ましくは5〜100の範囲である。
好ましくは、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料は、220K〜330K、好ましくは250K〜320K、さらに好ましくは290K〜320Kの範囲のキュリー温度を有する。
好ましくは、前記カスケードにおいて、式(I)による2つの連続する磁気熱量材料間の温度差は、それぞれの場合において、0.5K〜6K、好ましくは0.5K〜4K、さらにより好ましくは0.5K〜2.5Kの範囲である。
前記カスケード内では、複数の連続する磁気熱量材料は、例えば、複数のプレート、シート、層、成形体(好ましくは、前記成形体を通って延びて熱伝達流体の流れを可能にする、複数の通路、例えばチャネルを示す成形体)、多孔成形体(例えば、式(I)の組成を有する磁気熱量材料の複数の粒子を一緒に焼結するか、式(I)の組成を有する磁気熱量材料の複数の粒子を結合剤により一緒に接着することによって得られる、連続気泡フォームまたは多孔体)、または式(I)による組成を有する磁気熱量材料の複数の個々の粒子をそれぞれ含み、ここで、粒子は互いに結合していない、充填層の形態で、任意の好適な形状で存在し得る。本明細書に記載の成形体および充填層を製造するために、特定の場合において、式(I)による組成を有する磁気熱量材料の粒子は、球形または球形に近い形状を有することが好ましい。
前記カスケード内で、異なるキュリー温度を有する前記磁気熱量材料は、好ましくは0.05mm〜3mm、より好ましくは0.1mm〜0.5mmの距離だけ互いに分離され、それによって他の磁気熱量材料の成分による個々の磁気熱量材料のクロスコンタミネーションを防いでいる。異なる磁気熱量材料間の中間空間は、1種または複数の断熱材料により、少なくとも90%程度、好ましくは完全に、充たされていることが好ましい。
断熱材料は、任意の好適な材料から選択されてよい。好ましい断熱材料は、低い導電率および低い熱伝導率を示し、それによって、渦電流および高温側から低温側への熱伝導による熱損失の発生を防止する。前記断熱材料は、高い機械的強度と良好な電気的および断熱的作用とを兼ね備えていることが好ましい。断熱材料の高い機械的強度は、磁場への導入および磁場からの除去のサイクルから生じる、磁気熱量材料中の機械的応力の低減または吸収を可能にする。磁場への導入および磁場からの取り出しの過程において、磁気熱量材料に作用する力は、強力な磁石のために相当なものになり得る。好適な断熱材料の例は、エンジニアリングプラスチック、セラミック、無機酸化物、ガラスおよびこれらの組み合わせである。
本発明による好ましい磁気熱量再生器は、上記で定義された好ましい特徴の2つ以上の組み合わせを示すものである。
第3の態様において、本発明は、本発明の第2の態様による磁気熱量再生器を製造するための、本発明の第1の態様によるキットを使用する方法用に関する。
前記キットの特定の好ましい特徴に関しては、本発明の第1の態様の文脈において上記に記載された開示が参照される。好ましくは、前記キットは、本発明の第一の態様の文脈において記載された好ましいキットの1つである。
第4の態様では、本発明は、冷凍システム、環境制御ユニット、空調装置、熱磁気発電機、熱交換器、ヒートポンプ、熱磁気アクチュエータおよび熱磁気スイッチからなる群から選択される装置であって、本発明の第2の態様による磁気熱量再生器を備える、装置に関する。
冷凍システム、環境制御ユニット、空調装置、熱交換器、ヒートポンプ、熱磁気アクチュエータおよび熱磁気スイッチは、一般に当技術分野において公知となっている。
熱磁気発電機は、磁気熱量効果によって熱を電気に変換する装置である。磁気熱量材料を加熱および冷却することによって、磁気熱量材料の磁化の強さが変化する。磁化の強さの変化は、前記磁化の強さの変化をコイルに曝露することによって電気に変換することができ、それによって前記コイルに電流を誘導する。
前記磁気熱量再生器の特定の好ましい特徴に関しては、本発明の第2の態様の文脈において上記に記載された開示が参照される。好ましくは、前記磁気熱量再生器は、本発明の第2の態様の文脈において記載された好ましい磁気熱量再生器の1種である。
第5の態様では、本発明は、冷凍システム、環境制御ユニット、空調装置、熱磁気発電機、ヒートポンプ、熱交換器、熱磁気アクチュエータおよび熱磁気スイッチからなる群から選択される装置において、本発明の第2の態様による磁気熱量再生器を使用する方法に関する。
前記磁気熱量再生器の特定の好ましい特徴に関しては、本発明の第2の態様の文脈において上記に記載された開示が参照される。好ましくは、前記磁気熱量再生器は、本発明の第2の態様の文脈において記載された好ましい磁気熱量再生器の1種である。
本発明の第6の態様によれば、式(I)
(MnFe1−x2+uSi (I)
による組成のZ個の磁気熱量材料を製造する方法であって、式中、
0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65、
−0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
0≦z≦0.15、好ましくは0.003≦z≦0.12
0≦r≦0.1、好ましくは0≦r≦0.07
0≦w≦0.1、好ましくは0≦w≦0.08
(y+v+w)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
(y+v+w+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1であり、
Z≧2であり、
u、x、y、v、z、wおよびrは、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて同一であり、
ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なり、
式(I)によるZ個の磁気熱量材料のそれぞれの製造は、
(a)鉄、マンガン、リン、ケイ素、ならびに任意に炭素、窒素およびホウ素のうち1種または複数の元素の原子を含む前駆体の混合物を用意する工程、
(b)工程(a)で用意された混合物を反応させて固体反応生成物を得る工程、
(c)任意に、工程(b)で得られた固体反応生成物を成形して成形固体反応生成物を得る工程、
