JP2019520331A - アンギオテンシン−1−受容体アンタゴニスト - Google Patents

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Abstract

一態様では、本開示は、式(I):AA1−Arg−Val−AA4−AA5−His−Pro−AA8−OH (I)(式中、AA1、AA4、AA5およびAA8は本明細書において規定されている)の化合物または薬学的に許容されるその塩を特徴とする。式(I)の化合物は、高血圧症(例えば、妊娠により誘発される高血圧症)、子癇前症、または妊娠により誘発される腎疾患を処置するために、使用することができる。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月23日出願の欧州特許出願第16185403.9号、および2016年6月2日出願の米国特許仮出願第62/344831号の優先権を主張する。先行出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は、ある特定のアンギオテンシン−1−受容体アンタゴニスト、ならびに関連組成物および方法に関するものである。
レニン−アンギオテンシン系(RAS)またはレニン−アンギオテンシン−アルドステロン系(RAAS)は、血圧および体液バランスを調節しているホルモン系である。RASをブロックすると血圧が下降する。したがって、アンギオテンシン変換酵素(ACE)の阻害剤およびアンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)を含めて、RASをブロックする臨床的介入が、高血圧症を処置するために開発されてきた。
通常には、プロホルモンであるアンギオテンシノーゲンは不活性前駆体であるアンギオテンシンIに変換され、その後、ACEによって活性ペプチドホルモンであるアンギオテンシンII(Ang II)に変換される。Ang IIはさらにAng III、Ang IVおよびAng(1〜7)に代謝され得る。
ヒトでは、Ang IIの効果は、アンギオテンシン−1−受容体(AT1R)およびアンギオテンシン−2−受容体(AT2R)を含めて、7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体を介して媒介される。Ang IIの血圧効果は、AT1Rによって主として媒介される。AT1Rの活性化は、血圧上昇に至る血管収縮を含めて、種々の効果を起こす可能性がある。逆に、AT1Rをブロックすると血圧を下降させることができる。いくつかのアンギオテンシン受容体遮断薬が高血圧症を処置するために開発されてきた。
開発された最初のアンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)の1つは、1970年代におけるペプチド性AT1Rアンタゴニストサララシン(すなわち、[Sar1、Val5、Ala8]AngII)であり、これはFDAによって承認され、米国でSARENINとして販売された。別のペプチド性アンタゴニスト、サリレジン(すなわち、[Sar1、Ile8]AngII)が日本において治験に入った。
これら両化合物に関して臨床的有用性は、部分アゴニスト活性、短い作用持続時間、および持続静注による投与といった、いくつかの要因によって限られていた。続いて、この領域における研究開発活動は、部分アゴニスト活性を有さずかつ経口的に与えることができる、非ペプチド性小分子ARBであるサルタン種、例えばロサルタン、バルサルタンなど、に方向を変えた。いくつかの非ペプチド性ARBが治療的使用に承認され、SARENINは市場から撤退した。
非ペプチド性小分子ARBであるサルタン種は、妊娠中での使用は推奨されていない。ARBへの胎児の暴露は、新生児のおよび長期の合併症を引き起こす恐れがある。例えば、妊娠の第二期と第三期においては、サルタンによる母体処置は避けるべきことが推奨されてきた。したがって、妊娠中の高血圧障害に対する治療選択肢が欠落している。
本開示は、ある特定のペプチド性化合物が、アゴニスト活性がまったくないかまたは低下した状態で、アンギオテンシン−1−受容体アンタゴニスト活性を呈した、という予期せぬ発見に基づいている。これらの化合物は、胎児への曝露も減少させることができたことと共に、胎児のまたは新生児の合併症を引き起こすことなく、妊娠中の高血圧障害(例えば、慢性高血圧症または妊娠性高血圧症)または子癇前症の処置に有効であることができる。
一態様では、本開示は、式(I):
AA1−Arg−Val−AA4−AA5−His−Pro−AA8−OH (I)
[式中、AA1は、サルコシンおよび((2S,3R,4R,5R)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル)グリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;AA4は、チロシンまたはメタ−チロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、それらはそれぞれ、ハロおよびヒドロキシルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されており;AA5は、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、それらはそれぞれ、C1〜6アルキル、C4〜6シクロアルキル、NH、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されており;AA8は、1−ナフチルアラニンと、(3−ベンゾチエニル)アラニンと、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C4〜6シクロアルキル、ハロ、CN、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されているフェニルアラニンとからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、少なくとも1つの置換基はフェニルアラニンのフェニル環上の2位にある]
の化合物または薬学的に許容されるその塩を特徴とする。AA8はD−アミノ酸残基であり、かつ式(I)においてArg、Val、AA4、AA5、HisおよびProはそれぞれL−アミノ酸残基である。
別の態様では、本開示は、式(I)の化合物のうちの少なくとも1つまたはその薬学的に許容される塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を特徴とする。
別の態様では、本開示は、高血圧症(例えば、妊娠により誘発される高血圧症)を処置する方法を特徴とする。この方法は、本明細書に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む。
さらに別の態様では、本開示は、子癇前症をまたは妊娠により誘発される腎疾患を処置する方法を特徴とする。この方法は、本明細書に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む。
さらなる一態様では、高血圧症(例えば、妊娠により誘発される高血圧症)、子癇前症または腎疾患(例えば、妊娠により誘発される腎疾患)の処置に使用するための組成物(例えば、医薬組成物)が提供され、組成物は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む。
さらなる一態様では、高血圧症(例えば、妊娠により誘発される高血圧症)、子癇前症または腎疾患(例えば、妊娠により誘発される腎疾患)の処置のための医薬の製造における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
