JP2019533430A - 操作されたボツリヌス神経毒素 - Google Patents
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Abstract
Description
本出願は、2016年8月24日に出願された米国仮出願第62/378,967号の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、国立衛生研究所によって付与されたNIH 1R21NS082830の下で政府の支援を受けてなされたものである。当該政府は、本発明に一定の権利を有する。
本明細書は、2017年8月24日に「0342941_0602_SL.TXT」という名前の.txtファイルとして電子的に提出された配列表を参照する。.txtファイルは、2017年8月22日に作成され、サイズは106,905バイトである。配列表の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、改変神経毒素の分野、ならびに医学的及び/または審美的障害を治療するためのそれらの使用に関する。
ボツリヌス神経毒素は細菌毒素のファミリーであり、このファミリーは7つの主要な血清型(BoNT/A〜G)を含む(1)。これらの毒素は、ニューロンからの神経伝達物質の放出を遮断することによって作用し、これにより動物及びヒトを麻痺させる。近年、BoNTは、増加する医学的病態のリストを治療するために広く用いられている:微量の毒素を局所注射することで、標的指向された領域においてニューロン活動を弱めることができ、これは多くの医学的病態及び美容上の目的に有益であり得る(7−9)。
本明細書で用いられる場合、「結合親和性」という用語は、特定の受容体系に対するある分子の結合活性の強さを意味する。一般に、高い結合親和性は、結合ドメインとその受容体系との間のより大きな分子間力によって生じるのに対して、低い結合親和性は、リガンドとその受容体との間のより小さな分子間力を伴う。高い結合親和性は、結合ドメインのその受容体結合部位での滞留時間が、低い結合親和性の場合よりも長い。したがって、高い結合親和性を有する分子は、受容体系の結合部位を最大限に占有し、生理反応を引き起こすために、より低濃度の該分子が必要であることを意味する。逆に、低い結合親和性は、受容体系の受容体結合部位が最大限に占有され、最大の生理反応を得るには、比較的高濃度の分子が必要であることを意味する。よって、結合親和性が高いために結合活性が増大した本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素は、より低用量の毒素の投与を可能とし、それにより標的指向されていない領域への毒素の拡散に伴う望ましくない副作用を軽減または予防する。
C.botulinum毒素プロテアーゼドメインの非限定的な例を、表1に提供する。
本発明の態様は、Clostridium botulinumの改変受容体結合ドメイン(例えば、血清型B(B−HC))を含むポリペプチド、及びそのようなポリペプチドをコードする核酸の生成に関し、より具体的には、改変受容体結合ドメインの組み込みによりそれらのヒト受容体への結合を改善したC.botulinum神経毒素(BoNT)ポリペプチド、及びそのようなポリペプチドをコードする核酸に関する。これらの知見から、現在利用されているWT BoNTと比較して、ヒトニューロンを標的指向するための有効性及び特異性が改善された本明細書で同定された改変受容体結合ドメインを含む新世代の治療用BoNTを作製することができる。
BoNT/Bが、ヒトSyt IIに結合できないために、ヒトにおいて特異性が低く、かつより強力ではないという観察結果により、BoNT/Aよりも比較的高用量が必要とされる理由が説明され得る。より高いBoNT/B用量は、抗体応答を誘発する可能性、及び重篤な副作用が起こる可能性の増加に対応する。したがって、ヒト受容体Syt IIへのBoNT/Bの結合を改善して、ヒトニューロンを標的指向するためのその有効性及び特異性を増大させることにより、治療的用途で用いられる毒素用量の減量が可能になるはずである。
本発明の一態様は、本明細書に記載される改変受容体結合ドメイン(例えば、Clostridium botulinum血清型B4の)を含むボツリヌス神経毒素(BoNT)タンパク質に関する。BoNTタンパク質は、プロテアーゼドメイン、移行ドメイン、及びプロテアーゼ切断部位をさらに含む。典型的には、これらは、プロテアーゼドメイン、プロテアーゼ切断部位、移行ドメイン、及び改変受容体結合ドメインの直鎖状のアミノからカルボキシルへの単一ポリペプチド順序で配置される。しかしながら、様々なドメインの異なる配置も適切に機能すると予測される。一実施形態では、改変受容体結合ドメインは、ヒトSyt I受容体及び/またはヒトSyt II受容体への著しく増強した結合をもたらす1つ以上の置換変異を含む。
本明細書に記載されるボツリヌス神経毒素は、改変受容体結合ドメイン(HC)を含む。改変受容体結合ドメインは、1つ以上のC.botulinum毒素株によって典型的に結合され、使用される1つ以上のヒト受容体(例えば、SytII、SytI)への著しく増強した結合を示す。その改変受容体結合ドメインは、改変血清型B4受容体結合ドメイン(本明細書に記載される)となる。これは、BoNT内の1つ以上の他のドメインと同一または異なる血清型、株/サブタイプであってよい。特定の改変受容体結合ドメインの例を本明細書において提供する。本明細書に記載される単離された改変受容体結合ドメインポリペプチドもまた、本発明によって包含され、それがコードされる単離された核酸分子も同様に本発明によって包含される。
本発明の別の態様は、改変BoNT/B4受容体結合ドメインを含むポリペプチドに関する。一実施形態では、改変HCは、ポリペプチドにおいては、HC中の改変された特定の位置にWTアミノ酸を有する類似のポリペプチド(血清型B4野生型対応物)と比較して、ヒトSyt II及び/またはSyt Iへの著しく増強した結合を有する。一実施形態では、改変血清型B4 HCは、本明細書に記載されるB4中の特定の位置(複数可)に対応するアミノ酸の置換により、異なる血清型、株及び/またはサブタイプのBoNTから生成される。一実施形態では、改変B−HCは、株3、7、または8のものではない。一実施形態では、結果として生じるポリペプチドは、ヒトSytI/IIへの結合を介してヒトニューロンを標的指向する能力を有する。
