JP2019530444A - 酢酸に対して耐性のある酵母菌株を得るためのmcm7の使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、グルコース発酵中に酵母菌株に有機酸、有利には酢酸に対する耐性を付与するための、MCM7遺伝子の使用に関する。

Description

本発明は、グルコース発酵中に酵母菌株に有機酸、有利には酢酸に対する耐性を付与するための、MCM7遺伝子の発現のための調節の使用に関する。従って、MCM7遺伝子の上流の転写調節因子Haa1pに対する結合部位の、少なくとも対立遺伝子での存在は、その発現(有機酸に対する増加した耐性を変換できる)を誘導するだろう。
さらに、本発明は、グルコース発酵中に有機酸、有利には酢酸に対して耐性のある酵母菌株の遺伝子型選択を可能にする方法を提供する。同様に、本発明は、胞子の遺伝子型選択に基づいて、有機酸、有利には酢酸に対して耐性のある産出された酵母菌株の実質的な最適化を可能にする。
遺伝的に改変された酵母菌の多様な基質を発酵する能力は、酵母菌を、多様な工業プロセス、特にリグノセルロースバイオマスからのエタノールの産生における選択のツールにする。アルコール発酵は、酵母菌が嫌気性培地で使用するプロセスであり、その間に糖がアルコールに変換される。「パン酵母」としても知られる酵母Saccharomyces cerevisiaeは、アルコール発酵に最もよく使われる微生物のままである。
しかしながら、いくつかの発酵阻害剤は、これらの基質中に天然に見出され、エタノール産生に悪影響を与える。特に、これは、弱有機酸、特にヘミセルロースの分解産物である酢酸について当てはまる。酵母菌は、その環境中の有機酸の存在に直面すると、該新規の非生物的ストレスに反応する準備ができるように、細胞周期をブロックする。発酵は、細胞抵抗機構が整ったときに初めて開始する。従って、弱有機酸の存在は、グルコースでの発酵の開始を遅らせる結果となり、それにより生産コストが増大する。
酢酸に関連する問題は、酢酸が、酵母菌によるアルコール発酵に対する非常に強力な阻害剤であり、いくつかの発酵培地において高濃度で見出されるため、なおさら重大である。
例えば、発酵培地を解毒すること、または、順応または遺伝子改変により酵母菌を発酵阻害剤に適合させることなど、発酵阻害剤の効果に対抗することを試みるための種々の手段が記載されている。酢酸の場合、該発酵培地を解毒することは、特に工業的に、実施するのが難しい選択肢である。従って、酵母自体を改変することを試みることが必要である。
該文脈において、酵母菌の順応は、好ましくは漸増用量で、阻害剤を培養培地に添加することにより達成できる。しかしながら、該方法による酵母菌の適応はほんの一時的なものであり、阻害剤のない培地中で該酵母菌を再び培養すると、急速に消失することが観察されてきた。表現型的に安定な株が必要であるため、該方法は工業的にあまり興味深くないことが分かる。
従って、酢酸に対する感受性の場合、酵母菌の遺伝子改変のみが想定できる。これは、遺伝子工学による改変、特定の遺伝子の標的化、または古典的に目的の株を交配することのいずれかにより行うことができる。現在、酢酸に対する感受性、または逆に耐性に関連する分子メカニズムはほとんど理解されておらず、遺伝子工学により標的とされる方法には不十分である。
従って、酢酸に対する耐性を改善するための選択方法は、交配により酵母菌を産出することのままである。しかしながら、いくつかの方法が酢酸に対して耐性のある酵母菌株を産出するとしても、これらは定義上ランダムであり、成功を保証することはできない。
文献WO2013/178915は、グルコースを代謝することができ、酢酸に対して耐性のある酵母菌の産生を可能にする、酵母菌株のための交配プロセスを記載する。該方法は、番号I−4538の下でCNCMに提出された酵母菌株と番号I−4627の下でCNCMに提出された酵母菌株とを交配すること、次いで、グルコース発酵中にキシロースを代謝することができ、独立して酢酸に抵抗する雑種を選択することからなる。
該ハイブリダイゼーション方法は、特に培養条件に従って、酵母菌が無性または有性生殖する能力に依存する。
酵母S.cerevisiaeは、単複世代交代型生殖周期を有する生物、すなわち一倍体および倍数体、例えば二倍体の両方の状態で、活発に増殖できる生物である。
培地が好ましい限り、倍数体酵母菌は、倍数体酵母菌を生じさせる発芽により、栄養増殖が可能である。窒素含有栄養素が乏しく、非発酵性炭素源(例えば、グリセロール、酢酸塩など)のみを含有する培地の場合、Mat遺伝子座に対するヘテロ接合細胞は、減数分裂へ移行し、胞子形成と呼ばれるメカニズムにより倍数性の低い酵母(胞子または分離体(segregant))を形成する。
分離体は発芽により増殖し、同じゲノムを有する酵母菌をもたらすことができる。一倍体酵母菌の中で、MATaおよびMATαと呼ばれる2つの相反する性的徴候が区別される。反対の性型を有する2個の一倍体胞子が受精して、二倍体酵母菌を産出することができる。
S.cerevisiaeのための単複世代交代型周期は、特に大量胞子形成およびハイブリダイゼーションからのランダム組換えと呼ばれる方法において、性的に適合性のある分離体(MATaおよびMATα)を交配するために広く使用されてきた。古典的な方法において、(遺伝的観点から異なる)2個の親二倍体株が用いられる。典型的に、親二倍体株の胞子形成は、窒素供給が制限される条件において、非発酵性炭素源の存在下のみで該親二倍体株を培養することにより、誘導される。該工程の間に機能する減数分裂は、遺伝的交雑受精をもたらし、様々な遺伝子型の胞子を作り出す。次いで、該親株のそれぞれについて得られた胞子(一倍体)を接触させて、融合により二倍体(雑種)株を産生する。該最後の工程は、ハイブリダイゼーション工程と呼ばれる。
該方法は、興味深い表現型形質が出現することができる、遺伝的交雑受精の作出を可能にするという点で興味深い。しかしながら、該方法は、所望の表現型形質に基づいて雑種を選択する工程を必要とする。一例として、それぞれ、10個の遺伝子が担う表現型形質を提示する厳密に二倍体の親株の場合、目的の雑種を得る確率は1/2.097.10と推定される。最後の選択工程は、特に面倒で、長く、費用がかかる。
従って、酢酸に対して耐性のある酵母菌株のための改善された製造方法に対する明らかな要望が存在する。
発明の説明
本発明者らは、有機酸、特に酢酸により誘導されるMCM7の発現を有することができるS.cerevisiaeの酵母菌株が、該有機酸に対する耐性の表現型を有することを同定した。実験の節に示されるように、これらの株の生育、および酢酸に富む培地中でグルコースを発酵する該株の能力は改善される。
特に興味深い方法において、本発明者らは、これらの株におけるMCM7の発現が酢酸により誘導できることを決定した。さらに、該酢酸により誘導されるMCM7の発現は、転写因子Haa1pにより媒介されるようである。MCM7がHaa1pにより調節される遺伝子として知られていないことを考えると、これは特に驚くべきことである。従って、2010年に公開されたMiraおよび共同研究者らの研究(Mira et al, 2010, OMICS, 14: 587−601)は、MCM7を含まない株BY4741においてHaa1pにより調節される遺伝子のリストを提案する。本発明者らは、酢酸に抵抗するS.cerevisiaeの株において、MCM7コード遺伝子の上流の領域が、Haa1pに対する結合部位であることが知られているモチーフを含むことを確立した。いかなる理論にも縛られることなく、Haa1pに対する該結合部位の存在は、一塩基多型(SNP)によるものだろう。