その他の特徴、目的、および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
本開示は、全体として、AT1Rアンタゴニスト(例えば、AT1Rアンタゴニストペプチド)および高血圧症、子癇前症、または腎疾患(例えば、妊娠中の患者における)の処置のためのそれらの使用に関するものである。
一部の実施形態では、本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチドは、式(I):
AA1−Arg−Val−AA4−AA5−His−Pro−AA8−OH (I)
の化合物または薬学的に許容されるその塩である。式(I)において、AA1は、サルコシンおよび((2S,3R,4R,5R)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル)グリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;AA4は、チロシンまたはメタ−チロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、それらはそれぞれ、ハロおよびヒドロキシルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されており;AA5は、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、それらはそれぞれ、C1〜6アルキル、C4〜6シクロアルキル、NH、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されており;AA8は、1−ナフチルアラニンと、(3−ベンゾチエニル)アラニンと、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C4〜6シクロアルキル、ハロ、CN、アリール(例えば、フェニル、1−ナフチル、または2−ナフチル)およびヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されているフェニルアラニンとからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されているアラニンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、少なくとも1つの置換基はフェニルアラニンのフェニル環上の2位にある。AA8はD−アミノ酸残基であり、かつ式(I)においてArg、Val、AA4、AA5、HisおよびProはそれぞれL−アミノ酸残基である。
用語「アルキル」とは、−CHまたは−CH(CHなどの、飽和、線状または分枝状炭化水素の部分を指す。用語「ハロアルキル」とは、−CHClまたは−CFなどの、少なくとも1つのハロ基(例えば、F、Cl、BrまたはI)で置換されている飽和、線状または分枝状炭化水素の部分を指す。用語「シクロアルキル」とは、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルなどの飽和、環状炭化水素の部分を指す。用語「アリール」とは、1つまたは複数の芳香環を有する炭化水素の部分を指す。アリールの部分の例には、フェニル(Ph)、フェニレン、ナフチル、ナフチレン、ピレニル、アントリルおよびフェナントリルが含まれる。用語「ヘテロアリール」とは、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、N、O、またはS)を含有する1つまたは複数の芳香環を有する部分を指す。ヘテロアリールの部分の例には、フリル、フリレン、フルオレニル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、キナゾリニル、キノリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、およびインドリルが含まれる。
一部の実施形態では、AA4は、少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されているチロシンであることができ、ここで、上記少なくとも1つの置換基は上記チロシンのフェニル環上の3位にある。例えば、AA4は、チロシン、メタ−チロシン、3−ヒドロキシチロシンまたは3−クロロチロシンであることができる。
一部の実施形態では、AA5は、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であることができ、それらはそれぞれ、CH、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、NH、チエニルおよびチアゾリルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されている。例えば、AA5は、バリン、イソロイシン、シクロブチルグリシン、シクロペンチルグリシン、シクロヘキシルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ロイシン、o−メチルトレオニン、リシン、フェニルアラニン、チロシン、4−アミノフェニルアラニン、3−チエニルアラニン、2−チエニルアラニン、または4−チアゾリルアラニンであることができる。
一部の実施形態では、AA8は、非置換D−1−ナフチルアラニンと、非置換D−(3−ベンゾチエニル)アラニンと、CH、CF、Cl、Br、CNおよびフェニルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されているD−フェニルアラニンとからなる群から選択されるアミノ酸残基であることができる。例えば、AA8は、D−1−ナフチルアラニン、D−(3−ベンゾチエニル)アラニン、D−2−クロロフェニルアラニン、D−2−ブロモフェニルアラニン、D−2−メチルフェニルアラニン、D−2−トリフルオロメチルフェニルアラニン、D−2−シアノフェニルアラニン、D−2−フェニルフェニルアラニン、D−2,4−ジクロロフェニルアラニン、またはD−2,6−ジメチルフェニルアラニンであることができる。理論に縛られることを望むものではないが、上記のAA8のアミノ酸残基が、式(I)の化合物におけるアンギオテンシン−1−受容体のアゴニスト活性を減少させるまたは排除する助けとなっている可能性があると考えられる。
一部の実施形態では、AA5またはAA8が、ヘテロアリール基を有するアミノ酸置換である場合、ヘテロアリール基は1、2または3つの芳香環を含むことができ、それらはそれぞれ5員環であっても6員環であってもよい。このような実施形態では、ヘテロアリール基は1、2、3個またはそれより多い、N、OまたはSなどの、環式ヘテロ原子を含むことができる。例えば、ヘテロアリール基は、1個の環式ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含有する1つの芳香環、2個の環式ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含有する1つの芳香環、3個の環式ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含有する1つの芳香環、1個の環式ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含有する2つの芳香環、2個の環式ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含有する2つの芳香環、または3個の環式ヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含有する2つの芳香環、を含む基であることができる。