本明細書に述べられるように、本発明は、改変HC、及び改変HCを含むポリペプチド(例えば、BoNTまたは融合またはキメラポリペプチド)に関する。これらの様々な本発明のポリペプチドを生成するために使用されるHCアミノ酸配列の改変は、熟練した実務者により公知の様々な方法によって実施することができる。例としては、非限定的に、Syt I/IIに結合することが公知の領域内の各アミノ酸残基の標的指向された突然変異誘発(部位特異的突然変異誘発)またはランダム突然変異誘発が挙げられる。これらのSyt結合領域は、マウスまたはラットSyt受容体に関する先行研究により明確に定義されているが、BoNT/B−HC及びヒトSyt受容体間の相互作用については明確に解明されていない。BoNT/Bの異なるサブタイプ、またはSyt I/II(D−CまたはG)に結合する他の血清型をテンプレートとして用いて、B4−HCについて本明細書に記載の対応する変異を起こすことによって、同一または類似の変異を引き起こすことができる。変異させるために選択された残基の対応する位置は、B4サブタイプとの配列アラインメントによって容易に同定することができる。結果として生じるポリペプチド産物は、前記産物を含むポリペプチドならびに前記ポリペプチド及び産物をコードする核酸分子と同様に、本発明によって包含される。
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるポリペプチド(例えば、本明細書に記載される、改変受容体結合ドメイン、または該改変受容体結合ドメインを含むポリペプチド、または該改変受容体結合ドメインを含むボツリヌス神経毒素)をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。一実施形態では、核酸分子は、図9に示される核酸配列を含む。このような核酸分子は、例えば、組換えDNA技術によって、熟練した実務者により生成することができる。所望のアミノ酸置換変異は、例えば、コーディングDNAの改変によってなされる。例えば、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸配列は、以下に示す遺伝暗号を用いて、特定のアミノ酸をコードする核酸コドンを所望のアミノ酸に変異させることによって生成される:
本発明の別の態様は、本明細書に記載される核酸分子または発現構築物を含む細胞に関する。細胞は、核酸の増殖もしくは核酸の発現またはその両方のためのものであってよい。このような細胞には、好気性、微好気性、好二酸化炭素性、通性、嫌気性、グラム陰性、及びグラム陽性菌細胞の株、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、ウェルシュ菌(Clostridia perfringens)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridia difficile)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、ナイセリア・メニンギルルス(Neisseria meningirulls)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、及びネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)に由来するものなどを非限定的に含む原核細胞;ならびに酵母株、例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・アウグスタ(Pichia angusta)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に由来するものなどを非限定的に含む真核細胞;昆虫細胞及び昆虫に由来する細胞株、例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、及びタバコスズメガ(Manduca sexta)に由来するものなど;ならびに哺乳動物細胞及び哺乳動物細胞に由来する細胞株、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、ウシ、ウマ、霊長類、及びヒトなどに由来するものなどが非限定的に含まれる。細胞株は、American Type Culture Collection、European Collection of Cell Cultures及びthe German Collection of Microorganisms and Cell Culturesから入手することができる。適切な細胞株を選択、作製、及び使用するための具体的なプロトコールの非限定的な例は、例えば、INSECT CELL CULTURE ENGINEERING (Mattheus F. A. Goosen et al. eds., Marcel Dekker, 1993);INSECT CELL CULTURES: FUNDAMENTAL AND APPLIED ASPECTS (J. M. Vlak et al. eds., Kluwer Academic Publishers, 1996);Maureen A. Harrison & Ian F. Rae, GENERAL TECHNIQUES OF CELL CULTURE (Cambridge University Press, 1997);CELL AND TISSUE CULTURE: LABORATORY PROCEDURES (Alan Doyle et al eds., John Wiley and Sons, 1998);R. Ian Freshney, CULTURE OF ANIMAL CELLS: A MANUAL OF BASIC TECHNIQUE (Wiley−Liss, 4.sup.th ed. 2000);ANIMAL CELL CULTURE: A PRACTICAL APPROACH (John R. W. Masters ed., Oxford University Press, 3.sup.rd ed. 2000);MOLECULAR CLONING A LABORATORY MANUAL, supra, (2001);BASIC CELL CULTURE: A PRACTICAL APPROACH (John M. Davis, Oxford Press, 2.sup.nd ed. 2002);及びCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, supra, (2004)に記載されている。これらのプロトコールは、当業者の技術の範囲内であり、本明細書における教示からの日常的手順である。
