JP2019524743A - リスク患者のアルツハイマー病の予防における使用のためのオキサジン誘導体 - Google Patents
リスク患者のアルツハイマー病の予防における使用のためのオキサジン誘導体 Download PDFInfo
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Abstract
Description
実施形態A1:アルツハイマー病の臨床症状を発症するリスクがある患者のアルツハイマー病の予防における使用のための化合物N−(6−((3R,6R)−5−アミノ−3,6−ジメチル−6−(トリフルオロメチル)−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−3−イル)−5−フルオロピリジン−2−イル)−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピコリンアミド又はその薬学的に許容可能な塩。
(i)アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリン−1若しくはプレセニリン−2の遺伝子における突然変異、又は
(ii)ApoE4アレルの1つ又は2つのコピーの存在
である、実施形態A2に係る使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
実施形態B1:アルツハイマー病の臨床症状を発症するリスクがある患者のアルツハイマー病の予防における使用のための化合物N−(6−((3R,6R)−5−アミノ−3,6−ジメチル−6−(トリフルオロメチル)−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−3−イル)−5−フルオロピリジン−2−イル)−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピコリンアミド又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。
(i)アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリン−1若しくはプレセニリン−2の遺伝子における突然変異、又は
(ii)ApoE4アレルの1つ又は2つのコピーの存在
である、実施形態B2に係る使用のための医薬組成物。
実施形態C1:アルツハイマー病の臨床症状を発症するリスクがある患者のアルツハイマー病を予防する方法であって、治療有効量の化合物N−(6−((3R,6R)−5−アミノ−3,6−ジメチル−6−(トリフルオロメチル)−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−3−イル)−5−フルオロピリジン−2−イル)−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピコリンアミド又はその薬学的に許容可能な塩をかかる患者に投与することを含む方法。
(i)アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリン−1若しくはプレセニリン−2の遺伝子における突然変異、又は
(ii)ApoE4アレルの1つ又は2つのコピーの存在
である、実施形態C2に係る方法。
実施形態D1:アルツハイマー病の臨床症状を発症するリスクがある患者のアルツハイマー病を予防するための化合物N−(6−((3R,6R)−5−アミノ−3,6−ジメチル−6−(トリフルオロメチル)−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−3−イル)−5−フルオロピリジン−2−イル)−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピコリンアミド又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
(i)アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリン−1若しくはプレセニリン−2の遺伝子における突然変異、又は
(ii)ApoE4アレルの1つ又は2つのコピーの存在
である、実施形態D2に係る使用。
実施形態E1:アルツハイマー病の臨床症状を発症するリスクがある患者のアルツハイマー病の予防用医薬を製造するための化合物N−(6−((3R,6R)−5−アミノ−3,6−ジメチル−6−(トリフルオロメチル)−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−3−イル)−5−フルオロピリジン−2−イル)−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピコリンアミド又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
(i)アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリン−1若しくはプレセニリン−2の遺伝子における突然変異、又は
(ii)ApoE4アレルの1つ又は2つのコピーの存在
である、実施形態E2に係る使用。
本明細書で使用されるとき、用語「化合物1」又は「Cmpd 1」は、以下の構造式:
を有するN−(6−((3R,6R)−5−アミノ−3,6−ジメチル−6−(トリフルオロメチル)−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−3−イル)−5−フルオロピリジン−2−イル)−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピコリンアミドを指す。
(a)脳アミロイド沈着の減少。例えば、陽電子放射断層撮影(PET)イメージングを使用して複合皮質アミロイド標準取込み値比(SUVR)のベースラインからの変化量を測定することによる。SUVR比の測定に好適なPETトレーサーは、18F−フロルベタピル(((E)−4−(2−(6−(2−(2−(2−([18F]−フルオロエトキシ)エトキシ)エトキシ)ピリジン−3−イル)ビニル)−N−メチルベンゼンアミン))である。この方法により、認知障害のない個体の独立した試料におけるアミロイド蓄積の経時的展開を測定し得る(Palmqvist S et al.,2015)。SUVR測定は、予め定義した皮質脳関心領域(ROI)において、予め定義した参照領域におけるトレーサー取込みと比べて計算し得る。皮質ROIには、限定はされないが、頭頂、後頭、外側側頭及び内側側頭新皮質領域、並びに初期ADで典型的に冒される領域を含め、ADで高いアミロイド沈着を有することが分かっている範囲が含まれる(Vlassenko AG et al.,2012)。一実施形態において、開始時ベースライン値に対する脳アミロイド沈着は、治療1年当たり0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10.0%未満の速度で減少する;
(b)基礎タウ病変への効果、より具体的にはPET及び好適なタウトレーサー、例えば18F−THK5351(Harada R et al.,2016)を使用して脳タウ病変のベースラインからのSUVR変化量を測定するか、又は脳脊髄液(CSF)を使用して総タウ及びリン酸化タウを測定する(Forlenza OV et al.,2015)。一実施形態において、CSFタウ又はリン酸化タウのレベルは開始時ベースライン値と比べて治療1年当たり少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50%減少する;
(c)18F−FDG(2−デオキシ−2−[18F]フルオログルコース)PET(各スキャンにつき200MBq)を使用した、ニューロンのグルコース代謝、密度及び/又は活性に対する効果。AD罹患脳領域の18F−FDG PETシグナルは、ADにおける認知障害、続く認知低下及び神経病理に関連し、ADの臨床的及び発症前ステージにおいて時間の経過に伴い進行することが示されており、疾患及び治療有効性バイオマーカーである(Foster NL et al.,2007)。データの分析により、選択された参照領域と比べたグルコース代謝の変化が決定される。一実施形態において、開始時ベースライン値と比べて18F−FDG PETにより決定したときのAD罹患脳領域におけるニューロングルコース代謝の低下は、治療1年当たり5、10、15、20、25又は30%未満に限られる;
(d)ボリューム磁気共鳴画像法(vMRI)により評価して脳容積のベースラインからの変化を測定したときの脳容積損失の低下の緩徐化。vMRIを使用すると、海馬、側脳室、及び総脳容積の変化を測定することができる。一実施形態において、海馬容積損失は、治療1年当たり1、2、又は3%未満に限られる;又は
