JP2019533430A - 操作されたボツリヌス神経毒素 - Google Patents

操作されたボツリヌス神経毒素 Download PDF

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Abstract

ヒトSytII受容体へのボツリヌス神経毒素(BoNT)の結合を改変するアミノ酸変異を有する改変BoNT/B4受容体結合ドメイン(B4−HC)を有するボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチドが、本明細書に開示される。特定の変異及び変異の組み合わせが開示される。単離された改変HC、そのような改変HCを含むポリペプチド、キメラ分子、薬学的組成物、ならびにその製造方法及び使用方法もまた開示される。追加のそのような改変受容体結合ドメインを同定する方法もさらに開示される。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月24日に出願された米国仮出願第62/378,967号の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所によって付与されたNIH 1R21NS082830の下で政府の支援を受けてなされたものである。当該政府は、本発明に一定の権利を有する。
配列表
本明細書は、2017年8月24日に「0342941_0602_SL.TXT」という名前の.txtファイルとして電子的に提出された配列表を参照する。.txtファイルは、2017年8月22日に作成され、サイズは106,905バイトである。配列表の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
発明の分野
本発明は、改変神経毒素の分野、ならびに医学的及び/または審美的障害を治療するためのそれらの使用に関する。
発明の背景
ボツリヌス神経毒素は細菌毒素のファミリーであり、このファミリーは7つの主要な血清型(BoNT/A〜G)を含む(1)。これらの毒素は、ニューロンからの神経伝達物質の放出を遮断することによって作用し、これにより動物及びヒトを麻痺させる。近年、BoNTは、増加する医学的病態のリストを治療するために広く用いられている:微量の毒素を局所注射することで、標的指向された領域においてニューロン活動を弱めることができ、これは多くの医学的病態及び美容上の目的に有益であり得る(7−9)。
BoNT/A及びBoNT/Bは、ヒトでの使用において現在FDA認可を受けた唯一の2つのBoNTである(7−9)。これらは、いかなる配列改変ももたない細菌から精製された毒素である(野生型、WTと定義される)。BoNTの用途が拡大するにつれて、限界及び有害作用が報告されてきた。主な限界は、患者における中和抗体の産生であり、これによりその後の治療が無効となる(11)。BoNTの使用を終えると、患者には、障害を治療/緩和するための有効な方法が他にない場合が多い。抗体応答の可能性は、毒素の用量及び注射の頻度の両方と直接関連がある(11)。したがって、この限界は、主に、比較的高用量の毒素を伴う筋痙攣の治療で起こる。
主な有害作用は、多くの場合、筋痙攣の治療に関連し、美容的用途には関連していない。これは、有害作用が身体の他の領域への毒素の拡散によるところが大きく、毒素拡散の可能性が注射用量と直接関連しているためである。有害作用は、眼瞼下垂及び複視のような一過性の重篤ではない事象から、生命にかかわる事象、さらには死亡まで様々である。2008年にDr. Sidney WolfeによりFDAに対して提出された嘆願書には、16件の死亡を含む合計180件の重篤な有害事象が記述されていた。結果として、FDAは現在、欧州連合によって発令された同様の警告を受けて、全てのBoNT製品に対して、毒素の拡散のリスクを強調する「黒枠警告」を要求している。
中和抗体の生成及び毒素の拡散はいずれも注射用量と直接関連しているため、(同レベルの毒素活性を維持しつつ)毒素用量を下げることが大いに望まれており、このことは個々の毒素分子の有効性を増強させる必要があることを意味している。ニューロンに対する特異性が改善されたこのような改変BoNTはまた、他の細胞型への非特異的侵入によるあらゆる潜在的オフターゲット効果も減少させる。
BoNTは、文献において明確に定義されているそれらの受容体結合ドメイン(BoNT−H、図1A、B)を介して、それらの特異的受容体に結合することによって、ニューロンを標的指向し、これに侵入する。受容体結合は、ニューロンを認識するためのBoNTの有効性及び特異性を左右する。BoNTの受容体結合能を改善することで、ニューロンを標的指向するためのBoNTの有効性及び特異性が高まる。大部分のBoNTに対する受容体は同定されている(図1C)。BoNT/B、D−C及びGは、それらの受容体として2つの相同なシナプス小胞タンパク質、シナプトタグミンI及びII(Syt I/II)を共有するのに対して13−18、BoNT/A、E、D及びFは、別のシナプス小胞タンパク質、SV2を使用する。タンパク質受容体に加えて、BoNTは全て、ニューロン表面上に豊富な脂質共受容体ガングリオシド(図1D)を必要とする27。2つのSytアイソフォームのうち、Syt IIは、BoNT/Bに対する結合親和性がSyt Iよりも約10倍高く、さらにBoNTの標的指向されたニューロンである運動神経終末において発現される主要なアイソフォームである(図2A)。したがって、Syt IIは、BoNT/B、D−C及びGに対する主要な毒素受容体と見なされている一方、Syt Iは運動神経終末においてマイナーな毒素受容体である。これは、齧歯類、及びおそらくは大部分の哺乳動物における場合である。
BoNTはニューロンに対して既に高い特異性を有するとも言えるため、ニューロンに対するそれらの結合をさらに改善することも可能かと問う者もいる。その答えは、ヒトSyt IIが、毒素結合部位内の齧歯類(ラット/マウス)Syt IIからの特有のアミノ酸変化のために、BoNT/Bに対する結合及び受容体としての機能を大幅に低下させていることが最近発見されたことを考慮すると、ヒトに関しては、少なくとも部分的に「可能(Yes)」である。これは、54位(マウスSyt II配列)におけるフェニルアラニン(F)からロイシン(L)への変化である(US9,598,685、図2Bに示される)。配列アラインメントにより、この位置のフェニルアラニンが、カモノハシ、魚類、齧歯類、及びサルを含む脊椎動物にわたって、Syt I及びSyt IIの両方で高度に保存されていることが明らかになった48。ヒト及びチンパンジーのSyt IIのみが、この位置にロイシンを含む。この残基置換の結果として、ヒト及びチンパンジーのSyt IIは、マウスSyt IIと比較して、BoNT/B、D−C、及びGに対する結合が大幅に低下しており(US9,598,685、図2Cに示される)、BoNT/Bの侵入を媒介する上で著しく効率が低い(US9,598,685、図2Dに示される)。ヒト及びチンパンジーのSyt Iは、この同じ位置に依然としてフェニルアラニンを含み、BoNT/B、D−C、及びGと結合することができるため(US9,598,685、図2Eに示される)、ヒトにおけるBoNT/B、D−C、及びGに対する高親和性受容体は、マイナーな受容体Syt Iに限定される。これらの知見は、(異なる受容体と結合する)BoNT/Aよりもはるかに高用量のBoNT/Bが、患者において同レベルの治療効果を達成するために必要であるという臨床的観察について説明する。従来は、これらの観察は、用いられる調製物中の活性神経毒素の割合といった他の理由によるものとされた。BoNT/BからヒトSyt IIと、BoNT/Bから他の種のSyt IIとのこのような結合の違いの最近の観察により、BoNT/Bの異なる残基がヒトSyt IIへの結合に関与している可能性が示唆される。したがって、齧歯類SytIIへの結合に影響すると予測されるBoNT/Bへの配列改変は、ヒトSyt IIへのBoNT/Bの結合に予測不可能な影響を及ぼす可能性がある。
したがって、ヒトニューロンを標的指向するためのその有効性及び特異性を増大させ、治療的用途で必要とされる毒素用量を減らすための方法として、ヒト受容体Syt IIへのBoNT/Bの結合を改善する必要がある。
前述のように、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)神経毒素は、病的状態の治療及び美容目的の両方のための医薬において使用されている。野生型のボツリヌス菌(C.botulinum)血清型B株4のポリペプチドは、ヒトSytII受容体に高親和性で結合しないか、または望ましくないニューロン活動の有効な阻害をもたらさない。改変受容体結合ドメイン(BoNT/B4 H)のヒトSytII受容体への結合能力を劇的に高める血清型B株4(BoNT/B4)受容体結合ドメインへの部位特異的変異が、本明細書に記載される。hSytII受容体への改変BoNT/B4 Hドメインの向上した結合により、ニューロン活動を阻害するドメインを含むBoNTポリペプチドの能力を向上させ、そのようなドメインを含むBoNTポリペプチドを大幅により効果的にし、治療及び美容目的にとって望ましくない免疫応答を引き起こす可能性を低減する。
次いで、一態様では、a)プロテアーゼドメイン、b)プロテアーゼ切断部位、c)移行ドメイン、及びd)ヒトSytIIに結合するClostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)を含む、ボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチドが本明細書に記載される。
一実施形態では、BoNTポリペプチドの改変受容体結合ドメインは、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む。
別の実施形態では、BoNTポリペプチドの改変受容体結合ドメインは、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する1つ以上の置換変異をさらに含む。別の実施形態では、改変(B4−H)は、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C及びY1183Pからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する2つの置換変異を含む。
別の実施形態では、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)ポリペプチドは、血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つは、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L及びQ1191Yからなる群より選択される。
別の実施形態では、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)ポリペプチドは、血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つは、血清型B株4における、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P、Y1199FまたはY1199Lに対応する。
別の実施形態では、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)ポリペプチドは、血清型B株4における、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びW1178Q、Q1191L及びW1178Q、Q1191Y及びW1178Q、Q1191M及びY1183P、Q1191M及びY1183C、Q1191C及びY1183P、Q1191C及びY1183C、Q1191V及びY1183P、Q1191V及びY1183C、Q1191L及びY1183P、Q1191L及びY1183C、Q1191Y及びY1183P、Q1191Y及びY1183C、W1178Q及びY1183P、ならびにW1178Q及びY1183Cに対応する置換変異から選択される2つの置換変異をさらに含む。別の実施形態では、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)ポリペプチドは、血清型B株4におけるQ1191M及びW1178Qに対応する2つの置換変異をさらに含む。別の実施形態では、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)ポリペプチドは、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Pに対応する2つの置換変異をさらに含む。別の実施形態では、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)ポリペプチドは、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Cに対応する2つの置換変異をさらに含む。
別の実施形態では、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)ポリペプチドは、3つの置換変異をさらに含む。別の実施形態では、前記3つのさらなる置換変異は、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある。別の実施形態では、前記3つのさらなる置換変異は、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Pに対応する。
別の実施形態では、改変受容体結合ドメインは、Q1191C;Q1191V;Q1191L;Q1191Y;Q1191M;Y1199W;Y1199E及びY1199Hからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する置換変異をさらに含む。
別の実施形態では、改変受容体結合ドメインは、血清型B株4における置換変異Q1191Mに対応する置換変異をさらに含む。
別の実施形態では、改変受容体結合ドメインは、Q1191C;Q1191;Q1191L;Q1191Y及びQ1191Mから選択される第1の変異、ならびにY1199W;Y1199E及びY1199Hから選択される第2の変異からなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する2つの置換変異をさらに含む。
別の実施形態では、改変受容体結合ドメインは、W1178Y;W1178Q;W1178A;W1178S;Y1183C;Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する1つ以上の置換変異をさらに含む。
別の実施形態では、改変受容体結合ドメインは、血清型B株4における、Q1191M及びY1199W、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びY1199W、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びY1199WまたはQ1191V及びW1178Qに対応する2つの置換変異を含む。
別の実施形態では、改変(B−H)は、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある3つの置換変異を含む。別の実施形態では、前記3つの置換変異は、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Cに対応する。
本明細書中の任意の態様または実施形態に記載のBoNTポリペプチドをコードする核酸、または該BoNTポリペプチドの発現を可能にする配列に作動可能に連結されたそのような核酸を含む核酸ベクターもまた本明細書において提供される。そのような核酸または核酸ベクターを含む細胞、及び/またはそのようなBoNTポリペプチドを発現する細胞もまた本明細書において提供される。
別の態様では、a)プロテアーゼドメイン、b)プロテアーゼ切断部位、c)移行ドメイン、ならびにd)置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む、かつ血清型B株4のS1201に対応する位置に置換変異をさらに含むClostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)とを含む、ボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチドが本明細書に記載される。
前述の態様のいずれかの一実施形態では、前記BoNTポリペプチドのプロテアーゼドメイン、移行ドメイン及びプロテアーゼ切断部位は、A、B、C、D、E、F、G及びそれらの組み合わせからなる群より選択される血清型に由来する。
前述の態様のいずれかの別の実施形態では、前記プロテアーゼドメイン、移行ドメイン及びプロテアーゼ切断部位は、血清型B株1に由来する。
前述の態様のいずれかの別の実施形態では、前記プロテアーゼドメイン、移行ドメイン及びプロテアーゼ切断部位は、血清型A、株1に由来する。
別の実施形態では、前記プロテアーゼ切断部位は、血清型A、血清型Bに由来する、または血清型A及びBのキメラ切断部位である。
別の態様では、ヒトSytIIに結合するClostridium botulinum血清型B株4重鎖の改変受容体結合ドメイン(B4−H)を含むポリペプチドが本明細書に記載される。
一実施形態では、改変受容体結合ドメインは、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む。
別の実施形態では、改変受容体結合ドメインは、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する1つ以上の置換変異をさらに含む。
別の実施形態では、改変(B4−H)は、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C及びY1183Pからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する2つの置換変異を含む。
別の実施形態では、改変B4−Hは、血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つは、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L及びQ1191Yからなる群より選択される。
別の実施形態では、改変B4−Hは、血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つは、血清型B株4における、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P、Y1199FまたはY1199Lに対応する。
別の実施形態では、改変B4−Hは、血清型B株4における、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びW1178Q、Q1191L及びW1178Q、Q1191Y及びW1178Q、Q1191M及びY1183P、Q1191M及びY1183C、Q1191C及びY1183P、Q1191C及びY1183C、Q1191V及びY1183P、Q1191V及びY1183C、Q1191L及びY1183P、Q1191L及びY1183C、Q1191Y及びY1183P、Q1191Y及びY1183C、W1178Q及びY1183P、ならびにW1178Q及びY1183Cに対応する置換変異から選択される2つの置換変異をさらに含む。
別の実施形態では、前記2つの置換変異は、血清型B株4におけるQ1191M及びW1178Qに対応する。
別の実施形態では、前記2つの置換変異は、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Pに対応する。
別の実施形態では、前記2つの置換変異は、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Cに対応する。
別の実施形態では、改変(B4−H)は、3つの置換変異をさらに含む。別の実施形態では、前記3つのさらなる置換変異は、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある。別の実施形態では、前記3つのさらなる置換変異は、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Pに対応する。
別の態様では、第2部分に連結された、Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)である第1部分を含む、キメラ分子であって、前記改変B4−HがヒトSytIIに結合する、キメラ分子が、本明細書に記載される。
一実施形態では、Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)は、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む。
別の実施形態では、Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)は、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の置換変異をさらに含む。