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるC.botulinum神経毒素またはキメラ分子を含む薬学的組成物に関する。一実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、薬学的に許容し得る担体を含む組成物(本明細書において薬学的組成物と称される)中の活性成分である。「薬学的に許容し得る担体」とは、標的指向された送達組成物を混合する、及び/または対象に送達するための薬学的に許容し得る任意の手段を意味する。本明細書で用いられる「薬学的に許容し得る担体」という用語は、対象に送達するための形態でBoNTポリペプチドを維持または樹立するのを助ける、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料などの、薬学的に許容し得る材料、組成物、または媒体を意味する。各担体は、組成物の他の成分と適合性があるという意味において「許容可能」でなければならず、対象、例えばヒトへの投与に適合性がある。このような組成物は、本明細書に記載される投与経路などのいくつかの経路のうちの1つまたは複数による投与のために特別に製剤化することができる。補助活性成分もまた、組成物中に組み込むことができる。本明細書に記載される薬剤、製剤、または薬学的組成物を対象に投与する場合、好ましくは治療的有効量が投与される。本明細書で用いられる場合、「治療的有効量」という用語は、病態の改善または好転をもたらす量を指す。一実施形態では、薬学的組成物は、注射による投与のために製剤化される。一実施形態では、薬学的組成物は、マイクロスフェア中に封入されたボツリヌス神経毒素を含む。一実施形態では、薬学的組成物は、経上皮送達のために製剤化されたボツリヌス神経毒素を含む。一実施形態では、薬学的組成物は、徐放のために製剤化されたボツリヌス神経毒素を含む。
本発明には、本明細書に記載されるBoNTまたはポリペプチドを含むキットもまた包含される(例えば、薬学的組成物の形態で)。キットは、バイアルに包装された本明細書に記載される1つ以上の組成物を含み得る。キットは、組成物の治療的投与のための送達ツールもしくは装置、及び/または治療的投与のための説明書をさらに含み得る。キットは、成形容器に包装されたその中の全ての構成要素を有し得る。
本発明はまた、典型的に神経毒素で治療が行われる病態(例えば、骨格筋病態、平滑筋病態、腺病態、神経筋障害、自律神経障害、疼痛、または審美的/美容的病態)を治療するための方法を含む。このような病態は、熟練した実務者によって判断される望ましくないニューロン活動と関連している。本方法は、望ましくないニューロン活動を軽減するために、哺乳動物の適切な位置に、治療的有効量の本明細書に記載されるBoNTまたはポリペプチド/キメラ分子(例えば、薬学的組成物として)を投与し、それにより病態を治療するステップを含む。投与は、有効量の組成物を、望ましくない活動を示すニューロンに接触させる経路によるものである。
本発明の別の態様は、改変BoNT受容体結合ドメインの、受容体(例えば、ヒトSyt IまたはヒトSyt IIまたはヒトSV2)へのその結合能を同定する方法に関する。該方法は、ツーハイブリッドシステムを使用し、ツーハイブリッドアッセイ(例えば、活性化ドメイン及びDNA結合ドメインを利用するGal 4転写活性化システム)に使用される各「釣り餌」及び「餌食」サブユニットにそれぞれ融合された受容体及び改変HCから作製された融合タンパク質(融合タンパク質として表される)を使用する。このツーハイブリッドアッセイは、典型的に酵母(S.cerevisiae)で実施されるが、類似のアッセイシステムが、他の単細胞生物、例えばE.Coliにおいても使用されるために開発されている。これらのシステムは、同等である。一実施形態では、細菌性アデニル酸シクラーゼのツーハイブリッドアッセイが使用される(Karimova et al., Proc Natl Acad Sci U S A. May 12, 1998;95(10): 5752−5756、この内容は参照により本明細書に組み入れられる)。このシステムは、釣り餌及び餌食としてT18及びT25を使用し、E.coli BTH101細胞を利用することができる。
ラットSyt IIに結合したBoNT/Bの共結晶構造が解明されている(19,20)。これにより、突然変異誘発の研究のための、BoNT/B−Syt II界面における合計19種類の残基に関する安定した基礎が提供された(図2A、表5)。本発明者らの戦略は、h−Syt IIへの結合を向上させる全ての単一残基の変異を同定することを目的として、これら19の位置のそれぞれを20個全ての可能性のあるアミノ酸で飽和させることであった。そのために、本発明者らは、細菌性アデニル酸シクラーゼツーハイブリッドアプローチ(BACTH)を利用した(**33)。要約すると、BoNT/BのHC(HCB)を、細菌性アデニル酸シクラーゼの分割断片(T18と呼ぶ)を有するベクターへとサブクローニングした。T18−HCB融合構築物を、選択した位置にランダムトリヌクレオチド(NNN)を含むプライマーを用いてPCRによって増幅し、選択した部位に20個全ての可能性のあるアミノ酸をコードする構築物のプールを作製した(図2B)。次いで、この構築物のプールを、分割された細菌性アデニル酸シクラーゼの残り半分(T25と呼ぶ)と融合した毒素結合部位を含むh−Syt IIの断片(残基1−87)を構成的に発現する構築物と共に、細菌(E.Coli株BTH101)に同時形質転換した。h−Syt IIへのHCBの結合により、T18及びT25が一緒になり、アデニル酸シクラーゼの活性が回復し、これによりlacZ遺伝子の発現につながり、X−Galプレート上に青いコロニーがもたらされる(図2B)。
次に、本発明者らは、h−Syt IIへのHCB(E1191M/C/V/Q)の結合が、異なる位置に二次変異を含むことによってさらに増強され得るかどうかを調べた。E1191Mを、1183、1199、及び1178部位でのBACTHスクリーニングにおいて同定された残基の変化と組み合わせることによって、二重変異を発生させた(図2C)。これらの10個の二重変異体を、プルダウンアッセイにおいて、h−Syt IIに結合するそれらの能力について分析した(図3A)。それらのうちの3つ、E1191M/S1199W、E1191M/S1199Y、及びE1191M/W1178Qは、h−Syt IIへの強固な結合を示したが、E1191MをY1183C/Pと組み合わせると、h−Syt IIへの結合が減少した(図3A)。E1191が空間的にY1183に近いことを考慮すると(図2A)、このことからE1191及びY1183の両方を変異させる際の潜在的な構造的対立が示唆される。