一部の実施形態では、AA1はサルコシンであることができる。そのような実施形態では、AA4は、チロシン、メタ−チロシン、3−ヒドロキシチロシンまたは3−クロロチロシンであることができ;AA5は、バリン、イソロイシン、リシン、チロシン、4−アミノフェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロペンチルグリシン、シクロヘキシルグリシン、フェニルアラニン、o−メチルトレオニン、3−チエニルアラニン、2−チエニルアラニン、または4−チアゾリルアラニンであることができ;AA8は、D−1−ナフチルアラニン、D−(3−ベンゾチエニル)アラニン、D−2−クロロフェニルアラニン、D−2−ブロモフェニルアラニン、D−2−メチルフェニルアラニン、D−2−トリフルオロメチルフェニルアラニン、D−2−シアノフェニルアラニン、D−2−フェニルフェニルアラニン、D−2,4−ジクロロフェニルアラニン、またはD−2,6−ジメチルフェニルアラニンであることができる。
一部の実施形態では、AA1は、((2S,3R,4R,5R)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル)グリシンであることができる。そのような実施形態では、AA4はチロシンであることができ;AA5は、バリンまたはシクロヘキシルグリシンであることができ;AA8は、D−1−ナフチルアラニン、D−(3−ベンゾチエニル)アラニン、D−2−クロロフェニルアラニン、D−2−メチルフェニルアラニンまたはD−2−フェニルフェニルアラニンであることができる。
式(I)の例示的な化合物(すなわち、化合物1〜46)には下の表1に列挙されるものが含まれる。表1には参照化合物1〜4も含まれている。特記しない限り、表1のアミノ酸コードは、Sar(アキラルである)およびGlac(そのキラリティーはアルファ炭素原子上にない)を除いて、そのL−異性体を指す。
本開示で使用される天然または非天然アミノ酸の略称の正式名が下の表2にまとめられている。
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、
(4) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH
(9) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH;
(29) Glac−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
(31) Glac−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
(45) Glac−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH;または
(46) Glac−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH
であることができる。
本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチド(例えば、式(I)の化合物)は、当技術分野で知られている方法または本明細書に記載の方法によって作製することができる。下の実施例1〜6では、化合物1〜46が実際にどのように調製されたかについての詳細な説明が提供されている。
本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチドを調製するための反応は適切な溶媒中で実施することができ、こういった溶媒は有機合成に関する当業者であれば容易に選択することができる。適切な溶媒は、反応が実施される温度で、例えば、溶媒の凍結温度から溶媒の沸点までにわたることができる温度で、出発物質(反応物)、中間体、または生成物と実質的に非反応性であることができる。所定の反応は、1種類の溶媒中でまたは2種類以上の溶媒の混合物中で実施することができる。特定の反応段階に応じて、当業者であれば特定の反応段階に適した溶媒を選択することができる。
本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチドの調製には、種々の化学基の保護および脱保護が関与することができる。保護および脱保護の必要性、および適切な保護基の選択については、当業者であれば容易に決定することができる。保護基の化学については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、T.W.Greene and P.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley & Sons,Inc.、New York(1999)に、見いだすことができる。
本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチドはまた、中間体または最終化合物中に存在する原子の同位体すべてを含むことができる。同位体には、同じ原子番号だが、異なる質量数を有するそういった原子が含まれる。例えば、水素の同位体には、トリチウムおよび重水素が含まれる。
すべての化合物および薬学的に許容されるその塩は、水および溶媒(例えば、水和物および溶媒和物)などの他の物質と一緒に見いだされてもよく、または単離されていてもよい。
一部の実施形態では、本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチドは、実質的に単離されている。「実質的に単離されている」とは、化合物が、形成または検出された環境から少なくとも部分的または実質的に分離されていることを意味する。部分的分離には、例えば、本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチドに富む組成物が含まれてもよい。実質的な分離には、本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチドを、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%または少なくとも約99重量%含有する組成物が含まれてもよい。化合物およびそれらの塩を単離するための方法は、当技術分野において常套である。
本開示はまた、有効成分としての本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチド(例えば、式(I)の化合物)のうちの少なくとも1種(例えば、2種以上)またはその薬学的に許容される塩の有効量と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体(例えば、アジュバントまたは希釈剤)とを含有する医薬組成物を特徴とする。薬学的に許容される塩の例には、酸付加塩、例えば、ハロゲン化水素酸(hydrohalogen acid)(例えば塩酸または臭化水素酸)、鉱酸(例えば硫酸、リン酸および硝酸)、および脂肪族、脂環式、芳香族もしくは複素環式のスルホン酸またはカルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、エンボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ハロベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸)との反応により形成される塩が含まれる。
