本明細書には、本開示の様々な実施形態と態様が示されているとともに、説明されているが、そのような実施形態と態様は、例として示されているに過ぎないことは当業者には明らかであろう。そして、当業者は、本開示から逸脱せずに、数多くの変形、変更及び置換を思いつくであろう。本開示を実施する際には、本明細書に記載されている本開示の実施形態に対する様々な代替態様を用いてよいことを理解されたい。
文脈上、別段に解される場合を除き、本明細書に記載されている本開示の様々な特徴は、いずれかに組み合わせて用いることができるように明確に意図されている。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に示されているいずれかの特徴または特徴を組み合わせたものを除外または省略できることも本開示は想定している。例示するために、複合体が、成分AとBとCを有することが本明細書に示されている場合、A、BもしくはC、またはこれらを組み合わせたもののいずれかを個々に、またはいずれかに組み合わせた状態で省略及び排除できるように明確に意図されている。
本明細書と添付の請求項で使用する場合、文脈上、明らかに別段に解される場合を除き、「a」、「an」及び「the」という単数形には、複数の言及物が含まれることに留意されたい。したがって、例えば、「がん細胞」に言及している場合には、複数のがん細胞が含まれる。別の例では、「核酸(a nucleic acid)」または「核酸(nucleic acid)」には、複数の核酸分子、すなわち、複数の核酸が含まれる。
「約」という用語は、その指定の値を含む値の範囲であって、その指定の値と同程度であると当業者が合理的にみなす範囲を意味する。実施形態では、約とは、当該技術分野において概ね許容可能な測定値を用いた標準偏差内を意味する。実施形態では、約とは、指定の値の±10%までの範囲を意味する。実施形態では、約とは、その指定の値を意味する。
また、本明細書で使用する場合、「及び/または」とは、関連する列挙事項のうちの1つ以上を考え得る形で組み合わせたもののすべてと、択一形式(「または」)で解釈したときには、組み合わせたものが含まれないことを指すとともに、これらを含む。
本明細書で使用する場合、「含む」という用語は、その組成物と方法に、示されている要素が含まれているが、他の要素が排除されないことを意味するように意図されている。本明細書で使用する場合、「〜から本質的になる」という移行句(及び文法的互換表現)には、示されている材料または工程と、示されている実施形態の基本的かつ新規な特徴(複数可)に重大な影響を及ぼさない材料または工程が含まれるものと解釈することとする。したがって、「〜から本質的になる」という用語は、本明細書で使用する場合、「含む」と同等な用語として解釈すべきではない。「〜からなる」とは、微量を超える他の成分要素と、本明細書に開示されている組成物を投与するための他の実質的な方法工程とを排除することを意味するものとする。これらの各移行句用語によって定められている態様は、本開示の範囲内である。
定義
本明細書で用いられている略語は、化学分野と生物分野における従来の意味を有する。本明細書に示されている化学構造と化学式は、化学分野で知られている化学価の標準規則に従って解釈する。
本明細書で使用する場合、「オリゴマー」と「ポリマー」という用語は、複数の繰り返しサブユニット(例えば重合モノマー)を有する化合物を指す。「コオリゴマー」または「コポリマー」という用語は、2種類以上の残基(モノマー単位またはモノマー(これらは、本明細書では同義的に用いられている))を含むオリゴマーまたはポリマーを指す。オリゴマーのモノマー数は概して、ポリマーのモノマー数よりも少ない。したがって、いくつかの例では、オリゴマーは、1〜約10個のモノマー、1〜約20個のモノマー、1〜約30個のモノマー、1〜約40個のモノマー、1〜約50個のモノマー、1〜約100個のモノマー、1〜約150個のモノマー、1〜約200個のモノマー、1〜約250個のモノマー、1〜約300個のモノマー、1〜約350個のモノマー、1〜約400個のモノマー、1〜約450モノマーまたは1〜約500個のモノマーの長さであることができる。いくつかの例では、オリゴマーは、約500個未満のモノマー、約450個未満のモノマー、約400個未満のモノマー、約350個未満のモノマー、約300個未満のモノマー、約250個未満のモノマー、約200個未満のモノマー、約150個未満のモノマー、約100個未満のモノマー、約50個未満のモノマー、約40個未満のモノマー、約30個未満のモノマー、約20個未満のモノマーまたは約10個未満のモノマーの長さであることができる。ポリマーに関しては、ポリマーのモノマー数は概して、オリゴマーのモノマー数よりも多い。したがって、いくつかの例では、ポリマーは、約500〜約1000個のモノマー、約500〜約2000個のモノマー、約500〜約3000個のモノマー、約500〜約4000個のモノマー、約500〜約5000個のモノマー、約500〜約6000個のモノマー、約500〜約7000個のモノマー、約500〜約8000個のモノマー、約500〜約9000個のモノマー、約500〜約10000個のモノマーまたは10000個超のモノマーの長さであることができる。
「重合性モノマー」という用語は、ポリマー化学分野におけるその意味に従って用いられており、他のモノマー分子(同じであるかまたは異なる他の重合性モノマーなど)に化学的に共有結合して、ポリマーを形成できる化合物を指す。
「ブロックコポリマー」という用語は、その通常の意味に従って用いられており、重合モノマーの2つ以上の部分(例えばブロック)が共有結合によって連結されたものを指す。実施形態では、ブロックコポリマーは、ポリマーの繰り返しパターンである。実施形態では、ブロックコポリマーは、2つ以上のモノマーを周期的な(例えば繰り返しパターン)配列で含む。例えば、ジブロックコポリマーは、−B−B−B−B−B−B−A−A−A−A−A−という式を有し、この「B」は、第1のサブユニットであり、「A」は、第2のサブユニットであり、共に共有結合している。したがって、トリブロックコポリマーは、別個のブロックを3つ有するコポリマーであり、そのうちの2つは同じであってもよく(例えば、−A−A−A−A−A−B−B−B−B−B−B−A−A−A−A−A−)、または3つすべてが異なっており(例えば、−A−A−A−A−A−B−B−B−B−B−B−C−C−C−C−C−)、この「A」は、第1のサブユニットであり、「B」は、第2のサブユニットであり、「C」は、第3のサブユニットであり、共に共有結合している。
単独または別の置換基の一部としての「アルキル」という用語は、別段の定めのない限り、完全飽和、モノ不飽和または多価不飽和であってよいとともに、二価及び多価の基を含むことができる直鎖(すなわち非分岐)もしくは分岐鎖、またはこれらが組み合わさったものを意味する。アルキルは、示されている炭素原子数を有してよい(すなわち、C1−C10は、1〜10個の炭素を意味する)。アルキルは、非環化鎖である。飽和炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、そのホモログ及び異性体、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどのような基が挙げられるが、これらに限らない。不飽和アルキル基は、二重結合または三重結合を1つ以上有する基である。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−プロピニル及び3−プロピニル、3−ブチニル、ならびに高級ホモログ及び異性体が挙げられるが、これらに限らない。アルコキシは、アルキルが酸素リンカー(−O−)を介して、その分子の残部に結合しているものである。
単独または別の置換基の一部としての「アルキレン」という用語は、別段の定めのない限り、アルキルから誘導される二価の基を意味し、−CH2CH2CH2CH2−によって例示されるが、これに限らない。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1〜24個の炭素原子を有することになるが、10個以下の炭素原子を有する基が好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、C1−C8アルキルまたはアルキレン基である。
「ヘテロアルキル」という用語は、別段の定めのない限り、単独かまたは別の用語と組み合わせた状態で、少なくとも1つの炭素原子と、O、N、P、Si及びSからなる群から選択した少なくとも1つのヘテロ原子とからなる安定な直鎖もしくは分岐鎖、またはこれらが組み合わさったものを意味し、その窒素原子と硫黄原子は、任意に酸化されていてよく、その窒素ヘテロ原子は、任意に四級化されていてよい。ヘテロ原子(複数可)のO、N、P、S及びSiは、ヘテロアルキル基のいずれかの内側の位置、またはアルキル基がその分子の残部に結合している位置に配置されていてよい。ヘテロアルキルは、非環化鎖である。例としては、−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2、−S(O)−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3、−Si(CH3)3、−CH2−CH=N−OCH3、−CH=CH−N(CH3)−CH3、−O−CH3、−O−CH2−CH3及び−CNが挙げられるが、これらに限らない。例えば、−CH2−NH−OCH3のように、最大で2個のヘテロ原子が連続していてよい。
同様に、単独または別の置換基の一部としての「ヘテロアルキレン」という用語は、別段の定めのない限り、ヘテロアルキルから誘導される二価の基を意味し、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−及び−CH2−S−CH2−CH2−NH−CH2−によって例示されるが、これらに限らない。ヘテロアルキレン基では、ヘテロ原子が、鎖の末端のいずれかまたは両方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ及び上記のものなど)。本明細書で使用する場合、ヘテロアルキル基には、−C(O)R’、−C(O)NR’、−NR’R’’、−OR’、−SR’及び/または−SO2R’のように、ヘテロ原子を介して、その分子の残部に結合している基が含まれる。「ヘテロアルキル」が示されており、その後に、−NR’R’’などのような具体的なヘテロアルキル基が列挙されている場合には、ヘテロアルキルという用語と−NR’R’’は、冗長であったり、互いに排他的であったりしないことが分かるであろう。逆に、具体的なヘテロアルキル基は、さらに明瞭にするために示されている。したがって、「ヘテロアルキル」という用語は、本明細書では、−NR’R’’などのような具体的なヘテロアルキル基を排除するものとして解釈すべきではない。
「シクロアルキル」と「ヘテロシクロアルキル」という用語は、別段の定めのない限り、単独でまたは別の用語と組み合わせた状態で、それぞれ、「アルキル」と「ヘテロアルキル」の環状形態を意味する。シクロアルキルとヘテロアルキルは、芳香族ではない。加えて、ヘテロシクロアルキルでは、そのヘテロ環がその分子の残部に結合している位置を、ヘテロ原子が占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限らない。ヘテロシクロアルキルの例としては、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられるが、これらに限らない。単独または別の置換基の一部としての「シクロアルキレン」と「ヘテロシクロアルキレン」は、それぞれ、シクロアルキルとヘテロシクロアルキルから誘導される二価の基を意味する。
単独または別の置換基の一部としての「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、別段の定めのない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。加えて、「ハロアルキル」のような用語には、モノハロアルキルとポリハロアルキルが含まれるように意図されている。例えば、「ハロ(C1−C4)アルキル」という用語には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどが含まれるが、これらに限らない。
「アシル」という用語は、別段の定めのない限り、−C(O)Rを意味し、そのRは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
「アリール」という用語は、別段の定めのない限り、多価不飽和の芳香族炭化水素置換基であって、単環であることも、縮合しているか(すなわち縮合環アリール)または共有結合している多環(好ましくは1〜3環)であることもできる基を意味する。縮合環アリールとは、縮合した多環であって、その縮合環の少なくとも1つがアリール環である基である、多環を指す。「ヘテロアリール」という用語は、N、O及びSから選択したヘテロ原子を1〜4個含むアリール基(または環)を指し、その窒素原子と硫黄原子は、任意に酸化されており、その窒素原子(複数可)は、任意に四級化されている。したがって、「ヘテロアリール」という用語には、縮合環ヘテロアリール基(すなわち、縮合した多環であって、その縮合環の少なくとも1つが、ヘテロ芳香族環であるもの)が含まれる。5,6−縮合環ヘテロアリーレンとは、2つの環が縮合したものであって、一方の環が5員であり、もう一方の環が6員であり、少なくとも1つの環がヘテロアリール環であるものを指す。同様に、6,6−縮合環ヘテロアリーレンとは、2つの環が縮合したものであって、一方の環が6員であり、もう一方の環が6員であり、少なくとも1つの環がヘテロアリール環であるものを指す。また、6,5−縮合環ヘテロアリーレンとは、2つの環が縮合したものであって、一方の環が6員であり、もう一方の環が5員であり、少なくとも1つの環がヘテロアリール環であるものを指す。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して、その分子の残部に結合できる。アリール基とヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル及び6−キノリルが挙げられる。上に示したアリール環系とヘテロアリール環系のそれぞれにおける置換基は、下記の許容可能な置換基の群から選択されている。単独または別の置換基の一部としての「アリーレン」と「ヘテロアリーレン」とは、それぞれ、アリールとヘテロアリールから誘導される二価の基を意味する。
簡潔にするために、他の用語と組み合わせて用いる場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、「アリール」という用語には、上で定義したようなアリール環とヘテロアリール環の両方が含まれる。したがって、「アリールアルキル」という用語には、アリール基がアルキル基に結合している基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)が含まれるように意図されており、炭素原子(例えばメチレン基)が、例えば酸素原子に置き換えられているアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)が挙げられる。
「オキソ」という用語は、本明細書で使用する場合、炭素原子に二重結合している酸素を意味する。
「アルキルスルホニル」という用語は、本明細書で使用する場合、−S(O2)−R’という式を有する部分であって、R’が、上で定義したようなアルキル基である部分を意味する。R’は、所定数の炭素を有してよい(例えば、「C1−C4アルキルスルホニル」)。
上記の各用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」及び「ヘテロアリール」)には、示されている基の置換形態と非置換形態の両方が含まれる。
アルキル基とヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル及びヘテロシクロアルケニルと称されることの多い基を含む)における置換基は、0〜(2m’+1)(m’は、その基の総炭素原子数である)個の範囲の数で、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)2R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−NRSO2R’、−CN及び−NO2(これらに限らない)から選択した各種の基のうちの1つ以上であることができる。R’、R’’、R’’’及びR’’’’はそれぞれ好ましくは、独立して、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしく非置換のアリール(例えば、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール)、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本明細書に開示されている化合物が、2つ以上のR基を含むときには、例えば、そのR基のそれぞれは、独立して選択されており、R’、R’’、R’’’及びR’’’’基のうちの2つ以上が存在するときには、それらの各基も、独立して選択されている。R’とR’’が同じ窒素原子に結合しているときには、R’とR’’は、その窒素原子と一体になって、4員環、5員環、6員環または7員環を形成できる。例えば、−NR’R’’としては、1−ピロリジニルと4−モルホリニルが挙げられるが、これらに限らない。置換基についての上記の考察から、「アルキル」という用語には、ハロアルキル(例えば、−CF3及び−CH2CF3)と、アシル(例えば、−C(O)CH3、−C(O)CF3、−C(O)CH2OCH3など)のように、水素基以外の基に結合している炭素原子を含む基が含まれるように意図されていることを当業者は分かるであろう。
アルキル基について説明した置換基と同様に、アリール基とヘテロアリール基における置換基は様々であり、例えば、0個〜芳香族環系における空いた原子価の総数までの範囲の数で、−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)2R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−NRSO2R’、−CN、−NO2、−R’、−N3、−CH(Ph)2、フルオロ(C1−C4)アルコキシ及びフルオロ(C1−C4)アルキルから選択されており、R’とR’’とR’’’とR’’’’は好ましくは、独立して、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール及び置換または非置換のヘテロアリールから選択されている。本明細書に開示されている化合物に、2つ以上のR基が含まれるときには、例えば、各R基は独立して選択されており、R’基、R’’基、R’’’基及びR’’’’基のうちの2つ以上が存在するときにも、それらの各基は、独立して選択されている。
2つ以上の置換基は任意に連結して、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を形成していてよい。そうとは限らないが、このようないわゆる環形成置換基は典型的には、環状母体構造に結合していることが分かっている。実施形態では、環形成置換基は、母体構造の隣接環員に結合している。例えば、環状母体構造の隣接環員に結合している2つの環形成置換基によって、縮合環構造が作られる。別の実施形態では、環形成置換基は、母体構造の1つの環員に結合している。例えば、環状母体構造の1つの環員に結合している2つの環形成置換基によって、スピロ環構造が作られる。さらに別の実施形態では、環形成置換基は、母体構造の非隣接環員に結合している。
アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは任意に、−T−C(O)−(CRR’)q−U−という式の環を形成してよく、式中、TとUは独立して、−NR−、−O−、−CRR’−または単結合であり、qは、0〜3の整数である。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは任意に、−A−(CH2)r−B−という式の置換基で置き換えられていてもよく、式中、AとBは独立して、−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)2NR’−または単結合であり、rは、1〜4の整数である。このように形成された新たな環の単結合のうちの1つは任意に、二重結合で置き換えられていてもよい。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは任意に、−(CRR’)s−X’−(C’’R’’’)d−という式の置換基で置き換えられていてもよく、式中、sとdは独立して、0〜3の整数であり、X’は、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−または−S(O)2NR’−である。この置換基のR、R’、R’’及びR’’’は好ましくは、独立して、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のアリール及び置換または非置換のヘテロアリールから選択されている。
本明細書で使用する場合、「ヘテロ原子」または「環ヘテロ原子」という用語には、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)及びケイ素(Si)が含まれるように意図されている。
「置換基」とは、本明細書で使用する場合、下記の部分から選択した基を意味する。
(A)オキソ、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、非置換アルキル(例えば、C1−C8アルキル、C1−C6アルキルもしくはC1−C4アルキル)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2〜8員ヘテロアルキル、2〜6員ヘテロアルキルもしくは2〜4員ヘテロアルキル)、非置換シクロアルキル(例えば、C3−C8シクロアルキル、C3−C6シクロアルキルもしくはC5−C6シクロアルキル)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員ヘテロシクロアルキル、3〜6員ヘテロシクロアルキルもしくは5〜6員ヘテロシクロアルキル)、非置換アリール(例えば、C6−C10アリール、C10アリールもしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5〜10員ヘテロアリール、5〜9員ヘテロアリールもしくは5〜6員ヘテロアリール)
(B)下記から選択した少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリール
(i)オキソ、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、非置換アルキル(例えば、C1−C8アルキル、C1−C6アルキルもしくはC1−C4アルキル)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2〜8員ヘテロアルキル、2〜6員ヘテロアルキルもしくは2〜4員ヘテロアルキル)、非置換シクロアルキル(例えば、C3−C8シクロアルキル、C3−C6シクロアルキルもしくはC5−C6シクロアルキル)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員ヘテロシクロアルキル、3〜6員ヘテロシクロアルキルもしくは5〜6員ヘテロシクロアルキル)、非置換アリール(例えば、C6−C10アリール、C10アリールもしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5〜10員ヘテロアリール、5〜9員ヘテロアリールもしくは5〜6員ヘテロアリール)、ならびに、
(ii)下記から選択した少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリール
(a)オキソ、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、非置換アルキル(例えば、C1−C8アルキル、C1−C6アルキルもしくはC1−C4アルキル)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2〜8員ヘテロアルキル、2〜6員ヘテロアルキルもしくは2〜4員ヘテロアルキル)、非置換シクロアルキル(例えば、C3−C8シクロアルキル、C3−C6シクロアルキルもしくはC5−C6シクロアルキル)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員ヘテロシクロアルキル、3〜6員ヘテロシクロアルキルもしくは5〜6員ヘテロシクロアルキル)、非置換アリール(例えば、C6−C10アリール、C10アリールもしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5〜10員ヘテロアリール、5〜9員ヘテロアリールもしくは5〜6員ヘテロアリール)と、
(b)オキソ、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、非置換アルキル(例えば、C1−C8アルキル、C1−C6アルキルもしくはC1−C4アルキル)、非置換ヘテロアルキル(例えば、2〜8員ヘテロアルキル、2〜6員ヘテロアルキルもしくは2〜4員ヘテロアルキル)、非置換シクロアルキル(例えば、C3−C8シクロアルキル、C3−C6シクロアルキルもしくはC5−C6シクロアルキル)、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員ヘテロシクロアルキル、3〜6員ヘテロシクロアルキルもしくは5〜6員ヘテロシクロアルキル)、非置換アリール(例えば、C6−C10アリール、C10アリールもしくはフェニル)、または非置換ヘテロアリール(例えば、5〜10員ヘテロアリール、5〜9員ヘテロアリールもしくは5〜6員ヘテロアリール)から選択した少なくとも1つ置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール
「サイズ限定置換基(size−limited substituent)」または「サイズ限定置換基(size−limited substituent group)」とは、本明細書で使用する場合、「置換基」に関して上記したすべての置換基であって、その置換または非置換のアルキルがそれぞれ、置換または非置換のC1−C20アルキルであり、置換または非置換のヘテロアルキルがそれぞれ、置換または非置換の2〜20員ヘテロアルキルであり、置換または非置換のシクロアルキルがそれぞれ、置換または非置換のC4−C8シクロアルキルであり、置換または非置換のヘテロシクロアルキルがそれぞれ、置換または非置換の4〜8員ヘテロシクロアルキルである置換基から選択した基を意味する。
「低級置換基(lower substituent)」または「低級置換基(lower substituent group)」とは、本明細書で使用する場合、「置換基」に関して上記したすべての置換基であって、その置換または非置換のアルキルがそれぞれ、置換または非置換のC1−C8アルキルであり、置換または非置換のヘテロアルキルがそれぞれ、置換または非置換の2〜8員ヘテロアルキルであり、置換または非置換のシクロアルキルがそれぞれ、置換または非置換のC5−C7シクロアルキルであり、置換または非置換のヘテロシクロアルキルがそれぞれ、置換または非置換の5〜7員ヘテロシクロアルキルである置換基から選択した基を意味する。
実施形態では、本発明の化合物において説明されている被置換基はそれぞれ、少なくとも1つの置換基で置換されている。さらに具体的には、実施形態では、本発明の化合物において説明されている置換アルキル、置換ヘテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、置換ヘテロアリール、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、置換シクロアルキレン、置換ヘテロシクロアルキレン、置換アリーレン及び/または置換ヘテロアリーレンはそれぞれ、少なくとも1つの置換基で置換されている。実施形態では、これらの基の少なくとも1つまたはすべては、少なくとも1つのサイズ限定置換基で置換されている。実施形態では、これらの基の少なくとも1つまたはすべては、少なくとも1つの低級置換基で置換されている。
本発明の化合物の実施形態では、置換もしくは非置換のアルキルはそれぞれ、置換もしくは非置換のC1−C20アルキルであってよく、置換もしくは非置換のヘテロアルキルはそれぞれ、置換もしくは非置換の2〜20員ヘテロアルキルであり、置換もしくは非置換のシクロアルキルはそれぞれ、置換もしくは非置換のC3−C8シクロアルキルであり、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルはそれぞれ、置換もしくは非置換の3〜8員ヘテロシクロアルキルであり、置換もしくは非置換のアリールはそれぞれ、置換もしくは非置換のC6−C10アリールであり、及び/または置換もしくは非置換のヘテロアリールはそれぞれ、置換もしくは非置換の5〜10員ヘテロアリールである。本発明の化合物の実施形態では、置換もしくは非置換のアルキレンはそれぞれ、置換もしくは非置換のC1−C20アルキレンであり、置換もしくは非置換のヘテロアルキレンはそれぞれ、置換もしくは非置換の2〜20員ヘテロアルキレンであり、置換もしくは非置換のシクロアルキレンはそれぞれ、置換もしくは非置換のC3−C8シクロアルキレンであり、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレンはそれぞれ、置換もしくは非置換の3〜8員ヘテロシクロアルキレンであり、置換もしくは非置換のアリーレンはそれぞれ、置換もしくは非置換のC6−C10アリーレンであり、及び/または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンはそれぞれ、置換もしくは非置換の5〜10員ヘテロアリーレンである。
実施形態では、置換もしくは非置換のアルキルはそれぞれ、置換もしくは非置換のC1−C8アルキルであり、置換もしくは非置換のヘテロアルキルはそれぞれ、置換もしくは非置換の2〜8員ヘテロアルキルであり、置換もしくは非置換のシクロアルキルはそれぞれ、置換もしくは非置換のC3−C7シクロアルキルであり、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルはそれぞれ、置換もしくは非置換の3〜7員ヘテロシクロアルキルであり、置換もしくは非置換のアリールはそれぞれ、置換もしくは非置換のC6−C10アリールであり、及び/または置換もしくは非置換のヘテロアリールはそれぞれ、置換もしくは非置換の5〜9員ヘテロアリールである。実施形態では、置換もしくは非置換のアルキレンはそれぞれ、置換もしくは非置換のC1−C8アルキレンであり、置換もしくは非置換のヘテロアルキレンはそれぞれ、置換もしくは非置換の2〜8員ヘテロアルキレンであり、置換もしくは非置換のシクロアルキレンはそれぞれ、置換もしくは非置換のC3−C7シクロアルキレンであり、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレンはそれぞれ、置換もしくは非置換の3〜7員ヘテロシクロアルキレンであり、置換もしくは非置換のアリーレンはそれぞれ、置換もしくは非置換のC6−C10アリーレンであり、及び/または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンはそれぞれ、置換もしくは非置換の5〜9員ヘテロアリーレンである。実施形態では、化合物は、本明細書に示されている化学種である。
「a」または「an」という用語は、本明細書で使用する場合、1つ以上を意味する。加えて、「a+[名詞]で置換されている」という語句は、本明細書で使用する場合、その指定の基が、指定の置換基のいずれかまたはすべてのうちの1つ以上で置換されていてよいことを意味する。例えば、アルキル基またはヘテロアリール基のような基が、「非置換のC1−C20アルキルまたは非置換の2〜20員ヘテロアルキルで置換されている」場合には、その基は、非置換のC1−C20アルキルを1つ以上、及び/または非置換の2〜20員ヘテロアルキルを1つ以上含んでよい。さらに、ある部分がR置換基で置換されている場合には、その基は、「Rで置換されている」と称してよい。ある部分が、Rで置換されている場合、その部分は、少なくとも1つのR置換基で置換されており、各R置換基は任意に異なる基である。
「求核部分」という用語は、求電子部に電子を1つ以上(例えば2個)与えることができる化学種または官能基を指す。実施形態では、求核部分とは、化学反応において求電子部に電子を与えて、結合を形成できる化学種または官能基を指す。
「求電子部分」という用語は、電子を1つ以上(例えば2個)受け取ることができる化学種または官能基を指す。実施形態では、求電子部分とは、空の軌道を有するので、化学反応において、電子を受け取って結合を形成できる化学種または官能基を指す。
「オリゴグリコール部分」という用語は、
という一般式の化学的部分であって、式中、R
400が、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、n300が、1以上の整数である化学部分を指す。いくつかの例では、R
400は、Hまたはアルキルである。
本開示の化合物の説明は、当業者に知られている化学結合の原理によって制限される。したがって、ある基が、多くの置換基のうちの1つ以上によって置換されていてよい場合、その置換は、化学結合の原理に沿うように、また、本質的には不安定ではなく、及び/または周囲条件下(水性条件、中性条件及びいくつかの既知の生理的条件など)では不安定となる可能性が高いことが当業者に知られている化合物となるように選択する。例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールは、当業者に知られている化学結合の原理に従って、環ヘテロ原子を介して、その分子の残部に結合しており、それによって、本質的に不安定な化合物が回避される。
別段の定義のない限り、本明細書で用いられている技術用語と科学用語は、当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY1994)、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照されたい。本開示の実施の際には、本明細書に記載されている方法、器具及び材料と類似または同等の方法、器具及び材料のいずれかを用いることができる。下記の定義は、本明細書で頻繁に用いられている特定の用語への理解を促す目的で示されており、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。
「核酸」とは、一本鎖、二本鎖または多本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドとそれらのポリマー、またはそれらの相補体を指す。「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「オリゴ」などの用語は、通常かつ慣習的な意味においては、ヌクレオチドの直鎖状配列を指す。「ヌクレオチド」という用語は、通常かつ慣習的な意味においては、ポリヌクレオチドの1単位、すなわちモノマーを指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはそれらの修飾型であることができる。本発明で想定されているポリヌクレオチドの例としては、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、ならびに一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA及び二本鎖RNAの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。本発明で想定されている核酸、例えばポリヌクレオチドの例としては、いずれかのタイプのRNA、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化RNA(tracrRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、ミニサークルDNA、ゲノムDNA(gDNA)及びこれらのいずれかの断片が挙げられる。ポリヌクレオチドとの関連では、「デュプレックス」という用語は、通常かつ慣習的な意味においては、二本鎖状態を指す。核酸は、直鎖状であることも分岐鎖状であることもできる。例えば、核酸は、直鎖のヌクレオチドであることができ、あるいは、核酸は、例えば、1つ以上のヌクレオチドアームまたはヌクレオチド分岐鎖を有するように、分岐鎖状であることもできる。任意に、分岐鎖状の核酸は、デンドリマーなどのような高次構造を形成するように、繰り返し分岐している。
核酸(例えば、ホスホチオエート主鎖を有する核酸を含む)は、反応性部分を1つ以上含むことができる。本明細書で使用する場合、反応性部分という用語には、共有結合、非共有結合またはその他の相互作用を通じて、別の分子、例えば核酸またはポリペプチドと反応できるいずれかの基が含まれる。例として、核酸は、共有結合、非共有結合またはその他の相互作用を通じて、タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸と反応するアミノ酸反応性部分を含むことができる。
この用語には、既知のヌクレオチドアナログまたは修飾された主鎖残基もしくは連結を含む核酸であって、合成、天然、及び非天然のものであり、基準の核酸と類似の結合特性を持ち、基準のヌクレオチドと同様の形で代謝される核酸も含まれる。このようなアナログの例としては、例えばホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロチオエート(ホスホチオエートとしても知られており、ホスフェートにおける酸素と置き換わった二重結合硫黄を有する)、ホスホロジチオエート、ホスホノカルボン酸、ホスホノカルボキシレート、ホスホノ酢酸、ホスホノギ酸、メチルホスホネート、ホウ素ホスホネートまたはO−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein,OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH,Oxford University Pressを参照されたい)と、5−メチルシチジンまたはプソイドウリジンにおけるような、ヌクレオチド塩基への修飾と、ペプチド核酸主鎖と、ペプチド核酸結合を含むホスホジエステル誘導体が挙げられるが、これらに限らない。他のアナログ核酸としては、米国特許第5,235,033号、同第5,034,506号及びChapters 6 and 7,ASC Symposium Series 580,CARBOHYDRATE MODIFICATIONS IN ANTISENSE RESEARCH,Sanghui & Cook,eds.に記載されているものを含め、陽性主鎖、非イオン性主鎖、修飾糖及び非リボース主鎖を有するもの(例えば、当該技術分野において知られているようなホスホロジアミデートモルホリノオリゴまたはロックト核酸(LNA))が挙げられる。炭素環式糖を1つ以上含む核酸も、核酸の一定義に含まれる。リボース−ホスフェート主鎖の修飾は、様々な理由で、例えば、生理的環境において、またはバイオチップのプローブとして、その分子の安定性と半減期を向上させるために行ってよい。天然の核酸とアナログの混合物を作製することができ、あるいは、異なる核酸アナログの混合物と、天然の核酸とアナログの混合物を作製してもよい。実施形態では、DNAにおけるインターヌクレオチド結合部は、ホスホジエステル、ホスホジエステル誘導体またはこの両方が組み合わさったものである。
核酸は、非特異的配列を含むことができる。本明細書で使用する場合、「非特異的配列」という用語は、いずれかの他の核酸配列と相補的でないか、または部分的に相補的であるに過ぎないように設計されている一連の残基を含む核酸配列を指す。例としては、非特異的核酸配列は、細胞または生物と接触したときに、阻害性核酸として機能しない核酸残基の配列である。「阻害性核酸」とは、標的核酸(例えば、タンパク質に翻訳可能なmRNA)に結合して、その標的核酸の転写(例えば、DNAからmRNAへの転写)を低下させたり、標的核酸(例えばmRNA)の翻訳を低下させたり、または転写産物のスプライシングを変化させたり(例えば一本鎖モルホリノオリゴ)できる核酸(例えば、DNA、RNA、ヌクレオチドアナログのポリマー)である。実施形態では、核酸はRNA(例えばmRNA)である。実施形態では、核酸は、10〜100,000塩基の長さである。実施形態では、核酸は、50〜10,000塩基の長さである。実施形態では、核酸は、50〜5,000塩基の長さである。実施形態では、核酸は、50〜1,000塩基の長さである。
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを指すように同義的に用いられており、そのポリマーは、アミノ酸からなっていない部分にコンジュゲートしていてもよい。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーと、天然アミノ酸ポリマーと、非天然アミノ酸ポリマーに適用される。これらの用語は、大環状ペプチド、ペプチド以外の官能基で修飾したペプチド、ペプチド模倣体、ポリアミド及びマクロラクタムにも適用される。「融合タンパク質」とは、1つの部分として組み換え発現される2つ以上の別々のタンパク質配列をコードするキメラタンパク質を指す。
「ペプチジル」と「ペプチジル部分」という用語は、一価のペプチドを意味する。
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸、合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の形で機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるものと、それらのアミノ酸が後で修飾されたもの、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート及びO−ホスホセリンである。アミノ酸アナログとは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素と、カルボキシル基と、アミノ基と、R基に結合しているα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このようなアナログは、修飾されたR基を有するか(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様の形で機能する化学化合物を指す。「非天然(non−naturally occurring)アミノ酸」と「非天然(unnatural)アミノ酸」という用語は、天然では見られないアミノ酸アナログと、合成アミノ酸と、アミノ酸模倣体を指す。
アミノ酸は、本明細書では、広く知られている3文字の記号、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている1文字の記号のいずれかによって表されていることがある。ヌクレオチドも同様に、広く認められている1文字の略号で表されていることがある。
「接触させる」とは、その単純明快な意味に従って用いられており、少なくとも2つの別個の種(例えば、生体分子または細胞を含む化学化合物)が反応、相互作用または物理的に触れるように、それらを十分に近接させるプロセスを指す。しかし、当然のことながら、得られる反応生成物は、加えた試薬間の反応から直接得ることも、加えた試薬の1つ以上に由来する中間体であって、その反応混合物において生成できる中間体から得ることもできる。実施形態では、接触させることには、例えば、核酸をエンドヌクレアーゼと相互作用させることが含まれる。
「コントロール」試料または「コントロール」値とは、試験試料と比較するための対照、通常は、既知の対照としての役割を果たす試料を指す。例えば、試験試料は、試験条件、例えば、試験化合物の存在下で得て、既知の条件、例えば、試験化合物の非存在下(ネガティブコントロール)または既知の化合物の存在下(ポジティブコントロール)で得られた試料と比較することができる。コントロールとは、数多くの試験または結果から得た平均値であることもできる。いずれかの数のパラメーターの評価のために、コントロールを設計できることを当業者は認識するであろう。例えば、コントロールは、薬理学的データ(例えば半減期)または治療上の尺度(例えば副作用の比較)に基づき、治療効果を比較する目的で定めることができる。当業者は、所定の状況において、どの標準的コントロールが最適であるか分かるであろうし、標準的コントロール値の比較に基づき、データを解析できるであろう。標準的コントロールは、データの有意性(例えば統計的有意性)の判断にも有益である。例えば、標準的コントロールにおいて、所定のパラメーター値のばらつきが大きい場合、試験試料における変動は、有意とみなさないことになる。
「標識」または「検出可能部分」とは、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識としては、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで広く用いられているようなもの)、ビオチン、ジゴキシゲニンまたはハプテンと、例えば、標的ペプチドとの特異的反応性を持つペプチドまたは抗体に放射性標識を導入することで検出可能にできるタンパク質またはその他の物質が挙げられる。抗体を標識にコンジュゲートする方法のうち、当該技術分野において知られているいずれかの適切な方法を用いてよい(例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques 1996,Academic Press,Inc.,San Diegoに記載されている方法を用いる)。