(e)本明細書の実施例10に記載されるとおり、皮質アミロイド沈着の指標となる、例えば0.09未満のベースラインCSF Aβ1−42/Aβ1−40比を有する対象における経時的CSF Aβ1−42/Aβ1−40比。一実施形態において、CSF Aβ1−42/Aβ1−40比は、少なくとも3、6、9、12、18、24、又は36ヵ月の期間で開始時ベースライン値と比べて少なくとも10、20、30、40、50、80、100、200%増加する。
a)自己報告又は情報提供者の報告及び/又は臨床医の判断によって指摘されるとおりの、これまで達成されていたレベルからの認知の変化。
b)年齢対応及び教育対応規範値と比べた少なくとも1つのドメイン(但し必ずしもエピソード記憶ではない)における認知障害;2つ以上の認知ドメインにおける障害は許容される。
c)機能的能力の非依存性の維持、但しこの基準はまた、手段的日常生活動作(IADL)の遂行における「軽度の問題」も、それが補助ありの場合のみであったとしても容認する(即ち非依存性が強く要求されるというよりむしろ、この基準は機能喪失に起因する軽度の依存性を許容する)。
d)認知症がない、これは名目上、c(上記)に応じたものとなる。
e)他の潜在的に認知症性の障害がない場合のADの表現型と一致する臨床像。以下によって診断の確信度を高めることが推奨され得る。
1)最適:陽性Aβバイオマーカー及び陽性変性バイオマーカー
2)最適未満:
i.陽性Aβバイオマーカー、変性バイオマーカーなし
ii.陽性変性バイオマーカー、Aβバイオマーカー検査なし
a)認知及び機能の個人内低下によって決定されるとおりの認知症の存在。
b)潜行性発症及び進行性認知低下。
c)2つ以上の認知ドメインにおける障害;健忘症症状が最も一般的であるが、この基準では、非健忘症症状(例えば、実行機能及び視空間能力の障害)に基づく診断も許容される。
d)他の認知症障害に関連する顕著な特徴がないこと。
e)上記のADに起因するMCIの節で考察したバイオマーカーアルゴリズムによって診断の確信度を高めることが推奨され得る。
a)臨床認知症評価(CDR)尺度−評価項目合計(SOB)。CDRは、認知及び機能的遂行を判定する全般的評価基準であり、ADの臨床研究で広く用いられている(Morris JC,1993)。この尺度は、6つのドメイン:記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家庭状況及び趣味、並びにセルフケアを評価する。各ドメインにスコアが割り当てられ、それらを合計して評価項目合計(SOB)スコアが求められる;
b)アーバンス神経心理検査(RBANS)。RBANS(Randolph C,1998)は、診断目的及び神経認知状態の経時的変化の追跡の両方に向けて特別に設計された臨床ツールである。このバッテリーの主要な設計目標の1つは、最軽度認知症を検出して特徴付けることである;又は
c)日常認知尺度(ECog)。ECogは、6つの認知に関連性のあるドメイン:日常記憶、日常言語、日常視空間能力、日常計画、日常秩序維持、及び日常注意散漫を含む39項目で構成される認知に関連性のある日常生活能力を測定する(Farias ST et al.,2008)。
(a)アルツハイマー病の臨床症状を発症する遺伝的素因を有するヒト対象、例えば、
i.アミロイド前駆体タンパク質(APP)若しくはプレセニリン−1及び−2の遺伝子に突然変異を保因する対象(O’Brien RJ,Wong PC,2011)、又は
ii.ApoE4アレルの1つ又は2つのコピーを保因する対象(Liu CC et al.,2013)、
(b)ダウン症候群のヒト対象(Head E et al.,2012)、又は
(c)84歳超のヒト対象。
化合物1の調製については、国際公開第2012/095469 A1号パンフレット(実施例34)に記載される。化合物1はまた、以下に記載するとおり調製されてもよい。
プロトンスペクトルは、特に注記されない限り、Bruker 400MHz ultrashield分光計で記録する。化学シフトは、メタノール(δ3.31)、ジメチルスルホキシド(δ2.50)、又はクロロホルム(δ7.29)に対するppm単位で報告する。少量の乾燥試料(2〜5mg)を適切な重水素化溶媒(0.7mL)に溶解する。シミングは、自動化され、スペクトルは、当業者に周知の手順に従って得られる。
HPLC方法H1(RtH1):
HPLC−カラム寸法:3.0x30mm
HPLC−カラムタイプ:ZorbaxSB−C18,1.8μm
HPLC−溶出液:A)水+0.05Vol.−%TFA;B)ACN+0.05Vol.−%TFA
HPLC−グラジエント:30−100%B 3.25分,流量=0.7ml/分
LCMS方法H2(RtH2):
HPLC−カラム寸法:3.0x30mm
HPLC−カラムタイプ:ZorbaxSB−C18,1.8μm
HPLC−溶出液:A)水+0.05Vol.−%TFA,B)ACN+0.05Vol.−%TFA
HPLC−グラジエント:B10−100%3.25分,流量=0.7ml/分
UPLCMS方法H3(RtH3):
HPLC−カラム寸法:2.1x50mm
HPLC−カラムタイプ:Acquity UPLCHSS T3,1.8μm
HPLC−溶出液:A)水+0.05Vol.−%ギ酸+3.75mM酢酸アンモニウムB)ACN+0.04Vol.−%ギ酸
HPLC−グラジエント:2−98%B1.4分,98%B0.75分,流量=1.2ml/分
HPLC−カラム温度:50℃
LCMS方法H4(RtH4):
HPLC−カラム寸法:3.0x30mm
HPLC−カラムタイプ:Zorbax SB−C18,1.8μm
HPLC−溶出液:A)水+0.05Vol.−%TFA;B)ACN+0.05Vol.−%TFA
HPLC−グラジエント:70−100%B3.25分,流量=0.7ml/分
LCMS方法H5(RtH5):
HPLC−カラム寸法:3.0x30mm
HPLC−カラムタイプ:ZorbaxSB−C18,1.8μm
HPLC−溶出液:A)水+0.05Vol.−%TFA;B)ACN+0.05Vol.−%TFA
HPLC−グラジエント:80−100% B3.25分,流量=0.7ml/分
LCMS方法H6(RtH6):
HPLC−カラム寸法:3.0x30mm
HPLC−カラムタイプ:Zorbax SB−C18,1.8μm
HPLC−溶出液:A)水+0.05Vol.−%TFA;B)ACN+0.05Vol.−%TFA
HPLC−グラジエント:40−100% B3.25分,流量=0.7ml/分
370ml THF中ジイソプロピルアミン(25.3g、250mmol)の溶液を−75℃のドライアイスアセトン浴で冷却した。温度を−50℃未満に維持しながらBuLi(100ml、250mmol、ヘキサン中2.5M)を滴下して加えた。混合物の温度が再び−75℃に達した後、45ml THF中2−ブロモ−5−フルオロピリジン(36.7g、208mmol)の溶液を滴下して加えた。この混合物を−75℃で1時間撹拌した。トリエチルクロロシラン(39.2g、260mmol)を速やかに加えた。温度は、−50℃未満のままであった。冷却浴を除去し、反応混合物を−15℃に温まるまで放置し、NH4Cl水溶液(10%)に注いだ。TBMEを加え、層を分離させた。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4・H2Oで乾燥させ、ろ過して蒸発させると、褐色の液体が得られ、これを0.5mmHgで蒸留させて表題化合物を淡黄色の液体(b.p.105〜111℃)として得た。HPLC:RtH4=2.284min;ESIMS:290,292[(M+H)+,1Br];1H−NMR(400MHz,CDCl3):8.14(s,1H),7.40(d,1H),1.00−0.82(m,15H).
500ml THF中ジイソプロピルアミン(25.4g、250mmol)の溶液を−75℃に冷却した。温度を−50℃未満に維持しながらBuLi(100ml、250mmol、ヘキサン中2.5M)を滴下して加えた。反応温度が再び−75℃に達した後、60ml THF中2−ブロモ−5−フルオロ−4−トリエチルシラニル−ピリジン(56.04g、193mmol)の溶液を滴下して加えた。この混合物をドライアイス浴中で70分間撹拌した。N,N−ジメチルアセトアミド(21.87g、250mmol)を速やかに加え、反応温度が−57℃に上昇した。この反応混合物をドライアイス浴中で15分間撹拌し、次に−40℃に温まるまで放置した。これを2M HCl水溶液(250ml、500mmol)、250ml水及び100mlブラインの混合物に注いだ。この混合物をTBMEで抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO4・H2Oで乾燥させ、ろ過して蒸発させると、黄色の油が得られ、これをシリカゲルカラムでヘキサン/0〜5%TBMEによる溶出によって精製して58.5gの表題化合物を黄色の液体として得た。TLC(Hex/TBME 99/1):Rf=0.25;HPLC:RtH4=1.921min;ESIMS:332,334[(M+H)+,1Br];1H−NMR(400MHz,CDCl3):7.57(d,1H),2.68(s,3H),1.00−0.84(m,15H).