医薬組成物中の担体は、組成物の有効成分と相溶性があり(好ましくは、有効成分を安定化することが可能であり)、処置しようとする対象に有害でないという意味において「許容され」なければならない。1種または複数の可溶化剤を、活性AT1Rアンタゴニストペプチドの送達のための医薬用担体として活用することができる。その他の担体の例には、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよびD&C黄色#10が含まれる。
本明細書に記載の医薬組成物は、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、香味剤、保存剤、着色料およびそれらの任意の混合物から選択される少なくとも1種のさらなる添加物を任意選択で含むことができる。かかる添加物およびその他の添加物の例は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」;A.H.Kibbe編、第3版、American Pharmaceutical Association、USA and Pharmaceutical Press UK、2000、において見いだすことができる。
本明細書に記載の医薬組成物は、非経口、経口、局所、経鼻、直腸、口腔、もしくは舌下の投与に適合されていてもよく、または気道経由の、例えば、エアロゾルもしくは空中浮遊微粉末(air−suspended fine powder)の形態での投与に適合されていてもよい。本明細書で使用される場合、用語「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内、腹腔内、眼内、耳内または頭蓋内の注射、ならびに適切な任意の注入技法を意味する。一部の実施形態では、本組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、微小粒子、顆粒剤、シロップ剤、懸濁剤、液剤、スプレー式点鼻薬、経皮パッチ剤または坐剤の形態であることができる。
一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、水溶液に溶けている、本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチドを含有することができる。例えば、本組成物は、希釈剤として働く(例えば、塩化ナトリウムを0.9wt%含有する)塩化ナトリウム水溶液を含むことができる。
さらに、本開示は、高血圧症または子癇前症を処置するためにまたはそのような処置向けの医薬を製造するために、上で概説のAT1Rアンタゴニストペプチドを使用する方法を特徴とする。この方法は、本明細書に記載の、有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者(例えば、妊娠中の患者)に投与するステップを含むことができる。一部の実施形態では、高血圧症は妊娠により誘発される。一部の実施形態では、高血圧症は慢性高血圧症または妊娠性高血圧症であることができる。「有効量」とは、処置される対象に治療効果を与えるのに必要とされる、医薬組成物の量を意味する。有効用量は、当業者であれば理解されるように、処置される疾患の種類、投与経路、賦形剤の使用、およびその他の治療上の処置との同時使用の可能性に応じて変化することになる。
本明細書で使用される場合、用語「処置(treatment)」、「処置する(treat)」および「処置する(treating)」とは、本明細書に記載の疾患もしくは障害または1種もしくは複数のその症状を回復させる、緩和する、それらの発生を遅らせる、またはそれらの進行を妨げることを意味する。一部の実施形態では、処置は、1種または複数の症状が発症した後に投与してもよい。他の実施形態では、処置は、症状の非存在下で投与してもよい。例えば、処置は、症状の発生前に(例えば、症状の病歴に照らしておよび/または遺伝的因子もしくはその他の感受性因子に照らして)感受性がある個体に投与してもよい。処置はまた、例えば、症状の再発を防止するまたは遅延させるために、症状が解消した後に継続することもできる。
本明細書に記載のAT1Rアンタゴニストペプチドの典型的な投与量は、広範囲で変化することができ、患者各々の個別のニーズおよび投与経路などの種々の要因によって異なるであろう。例示的な1日投与量(例えば、皮下投与向け)は、少なくとも約0.5mg(例えば、少なくとも約1mg、少なくとも約5mg、少なくとも約10mgまたは少なくとも約15mg)および/または最大でも約200mg(例えば、最大でも約150mg、最大でも約100mg、最大でも約75mg、最大でも約50mg、最大でも約20mgまたは最大でも約15mg)のAT1Rアンタゴニストペプチドであることができる。当業者または医師であれば、目前にある状態に対応するために、この投与量の範囲および実用的な実施にとって妥当な変形形態を考慮するであろう。
一部の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、1日1回投与することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、1日1回より多い頻度で(例えば、1日2回、1日3回または1日4回)投与することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、静脈内(IV)または皮下(SC)注入などの連続注入によって投与することができる。一部の実施形態では、医薬組成物は、1日1回より少ない頻度で(例えば、2日に1回、3日に1回または毎週1回)投与することができる。
加えて、本開示は、高血圧症または子癇前症の処置に使用するための、上で概説の組成物を特徴とする。
一部の実施形態では、高血圧症は妊娠により誘発される。一部の実施形態では、高血圧症は、慢性高血圧症または妊娠性高血圧症であることができる。
本明細書で引用されたすべての刊行物(例えば、特許、特許出願公開、および論文)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
以下の実施例は、例示的なものであり、限定することを目的としない。
一般的な合成方法
1.アミノ酸誘導体
アミノ酸誘導体を、Fmoc−D−Phe(2−Phe)およびFmoc−Thr(Me)を除いて、民間プロバイダー(例えば、Aapptec、Chem Impex International、EMD Millipore、PPL、PepTech and Peptides International)から購入した。Fmoc−D−Phe(2−Phe)およびFmoc−Thr(Me)は以下の通り調製した。
Fmoc−D−Phe(2−Br)−OH(923mg、2mmol)、フェニルボロン酸(366mg、3mmol)、酢酸パラジウム(II)(22mg、0.1mmol)、重炭酸ナトリウム(504mg、6mmol)および50%アセトニトリル−水(10ml)を、マイクロ波対応ガラスバイアル内部で混合した。アルゴンを混合物中に1分間バブルし、バイアルを直ちにクリンプ止めした。反応混合物を、マイクロ波反応器(Biotage)内部で撹拌しながら70℃で30分間加熱した。反応中に形成された元素状パラジウムをセライト上で濾別した。濾液を50mlの遠心チューブに入れ、HClで酸性化し、水で容量限度まで希釈した。油状生成物を遠心分離により分離した。ペレットを水で洗浄し、tert−ブタノールに溶かし、凍結乾燥して、目的生成物を白色粉末として得た。収量:930mg(100%)。
Fmoc−Thr(ME)の合成
O−メチルスレオニン(2.663g、20mmol)を重炭酸ナトリウム(5.04g、60mmol)の水溶液(100ml)に溶かした。アセトニトリル(50ml)を添加し、それに続いて、Fmoc−OSu(6.747g、20mmol)のアセトニトリル懸濁液(50ml)を数回に分けて供給した。反応混合物を2時間撹拌し、その間に均一となった。次いで、これを2M HClで酸性化し、水100mlで希釈した。結果として得られる沈殿物を濾過により収集し、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、目的生成物を白色粉末として得た。収量:6.745g(95%)。