別の実施形態では、改変B4−Hは、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C及びY1183Pからなる群より選択される2つの置換変異をさらに含む。
別の態様では、第2部分に連結された、Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)である第1部分を含む、キメラ分子であって、前記改変B4−Hが、血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異を含み、かつ、ヒトSytIIに結合し、前記置換変異の1つが、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L及びQ1191Yからなる群より選択されるキメラ分子が本明細書に記載される。
一実施形態では、置換変異の1つは、血清型B株4におけるW1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183CまたはY1183Pに対応する。
別の実施形態では、2つの置換変異は、血清型B株4における、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びW1178Q、Q1191L及びW1178Q、Q1191Y及びW1178Q、Q1191M及びY1183P、Q1191M及びY1183C、Q1191C及びY1183P、Q1191C及びY1183C、Q1191V及びY1183P、Q1191V及びY1183C、Q1191L及びY1183P、Q1191L及びY1183C、Q1191Y及びY1183P、Q1191Y及びY1183C、W1178Q及びY1183P、ならびにW1178Q及びY1183Cに対応する。
別の実施形態では、改変(B−H)は、3つの置換変異を含む。別の実施形態では、前記3つの置換変異は、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある。別の実施形態では、前記3つの置換変異は、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Pに対応する。
別の実施形態では、第1部分と第2部分は、共有結合的に連結される。
別の実施形態では、第1部分と第2部分は、非共有結合的に連結される。
別の実施形態では、第2部分は、低分子、核酸、短いポリペプチド、及びタンパク質からなる群より選択される。
別の実施形態では、第2部分は、生物活性分子である。
別の実施形態では、第2部分は、治療用のポリペプチドまたは非ポリペプチド薬物である。
別の態様では、本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチドもしくはキメラ分子を含む、または本明細書に記載されるBoNTポリペプチドをコードする核酸もしくは核酸ベクターを含む、薬学的組成物が本明細書に記載される。
一実施形態では、前記薬学的組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。
別の態様では、本明細書に記載される薬学的組成物を含むキットが、本明細書に記載される。前記キットは、前記薬学的組成物の治療的投与のための説明書を含むことができる。
別の態様では、ボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチドを産生するための方法であって、BoNTポリペプチドまたはキメラBoNTポリペプチドが産生される条件下で、本明細書に記載されるBoNTポリペプチドまたはキメラBoNTポリペプチドをコードする核酸または核酸ベクターを含む本明細書に記載される細胞を培養するステップを含む方法が、本明細書に記載される。
一実施形態では、前記方法は、以下のステップ:培養物からBoNTポリペプチドを回収すること、BoNTポリペプチドを精製すること、BoNTポリペプチドを活性化すること、またはBoNTポリペプチドを製剤化すること、の1つ以上をさらに含む。
別の態様では、望ましくないニューロン活動と関連した病態を治療するための方法であって、治療上有効量の本明細書に記載されるBoNTポリペプチドもしくはキメラBoNTポリペプチド、またはそのようなポリペプチドを含む薬学的組成物を対象に投与し、それにより、望ましくないニューロン活動を示す1つ以上のニューロンと接触させ、それにより、前記病態を治療することを含む方法が、本明細書に記載される。
一実施形態では、前記病態は、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、口下顎発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、上肢局所性ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼疾患、脳性麻痺、局所性痙縮及び他の発声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害及び他の筋緊張障害及び筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過多、消化管分泌過多、分泌障害、筋痙攣による疼痛、頭痛、片頭痛、ならびに皮膚科学的または審美的/美容的な病態からなる群より選択される。
別の態様では、医薬における使用のための、本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド、本明細書に記載されるキメラBoNTポリペプチド、またはそのようなBoNTポリペプチドもしくはキメラポリペプチドを含む薬学的組成物が、本明細書に記載される。
別の態様では、望ましくないニューロン活動と関連した病態の治療における使用のための、本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド、本明細書に記載されるキメラBoNTポリペプチド、またはそのようなBoNTポリペプチドもしくはキメラポリペプチドを含む薬学的組成物が、本明細書に記載される。
定義
本明細書で用いられる場合、「結合親和性」という用語は、特定の受容体系に対するある分子の結合活性の強さを意味する。一般に、高い結合親和性は、結合ドメインとその受容体系との間のより大きな分子間力によって生じるのに対して、低い結合親和性は、リガンドとその受容体との間のより小さな分子間力を伴う。高い結合親和性は、結合ドメインのその受容体結合部位での滞留時間が、低い結合親和性の場合よりも長い。したがって、高い結合親和性を有する分子は、受容体系の結合部位を最大限に占有し、生理反応を引き起こすために、より低濃度の該分子が必要であることを意味する。逆に、低い結合親和性は、受容体系の受容体結合部位が最大限に占有され、最大の生理反応を得るには、比較的高濃度の分子が必要であることを意味する。よって、結合親和性が高いために結合活性が増大した本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素は、より低用量の毒素の投与を可能とし、それにより標的指向されていない領域への毒素の拡散に伴う望ましくない副作用を軽減または予防する。
結合親和性の測定のためによく使用される1つのパラメーターは、結合Kと定義される。Kは、解離定数(Koff)と会合定数(Kon)との比として定義されるため、K値が低いほど、結合親和性は高い。
本用語が本明細書で用いられる場合、特異的受容体(例えば、ヒトSyt IIまたはヒトSyt I)への本明細書に記載されるC.botulinum神経毒素分子またはBoNT/B−Hドメインまたはその受容体結合断片の結合親和性を説明するために用いられる場合の「著しく増強した結合」という用語は、該分子の非置換型と比較して、実質的に増加している(例えば、野生型分子の結合親和性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)特異的受容体に対する結合親和性の増加を意味する。一実施形態では、置換分子の増強した結合は、非置換分子(例えば、天然のBoNT H分子を有する神経毒素)の結合親和性よりも一桁以上高い結合親和性によって証明される。言い換えれば、置換分子のKは、非置換分子のKよりも一桁以上低い。一実施形態では、増強した結合は、非置換分子の結合親和性よりも著しく高い(例えば、1.5×、2.0×、2.5×、3.0×など)結合親和性によって証明される。言い換えれば、置換分子のKは、非置換分子のKよりも著しく低い(例えば、1.5×、2.0×、2.5×、3.0×など)。一実施形態では、証明された増強した結合は、約0.59μM〜5.82μM Kの範囲である。一実施形態では、証明された増強した結合は、約0.59μM〜4.3μM Kの範囲である。一実施形態では、増強した結合は、K≦5.82μMによって証明された。一実施形態では、増強した結合は、K≦4.30μMによって証明された。一実施形態では、増強した結合は、K≦2.9μMによって証明された。一実施形態では、増強した結合は、約0.59μMのKによって証明された。
一実施形態では、ヒトSyt IIに対する置換分子のKは、≦10μMであり、好ましくは、≦9、8、7、6、5、4、3または2μM、より好ましくは、≦1または0.6μMである。一実施形態では、ヒトSyt Iに対する置換分子のKは、≦10μMであり、好ましくは、≦9、8、7、6、5、4μM、より好ましくは、≦3μMである。一実施形態では、ヒトSyt IIに対する置換分子のKは、≦7μMであり、ヒトSyt Iに対する置換分子のKは、≦6μMである。好ましい実施形態では、ヒトSyt IIに対する置換分子のKは、≦1μMであり、ヒトSyt Iに対する置換分子のKは、≦3μMである。
一実施形態では、増強した結合により、本明細書に記載される実験により例示されるように、共受容体ガングリオシドの非存在下で、ヒトSyt Iへの検出可能な結合がもたらされる。
本明細書に記載される点変異によって産生されたBoNT/B−H結合断片の結合親和性を説明するために用いられる場合の「著しく増強した結合」または「著しく低下した結合」という用語は、すぐ上で説明した、特異的受容体(例えば、ヒトSyt IIまたはヒトSyt I)への改変結合ドメイン(例えば、単離された断片として、またはより大きな神経毒素ポリペプチド構築物において発現する)の結合親和性の増加または低下のそれぞれを意味する。
本用語が本明細書で用いられる場合、特異的受容体(例えば、ヒトSyt IまたはヒトSyt II)への本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素分子またはその結合断片(例えば、BoNT/B−H)の結合親和性を説明するために用いられる場合の「著しく低下した結合」という用語は、該分子の非置換型と比較して、実質的に低下している(例えば、野生型分子の結合親和性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)特異的受容体に対する結合親和性の低下を意味する。一実施形態では、置換分子の低下した結合により、非置換神経毒素(例えば、天然のBoNT H分子を有する神経毒素)の結合親和性よりも一桁以上低い結合親和性がもたらされる。言い換えれば、置換分子のKは、非置換神経毒素のKよりも一桁以上高い。一実施形態では、置換分子の低下した結合により、非置換分子の結合親和性よりも著しく低い(例えば、1.5×、2.0×、2.5×、3.0×など)結合親和性がもたらされる。言い換えれば、置換分子のKは、非置換分子のKよりも著しく高い(例えば、1.5×、2.0×、2.5×、3.0×など)。一実施形態では、著しく低下した結合により、共受容体ガングリオシドの非存在下で、ヒトSyt Iへの検出可能な結合が喪失する。
本明細書で用いられる場合、「ボツリヌス神経毒素」という用語は、C.botulinum毒素がニューロンに侵入し、神経伝達物質の放出を阻害する全体的な細胞機序を実行することができる任意のポリペプチドを意味する。この機序は、低親和性または高親和性受容体複合体へのC.botulinum毒素の結合、毒素の内部移行、細胞質への毒素軽鎖の移行、及びC.botulinum毒素基質の酵素的改変を包含する。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、C.botulinum神経毒素分子及びその断片に関して、本明細書では互換的に使用される。
「改変受容体結合ドメイン」または「改変H」は、本用語が本明細書で用いられる場合、それが含まれるC.botulinum神経毒素分子の、標的細胞の表面上に位置するC.botulinum神経毒素に対する受容体への結合を促進する。このような分子は典型的には、遺伝子組換え技術によって生成される。改変Hは、標的細胞の表面上に位置するC.botulinum神経毒素に対する受容体への結合活性を有する。本明細書で用いられる場合、「結合活性」と言う用語は、1つの分子が、非限定的に、共有結合、イオン結合、金属結合、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用など、またはそれらの任意の組み合わせを含む、少なくとも1つの分子間力または分子内力を介して、別の分子と直接的または間接的に接触することを意味する。「結合した」及び「結合する」は、結合に関する用語と見なされる。
本明細書で用いられる場合、「C.botulinum毒素プロテアーゼドメイン」という用語は、中毒過程の酵素的標的改変ステップを実行することができるC.botulinum毒素ドメインを意味する。したがって、C.botulinum毒素プロテアーゼドメインは、C.botulinum毒素基質を特異的に標的指向し、C.botulinum毒素基質(例えば、SNAP−25基質、VAMP基質、及びシンタキシン基質のようなSNAREタンパク質)のタンパク質分解的切断をもたらす。
C.botulinum毒素プロテアーゼドメインの非限定的な例を、表1に提供する。
本明細書で用いられる場合、「C.botulinum毒素移行ドメイン」または「H」という用語は、C.botulinum毒素軽鎖の移行を媒介する中毒過程の移行ステップを実行することができるC.botulinum毒素ドメインを意味する。したがって、Hは、C.botulinum毒素軽鎖の、膜を越える移動を促進し、C.botulinum毒素軽鎖の、細胞の細胞内小胞の膜を細胞質へと通過する移動をもたらす。Hの非限定的な例には、BoNT/A H、BoNT/B H、BoNT/C1 H、BoNT/D H、BoNT/E H、BoNT/F H、及びBoNT/G Hが含まれ、これらのアミノ酸配列を表1及び図8及び図10〜図16に提供する。
本明細書で用いられる場合、「C.botulinum受容体結合ドメイン」という用語は、「Hドメイン」と同義であり、例えば、標的細胞の形質膜表面上に位置するC.botulinum毒素特異的受容体系へのC.botulinum毒素の結合を含む中毒過程の細胞結合ステップを実行することができる、任意の天然C.botulinum受容体結合ドメインを意味する。結合活性の置き換えは、例えば、C.botulinumHドメイン全体を、改変(例えば、増強した)Hドメインと置き換えることによって達成することができると想定される。
本明細書で用いられる場合、「C.botulinum毒素標的細胞」という用語は、天然C.botulinum毒素が中毒を起こすことができる天然細胞である細胞を意味し、これには、非限定的に、運動ニューロン;感覚ニューロン;自律神経ニューロン;例えば、交感神経ニューロン及び副交感神経ニューロンなど;非ペプチド作動性ニューロン、例えば、コリン作動性ニューロン、アドレナリン作動性ニューロン、ノルアドレナリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、GABA作動性ニューロンなど;ならびにペプチド作動性ニューロン、例えば、サブスタンスPニューロン、カルシトニン遺伝子関連ペプチドニューロン、血管作用性小腸ペプチドニューロン、ニューロペプチドYニューロン、コレシストキニンニューロンなどが含まれる。
「単離された」とは、その天然状態において見出される場合に通常それに伴う成分を様々な程度で含まない材料を意味する。「単離する」とは、元の供給源または環境、例えば隣接するアミノ酸(例えば、単離されたポリペプチド断片において)から、または細胞もしくは生物学的試料からのある程度の分離を意味する。
「精製された」という用語は、調製物の他の成分(例えば、他のポリペプチド)に関して、「実質的に純粋」であるポリペプチドなどの物質を指すために用いられる。これは、他の成分に関して、少なくとも約50%、60%、70%、または75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、及び最も好ましくは少なくとも約95%の純度であるポリペプチドを指し得る。言い換えると、ポリペプチドに関して、「実質的に純粋」または「本質的に精製された」という用語は、1つ以上の他の成分(例えば、他のポリペプチドまたは細胞成分)を約20%よりも少なく、より好ましくは約15%、10%、8%、7%よりも少なく、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%よりも少なく(fewer than)、または1%未満(less than)含む調製物を指す。
本明細書で用いられる「保存的」または「保存的置換変異」という用語は、あるアミノ酸が、類似の特性を有する別のアミノ酸と取って代わり、その結果、ペプチド化学の当業者により、そのポリペプチドの二次構造、化学的性質、及び/またはヒドロパシー性質が実質的に変化しないと予測される変異を指す。以下のアミノ酸群が、保存的変化として歴史的に互いに取って代わられている:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、try、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;及び(5)phe、tyr、trp、his。一般に許容されている他の保存的置換を、以下のリストに記載する:
Figure 2019533430
特定のアミノ酸に言及しない「置換変異」という用語は、その位置に通常見出される野生型残基以外の任意のアミノ酸を含み得る。このような置換は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びプロリンなどの非極性(疎水性)アミノ酸との置き換えであってよい。置換は、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンなどの極性(親水性)アミノ酸との置き換えであってよい。置換は、荷電アミノ酸、例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸などの負荷電アミノ酸、ならびにリジン、アルギニン、及びヒスチジンなどの正荷電アミノ酸との置き換えであってよい。
本明細書に記載される置換変異は、典型的には異なる天然アミノ酸残基との置き換えであるが、場合によっては非天然アミノ酸残基が置換されてもよい。非天然アミノ酸とは、本用語が本明細書で用いられる場合、天然に存在するかまたは化学合成された非タンパク質構成(すなわち、非タンパク質コード)アミノ酸である。この例には、β−アミノ酸(β3及びβ2)、ホモアミノ酸、プロリン及びピルビン酸誘導体、3−置換アラニン誘導体、グリシン誘導体、環−置換フェニルアラニン及びチロシン誘導体、直鎖コアアミノ酸、ジアミノ酸、D−アミノ酸、ならびにN−メチルアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アミノ酸は置換または非置換であってよい。置換アミノ酸または置換基は、ハロゲン化芳香族アミノ酸もしくは脂肪族アミノ酸、疎水性側鎖上のハロゲン化脂肪族修飾もしくは芳香族修飾、または脂肪族修飾もしくは芳香族修飾であってよい。
「治療的有効量」という用語は、ある病態を有する典型的な対象に投与した場合に、その病態の1つ以上の症状に治療的に有意な軽減をもたらすのに十分である量を指す。症状の治療的に有意な軽減とは、対照または未治療対象と比較して、例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、またはそれ以上である。
「治療する」または「治療」という用語は、その目的が症状の解消または和らげることである治療的処置を指す。有益な、または望ましい臨床結果としては、症状の解消、症状の緩和、病態の程度の軽減、病態の安定した(すなわち、悪化しない)状態、病態の進行の遅延または緩徐化が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で用いられる場合、「対象」とは、ヒトまたは動物を指す。通常、動物とは、霊長類、齧歯類、家畜、または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えばアカゲザルが含まれる。齧歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、及びハムスターが含まれる。家畜及び狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、水牛、ネコ科種、例えば家猫、イヌ科種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、例えば、マス、ナマズ、及びサケが含まれる。患者または対象には、前述の任意のサブセット、例えば、ヒト、霊長類、または齧歯類などの1つ以上の群または種を除く上記の全てが含まれる。本明細書に記載される態様のある種の実施形態では、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。「患者」及び「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。対象は、雄であっても、または雌であってもよい。対象は、十分に発達した対象(例えば、成体)であっても、または発達過程にある対象(例えば、子供、乳児、または胎児)であってもよい。
