JP2019530165A - イオン汚染を制御するための方法およびシステム - Google Patents

イオン汚染を制御するための方法およびシステム Download PDF

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Abstract

質量分析システムの殆どのイオン光学系は、イオン堆積を受け、実質的な汚染(例えば、感度の喪失)に続けて有意に異なる挙動を呈し得るため、汚損した表面は、感度を維持するために定期的に浄化されなければならない。フロントエンド構成要素(例えば、カーテン板、オリフィス板、Qjet、Q0、IQ0)の表面は、比較的に浄化することが容易であり得るが、下流高真空チャンバ内に含有される構成要素(例えば、Q1、IQ1)の汚損は、高真空チャンバが浄化に先立って通気され、実質的に分解されなければならないため、実質的な遅延および費用を負担し得る。質量分析計システムの構成要素の汚染を制御するための方法およびシステムが、本明細書に提供される。

Description

(関連出願)
本願は、2016年9月20日に出願され、“Methods and Systems for Controlling Ion Contamination”と題された米国仮出願第62/397,202号に対する優先権を主張するものであり、該米国仮出願は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
本教示は、質量分析を対象とし、より具体的には、質量分析計の高真空部分の中に透過されているイオン束を制御および/または低減させるための方法およびシステムを対象とする。
質量分析(MS)は、定量的および定性的用途の両方で試験物質の元素組成を決定するための分析技法である。例えば、MSは、未知の化合物を識別し、分子中の元素の同位体組成を決定し、その断片化を観察することによって特定の化合物の構造を決定し、およびサンプル中の特定の化合物の量を定量化するために使用されることができる。
質量分析では、サンプル分子は、概して、イオン源を使用してイオンに変換され、次いで、1つ以上の質量分析器によって分離および検出される。殆どの大気圧イオン源に関して、イオンは、真空チャンバ内に配置されるイオンガイドに進入することに先立って、入口オリフィスを通過する。従来の質量分析計システムでは、イオンガイドに印加される無線周波数(RF)信号が、質量分析器が配置される後続のより低圧の真空チャンバの中にイオンが輸送される際、イオンガイドの中心軸に沿って衝突冷却および半径方向集束を提供する。大気圧における(例えば、化学イオン化、エレクトロスプレーによる)イオン化は、概して、サンプル内の分子をイオン化する高度に効率的な手段であるため、着目分析物のイオンおよび干渉/汚染イオンおよび中性分子が、高存在度において生成され得る。イオン源とイオンガイドとの間の入口オリフィスのサイズを増加させることは、イオンガイドに進入する着目イオンの数を増加させ得る(それによって、潜在的に、MS器具の感度を増加させる)が、そのような構成は、同様に、より多くの望ましくない分子が、真空チャンバに進入し、潜在的に、着目イオンの軌跡が電場によって精密に制御される、高真空チャンバの内側深くに位置する下流質量分析器段階に進入することを可能にし得る。望ましくないイオンおよび中性分子の透過は、これらの下流要素を汚損/汚染し、それによって、質量分析に干渉する、および/または高真空チャンバ内の重要な構成要素の浄化によって必要とされる、増加されたコストまたは減少された処理能力につながり得る。加えて、いくつかのイオン源(例えば、液体クロマトグラフィ溶出勾配全体を通してイオンを生成するためのエレクトロスプレー源)は、いかなるデータも収集されない、またはいかなる着目分析物も存在しないであろう期間の間でさえも質量分析器に進入するイオンを連続的に生成し、質量分析器の汚染をさらに加速させ得る。今日の大気圧イオン化源を用いて分析されている生物学的ベースのサンプルのより高いサンプル負荷および汚染性質のため、清浄な質量分析器を維持することは、重要な懸念のままである。
故に、下流質量分析器における汚染を低減させるための改良された方法およびシステムの必要性が残っている。
質量分析システムの殆どのイオン光学系(例えば、レンズ)は、それを通した透過の間のイオンの脱集束に起因してイオン堆積を受け、実質的な汚染(例えば、感度の喪失)に続けて有意に異なる挙動を呈し得るため、汚損した表面は、感度を維持するために定期的に浄化されなければならない。フロントエンド構成要素(例えば、カーテン板、オリフィス板、Qjet、IQ0)の表面は、比較的に浄化することが容易であり得るが、下流高真空チャンバ内に含有される構成要素(例えば、Q0、Q1、IQ1)の汚損は、真空チャンバが浄化に先立って通気され、実質的に分解されなければならないため、相当な時間および/または費用をもたらし得る。いくつかの側面では、イオン源の安定性を維持しながら、および/またはそれによってイオンを連続的に産生しながら、質量分析計システムの高真空チャンバ内に含有される構成要素の汚染を制御するための方法およびシステムが、本明細書に提供される。質量分析計内の深くに格納される感受性構成要素の中へのイオンの透過を低減させることによって、本教示は、処理能力を増加させる、ロバスト性を改良する、および/または汚損した構成要素を通気/分解/浄化するために典型的に要求される中断時間を減少させることができる。
本教示の種々の側面によると、イオン化チャンバを画定するイオン源筐体を備える質量分析計システムが提供され、イオン化チャンバは、カーテン板開口を画定するカーテン板を備え、イオン化チャンバ内で生成されるイオンは、カーテン板開口を通して1つ以上の下流質量分析器に透過され得る。サンプリングオリフィスを画定するオリフィス板は、オリフィス板とカーテン板との間のカーテンチャンバを画定するように、カーテン板から分離され、カーテン板開口からのイオンは、カーテンチャンバを通してサンプリングオリフィスに透過され得る。本システムはまた、カーテン板およびオリフィス板に電気信号を提供するためにカーテン板およびオリフィス板に電気的に結合される、電力供給源と、電力供給源に動作可能に結合される、コントローラであって、イオンがサンプリングオリフィスを通して優先的に透過される第1の期間の間の第1の構成およびイオンがカーテンチャンバを通してサンプリングオリフィスまで通過することが実質的に防止される第2の期間の間の第2の構成から、カーテンチャンバ内の電場を変調するように、カーテン板およびオリフィス板に印加される電気信号を制御するように構成される、コントローラとを含む。
種々の側面では、本システムはさらに、カーテンガスをカーテンチャンバの中に流動させるためのカーテンガス供給源を備えることができ、カーテンガスの少なくとも一部は、カーテン板開口を通してイオン化チャンバに指向される。加えて、または代替として、カーテンガス(典型的には、窒素)の向流が、カーテンチャンバの少なくとも一部の中に提供されることができる。下記に詳細に議論されるように、イオンは、第1の期間の間にカーテンとオリフィス板との間に生成される静電場によって向流ガス流を通して推進されることができる一方、カーテンチャンバ内の電場は、向流ガス流が、イオンがサンプリングオリフィスに移行することを防止し得るように、第2の期間の間に除去または反転されることができる。いくつかの関連する側面では、カーテンガス供給源は、コントローラに動作可能に結合されることができ、コントローラは、第2の期間の間にカーテンチャンバに提供されるカーテンガスの体積流率を増加させるように構成される。