「生体試料」または「試料」とは、対象もしくは患者から得たか、または対象もしくは患者に由来する材料を指す。生体試料には、生検試料及び解剖試料のような組織切片と、組織学上の目的で採取した凍結切片が含まれる。このような試料としては、血液、血液画分、血液生成物(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球細胞など)、唾液のような体液、組織、培養細胞(例えば、初代培養液、外植片及びトランスフォーメーション細胞)、便、尿、滑液、関節組織、滑膜組織、滑膜細胞、線維芽細胞様滑膜細胞、マクロファージ様滑膜細胞、免疫細胞、造血細胞、線維芽細胞、マクロファージ、T細胞などが挙げられる。生体試料は典型的には、哺乳類動物(霊長類動物、例えば、チンパンジーもしくはヒト、ウシ、イヌ、ネコ、齧歯類動物(例えば、モルモット、ラット、マウスなど)、ウサギ、またはトリなど)、爬虫類、あるいは魚類のような真核生物から得る。
「細胞」とは、本明細書で使用する場合、そのゲノムDNAを保持または複製するのに十分な代謝機能またはその他の機能を果たす細胞を指す。細胞は、例えば、インタクトな膜の存在(特定の色素によって染色)、子孫を作る能力、または配偶子の場合には、第2の配偶子と合わさって、生存可能な胎児を生み出す能力を含め、当該技術分野における周知の方法によって同定できる。細胞としては、原核細胞と真核細胞を挙げてよい。原核細胞としては、細菌が挙げられるが、これらに限らない。真核細胞としては、酵母細胞と、植物と動物に由来する細胞、例えば、哺乳類動物細胞、昆虫(例えばスポドプテラ)細胞及びヒト細胞が挙げられるが、これらに限らない。
「幹細胞(stem cell)」または「幹細胞(stem cells)」という用語は、多能性であることにより、いくつかのタイプの分化細胞を生成できるクローン性自己再生性細胞集団を指す。
「遺伝子」という用語は、タンパク質の産生に関与するDNAセグメントを意味し、コード領域の前後の領域(リーダー及びトレーラー)と、個々のコードセグメント(エキソン)の間にある介在配列(イントロン)を含む。リーダーとトレーラーとイントロンには、遺伝子の転写と翻訳の際に必要な調節エレメントが含まれる。さらに、「タンパク質遺伝子産物」は、特定の遺伝子から発現したタンパク質である。
「発現」または「発現した」という語句は、遺伝子に関して本明細書で使用する場合、その遺伝子の転写産物及び/または翻訳産物を意味する。細胞におけるDNA分子の発現レベルは、細胞に存在する対応のmRNAの量、またはその細胞によって産生されたDNAによってコードされたタンパク質の量のいずれかに基づき割り出してよい(Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,18.1−18.88)。
トランスフェクション遺伝子の発現は、細胞において、一過性または安定的に行うことができる。「一過性発現」では、細胞分裂の際に、トランスフェクション遺伝子は娘細胞には伝わらない。その遺伝子の発現は、トランスフェクション細胞に限られるので、その遺伝子の発現は、時間とともに失われる。これに対して、トランスフェクション細胞に、選択時の利便性を付与する別の遺伝子と、トランスフェクション遺伝子をコトランスフェクションすると、トランスフェクション遺伝子の安定発現を行うことができる。このような選択上の利便性は、その細胞に見られる特定の毒素に対する耐性であってよい。
「プラスミド」という用語は、遺伝子及び/または遺伝子の発現に必要な調節エレメントをコードする核酸分子を指す。プラスミドからの遺伝子の発現は、シスまたはトランスで行うことができる。遺伝子がシスで発現する場合、遺伝子と調節エレメントは、同じプラスミドによってコードされる。トランスでの発現とは、遺伝子と調節エレメントが別のプラスミドによってコードされる場合を指す。
「外因性」という用語は、所定の細胞外または所定の生物外に由来する分子または物質(例えば、核酸またはタンパク質)を指す。これに対して、「内因性」という用語は、所定の細胞もしくは生物に天然に備わっているか、または所定の細胞もしくは生物内に由来する分子または物質を指す。
「ベクター」とは、別の核酸を細胞内に輸送できる核酸である。ベクターは、適切な環境にあるときに、そのベクターによって運ばれる1つ以上の遺伝子によってコードされる1つまたは複数のタンパク質の発現を誘導できる。
「コドン最適化」という用語は、様々な宿主へのトランスフォーメーション用の核酸分子の遺伝子またはコード領域に関する場合、DNAによってコードされるポリペプチドを改変せずに、宿主生物の典型的なコドン使用頻度を反映するように、その核酸分子の遺伝子またはコード領域におけるコドンを改変することを指す。このような最適化としては、少なくとも1つ、2つ以上または有意な数のコドンを、宿主生物の遺伝子での使用頻度がより高い1つ以上のコドンに置き換えることが挙げられる。広範な動物、植物及び微生物種に利用可能な多数の遺伝子配列を踏まえれば、相対的なコドン使用頻度を算出可能である。コドン使用頻度表は、例えば、www.kazusa.or.jp/codon/で入手可能な「Codon Usage Database」で容易に入手可能である。当業者は、各生物におけるコドン使用頻度またはコドン優先度に関する知見を用いることによって、いずれかの所定のポリペプチド配列にその頻度を適用して、そのポリペプチドをコードするが、所定の種に最適なコドンを使用するコドン最適化コード領域の核酸断片を作製できる。コドン最適化コード領域は、当業者に知られている様々な方法によって設計できる。
「細胞培養液」は、生体外にある細胞のインビトロ集団である。細胞培養液は、細胞バンクもしくは動物から単離した初代細胞、またはその細胞源の1つに由来するとともに、長期インビトロ培養用に不死化されている二代細胞から樹立できる。
「トランスフェクション」、「トランスダクション」、「トランスフェクションすること」または「トランスダクションすること」という用語は、同義的に用いることができ、核酸分子及び/またはタンパク質を細胞に導入するプロセスとして定義する。核酸は、ウイルス以外またはウイルスをベースとする方法を用いて、細胞に導入してよい。その核酸分子は、完全なタンパク質またはその機能部分をコードする配列であることができる。典型的には,核酸ベクターは、タンパク質の発現に必要なエレメント(例えば、プロモーター、転写開始部位など)を有する。ウイルス以外によるトランスフェクション方法には、核酸分子を細胞に導入するための送達系として、ウイルスDNAまたはウイルス粒子を用いないいずれかの適切な方法が含まれる。ウイルス以外による例示的なトランスフェクション方法としては、カルシウムホスフェートトランスフェクション、リポソームトランスフェクション、ヌクレオフェクション、ソノポレーション、ヒートショックを通じたトランスフェクション、マグネトフェクション及びエレクトロポレーションが挙げられる。本明細書に記載されている方法では、ウイルスベースの方法に関しては、いずれかの有用なウイルスベクターを用いることができる。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限らない。いくつかの態様では、この核酸分子は、当該技術分野において周知な標準的な手順に従って、レトロウイルスベクターを用いて、細胞に導入する。「トランスフェクション」または「トランスダクション」という用語は、外部環境からタンパク質を細胞に導入することも指す。典型的には、タンパク質のトランスダクションまたはトランスフェクションは、目的のタンパク質の細胞膜を通過できるペプチドまたはタンパク質の結合に依存する。例えば、Ford et al.(2001)Gene Therapy 8:1−4及びProchiantz(2007)Nat.Methods 4:119−20を参照されたい。
本明細書で使用する場合、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語は、2つの分子が、生理的条件下で比較的安定である複合体(例えば、リボ核タンパク質及びトランスフェクションペプチド)を形成することを指す。
リガンドが別の種(例えば、タンパク質もしくは核酸)と結合するかを判断したり、及び/またはそのようなリガンドと種との相互作用の親和性を判断したりする方法は、当該技術分野において知られている。例えば、タンパク質へのリガンドの結合は、様々な技法(下記に限らないが、ウエスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴法(例えば、BIAcoreシステム、Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)、等温滴定熱測定(ITC)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)など)を用いて検出及び/または定量できる。
リガンドの免疫特異的結合と交差反応性を解析するのに用いることのできるイムノアッセイとしては、ウエスタンブロット、RIA、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射定量アッセイ及び蛍光イムノアッセイのような技法を用いる競合アッセイ系及び非競合アッセイ系が挙げられるが、これらに限らない。このようなアッセイは常法であり、当該技術分野において周知である。
「抗体」という用語は、免疫グロブリン遺伝子またはその機能的断片によってコードされるポリペプチドであって、抗原に特異的に結合して認識するポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子は、κ定常領域遺伝子、λ定常領域遺伝子、α定常領域遺伝子、γ定常領域遺伝子、δ定常領域遺伝子、ε定常領域遺伝子、及びμ定常領域遺伝子、ならびに莫大な数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεとして分類され、そして、これらの重鎖によって、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEという免疫グロブリンクラスが定められる。
「抗原」及び「エピトープ」という用語は、分子(例えばポリペプチド)の部分のうち、免疫系の成分、例えば、抗体、T細胞レセプターまたはナチュラルキラー(NK)細胞上のレセプターのような他の免疫レセプターによって特異的に認識される部分を同義的に指す。本明細書で使用する場合、「抗原」という用語には、抗原エピトープと、その抗原断片が含まれる。
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、テトラマーを有することができる。各テトラマーは、2つの同一のポリペプチド鎖対で構成されており、各対は、1本の「軽」鎖(約25kDa)と1本の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のN末端によって、抗原認識を主に担う約100〜110個以上のアミノ酸の可変領域が定められている。「可変重鎖」「VH」または「VH」という用語は、Fv、scFv、dsFvまたはFabを含め、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指し、「可変軽鎖」、「VL」または「VL」という用語は、Fv、scFv、dsFvまたはFabを含め、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
抗体機能的断片の例としては、完全抗体分子、抗体断片(Fv、一本鎖Fv(scFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、Fab、F(ab)2’及びこれらをいずれかに組み合わせたものなど)、または免疫グロブリンペプチドのいずれかの他の機能部分のうち、標的抗原に結合できる部分が挙げられるが、これらに限らない(例えば、FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY(Paul ed.,4th ed.2001を参照されたい)。当業者には分かるように、様々な抗体断片は、様々な方法、例えば、ペプシンのような酵素によるインタクト抗体の消化、またはデノボ合成によって得ることができる。抗体断片は、化学的に、または組み換えDNA手法を用いることによってデノボ合成することが多い。したがって、「抗体」という用語には、本明細書で使用する場合、全抗体の改変によって作製される抗体断片、組み換えDNA手法を用いてデノボ合成される抗体断片(例えば一本鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを用いて同定される抗体断片が含まれる(例えば、McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552を参照されたい)。「抗体」という用語には、二価または二重特異性分子、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディも含まれる。二価及び二重特異性分子は、例えば、Kostelny et al.(1992)J.Immunol.148:1547、Pack and Pluckthun(1992)Biochemistry 31:1579、Hollinger et al.(1993),PNAS.USA90:6444、Gruber et al.(1994)J Immunol.152:5368、Zhu et al.(1997)Protein Sci.6:781、Hu et al.(1996)Cancer Res.56:3055、Adams et al.(1993)Cancer Res.53:4026及びMcCartney,et al.(1995)Protein Eng.8:301に記載されている。
本明細書で使用する場合、「崩壊」、「自壊」、「自壊機序」、「崩壊性部分」、「崩壊性ドメイン」などの用語は、本明細書では、化学基が分子内反応を経ることによって、その化学基が化学転位を起こし、その転位した化学基が、結合していた化合物残部から放出されるようにできることを指す。「pH感受性」崩壊性ドメインとは、低めのpH範囲では崩壊反応を起こし、その低めのpH範囲(例えば、pH約1〜5、pH約5〜7またはpH約7〜10)の外では、崩壊反応を実質的に起こさない化学基を指す。実施形態では、低めのpH範囲は、pH1〜3、pH2〜4、pH3〜5、pH4〜6、pH5〜7、pH6〜8、pH7〜9またはpH8〜10である。実施形態では、pH感受性崩壊性領域は、カチオン性αアミノエステル(オリゴ(α−アミノエステル))を含む。実施形態では、カチオン性αアミノエステルのカチオン性成分は、正に帯電した窒素原子(例えばカチオン性アミン)である。実施形態では、カチオン性αアミノエステルのカチオン性成分は、グアニジニウム基ではない。実施形態では、カチオン性αアミノエステルのカチオン性成分は、ピペリジニウム基ではない。
「細胞透過性複合体」などの用語は、通常かつ慣習的な意味においては、細胞(真核細胞または原核細胞などの生体細胞)を透過できる化学複合体(例えば、本明細書に開示されている複合体または組成物と、その実施形態)を指す。実施形態では、細胞透過性複合体は、カチオン性両親媒性ポリマーにイオン結合している核酸を含む。実施形態では、この核酸は実質的に、カチオン性両親媒性ポリマーの非存在下では、細胞を透過できない。したがって、実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、細胞内への核酸の輸送を促す。本明細書で使用する場合、「カチオン性電荷変動性放出性トランスポーター」、「CART」などの用語は、本明細書に開示されている細胞透過性複合体を指す。本発明のCART化合物は、カチオン性両親媒性ポリマー成分内のpH感受性崩壊性ドメインの作用(細胞内pHに応答して反応することによって、核酸を細胞内で放出する作用)を通じて、細胞内で核酸成分を放出できる。実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、細胞内で速やかに分解する(例えば、pH7.4において、T1/2は6時間未満)。少なくともいくつかの実施形態では、ポリプレックス、複合体、静電的複合体、CART/mRNA複合体、CART/オリゴヌクレオチド複合体及びナノ粒子は、細胞透過性複合体を指すように、同義的に用いることができる。
「両親媒性ポリマー」という用語は、本明細書で使用する場合、親水性部分と疎水性部分の両方を含むポリマーを指す。実施形態では、親水性部分と疎水性部分は、1:1の質量比で存在する。実施形態では、親水性部分と疎水性部分は、1:2の質量比で存在する。実施形態では、親水性部分と疎水性部分は、1:5の質量比で存在する。実施形態では、親水性部分と疎水性部分は、2:1の質量比で存在する。実施形態では、親水性部分と疎水性部分は、5:1の質量比で存在する。両親媒性ポリマーは、ジブロックコポリマーであっても、トリブロックコポリマーであってもよい。実施形態では、両親媒性ポリマーは、2つの親水性部分(例えばブロック)と、1つの疎水性部分(例えばブロック)を含んでよい。
「親油性ポリマードメイン」などの用語(「脂質ブロック」という場合が多い)は、親水性ではない(例えば、単独では水に不溶である)カチオン性両親媒性ポリマー領域を指す。実施形態では、親油性ポリマードメインは、水溶性が低い。例えば、低水溶性は、約0.0005mg/mL〜約10mg/mLが水に溶解する親油性ポリマードメインの溶解性を指す。
「開始剤」という用語は、カチオン性両親媒性ポリマーを合成する反応に関与する化合物であって、ポリマー化反応を開始させる目的を有する化合物を指す。したがって、開始剤は典型的には、合成されるポリマーの末端に組み込まれている。例えば、カチオン性両親媒性ポリマーをもたらすために、1つの種類(式)のモノマーまたは2種以上のモノマー(例えば異なる2種類のモノマー)の複数の分子が、開始剤と反応できる。開始剤は、得られるポリマーの少なくとも一方の末端に存在でき、そのポリマーに存在する繰り返し(またはポリマー化)単位(複数可)を構成することはできない。
「疾患」または「状態」という用語は、対象の生存状態または健康状態であって、本発明で提供する化合物、医薬組成物または方法で治療できる状態を指す。この疾患は、自己免疫疾患、炎症性疾患、がん疾患、感染症、代謝性疾患、発達性疾患、心血管疾患、肝疾患、腸疾患、内分泌疾患、神経疾患またはその他の疾患であることができる。いくつかの例では、疾患は、がん(例えば、乳がん、卵巣がん、肉腫、骨肉腫、肺がん、膀胱がん、子宮頸がん、肝がん、腎臓がん、皮膚がん(例えばメルケル細胞がん)、睾丸がん、白血病、リンパ腫、頭頸部がん、大腸がん、前立腺がん、膵がん、メラノーマ、神経芽腫)である。
「感染」または「感染症」という用語は、細菌、ウイルス、真菌またはいずれかの他の病原微生物因子のような生物に起因し得る疾患または状態を指す。
本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、白血病、リンパ腫、メラノーマ、神経内分泌腫瘍、がん腫及び肉腫を含め、哺乳類動物で見られるあらゆる種類のがん、新生物または悪性腫瘍を指す。本発明で提供する化合物、医薬組成物または方法で治療してよい例示的ながんとしては、リンパ腫、肉腫、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、子宮頸がん、大腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、腎臓がん、骨髄腫、甲状腺がん、白血病、前立腺がん、乳がん(例えばトリプルネガティブ、ER陽性、ER陰性、化学療法耐性、ハーセプチン耐性、HER2陽性、ドキソルビシン耐性、タモキシフェン耐性、腺管がん、小葉がん、原発性、転移性)、卵巣がん、膵がん、肝がん(例えば肝細胞がん)、肺がん(例えば非小細胞肺がん、扁平上皮細胞肺がん、腺がん、大細胞肺がん、小細胞肺がん、カルチノイド、肉腫)、多形性膠芽腫、神経膠腫、メラノーマ、前立腺がん、去勢耐性前立腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、神経膠肉腫、卵巣がん、肺がん、扁平上皮細胞がん(例えば、頭部、頸部もしくは食道)、大腸がん、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫が挙げられる。追加の例としては、甲状腺がん、内分泌系がん、脳腫瘍、乳がん、頸がん、大腸がん、頭頚部がん、食道がん、肝がん、腎臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、メラノーマ、中皮腫、卵巣がん、肉腫、胃がん、子宮がんもしくは髄芽腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、神経膠腫、多形性膠芽腫、卵巣がん、横紋筋肉腫、原発性血小板血症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、がん、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱がん、前がん皮膚病変、睾丸がん、リンパ腫、甲状腺がん、神経芽腫、食道がん、尿生殖器管がん、悪性高カルシウム血症、子宮体がん、副腎皮質がん、膵臓内分泌部もしくは膵臓外分泌部の新生物、甲状腺髄様がん、甲状腺髄様がん、メラノーマ、大腸がん、甲状腺乳頭がん、肝細胞がん、乳頭パジェット病、葉状腫瘍、小葉がん、腺管がん、膵星細胞がん、肝星細胞がんまたは前立腺がんが挙げられる。
本明細書で定義されているように、「阻害」、「阻害する」、「阻害すること」などの用語は、分子(例えば、ポリヌクレオチドまたはタンパク質)の活性及び/または機能性に関しては、その阻害の非存在下におけるタンパク質の活性または機能と比べて、分子の活性または機能にマイナスの影響を及ぼす(例えば、分子の活性または機能を低下または低減する)ことを意味する。したがって、阻害には、少なくとも部分的に、刺激を部分的または全体的にブロックすること、活性化を低下、阻止または遅延すること、あるいは、シグナル伝達、または酵素活性、またはタンパク質もしくはポリヌクレオチドの量を不活化、脱感作またはダウンレギュレーションすることが含まれる。同様に、「インヒビター」とは、例えば、標的生体分子に結合したり、標的生体分子の活性を部分的または全体的にブロック、低下、阻止、遅延、不活化、脱感作またはダウンレギュレーションしたりすることによって、標的生体分子(すなわち、核酸、ペプチド、炭水化物、脂質または天然で見ることができるいずれかの他の分子)を阻害する化合物である。疾患の予防的処置との関連では、阻害とは、疾患または疾患の症状の低減を指す。
「治療」、「治療すること」及び「治療する」とは、薬剤によって疾患、障害または状態に働きかけて、その疾患、障害もしくは状態及び/またはその症状の有害なもしくはいずれかの他の望ましくない作用を低減または改善することとして定義する。治療が必要な状態もしくは対象「を治療すること」、または治療が必要な状態もしくは対象の「治療」とは、(1)症状の低減のような臨床結果を含む有益もしくは所望な結果を得るために手段を講じること、(2)疾患を阻害すること、例えば、疾患もしくはその臨床症状の発現を抑止もしくは低減すること、(3)疾患を軽減すること、例えば、疾患もしくはその臨床症状を退縮させること、または(4)疾患を遅延させることを指す。例えば、有益または所望な臨床結果としては、がん細胞の低減及び/または排除と、がん細胞の転移の予防及び/または低減が挙げられるが、これらに限らない。
「予防する」、「予防すること」または「予防」という用語は、疾患の関連では、疾患の症状をまだ経験したり、または示したりしていない対象において、疾患の臨床症状を発現させないことを指す。いくつかの例では、このような予防は、その疾患の素因を有するとみなすことのできる対象に行うことができるが、いくつかの他の例では、その対象は必ずしも、疾患に対する素因を有するとみなされていなくてもよい。
本明細書で使用する場合、「投与すること」とは、当業者に知られている様々な方法と送達系のいずれかを用いて、組成物を対象に物理的に導入することを指す。本明細書に記載されている組成物の好ましい投与経路としては、例えば注射または注入による静脈内投与経路、腹腔内投与経路、筋肉内投与経路、皮下投与経路、脊髄投与経路またはその他の非経口投与経路が挙げられる。「非経口投与」という語句は、本明細書で使用する場合、経腸投与と局所投与以外の、通常は注射による投与方法を意味し、静脈内注射及び注入、腹腔内注射及び注入、筋肉内注射及び注入、動脈内注射及び注入、髄腔内注射及び注入、リンパ内注射及び注入、病巣内注射及び注入、嚢内注射及び注入、眼窩内注射及び注入、心腔内注射及び注入、皮内注射及び注入、経気管注射及び注入、皮下注射及び注入、表皮下注射及び注入、関節内注射及び注入、被膜下注射及び注入、くも膜下注射及び注入、髄腔内注射及び注入、硬膜外注射及び注入、胸骨内注射及び注入、ならびにインビボエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限らない。あるいは、本明細書に記載されている組成物は、局所投与経路、表皮投与経路または粘膜投与経路のような非経口経路によって、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下または局所投与できる。また、投与は、例えば1回、複数回、及び/または1つ以上の長い期間にわたって行うことができる。
本明細書で使用する場合、「転移」、「転移性」及び「転移性がん」という用語は、同義的に用いることができ、増殖性疾患または障害、例えばがんが、1つの器官または別の非隣接器官もしくは身体部分から広がることを指す。がんは、発生部位、例えば乳房で生じ、その部位は、原発性腫瘍、例えば原発性乳がんという。原発性腫瘍または発生部位におけるいくつかのがん細胞は、その局部における周囲正常組織を透過及び浸潤する能力、及び/またはその系を循環しているリンパ系もしくは血管系の壁を透過して、体内の他の部位と組織に至る能力を得る。原発性腫瘍のがん細胞から形成される臨床的に検出可能な二次的な腫瘍は、転移性腫瘍または二次性腫瘍という。がん細胞が転移するとき、転移性腫瘍とその細胞は、元の腫瘍のものと同様であると推定されている。したがって、肺がんが乳房に転移する場合、乳房部位の二次性腫瘍は、異常肺細胞から構成されており、異常乳房細胞からは構成されていない。その乳房の二次性腫瘍は、転移性肺がんという。したがって、転移性がんという語句は、対象が原発性腫瘍を有するかまたは有していたとともに、1つ以上の二次性腫瘍を有する疾患を指す。非転移性がん、または転移性ではないがんである対象という語句は、対象が原発性腫瘍を有するが、1つ以上の二次性腫瘍を有さない疾患を指す。例えば、転移性肺がんとは、原発性肺腫瘍または原発性肺腫瘍の履歴を有するとともに、1つの第2の場所または複数の第2の場所、例えば乳房に、1つ以上の二次性腫瘍を有する対象の疾患を指す。
「抗がん剤」とは、抗がん活性を有する治療剤であって、がんの治療または予防に使用できる治療剤である。抗がん剤は、大分子であることも、小分子であることもできる。抗がん剤の例としては、抗体、小分子及び大分子、またはこれらを組み合わせたものが挙げられる。「抗がん活性」の例としては、がん細胞数の低減、がんの大きさの縮小、がん細胞の殺傷、転移の低減及び/または阻害、ならびにがん細胞の成長及び/または増殖の低減が挙げられるが、これらに限らない。
「関連する」または「〜と関連する」という用語は、疾患と関連する物質または物質の活性もしくは機能との関連では、疾患が、その物質もしくは物質の活性もしくは機能に(全体的または部分的に)起因し得るか、または疾患の症状が、その物質もしくは物質の活性もしくは機能に(全体的または部分的に)起因し得ることを意味する。この用語が、症状、例えば、疾患または状態と関連する症状との関連で用いられているときには、症状が、その症状を示す対象に存在する疾患または状態を示し得ることを意味する。
「対象」、「個体」、「宿主」または「それを必要とする対象」という用語は、疾患もしくは状態に罹患しているか、または将来、疾患もしくは状態を罹患する可能性のある生物を指す。「患者」という用語は、すでに疾患または状態を罹患している生物、例えば、疾患もしくは状態と診断されたか、または疾患もしくは状態と関連する症状が1つ以上ある患者を指す。非限定的な例としては、ヒト、その他の哺乳類動物、ウシ(bovine)、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ(cow)、シカ及び哺乳類動物以外のその他の動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。
「ワクチン」という用語は、特定の疾患または病原体に対する能動的獲得免疫及び/または治療効果(例えば治療)をもたらすことができる組成物を指す。ワクチンは典型的には、対象において、病原体または疾患、すなわち、標的病原体または標的疾患に対する免疫応答を誘導できる薬剤を1つ以上含む。その免疫原性剤は、体の免疫系を刺激して、標的病原体または標的疾患の存在の脅威または指標としてその薬剤を認識させることによって、その免疫系が、それ以降にその病原体に暴露されたときに、その病原体をいずれも、さらに容易に認識及び破壊できるように、免疫記憶を誘導する。ワクチンは、予防的である(例えば、自然もしくは病原体のいずれかによる将来の感染の影響、または素因を有する対象における、予想されるがんの発症を予防または改善する)ことも、治療的である(例えば、がんと診断された対象のがんを治療する)こともできる。ワクチンの投与は、ワクチン接種という。いくつかの例では、ワクチン組成物は、核酸、例えば、抗原分子(例えばペプチド)をコードするmRNAを対象に供給できる。対象において、ワクチン組成物によって送達する核酸は、抗原分子に発現して、その対象に、その抗原分子に対する免疫を獲得させることができる。感染症に対するワクチン接種との関連では、ワクチン組成物は、特定の病原体と関連する抗原分子、例えば、病原体(例えば、病原性細菌または病原性ウイルス)で発現することが知られている1つ以上のペプチドをコードするmRNAを供給できる。がんワクチンとの関連では、ワクチン組成物は、がんと関連する特定のペプチド、例えば、実質的にがん細胞においてのみ発現するか、または正常細胞よりも、がん細胞で高度に発現するペプチドをコードするmRNAを供給できる。対象は、がんワクチン組成物によるワクチン接種後、がんと関連するペプチドに対する免疫を有するとともに、がん細胞を特異的に殺傷することができる。
本明細書で用いられている「免疫応答」という用語には、「適応免疫応答」(「獲得免疫応答」としても知られている)が含まれ(ただし、これに限らない)、この適応免疫は、その免疫応答が標的とする特異的病原体または特異的種類の細胞に対する初期応答後に免疫記憶を惹起し、それ以降、標的に遭遇すると、増強された応答が、その標的に対して起こる。免疫記憶の誘導によって、ワクチン接種の土台を得ることができる。
「免疫原性」または「抗原性」という用語は、免疫応答性のある対象に投与すると、免疫応答、例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答、B細胞応答(例えば、エピトープと特異的に結合する抗体の産生)、NK細胞応答またはこれらがいずれかに組み合わさった応答を誘導する化合物または組成物を指す。したがって、免疫原性組成物または抗原組成物は、免疫応答性のある対象において、免疫応答を惹起できる組成物である。例えば、免疫原性組成物または抗原組成物は、免疫応答の標的となる病原体または特異的種類の細胞と関連する免疫原性エピトープを1つ以上含むことができる。加えて、免疫原性組成物は、抗原ポリペプチドの免疫原性エピトープを1つ以上コードする単離核酸コンストラクト(DNAまたはRNA)であって、そのエピトープ(複数可)を発現させるのに用いることのできる(そして、このポリペプチドまたは標的の病原体または細胞種と関連する関連ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するのに用いることのできる)単離核酸コンストラクトを含むことができる。
本発明で提供する方法に従って、対象に、本発明で提供する薬剤、組成物または複合体(これらはいずれも、本明細書では同義的に用いられている)(例えば、細胞透過性複合体またはワクチン組成物)のうちの1つ以上を有効量投与できる。「有効量」と「有効用量」という用語は、同義的に用いられている。「有効量」という用語は、所望の作用(例えば、核酸を細胞にトランスフェクションして、トランスフェクション核酸の、意図した成果を示すこと)をもたらすのに必要ないずれかの量として定義する。当業者は、その薬剤を投与する際の有効量とスケジュールを実験によって定めることができる。投与量範囲は、所望の作用、例えば、核酸のトランスフェクション、遺伝子発現の調節、遺伝子編集、幹細胞の誘導、免疫応答の誘導などを実現するのに十分に多い量である。投与量は、かなりの有害な副作用(望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応など)を引き起こすほど多くてはならない。概して、投与量は、年齢、状態、性別、疾患の種類、疾患もしくは障害の程度、投与経路、または他の薬物がレジメンに含まれるかによって変動し得るとともに、当業者が判断できる。いずれかの禁忌がある場合には、投与量は、個々の医師が調節できる。投与量は変動し得るとともに、1日または数日間、1回分以上の用量を毎日投与できる。指針は、所定のクラスの医薬品の適切な投与量に関する文献で見ることができる。例えば、有効量では、所定のパラメーターの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%または少なくとも100%の増減が見られ得る。有効性は、「〜倍」の増減として表すこともできる。例えば、治療上有効な量では、作用が、コントロールと比べて、少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、またはそれを超える程度であることができる。正確な用量と配合は、治療目的に左右されることがあり、当業者は、既知の技法を用いて、正確な用量と配合を確認できる(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1−3,1992)、Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999)、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Gennaro,Editor(2003)及びPickar,Dosage Calculations(1999))を参照されたい)。
「殺傷する」という用語は、がん治療に関しては、そのがん細胞またはがん細胞集団の少なくとも一部を死に至らしめることになるいずれかのタイプの操作を含むように意図されている。
細胞透過性複合体
第1の態様では、カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合している核酸を含む細胞透過性複合体であって、そのカチオン性両親媒性ポリマーが、pH感受性崩壊性ドメインを含む細胞透過性複合体を提供する。実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーにおいて、1つ以上の対イオン(例えばアニオン)が、正荷電に対する対荷電として存在してもよい。実施形態では、その核酸は、カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合している。実施形態では、その核酸は、カチオン性両親媒性ポリマーにイオン結合している。実施形態では、細胞透過性複合体は、任意に異なる核酸を複数(例えば、追加の核酸を1〜10個、追加の核酸を1〜5個、追加の核酸を1〜5個、追加の核酸を2個、または追加の核酸を1個)含む。実施形態では、その核酸はRNAである。実施形態では、その核酸はmRNAである。
実施形態では、細胞透過性複合体に存在する、カチオン性両親媒性ポリマー分子のカチオンの数と、核酸分子のアニオンの数の比率は、約1:1、約5:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、約102:1、約103:1、約104:1、約105:1、約106:1、約107:1、約108:1、約109:1、約1010:1もしくはこれよりも大きい比率、または上記の値の間のいずれかの範囲であることができる。別の実施形態では、細胞透過性複合体に存在する、核酸分子のアニオンの数と、カチオン性両親媒性ポリマー分子のカチオンの数の比率は、約1:1、約5:1、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、約10:1、約102:1、約103:1、約104:1、約105:1、約106:1、約107:1、約108:1、約109:1、約1010:1、もしくはこれよりも大きい比率、または上記の値の間のいずれかの範囲であることができる。いくつかの好ましい実施形態では、この比率は、核酸の1個の負荷電に対して、両親媒性ポリマー分子に約10個のカチオン性荷電である。別の実施形態は、核酸の1個の負荷電に対して、両親媒性ポリマー分子に5個のカチオン性荷電、または核酸の1個の負荷電に対して、両親媒性ポリマー分子に20個のカチオン性荷電を有することができる。
実施形態では、細胞透過性複合体に存在する、核酸分子の数と、カチオン性両親媒性ポリマー分子の数の比率は、約1:1、約10:1、約102:1、約103:1、約104:1、約105:1、約106:1、約107:1、約108:1、約109:1、約1010:1もしくはこれよりも大きい比率、または上記の値の間のいずれかの範囲であることができる。別の実施形態では、細胞透過性複合体に存在する、カチオン性両親媒性ポリマー分子のカチオンの数と、核酸分子の数の比率は、約1:1、約10:1、約102:1、約103:1、約104:1、約105:1、約106:1、約107:1、約108:1、約109:1、約1010:1もしくはこれよりも大きい比率、または上記の値の間のいずれかの範囲であることができる。
実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、カチオン性電荷変動性放出性トランスポーター(CART)であってよい。実施形態では、CARTは、電荷がカチオン性から中性、またはカチオン性からアニオン性のpH感受性変化を見せる一連のカチオン性配列を含むオリゴマー鎖を含んでよい。
実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、pH感受性崩壊性ドメインと親油性ポリマードメインを有する。実施形態では、その親油性ポリマードメインは、細胞透過、細胞送達及び/または細胞膜を超える輸送を促してよい。実施形態では、親油性ポリマードメインは、実質的に水に不溶であってよい(例えば、約0.0005mg/mL〜約10mg/mL未満で水に溶解する)。実施形態では、親油性ポリマードメインは、カチオン性両親媒性ポリマーのナノ粒子への凝集を促すことができる。実施形態では、このようなナノ粒子は、平均最長寸法が約50nm〜約500nmであってよい。実施形態では、親油性ポリマードメインは、エンドソームに進入して崩壊した後、カチオン性両親媒性ポリマー残部のエンドソームへの融合を促してよい。実施形態では、本開示の細胞透過性複合体は、核酸カーゴを分解しないように保護する。「核酸カーゴ」などの用語は、通常かつ慣習的な意味においては、本明細書に開示されている細胞透過性複合体とその実施形態による細胞内への輸送に望ましい種を指す。
実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、式(I):H−L1−[(LP1)z1−(IM)z2−(LP2)z3]z4−L2−H(I)を有し、式中、L1とL2は独立して、結合手、−C(O)O−、−O−、−S−、−NH−、−C(O)NH−、−NHC(O)−、−S(O)2−、−S(O)NH−、−NHC(O)NH−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンであり、LP1とLP2は独立して、結合手または親油性ポリマードメインであり、LP1またはLP2の少なくとも1つは、親油性ポリマードメインであり、IMは、pH感受性崩壊性ドメインであり、z1とz3とz4は独立して、0〜100の整数であり、z1またはz3の少なくとも1つは、0ではなく、z2は、2〜100の整数である。
実施形態では、L1は、置換または非置換のC1−C3アルキレンである。実施形態では、L1は、置換または非置換のメチレンである。実施形態では、L1は、置換もしくは非置換のC1−C6アルキレン、または置換もしくは非置換の2〜6員ヘテロアルキレンである。実施形態では、L1は、置換または非置換のC1−C3アルキレン、または置換もしくは非置換の2〜3員ヘテロアルキレンである。
実施形態では、L1は、置換もしくは非置換のアルキレン(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキレン(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリーレン(例えば、C6−C10もしくはフェニレン)、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、L1は、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキレンもしくは非置換アルキレン、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキレンもしくは非置換ヘテロアルキレン、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキレンもしくは非置換シクロアルキレン、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキレンもしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリーレンもしくは非置換アリーレン、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリーレンもしくは非置換ヘテロアリーレンである。実施形態では、L1は、非置換アルキレン、非置換ヘテロアルキレン、非置換シクロアルキレン、非置換ヘテロシクロアルキレン、非置換アリーレンまたは非置換ヘテロアリーレンである。実施形態では、L1は、非置換アルキレン(例えば、C1−C6アルキレン)である。実施形態では、L1は結合手である。
実施形態では、L2は、置換または非置換のC1−C3アルキレンである。実施形態では、L2は、置換または非置換のメチレンである。実施形態では、L2は、置換もしくは非置換のC1−C6アルキレン、または置換もしくは非置換の2〜6員ヘテロアルキレンである。実施形態では、L2は、置換もしくは非置換のC1−C3アルキレン、または置換もしくは非置換の2〜3員ヘテロアルキレンである。
実施形態では、L2は、置換もしくは非置換のアルキレン(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキレン(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリーレン(例えば、C6−C10もしくはフェニレン)、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、L2は、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキレンもしくは非置換アルキレン、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキレンもしくは非置換ヘテロアルキレン、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキレンもしくは非置換シクロアルキレン、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキレンもしくは非置換ヘテロシクロアルキレン、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリーレンもしくは非置換アリーレン、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリーレンもしくは非置換ヘテロアリーレンである。実施形態では、L2は、非置換アルキレン、非置換ヘテロアルキレン、非置換シクロアルキレン、非置換ヘテロシクロアルキレン、非置換アリーレンまたは非置換ヘテロアリーレンである。実施形態では、L2は、非置換アルキレン(例えば、C1−C6アルキレン)である。実施形態では、L2は、結合手である。
実施形態では、z2は、2〜90(例えば、5〜90、10〜90もしくは20〜90)、2〜80(例えば、5〜80、10〜80もしくは20〜80)、2〜70(例えば、5〜70、10〜70もしくは20〜70)、2〜50(例えば、5〜50、10〜50もしくは20〜50)、または2〜25の整数である。実施形態では、z1とz3とz4は独立して、0〜90(例えば、5〜90、10〜90もしくは20〜90)、0〜80(例えば、5〜80、10〜80もしくは20〜80)、0〜70(例えば5〜70、10〜70もしくは20〜70)、0〜50(例えば5〜50、10〜50もしくは20〜50)または2〜25の整数である。実施形態では、z1とz3とz4は独立して、2〜90(例えば、5〜90、10〜90もしくは20〜90)、2〜80(例えば、5〜80、10〜80もしくは20〜80)、2〜70(例えば、5〜70、10〜70もしくは20〜70)、2〜50(例えば、5〜50、10〜50もしくは20〜50)、または2〜25の整数である。
細胞透過性複合体の実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、第1の求核部分と第1の求電子部分を含み、その第1の求核部分は、あるpH範囲においては、第1の求電子部分との反応性を持ち、そのpH範囲(例えば、pH約1〜5、pH約5〜7またはpH約7〜10)の外では、求電子部分との反応性を実質的に持たない。実施形態では、第1の求核部分と第1の求電子部分との反応性が最大であるpH範囲は、pH1〜3、pH2〜4、pH3〜5、pH4〜6、pH5〜7、pH6〜8、pH7〜9またはpH8〜10である。求核部分とは、化学におけるその単純明快な意味に従って用いられており、電子を与えることのできる部分(例えば官能基)を指す。