(d)任意に、工程(b)で得られた固体反応生成物または工程(c)で得られた成形固体反応生成物を1種または複数の炭化水素を含む雰囲気に曝露して浸炭生成物を得る工程、
(e)工程(b)で得られた固体反応生成物または工程(c)で得られた成形固体反応生成物または工程(d)で得られた浸炭生成物を熱処理温度で熱処理して熱処理生成物を得る工程であって、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における前記熱処理温度は、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における熱処理温度とは異なる、工程、
(f)工程(e)で得られた熱処理生成物を冷却して冷却生成物を得る工程、ならびに
(g)任意に、工程(f)で得られた冷却生成物を成形する工程
を含む、方法が提供される。
したがって、本発明による方法において、式(I)で定義される同一の化学量論を有する、Z個の少なくとも2つの磁気熱量材料が製造され、ここで、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料の他のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる。前記方法において、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における前記熱処理温度は、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料の他のそれぞれの製造の工程(e)における熱処理温度とは異なる。本明細書で使用するとき、式(I)によって定義される同一の化学量論とは、前記方法によって製造される前記Z個の材料のそれぞれについて、変数x、u、y、v、r、zおよびwが同じ値を有することを意味する。言い換えれば、本発明による方法によって製造されるZ個の磁気熱量材料は、上記で定義された式(I)の範囲内に入る1つの同じ実験式によって定義される。
驚くべきことに、工程(e)で行われる熱処理の温度を変えることによって、式(I)による磁気熱量材料のキュリー温度を非常に正確に調節できることが見出された。したがって、式(I)に従う前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の上記工程(e)において、式(I)による他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における熱処理温度とは異なる熱処理温度を適用することによって、同一の化学量論において異なるキュリー温度を有する式(I)によるZ個の磁気熱量材料を得ることができる。理論に拘泥するものではないが、工程(e)における熱処理温度を変えることは、式(I)による前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれに存在し得る異なる相の分布に影響を与え、相の前記分布は、キュリー温度に影響を及ぼし、典型的に、熱ヒステリシスおよびエントロピー変化のような磁気熱量材料の技術的応用に関連する他のパラメーターにも影響を及ぼすと現在考えられている。
好ましくは、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における前記熱処理温度は、1000℃〜1200℃、好ましくは1050℃〜1150℃の範囲である。キュリー温度または別の磁気熱量パラメーターの望ましい変動が得られる温度範囲は、前駆体の混合物の組成に依存し、予備試験によって当業者によって決定され得る。
さらに好ましくは、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における前記熱処理温度は、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における熱処理温度に対して、50K以下、好ましくは25K以下、さらに好ましくは10K以下、さらにより好ましくは5K以下、最も好ましくは2K以下異なる。
興味深いことに、上記に定義した範囲内の温度で工程(e)における熱処理の持続時間を(例えば1時間から25時間に)変えることは、通常、熱ヒステリシスとキュリー温度のいずれにも強い影響を与えないことが見出された。ただし、より長い熱処理の後に得られた材料の組成均一性の増大により、強磁性から常磁性への転移は、熱処理の持続時間の増加に伴って、わずかに急激になり、磁気エントロピー変化はわずかに増大する。
工程(a)で提供される前駆体の混合物は、鉄、マンガン、リンおよびケイ素の原子を含む前駆体を含む。任意に、ステップ(a)で用意された混合物は、炭素、ホウ素および窒素からなる群の1種または複数の原子を含む前駆体をさらに含む。工程(a)で用意される前駆体の混合物において、マンガン、鉄、ケイ素およびリンおよび任意に炭素、ホウ素および窒素元素の原子の総量の化学量論比は、前記前駆体の混合物において前記元素の原子の総量の化学量論比が式(I)に対応するように調節される。
前駆体の混合物において、マンガン、鉄、リン、ケイ素、炭素(存在する場合)およびホウ素(存在する場合)は、元素形態および/または前記元素の1種もしくは複数を含む1種もしくは複数の化合物の形態で、好ましくは、前記元素の2種以上からなる1種または複数の化合物の形態で、存在する。窒素が前駆体の混合物中に存在する場合、窒素は、好ましくは、1種または複数の化合物の形態で存在し、ここで、窒素は負の酸化数を有する。
本発明による方法では、所望により、工程(a)において用意される混合物中に炭素原子を含む前駆体の形態で、および/または工程(d)における炭化水素の形態で、炭素原子を提供してよい。
元素状炭素は、グラファイトおよび非晶質炭素からなる群から選択することができる。炭化可能な有機化合物の熱分解から得られる炭素も、炭素原子を提供するための好適な前駆体である。炭化可能な有機化合物は、熱分解(熱および非酸化性雰囲気下での結合の熱化学的開裂、炭化または炭素化とも呼ばれる)によって、主に炭素からなる生成物に変換され得るものである。炭化可能な有機化合物が前駆体の混合物中に提供される場合、工程(b)において熱分解される。