2.ペプチド合成
樹脂はPeptides Internationalから購入した。D−グルカミンはChemImpexまたはTCI Americaから購入した。すべてのさらなる試薬、化学薬品および溶媒は、Sigma−AldrichおよびVWRから購入した。
本明細書に記載の化合物を、Fmoc法を利用する固相ペプチド化学における標準方法により合成した。ペプチドを、Tributeペプチド合成装置もしくはSymphonyペプチド合成装置(Protein Technologies Inc.、Tucson、Arizona)を使用して手動でまたは自動的にいずれかで、あるいは手動のおよび自動の合成の組合せにより、組み立てた。
分取HPLCは、Waters Prep LC Systemで、Waters Sunfire C18カラム、100Å、5μm、30×100mm、流速40mL/分でまたは50×100mmカラムで、流速80mL/分で、行った。分析用逆相HPLCは、Agilent Technologies 1200rr Series液体クロマトグラフで、Agilent Zorbax C18カラム、1.8μm、2.6×50mmを使用して、流速0.6mL/分で、またはAgilent Zorbax C18カラム、1.8μm、4.6×50mmを使用して、流速2mL/分で、行った。最終の化合物分析は、Agilent Technologies 1200 Seriesクロマトグラフで、Phenomenex Gemini 110Å C18カラム、3μm、2×150mm、流速0.3mL/分での逆相HPLCにより行った。質量スペクトルは、MAT Finnigan LCQエレクトロスプレー質量分析計でまたはLTQ XLエレクトロスプレー質量分析計(Thermo Scientific)で記録した。別段の記載がない限り、すべての反応は室温で行った。以下の標準的な参考文献によれば、一般的な実験設定に関して、ならびに必要とされる出発原料および試薬の利用可能性に関して、さらなる指針が提供される:Kates,S.A.、Albericio,F.編、Solid Phase Synthesis:A Practical Guide、Marcel Dekker、New York、Basel、2000;Greene,T.W.、Wuts,P.G.M.、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley Sons Inc.、第2版、1991;Stewart,J.M.、Young,J.D.、Solid Phase Synthesis、Pierce Chemical Company、1984;Biselloら、J.Biol.Chem.1998、273、22498〜22505;Merrifield、J.Am.Chem.Soc.1963、85、2149〜2154; および、Chang and White P.D.、「Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis: a Practical Approach」、Oxford University Press、Oxford、2000。
以下の保護基を利用して、所与のアミノ酸側鎖の官能基を保護した:Argの場合、Pbf(2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル);Tyrの場合、tBu(t−ブチル);Lysの場合、Boc(t−ブトキシカルボニル);およびHisの場合、Trt(トリチル)。
各合成は、最初のアミノ酸を2−クロロトリチル樹脂へ手動で結合させることから始めた。全体としては、Fmoc−アミノ酸を0.1〜0.2Mの濃度でジクロロメタン(DCM)に溶かし、続いてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(5当量)を添加した。結果として得られる溶液を乾燥2−クロロトリチル樹脂(2当量)に添加した。混合物を4時間反応させ、続いてメタノール(10%v/v)を添加した。さらに30分後、試薬を排出し、樹脂をDMFで洗浄した。
Tribute合成装置でのFmoc保護アミノ酸のカップリングは、DMF中のHBTU/NMMを介して行った。合成の間、3〜5倍過量の活性化Fmoc保護アミノ酸を用いる60分の単回サイクルを使用した。アルギニンを3時間にわたって結合させた。Fmoc保護基の除去を、UVによりモニターした。20%ピペリジンのDMFを用いたペプチド樹脂の複数回の(必要に応じて10回まで)2分間洗浄を行った。
Symphony合成装置でのFmoc保護アミノ酸のカップリングは、NMP中のHBTU/DIPEAを介して行った。合成の間、3〜5倍過量の活性化Fmoc保護アミノ酸を用いる60分の単回サイクルを使用した。アルギニンを3時間にわたって結合させた。Fmoc保護基の除去を、20%ピペリジンのDMFを用いたペプチド樹脂の2回洗浄(5分間の洗浄、続いて20分間の洗浄)で行った。
DMF中でのDIC/HOBtまたはDIC/Oxyma Pure媒介のカップリングを、手動モードですべてのアミノ酸に対して用いた。合成の間、3倍までの過量の活性化Fmoc保護アミノ酸を用いる少なくとも2時間の単回サイクルを使用した。カップリングの完全性を、ニンヒドリン(Kaiser)試験で評価した。Fmoc保護基の除去を、20%ピペリジンのDMFを用いたペプチド樹脂の2回洗浄(5分間の洗浄、続いて20分間の洗浄)で行った。
N末端Glac残基を2段階で手動で導入した。第1の段階では、カップリング試薬としてジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を使用して、樹脂上にブロモ酢酸またはクロロ酢酸を結合させた。第2の段階では、樹脂をNMP中のD−グルカミン(4当量)と反応させてハロゲンを置換した。N−ブロモアセチルペプチド樹脂は室温でD−グルカミンと反応させ、N−クロロアセチルペプチド樹脂は50℃で反応させた。D−グルカミンはNMPへの溶解度に限界がある。この反応は、NMPに懸濁させたD−グルカミンを用いて実行することができる。任意選択で、D−グルカミンを最初にNMP中のN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA、3〜6当量)と最大1時間反応させて、シリル化D−グルカミンの溶液を得た。次いで、この溶液をN−ハロアセチルペプチド樹脂に添加した。D−グルカミンとの反応をおよそ16時間行った。
ペプチド合成の完了時に、ペプチド樹脂をDCMで洗浄した。樹脂を、95%TFA/水およびTIS(最大5%v/v)で2時間処理して、側鎖保護基を除去し、同時に樹脂からペプチドを切断した。切断カクテルのほとんどを蒸発させ、粗ペプチドはジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離または濾過によって分離した。
粗ペプチドを最大10mLの水−アセトニトリル混合物に溶かし、分取HPLCカラムにロードした。
成分Aとして0.01%TFAの水と成分Bとして0.01%TFAの95%アセトニトリルとを含有するトリフルオロ酢酸(TFA)バッファで、各粗ペプチドを精製した。ペプチドを成分Bの勾配で溶出した。逆相分析HPLCで決定して95%を超える純度を有する画分をプールし、凍結乾燥した。調製した化合物は、少なくとも95%純粋であることが通常には見いだされた。
具体的に例示される化合物の合成を下に提供する。
化合物1の合成.