実施形態では、第1の求核部分と第1の求電子部分との反応性が最大であるpH範囲は、pH1〜3である。実施形態では、第1の求核部分と第1の求電子部分との反応性が最大であるpH範囲は、pH2〜4である。実施形態では、第1の求核部分と第1の求電子部分との反応性が最大であるpH範囲は、pH3〜5である。実施形態では、第1の求核部分と第1の求電子部分との反応性が最大であるpH範囲は、pH4〜6である。実施形態では、第1の求核部分と第1の求電子部分との反応性が最大であるpH範囲は、pH5〜7である。実施形態では、第1の求核部分と第1の求電子部分との反応性が最大であるpH範囲は、pH6〜8である。実施形態では、第1の求核部分と第1の求電子部分との反応性が最大であるpH範囲は、pH7〜9である。実施形態では、第1の求核部分と第1の求電子部分との反応性が最大であるpH範囲は、pH8〜10である。実施形態では、そのpHは1である。実施形態では、そのpHは2である。実施形態では、そのpHは3である。実施形態では、そのpHは4である。実施形態では、そのpHは5である。実施形態では、そのpHは6である。実施形態では、そのpHは7である。実施形態では、そのpHは8である。実施形態では、そのpHは9である。実施形態では、そのpHは10である。実施形態では、そのpHは約1である。実施形態では、そのpHは約2である。実施形態では、そのpHは約3である。実施形態では、そのpHは約4である。実施形態では、そのpHは約5である。実施形態では、そのpHは約6である。実施形態では、そのpHは約7である。実施形態では、そのpHは約8である。実施形態では、そのpHは約9である。実施形態では、そのpHは約10である。
実施形態では、第1の求核部分は実質的に、低pH(例えば、pH約1〜約5)でプトロン化する。実施形態では、第1の求核部分は実質的に、pH5〜7の範囲でプトロン化する。実施形態では、第1の求核部分はカチオン性である。実施形態では、第1の求核部分は、カチオン性窒素(例えばカチオン性アミン)を含む。
実施形態では、第1の求核部分は、pH不安定性の保護基に結合できる。「pH不安定性の保護基」などの用語は、通常かつ慣習的な意味においては、その基に結合している別の官能基を保護できる化学部分を指し、その保護基は、特定のpH条件(例えば、pHを低下させる条件)で、切断したりまたは保護基として別段の形で不活化したりできる。一実施形態では、pH不安定性の保護基は、−CO2−t−Buであり、酸性条件(例えばpH7未満)で除去される基である。さらなる求核保護基としては、光、熱、求核試薬及び塩基によって切断される保護基も挙げることができる。
上に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の式(II)の構造を有してよく、
式中、nは、2以上の整数であり、n1は、0〜50の整数であり、Zは、求核部分であり、X
1は、結合手、−C(R
5)(R
6)−、−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−、−O−C(R
5)(R
6)−または−O−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、X
2は、−O−または−S−であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。実施形態では、nは、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数である。実施形態では、n1は、0〜25、0〜10、0〜5の範囲の整数である。実施形態では、n1は、0、1、2、3、4または5である。実施形態では、n1は、1または2である。
実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は独立して、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は独立して、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は独立して、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は独立して、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、水素である。
上に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、
という構造を有してよく、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、X
1、Z及びX
2は、本明細書で定義されているとおりであり、n1とn2は、2以上の整数である。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の式(III)の構造を有し、
式中、nは、2以上の整数であり、Zは、求核部分であり、X
1は、結合手、−C(R
5)(R
6)−、−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−、−O−C(R
5)(R
6)−または−O−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、X
2は、−O−または−S−であり、R
1.1、R
1.2、R
2.1、R
2.2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。実施形態では、nは、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数である。実施形態では、nは、2〜100または2〜50の範囲の整数である。
実施形態では、R1.1、R1.2、R2.1、R2.2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は独立して、置換もしく非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R1.1、R1.2、R2.1、R2.2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は独立して、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1.1、R1.2、R2.1、R2.2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は独立して、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1.1、R1.2、R2.1、R2.2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は独立して、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。実施形態では、R1.1、R1.2、R2.1、R2.2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、水素である。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の式(IV)の構造を有し、
式中、nは、2以上の整数である。実施形態では、nは、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数である。実施形態では、nは、2〜100または2〜50の範囲の整数である。実施形態では、nは、2〜15である。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の式(IV)の構造を有し、
式中、nは、2以上の整数である。実施形態では、nは、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数である。実施形態では、nは、2〜100または2〜50の範囲の整数である。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の式(V)の構造を有し、
式中、nは、2以上の整数である。実施形態では、nは、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数である。実施形態では、nは、2〜100または2〜50の範囲の整数である。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の式(Va)の構造を有し、
式中、nは、2以上の整数である。実施形態では、nは、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数である。実施形態では、nは、2〜100または2〜50の範囲の整数である。
実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の構造を有し、
式中、X
6は、−O−、−NH−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NHCO−であり、R
20は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、R
21は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。実施形態では、R
20は、オリゴグリコール部分である。
実施形態では、R20は、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R20は、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R20は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R20は、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。実施形態では、R20は水素である。
実施形態では、R21は、置換もしくは置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R21は、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R21は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R21は、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。実施形態では、R21は水素である。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の構造を有し、
式中、R
24とR
25とR
26は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、n3は、0〜50の整数である。
実施形態では、R24とR25とR26は独立して、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R24とR25とR26は独立して、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1.1とR24とR25とR26は独立して、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R24とR25とR26は独立して、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。実施形態では、R24とR25とR26は独立して、水素である。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の式(VI)の構造を有し、
式中、nは、2以上の整数であり、n1は、0〜50の整数であり、X
1は、結合手、−O−、−NR
5−、−C(R
5)(R
6)−または−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、X
2は、結合手、−O−、−C(R
9)(R
10)−または−C(R
9)(R
10)−C(R
11)(R
12)−であり、X
4は、結合手、−NR
16−、−O−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、X
5は、求核部分であり、R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
実施形態では、R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びR19は独立して、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びR19は独立して、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びR19は独立して、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びR19は独立して、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。実施形態では、R1、R2、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びR19は、水素である。
実施形態では、Zは求核部分である。実施形態では、Zは、−S−、−OR13−、−S+R13−、−NR13−または−N+(R13)(H)−であり、このR13は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。実施形態では、Zは−S−である。実施形態では、Zは−S+R13−である。実施形態では、Zは−NR13−である。実施形態では、Zは−N+(R13)(H)−である。実施形態では、Zは−S+H−である。実施形態では、Zは−NH−である。実施形態では、Zは−N+H2−である。実施形態では、Zは−OH−である。
実施形態では、R13は独立して、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R13は独立して、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R13は独立して、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R13は独立して、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。実施形態では、R13は水素である。
実施形態では、Zは、
であり、式中、X
3は、−C(R
15)−または−N−であり、X
4は、結合手、−C(O)−、−P(O)(OR
16)
2−、−S(O)(OR
17)
2−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、X
5は、求核部分であり、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。実施形態では、X
3は、−CHである。
実施形態では、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は独立して、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は独立して、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は独立して、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は独立して、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。
実施形態では、X5は、−N+(R13)(H)であり、このR13は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体と、その実施形態に関しては、実施形態では、親油性ポリマードメインは、下記の式を有し、
式中、n2は、1〜100の整数であり、R
20は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
実施形態では、R20は、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R20は、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R20は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R20は、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。
実施形態では、R20は、非置換のC1−C30アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC1−C20アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC8−C30アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC8−C20アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC9−C20アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC9−C18アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC18アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC17アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC16アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC15アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC14アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC13アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC12アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC11アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC10アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC9アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC8アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC7アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC6アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC5アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC4アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC3アルキルである。実施形態では、R20は、非置換のC2アルキルである。
実施形態では、R20は、非置換のC1−C30アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC1−C20アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC8−C30アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC8−C20アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC9−C20アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC9−C18アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC18アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC17アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC16アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC15アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC14アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC13アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC12アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC11アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC10アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC9アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC8アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC7アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC6アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC5アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC4アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC3アルケニルである。実施形態では、R20は、非置換のC2アルケニルである。
実施形態では、R
20は、ステアリル部分(例えば、非置換のC
18アルキル)である。実施形態では、R
20は、オレイル部分(例えば、非置換のC
18アルケニル)である。実施形態では、R
20は、リノレイル部分(例えば、非置換のC
18アルケニル)である。実施形態では、R
20は、ドデシル部分(例えば、非置換のC
12アルキル)である。実施形態では、R
20は、ノネニル部分(例えば、非置換のC
9アルケニル)である。実施形態では、R
20は、
である。
実施形態では、親油性ポリマードメインは、下記の式(Ia)の化合物であり、
式中、X
6は、−O−、−NH−、−CO
2−、−CONH−、−O
2C−または−NHCO−であってよく、R
20は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、R
21は、水素、置換または非置換のアルキルであり、nは、本明細書で定義されているとおりである。実施形態では、R
20は、オリゴグリコール部分である。
実施形態では、R20は、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R20は、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R20は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R20は、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。
実施形態では、R21は、置換もしくは置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R21は、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R21は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R21は、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の構造を有し、
式中、n4は、0〜50の整数である。実施形態では、n4は、0〜10である。実施形態では、n4は、1〜15の整数である。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、親油性ポリマーは、下記の構造を有し、
式中、X
7は、−O−、−NH−、−CO
2−、−CONH−、−O
2C−または−NHCO−であり、R
22は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、R
23は、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。実施形態では、R
22は、オリゴグリコール部分である。
実施形態では、R22は、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R22は、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R22は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R22は、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。
実施形態では、親油性ポリマードメインは、下記の式(Ib)の化合物であってもよく、
式中、R
100は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。R
1、R
2、R
3、R
4は、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、n100は、2以上の整数であり、本明細書に定義されているとおりである。
実施形態では、R1、R2、R3、R4は独立して、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R1、R2、R3、R4は独立して、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1、R2、R3、R4は独立して、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1、R2、R3、R4は独立して、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。実施形態では、R1、R2、R3、R4は、水素である。
実施形態では、親油性ポリマードメインは、下記の式(Ic)の化合物であってよく、
式中、R
200は、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、n200は、2以上の整数である。実施形態では、R
200は、オリゴグリコール部分である。実施形態では、R
200は、アミン末端オリゴグリコール部分である。「オリゴグリコール部分」という用語は、
を指し、「アミン末端オリゴグリコール部分」とは、
を指し、式中、n200は、2以上の整数である。
実施形態では、R200は、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R200は、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R200は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R200は、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。実施形態では、R200は水素である。
実施形態では、親油性ポリマードメインは、下記の式(Id)の化合物であってもよく、
式中、Rは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、R
300とR
301は独立して、水素、または置換もしくは非置換のアルキルであり、n300は、本明細書で定義されているとおりである。実施形態では、R
302は、オリゴグリコール部分である。実施形態では、Rは、アミン末端オリゴグリコール部分である。実施形態では、R
300とR
301とR
302は、水素である。
実施形態では、R300とR301とR302は独立して、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R300とR301とR302は独立して、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R300とR301とR302は独立して、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R300とR301とR302は独立して、水素または非置換アルキル(例えば、C1−C6アルキル)である。
一態様では、本発明による本開示は、カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合している核酸を有する細胞透過性複合体を提供する。このカチオン性両親媒性ポリマーは、pH感受性崩壊性ドメインを有することができる。いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、pH感受性崩壊性ドメインと親油性ポリマードメインを有する。いくつかの実施形態では、細胞透過性複合体は、下記の式(VII)のカチオン性両親媒性ポリマーを有し、
R1A−[L1−[(LP1)z1−(IM)z2−(LP2)z3]z4−L2−R2A]z5
式中、
R1Aは、水素、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、CHCl2、−CHBr2、−CHF2、−CHI2、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2F、−CH2I、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、−OCH2Cl、−OCH2Br、−OCH2I、−OCH2F、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
R2Aは、水素、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、CHCl2、−CHBr2、−CHF2、−CHI2、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2F、−CH2I、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、−OCH2Cl、−OCH2Br、−OCH2I、−OCH2F、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
L1とL2は独立して、結合手、−C(O)O−、−O−、−S−、−NH−、−C(O)NH−、−NHC(O)−、−S(O)2−、−S(O)NH−、−NHC(O)NH−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンであり、
LP1とLP2は独立して、結合手または親油性ポリマードメインであり、LP1またはLP2の少なくとも1つは、親油性ポリマードメインであり、
IMは、pH感受性崩壊性ドメインであり、
z5は、1〜10の整数であり、
z1とz3とz4は独立して、0〜100の整数であり、z1またはz3の少なくとも1つは、0ではなく、z2は、2〜100の整数である。
実施形態では、R1Aは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
実施形態では、R1Aは独立して、置換もしくは非置換のアルキル(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4もしくはC1−C2)、置換もしくは非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員、2〜6員、4〜6員、2〜3員もしくは4〜5員)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8、C3−C6、C4−C6もしくはC5−C6)、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員、3〜6員、4〜6員、4〜5員もしくは5〜6員)、置換もしくは非置換のアリール(例えば、C6−C10もしくはフェニル)、または置換もしくは非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員、5〜9員もしくは5〜6員)である。実施形態では、R1Aは、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アルキルもしくは非置換アルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアルキルもしくは非置換ヘテロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)シクロアルキルもしくは非置換シクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロシクロアルキルもしくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)アリールもしくは非置換アリール、または置換されている(例えば、置換基、サイズ限定置換基もしくは低級置換基で置換されている)ヘテロアリールもしくは非置換ヘテロアリールである。実施形態では、R1Aは、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリールまたは非置換ヘテロアリールである。
実施形態では、R1Aは、水素、置換もしくは非置換のC1−C6アルキル、置換もしくは非置換の2〜6員ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3−C6シクロアルキル、置換もしくは非置換の3〜6員ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のフェニル、または置換もしくは非置換の5〜6員ヘテロアリールである。
実施形態では、R1Aは、置換または非置換のアルキル(例えば、C1−C8アルキル、C1−C6アルキルまたはC1−C4アルキル)である。実施形態では、R1Aは、置換アルキル(例えば、C1−C8アルキル、C1−C6アルキルまたはC1−C4アルキル)である。実施形態では、R1Aは、非置換アルキル(例えば、C1−C8アルキル、C1−C6アルキルまたはC1−C4アルキル)である。実施形態では、R1Aは、置換または非置換のヘテロアルキル(例えば、2〜8員ヘテロアルキル、2〜6員ヘテロアルキルまたは2〜4員ヘテロアルキル)である。実施形態では、R1Aは、置換ヘテロアルキル(例えば、2〜8員ヘテロアルキル、2〜6員ヘテロアルキルまたは2〜4員ヘテロアルキル)である。実施形態では、R1Aは、非置換ヘテロアルキル(例えば、2〜8員ヘテロアルキル、2〜6員ヘテロアルキルまたは2〜4員ヘテロアルキル)である。実施形態では、R1Aは、置換または非置換のシクロアルキル(例えば、C3−C8シクロアルキル、C3−C6シクロアルキルまたはC5−C6シクロアルキル)である。実施形態では、R1Aは、置換シクロアルキル(例えば、C3−C8シクロアルキル、C3−C6シクロアルキルまたはC5−C6シクロアルキル)である。実施形態では、R1Aは、非置換シクロアルキル(例えば、C3−C8シクロアルキル、C3−C6シクロアルキルまたはC5−C6シクロアルキル)である。実施形態では、R1Aは、置換または非置換のヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員ヘテロシクロアルキル、3〜6員ヘテロシクロアルキルまたは5〜6員ヘテロシクロアルキル)である。実施形態では、R1Aは、置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員ヘテロシクロアルキル、3〜6員ヘテロシクロアルキルまたは5〜6員ヘテロシクロアルキル)である。実施形態では、R1Aは、非置換ヘテロシクロアルキル(例えば、3〜8員ヘテロシクロアルキル、3〜6員ヘテロシクロアルキルまたは5〜6員ヘテロシクロアルキル)である。実施形態では、R1Aは、置換または非置換のアリール(例えば、C6−C10アリール、C10アリールまたはフェニル)である。実施形態では、R1Aは、置換アリール(例えば、C6−C10アリール、C10アリールまたはフェニル)である。実施形態では、R1Aは、非置換アリール(例えば、C6−C10アリール、C10アリールまたはフェニル)である。実施形態では、R1Aは、置換または非置換のヘテロアリール(例えば、5〜10員ヘテロアリール、5〜9員ヘテロアリールまたは5〜6員ヘテロアリール)である。実施形態では、R1Aは、置換ヘテロアリール(例えば、5〜10員ヘテロアリール、5〜9員ヘテロアリールまたは5〜6員ヘテロアリール)である。実施形態では、R1Aは、非置換ヘテロアリール(例えば、5〜10員ヘテロアリール、5〜9員ヘテロアリールまたは5〜6員ヘテロアリール)である。
実施形態では、R1Aは、置換または非置換のアリールである。いくつかの別の実施形態では、R1Aは、置換または非置換のフェニルである。さらにいくつかの別の実施形態では、R1Aは、置換または非置換のアリールである。さらにいくつかの別の実施形態では、R1Aは、置換または非置換のフェニルまたはナフタレニルである。
いくつかの実施形態では、細胞透過性複合体は、下記の式(VIII)を有するカチオン性両親媒性ポリマーを有することができ、
式中、
環Aは、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
CARTは、−L
1−[(LP
1)
z1−(IM)
z2−(LP
2)
z3]
z4−L
2−R
2Aという式を有することができ、
式中、
R
2Aは、水素、ハロゲン、−CCl
3、−CBr
3、−CF
3、−CI
3、CHCl
2、−CHBr
2、−CHF
2、−CHI
2、−CH
2Cl、−CH
2Br、−CH
2F、−CH
2I、−CN、−OH、−NH
2、−COOH、−CONH
2、−NO
2、−SH、−SO
3H、−SO
4H、−SO
2NH
2、−NHNH
2、−ONH
2、−NHC(O)NHNH
2、−NHC(O)NH
2、−NHSO
2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl
3、−OCF
3、−OCBr
3、−OCI
3、−OCHCl
2、−OCHBr
2、−OCHI
2、−OCHF
2、−OCH
2Cl、−OCH
2Br、−OCH
2I、−OCH
2F、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、L
1とL
2は独立して、結合手、−C(O)O−、−O−、−S−、−NH−、−C(O)NH−、−NHC(O)−、−S(O)
2−、−S(O)NH−、−NHC(O)NH−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンであり、LP
1とLP
2は独立して、結合手または親油性ポリマードメインであり、LP
1またはLP
2の少なくとも1つは、親油性ポリマードメインであり、IMは、pH感受性崩壊性ドメインであり、z5は、1〜10の整数であり、z1とz3とz4は独立して、0〜100の整数であり、z1またはz3の少なくとも1つは、0ではなく、z2は、2〜100の整数である。
いくつかの実施形態では、上記の式(VIII)において、環Aは、置換または非置換のアリールである。いくつかの別の実施形態では、環Aは、置換または非置換のフェニルである。さらにいくつかの別の実施形態では、環Aは、置換または非置換のアリールである。さらにいくつかの別の実施形態では、環Aは、置換または非置換のフェニルまたはナフタレニルである。
実施形態では、環Aは、非置換アリールである(すなわち、CART部分以外は、非置換である)。実施形態では、環Aは、非置換フェニルである(すなわち、CART部分以外は非置換である)。実施形態では、環Aは、非置換フェニルまたはナフタレニルである(すなわち、CART部分以外は非置換である)。実施形態では、環Aは、置換アリールである(すなわち、CART部分に加えて、置換されている)。実施形態では、環Aは、置換フェニルである(すなわち、CART部分に加えて、置換されている)。実施形態では、環Aは、置換フェニルまたはナフタレニルである(すなわち、CART部分に加えて、置換されている)。
実施形態では、細胞透過性複合体は、検出可能な薬剤(例えばフルオロフォア)である。
実施形態では、R
1Aは、メトキシリンカーで置換されているアリールである。実施形態では、R
1Aは、リンカー(例えば、−CH
2−O−)で置換されているアリールである。R
1Aが、メトキシリンカーで置換されているアリールである非限定的な例は、下記の式を有する。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、下記の式(IX)を有する。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、下記の式(X)を有する。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、下記の式(XI)を有することができ、
式中、CART
1とCART
2とCART
3は独立して、式(VIII)で定義されているようなCART部分(例えば、−L
1−[(LP
1)
z1−(IM)
z2−(LP
2)
z3]
z4−L
2−R
2A)である。実施形態では、各CART部分は任意に異なっている。
実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、
という式を有する。
実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、
という式を有する。実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、
という式を有する。実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、
という式を有する。実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、
という式を有する。実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、下記の式を有する。
実施形態では、環Aは、リンカー(例えば、結合手、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン)を介して、検出可能な薬剤で置換されている。
いくつかの実施形態では、細胞透過性複合体は、上記の式のいずれかであって、L1が、−CH2−O−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンである式を有するカチオン性両親媒性ポリマーを有する。実施形態では、L1は、−CH2−O−である。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、上記の式のいずれかであって、L
1が、−CH
2−O−、
である式を有することができる。実施形態では、L
1は、−CH
2−O−である。実施形態では、L
1は、
である。実施形態では、L
1は、
である。実施形態では、L
1は、
である。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、上記の式のいずれかであって、z1とz3とz4が独立して、0〜100の整数であることができ、z1またはz3の少なくとも1つが、0ではない式を有することができる。いくつかの実施形態では、z1とz3とz4は独立して、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数であることができ、z1またはz3の少なくとも1つは、0ではない。実施形態では、z1とz3とz4は独立して、2〜100または2〜50の範囲の整数であることができ、z1またはz3の少なくとも1つは、0ではない。