次に、HCB変異体が依然としてh−Syt Iに結合するかどうかを調べた。図24は、本明細書に記載のBoNT/B結合界面におけるSyt IとSyt II間、及びヒトSyt IとマウスSyt I間の比較を示す。Syt IへのWT HCBの結合は、プルダウンアッセイにおいて共受容体ガングリオシドの存在下でのみ検出することができる。これは、Syt Iが、Syt IIと比較して、BoNT/Bに対して低い結合親和性を示すためである(15,28)。本発明者らは、プルダウンアッセイにおいて、ガングリオシドの非存在下で、E1191M及びE1191M/S1199Y変異体の両方がh−Syt Iに結合することを見出し(図3C)、このことから、これらの変異体がh−Syt Iへの増強した結合を有し得ることが示唆される。本発明者らは、BLIアッセイを用いて、本発明者らの上位2つの変異体(E1191M/S1199Y及びE1191V/S1199Y)のh−Syt Iへの結合親和性を測定した。E1191M/S1199Y(HCBMY)またはE1191V/S1199Y(HCBVY)を含有するHCBは、それぞれ2.9μM及び5.82μMのKDを示した。h−Syt IへのWT HCBの結合が確実に測定することができないほど弱いことが確認されるが(表4、図20)、HCB変異体は、h−Syt IIへの結合を増強するだけでなく、h−Syt Iへの結合も増強した。HCBMYは、HCBVYと比較して、h−Syt Iに対してより高い結合親和性を示し、かつSyt I及びSyt IIの両方に対しては、より低い解離定数を示したため、本発明者らは、さらに特性解析するために、この変異体を選択した。
次に、HCBMY変異体が生理学的に関連のあるニューロン表面上のh−Syt IIに結合し得るかどうかを調べた。この目的のために、Syt Iを発現するがSyt IIを発現しない培養ラット皮質ニューロンを使用した(13)。これにより、Syt Iのノックダウン(KD)により、内在性受容体のないニューロンを生成した。これらのSyt I KDニューロンにおける完全長h−Syt IIの発現により、毒素受容体としてh−Syt IIのみを有する「ヒト化」ニューロンが作製された(18)。予想通り、WT HCBはラットニューロンに強く結合し、その結合は内在性Syt Iをノックダウンした後に消失した。h−Syt IIでもF54L変異を含むm−Syt IIでもなく、完全長m−Syt IIの発現は、WT HCBの結合を回復させた(図4A)。対照的に、HCBMYは、m−Syt II、h−Syt II、またはm−Syt II(F54L)を発現するニューロンへの強固な結合を示し、HCBMYがニューロン表面上のh−Syt IIへの増強した結合能を有することを示した(図4B)。
h−Syt IIへの増強した結合が、ニューロンの機能レベルにおいて有効性につながるかどうかという重要な問題に取り組むために、完全長WT BoNT/B及びE1191M/S1199Y二重変異毒素(BoNT/BMY)を、E.Coliで組換え産生した(図23)。ヒト化ニューロンを、WTまたはBoNT/BMY毒素の勾配に暴露した。VAMP2の切断をイムノブロット分析によって調べた。図5Aに示すように、試験した各毒素濃度において、WT BoNT/Bに暴露したニューロンと比較して、BoNT/BMYに暴露したニューロンにおいて、より多くのVAMP2が切断された。このことは、BoNT/BMYが、WT毒素よりも効率的にニューロンを標的指向し、侵入したことを示す。
最後に、h−Syt IIへの結合に影響を与え得るBoNT/Bサブタイプに天然に存在する配列変化が存在するかどうかを調べた。BoNT/Bは、今日までに知られている8つのサブタイプ(BoNT/B1〜B8、BoNT/B1はBoNT/Bプロトタイプとして知られる)を有し、7%までの配列変化を有する(34)。配列アラインメントにより、E1191及びS1199の両方における変化が明らかとなった(図6A)。興味深いことに、E1191Q(BoNT/B4、/B8)及びS1199Y(BoNT/B2、/B3、/B4、/B7)のケースがあった。B4においてはE1191Q及びS1199Yの組み合わせ(BoNT/B1におけるその二重変異体は、h−Syt IIへの強固な結合をもたらした(表4))もある。しかしながら、HCB4は、プルダウンアッセイにおいてh−Syt IIに結合しなかった(図6B)。これは、BoNT/B1からHCB4の他の残基が変化していることに起因すると考えられる。BoNT/B−Syt界面における19個の重要な残基の中には、BoNT/B1とB4との間で異なる4つの他の残基がある(図7)。実際、HCB4中の4つの残基全てをBoNT/B1中の対応する残基に置換すると、h−Syt IIへのその結合が向上した(図6C)。図6Cにて既に示されたものが確認されるが、図22はまた、HCB4の4つの残基全てをBoNT/B1中の対応する残基と置換することにより、h−Syt IIへと結合できる変異体HCB4が作製されたことを示す。興味深いことに、ガングリオシドの非存在下で、HCB4はh−Syt Iに対して強固な結合を示し、このことは、このサブタイプがBoNT/B1よりもSyt Iに対して優れた結合親和性を有することを示唆している(図6D)。
BoNT/B−Syt II複合体の利用可能な共結晶構造に基づく合理的設計を、選択された各標的残基において起こり得る全ての単一点変異を飽和させるBACTH法と組み合わせることによって、h−Syt IIへの結合を改善するBoNT/B1における一連の点変異が同定された。これらの点変異は、異なる組み合わせでさらに調べられ、h−Syt IIに対して高親和性を示した二重変異体を明らかにした。さらに、これらの変異のうちの2つを含む完全長BoNT/B1は、ヒト化ニューロンに対してWT BoNT/B1よりも約11倍高い効力を示し、毒素受容体への増強された結合が、ニューロンの機能レベルにおいてより高い効力につながることを示した。
材料及び構築物
以下の抗体は、明記した業者から購入した:Synapsin I(Clone 46.1,Synaptic Systems)、VAMP2(Clone 69.1,Synaptic Systems)、HA (16B12,Covance)、及びβ−tubulin III(ab18207,Abcam)。既に説明されているように、ウシ混合脳ガングリオシドをMatreya LLC(Pleasant Gap,PA)から購入し、Tris緩衝生理食塩水(TBS:20mM Tris、150mM NaCl)中に再構成した(14)。HCB(残基857−1291、Genbank:ACA46990.1)及びHCB4(Genbank:EF051570)をコードするcDNAを、E.Coli発現のためにコドン最適化し、そしてGenscript Inc.(New Brunswick,NJ)によって合成した。以下のcDNAは、明記したグループにより供与された:ラットSyt I(T.C. Sudhof, Palo Alto, CA)、マウスSyt II(M. Fukuda, Ibaraki, Japan)、ヒトSyt I(R.B. Sutton, Lubbock, TX)。HCBをコードするDNAを、そのN末端にHis6タグ(配列番号1)及びHAタグ(YPYDVPDYA)(配列番号2)の両方を融合して、pET28aベクターにサブクローニングした。HCBにおける変異は、部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies, CA)を用いて、PCRにより生成した。GSTタグ付きSyt I/II断片及びSyt II F54L変異体については、既に説明されている(15,18,23)。