これらの要素に基づいて、本発明者らは、S.cerevisiaeの酢酸に対して耐性のある株の選択および製造方法を開発した。
定義
「酵母菌株」なる語は、本発明の意味において、遺伝的観点から厳密に同一の酵母菌集団を表す。これは、実験的株(laboratory strain)と呼ばれる株および工業的株(industrial strain)と呼ばれる株の両方を包含する。該語は、「酵母菌」なる語と区別されるべきであり、酵母菌は、上で定義されたような株の培養により得られる。本発明の文脈において、「酵母菌」は、酵母菌株の製造方法の実施により得られる商品として理解される。故に、異なる性質を有する酵母菌は、単一の株から得ることができ、ここでこれらの相違は、実施される製造方法と関連する。
本発明の意味において、「分離体(segregant)」は、酵母菌の倍数性レベルにかかわらず、該酵母菌株の減数分裂の産物である。本出願の残りにおいて、「分離体」および「胞子」なる語は互換的に使用することができる。
本発明の意味において、「グルコースを代謝することができる酵母菌株」なる語は、グルコースをエタノールに変換することができる、すなわちグルコースを発酵することができる酵母菌株を表す。本発明の意味の範囲内でのグルコースを代謝することができる酵母菌株は、アルコール発酵の通常の条件において、発酵培地1kgあたりグルコース150gを含む発酵培地中で60時間で、グルコースの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%をエタノールに変換する酵母菌株である。
好ましくは、エタノールに変換されたグルコースのパーセンテージを測定するために使用される方法は以下の通りである:
使用される酵母菌株は、発酵培地1kgあたり乾物酵母0.25gで、合成発酵培地に接種される。60時間の持続時間は、該酵母菌株による発酵培地の接種から計算される。合成発酵培地は、正確な化学組成が知られている培地である。本発明の範囲において、合成発酵培地は、炭素源、窒素源、リン源、ならびに酵母菌株の生育に必須のビタミンおよびミネラルを含む。好ましくは、エタノールに変換されたグルコースのパーセンテージを測定するために使用される発酵培地は、例示的実施形態において定義されるYF(酢酸の存在のためにYFAcと表される)である。
典型的に、発酵は、28〜37℃、または30〜35℃、有利には32℃に等しい温度で穏やかに、例えば90または100rpmで撹拌しながら行われる。該撹拌は、酸素を送り込まないように適度である。好ましくは、培地のpHは、例えば、酸/塩基対(酢酸/酢酸塩対など)の緩衝力および酸により、有利には3.5〜6、または4〜5.5、さらにより有利には4.4または5に等しく調節される。
発酵培地中に存在するエタノールの量は、当業者に知られている任意の適切な手段により測定される。該手段は、産生されたエタノールの直接測定、または、失われた質量を測定することにより決定されるCO産生など、エタノール産生に相関したパラメータによる間接測定であることができる。例えば、アルコールの産生は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を含むクロマトグラフィー、酵素キット(例えば、Boehringerキットによるエタノールの定量)、または重クロム酸カリウムによる定量により測定されてもよい。該発酵培地中のグルコースの量は、当業者に知られている任意の適切な手段により、好ましくはクロマトグラフィー、特にHPLCにより測定される。
本発明の文脈において、「有機酸」または「弱有機酸」は、糖、有利にはグルコースの発酵を阻害することができるカルボン酸を意味すると理解される。それは、有利には酢酸、レブリン酸、またはギ酸、さらにより有利には酢酸を含む。
かかる酸の非解離または非イオン化型のみが、阻害能力を有することが知られていることに注意すべきである。本発明の文脈において、カルボン酸の「非イオン化または非解離型」は、そのプロトン化型として理解される。実際には、かかる有機酸の型は、組み込まれている培地のpHに依存する。酸のpKaより高いpHでは、酸は大部分、解離型またはCOOイオンで見出されるだろう。対照的に、そしてより低いpHでは、大部分の型は、非解離または非イオン化型(COOH)である。本発明の残りにおいて、記載された量または濃度は、培地のpHに従って解離および非解離型を含有する、該培地に添加された酢酸を意味する。
「有機酸に対して耐性」または「酢酸に対して耐性」なる語は、アルコール発酵曲線への限定された影響を有する有機/酢酸で、少なくとも1つの糖、特にグルコースを発酵することができる酵母菌株を表す。時間の関数として、産生されたアルコールの量を表すアルコール発酵曲線は、一般に、3つのフェーズ:エタノール産生がない潜伏フェーズ、アルコール産生フェーズ、および発酵の終わりに対応するプラトーフェーズを含む。
知られている方法において、酢酸は、グルコース発酵を阻害し、該阻害は、その後キネティクスが変化しないままである、発酵の開始中の遅延として変換される。培地中にグルコースおよびキシロースの両方が存在する場合、異化代謝産物抑制のため、酵母菌株は最初にグルコースを発酵することに注意すべきである。
従って、有利には、「酢酸に対して耐性のある株」は、アルコール発酵の開始を30時間未満、好ましくは20時間未満、より好ましくは15時間未満、おそらく10時間遅らせる。好ましくは、上記のようなアルコール発酵の開始の遅延とともにグルコースを発酵する能力が参照される。
酢酸に対する耐性を評価するために使用される発酵培地は、好ましくは合成培地、より好ましくは実施形態例に説明されるような培地YFAcである。培地YFAcの組成は以下の通りである:150g/kgのグルコース、5g/kgの酵母菌抽出物、4.7g/kgのDAP(リン酸二アンモニウム)、11.4g/kgのクエン酸、4g/kgの酢酸、13.5g/kgのクエン酸ナトリウム、1mL/kgのTween80、2mL/kgのZnSO(10.6g/L)、2.5ml/kgのMgSO・7HO(400g/L)、1mL/kgのチアミン(18.24g/L)、1mL/kgのピリドキシン(5.28g/L)、1mL/kgのビオチン(1.76g/L)、1mL/kgのパントテン酸塩(3.8g/L)、2.5mL/kgのニコチン酸(8g/L)、1mL/kgのメソイノシトール(50g/L)、1mL/kgのリボフラビン(1g/L)、1mL/kgのパラアミノベンゾエート(1.2g/L)、KOHで4.4に調整されたpH。酢酸に対する耐性を評価するために使用される酵母菌株の接種は、好ましくは発酵培地1kgあたり乾物0.25gである。アルコール発酵の時間t=0は、該発酵培地が該酵母菌株を接種された時間に対応する。アルコール発酵は、中程度の撹拌下、例えば90rpmで、好ましくは32℃で行うべきである。
2000ppmの濃度では、酢酸は発酵を阻害しないことに留意されたい。適切な方法において、酢酸は、発酵培地1kgあたり1〜10g、例えば発酵培地1kgあたり4gで添加される。
本発明の意味において、「MCM7」は、タンパク質Cdc47pとも呼ばれるタンパク質Mcm7pをコードする遺伝子、および該遺伝子の発現の産物を表す。
本発明の意味において、「Mcm7pをコードする遺伝子」または「MCM7遺伝子」は、Mcm7pをコードするORF(オープンリーディングフレーム)に対応する、第II染色体上の625767〜628304位に位置する、酵母Saccharomyces cerevisiaeの遺伝子であると理解される。これらの位置は、参照GenBank GCA_000146045.2(2011年4月18日版)の下でデータベースで入手可能であり、NCBI参照がGene ID:852501である酵母菌株S.cerevisiae S288cのゲノム、特にその全配列に関して示される。番号付けのための参照配列として使用される第II染色体の配列は、番号NCBINC_001134.7(23/12/2010;配列番号1)の下でアクセス可能なものである。