最初は、100ml乾燥DCM中に水(54mg、3.00mmol)を溶解させることにより触媒溶液を調製した(≦0.001%水)。この湿潤DCM(44ml、1.32mmol含水量)を20ml乾燥DCM中チタン(IV)ブトキシド(500mg、1.47mmol)の十分に撹拌した溶液に加えた。得られた澄明な溶液を1時間還流した。次に、この溶液を室温に冷却し、2,4−ジ−tert−ブチル−6−{[(E)−(S)−1−ヒドロキシメチル−2−メチル−プロピルイミノ]−メチル}−フェノール[CAS 155052−31−6](469mg、1.47mmol)を加えた。得られた黄色の溶液を室温で1時間撹拌した。この触媒溶液(0.023M、46.6ml、1.07mmol)を223ml乾燥DCM中1−(6−ブロモ−3−フルオロ−4−トリエチルシラニル−ピリジン−2−イル)−エタノン(35.53g、107mmol)及びシアン化トリメチルシリル(12.73g、128mmol)の溶液に加えた。この混合物を2日間撹拌し、蒸発させて、47gの粗表題化合物をオレンジ色の油として得た。HPLC:RtH5=2.773min;ESIMS:431,433[(M+H)+,1Br];1H−NMR(400MHz,CDCl3):7.46(d,1H),2.04(s,3H),1.00(t,9H),1.03−0.87(m,15H),0.20(s,9H).
ボラン・硫化ジメチル錯体(16.55g、218mmol)を470ml THF中の粗(S)−2−(6−ブロモ−3−フルオロ−4−トリエチルシラニル−ピリジン−2−イル)−2−トリメチルシラニルオキシ−プロピオニトリル(47g、109mmol)の溶液に加えた。この混合物を2時間還流した。加熱浴を除去し、MeOHを慎重に滴下して加えることにより反応混合物をクエンチした。気体の発生が止んだ後、6M HCl水溶液(23.6ml、142mmol)をゆっくりと加えた。得られた溶液を蒸発させて、残渣をMeOH中に溶解して蒸発(2回)させて、以降の反応に十分な純度の44.5gの黄色の泡を得た。HPLC:RtH1=2.617min;ESIMS:363,365[(M+H)+,1Br];1H−NMR(400MHz,CDCl3):7.93(s,br,3H),7.53(d,1H),6.11(s,br,1H),3.36−3.27(m,1H),3.18−3.09(m,1H),1.53(s,3H),0.99−0.81(m,15H).
335ml THF中の粗(R)−1−アミノ−2−(6−ブロモ−3−フルオロ−4−トリエチルシラニル−ピリジン−2−イル)−プロパン−2−オールヒドロクロリド(43.5g、109mmol)の溶液に500ml水中NaHCO3(21.02g、250mmol)の溶液を加えた。この混合物を0〜5℃に冷却し、100ml THF中4−ニトロベンゼンスルホニルクロリド(26.5g、120mmol)の溶液を滴下して加えた。温度を室温に到達させながら得られたエマルションを一晩撹拌した。この混合物をTBMEで抽出した。有機層をMgSO4・H2Oで乾燥させ、ろ過して蒸発させると、オレンジ色の樹脂が得られ、これをシリカゲルカラムでヘキサン/10〜20%EtOAcによる溶出により精製して、37.56gの表題化合物を黄色の樹脂として得た。TLC(Hex/EtOAc 3/1):Rf=0.34;HPLC:RtH4=1.678min;ESIMS:548,550[(M+H)+,1Br];1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):8.40(d,2H),8.06(t,1H),7.97(d,2H),7.45(d,1H),5.42(s,1H),3.23(d,2H),1.44(s,3H)0.97−0.81(m,15H);ChiralHPLC(Chiralpak AD−H 1213,UV 210nm):90%ee.
510ml THF中トリフェニルホスフィン(21.55g、82mmol)及び(R)−N−(2−(6−ブロモ−3−フルオロ−4−(トリエチルシリル)ピリジン−2−イル)−2−ヒドロキシプロピル)−4−ニトロベンゼンスルホンアミド(37.56g、69mmol)の溶液を4℃に冷却した。温度を10℃未満に維持しながらトルエン中アゾジカルボン酸ジエチルの溶液(40重量%、38.8g、89mmol)を滴下して加えた。冷却浴を除去し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。この反応混合物を約1000mlトルエンで希釈し、ロータリーエバポレータにおける蒸発によってTHFを除去した。得られた粗生成物のトルエン溶液をシリカゲルカラムでヘキサン/5〜17%EtOAcによる溶出により予め精製した。最も純粋な画分を合わせ、蒸発させ、TBME/ヘキサンから結晶化させて、29.2gの表題化合物を白色の結晶として得た。HPLC:RtH4=2.546min;ESIMS:530,532[(M+H)+、1Br];1H−NMR(400MHz,CDCl3):8.40(d,2H),8.19(d,2H),7.39(d,1H),3.14(s,1H),3.02(s,1H),2.01(s,3H)1.03−0.83(m,15H);α[D]−35.7°(c=0.97,DCM).
フッ化カリウム(1.1g、18.85mmol)を25ml THF中6−ブロモ−3−フルオロ−2−[(S)−2−メチル−1−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニル)−アジリジン−2−イル]−4−トリエチルシラニル−ピリジン(5g、9.43mmol)及びAcOH(1.13g、9.43mmol)の溶液に加えた。DMF(35ml)を加え、懸濁液を室温で1時間撹拌した。反応混合物をNaHCO3飽和水溶液及びTBMEの混合物に注いだ。層を分離し、ブライン及びTBMEで洗浄した。合わせた有機層をMgSO4・H2Oで乾燥させ、ろ過して蒸発させると、黄色の油が得られ、これをTBME/ヘキサンから結晶化させて、3.45gの表題化合物を白色の結晶として得た。HPLC:RtH6=2.612min;ESIMS:416,418[(M+H)+,1Br];1H−NMR(400MHz,CDCl3):8.41(d,2H),8.19(d,2H),7.48(dd,1H),7.35(t,1H),3.14(s,1H),3.03(s,1H),2.04(s,3H);α[D]−35.7°(c=0.89,DCM).
DMF(158ml)中(R)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオン酸エチルエステル(11.93g、64.1mmol)の溶液の真空排気/窒素フラッシュを2回行った。水浴による冷却を用いて約25℃の反応温度を維持しながらDMF(17ml)中KOtBu(6.21g、55.5mmol)の溶液を滴下して加えた。15分後、固体の6−ブロモ−3−フルオロ−2−[(S)−2−メチル−1−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニル)−アジリジン−2−イル]−ピリジン(17.78g、42.7mmol)を加え、撹拌を3時間継続した。この反応混合物を1M HCl(56ml)、ブライン及びTBMEの混合物に注いだ。層を分離し、ブライン及びTBMEで洗浄した。合わせた有機層をMgSO4・H2Oで乾燥させ、ろ過して蒸発させた。粗反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/25〜33%TBME)によって精製すると16.93gの表題化合物が黄色の樹脂として得られ、これは、異性体副生成物により不純であった(1H−NMRによるとき70:30比)。
HPLC:RtH6=2.380min;ESIMS:602,604[(M+H)+,1Br];1H−NMR(400MHz,CDCl3):8.32(d,2H),8.07(d,2H),7.46−7.41(m,1H),7.30−7.23(m,1H),6.92(s,1H),3.39−4.30(m,2H),3.95(d,1H),3.84(d,1H),1.68(s,3H),1.56(s,3H),1.40−1.34(m,3H)+異性体副生成物.
NH3/MeOH(7M、482ml)中(R)−2−[(R)−2−(6−ブロモ−3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−2−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−プロポキシ]−3,3,3−トリフルオロ−2−メチル−プロピオン酸エチルエステル(16.93g、28.1mmol)の溶液を密閉容器内において50℃で26時間撹拌した。この反応混合物を蒸発させ、残渣をDCMから結晶化させて、9.11gの表題化合物を無色の結晶として得た。
HPLC:RtH6=2.422min;ESIMS:573,575[(M+H)+,1Br];1H−NMR(400MHz,CDCl3):8.33(d,2H),8.06(d,2H),7.42(dd,1H),7.30−7.26(m,1H),7.17(s,br,1H),6.41(s,1H),5.57(s,br,1H),4.15(m,2H),1.68(s,3H),1.65(s,3H).