種々の側面によると、本システムはまた、流体サンプルを受容するため、かつ該流体サンプルを該イオン化チャンバの中に連続的に排出するためのイオン源を備え、電力供給源は、流体サンプルがイオン化チャンバの中に排出される際にイオンを生成するために、イオン源にイオン源電圧を提供するようにイオン源に電気的に結合され、第1および第2の期間の間にイオン源から排出される流体サンプルの流率は、実質的に同等であり、イオン源電圧は、第1および第2の期間の間、実質的に一定である。
カーテンチャンバ内の電場は、本教示の種々の側面によると、種々の様式で変調されることができる。非限定的実施例として、第1の構成では、カーテン板は、約+500V DCを上回る電圧に維持されることができ、オリフィス板は、約+300Vを下回る電圧に維持されることができる。いくつかの側面では、例えば、第1の構成では、カーテンチャンバ内の電場は、第1の極性のイオンを、カーテンチャンバを通して(例えば、カーテンガスを通して)サンプリングオリフィスの中に引き込むように構成されることができる。いくつかの関連する側面では、非限定的実施例として、オリフィス板は、第1の構成では、イオン源によって生成されるイオンに関して、カーテン板の電位に対して約400V DC〜約900V DCの範囲内の引力電位に維持されることができる。いくつかの側面では、第2の構成において電場を変調するステップは、オリフィス板の電位を調節するステップを含むことができる。実施例として、第2の構成では、オリフィス板は、カーテン板と実質的に同一のDC電位に維持されることができる。このように、例えば、イオン源によって生成されるイオンは、カーテンガスの向流の結果として、カーテンチャンバを通してサンプリングオリフィスに引き込まれる可能性がより低い。代替として、オリフィス板は、第2の構成では、イオン源によって生成されるイオンに関してカーテン板の電位に対して反発電位に維持されることができる。
種々の側面では、電場は、着目イオンの予期される存在および/または干渉イオン種の実質的な存在に従って変調されることができる。実施例として、いくつかの側面では、流体サンプルは、液体クロマトグラフィカラムからの流出物を備えることができ、第1の期間は、着目分析物が存在する可能性が高い、溶出勾配の第1の部分に対応し、第2の期間は、その中の着目分析物の相対存在度が溶出勾配の第1の部分における着目分析物の相対存在度に対して低減される可能性が高い、溶出勾配の第2の部分に対応する。代替として、いくつかの側面では、第1の期間は、その間に第2の期間を伴う複数の第1の期間を備えることができ(例えば、電場は、サンプル実行の間に第1の構成と第2の構成との間で複数回変調される)、第1の期間はそれぞれ、(例えば、流動注入質量分析ワークフローに関して)液体キャリア流の中へのサンプル注入のタイミングに対応する。
カーテンチャンバ内の電場の変調のタイミングは、種々の様式で制御されることができる。実施例として、いくつかの側面では、本システムは、着目分析物がサンプル実行の間に該流体サンプル中に存在すると疑われる第1の期間に対応する、データ収集ウィンドウを定義するユーザからの入力を受け取るためのユーザインターフェースを含むことができる。
本教示の種々の側面によると、質量分析計システムにおける汚染を制御するための方法が、提供され、本方法は、イオン化チャンバ内で1つ以上のイオン化種を生成するステップであって、該イオン化チャンバは、それを通してイオン化チャンバ内で生成されたイオンが透過され得る、カーテン板開口を画定するカーテン板を備える、ステップを含む。例示的方法はさらに、イオン生成の第1の期間の間にカーテン板とカーテン板から下流に配置されるオリフィス板との間のカーテンチャンバ内に電場を提供するステップと、該第1の期間の間にカーテンチャンバおよびサンプリングオリフィスを通して該1つ以上のイオン化種を透過させるステップとを含むことができる。イオン生成の第2の期間の間、カーテンチャンバ内の電場は、イオンがカーテンチャンバを通してサンプリングオリフィスの中に透過されることが実質的に防止されるように、調節されることができる。例えば、いくつかの側面では、イオン化種は、流体サンプルをイオン源からイオン化チャンバの中に排出することによって生成されることができ、第1および第2の期間の間にイオン源から排出される流体サンプルの流率は、実質的に同等であり、イオン源に印加されるイオン源電圧は、第1および第2の期間の間、実質的に一定である。
本教示の種々の側面によると、本方法はさらに、カーテンガスの少なくとも一部が第1および第2の期間の間にカーテン板開口を通してイオン化チャンバに指向されるように、カーテンチャンバの中にカーテンガスを供給するステップを含むことができる。いくつかの関連する側面では、本方法はさらに、第1の期間に対して第2の期間の間にカーテンチャンバに提供されるカーテンガスの体積流率を増加させるステップを含むことができる。
種々の側面では、カーテンチャンバ内の電場は、第1の期間の間に第1の極性のイオンを、カーテンチャンバを通してサンプリングオリフィスの中に引き込むように構成されることができる。第2の期間の間、オリフィス板は、例えば、カーテン板と実質的に同一のDC電位に維持されることができる。代替として、オリフィス板は、第2の期間の間にイオン源によって生成されるイオンに関して、カーテン板の電位に対して反発電位に維持されることができる。
イオン源は、種々の源から流体サンプルを受容することができる。実施例として、いくつかの側面では、本方法は、液体クロマトグラフィカラムから流体サンプルを受容することができ、第1の期間は、着目分析物が存在する可能性が高い、溶出勾配の第1の部分に対応し、第2の期間は、その中の着目分析物の相対存在度が溶出勾配の第1の部分における着目分析物の相対存在度に対して低減される可能性が高い、溶出勾配の第2の部分に対応する。
本教示の種々の側面のさらなる理解が、下記に簡潔に議論される、以下の詳細な説明および関連付けられる図面を参照することによって取得されることができる。
本発明の前述および他の目的および利点が、付随の図面を参照して、以下のさらなる説明からより完全に理解されるであろう。当業者は、下記に説明される図面が、例証の目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、いかようにも本出願者の教示の範囲を限定するように意図されない。
図1は、本出願者の教示の種々の実施形態のいくつかの側面による、質量分析計システムを図式的に描写する。 図2A−2Dは、本出願者の教示の種々の側面による、図1の質量分析計システムの動作を描写する。 図3は、本出願者の教示の種々の実施形態のいくつかの側面による、図1のシステムと併用するための例示的LC/MS/MSワークフローを描写する。 図4A−Cは、本出願者の教示の種々の実施形態のいくつかの側面による、例示的注入研究における図1のシステムの使用を比較する例示的データを描写する。