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであってよいが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、望ましくないニューロン活動と関連した障害の動物モデルを表す対象として有利に使用することができる。加えて、本明細書に記載される方法及び組成物は、家畜及び/またはペットを治療するために用いることもできる。
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を含む本特許または特許出願公開のコピーは、請求及び必要な料金の支払いに基づいて、特許庁により提供されることとなる。
図1A〜図1D。(背景に関して公開されているデータ)は、どのようにBoNTがニューロンを標的指向するかについての概略モデル(図1A)、それらの全体的なタンパク質構造(図1B)、同定された受容体のリスト(図1C)、ならびにBoNT/Bのその受容体Syt及びガングリオシドへの結合に関する構造モデル(図1D)を示す。(図1A)BoNT作用の概略図:BoNTは、それらの特異的受容体に結合することによりニューロンを認識し(ステップ1)、受容体介在性エンドサイトーシスを介してニューロンに侵入し(ステップ2)、次いで、BoNTの軽鎖がエンドソーム膜を越えてサイトゾルへと移行し(ステップ3)、そこでこれらの軽鎖がプロテアーゼとして作用し、標的宿主タンパク質を切断する(ステップ4)。図1Aは、Arnon, S. et al, JAMA, 285:1059, 200124からの出典である。(図1B)BoNTは、ジスルフィド結合を介して結合している軽鎖及び重鎖からなる。重鎖は2つのドメイン:移行ドメイン(H)及び受容体結合ドメイン(H)にさらに分類することができる。これらの機能的ドメインは、異なるBoNT間でスイッチング可能である。例えば、BoNT/B−Hを用いてBoNT/A−Hを置換して、キメラ毒素を生成することができる。(図1C)同定された毒素受容体のリスト。(図1D)細胞表面上で、BoNT/Bから、そのタンパク質受容体Syt(I/II)、及びその脂質共受容体ガングリオシドへの結合を示す構造モデル。図1Dは、Chai et al, Nature, 444:1096, 200631からの出典である。 図1Aの説明を参照のこと。 図1Aの説明を参照のこと。 図1Aの説明を参照のこと。 図2A〜図2E。細菌性ツーハイブリッド(BACTH)スクリーニングは、h−Syt IIへのBoNT/Bの結合を増強する点変異を同定した。(図2A)上のパネル:ヒトSyt II(h−Syt II、配列番号6)とマウスSyt II(m−Syt II、配列番号5)のBoNT/B結合部位の配列アラインメント。下のパネル:HBとSyt IIとの間の界面のクローズアップ図:突然変異誘発研究のためのBoNT/Bの標的指向された残基は、緑色(薄灰色)で標識されている。Syt II残基は、紫色(濃い灰色)でマークされ、F54、F55、及びI58が強調表示されている(ボックス内)。(図2B)HB変異体ライブラリーの構築及びBATCHアッセイの模式図。(図2C)BATCHアッセイにおいて同定された陽性変異(青いコロニーをもたらす)のリスト。(図2D)パネルCに列挙されたHB変異体を、再構成されたアデニル酸シクラーゼのレベルを反映するβ−ガラクトシダーゼ活性アッセイによってさらに分析した。(n=6、p<0.05)。(図2E)E1191部位でのHB変異を、固定化m−Syt II(残基1−87)またはh−Syt II配列(h−Syt IIと呼ぶ)を模倣するF54L変異を含むマウスSyt II(1−87)を用いて、プルダウンアッセイで調べた。結合したHB変種は、HBに融合したHAタグを検出するイムノブロット分析によって検出された。追加のHB変異は図18及び図21に示されている。 図2Aの説明を参照のこと。 図2Aの説明を参照のこと。 図2Aの説明を参照のこと。 図2Aの説明を参照のこと。 図3A〜図3C。HBにおける組み合わせ変異は、h−Syt II及びSyt Iへのその結合を増強した。(図3A)HB二重変異を、プルダウンアッセイにて、m−Syt IIに結合する能力とh−Syt IIに結合する能力について調べた。h−Syt IIへの強固な結合を示した3つの二重変異を、赤(太字)で記した。(図3B)h−Syt IIへのHBの結合をBLIアッセイにより定量した。代表的な会合及び解離曲線をWT HB及び3つのHB変異体:E1191M/S1199Y、E1191V/S1199W、及びE1191C/S1199Wについて示した。12個全ての二重変異についての結合パラメーターを表4に列挙し、それらの代表的結合トレースを図19に示す。(図3C)固定化GSTタグ付きh−Syt I(残基1−80)へのWT HB、HB(E1191M)、及びHB(E1191M/S1199Y)の結合を、ガングリオシド(Gangl)と共に(+)及びそれなし(−)でプルダウンアッセイで調べた。h−Syt IへのWT HBの結合は、共受容体ガングリオシドの存在を必要とするが、HB(E1191M)及びHB(E1191M/S1199Y)は、ガングリオシドの非存在下でh−Syt Iに結合する。 図4A〜図4B。HMYは、h−Syt IIを発現するヒト化ニューロンへの強固な結合を示した。(図4A)内在性Syt IのKDによりヒト化ニューロンを作製し、培養ラット皮質ニューロンにおいて完全長h−Syt IIを発現する。完全長m−Syt IIまたはm−Syt II(F54L)を発現するニューロンは、さらなる対照として機能した。これらのニューロンを、WT HBに暴露し、続いて免疫染色分析した。HBに融合したHAタグを介して結合HBを検出した。シナプシンは、シナプス前終末のマーカーとして標識された。WT HBは、WTニューロンのシナプスに結合したが、Syt I KDニューロンには結合しなかった。レンチウイルス形質導入による完全長m−Syt IIの発現は、HBの結合を回復させたが、完全長m−Syt II(F54L)または完全長h−Syt IIの発現は、結合を救済することができなかった。(図4B)Syt I KDは、ニューロンへのHMYの結合を消失した。結合は、完全長m−Syt II、m−Syt II(F54L)、またはh−Syt IIの発現により救済された。 図5A〜図5C。BoNT/BMYは、ヒト化ニューロンにおける神経伝達の遮断に対して増強した有効性を示した。(図5A)ヒト化ニューロンを、図4Aに記載のよう作製した。これらのニューロンを、完全長WT BoNT/BまたはBoNT/BMYの濃度勾配に24時間暴露した。細胞溶解物を回収し、イムノブロット分析に供した。β−チューブリンは、インターナルローディング対照として機能した。BoNT/BMYは、同じ濃度でWT BoNT/Bよりも多くのVAMP2を切断した。このことは、BoNT/BMYが、WT BoNT/Bよりも効率的にニューロンに侵入したことを示している。(図5B〜図5C)ヒト化ニューロンを、WT BoNT/BまたはBoNT/BMYの濃度勾配に24時間暴露し、次いで、mIPSC活性を全細胞パッチクランプ法によって記録した。パネルB(図5B)は、30pM毒素での代表的なmIPSC記録を示す。パネルC(図5C)は、mIPSC活性対毒素濃度を図示し、いかなる毒素にも暴露されなかったニューロンに標準化した。各データポイントの記録されたニューロンの数を(括弧内)に示した。同じ数のニューロンが、WT BoNT/B及びBoNT/BMYについて記録された。半数阻害濃度(IC50)は、WT BoNT/Bでは89pM、BoNT/BMYでは7.8pMであると測定された。このことは、ヒト受容体への結合の増強が、ニューロンの機能レベルで毒素の有効性を高めたことを示す。 図6A〜図6D。BoNT/Bサブタイプでの配列変化は、それらのh−Syt IIに結合する能力に影響を与える。(図6A)以下を含む、BoNT/Bの残基E1191/S1199の周囲領域におけるBoNT/Bサブタイプの配列アラインメント:BoNT/B1(配列番号9);BoNT/B2(配列番号10);BoNT/B3(配列番号11);BoNT/B4(配列番号12);BoNT/B5(配列番号13);BoNT/B6(配列番号14);BoNT/B7(配列番号15);BoNT/B8(配列番号16)。(図6B)Q1191及びY1199を含むHB4は、プルダウンアッセイにおいてh−Syt IIに結合しなかった。(図6C)Syt I/IIに対する結合ポケットを形成する19個の重要な残基の内、HB4とHBの間で異なる6個の残基がある。HB4内の6個の残基全てをHB内の対応する残基と置き換えることにより、h−Syt IIに結合することができる変異HB4(「6つの変異」:V1113K/S1117P/S1196A/I1197P/A1182T/N1185Yと呼ばれる)を作製した。HB1とHB4との配列アラインメントを図7に示す。(図6D)固定化GSTタグ付きh−Syt IへのHB及びHB4の結合をプルダウンアッセイで調べた。h−Syt IへのHBの結合は、ガングリオシドの存在を必要とするが、HB4は、プルダウンアッセイにおいてガングリオシドなしでh−Syt Iに結合することができる。 BoNT/B1(配列番号17)及びBoNT/B4(配列番号18)のHドメインのアミノ酸配列のアラインメントである。BoNT/B1及びB4のHドメインポリペプチド配列のアラインメントは、B血清型のこれらの2つの株間で異なるそれらのアミノ酸を強調する。B4アミノ酸V1113、S1117、S1196及びI1197は、本明細書において、B4 HドメインがヒトSytII分子に結合する能力を調節する残基として同定される。図7はまた、Syt II結合ポケットを形成する19個の重要な残基をアスタリスクで示すことによって、表5に既に示されているものを確認する。 BoNT/B−H(株1;BoNT/B1 Okra株)のアミノ酸配列である。BoNT/B株1、GenBank:AB232927.1の残基857−1291(配列番号19)。 大腸菌(E.coli)での発現に最適化されたBoNT/B−H(株B1、Okra株)GenBank:AB232927.1に基づくBoNT/B株1の残基857−1291)(配列番号20)をコードする核酸配列である。 C.botulinum血清型A(1296アミノ酸)(配列番号21)のアミノ酸配列を示す。 図10−1の続きを示す図である。 C.botulinum血清型B(1291アミノ酸)(配列番号22)のアミノ酸配列を示す。 図11−1の続きを示す図である。 C.botulinum血清型C1(1291アミノ酸)(配列番号23)のアミノ酸配列を示す。 図12−1の続きを示す図である。 C.botulinum血清型D(1276アミノ酸)(配列番号24)のアミノ酸配列を示す。 図13−1の続きを示す図である。 C.botulinum血清型E(1252アミノ酸)(配列番号25)のアミノ酸配列を示す。 図14−1の続きを示す図である。 C.botulinum血清型F(1274アミノ酸)(配列番号26)のアミノ酸配列を示す。 図15−1の続きを示す図である。 C.botulinum血清型G(1297アミノ酸)(配列番号27)のアミノ酸配列を示す。 図16−1の続きを示す図である。 C.botulinum血清型B、Eklund 17B株(BoNT/B4)Genbank Ref:EF051570.1(配列番号28)のアミノ酸配列を示す。 マウス及びヒトSytIIへの変異BoNT/B1 Hドメインの結合に対する13の異なる単一置換変異の効果を示す。 一次変異E1191M/C/V/Q、適合する二次変異S1199W/Y及びW1178Q、ならびに三重変異E1191M/S1199W/W1178Qの12個全ての組み合わせについて、ヒトSytIIへの結合に関するバイオレイヤー干渉トレースを示す。h−Syt IIに対する12個全ての変異体の結合親和性(K)を、表4に列挙したパラメーターを用いて、バイオレイヤー干渉アッセイ(BLI)を使用して測定した。 h−Syt Iに対する上位2つのBoNT/B1 Hドメイン変異体(E1191M/S1199Y及びE1191V/S1199Y)の結合親和性のBLIアッセイ測定値を示す。E1191M/S1199Y(HMY)またはE1191V/S1199Y(HVY)を含有するHBは、それぞれ2.9μM及び5.82μMのKを示した。 図2Eに記載のように、プルダウンアッセイで調べたm−Syt II及びh−Syt IIへのHB変異体の結合を示す。 m−Syt II及びh−Syt IIに結合する変異体HB4を示す。 図23A〜図23Bは、E.coliで産生されたBoNT/BMYが活性であり、BoNT/B抗体によって中和され得ることを示す。(図23A)完全長BoNT/B及びBoNT/BMYをE.coliから精製した。これらの毒素は、エンドプロテイナーゼLys−Cによって活性化された。SDS−PAGE分析は、WT BoNT/B毒素が、純度約93%、その二本鎖形態では純度約80%であり、そしてBoNT/BMY毒素が、純度約86%、その二本鎖形態では純度約99%であることを明らかにした。(図23B)培養ラット皮質ニューロンを、ウサギポリクローナル抗BoNT/B抗体(培地中1:200希釈)またはBoNT/A、B、及びEに対する三価のウマ抗血清(培地中1:40希釈)のいずれかと共にプレインキュベートしたBoNT/BMY(培地中1nM、16時間)に暴露した。ニューロン溶解物を16時間後に回収した。VAMP2の切断を、イムノブロットアッセイによって分析した。BoNT/BMYは、ニューロンのVAMP2を切断したため活性である。ウサギポリクローナル抗BoNT/B抗体及び3価のウマ抗血清はどちらもBoNT/BMYを容易に中和した。アクチンは、インターナルローディング対照として機能した。これらの結果により、E1191M/S1199Y変異が、BoNT/Bの免疫原性を変化させないことが確認された。 図24A〜図24Bは、BoNT/B結合界面におけるSyt IとSyt II間、及びヒトSyt IとマウスSyt I間の比較を示す。(図24A)マウスSyt I(配列番号7)とSyt II(配列番号8)間の配列アラインメント及び構造の比較。アスタリスクは、BoNT/Bと相互作用する保存された残基を強調しており、これはSyt I(下、薄い灰色)及びSyt II(下、暗い灰色)に結合したBoNT/B(上)のモデル化構造に見ることができる。BoNT/BへのSyt Iの結合は、入手可能なBoNT/B−Syt II結晶構造(PDB:4KBB)に基づいてモデル化された。(図24B)BoNT/B結合ドメイン内のヒトSyt I(配列番号4)とマウス/ラットSyt I(配列番号29)との配列アラインメント。唯一の違いであるヒトSyt IでのE45、マウス/ラット−Syt IでのQが、太字で表示されている。このモデルは、残基45の側鎖(矢印で示す)が、結合部位から外側を向いており、BoNT/Bと相互作用しないことを示す。
発明の詳細な説明
本発明の態様は、Clostridium botulinumの改変受容体結合ドメイン(例えば、血清型B(B−H))を含むポリペプチド、及びそのようなポリペプチドをコードする核酸の生成に関し、より具体的には、改変受容体結合ドメインの組み込みによりそれらのヒト受容体への結合を改善したC.botulinum神経毒素(BoNT)ポリペプチド、及びそのようなポリペプチドをコードする核酸に関する。これらの知見から、現在利用されているWT BoNTと比較して、ヒトニューロンを標的指向するための有効性及び特異性が改善された本明細書で同定された改変受容体結合ドメインを含む新世代の治療用BoNTを作製することができる。
ヒトSytII受容体分子へのBoNT/B Hポリペプチドの結合は、BoNT/B1 H残基E1191及びS1199に対応する残基における変異によって著しく増強され得ることが既に判明されていた。その全体が参照により本明細書に組み入れられるPCT/US2016/024211を参照されたい。特に、残基E1191でのBoNT/B1 Hドメインの、Q、M、C、V、LまたはYへの変異は、WTと比較して、hSytII結合を増強した。変異E1191Mは、最も劇的な結合の向上をもたらしたが、E1191Qもまた結合を有意に促進した。例えば、図2D及びEを参照されたい。BoNT/B1 HE1191M変異、及び残基S1199のYへの変異との組み合わせは、hSytII受容体へのBoNT/B1分子の結合をさらに向上した。二重変異体は、hSytII受容体分子を発現するヒトニューロンへの強い結合を示し、そして神経伝達の遮断において増強した有効性を示した。図4及び5を参照されたい。
BoNT血清型B4(BoNT/B4)WT Hドメインは、血清型B1分子のE1191及びS1199に対応する位置にグルタミン及びチロシンを含み、その結果、強い結合を促進することが予測される血清型B1分子のE1191Q、S1199Y二重変異体に対応することが確認された。興味深いことに、血清型B1神経毒素の結合及び活性を促進する血清型B1タンパク質の位置にグルタミン及びチロシンを有するにもかかわらず、野生型B4分子は、hSytII受容体分子に効果的に結合しない。したがって、B4分子のQ1191及びY1199以外のアミノ酸は、hSytII分子への結合にとって重要であるに違いない。
本明細書の実施例に記載されるように、血清型B1とB4との間で異なるB4分子のHドメインの19個のアミノ酸のうち4個を変異させると、血清型B4分子に強いhSytII結合がもたらされることが見出された。具体的には、B4アミノ酸V1113、S1117、S1196及びI1197が、B4がhSytIIに結合するのに重要であることが見出された。血清型B1分子の対応する残基へのこれらの残基の変異は、血清型B4分子に強い結合をもたらした。すなわち、B4変異V1113K、S1117P、S1196A、及びI1197Pは、強いhSytII結合をもたらした。したがって、これらの変異を含むB4 Hドメイン変異体は、天然に存在するQ1191及びY1199に加えて、治療的または美容的用途のための改変C.botulinum神経毒素調製物に使用することができる。V1113K、S1117P、S1196A、及びI1197P変異を含むB4 H変異体のさらなる改変(例えば、単独でまたは組み合わせて、hSytIIへの血清型B1分子の結合を促進することが見出された変異を含む)が、改変血清型B4 Hドメインの結合を促進することが予測されることもまた理解されるべきである。したがって、V1113K、S1117P、S1196A、及びI1197P変異を含むB4変異体において、例えばQ1191から、例えばC、V、L、Y、M、及び/またはY1199から、例えばW、E、またはHへのさらなる変異もまた、結合によい影響を及ぼすことが予測され得る。ほんの一例として、V1113K、S1117P、S1196A、及びI1197P変異に加えて変異Q1191Mを含むB4 Hドメイン変異体を含むBoNT神経毒素もまた強く結合し、神経伝達活性に影響を及ぼす可能性がある。
以下に、本明細書に記載される発見、ならびに本明細書に開示される方法及び組成物にそれらを適用するための当業者の考察につながった研究のさらなる説明を含む。
実施形態
BoNT/Bが、ヒトSyt IIに結合できないために、ヒトにおいて特異性が低く、かつより強力ではないという観察結果により、BoNT/Aよりも比較的高用量が必要とされる理由が説明され得る。より高いBoNT/B用量は、抗体応答を誘発する可能性、及び重篤な副作用が起こる可能性の増加に対応する。したがって、ヒト受容体Syt IIへのBoNT/Bの結合を改善して、ヒトニューロンを標的指向するためのその有効性及び特異性を増大させることにより、治療的用途で用いられる毒素用量の減量が可能になるはずである。
本発明の態様は、BoNT血清型B4−Hのタンパク質配列の改変が、受容体結合ドメインを含む断片の、ヒトSyt II受容体への結合を改変するという知見から生じている。結合を増強し、それにより高親和性でヒトSyt IIに結合するドメインを生成する特定の改変が同定された。改変BoNT/B4−Hは、完全長BoNTタンパク質においては、これらの結合特性を保持する。結合が増強された改変受容体結合ドメインを、他のBoNTドメインを含む分子に組み込み、それにより受容体結合が同様に増強された完全長BoNTが生成される。したがって、ヒトSyt IIへの親和性結合が高い新型のBoNTが生成される。結合が著しく増強されたBoNTは、現在利用可能なBoNT分子よりも低用量であるにもかかわらず、同様の治療において使用することができ、したがってより安全な治療方法を提供する。
本明細書に記載される完全長BoNTポリペプチド及びBoNTポリペプチド断片またはドメイン(例えば、改変BoNT/H)を含むBoNTポリペプチド、ならびにそれらをコードする核酸分子は、本発明に明確に包含される。これらのポリペプチド及び核酸分子は、当技術分野で公知の組換えDNA手順によって生成することができる。このようなポリペプチドは典型的に、「組換えポリペプチド」または「組換え核酸」と称される。