85ml DCM中(R)−2−[(R)−2−(6−ブロモ−3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−2−(4−ニトロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−プロポキシ]−3,3,3−トリフルオロ−2−メチル−プロピオンアミド(8.43g、14.70mmol)及びトリエチルアミン(5.12ml、36.8mmol)の懸濁液を0〜5℃に冷却した。無水トリフルオロ酢酸(2.49ml、17.64mmol)を30分かけて滴下して加えた。更なるトリエチルアミン(1.54ml、11.07mmol)及び無水トリフルオロ酢酸(0.75ml、5.29mmol)を加えて反応を完了させた。14mlアンモニア水(25%)及び14ml水を加えることにより反応混合物をクエンチした。このエマルションを15分間撹拌し、更なる水及びDCMを加え、層を分離した。有機層をMgSO4 H2Oで乾燥させ、ろ過して蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/10〜25%EtOAc)による精製により、8.09gの表題化合物を黄色の樹脂として得た。
HPLC:RtH6=3.120min;ESIMS:555,557[(M+H)+、1Br];1H−NMR(400MHz,CDCl3):8.35(d,2H),8.11(d,2H),7.50(dd,1H),7.32(dd,1H),6.78(s,1H),4.39(d 1H),4.22(d,1H),1.68(s,6H).
92mlエタノール中N−[(R)−1−(6−ブロモ−3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−2−((R)−1−シアノ−2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−エトキシ)−1−メチル−エチル]−4−ニトロ−ベンゼンスルホンアミド(9.18g、16.53mmol)及びN−アセチルシステイン(5.40g、33.10mmol)の溶液を真空排気し、窒素でフラッシュした。K2CO3(4.57g、33.1mmol)を加え、混合物を80℃で3日間撹拌した。反応混合物を元の容積の約1/4になるまで真空濃縮し、水とTBMEとに分配した。有機層を10%K2CO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過して蒸発させると、黄色の油が得られた。シリカカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/14〜50%(EtOAc:MeOH 95:5))により、4.55gの表題化合物をオフホワイトの固体として得た。
HPLC:RtH2=2.741min;ESIMS:370,372[(M+H)+,1Br];1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):7.71−7.62(m,2H),5.97(s,br,2H),4.02(d 1H),3.70(d,1H),1.51(s,3H),1.47(s,3H).
ガラス/ステンレス鋼オートクレーブを窒素でパージし、エチレングリコール(130ml)中Cu2O(0.464g、3.24mmol)、アンモニア(101ml、25%、aq.、648mmol、30当量)及び(2R,5R)−5−(6−ブロモ−3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−2,5−ジメチル−2−トリフルオロメチル−5,6−ジヒドロ−2H−[1,4]オキサジン−3−イルアミン(8g、21.6mmol)を加えた。オートクレーブを閉じ、懸濁液を60℃に加熱し、溶液を約48時間撹拌した(最大圧力0.7バール、内部温度59〜60℃)。反応混合物を酢酸エチル及び水で希釈した。有機相を水で洗浄し、12%アンモニア水で4回洗浄し、及び最後にブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して蒸発させた。粗生成物(7g、幾らかのエチレングリコールを含む、定量的収率)を更なる精製なしに次の工程で使用した。
HPLC:RtH3=0.60min;ESIMS:307[(M+H)+].
ジクロロメタン(185ml)中(2R,5R)−5−(6−アミノ−3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−2,5−ジメチル−2−トリフルオロメチル−5,6−ジヒドロ−2H−[1,4]オキサジン−3−イルアミン(6.62g、21.6mmol)、Boc2O(4.72g、21.6mmol)及びヒューニッヒ塩基(5.66ml、32.4mmol)の溶液を室温で18時間撹拌した。反応混合物をNaHCO3飽和水溶液及びブラインで洗浄した。水層をジクロロメタンで逆抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して蒸発させると、淡緑色の固体が得られた(14g)。この粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン:酢酸エチル95:5〜60:40)にかけて、7.68gの表題化合物を得た。
TLC(シクロヘキサン:酢酸エチル3:1):Rf=0.21;HPLC:RtH3=1.14min;ESIMS:408[(M+H)+];1H−NMR(400MHz,CDCl3):11.47(br.s,1H),7.23(dd,J=10.42,8.78Hz,1H),6.45(dd,J=8.78,2.64Hz,1H),4.50(br.s,2H),4.32(d,J=2.38Hz,1H),4.10(d,J=11.80Hz,1H),1.69(s,3H,CH3),1.65(s,3H,CH3),1.55(s,9H).
[(2R,5R)−5−(6−アミノ−3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−2,5−ジメチル−2−トリフルオロメチル−5,6−ジヒドロ−2H−[1,4]オキサジン−3−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(3.3g、8.12mmol)、3−クロロ−5−トリフルオロメチルピコリン酸(2.2g、9.74mmol)、HOAt(1.99g、14.62mmol)及び塩酸EDC(2.33g、12.18mmol)の混合物をDMF(81ml)中、室温で48時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して蒸発させた。粗生成物(12g)をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン対シクロヘキサン:酢酸エチル1:1)にかけて、5.2gの表題化合物を得た。
TLC(シリカ、シクロヘキサン:酢酸エチル3:1):Rf=0.47;HPLC:RtH3=1.40min;ESIMS:615,616[(M+H)+,1Cl];1H−NMR(400MHz,CDCl3):11.68(s,1H),10.41(s,1H),8.81(dd,J=1.82,0.69Hz,1H),8.45(dd,J=8.91,3.14Hz,1H),8.19(dd,J=1.88,0.63Hz,1H),7.59(dd,J=9.79,9.16Hz,1H),4.38(d,J=2.13Hz,1H),4.18(d,J=11.80Hz,1H),1.75(s,3H),1.62(s,3H),1.60(s,9H).
ジクロロメタン(81ml)中((2R,5R)−5−{6−[3−クロロ−5−トリフルオロメチル−ピリジン−2−カルボニル)−アミノ]−3−フルオロ−ピリジン−2−イル}−2,5−ジメチル−2−トリフルオロメチル−5,6−ジヒドロ−2H−[1,4]オキサジン−3−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(4.99g、8.13mmol)及びTFA(6.26ml、81mmol)の混合物を室温で18時間撹拌した。溶媒を蒸発させて、酢酸エチルなどの好適な有機溶媒及びアンモニア水で残渣を希釈した。氷を加え、有機相を水及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、3.78gの表題化合物を得た。
HPLC:RtH3=0.87min;ESIMS:514,516[(M+H)+,1Cl];1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ 11.11(s,1H),9.06(s,1H),8.69(s,1H),8.13(dd,J=8.8,2.6Hz,1H),7.80−7.68(m,1H),5.88(br.s,2H),4.12(d,J=11.5Hz,1H),3.72(d,J=11.4Hz,1H),1.51(s,3H),1.49(s,3H).