明確化のために、以下の議論は、そうすることが便宜的または適切であるときは常に、ある具体的詳細を省略しながら、本出願者の教示の実施形態の種々の側面を詳述するであろうことを理解されたい。例えば、代替実施形態における同様または類似する特徴の議論は、若干略記され得る。周知の構想または概念もまた、簡潔にするために、詳細には議論されない場合がある。当業者は、本出願者の教示のいくつかの実施形態が、実施形態の徹底的な理解を提供するためにのみ本明細書に記載される、あらゆる実装において具体的に説明される詳細のうちのあるものを要求しない場合があることを認識するであろう。同様に、説明される実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、共通の一般的知識に従って、改変または変動を受けやすくあり得ることが明白となるであろう。実施形態の以下の詳細な説明は、いかなる様式でも本出願者の教示の範囲を限定すると見なされるものではない。
本明細書で使用されるような用語「約」および「実質的に同じ」は、例えば、実世界における測定または取扱手順を通して、これらの手順における不慮の誤差を通して、電気要素の製造における差異/不良を通して、電気損失を通して起こり得る、数値量の変動、およびそのような変動が従来技術によって実践される既知の値を包含しない限り、同等であるとして当業者によって認識されるであろう変動を指す。典型的には、用語「約」は、記載される値の1/10、例えば、±10%だけ記載される値または範囲の値を上回るまたは下回ることを意味する。例えば、約+3V DCの電圧を要素に印加することは、+2.7V DC〜+3.3V DCの電圧を意味し得る。同様に、値が「実質的に同じ」であると言われる場合、値は、最大5%だけ異なり得る。用語「約」または「実質的に同じ」によって修飾されるかどうかにかかわらず、請求項に列挙される定量的値は、列挙される値の均等物、例えば、起こり得るそのような値の数値量の変動を含むが、当業者によって均等物であると認識されるであろう。
質量分析計システムの高真空チャンバ内の構成要素の汚染を防止するための方法およびシステムが、本明細書に提供される。下流高真空チャンバ内に含有される構成要素(例えば、Q1、IQ1)の実質的な汚損は、質量分析計システムの効果的な動作に有意な影響(例えば、感度の喪失、増加された雑音)を及ぼし得るため、本教示の種々の側面に従って実験の非分析期間の間にイオン透過を低減させることは、下流要素の汚染の有意な低減をもたらし、したがって、処理能力を増加させる、ロバスト性を改良する、および/または質量分析計システムを点検(例えば、通気/分解/浄化)するために典型的に要求される中断時間を減少させることができる。種々の側面では、本明細書に説明される方法およびシステムは、高真空部分の中へのイオンの透過が非分析期間の間に実質的に低減されるように、カーテン板とオリフィス板との間に生成される電場を変調することによって、イオン汚染を制御するステップ、および/または質量分析計の高真空部分の中に透過されているイオン束を低減させるステップを提供することができる。非限定的実施例として、(例えば、Q1を含有し、約1×10−4トル未満の圧力において動作する)質量分析計システムの高真空チャンバに進入する合計イオン電流は、着目イオンが存在することが予期されない、および/または着目イオンに関するデータ収集ウィンドウに対して干渉イオンの大型集団が存在することが予期される、サンプル実行の期間の間に少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも99%)だけ低減されることができる。ある側面では、イオン源を通したサンプル流体の流率は、事前イオン化時間ベースの分離が維持され得るように、非分析期間の間に一定に保たれることができる。さらに、イオン源電圧は、イオンがサンプル実行の間に生成され続け、したがって、イオン源が安定したままである(例えば、非分析期間後に再平衡化される必要がない)ように、一定のイオン源電圧に維持されることができる。
本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法は、多くの異なる質量分析計システムと併用されることができるが、そのような使用のための例示的質量分析計システム100が、図1に図式的に図示される。質量分析計システム100は、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法の実施形態による使用のための1つの可能性として考えられる質量分析計器具のみを表し、他の構成を有する質量分析計も全て、同様に本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法に従って使用され得ることを理解されたい。
図1に描写される例示的実施形態に図式的に示されるように、質量分析計システム100は、概して、本教示の種々の側面に従って修正される、三連四重極(QqQ)質量分析計を備える。本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法の種々の側面に従って修正され得る、他の非限定的な例示的質量分析計システムは、例えば、「Product ion scanning using a Q−q−Qlinear ion trap(Q TRAP)mass spectrometer」と題され、James W. Hager およびJ. C. Yves Le Blancによって著され、「Rapid Communications in Mass Spectrometry」(2003; 17: 1056−1064)において公開された論文、および「Collision Cell for Mass Spectrometer」と題された米国特許第7,923,681号(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に見出されることができる。限定ではないが、本明細書に説明されるものおよび当業者に公知のその他を含む、他の構成もまた、本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法と併せて利用されることができる。例えば、他の好適な質量分析計は、単一四重極、三連四重極、ToF、トラップ、およびハイブリッド分析器を含む。
図1に示されるように、例示的質量分析計システム100は、イオン化チャンバ14内でイオンを生成するためのイオン源104と、それから受容されたイオンの初期処理のための上流区分16と、1つ以上の質量分析器(例えば、Q1およびQ3)、衝突セル(例えば、q2)、および検出器118を含有する、下流区分18とを備える。イオン源104によって生成されたイオンは、上流区分16の要素(例えば、カーテン板30、オリフィス板32、Qjet106、およびQ0 108)を通して連続的に透過され、高真空下流部分18内でのさらなる質量分析のために(例えば、中心縦方向軸に沿ったz方向に)狭く高度に集束されたイオンビームをもたらすことができる。描写される実施形態では、イオン化チャンバ14は、大気圧に維持されることができるが、いくつかの実施形態では、イオン化チャンバ14は、大気圧よりも低い圧力まで排気されることができる。カーテンチャンバ(すなわち、カーテン板30とオリフィス板32との間の空間)もまた、上昇圧力(例えば、ほぼ大気圧、上流区分16を上回る圧力)に維持されることができる一方、上流区分16および下流区分18は、1つ以上の真空ポンプポート(図示せず)を通した排気によって、1つ以上の選択された圧力(例えば、同一または異なる亜大気圧、イオン化チャンバよりも低い圧力)に維持されることができる。質量分析計システム100の上流区分16は、典型的には、イオン移動の緊密な集束および制御を助長するように低減圧力において動作する、下流区分18の種々の圧力領域に対して、典型的には、1つ以上の上昇圧力に維持される。