「遺伝子の上流」なる語は、分子生物学において一般に認められている意味、すなわち遺伝子転写のための開始部位の(コード鎖の)5’に位置する領域を意味すると理解されなければならない。古典的な方法において、(「プロモーター/調節領域」とも呼ばれる)該領域は、特に、プロモーターおよび、転写調節因子のための結合部位などの調節配列を含む、MCM7遺伝子の発現に関与する。本発明の意味において、該領域は、Mcm7pをコードする遺伝子の転写の開始部位での1200個の5’ヌクレオチドから構成される。
「有機酸によるまたは有機酸の存在下でのMCM7の発現の誘導」または「有機酸によるまたは有機酸の存在下でのMCM7の過剰発現」は、本発明の存在下で、有機酸の不在下でのMcm7pをコードする遺伝子の発現レベルと比較して、有機酸の存在下での同じ株における該遺伝子の発現レベルの増加を意味すると理解される。該発現の増加は、ヌクレオチドレベル(増加したmRNA)またはタンパク質レベルに変換することができる。従って、当業者は、分子生物学および生化学の周知の方法(ノーザンブロット、PCR、ウエスタンブロットなど)の中で、当業者に最も適すると思われる測定方法、および実施するのに最も簡単な方法を選択することができるだろう。
本発明の意味において、「転写因子Haa1pにより媒介されるMCM7の発現の誘導」または「転写因子Haa1pにより媒介されるMCM7の過剰発現」なる語は、本願において標的とされるMCM7の発現の誘導または過剰発現は、転写因子Haa1pに依存することを意味する。言い換えれば、転写因子Haa1pの不在下、例えば、該遺伝子が欠失しているかまたはそれを非機能的にする突然変異を有する酵母菌の場合、またはHaa1pのレベルが制限されている条件においてさえ、酵母菌は、特に有機酸の存在下で、もはやMCM7の発現を誘導することはできない。
本発明の文脈において、「Haa1p結合部位」は、標的遺伝子に結合し、次いで該標的遺伝子の転写レベルがHaa1pにより調節されることを可能にするHaa1p転写因子により認識されるヌクレオチド配列を意味すると理解される。Miraらによると(Nucleic Acid Research, 2011, 39 (16):6896−6907)、Haa1により認識される最小モチーフは、以下の配列:
以前コンピュータで決定されたモチーフ−5’−GNN(G/C)(A/C)(A/G)G(A/G/C)G−3’の代わりの
5’−(G/C)(A/C)GG(G/C)G−3’
を有する。
発明の詳細な説明
第一の態様によれば、本発明は、酵母菌株上または酵母菌株に対し、有機酸に対する耐性を付与するためのMCM7遺伝子の使用に関する。
有利な実施形態によれば、付与される耐性は酢酸に対する耐性であり、リグノセルロース加水分解物中の高濃度での酢酸の存在は、該ヘミセルロース分子と共有結合的に会合しているアセチル基の存在と本質的に関連する。
別の有利な実施形態によれば、酵母菌株における有機酸に対する耐性は、グルコース発酵中に変換され、そのため発酵開始の遅延が低下または減少する。
有利には、MCM7遺伝子の使用は、有利には問題の有機酸、特に酢酸の存在下で、それが誘導される場合に興味深い。
さらにより有利には、有機酸の存在により誘導されるMCM7遺伝子の発現は、転写因子Haa1pにより媒介される。適切な方法において、該MCM7遺伝子の上流の配列は、Haa1pに対する結合部位を含む。
特定の実施形態によれば、MCM7遺伝子の上流の配列は、以下の配列:
GAGGGGまたは
GAGGAGGGGまたは
配列番号2または
配列番号3または
配列番号4
を含む。
別の実施形態によれば、MCM7遺伝子の上流の配列は、以下の特徴:
− 624536位のT;
− 624732位のT;
− 624736位のG;
− 624758位のC;
− 624794位のG;
− 624801位のA;
− 624832位のA;
− 625073位のC;
− 625146位のG;
− 625199位のA
のうち少なくとも1つを有する。
既に述べたように、そして本発明の範囲内で、位置番号は参照株S288cのそれに対応する。従って、「位置」は、所与の位置に対応する、研究される株における位置として理解されなければならない。
好ましい実施形態によれば、MCM7遺伝子の上流の配列は、624794位に少なくとも1つのGを有する。別の実施形態によれば、それは624758位にC、624794位にG、および624801位にA、または上記の全ての特徴を有する。
好ましい実施形態によれば、本発明により標的とされる酵母菌株は、Hemiascomycetes類に属する。好ましい株は、Saccharomyces、PichiaおよびYarrowia属、有利にはSaccharomyces属に属する。有利には、Saccharomycesの中では、それはSaccharomyces cerevisiaeに関する。
別の特徴によれば、本発明は、以下:
− 有機酸の存在下でのMCM7遺伝子の発現の実証された誘導;および/または
− MCM7遺伝子の上流の配列、有利には配列GAGGGGまたはGAGGAGGGGまたは配列番号2または配列番号3または配列番号4中のHaa1p結合部位の、酵母菌株の少なくとも1つの対立遺伝子での実証された存在;および/または
− 酵母菌株の少なくとも1つの対立遺伝子での、第II染色体上の624794位での塩基Gの存在の実証された存在
を含む、有機酸に対して耐性のある酵母菌株の選択プロセスに関する。
既に述べたように、有機酸は有利には酢酸である。
別の好ましい実施形態によれば、得られる選択された株の有機酸に対する耐性は、そのグルコース発酵中に観察される。
従って、本発明は、ここでは有機酸に対して耐性のある目的の株のための遺伝子型スクリーニング方法を提供する。該アプローチは、時間およびお金の両面で、伝統的に使用される表現型スクリーニングよりはるかに安価である。
記載されるように、3つの基準を評価できる:
第一の基準は、有機酸の存在下でMCM7の発現を誘導する菌株の能力を評価することから構成される。既に述べたように、該発現の誘導は、転写またはタンパク質のいずれかのレベルで当業者に知られている任意の技術により評価できる。
第二の基準は、MCM7の5’でのHaa1p結合部位の存在に依存する。従って、そして適切な方法において、MCM7の上流に位置する領域は、配列(G/C)(A/C)GG(G/C)G、おそらくGNN(G/C)(A/C)(A/G)G(A/G/C)G(ここで、NはA、C、GおよびTから選択されるヌクレオチドである)を含む。
特定の実施形態によれば、該領域は、以下:
− 最小Haa1p結合部位に対応するGAGGGG;
− コンピュータで決定された、Haa1pにより認識されるモチーフに対応するGAGGAGGGG;
− 配列番号2の配列;
− 配列番号3の配列;
− 配列番号4の配列;
有利には配列番号3または4の配列
から選択される、少なくとも1つの配列を含有する。
これらの配列は、シークエンシング、PCR、ハイブリダイゼーションなどの当業者に知られている任意の技術により実証することができる。
例示的実施形態に示されるように、これは、該株の対立遺伝子の1つ、おそらくいくつか、おそらく該対立遺伝子の全て(二倍体酵母菌の場合には2つ)にさえ関係し得る。
第三の基準によれば、該株は、少なくとも1つの対立遺伝子で、最小Haa1p結合部位中の対応する配列において太字で示される(