化合物1の特に毛皮の変色に対する慢性治療効果を調べ、野生型マウスにおける有効用量を決定し、及び有効性と毛色変化との間のウィンドウを比較BACE−1阻害薬化合物NB−360(N−(3−((3R,6R)−5−アミノ−3,6−ジメチル−6−(トリフルオロメチル)−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−3−イル)−4−フルオロフェニル)−5−シアノ−3−メチルピコリンアミド)(Neumann U et al.,2015;及びShimshek DR et al.,2016)のものと比較するため、本明細書に記載される試験を市販の野生型マウスで行った。
C57BL/6マウスはCharles River Laboratories、フランスに注文した。
化合物1及びNB−360は、懸濁液として製剤化した。媒体、化合物1又はNB−360は10ml/kgの容積で1日1回(朝)、8週間にわたって経口投与した。媒体:水中0.5%メチルセルロース中0.1%Tween80。
体重を週3回(月曜日、水曜日、金曜日)測った。任意の毛髪の色の変化の主観的スコア付けを週1回(水曜日)実施した。スコア(灰色の毛皮の体に対する%):0:変化なし;1:スポット;2:>30%;3:>50%;4:>75%;5:100%。毛色の変化が観察された場合、動物を写真に撮って記録した。最後の毛色スコア付けは本試験に関与しない人が盲検で行った。
血液試料は、全血化合物レベルの分析に使用し、生存期間中に尾静脈からEDTAチューブ(CB300、Sarstedt、ドイツ)に採るか、又は剖検日に体幹血液からEDTAエッペンドルフチューブ(Milian SA、CatNoTOM−14、Fisher Scientific、Wohlen、スイス)若しくは血清チューブ(CB300Z、Sarstedt、Nuembrecht、ドイツ)に採るかのいずれかとした。
生体試料の化合物1及びNB−360レベルを血液、脳及び皮膚で液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(HPLC/MS/MS)によって定量化した。脳試料は2容量のKH2PO4緩衝液と混合し、Covaris(登録商標)装置を使用してホモジナイズした。皮膚試料は約6倍容量のメタノール/水と混合し、Precellysチューブを使用してホモジナイズした。30μLの血液、脳又は皮膚ホモジネートのいずれも構造的に関連性のある内部標準でスパイクし、続いて少なくとも6倍過剰容量のアセトニトリルと混合してタンパク質を沈殿させた。上清をLC/MS/MSシステムに直接注入して分析にかけた。
脳のホモジナイゼーション
凍結マウス前脳を秤量し、9容量(w/v)の氷冷TBS−Complete(20mMトリス−HCl pH7.4、137mM NaCl、1×Complete[プロテアーゼ阻害薬カクテル錠:1 836 145、Roche Diagnostics GmbH、Penzberg、ドイツ])中で音波処理(90%デューティサイクル、出力制御5、40〜55パルス、[Sonifier 450、Branson])によってホモジナイズした。ホモジナイゼーション後、分析用に数個の50μlアリコートを調製し、−80℃で保存した。
ヒトAβペプチド(1−40)トリフルオロ酢酸塩(H 1194.1000、Bachem、Bubendorf、スイス)をAβ1−40の検量線として使用した。これを無水DMSO(41647、Fluka)に1mg/mlの濃度で室温(RT)において約30分間可溶化し、次に完全に可溶化されたことを目視で確認した。
マウスの内因性Aβ40をMeso Scale Discovery(MSD)96ウェルMULTI−ARRAYヒト/げっ歯類(4G8)Aβ40超高感度アッセイ(#K110FTE−3、Meso Scale Discovery、Gaithersburg、USA)で決定した。このアッセイは、検量線及び試料調製を除いて製造者の指示に従って実施した。各1:10前脳ホモジネートの50μlアリコートを使用してTritonX−100(TX−100)可溶性Aβ40を1%TX−100で前脳から抽出し、1%TX−100の最終濃度及び1:20前脳希釈度に達するようにTBS complete(20mMトリス−HCl pH7.4、137mM NaCl、1×Complete[プロテアーゼ阻害薬カクテル錠:1 836 145、Roche Diagnostics GmbH、Penzberg ドイツ])中50μl 2%TX−100と混合した。試料を氷上で15分間インキュベートし、5分毎にボルテックスした。試料を超遠心(100000×g、4℃、15分)し、50μlの澄明な上清を新しいチューブに移した。Aβ40アッセイについては、上清を更に1:100の最終前脳希釈度となるように3%Blocker A溶液(キットからのもの)中に1:5希釈し、プレートに加えた。
NB−360又は化合物1で慢性治療したC57BL/6マウスの体重及び毛色に対する効果
野生型ナイーブマウス(C57BL/6)を化合物1又はNB360で8週間慢性治療し、3日毎(月曜日、水曜日、金曜日)に体重を測定した。全体的に見て媒体と比較した治療群の有意な体重の差を観察することができなかったと共に、56日目における試験終了時にも有意な差を観察することができなかった。それにも関わらず、治療群について有意な体重増加(0日目と56日目との体重比較)を観察することができた。
血中の化合物1曝露を1日目の初回投与後、14日目の中間時点及び最終投与後の試験終了時に決定した。一貫して、最終日における曝露は、実験の開始時よりも低かった。曝露は、化合物1について約35%減少した。
試験最終日、最終投与を受けた後4時間及び24時間でn=4マウス群を犠牲にした。前脳を分離し、β−アミロイドペプチド1−40に関して分析した。媒体群及び治療群のAβ40濃度を表6にまとめ、図2に視覚化する。対応する媒体治療群に対するパーセント減少率を計算した。治療により、最終投与後4時間で有意なAβ40の減少が生じた。化合物1は、最終投与後24時間もなお媒体と比べてAβ40の25%の減少を示し、しかし、これは有意でなかった。高用量群では、化合物1は、最終投与後24時間に有意に低いレベルのAβ40を示した。50μmol/kgの化合物1用量群は、ほぼ平坦なプロファイルを示し、全24時間の時間経過にわたって80〜90%のAβ40減少であった。
ヒトAPOE4コンテクストにおけるAPP代謝に対する化合物1の効果を調べるため、ヒトAPOE4アレルを保因するトランスジェニックマウスにおけるPK/PD試験を実施した(マウスApoe遺伝子をヒトAPOE4に置き換えた;APOE4−TR;(Knouff C et al.,1999))。
雄及び雌トランスジェニックホモ接合APOE4−TR(B6.129P2−Apoetm3(APOE*4)MaeN8、Taconic、モデル001549、3〜5ヵ月齢、n=48)をTaconicから入手した。
化合物1は、3、10及び30μmol/kgで投与した。
化合物1は、懸濁液として製剤化した。媒体又は化合物は、経口投与によって10ml/kgの容量で1回与えた。媒体:水中0.5%メチルセルロース中0.1%Tween80。
体重は、投与前に1回測った。
血液試料は、全血化合物レベルの分析に使用し、剖検日に体幹血液からEDTAエッペンドルフチューブ(Milian SA、CatNoTOM−14、Fisher Scientific、Wohlen、スイス)、又は血清チューブ(CB300Z、Sarstedt、Nuembrecht、ドイツ)に採った。
脳のホモジナイゼーション
凍結マウス前脳を秤量し、9容量(w/v)の氷冷TBS−Complete(20mMトリス−HCl pH7.4、137mM NaCl、1×Complete[プロテアーゼ阻害薬カクテル錠:1 836 145、Roche Diagnostics GmbH、Penzberg、ドイツ])中で音波処理(90%デューティサイクル、出力制御5、40〜55パルス、[Sonifier 450、Branson])によってホモジナイズした。ホモジナイゼーション後、分析用に数個の50μlアリコートを調製し、−80℃で保存した。
ヒトAβ1−40トリフルオロ酢酸塩(H 1194.1000、Bachem、Bubendorf、スイス)をAβ1−40の検量線として使用した。これを無水DMSO(41647、Fluka)に1mg/mlの濃度で室温(RT)において約30分間可溶化し、次に完全に可溶化されたことを目視で確認した。