好ましくは、工程(a)において、前駆体の前記混合物は、元素状マンガン、元素状鉄、元素状ケイ素、元素状リン、鉄のリン化物、マンガンのリン化物、ならびに任意に元素状炭素、鉄の炭化物、マンガンの炭化物、炭化可能な有機化合物、元素状ホウ素、鉄の窒化物、鉄のホウ化物、マンガンのホウ化物、アンモニアガスおよび窒素ガスのうち1種または複数からなる群から選択されるさらなる1種の物質を含む。
工程(a)は、任意の好適な方法で実施される。好ましくは、前駆体は粉末であり、かつ/または前駆体の混合物は粉末混合物である。必要であれば、微結晶粉末混合物を得るために、混合物を粉砕する。混合は、後続の工程(b)(下記参照)において固体状態の前駆体の混合物を反応させるための好適な条件も提供する、特定の期間のボールミリングを含み得る。
工程(b)では、工程(a)で用意された混合物を固相および/または液相中で反応させる。したがって、工程(b)は、
(b−1)工程(a)において用意された混合物を固相中で反応させて固体反応生成物を得る工程、
および/または
(b−2)工程(a)で得られた混合物または工程(b−1)で得られた固体反応生成物を液相に転移させ、液相中で反応させて液体反応生成物を得て、液体反応生成物を固相に転移させて固体反応生成物を得る工程
を含む。
本発明による特定の方法では、工程(b)の持続時間全体にわたって固相(b−1)中で反応が行われ、その結果、固体反応生成物が得られる。本発明による他の方法では、反応は専ら液相(b−2)中で行われ、その結果、液体反応生成物が得られ、液体反応生成物が固相に転移して固体反応生成物が得られる。あるいは、工程(b)による反応は、反応が固相中で行われる1つまたは複数の期間、および反応が液相中で行われる1つまたは複数の期間を含む。好ましい場合において、工程(b)における反応は、反応が固相(b−1)中で行われる、第1の期間と、続いて反応が液相(b−2)中で行われ、液体反応生成物が得られ、液体反応生成物が固相に転移して固体反応生成物が得られる、第2の期間とからなる。好ましくは、工程(b)は保護ガス雰囲気下で実施される。
本発明による好ましい方法では、工程(b−1)において、固相中で混合物を反応させることはボールミリングを含み、その結果、粉末形態での固体反応生成物が得られる。
本発明による別の好ましい方法では、工程(b−2)において、混合物を反応させることは、例えば、誘導オーブン内で、好ましくは保護ガス(例えばアルゴン)雰囲気下および/または密閉容器内で、前駆体の混合物を一緒に溶融することによって、液相中で混合物を反応させることを含む。工程(b−2)はまた、前記液体反応生成物を固相に転移させて固体反応生成物を得ることを含む。前記液体反応生成物を固相に転移させることは、任意の好適な方法、例えば、急冷、溶融紡糸または微粒化によって行われる。
急冷とは、工程(b−2)で得られた液体反応生成物を、前記反応生成物の温度が静止空気と接触して低下するよりも速く低下するように、冷却することを意味する。
溶融紡糸の技術は当技術分野において公知である。溶融紡糸では、工程(b−2)で得られた液体反応生成物を冷間回転金属ロールまたはドラム上に噴霧する。通常、ドラムまたはロールは銅製である。噴霧は、噴霧ノズルの上流の加圧または噴霧ノズルの下流の減圧によって達成される。典型的に、回転ドラムまたはロールは冷却される。ドラムまたはロールは、好ましくは10〜40m/秒、特に20〜30m/秒の表面速度で回転する。ドラムまたはロール上で、液体組成物は、好ましくは10〜10K/秒の速度で、より好ましくは少なくとも10K/秒の速度で、特に0.5〜2*10K/秒の速度で冷却される。好ましくは、溶融紡糸は保護ガス(例えばアルゴン)雰囲気下で実施される。溶融紡糸は、得られた反応生成物中でより均一な元素分布を可能にし、より均一な元素分布は磁気熱量効果の改善をもたらす。
微粒化は、工程(b−2)で得られた液体反応生成物を、例えば、ウォータージェット、オイルジェット、ガスジェット、遠心力または超音波エネルギーによって、微少液滴へと機械的に分解することに相当する。液滴は固体化されて基板上に収集される。
本発明による好ましい方法では、工程(b−2)において、得られた液体反応生成物を固相に転移させることは、急冷、溶融紡糸または微粒化によって行われる。
工程(b)において、工程(a)で提供された前駆体の混合物中に存在する任意の炭化可能な有機化合物は、熱分解され、すなわち炭素に転移する。
任意の工程(c)は、任意の好適な方法により実施される。例えば、工程(b)で得られた反応生成物が粉末である場合、工程(c)において、工程(b)で得られた前記粉末は、プレス、モールディング、圧延、押出し(特に熱間押出し)、金属射出成形、テープキャスティング、または付加製造から公知となっている、より最近の粉末ベース技術、例えば、結合剤噴射、3Dスクリーン印刷または選択的レーザー溶融によって成形される。
任意の工程(d)は、鉄合金、特に鋼の、周知のガス浸炭と同様の方法で実施される。工程(d)で使用される炭化水素は、メタン、プロパンおよびアセチレンからなる群から選択されるのが好ましい。好ましくは、工程(b)で得られた固体反応生成物または工程(c)で得られた成形固体反応生成物が曝露される雰囲気は、不活性ガス、例えばアルゴンをさらに含む。
工程(b)で得られた固体反応生成物または工程(c)で得られた成形固体反応生成物が、100μm以下、さらには10μm以下の大きさを有する粒子の形態である場合、通常の浸炭条件下で炭素拡散の深さは数ミリメートルの範囲にあるので、工程(d)により、炭素が比較的均一にロードされた生成物(浸炭生成物)を得ることができる。
浸炭鉄合金は、それらの非浸炭前駆体と比較して、機械的に強く、耐食性が高い。磁気熱量材料に関して、工程(d)は同様の有利な効果を有すると考えられる。
工程(e)は任意の好適な方法によって実施される。工程(e)において、工程(b)で得られた固体反応生成物または工程(c)で得られた成形固体反応生成物または工程(d)で得られた浸炭生成物が曝露される最大温度は、その溶融温度より低い。工程(e)は、構造欠陥を修復し、工程(b)で得られた反応生成物または工程(d)で得られた浸炭生成物を熱力学的に安定化するために、かつ/または材料粒子を一緒に溶解させることにより、工程(c)で得られた成形固体反応生成物を強化し圧縮するために、実行される。