)、第II染色体の624794位に対応する位置で塩基Gを提示する。酢酸に対して耐性のない株中の該位置にAが観察されることに留意されたい。いかなるカテゴリーにも束縛されることを望まずに、塩基Aを塩基Gで置き換えることは、機能的なHaa1p結合部位の作出を可能にし、酢酸の存在下でのMCM7の発現の誘導が可能になる。
有利には、他の突然変異は、以下:
− 624536位のT;
− 624732位のT;
− 624736位のG;
− 624758位のC;
− 624801位のA;
− 624832位のA;
− 625073位のC;
− 625146位のG;
− 625199位のA
から選択される該領域中に見いだすことができることに留意されたい。
特定の実施形態によれば、本発明により標的とされる株は、第II染色体の624794位に対応する位置での少なくとも1つの塩基G、おそらく、624758位での少なくとも1つのC、624794位でのG、および624801位でのAの存在のため、さらにおそらく、その対立遺伝子の少なくとも1つにおいて、記載された特定の位置に関連して上述された10個のヌクレオチドのため、選択される。
これらの突然変異の実証または同定は、例えば目的の位置をシークエンスすることにより、当業者により容易に達成される。
該方法を使用して同定された目的の株は、当然のことながら、例えば上記のように、選択された株の酢酸の存在下でグルコースを発酵する能力を評価することからなる表現型アプローチにより確認できる。
これらの種々の遺伝子型スクリーニング基準は、特にグルコース発酵に関して、有機酸、有利には酢酸に対して耐性のある酵母菌株を産生するかまたは得るために実施されることもできる。
従って、そして利用可能な分子生物学的ツールを使用して、所望の表現型を得るために酵母菌株に対して突然変異誘発(直接的またはランダム)を行うことが可能である。既に述べたように、上記の遺伝子型の特徴の存在は、一つの対立遺伝子で先験的に必要なだけである。あるいは、従って、該突然変異誘発は、次いで他の胞子、所望により他の目的の表現型形質を提示する他の株由来の胞子とハイブリダイズされる胞子(または分離体)とで達成できる。
有利には、本発明は、一倍体胞子または分離体において行われる遺伝子型スクリーニングに基づいて、有機酸に対して耐性のある酵母菌株を得るための方法を提案する。
従って、そして別の特徴によれば、本発明は、以下:
− 異なるゲノムまたは異なる表現型形質を有する2個の親株のための胞子形成工程;
− 得られた胞子または分離体のためのマスハイブリダイゼーション工程、
該プロセスは、有機酸の存在下でMCM7の発現を誘導するそれらの能力のため、および/またはMCM7の上流の配列中のHaa1p結合部位の存在、有利には、配列番号3または配列番号4の配列の実証のため、および/または第II染色体の624794位での塩基Gの存在のため、胞子または分離体の少なくとも1つの選択工程を含む
を含む、有機酸に対して耐性のある酵母菌株を得るための方法を提案する。
特徴的な方法において、本発明の方法は、親株の胞子形成の工程を含む。該技術は当業者に周知であり、従ってさらなる説明を必要としない。一例として、胞子形成工程は、親株を、例えば枯渇培地中など、適切な培養条件において培養することにより行うことができる。
本発明の意味において、親株の中で、少なくとも1つは、目的の表現型、ここでは有機酸、有利には酢酸に対する耐性を有する。有利には、これは、培地1kgあたり酵母乾物0.25gの接種物を有する発酵培地YFAcにおいて、アルコール発酵の開始を30時間未満、好ましくは20時間未満、より好ましくは15時間未満、またはおそらく10時間遅らせる。かかる株は当業者に周知である。本発明の意味において、必要ならば、当業者は、例えば選択圧を用いた通常の技術により、有機/酢酸に対して耐性のある親酵母菌株を産生できるだろう。
目的の親株は、本発明の発明特定事項である選択方法を用いて同定することもできることに留意されたい。
S.cerevisiaeの使用の特定の場合、それは、特に、2014年3月13日に番号I−4839の下でCNCMに寄託された株EGAc1(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Doctor Roux, 75724 Paris Cedex 15)であってもよい。
本願の文脈において示されるように、所望により、該表現型形質が1つのみの対立遺伝子により運ばれる場合、胞子形成は、有機/酢酸に対する耐性を有する1つのみの対立遺伝子を有する二倍体親株の場合において胞子の半分である、該遺伝子型形質を有さない胞子を生じる。
特定の場合において、本発明の意味において、本発明の方法の文脈において使用される2個の親株は、有機酸に対する耐性の表現型を有する。
適切な様式において、本発明の意味において、特に有機/酢酸に対して耐性のある少なくとも1個の親酵母菌株、有利には両方の親株が、グルコースを発酵することができる。
好ましい実施形態によれば、第二の親酵母菌株、有利には有機/酢酸に対する耐性を有しない株は、目的の第二の表現型形質を有する。例えば、これは、ペントース、特にリグノセルロース加水分解物中に大量に存在するグルコースを代謝する能力である。
従って、グルコースを発酵し、さらにペントースを代謝することができる酵母菌株が利用可能である:
例として、文献WO2010/000464は、キシロースを酵母菌により代謝されることができるキシルロースに変換するキシロースイソメラーゼ(XI)をコードする細菌遺伝子のために、ペントースを発酵することができる酵母菌株を得ることを報告する。代替として、キシリトールを生成するキシロースレダクターゼ(XRまたはXYL1)およびキシルロースを生成することもできるキシリトールデヒドロゲナーゼ(XDHまたはXYL2)を含む真核生物経路が留意されるべきである。
故に、文献WO2012/072793は、キシロースイソメラーゼおよびキシリトールを除去するためにキシリトールデヒドロゲナーゼをコードする外因性遺伝子を組み合わせた改良酵母菌株を記載しており、キシロースイソメラーゼの阻害剤であることを証明する。かかる菌株、特に2011年10月5日に番号I−4538の下でCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)に登録された菌株は、収量を改善しており、従ってエタノールの産生に対する産業上の利用性が証明されている。
その点において、そして特定の実施形態によれば、本発明の方法の文脈において使用される第二の親株は、2011年10月5日に番号I−4538の下でCNCMに登録された株(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Doctor Roux, 75724 Paris Cedex 15)である。
本発明の方法は、得られた胞子または分離体のためのマスハイブリダイゼーション工程をさらに含む。
該工程は、当分野で使用されており、A.H. RoseおよびJ. S. Harrisonにより編集された参考文献「The Yeasts」、第1巻、1969−Academic Press における、R.R. Fowellによる7章「Sporulation and Hybridization of Yeast」に詳細に記載される。手短に言えば、ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション工程において、問題の胞子を適切な培養物に添加することにより達成される。典型的に、当業者は該工程のために、YPGタイプの完全培養培地(10g/Lの酵母菌抽出物、20g/Lのバクトペプトン、20g/Lのグルコースおよび脱イオン水qsp 1Lを含有する)を使用できるだろう。