ボツリヌス神経毒素タンパク質
本発明の一態様は、本明細書に記載される改変受容体結合ドメイン(例えば、Clostridium botulinum血清型B4の)を含むボツリヌス神経毒素(BoNT)タンパク質に関する。BoNTタンパク質は、プロテアーゼドメイン、移行ドメイン、及びプロテアーゼ切断部位をさらに含む。典型的には、これらは、プロテアーゼドメイン、プロテアーゼ切断部位、移行ドメイン、及び改変受容体結合ドメインの直鎖状のアミノからカルボキシルへの単一ポリペプチド順序で配置される。しかしながら、様々なドメインの異なる配置も適切に機能すると予測される。一実施形態では、改変受容体結合ドメインは、ヒトSyt I受容体及び/またはヒトSyt II受容体への著しく増強した結合をもたらす1つ以上の置換変異を含む。
BoNTタンパク質は、ヘキサヒスチジンタグ(His6)(配列番号1)などの分子、またはヘマグルチニン(HA)タグ(YPYDVPDYA)(配列番号2)などのエピトープタグの精製に有用なドメインをさらに含んでもよい。そのような目的のために様々なそのようなドメインが当技術分野において公知であり、使用されている。
BoNTは、図1Bに示される全体構造を有する。BoNTは、それぞれが特異的かつ独立した機能を有する3つのドメイン:プロテアーゼドメイン(軽鎖とも称される)、移行ドメイン(H)、及び受容体結合ドメイン(H)で構成される。様々な株のC.botulinum神経毒素のドメインが、ほぼ互換的であることが示されている(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,052,979号において、BoNT/Cの軽鎖及びHと、BoNT/DのHから構成されるBoNT/CDなどの天然キメラ毒素によって証明される(52))。このタンパク質は、一本鎖型または二本鎖型であってよい。二本鎖型は、プロテアーゼドメインと移行ドメインの間に位置するプロテアーゼ切断部位の天然のプロテアーゼプロセシングによって生じる。このタンパク質は、ジスルフィド結合の存在によって、プロテアーゼプロセシング後に二本鎖型で維持される。
Clostridium botulinumの株は、抗原性の異なる7つの型のボツリヌス毒素を産生し、それらはヒト(BoNT/A、/B、/E、及び/F)、動物(BoNT/C1及び/D)におけるボツリヌス中毒の大発生を調査することによって同定されてきたか、または土壌から単離された(BoNT/G)。7個全てのBoNT血清型が類似の構造及び薬理学的特性を有するが、それぞれはまた多様な細菌学的特徴を示す。C.botulinum株の遺伝的多様性は、Hill et al. (Journal of Bacteriology, Vol. 189, No. 3, p. 818−832 (2007))(53)に詳細に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。一実施形態では、本発明のBoNTは、全て同一の血清型(A、B、C、D、E、F、またはG)であるドメインを有する。一実施形態では、同一の血清型の1つ以上のそれらのドメインは、株及び/またはサブタイプに関して異なる。
様々なC.botulinum血清型/株由来の毒素は、同一の機能的ドメイン構成及び全体構造アーキテクチャを共有する。C.botulinum毒素はそれぞれ、およそ150kDaの一本鎖ポリペプチドとして翻訳され、これは次いで、天然プロテアーゼ、例えば内在性C.botulinum毒素プロテアーゼ、またはその環境において産生された天然プロテアーゼなどによるジスルフィドループ内でのタンパク質分解的切断によって切断される。この翻訳後プロセシングにより、単一のジスルフィド結合及び非共有結合的相互作用によって結合する、およそ50kDaの軽鎖(LC)及びおよそ100kDaの重鎖(HC)を含む二本鎖分子が生じる。各成熟二本鎖分子は、3つの機能的に異なるドメイン:1)神経伝達物質放出装置のコア成分を特異的に標的指向する亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性を含むメタロプロテアーゼ領域を含む、LC内に位置するタンパク質分解ドメイン;2)標的細胞の細胞内小胞から細胞質中へのLCの放出を促進する、HCのアミノ末端側半分内に含まれる移行ドメイン(H);及び3)標的細胞の表面に位置する受容体複合体への毒素の結合活性及び結合特異性を決定する、HCのカルボキシル末端側半分内に見出される結合ドメイン、を含む。様々な血清型/株の毒素内の特異的ドメインの位置を表1に提供する。
(表1)様々な血清型/株由来のC.botulinum毒素ドメイン
Figure 2019533430
毒素の完全なアミノ酸配列を図10〜16に提供する。BoNT/B4神経毒素ポリペプチド(Eklund株とも称される)の完全なアミノ酸配列を図17に提供する。
毒性には、これらの3つの機能的ドメインの結合活性、移行活性、及びプロテアーゼ活性が全て必要である。C.botulinum毒素がニューロンに侵入し、神経伝達物質放出を阻害する全体的な細胞中毒機序は、血清型またはサブタイプにかかわらず類似している。理論に束縛されるものではないが、中毒機序は、少なくとも4つのステップ:1)受容体結合、2)複合体の内部移行、3)軽鎖の移行、及び4)プロテアーゼ標的改変を伴う。この過程は、C.botulinum毒素のHドメインが、標的細胞の形質膜表面上に位置する毒素特異的受容体に結合した時に始まる。受容体複合体の結合特異性は、一部には、ガングリオシドとタンパク質受容体の特定の組み合わせによって達成されると考えられている。ひとたび結合すると、毒素/受容体複合体は、エンドサイトーシスによって内部移行し、内部移行した小胞は特定の細胞内経路へと選別される。移行ステップは、小胞区画の酸性化によって誘発される。ひとたび移行すると、毒素の軽鎖エンドペプチダーゼが、細胞内小胞からサイトゾル中に放出され、そこで、神経伝達物質放出装置のコア成分として知られる3つのタンパク質(小胞結合膜タンパク質(VAMP)/シナプトブレビン、25kDaのシナプトソーム結合タンパク質(SNAP−25)、及びシンタキシン)のうちの1つを特異的に標的指向する。これらのコア成分は、神経終末におけるシナプス小胞のドッキング及び融合に必要であり、可溶性N−エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体(SNARE)ファミリーのメンバーを構成する。BoNT/A及びBoNT/Eは、SNAP−25をカルボキシル末端領域で切断し、それぞれ9または26アミノ酸セグメントを放出し、BoNT/C1もまたSNAP−25をカルボキシル末端の近傍で切断する。ボツリヌス血清型BoNT/B、BoNT/D、BoNT/F、及びBoNT/G、ならびに破傷風毒素は、VAMPの保存された中心部分に作用し、VAMPのアミノ末端部分をサイトゾル中に放出する。BoNT/C1は、シンタキシンをサイトゾル側(cytosolic)形質膜表面の近傍の単一部位で切断する。シナプスSNAREの選択的タンパク質分解は、in vivoでC.botulinum毒素によって引き起こされる神経伝達物質放出の遮断の原因である。C.botulinum毒素のSNAREタンパク質標的は、種々の非ニューロン型のエキソサイトーシスに共通している;これらの細胞では、ニューロンの場合と同様に、軽鎖ペプチダーゼ活性がエキソサイトーシスを阻害する。例えば、Yann Humeau et al., How Botulinum and Tetanus Neurotoxins Block Neurotransmitter Release, 82(5) Biochimie. 427−446 (2000);Kathryn Turton et al., Botulinum and Tetanus Neurotoxins: Structure, Function and Therapeutic Utility, 27(11) Trends Biochem. Sci. 552−558. (2002);Giovanna Lalli et al., The Journey of Tetanus and Botulinum Neurotoxins in Neurons, 11(9) Trends Microbiol. 431−437, (2003)を参照されたい。
ドメイン及びキメラ神経毒素
本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素は、改変受容体結合ドメイン(H)を含む。改変受容体結合ドメインは、1つ以上のC.botulinum毒素株によって典型的に結合され、使用される1つ以上のヒト受容体(例えば、SytII、SytI)への著しく増強した結合を示す。その改変受容体結合ドメインは、改変血清型B4受容体結合ドメイン(本明細書に記載される)となる。これは、BoNT内の1つ以上の他のドメインと同一または異なる血清型、株/サブタイプであってよい。特定の改変受容体結合ドメインの例を本明細書において提供する。本明細書に記載される単離された改変受容体結合ドメインポリペプチドもまた、本発明によって包含され、それがコードされる単離された核酸分子も同様に本発明によって包含される。
本発明のボツリヌス神経毒素はまた、当技術分野で軽鎖変種とも称されるプロテアーゼドメインを含む。軽鎖変種は、天然軽鎖変種、例えばC.botulinum毒素軽鎖アイソフォーム及びC.botulinum毒素軽鎖サブタイプなど;または、非天然C.botulinum毒素軽鎖変種、例えば保存的置換C.botulinum毒素軽鎖変種などであってよい。プロテアーゼドメインは、任意の血清型(A、B、C、D、E、F、またはG)、株、またはサブタイプ(本明細書に記載の)であることができる。これは、BoNT内の1つ以上の他のドメインと同一または異なる血清型、株/サブタイプであってよい。一実施形態では、プロテアーゼドメインは、血清型Bである。一実施形態では、プロテアーゼドメインは、血清型Aである。
本発明のボツリヌス神経毒素はまた毒素移行ドメイン(H)を含む。毒素移行ドメインは、任意の血清型(A、B、C、D、E、F、またはG)、株、またはサブタイプ(本明細書に記載の)であることができる。これは、BoNT内の1つ以上の他のドメインと同一または異なる血清型、株/サブタイプであってよい。一実施形態では、Hは、血清型Bである。一実施形態では、Hは、血清型Aである。
本明細書に記載される様々なドメイン(例えば、H、H、またはプロテアーゼドメイン)には、非限定的に、天然変種、例えば、アイソフォーム及びサブタイプなど;非天然変種、例えば、保存的置換変異などが含まれる。非天然変種とは、参照配列(例えば、表1または図8または10〜17の)の対応する領域からの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するドメインを指し、その参照配列の対応する領域に対するパーセント同一性で記載され得る。
本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素変種は、改変血清型B4 Hドメインを包含することが理解されるが、各血清型のC.botulinum毒素には、それらのアミノ酸配列、及びそれらのタンパク質をコードする核酸においてもまたいくらか異なる天然C.botulinumドメイン変種が存在し得ることが、当業者によって認識されている。本発明のBoNTの生成での使用が想定される天然C.botulinum毒素ドメイン(例えば、軽鎖、H、またはH)変種は、その天然C.botulinumドメイン変種の基礎となる参照C.botulinum毒素ドメインと実質的に同じ様式で機能することができ、参照C.botulinum毒素ドメインに取って代わることができる。
天然C.botulinum毒素ドメイン変種の非限定的な例は、C.botulinum毒素ドメインアイソフォーム、例えば、BoNT/Aドメインアイソフォーム、BoNT/Bドメインアイソフォーム、BoNT/C1ドメインアイソフォーム、BoNT/Dドメインアイソフォーム、BoNT/Eドメインアイソフォーム、BoNT/Fドメインアイソフォーム、及びBoNT/Gドメインアイソフォームなどである。C.botulinum毒素ドメインアイソフォームは、そのC.botulinum毒素ドメインアイソフォームの基礎となる参照C.botulinum毒素ドメインと実質的に同じ様式で機能することができ、参照C.botulinum毒素ドメインに取って代わることができる。
天然C.botulinum毒素ドメイン変種の別の非限定的な例は、C.botulinum毒素ドメインサブタイプ、例えば、サブタイプBoNT/A1、BoNT/A2、BoNT/A3、BoNT/A4、BoNT/A5に由来するドメイン;サブタイプBoNT/B1、BoNT/B2、BoNT/B3、BoNT/B4、BoNT/B5、BoNT/B6、BoNT/B7に由来するドメイン;サブタイプBoNT/C1−1、BoNT/C1−2、BoNT/D−Cに由来するドメイン;サブタイプBoNT/E1、BoNT/E2、BoNT/E3、BoNT/E4、BoNT/E5、BoNT/E6、BoNT/E7、BoNT/E8に由来するドメイン;及びサブタイプBoNT/F1、BoNT/F2、BoNT/F3、BoNT/F4、BoNT/F5、BoNT/F6、BoNT/F7に由来するドメインなどである。C.botulinum毒素ドメインサブタイプは、そのC.botulinum毒素ドメインサブタイプの基礎となる参照C.botulinum毒素ドメインと実質的に同じ様式で機能することができ、参照C.botulinum毒素ドメインに取って代わることができる。
本明細書で用いられる場合、「非天然変種」(例えば、C.botulinum毒素軽鎖変種、H及びH)という用語は、人為的操作の助けを借りて産生されたC.botulinumドメインを意味し、これには非限定的に、ランダム突然変異誘発または合理的設計を用いた遺伝子操作により産生されたドメイン、及び化学合成によって産生されたC.botulinumドメインが含まれる。非天然C.botulinumドメイン変種の非限定的な例には、例えば保存的C.botulinumドメイン変種が含まれる。本明細書で用いられる場合、「保存的C.botulinumドメイン変種」という用語は、参照C.botulinumドメイン配列(例えば、表1及び図8及び10〜17)由来の元のアミノ酸の性質と類似した少なくとも1つの性質を有する別のアミノ酸またはアミノ酸類似体によって置換された少なくとも1つのアミノ酸を有するC.botulinumドメインを意味する。変種は、参照ドメイン配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有し得る。性質の例には、非限定的に、類似のサイズ、トポグラフィー、電荷、疎水性、親水性、親油性、共有結合能、水素結合能、物理化学的性質など、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。保存的C.botulinumドメイン変種は、その保存的C.botulinum毒素ドメイン変種の基礎となる参照C.botulinum毒素ドメインと実質的に同じ様式で機能することができ、本発明の任意の態様において参照C.botulinumドメインに取って代わることができる。
非天然C.botulinum毒素ドメイン変種では、その天然C.botulinum毒素ドメインの基礎となる参照C.botulinum毒素ドメインから1つ以上のアミノ酸(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、またはそれ以上)を置換することができる。非天然C.botulinum毒素ドメイン変種はまた、その天然C.botulinumドメイン変種の基礎となる参照C.botulinum毒素ドメインに対して95%以上(例えば、96%、97%、98%、または99%)のアミノ酸同一性を有することができる。
様々な非天然C.botulinum神経毒素またはその特異的ドメインが、国際特許出願公開WO95/32738、WO96/33273、WO98/07864、及びWO99/17806に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に記載されるC.botulinum神経毒素またはその特異的ドメインは、典型的には天然アミノ酸残基を含むが、場合によっては非天然アミノ酸残基が存在してもよい。したがって、特定のアミノ酸またはペプチドの構造を模倣する非アミノ酸化学構造を含み得る、いわゆる「ペプチド模倣体」及び「ペプチド類似体」を、本発明において用いることもできる。このような模倣体または類似体は、一般的に、類似のサイズ、電荷、または疎水性などの物理的特性、及びそれらの天然ペプチド対応物中に見出される適切な空間的方向性を示すと特徴づけられる。ペプチド模倣体化合物の具体例は、当技術分野で周知であるように、1つ以上のアミノ酸間のアミド結合が、例えば炭素−炭素結合またはその他の非アミド結合によって置き換えられた化合物である(例えば、Sawyer, in Peptide Based Drug Design, pp. 378−422, ACS, Washington D.C. 1995を参照されたい)。
本明細書に記載される改変ボツリヌス神経毒素は、野生型またはEklund、株のHドメインと比較して、4つの置換変異:V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含むC.botulinum血清型B4の改変受容体結合ドメイン(BoNT/B−H)を含む。これらの置換変種は、ヒトSyt II受容体への著しく増強した結合をもたらす。本発明において参照テンプレートとして使用されるBoNT/B4−H Eklund株のアミノ酸配列を図17に示す(NCBI参照配列:YP_001893661.1、Genbank Ref:EF051570.1もまた参照されたい)。改変B−Hを含む完全BoNTまたはポリペプチドなどの改変B4−Hを組み込んだより長い分子の生成は、本明細書において特に企図される。
毒素の拡散及び中和抗体の生成は、BoNT/Aにも見られるように、BoNT/Bに関連するがこれに限定されない問題である。BoNT/Aのその受容体SV2への結合親和性の改善は、これらの問題を軽減するであろう。Syt I/IIへのBoNT/Bの結合は、SV2へのBoNT/Aの結合よりもはるかに高親和性を有するため、ヒトSyt IIを結合する能力を有する改変BoNT/B受容体結合ドメイン(BoNT/B−H)を用いて、BoNT/A−Hを置き換え、ヒトニューロンに対してWT BoNT/Aよりもより高い有効性及び特異性を有し得る改変キメラBoNT/Aを生成することもできる。(49−51)。
上記の改変B4 Hを使用して、他の全てのBoNT血清型/株のHを置き換えることができることもさらに想定される。したがって、本発明の別の態様は、異なる血清型(A、C、D、E、F、またはG)、株またはサブタイプの1つ以上のドメインと結合し、これによりキメラ神経毒素を産生する、改変血清型B4受容体結合ドメイン(H)を含むBoNTポリペプチドである。各BoNTのH領域は明確に定義されており、各H領域は、BoNT分子中で交換することができる(例えば、遺伝子操作を介して)。そのような操作は、当技術分野において確立されている、BoNT/B−Hと、他のBoNTの軽鎖(LC)及び移行ドメイン(H)またはH−LCとをコードするDNAの標準的なPCR融合を介して当業者によって日常的に行われる。加えて、置き換えはまた、各BoNTにおいてタンパク質受容体及びガングリオシドに対する結合部位を含む領域である、BoNT/B−HのC末端部分(HCCと呼ばれる)を用いて行ってもよい。結果として生じるキメラ毒素は、ヒトSyt I/IIへの結合を介してヒトニューロンを標的指向する能力を有し得る。非限定的な例として、改変BoNT/B4−H(またはBoNT/B4−HCC)を用いて、BoNT/AのH(またはHCC)を置き換えることができる。結果として生じるポリペプチドは、本発明によって包含される。これらのキメラ毒素は、WT BoNT/Aよりも、ヒトニューロンを標的指向する高い有効性及び特異性を有し得る。このようなキメラBoNT/A毒素は、ヒトにおける治療的用途のために用いることができ、WT BoNT/Aを超える著しい改善をもたらす。
一態様は、本明細書に記載される単離、精製された改変受容体結合ドメインポリペプチドに関する。一実施形態では、改変受容体結合ドメインは、改変BoNT/B4−Hである。一実施形態では、B4−Hは、本明細書に記載されるB4中の特定の位置(複数可)に対応するアミノ酸の置換により、異なる株及び/またはサブタイプのBoNTから生成される。一実施形態では、Hは、サブタイプB1、B2、B3、B5、B6、またはB7である。一実施形態では、改変B−Hは、株3、7、または8のものではない。