その中でイオン源104から排出された流体サンプル内に含有される分析物がイオン化され得る、イオン化チャンバ14は、オリフィス板32のサンプリングオリフィスを介して上流区分と流体連通するカーテン板開口を画定するカーテン板30によって、ガスカーテンチャンバから分離される。本教示の種々の側面によると、カーテンガス供給源31が、カーテン板30とオリフィス板32との間に(例えば、Nの)カーテンガス流を提供し、大型中性粒子を脱集塊化および排気することによって、質量分析計システムの下流区分を清浄に保つことを補助することができる。実施例として、カーテンガスの一部は、カーテン板開口からイオン化チャンバ14の中に流動し、それによって、カーテン板開口を通した液滴の進入を防止することができる。加えて、下記に詳細に議論されるように、(例えば、カーテン板開口を介したカーテンガスからイオン化チャンバ14の中への)カーテンガス流出は、カーテンガスチャンバ内の電場を変調することによって、本教示のいくつかの側面に従って克服され得る、イオン化種に対する障壁を提供することができる。カーテンガスは、カーテンチャンバの少なくとも一部の中で向流を流動させることができ、イオンは、カーテン板30とオリフィス板32との間の電場の結果として、カーテンガス流を通してドリフトし得る。そのような側面では、カーテンチャンバに提供されるカーテンガス流は、オリフィス板32のサンプリングオリフィスを通した真空抗力を上回り得る。下記に詳細に議論されるように、本教示のいくつかの側面では、カーテンチャンバ領域内に生成される電場は、向流カーテンガス流が、カーテンチャンバを横断しないようにイオンおよび/または中性粒子の空気圧ブロックを提供し得るように、排除されることができる、および/または電場は、イオンの空気圧および電気ブロックの両方を提供するために反転され得る。
下記に詳細に議論されるように、質量分析計システム100はまた、本教示の種々の側面による、質量分析計システム10を動作させ、(例えば、非分析期間の間に)下流高真空区分18の中に透過されるイオン束を低減させるように、種々の構成要素に結合され得る、電力供給源と、コントローラ20とを含む。このように、システム100は、性能を改良する、および/または本区分の浄化の頻度を低減させるように、種々の構成要素、特に、高真空区分18のそれらの構成要素のイオン汚染の低減を提供することができる。
示されるように、描写されるシステム100は、流体サンプルをイオン源104に提供するように構成されるサンプル源102を含む。サンプル源102は、当業者に公知の任意の好適なサンプル入口システムであり、サンプル(例えば、着目分析物を含有する、またはそれを含有することが疑われる液体サンプル)を含有する、および/またはそれをイオン源104に導入するように構成されることができる。サンプル源102は、全て非限定的実施例として、分析されるべきサンプルのリザーバから、インライン液体クロマトグラフィ(LC)カラムから、キャピラリ電気泳動(CE)器具から、またはそれを通してサンプルが注入され得る入力ポートからイオン源104に(例えば、1つ以上の導管、チャネル、管類、パイプ、毛細管等を通して)液体サンプルを透過させるように、イオン源に流体的に結合されることができる。いくつかの側面では、サンプル源102は、サンプルのプラグが液体キャリアの中に断続的に注入され得る間、液体キャリアをイオン源104に連続的に流動させるための注入ポンプ(例えば、シリンジまたはLCポンプ)を備えることができる。
イオン源104は、種々の構成を有することができるが、概して、サンプル(例えば、サンプル源102から受容される流体サンプル)内に含有される分析物からイオンを生成するように構成される。図1に描写される例示的実施形態では、イオン源104は、サンプル源102に流体的に結合される毛細管を備え得、イオン化チャンバ14の中に少なくとも部分的に延在し、その中に液体サンプルを排出する出口端部において終端する、エレクトロスプレー電極を備える。本教示に照らして当業者によって理解されるであろうように、エレクトロスプレー電極の出口端部は、イオン化チャンバ14の中に液体サンプルを霧化、エアロゾル化、噴射、または別様に排出(例えば、ノズルを用いて噴霧)し、概して、カーテン板開口に向かって(例えば、その近傍に)指向される複数の微小液滴を備えるサンプルプルームを形成することができる。当技術分野で公知であるように、微小液滴内に含有される分析物は、例えば、サンプルプルームが生成される際、イオン源104によってイオン化(すなわち、荷電)されることができる。いくつかの側面では、エレクトロスプレー電極の出口端部は、サンプルプルーム内に含有される微小液滴内の流体がイオン化チャンバ14内での脱溶媒和の間に蒸発するにつれて、裸荷電分析物イオンまたは溶媒和イオンが放出され、カーテン板開口に向かってそれを通して引き込まれるように、伝導性材料から作製され、コントローラ20に動作可能に結合される電力供給源(例えば、電圧源)に電気的に結合されることができる。いくつかの代替側面では、噴霧器の排出端部は、非伝導性であり得、スプレー荷電が、高電圧を液体流(例えば、毛細管の上流)に印加するために、伝導性融合部または接合部を通して起こり得る。イオン源104は、概して、エレクトロスプレー電極として本明細書に説明されるが、サンプル内の分析物をイオン化するために当技術分野で公知であり、本教示に従って修正される任意の数の異なるイオン化技法が、イオン源104として利用され得ることを理解されたい。非限定的実施例として、イオン源104は、とりわけ、エレクトロスプレーイオン化デバイス、ネブライザ支援エレクトロスプレーデバイス、化学イオン化デバイス、ネブライザ支援霧化デバイス、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)イオン源、光イオン化デバイス、レーザイオン化デバイス、熱スプレーイオン化デバイス、誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、ソニックスプレーイオン化デバイス、グロー放電イオン源、および電子衝撃イオン源、DESIであり得る。さらに、図1に示されるように、イオン源104は、イオン源104から排出されたプルームもまた、概して、イオン化チャンバ14の排気ポート15に向かって指向されるように、カーテン板開口およびイオン経路軸に対して直交に配置されることができる。このように、カーテン板オリフィスを介してカーテンチャンバ30の中に引き込まれない液体液滴および/または大型中性分子は、イオン化チャンバ内の潜在的汚染物質の蓄積および/または再循環を防止するように、イオン化チャンバ14から除去されることができる。種々の側面では、ネブライザガスもまた、噴霧器先端上の液滴の蓄積を防止する、および/またはカーテン板開口の方向にサンプルプルームを指向するために(例えば、イオン源104の排出端部を中心として)提供されることができる。