好ましくは、工程(e)において、熱処理は、工程(b)で得られた固体反応生成物または工程(c)で得られた成形固体反応生成物または工程(d)で得られた浸炭生成物を、好ましくは保護ガス雰囲気下で焼結することを含む。
工程(b)が溶融紡糸を含む本発明による特に好ましい方法では、5時間以下の持続時間を有する熱処理で十分であり得る。このことは、溶融紡糸が、得られる反応生成物中にかなり均一な元素分布をもたらすことによる。
工程(e)を実施する好ましい方式では、焼結の段階において、材料粒子を一緒に溶融させ、その結果、成形固体反応生成物の材料粒子間の凝集力を増大させ、気孔率を減少させ、アニーリングの段階において、結晶構造が均質化され、結晶欠陥が修復される。
工程(e)において、焼結生成物および任意に焼鈍処理された生成物を冷却することは、炉を停止すること(「炉冷却」として専門家に知られている)によって実施することができる。
工程(f)は、任意の好適な方法で実施される。本発明による好ましい方法において、工程(f)は、好ましくは200K/秒以下、好ましくは≦100K/秒以下、最も好ましくは25K/秒以下の急冷速度で、工程(e)で得られた熱処理生成物を液体またはガス状媒体と接触させることを含む。
特に好ましくは、工程(e)で得られた熱処理生成物を、油、水または水性液体、例えば、冷却水または氷/水混合物と接触させることにより実施される。急冷のための油は市販されている。例えば、工程(e)で得られた熱処理生成物を、氷冷却水に入れることができる。工程(e)で得られた熱処理生成物を、液体窒素または液体アルゴンなどの過冷却ガスで急冷することも可能である。
工程(g)は、任意の好適な方法で実施される。例えば、工程(f)で得られた冷却生成物が所望の技術的応用に適さない形状(例えば粉末形態)である場合、工程(g)において、工程(f)で得られた前記冷却生成物は、プレス、モールディング、圧延、押出し(特に熱間押出し)または金属射出成形によって、成形体に変換される。あるいは、粉末形態であるか、または粉末形態に変換された、工程(f)で得られた冷却生成物は、結合剤と混合され、この混合物が工程(g)において成形体に変換される。好適な結合剤はオリゴマーおよびポリマー結合系であるが、低分子量有機化合物、例えば糖類を使用することも可能である。混合物の成形は、好ましくは鋳込み、射出成形または押出しによって行われる。結合剤は、成形体中に残留するか、触媒的または熱的に除去され、その結果、モノリス構造またはメッシュ構造を有する多孔体が形成される。
本発明による好ましい方法は、上記に定義された好ましい特徴の2つ以上の組み合わせを示すものである。
式(Ia)による磁気熱量材料
下記式による化学量論量のマンガンチップをFeP粉末および電子グレードSiチップと混合し、得られた前駆体混合物を黒鉛ルツボに入れた。アルゴンガスで不活性化したガス微粒化装置(Phoenix Scientific Instruments、HERMIGA 75)に、ルツボを入れた。ルツボの内容物を誘導加熱し、溶融させて1500℃の温度にした。ストッパーロッドを解除し、溶融材料の噴流がルツボから出るようにして、その上にアルゴンガスの噴流を向けることによって溶融材料を断片化した。得られた液滴を微粒化塔内で降下させ、固化して収集した。分級により微粒化粉末から100〜150μmの範囲の粒径を得た。
キュリー温度Tおよび熱ヒステリシスΔThysは、示差走査熱量測定(DSC)ゼロ磁界測定から決定する。熱ヒステリシスは、冷却モードと加熱モードにおけるTの位置の差である。
パラメーターΔS1.5T(1.5Tの磁場変化での磁気エントロピー変化)は、磁場内示差走査熱量測定によって決定する。この方法は、温度および外部磁場の両方の関数として比熱の測定を可能にする。外部磁場は永久磁石によって発生する。
相(i)、(ii)および(iii)の質量分率は、X線回折データのリートベルト精密化によって決定することができる。
[実施例1]
Mn1.20Fe0.750.49Si0.51
100〜150μmの範囲の粒径を有する、化学量論Mn1.20Fe0.750.49Si0.51の粉末20gの6個の試料を、真空密封した石英アンプル内で熱処理した。アンプルを、表1に示す異なる温度Thtで、それぞれ24時間熱処理し、その後、水中で急冷した。得られた磁気熱量材料の特性を表1に示す。
Figure 2019534376
表1は、1050℃〜1150℃の範囲の熱処理温度の増加に伴う熱ヒステリシスの増加を示しているが、それにもかかわらず、全ての材料の磁気熱量効果は実用的用途に適するものである。ΔS1.5Tの最適値は、84質量%の相(i)の含有率で得られるが、熱ヒステリシスΔThysの最適値は、より高い相(i)の含有率、すなわち97〜99質量%で見出される。したがって、許容できる磁気熱量特性を有する材料は、1025℃〜1150℃の範囲の温度で熱処理を実行することによって得られる。したがって、実施例1は、それぞれ同じ化学量論量Mn1.20Fe0.750.49Si0.51を有し、約240K〜320Kの範囲に及ぶキュリー温度を有する、技術的に有用な6個の磁気熱量材料を含むキットを提供し、ここで、前記6個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、他の5個の磁気熱量材料それぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K異なる。
[実施例2]
Mn1.19Fe0.770.47Si0.53
100〜150μmの範囲の粒径を有する、化学量論Mn1.19Fe0.770.47Si0.53の粉末20gの5個の試料を、真空密封した石英アンプル内で熱処理した。アンプルを、表2に示す異なる温度Thtで、それぞれ24時間熱処理し、その後、水中で急冷した。得られた磁気熱量材料の特性を表2に示す。
Figure 2019534376