本発明は、ヒトにおける治療的用途のための、本明細書に記載されるアミノ酸置換を有する改変H(例えばB4−H)を含む変異株完全長BoNTを包含する。一実施形態では、完全長BoNTは、アミノ酸置換V1113K、S1117P、S1196A、及びI1197Pを有する改変H(例えばB4−H)を含み、さらに、B4のQ1191、Y1199、Y1183、及びW1178位(例えば、表2に列挙されたものから選択される)に対応する1つ以上の組み合わせのアミノ酸残基でのアミノ酸置換を含む。一実施形態では、BoNTは、アミノ酸置換V1113K、S1117P、S1196A、及びI1197P、ならびに本明細書に記載される1つの追加アミノ酸置換を有する改変B4 Hを含む。一実施形態では、BoNTは、アミノ酸置換V1113K、S1117P、S1196A、及びI1197P、ならびに本明細書に記載される2つの追加アミノ酸置換を有する改変B4 Hを含む。一実施形態では、BoNTは、アミノ酸置換V1113K、S1117P、S1196A、及びI1197P、ならびに本明細書に記載される3つの追加アミノ酸置換を有する改変B4 Hを含む。一実施形態では、改変B−Hは、株3、7、または8のものではない。
結果として生じるBoNT毒素は、ヒトSyt IIへの著しく増強した結合を有することができ、これにより、WT BoNTよりもヒトニューロンを標的指向するより高い有効性及び特異性を達成することとなる。結果として生じる変異体は、さらに、ヒトSytIへの類似の結合を維持し得るか、ヒトSytIへの著しく増強した結合を有し得るか、またはヒトSytIへの著しく低下した結合を有し得る。
ポリペプチド及びキメラポリペプチド
本発明の別の態様は、改変BoNT/B4受容体結合ドメインを含むポリペプチドに関する。一実施形態では、改変Hは、ポリペプチドにおいては、H中の改変された特定の位置にWTアミノ酸を有する類似のポリペプチド(血清型B4野生型対応物)と比較して、ヒトSyt II及び/またはSyt Iへの著しく増強した結合を有する。一実施形態では、改変血清型B4 Hは、本明細書に記載されるB4中の特定の位置(複数可)に対応するアミノ酸の置換により、異なる血清型、株及び/またはサブタイプのBoNTから生成される。一実施形態では、改変B−Hは、株3、7、または8のものではない。一実施形態では、結果として生じるポリペプチドは、ヒトSytI/IIへの結合を介してヒトニューロンを標的指向する能力を有する。
改変受容体結合ドメインを含むポリペプチドは、受容体結合ドメイン及び別の機能性ポリペプチド(例えば、ツーハイブリッドシステムに使用される機能性ポリペプチド(T18もしくはT25などの釣り餌もしくは餌食、またはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST))との融合タンパク質であり得る。これは、キメラポリペプチド分子と呼ばれることもある。あるいは、改変受容体結合ドメイン、ならびに、同定目的及び/または精製目的のポリペプチドタグ(例えば、ヘキサヒスチジン(His6)(配列番号1)、またはヘマグルチニン(HA)タグ(YPYDVPDYA)(配列番号2)などのエピトープタグ、またはGST)との融合であってもよく、これらの多くは当該技術分野において公知であり、一般的に使用される。融合は、連結を容易にするか、切断部位として機能するか、または独立した高次構造及び/または機能を保存する各機能的ドメイン間に、一連のアミノ酸を有し得る。一実施形態では、連結は、改変受容体結合ドメインの機能を保存する。一実施形態では、連結は、改変受容体結合ドメインの機能をマスクする。本発明の別の態様は、このようなポリペプチドの任意の1つをコードする核酸分子に関する。
改変BoNT/B4 Hは、他の物質(例えば、タンパク質、小分子、短いポリペプチド、核酸)に、共有結合的に(例えば、融合タンパク質として)または非共有結合的に連結することができる。したがって、本発明の別の態様は、第2部分に連結された、本明細書に記載のC.botulinum(例えば、血清型B4)の改変受容体結合ドメインである第1部分を含む、キメラ分子に関する。前記分子の第2部分は、治療薬(例えば、ポリペプチド薬物、または小分子もしくは核酸などの非ポリペプチド薬物)などの生物活性(または「生物学的に活性な」)分子であり得る。前記分子の第1及び第2部分の連結は、共有結合的(例えば、融合タンパク質の形態)または非共有結合的であり得る。そのような連結の方法は、当技術分野で公知であり、熟練した実務者により容易に適用することができる。本発明のキメラ分子のそのような用途の1つは、ヒトにおいてニューロンを標的指向するための送達手段としてである。例えば、改変BoNT/Hを他の治療薬に連結させ、ヒトSyt I及び/またはSyt IIに結合することによってヒトのニューロンに治療薬を送達するためのターゲティング媒体として機能させることができる。
受容体結合ドメイン(H)の改変
本明細書に述べられるように、本発明は、改変H、及び改変Hを含むポリペプチド(例えば、BoNTまたは融合またはキメラポリペプチド)に関する。これらの様々な本発明のポリペプチドを生成するために使用されるHアミノ酸配列の改変は、熟練した実務者により公知の様々な方法によって実施することができる。例としては、非限定的に、Syt I/IIに結合することが公知の領域内の各アミノ酸残基の標的指向された突然変異誘発(部位特異的突然変異誘発)またはランダム突然変異誘発が挙げられる。これらのSyt結合領域は、マウスまたはラットSyt受容体に関する先行研究により明確に定義されているが、BoNT/B−H及びヒトSyt受容体間の相互作用については明確に解明されていない。BoNT/Bの異なるサブタイプ、またはSyt I/II(D−CまたはG)に結合する他の血清型をテンプレートとして用いて、B4−Hについて本明細書に記載の対応する変異を起こすことによって、同一または類似の変異を引き起こすことができる。変異させるために選択された残基の対応する位置は、B4サブタイプとの配列アラインメントによって容易に同定することができる。結果として生じるポリペプチド産物は、前記産物を含むポリペプチドならびに前記ポリペプチド及び産物をコードする核酸分子と同様に、本発明によって包含される。
改変受容体結合ドメインを生成するためのHのアミノ酸配列の改変は、単一の残基の異なるアミノ酸への変異(単一部位置換)、同時に複数の残基の変異(複数部位置換)、1つ以上の残基の欠失(欠失)、及び1つ以上の残基の挿入(挿入)、ならびにそれらの組み合わせであり得る。タンパク質を変異させる方法は、当技術分野において周知である(例えば、BoNT/H配列をコードするDNA上の標的指向された単一部位及び複数部位の置換)。
一実施形態では、BoNT/B受容体結合ドメインに関する従来の文献(29)_ENREF_29及び報告されたBoNT/B−Syt II構造(PDB ID:2NM1)に基づいて、齧歯類のSyt IIまたは周辺領域のいずれかに接触するHの1つ以上の残基が改変される。これらには、非限定的に、BoNT/B4のY1181、I1197、S1196、F1204、F1194、S1117、W1178、Y1183、V1118、S1116、V1113、K1192、Y1199、S1201、Q1191、E1245、Y1256、D1115、及びE1203位に対応する位置が含まれる。一実施形態では、V1113K、S1117P、S1196A及びI1197P置換に加えて、これらの残基のうちの1つまたは複数を、他のアミノ酸によってシステミックに(systemically)置き換える。様々な改変の組み合わせもまた想定され、これには非限定的に、列挙された2つ以上の位置の、本明細書に列挙されたものなど任意の種々の様々なアミノ酸への変異が含まれる。
これらの同定された重要な残基における変異を組み合わせることによって、複数部位置換(例えば、2または3)を生成することができる。そのような複数部位置換変異体は、h−Syt IIへのさらに増強した結合を有し得、さらに、ヒトSyt Iへの増強した結合を維持または有し得る。一実施形態では、改変B4 Hは、B4野生型配列に対して4つのアミノ酸置換(V1113K、S1117P、S1196A及びI1197P)を有し、さらに、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P及びこれらの組み合わせから選択される血清型B株4における置換変異に対応する1つ以上の置換変異を含む。
以下表2に示す、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197P、ならびに単一アミノ酸置換変異を有する改変B4 Hもまた想定され、本明細書に記載の様々なポリペプチドにおけるその組み込みと同様である。
(表2)
Figure 2019533430
一実施形態では、改変B4 Hは、特定の位置にWTアミノ酸を有する類似のポリペプチド(野生型対応物とも称される)と比較して、hSyt IIへの増強した結合を有する。一実施形態では、生成された変異体は、野生型対応物と比較して、ヒトSyt Iへの著しく増強した結合を維持、または有する。
一実施形態では、Hは、表3の血清型B株4について示されるものに対応する2つの置換変異を有する。
(表3)
Figure 2019533430
核酸分子
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるポリペプチド(例えば、本明細書に記載される、改変受容体結合ドメイン、または該改変受容体結合ドメインを含むポリペプチド、または該改変受容体結合ドメインを含むボツリヌス神経毒素)をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。一実施形態では、核酸分子は、図9に示される核酸配列を含む。このような核酸分子は、例えば、組換えDNA技術によって、熟練した実務者により生成することができる。所望のアミノ酸置換変異は、例えば、コーディングDNAの改変によってなされる。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸配列は、以下に示す遺伝暗号を用いて、特定のアミノ酸をコードする核酸コドンを所望のアミノ酸に変異させることによって生成される:
Figure 2019533430
一実施形態では、核酸配列は、E.coliで発現するのに最適化される(例えば、GenBank AB232927.1に基づく核酸配列、その関連部分は図9に示される)。
本発明の別の態様は、本明細書に記載される核酸分子を含む核酸ベクターに関する。一実施形態では、ベクターは発現ベクターである。そのような発現ベクターは、本明細書において発現構築物と称され、細胞または無細胞抽出物中で核酸分子を発現するのに有用な発現ベクターに作動可能に連結された、本明細書に開示される核酸分子を含む。本発明のC.botulinum神経毒素をコードする核酸分子を発現させるには、多種多様なベクターを用いることができ、これには非限定的に、ウイルス発現ベクター;原核生物発現ベクター;真核生物発現ベクター、例えば、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、及び哺乳動物発現ベクターなど;ならびに無細胞抽出物発現ベクターが含まれる。これらの方法の態様を実施するのに有用な発現ベクターには、構成的、組織特異的、細胞特異的、または誘導性のプロモーターエレメント、エンハンサーエレメント、またはその両方の制御下でC.botulinum神経毒素を発現するものが含まれ得ることがさらに理解される。発現ベクターの非限定的な例は、そのような発現ベクターから発現構築物を作製し使用するための確立された試薬及び条件と共に、非限定的に、BD Biosciences−Clontech, Palo Alto, Calif.;BD Biosciences Pharmingen, San Diego, Calif.;Invitrogen, Inc, Carlsbad, Calif.;EMD Biosciences−Novagen, Madison, Wis.;QIAGEN, Inc., Valencia, Calif.;及びStratagene, La Jolla, Califを含む商業的販売業者から容易に入手可能である。適切な発現ベクターの選択、作製、及び使用は、十分に当業者の技術の範囲内であり、本明細書における教示からの日常的手順である。
細胞
本発明の別の態様は、本明細書に記載される核酸分子または発現構築物を含む細胞に関する。細胞は、核酸の増殖もしくは核酸の発現またはその両方のためのものであってよい。このような細胞には、好気性、微好気性、好二酸化炭素性、通性、嫌気性、グラム陰性、及びグラム陽性菌細胞の株、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、ウェルシュ菌(Clostridia perfringens)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridia difficile)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、ナイセリア・メニンギルルス(Neisseria meningirulls)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、及びネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)に由来するものなどを非限定的に含む原核細胞;ならびに酵母株、例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・アウグスタ(Pichia angusta)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に由来するものなどを非限定的に含む真核細胞;昆虫細胞及び昆虫に由来する細胞株、例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、及びタバコスズメガ(Manduca sexta)に由来するものなど;ならびに哺乳動物細胞及び哺乳動物細胞に由来する細胞株、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、ウシ、ウマ、霊長類、及びヒトなどに由来するものなどが非限定的に含まれる。細胞株は、American Type Culture Collection、European Collection of Cell Cultures及びthe German Collection of Microorganisms and Cell Culturesから入手することができる。適切な細胞株を選択、作製、及び使用するための具体的なプロトコールの非限定的な例は、例えば、INSECT CELL CULTURE ENGINEERING (Mattheus F. A. Goosen et al. eds., Marcel Dekker, 1993);INSECT CELL CULTURES: FUNDAMENTAL AND APPLIED ASPECTS (J. M. Vlak et al. eds., Kluwer Academic Publishers, 1996);Maureen A. Harrison & Ian F. Rae, GENERAL TECHNIQUES OF CELL CULTURE (Cambridge University Press, 1997);CELL AND TISSUE CULTURE: LABORATORY PROCEDURES (Alan Doyle et al eds., John Wiley and Sons, 1998);R. Ian Freshney, CULTURE OF ANIMAL CELLS: A MANUAL OF BASIC TECHNIQUE (Wiley−Liss, 4.sup.th ed. 2000);ANIMAL CELL CULTURE: A PRACTICAL APPROACH (John R. W. Masters ed., Oxford University Press, 3.sup.rd ed. 2000);MOLECULAR CLONING A LABORATORY MANUAL, supra, (2001);BASIC CELL CULTURE: A PRACTICAL APPROACH (John M. Davis, Oxford Press, 2.sup.nd ed. 2002);及びCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, supra, (2004)に記載されている。これらのプロトコールは、当業者の技術の範囲内であり、本明細書における教示からの日常的手順である。
細胞は、核酸を発現し、これによりコードされたポリペプチドを生成するためのものであり得る。したがって、本発明の別の態様は、本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素タンパク質、単離H、または改変Hを含むポリペプチドを生成するための方法である。そのようなポリペプチドは、発現構築物において、該ポリペプチドをコードする核酸をその中に有する宿主細胞を培養することによって生成される。培養は、BoNTポリペプチドの生成に適した条件下で実施される。発現ポリペプチドは、当業者に公知の方法によって、培養物から回収でき、精製でき、そして製剤化できる。発現ポリペプチドは、当業者に公知の方法によって、必要に応じて活性化することもできる。発現ポリペプチドを活性化する1つの方法は、プロテアーゼにより切断して(またはニックを入れて)活性二本鎖形態にすることである。このような方法は、例えば、Peter F. Bonventre and Lloyd L. Klempe ( J. Bacteriol 1960, 79(1): 23及びMichaeal L. Dekleva and Bibhuti R. DasGupta (Biochemical and Biophysical Research Communicaitons 1989, 162: 767−772)によって開示されているような、当技術分野において公知のものから適応することができる。
薬学的組成物
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるC.botulinum神経毒素またはキメラ分子を含む薬学的組成物に関する。一実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、薬学的に許容し得る担体を含む組成物(本明細書において薬学的組成物と称される)中の活性成分である。「薬学的に許容し得る担体」とは、標的指向された送達組成物を混合する、及び/または対象に送達するための薬学的に許容し得る任意の手段を意味する。本明細書で用いられる「薬学的に許容し得る担体」という用語は、対象に送達するための形態でBoNTポリペプチドを維持または樹立するのを助ける、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料などの、薬学的に許容し得る材料、組成物、または媒体を意味する。各担体は、組成物の他の成分と適合性があるという意味において「許容可能」でなければならず、対象、例えばヒトへの投与に適合性がある。このような組成物は、本明細書に記載される投与経路などのいくつかの経路のうちの1つまたは複数による投与のために特別に製剤化することができる。補助活性成分もまた、組成物中に組み込むことができる。本明細書に記載される薬剤、製剤、または薬学的組成物を対象に投与する場合、好ましくは治療的有効量が投与される。本明細書で用いられる場合、「治療的有効量」という用語は、病態の改善または好転をもたらす量を指す。一実施形態では、薬学的組成物は、注射による投与のために製剤化される。一実施形態では、薬学的組成物は、マイクロスフェア中に封入されたボツリヌス神経毒素を含む。一実施形態では、薬学的組成物は、経上皮送達のために製剤化されたボツリヌス神経毒素を含む。一実施形態では、薬学的組成物は、徐放のために製剤化されたボツリヌス神経毒素を含む。
一実施形態では、本発明のボツリヌス神経毒素、ポリペプチド、またはキメラ分子は、徐放性製剤の形態である。このような組成物及び投与方法は、米国特許出願第2007/0020295号に提供されており、この内容は参照により本明細書に組み入れられる。
ボツリヌス神経毒素は、公知の手順に従って、樹立し、発酵槽においてClostridium botulinumの培養物を増殖させ、次いで回収し、その発酵混合物を精製することによって得ることができる。全てのボツリヌス毒素血清型は、初めに不活性な一本鎖タンパク質として合成され、これが神経活性となるためには、プロテアーゼによって切断されるかまたはニックが入らなければならない。ボツリヌス毒素血清型A及びGを産生する細菌株は内在性プロテアーゼを有し、したがって血清型A及びGは細菌培養物から主にその活性形態で回収することができる。これに対して、ボツリヌス毒素血清型C、D、及びEは、非タンパク質分解株によって合成され、したがって培養物から回収される際は典型的には活性化されていない。血清型B及びFは、タンパク質分解株及び非タンパク質分解株の両方によって産生され、したがって活性形態または不活性形態のいずれでも回収することができる。例えば、ボツリヌス毒素血清型Bを産生するタンパク質分解株は、産生された毒素の一部のみを切断し得る。ニックの入った分子対ニックの入っていない分子の正確な比率は、インキュベーションの長さ及び培養の温度に依存する。したがって、例えばボツリヌス毒素B型毒素の調製物の一定の割合は不活性となる可能性がある。一実施形態では、本発明の神経毒素は活性状態にある。一実施形態では、神経毒素は不活性状態にある。一実施形態では、活性神経毒素と不活性神経毒素の組み合わせが想定される。
キット