完全長の不活性BoNT/BR370A,Y373F(受託B1INP5)をコードするcDNAを、E.Coliでの発現のためにコドン最適化した。それをNdeI/BamHIを介してpET32aへとクローニングし、C末端にヘキサヒスチジン親和性タグ(配列番号1)を付加した。その構築物を、標準的な部位特異的突然変異誘発(Agilent)により、その活性WT型に回復させた。E1191M/S1199Y変異を導入し、BoNT/BMY二重変異体を作製した。構築物をE.Coli(BL21 DE3株)へ形質転換し、mTB+100μg/mLアンピシリン中で増殖させ、そして1mMのIPTGを用いて16℃で20時間誘導した。細菌を回収し、ペレット1グラム当たり、50mM Tris pH8中0.5M NaCl 5mL、及びベンゾナーゼ0.5μL中での超音波処理によって溶解した。粗溶解物を4000×gで1時間、遠心分離により清澄化し、BoNT/BをHisTrap HPカラム(GE)で捕捉し、FPLC(GE)により50mM Tris pH8中0.5M NaCl中0.1Mイミダゾールで溶出した。溶出液を、HiPrep26/10脱塩カラム(GE)を用いて、50mM Tris pH8中125mM NaClに脱塩し、次いで10 kDa MWCOスピンフィルターを用いて、0.6mg/mLに濃縮した。濃縮物を0.1μg/mLのエンドプロテイナーゼLys−Cにより2時間37℃で処理し、次いで1Mの(NH4)2SO4に調整した後、phenyl Sepharose HP(GE)を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィーにより最終精製を行った。タンパク質を、50mM Tris pH 8中1Mから0Mの(NH4)2SO4のリニアグラジエントにより溶出した。二本鎖BoNT/Bを含有する画分をプールし、脱塩し、濃縮し、そして−80℃で保存した。
BACTHアッセイを製造元の指示(Euromedex)に従って実施した。2つの適合性のあるプラスミドpUT18C及びpKT25をスクリーニングのために選択した。H−Syt II内腔ドメイン(残基1−80)をpKT25にクローニングし、pKT25−h−Syt IIを作製した。T18−HCBを産生するために、HCBをpUT18Cにクローニングした。指定された位置にランダムヌクレオチドトリプレット(NNN)を含むプライマーを用いてHCB変異体ライブラリーを作製した。各ライブラリーをエレクトロポレーションにより、pKT25−h−Syt IIプラスミドと共に、E.Coli指示株BTH101に同時形質転換し、100μg/mlアンピシリン、50μg/mlカナマイシン、0.5mM IPTG及び40μg/ml X−Galを含有するLB寒天プレート上でスクリーニングした。このプレートを30℃で64時間インキュベートした。プラスミドを青いコロニーから抽出し、配列決定した。総コロニー数は、選択した変異部位で20個全てのアミノ酸を網羅する可能性を明らかにした。これは、クラーク−カーボンの式:P=1−(1−f)Nによって計算され、式中、fは、可能性のある残基の数(20個の異なるアミノ酸があるので、本明細書ではf=1/20)、Nは、コロニーの総数を表す。本発明者らのアッセイにおけるコロニーの最小数380個では、各位置における20個全てのアミノ酸をカバーする確率は>99.8%である。
このアッセイは、既に説明されているように実施される(47)。要約すると、目的のプラスミドを有するE.Coli BTH101細胞を、抗生物質及びIPTG(0.5mM)を含有するLB培地に播種した。この培養物を37℃で一晩増殖させ、定常期に到達させた。この培養物のOD600を回収前に記録した。培養物を遠心分離し、細胞ペレットをPBSで2回洗浄し、Z緩衝液(60mM Na2HPO4、40mM Na2HPO4、10mM KCl、1mM MgSO4、及び20mM DTT)に再懸濁した。その後、1:10(v/v)のクロロホルム及び1:20(v/v)の0.1%SDSを添加してよく混合し、細胞を透過処理した。次に、5:1の比で混合物をo−ニトロフェニル−p−ガラクトシド(Z緩衝液中4mg/ml)と混合し、28℃で10分間インキュベートした。1MのNa2CO3 80μlを添加することによって反応を停止させた。β−ガラクトシダーゼ活性は、A420/OD600として産出された。
2種類のプルダウンアッセイを実施した。最初のシリーズは、GSTタグ付きm−Syt II(残基1−87)、及びヒトSyt II(h−Syt IIと呼ばれる)を模倣する変異体m−Syt II(F54L)への変異体HCBの結合を迅速にスクリーニングするために使用された。要約すると、HCBを発現する6mlのE.Coliをスピンダウンし、800μlのTBSに再懸濁し、超音波処理した後、2%Triton X−100と共に4℃で1時間インキュベートした。次いで、サンプルをマイクロ遠心機中で4℃で15分間スピンダウンした。上清を回収し、グルタチオン−セファロースビーズ(GE bioscience, Piscataway, NJ)に固定化した10μgのGST−Sytタンパク質と共に4℃で1時間インキュベートすることによってプルダウンアッセイに使用した。サンプルを洗浄緩衝液(0.5% Triton X−100を含むTBS)中で3回洗浄し、抗HA抗体を使用する免疫ブロット分析によって分析した。h−Syt IIへの増強された結合を示した変異体について、His6タグ化タンパク質(配列番号1として開示された「His6」)として、これらのHCB変異体を精製することによって、さらなる特性解析を実施した。次いで、100μlのTBS緩衝液及び0.5% Triton X−100中の精製HCB(100nM)及び固定化GST−Syt IIを用いて、ガングリオシド(60μg/ml)と共にまたはそれなしで、プルダウンアッセイを4℃で1時間行った。ビーズを、TBS緩衝液及び0.5% Triton X−100を用いて3回洗浄した。結合した材料の10%をSDS−PAGE、続いてイムノブロット分析に供した。
HCB変種とSyt I/Syt IIとの間の結合親和性を、Blitzシステム(ForteBio)を用いたBLIアッセイにより測定した。要約すると、GSTタグ付きSyt IまたはSyt II(20μg/ml)を、Dip and Read(商標)Anti−GST Biosensors(ForteBio)に固定し、PBS緩衝液で平衡化した。次いで、該バイオセンサーを一連の濃度のHCBに暴露し、続いてPBSで洗浄した。製造業者の指示(ForteBio)に従って、Blitzシステムソフトウェアを使用して、結合親和性(KD)を算出した。