実施形態では、z1は0である。実施形態では、z1は1である。実施形態では、z1は2である。実施形態では、z1は3である。実施形態では、z1は4である。実施形態では、z1は5である。実施形態では、z1は6である。実施形態では、z1は7である。実施形態では、z1は8である。実施形態では、z1は9である。実施形態では、z1は10である。実施形態では、z1は11である。実施形態では、z1は12である。実施形態では、z1は13である。実施形態では、z1は14である。実施形態では、z1は15である。実施形態では、z1は16である。実施形態では、z1は17である。実施形態では、z1は18である。実施形態では、z1は19である。実施形態では、z1は20である。実施形態では、z1は21である。実施形態では、z1は22である。実施形態では、z1は23である。実施形態では、z1は24である。実施形態では、z1は25である。実施形態では、z1は26である。実施形態では、z1は27である。実施形態では、z1は28である。実施形態では、z1は29である。実施形態では、z1は30である。実施形態では、z1は31である。実施形態では、z1は32である。実施形態では、z1は33である。実施形態では、z1は34である。実施形態では、z1は35である。実施形態では、z1は36である。実施形態では、z1は37である。実施形態では、z1は38である。実施形態では、z1は39である。実施形態では、z1は40である。実施形態では、z1は41である。実施形態では、z1は42である。実施形態では、z1は43である。実施形態では、z1は44である。実施形態では、z1は45である。実施形態では、z1は46である。実施形態では、z1は47である。実施形態では、z1は48である。実施形態では、z1は49である。実施形態では、z1は50である。実施形態では、z1は51である。実施形態では、z1は52である。実施形態では、z1は53である。実施形態では、z1は54である。実施形態では、z1は55である。実施形態では、z1は56である。実施形態では、z1は57である。実施形態では、z1は58である。実施形態では、z1は59である。実施形態では、z1は60である。実施形態では、z1は61である。実施形態では、z1は62である。実施形態では、z1は63である。実施形態では、z1は64である。実施形態では、z1は65である。実施形態では、z1は66である。実施形態では、z1は67である。実施形態では、z1は68である。実施形態では、z1は69である。実施形態では、z1は70である。実施形態では、z1は71である。実施形態では、z1は72である。実施形態では、z1は73である。実施形態では、z1は74である。実施形態では、z1は75である。実施形態では、z1は76である。実施形態では、z1は77である。実施形態では、z1は78である。実施形態では、z1は79である。実施形態では、z1は80である。実施形態では、z1は81である。実施形態では、z1は82である。実施形態では、z1は83である。実施形態では、z1は84である。実施形態では、z1は85である。実施形態では、z1は86である。実施形態では、z1は87である。実施形態では、z1は88である。実施形態では、z1は89である。実施形態では、z1は90である。実施形態では、z1は91である。実施形態では、z1は92である。実施形態では、z1は93である。実施形態では、z1は94である。実施形態では、z1は95である。実施形態では、z1は96である。実施形態では、z1は97である。実施形態では、z1は98である。実施形態では、z1は99である。実施形態では、z1は100である。
実施形態では、z3は0である。実施形態では、z3は1である。実施形態では、z3は2である。実施形態では、z3は3である。実施形態では、z3は4である。実施形態では、z3は5である。実施形態では、z3は6である。実施形態では、z3は7である。実施形態では、z3は8である。実施形態では、z3は9である。実施形態では、z3は10である。実施形態では、z3は11である。実施形態では、z3は12である。実施形態では、z3は13である。実施形態では、z3は14である。実施形態では、z3は15である。実施形態では、z3は16である。実施形態では、z3は17である。実施形態では、z3は18である。実施形態では、z3は19である。実施形態では、z3は20である。実施形態では、z3は21である。実施形態では、z3は22である。実施形態では、z3は23である。実施形態では、z3は24である。実施形態では、z3は25である。実施形態では、z3は26である。実施形態では、z3は27である。実施形態では、z3は28である。実施形態では、z3は29である。実施形態では、z3は30である。実施形態では、z3は31である。実施形態では、z3は32である。実施形態では、z3は33である。実施形態では、z3は34である。実施形態では、z3は35である。実施形態では、z3は36である。実施形態では、z3は37である。実施形態では、z3は38である。実施形態では、z3は39である。実施形態では、z3は40である。実施形態では、z3は41である。実施形態では、z3は42である。実施形態では、z3は43である。実施形態では、z3は44である。実施形態では、z3は45である。実施形態では、z3は46である。実施形態では、z3は47である。実施形態では、z3は48である。実施形態では、z3は49である。実施形態では、z3は50である。実施形態では、z3は51である。実施形態では、z3は52である。実施形態では、z3は53である。実施形態では、z3は54である。実施形態では、z3は55である。実施形態では、z3は56である。実施形態では、z3は57である。実施形態では、z3は58である。実施形態では、z3は59である。実施形態では、z3は60である。実施形態では、z3は61である。実施形態では、z3は62である。実施形態では、z3は63である。実施形態では、z3は64である。実施形態では、z3は65である。実施形態では、z3は66である。実施形態では、z3は67である。実施形態では、z3は68である。実施形態では、z3は69である。実施形態では、z3は70である。実施形態では、z3は71である。実施形態では、z3は72である。実施形態では、z3は73である。実施形態では、z3は74である。実施形態では、z3は75である。実施形態では、z3は76である。実施形態では、z3は77である。実施形態では、z3は78である。実施形態では、z3は79である。実施形態では、z3は80である。実施形態では、z3は81である。実施形態では、z3は82である。実施形態では、z3は83である。実施形態では、z3は84である。実施形態では、z3は85である。実施形態では、z3は86である。実施形態では、z3は87である。実施形態では、z3は88である。実施形態では、z3は89である。実施形態では、z3は90である。実施形態では、z3は91である。実施形態では、z3は92である。実施形態では、z3は93である。実施形態では、z3は94である。実施形態では、z3は95である。実施形態では、z3は96である。実施形態では、z3は97である。実施形態では、z3は98である。実施形態では、z3は99である。実施形態では、z3は100である。
実施形態では、z4は0である。実施形態では、z4は1である。実施形態では、z4は2である。実施形態では、z4は3である。実施形態では、z4は4である。実施形態では、z4は5である。実施形態では、z4は6である。実施形態では、z4は7である。実施形態では、z4は8である。実施形態では、z4は9である。実施形態では、z4は10である。実施形態では、z4は11である。実施形態では、z4は12である。実施形態では、z4は13である。実施形態では、z4は14である。実施形態では、z4は15である。実施形態では、z4は16である。実施形態では、z4は17である。実施形態では、z4は18である。実施形態では、z4は19である。実施形態では、z4は20である。実施形態では、z4は21である。実施形態では、z4は22である。実施形態では、z4は23である。実施形態では、z4は24である。実施形態では、z4は25である。実施形態では、z4は26である。実施形態では、z4は27である。実施形態では、z4は28である。実施形態では、z4は29である。実施形態では、z4は30である。実施形態では、z4は31である。実施形態では、z4は32である。実施形態では、z4は33である。実施形態では、z4は34である。実施形態では、z4は35である。実施形態では、z4は36である。実施形態では、z4は37である。実施形態では、z4は38である。実施形態では、z4は39である。実施形態では、z4は40である。実施形態では、z4は41である。実施形態では、z4は42である。実施形態では、z4は43である。実施形態では、z4は44である。実施形態では、z4は45である。実施形態では、z4は46である。実施形態では、z4は47である。実施形態では、z4は48である。実施形態では、z4は49である。実施形態では、z4は50である。実施形態では、z4は51である。実施形態では、z4は52である。実施形態では、z4は53である。実施形態では、z4は54である。実施形態では、z4は55である。実施形態では、z4は56である。実施形態では、z4は57である。実施形態では、z4は58である。実施形態では、z4は59である。実施形態では、z4は60である。実施形態では、z4は61である。実施形態では、z4は62である。実施形態では、z4は63である。実施形態では、z4は64である。実施形態では、z4は65である。実施形態では、z4は66である。実施形態では、z4は67である。実施形態では、z4は68である。実施形態では、z4は69である。実施形態では、z4は70である。実施形態では、z4は71である。実施形態では、z4は72である。実施形態では、z4は73である。実施形態では、z4は74である。実施形態では、z4は75である。実施形態では、z4は76である。実施形態では、z4は77である。実施形態では、z4は78である。実施形態では、z4は79である。実施形態では、z4は80である。実施形態では、z4は81である。実施形態では、z4は82である。実施形態では、z4は83である。実施形態では、z4は84である。実施形態では、z4は85である。実施形態では、z4は86である。実施形態では、z4は87である。実施形態では、z4は88である。実施形態では、z4は89である。実施形態では、z4は90である。実施形態では、z4は91である。実施形態では、z4は92である。実施形態では、z4は93である。実施形態では、z4は94である。実施形態では、z4は95である。実施形態では、z4は96である。実施形態では、z4は97である。実施形態では、z4は98である。実施形態では、z4は99である。実施形態では、z4は100である。
実施形態では、nは2である。実施形態では、nは3である。実施形態では、nは4である。実施形態では、nは5である。実施形態では、nは6である。実施形態では、nは7である。実施形態では、nは8である。実施形態では、nは9である。実施形態では、nは10である。実施形態では、nは11である。実施形態では、nは12である。実施形態では、nは13である。実施形態では、nは14である。実施形態では、nは15である。実施形態では、nは16である。実施形態では、nは17である。実施形態では、nは18である。実施形態では、nは19である。実施形態では、nは20である。実施形態では、nは21である。実施形態では、nは22である。実施形態では、nは23である。実施形態では、nは24である。実施形態では、nは25である。実施形態では、nは26である。実施形態では、nは27である。実施形態では、nは28である。実施形態では、nは29である。実施形態では、nは30である。実施形態では、nは31である。実施形態では、nは32である。実施形態では、nは33である。実施形態では、nは34である。実施形態では、nは35である。実施形態では、nは36である。実施形態では、nは37である。実施形態では、nは38である。実施形態では、nは39である。実施形態では、nは40である。実施形態では、nは41である。実施形態では、nは42である。実施形態では、nは43である。実施形態では、nは44である。実施形態では、nは45である。実施形態では、nは46である。実施形態では、nは47である。実施形態では、nは48である。実施形態では、nは49である。実施形態では、nは50である。実施形態では、nは51である。実施形態では、nは52である。実施形態では、nは53である。実施形態では、nは54である。実施形態では、nは55である。実施形態では、nは56である。実施形態では、nは57である。実施形態では、nは58である。実施形態では、nは59である。実施形態では、nは60である。実施形態では、nは61である。実施形態では、nは62である。実施形態では、nは63である。実施形態では、nは64である。実施形態では、nは65である。実施形態では、nは66である。実施形態では、nは67である。実施形態では、nは68である。実施形態では、nは69である。実施形態では、nは70である。実施形態では、nは71である。実施形態では、nは72である。実施形態では、nは73である。実施形態では、nは74である。実施形態では、nは75である。実施形態では、nは76である。実施形態では、nは77である。実施形態では、nは78である。実施形態では、nは79である。実施形態では、nは80である。実施形態では、nは81である。実施形態では、nは82である。実施形態では、nは83である。実施形態では、nは84である。実施形態では、nは85である。実施形態では、nは86である。実施形態では、nは87である。実施形態では、nは88である。実施形態では、nは89である。実施形態では、nは90である。実施形態では、nは91である。実施形態では、nは92である。実施形態では、nは93である。実施形態では、nは94である。実施形態では、nは95である。実施形態では、nは96である。実施形態では、nは97である。実施形態では、nは98である。実施形態では、nは99である。実施形態では、nは100である。
実施形態では、n1は0である。実施形態では、n1は1である。実施形態では、n1は2である。実施形態では、n1は3である。実施形態では、n1は4である。実施形態では、n1は5である。実施形態では、n1は6である。実施形態では、n1は7である。実施形態では、n1は8である。実施形態では、n1は9である。実施形態では、n1は10である。実施形態では、n1は11である。実施形態では、n1は12である。実施形態では、n1は13である。実施形態では、n1は14である。実施形態では、n1は15である。実施形態では、n1は16である。実施形態では、n1は17である。実施形態では、n1は18である。実施形態では、n1は19である。実施形態では、n1は20である。実施形態では、n1は21である。実施形態では、n1は22である。実施形態では、n1は23である。実施形態では、n1は24である。実施形態では、n1は25である。実施形態では、n1は26である。実施形態では、n1は27である。実施形態では、n1は28である。実施形態では、n1は29である。実施形態では、n1は30である。実施形態では、n1は31である。実施形態では、n1は32である。実施形態では、n1は33である。実施形態では、n1は34である。実施形態では、n1は35である。実施形態では、n1は36である。実施形態では、n1は37である。実施形態では、n1は38である。実施形態では、n1は39である。実施形態では、n1は40である。実施形態では、n1は41である。実施形態では、n1は42である。実施形態では、n1は43である。実施形態では、n1は44である。実施形態では、n1は45である。実施形態では、n1は46である。実施形態では、n1は47である。実施形態では、n1は48である。実施形態では、n1は49である。実施形態では、n1は50である。
実施形態では、n2は1である。実施形態では、n2は2である。実施形態では、n2は3である。実施形態では、n2は4である。実施形態では、n2は5である。実施形態では、n2は6である。実施形態では、n2は7である。実施形態では、n2は8である。実施形態では、n2は9である。実施形態では、n2は10である。実施形態では、n2は11である。実施形態では、n2は12である。実施形態では、n2は13である。実施形態では、n2は14である。実施形態では、n2は15である。実施形態では、n2は16である。実施形態では、n2は17である。実施形態では、n2は18である。実施形態では、n2は19である。実施形態では、n2は20である。実施形態では、n2は21である。実施形態では、n2は22である。実施形態では、n2は23である。実施形態では、n2は24である。実施形態では、n2は25である。実施形態では、n2は26である。実施形態では、n2は27である。実施形態では、n2は28である。実施形態では、n2は29である。実施形態では、n2は30である。実施形態では、n2は31である。実施形態では、n2は32である。実施形態では、n2は33である。実施形態では、n2は34である。実施形態では、n2は35である。実施形態では、n2は36である。実施形態では、n2は37である。実施形態では、n2は38である。実施形態では、n2は39である。実施形態では、n2は40である。実施形態では、n2は41である。実施形態では、n2は42である。実施形態では、n2は43である。実施形態では、n2は44である。実施形態では、n2は45である。実施形態では、n2は46である。実施形態では、n2は47である。実施形態では、n2は48である。実施形態では、n2は49である。実施形態では、n2は50である。実施形態では、n2は51である。実施形態では、n2は52である。実施形態では、n2は53である。実施形態では、n2は54である。実施形態では、n2は55である。実施形態では、n2は56である。実施形態では、n2は57である。実施形態では、n2は58である。実施形態では、n2は59である。実施形態では、n2は60である。実施形態では、n2は61である。実施形態では、n2は62である。実施形態では、n2は63である。実施形態では、n2は64である。実施形態では、n2は65である。実施形態では、n2は66である。実施形態では、n2は67である。実施形態では、n2は68である。実施形態では、n2は69である。実施形態では、n2は70である。実施形態では、n2は71である。実施形態では、n2は72である。実施形態では、n2は73である。実施形態では、n2は74である。実施形態では、n2は75である。実施形態では、n2は76である。実施形態では、n2は77である。実施形態では、n2は78である。実施形態では、n2は79である。実施形態では、n2は80である。実施形態では、n2は81である。実施形態では、n2は82である。実施形態では、n2は83である。実施形態では、n2は84である。実施形態では、n2は85である。実施形態では、n2は86である。実施形態では、n2は87である。実施形態では、n2は88である。実施形態では、n2は89である。実施形態では、n2は90である。実施形態では、n2は91である。実施形態では、n2は92である。実施形態では、n2は93である。実施形態では、n2は94である。実施形態では、n2は95である。実施形態では、n2は96である。実施形態では、n2は97である。実施形態では、n2は98である。実施形態では、n2は99である。実施形態では、n2は100である。
実施形態では、z2は2である。実施形態では、z2は3である。実施形態では、z2は4である。実施形態では、z2は5である。実施形態では、z2は6である。実施形態では、z2は7である。実施形態では、z2は8である。実施形態では、z2は9である。実施形態では、z2は10である。実施形態では、z2は11である。実施形態では、z2は12である。実施形態では、z2は13である。実施形態では、z2は14である。実施形態では、z2は15である。実施形態では、z2は16である。実施形態では、z2は17である。実施形態では、z2は18である。実施形態では、z2は19である。実施形態では、z2は20である。実施形態では、z2は21である。実施形態では、z2は22である。実施形態では、z2は23である。実施形態では、z2は24である。実施形態では、z2は25である。実施形態では、z2は26である。実施形態では、z2は27である。実施形態では、z2は28である。実施形態では、z2は29である。実施形態では、z2は30である。実施形態では、z2は31である。実施形態では、z2は32である。実施形態では、z2は33である。実施形態では、z2は34である。実施形態では、z2は35である。実施形態では、z2は36である。実施形態では、z2は37である。実施形態では、z2は38である。実施形態では、z2は39である。実施形態では、z2は40である。実施形態では、z2は41である。実施形態では、z2は42である。実施形態では、z2は43である。実施形態では、z2は44である。実施形態では、z2は45である。実施形態では、z2は46である。実施形態では、z2は47である。実施形態では、z2は48である。実施形態では、z2は49である。実施形態では、z2は50である。実施形態では、z2は51である。実施形態では、z2は52である。実施形態では、z2は53である。実施形態では、z2は54である。実施形態では、z2は55である。実施形態では、z2は56である。実施形態では、z2は57である。実施形態では、z2は58である。実施形態では、z2は59である。実施形態では、z2は60である。実施形態では、z2は61である。実施形態では、z2は62である。実施形態では、z2は63である。実施形態では、z2は64である。実施形態では、z2は65である。実施形態では、z2は66である。実施形態では、z2は67である。実施形態では、z2は68である。実施形態では、z2は69である。実施形態では、z2は70である。実施形態では、z2は71である。実施形態では、z2は72である。実施形態では、z2は73である。実施形態では、z2は74である。実施形態では、z2は75である。実施形態では、z2は76である。実施形態では、z2は77である。実施形態では、z2は78である。実施形態では、z2は79である。実施形態では、z2は80である。実施形態では、z2は81である。実施形態では、z2は82である。実施形態では、z2は83である。実施形態では、z2は84である。実施形態では、z2は85である。実施形態では、z2は86である。実施形態では、z2は87である。実施形態では、z2は88である。実施形態では、z2は89である。実施形態では、z2は90である。実施形態では、z2は91である。実施形態では、z2は92である。実施形態では、z2は93である。実施形態では、z2は94である。実施形態では、z2は95である。実施形態では、z2は96である。実施形態では、z2は97である。実施形態では、z2は98である。実施形態では、z2は99である。実施形態では、z2は100である。
実施形態では、z5は1である。実施形態では、z5は2である。実施形態では、z5は3である。実施形態では、z5は4である。実施形態では、z5は5である。実施形態では、z5は6である。実施形態では、z5は7である。実施形態では、z5は8である。実施形態では、z5は9である。実施形態では、z5は10である。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、上記の式のいずれかであって、z2が、2〜100の整数である式を有することができる。いくつかの実施形態では、z2は、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数であることができる。実施形態では、z2は、2〜100または2〜50の範囲の整数であることができる。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、上記の式のいずれかであって、z5が1〜3の整数である式を有することができる。いくつかの別の実施形態では、z5は、1または3である。さらにいくつかの別の実施形態では、z5は1である。さらにいくつかの別の実施形態では、z5は3である。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、上記の式のいずれかであって、R2が水素である式を有することができる。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、上記の式のいずれかであって、L2が結合手である式を有することができる。
いくつかの実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、
という式を有することができ、式中、nは、2以上の整数である。実施形態では、nは、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数である。実施形態では、nは、2〜100または2〜50の範囲の整数である。
いくつかの実施形態では、上記の式(IV)において、nは、2〜50の範囲の整数である。
いくつかの実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、
という式を有することができ、式中、
nは、2以上の整数であり、
n1は、0〜50の整数であり、
Zは求核部分であり、
X
1は、結合手、−C(R
5)(R
6)−、−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−、−O−C(R
5)(R
6)−または−O−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、
X
2は、−O−または−S−であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、
という式を有することができ、式中、
nは、2以上の整数であり、
Zは求核部分であり、
X
1は、結合手、−C(R
5)(R
6)−、−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−、−O−C(R
5)(R
6)−または−O−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、
X
2は、−O−または−S−であり、
R
1.1、R
1.2、R
2.1、R
2.2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、
という式を有することができ、式中、nは、2以上の整数である。実施形態では、nは、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数である。実施形態では、nは、2〜100または2〜50の範囲の整数である。
いくつかの実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、
という式を有することができ、式中、nは、2以上の整数である。実施形態では、nは、2〜100、2〜90、2〜80、2〜70、2〜60、2〜50、2〜40、2〜30、2〜2または2〜10の範囲の整数である。実施形態では、nは、2〜100または2〜50の範囲の整数である。
いくつかの実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、
という式を有することができ、式中、nは、2以上の整数であり、n1は、0〜50の整数であり、X
1は、結合手、−O−、−NR
5−、−C(R
5)(R
6)−または−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、X
2は、結合手、−O−、−C(R
9)(R
10)−または−C(R
9)(R
10)−C(R
11)(R
12)−であり、X
4は、結合手、−C(O)−、−P(O)(OR
16)
2−、−S(O)(OR
17)
2−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、X
5は、求核部分であり、R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、定められている上記の式いずれかを有するpH感受性崩壊性ドメインにおいては、Zは、−S−、−S+R13−、−NR13−または−N+(R13)(H)−であり、その式中、R13は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、定められている上記の式いずれかを有するpH感受性崩壊性ドメインにおいては、Zは、−S−、−S+R13−、−NR13−または−N+(R13)(H)−であり、その式中、R13は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、定められている上記の式いずれかを有するpH感受性崩壊性ドメインにおいては、Zは、
であり、式中、
X
3は、C(R
15)またはNであり、
X
4は、結合手、−C(O)−、−P(O)(OR
16)
2−、−S(O)(OR
17)
2−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、
X
5は、求核部分であり、
R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、定められている上記の式いずれかを有するpH感受性崩壊性ドメインにおいては、Zは、
であり 式中、
X
3は、C(R
15)またはNであり、
X
4は、結合手、−C(O)−、−P(O)(OR
16)
2−、−S(O)(OR
17)
2−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、
X
5は、求核部分であり、
R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、定められている上記の式いずれかを有するpH感受性崩壊性ドメインにおいては、X5は、−N+(R13)(H)−であり、その式中、R13は、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の式のうちの1つを有することができる。本明細書に開示されている細胞透過性複合体の実施形態と、その実施形態では、pH感受性崩壊性ドメインは、下記の式(IV)の構造をする。
いくつかの実施形態では、親油性ポリマードメインは、
という式を有し、式中、n2は、1〜100の整数であり、
R
20は独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。
いくつかの実施形態では、親油性ポリマードメインまたは親油性ポリマードメインと同義的に称されるものは、下記の変形形態のR基のうちの1つを有することができる。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体と、その実施形態に関しては、実施形態では、核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化RNA(tracrRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、ミニサークルDNA、ゲノムDNA(gDNA)のようなDNAまたはRNAであってよい。本発明の細胞透過性複合体はさらに、タンパク質またはペプチドを含んでよい。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体と、その実施形態に関しては、実施形態では、細胞透過性複合体はさらに、複数の親油性部分を含む。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体と、その実施形態に関しては、実施形態では、細胞透過性複合体はさらに、複数の崩壊性ドメインを含む。
本明細書に開示されている細胞透過性複合体と、その実施形態に関しては、実施形態では、上記のカチオン性配列に対する対アニオンとしては、当該技術分野において知られている一般的な対イオン(例えば、アセテート、トリフルオロアセテート、トリフレート、クロライド、ブロマイド、サルフェート、ホスフェート、サクシネートまたはシトレートなど)を挙げることができる。実施形態では、対アニオンは、アセテート、トリフルオロアセテート、トリフレート、クロライド、ブロマイド、サルフェート、ホスフェート、サクシネートまたはシトレートである。
トランスフェクション
別の態様では、細胞への核酸のトランスフェクション方法であって、細胞と、本明細書に開示されているような細胞透過性複合体またはその実施形態とを接触させることを含む方法を提供する。
実施形態では、この方法はさらに、カチオン性両親媒性ポリマーを細胞内で分解させ、それによって、分解産物を形成させることを含む。実施形態では、この分解産物は、置換または非置換のジケトピペラジンである。
細胞への核酸のトランスフェクション方法のいずれかの実施形態に関しては、実施形態では、その核酸は、mRNAである。実施形態では、この方法はさらに、そのmRNAを細胞内で発現させることを含む。実施形態では、その細胞は、生物の一部分を形成する。実施形態では、その生物は、ヒトである。
本発明で提供するのは、とりわけ、オリゴヌクレオチドとポリアニオン性カーゴ、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の複合体形成、保護、インビトロとインビボの両方における、標的細胞、組織及び器官への送達及び放出を可能にするかまたは促進する新規な材料と方策である。
例えば、本明細書に開示されているmRNA送達策の1つは、ポリアニオン(mRNAなど)と静電的に複合体を形成することが分かった生分解性ポリ(カーボネート−co−アミノエステル)オリゴマーとその変形形態を用いて、mRNAカーゴを保護するとともに、細胞に容易に進入して、オリゴヌクレオチドカーゴを独自に放出する非共有結合巨大分子粒子を作製して行う。そして、細胞内で放出されたmRNAは、細胞プロセスによって、ペプチドとタンパク質(その配列と、その結果、活性は、mRNAの配列によって定められる)に変換される。
したがって、例えば、核酸そのものと、既知の遺伝子送達ベクターを使う場合と比べて、細胞へのトランスフェクション効率を大きく向上させることをもたらす。mRNAの送達で用いるこの材料と方策を用いて、siRNA、pDNA、shRNA及びgDNAのような他のオリゴヌクレオチドも送達できる。さらに、この材料と方策を用いて、ヘパリン、無機ポリホスフェート及びイノシトールポリホスフェート(例えば、IP3、IP7、IP8)のような他のアニオン性生体分子を送達することもできる。この送達は、様々なヒト細胞株とヒト以外の細胞株によって、複数の投与方法(筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、眼内投与、鼻腔内投与、皮下投与、口腔内投与及び局所投与が挙げられるが、これらに限らない)を通じて、インビボで行うことができる。本明細書に開示されているポリ(カーボネート−co−アミノエステル)は、例えば、生物医学的な療法、イメージング及び器具の用途において、カスタマイズ可能な生分解性生体適合性材料として用いることができる。バレロラクトン、カプロラクトン、ラクチド及び環状カーボネートのような無毒の生分解性化合物材とのコポリマー化によって、カーゴ放出速度、疎水性、標的化リガンドの導入、体内分布及び毒性を含む物理的特性と生物学的特性を調整可能になる。
したがって、いくつかの実施形態では、本発明で提供する薬剤は、環状アミノエステルモノマー及び環状メチルトリメチレンカーボネート(MTC)モノマーに由来してよいオリゴマー、ポリマー、コオリゴマー及びコポリマーを含む。環状アミノエステルは、モルホリン−2−オンとそのホモログの母体構造を有するとともに、下記のものを含め、考え得る複数の置換パターンを持つ。
(1)様々な疎水性基(例えば、R=アルキル、アルケニル、アリール、多環(ステロイドを含む)、ヘテロ環)、カチオン性基(例えば、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、グアニジニウム。グリシン、リシン、オルニチン、アルギニンのようなアミノ酸によるアシル化を含む)、アニオン性基(例えば、カルボキシレート、サルフェート、ホスフェート)または親水性(例えばPEG)カルバメートによるN−アシル化。N−BocまたはN−Cbz基でモルホリン窒素を保護してから、有機分子触媒的開環オリゴマー化またはポリマー化を行うと、脱保護後、カチオン性ポリマーまたはオリゴマー主鎖を得ることができる。
(2)カーゴ複合体の形成と、その後の生分解によるカーゴ放出を可能にするように選択した上記の考え得る官能基による、エステルカルボニルの隣におけるα−アルキル化または官能化。
(3)上記の官能基による、モルホリン窒素の近位におけるアルキル化。
(4)上記の修飾を組み合わせたもの。
加えて、コポリマーまたはコオリゴマー(ブロックまたは統計コポリマーまたはコオリゴマー)は、2つ以上のモルホリン−2−オンモノマーを混合することによって、または1つもしくは複数のモルホリン−2−オンモノマーを、本明細書に記載されている1つもしくは複数の環状カーボネートモノマーとコポリマー化(もしくはコオリゴマー化)することによって作製できる。これらのカーボネートモノマーには、同様の多様性の側鎖官能基、高親油性基またはカチオン性基を組み込んで、オリゴヌクレオチドの安定性、送達及び放出の特性を調節できる。さらに、様々なその他の市販の環状エステルモノマー(ラクチド、グリコリド、バレロラクトン及び/またはカプロラクトンが挙げられるが、これらに限らない)を用いて、親油性官能基を組み込むことができる。ポリアミノエステルとポリ(カーボネート−co−アミノエステル)の合成は、モルホリン−2−オンモノマーと環状カーボネートモノマーの開環ポリマー化及び/またはコポリマー化を通じて行う。N−Boc保護モルホリノン(MBoc)は、有機分子触媒系を用いて、高変換率(85%超)、調整可能なMn(1kDa〜20kDA)及び低分子量分布(Mw/Mn:1.1〜1.3)にポリマー化する。ポリマー化後のBoc基の脱保護によって、カチオン性(ジプロトン性、第二級アミン)水溶性ポリマーが得られる(D20に0.5M、3日超安定)。さらに、MBocをMTC−ドデシルカーボネートモノマーとコポリマー化してから脱保護すると、適度に帯電したカチオン性物質が高収率(60%超)、狭い多分散性度(1.4PDI未満)、調整可能なブロック長で得られる。ブロック長は、開始剤とモノマーとの比率によって制御する。
ポリアミノエステルとポリ(カーボネート−co−アミノエステル)は、生体適合性かつ生分解性である。そのカチオン性ポリアミノエステルは、新規なpH依存性及びバッファー依存性の崩壊機序を通じて速やかに分解して、一実施形態では、ビス−N−ヒドロキシエチル−2,5−ピペリジンジオン、ビス−ヒドロキシエチルグリシンを生成する。この予想外の分解により、処置濃度において無毒である生成物が得られ、そのモノマー形態(さらなる加水分解の予想産物)は、メイラード反応におけるリン脂質修飾に対する天然のバイオマーカーである。このアミノエステル/カーボネートコポリマーのカーボネートセグメントは、加水分解と脱炭酸を通じて分解し、その副生成物は、無毒であることが以前示されている。その新規なポリ(カーボネート−co−アミノエステル)とオリゴ(カーボネート−co−アミノエステル)には、その独自の分解機序により、遺伝子送達剤としての予想外の性能が見られる。これらの新規物質は、適度な理論的電荷比(例えば、約10:1)でmRNAと非共有結合で複合体を形成し、mRNAを保護、送達及び放出し、その結果、優れたトランスフェクション効率(いくかのケースでは99%超)をもたらし、インビトロ及びインビボで遺伝子発現を強固に誘導する。この方策は、様々な長さ(1000及び2000ヌクレオチドの試験転写産物)のmRNA分子の送達に有効である。一実施形態では、遺伝子送達は、カチオン性ポリ(カーボネート−co−アミノエステル)とアニオン性カーゴを配合して、200〜400nmのサイズの自己組織化粒子を形成することを通じて行う。これらの粒子は、細胞内遺伝子送達に必要なタイムスケールにおいて安定しており、その後、細胞に進入すると、オリゴヌクレオチドカーゴを放出する。いずれかの特定の理論に束縛されるものではないが、これらの物質は、ビス−N−ヒドロキシエチル−2,5−ピペリジンジオン生成物のビス−ヒドロキシエチルグリシンに分解する。このmRNA/両親媒性物質複合体で、様々なヒト細胞株とヒト以外の細胞株(例えば、HeLa、HaCaT、J774、HEK293)を処理すると、インビトロにおいて、及び複数の投与方法(試験した筋肉内投与及び静脈内投与)を通じてインビボにおいて、タンパク質の発現(例えば、GFP、ルシフェラーゼ)が誘導される。
タンパク質の発現は、蛍光レポーター遺伝子をコードするmRNAを用いて、フローサイトメトリー及び蛍光顕微鏡(GFP)、ならびに生物発光(ホタルルシフェラーゼ)によって測定されている。このポリ(カーボネート−co−アミノエステル)は、市販の標準的なLipofectamine2000と、siRNAの送達に関して過去に説明された他の多くの鉛化合物よりも効率的なトランスフェクション剤であることが示されている。
実施形態では、遺伝子送達は、得られる複合体の安定性とサイズを調整し、細胞取り込み量を増加させ、その複合体からのmRNAの放出速度を調整し、カーゴmRNAの発現を増加させるように選択した第3の成分の存在下で、混合両親媒性オリゴマーとmRNAカーゴとを配合することによって実現させる。第3の成分としては、配位性金属(Zn+2、Mg+2、Ca+2など)、動的非共有結合性架橋剤(炭水化物など)、対イオン(Cl−、AcO−、サクシネート及びシトレートなど)、ならびに溶解性調節剤(脂質及びPEGなど)が挙げられるが、これらに限らない。
この技術の用途としては、以下のものを挙げてよい。臨床用途:(1a)核酸トランスフェクションベクター:DNAとRNAの使用は長年、遺伝病を治療するものとして提案されてきているが、遺伝子療法の臨床での使用への最大の障壁は依然として、オリゴヌクレオチドカーゴの有効な送達である。(1b)感染症を予防するためのRNAワクチンの接種:mRNAベースのワクチンには、安全面で、DNAワクチンを上回る大きなメリットがあるが、現時点では、臨床においては、細胞へのmRNAの送達によって制限されている。本願は現在、臨床試験が行われているが、最新技術では、エレクトロポレーションによるインビトロトランスフェクション用に、初代細胞を患者から取り出してから、その後、トランスフォーメーション細胞を患者に再導入することが必要である。この方法は、インビボでmRNAの発現を直接誘導するための本発明の送達技術を用いて、大きく改善できる。(1c)幹細胞誘導:4つの既知の転写因子の発現を誘導するために、本発明の技術を用いることによって、未分化幹細胞において多能性を誘導できる。ポリ(カーボネート−co−アミノエステル)送達ビヒクルのモジュール型の性質により、同時に、4つのすべての必要なmRNA転写産物を容易に送達可能になる。(1)基礎研究用途(培養細胞のインビトロトランスフェクション、CRISPR/Cas9を用いる遺伝子編集、組み合わせ遺伝子発現(mRNA翻訳)と遺伝子ノックダウン(RNAi)を用いる経路検証、がん免疫療法、アレルギー耐性、タンパク質補充療法、遺伝子編集、診断法が挙げられるが、これらに限らない)
本発明で開示する複合体、組成物及び方法の利点としては、例えば、下記の点を挙げてよい。
(1)トランスフェクションが難しい細胞株(J774マクロファージなど)でも、市販のトランスフェクション剤(Lipofectamine2000など)よりも、インビトロでのmRNAトランスフェクション効率が高く、それにより、有効性が向上すると同時に、忍容性が高くなる。
(2)インビボ(BALB/cマウス)での強固な遺伝子発現により、この技術の臨床への適用性が示されており、この技術により、カチオン性担体(リポフェクタミン(lipofectamine)など)の毒性が回避され、臨床において、遺伝子の送達と発現のエキソビボ法に対する代替策が得られる。
(3)異なる投与経路によって異なるインビボ遺伝子発現を実現でき、静脈内注射を行うと、肝臓と脾臓での発現が優勢となり、(例えば)筋肉内送達では、投与部位で局所発現が維持される。経鼻送達は、粘膜及び/または肺への取り込み経路をもたらす。
(4)既知の代謝物(ビス−ヒドロキシエチルグリシン)に速やかに分解され、これにより、効率的な遺伝子発現が可能になる。
(5)例えば、オリゴヌクレオチド担持粒子により、低pH環境(皮膚または腸管など)では安定性を示し、高pH環境では分解するなど、pH依存的な形でmRNAを放出する。
(6)分子量が目標値であり、分散性に対する制御が高度なオリゴマー、ポリマーまたはブロック/統計コポリマーもしくはコオリゴマーを作製するために、無金属合成を通じて、材料が容易に手に入る。
(7)形成される粒子の表面に標的化リガンド(フォレートまたはビオチンなど)を付加するか、またはモノクローナル抗体に結合することによって、材料を標的化しやすい。
(8)カチオン性ポリアミノエステルドメインが単離可能な中性小分子に崩壊する特有の機序により、生体適合性/生分解性生成物のビス−N−ヒドロキシエチル−2,5−ピペリジンジオン(ヒドロキシエチルグリシンの環状ダイマー)が形成される。
本発明の複合体、組成物及び方法の特徴としては、下記のものが挙げられる。実施形態では、ポリ(カーボネート−co−アミノエステル)ポリ(アミノエステル)と、それに由来するカチオン性物質は、下記の特性と機能のうちの少なくとも1つを示すことができる。
(1)生体適合性/生分解性ヒドロキシエチルグリシンダイマーをもたらす、カチオン性ポリアミノエステルの特有のpH応答性崩壊機序。オリゴヌクレオチドカーゴの放出を導く、これらの材料のドメインは、カチオン性アンモニウムを不可逆的に中和させて、アニオン性カーゴの放出を速やかに誘発する予想外の分子内結合形成イベントを介して生じるという点で、その他の応答性生体材料の中でも独特である。
(2)分子内分解の単離可能生成物(ヒドロキシエチルグリシンにさらに分解するビス−N−ヒドロキシエチル−2,5−ピペリジンジオンなど)。
(3)送達用にアニオン性カーゴを粒子に静電的にパッケージングしてから、細胞インターナリゼーション後に、すみやかに放出するように、活性の時間的ウインドウをもたらす。
(4)巨大分子構造に対する制御を行いながら、複数のラクトンモノマーのコポリマー化を可能にする。官能化モノマーをブロックまたは統計構造でポリマー化でき、さらに、これにより、環状カーボネートまたはホスフェートのように、複数のモノマー種の組み合わせが可能になる。
(5)これらの物質のインビボ使用は、局所投与または全身投与したときでも、急性毒性なしに行うことができ、治療的応答に必要な濃度での高い忍容性が示されている。