表2は、1075℃〜1150℃の範囲で熱処理温度の増加に伴う熱ヒステリシスの増加を示す。ΔS1.5Tの最適値は、80質量%の相(i)の含有率で得られるが、熱ヒステリシスΔThysの最適値は、より高い相(i)の含有率、すなわち91質量%で見出される。したがって、許容できる磁気熱量特性を有する材料は、1025℃〜1150℃の範囲の温度で熱処理を実行することによって得られる。したがって、実施例2は、それぞれ同じ化学量論量Mn1.19Fe0.770.47Si0.53を有し、約240K〜320Kの範囲に及ぶキュリー温度を有する、技術的に有用な5個の磁気熱量材料を含むキットを提供し、ここで、前記5個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、他の2個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K異なる。
式(Ib)による磁気熱量材料
式MnFe0.950.595Si0.330.075により、化学量論量のMn、Fe、B、赤色PおよびSi(それぞれ粉末形態)を混合し、得られた混合物をアルゴン雰囲気中で一定の回転速度380rpmにて10時間ボールミリングした。得られた固体反応生成物を150kgfcm−2の圧力で小型錠剤に圧縮した。200mbarのアルゴン下で、各錠剤を石英アンプル内に密封した後、炉内での熱処理に供した。
第1群の試料HT1〜HT4(それぞれアンプル内に密封された錠剤の形態)を、1373K(1100℃)の温度で、異なる持続時間、すなわち1時間、7時間、20時間および25時間にわたり熱処理に供した。更なる試料HT5を、異なる温度での2つの熱処理工程、すなわち1373Kでの2時間の焼結および1123Kでの20時間の焼鈍を含む熱処理に供した。次いで、試料を室温まで徐冷させた後、1373Kで20時間再焼結して均質な組成物を得た。
試料H1〜H5は比較の役割を果たした。
第2群の試料HT6〜HT9(それぞれアンプル内に密封された錠剤の形態)をそれぞれ異なる温度、すなわち1273K(1000℃)、1323K(1050℃)、1373K(1100℃)および1423K(1150℃)で、それぞれの場合において2時間の持続時間にわたり熱処理した。
全ての試料HT1〜HT9の熱処理については、石英アンプルを炉に移す前に、炉の温度を所望の熱処理温度に設定した。この手法は、より低い温度で形成され得る相(Mn、Fe)Siの形成を排除すると期待される。熱処理の最後に、各試料を水中で急冷した。
測定を行う前に、(Mn、Fe)(P、Si)系材料に固有のバージン効果を完全に除去するために、全ての試料を液体窒素に10〜15分間入れておいた。
Cu−Kα線を用いるPANalytical X−Pert Pro回折計を使用して、X線回折(XRD)により、全ての試料の結晶構造を調べた。全ての試料が強磁性状態にある温度である150Kで、構造解析のためのXRD測定を行った。Fullprofプログラムを使用して、全試料のXRDデータを精密化する。
往復試料オプション(RSO)モードによる市販の超伝導量子干渉装置(SQUID)磁力計(Quantum Design MPMS 5XL)で、磁化の温度依存性の測定を実施した。マクスウェルの関係式
Figure 2019534376
を用いて、全試料の等温磁気エントロピー変化を等磁場磁化
(T)データから導き出す。
[実施例3]
熱処理持続時間の影響(比較例)
1373Kで、異なる持続時間(表3参照)にわたり熱処理に供した試料HT1〜HT5のXRDパターン(図示せず)は、試料をわずか1時間焼鈍した場合でも、全試料が六方晶FeP型構造(空間群P−62m)を有する主相を呈することを示している。アニーリング時間を長くしても追加の反射は観察されず、このことは、FeP型主相の形成が熱処理の持続時間によって影響されないことを示している。より長い熱処理は組成均一性を向上させるように思われる。格子定数cおよびaならびにリートベルト精密化法によって得たc/a比を表3に要約する。結果は、アニーリング時間を長くすると格子定数にわずかな変化があり、c/a比のわずかな減少をもたらすことを示している。
Figure 2019534376
図1に、表3に列挙された試料に関する、1Tの磁場下における2K/分の速度での加熱および冷却中の温度の関数としての磁化を示す。熱処理の持続時間を変えても、熱ヒステリシスとキュリー温度の両方に強い影響がないことは明らかである。さらに、上記で定義した2工程熱処理に供した試料HT5のキュリー温度は、異なる時間にわたり1373Kで焼鈍した全試料HT1〜HT4のキュリー温度とほぼ同じである。アニーリング時間の増加に伴い、強磁性−常磁性(FM−PM)転移はわずかに急激になるが、これは、より長い熱処理によって得られた向上した組成均一性に起因し得る。
図2に、表3に列挙した試料について、1T(図2a)および2T(図2b)の磁場変化下における磁気エントロピー変化の温度依存性を示す。熱処理の持続時間の増加に伴い、磁気エントロピー変化(ΔS)は最初に徐々に増加し、次に20時間の熱処理後に飽和する。熱処理の持続時間を増加させるための、より高い値のΔSは、FM−PM転移の急激さの増大によるものと思われ、さらに、より長い熱処理によって得られた向上した組成均一性によるものである(上記参照)。
[実施例4]
熱処理温度の効果
異なる温度で、異なる持続時間(表4参照)にわたり熱処理に供した試料HT6〜HT9のXRDパターン(図示せず)は、全試料が六方晶FeP型構造(空間群P−62m)を有する主相を呈することを示している。熱処理の温度が上昇するにつれて、回折ピークはより狭くなり、より高い強度を示し、粒径の増加を示唆している。さらに、1423Kで熱処理した試料について、2θ≒22.1°において付加的反射が観察され、このアニーリング温度において新たな相が形成されたことを示している。
Figure 2019534376
図3に、表4に列挙された試料に関する、1Tの磁場下における2K/分の速度での加熱および冷却中の温度の関数としての磁化を示す。結果は、キュリー温度が熱処理温度に非常に敏感であることを示している。1273〜1373Kの温度範囲において、キュリー温度は熱処理の温度の上昇に伴い直線的に上昇する。しかし、キュリー温度は、熱処理の温度が1373Kから1423Kに上昇するにつれて、294Kから278Kに降下する。このことは、より高温でのアニーリング時に新たな相が形成されて、主相の組成にわずかな変化が生じたことに起因し得る。熱処理温度の関数としてのTの変化は、c/a比の変化と一致する(表4参照)。実験結果はまた、より高い温度での熱処理に供した試料が比較的急激なFM−PM転移を呈することをも示している。熱処理温度の上昇に伴う、より急激な転移、比較的高い飽和磁化、およびより小さいヒステリシスは、より高い温度での熱処理に供した試料の向上した組成均一性およびより大きな結晶サイズに起因し得る。