ラット皮質ニューロンを、既に説明されているようにE18−19胚から調製した(14)。ニューロンにおけるSyt I KD、m−Syt II、及びh−Syt II発現のための構築物は、既に説明されている(18)。レンチウイルスをDIV5(in vitroでの日数)のニューロン培養物に添加し、毒素結合/侵入実験をDIV12−14で実施した。毒素を高K+緩衝液(87mM NaCl、56mM KCl、1.5mM KH2PO4、8mM Na2HPO4、0.5mM MgCl2、及び1mM CaCl)で希釈し、37℃に予熱した。ニューロンを上記の毒素含有緩衝液に37℃で5分間暴露した後、PBSで洗浄した。これらのニューロンを、免疫染色分析に供するか、または毒素不含培地中でさらに24時間インキュベートした後にイムノブロット分析を行った。
全細胞パッチクランプ記録を、DIV 14−18培養皮質ニューロン(DIV 14−18)から作成した。ピペット溶液は以下のものを含んだ(mM):135 CsCl、10 HEPES、1 EGTA、1 Na−GTP、4 Mg−ATP、及び10 QX−314(CsOHでpH 7.4に調整)。細胞内液が充填されたピペットの抵抗は、4〜5MΩの間で変動した。全細胞構成の形成及びピペットの細胞内液の平衡化後、直列抵抗を10MΩに調整した。シナプス電流を、−70mVの保持電位でEPC−10/2増幅器(HEKA)を用いてモニターした。バスの溶液は以下のものを含んだ(mM):140 NaCl、5 KCl、2 CaCl、1 MgCl2、10 HEPES、10 グルコース(NaOHでpH7.4に調整)。自発性抑制性シナプス後電流(sIPSC)及び誘発性抑制性シナプス後電流(eIPSC)は、AMPA及びNMDA受容体遮断薬CNQX及びAPVをバスの細胞外液に添加することによって、薬理学的に抑制された。活動電位を遮断するために、テトロドトキシン(TTX)の存在下で自発的な微小抑制性シナプス後電流(mIPSC)をモニターした。Clampfit 10(Molecular Devices)、Origin8ソフトウェア(Mocrocal Inc.)、MiniAnalysisソフトウェア(Synaptosoft)、及びIgor(Wavemetrics)を使用してデータを分析した。統計分析は、スチューデントのt検定で行った(*P<0.01)。示されているデータは全て、平均値±標準誤差である。
Claims (67)
- a)プロテアーゼドメインと;
b)プロテアーゼ切断部位と;
c)移行ドメインと;
d)ヒトSytIIに結合するボツリヌス菌(Clostridium botulinum)血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−HC)と
を含む、ボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド。 - 前記改変受容体結合ドメインが、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む、請求項1に記載のBoNTポリペプチド。
- Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する1つ以上の置換変異をさらに含む、請求項2に記載のポリペプチド。
- 前記改変(B4−HC)が、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C及びY1183Pからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する2つの置換変異を含む、請求項3に記載のポリペプチド。
- 血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つが、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L及びQ1191Yからなる群より選択される、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−HC)を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
- 血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つが、血清型B株4におけるY1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P、Y1199FまたはY1199Lに対応する、請求項2に記載のポリペプチド。
- 血清型B株4における、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びW1178Q、Q1191L及びW1178Q、Q1191Y及びW1178Q、Q1191M及びY1183P、Q1191M及びY1183C、Q1191C及びY1183P、Q1191C及びY1183C、Q1191V及びY1183P、Q1191V及びY1183C、Q1191L及びY1183P、Q1191L及びY1183C、Q1191Y及びY1183P、Q1191Y及びY1183C、W1178Q及びY1183P、ならびにW1178Q及びY1183Cに対応する置換変異から選択される2つの置換変異をさらに含む、請求項2に記載のポリペプチド。
- 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1178Qに対応する、請求項5に記載のポリペプチド。
- 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Pに対応する、請求項5に記載のポリペプチド。
- 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Cに対応する、請求項5に記載のポリペプチド。
- 前記改変(B4−HC)が、3つの置換変異をさらに含む、請求項2に記載のポリペプチド。
- 前記3つのさらなる置換変異が、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある、請求項11に記載のポリペプチド。
- 前記3つのさらなる置換変異が、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Pに対応する、請求項11に記載のポリペプチド。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載のBoNTポリペプチドをコードする、核酸。
- 請求項14に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
- 請求項14に記載の核酸を含む、細胞。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載のBoNTポリペプチドを発現する、細胞。