出発2−クロロトリチルポリスチレン樹脂(Peptides International、カタログ番号RCT−1083−PI、1.39mmol/g、1.87g、2.6mmol)を、Fmoc−D−1−NAl(1.3mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、6.5mmol)のDCM(25ml)溶液と2.5時間反応させた。MeOH(2.5ml)を添加後、混合物をさらに30分間回転させた。試薬を排出し、樹脂をDMFで洗浄した。樹脂を40mlの2器の反応容器の間で分割した(0.65mmol毎1容器)。
Tributeペプチド合成装置を使用して固相ペプチド合成を行った。Tribute合成装置でのFmoc保護アミノ酸のカップリングは、DMF中のHBTU/NMMを介して行った。合成の間、1容器当たり2.5mmolの活性化Fmoc保護アミノ酸(3.8倍過量)を用いる60分間の単回サイクルを使用した。アルギニンを3時間にわたって結合させた。Fmoc保護基の除去を、UVによりモニターした。20%ピペリジンのDMFを用いたペプチド樹脂の複数回の(必要に応じて10回まで)2分間洗浄を行った。以下のアミノ酸を逐次結合させた:Fmoc−Pro−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−Val−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Val−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Boc−Sar−OH。自動合成の終了時に、2つの反応容器からの樹脂を混合した。
粗ペプチドを、95%TFA/HO 30mLおよびTIS 1mLで2時間、樹脂から切断した。溶媒を蒸発後、粗ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離により単離し、真空中で乾燥させた。粗ペプチドの収量:1.513g。
粗ペプチドを50%アセトニトリル20mLに溶かした。2回のランで50x100mMカラムでの分取HPLCによってペプチドを精製したが、1回のラン当たり粗ペプチド溶液10mlをロードした。純度の低い画分を混合し、HPLCカラムに再ロードした。3回のランからの純粋な画分をプールし、凍結乾燥して、目的化合物1を白色粉末として得た。収量:521.1mg(ペプチド含有量74.3%に対して29%)。
観測および理論MSデータ(すなわち、M+H)が、下の表3に提供されている。
化合物4の合成
当該ペプチドは、2−クロロトリチルポリスチレン樹脂(Peptides International、カタログ番号RCT−1083−PI、1.52mmol/g)13.158g(20mmol)から手動で始め、組み立てた。Fmoc−D−Phe(2−Cl)(4.219g、10mmol)およびDIPEA(8.8ml、50mmol)のDCM溶液(75ml)を乾燥樹脂に添加した。反応を6時間行った。メタノール(8ml)を添加後、混合物を30分間撹拌し、試薬を排出し、樹脂をDMFで洗浄した。
以後、NMPでのDIC/Oxyma Pure媒介カップリングを用いた。合成の間、活性化Fmoc保護アミノ酸を2倍過量まで使用して、少なくとも2時間および最大24時間の単回サイクルを使用した。カップリングの完全性を、ニンヒドリン試験で評価した。Fmoc保護基の除去を、20%ピペリジンのDMFを用いたペプチド樹脂の2回洗浄(5分間の洗浄、続いて20分間の洗浄)で行った。
最初に、(6〜8)フラグメントを、Fmoc−Pro−OHとFmoc−His(Trt)−OHとの逐次カップリングにより組み立て、続いて、N末端Fmocを除去した。樹脂をDCMで洗浄し、真空中で乾燥させた。乾燥した樹脂の重量は17.82gであった。置換は0.56mmol/gであった。
(6〜8)樹脂14.29g(8mmol)を使用して合成を継続した。以下のアミノ酸誘導体を逐次結合させた:Fmoc−Val−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Val−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH。N末端Fmoc基を除去して(2〜8)ペプチド樹脂を得た。
この時点で、樹脂を2つの不均等な分量に分割した:大きい方の分量(5/8、5mmol)を化合物4の連続合成で使用し、小さい方の分量(3/8、3mmol)を化合物29の合成で使用した(下を参照されたい)。
Boc−Sar−OH(10mmol)を樹脂の大きい方の分量に結合させて、化合物4の固相ペプチド合成を終結させた。
粗ペプチドを、95%TFA/HO 80mLおよびTIS 4mLで2時間、樹脂から切断した。溶媒を蒸発後、粗ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、濾過によって収集し、真空中で乾燥させた。
沈殿物(5.01g)を50%アセトニトリル50mLに溶かした。5回のランで50x100mMカラムでの分取HPLCによってペプチドを精製したが、1回のラン当たり粗ペプチド溶液10mlをロードした。純粋な画分をプールし、凍結乾燥して、目的化合物4を白色粉末として得た。収量:3039mg(ペプチド含量75%に対して45%)。
観測および理論MSデータ(すなわち、M+H)が、下の表3に提供されている。
化合物9の合成
当該ペプチドは、2−クロロトリチルポリスチレン樹脂(CreoSalus CAT#SC5055、置換1.7mmol/g;)58.8g(100mmol)から手動で始め、組み立てた。Fmoc−D−Phe(2−Me)−OH(28.1g、70mmol)およびDIPEA(49.3ml、280mmol)のDCM溶液(450ml)を乾燥樹脂に添加した。反応を2時間行った。メタノール(75ml)を添加後、混合物を10分間撹拌し、試薬を排出した。樹脂を、3×DCM/MeOH/DIEA(17:2:1、v/v/v)、2×DCM、2×DMF、および2×DCM、で洗浄した。
以後、NMPでのDIC/Oxyma Pure媒介カップリングを用いた。合成の間、活性化Fmoc保護アミノ酸を2倍過量まで使用して、少なくとも2時間および最大16時間の単回サイクルを使用した。カップリングの完全性を、ニンヒドリン試験で評価した。Fmoc保護基の除去を、20%ピペリジンのDMFを用いたペプチド樹脂の2回洗浄(10分間の洗浄、続いて30分間の洗浄)で行った。