マウスの内因性Aβ40をMeso Scale Discovery(MSD)96ウェルMULTI−ARRAYヒト/げっ歯類(4G8)Aβ40超高感度アッセイ(#K110FTE−3、Meso Scale Discovery、Gaithersburg、USA)で決定した。このアッセイは、検量線及び試料調製を除いて製造者の指示に従って実施した。各1:10前脳ホモジネートの50μlアリコートを使用してTritonX−100(TX−100)可溶性Aβ40を1%TX−100で前脳から抽出し、1%TX−100の最終濃度及び1:20前脳希釈度に達するようにTBS complete(20mMトリス−HCl pH7.4、137mM NaCl、1×Complete[プロテアーゼ阻害薬カクテル錠:1 836 145、Roche Diagnostics GmbH、Penzberg ドイツ])中50μl 2%TX−100と混合した。試料を氷上で15分間インキュベートし、5分毎にボルテックスした。試料を超遠心(100000×g、4℃、15分)し、50μlの澄明な上清を新しいチューブに移した。Aβ40アッセイについては、上清を更に1:100の最終前脳希釈度となるように3%Blocker A溶液(キットからのもの)中に1:5希釈し、プレートに加えた。
APOE4−TRマウス(マウスAPOE遺伝子をヒトAPOE4に置き換えた)を3つの異なる用量(3、10及び30μmol/kg)のBACE阻害薬化合物1で急性治療した。最終投与後4時間及び24時間で動物を犠牲にし、前脳を分離した。様々な群のAβ40及びAβ42濃度を図3、図4及び図5;及び表9、表10及び表11にまとめる。媒体治療群に対するパーセント減少率を計算した。いずれの治療によっても、最終投与後4時間及び24時間で有意且つ用量依存的なAβ40の減少が生じ、効果は、4時間で43〜77%及び24時間で20〜66%の範囲であった。低い方の2つの用量群(3及び10μmol/kg)について、Aβ40低減効果は、4及び24時間で有意に減少したが、最終投与後24時間で実質的にベースラインレベルに近かった。高用量の化合物1(30μmol/kg)は、ほぼ平坦なプロファイルを示し、全24時間の時間経過にわたって77〜66%のAβ40減少であった。
本実施例に提供される試験は、化合物1が、APOE4−TRマウスにおいてインビボで経口アベイラビリティのある、中枢作用性であり且つ強力なBACE阻害薬であることを実証する。マウス内因性Apoe遺伝子座からヒトAPOE4を発現するAPOE4−TRマウスを使用して化合物1のPK/PD関係を調べた。ApoE4は、アルツハイマー病の高リスク因子とされており、APOE4−TRマウスは、アルツハイマー脳におけるApoE4効果に類似している。
この試験は、臨床的に完了しており、主として健康成人及び高齢対象における化合物1の安全性及び忍容性並びに薬物動態学及び薬力学を評価する無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単一及び複数用量漸増経口投与試験であった。この試験の目的は、化合物1の単一及び複数最大耐量を決定すること、及び主要PDバイオマーカーとしてCSF中Aβを用いて薬物動態学/薬力学(PK/PD)関係を評価することであった。
第I相臨床用量範囲探索安全性及び忍容性試験において60歳以上の健常高齢対象に化合物1を投与した。この試験は、ClinicalTrials.govにNCT02576639識別コードで収載されている。
実施例5及び6に記載する完了したファースト・イン・ヒューマン試験及び3ヵ月用量範囲探索安全性及び忍容性臨床試験において、初回投与前(ベースライン)並びにそれぞれ2週間及び3ヵ月間の複数回投与後に腰椎穿刺を用いてCSF中Aβ濃度を得た。また、同意した対象のApoE4遺伝子型も得た。被験治療を受け、且つ薬力学的効果の判定に影響を及ぼす可能性のある大きいプロトコル逸脱がなかった対象において、Aβ40及びAβ42濃度のベースラインからのパーセント変化率を計算した。以下の表18〜表21は、治療群及びApoE遺伝子型(E4ヘテロ接合体対E4非保因者)別のベースラインからのパーセント変化率の要約統計量を提供する。CSFデータを有する1人の対象のみがE4ホモ接合体であった(3ヵ月用量範囲探索安全性及び忍容性試験から)。この対象は、プラセボで治療し、Aβ40及びAβ42の両方の濃度の11%の低下を示したが、以下の表には含めない。データは、ApoE4保因者と非保因者との間に化合物1による治療へのCSF Aβ40及びAβ42応答性に差がないことを示している。
概要
プラーク担持年齢(12ヵ月)のAPP23トランスジェニックマウスに化合物1を2つの用量で6ヵ月間慢性投与した。媒体のみを受けた群と比較して、0.03g/kg餌の化合物1の投与により媒体群と比較してアミロイド−β40及び42の僅かな減少が生じ、及び0.3g/kg餌の投与により強い減少が生じた。マウス脳内Aβ量は、ベースライン時(12ヵ月齢)のマウスと同様であった。血漿及びCSF中可溶性Aβは、高用量群で有意に減少したのみであった。免疫組織化学によって検出したときのプラーク負荷も低用量群で僅かに(約20%)減少し、及び高用量群で強く(約70%)減少した。小型、中型及び大型プラークの数は、等しく治療に応答した。活性化アストロサイトの数をGFAP染色によって決定した。全GFAP免疫応答性は、化合物1による治療によって用量依存的に減少した。GFAP陽性アストロサイトの大多数は、プラークに関連しなかったが、プラーク関連アストロサイトは、プラークから遠位にあるものと比較して化合物1治療に対してより強く応答した。IBA1染色によって活性化ミクログリア細胞を検出した。IBA1陽性ミクログリアの数は、化合物1治療によって用量依存的に減少した。アミロイドプラークにごく近接したミクログリアは、プラークから遠位にあるミクログリアと比較して治療によってより多く減少した。
動物及び用量選択
雄トランスジェニックヘテロ接合APP23(B6,D2−Tg(Thy1App)23Sdz(Sturchler−Pierrat C et al.,1997)、12〜14ヵ月齢、n=64)を餌ペレット中の0.3g/kg又は0.03g/kgの化合物1で治療した。
血液試料は全血化合物レベルの分析に使用し、剖検日に体幹血液からEDTAエッペンドルフチューブ(Milian SA、CatNoTOM−14、Fisher Scientific、Wohlen、スイス)、又は血清チューブ(CB300Z、Sarstedt、Nuembrecht、ドイツ)に採った。
生体試料の化合物1レベルを血液及び脳で液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(HPLC/MS/MS)によって定量化した。脳試料は、2容量のKH2PO4緩衝液と混合し、Covaris(登録商標)装置を使用してホモジナイズした。30μLの血液又は脳ホモジネートのいずれも構造的に関連性のある内部標準でスパイクし、続いて少なくとも6倍過剰容量のアセトニトリルと混合してタンパク質を沈殿させた。上清をLC/MS/MSシステムに直接注入して分析にかけた。
脳のホモジナイゼーション
凍結マウス前脳を秤量し、9容量(w/v)の氷冷TBS−Complete(20mMトリス−HCl pH7.4、137mM NaCl、1×Complete[プロテアーゼ阻害薬カクテル錠:1 836 145、Roche Diagnostics GmbH、Penzberg、ドイツ])中で音波処理(90%デューティサイクル、出力制御5、40〜55パルス、[Sonifier 450、Branson])によってホモジナイズした。ホモジナイゼーション後、分析用に数個の50μlアリコートを調製し、−80℃で保存した。
ヒトAβペプチド(1−40)トリフルオロ酢酸塩(H 1194.1000、Bachem、Bubendorf、スイス)をAβ1−40の検量線として使用した。これを無水DMSO(41647、Fluka)に1mg/mlの濃度で室温(RT)において約30分間可溶化し、次に完全に可溶化されたことを目視で確認した。
マウスにおけるヒトAβ40及び42をMeso Scale Discovery(MSD)96ウェルMULTI−ARRAYヒト/げっ歯類(6E10)Aβ40/42アッセイ(Meso Scale Discovery、Rockville、MD、USA)で決定した。このアッセイは、検量線及び試料調製を除いて製造者の指示に従って実施した。各1:10前脳ホモジネートの50μlアリコートを使用してTritonX−100(TX−100)可溶性Aβ40及び42を1%TX−100で前脳から抽出し、1%TX−100の最終濃度及び1:20前脳希釈度に達するようにTBS complete(20mMトリス−HCl pH7.4、137mM NaCl、1×Complete[プロテアーゼ阻害薬カクテル錠:1 836 145、Roche Diagnostics GmbH、Penzberg ドイツ])中50μl 2%TX−100と混合した。試料を氷上で15分間インキュベートし、5分毎にボルテックスした。試料を超遠心(100000×g、4℃、15分)し、50μlの澄明な上清を新しいチューブに移した。上清を更に1:100の最終前脳希釈度となるように3%Blocker A溶液(キットからのもの)で1:5希釈し、プレートに加えた。