本発明には、本明細書に記載されるBoNTまたはポリペプチドを含むキットもまた包含される(例えば、薬学的組成物の形態で)。キットは、バイアルに包装された本明細書に記載される1つ以上の組成物を含み得る。キットは、組成物の治療的投与のための送達ツールもしくは装置、及び/または治療的投与のための説明書をさらに含み得る。キットは、成形容器に包装されたその中の全ての構成要素を有し得る。
本発明の別の態様は、薬学的組成物が予め充填された、本明細書に記載される薬学的組成物の投与のための送達ツールまたは装置(例えば、単回使用用)に関する。このような装置は、組成物を送達するためのシリンジまたはマイクロニードル装置であってよい。シリンジは、有効量の組成物が予め充填された単回使用シリンジであってよい。マイクロニードル装置は、その内容が全体として本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2010/0196445号に記載されているような、本明細書に記載される組成物でコーティングされた1つ以上のマイクロニードルを含み得る。
治療方法
本発明はまた、典型的に神経毒素で治療が行われる病態(例えば、骨格筋病態、平滑筋病態、腺病態、神経筋障害、自律神経障害、疼痛、または審美的/美容的病態)を治療するための方法を含む。このような病態は、熟練した実務者によって判断される望ましくないニューロン活動と関連している。本方法は、望ましくないニューロン活動を軽減するために、哺乳動物の適切な位置に、治療的有効量の本明細書に記載されるBoNTまたはポリペプチド/キメラ分子(例えば、薬学的組成物として)を投与し、それにより病態を治療するステップを含む。投与は、有効量の組成物を、望ましくない活動を示すニューロンに接触させる経路によるものである。
本明細書で述べられる方法による治療に関して想定される特定の病態には、非限定的に、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、口下顎発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、上肢局所性ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼疾患、脳性麻痺、局所性痙縮及び他の発声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱(すなわち、神経性排尿筋過活動または特発性過活動膀胱などの尿失禁を伴う全ての疾患)、前立腺癌及び他のがん形態、アニスムス、肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害及び他の筋緊張障害及び筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過多、消化管分泌過多、ならびに他の分泌障害、筋痙攣による疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、頭痛、例えば片頭痛など、かゆみ(そう痒)、ざ瘡が含まれる。加えて、本発明は、皮膚科学的または審美的/美容的な病態の治療、例えば、額のしわの軽減、肌のしわの軽減に用いることもできる。本発明はまた、スポーツ傷害の治療に用いることもできる。他の用途としては、流涎症及び多汗症などの障害の治療が挙げられる。加えて、BoNT/Aに対する中和抗体を発現した患者の治療のための代替毒素として、BoNT/Bが必要とされる。
加えて、ボツリヌスA型によって一般的に実施される周知の技術を使用して、改変神経毒素を投与して、他の神経筋障害を治療することができる。例えば、本発明を使用して、疼痛、例えば、頭痛、筋痙攣による疼痛、及び様々な形態の炎症性疼痛を治療することができる。例えば、Aoki米国特許第5,721,215号及びAoki米国特許第6,113,915号は、疼痛を治療するためにボツリヌス毒素A型を使用する方法を開示している。これらの2つの特許の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
自律神経系障害もまた、改変神経毒素によって治療することができる。例えば、腺機能不全は自律神経系障害である。腺機能不全には、多汗及び唾液分泌過多が含まれる。呼吸器機能不全は、自律神経系障害の別の例である。呼吸器機能不全には、慢性閉塞性肺疾患及び喘息が含まれる。Sanders et al.は、自律神経系を治療するための方法;例えば、天然ボツリヌス毒素を用いた、多汗、唾液分泌過多、喘息などの自律神経系障害の治療を米国特許第5,766,605に開示している。Sander et al.の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。一実施形態では、改変神経毒素を用いるが、Sanders et al.の方法と実質的に同様の方法を使用して、上記のものなどの自律神経系障害を治療することができる。例えば、鼻腔における粘液分泌を制御する自律神経系のコリン作動性ニューロンを退化させるのに十分な量で、改変神経毒素を哺乳動物の鼻腔に局所適用することができる。
改変神経毒素によって治療され得る疼痛には、筋緊張もしくは痙攣による疼痛、または筋痙攣を伴わない疼痛が含まれる。例えば、Binderは米国特許第5,714,468号において、血管障害、筋緊張、神経痛、及び神経障害による頭痛を、天然ボツリヌス毒素、例えばボツリヌスA型で治療することができることを開示する。Binderの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。一実施形態では、改変神経毒素を用いるが、Binderの方法と実質的に同様の方法を使用して、頭痛、特に、血管障害、筋緊張、神経痛、及び神経障害による頭痛を治療することができる。筋痙攣による疼痛もまた、改変神経毒素の投与によって治療することができる。例えば、WO2006001676(Kang Ahn)は、伏在神経絞扼によって引き起こされる膝関節痛を治療するためのボツリヌス神経毒素を使用する方法を開示しており、WO2008059126(Christine Favre et al.)は、化学療法によって誘発される疼痛を治療するためのボツリヌス神経毒を使用する方法を開示し、WO2008090287(Christine Favre et al.)は、抗HIV治療によって誘発される疼痛を治療するためのボツリヌス神経毒素を使用する方法を開示し、WO2009130600(Christine Favre et al.)は、糖尿病性神経障害に関連する疼痛を治療するためのボツリヌス神経毒素を使用する方法を開示し、そしてWO2007144493(Michel Auguet et al.)は、疼痛を治療するために、オピエート誘導体と組み合わせてボツリヌス神経毒素を使用する方法を開示している。WO2006001676、WO2008059126、WO2008090287、WO2009130600、WO2007144493の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。さらに、改変神経毒素を哺乳動物に投与して、痙攣などの筋障害に関連しない疼痛を治療することができる。一幅広い実施形態では、痙攣に関連しない疼痛を治療する本発明の方法は、改変神経毒素の中枢投与または末梢投与を含む。
筋痙攣を伴わない急性または慢性疼痛はまた、哺乳動物の実際のまたは知覚される疼痛部位への改変神経毒素の局所、末梢投与によって緩和することができる。一実施形態では、改変神経毒素が、疼痛部位またはその近傍、例えば傷口またはその近傍に皮下投与される。いくつかの実施形態では、改変神経毒素が、疼痛部位またはその近傍、例えば哺乳動物の挫傷部位またはその近傍に筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、関節炎病態による疼痛を治療または緩和するために、改変神経毒素が哺乳動物の関節に直接注射される。また、末梢疼痛部位への改変神経毒素の頻回反復注射または注入も本発明の範囲内である。
このような方法のための投与経路は、当技術分野で公知であり、熟練した実務者によって、本明細書に記載される方法に容易に適合化される(例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine (1998),Anthony Fauci et al.編, 14th edition,McGraw Hill出版を参照されたい)。非限定的な例として、神経筋障害の治療は、筋肉または筋肉群に有効量の分子を局所投与するステップを含み得、自律神経障害の治療は、腺(複数可)に有効量の分子を局所投与するステップを含み得、そして疼痛の治療は、疼痛部位に有効量の分子を投与するステップを含み得る。加えて、疼痛の治療は、脊髄に有効量の改変神経毒素を投与するステップを含み得る。
本明細書に記載の改変B4 Hは、ヒトにおいてヒトシナプトタグミンIIを発現するニューロン及び他の細胞型を標的とするための送達ツールとして利用され得ることもまた想定される。例えば、別の生物活性分子(例えば、治療薬)に共有結合的または非共有結合的に連結し、これにより本明細書に記載されるキメラ分子を形成する改変Hは、その生物活性分子を、ヒトSyt I及び/またはSyt IIへの結合によって、ヒトにおいてヒトシナプトタグミンIIを発現するニューロン及び他の細胞型に送達する標的指向媒体として機能することができる。したがって、本発明の別の態様は、ヒト対象において、生物活性分子をニューロンに送達するための本明細書に記載されるキメラポリペプチド分子の使用に関する。前記分子の第2部分は、治療薬(例えば、ポリペプチドまたは薬物)などの生物活性分子であり得る。前記分子の第1及び第2部分の連結は、共有結合的(例えば、融合タンパク質の形態)または非共有結合的であり得る。そのような連結の方法は、当技術分野で公知であり、熟練した実務者により容易に適用することができる。本明細書に記載されるように、キメラポリペプチド分子は、改変B−Hが特異的に結合する受容体を発現するニューロン(標的ニューロン)にポリペプチドを接触させる経路によって投与され得る。
受容体結合活性の同定
本発明の別の態様は、改変BoNT受容体結合ドメインの、受容体(例えば、ヒトSyt IまたはヒトSyt IIまたはヒトSV2)へのその結合能を同定する方法に関する。該方法は、ツーハイブリッドシステムを使用し、ツーハイブリッドアッセイ(例えば、活性化ドメイン及びDNA結合ドメインを利用するGal 4転写活性化システム)に使用される各「釣り餌」及び「餌食」サブユニットにそれぞれ融合された受容体及び改変Hから作製された融合タンパク質(融合タンパク質として表される)を使用する。このツーハイブリッドアッセイは、典型的に酵母(S.cerevisiae)で実施されるが、類似のアッセイシステムが、他の単細胞生物、例えばE.Coliにおいても使用されるために開発されている。これらのシステムは、同等である。一実施形態では、細菌性アデニル酸シクラーゼのツーハイブリッドアッセイが使用される(Karimova et al., Proc Natl Acad Sci U S A. May 12, 1998;95(10): 5752−5756、この内容は参照により本明細書に組み入れられる)。このシステムは、釣り餌及び餌食としてT18及びT25を使用し、E.coli BTH101細胞を利用することができる。
改変Hは、ツーハイブリッドアッセイのE.ColiでのT18との融合タンパク質(第1融合タンパク質と称される)として発現する。この方法では、受容体(またはh−Syt IIアミノ酸1〜87などのその結合断片)は、ツーハイブリッドアッセイのE.ColiでのT25との融合タンパク質(第2融合タンパク質と称される)として共発現する。このアッセイは、それらの各融合体を介した各分子間の相互作用の陽性インジケーターを利用する。1つの可能性ある陽性インジケーターは発色である。第1及び第2の融合タンパク質の両方を発現するクローンE.Coliコロニーを、適切な選択培地及び報告培地(例えば、アンピシリン、カナマイシン、X−gal、及びIPTG)を含有する固体培地上で、陽性コロニーから陽性インジケーションの発生(例えば、色の発生)を可能にする任意の時間、成長させた。受容体断片への改変結合ドメインの結合は、陽性インジケーションをもたらし得る(例えば、LacZ遺伝子の発現により、X−galプレート上で成長したコロニーにおいて青色が発生する)。
コロニーは、適切な対照(陽性及び陰性)と比較して、そのような陽性インジケーション(例えば発色)について分析される。分析は、目視、またはノンヒューマン(non−human)の機械によるものであり得る。検知できるほどの陽性インジケーション(例えば、LacZ発現)を生じさせることができない適切な陰性対照(例えば、融合なしで発現される釣り餌及び餌食を有するなどのアッセイシステムの重要な構成要素を欠くクローンコロニー)が使用される。適切で強力な陽性対照もまた使用することができる。アッセイにおけるヒトSyt II受容体に対する強力な陽性対照の一例は、E1191(M/C/VまたはQ)での置換変異を有するB1−Hである。弱い陽性対照もまた、結合の強度を同定するために使用され得る。アッセイにおけるヒトSyt II受容体に対する弱い陽性対照の一例は、W1178(Q/Y/AまたはS)での置換変異を有するB1−Hである。陽性インジケーション(例えば、発色)の同定により、改変Hが受容体に結合することが示される。強力な発色(例えば、弱い陽性対照を超える)などの強力な陽性インジケーションの同定により、Hが受容体に高親和性で結合することが示される。
アッセイに使用される改変Hは、本明細書に開示されるいずれかの改変Hであり得る。非限定的な例として、改変Hは、本明細書中に開示されるものなどの1、2または3つの置換変異を含み得る。改変Hは、本明細書中に開示される任意の血清型/株またはサブタイプのものであり得る。
本明細書及び以下の実施例に記載される実施形態は、例示目的のためだけであり、当業者に明らかな様々な改変または変更が本発明の範囲内に含まれる。
本明細書で特に定義されない限り、本出願に関連して使用される科学用語及び専門用語は、当業者によって一般に理解される意味をもたなければならない。さらに、文脈により特に要求されない限り、単数の用語は、複数を含み、複数の用語は、単数を含むものとする。
本発明は、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコール、及び試薬などに限定されず、したがって変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、これは特許請求の範囲によってのみ定義される。
操作例以外において、または別段の指示のない場合、本明細書において用いられる成分の量または反応条件を表す数字は全て、あらゆる場合において「約」という用語で修飾されると理解されるべきである。本発明を説明するために、パーセント値と共に用いられる場合の「約」という用語は、±1%を意味する。
一態様では、本発明は、本発明にとって必須である本明細書中に記載される組成物、方法、及びそのそれぞれの構成要素(複数可)に関するが、必須であるか否かにかかわらず、指定されていない要素の包含も受け入れる(「含む」)。いくつかの実施形態では、組成物、方法、またはそのそれぞれの構成要素の説明に含まれる他の要素は、本発明の基本的かつ新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものに限定される(「本質的に〜からなる」)。このことは、記載される方法内のステップならびに組成物及びその中の構成要素にも同様にあてはまる。他の実施形態では、本明細書に記載される発明、組成物、方法、及びそのそれぞれの構成要素は、その構成要素、組成物、または方法にとって必須の要素であると見なされない任意の要素を排除することが意図される(「からなる」)。
関連付けられた特許、特許出願、及び出版物は全て、例えば、本発明に関連して使用され得るそのような出版物中に記載された方法論を説明及び開示する目的で、参照により本明細書に明確に組み入れられる。これらの出版物は、単に本出願の出願日よりも前に開示されたものが提供されているに過ぎない。この点に関するいかなるものも、先行発明または任意の他の理由によって、かかる開示に先行する権利が本発明者らに与えられないことを承認するものとして解釈されるべきではない。日付に関する全ての記載またはこれらの文書の内容に関する表現は、本出願に利用可能な情報に基づいており、日付またはこれらの文書の内容の正確性に関して認めるものではない。
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらはさらなる限定として解釈されるべきではない。
実施例1 h−Syt IIへのBoNT/Bの結合を増強する単一変異の同定
ラットSyt IIに結合したBoNT/Bの共結晶構造が解明されている(19,20)。これにより、突然変異誘発の研究のための、BoNT/B−Syt II界面における合計19種類の残基に関する安定した基礎が提供された(図2A、表5)。本発明者らの戦略は、h−Syt IIへの結合を向上させる全ての単一残基の変異を同定することを目的として、これら19の位置のそれぞれを20個全ての可能性のあるアミノ酸で飽和させることであった。そのために、本発明者らは、細菌性アデニル酸シクラーゼツーハイブリッドアプローチ(BACTH)を利用した(**33)。要約すると、BoNT/BのH(HB)を、細菌性アデニル酸シクラーゼの分割断片(T18と呼ぶ)を有するベクターへとサブクローニングした。T18−HB融合構築物を、選択した位置にランダムトリヌクレオチド(NNN)を含むプライマーを用いてPCRによって増幅し、選択した部位に20個全ての可能性のあるアミノ酸をコードする構築物のプールを作製した(図2B)。次いで、この構築物のプールを、分割された細菌性アデニル酸シクラーゼの残り半分(T25と呼ぶ)と融合した毒素結合部位を含むh−Syt IIの断片(残基1−87)を構成的に発現する構築物と共に、細菌(E.Coli株BTH101)に同時形質転換した。h−Syt IIへのHBの結合により、T18及びT25が一緒になり、アデニル酸シクラーゼの活性が回復し、これによりlacZ遺伝子の発現につながり、X−Galプレート上に青いコロニーがもたらされる(図2B)。
4箇所で青いコロニーE1191が確認された(総コロニー数の22.7%)、W11178(7.8%)、Y1183(4.0%)、及びS1199(5.1%)(表6)。これらの青いコロニーからプラスミドを抽出し配列決定し、これにより、各部位での変異E1191M/C/V/Q/L/Y、Y1183/C/P、S1199W/E/Y/H、W1178Y/Q/A/Sを明らかにした(図2C)。これらの変異は、再構成されたアデニル酸シクラーゼ活性を反映する細菌中のβ−ガラクトシダーゼのレベルを測定することによってさらに確認された。E1191部位での4つの変異、E1191M/C/V/Qが、全変異の中で最も強いβ−ガラクトシダーゼ活性を示した(図2D)。本発明者らは、さらにプルダウンアッセイを用いてE1191での変異を調べた。GSTタグ付き野生型(WT)マウスSyt II断片(m−Syt II、残基1−87)を陽性対照として使用した。ヒトSyt II断片は、マウスSyt II(1−87)中のF54をLに変異させることにより作製され、それによりヒト配列(h−Syt IIと呼ぶ)を模倣する。GSTタグ付きSyt II断片をビーズ上に固定化し、そしてHBをプルダウンするために使用した。イムノブロット分析により、融合HAタグを介して、結合HBを検出した。E1191M/C/V/Qは、h−Syt IIへの有意なレベルの結合をもたらした(図2E)。E1191における他の変異は、他の部位と同様に、h−Syt IIへの有意な結合をもたらさなかった(図18)。図18にて既に示されたものが確認されるが、図21はまた、他の変異がh−Syt IIへの有意な結合をもたらさなかったことを示す。まとめると、これらのデータは、E1191M/C/V/Q変異を含むHBが、h−Syt IIに結合する改善した能力を獲得したことを証明する。
実施例2 HBにおける組み合わせ変異は、そのh−Syt IIへの結合をさらに増強した
次に、本発明者らは、h−Syt IIへのHB(E1191M/C/V/Q)の結合が、異なる位置に二次変異を含むことによってさらに増強され得るかどうかを調べた。E1191Mを、1183、1199、及び1178部位でのBACTHスクリーニングにおいて同定された残基の変化と組み合わせることによって、二重変異を発生させた(図2C)。これらの10個の二重変異体を、プルダウンアッセイにおいて、h−Syt IIに結合するそれらの能力について分析した(図3A)。それらのうちの3つ、E1191M/S1199W、E1191M/S1199Y、及びE1191M/W1178Qは、h−Syt IIへの強固な結合を示したが、E1191MをY1183C/Pと組み合わせると、h−Syt IIへの結合が減少した(図3A)。E1191が空間的にY1183に近いことを考慮すると(図2A)、このことからE1191及びY1183の両方を変異させる際の潜在的な構造的対立が示唆される。