- a)プロテアーゼドメインと;
b)プロテアーゼ切断部位と;
c)移行ドメインと;
d)置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含み、かつ、血清型B株4のS1201に対応する位置に置換変異をさらに含む、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−HC)と
を含む、ボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド。 - 前記プロテアーゼドメイン、移行ドメイン及びプロテアーゼ切断部位が、A、B、C、D、E、F、G及びそれらの組み合わせからなる群より選択される血清型に由来する、請求項1〜13及び18のいずれか一項に記載のBoNTポリペプチド。
- 前記プロテアーゼドメイン、移行ドメイン及びプロテアーゼ切断部位が、血清型B株1に由来する、請求項19に記載のBoNTポリペプチド。
- 前記プロテアーゼドメイン及び移行ドメインが、血清型A株1に由来する、請求項19に記載のBoNTポリペプチド。
- 前記プロテアーゼ切断部位が、血清型A、血清型Bに由来する、または血清型A及びBのキメラ切断部位である、請求項19に記載のBoNTポリペプチド。
- ヒトSytIIに結合するClostridium botulinum血清型B株4重鎖の改変受容体結合ドメイン(B4−HC)を含む、ポリペプチド。
- 前記改変受容体結合ドメインが、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む、請求項23に記載のポリペプチド。
- Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する1つ以上の置換変異をさらに含む、請求項24に記載のポリペプチド。
- 前記改変(B4−HC)が、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、Q1191M、Y1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C及びY1183Pからなる群より選択される、血清型B株4における置換変異に対応する2つの置換変異を含む、請求項25に記載のポリペプチド。
- 血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つが、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L及びQ1191Yからなる群より選択される、Clostridium botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−HC)を含む、請求項24に記載のポリペプチド。
- 血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異をさらに含み、前記置換変異の1つが、血清型B株4におけるY1199W、Y1199E、Y1199H、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C、Y1183P、Y1199FまたはY1199Lに対応する、請求項24に記載のポリペプチド。
- 血清型B株4における、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びW1178Q、Q1191L及びW1178Q、Q1191Y及びW1178Q、Q1191M及びY1183P、Q1191M及びY1183C、Q1191C及びY1183P、Q1191C及びY1183C、Q1191V及びY1183P、Q1191V及びY1183C、Q1191L及びY1183P、Q1191L及びY1183C、Q1191Y及びY1183P、Q1191Y及びY1183C、W1178Q及びY1183P、ならびにW1178Q及びY1183Cに対応する置換変異から選択される2つの置換変異をさらに含む、請求項24に記載のポリペプチド。
- 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1178Qに対応する、請求項27に記載のポリペプチド。
- 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Pに対応する、請求項27に記載のポリペプチド。
- 前記2つの置換変異が、血清型B株4におけるQ1191M及びW1183Cに対応する、請求項27に記載のポリペプチド。
- 前記改変(B4−HC)が、3つの置換変異をさらに含む、請求項24に記載のポリペプチド。
- 前記3つのさらなる置換変異が、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある、請求項33に記載のポリペプチド。
- 前記3つのさらなる置換変異が、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Pに対応する、請求項33に記載のポリペプチド。
- 請求項22〜35のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
- 請求項36に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
- 請求項36に記載の核酸を含む、細胞。
- 請求項22〜35のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはキメラ分子を発現する、細胞。
- 第2部分に連結された、Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−HC)である第1部分を含む、キメラ分子であって、前記改変B4−HCがヒトSytIIに結合する、前記キメラ分子。
- 前記Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−HC)が、置換変異V1113K、S1117P、S1196A及びI1197Pを含む、請求項40に記載のキメラ分子。
- 前記Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−HC)が、Q1191M;Q1191C;Q1191V;Q1191L;Q1191Y;W1178Y;W1178Q;W1178A;W1178S;Y1183C;Y1183P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の置換変異をさらに含む、請求項41に記載のキメラ分子。