50マイクロリットルの前脳ホモジネートを116.6μl 100%ギ酸と混合して、70%の最終ギ酸濃度を得た。試料を氷上で保存し、5分毎にボルテックスした。中和のため、50μlの混合物を新しいチューブにピペッティングし、1×Completeプロテアーゼ阻害薬を含有する950μlの1Mトリス塩基を加えた。チューブを室温で一晩保存し、次にEppendorf Microzentrifugeにおいて4℃で15分間、14000rpmで遠心した。上層から100μlを取り出し、100μlの3%Blocker A溶液(MesoScaleアッセイキットの一部)と混合した。この試料をアッセイプレートに直接加えるか(希釈1:1332)、又は1%Blocker A溶液で更に希釈した。
マウスCSF試料(3μl)を57μLの1%Blocker A(MSD)で希釈し、アッセイプレートに25μlを加えた。
血漿試料(30μl)を30μlの3%Blocker A(MSD)と混合し、アッセイプレートに25μlを加えた。
アミロイドペプチドのC末端部を認識するウサギ抗Aβ一次抗体(この抗体は、Schrader−Fischer G,Paganetti PA,1996;Schrader−Fischer G et al.,1997に記載されるとおり産生された)を用いてアミロイドプラークを染色した。市販のウサギ抗GFAP(Dako Schweiz GmbH、Baar、スイスからのリファレンスZ0334)を用いて活性化アストロサイトを検出した。
同じ抗体を用いてアミロイドプラークを染色し、Wako Chemicals GmbH(Neuss、ドイツ)からの、抗体希釈剤で1/200希釈したウサギ抗IBA1抗体(リファレンス019−19741)を用いてミクログリア細胞を検出した。染色プロトコルは、アミロイド−βプラーク及びアストロサイトのプロトコルと全く同様であった。スライドを同じ設定でスキャンした。
画像解析に基づく定量的プラーク評価のため、MS Visual Studio 2010及びMatrox MIL V9ライブラリ(Matrox Inc、Quebec、カナダ)からの多くの機能をベースとして有標の画像解析プラットフォーム(ASTORIA、自動保存画像解析)を開発した。
− スライドをHamamatsu Nanozoomerによって40倍の倍率でスキャンした。各蛍光標識(DAPI、FITC及びTRITC)について別個の画像を作成した。
− 緑色FITCチャンネル画像でのAβプラーク評価用に脳切片において皮質を画定するため手作業でROI(関心領域)の輪郭を描き、次に得られた輪郭を他の2つのチャンネル画像にも使用する(得られたxmlファイルをコピーする)。
− インハウスで開発したImageScope(V12.1.0.5029、Aperio Inc.,USA)プラグインを実行して、3つの蛍光チャンネルの各々について*.tif画像タイル(10倍の倍率)を作成及びエクスポートする。
− 各個別の蛍光チャンネル画像へのアクセスを通じて各切片の組み合わせトゥルーカラー画像(DAPI、FITC、TRITC)を得る。
− 黒色の未染色バックグラウンドからの有効試料(輪郭を描いたROIの範囲内にある)のセグメンテーション。
− 緑色チャンネル画像(FITC標識Aβプラーク)のオブジェクトのセグメンテーションに適応閾値処理法を適用する。
− 緑色(FITC)チャンネルにおいてシグナルを示す小さ過ぎるデブリの除去後、正しい後続の個々のオブジェクト分析のための接触オブジェクトの分離。
− 形態学的トップハット変換及び閾値処理による赤色チャンネルのTRITC標識オブジェクト(アストロサイト又はミクログリアを示すGFAP又はIba1染色に特異的)のセグメンテーション。
− 特徴ベースのオブジェクト分類。
− 除外すべき非特異的デブリ(ぼやけ過ぎている、小さ過ぎるオブジェクト)
− 小型プラーク(40〜1000ピクセル)
− 中型プラーク(1000〜6500ピクセル)
− 大型プラーク(>6500ピクセル)
− プラーク数
− 非線形的方法での適切な抗体の染色強度の測定及び使用に基づく「比光学濃度」(これは、タンパク質(抗原)濃度の大きさを反映することが記載されている(Rahier et al.,1989;Ruifrok et al.,2001))
− TRITC+シグナル対プラーク面積比に基づく「プラーク関連GFAP又はIba1」、プラーク周囲の拡張円形範囲内にあるTRITC+シグナルの比に基づく「近位GFAP又はIba1」の評価
脳ホモジネートを緩衝液中1%Triton X−100で抽出し、得られた上清を可溶性形態のAPP代謝産物に相当すると見なした。Aβ40及び42に加えて、本発明者らは、N末端APP断片sAPPα(α−セクレターゼの直接の切断産物)及びsAPPβ(Swe)(BACE1切断の直接の産物)を決定した。表25に示されるとおり、可溶性Aβ40及び42は非治療群において試験期間中にわたって中程度に(2倍未満)増加する。この年齢でAPP発現及びAβ生成の変化が起こることは知られていないため、媒体群(18〜20ヵ月齢)の値の増加は、Aβ沈着からの「漏出」(これは数倍増加する、以下を参照されたい)によって起こることが想定される。また、非治療群では、可溶性APP代謝産物sAPPα及びβの値にも有意な変化はなかった。
剖検時に全てのマウスからCSFを採取した。ベースライン群の試料は、約6ヵ月間保存し、試験終了時に残りの試料と共に分析した。表27及び図15のデータは、CSF Aβがベースライン群(12ヵ月齢のAPP23マウス)で最も高いが、媒体群(18ヵ月齢のAPP23マウス)では下がることを示している。この媒体群と比較して、0.03g/kg餌化合物1治療群ではCSF Aβ40が非有意に減少し、0.3g/kg餌化合物1治療群では有意に減少する。高いベースライン値の理由は、現在のところ分かっていない。これは、オリゴマー型のAβの解離がより高いモノマー濃度につながり得るときの長期保存の効果であると仮定される。CSF Aβは、脳抽出物からのTriton TX−100可溶化Aβよりも、Aβ生成の変化に直接応答する可溶性アミロイド−βの定常状態濃度を代表する。低い化合物1用量(−4.6〜−20%)での小さく有意でない治療効果、並びに高い化合物1用量(−43.7〜−77%)での顕著で有意な効果は、脳組織から単離された可溶性Aβ種とCSF中Aβ40との間で非常に類似している。
不溶性Aβ種をギ酸で抽出した後、APP23マウス脳内の沈着形態のアミロイド−βに対する化合物1の治療効果を調べた。表28及び表29及び図16〜図19に示されるとおり、媒体群では、ベースラインと比較して沈着Aβの大幅な増加が観察された。Aβ42はAβ40より多く増加し(Aβ42/40比は、媒体群で55%増加した)、そのより高い凝集傾向と一致した。Aβ40及びAβ42は、低用量の化合物1による治療後に媒体と比較して約17%の減少を示したが、これは、統計的有意性には達しなかった。抽出材料のAβ42/40比は変化しなかった。高い化合物1治療群では沈着Aβ40及びAβ42の強力で高度に有意な(約80%対媒体)減少が観察され、Aβ42/40比が0.07のベースライン値に戻った。要約すれば、高用量の化合物1による治療は、APP23マウスのアミロイドβの増加をほぼ完全に阻止した。
アミロイドペプチドのC末端部を認識する抗Aβ抗体でAPP23脳切片上のアミロイドプラークを染色した。更に詳しいデータ分析のため、APP23マウスにおける様々な形態のアミロイド−β沈着を「小型」、「中型」及び「大型」プラークに分類した。更に、総免疫染色面積を決定した。定量化結果は、表30及び表31及び図20〜図23に示す。Aβ沈着の大多数は、「小型」プラークに分類される一方、「中型」プラークの数は、10分の1であり、及び「大型」プラークの数は、100分の1であった。全ての形態のプラークの数は、媒体群では試験期間中に約4〜6倍増加し、総プラーク面積についても同じことが観察された。化合物1による治療は、この増加を低用量治療群で約25%、及び高用量治療群で約60%減少させた。媒体群におけるAβの増加及び0.3g/kg餌化合物1治療群における効果は、組織学的分析では生化学的決定と比較して低い。二次元組織学的分析は、実際には三次元の全てで起こるプラーク容積変化を完全には再現しないこともある。
GFAP(グリア線維性酸性タンパク質)は、静止アストロサイトにも活性化アストロサイトにも見られる。GFAP免疫応答性は、多くの場合にアストロサイト数及び活性化のマーカーとして使用される。APP23マウスでは、正規化GFAP陽性面積がマウスの年齢と共に約2倍増加し、この増加は、化合物1治療によって用量依存的に減少した(表32及び表33及び図24〜図28)。GFAP免疫応答性をアミロイドプラークとの関連性に関して更に分析した(IBA1免疫応答性と同様に実施した)。この分析は、GFAP免疫応答性の大部分が非プラーク関連(遠位)であり、10%のみがプラーク関連又は近位であることを示している。プラーク関連及び近位GFAP免疫応答性の割合が媒体群で増加したことから、アミロイドプラークのごく近傍におけるアストロサイト数/活性化の優勢な増加が示唆される。遠い非プラーク関連GFAP陽性染色について、加齢による増加は低かった。化合物1治療の効果も、プラーク関連及び非プラーク関連GFAP免疫応答性間で異なった。プラーク関連/近位GFAP免疫応答性に対する効果は、非プラーク関連/遠位染色に対するよりも強力であった。これらのデータは、化合物1がGFAP染色に対するその効果を主にアミロイドプラークの直ちに近傍に、恐らくプラーク自体に対する効果によって及ぼすことを示唆している。