次に、一次変異E1191M/C/V/Qと適合する二次変異S1199W/Y及びW1178Q、ならびに三重変異E1191M/S1199W/W1178Qの12個全ての組み合わせを本発明者らは発生させた。h−Syt IIに対する12個全ての変異体の結合親和性(K)を、表4に列挙されたパラメーター、及び図19に示された代表的なトレースを用いて、バイオレイヤー干渉アッセイ(BLI)を使用して測定した。要約すると、GSTタグ付きSytフラグメントをプローブ上に固定化し、次いでこれを異なる濃度の精製HBに暴露し(会合段階、図3B)、続いて洗浄ステップ(解離段階、図3B)を行った。m−Syt IIへのWT HBの結合は、陽性対照として機能し、0.13μMのKを示した(表4)。h−Syt IIへのWT HBの結合は、検出限界を超えて確実に測定されることができないほど弱く、推定K>20μMであった(図3B、表4)。E1191M変異体は、h−Syt IIに対して6.7μMの結合Kをもたらした。大部分の二重変異体は、結合親和性をさらに改善し、K値は0.59μMから4.3μMの間であった(図19、表4)。上位2つの二重変異体E1191M/S1199Y(K=0.72μM)及びE1191V/S1199Y(K=0.59μM)は、E1191M変異体よりも桁違いの親和性をもたらした(図3B、表4)。E1191Q/W1178Q二重変異体は、h−Syt IIに唯一結合しなかった。三重変異E1191M/S1199W/W1178Qは、二重変異体E1191M/S1199Wと同様の結合親和性を示し、第3の変異部位を追加してもさらなる改善がもたらされなかったことを示している(表4)。
実施例3 HB変異体は、h−Syt Iへの増強された結合を示した
次に、HB変異体が依然としてh−Syt Iに結合するかどうかを調べた。図24は、本明細書に記載のBoNT/B結合界面におけるSyt IとSyt II間、及びヒトSyt IとマウスSyt I間の比較を示す。Syt IへのWT HBの結合は、プルダウンアッセイにおいて共受容体ガングリオシドの存在下でのみ検出することができる。これは、Syt Iが、Syt IIと比較して、BoNT/Bに対して低い結合親和性を示すためである(15,28)。本発明者らは、プルダウンアッセイにおいて、ガングリオシドの非存在下で、E1191M及びE1191M/S1199Y変異体の両方がh−Syt Iに結合することを見出し(図3C)、このことから、これらの変異体がh−Syt Iへの増強した結合を有し得ることが示唆される。本発明者らは、BLIアッセイを用いて、本発明者らの上位2つの変異体(E1191M/S1199Y及びE1191V/S1199Y)のh−Syt Iへの結合親和性を測定した。E1191M/S1199Y(HMY)またはE1191V/S1199Y(HVY)を含有するHBは、それぞれ2.9μM及び5.82μMのKを示した。h−Syt IへのWT HBの結合が確実に測定することができないほど弱いことが確認されるが(表4、図20)、HB変異体は、h−Syt IIへの結合を増強するだけでなく、h−Syt Iへの結合も増強した。HMYは、HVYと比較して、h−Syt Iに対してより高い結合親和性を示し、かつSyt I及びSyt IIの両方に対しては、より低い解離定数を示したため、本発明者らは、さらに特性解析するために、この変異体を選択した。
実施例4 HMYは、ニューロン表面のh−Syt IIに結合する
次に、HMY変異体が生理学的に関連のあるニューロン表面上のh−Syt IIに結合し得るかどうかを調べた。この目的のために、Syt Iを発現するがSyt IIを発現しない培養ラット皮質ニューロンを使用した(13)。これにより、Syt Iのノックダウン(KD)により、内在性受容体のないニューロンを生成した。これらのSyt I KDニューロンにおける完全長h−Syt IIの発現により、毒素受容体としてh−Syt IIのみを有する「ヒト化」ニューロンが作製された(18)。予想通り、WT HBはラットニューロンに強く結合し、その結合は内在性Syt Iをノックダウンした後に消失した。h−Syt IIでもF54L変異を含むm−Syt IIでもなく、完全長m−Syt IIの発現は、WT HBの結合を回復させた(図4A)。対照的に、HMYは、m−Syt II、h−Syt II、またはm−Syt II(F54L)を発現するニューロンへの強固な結合を示し、HMYがニューロン表面上のh−Syt IIへの増強した結合能を有することを示した(図4B)。
実施例5 BoNT/B変異体は、ヒト化ニューロンにおける神経伝達を遮断するための増強した有効性を示した
h−Syt IIへの増強した結合が、ニューロンの機能レベルにおいて有効性につながるかどうかという重要な問題に取り組むために、完全長WT BoNT/B及びE1191M/S1199Y二重変異毒素(BoNT/BMY)を、E.Coliで組換え産生した(図23)。ヒト化ニューロンを、WTまたはBoNT/BMY毒素の勾配に暴露した。VAMP2の切断をイムノブロット分析によって調べた。図5Aに示すように、試験した各毒素濃度において、WT BoNT/Bに暴露したニューロンと比較して、BoNT/BMYに暴露したニューロンにおいて、より多くのVAMP2が切断された。このことは、BoNT/BMYが、WT毒素よりも効率的にニューロンを標的指向し、侵入したことを示す。
次に、全細胞パッチクランプ記録法を用いて、微小抑制性シナプス後電流(mIPSC)を記録することによって、神経伝達物質放出をモニターした。mIPSCの周波数は、ニューロン集団における神経伝達物質放出の活性を反映する。シナプス前終末へのBoNT/Bの侵入は、神経伝達物質の放出を遮断し、これによりmIPSCの周波数を減少させる(図5B)。ヒト化ニューロンを、WT BoNT/BまたはBoNT/BMYの勾配に暴露した。図5Cに示すように、BoNT/BMYは、WT毒素よりも約11倍低い半数阻害濃度(IC50)で、非常に増強された効力を示した。これらのデータは、ヒト受容体への増強した結合が、ニューロンの機能レベルにおいて毒素の有効性を増大させることを証明した。
実施例6 BoNT/B4サブタイプはQ1191/Y1199を含むが、h−Syt IIには結合しない
最後に、h−Syt IIへの結合に影響を与え得るBoNT/Bサブタイプに天然に存在する配列変化が存在するかどうかを調べた。BoNT/Bは、今日までに知られている8つのサブタイプ(BoNT/B1〜B8、BoNT/B1はBoNT/Bプロトタイプとして知られる)を有し、7%までの配列変化を有する(34)。配列アラインメントにより、E1191及びS1199の両方における変化が明らかとなった(図6A)。興味深いことに、E1191Q(BoNT/B4、/B8)及びS1199Y(BoNT/B2、/B3、/B4、/B7)のケースがあった。B4においてはE1191Q及びS1199Yの組み合わせ(BoNT/B1におけるその二重変異体は、h−Syt IIへの強固な結合をもたらした(表4))もある。しかしながら、HB4は、プルダウンアッセイにおいてh−Syt IIに結合しなかった(図6B)。これは、BoNT/B1からHB4の他の残基が変化していることに起因すると考えられる。BoNT/B−Syt界面における19個の重要な残基の中には、BoNT/B1とB4との間で異なる4つの他の残基がある(図7)。実際、HB4中の4つの残基全てをBoNT/B1中の対応する残基に置換すると、h−Syt IIへのその結合が向上した(図6C)。図6Cにて既に示されたものが確認されるが、図22はまた、HB4の4つの残基全てをBoNT/B1中の対応する残基と置換することにより、h−Syt IIへと結合できる変異体HB4が作製されたことを示す。興味深いことに、ガングリオシドの非存在下で、HB4はh−Syt Iに対して強固な結合を示し、このことは、このサブタイプがBoNT/B1よりもSyt Iに対して優れた結合親和性を有することを示唆している(図6D)。
検討
BoNT/B−Syt II複合体の利用可能な共結晶構造に基づく合理的設計を、選択された各標的残基において起こり得る全ての単一点変異を飽和させるBACTH法と組み合わせることによって、h−Syt IIへの結合を改善するBoNT/B1における一連の点変異が同定された。これらの点変異は、異なる組み合わせでさらに調べられ、h−Syt IIに対して高親和性を示した二重変異体を明らかにした。さらに、これらの変異のうちの2つを含む完全長BoNT/B1は、ヒト化ニューロンに対してWT BoNT/B1よりも約11倍高い効力を示し、毒素受容体への増強された結合が、ニューロンの機能レベルにおいてより高い効力につながることを示した。
BoNT/B1の残基E1191は、h−Syt I及びh−Syt IIの両方に結合するための重要な位置であることがわかった。この残基は、BoNT/B・Syt II界面の周辺部に位置し、そこでは、M/C/V/Qを配置することによって、これらの残基がSyt IIと新たな/追加の結合を形成し得、加えて潜在的に好ましくない負電荷を除去し、これにより全体的な結合親和性を高め得る。h−Syt IIに加えて、E1191M変異はまた、Syt Iへの結合親和性を増加させた。E1191LがSyt IへのBoNT/Bの結合を向上させることは、既に示されている(35)。さらに、E1191をLまたはYで置換すると、h−Syt IIへの結合が向上するが、M/C/V/Qよりははるかに少ない程度であることも見出された。したがって、これらの結果は、1191が、全体的な結合界面を乱すことなく、BoNT/BとSyt I/IIとの間の結合親和性を調節するための重要な位置にあることを示唆している。
BACTHスクリーニングは、W1178Y/Q/A/S、Y1183C/P、及びS1199W/E/Y/Hを含む、h−Syt IIへの結合においてほんのわずかな向上をもたらすBoNT/Bにおける他の変異を同定した。S1199Yが、おそらくS1199YとSyt IIのF47との間のπスタッキング相互作用の結果として、Syt IIへのBoNT/Bの結合を向上させることは既に報告されている(19)。興味深いことに、BoNT/Bサブタイプの配列分析は、いくつかのこれらの部位における残基の変化を明らかにした。例えば、1199部位は、S、Y、またはHであり得、1191部位はE、K、またはQであり得る。そのような残基の変化は、Syt IまたはSyt IIに対する結合親和性を変化させると予想される。例えば、BoNT/B4は、BoNT/B1よりもh−Syt Iにより強く結合する。これはおそらく、BoNT/B4が1191部位にQを含み、1199部位にYを含むからである。本発明者らのBACTHスクリーニングで同定されたこれら2つの重要な位置で毒素−受容体相互作用を変化させるそれらの能力について、自然界は残基のレパートリーを既にサンプリングしているように思われる。ますます多くのサブタイプ毒素が明らかになることによって、毒素のHドメインにおいて天然に存在する配列変化によって、毒素−受容体相互作用を調節することができる残基を調査するための豊富な情報源がもたらされる。
BoNT/DC及びBoNT/Gは、BoNT/Bと同じSyt I/II上の表面残基を認識し、両方ともh−Syt IIへの結合の低下を示した(18)。Syt I/IIと複合したBoNT/DCの共結晶構造は解明されているため(36)、結合界面で重要な残基を標的指向する類似のアプローチにより、h−Syt IIへのその親和性を増加させるBoNT/DCにおける特定の変異が同定され得る。
興味深いことに、ヒトのヒトVAMP1基質における単一残基の変化(マウスのM48(マウスVAMP1配列番号)からヒトのI48へ)のために、ヒトはBoNT/Dに対して感受性が低いことが知られている。この位置に残基Iがあると、BoNT/Dは著しく低い切断効率を示した(37−39)。BoNT/DCが、BoNT/Dと同じプロテアーゼドメインを共有することを考慮すると、ヒトは、その受容体における単一残基の変化、及びその基質における単一残基の変化の両方のために、BoNT/DCに対する感受性が低い。これら2つの変化がランダムな事象であるという可能性を排除することはできないが、BoNTが、ヒトの進化における選択圧であった可能性がある(37)。
BoNTの医学的使用は、猛毒の毒素を有効な治療薬に変換することの注目すべき例である。その医学的用途の急速な拡大に伴い、BoNTを操作し、その治療効果を改善し、その有害作用を軽減することへの関心が高まっている(40−44)。先行研究では、BoNT/AのHをBoNT/BのHで置換すると、マウス組織において効力を増大したキメラBoNT/ABをもたらすことが示されている(45,46)。これらの知見は、HBを利用して、ヒトにおけるBoNT/Aの効力を潜在的にさらに改善するキメラBoNT/ABを作製することができる可能性を示唆している。したがって、本明細書で同定されたBoNT/B変異体は、ヒトにおいて改善された有効性を有する新世代の治療用毒素の開発を可能にする。加えて、そのような改変BoNT/B及びそのHもまた、ヒトニューロンを標的指向するための貴重な科学的ツール及び送達媒体であり得る。
材料及び方法
材料及び構築物
以下の抗体は、明記した業者から購入した:Synapsin I(Clone 46.1,Synaptic Systems)、VAMP2(Clone 69.1,Synaptic Systems)、HA (16B12,Covance)、及びβ−tubulin III(ab18207,Abcam)。既に説明されているように、ウシ混合脳ガングリオシドをMatreya LLC(Pleasant Gap,PA)から購入し、Tris緩衝生理食塩水(TBS:20mM Tris、150mM NaCl)中に再構成した(14)。HB(残基857−1291、Genbank:ACA46990.1)及びHB4(Genbank:EF051570)をコードするcDNAを、E.Coli発現のためにコドン最適化し、そしてGenscript Inc.(New Brunswick,NJ)によって合成した。以下のcDNAは、明記したグループにより供与された:ラットSyt I(T.C. Sudhof, Palo Alto, CA)、マウスSyt II(M. Fukuda, Ibaraki, Japan)、ヒトSyt I(R.B. Sutton, Lubbock, TX)。HBをコードするDNAを、そのN末端にHis6タグ(配列番号1)及びHAタグ(YPYDVPDYA)(配列番号2)の両方を融合して、pET28aベクターにサブクローニングした。HBにおける変異は、部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies, CA)を用いて、PCRにより生成した。GSTタグ付きSyt I/II断片及びSyt II F54L変異体については、既に説明されている(15,18,23)。
完全長BoNT/B及びBoNT/BMYの産生及び活性化
完全長の不活性BoNT/BR370A,Y373F(受託B1INP5)をコードするcDNAを、E.Coliでの発現のためにコドン最適化した。それをNdeI/BamHIを介してpET32aへとクローニングし、C末端にヘキサヒスチジン親和性タグ(配列番号1)を付加した。その構築物を、標準的な部位特異的突然変異誘発(Agilent)により、その活性WT型に回復させた。E1191M/S1199Y変異を導入し、BoNT/BMY二重変異体を作製した。構築物をE.Coli(BL21 DE3株)へ形質転換し、mTB+100μg/mLアンピシリン中で増殖させ、そして1mMのIPTGを用いて16℃で20時間誘導した。細菌を回収し、ペレット1グラム当たり、50mM Tris pH8中0.5M NaCl 5mL、及びベンゾナーゼ0.5μL中での超音波処理によって溶解した。粗溶解物を4000×gで1時間、遠心分離により清澄化し、BoNT/BをHisTrap HPカラム(GE)で捕捉し、FPLC(GE)により50mM Tris pH8中0.5M NaCl中0.1Mイミダゾールで溶出した。溶出液を、HiPrep26/10脱塩カラム(GE)を用いて、50mM Tris pH8中125mM NaClに脱塩し、次いで10 kDa MWCOスピンフィルターを用いて、0.6mg/mLに濃縮した。濃縮物を0.1μg/mLのエンドプロテイナーゼLys−Cにより2時間37℃で処理し、次いで1Mの(NHSOに調整した後、phenyl Sepharose HP(GE)を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィーにより最終精製を行った。タンパク質を、50mM Tris pH 8中1Mから0Mの(NHSOのリニアグラジエントにより溶出した。二本鎖BoNT/Bを含有する画分をプールし、脱塩し、濃縮し、そして−80℃で保存した。
BACTH(細菌性アデニル酸シクラーゼツーハイブリッドアッセイ)。
BACTHアッセイを製造元の指示(Euromedex)に従って実施した。2つの適合性のあるプラスミドpUT18C及びpKT25をスクリーニングのために選択した。H−Syt II内腔ドメイン(残基1−80)をpKT25にクローニングし、pKT25−h−Syt IIを作製した。T18−HBを産生するために、HBをpUT18Cにクローニングした。指定された位置にランダムヌクレオチドトリプレット(NNN)を含むプライマーを用いてHB変異体ライブラリーを作製した。各ライブラリーをエレクトロポレーションにより、pKT25−h−Syt IIプラスミドと共に、E.Coli指示株BTH101に同時形質転換し、100μg/mlアンピシリン、50μg/mlカナマイシン、0.5mM IPTG及び40μg/ml X−Galを含有するLB寒天プレート上でスクリーニングした。このプレートを30℃で64時間インキュベートした。プラスミドを青いコロニーから抽出し、配列決定した。総コロニー数は、選択した変異部位で20個全てのアミノ酸を網羅する可能性を明らかにした。これは、クラーク−カーボンの式:P=1−(1−f)によって計算され、式中、fは、可能性のある残基の数(20個の異なるアミノ酸があるので、本明細書ではf=1/20)、Nは、コロニーの総数を表す。本発明者らのアッセイにおけるコロニーの最小数380個では、各位置における20個全てのアミノ酸をカバーする確率は>99.8%である。
β−ガラクトシダーゼ活性アッセイ。
このアッセイは、既に説明されているように実施される(47)。要約すると、目的のプラスミドを有するE.Coli BTH101細胞を、抗生物質及びIPTG(0.5mM)を含有するLB培地に播種した。この培養物を37℃で一晩増殖させ、定常期に到達させた。この培養物のOD600を回収前に記録した。培養物を遠心分離し、細胞ペレットをPBSで2回洗浄し、Z緩衝液(60mM NaHPO、40mM NaHPO、10mM KCl、1mM MgSO4、及び20mM DTT)に再懸濁した。その後、1:10(v/v)のクロロホルム及び1:20(v/v)の0.1%SDSを添加してよく混合し、細胞を透過処理した。次に、5:1の比で混合物をo−ニトロフェニル−p−ガラクトシド(Z緩衝液中4mg/ml)と混合し、28℃で10分間インキュベートした。1MのNaCO 80μlを添加することによって反応を停止させた。β−ガラクトシダーゼ活性は、A420/OD600として産出された。
GSTプルダウンアッセイ。
2種類のプルダウンアッセイを実施した。最初のシリーズは、GSTタグ付きm−Syt II(残基1−87)、及びヒトSyt II(h−Syt IIと呼ばれる)を模倣する変異体m−Syt II(F54L)への変異体HBの結合を迅速にスクリーニングするために使用された。要約すると、HBを発現する6mlのE.Coliをスピンダウンし、800μlのTBSに再懸濁し、超音波処理した後、2%Triton X−100と共に4℃で1時間インキュベートした。次いで、サンプルをマイクロ遠心機中で4℃で15分間スピンダウンした。上清を回収し、グルタチオン−セファロースビーズ(GE bioscience, Piscataway, NJ)に固定化した10μgのGST−Sytタンパク質と共に4℃で1時間インキュベートすることによってプルダウンアッセイに使用した。サンプルを洗浄緩衝液(0.5% Triton X−100を含むTBS)中で3回洗浄し、抗HA抗体を使用する免疫ブロット分析によって分析した。h−Syt IIへの増強された結合を示した変異体について、His6タグ化タンパク質(配列番号1として開示された「His6」)として、これらのHB変異体を精製することによって、さらなる特性解析を実施した。次いで、100μlのTBS緩衝液及び0.5% Triton X−100中の精製HB(100nM)及び固定化GST−Syt IIを用いて、ガングリオシド(60μg/ml)と共にまたはそれなしで、プルダウンアッセイを4℃で1時間行った。ビーズを、TBS緩衝液及び0.5% Triton X−100を用いて3回洗浄した。結合した材料の10%をSDS−PAGE、続いてイムノブロット分析に供した。
バイオレイヤー干渉アッセイ
B変種とSyt I/Syt IIとの間の結合親和性を、Blitzシステム(ForteBio)を用いたBLIアッセイにより測定した。要約すると、GSTタグ付きSyt IまたはSyt II(20μg/ml)を、Dip and Read(商標)Anti−GST Biosensors(ForteBio)に固定し、PBS緩衝液で平衡化した。次いで、該バイオセンサーを一連の濃度のHBに暴露し、続いてPBSで洗浄した。製造業者の指示(ForteBio)に従って、Blitzシステムソフトウェアを使用して、結合親和性(K)を算出した。
ニューロン培養物、レンチウイルス、及び毒素結合/侵入アッセイ。