(6)遺伝子送達ビヒクルとして、ポリ(カーボネート−co−アミノエステル)を使用することにより、メッセンジャーRNAを含むオリゴヌクレオチドの効率的な送達と放出が可能になる。MTC−ドデシルカーボネートモノマーとN−Bocモルホリン−2−オンモノマーの両親媒性ブロックコオリゴマーを巨大なアニオン性カーゴ(mRNAなど)と配合して、安定な400nm未満の粒子を形成できる。得られるこれらの粒子は、細胞に有効に取り込まれて、そのmRNAカーゴを放出して、強固な遺伝子発現をもたらすことができる。この概念は、複数の細胞株においてインビトロで、また、マウス研究においてインビボで実証されている。これらの物質の有効性は、中性小分子のビス−N−ヒドロキシエチル−2,5−ピペリジンジオン、ビス−ヒドロキシエチルグリシンを形成する、カチオン性アミノエステルブロックのpH応答性転位によるものであることが示されている。過去に、他のカチオン性遺伝子送達ビヒクルが報告されているが、上記のオリゴ(カーボネート−co−アミノエステル)は、細胞取り込みに適するタイムスケールでmRNA(またはその他のオリゴヌクレオチド)カーゴを放出する特有の能力と、その忍容性により、独特のものであり、最高レベルの性能を持つものである。
(7)MTC−ドデシルカーボネートドメインとN−Bocモルホリン−2−オンドメインの両方における平均DP12のジブロックが最適に機能する点で、実験によって定められた、mRNAの送達に最適な長さは、本発明者の従来技術からかけ離れた教示である。この長さは、市販のカチオン性ポリアミンベクター(PEIなど)よりもかなり短く、本発明者が以前発見したsiRNA送達ベクターよりも長い(参照:WO2013036532A1及びPNAS2012,109(33),13171−13176)。
一態様では、本発明で提供するのは、細胞への核酸のトランスフェクション方法である。この方法は、細胞と、本願の他の箇所に説明されている細胞透過性複合体とを接触させることを有することができる。いくつかの実施形態では、この方法は、細胞で遺伝子編集を行うことができる。実施形態では、この遺伝子編集には、単離または操作ヌクレアーゼ系を用いて、生物のゲノムにおいて、DNAを挿入、欠失または置換するタイプの遺伝子操作であるゲノム編集(genome−edition)またはゲノム編集(genome editing)を含めることができる。特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法を用いて、トランスフェクション細胞において遺伝子編集を行うことのできる遺伝学的ツールまたは系を送達できる。遺伝子編集のための遺伝学的ツールまたは系のいくつかの非限定的な例としては、CRISPR−Cas系とトランスポゾン系が挙げられる。
一態様では、いくつかの実施形態によるトランスフェクション方法によってトランスフェクションする核酸(すなわちカーゴ核酸)は、細胞のゲノムにおける標的配列とハイブリダイズするCRISPR−Cas系ガイドRNAをコードする第1のヌクレオチド配列と、Cas9タンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列とを有するベクターを1つ以上有することができる。特定の実施形態では、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列は、同じベクターに配置することも、異なるベクターに配置することもできる。
概して、CRISPR/Cas9を採用している系は、遺伝子編集において、高い忠実度と、比較的簡潔な構造をもたらす。この系は、その特異性に関しては、標的配列とプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)という2つの因子に依存することができる。その標的配列は例えば、crRNAアレイにおける各CRISPR座位の一部として、20塩基長であることができる。crRNAアレイは、特有の標的配列を複数有することができる。Cas9タンパク質は、宿主DNAの塩基対と結合する配列を用いることによって、宿主のゲノム上の正確な位置を選択できる。宿主ゲノムのPAM配列は、Cas9によって認識できる。エレメンツをアセンブルして、例えば1つ以上のプラスミドにして、細胞にトランスフェクションしたら、Cas9タンパク質が、crRNAの助けを借りて、宿主細胞のDNAにおける正確な配列を見つけ、Cas9バリアントに依存して、そのDNAに一本鎖切断または二本鎖切断を作る。宿主DNAにおける適切な間隔の切断によって、相同配向型修復を誘発できる。DNA修復用鋳型の供給によって、ゲノム内の意図する位置に、特定のDNA配列を挿入可能にできる。新たな配列は、導入されると、細胞の遺伝物質の一部となり、その娘細胞に受け継ぐことができる。当該技術分野においては、有効なsgRNA配列の設計を補助するために、多くのオンラインツールが入手可能である。いくつかの実施形態によれば、本発明による特定の実施形態による方法と組成物は、CRISPR−Cas系ガイドRNAをコードするヌクレオチド配列と、Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列を送達またはトランスフェクションして、トランスフェクション細胞において遺伝子編集を誘導できる。
いくつかの実施形態では、特定の実施形態によるトランスフェクション方法によってトランスフェクションするカーゴ核酸は、CRISPR RNA(crRNA)を有することができる。いくつかの実施形態では、このcrRNAは、CRISPR−Cas系ガイドRNAをコードする第1のヌクレオチド配列と同じベクター内にあることができる。
いくつかの実施形態では、特定の実施形態によるトランスフェクション方法によってトランスフェクションするカーゴ核酸は、トランス活性化RNA(tracrRNA)を有することができる。いくつかの実施形態では、このtracrRNAは、Cas9タンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列と同じベクター内にあることができる。
いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態によるトランスフェクション方法で用いるCas9タンパク質は、トランスフェクション細胞での発現に合わせてコドン最適化されていることができる。
別の態様では、いくつかの実施形態によるトランスフェクション方法によってトランスフェクションする核酸(すなわちカーゴ核酸)は、トランスポザーゼをコードする第1のヌクレオチド配列と、トランスポザーゼ認識部位に隣接する目的遺伝子の核酸配列を有する第2のヌクレオチド配列とを有するベクターを1つ以上有することができる。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列は、同じベクターに配置することも、異なるベクターに配置することもできる。
転移性エレメント(またはトランスポゾン)とは概して、ゲノム内のその位置を変えることのできるDNA配列を指し、変異を起こしたりまたは逆転したりするとともに、細胞の遺伝的組成とゲノムサイズを変更したりすることがある。トランスポザーゼは概して、トランスポゾンに結合して、例えばカットアンドペーストの機序または複製型転移の機序によって、ゲノムの別の部分へのトランスポゾンの移動を触媒できる酵素を指す。細胞において、トランスポザーゼと、トランスポザーゼ認識部位に隣接する目的遺伝子を導入することによって、その目的遺伝子の細胞ゲノムへの挿入を誘導できる。いくつかの実施形態によれば、本発明による特定の実施形態による方法と組成物は、トランスポザーゼをコードする核酸と目的遺伝子を送達またはトランスフェクションして、トランスフェクション細胞において遺伝子編集を誘導できる。
いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態によるトランスフェクション方法で用いるトランスポザーゼは、ゲノム配列を認識して、切り取ることができる。いくつかの別の実施形態では、そのトランスフェクション方法によってトランスフェクションする目的遺伝子の核酸配列は、トランスフェクション細胞のゲノムに組み込むことができる。
いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態によるトランスフェクション方法によって行う遺伝子編集では、DNAの欠失、遺伝子の破壊、DNAの挿入、DNAの逆位、点変異、DNAの置換、ノックイン及びノックダウンのうちの1つ以上を行うことができる。
免疫応答の誘導方法
別の態様では、本発明で提供するのは、対象における免疫応答の誘導方法である。いくつかの実施形態では、この方法は、細胞透過性複合体を用いて、疾患または状態を治療及び/または予防できる。この方法は概して、本明細書に記載されている細胞透過性複合体または細胞透過性複合体を有する医薬組成物を治療上有効な量、単独で(例えば単独療法で)、あるいは1つ以上の追加の成分、例えば製薬学的に許容可能な賦形剤及び/または追加の治療剤と組み合わせて(例えば併用療法で)、その投与が必要な対象に投与することを伴う。
いくつかの実施形態では、細胞透過性複合体または細胞透過性複合体を有する医薬組成物は、その細胞透過性複合体またはその医薬組成物を投与された対象において、免疫応答を誘導できるワクチンとして用いることができる。
いくつかの実施形態では、ワクチンは、対象において疾患または状態の発症を予防するかまたはその発症の可能性を低減できるように、予防活性を有することができる。ワクチンを予防目的で用いるいくつかの例では、対象は、疾患または状態が見られない動物、例えば、疾患もしくは状態と診断されなかったか、または疾患もしくは状態と関連する顕著な症状が見られないヒトであることができる。いくつかの別の実施形態では、ワクチンには、疾患または状態の治療に使用できるような治療効果がある。治療用ワクチンのいくつかの例としては、すでにがんに罹患している患者に投与できるがんワクチンを挙げることができるが、これらに限らない。このがんワクチンは、1つ以上の抗がん活性、例えば、がん細胞の数の低減、がんの大きさの縮小、がん細胞の殺傷、転移の低減及び/または阻害、ならびにがん細胞の成長及び/または増殖の低減を示すことができる。いくつかの別の実施形態では、がんワクチンは、特に、がんの素因があるとみなされているが、その時点ではがんではない対象に、予防目的で用いることもできる。特定のがんの素因がある対象に予防ワクチンを投与して、その対象において、そのがんを予防したり、またはそのがんの発症の可能性を低減したりできる。
一態様では、本発明による開示は、疾患に対する免疫応答を誘導する必要がある対象において、疾患に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。この方法は、細胞透過性複合体を有効量、対象に投与することを含むことができる。
いくつかの実施形態では、細胞透過性複合体は、その複合体を投与される対象において、免疫応答を誘導できるワクチンとして用いることができる。この複合体は、カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合している核酸を含むことができ、そのカチオン性両親媒性ポリマーは、pH感受性崩壊性ドメインを有することができる。
いくつかの実施形態では、ワクチンまたはワクチン組成物の標的とする疾患または状態としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、がん疾患、感染症、代謝性疾患、発達性疾患、心血管疾患、肝疾患、腸疾患、内分泌疾患、神経疾患またはその他の疾患を挙げることができるが、これらに限らない。
いくつかの実施形態では、ワクチンまたはその組成物に含まれる核酸は、抗原または免疫原性エピトープをコードする核酸配列であることができる。例えば、感染症が懸念されるときには、ワクチンに含まれる核酸は、その感染症の病原体(例えば病原性細菌またはウイルス)で発現することが知られている1つ以上のペプチドをコードでき、対象に投与すると免疫応答を誘導できる。この疾患が特定のタイプのがんである別の例では、ワクチン組成物を用いて対象に投与する核酸は、そのがんと関連する1つ以上のペプチド、例えば、実質的にそのタイプのがんのみで発現するペプチド、またはその発現レベルが、非がん細胞よりも、そのがん細胞において顕著に高いペプチドをコードできる。抗原ペプチド(複数可)または免疫原性ペプチド(複数可)をコードする核酸を対象に投与して、対象の特定の細胞に送達(すなわちトランスフェクション)すると、トランスフェクションした核酸は最終的には翻訳されて、抗原ペプチド(複数可)が発現できる。発現したペプチド(複数可)には、抗原性または免疫原性があるので、対象において、その発現ペプチドに対する免疫応答を誘導できる。誘導した免疫応答は、例えば、対象がすでに疾患を罹患している場合には、特異性を有する罹患細胞集団を低減して、治療効果を示すことによって、標的の疾患を治療するように機能できる。あるいは、対象は、適応免疫応答の標的となる免疫原性ペプチドに対する初期応答後、適応免疫が免疫記憶を惹起できるこのワクチン接種によって、獲得免疫応答を有することができ、その後、標的に遭遇すると、標的に対して、増強された応答が示され、予防効果が発揮される。
いくつかの実施形態では、ワクチン接種では、2つの別々の種類(または配列)の核酸を1つのワクチン組成物で送達することによって、治療効果と予防効果の二重の活性をもたらすことができる。この2つの別々の核酸は、2つの異なる免疫原性ペプチドをコードできる。したがって、いくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、(1)既存の疾患または状態に対して、より迅速な治療効果を誘導できる第1の免疫原性ペプチドをコードする第1の核酸と、(2)異なる疾患または状態の今後の発症に備えて、対象において、適応免疫を誘導することを目的とする異なる第2の免疫原性ペプチドをコードする第2の核酸とをトランスフェクションできる。いくつかの実施形態では、ワクチンは、2つ以上の異なる核酸を対象に送達でき、各核酸は独立して、それぞれ治療効果または予防効果を発揮する。
実施形態では、ワクチン組成物は、2つ以上の異なる種類(または異なる式)のカチオン性両親媒性ポリマーを有することができる。あるいは、ワクチン組成物は、1つの種類(または1つの式)のみのカチオン性両親媒性ポリマーを有することができる。いくつかの実施形態では、1つの種類のカチオン性両親媒性ポリマーは、1つの種類(配列)の核酸に非共有結合できる。あるいは、1つの種類のカチオン性両親媒性ポリマーは、2つ以上の種類(配列)の核酸に非共有結合できる。したがって、いくつかの例では、2つ以上の配列(または種類)の核酸を送達するために、それぞれ異なる配列の核酸に結合している異なる種類のカチオン性両親媒性ポリマーの混合物を対象に投与できる。あるいは、2つ以上の配列(または種類)の核酸を送達するために、複数の種類(または配列)の核酸に結合している1つの種類(または式)のカチオン性両親媒性ポリマーを対象に投与できる。あるいは、1つの配列(または種類)の核酸に結合している1種類(または式)のカチオン性両親媒性ポリマーを対象に投与することもできる。
いくつかの実施形態では、ワクチンまたはその組成物に含まれる核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化RNA(tracrRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、ミニサークルDNA、ゲノムDNA(gDNA)であることができる。代替的な実施形態では、ワクチンまたはその組成物に含まれる核酸は、mRNAであることができる。いくつかの実施形態では、対象において、ワクチン接種によって、核酸を1つ以上の細胞にトランスフェクションする。いくつかの実施形態では、ワクチン組成物によって、1つまたは2つ以上の核酸配列をトランスフェクションできる。したがって、いくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、2つの異なる核酸を含み、その各核酸は、それぞれ異なる抗原ペプチドをコードする。したがって、ワクチン接種が必要な対象にワクチンを投与すると、対象において、2つ以上の種類の抗原エピトープを発現させて、免疫応答を誘導できる。代替的な実施形態では、対象において、1つの種類のエピトープを発現させて、免疫応答を誘導できるように、ワクチン接種によって、1つの種類の核酸をトランスフェクションできる。
いくつかの実施形態では、免疫応答の誘導が必要な対象の免疫応答の誘導方法は、細胞透過性複合体を有効量、対象に投与することに加えて、追加の医薬組成物を1つ以上、有効量で対象に投与することを有することができる。いくつかの実施形態では、この追加の医薬組成物は、抗がん剤と、任意に、製薬学的に許容可能な担体とを含むことができる。追加の抗がん剤は、例えば、抗体、小分子及び大分子、またはこれらを組み合わせたものであることができる。抗がん活性の例としては、がん細胞の数の低減、がんの大きさの縮小、がん細胞の殺傷、転移の低減及び/または阻害、ならびにがん細胞の成長及び/または増殖の低減が挙げられるが、これらに限らない。いくつかの例では、細胞透過性複合体と追加の医薬組成物の投与は、個別に投与した場合の効果を合わせたものを上回る相乗効果をもたらすことができる。
組成物
一態様では、本発明による本開示は、本明細書に記載されているようなカチオン性両親媒性ポリマーを提供する。いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、核酸に非共有結合できる。いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、1つ以上の親油性ポリマードメインと、1つ以上のpH感受性崩壊性ドメインを有することができる。いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、1つ以上の任意の成分とともに、組成物に調合できる。カチオン性両親媒性ポリマーまたはその組成物は、1つ以上の核酸と非共有結合させることによって、細胞透過性複合体に調合できる。
別の態様では、本発明による本開示は、核酸とカチオン性両親媒性ポリマーとを含む細胞透過性複合体を提供する。いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、核酸に非共有結合できる。いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーは、1つ以上の親油性ポリマードメインと、1つ以上のpH感受性崩壊性ドメインを有することができる。いくつかの実施形態では、細胞透過性複合体は、1つ以上の任意の成分とともに、組成物に調合できる。
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーまたは細胞透過性複合体は、核酸を細胞にトランスフェクションするのに用いることのできる組成物に調合できる。核酸を細胞にトランスフェクションできるこれらの組成物は、少なくともいくつかの実施形態では、トランスフェクション組成物という。いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーに結合して、細胞透過性複合体を形成できるカーゴ核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化RNA(tracrRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、ミニサークルDNA、ゲノムDNA(gDNA)であることができる。カチオン性両親媒性ポリマーを有するが、カーゴ核酸を有さないトランスフェクション組成物は、例えば、トランスフェクションの前に、そのカチオン性両親媒性ポリマーと核酸を接触(または混合)させて、カーゴ核酸とともに調合できる。
実施形態では、本明細書に開示されている組成物と方法を用いるトランスフェクションによって、1つ以上の細胞特性を変化させることができる。いくつかの例では、トランスフェクションによって、トランスフェクション細胞において、遺伝子発現プロファイルを変化させることができる(例えば、1つ以上の遺伝子産物(例えばRNAまたはペプチド)の発現を増減させることができる)。いくつかの他の例では、トランスフェクションによって、ゲノム構造を変化させることができる(例えば、CRISPR/Cas9系またはトランスポゾン系の成分をトランスフェクションすることによって、遺伝子編集を行うことができる)。いくつかの他の例では、トランスフェクションによって、細胞経路の活性を調節できる。したがって、このような例のいくつかでは、トランスフェクションによって、幹細胞の誘導を行うことができる。いくつかの他の例では、この組成物は、治療効果のあるカーゴ核酸を送達(またはトランスフェクション)して、そのトランスフェクションによって、疾患または状態を治療及び/または予防できるようにできる。いくつかの実施形態では、治療用カーゴ核酸を送達(またはトランスフェクション)する組成物は、その組成物を投与された対象において、免疫応答を誘導できる。上記から明らかなように、本開示による組成物(カチオン性両親媒性ポリマーまたは細胞透過性複合体を有する組成物を含む)は、カーゴ核酸とその機能に応じて、トランスフェクション細胞または投与された対象において、様々な成果をもたらすのに用いることができる。
医薬組成物
いくつかの実施形態では、カチオン性両親媒性ポリマーまたは細胞透過性複合体を有する組成物は、治療的目的で用いることができる。いくつかの実施形態では、治療的目的には、予防目的(疾患または状態の発症を防ぐ目的)と、治療目的(既存の疾患または状態を治療する目的)が含まれる。組成物が、カチオン性両親媒性ポリマーを有するが、カーゴ核酸を有さないときには、対象に投与する前に、治療効果を発揮できるカーゴ核酸をカチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合させることができる。
いくつかの実施形態では、組成物は、ワクチンまたはその組成物、すなわち、ワクチンと、任意に、製薬学的に許容可能な担体とを含む組成物であることができる。そのワクチンまたはワクチン組成物を用いて、疾患もしくは状態、または疾患もしくは状態と関連する病原体を予防及び/または治療できる。いくつかの実施形態では、ワクチンまたはワクチン組成物は、カチオン性両親媒性ポリマーとカーゴ核酸とを有する細胞透過性複合体を含む。いくつかの実施形態では、細胞透過性複合体は、対象に投与すると、免疫応答、すなわち免疫原性を誘導できる。この免疫原性は、少なくとも部分的には、カーゴ核酸によってコードされる1つ以上の抗原ペプチドが、トランスフェクション細胞において発現すると、誘導できる。
一態様では、本明細書に開示されているカチオン性両親媒性ポリマーまたは細胞透過性複合体は、医薬組成物に配合できる。このカチオン性両親媒性ポリマーは、pH感受性崩壊性ドメインを有することができる。一実施形態では、医薬組成物はさらに、製薬学的に許容可能な賦形剤及び/または製薬学的に許容可能な担体を含むことができる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、活性成分として、カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合している核酸を有する細胞透過性複合体を有するとともに、さらに、投与経路に応じて、製薬学的に許容可能な賦形剤または添加剤を含むことができる。このような賦形剤または添加剤の例としては、水、製薬学的に許容可能な有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ナトリウムアルギネート、水溶性デキストラン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、製薬学的に許容可能な界面活性剤などが挙げられる。用いる添加剤は、適宜、本開示の剤形に応じて、上記の添加剤またはそれらを組み合わせたもの(ただし、これらに限らない)から選択できる。
いくつかの実施形態では、製薬学的に許容可能な担体は、免疫アジュバントである。いくつかの例では、免疫アジュバントとしては、トール様レセプター(TLR)のアゴニスト、STING経路のアゴニスト、CD40、OX40、CTLA4、PD1またはPD1−Lに対するアゴニスト抗体、フロイントアジュバント、ブリオスタチン、及びCD40、OX40、CD137、PD1、CTLA4に対するリガンド、ならびにこれらをいずれかに組み合わせたものを挙げることができるが、これらに限らない。いくつかの実施形態では、アジュバントは、細胞透過性複合体とともに対象に併用投与すると、細胞透過性複合体によって誘導される免疫原性を向上させることができる。
本開示の医薬組成物の製剤は、選択した投与経路によって様々であることができる(例えば、液剤、乳剤)。投与経路は、例えば、筋肉内経路、皮下経路、静脈内経路、リンパ内経路、皮下経路、筋肉内経路、眼内経路、局所皮膚経路、局所結膜経路、経口経路、膀胱内(膀胱)経路、動脈内経路及び膣内経路であることができる。
いくつかの実施形態では、組成物は、凍結保護剤を含むことができる。凍結保護剤の非限定的な例としては、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセロール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、スクロース、トレハロース、デキストロース、ならびにこれらをいずれかに組み合わせたものが挙げられる。
いくつかの実施形態では、製剤は、放出制御型製剤である。「放出制御型製剤」という用語には、徐放型と持続放出型の製剤が含まれる。放出制御型製剤は、当該技術分野において周知である。これらの製剤は、組成物の徐放、周期的放出、パルス放出または遅延放出を可能にする賦形剤を含む。放出制御型製剤としては、組成物をマトリックスに埋め込んだ製剤、腸溶性コーティング、マイクロカプセル化、ゲル及びヒドロゲル、インプラント、ならびに組成物の放出制御を可能にするいずれかの他の製剤が挙げられるが、これらに限らない。
一態様では、細胞透過性複合体またはその組成物を有する部分のキットを提供する。別の態様では、核酸に結合していないカチオン性両親媒性ポリマーまたはその組成物を有する部分のキットを提供する。このキットはさらに、カチオン性両親媒性ポリマーとカーゴ核酸を用いて、細胞透過性複合体を作製するためのプロトコールを説明する文書または説明を含むことができる。このキットの文書または説明では、その組成物の投与が必要な対象に組成物を投与するためのプロトコールも説明できる。
本明細書に記載されている治療製剤は、純度が所望の程度である活性成分、すなわち、免疫原性物質(複数可)と、任意の生理学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤とを混合することによって、保存用に調製できる。許容可能な担体、賦形剤または安定剤は、用いる投与量と濃度において、被投与者に無毒であることができ、バッファー(ホスフェート、シトレート及びその他の有機酸など)、抗酸化剤(アスコルビン酸とメチオニンを含む)、保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヘキサメトニウムクロライド、ベンズアルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなど)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール及びm−クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなど)、単糖、二糖及びその他の炭水化物(グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む)、キレート剤(EDTAなど)、糖(スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなど)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、金属複合体(例えばZn−タンパク質複合体)、及び/または非イオン性界面活性剤(TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)など)が挙げられる。
本発明の製剤は、2つ以上の活性化合物(例えば、細胞透過性複合体を有する免疫原性物質(複数可)に加えて、第2の活性剤)も含んでよく、それらは、相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を得られるように選択してよい。このような分子は好適には、意図する目的に有効であり得る量で共存できる。
投与
いくつかの態様では、提供するのは、所望の活性を細胞または対象にもたらすように、組成物を細胞または対象に送達する方法である。いくつかの実施形態では、組成物は、カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合しているカーゴ核酸を有する細胞透過性複合体を含むことができる。カーゴ核酸は、細胞にトランスフェクションしたり、または対象に投与したりすると、その核酸配列の性質に応じて、様々な意図する作用をもたらすことができる。意図する作用のいくつかの非限定的な例としては、遺伝子発現の調節、細胞経路の調節、ゲノム編集及び免疫応答の誘導が挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は、対象において、意図する作用の少なくとも一部をもたらすのに十分である有効量で、対象に投与できる。
「投与」、「投与すること」などは、組成物との関連で用いるときには、直接的投与(細胞へのインビトロ投与、細胞へのインビボ投与、医療従事者もしくは対象による自己投与による対象への投与であってよい)、及び/または間接的投与(本開示の組成物を処方する行為であってよい)の両方を指す。本明細書において、細胞に関して用いるときには、組成物を細胞に導入することを指す。典型的には、有効量を投与し、その量は、当業者が定めることができる。いずれかの投与方法を用いてよい。化合物(例えば薬物及び抗体)は、例えば、化合物を細胞培養培地に加えるか、またはインビボ注射することによって、細胞に投与してよい。対象への投与は、例えば、血管内注射、直接的腫瘍内送達などによって行うことができる。
投与は、対象への経口投与、座剤としての投与、局所接触、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病巣内投与、髄腔内投与、鼻腔内投与、もしくは皮下投与、または徐放器具、例えばミニ浸透圧ポンプの埋め込みを意味してよい。投与は、非経口経路と経粘膜経路(例えば、口腔内経路、舌下経路、口蓋経路、歯肉経路、経鼻経路、膣内経路、直腸内経路または経皮経路)を含むいずれかの経路によるものである。非経口投与としては、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、関節内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、脳室内投与及び頭蓋内投与が挙げられる。その他の送達方法としては、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが挙げられるが、これらに限らない。「併用投与する」とは、1つ以上の追加の療法、例えば、化学療法、ホルモン療法、放射線療法または免疫療法のようながん療法の実施と同時、その実施の直前または直後に、本明細書に記載されている組成物を投与することを意味する。本開示の化合物は、患者に、単独で投与することも、併用投与することもできる。併用投与には、化合物を個別に、または組み合わせて(2つ以上の化合物)同時投与または順次投与することが含まれるように意図されている。
対象に行う投与の量と頻度(単回投与または複数投与)は、様々な要因、例えば、対象が別の疾患を罹患しているか、投与経路、被投与者の体格、年齢、性別、健康状態、体重、肥満度指数及び食事、治療する疾患の症状の性質と程度、併用治療の種類、治療する疾患に起因する合併症、または健康に関連するその他の問題に応じて変動し得る。本明細書に記載されている方法と組成物(その実施形態を含む)と併せて、その他の治療レジメンまたは治療剤を用いることができる。確立されている投与法(例えば、頻度と継続期間)の調節と操作は十分に、当業者の能力の範囲内である。
本発明で提供する教示を用いて、あまり毒性を示さないうえに、特定の患者に見られる臨床症状を治療するのに有効である有効な予防レジメンまたは治療レジメンを計画できる。この計画には、化合物の効能、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の存在と深刻度、好ましい投与方法、及び選択した薬剤の毒性プロファイルのような要因を考慮することによって、活性化合物を慎重に選択することが伴わなければならない。
いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類動物、例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類動物、ネズミ科動物(すなわち、マウス及びラット)、イヌ、ネコまたはウマである。一実施形態では、対象はヒトである。
いくつかの実施形態では、組成物は、対象の体重1kgあたり約1ng、対象の体重1kgあたり約10ng、対象の体重1kgあたり約50ng、対象の体重1kgあたり約100ng、対象の体重1kgあたり約500ng、対象の体重1kgあたり約1ug、対象の体重1kgあたり約10μg、対象の体重1kgあたり約50ug、対象の体重1kgあたり約100μg、対象の体重1kgあたり約150μg、対象の体重1kgあたり約200μg、対象の体重1kgあたり約250μg、対象の体重1kgあたり約300μg、対象の体重1kgあたり約350μg、対象の体重1kgあたり約375μg、対象の体重1kgあたり約400μg、対象の体重1kgあたり450μg、対象の体重1kgあたり約500μg、対象の体重1kgあたり約550μg、対象の体重1kgあたり約600μg、対象の体重1kgあたり約650μg、対象の体重1kgあたり約700μg、対象の体重1kgあたり約750μg、対象の体重1kgあたり約800μg、対象の体重1kgあたり約850μg、対象の体重1kgあたり約900μg、対象の体重1kgあたり約1mg、対象の体重1kgあたり約10mg、対象の体重1kgあたり約50mg、対象の体重1kgあたり約100mg、対象の体重1kgあたり約500mg、対象の体重1kgあたり約1g、もしくはこれを上回る値、または上記の値の間のいずれかの範囲の用量(または量)で投与できる。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.5μg、約1.0μg、約1.5μg、約2.0μg、約2.5μg、約3.0μg、約3.5μg、約4.0μg、約4.5μg、約5.0μg、約5.5μg、約6.0μg、約6.5μg、約7.0μg、約7.5μg、約8.0μg、約8.5μg、約9.0μg、約9.5μg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約2.5mg、約3.0mg、約3.5mg、約4.0mg、約4.5mg、約5.0mg、約5.5mg、約6.0mg、約6.5mg、約7.0mg、約7.5mg、約8.0mg、約8.5mg、約9.0mg、約9.5mg、約1g、もしくはこれを上回る値、または上記の値の間のいずれかの範囲の用量(または量)で投与できる。いくつかの実施形態では、組成物は、対象の体重1kgあたり約7.5μgまたは約0.375mgの用量(または量)で投与できる。投与は、所望の期間にわたって繰り返すことができ、例えば、約1日〜約5日の期間にわたって、または数日(例えば、約5日)に1回、約1カ月にわたって、約2カ月にわたってなどで繰り返すことができる。上記の重量は、細胞透過性複合体の重量、またはその組成物もしくは医薬製剤の重量であることができる。いくつかの実施形態では、
一実施形態では、組成物は、6時間、12時間、1日に1回、1日おき、または1週間もしくは1カ月ベースの間隔で全身投与または局所投与(例えば、腫瘍内注射、静脈内注射)して、所望の効果を誘発したり、または別段の形で、治療効果をもたらしたりできる。
一実施形態では、組成物、特にがんワクチンに対する奏効率をベースライン対照またはコントロール対照よりも低下させることができる。「奏効率」という用語は、本明細書では、治療後にがんの退縮によって応答する患者の割合を示すように、その通例の意味で用いられている。奏効率には、例えば、部分退縮または完全退縮が含まれる。部分奏効としては、がん細胞の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%または約99%の退縮が挙げられる。いくつかの実施形態では、コントロール対照は、健常な対象、がんの対象(例えば、治療を行うがんの対象、もしくは別のがんの対象)、またはこれらのいずれかの集団から得る。
下記の実施例と詳細なプロトコールによって、本発明の実施形態をさらに例示する。しかしながら、これらの実施例は、実施形態を例示するように意図されているに過ぎず、本発明の範囲を限定するものとしては解釈しないものとする。本願を通じて引用されているすべての参照文献、ならびに公開されている特許及び特許出願の内容は、参照により、本明細書に援用される。
一般的な方法と実験
材料
別段の定めのない限り、試薬は、Sigma−Aldrichから購入し、受領した状態で使用した。1−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−3−シクロヘキシル−チオ尿素(Macromolecules 39(23):7863−7871)、MTC−グアニジンモノマー(J Am Chem Soc 131(45):16401−16403)、MTC−ドデシルモノマー(Proc Natl Acad Sci 109(33):13171−13176)、MTC−ピペリジンモノマー(Chem Commun(1):114−116)、N−Bocモルホリノンモノマー(J Am Chem Soc 136(26):9252−9255)、及びダンシルアルコール(J Am Chem Soc 131(45):16401−16403)はすべて、文献の手順に従って調製した。別段の断りのない限り、市販の溶媒と試薬はすべて、さらなる精製を行わずに使用した。メチレンクロライド(CH2Cl2)とテトラヒドロフラン(THF)は、窒素圧下でアルミナ乾燥カラム(Solv−tek Inc.)に通した。石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、エチルアセテート(EtOAc)及びメタノール(MeOH)は、Fisher Scientificから入手した。重溶媒は、Cambridge Isotope Laboratoriesから購入した。再生セルロース透析膜(Spectra/Por(登録商標)6 Standard RC、MWCO1000)は、Spectrum Laboratories,Inc.から購入した。
mRNA
下記のすべての実施例では、eGFP mRNA(5meC、ψ、L−6101)と、Fluc mRNA(5meC、ψ、L−6107)と、OVA mRNA(5meC、ψ、L−7210)と、Cy5−eGFP mRNA(5meC、ψ、L−6402)は、TriLink BioTechnologies Inc.から購入した。
計器編成
粒径は、Malvern Zetasizer Nano ZS90で、動的光散乱によって測定した。フローサイトメトリー解析は、BD LSRII FACS Analyzerで行った(Stanford University Shared FACS Facility)。レーザー走査共焦点顕微鏡による観察は、CS2油浸対物レンズの40×HC PL APOを備えたLeica SP8 White Light Confocalという顕微鏡を用いて行った(Stanford University Cell Sciences Imaging Facility)。生物発光は、電荷結合素子(CCD)カメラ(IVIS100,Xenogen Corp.,Alameda,CA)を用いて測定し、Living Image Software(Perkin−Elmer)を用いて解析した。エピ蛍光顕微鏡による観察は、広視野励起光源のX−Cite 120QとGFPフィルターセットとを備えたZeiss Axio Observer.Z1で行った。画像は、CoolSNAP HQ2というカメラで得て、画像解析のためにコンピューターに転送した。
細胞株
HeLa細胞、J774細胞、HepG2細胞及びHEK−293細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)と1%ペニシリン/ストレプトマイシンとを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で維持した。CHO細胞は、10%FBSと1%ペニシリン/ストレプトマイシンとを添加したF12培地で維持した。いずれの細胞も、37℃において、5%CO2の雰囲気で増殖させた。細胞は、約80%コンフルエントで継代した。
間葉幹細胞(MSC)は、Huangらの方法(J.Orthopaedic Trans.3(1):26−33)に従って調製した。簡潔に述べると、8週齢の雌CD1マウス2匹から大腿骨を摘出し、その骨の外側から組織を取り出した。その骨の末端を、滅菌したハサミで切断した。ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM10%ウシ胎仔血清で、3mLのシリンジと25gの針を用いて、10cmの組織培養処理ペトリ皿で、4本の骨から骨髄を洗い出した。骨髄を破壊し、ピペッティングによって分散させたが、ろ過したり、別段の操作を行ったりはしなかった。そのペトリ皿を6日間インキュベートしたところ、特徴的な単層が現れた。続いて、その培養液をPBSで2回洗浄し、0.25%トリプシン(Gibco)で5分、37℃においてトリプシン処理した。続いて、その細胞を回収し、75cm2の細胞培養フラスコに移し、90%コンフルエントになるまで3日間インキュベートした。この培養液は、2継代以上維持できたが、増殖は、継代4代目で、大きく低下した。トランスフェクションのために、細胞を24ウェルプレートに、1ウェルあたり1.2×104個播種した。
実施例1.モノマーの合成
いくつかの例では、新規なラクトンモノマーまたはカーボネートモノマーから、多様なカチオン性崩壊性ドメインのCARTを生成する。前駆体とモノマーの合成の例を以下で説明する。
実施例1.1.tert−ブチル2−オキソモルホリン−4−カルボキシレート(N−Bocモルホリノン)の合成:
これらの例では、N−Bocモルホリノンモノマーの合成は、Chung,et al.J.Am.Chem.Soc.,2013,135(20),7593−7602という文献のものから適合した。
tert−ブチル2−オキソモルホリン−4−カルボキシレートの合成:tert−ブチルビス(2−ヒドロキシエチル)カルバメート2.086g(10.2ミリモル)を75mLのCH3CNに溶解し、酸素で5分バブリングした。[(ネオクプロイン)Pd(OAc)]2(OTf)2を398mg(0.38ミリモル)加えた結果、暗赤色溶液が形成された。その反応物を60℃のオイルバスに入れ、酸素をその反応混合物に通じ、TLC(1:1ヘキサン:EtOAc)によってモニタリングした。24時間後、その反応物に、[(ネオ)Pd(OTf)(Ac)]2を263mg(0.25ミリモル)加えた。48時間後、その反応物に、[(ネオクプロイン)Pd(OAc)]2(OTf)2をさらに426mg(0.41ミリモル)加えた。合わせて72時間後、酸素の流れを止めて、反応物を室温まで冷ました。反応混合物を5〜10mLまで濃縮したところ、黒色非粘性混合物を得て、SiO2プラグに入れ、1:1のヘキサン:EtOAcで溶出した。濃縮により、1.766gの黄色油(8.78ミリモル、86.4%)が得られ、これを静置したところ、固化した。この粗生成物を10mLのEt2Oに溶解してから、ヘキサンを20mL加え、−30℃で一晩保存した。沈殿物をろ過によって回収し、ペンタンで洗浄して、白色粉末を1.54g得た(7.67ミリモル、76%収率)。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 4.41 (br, 2 H), 4.26 (s, 2 H), 3.66 (t, 2 H), 1.47 (s, 9H).13C NMR (125 MHz, CD3Cl): δ 28.24, 40.63, 45.49, 67.19, 81.33, 153.49, 166.63. HRMS (m/z):M+C9H15NO4Naに対する計算値:224.0893;実測値:224.0896.
実施例1.2.tert−ブチル7−オキソ−1,4−オキサゼパン−4−カルボキシレート(7−ラクト)の合成:
フレームドライしたフラスコに、tert−ブチル4−オキソピペリジン−1−カルボキシレート(205.8mg、1.03ミリモル)とDCM(10mL)を入れてから、0Cで15分攪拌した。DCM(5mL)中のmCPBA(600.1mg、2.9ミリモル)を2回に分けて加えてから、室温まで昇温させた。18時間後、その反応混合物を分液漏斗に移し、飽和NaCHO3(20mL×3)で洗浄してから、Na2SO4で乾燥し、ろ過した。減圧下で溶媒を除去して、白色固体を317.0mg得た。シリカゲルクロマトグラフィーを行い、9:1のDCM:EtOAcで溶出した。当該画分を濃縮して、白色固体を151.0mg得た(0.71ミリモル、収率68.9%)。
1H NMR (500 MHz, CD
3Cl): δ 4.21 (s, 2 H), 3.82 (s, 2 H), 3.65 (s, 2 H), 2.81 (s, 2 H), 1.46 (s, 9H).
13C NMR (101 MHz, CD
3Cl): δ 173.9, 154.4, 81.1, 69.5, 47.3, 41. 3,37. 6,28.4
実施例1.3.tert−ブチル(2−(ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ)−2−オキソエチル)カルバメートの合成:
フレームドライしたフラスコに、ジエタノールアミン(225mg、2.15ミリモル)とメチル(tert−ブトキシカルボニル)グリシネート(370mg、1.95ミリモル)を入れてから、75Cの熱浴で攪拌した。18時間後、その反応物をシリカプラグに通し、アセトンで溶出した。溶媒を減圧下で除去して、淡黄色油を505.1mg得た(1.93ミリモル、収率99%)。
1H NMR (500 MHz, CD
3Cl): δ 5.7−5.6 (br, 1H), 3.99(d, 2 H), 3.78−3.65 (m, 4H), 3.53−3.35 (m, 4H), 3.05 (br, 1H).