いくつかの実施形態では、オリフィス板32を通過することに応じて、イオンは、1つ以上の付加的真空チャンバおよび/または四重極(例えば、QJetの四重極)を横断し、下流高真空区分18の中に透過されることに先立って、ガス動態および無線周波数場の組み合わせを使用して、イオンビームの付加的集束およびそれに対するより微細な制御を提供することができる。本教示の種々の側面によると、また、本明細書に説明される例示的イオンガイドが、質量分析計システムの種々のフロントエンド場所に配置され得ることを理解されたい。非限定的実施例として、イオンガイド108は、Qjetのイオンガイド(例えば、約1〜10トルの圧力において動作される)の従来の役割において、Qjetのイオンガイドによって先行される従来のQ0集束イオンガイド(例えば、約3〜15ミリトルの圧力において動作される)として、組み合わせられたQ0集束イオンガイドおよびQjetのイオンガイド(例えば、約3〜15ミリトルの圧力において動作される)として、またはQjetのイオンガイドとQ0との間の中間デバイス(例えば、典型的なQjetのイオンガイドと典型的なQ0集束イオンガイドとの間の圧力において、数百ミリトルの圧力において動作される)としての役割を果たすことができる。
示されるように、システム100の上流区分16は、オリフィス板32を介してカーテンチャンバから分離され、概して、第1のRFイオンガイド106(例えば、SCIEXのQjet)と、第2のRFガイド108(例えば、Q0)とを備える。いくつかの例示的側面では、第1のRFイオンガイド106は、ガス動態および無線周波数場の組み合わせを使用して、イオンを捕捉し、集束させるために使用されることができる。実施例として、イオンは、サンプリングオリフィスを通して透過されることができ、真空膨張が、オリフィス板32の両側上のチャンバ間の圧力差の結果として起こる。非限定的実施例として、第1のRFイオンガイドの領域内の圧力は、約2.5トル圧力に維持されることができる。Qjet106は、それによって受容されたイオンを、Q0 RFイオンガイド108等の後続イオン光学系へと、それらの間に配置されるイオンレンズIQ0 107を通して伝達する。Q0 RFイオンガイド42は、イオンを、中間圧力領域(例えば、約1ミリトル〜約10ミリトルの範囲内)を通して輸送し、イオンを、IQ1レンズ109を通してシステム100の下流区分18に送達する。
システム10の下流区分18は、概して、上流区分16から透過されるイオンのさらなる処理のための1つ以上の質量分析器を含有する、高真空チャンバを備える。図1に示されるように、例示的下流区分18は、2つの質量分析器110、114(例えば、伸長ロッドセットQ1およびQ3)、および衝突セルとして動作され得る、その間に配置される第3の伸長ロッドセットq2 112(ロッドセットQ1、q2、およびQ3は、Q1とq2との間のオリフィス板IQ2およびq2とQ3との間のIQ3によって分離される)、および検出器118を含むが、より多いまたはより少ない質量分析器要素が、本教示に従ってシステム内に含まれることができる。例えば、Q0からレンズIQ1の出射開口を通して透過された後、イオンは、隣接する四重極ロッドセットQ1に進入することができ、これは、RFイオンガイド108が配置されるチャンバのものよりも低く維持され得る圧力まで排気され得る、真空チャンバ内に位置することができる。非限定的実施例として、Q1を含有する真空チャンバは、約1×10−4トル未満の圧力(例えば、約5×10−5トル)に維持されることができるが、他の圧力も、本目的のために、または他の目的のために使用されることができる。当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセットQ1は、着目イオンおよび/またはある範囲の着目イオンを選択するために動作され得る、従来の透過RF/DC四重極質量フィルタとして動作されることができる。実施例として、四重極ロッドセットQ1は、質量分解モードにおける動作のために好適なRF/DC電圧を提供されることができる。理解されるはずであるように、Q1の物理的および電気的性質を考慮して、印加されるRFおよびDC電圧に関するパラメータは、Q1が選定されたm/z比の透過ウィンドウを確立し、したがって、これらのイオンが殆ど摂動されずにQ1を横断し得るように選択されることができる。しかしながら、ウィンドウ外に該当するm/z比を有するイオンは、四重極内で安定した軌道を達成せず、四重極ロッドセットQ1を横断することを妨害され得る。本動作モードは、Q1に関する1つの可能性として考えられる動作モードにすぎないことを理解されたい。実施例として、Q1とq2との間のレンズIQ2は、四重極ロッドセットQ1がイオントラップとして動作されるように、Q1よりも高いオフセット電位に維持されることができる。いくつかの側面では、イオンは、例えば、「A new Linear ion trap mass spectrometer」(Rapid Commun. Mass Spectro. 2002; 16: 512−526)においてHagerによって説明される様式でQ1イオントラップから質量選択的に軸方向に出射され、q2の中に加速されることができ、これもまた、イオントラップとして動作され得る。四重極ロッドセットQ1を通過するイオンは、レンズIQ2を通して、隣接する四重極ロッドセットq2の中に通過することができ、これは、示されるように、加圧されたコンパートメント内に配置されることができ、概算で約1ミリトル〜約10ミリトルの範囲内の圧力において衝突セルとして動作するように構成されることができるが、他の圧力も、本目的のために、または他の目的のために使用されることができる。好適な衝突ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)が、イオンビーム中のイオンを熱平衡化および/または断片化するために、ガス入口(図示せず)を用いて提供されることができる。いくつかの実施形態では、四重極ロッドセットq2および入射および出射レンズIQ2およびIQ3もまた、イオントラップとして構成されることができる。q2によって透過されるイオンは、隣接する四重極ロッドQ3の中に通過することができ、これは、IQ3によって上流で、出射レンズによって下流で境界される。当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセットQ3は、q2のものに対して減少された動作圧力、例えば、約1×10−4トル未満(例えば、約5×10−5トル)において動作されることができるが、他の圧力も、本目的のために、または他の目的のために使用されることができる。当業者によって理解されるであろうように、Q3は、いくつかの様式で、例えば、走査RF/DC四重極として、または線形イオントラップとして動作されることができる。Q3はまた、ToFまたはトラップ分析器と置換されることができる。Q3を通した処理または透過後に、イオンは、出射レンズを通して検出器118の中に透過されることができる。検出器118は、次いで、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法に照らして、当業者に公知の様式で動作されることができる。当業者によって理解されるであろうように、本明細書における教示に従って修正される任意の公知の検出器が、イオンを検出するために使用されることができる。また、下流区分18が、加えて、図式的に描写されるようなRF専用スタビーイオンガイド(これは、ブルベーカレンズとしての役割を果たすことができる)を含む、付加的イオン光学系を含み得ることが、当業者によって理解されるであろう。本教示におけるイオンガイド領域Q0、Q1、q2、およびQ3、およびスタビーST1、ST2、およびST3の典型的なイオンガイドは、概して、構造支持のために要求される補助構成要素に加えて、概して、当技術分野で公知であるような少なくとも1つの電極を含むことができる。便宜上、質量分析器110、114および衝突セル112は、概して、本明細書では四重極(つまり、それらは、4つのロッドを有する)と称されるが、伸長ロッドセットは、任意の他の好適な多極構成、例えば、六重極、八重極等であり得る。また、1つ以上の質量分析器が、全て非限定的実施例として、三連四重極、単一四重極、飛行時間、線形イオントラップ、四重極飛行時間、Orbitrap、または他のフーリエ変換質量分析計のうちのいずれかであり得ることを理解されたい。