以下の3つの基準のうちの少なくとも1つに基づいて、前述のように目的の胞子または分離体のための選択工程が達成された:
第一の基準は、有機酸の存在下でMCM7の発現を誘導する胞子の能力を評価することから構成される。既に述べたように、該発現の誘導は、転写またはタンパク質のいずれかのレベルで当業者に知られている任意の技術により評価できる。該工程は、該表現型(有機酸、有利には酢酸によるMCM7の発現の誘導)を有する胞子または分離体を積極的に選択すること、すなわち次の工程のために該表現型を有する胞子を単離することから構成される。
第二の基準は、胞子のMCM7の5’でのHaa1p結合部位の存在に依存する。従って、そして適切な方法において、MCM7の上流に位置する領域は、配列(G/C)(A/C)GG(G/C)G、おそらくGNN(G/C)(A/C)(A/G)G(A/G/C)G(ここで、NはA、C、GおよびTから選択されるヌクレオチドである)を含む。
特定の実施形態によれば、該領域は以下:
− 最小Haa1p結合部位に対応するGAGGGG;
− コンピュータで決定された、Haa1pにより認識されるモチーフに対応するGAGGAGGGG;
− 配列番号2の配列または
− 配列番号3の配列または
− 配列番号4の配列
有利には配列番号3または4の配列
から選択される少なくとも1つの配列を含有する。
これらの配列は、シークエンシング、PCR、ハイブリダイゼーションなどの当業者に知られている任意の技術により実証できる。
別の基準によれば、胞子は、最小Haa1p結合部位中の対応する配列において太字で示される(
)、第II染色体の624794位に対応する位置に塩基Gを有する。酢酸に対して耐性のない胞子中の該位置にAが観察されることに留意されたい。いかなるカテゴリーにも束縛されることを望まずに、塩基Aを塩基Gで置き換えることは、機能的なHaa1p結合部位の作出を可能にし、酢酸に応答してMCM7の発現または過剰発現が可能になる。
有利には、他の突然変異は、以下:
− 624536位のT;
− 624732位のT;
− 624736位のG;
− 624758位のC;
− 624801位のA;
− 624832位のA;
− 625073位のC;
− 625146位のG;
− 625199位のA
から選択される該領域中に見いだすことができることに留意されたい。
特定の実施形態によれば、本発明により標的とされる分離体は、第II染色体の624794位での少なくとも1つの塩基G、おそらく、624758位での少なくとも1つのC、624794位でのG、および624801位でのAの存在のため、さらにおそらく、記載された特定の位置に関連して上述された10個のヌクレオチドのため、選択される。
これらの突然変異の実証または同定は、例えば目的の位置をシークエンスすることにより、当業者により容易に達成される。
例えば、このような選択は、当業者に周知の分子生物学の技術による、またはPCR技術による全体的または部分的なシークエンシングに基づいて行うことができる。従って、シークエンシングは、ハイブリダイゼーションによる、もしくはパイロシーケンシング、合成シークエンシングまたはライゲーションシークエンシングなどのハイスループットシークエンシング技術により達成できる。あるいは、標的多型を探すことにより、PCR技術に基づいて選択を行うことができる。例えば、これに関連して、単一の試験においていくつかの多型を探す多重PCR技術、高感度の結果をもたらすネステッド(nested)PCR、またはDNA抽出を必要としないコロニーPCRを挙げてもよい。
シークエンシングまたはPCRを達成するために、十分な生物学的材料を利用可能にするために、DNA増殖工程が必要であり得る。次いで、その繁殖に適した培養培地中で各株または胞子を培養することにより増幅を進めることが可能である。さらに、酵母菌のためのDNA抽出工程が必要であってもよく、そして本発明の分野において周知の分子生物学的方法に従って行うことができる。
本発明の方法は、多様な方法で実施できる:酵母選択工程は、親株から、および/またはそれに由来する胞子から、および/またはハイブリダイゼーション後に得られる株から行うことができる。しかしながら、既に述べたように、親株に由来する胞子から選択工程を進めることが、特に有利である。
故に、好ましい一実施形態によれば、本発明による方法は、以下の工程:
a)第一の親株由来の分離体および第二の親株由来の分離体を調製する;
b)工程a)の分離体の中から、有機酸の存在下でMCM7の発現を誘導することができる、および/またはMCM7の上流の配列、有利には配列番号3または配列番号4の配列中にHaa1p結合部位を有する、および/または第II染色体上の624794位に塩基Gを有するものを選択する;
c)工程b)で選択された該第一の親株由来の分離体と、所望により工程b)で選択された該第二の親株由来の分離体とをハイブリダイズさせる;
d)工程c)からの雑種の中から、有機酸に対して耐性のあるものを選択する
を含む。
該方法の工程a)は、2個の異なる親酵母菌株、有利にはS.cerevisiae由来の分離体の調製工程、すなわち胞子形成工程に対応する。当業者は、本発明の分野で周知の方法に従って、上で定義された親株由来の分離体を容易に得ることができるだろう。
有利な実施形態において、該工程は、窒素または糖が除去された培地中での、最初の第一の親酵母菌株、次の第二の親酵母菌株の培養を含む。
好ましい方法において、使用される親株はSaccharomyces属に属する酵母菌株、有利にはSaccharomyces cerevisiaeである。
好ましい実施形態によれば、第一の株は、特にグルコース発酵中の、有機酸、有利には酢酸に対するその耐性能力について選択される。特に、それは、2014年3月13日に番号I−4839の下でCNCMに登録された株EGAc1であってもよい。優先的に、該株の分離体が、該方法の選択工程b)の対象となる。
別の好ましい実施形態によれば、第二の親酵母菌株は、目的の別の表現型形質、例えばキシロースを代謝するその能力について選択される。例えば、それは、2011年10月5日に番号I−4538の下でCNCMに登録された株であることができる。
特定の場合において、また、第二の親酵母菌は、特にグルコース発酵中に、有機酸、有利には酢酸に対する耐性能力を有してもよい。その場合、該株の胞子もまた該方法の選択工程b)の対象となる。
本発明の方法の工程b)は、記載されたように使用され、そして所望の表現型形質、ここでは本発明の意味における有機酸に対する耐性を有さない胞子の除去を可能にする。従って、そして該工程のおかげで、該表現型形質を有する株をハイブリダイゼーションから得る可能性は大いに増加する。
本発明の方法の工程c)は、第一の親酵母菌株由来の分離体と第二の親株由来の分離体とのハイブリダイゼーションの工程であり、ここで少なくとも1個の分離体集団、有利には第一の酵母菌株由来の分離体集団は、工程b)で以前に選択されている。
好ましくは、マスハイブリダイゼーションは工程c)で行われる。言い換えれば、好ましくは、工程c)は、工程b)からの全ての胞子についてのハイブリダイゼーション工程に対応する。
該方法の所望の工程d)は、工程c)からの雑種の中からアルコール発酵が可能で、有機酸、有利には酢酸に対する耐性の表現型を有するものを選択することからなる。既に述べたように、該工程は、通常の培養技術を用いた伝統的な選択方法により容易に達成される。有利には、該工程はグルコースを含む培地上で使用される。