図4に、表4に列挙した試料に関する、1T(図a)および2T(図4b)の磁場変化下における磁気エントロピー変化の温度依存性を示す。1Tおよび2Tの両方の外部磁場変化に関して、等温磁気エントロピー変化(ΔS)は、熱処理温度が1273Kから1323Kに上昇するにつれて著しく増加し、その後、熱処理温度が1373Kに上昇してもほとんど変化しない。しかし、熱処理温度が1423Kにさらに上昇すると、磁気エントロピー変化の有意な増加が生じ、追加の相の存在(XRDパターンにおいて観察される。上記参照)は磁気熱量特性に悪影響を及ばさないことが示唆されている。熱処理温度を上昇させることは、組成均一性を向上させ、より急激な一次磁気相転移をもたらすと思われる。

Claims (15)

  1. 式(I)
    (MnFe1−x2+uSi (I)
    による組成のZ個の磁気熱量材料を含むキットであって、式中、
    0.3≦x≦0.7、好ましくは0.35≦x≦0.65
    −0.12≦u≦0.10、好ましくは−0.05≦u≦0.05
    0.3≦y≦0.75、好ましくは0.4≦y≦0.7
    0.25≦v≦0.7、好ましくは0.3≦v≦0.6
    0≦z≦0.15、好ましくは0.003≦z≦0.12
    0≦r≦0.1、好ましくは0.005≦r≦0.07
    0≦w≦0.1、好ましくは0.01≦w≦0.08
    (y+v+w)≦1.05、好ましくは≦1.02、好ましくは≦1
    (y+v+w+r)≧0.95、好ましくは≧0.98、好ましくは≧1であり、
    u、x、y、v、z、r、およびwは、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて同一であり、
    Z≧2であり、
    ここで、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度は、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれのキュリー温度に対して、少なくとも0.5K、好ましくは少なくとも2K異なる、キット。
  2. 前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれが、
    (i)80%〜100%の質量分率の、空間群P−62mを有する結晶格子を持つ組成MXの六方晶構造を有する相
    (ii)0%〜20%の質量分率の、空間群Fm−3mを有する結晶格子を持つ組成MXの立方晶構造を有する相
    および
    (iii)0%〜20%の質量分率の、空間群P6/mcmを有する結晶格子を持つ組成Mの六方晶構造を有する相
    を含み、
    各場合において、Mは、FeおよびMnからなる群から選択される元素の原子を表し、Xは、P、Si、C、NおよびBからなる群から選択される元素の原子を表し、
    前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれについて、相(i)、(ii)および(iii)の質量分率の合計は100%であり、
    前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれは、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれに対して、相(i)、(ii)および(iii)のうち少なくとも2つの質量分率が異なる、
    請求項1に記載のキット。
  3. 前記Z個の磁気熱量材料が、220K〜330K、好ましくは250K〜320K、さらに好ましくは290K〜320Kの範囲のキュリー温度を有する、請求項1または2に記載のキット。
  4. Zが、3〜100の範囲、好ましくは5〜100の範囲にある、請求項1から3のいずれか一項に記載のキット。
  5. 請求項1から3のいずれか一項に記載のZ個の磁気熱量材料を含み、Z≧2である、磁気熱量再生器。
  6. 磁気熱量再生器が、請求項1から3のいずれか一項に記載のZ個の磁気熱量材料を含むカスケードを含み、Z≧3であり、
    前記カスケードにおいて、前記磁気熱量材料は、キュリー温度の上昇順または降下順に連続して配置されている、請求項5に記載の磁気熱量再生器。
  7. Zが、3〜100の範囲、好ましくは5〜100の範囲にある、請求項5または6に記載の磁気熱量再生器。
  8. 前記カスケードにおいて、2つの連続する磁気熱量材料間の温度差が、それぞれの場合において、0.5K〜6K、好ましくは0.5K〜4K、さらにより好ましくは0.5K〜2.5Kの範囲である、請求項5から7のいずれか一項に記載の磁気熱量再生器。
  9. 請求項5から8のいずれか一項に記載の磁気熱量再生器を製造するための、請求項1から4のいずれか一項に記載のキットを使用する方法。
  10. 冷凍システム、環境制御ユニット、空調装置、熱磁気発電機、熱交換器、ヒートポンプ、熱磁気アクチュエータおよび熱磁気スイッチからなる群から選択される装置であって、請求項5から8のいずれか一項に記載の磁気熱量再生器を備える、装置。
  11. 請求項1から3のいずれか一項に記載のZ個の磁気熱量材料を製造する方法であって、Z≧2であり、
    Z個の磁気熱量材料のそれぞれの製造は、
    (a)鉄、マンガン、リン、ケイ素、ならびに任意に炭素、窒素およびホウ素のうち1種または複数の元素の原子を含む前駆体の混合物を用意する工程、
    (b)工程(a)で用意された混合物を反応させて固体反応生成物を得る工程、
    (c)任意に、工程(b)で得られた固体反応生成物を成形して成形固体反応生成物を得る工程、
    (d)任意に、工程(b)で得られた固体反応生成物または工程(c)で得られた成形固体反応生成物を1種または複数の炭化水素を含む雰囲気に曝露して浸炭生成物を得る工程、