上記のように、カーテンチャンバ内の電場は、本教示の種々の側面に従って変調され、例えば、下流区分18への通過のためのイオン化チャンバ14からカーテンチャンバの中へ、かつそれを通したイオンの透過を交互に助長または阻止するように、カーテン板30およびオリフィス板32の相対的電位を調節することによって、高真空部分18の汚染を低減させることができる。特に、本教示のいくつかの側面では、カーテン板30およびオリフィス板32は、本教示の種々の側面によると、カーテンチャンバの中へ、かつそれを通したイオンの透過を制御するように、コントローラ20の影響下で電力供給源(例えば、1つ以上の電圧源)に電気的に結合されることができる。実施例として、コントローラ20は、イオン源104がサンプル内の分析物からイオンを生成している第1の期間の間、カーテン板30電位が、カーテン板開口を通してイオンを引き込むために効果的である、イオン化チャンバのサンプリング領域内の電場を生成するように構成される電位に維持され得、カーテンチャンバ内の電場が、次いで、カーテンチャンバを通して、その後、サンプリングオリフィスの中にイオンを搬送するように、カーテン板30に印加される電圧を制御するように構成されることができる。しかしながら、第2の期間の間、コントローラ20は、例えば、カーテンチャンバ内の電場を修正し、イオンがカーテンチャンバを通してサンプリングオリフィス(すなわち、真空入口オリフィス)まで通過することを防止するように、カーテン板30の少なくとも一部に提供される電圧を調節することができる。
ガスカーテンチャンバ内の電場が、本教示によると、(例えば、いかなるMSデータも所望されない)非分析期間の間にイオンの透過を制御するように、種々の様式で修正され得ることが、当業者によって理解されるであろう。下記に詳細に議論されるように、イオン透過の第1の期間および非透過の第2の期間は、着目分析物が存在する可能性が高い(例えば、他の干渉種を伴わず、高存在度にある)とき、または、検出される可能性がより低い(例えば、他の干渉種の存在下で、低存在度に)ときに対応するように選択されることができる。ここで図2Aを参照すると、非限定的実施例として、所望のイオン透過の期間の間、コントローラ20は、カーテン板30を+1,000V DC電位に、オリフィス板32を+100V DCの電位に維持するように、電力供給源を制御するために効果的であり得るが、他の電位も、本教示に従って使用され得ることを理解されたい。非限定的実施例として、カーテン板30は、第1の期間の間(例えば、イオン透過が所望されるとき)、約+300V〜約+2,000Vの範囲内の電圧(正イオンモードにおいて動作するとき)および約−300V〜約−2,000Vの範囲内の電圧(負イオンモードにおいて動作するとき)を有することができる。本期間の間、オリフィス板32は、0V〜約+500V(すなわち、正イオンモードにおいて動作するとき、カーテン板30電位に対してカチオンを誘引する値)の範囲内の電圧および約0V〜約−500V(すなわち、負イオンモードにおいて動作するとき、カーテン板30電位に対してアニオンを誘引する値)の範囲内の電圧を有することができる。第2の期間の間、オリフィス板32電位およびカーテン板30電位は、同一であるように設定され得る、またはオリフィス板30は、イオンをあまり誘引しないように(例えば、電場を反転させるように)設定されることができる。例えば、正イオン源(例えば、非限定的実施例として、それに印加される+2,500V DCを上回るイオン源電圧を有するESIイオン源)を仮定すると、カーテン板30とオリフィス板32との間に生成される電場は、生成されたイオンを誘引し、それによって、イオンをガスカーテンチャンバの中に、向流カーテンガスによって提供される障壁を通して引き込むであろう。
図2Bを参照すると、イオン透過が所望されない第2の期間の間、コントローラ20は、いくつかの側面では、カーテン板30に印加される電位を、オリフィス板32と同一の電圧(すなわち、+100V DC)であるように調節することができるが、他の電位も、本教示に従って使用され得ることを理解されたい。このように、カーテン板とオリフィス板との間の電場は、向流カーテンガスを通してイオンを押動する駆動力を除去するように排除されるであろう。イオン源による荷電種の連続的生成(例えば、イオン源は、一定のISVにおいて、かつ流体サンプルの一定の連続的排出とともに動作され得る)にもかかわらず、質量分析計100の高真空部分18への生成されたイオンの効率的な伝達は、実質的に排除され得る。
ここで図2Dを参照すると、いくつかの側面では、カーテン板30に印加される電位は、イオン透過が所望されない期間の間の電場の方向が図2Aに示されるものに対して逆転されるように、オリフィス板32のものを下回るレベルまで低減されることができる。実施例として、コントローラ20は、図2Dに示されるように、カーテンチャンバ内の電場がサンプリングオリフィスからのカチオンに反発するであろうように、カーテン板30に印加される電位を、オリフィス板と同一の極性のより低い大きさ(例えば、+25V DC)またはオリフィス板32と反対の極性のより低い大きさ(例えば、−100V DC)であるように調節することができる。これらの例示的条件下で、荷電種に対する改良された判別が、図2Bに描写される構成に対して予期され得ることを理解されたい。
図2Cを参照すると、ある側面では、カーテンガス供給源31もまた、イオン化チャンバ14に進入するカーテンガスの流率が選択的に調節され得るように、コントローラ20に動作可能に結合されることができる。したがって、図2Bおよび2Dを参照して上記に議論されるようなカーテンチャンバ内の電場の変調に加えて、またはその代替として、カーテンガス供給源31は、非透過期間の間に向流カーテンガスの流率を増加させ、それによって、イオン化種および同様に大型中性分子に対する空気圧式障壁を増加させるように制御されることができる。
したがって、コントローラ20は、電力供給源に、ある電圧をカーテン板30および/またはオリフィス板32に印加させ、データが質量分析計によって取得されるべきである期間の間(例えば、着目分析物が溶出していることが把握される溶出時間の間)、カーテン板開口、カーテンチャンバ、および続けて、サンプリングオリフィスを通した下流質量分析器へのイオンの通過を可能にし、別の電圧をカーテン板30および/またはオリフィス板32に印加させ、データが収集されるべきではない期間の間(例えば、いかなる着目分析物も溶出していないLCカラムからの溶出時間の間)、カーテンチャンバを通したイオンの透過を阻止することができる。このように、データが取得されない期間の間の上流区分16および下流高真空区分18の中へのイオンの進入は、低減され、それによって、イオン源104からのサンプル液体の排出を中止する、および/またはイオン源電圧を調節する必要なく、下流質量分析器の汚染を低減させるであろう。加えて、または代替として、コントローラ20は、イオンおよび/または中性分子をさらに阻止するために、第2の期間の間、カーテンガス供給源31に、向流カーテンガス流率を増加させることができる。