最初に、(2〜8)フラグメントを、Fmoc−Pro−OH,Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−Val−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Val−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、の逐次カップリングにより組み立てた。アルギニン上のN末端Fmoc基を除去した。
この時点で、樹脂を2つの不均等な分量に分割した。大きい方の分量(3/5、42mmol)を化合物9の連続合成で使用した。
Boc−Sar−OH(65mmol)を大きい方の分量の樹脂に結合させて、化合物9の固相ペプチド合成を終結させた。
ペプチド樹脂98.6gをコールドカクテルTFA/TES/HO(94:3:3、v/v/v)1Lに添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を濾過し、樹脂ビーズを95%TFA(3×70mL)で洗浄した。濾液を回転蒸発させて体積をおよそ150mLに減少させた。ジエチルエーテル(500mL)を添加した。沈殿物を濾過により収集し、エーテルで洗浄し、次いで乾燥して、粗生成物(43.9g)を得た。
粗ペプチドのHPLC精製は、C18カラム(101.6×250mm、16μm粒径、100Å孔径、Kromasil)で行った。成分Aは0.1%TFAとし、成分Bは0.1%TFAの60%アセトニトリルとした。TFA塩として目的の化合物9を含有する混合画分を、塩交換用カラムに再ロードした。カラムを、3%アセトニトリルの0.1M酢酸アンモニウム溶液、pH4.5、4Lで洗浄した。酢酸バッファ系を使用して化合物を溶出した。酢酸バッファ系の成分Aは1%AcOHとし、成分Bは1%AcOHの60%アセトニトリルとした。混合画分を凍結乾燥して、酢酸塩として目的化合物9を得た。収量:29.532g(ペプチド含有量82.5%に対して57.9%)。
観測および理論MSデータ(すなわち、M+H)が、下の表3に提供されている。
化合物29の合成
上の実施例2に記載の(2〜8)ペプチド樹脂(3mmol)をNMPで十分に洗浄した。クロロ酢酸(15mmol)およびDIC(15mmol)のNMP溶液(50mL)を添加し、カップリングを5時間行った。試薬を排出し、樹脂をNMPで洗浄した。樹脂を、マイクロ波ペプチド合成装置Liberty Blueに対応している反応容器に移し、もう一度NMPで洗浄した。固体のD−グルカミン(12mmol)を湿潤樹脂の上面に添加し、容器をLiberty Blueの反応チャンバの内部に置いた。NMP(30ml)を供給し、反応混合物を、窒素攪拌を伴ってマイクロ波照射により50℃で16時間加熱した。次いで、樹脂をDMF、水、メタノールおよびDCMで逐次洗浄した。
粗ペプチドを、95%TFA/HO 60mLおよびTIS 3mLで2時間、樹脂から切断した。溶媒を蒸発後、粗ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離によって単離した。
沈殿物を50%アセトニトリル40mLに溶かした。4回のランで50x100mMカラムでの分取HPLCによってペプチドを精製したが、1回のラン当たり10mlの粗ペプチド溶液をロードした。純粋な画分をプールし、凍結乾燥して、目的化合物29を白色粉末として得た。収量:2013.5mg(ペプチド含量80%に対して46%)。
観測および理論MSデータ(すなわち、M+H)が、下の表3に提供されている。
化合物43の合成
出発2−クロロトリチルポリスチレン樹脂(Peptides International、カタログ番号RCT−1083−PI、1.5mmol/g、949mg、1.5mmol)を、Fmoc−D−Phe(2−Cl)(316mg、0.75mmol、Chem−Impex)およびDIPEA(3.75mmol、660μl)のDCM(10ml)溶液と4時間反応させた。MeOH(1ml)を添加後、混合物をさらに30分間回転させた。試薬を排出し、樹脂をDMFで洗浄した。この樹脂の3分の1(0.25mmol)をSymphony反応容器に入れ、Symphonyペプチド合成装置を使用して化合物46の合成で使用した。
Symphony合成装置でのFmoc保護アミノ酸のカップリングは、NMP中のHBTU/DIPEAを介して行った。合成の間、4倍過量の活性化Fmoc保護アミノ酸を用いる60分の単回サイクルを使用した。アルギニンを3時間にわたって結合させた。Fmoc保護基の除去を、20%ピペリジンのDMFを用いたペプチド樹脂の2回洗浄(5分間の洗浄、続いて20分間の洗浄)で行った。以下のアミノ酸を逐次結合させた:Fmoc−Pro−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−シクロペンチルグリシン−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Val−OH、およびFmoc−Arg(Pbf)−OH。N末端Fmoc基を除去し、樹脂をNMPで洗浄した。
ブロモ酢酸(2.5mmol)およびDIC(2.5mmol)のNMP溶液(5ml)を樹脂に添加した。反応を4時間行った。試薬を排出し、樹脂をNMPで洗浄した。D−グルカミン(1mmol)をNMP(5ml)に懸濁させた。N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(3mmol)を懸濁液に添加した。混合物を30分間撹拌し、その間にほとんどのD−グルカミンが溶けた。シリル化D−グルカミンのほぼ透明な溶液を樹脂に添加した。反応を一晩行った。試薬を排出し、樹脂をNMP、MeOHおよびDCMで洗浄した。
粗ペプチドを、95%TFA/HO 5mLおよびTIS 0.2mLで2時間、樹脂から切断した。溶媒を蒸発後、粗ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離によって単離した。
沈殿物を50%アセトニトリル5mLに溶かした。30×100mMカラムでの分取HPLCによりペプチドを精製した。純粋な画分をプールし、凍結乾燥して、目的の化合物43を白色粉末として得た。収量:66.6mg(ペプチド含量78.7%に対して17%)。
観測および理論MSデータ(すなわち、M+H)が、下の表3に提供されている。
化合物46の合成
出発2−クロロトリチルポリスチレン樹脂(Peptides International、(カタログ番号RCT−1083−PI、1.52mmol/g)、2.632g、4mmol)を、Fmoc−D−Phe(2−Me)(2mmol)およびDIPEA(10mmol)のDCM溶液(20ml)と4時間反応させた。MeOH(2ml)を添加後、混合物をさらに30分間回転させた。試薬を排出し、樹脂をDMFで洗浄した。樹脂の半分(1mmol)を4器のSymphony反応容器の間で分割した(0.25mmol毎1容器)。固相ペプチド合成を、各容器について同一のカップリングプロトコールを使用して、Symphonyペプチド合成装置で並行して続けた。