- 前記改変B4−HCが、Q1191M、Q1191C、Q1191V、Q1191L、Q1191Y、W1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183C及びY1183Pからなる群より選択される2つの置換変異を含む、請求項41に記載のキメラ分子。
- 第2部分に連結された、Clostridial botulinum血清型B株4の改変受容体結合ドメイン(B4−HC)である第1部分を含む、キメラ分子であって、前記改変B4−HCが、血清型B株4における置換変異に対応する2つ以上の置換変異を含み、かつ、ヒトSytIIに結合し、前記置換変異の1つが、Q1191M;Q1191C;Q1191V;Q1191L及びQ1191Yからなる群より選択される、前記キメラ分子。
- 前記置換変異の1つが、血清型B株4におけるW1178Y、W1178Q、W1178A、W1178S、Y1183CまたはY1183Pに対応する、請求項44に記載のキメラ分子。
- 2つの置換変異が、血清型B株4における、Q1191M及びW1178Q、Q1191C及びW1178Q、Q1191V及びW1178Q、Q1191L及びW1178Q、Q1191Y及びW1178Q、Q1191M及びY1183P、Q1191M及びY1183C、Q1191C及びY1183P、Q1191C及びY1183C、Q1191V及びY1183P、Q1191V及びY1183C、Q1191L及びY1183P、Q1191L及びY1183C、Q1191Y及びY1183P、Q1191Y及びY1183C、W1178Q及びY1183P、またはW1178Q及びY1183Cに対応する、請求項44に記載のキメラ分子。
- 前記改変(B−HC)が、3つの置換変異を含む、請求項44に記載のキメラ分子。
- 前記3つの置換変異が、血清型B株4のQ1191、W1178及びY1183に対応する位置にある、請求項47に記載のキメラ分子。
- 前記3つの置換変異が、血清型B株4のQ1191M、W1178Q及びY1183Pに対応する、請求項47に記載のキメラ分子。
- 前記第1部分と前記第2部分が共有結合的に連結される、請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
- 前記第1部分と前記第2部分が非共有結合的に連結される、請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
- 前記第2部分が、低分子、核酸、短いポリペプチド、及びタンパク質からなる群より選択される、請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
- 前記第2部分が生物活性分子である、請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
- 前記第2部分が治療用のポリペプチドまたは非ポリペプチド薬物である、請求項53に記載のキメラ分子。
- 請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドをコードする、核酸。
- 請求項55に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
- 請求項55に記載の核酸を含む、細胞。
- 請求項40〜49のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはキメラ分子を発現する、細胞。
- 請求項1〜13、18〜35のいずれか一項に記載のボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチドもしくはポリペプチド、または請求項40〜54のいずれか一項に記載のキメラ分子、または請求項15、37もしくは56に記載の核酸ベクターを含む、薬学的組成物。
- 薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項59に記載の薬学的組成物。
- 請求項59に記載の薬学的組成物、及び前記薬学的組成物の治療的投与のための説明書を含む、キット。
- ボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチドを産生するための方法であって、前記BoNTポリペプチドが産生される条件下で請求項17、39または58に記載の細胞を培養するステップを含む、前記方法。
- 以下のステップ:
培養物から前記BoNTポリペプチドを回収すること、
前記BoNTポリペプチドを精製すること、
前記BoNTポリペプチドを活性化すること、及び/または
前記BoNTポリペプチドを製剤化すること
の1つ以上をさらに含む、請求項62に記載の方法。 - 望ましくないニューロン活動と関連した病態を治療するための方法であって、治療上有効量の請求項1〜13、18〜35のいずれか一項に記載のBoNTポリペプチド、または請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子を対象に投与し、それにより、望ましくないニューロン活動を示す1つ以上のニューロンと接触させ、それにより、前記病態を治療することを含む、前記方法。
- 前記病態が、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、口下顎発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、上肢局所性ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼疾患、脳性麻痺、局所性痙縮及び他の発声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害及び他の筋緊張障害及び筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過多、消化管分泌過多、分泌障害、筋痙攣による疼痛、頭痛、片頭痛、ならびに皮膚科学的または審美的/美容的な病態からなる群より選択される、請求項64に記載の方法。
- 医薬における使用のための、請求項1〜13、18〜35のいずれか一項に記載のボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド、請求項59もしくは60のうち一項に記載の薬学的組成物、または請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
- 望ましくないニューロン活動と関連した病態の治療における使用のための、請求項1〜13、18〜35のいずれか一項に記載のボツリヌス神経毒素(BoNT)ポリペプチド、請求項59もしくは60のうち一項に記載の薬学的組成物、または請求項40〜49のいずれか一項に記載のキメラ分子。
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