ラット皮質ニューロンを、既に説明されているようにE18−19胚から調製した(14)。ニューロンにおけるSyt I KD、m−Syt II、及びh−Syt II発現のための構築物は、既に説明されている(18)。レンチウイルスをDIV5(in vitroでの日数)のニューロン培養物に添加し、毒素結合/侵入実験をDIV12−14で実施した。毒素を高K緩衝液(87mM NaCl、56mM KCl、1.5mM KHPO、8mM NaHPO、0.5mM MgCl、及び1mM CaCl)で希釈し、37℃に予熱した。ニューロンを上記の毒素含有緩衝液に37℃で5分間暴露した後、PBSで洗浄した。これらのニューロンを、免疫染色分析に供するか、または毒素不含培地中でさらに24時間インキュベートした後にイムノブロット分析を行った。
mIPSC記録
全細胞パッチクランプ記録を、DIV 14−18培養皮質ニューロン(DIV 14−18)から作成した。ピペット溶液は以下のものを含んだ(mM):135 CsCl、10 HEPES、1 EGTA、1 Na−GTP、4 Mg−ATP、及び10 QX−314(CsOHでpH 7.4に調整)。細胞内液が充填されたピペットの抵抗は、4〜5MΩの間で変動した。全細胞構成の形成及びピペットの細胞内液の平衡化後、直列抵抗を10MΩに調整した。シナプス電流を、−70mVの保持電位でEPC−10/2増幅器(HEKA)を用いてモニターした。バスの溶液は以下のものを含んだ(mM):140 NaCl、5 KCl、2 CaCl、1 MgCl2、10 HEPES、10 グルコース(NaOHでpH7.4に調整)。自発性抑制性シナプス後電流(sIPSC)及び誘発性抑制性シナプス後電流(eIPSC)は、AMPA及びNMDA受容体遮断薬CNQX及びAPVをバスの細胞外液に添加することによって、薬理学的に抑制された。活動電位を遮断するために、テトロドトキシン(TTX)の存在下で自発的な微小抑制性シナプス後電流(mIPSC)をモニターした。Clampfit 10(Molecular Devices)、Origin8ソフトウェア(Mocrocal Inc.)、MiniAnalysisソフトウェア(Synaptosoft)、及びIgor(Wavemetrics)を使用してデータを分析した。統計分析は、スチューデントのt検定で行った(P<0.01)。示されているデータは全て、平均値±標準誤差である。
参考文献
Figure 2019533430
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(表4)BLIによって測定されたGST−Syt II/Syt IとHB変種の間の相互作用。
Figure 2019533430
(表5)Syt IIと複合したBoNT/Bの利用可能な共結晶構造に基づいて選択された、Syt I/IIに対する結合ポケットを形成するBoNT/B中の19個の重要な残基のリスト(19,20)。
Figure 2019533430
(表6)BACTHスクリーニング後の各突然変異誘発部位におけるコロニー数の要約。
Figure 2019533430

Claims (67)

  1. a)プロテアーゼドメインと;
    b)プロテアーゼ切断部位と;
    c)移行ドメインと;
    d)ヒトSytIIに結合するボツリヌス菌(Clostridium botulinum)血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)と
    を含む、ボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド。
  2. 前記改変受容体結合ドメインが、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む、請求項1に記載のBoNTポリペプチド。
  3. Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する1つ以上の置換変異をさらに含む、請求項2に記載のポリペプチド。
  4. 前記改変(B4−H)が、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C及びY1183Pからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する2つの置換変異を含む、請求項3に記載のポリペプチド。
  5. 血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つが、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L及びQ1191Yからなる群より選択される、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
  6. 血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つが、血清型B株4におけるY1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P、Y1199FまたはY1199Lに対応する、請求項2に記載のポリペプチド。
  7. 血清型B株4における、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びW1178Q、Q1191L及びW1178Q、Q1191Y及びW1178Q、Q1191M及びY1183P、Q1191M及びY1183C、Q1191C及びY1183P、Q1191C及びY1183C、Q1191V及びY1183P、Q1191V及びY1183C、Q1191L及びY1183P、Q1191L及びY1183C、Q1191Y及びY1183P、Q1191Y及びY1183C、W1178Q及びY1183P、ならびにW1178Q及びY1183Cに対応する置換変異から選択される2つの置換変異をさらに含む、請求項2に記載のポリペプチド。
  8. 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1178Qに対応する、請求項5に記載のポリペプチド。
  9. 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Pに対応する、請求項5に記載のポリペプチド。
  10. 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Cに対応する、請求項5に記載のポリペプチド。
  11. 前記改変(B4−H)が、3つの置換変異をさらに含む、請求項2に記載のポリペプチド。
  12. 前記3つのさらなる置換変異が、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある、請求項11に記載のポリペプチド。
  13. 前記3つのさらなる置換変異が、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Pに対応する、請求項11に記載のポリペプチド。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載のBoNTポリペプチドをコードする、核酸。
  15. 請求項14に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
  16. 請求項14に記載の核酸を含む、細胞。
  17. 請求項1〜13のいずれか一項に記載のBoNTポリペプチドを発現する、細胞。
  18. a)プロテアーゼドメインと;
    b)プロテアーゼ切断部位と;
    c)移行ドメインと;
    d)置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含み、かつ、血清型B株4のS1201に対応する位置に置換変異をさらに含む、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)と
    を含む、ボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド。
  19. 前記プロテアーゼドメイン、移行ドメイン及びプロテアーゼ切断部位が、A、B、C、D、E、F、G及びそれらの組み合わせからなる群より選択される血清型に由来する、請求項1〜13及び18のいずれか一項に記載のBoNTポリペプチド。
  20. 前記プロテアーゼドメイン、移行ドメイン及びプロテアーゼ切断部位が、血清型B株1に由来する、請求項19に記載のBoNTポリペプチド。
  21. 前記プロテアーゼドメイン及び移行ドメインが、血清型A株1に由来する、請求項19に記載のBoNTポリペプチド。
  22. 前記プロテアーゼ切断部位が、血清型A、血清型Bに由来する、または血清型A及びBのキメラ切断部位である、請求項19に記載のBoNTポリペプチド。
  23. ヒトSytIIに結合するClostridium botulinum血清型B株4重鎖の改変受容体結合ドメイン(B4−H)を含む、ポリペプチド。
  24. 前記改変受容体結合ドメインが、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む、請求項23に記載のポリペプチド。
  25. Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する1つ以上の置換変異をさらに含む、請求項24に記載のポリペプチド。
  26. 前記改変(B4−H)が、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C及びY1183Pからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する2つの置換変異を含む、請求項25に記載のポリペプチド。
  27. 血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つが、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L及びQ1191Yからなる群より選択される、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)を含む、請求項24に記載のポリペプチド。
  28. 血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つが、血清型B株4におけるY1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P、Y1199FまたはY1199Lに対応する、請求項24に記載のポリペプチド。
  29. 血清型B株4における、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びW1178Q、Q1191L及びW1178Q、Q1191Y及びW1178Q、Q1191M及びY1183P、Q1191M及びY1183C、Q1191C及びY1183P、Q1191C及びY1183C、Q1191V及びY1183P、Q1191V及びY1183C、Q1191L及びY1183P、Q1191L及びY1183C、Q1191Y及びY1183P、Q1191Y及びY1183C、W1178Q及びY1183P、ならびにW1178Q及びY1183Cに対応する置換変異から選択される2つの置換変異をさらに含む、請求項24に記載のポリペプチド。
  30. 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1178Qに対応する、請求項27に記載のポリペプチド。
  31. 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Pに対応する、請求項27に記載のポリペプチド。
  32. 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Cに対応する、請求項27に記載のポリペプチド。
  33. 前記改変(B4−H)が、3つの置換変異をさらに含む、請求項24に記載のポリペプチド。
  34. 前記3つのさらなる置換変異が、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある、請求項33に記載のポリペプチド。
  35. 前記3つのさらなる置換変異が、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Pに対応する、請求項33に記載のポリペプチド。
  36. 請求項22〜35のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
  37. 請求項36に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
  38. 請求項36に記載の核酸を含む、細胞。
  39. 請求項22〜35のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはキメラ分子を発現する、細胞。
  40. 第2部分に連結された、Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)である第1部分を含む、キメラ分子であって、前記改変B4−HがヒトSytIIに結合する、前記キメラ分子。
  41. 前記Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)が、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む、請求項40に記載のキメラ分子。
  42. 前記Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)が、Q1191M;Q1191C;Q1191V;Q1191L;Q1191Y;W1178Y;W1178Q;W1178A;W1178S;Y1183C;Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の置換変異をさらに含む、請求項41に記載のキメラ分子。
  43. 前記改変B4−Hが、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C及びY1183Pからなる群より選択される2つの置換変異を含む、請求項41に記載のキメラ分子。
  44. 第2部分に連結された、Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−H)である第1部分を含む、キメラ分子であって、前記改変B4−Hが、血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異を含み、かつ、ヒトSytIIに結合し、前記置換変異の1つが、Q1191M;Q1191C;Q1191V;Q1191L及びQ1191Yからなる群より選択される、前記キメラ分子。
  45. 前記置換変異の1つが、血清型B株4におけるW1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183CまたはY1183Pに対応する、請求項44に記載のキメラ分子。
  46. 2つの置換変異が、血清型B株4における、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びW1178Q、Q1191L及びW1178Q、Q1191Y及びW1178Q、Q1191M及びY1183P、Q1191M及びY1183C、Q1191C及びY1183P、Q1191C及びY1183C、Q1191V及びY1183P、Q1191V及びY1183C、Q1191L及びY1183P、Q1191L及びY1183C、Q1191Y及びY1183P、Q1191Y及びY1183C、W1178Q及びY1183P、またはW1178Q及びY1183Cに対応する、請求項44に記載のキメラ分子。
  47. 前記改変(B−H)が、3つの置換変異を含む、請求項44に記載のキメラ分子。
  48. 前記3つの置換変異が、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある、請求項47に記載のキメラ分子。
  49. 前記3つの置換変異が、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Pに対応する、請求項47に記載のキメラ分子。
  50. 前記第1部分と前記第2部分が共有結合的に連結される、請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
  51. 前記第1部分と前記第2部分が非共有結合的に連結される、請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
  52. 前記第2部分が、低分子、核酸、短いポリペプチド、及びタンパク質からなる群より選択される、請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
  53. 前記第2部分が生物活性分子である、請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
  54. 前記第2部分が治療用のポリペプチドまたは非ポリペプチド薬物である、請求項53に記載のキメラ分子。
  55. 請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドをコードする、核酸。
  56. 請求項55に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
  57. 請求項55に記載の核酸を含む、細胞。
  58. 請求項40〜49のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはキメラ分子を発現する、細胞。
  59. 請求項1〜13、18〜35のいずれか一項に記載のボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチドもしくはポリペプチド、または請求項40〜54のいずれか一項に記載のキメラ分子、または請求項15、37もしくは56に記載の核酸ベクターを含む、薬学的組成物。
  60. 薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項59に記載の薬学的組成物。
  61. 請求項59に記載の薬学的組成物、及び前記薬学的組成物の治療的投与のための説明書を含む、キット。
  62. ボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチドを産生するための方法であって、前記BoNTポリペプチドが産生される条件下で請求項17、39または58に記載の細胞を培養するステップを含む、前記方法。
  63. 以下のステップ:
    培養物から前記BoNTポリペプチドを回収すること、
    前記BoNTポリペプチドを精製すること、
    前記BoNTポリペプチドを活性化すること、及び/または
    前記BoNTポリペプチドを製剤化すること
    の1つ以上をさらに含む、請求項62に記載の方法。
  64. 望ましくないニューロン活動と関連した病態を治療するための方法であって、治療上有効量の請求項1〜13、18〜35のいずれか一項に記載のBoNTポリペプチド、または請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子を対象に投与し、それにより、望ましくないニューロン活動を示す1つ以上のニューロンと接触させ、それにより、前記病態を治療することを含む、前記方法。
  65. 前記病態が、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、口下顎発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、上肢局所性ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼疾患、脳性麻痺、局所性痙縮及び他の発声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害及び他の筋緊張障害及び筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過多、消化管分泌過多、分泌障害、筋痙攣による疼痛、頭痛、片頭痛、ならびに皮膚科学的または審美的/美容的な病態からなる群より選択される、請求項64に記載の方法。
  66. 医薬における使用のための、請求項1〜13、18〜35のいずれか一項に記載のボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド、請求項59もしくは60のうち一項に記載の薬学的組成物、または請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
  67. 望ましくないニューロン活動と関連した病態の治療における使用のための、請求項1〜13、18〜35のいずれか一項に記載のボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド、請求項59もしくは60のうち一項に記載の薬学的組成物、または請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
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