13C NMR (101 MHz, CD
3Cl): δ 170.4, 156.3, 79.9, 60.0, 51.1, 42.4, 28.3
実施例1.4.tert−ブチル(2−オキソ−2−(2−オキソモルホリノ)エチル)カルバメート(グリシンモノマー)の合成:
フレームドライしたフラスコに、ジオール(450mg、1.72ミリモル)とアセトニトリル(12mL)を入れてから、空気で5分バブリングした。その反応物にPd(ネオ)OAc(84.1mg、0.16ミリモル、9.4モル%)を加え、50Cにおいて一定の気流下で攪拌させた。18時間後、その反応物を濃縮し、EtOAc(30mL)でトリチュレーションしてから、ろ過して、泡状オレンジ色残渣を220mg得た。シリカゲルクロマトグラフィーを行い、100%EtOAcで溶出した。当該画分を濃縮して、透明な油を53.1mg得て(0.205ミリモル、収率12%)、これを静置したところ、固化した。
1H NMR (500 MHz, CD
3Cl): δ 5.45−5.3 (br, 1H), 4.5−4.45(q,2 H), 4.28−4.4(d, 2 H), 4.0−3.93(dd,2 H), 3.85−3.7(dt,2 H), 1.45 (s, 9H)
13C NMR (125 MHz, CD
3Cl): δ 167.7, 166.1, 164.8, 155.8, 80.2, 66.9, 65.9, 45.8, 44.1, 42.4, 41.2, 39.3, 28.3, 15.316
実施例1.5.7−Gly(ケトン)の合成:
10mLのTHF中のヒドロキシベンゾトリアゾール(600mg、4.4ミリモル)とEDC−HCl(453mg、2.9ミリモル)と(tert−ブトキシカルボニル)グリシン(520mg)の入ったフラスコに、TEA(500uL)を加え、20分攪拌させた。4−ピペリジノン−HCl−一水和物(462mg、3.0ミリモル)をTHF:H
2Oの10:1混合物(合計11ml)に溶解した溶液を一度に加えた。その反応物を一晩攪拌させた。その反応物を減圧下で濃縮してから、15mLのEtOAcに取り込み、H2O(10mL)中のAcOH(500uL)で洗浄し、その水性相を15mLのEtOAcで抽出した。続いて、合わせた有機層をNaHCO
3(2×20mL)とブライン(1×20mL)で洗浄してから、MgSO
4で乾燥した。減圧下で濃縮して、白色結晶性粉末を375mg得て(収率50%)、さらなる精製をせずに、これを使用した。
実施例1.6.7−Glyモノマーの合成:
7−Glyモノマー:N−グリシニル(Boc)4−ピペリジノン(28mg、0.11ミリモル)の入ったフラスコに、5mLのDCM中のmCPBA(60mg、0.35ミリモル)を加えた。その反応物を0Cで2時間攪拌させてから、その反応混合物に、2mLのDCM中の追加分のmCPBA(20mg、0.12ミリモル)を加えて、一晩攪拌させた。その反応物を減圧下で濃縮してから、10mLのEtOAcに取り込み、NaHCO(4×10mL)で洗浄してから、MgSO
4で乾燥した。9:1のEtOAc:DCMの溶媒系を用いて、SiO
2クロマトグラフィーによって、この粗生成物を精製した。当該画分を減圧下で濃縮して、pdtを21mg得た(収率71%)。
実施例1.7.8員カーボネートベースのモノマーの合成:
8員カーボネートベースのモノマー:これらの例は、J.Am.Chem.Soc.2015,137,13851−13860に報告されている、文献の手順によって調製した。
実施例1.8.tert−ブチル(2−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)カルバメート(Mglut)の合成
tert−ブチル(2−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)カルバメート(Mglut)の合成:(S)−(−)−2−(Boc−アミノ)−1,5−ペンタンジオール1.078g(4.9ミリモル)を10mlのCH
3CN(0.49M)に溶解し、空気で5分バブリングした。[(ネオ)Pd(OTf)(OAc)]
20.233g(0.45ミリモル)を加え、透明なオレンジ色溶液を変化させ、黒色まで暗転させた。その反応物を45℃のオイルバスに入れ、空気をその反応混合物に通じた。反応物を1H NMRによってモニタリングして、5.1ppmにおけるラクトールピークの消失を確認した。44時間をかけて、反応の進行に基づき、[(ネオ)Pd(OTf)(OAc)]
2を合わせて0.310g(0.6ミリモル、12モル%)、少しずつ反応物に加えた。44時間の時点で、
1H NMRによって、反応が完了したことが示された。気流を止めて、反応物を室温まで冷ました。その反応混合物を濃縮し、残渣を50mLのEtOAcに取り込み、超音波処理し、続いて、セライトプラグでろ過してから濃縮して、桃色からオレンジ色の油を0.940g得て、これを静置したところ、固化した。シリカゲルクロマトグラフィーを行い、4:1のDCM:EtOAcで溶出した。当該画分を濃縮して、白色固体を0.480g(2.23ミリモル)得た(収率46%)。スペクトルデータは、過去の報告と整合していた。Xie,X.and Stahl,S.S.J.Am.Chem.Soc.,2015,137(11):3767−3770
実施例1.9.ホスホエステルベースのモノマーの合成
ホスホエステルベースのモノマー:いくつかの例としては、ホスフェートまたはホスホエステルベースのカチオン性崩壊性ドメインの合成が挙げられる。この一例では、過去の文献の手順(McKinlay,C.J.et.al.J.Am.Chem.Soc.2016,138(10),3510−3517、WO2017083637A1)に従って、必要なモノマーを合成した。簡潔に述べると(例えば、2−(6−ビス−bocグアニジノヘキシルオキシ)−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オキシド):2−クロロ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オキシド(797mg、5.59ミリモル、1.25当量)を不活性N
2雰囲気(グローブボックス)下でシュレンクフラスコに秤取した。これを窒素下で氷上に置き、THF(75mL)を加えた。別のバイアルで、グアン(guan)ヘキサノール(7.16g、20.0ミリモル、1当量)をTHF(10mL)に溶解し、トリエチルアミン(2.8mL、20ミリモル、1当量)を加えた。バイアルの中身を10分間かけて、シリンジによってシュレンクフラスコに滴下して、20時間反応させた。反応後、生成物をCelite(登録商標)パッドでろ過した。粗生成物を少量(5mL)のTHFに溶解し、20mLの乾燥ペンタンでトリチュレーションした。生成物を−55℃のフリーザーで一晩、オイルアウトさせた。ペンタン層を除去し、真空下で10時間乾燥して、純粋な生成物を、わずかに黄色の油として得た(収率79%)。このモノマーは、下記の標準的な手順に従って、合成と脱保護を行った。
実施例2.CARTのポリマー化
一般的な手順
モノマーと開始剤のトルエン溶液に、DBU:TUの助触媒系の溶液を加える。その反応物を2時間攪拌し、続いて、崩壊性ドメインを有するモノマーを固体として加えてから、2時間攪拌する。その反応物を酢酸(または安息香酸)でクエンチしてから、DCMにおいて、MeOHに対して透析する。透析後、溶媒を減圧下で除去して、純粋なオリゴマーを得る。続いて、TFA/DCMまたはHCl/Et
2Oを用いて、このオリゴマーを脱保護して、両親媒性CARTを得る。そのCARTをDMSOにおいて2.0mMまで希釈してから、さらなる精製を行わずに、トランスフェクション試験で使用する。
TFA/DCMまたはHCl Et2Oの使用を含む脱保護
TFA脱保護の例:1.0mLの乾燥DCMに溶解した10.5mgオリゴマーに、TFAを100uL加える。その反応物を8時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去して、CART(TFA塩)を10.3mg、残渣として得る。
HCl脱保護の例:15mgの保護CARTに、Et2O中の2.0MのHClを2回に分けて加える(合わせて2mL)。その反応物を18時間攪拌してから、減圧下で濃縮して、CART(HCl塩)を12.1mg、残渣として得た。
開始剤の例:一官能性アルコール(すなわちベンジルアルコール、1−ピレンブタノール)、PEG、蛍光色素(ダンシル、BHQ、BDK)、多官能性アルコール(トリスベンジルアルコール、PEGジオール)、標的化リガンド(ビオチン、フォレート)及びコンジュゲートリガンド(ビオチン)。
親モルホリノンベースのCARTは、McKinlay,et al.PNAS,2017,E448−E456という文献での報告で説明されているものから適用したものである。
コオリゴマーD
n:A
mの調製:D13:A11の代表的な合成:
フレームドライしたバイアルに、MTC−ドデシルモノマー5(33.2mg、0.1ミリモル)と、開始剤のダンシル3(3.9mg、0.013ミリモル)と、50μLのCH
2Cl
2を入れた。この反応バイアルに、50μLのCH
2Cl
2中の触媒ジアザビシクロウンデセン(DBU)(0.8mg、0.005ミリモル)及びチオ尿素(TU)(2.0mg、0.005ミリモル)を加え、攪拌させた。2時間後、このバイアルに、N−Bocモノマー(22.3mg、0.11ミリモル)を固体として加え、その反応物を3時間攪拌させた。合計5時間、反応物をAcOH5滴でクエンチしてから、減圧下で濃縮した。粗物質をCH
2Cl
2において、MeOHに対して透析した(1.0kDa透析バッグ)。濃縮して、淡緑色残渣を37.9mg得た。1H NMRによる各群の解析(2.8ppm)によって、13:11のDPが示されている。
0.8mLの乾燥DCMに溶解した23.5mgのオリゴマーに、TFAを20uL加える。その反応物を18時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去して、CARTを23.1mg、残渣として得た。
ClベースのCART
多様なカチオン性崩壊性ドメインのCARTの例は、以下のとおりである。
フレームドライしたバイアルに、ドデシル−MTC(33.0mg、0.1ミリモル)と、1−ピレンブタノール(2.3mg、0.0083ミリモル)と、50μLのトルエンを入れた。この反応バイアルに、トルエン50μL中のDBU(0.76mg、0.005ミリモル)とTU(1.85mg、0.005ミリモル)を加え、攪拌させた。2時間後、7−ラクト(実施例1.2)(21.5mg、0.1ミリモル)を固体として加え、その反応物を攪拌した。さらに2時間攪拌後、反応物を1滴の酢酸でクエンチした。粗物質をDCMにおいて、MeOHに対して透析した(1.0kDa透析バッグ)。減圧下で濃縮して、41mg得た(収率76%)。
1.0mLの乾燥DCMに溶解した10.5mgのオリゴマーに、TFAを100uL加える。その反応物を8時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去して、CARTを10.3mg、残渣として得た。
6−GlyベースのCART
フレームドライしたバイアルに、ドデシル−MTC(32.8mg、0.1ミリモル)と、1−ピレンブタノール(2.3mg、0.0083ミリモル)と、50μLのDCMを入れた。この反応バイアルに、DCM50μL中のDBU(0.76mg、0.005ミリモル)とTU(1.85mg、0.005ミリモル)を加え、攪拌させた。2時間後、tert−ブチル(2−オキソ−2−(2−オキソモルホリノ)エチル)カルバメート(36mg、0.14ミリモル)を固体として加え、その反応物を攪拌した。さらに2時間攪拌後、反応物を1滴の酢酸でクエンチした。粗物質をDCMにおいて、MeOHに対して透析した(1.0kDa透析バッグ)。減圧下で濃縮して、47mgを得た(収率68%)。
1.0mLの乾燥DCMに溶解した11.1mgのオリゴマーに、TFAを100uL加える。その反応物を8時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去して、CARTを11mg、残渣として得た。
7−GlyベースのCART
フレームドライしたバイアルに、ドデシル−MTC(32.2mg、0.1ミリモル)と、ベンジルアルコール(0.9mg、0.0083ミリモル)と、50μLのトルエンを入れた。この反応バイアルに、トルエン50μL中のDBU(0.76mg、0.005ミリモル)とTU(1.85mg、0.005ミリモル)を加え、攪拌させた。2時間後、tert−ブチル(2−オキソ−2−(7−オキソ−1,4−オキサゼパン−4−イル)エチル)カルバメート(32.1mg、0.1ミリモル)を固体として加え、その反応物を攪拌した。さらに2時間攪拌後、反応物を1滴の酢酸でクエンチした。粗物質をDCMにおいて、MeOHに対して透析した(1.0kDa透析バッグ)。減圧下で濃縮して、49mgを得た(収率77%)。
2.0mLの乾燥DCMに溶解した21mgのオリゴマーに、TFAを200uL加える。その反応物を8時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去して、CARTを21.3mg、透明な黄色残渣として得た。
CarbベースのCART
フレームドライしたバイアルに、ドデシル−MTC(33.1mg、0.1ミリモル)と、5−(ジメチルアミノ)−N−(2−ヒドロキシエチル)ナフタレン−1−スルホンアミド(ダンシルアルコール)(2.8mg、0.0083ミリモル)と、50のDCMを入れた。この反応バイアルに、DCM50μL中のDBU(0.76mg、0.005ミリモル)とTU(1.85mg、0.005ミリモル)を加え、攪拌させた。2時間後、8−Carb(23.2mg、0.1ミリモル)を固体として加えた。さらに2時間攪拌後、反応物を1滴の酢酸でクエンチした。粗物質をDCMにおいて、MeOHに対して透析した(1.0kDa透析バッグ)。減圧下で濃縮して、54.1mgを得た(収率96%)。
1.0mLの乾燥DCMに溶解した12mgのオリゴマーに、TFAを100uL加える。その反応物を9時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去して、CARTを12mg、残渣として得た。
GluベースのCART
フレームドライしたバイアルに、ドデシル−MTC(15.5mg、0.05ミリモル)と、ベンジルアルコール(0.5mg、0.004ミリモル)と、50DCMを入れた。この反応バイアルに、50μLのDCM中のDBU(0.4mg、0.0025ミリモル)とTU(0.9mg、0.0025ミリモル)を加え、攪拌させた。2時間後、tert−ブチル(2−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)カルバメート(M
Glut)(18.1mg、0.084ミリモル)を固体として加えた。さらに2時間攪拌後、反応物を1滴の酢酸でクエンチした。粗物質をDCMにおいて、MeOHに対して透析した(1.0kDa透析バッグ)。減圧下で濃縮して、17.9mgを得た(収率51%)。
1.0mLの乾燥DCMに溶解した9.0mgのオリゴマーに、TFAを100uL加える。その反応物を9時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去して、CARTを9.0mg、残渣として得た。
これらの方法を通じて合成されるCARTの追加の例は、下記の表に詳述されている。
実施例3.CART/核酸複合体
いくつかの例では、5.71μLのRNAse無添加PBS(1N HClによってpH5.5に調整)と、eGFP mRNA(PBS中の0.2μg/μLのストック由来、pH7.4)を、0.59μLのCART(DMSO中の2mMのストック由来)と混合することによって、CART/mRNAポリプレックスを調製して、10:1の+/−CART/mRNA比率を実現させた。処置または解析の前に、これらのCART/mRNA複合体を20秒、室温でインキュベートした。
比較例では、他のCARTを対応する量で用いて、10:1という同じ+/−電荷比にした。
粒径とゼータ電位のDLSによる特徴付け
特定の実施例では、動的光散乱(DLS)を用いて、CART D13:A11と、そのCARTとeGFP mRNAとの間で形成された高分子電解質複合体を解析できることが示されている。pH5.5では、得られたポリプレックスの流体力学的直径は、254nm±10nmであった。これらのポリプレックスを細胞培地に加えたところ、2時間をかけて、流体力学的直径が254nmから512nmに変化した。
このCART/mRNA複合体を非緩衝水に加えると、大きさは、2時間の実験全体を通じて、257nm±24nmのままである。
ゼータ電位測定値は、粒径データと一致しており、表面電荷は、+33±7mVで始まり、2時間をかけて−30±3mVまで変化する。これは、カチオン性アンモニウムが中性アミドに転位し、付随のオリゴヌクレオチドにより、表面が主にアニオン性のままとなることと整合している。理論に束縛されるものではないが、ホモオリゴマーの転位速度(数分)とmRNAポリプレックスの転位速度(数時間)との違いには、複合体化に依存して、緩衝水性環境におけるα−アミノエステル材の安定性が向上することが反映されていると見られる。これにより、CART/mRNA複合体が、治療上関連するタイムスケールにわたり、pH7.4において、細胞内分解まで安定状態を保つようになる。
比較例として、非崩壊性トランスポーターD13:G12で複合体を形成したところ(図7B)、粒子が同様に約250nmで形成された。しかしながら、これらの粒子の大きさとゼータ電位では、時間に応じた変化が見られなかったことから、分解が生じていないことが示された。
比較例としては、配合したポリプレックスの大きさは、カーゴ依存性ではなかった。長さがeGFPの約2倍であるルシフェラーゼ(Fluc)mRNA(eGFP=996ntであるのに対して、Fluc=1929nt)でポリプレックスを形成し、pH7.4の細胞培地に加えたところ、そのポリプレックスでは、eGFP mRNAで形成したものと同じ挙動が見られたことから、CARTによって可能になる送達は、汎用的であることができ、様々なサイズのmRNAで機能することが暗示された。
特にこれらの例においては、500ngのeGFP mRNAを用いて、10:1(カチオン:アニオン)の電荷比で、mRNA/コオリゴマー複合体を上記のように調製し、120μLのpH5.5、pH7.4のRNase無添加PBS、または中性のRNAse無添加水に加えた。その溶液を使い捨ての透明プラスチックキュベットにすみやかに移し、大きさを測定した。大きさの測定は、初期時点(1分)と、2時間にわたって15分間隔で行った。報告されている大きさは、z平均である。ゼータ電位の測定値は、DLS用に調合したmRNA:コオリゴマー複合体を800μLの水で希釈し、ゼータセル(DTS1060)に移し、ゼータ電位を測定することによって得た。報告されているすべての値は、3回の試験ランの最小値の平均である。誤差は、±SDで表した。いくつかの他の例では、カチオンとアニオンとの比率は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:11、約1:12、約1:13、約1:14、約1:15、約1:16、約1:17、約1:18、約1:19、約1:20、約1:30またはこれを上回る値であることができる。いくつかの他の例では、アニオンとカチオンとの比率は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:11、約1:12、約1:13、約1:14、約1:15、約1:16、約1:17、約1:18、約1:19、約1:20、約1:30またはこれを上回る値であることができる。
実施例4.CARTによるmRNAの送達
複数の細胞株におけるeGFP mRNAの送達と発現
いくつかの例では、CART D13:A11によって、HeLa細胞において、eGFPの高度な発現が得られ、トランスフェクション効率は99%超で、高い平均蛍光強度が得られた。(図9A、B、D)
例えば、CART D13:A11によるトランスフェクションでは、HeLa細胞を24ウェルプレートに40,000細胞/ウェルで播種し、一晩接着させた。RNAse無添加PBS(pH5.5)とeGFP mRNAを、DMSOストック溶液由来の様々な量のオリゴマーと混合することによって、オリゴマー/mRNAポリプレックスを調製し、特定のコオリゴマー/mRNA比率を実現した(理論的カチオン:アニオン比率の10:1に最適化、総体積8.4μL)。処理前に、この複合体を20秒、室温でインキュベートした。メーカーの指示に従って、コントロールのLipofectamine(商標)2000をOptiMEMで調製した。細胞を無血清DMEMで洗浄し、mRNA/Lipo溶液を終体積200μL/ウェル及び125ng mRNA/ウェルまで加えた。無血清DMEMで洗浄した後、mRNA/コオリゴマー複合体を2.5μL、総体積200μLまで加え、すべての条件はトリプリケートで行い、最終mRNA濃度は125ng/ウェルとした。細胞を8時間、37℃でインキュベートしてから、トリプシン−EDTA(0.05%)で10分、37℃でトリプシン処理した。血清含有DMEMを加え、それぞれの中身を十分に遠心分離し、上清を除去し、ペレット化細胞をPBS(125μL)に再分散し、FACSチューブに移し、フローサイトメトリーアナライザー(LSR−II.UV、Stanford University)で読み取りを行った。示されているデータ(図9)は、解析した10,000個の細胞から得た幾何平均蛍光シグナルである。トランスフェクション効率に関しては、未処理細胞は、eGFPの未発現についてゲーティングを行い、示されているデータは、解析した10,000個の細胞のうち、eGFPの発現が未処理細胞よりも高い細胞の割合である。誤差は、±SDで表されている。注:他のすべての細胞株は、上記のように、それぞれの培地において使用した。HepG2細胞では、フローサイトメトリー用に、細胞ペレットを再懸濁するのに用いるPBSに、5mMのEDTAを加えた。
ブロック長がさらに長い(D18:A17)第2のCARTでは、高いトランスフェクション効率(90%超)が得られたが、平均トランスフェクション値は低くなった(図9A)。比較例では、α−アミノエステルホモオリゴマーA13で形成した複合体では、eGFPの発現は誘導されなかったことから、疎水性ドメインが、オリゴヌクレオチドの送達に欠かせないことが示された。さらなる比較例として、HeLa細胞を、Lipofectamineと調合したmRNAで処理したところ、中程度レベルのeGFPの発現が観察されたに過ぎず、細胞の約50%のみで蛍光が見られた。
いくつかの他の例では、CART D13:A11による送達パラメーターを最適化するために、カチオン性オリゴマーとアニオン性mRNAとの電荷比を1:1〜50:1(+/−)に変動させ、得られたeGFPの蛍光を割り出した(図9C)。値は、完全なアミンプロトン化とホスフェート脱プロトン化を想定して、アンモニウムカチオンとホスフェートアニオンの理論的な(+/−)電荷モル比として報告されている。eGFPの発現によって、電荷比に対して概ね放物線状の依存性が示され、eGFPの最大蛍光は、10:1の(+/−)電荷比で形成した複合体によるものであった。この値は、グアニジニウムに富むオリゴカーボネート複合体(siRNAの送達で使用。4.8:1の電荷比で最適な性能を示した)で観察された値よりも高い。さらに、エピ蛍光顕微鏡を用いて、フローサイトメトリーの結果を確認した(図9D)。CART/mRNA複合体で処理したHeLa細胞では、ほぼすべての視認可能な細胞で、有意な蛍光が見られる。対照的に、Lipofectamineで処理した細胞では、eGFPの部分的な発現が見られ、他の細胞は、トランスフェクションされないままであった。
さらなる例では、細胞株パネル(典型的にはトランスフェクションが困難とみなされているものを含む)において、CART D13:A11による送達後のeGFP mRNAの発現をアッセイした。HeLa細胞に加えて、マウスマクロファージ細胞(J774)、ヒト胎児腎細胞(HEK−293)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)及びヒト肝細胞がん細胞(HepG2)において、eGFP mRNAで形成したCART複合体で処理することによって、mRNAの発現をLipofectamineの場合と比較した(図6A)。試験したすべての細胞株において、CART D13:A11を用いた場合、eGFPを発現した細胞の割合は、90%超であったが、Lipofectamineによる処理では、22〜55%の細胞でしか、発現が誘導されなかった(図11A)。これにより、この送達系は、様々な種類のヒト細胞とヒト以外の細胞で汎用的であることが示唆されている。不死化細胞株に加えて、CD1マウス由来の初代間葉幹細胞(MSC)でも、mRNAの発現が観察され、トランスフェクション効率も高かった(85%超)。
他の例では、Jurkat T細胞(CARTではトランスフェクション率が11%に対して、Lipofectamineでは7%)、初代T細胞(トランスフェクション率6%に対して、Lipoでは0%)、3T3線維芽細胞(CARTでは70%に対して、Lipoでは59%)、及びトロホブラスト幹細胞(CARTでは19%に対して、Lipoでは69%)を含め、さらにトランスフェクションするのが困難である他の細胞株において、CART活性が示されている。
いくつかの例では、異なる長さのmRNA(さらに大きいホタルルシフェラーゼ(Fluc)mRNAなど)を用いて、CART D13:A11によるmRNAの一貫したトランスフェクションも観察され、実質的にLipofectamineの性能を3倍超上回っている(図11B)。eGFP mRNAで観察された傾向と同様に、mRNAの長さの違いにかかわらず、10:1(カチオン:アニオン)の比率により、最も高いレベルのFluc生物発光が得られたことから、送達効率が、カーゴの大きさとほとんど無関係であることが示されている。
これらの実施例では、HeLa細胞を10,000個の細胞/ウェルで黒色96ウェルプレートに播種し、一晩接着させた。Fluc mRNA(50μLの総体積において、終濃度50ng mRNA/ウェル)を用いて、mRNAポリプレックスと、コントロールのLipofectamine(商標)2000を上記のように調製した。すべての条件は、6連で行った。細胞を処理した状態で8時間、37℃でインキュベートしてから、培地を除去し、その細胞に、DMEM中のD−ルシフェリンの溶液(300μg/mL)を100μL加えた。IVIS50またはIVIS200(Perkin−ElmerのXenogen Productライン)という電荷結合素子カメラと、Living Image Softwareを用いて、得られた発光を測定した。データは、3回の実験の平均を表しており、誤差は、±SDとして表されている。
電荷変動性崩壊性ドメイン
eGFP mRNAとCy5標識eGFP mRNAとの混合物を送達することによって、mRNAのインターナリゼーションと発現の解析を切り離して、同時に定量することができ、Cy5の蛍光によって、局在に関係なく、インターナリゼーションされたmRNAが示され、eGFPの蛍光によって、細胞質での放出と、その後の、mRNAの発現が示される。この方法により、2つのオリゴマーの細胞取り込みとmRNAの発現を、CART D13:A11、非崩壊性グアニジニウム含有D13:G12及び非崩壊性のアンモニウム含有D13:Pip13で比較することによって、主鎖構造とカチオンの種類の作用が明らかになる。
これらの例では、Cy−5 mRNAをCART D13:A11と調合したところ、細胞内Cy5とeGFPの両方の高レベルな蛍光が観察された(図10B、D)。比較例として、非崩壊性のグアニジニウム含有D13:G12または非崩壊性のアンモニウム含有D13:Pip13を用いたところ、Cy5の蛍光のみが観察された。この例によって、3つのすべてのmRNA複合体が、細胞に効率的にインターナリゼーションされるが、すみかやに分解する主鎖がないので、D13:G12とD13:Pip13に由来する非崩壊性ポリプレックスは、検出可能なレベルの翻訳を可能にするのに必要なタイムスケールで、mRNAを放出しなかったことが示されている。さらに、アンモニウム含有D13:Pip13で形成した複合体によって、eGFPの発現が見られなかったことから、CART D13:A11の有効性が単に、アンモニウムカチオンとグアニジニウムカチオンの静電的結合親和性の違いによるものではないことが示唆されている。むしろ、崩壊性転位を通じて、カチオン電荷が特異的に、制御された形で喪失することが、有効性のためには不可欠である。
特に、これらの例では、オリゴマー/mRNAポリプレックスの細胞取り込みと放出を測定するために、終濃度62.5ng mRNA/ウェルで、Cy5標識eGFP mRNAを用いて、上記のように調製したポリプレックスで、HeLa細胞を処理した。上記のように、細胞を調製し、eGFPとCy5の蛍光の両方について、フローサイトメトリーによって解析した。
追加の例では、共焦点顕微鏡を用いて、今回の実施形態において、崩壊の必要性が確認されている。CART D13:A11によるCART媒介性のmRNAの放出とエンドソーム脱出について、無効なトランスポーター(D13:G12)と比較して、共焦点顕微鏡によってさらに確認し、ダンシル化トランスポーターと、Cy5−mRNAと、テトラメチルローダミン(TRITC)−デキストラン4400の同時検出を行い、エンドソーム区画に対して染色した。CART D13:A11/Cy5−mRNA複合体での処理から4時間後、細胞をイメージングしたところ、Cy5とダンシルフルオロフォアの両方において、散乱蛍光が観察されたことから、これらの物質が、エンドソームから脱出し、ポリプレックスから解離するのに成功したことが示されている(図10D)。(TRITC)−デキストラン4400からの散乱蛍光も観察されており、これは、エンドソームの破裂と、捕捉されていたデキストランの放出に起因し得る。比較例として、細胞を非崩壊性D13:G12/Cy5−mRNA複合体で処理すると、Cy5とダンシルの両方の蛍光は、点状で、共局在しているままである。これらのシグナルは、点状のTRITC−デキストラン4400と大きく重複しており、エンドソームに取り込まれていることが示されている(図10D)。勘案すると、これらのデータにより、CART D13:A11の電荷変動性挙動により、エンドソームの破裂とmRNAの放出が可能になり、これらの物質のmRNAの送達性能の高さに寄与していることが強く示唆されている。
特に、共焦点顕微鏡観察の実施例においては、HeLa細胞を8室式ガラスボトムディッシュ(Nunc Lab−Tek II,Thermo Scientific)に10,000個の細胞/ウェルで播種し、一晩接着させた。処理の前に、細胞を無血清DMEMで洗浄し、200μLの無血清DMEMを100μMのTRITC−デキストラン(Sigma、平均分子量=4,400)とともに、各ウェルに加えた。Cy5−eGFP mRNAポリプレックスを上記のように調製し(終濃度125ng mRNA/ウェル)、対応する各ウェルに加えた。細胞を4時間、37℃でインキュベートしてから、培地を除去し、10mMのHEPESバッファー溶液を含むPBSを500μL加えた。DAPI(ダンシル)、GFP、DsRed(TRITC−デキストラン)及びCy5に合わせて調整したLeica SP8 White Light Confocalという顕微鏡を用いて、細胞をイメージングした。
CARTによるmRNAのインビボ送達
特定の例では、D13:A11のようなCARTでは、インビボにおいて優れた遺伝子発現が見られた。一例では、CART D13:A11とルシフェラーゼmRNAとの複合体を形成して、Balb/cマウスに筋肉内投与すると、高レベルの生物発光が見られる。比較例として、送達剤と複合体を形成させなかったmRNAでは、それによる生物発光は示されない。この発現のピークは、4時間の時点であったとともに、48時間後でも、依然として観察可能であった。これらの例では、7.5μgのルシフェラーゼmRNAと、D13:A11との複合体を10:1の電荷比で、総体積75μLのPBS(pH5.5)において形成して、Balb/cマウスの右大腿部の筋肉に注射した(図11C、D)。
追加の例では、D13:A11と、ルシフェラーゼmRNAとの複合体を形成して、尾静脈内注射によって投与すると、高レベルの生物発光が見られる。高レベルの発現は24時間持続し、48時間後でも、検出可能な生物発光が見られた。生物発光は主に、これらの画像において、脾臓と肝臓に局在している(図11E、F)。ネイキッドmRNAをIV投与したところ、生物発光シグナルは観察されなかった。試験したすべてのマウスにおいて、注射の直後に、または処理から数週間にわたって、毒性は観察されなかった。
追加の例として、CART O11:A9、D12:Gly10.5及びD14:a−メチル14.5と複合体を形成したFluc mRNAをIV投与したところ、いずれも、肝臓及び/または脾臓において、ルシフェラーゼの有意な発現が見られた。これらの例では、7.5μgのルシフェラーゼmRNAとCARTとの複合体を10:1の電荷比で、総体積75μLのPBS(pH5.5)において形成し、Balb/cマウスの尾静脈に注射した。
追加の例では、D13:A11とルシフェラーゼmRNAとの複合体を形成させ、腫瘍内注射によって投与すると、高レベルの生物発光が見られる。この実施例では、4μgのルシフェラーゼmRNAと、D13:A11との複合体を10:1の電荷比で、総体積75μLのPBS(pH5.5)において形成し、固形の皮下A20リンパ腫腫瘍の中心に注射した。
追加の例では、CART O11:A9、D12:Gly10.5及びD14:a−メチル14.5と、ルシフェラーゼmRNAとの複合体を形成し、皮下注射によって投与すると、高レベルの生物発光が見られる。この実施例では、5μgのルシフェラーゼmRNAと、D13:A11との複合体を10:1の電荷比で、総体積75μLのPBS(pH5.5)において形成し、Balb/Cマウスの背中に、皮下注射した。
比較例として、従来技術のD12:G12とFluc mRNAとの複合体を形成したところ、それによる生物発光は観察されなかった。この例では、5μgのルシフェラーゼmRNAとD13:A11との複合体を10:1の電荷比で、総体積75μLのPBS(pH5.5)において形成し、Balb/Cマウスの背中に、皮下注射した。
新規帯電ドメインによるmRNAの送達と発現
比較例:元の実施形態によって示された電荷変動性モチーフを用いて、多様な化学構造の新たなモノマーと新たなCARTオリゴマーを合成した。これらのCARTは、いくつかの変形形態(D9:(7−ラクト)11及びD12:(7−グリシン)11など)であって、Cy5の細胞内蛍光が親D13:A11系よりも高くなる(1.1〜1.2倍にする)変形形態によって、蛍光標識(Cy5)mRNAを有効にパッケージング及びトランスフェクションすることが示された。これらのCARTのうちのいくつかの種(a−Me、a−Me−co−A)では、mRNAの多少の発現が見られる。
親油性ポリマードメイン
いくつかの例には、その物質の親油性ポリマードメイン(または同義的には脂質ブロック)が変更されているCARTが含まれる。出願者は、親油性ポリマードメインとして組み込まれたコレステロール側鎖、ノネニル側鎖、ステアリル側鎖、オレイル側鎖及びリノレイル側鎖を含むCARTの合成を示してきている。これらの変種では、eGFP mRNAと複合体を形成すると、オレイル官能化物質とリノレイル官能化物質により、様々な性能が見られ、ドデシルベースの系と同様のトランスフェクション効率も得られる。
いくつかの取り組みでは、動的光散乱によって測定したところ、脂質ブロックまたは親油性ポリマードメインの変更により、粒径とゼータ電位に影響が現れ、リノレイル及びオレイルの物質は、ステアリル及びドデシルベースのCARTよりも長く、正のゼータ電位を保持することが示唆されている。
新規開始剤
いくつかの例では、CARTに追加の機能を組み込むために、開環ポリマー化用の開始アルコールの変種が探究されている。探究されてきた開始剤としては、フルオロフォア(ダンシル及びBDK)、分岐(3−アーム)部分、蛍光クエンチャー(BHQ)及びビオチン化誘導体が挙げられる。異なる開始剤官能基を含む同等のモノマーブロック長のCARTでは概して、元の実施形態と同様のeGFP mRNAトランスフェクション効率が見られる。
いくつかの実施形態では、開始剤は、下記の式を有することができる。
蛍光開始剤は、フローサイトメトリーと共焦点顕微鏡によって、カーゴ(mRNA)とトランスポーター(ダンシルまたはBDK)の取り込みを独立して追跡するのに用いられている。クエンチング開始剤は、クエンチングした粒子からの放出の際の蛍光の再発光をモニタリングすることによって、蛍光標識mRNAまたはmiRNAカーゴの放出をモニタリングするのに用いられている。
初期の結果では、3−アーム開始剤によって、CART/mRNA粒子に構造変化(例えば、サイズとゼータ電位)を導入できる一方で、mRNAトランスフェクション効率が維持されることが示唆されている。
初期の結果では、ビオチン/ストレプトアビジンの相補性を通じて、がん細胞をターゲティングする目的、または追加のカーゴを結合させる目的のいずれにも、ビオチン由来の開始剤を使用できることが示唆されている。
実施例5.対イオン
従来の例には、トリフルオロ酢酸を用いてBoc脱保護を行うことが含まれ、その結果、アンモニウムカチオンに対するトリフルオロアセテート対アニオンが生じる。クロライド対イオンをもたらすために、塩酸(HCl)を含む異なる条件下で脱保護したCARTに同様の有効性があることも本出願者は示している。得られるCART塩では、元の実施形態とほぼ同等のトランスフェクション効率/発現が見られる。
実施例6.mRNAの組み合わせ
いくつかの実施形態では、複数のmRNAを1つのCART複合体で組み合わせることができる。この一例は、CART D13:A11と、eGFP mRNAとmCherry mRNAとの二成分混合物との同時配合である。これらの条件下では、得られるeGFPとmCherryとの比率には、複合体へのmRNA転写産物の仕込み率が反映されている。追加のフローサイトメトリー解析では、すべての細胞が、二重陽性または二重陰性のいずれかであることが示されており、別々の粒子に各転写産物が含まれているのではなく、両方の転写産物が、同じCART/mRNA粒子に導入されていることが示唆されている。この同時配合は、CARTを加えて処理する前に、2つの転写産物を単に混合することを通じて実現し、追加の最適化は不要である。
追加の例では、eGFP mRNAとFluc mRNAとの二成分混合物によって、CART D13:A11/mRNA複合体を同時配合することによって、複数のmRNA転写産物の同時発現を実証した。これらのポリプレックスは、その配合物におけるその転写産物の質量%に比例するレベルで、2つの特有のタンパク質の発現を誘導する。
実施例7.その他のオリゴヌクレオチドカーゴ
mRNAの送達作用に加えて、本出願者は、本発明の様々なCART系のうち、他の核酸カーゴを送達するための様々なCART系も探究した。siRNA、miRNA、ミニサークルDNA及びpDNAの取り込みと活性が、CART技術の影響を受けやすいことが示された。これらのカーゴの多くにおいて、CARTの最適化を実験によって割り出した(例えば、電荷比、脂質ドメインの長さ/不飽和度)。
siRNA
非置換モルホリノン(D13:A11)と、7員グリシンで官能化されたラクトン(D10:(7−gly)11)を含むいくつかのCARTで、siRNAの誘導による遺伝子ックダウンでの有効性レベルが高いことが示された。蛍光mRNAの取り込みは見られたが、mRNAの翻訳が得られなかった(D10:(7−gly)11)のような系にもかかわらず、少ないsiRNA量(例えば5ピコモル/ウェル)でのsiRNAの送達によって、タンパク質の発現が85%超ノックダウンされることは予想外であった。