本教示のある側面によると、コントローラは、例えば、本システムのユーザが、本明細書に説明される方法およびシステムを動作させるためのあるパラメータを選択することを可能にするために、ユーザインターフェースに動作可能に接続されることができる。実施例として、ユーザは、遅延時間のうちの1つ以上のもの(例えば、溶出の開始から、データ取得時間/持続時間、および非データ取得に関する時間)を選択することによって、データ取得ウィンドウ(例えば、LC溶出勾配の時間ウィンドウ)を選択することができる。ユーザは、例えば、着目分析物が初期溶出化合物(例えば、塩、極性化合物)、後期溶出化合物の予期される存在に起因して存在する可能性が高い、または検出される可能性がより低いとき、およびLCカラムフラッシングおよび/または平衡の間に対応するように、これらのパラメータを入力することができる。有利なこととして、そのようなデータ取得ウィンドウを定義することによって、データファイルサイズ/処理要件(および汚染)の対応する減少が存在し得る。
ここで図3を参照すると、例示的LC/MS/MSワークフローにおける本明細書に開示されるシステムおよび方法の種々の側面の例示的使用が、描写される。液体クロマトグラフィおよび質量分析の組み合わせは、混合物内の化合物の識別および定量化のための重要な分析ツールであり得る。概して、液体クロマトグラフィでは、分析下の流体サンプルが、(典型的には、小型固体粒子、例えば、シリカの形態における)固体吸着材料を用いて充填されるカラムを通過される。混合物の成分の固体吸着材料(典型的には、固定相と称される)とのわずかに異なる相互作用に起因して、異なる成分は、充塞されたカラムを通して異なる移行(溶出)時間を有し、LCカラムから退出する流出物内の成分の分離をもたらすことができ、これは、次いで、例えば、MSまたはタンデム質量分析を使用して分析されるべきイオン源104に送達されることができる。着目分析物は、既知の滞留時間を有し得る(または経験的に導出されることができる)ため、分析物が存在する可能性が最も高いときの流出物の部分および着目分析物が検出される可能性がより低い流出物の部分を把握することが、可能であり得る。本明細書に別様に議論されるように、したがって、汚染が起こり得るが、着目分析物に関する信号がありそうにないことが把握されるとき、質量分析計システム100に進入するイオン束を低減させることが、有益であり得る。代替として、いくつかの側面では、第1の期間は、その間に第2の期間を伴う複数の第1の期間を備えることができ(例えば、電場は、サンプル実行の間に第1および第2の構成間で複数回変調される)、第1の期間はそれぞれ、(例えば、流動注入質量分析ワークフローに関して)液体キャリア流の中へのサンプル注入のタイミングに対応する。つまり、サンプル源102は、サンプルのプラグが液体キャリアの中に断続的に注入され得る間、液体キャリアをイオン源104に連続的に流動させるための注入ポンプ(例えば、LCポンプ)を備えることができ、イオン透過のタイミングは、注入タイミングに対応する。
図3を具体的に参照すると、例えば、描写されるLC勾配プロファイル(A=水/アセトニトリル/ギ酸(98/2/0.1)、B=アセトニトリル/ギ酸(100/0.1))を有するLCカラムからの流出物中の着目分析物が、描写されるデータ収集ウィンドウ内(例えば、1.58分〜2.08分)で優先的に溶出することが把握され得る。本教示によると、カーテン板およびオリフィス板の電位は、30秒溶出時間(すなわち、MSデータが所望される第1の期間)内にイオン源によって生成されたイオンが、それを通してイオンを引き込むためにガスカーテンチャンバ内に電場を生成するように、選択されることができる。残りの溶出勾配(すなわち、第2の期間)の間、カーテン板電圧は、本明細書に別様に議論されるように、カーテンガスチャンバ内の電場を改変するように、オリフィス板電位と同等であるように制御されることができる。
以下の実施例は、本教示の種々の側面のさらなる解明のために提供される。実施例は、例証の目的のみのためであり、必ずしも、本教示を実践する最適な方法または取得され得る最適な結果を示すことを意図していない。
(実施例1)
ここで図4A−Cを参照すると、本注入実験は、本教示の種々の側面に従って動作される質量分析計システムの高真空構成要素の中に透過されるイオンの数の実質的な低減を実証する。レセルピン10pg/μLのサンプルが、本教示に従って修正されるQTRAP6500 Q−q−Q質量分析計上に注入され、オリフィス板電圧は、100V DCに設定され、カーテン板は、注入の間の種々の時点で1,000V DC〜100V DCの値に調節された。図4Aは、注入の経過にわたる各時点で検出された合計イオン電流(TIC)を描写し、カーテン板電圧は、概算で以下の時間、すなわち、0.3〜0.4分、0.8〜1.1分、1.4〜1.6分、および2.0〜2.3分において、100V DCに調節される。図4Aに見られるように、オリフィス板と同一の電位へのカーテン板電圧の変調は、荷電種の実質的に全てがサンプリングオリフィスに進入しないように阻止するために効果的であった。特に、カーテン板電位が非透過期間の間に0Vに維持されたとき、TICは、約100,000分の1に降下した。図4Bは、0.815分〜1.011分の非透過期間の間に取得される平均質量スペクトルを示す(図4Aの右灰色ボックス)一方、図4Cは、0.513分〜0.694分の範囲中に取得される平均質量スペクトルを描写する(図4Aの左灰色ボックス)。実質的により少ないイオンの種が、図4C(CUR=1,000V)に対して図4B(CUR=100V)に存在し、さらに、図4Bに観察される最大イオン電流は、図4Cのものよりも3桁低いことが観察されるであろう。
また、本発明の教示は、上記に議論される例示的質量分析計に限定されず、データが取得されない時間間隔の間に質量分析器の汚染を低減させ、好ましくは、排除するために、種々の異なる質量分析計において実装され得ることを理解されたい。
当業者は、本明細書に説明される実施形態および実践の多くの均等物を日常的にすぎない実験を使用して把握する、または確認することが可能であろう。実施例として、種々の構成要素の寸法および種々の構成要素に印加される特定の電気信号(例えば、振幅、周波数等)に関する明示的値は、単に、例示的であり、本教示の範囲を限定するように意図されない。故に、本発明は、本明細書に開示される実施形態に限定されるべきではなく、法律の下で許可される限り広く解釈されるべきである、以下の請求項から理解されるものであることを理解されたい。
本明細書で使用される節の見出しは、編成目的のみのためであり、限定的として解釈されるものではない。本出願者の教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本出願者の教示が、そのような実施形態に限定されることは意図されない。それとは反対に、本出願者の教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替物、修正、および均等物を包含する。当業者は、種々の変更が、本発明の範囲から逸脱することなく上記の実施形態に成され得ることを理解するであろう。

Claims (20)

  1. 質量分析計システムであって、