    (e)工程(b)で得られた固体反応生成物または工程(c)で得られた成形固体反応生成物または工程(d)で得られた浸炭生成物を熱処理温度で熱処理して熱処理生成物を得る工程であって、前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における前記熱処理温度は、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における熱処理温度とは異なる、工程、
    (f)工程(e)で得られた熱処理生成物を冷却して冷却生成物を得る工程、ならびに
    (g)任意に、工程(f)で得られた冷却生成物を成形する工程
    を含む、方法。
  12. 前駆体の前記混合物が、元素状マンガン、元素状鉄、元素状ケイ素、元素状リン、鉄のリン化物、マンガンのリン化物、ならびに任意に元素状炭素、鉄の炭化物、マンガンの炭化物、炭化可能な有機化合物、元素状ホウ素、鉄の窒化物、鉄のホウ化物、マンガンのホウ化物、アンモニアガスおよび窒素ガスからなる群から選択されるさらなる物質を含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における前記熱処理温度が、1000℃〜1200℃、好ましくは1050℃〜1150℃の範囲である、請求項11または12に記載の方法。
  14. 前記Z個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における前記熱処理温度が、他のZ−1個の磁気熱量材料のそれぞれの製造の工程(e)における熱処理温度に対して、50K以下、好ましくは25K以下、さらに好ましくは10K以下、さらにより好ましくは5K以下、最も好ましくは2K以下異なる、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 工程(b−2)において、得られた液体反応生成物を固相に転移させることが、急冷、溶融紡糸または微粒化によって行われる、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
JP2019511845A 2016-08-31 2017-08-31 磁気熱量材料のパラメーターの制御変動 Pending JP2019534376A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP16186705 2016-08-31
EP16186705.6 2016-08-31
EP16203485.4 2016-12-12
EP16203485 2016-12-12
PCT/EP2017/071885 WO2018041958A1 (en) 2016-08-31 2017-08-31 Controlled variation of parameters of magnetocaloric materials

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019534376A true JP2019534376A (ja) 2019-11-28

Family

ID=59811298

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019511845A Pending JP2019534376A (ja) 2016-08-31 2017-08-31 磁気熱量材料のパラメーターの制御変動

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20190198206A1 (ja)
EP (1) EP3507814A1 (ja)
JP (1) JP2019534376A (ja)
KR (1) KR20190042679A (ja)
CN (1) CN109791825A (ja)
WO (1) WO2018041958A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2023009607A (ja) * 2021-07-07 2023-01-20 大電株式会社 磁気熱量カスケード

Families Citing this family (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102246139B1 (ko) 2013-06-13 2021-04-30 바스프 에스이 적어도 하나의 물체를 광학적으로 검출하기 위한 검출기
KR102397527B1 (ko) 2014-07-08 2022-05-13 바스프 에스이 하나 이상의 물체의 위치를 결정하기 위한 검출기
JP6637980B2 (ja) 2014-12-09 2020-01-29 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se 光学検出器
WO2016120392A1 (en) 2015-01-30 2016-08-04 Trinamix Gmbh Detector for an optical detection of at least one object
KR102644439B1 (ko) 2015-07-17 2024-03-07 트리나미엑스 게엠베하 하나 이상의 물체를 광학적으로 검출하기 위한 검출기
KR102492134B1 (ko) 2016-07-29 2023-01-27 트리나미엑스 게엠베하 광학 센서 및 광학적 검출용 검출기
JP2019532517A (ja) 2016-10-25 2019-11-07 トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 光学的に検出するための光検出器
JP7241684B2 (ja) 2016-10-25 2023-03-17 トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 少なくとも1個の対象物の光学的な検出のための検出器
KR102452770B1 (ko) 2016-11-17 2022-10-12 트리나미엑스 게엠베하 적어도 하나의 대상체를 광학적으로 검출하기 위한 검출기