比較例:これらの2つのCART送達剤の性能は、非放出性トランスポーター(D:G 4:4(WO2013036532A1及びPNAS 2012,109(33),13171−13176を参照)からなる従来技術(上記の条件下で50%のノックダウンを示したに過ぎなかった)を大きく上回っていた。
具体的には、siRNAノックダウン実験は、(Geihe,et.al.PNAS 2012,109(33),13171−13176)の手順を改変した手順に従って行った。TdTomato/EGFPを発現するHaCaT細胞を10,000個の細胞/ウェルで、96ウェルプレートに播種し、37℃で18〜24時間インキュベートさせた。siRNA/CART複合体を調製するために、まず、CBL3 siRNAの25μMストック2μLと17.60μLのPBS(pH5.5)を予め混合した。DMSO中の2mMストックに由来する上記混合物にCARTを加えて、正味のカチオン:アニオン電荷比を10:1にした。溶液を20秒混合してから、無血清DMEMを100μL含む、96ウェルプレートの3ウェルのそれぞれに5μLを加え、siRNAの正味の濃度を5ピコモル/ウェルにした。この複合体とともに、細胞を4時間インキュベートしてから、培地を血清含有DMEMに交換し、細胞を48時間インキュベートした。インキュベート後、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理して、フローサイトメトリーによって解析した。tdTOMの正規化発現率を、(平均蛍光値tdTOM処理細胞/平均蛍光値EGFP処理細胞)/(平均蛍光値tdTOM未処理細胞/平均蛍光値EGFP未処理細胞)×100という式によって算出した。
miRNA
いくつかの例では、核酸カーゴは、蛍光標識miRNAである。CART D13:A11を用いると、Lipofectamineとポリ(乳酸−co−グリコール酸)ナノ粒子のような他のトランスフェクション方法と比べて、フローサイトメトリー解析によって、標識miRNAの活発な取り込みが示される。これらの例では、miRNAの取り込みに最適な電荷比は、20:1(カチオン:アニオン)であり、この値は、mRNA(10:1)で観察されたものよりも高い。
具体的には、miRNAの取り込みは、Cy5標識miRNAを用いて測定した。簡潔に述べると、HeLa細胞を40,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種し、37℃で一晩接着させた。CART/miRNA複合体を調製するために、まず、Cy5−miRNA(配列:Cy5−UpCpApACAUCAGUCUGAUAApGpCpUpA)の0.2μg/μLストック2.1μLと、pH5.5のPBS5.72μLとを予め混合した。そして、トランスフェクション直前に、DMSO中の2mMストック由来のこの混合物に、CARTを加えて、正味のカチオン:アニオン電荷比を10:1にした。これを20秒混合してから、無血清DMEMを200μL含む、24ウェルプレートの3ウェルのそれぞれに5μLを加え、miRNA終濃度を125ng/ウェルにした。これを8時間、37℃でインキュベートした。この後、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、Cy5の細胞内蛍光をフローサイトメトリーによって割り出した。
pDNA
いくつかの例では、核酸カーゴは、上記のRNAカーゴではなく、二本鎖プラスミドDNA(pDNA)である。これらのケースでは、CARTによって、市販の薬剤(Lipofectamineなど)よりも有効性が向上し(約2.5倍)、トランスフェクション効率と蛍光強度中央値が高くなる。具体的には、pPKCδ−GFPをコードするプラスミドを蛍光レポーターとして用いた。いくつかのケースでは、異なる脂質ブロックまたは親油性ポリマードメインを含むCARTの方が、CART D13:A11よりも、プラスミドの送達に有効であり、オレイル官能化物質とリノレイル官能化物質のトランスフェクション効率が最も高かった。
CART/pDNA複合体の粒径は概して、類似のmRNA含有粒子よりも小さく、流体力学的直径は、大半の化合物では90〜110nmで、リノレイル官能化CARTでは、390nmであった。ゼータ電位は、mRNA粒子と同じ推移をたどり、約+40mVから始まり、電荷変動性転位が生じるのに応じて、−40mVまで低下する。
トランスフェクションの具体的な実験の詳細:例えば、CART O11:A9によるトランスフェクションでは、CHO細胞を40,000個の細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種し、一晩接着させた。PBS(pH5.5)及びpPKCδ−GFPと、DMSOストック溶液由来の様々な量のオリゴマーとを混合することによって、pDNA:CART複合体を調製し、特定のpDNA/CART比率をもたらした(理論的なカチオン:アニオン比率25:1に最適化。総体積115μL)。処理前に、この複合体を20秒、室温でインキュベートした。メーカーの指示に従って、コントロールのLipofectamine2000をOptiMEMで調製した。細胞を無血清F−12培地で洗浄し、pDNA/Lipofectamine溶液を加えた。終体積500μL/ウェル及び679ng pDNA/ウェルとした。無血清F−12培地で洗浄後、3ウェルのそれぞれに、pDNA/CART複合体を37.5μL加え、総体積500μL、pDNA終濃度674ng/ウェルにした。細胞を24時間、37℃でインキュベートしてから、培地を血清含有F−12培地に交換した。細胞をさらに24時間インキュベートしたら、トリプシン−EDTA(0.25%)で5分、37℃でトリプシン処理した。血清含有F−12培地を加え、それぞれの中身を十分に遠心分離した。上清を除去し、そのペレット化細胞をPBS(200μL)に再分散し、FACSチューブに移し、フローサイトメトリーアナライザー(LSR−II.UV,Stanford University)で読み取った。示されているデータは、解析した5,000〜10,000個の細胞から得た幾何平均蛍光シグナルである。トランスフェクション効率に関しては、未処理細胞をeGFPの未発現についてゲーティングし、示されているデータは、解析した細胞のうち、eGFPの発現が未処理細胞よりも高い細胞の割合である。誤差は、±SDで表されている。
CART/pトランスポザーゼの送達による安定的トランスフェクション
いくつかの例では、pルシフェラーゼ(トランスポザーゼ認識部位を含む)とpトランスポザーゼを別々にコードするプラスミドを組わせたもののような複数のプラスミドを同時に送達でき、その結果、標的ルシフェラーゼ遺伝子が安定的に発現した。6日後、CART O11:A9の性能は、Lipofectamineを大きく上回り、生物発光レベルは、10倍超高かった。
これらの例においては、CHO細胞を1ウェルあたり10,000個の細胞で、黒色の96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩接着させた。pDNA:CART複合体を調製するために、まず、pH5.5のPBSと、ホタルルシフェラーゼとTdTomatoの両方をコードするpDNA470ng、またはpトランスポザーゼと混合した同じプラスミド(プラスミドとpトランスポザーゼを2:1の比率で混合した)合計585ngのいずれかと予め混合した。メーカーの仕様に従って、コントロールのLipofectamineを無血清OptiMEM培地で調製した。トランスフェクションの直前に、DMSO中の2mMストック溶液に由来するプラスミド/PBS溶液にCARTを加え、正味の+/−電荷比を5:1にした。得られた複合体を室温で20秒インキュベートしてから、細胞に加えた。細胞を無血清F−12培地でリンスしてから、無血清培地を含む、96ウェルプレートの3ウェルのそれぞれに、複合体7.3μLを加え、1ウェルあたり50μLの終体積と、137または171ng/ウェルのpDNA濃度にした。処理とともに、細胞を24時間、37℃でインキュベートしてから、0.3mg/mLのルシフェリンを有する100μLの血清含有F−12培地に、培地を交換した。IVIS50またはIVIS200(Perkin−ElmerのXenogen Productライン)という電荷結合素子カメラと、Living Image Softwareを用いて、得られた生物発光を測定した。誤差は、±SDとして表した。コンフルエントになったら、0.25%トリプシンを用いて、新たなウェルに細胞を継代した。
さらなる例では、複数のプラスミドで、CARTによる有効な送達と安定的トランスフェクションが確認された。これらのケースでは、pルシフェラーゼ(いずれも、ピューロマイシン耐性を付与するとともに、トランスポザーゼ認識部位を含む)とpトランスポザーゼを別々にコードするプラスミドを組み合わせたものによって、ピューロマイシン耐性と併せて、標的ルシフェラーゼ遺伝子の安定発現が得られた。数世代にわたるピューロマイシン選択によって、安定的なトランスフェクションが検証され、生物発光がLipofectamineよりも2倍向上した。
これらの例では、CHO細胞を1ウェルあたり10,000個の細胞で、黒色の96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩接着させた。pDNA:CART複合体を調製するために、pH5.5のPBSと、ホタルルシフェラーゼとtdTomatoとをコードするpLuc−tdTom/pトランスポザーゼミックス585ngとを混合した。メーカーの仕様に従って、コントロールのLipofectamine2000を無血清OptiMEM培地で調製した。トランスフェクションの直前に、DMSO中の2mMストック溶液に由来するpDNA/PBS溶液に、CARTを加え、正味の+/−電荷比を5:1にした。複合体を室温で20秒インキュベートしてから、細胞に加えた。細胞を無血清F−12培地でリンスしてから、無血清培地を含む、96ウェルプレートの3ウェルのそれぞれに複合体7.3μLを加え、1ウェルあたり50μLの終体積と、171ng/ウェルのpDNA濃度にした。24時間後、血清含有F−12培地100μL(0.3mg/mLのルシフェリンと6μg/mLのピューロマイシンを有する)に、培地を交換した。IVIS50またはIVIS200(Perkin−ElmerのXenogen Productライン)という電荷結合素子カメラと、Living Image Softwareを用いて、細胞を毎日イメージングした。誤差は、±SDとして表した。処理終了後、1ウェルあたり20μLの0.25%トリプシンを用いて、細胞を72時間継代した。細胞を5分インキュベートしてから、血清含有F−12培地80μLで希釈し、終体積を1ウェルあたり100μLとした。各ウェルから、細胞溶液を30μL、新たな3ウェルのそれぞれに加え、0.3mg/mLのルシフェリンと6μg/mLのピューロマイシンを有する血清含有F−12培地70μLで希釈した。元のウェルに残った10μLの細胞溶液を90μLの血清含有F−12培地(0.3mg/mLのルシフェリンと6μg/mLのピューロマイシンを含む)で希釈し、各ウェルの終体積を100μLとした。
ミニサークルDNA
さらなる例では、CARTを用いたミニサークルDNA(mcDNA)の有効な送達が示されている。これらのケースでは、CART D13:A11とオレイルCART O11:A9の両方によって、ルシフェラーゼをコードするミニサークルDNAをHeLa細胞に送達した。これにより、Lipofectamineとポリエチレンイミン(PEI)調合剤の両方よりも、ルシフェラーゼの高レベル発現が得られた(約10倍高かった)
具体的には、ルシフェラーゼレポーター系を用いて、ミニサークルDNAの取り込みと発現を測定した。簡潔に述べると、HeLa細胞を15,000個の細胞/ウェルで、96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩接着させた。CART/ミニサークルDNA複合体を調製するために、まず、ホタルルシフェラーゼ遺伝子と構成的プロモーターを含むミニサークルDNAの0.2μg/μLストック2.1μLと、pH5.5のPBS 5.71μLとを予め混合した。メーカーの仕様に従って、コントロールのLipofectamineとPEIを作製した。そして、トランスフェクション直前に、DMSO中の2mMストックに由来する上記混合物にCARTを加え、正味のカチオン:アニオン電荷比を10:1(または試験するいずれかの他の電荷比)にした。これを20秒混合してから、無血清DMEMを100μL含む、96ウェルプレートの6ウェルのそれぞれに、2.5μLを加え、ミニサークルDNAの終濃度を62.5ng/ウェルにした。これを8時間、37℃でインキュベートしてから、0.3mg/mLのルシフェリンを含む血清含有DMEMに培地を交換し、IVISのカメラシステムを用いて、細胞の生物発光についてイメージングした。
実施例8.CRISPR/Cas9による編集
CART媒介性のトランスフェクションのいくつかの例では、特異的CRISPR/Cas9による遺伝子編集を通じた標的遺伝子のノックインの成功が示されている。このケースでは、マウスβアクチン遺伝子の非翻訳領域をターゲティングするsgRNAとともに、Cas9をコードするmRNAをD13:A11と同時配合した。ルシフェラーゼまたはmCherry遺伝子と、βアクチン遺伝子由来の同じCRISPR切断部位とを含み、プロモーターを含まないミニサークルDNAも同時配合した。この系を用いると、マウスゲノムとミニサークルの両方がCas9によって切断された結果、ミニサークルベクターがβアクチン非翻訳領域に挿入されて、βアクチンプロモーターの制御下となった場合のみに、レポーター遺伝子が発現することになる。
Cas9 mRNA及びsgRNAコンストラクトと蛍光レポーター遺伝子との同時配合は、これらのカーゴの存在によって、CARTによる核酸送達が妨げられないようにして行った。このケースでは、eGFP mRNAは、Cas9 mRNAもしくはsgRNAのいずれかとの50%w/w混合物、または50%のeGFP mRNAと、25%のCas9 mRNAと、25%のsgRNAとからなる調合物として配合した。これらの例のいずれにおいても、細胞内でのeGFPの蛍光は、eGFP mRNAのみからなる調合物の約50%であった。CART D13:A11とCART O11:A9の両方で、これと同じ結果が得られた。これにより、上記のCARTによるCRISPR成分の同時配合の成功が裏付けられている。DLS(標準的な手順によるDLS)によるさらなる特徴付けによって、D13:A11またはO11:A9のいずれかと、Cas9 mRNAとsgRNAとの混合物で形成した粒子は、大きさが約173nmであったことが示され、これは、他のmRNA転写産物において観察された大きさと整合している。
lucミニサークルコンストラクトによって上記のように調合した複合体で3T3マウス線維芽細胞を処理したところ、有意な生物発光値が観察された。スクランブルsgRNA配列を用いたところ、このシグナルは観察されなかったことから、このシグナルが、ルシフェラーゼ遺伝子の3T3ゲノムへの特異的挿入によるものであったことが確認された。調合物でミニサークルDNAを用いた比率が高いほど、得られる生物発光が増大した。加えて、mCherryを含むミニサークルで複合体を形成し、3T3線維芽細胞に暴露したところ、フローサイトメトリー解析によって、その標的集団の約2%で、mCherryの強力な蛍光が見られたことが示され、ゲノムの効率的な組み込みが示された。
具体的には、CRISPR/Cas9による遺伝子編集は、下記の一般的な手順に従って、3T3線維芽細胞で行った。簡潔に述べると、HeLa細胞を40,000個の細胞/ウェルで、24ウェルプレートに播種し、37℃で一晩接着させた。CART/オリゴヌクレオチド複合体を調製するために、まず、Cas9 mRNA 134ngと、sgRNA 134ngと、ルシフェラーゼ遺伝子を含むミニサークルDNA 134ngとを、pH5.5のPBS 22.8μLと混合した。そして、トランスフェクション直前に、DMSO中の2mMストック由来のこの混合物にCARTを加えて、正味のカチオン:アニオン電荷比を10:1にした。これを20秒混合してから、無血清DMEMを400μL含む、24ウェルプレートの3ウェルのそれぞれに7.5μLを加え、各成分の終濃度を40ngとした。これを8時間、37℃でインキュベートした。この8時間が過ぎたら、培地を血清含有DMEMに交換し、24〜48時間静置した。インキュベート後、0.3mg/mLのルシフェリンを含む血清含有DMEMに培地を交換し、IVISカメラ系を用いて、細胞の生物発光についてイメージングした。
実施例9.mRNAワクチンの接種
ワクチン接種の例では、CART単独でも、アジュバントと組み合わせたCART(mRNAは存在しない)でも、サロゲート抗原モデルにおいて、抗腫瘍防御免疫は誘導されない(図2)。具体的には、この例では、6〜8週齢マウスに、107個の腫瘍特異的抗原(TSA)発現A20細胞を同時接種し、皮下注射によって、腫瘍と異なる解剖学的部位に、206μgのCART単独、または206μgのCARTと50μgのアジュバントで処置した。腫瘍サイズを毎日測定し、腫瘍直径が15mm超のマウスを動物用プロトコールに従って安楽死させた。これらのコントロール群のいずれでも、接種マウスにおいて、寿命の延長は観察されなかった。CARTは、免疫応答を惹起しない。
腫瘍への同時暴露による予防ワクチン接種
腫瘍接種の前または腫瘍接種時のいずかに、ワクチン接種を行うと、抗原特異的な予防応答が得られる。これらの研究では、TSA発現腫瘍細胞を有するマウスモデルにおいて、TSA−mRNA+アジュバントを含むCARTによるワクチン接種によって、同時配合の実施形態、またはワクチン接種時に別々に投与する場合のいずれにおいても、防御免疫が誘導されることが示されている。CART/TSA−mRNAによる処置によって、防御をもたらし、免疫刺激アジュバントの使用によって、有効性が向上する。アジュバント単独で処置したマウスでは、大きな腫瘍が急速に成長し、そのマウスは、動物用プロトコールに従って殺処分した。単回用量から活発な応答が得られ、ワクチンブーストは不要であり、2回目の腫瘍チャレンジの際に、リコールを起こすことができる(図3)。
具体的には、この例では、6〜8週齢のマウスに、皮下注射を通じて、107個の腫瘍特異的抗原(TSA)発現A20細胞を同時接種し、CART+TSA−mRNA+アジュバント(上記のように調合したもの)またはアジュバント単独のいずれかで、皮下注射によって、腫瘍とは異なる解剖学的部位に処置した。最初の30日間、1日おきに腫瘍サイズを測定した。腫瘍直径が15mm超のマウスを安楽死させた。リコール応答実験では、CART+TSA−mRNA+アジュバントで処置した群の生存マウスを107個のTSA発現A20細胞で再チャレンジした。
確立腫瘍の処置
大きな腫瘍の確立後、CART/mRNA+アジュバントワクチンの接種を行うと、抗原特異的な治療的応答が誘導される。大きな腫瘍への接種の7日後、CART/mRNA+アジュバントでの処置を行うと、腫瘍の退縮と寛解の両方が得られる(TSA−mRNA/CART複合体を3×3μg)。この研究(合計5匹のマウス)では、マウスにおいて、腫瘍の成長の進行が有意に遅延し、約60〜90日後でも、マウスの40%(5匹中2匹のマウス)の腫瘍が完全に治癒した。mRNA/CART+アジュバントを用いたワクチン接種の性能は、確立されているタンパク質ワクチン接種策(動物試験で防御作用が繰り返し示されている)を上回る。
具体的には、この例では、6〜8週齢のマウスに、107個の腫瘍特異的抗原(TSA)発現A20リンパ腫細胞を皮下接種した。腫瘍サイズが150mm3に達したら、マウスを3回、3μgのTSA−mRNA+アジュバントと複合体を形成したCART、アジュバント単独、または生理食塩水のいずれかで、皮下注射によって、腫瘍と異なる解剖学的部位で、各処置後に4日間空けて処置した。最初の40日間、1日おきに腫瘍サイズを測定した。腫瘍直径が15mm超のマウスを安楽死させた。
腫瘍内ワクチン接種
CART/mRNA複合体の腫瘍内注射によって、腫瘍が退縮する。確立されたA20リンパ腫腫瘍を、CARTと複合体を形成させたmRNAで処理すると、腫瘍における4つの異なる細胞集団のサブセットで、タンパク質が発現する。T細胞機能を増強することによって、抗腫瘍免疫応答を調節すると考えられるタンパク質候補によって、処理した腫瘍に対する大きな作用が見られた。留意すべきことに、同じ動物において、成長速度の遅延による作用は、遠位の未処理腫瘍でも観察された(図5)。これらの知見により、インサイチューワクチン接種/増強策に、転移性疾患を治療する可能性があることが示唆されている。
具体的には、この例では、6〜8週齢のマウスに、107個のA20細胞を2つの異なる解剖学的部位に同時に皮下接種した。腫瘍サイズが150mm3に達したら、各マウスの腫瘍の1つに、CART+10μgの免疫調節タンパク質mRNAまたは生理食塩水のいずれかを3回、腫瘍内注射することで処置した。他の腫瘍は未処置のままにした。最初の20日間、またはマウスを安楽死させる必要のあるサイズに腫瘍のサイズが達するまで、1日おきに両方の腫瘍を測定した。
実施例10.メッセンジャーRNAの送達及び放出用の電荷変動性放出性トランスポーター(CART)
本発明で提供するのは、調整可能で有効性に優れる新規種類の合成生分解性物質である電荷変動性放出性トランスポーター(CART)を少ない工程数で合成することと、評価することである。本明細書において、いくつかの実施形態によってもたらされるCARTは、構造的に独自のものであり、今まで見られなかった機序で作用し、細胞培養液と動物の両方において、タンパク質の高効率な翻訳のために、最初は、mRNAと複合体を形成するとともに、mRNAを保護及び送達するα−アミノエステルカチオンとして機能し、その後、分解性・電荷中和性の分子内転位を通じて物理的特性を変化させて、mRNAを放出する。この新規なmRNA送達技術は、多くの研究及び治療用途に広く適用可能であることができる。
メッセンジャーRNA(mRNA)によって、そのmRNAのコードするタンパク質のインビボ合成が可能になり、急速に発展しつつあるタイプの遺伝子療法薬物であって、がん、遺伝的障害及び感染症のような様々な病気の治療を一変させる可能性がある薬物の土台をもたらす。mRNAによってコードされるタンパク質を特異的に発現させるのに、本発明における特定の実施形態による方法と組成物を用いることは、研究用途、イメージング用途、タンパク質の補充または増強を必要とする治療用途、及び予防適応と免疫療法適応の両方における新規ワクチン接種策に活用できる。
本発明で提供するいくつかの実施形態による電荷変動性放出性トランスポーター(CART)は最初は、ポリアニオン性mRNAと一過性に複合体を形成するとともに、そのmRNAを保護するポリカチオンとして機能し、その後、制御された自壊機序を通じて、そのカチオン電荷、すなわち、アニオン結合能を速やかに変化させる。
特定の実施形態の例として示すのは、mRNAと非共有結合による複合体を形成し、そのmRNAを保護、細胞内送達及び放出するように設計されている新規な種類の物質として、CARTを開発することである。これらのCARTは、特有の自壊機序によって転位して、カチオン性アミンを中性アミドに変換する動的なカチオン性α−アミノエステルで構成されている。この物質は、有機分子触媒的開環ポリマー化(OROP)と脱保護を通じて、少ない工程数(二工程)で合成され、複数の細胞種と動物モデルにおいて、筋肉内投与と静脈内投与によって、mRNAを送達及び放出する自己組織化高分子電解質複合体をmRNAと有効に形成する。この実施例10では、これらの物質によるmRNA送達の有効性が、強固なエンドソーム脱出と、細胞質内でのmRNAの放出を惹起する特有の電荷変動性分子内転位によるものであることがさらに示されている。
mRNAの送達と関連する特定の課題に対応する動的な特性を有する新規な種類のオリゴヌクレオチド送達ビヒクルである両親媒性オリゴ(カーボネート−b−α−アミノエステル)を本発明者は設計した。siRNAに関する本発明者の過去の研究では、親油性ブロックとカチオン性ブロックの両方を含むブロックコオリゴマーであって、アニオン性siRNAデュプレックスとナノスケールのポリプレックスを形成するように設計されたブロックコオリゴマーを用いて、効率的な送達を実現できることが示された。一本鎖mRNAは、細胞内半減期がsiRNAとpDNAよりも短いので、効率的な発現には速やかなエンドソーム脱出と、その後のオリゴヌクレオチド放出が不可欠なのではないかと本発明者は仮定した。これらの課題の両方に対処するために、速やかに自壊するカチオン性ブロックであって、同時にオリゴマー主鎖を切断するとともに、カチオン性アミンを中性アミドに変換する役割を果たすカチオン性ブロックが組み込まれた両親媒性オリゴマー送達ビヒクルを本発明者は考案した。細胞取り込み後に主鎖が分解すると、エンドソーム内の浸透圧を向上させることによって、エンドソームの破裂を促すと仮定されている。加えて、この機序は同時に、ポリアニオン成分とポリカチオン成分のマルチサイトかつ静電的な会合を解消して、細胞質内でのmRNAの放出と、その後の遺伝子発現を促す。
以前、N−保護モルホリン−2−オンのOROPによって、ポリ(α−アミノエステル)(図7、1)を合成することを本発明者は報告したが、その後、本明細書に記載されているように、これをmRNAの送達に用いる研究に至った。その官能化ラクトンモノマーは、高収率な二工程で、市販の出発物質から容易に生成される。これらのモノマーは、有機分子触媒的条件下で、第一級アルコール開始剤によって開環して、鎖長と分散度が正確に制御されたポリ(α−アミノエステル)を得ることができる。脱保護時には、オリゴマーは水溶性(0.5M超)であり、非緩衝水において安定である(D2Oにおいて2日超安定である)。しかしながら、これらのオリゴマーは、周知のポリ(β−アミノエステル)とは異なり、弱塩基性条件に暴露されると、制御された自壊性転位を通じて、5分未満に分解し、本発明では、これを利用して、静電的相互作用の喪失によるmRNAの放出を促す。
この分解機序の研究によって、アンモニウムカチオンが部分的に脱プロトン化して、5員遷移状態を経て、主鎖エステルへの分子内環化を可能にすることが示されている(図7A)。主鎖のこの最初の収縮後、隣接するモノマー単位の窒素基が、6員遷移状態を経る2回目の環化に関与して、ヒドロキシエチルグリシン(HEGD、2)の小分子ダイマー(メイラード反応の既知の無毒代謝物)を形成する。この転位は非常に速く、効率的であり、ホモオリゴマーは、pH7.4において、2分未満のt1/2で分解する。この系特有の再活性は、カルボニルによる、必要な求核性アミンの脱プロトン化と同時に進行する誘導的及び水素結合相互作用による、主鎖エステルカルボニルの相補的活性化によって説明できる。新たに形成されたヒドロキシエチルアミドによる、6員遷移状態の硬直化によって、最後の環化が促され、HEGD2が形成される。この転位に関する機序と変異形態のさらなる研究については、別途報告するが、ポリカチオン性オリゴマーを電荷中性断片に速やかに変換するこの系特有の動態は、ポリアニオン性薬物とプローブ送達に対して広く活用可能な概念である可能性がある。
mRNAを送達するための物質であって、ドデカノールで官能化された親油性カーボネートブロックが自壊性α−アミノエステルのカチオン性ブロックに付加されていることを特徴とする物質を本発明者は設計し、この物質は、OROP手法を用いて、環状カーボネートとともに、モルホリン−2−オンモノマーをコポリマー化することによって容易に得られる(図7B)。
この技術の魅力的な面は、ジブロックコオリゴマーにおける親油性ポリマードメイン(または脂質ブロック)の長さの違いを用いて、性能を調整できる点である。第一級アルコールを用いて、ドデシル−カーボネートブロックの開環を開始させてから、カチオン性ブロックの付加とオリゴマー化を行って、少数の一連のオリゴマー送達ビヒクルを合成した。この方策を用いて、平均で13個の脂質モノマー単位と、11個のカチオン性モノマー単位を含むオリゴマー(D13:A11、7)と、18個の脂質単位と、17個のカチオン性単位を含むオリゴマー(D18:A17、8)と、13個のカチオン性単位のホモオリゴマー(A13、9)を合成した。それぞれの新規ベクターは、2つの工程のみで作製でき、プロセス所要時間をわずか数時間にできる。
CART送達ビヒクルに適用する場合のこの転位への理解を深めるために、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、生理学的pHにおけるオリゴ(カーボネート−b−α−アミノエステル)の動態を解析した。転位反応が、両親媒性CARTのカチオン性結合部分のみに影響を及ぼすが、親油性ドメインはインタクトのままにすることを示すために、モデルコオリゴマーPyr−D15:A12(10)をpH7.4のPBSバッファーに溶解して、転位させた(図8A)。1時間後、この溶液を濃縮し、GPCによって解析した(図8B)。分解したコオリゴマーのGPCトレース(黒色)を、独立して合成したPyr−D15オリゴマー(11)(青色)と、転位及びBoc脱保護の前のPyr−D15:A12ブロックコオリゴマー(赤色)と比較した。予想どおり、保護D15:A12ブロックコオリゴマーのGPCトレースでは、ホモオリゴマーPyr−D15(11)よりも高い分子量が見られる(それぞれ、6.4kDaと4.6kDa)。しかしながら、pH7.4のPBSバッファーに暴露後には、脱保護ブロックコオリゴマーでは、分子量の低下(4.3kDa)が見られ、その値は、Pyr−D15脂質ブロック(4.6kDa)とほぼ同程度であったことから、生理学的pHでは、CARTのカチオン性部分は分解するが、親油性ブロック全体はインタクトなままであることが示唆されている。同じGPCデータから得られたUVトレースによって、開始アルコール(このケースでは、ピレンブタノールであるが、他の求核性アルコール、アミン及びチオールを用いることもできる)は、親油性ブロックに結合したままであり、CARTを様々な細胞と器官にターゲティングする他の官能基(リガンドなど)を付加するのに、このアルコールを使用する今後の研究が可能になることが示されている。
mRNAの送達ビヒクルとしてのCARTの有効性を評価するために、増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)mRNAをモデルレポーター遺伝子として選択した。処理後、eGFPの蛍光のフローサイトメトリー解析を行うことによって、平均タンパク質発現と、ベースラインの蛍光レベル(トランスフェクション率(%))を上回るレベルを示した細胞の割合の同時定量が可能になる。CART複合体による処理後の遺伝子発現を、ポジティブコントロールとしての市販薬剤のLipofectamine 2000(Lipo)の場合と、siRNA送達に特に有効であることが分かっている2つの化合物(D4:G4(12)及びD12:G12(13))の場合と比較した。メーカーの指示に従ってLipofectamineと調合したmRNAでHeLa細胞を処理したときには、中程度の遺伝子発現が観察された(図9A)。しかしながら、この条件では、細胞トランスフェクション率は約50%に過ぎず、細胞集団の半分で、eGFPの発現が見られなかった(図9B)。全く対照的に、本発明者の設計したオリゴ(カーボネート−b−α−アミノエステル)CARTのD13:A11(7)では、高度なeGFP発現が見られ、注目すべきことに、99%超のトランスフェクション効率と、高い平均蛍光値が見られた。さらに長いブロック長の第2のオリゴ(カーボネート−b−アミノエステル)CART(D18:A17(8))でも、高いトランスフェクション効率(90%超)が得られたが、平均トランスフェクション値は上記よりも低かった。α−アミノエステルホモオリゴマーで形成した複合体(A13(9))は、eGFPの発現を誘導しなかった。これにより、疎水性ドメインと親水性ドメインとの顕著な相分離によって、ナノ粒子の形成が安定化され、親油性の向上により、膜会合と取り込みが促進されるという以前の観察結果も確認される。グアニジニウムで官能化された両親媒性オリゴカーボネートD4:G4(12)とD12:G12(13)では、siRNA送達剤としての効能とは対照的に、mRNAの発現は見られなかった。これらの物質には、受動的加水分解を超越して分解したり、カーゴを放出したりする機序はないので(t1/2:8時間超)、それにより、エンドソーム脱出と細胞質内への放出が、mRNA送達の際には、siRNAの際よりも速やかなタイムスケールで行われなければならないという本発明者の仮説が裏付けられる。
CART7による送達パラメーターを最適化するために、カチオン性オリゴマーとアニオン性mRNAとの電荷比を1:1〜50:1(+/−)で変動させて、得られるeGFPの蛍光を割り出した(図9C)。値は、完全なアミンプロトン化とホスフェート脱プロトン化を想定して、アンモニウムカチオンとホスフェートアニオンの理論的な(+/−)電荷モル比として報告されている。eGFPの発現によって、電荷比に対して概ね放物線状の依存性が示され、eGFPの最大蛍光は、10:1の(+/−)電荷比で形成した複合体によるものであった。この値は、siRNA送達用の、グアニジニウムに富むオリゴカーボネート複合体(4.8:1の電荷比で最適な性能を示した)で観察された値よりも高く、これは、アンモニウムカチオンとホスフェートアニオンとの静電的相互作用が多少低いことによる可能性が高く、グアニジニウムイオンの場合では、ΔG=−0.575kcal/モルであるのに対して、アンモニウムイオンの場合では、−0.417kcal/モルである。さらなる実験はいずれも、この10:1という最適化(+/−)電荷比を用いて行った。さらに、エピ蛍光顕微鏡を用いて、フローサイトメトリーの結果を確認した(図9D)。CART/mRNA複合体で処理したHeLa細胞では、ほぼすべての視認可能な細胞で、有意な蛍光が見られる。対照的に、Lipofectamineで処理した細胞では、部分的にeGFPの発現が見られ、他の細胞は、トランスフェクションされないままであった。
mRNAの送達に適用した場合のオリゴ(カーボネート−b−α−アミノエステル)CARTの性能に関与すると本発明者が仮定した崩壊性転位機序をさらに理解するために、一連の実験を行った。インビトロトランスフェクションで用いた条件と同様の条件下で、動的光散乱(DLS)を用いて、CART7と、CART7とmRNAとで形成した高分子電解質複合体を解析した。mRNA含有ポリプレックスを細胞培地に加えたところ、その流体力学的サイズは、最初は254nmであったが、2時間をかけて、512nmまでゆっくり増大した。観察されたサイズの増大には、カチオン性α−アミノエステルブロックが中性アミドへ部分的に転位して、関連する脂質セグメントの凝集が生じたことが反映されている。これは、ESI−MSによって確認され、同じタイムスケールで、HEGD小分子の相対的な強度が向上したことが示された。mRNA/CART粒子を非緩衝水に加えると、サイズは、2時間の実験全体を通じて、254nm±10nmで一定のままである。これには、α−アミノエステルホモオリゴマーがこれらの条件下で転位しない結果が映し出されている。ゼータ電位測定値は、粒径データと整合しており、表面電荷は、最初、調合直後には、カチオン性の高い+33mVであり、2時間をかけて−30mVになる。これも、カチオン性アンモニウム部分が中性アミドに転位し、付随のオリゴヌクレオチドにより、表面は主にアニオン性のままになることと整合している。粒径は、カーゴ依存性ではなかった。長さがeGFPの2倍超であるルシフェラーゼ(Fluc)mRNA(Fluc=1929ntに対して、eGFP=996nt)とともに、ポリプレックスを形成して、pH7.4の細胞培地に加えたところ、粒子は、同じ挙動を見せ、最初は273nmであり、2時間をかけて、444nmまでゆっくり増大した。これにより、同じCARTによって、今後、多種多様なオリゴヌクレオチドの送達が可能になることが示唆されている。mRNAカーゴを加えなかったときには、オリゴ(カーボネート−b−アミノエステル)CARTは、その両親媒性構造により、ミセルを形成した。これらのミセルは、非緩衝水において、68nmのサイズで安定したままであった。しかしながら、これらのミセルを細胞培地(pH7.4)に加えたところ、DLSによって特徴付けることができない凝集体を速やかに形成した。ホモオリゴマー単独(t1/2=2分)と、オリゴ(カーボネート−b−アミノエステル)ミセル(30分以内に500nm超に凝集)と、mRNA/CART複合体(2時間後に500nmに凝集)の複合転位データでは、mRNAとの高分子電解質複合体を形成すると、おそらくは、脱プロトン化とそれによる転位の速度の低下によって、水性環境におけるα−アミノエステル材の安定性が向上することが示されている。このことにより、これらの物質が、pH7.4において、治療上関連するタイムスケールで分解可能になる一方で、未緩衝化条件下での保存と調合に十分な安定性を保つことができる。
まず、細胞進入の機序を割り出すために、Cy5標識eGFP mRNAを用いて、4℃(エンドサイトーシスプロセスを阻害することが知られている条件)での細胞取り込みと、37℃での正常な取り込みを比較した。HeLa細胞をこれらの条件下で処理したところ、Cy5−mRNAの取り込みの有意な(85%)低下が観察された(図10A)。これは、250nmの粒子を特徴とする、予測されたエンドサイトーシス機序と整合している。
オリゴ(カーボネート−b−アミノエステル)CARTによる自壊性放出機序を調べるために、7での処理に起因する粒子取り込みと遺伝子発現を、mRNAの送達に有効でないカチオン性オリゴマーと直接比較した。eGFP mRNAとCy5標識eGFP mRNAとの混合物を送達することによって、mRNAのインターナリゼーションと遺伝子発現を切り離して、同時に定量でき、Cy5の蛍光は、エンドソーム脱出または放出と関係なく、インターナリゼーションされたmRNAを示し、eGFPの蛍光は、mRNAの細胞質内放出(これにより、翻訳が可能になる)を示す。本発明者は、この方法を用いて、D13:A11CART(7)と同等の長さの2つの追加のカチオン性ブロックコオリゴマーを調整することによって、主鎖構造とカチオンの種類が取り込みと発現の両方に及ぼす作用を調べた。細胞取り込みと遺伝子発現の両方に関して、崩壊性アンモニウム含有CART(D13:A11(7))、非電荷変動性グアニジニウム含有オリゴマー(D13:G12(13))と、非電荷変動性アンモニウム含有オリゴマー(D13:Pip13(14))という3つのオリゴマーを直接比較した。
オリゴマー7、13及び14をCy5−eGFP mRNAと10:1の(+/−)比率で混合して、得られた複合体をHeLa細胞に加えた。Cy5の蛍光によって定量したところ、すべてのコオリゴマーで、ほぼ同レベルのmRNAの取り込みが見られたが(図10B)、電荷変動性のD13:A11(7)のみで、eGFP mRNAの検出可能な発現が見られた。このデータから、すべてのmRNA複合体が、細胞に効率的にインターナリゼーションされるが、速やかに分解される主鎖がないので、非CART複合体はエンドソームを脱出せず、または細胞質でのeGFPの発現を可能にするのに必要なタイムスケールで、mRNAを放出しないことが示されている。D13:Pip13(14)の非崩壊性アンモニウム含有オリゴマーで形成した複合体によって、eGFPの発現が見られないことから、この放出を説明するのは、単に、アンモニウムカチオンとグアニジニウムカチオンとの静電的結合親和性の違いではないことがさらに示されている。むしろ、カチオン電荷が特異的に、制御された形で喪失し、小分子に転位することが、有効性のためには不可欠である。