    イオン化チャンバを画定するイオン源筐体であって、前記イオン化チャンバは、カーテン板開口を画定するカーテン板を備え、サンプルから前記イオン化チャンバ内で生成されたイオンは、前記カーテン板開口を通して、1つ以上の下流質量分析器に透過され得る、イオン源筐体と、
    サンプリングオリフィスを画定するオリフィス板であって、前記オリフィス板は、前記オリフィス板と前記カーテン板との間にカーテンチャンバを画定するように、前記カーテン板から分離され、前記カーテン板開口からのイオンは、前記カーテンチャンバを通して、前記サンプリングオリフィスに透過され得る、オリフィス板と、
    前記カーテン板および前記オリフィス板に電気信号を提供するために前記カーテン板および前記オリフィス板に電気的に結合される電力供給源と、
    前記電力供給源に動作可能に結合されるコントローラであって、前記コントローラは、イオンが前記サンプリングオリフィスを通して優先的に透過される第1の期間の間の第1の構成およびイオンが前記カーテンチャンバを通して前記サンプリングオリフィスに透過されることが実質的に防止される第2の期間の間の第2の構成から、前記カーテンチャンバ内の電場を変調するように、前記カーテン板およびオリフィス板に印加される電気信号を制御するように構成される、コントローラと
    を備える、システム。
  2. カーテンガスを前記カーテンチャンバの中に流動させるためのカーテンガス供給源をさらに備え、カーテンガス流は、前記サンプル内の分子の少なくとも一部が前記サンプリングオリフィスに移行することを防止するために効果的である、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記カーテンガス供給源は、前記コントローラに動作可能に結合され、前記コントローラは、前記第2の期間の間に前記カーテンチャンバに提供されるカーテンガスの体積流率を増加させるように構成される、請求項2に記載のシステム。
  4. 流体サンプルを受容するため、かつ前記流体サンプルを前記イオン化チャンバの中に連続的に排出するためのイオン源をさらに備え、前記電力供給源は、前記流体サンプルが前記イオン化チャンバの中に排出される際にイオンを生成するために、前記イオン源にイオン源電圧を提供するように前記イオン源に電気的に結合され、前記第1および第2の期間の間に前記イオン源から排出される前記流体サンプルの流率は、実質的に同等であり、前記イオン源電圧は、前記第1および第2の期間の間、実質的に一定である、請求項1に記載のシステム。
  5. 前記第1の構成では、前記カーテン板は、約+500V DCを上回る電圧に維持され、前記オリフィス板は、約+300Vを下回る電圧に維持される、請求項1に記載のシステム。
  6. 前記第1の構成では、前記カーテンチャンバ内の電場は、前記カーテンチャンバを通して前記サンプリングオリフィスの中に第1の極性のイオンを引き込むように構成される、請求項1に記載のシステム。
  7. 前記第1の構成では、前記オリフィス板は、前記イオン源によって生成されるイオンに関して、前記カーテン板の電位に対して約400V DC〜約900V DCの範囲内の引力電位に維持される、請求項6に記載のシステム。
  8. 前記第2の構成では、前記オリフィス板は、前記カーテン板と実質的に同一のDC電位に維持される、請求項6に記載のシステム。
  9. 前記第2の構成では、前記オリフィス板は、前記イオン源によって生成されるイオンに関して、前記カーテン板の電位に対して反発電位に維持される、請求項6に記載のシステム。
  10. 前記流体サンプルは、液体クロマトグラフィカラムからの流出物を備え、前記第1の期間は、着目分析物が存在する可能性が高い溶出勾配の第1の部分に対応し、前記第2の期間は、その中の着目分析物の相対存在度が前記溶出勾配の第1の部分における着目分析物の相対存在度に対して低減される可能性が高い前記溶出勾配の第2の部分に対応する、請求項1に記載のシステム。
  11. 前記第1の期間は、その間に第2の期間を伴う複数の第1の期間を備え、前記第1の期間のそれぞれは、液体キャリア流の中へのサンプル注入のタイミングに対応する、請求項1に記載のシステム。
  12. 着目分析物がサンプル実行の間に前記流体サンプル中に存在すると疑われる前記第1の期間に対応するデータ収集ウィンドウを定義するユーザからの入力を受け取るためのユーザインターフェースをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
  13. 質量分析計システムにおける汚染を制御するための方法であって、
    イオン化チャンバ内でサンプルから1つ以上のイオン化種を生成することであって、前記イオン化チャンバは、カーテン板開口を画定するカーテン板を備え、前記イオン化チャンバ内で生成されたイオンは、前記カーテン板開口を通して透過され得る、ことと、
    イオン生成の第1の期間の間、前記カーテン板と前記カーテン板から下流に配置されるオリフィス板との間のカーテンチャンバ内に電場を提供することと、
    前記第1の期間の間に前記カーテンチャンバおよびサンプリングオリフィスを通して前記1つ以上のイオン化種を透過させることと、
    イオン生成の第2の期間の間、イオンが前記サンプリングオリフィスの中に透過されることが実質的に防止されるように、カーテンチャンバ領域内の電場を調節することと
    を含む、方法。
  14. 前記1つ以上のイオン化種は、流体サンプルをイオン源から前記イオン化チャンバの中に排出することによって生成され、前記第1および第2の期間の間に前記イオン源から排出される前記流体サンプルの流率は、実質的に同等であり、前記イオン源に印加されるイオン源電圧は、前記第1および第2の期間の間、実質的に一定である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記サンプル内の分子の少なくとも一部が前記サンプリングオリフィスに移行することを防止するように、前記カーテンチャンバの中にカーテンガスを供給することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
  16. 前記第1の期間に対して前記第2の期間の間に前記カーテンチャンバ領域に提供されるカーテンガスの体積流率を増加させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記第1の期間の間、前記カーテンチャンバ領域内の電場は、前記カーテン板開口を通して前記サンプリングオリフィスの中に第1の極性のイオンを引き込むように構成される、請求項13に記載の方法。
  18. 前記第2の期間の間、前記オリフィス板は、前記カーテン板と実質的に同一のDC電位に維持される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記第2の期間の間、前記オリフィス板は、前記イオン源によって生成されるイオンに関して、前記カーテン板の電位に対して反発電位に維持される、請求項17に記載の方法。
  20. 前記流体サンプルを液体クロマトグラフィカラムから受容することをさらに含み、前記第1の期間は、着目分析物が存在する可能性が高い溶出勾配の第1の部分に対応し、前記第2の期間は、その中の着目分析物の相対存在度が前記溶出勾配の第1の部分における着目分析物の相対存在度に対して低減される可能性が高い前記溶出勾配の第2の部分に対応する、請求項13に記載の方法。
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