添付の図面により支持される以下の例示的な実施形態を使用して、本発明をさらに説明する。しかしながら、それらは範囲を限定的しない。
図1は、酢酸の存在下で発酵した酵母菌集団(popB)における、または酢酸なしで発酵した酵母菌集団(popC)における、および全ての第II染色体に沿ったEGAc1(I−4839)由来の対立遺伝子の割合を決定するために使用したフローチャートを示す。 S288c:そのゲノムがGenBank reference GCA_000146045.2.,2011年4月18日版; NCBI Gene ID: 852501;第II染色体: NCBI NC_001134.7)として働くS.cerevisiaeの株。 EGAc1:2014年3月13日に番号I−4839の下でCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, 75724 Paris Cedex 15)に登録された株。 I−4538:番号I−4749の下でCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, 75724 Paris Cedex 15)に登録された株。 EGAc2:2014年3月13日に番号I−4840の下でCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 rue du Doctor Roux, 75724 Paris Cedex 15)に登録された株。
図2は、両方の集団:PopC=ストレスを受けていない、破線;PopB=ストレスを受けた、線における株EGAc1(I−4839)中の対立遺伝子の頻度平均を示す。
図3は、(A)酢酸の存在下で発酵した酵母菌集団(popB:ストレスを受けた、線)における、または酢酸なしで発酵した酵母菌集団(popC:ストレスを受けていない、破線)における、および全ての第II染色体に沿った株EGAc1(I−4839)中の対立遺伝子の頻度平均(B)行われた3連の実験についての第II染色体に沿った位置の関数としてのLODスコア値(類似性指数)を示す。
図4は、(A)参照株の第II染色体の624000〜626000bp領域における株EGAc2(I−4840)についてのゲノムリードのアセンブリーのグラフ表示。LODスコアが最も高い領域が示される(624500〜625200bp;配列番号3)(B)624794位の該株中の対立遺伝子の50%に影響を及ぼすSNP(A>G)の影響に対する焦点。矢印は、配列番号2の配列中のHaa1p転写因子により認識される部位の存在を表すを示す。
図5は、0.25g/kg(乾物当量)の接種材料を用いた32℃でのYFAc培地上での発酵中の質量損失の平均変化に関する。使用された株は: 株I−4538、酢酸に対して感受性(S); 株EGAc1(I−4839)、酢酸に対して耐性(R); ヘテロ接合性株EGAc2(I−4840)、「EGAc2−AlleleR/AlleleS」と表される; 遺伝子座II−624794でEGAc1(耐性対立遺伝子)由来の対立遺伝子についてホモ接合性にした株EGAc2(I−4840)、「EGAc2−AlleleR/AlleleR」と表される; 遺伝子座II−624794でI−4538(感受性対立遺伝子)由来の対立遺伝子についてホモ接合性にした株EGAc2(I−4840)、「EGAc2−AlleleS/AlleleS」と表されるである。
エラーバーは、耐性対立遺伝子について7個のホモ接合性株、および感受性対立遺伝子について5個のホモ接合性株を用いて行われた測定に基づいて計算された標準偏差に対応する。
実施例1:酢酸などの弱有機酸に対する耐性の表現型に関連する遺伝的形質および突然変異の同定
これらの最初の実験において、目的は、遺伝的観点から多様な酵母菌集団を産生し(a)、それによって、弱有機酸に対して耐性のある株を選択するだけでなく、該表現型に関与する遺伝形質を分析することができる(b)ようにすることである。
a.弱有機酸に対して耐性のある株を含む酵母菌集団の産生:
酵母菌集団を、大量胞子形成およびハイブリダイゼーションからのランダム組換えにより得た。該戦略は、Leo Partsらの研究に触発される(2011, Genome Res, 21(7):1131−8)。手短に言えば、WO2013/178915に記載されるように、酢酸に対して耐性のある株(株EGAc1/I−4839)の分離体(胞子とも呼ばれる)を、株I−4538由来の別の分離体と交配させ、それにより第一雑種(株EGAc2/I−4840)を作り出す。
第二に、株EGAc2(I−4840)のゲノムをランダムに組み換えて、遺伝的観点から非常に多様な酵母菌集団を得た。実際には、WO2013/178915に記載されるように、雑種EGAc2(I−4840)を胞子形成するように設定し、次いで得られた胞子をそれらの間で自由に再ハイブリダイズさせた。該サイクルを4回再現し、それによりセンチモルガン(cM)で遺伝的距離において24の減少が生じた。
b.弱有機酸に対して耐性のある株の選択:
弱有機酸に対して耐性のある株を、集団遺伝学の原則、特に、無制限の数を有し、選択を受けず、突然変異がない単離された集団において、対立遺伝子および遺伝子型頻度は、世代から世代へと安定したままであることを示すHardy−Weinberg原理に従って選択した。
従って、選択がない場合、2つの対立遺伝子「A」および「B」の場合、「A」のみが所与の選択圧(例えば、弱有機酸に対する耐性)で集団を適応させる役割を果たすことができる場合、集団における対立遺伝子「A」および対立遺伝子「B」の頻度は安定したままである。対照的に、環境が変化し、培地が弱有機酸で強化される場合、より適応された株(A)の利点に対して、より適応されていない株(B)は消失するだろう。該原理によれば、選択圧が存在する場合、数世代にわたる該平衡の偏差が観察される。従って、選択を受けなかった集団と選択圧を受けた集団との間の対立遺伝子頻度変動を比較することにより、適用された選択に対する耐性または適応に関与し得る対立遺伝子を決定することができる。
実際には、対照集団を得るために、ポイントa)で得られた集団の試料を酢酸を含まない培地(選択圧なし)中で培養した。得られた集団を「集団C」と呼ぶ。
並行して、ポイントa)で得られた集団の試料を、グルコースの存在下でアルコール発酵の開始時に酢酸を添加することにより高い選択圧にかけた。得られた集団を「集団B」と呼ぶ。実際には、4g/Lの濃度を得るように酢酸を培養培地に添加した。
c.弱有機酸に対する耐性の表現型に関与する遺伝形質の決定:
株EGAc1(I−4839)は酢酸に対して耐性があり、該耐性に関連する遺伝的形質が該株に存在することが予想される。結果として、分析する対立遺伝子の数を制限するために、株EGAc1(I−4839)に存在するとき、株EGAc2(I−4840)に集団CおよびBに特異的な対立遺伝子を最初に同定する。次に、ストレスを受けた(B)またはストレスを受けていない(C)集団に出現するこれらの各対立遺伝子の頻度を決定することが可能である。
ゲノムに沿った対立遺伝子頻度の変動の研究を、以下の方法で行った。
発酵後、株EGAc1(I−4839)由来、株EGAc2(I−4840)由来、および集団BおよびC由来のゲノムDNAを抽出し、次いでIllumina HiSeq 2000を使用して「Paired End」法によりシークエンスした。
次いで、結果を図1に示すアプローチに従って処理した。参照ゲノムは、株S288c(GenBank GCA_000146045.2、2011年4月18日版; NCBI Gene ID:852501; NCBI NC_001134.7)のものであることに留意されたい。