US11860292B2 (en) 2016-11-17 2024-01-02 Trinamix Gmbh Detector and methods for authenticating at least one object
CN110392844B (zh) 2017-03-16 2024-03-12 特里纳米克斯股份有限公司 用于光学检测至少一个对象的检测器
WO2019042956A1 (en) 2017-08-28 2019-03-07 Trinamix Gmbh DETECTOR FOR DETERMINING A POSITION OF AT LEAST ONE OBJECT
KR20200040782A (ko) 2017-08-28 2020-04-20 트리나미엑스 게엠베하 적어도 하나의 기하학적 정보를 판정하기 위한 측거기
EP3629453A1 (de) * 2018-09-27 2020-04-01 Siemens Aktiengesellschaft Verfahren zum sintern eines mehrkomponentigen sinterzeugs, elektrische maschine und elektrisches fahrzeug
US20200406356A1 (en) * 2019-06-26 2020-12-31 Haier Us Appliance Solutions, Inc. Method for additively forming a caloric regenerator
CN113470760A (zh) * 2021-05-27 2021-10-01 北京工业大学 一种通过控制共价键的长度来调控具有一级相变磁制冷材料磁热性能的方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2012108924A (ru) 2009-08-10 2013-09-20 Басф Се Теплообменные слои из термомагнитного материала
TW201145319A (en) 2010-01-11 2011-12-16 Basf Se Magnetocaloric materials
US20110220838A1 (en) 2010-03-11 2011-09-15 Basf Se Magnetocaloric materials
US9245673B2 (en) 2013-01-24 2016-01-26 Basf Se Performance improvement of magnetocaloric cascades through optimized material arrangement
WO2015018678A1 (en) 2013-08-09 2015-02-12 Basf Se Magnetocaloric materials containing b
JP6465884B2 (ja) 2013-08-09 2019-02-06 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se Bを含む磁気熱量材料
EP3031058B1 (en) 2013-08-09 2017-09-20 Basf Se Magnetocaloric materials containing b
CN104357727B (zh) * 2014-10-29 2016-10-05 华南理工大学 一种Mn-Fe-P-Si磁制冷材料及其制备方法
KR102563429B1 (ko) 2015-10-30 2023-08-04 테크니쉐 유니버시테이트 델프트 망간, 철, 규소, 인, 및 질소를 포함하는 자기열량 물질

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2023009607A (ja) * 2021-07-07 2023-01-20 大電株式会社 磁気熱量カスケード
JP7236505B2 (ja) 2021-07-07 2023-03-09 大電株式会社 磁気熱量カスケード

Also Published As

Publication number Publication date
WO2018041958A1 (en) 2018-03-08
KR20190042679A (ko) 2019-04-24
CN109791825A (zh) 2019-05-21
US20190198206A1 (en) 2019-06-27
EP3507814A1 (en) 2019-07-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2019534376A (ja) 磁気熱量材料のパラメーターの制御変動
KR102563429B1 (ko) 망간, 철, 규소, 인, 및 질소를 포함하는 자기열량 물질
JP5713889B2 (ja) 熱交換器用の連続気泡多孔性成型物
JP6285463B2 (ja) 材料配列の最適化による磁気熱量カスケードの性能改良
JP6465884B2 (ja) Bを含む磁気熱量材料
TW201001895A (en) Thermomagnetic generator
JP6531098B2 (ja) Bを含む磁気熱量材料
JP6480933B2 (ja) Bを含む磁気熱量材料
JP2013527308A (ja) 磁気熱量材料
KR20120054637A (ko) 다결정 자기열 물질
JP7058879B2 (ja) マンガン、鉄、シリコン、リン及び炭素を含む磁気熱量材料
WO2018060217A1 (en) MAGNETOCALORIC MATERIALS COMPRISING Mn, Fe, ONE OR BOTH OF Ni AND Co, P, Si AND B
JP2019529689A (ja) コバルト、マンガン、及びホウ素を含有する材料を含む磁気熱交換器
Xu et al. Effects of Pr substitution on the hydrogenating process and magnetocaloric properties of La1− 𝑥Pr𝑥Fe11. 4Si1. 6H𝑦 hydrides