本発明のオリゴ(カーボネート−b−α−アミノエステル)という物質で観察される電荷変動機序は、mRNAの結合を無効にして、HEGD小分子の形成を誘発して、エンドソーム脱出及び/またはmRNAの放出を促進できる。この機序をさらに理解するために、HeLa細胞をmRNA/CART複合体と、エンドソーム微小環境に影響を及ぼすことが分かっている2つの化合物で同時処理した。コンカナマイシンA(ConA)は、エンドソームの酸性化を阻害することが示されている特異的V−ATPaseインヒビターである。遺伝子送達で用いられるその他のカチオン性アンモニウム含有物質では、この物質または類似の化合物で同時処理すると、プロトンスポンジ効果によるエンドソーム緩衝浸透圧破裂の低減により、細胞質オリゴヌクレオチド濃度と、その後の遺伝子発現の急激な低下が見られる。カチオン性脂質ナノ粒子とPEIのような化合物は、V−ATPaseインヒビターで処理すると、遺伝子送達が10〜200倍低下したが、本発明のα−アミノエステルCART7は、ConAによる処理からあまり影響を受けない(図10C、21%低下、p=0.177)。これにより、この系では、エンドソーム脱出または遺伝子発現を実現するのに、エンドソームの酸性化と緩衝化は必要ではないことが示されている。クロロキン(Chl)は、エンドソームの緩衝化と破壊を増大させることによって、遺伝子送達を増大させるのに用いられているリソソーム指向剤である。緩衝機能が組み込まれていない遺伝子送達物質(メチル化PEIなど)によって、遺伝子発現のかなりの増大(2〜3倍)が見られる一方で、緩衝化ベクター(PEIなど)が影響を受けないことが他の研究者によって示されている。本発明のCARTでは、発現のわずかな低下(22%低下、p=0.469)が見られたに過ぎず、おそらく、脱ポリマー化とHEGD(2)の形成により、浸透圧破裂を通じた効率的な脱出がすでに生じているという理由で、エンドソーム脱出が、オリゴ(カーボネート−b−アミノエステル)CARTによるmRNAの送達における制限因子ではないことが示されている。
オリゴ(エステル−b−アミノエステル)CARTによるmRNAの放出とエンドソーム脱出の作用を、試料の無効送達ビヒクル(D12:G12、13)と比較したものは、トランスポーター(結合したダンシルフルオロフォア3を使用)、Cy5−mRNA及びテトラメチルローダミン(TRITC)−デキストラン4400(エンドソーム区画の染色)の検出を用いる共焦点顕微鏡によってさらに確認できる。CART(7)/Cy5−mRNA複合体で処理した後、細胞を4時間イメージングすると、Cy5シグナルと、トランスポーターに結合したダンシル(3)の両方の蛍光はいずれも、本質的に主に散乱することから、これらの物質が、無事にエンドソームを脱出し、ナノ粒子複合体から解離したことが示されている(図10D、i)。ダンシルシグナル(図ii)において観察された点は、放出された脂質ブロックの多少の細胞内凝集に起因する可能性が高い。TRITCに由来するシグナルでも、比較的散乱した蛍光が見られ、この蛍光は、エンドソームが破裂し、捕捉されていたデキストランを放出すると生じると思われる。しかしながら、細胞を非崩壊性D:G(13)/Cy5−mRNA複合体で処理すると、Cy5とダンシルの両方の蛍光とも、かなり多くの点状であり、共局在している(図5D、iii)。さらに、この蛍光では、点状のTRITC−デキストラン4400との大きな重複が見られ、エンドソームへの取り込みの継続が示されている。勘案すると、これらのデータにより、CART7の電荷変動性挙動が、その優れたmRNA送達性能を担っていることが強く示唆されている。
mRNAを送達するためのCARTの汎用性を調べるために、追加の用途において、オリゴ(カーボネート−b−アミノエステル)D13:A11(7)を評価した。典型的にはトランスフェクションするのが困難とみなされている細胞株を含む細胞株パネルで、CART7による送達後のeGFP mRNAの発現をアッセイした。HeLaですでに行った最適化実験に加えて、CHO細胞、HEK−293細胞、ヒト肝細胞がん(HepG2)細胞及びマウスマクロファージJ774細胞において、0.125μg/ウェルのeGFP mRNAと形成させたCART複合体で処理することによって、mRNAの発現をLipofectamineと比較した(図11A)。試験したすべての細胞株において、CART D13:A11(7)を用いた場合のトランスフェクション効率は、90%超であったが、Lipofectamineでは、22〜55%しか誘導されなかった。これにより、この送達系が、様々なヒト細胞株とヒト以外の細胞株で汎用的であることが示唆されている。CART媒介性送達は、様々な細胞株で一貫しているのみならず、様々な長さのmRNAでも一貫している。D13:A11(7)は、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)mRNAの送達においても、有効性が高く、性能が実質的にLipofectamineを上回っているからである(図11B)。eGFP mRNAで観察された傾向と同様に、mRNAの長さの違い(1929ntに対して996nt)にかかわらず、10:1の(+/−)比率によって、最高レベルのFluc生物発光が得られたことから、送達効率は、mRNAの長さとは概ね無関係であることが示されている。
生物発光イメージング(BLI)は、生きている動物におけるmRNAの送達、発現及び体内分布を定量するための強力なツールをもたらす。全身投与経路と局部投与経路の両方において、CART−mRNA複合体の有効性を評価するために、麻酔したBALB/cマウスにおいて、BLIを用いて、CARTと複合体を形成させたFluc mRNAの静脈内注射と筋肉内注射を本発明者は評価した。各マウスにおいて、7.5μgのmRNAと、CART D13:A11(7)との複合体を形成して、筋肉内注射によって、右大腿部筋肉に、75μLのPBS中で投与した。直接的コントロールとして、7.5ugのネイキッドmRNAを反対の脇腹に注射した。D−ルシフェリンを全身投与し、ルシフェラーゼの発現を72時間にわたり、注射の1時間後から評価した。mRNAをD13:A11で送達したときには、注射部位で、高レベルのルシフェラーゼ活性が観察された(図11C、D)。この発現は、4時間時点にピークとなり、72時間後でも観察可能であった。しかしながら、ネイキッドmRNAでは、光量子束によって測定したところ、5匹のマウスすべてにおいて、低レベルのルシフェラーゼ発現しか見られなかった。
尾静脈内注射によって同じ用量で複合体を投与したときには、本発明者は、注射から1時間後という早さで、活発な腹部生物発光を観察し、4時間時点にピークとなったことから、本発明の複合体は、局在して、mRNAを主に脾臓に送達し、肝臓においても、高レベルの生物発光が検出可能であることが示された(図11E、F)。高レベルな発現は24時間継続し、48時間後にも、検出可能な生物発光が見られた。この発現は主に、脾臓と肝臓に集中し、腹部での総光出力のうち、平均して23%が脾臓に由来し、70%が肝臓に由来する。ネイキッドmRNAをPBS中で投与したときには、ルシフェラーゼ生物発光は観察されなかった。注射したすべてのマウスにおいて、注射直後または処置後数週間、毒性は観察されなかった。
インビボで、複数の投与経路によって機能性mRNAを送達できることは、送達技術において重要である。局所筋肉内注射は、投与のしやすさと、皮膚組織と筋肉組織においてナイーブ樹状細胞と抗原提示細胞にアクセスできることにより、ワクチン接種を含む多くの療法において好ましい投与経路であることができる。尾静脈を通じたmRNAポリプレックス製剤の静脈内注射は、肝臓、リンパ節及び脾臓のような細網内皮系沿いにある特異的標的または固体腫瘍のターゲティングを対象とする全身投与用として、広範囲にわたって有用である。脾臓への局在は、それらの組織における高レベルな樹状細胞及びその他の免疫細胞を踏まえると、免疫療法に関する今後の研究の際に特に魅力的である。肝臓への局在は、肝疾患の治療に利用できる。
メッセンジャーRNA療法には、疾患治療を一変させる可能性があるが、mRNAを利用するための重大な技術的課題は依然として、安全で汎用的かつ有効な送達方法の開発である。mRNAを細胞及び動物に有効に高効率で送達するための斬新な機序を通じて作用する調製可能で工程数の少ない独自のmRNA送達策を本発明者は開発した。本発明者のアプローチは、OROPと全脱保護を用いて、オリゴ(カーボネート−b−アミノエステル)送達ビヒクルを調製する二工程プロセスに頼るものである。細胞内送達後、これらの電荷変動性物質は、驚くべき分子内転位を起こし、その際、カチオン性アミンが中性アミドに変換されて、その静電的複合体からアニオン性mRNAを放出し、翻訳のために、その核酸を細胞質中に放出する。これらのCARTを用いるmRNA送達の有効性により、細胞と動物の両方において機能性タンパク質を発現させる新たなmRNA送達策が得られる。
特定の実施形態
実施形態1
カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合している核酸を含む細胞透過性複合体であって、前記カチオン性両親媒性ポリマーが、pH感受性崩壊性ドメインを含む前記細胞透過性複合体。
実施形態2
前記カチオン性両親媒性ポリマーが、pH感受性崩壊性ドメインと親油性ポリマードメインを含む、実施形態1に記載の細胞透過性複合体。
実施形態3
前記カチオン性両親媒性ポリマーが、下記の式を有し、
R1−[L1−[(LP1)z1−(IM)z2−(LP2)z3]z4−L2−R2]z5
式中、
R1が、水素、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、CHCl2、−CHBr2、−CHF2、−CHI2、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2F、−CH2I、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、−OCH2Cl、−OCH2Br、−OCH2I、−OCH2F、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
R2が、水素、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、CHCl2、−CHBr2、−CHF2、−CHI2、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2F、−CH2I、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、−OCH2Cl、−OCH2Br、−OCH2I、−OCH2F、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
L1とL2が独立して、結合手、−C(O)O−、−O−、−S−、−NH−、−C(O)NH−、−NHC(O)−、−S(O)2−、−S(O)NH−、−NHC(O)NH−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンであり、
LP1とLP2が独立して、結合手または親油性ポリマードメインであり、LP1またはLP2の少なくとも1つが、親油性ポリマードメインであり、
IMが、前記pH感受性崩壊性ドメインであり、
z5が、1〜10の整数であり、
z1とz3とz4が独立して、0〜100の整数であり、z1またはz3の少なくとも1つが、0ではなく、
z2が、2〜100の整数である、実施形態2に記載の細胞透過性複合体。
実施形態4
前記カチオン性両親媒性ポリマーが、下記の式を有し、
式中、
環Aが、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
CARTが、−L
1−[(LP
1)
z1−(IM)
z2−(LP
2)
z3]
z4−L
2−R
2という式を有し、
式中、
R
2が、水素、ハロゲン、−CCl
3、−CBr
3、−CF
3、−CI
3、CHCl
2、−CHBr
2、−CHF
2、−CHI
2、−CH
2Cl、−CH
2Br、−CH
2F、−CH
2I、−CN、−OH、−NH
2、−COOH、−CONH
2、−NO
2、−SH、−SO
3H、−SO
4H、−SO
2NH
2、−NHNH
2、−ONH
2、−NHC(O)NHNH
2、−NHC(O)NH
2、−NHSO
2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl
3、−OCF
3、−OCBr
3、−OCI
3、−OCHCl
2、−OCHBr
2、−OCHI
2、−OCHF
2、−OCH
2Cl、−OCH
2Br、−OCH
2I、−OCH
2F、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
L
1とL
2が独立して、結合手、−C(O)O−、−O−、−S−、−NH−、−C(O)NH−、−NHC(O)−、−S(O)
2−、−S(O)NH−、−NHC(O)NH−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンであり、
LP
1とLP
2が独立して、結合手または親油性ポリマードメインであり、LP
1またはLP
2の少なくとも1つが、親油性ポリマードメインであり、
IMが、前記pH感受性崩壊性ドメインであり、
z5が、1〜10の整数であり、
z1とz3とz4が独立して、0〜100の整数であり、z1またはz3の少なくとも1つが、0ではなく、
z2が、2〜100の整数である、実施形態3に記載の細胞透過性複合体。
実施形態5
前記環Aが、置換または非置換のアリールである、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態6
前記環Aが、置換または非置換のフェニルである、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態7
前記環Aが、置換または非置換のアリールである、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態8
前記環Aが、置換または非置換のフェニルまたはナフタレニルである、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態9
前記カチオン性両親媒性ポリマーが、下記の式を有する、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態10
前記カチオン性両親媒性ポリマーが、下記の式を有する、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態11
前記カチオン性両親媒性ポリマーが、下記の式を有し、
式中、CART
1とCART
2とCART
3が独立して、実施形態4で定義されているようなCARTである、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態12
L1が、−CH2−O−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンである、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態13
L
1が、−CH
2−O−、
である、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態14
z5が、1〜3の整数である、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態15
z5が、1または3である、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態16
z5が1である、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態17
z5が3である、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態18
R2が水素である、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態19
L2が結合手である、実施形態3に記載の細胞透過性複合体。
実施形態20
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、nが、2以上の整数である、実施形態1に記載の細胞透過性複合体。
実施形態21
nが、2〜50の範囲の整数である、実施形態20に記載の細胞透過性複合体。
実施形態22
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、
nが、2以上の整数であり、
n1が、0〜50の整数であり、
Zが、前記求核部分であり、
X
1が、結合手、−C(R
5)(R
6)−、−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−、−O−C(R
5)(R
6)−または−O−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、
X
2が、−O−または−S−であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態1に記載の細胞透過性複合体。
実施形態23
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、
nが、2以上の整数であり、
Zが、前記求核部分であり、
X
1が、結合手、−C(R
5)(R
6)−、−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−、−O−C(R
5)(R
6)−または−O−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、
X
2が、−O−または−S−であり、
R
1.1、R
1.2、R
2.1、R
2.2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態1に記載の細胞透過性複合体。
実施形態24
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、nが、2以上の整数である、実施形態1に記載の細胞透過性複合体。
実施形態25
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、nが、2以上の整数である、実施形態1に記載の細胞透過性複合体。
実施形態26
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
nが、2以上の整数であり、
n1が、0〜50の整数であり、
X
1が、結合手、−O−、−NR
5−、−C(R
5)(R
6)−または−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、
X
2が、結合手、−O−、−C(R
9)(R
10)−または−C(R
9)(R
10)−C(R
11)(R
12)−であり、
X
4が、結合手、−C(O)−、−P(O)(OR
16)
2−、−S(O)(OR
17)
2−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、
X
5が、求核部分であり、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態1に記載の細胞透過性複合体。
実施形態27
Zが、−S−、−S+R13−、−NR13−または−N+(R13)(H)−であり、R13が、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態28
Zが、−S−、−S+R13−、−NR13−または−N+(R13)(H)−であり、R13が、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態23に記載の細胞透過性複合体。
実施形態29
Zが、
であり、式中、
X
3が、C(R
15)またはNであり、
X
4が、結合手、−C(O)−、−P(O)(OR
16)
2−、−S(O)(OR
17)
2−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、
X
5が、求核部分であり、
R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態4に記載の細胞透過性複合体。
実施形態30
Zが、
であり、式中、
X
3が、C(R
15)またはNであり、
X
4が、結合手、−C(O)−、−P(O)(OR
16)
2−、−S(O)(OR
17)
2−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、
X
5が、求核部分であり、
R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態23に記載の細胞透過性複合体。
実施形態31
X5が、−N+(R13)(H)−であり、R13が、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態29に記載の細胞透過性複合体。
実施形態32
前記親油性ポリマードメインが、下記の式を有し、
式中、
n2が、1〜100の整数であり、
R
20が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態2に記載の細胞透過性複合体。
実施形態33
前記核酸が、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化RNA(tracrRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、ミニサークルDNA、ゲノムDNA(gDNA)である、実施形態1に記載の細胞透過性複合体。
実施形態34
実施形態1に記載の複数の細胞透過性複合体を含むナノ粒子組成物。
実施形態35
下記の式のカチオン性両親媒性ポリマーであって、
R1−[L1−[(LP1)z1−(IM)z2−(LP2)z3]z4−L2−R2]z5
式中、
R1が、水素、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、CHCl2、−CHBr2、−CHF2、−CHI2、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2F、−CH2I、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、−OCH2Cl、−OCH2Br、−OCH2I、−OCH2F、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
R2が、水素、ハロゲン、−CCl3、−CBr3、−CF3、−CI3、CHCl2、−CHBr2、−CHF2、−CHI2、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2F、−CH2I、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC(O)NHNH2、−NHC(O)NH2、−NHSO2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl3、−OCF3、−OCBr3、−OCI3、−OCHCl2、−OCHBr2、−OCHI2、−OCHF2、−OCH2Cl、−OCH2Br、−OCH2I、−OCH2F、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
L1とL2が独立して、結合手、−C(O)O−、−O−、−S−、−NH−、−C(O)NH−、−NHC(O)−、−S(O)2−、−S(O)NH−、−NHC(O)NH−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンであり、
LP1とLP2が独立して、結合手または親油性ポリマードメインであり、LP1またはLP2の少なくとも1つが、親油性ポリマードメインであり、
IMが、前記pH感受性崩壊性ドメインであり、
z5が、1〜10の整数であり、
z1とz3とz4が独立して、0〜100の整数であり、z1またはz3の少なくとも1つが、0ではなく、
z2が、2〜100の整数である前記カチオン性両親媒性ポリマー。
実施形態36
前記カチオン性両親媒性ポリマーが、下記の式を有し、
式中、
環Aが、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
CARTが、−L
1−[(LP
1)
z1−(IM)
z2−(LP
2)
z3]
z4−L
2−R
2という式を有し、
式中、
R
2が、水素、ハロゲン、−CCl
3、−CBr
3、−CF
3、−CI
3、CHCl
2、−CHBr
2、−CHF
2、−CHI
2、−CH
2Cl、−CH
2Br、−CH
2F、−CH
2I、−CN、−OH、−NH
2、−COOH、−CONH
2、−NO
2、−SH、−SO
3H、−SO
4H、−SO
2NH
2、−NHNH
2、−ONH
2、−NHC(O)NHNH
2、□NHC(O)NH
2、−NHSO
2H、−NHC(O)H、−NHC(O)OH、−NHOH、−OCCl
3、−OCF
3、−OCBr
3、−OCI
3、−OCHCl
2、−OCHBr
2、−OCHI
2、−OCHF
2、−OCH
2Cl、−OCH
2Br、−OCH
2I、−OCH
2F、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールであり、
L
1とL
2が独立して、結合手、−C(O)O−、−O−、−S−、−NH−、−C(O)NH−、−NHC(O)−、−S(O)
2−、−S(O)NH−、−NHC(O)NH−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンであり、
LP
1とLP
2が独立して、結合手または親油性ポリマードメインであり、LP
1またはLP
2の少なくとも1つが、親油性ポリマードメインであり、
IMが、前記pH感受性崩壊性ドメインであり、
z5が、1〜10の整数であり、
z1とz3とz4が独立して、0〜100の整数であり、z1またはz3の少なくとも1つが、0ではなく、
z2が、2〜100の整数である、実施形態1のカチオン性両親媒性ポリマー。
実施形態37
細胞への核酸のトランスフェクション方法であって、細胞と、実施形態1に記載の複合体とを接触させることを含み、前記複合体が、カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合している核酸を含む前記方法。
実施形態38
前記カチオン性両親媒性ポリマーを前記細胞内で分解させることによって、分解産物を形成させることをさらに含む、実施形態37に記載の方法。
実施形態39
前記分解産物が、置換または非置換のジケトピペラジンである、実施形態38に記載の方法。
実施形態40
前記核酸が、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化RNA(tracrRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、ミニサークルDNA、ゲノムDNA(gDNA)からなる群から選択した1つ以上を含む、実施形態37に記載の方法。
実施形態41
前記mRNAを前記細胞内で発現させることをさらに含む、実施形態40に記載の方法。
実施形態42
1つ以上の遺伝子産物の発現を増加させる、実施形態37に記載の方法。
実施形態43
1つ以上の遺伝子産物の発現を減少させる、実施形態37に記載の方法。
実施形態44
前記細胞が真核細胞である、実施形態37に記載の方法。
実施形態45
前記細胞が、哺乳類動物細胞またはヒト細胞である、実施形態37に記載の方法。
実施形態46
前記細胞が、生物の一部を形成する、実施形態37に記載の方法。
実施形態47
前記生物がヒトである、実施形態46に記載の方法。
実施形態48
前記細胞で遺伝子編集を行う、実施形態37に記載の方法。
実施形態49
前記核酸が、
a)前記細胞のゲノム内の標的配列とハイブリダイズするCRISPR−Cas系ガイドRNAをコードする第1のヌクレオチド配列と、
b)Cas9タンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列と、
を含む1つ以上のベクターを含み、
前記(a)と(b)が、同じベクターまたは異なるベクターにある、実施形態48に記載の方法。
実施形態50
前記核酸が、CRISPR RNA(crRNA)を含む、実施形態48に記載の方法。
実施形態51
前記crRNAが、第1のヌクレオチド配列の同じベクターにある、実施形態50に記載の方法。
実施形態52
前記核酸が、トランス活性化RNA(tracrRNA)を含む、実施形態48に記載の方法。
実施形態53
前記tracrRNAが、前記第2のヌクレオチド配列と同じベクターにある、実施形態52に記載の方法。
実施形態54
前記Cas9タンパク質が、前記細胞での発現用にコドン最適化されている、実施形態48に記載の方法。
実施形態55
前記核酸が、
a)トランスポザーゼをコードする第1のヌクレオチド配列と、
b)トランスポザーゼ認識部位に隣接する目的遺伝子の核酸配列を含む第2のヌクレオチド配列と、
を含み、
前記(a)と(b)が、同じベクターまたは異なるベクターにある、実施形態48に記載の方法。
実施形態56
前記トランスポザーゼが、目的ゲノム配列を認識して切り取る、実施形態55に記載の方法。
実施形態57
前記目的遺伝子の核酸配列を前記細胞のゲノムに組み込む、実施形態55に記載の方法。
実施形態58
前記遺伝子編集が、DNAの欠失、遺伝子の破壊、DNAの挿入、DNAの逆位、点変異、DNAの置換、ノックイン及びノックダウンからなる群から選択されている、実施形態48に記載の方法。
実施形態59
幹細胞の誘導を行う、実施形態37に記載の方法。
実施形態60
免疫応答の誘導が必要な対象の免疫応答の誘導方法であって、
実施形態1に記載の複合体を有効量、前記対象に投与することを含み、前記複合体が、カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合している核酸を含む前記方法。
実施形態61
前記疾患が感染症である、実施形態60に記載の方法。
実施形態62
前記疾患が、がんである、実施形態60に記載の方法。
実施形態63
前記対象が、事前に前記疾患と診断されている、実施形態60に記載の方法。
実施形態64
前記対象に、前記疾患と関連する検出可能な症状がない、実施形態60に記載の方法。
実施形態65
前記対象がヒトである、実施形態60に記載の方法。
実施形態66
実施形態1に記載の複合体が、製薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に含まれている、実施形態60に記載の方法。
実施形態67
前記医薬組成物が、がんワクチンである、実施形態66に記載の方法。
実施形態68
前記対象が、がんではなく、前記がんワクチンが、前記対象において、前記がんの発症を予防する免疫応答を誘導する、実施形態67に記載の方法。
実施形態69
前記対象が、がんと診断されており、前記がんワクチンが、前記対象において、前記がんを治療する免疫応答を誘導する、実施形態67に記載の方法。
実施形態70
前記核酸が、メッセンジャーRNA(mRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化RNA(tracrRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、ミニサークルDNA、ゲノムDNA(gDNA)である、実施形態60に記載の方法。
実施形態71
前記対象において、前記核酸を1つ以上の細胞にトランスフェクションする、実施形態60に記載の方法。
実施形態72
前記トランスフェクション核酸が、前記対象において抗がん活性をもたらす、実施形態71に記載の方法。
実施形態73
前記核酸が、がんと関連する1つ以上のペプチドをコードする、実施形態71に記載の方法。
実施形態74
前記抗がん活性が、がん細胞の数の低減、がんの大きさの縮小、がん細胞の殺傷、転移の低減及び/または阻害、ならびにがん細胞の成長及び/または増殖の低減からなる群から選択されている、実施形態72に記載の方法。
実施形態75
前記製薬学的に許容可能な担体が、免疫アジュバントを含む、実施形態66に記載の方法。
実施形態76
1つ以上の医薬組成物を有効量で、前記対象に投与することをさらに含み、前記追加の医薬組成物が、抗がん剤と、製薬学的に許容可能な担体とを含む、実施形態60に記載の方法。
実施形態77
カチオン性両親媒性ポリマーに非共有結合している核酸を含む細胞透過性複合体であって、前記カチオン性両親媒性ポリマーが、pH感受性崩壊性ドメインを含む前記細胞透過性複合体。
実施形態78
前記カチオン性両親媒性ポリマーが、pH感受性崩壊性ドメインと、親油性ポリマードメインを含む、実施形態77に記載の細胞透過性複合体。
実施形態79
前記カチオン性両親媒性ポリマーが、下記の式を有し、
H−L1−[(LP1)z1−(IM)z2−(LP2)z3]z4−L2−H(I)
式中、
L1とL2が独立して、結合手、−C(O)O−、−O−、−S−、−NH−、−C(O)NH−、−NHC(O)−、−S(O)2−、−S(O)NH−、−NHC(O)NH−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンであり、
LP1とLP2が独立して、結合手または親油性ポリマードメインであり、LP1またはLP2の少なくとも1つが、親油性ポリマードメインであり、
IMが、前記pH感受性崩壊性ドメインであり、
z1とz3とz4が独立して、0〜100の整数であり、z1またはz3の少なくとも1つが、0ではなく、
z2が、2〜100の整数である、実施形態78に記載の細胞透過性複合体。
実施形態80
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、
nが、2以上の整数であり、
n1が、0〜50の整数であり、
Zが、前記求核部分であり、
X
1が、結合手、−C(R
5)(R
6)−、−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−、−O−C(R
5)(R
6)−または−O−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、
X
2が、−O−または−S−であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態77〜79の1つに記載の細胞透過性複合体。
実施形態81
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、
nが、2以上の整数であり、
Zが、前記求核部分であり、
X
1が、結合手、−C(R
5)(R
6)−、−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−、−O−C(R
5)(R
6)−または−O−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、
X
2が、−O−または−S−であり、
R
1.1、R
1.2、R
2.1、R
2.2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態77〜80の1つに記載の細胞透過性複合体。
実施形態82
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、nが、2以上の整数である、実施形態77〜80の1つに記載の細胞透過性複合体。
実施形態83
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、nが、2以上の整数である、実施形態77〜82の1つに記載の細胞透過性複合体。
実施形態84
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
nが、2以上の整数であり、
n1が、0〜50の整数であり、
X
1が、結合手、−O−、−NR
5−、−C(R
5)(R
6)−または−C(R
5)(R
6)−C(R
7)(R
8)−であり、
X
2が、結合手、−O−、−C(R
9)(R
10)−または−C(R
9)(R
10)−C(R
11)(R
12)−であり、
X
4が、結合手、−C(O)−、−P(O)(OR
16)
2−、−S(O)(OR
17)
2−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、
X
5が、求核部分であり、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態77〜82の1つに記載の細胞透過性複合体。
実施形態85
前記pH感受性崩壊性ドメインが、下記の式を有し、
式中、nが、2以上の整数である、実施形態77〜80の1つに記載の細胞透過性複合体。
実施形態86
nが、2〜50の範囲の整数である、実施形態85に記載の細胞透過性複合体。
実施形態87
Zが、−S−、−S+R13−、−NR13−または−N+(R13)(H)−であり、R13が、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態78または79に記載の細胞透過性複合体。
実施形態88
Zが、
であり、式中、
X
3が、C(R
15)またはNであり、
X
4が、結合手、−C(O)−、−P(O)(OR
16)
2−、−S(O)(OR
17)
2−、−C(R
16)(R
17)−または−C(R
16)(R
17)−C(R
18)(R
19)−であり、
X
5が、求核部分であり、
R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18及びR
19が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態78または79に記載の細胞透過性複合体。
実施形態89
X5が、−N+(R13)(H)−であり、R13が、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態88に記載の細胞透過性複合体。
実施形態90
前記親油性ポリマードメインが、下記の式を有し、
式中、
n2が、1〜100の整数であり、
R
20が独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである、実施形態78〜89の1つに記載の細胞透過性複合体。
実施形態91
前記核酸が、mRNA、siRNA、pDNA、shRNAまたはgDNAである、実施形態77または87の1つに記載の細胞透過性複合体。
実施形態92
実施形態77〜91の1つに記載の複数の細胞透過性複合体を含むナノ粒子組成物。
実施形態93
下記の式のカチオン性両親媒性ポリマーであって、
H−L1−[(LP1)z1−(IM)z2−(LP2)z3]z4−L2−H(I)
式中、
L1とL2が独立して、結合手、−C(O)O−、−O−、−S−、−NH−、−C(O)NH−、−NHC(O)−、−S(O)2−、−S(O)NH−、−NHC(O)NH−、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のヘテロアリーレンであり、
LP1とLP2が独立して、結合手または親油性ポリマードメインであり、LP1またはLP2の少なくとも1つが、親油性ポリマードメインであり、
IMが、前記pH感受性崩壊性ドメインであり、
z1とz3とz4が独立して、0〜100の整数であり、z1またはz3の少なくとも1つが、0ではなく、
z2が、2〜100の整数である前記カチオン性両親媒性ポリマー。
実施形態94
細胞への核酸のトランスフェクション方法であって、細胞と、実施形態77〜90の1つに記載の複合体とを接触させることを含む前記方法。
実施形態95
前記カチオン性両親媒性ポリマーを前記細胞内で分解させることによって、分解産物を形成させることをさらに含む、実施形態94に記載の方法。
実施形態96
前記分解産物が、置換または非置換のジケトピペラジンである、実施形態95に記載の方法。
実施形態97
前記核酸がmRNAである、実施形態94〜96の1つに記載の方法。
実施形態98
前記mRNAを前記細胞内で発現させることをさらに含む、実施形態97に記載の方法。
実施形態99
前記細胞が、生物の一部を形成する、実施形態94〜97の1つに記載の方法。
実施形態100
前記生物がヒトである、実施形態99に記載の方法。