複雑な集団に対して行われた研究の場合、対立遺伝子頻度は、問題の対立遺伝子を保有する個体の数を反映する。従って、一例として、そしてHardy−Weinberg原理を直接適用して、対立遺伝子が70%の頻度で存在する場合、集団の91%の個体が該対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを保有すると推定することが可能である。
図2は、株EGAc1(I−4839)由来の対立遺伝子頻度が第II染色体に沿ってどのように変化し、そして集団BおよびCにどのように存在するかを示す。
図2の結果は、第II染色体の第一の部分において、EGAc1(I−4839)由来の対立遺伝子頻度が両方のタイプの集団において非常に近く、約530kbまでであることを示す。該観察は、第II染色体の該部分(0〜530kb)に存在する遺伝子が、株EGAc1(I−4839)から株EGAc2(I−4840)へ分離体により伝達される酢酸耐性プロセスに関与しないであろうことを示唆する。
第II染色体の第二の部分(530kb〜660kb)は、両方のタイプの集団におけるEGAc1(I−4839)由来の対立遺伝子頻度に対応する曲線の解離を示す。該結果は、選択圧なしに発酵した集団よりも選択圧を受けたものにおいてより表される対立遺伝子があることを示す。該過剰表示は、EGAc1(I−4839)由来の該対立遺伝子が酢酸の存在下での細胞の増殖を促進することを示唆する。言い換えれば、第II染色体の第二の部分(530kb〜660kb)は、定量化可能な遺伝形質(QTLとも呼ばれる)、すなわち酢酸に対する耐性に関与する遺伝領域であると同定される。
QTLは一般に大きな配列である。1つのサブ領域が際立っているように思われ:これは第II染色体の塩基624000から626000までの領域である。該領域は最も高い対立遺伝子頻度変動を含むように思われる。次に分析したのは該サブ領域である。
d.弱有機酸に対する耐性についての表現型に関与する遺伝的形質の分析:
QTL内では、より具体的には、これらは、研究された表現型形質を提示しない株と比較した、点状多型(「一塩基多型」のSNP)の頻度変動であり、これが最も関連があり得る。
従って、第II染色体の塩基対領域624000〜626000をより詳細に分析した。それが含むSNPについての類似性指数値を分析して、弱有機酸に対する耐性について表現型における最も関連のあるSNPを含む領域を標的とした(i)。該領域を特定すると、それが含むSNPをより深く分析した(ii)。
i.最も関連のある領域の決定:
選択されたアプローチは、LanderおよびBotsteinにより記載された(1989, Genetics, 121:185−99)ように、LODスコアのものであった。
第一の工程は、式(inference)を決定することからなる:
第一の式において、「n1」は、集団B中の株EGAc1(I−4839)由来のSNPを有するリードの数であり、「n2」は、他のSNPを有するリードの数である。次の方程式は同じ計算に関係するが、ストレスを受けていない集団の結果に適用された。
第二の工程は、類似度を計算することからなる:
類似度(L)を、条件付き確率関数として定義する。従って、これは、以下の式に従って計算される、酢酸の存在下で発酵した集団または酢酸の存在下で発酵しなかった集団のいずれかにおいて、株EGAc1(I−4839)の対立遺伝子を有する確率である。
第三の工程は、LODスコアを計算することからなる:
各対立遺伝子についてのこれらの類似度の決定から、各SNPについてのLODを計算し、それを株EGAc1由来の対立遺伝子と組み合わせることが今や可能である。使用された式は、1989年にLanderおよびBotsteinにより発表されたものである:
LODスコアを、第II染色体についての目的の領域に対して3回分析した(3回の独立した実験)。これらの結果を図3に示す。これらの結果は、対立遺伝子頻度の差が大きい場合、LODスコアの分散もまた高いことを示す(主にそれらの数学的および生物学的関連のため)。
図3Bは、624500bpと625200bpとの間に含まれる領域が、再現可能に見える高いLODスコアを有することを示す。従って、同定された最も関連のある領域は、第II染色体の624500bpと625200bpとの間の領域(配列番号3)である。
ii.最も関連のある領域(第II染色体の624500bpと625200bpとの間)におけるSNPの分析:
株EGAc2(I−4840)中の考慮された領域(第II染色体の624500bpと625200bpとの間)に存在する遺伝子構造および最も頻繁に見出されたSNPを分析した。
これらの結果を図4に示す。
第II染色体の624500bpと625200bpとの間の領域(配列番号3)で、10個のSNPを同定した。
コード領域の配列(オープンリーディングフレーム)に対するこれらのSNPの影響は、タンパク質配列に対する変化を引き起こす突然変異を示さなかった。
対照的に、株EGAc2(I−4840)中の対立遺伝子の50%に影響を与える624794位の多型(A→G)は、MCM7の上流に位置するHaa1p転写因子により認識される部位を再構成し、DNAヘリカーゼをコードする。DNAヘリカーゼはDNAを複製し、従って細胞周期の進行、ひいてはバイオマスの産生を調節する。言い換えれば、該SNPを有する酵母菌は、細胞分裂において重要な役割を果たすことが知られている遺伝子の上流に、他の酵母菌が有していないHaa1p転写因子に対する結合部位を有する。従って、MCM7の上流のHaa1pに認識される部位の存在が株をより耐性にするという事実は、酢酸の存在下では該部位を運ぶ酵母菌がより急速に増殖するという事実を裏付けることができた。
実施例2:「EGAc1−II−624794」と命名された目的の対立遺伝子の検証
同定された目的の領域(特に624758位に突然変異T→C、624794位にA→G、および624801位にG→Aを有する、配列番号4)を分析するための別のアプローチをとるために、EGAc2株(I−4840)におけるヘテロ接合性の喪失を達成するように選択した。第二に、2つの対立遺伝子の一方または他方についてホモ接合性にした株の性能を比較した。
a)野生型対立遺伝子についてまたは目的と同定されたSNPを含む対立遺伝子についてのホモ接合性EGAc2株の構築:
株EGAc2(I−4840)は、目的と同定されたQTLについて、すなわち624794位にSNP(A→G)を有するヘテロ接合性である。実際、それは、株EGAc1/I−4839の「II−624794」と命名された対立遺伝子(すなわち624794位にGを有する)、および株I−4538由来の対立遺伝子「I4538−II−624794」(すなわち624794位にAを有する)を有する。念のために、株EGAc1(I−4839)は酢酸に対して耐性であるが、株I−4538はそうではない。
該突然変異の役割をより研究するために、株EGAc1の対立遺伝子II−624794(「EGAc1−II−624794」と命名)または株I−4538の対立遺伝子II−624794(「I4538−II−624794」と命名)のいずれかについてのヘテロ接合性株を調製した。これを行うために、LOHと呼ばれるカセットを使用した。その原理において、カセットLOHは、それを発現する酵母菌にジェネティシン(geneticin)に対する耐性を付与する遺伝子(KanMX4)から構成される。該カセットの別の部分は、配列GIN11m86を有する。後者は、それを発現する細胞にとって有毒である(Akada et al., 1997, Mol Gen Genet 254, 267−74; Kawahata et al., 1999, Yeast, 15, 1−10 and Akada et al., 2002, Yeast, 19, 393−402)。該配列の単一コピーが細胞に対して致死的遺伝子型を付与するのに必要であるので、該系はドミナントネガティブとして認定される。配列GIN11m86がプロモーターGAL2の依存下に置かれる限り、該カセットを失ったであろう細胞をYNB+ガラクトース上で選択することが可能である。