IBA1(イオン化カルシウム結合アダプター分子1)は、ミクログリア/マクロファージ特異的タンパク質である。IBA1免疫応答性は、多くの場合にミクログリア数及び活性化のマーカーとして使用される。APP23マウスでは、正規化IBA1陽性面積がマウスの年齢と共に約5倍増加し、この増加は、化合物1治療によって用量依存的に減少した(表34及び表35)。IBA1免疫応答性をアミロイドプラークとの関連性に関して更に分析した。この分析は、IBA1免疫応答性の約75%が非プラーク関連(遠位)であり、25%のみがプラーク関連又は近位であることを示している。プラーク関連及び近位IBA1免疫応答性の割合は媒体群で増加した。それより程度は低いが、遠い非プラーク関連IBA1陽性染色もマウスの年齢と共に増加した。化合物1治療の効果もプラーク関連及び非プラーク関連IBA1免疫応答性間で異なった。プラーク関連/近位IBA1免疫応答性に対する効果は強力で有意であった。非プラーク関連/遠位染色に対して有意な効果は見られなかった。これは、図29〜図33に更に示され、プラーク面積と比べた総IBA1染色及びプラーク関連IBA1染色の効果が示される。これらのデータは、化合物1がIBA1染色に対するその効果を主にアミロイドプラークの直ちに近傍に、恐らくプラーク自体に影響を与えることによって及ぼすことを示唆している。プラークに対する効果は、プラークから遠いミクログリア活性化/数(これは、IBA1+免疫応答性の大部分である)にそれほど強く影響を及ぼさない。
本明細書に記載する臨床試験では、認知が実質的に悪化する可能性がより高い個体を妥当なタイムフレームで選択するための予後診断強化戦略として、臨床試験セッティング内で実際的に評価することのできるApoE4ホモ接合体の同定を利用する。この試験は、ClinicalTrials.govにNCT02565511識別コードで収載されている。代替として、本実施例は、認知障害のないApoE4保因者(ホモ接合体;又は脳アミロイドの更なる高濃度化(「アミロイド陽性」)が例えばPET又はCSF測定により決定されたヘテロ接合体)、60〜75歳、1日1回経口用量の15又は50mg化合物1で行われてもよい。この試験は、ClinicalTrials.govにNCT03131453識別コードで収載されている。
健常ボランティアでの薬物間相互作用(DDI)試験において、化合物1のPKに対する強力なCYP3A4阻害薬(イトラコナゾール)及び強力なCYP3A4誘導薬(リファンピシン)の効果を判定した。DDI試験設計の概要は、図34に示す。200mg q.d.の用量のイトラコナゾールは、化合物1と共に投与したとき、化合物1を単独で投与したときと比較して化合物1の平均AUCを2〜3倍増加させ、化合物1の平均Cmaxを25%増加させた(表37)。600mg q.d.の用量のリファンピシンは、化合物1と共に投与したとき、化合物1を単独で投与したときと比較して化合物1の平均AUCを5〜6倍低下させ、化合物1の平均Cmaxを2.5倍低下させた(表38)。結論として、第1相研究における化合物1曝露に対する強力なCYP3A4誘導薬及び強力なCYP3A4阻害薬の効果は、CYP3A4/5が化合物1の排出に大きい重要性を有することを示している。
脳内Aβ沈着の増加は、確立されたPETトレーサー、例えば11C−ピッツバーグ化合物B、18F−フロルベタベン、又は18F−フルテメタモルを使用した皮質AβのPETイメージングにより、またCSF Aβ1−42の低下としても決定することができる。幾つかの試験が、脳内アミロイド−β病変の検出についてPETイメージングとCSF Aβ1−42分析との間の高い一致を示している(Weigand SD et al.,2011;Barthel H et al.,2011;Schipke CG et al.,2017)。この相関は、CSF Aβ1−42の減少が脳内のアミロイド−β沈着が増加した結果であることを示唆している。Aβ1−42と対照的に、皮質アミロイド沈着物に蓄積しにくいAβ1−40のCSF濃度は、高い皮質アミロイド−β負荷を有する患者であっても事実上一定のままである。これと一致して、Aβ1−42単独の代わりにCSF Aβ1−42/Aβ1−40比を使用したとき、よりロバストなPET−CSF相関が得られることが実証されている(Pannee J et al.,2016;Janelidze S et al.,2016)。脳内アミロイド−β病変の検出の診断ツールとしてAβ1−42/Aβ1−40比を使用することは十分に確立されているが、抗アミロイド剤による治療に応答したこのパラメータの変化についてはこれまで記載がない。
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Claims (15)
- アルツハイマー病の臨床症状を発症するリスクがある患者のアルツハイマー病の予防における使用のための化合物N−(6−((3R,6R)−5−アミノ−3,6−ジメチル−6−(トリフルオロメチル)−3,6−ジヒドロ−2H−1,4−オキサジン−3−イル)−5−フルオロピリジン−2−イル)−3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピコリンアミド又はその薬学的に許容可能な塩。
- アルツハイマー病の臨床症状を発症するリスクがある前記患者は、前記アルツハイマー病の臨床症状を発症する遺伝的素因を保因するか、又はダウン症候群を有する、請求項1に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記患者は、前記アルツハイマー病の臨床症状を発症する遺伝的素因を保因し、及び前記遺伝的素因は、
(i)アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリン−1若しくはプレセニリン−2の遺伝子における突然変異、又は
(ii)ApoE4アレルの1つ又は2つのコピーの存在
である、請求項2に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。 - アルツハイマー病の臨床症状を発症するリスクがある前記患者は、ApoE4アレルの1つ又は2つのコピーを保因する、請求項3に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記患者は、ApoE4アレルの1つのコピーを保因する、請求項4に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記患者は、ApoE4アレルの2つのコピーを保因する、請求項4に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記患者は、アミロイド陽性である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記アミロイド陽性は、PET又はCSF測定によって決定される、請求項7に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記患者は、60〜75歳である、請求項3〜8のいずれか一項に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記化合物は、2週間の化合物曝露後にCSF中のAβ1−40の少なくとも70%の低下をもたらす1日用量で使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記化合物は、2週間の化合物曝露後にCSF中のAβ1−40の少なくとも50%の低下をもたらす1日用量で使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記化合物は、1日15mgの用量で使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 前記化合物は、1日50mgの用量で使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用のための化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
- 遊離形態である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用のための遊離形態又は薬学的に許容可能な塩の形態における化合物を含む医薬組成物。
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