対立遺伝子II−624794に対するホモ接合性EGAc2株を作成するために使用された戦略は、以下の通りである:
LOHカセットは、該2つの対立遺伝子のうちの1つを欠失させることができる組換え配列により隣接された。形質転換体の選択を、YNB−G418培地(ジェネティシンを含む)上で行う。該2つの対立遺伝子のどちらが保持されているかを決定するために、LOHカセットの外側で、検証(validation)シード(seed)と呼ばれるシードを使用して、遺伝子座をPCRにより増幅した。得られたPCRフラグメントのうち最小のもの(650bp)をプラスミドpTOPOにクローニングし、次いでシークエンスし、これから該2つの対立遺伝子のどちらが保持されているかを決定した。保持された対立遺伝子と同一の配列で、株を再形質転換した。新しい形質転換体を、LOHカセットを失ったものの選択を可能にする、ガラクトースを唯一の炭素源として含有するYNB培地上で選択した。最後に、検証シードを使用して、PCRを再度行った。該反応の生成物はユニーク(unique)であり、直接シークエンスされた。
該戦略を用いて、「EGAc2−AlleleR/AlleleR」と命名された(酢酸に対する耐性を付与する)対立遺伝子「EGAc1−II−624794」に対する7個のホモ接合性EGAc2株、および「EGAc2−AlleleS/AlleleS」と命名された(酢酸に対する感受性を付与する)「I4538−II−624794」と命名された対立遺伝子に対する5個のホモ接合性EGAc2株を作成し、検証した。
b)酢酸に対する耐性に対するホモ接合性の影響の分析:
前述の12個のホモ接合性株を得た後、酢酸の存在下でグルコースを発酵するそれらの能力を試験した。これらの性能を、以下のように定義されるYFAc培地(4000ppm;pH4.4)上で測定した。
該培地上での発酵中に観察された質量損失の結果を図5に示す。示された曲線は、同じ遺伝子型の全ての株について得られた値の平均である。
図5に提示された結果は、遺伝子座II−624794での感受性対立遺伝子(S)についてホモ接合性にした株EGAc2が、YFAc上でEGAc2株(I−4840)よりも発酵の開始が遅れることを示す。これは、対立遺伝子「I4538−II−624794」のホモ接合性のために、株EGAc2における対立遺伝子「EGAc1−II−624794」の喪失が、グルコース発酵中に得られた株を酢酸に対してより感受性にすることを示す。
対照的に、遺伝子座II−624794で対立遺伝子「EGAc1−II−624794」についてホモ接合性にしたEGAc2株は、該培地上でEGAc2株(I−4840)と異ならない発酵動態を有する。該結果は、ホモ接合性が該培地中の株に何も追加しないことを示唆する。
結論として、該研究は、対立遺伝子「EGAc1−II−624794」が、株EGAc2(I−4840)に対して酢酸に関する耐性に実際に寄与することを明らかにする。しかしながら、単一コピーは、酢酸に対する耐性表現型を付与するのに十分であると思われる。

Claims (12)

  1. グルコース発酵中に酵母菌株に有機酸、有利には酢酸に対する耐性を付与するための、MCM7遺伝子の使用。
  2. 該MCM7遺伝子の発現が有機酸の存在下で誘導されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
  3. 該MCM7遺伝子の上流の配列がHaa1pに対する結合部位を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
  4. 該MCM7遺伝子の上流の配列が配列番号3または配列番号4の配列を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
  5. 該酵母菌株がSaccharomyces属、有利にはSaccharomyces cerevisiaeに属することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
  6. 以下の工程:
    − 有機酸の存在下でのMCM7遺伝子の発現の実証された誘導;および/または
    − MCM7遺伝子の上流の配列、有利には配列番号3または配列番号4の配列中のHaa1p結合部位の、酵母菌株の少なくとも1つの対立遺伝子での実証された存在;および/または
    − 酵母菌株の少なくとも1つの対立遺伝子での、第II染色体上の624794位での塩基Gの存在の実証された存在
    を含む、グルコース発酵中に有機酸、有利には酢酸に対して耐性のある酵母菌株を選択する方法。
  7. 以下の工程:
    − 異なるゲノムを有する2個の親株のための胞子形成工程;
    − 得られた分離体のためのマスハイブリダイゼーション工程、
    − 有機酸の存在下でMCM7の発現を誘導する能力のため、および/またはMCM7の上流の配列中のHaa1p結合部位の存在、有利には配列番号3または配列番号4の配列の実証のため、および/または第II染色体上の624794位での塩基Gの存在のため、分離体の少なくとも1つの選択工程
    を含む、グルコース発酵中に有機酸、有利には酢酸に対して耐性のある酵母菌株を得るための方法。
  8. 以下の工程:
    a)第一の親株由来の分離体および第二の親株由来の分離体を調製する;
    b)工程a)からの分離体の中から、有機酸の存在下でMCM7の発現を誘導することができる、および/またはMCM7の上流の配列、有利には配列番号3または配列番号:4の配列中にHaa1p結合部位を有する、および/または第II染色体上の624794位に塩基Gを有するものを選択する;
    c)工程b)で選択された該第一の親株由来の分離体と、所望により工程b)で選択された該第二の親株由来の分離体とをハイブリダイズさせる;
    d)工程c)からの雑種の中から、有機酸に対して耐性のあるものを選択する
    を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. 該第一の株が有機酸に抵抗する能力に関して選択され、該第二の株が別の目的の特徴、例えばキシロースを代謝する能力に関して選択されることを特徴とする、請求項7〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 該酵母菌株が、Saccharomyces属、有利にはSaccharomyces cerevisiaeに属することを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 該第一の株が、2014年3月13日に番号I−4839の下でCNCMに寄託された株EGAc1であり、該第二の株が、2011年10月5日に番号I−4538の下でCNCMに寄託された株である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 有機酸に抵抗する能力が、グルコースを含む培地上で試験されることを特徴とする、請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
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