Symphony合成装置でのFmoc保護アミノ酸のカップリングは、NMP中のHBTU/DIPEAを介して行った。合成の間、4倍過量の活性化Fmoc保護アミノ酸を用いる60分の単回サイクルを使用した。アルギニンを3時間にわたって結合させた。Fmoc保護基の除去を、20%ピペリジンのDMFを用いたペプチド樹脂の2回洗浄(5分間の洗浄、続いて20分間の洗浄)で行った。以下のアミノ酸を逐次結合させた:Fmoc−Pro−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−シクロヘキシルグリシン−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Val−OH、およびFmoc−Arg(Pbf)−OH。N末端Fmoc基を除去し、樹脂をTributeペプチド合成装置に対応している40mlの石英反応容器内で混合した。(2〜8)ペプチド樹脂をNMPで十分に洗浄した。
クロロ酢酸(5mmol)およびDIC(5mmol)のNMP溶液(15mL)を添加し、カップリングをTribute合成装置で16時間行った。試薬を排出し、樹脂をNMPで洗浄した。固体のD−グルカミン(4mmol)を湿潤樹脂の上面に添加し、続いて、NMP(20ml)を添加した。反応容器をTribute合成装置の中に置いて、ボルテックス撹拌しながらIR照射により50℃で16時間加熱した。次いで、樹脂をDMF、水、メタノールおよびDCMで逐次洗浄した。
粗ペプチドを、95%TFA/HO 20mLおよびTIS 0.5mlで2時間、樹脂から切断した。溶媒を蒸発後、粗ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離によって単離した。
沈殿物を50%アセトニトリル20mLに溶かした。2回のランで50x100mMカラムでの分取HPLCによってペプチドを精製したが、1回のラン当たり粗ペプチド溶液10mlをロードした。純粋な画分をプールし、凍結乾燥して、目的化合物46を白色粉末として得た。収量:601.2mg(ペプチド含量75.7%に対して38%)。
観測および理論MSデータ(すなわち、M+H)が、下の表3に提供されている。
化合物31の合成
出発2−クロロトリチルポリスチレン樹脂(Peptides International、(カタログ番号RCT−1083−PI、1.58mmol/g)、1.266g、2mmol)を、Fmoc−D−Phe(2−Cl)(422mg、1mmol)およびDIPEA(880μl、5mmol)のDCM溶液(10ml)と4時間反応させた。MeOH(1ml)を添加後、混合物をさらに30分間回転させた。試薬を排出し、樹脂をDMFで洗浄した。樹脂を4器のSymphony反応容器の間で分割した(0.25mmol毎1容器)。固相ペプチド合成は、各容器について同一のカップリングプロトコールを使用して、Symphonyペプチド合成装置で並行して続けた。
Symphony合成装置でのFmoc保護アミノ酸のカップリングは、NMP中のHBTU/DIPEAを介して行った。合成の間、4倍過量の活性化Fmoc保護アミノ酸を用いる60分の単回サイクルを使用した。アルギニンを3時間にわたって結合させた。Fmoc保護基の除去を、20%ピペリジンのDMFを用いたペプチド樹脂の2回洗浄(5分間の洗浄、続いて20分間の洗浄)で行った。以下のアミノ酸を逐次結合させた:Fmoc−Pro−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−シクロヘキシルグリシン−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Val−OH、およびFmoc−Arg(Pbf)−OH。N末端Fmoc基を除去し、樹脂を手動ペプチド合成容器内で混合した。(2〜8)ペプチド樹脂をNMPで十分に洗浄した。
ブロモ酢酸(1.389g、10mmol)およびDIC(1.54ml、10mmol)のNMP溶液(20mL)を添加し、カップリングを一晩行った。試薬を排出し、樹脂をNMPで洗浄した。
D−グルカミン(725mg、4mmol)をNMP(40ml)に懸濁させ、続いてN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを添加した。混合物を30分間撹拌して、シリル化D−グルカミンのほぼ透明な溶液を得た。溶液を樹脂に添加し、反応を一晩行った。次いで、樹脂をDMF、メタノールおよびDCMで逐次洗浄した。
粗ペプチドを、95%TFA/HO 20mLおよびTIS 0.5mlで2時間、樹脂から切断した。溶媒を蒸発後、粗ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離によって単離した。
沈殿物を50%アセトニトリル20mLに溶かした。2回のランで50x100mMカラムでの分取HPLCによってペプチドを精製したが、1回のラン当たり粗ペプチド溶液10mlをロードした。純粋な画分をプールし、凍結乾燥して、目的化合物31を白色粉末として得た。収量:384mg(ペプチド含量83.5%に対して32%)。
観測および理論MSデータ(すなわち、M+H)が、下の表3に提供されている。
化合物2、3、5〜8、10〜28、30、32〜42、44および45の合成
化合物2、3、5〜8、10〜28、30、32〜42、44および45を実施例1〜7に記載の方法を使用して合成した。
化合物1〜46の観測および理論MSデータ(すなわち、M+H)、ならびにこれらの化合物の純度が、下の表3にまとめられている。
FLIPRアッセイによって測定したAT1受容体アゴニスト活性およびアンタゴニスト活性
AT1受容体(AT1R)アゴニストは、カルシウムイオンの細胞内フラックスを増大する。AT1Rアンタゴニストはアゴニスト効果を低下させることができる。上に記載の化合物1〜46のアゴニスト活性およびアンタゴニスト活性を、細胞をベースとした蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)アッセイで評価した。化合物をまずアゴニズム(パートI)について試験し、続いて、AT1RアゴニストであるアンギオテンシンIIを添加してアンタゴニスト活性を試験した(パートII)。このアッセイでは、安定なhAT1R発現細胞株(ChanTest hAT1R;ChanTest Corp A628)を使用した。アゴニストに応答したカルシウムの細胞内フラックスは、Ca2+(細胞内貯蔵から放出された)とカルシウム感受性色素との相互作用を介して誘導された蛍光のリアルタイム測定によって測定した。パートIでは、細胞を様々な濃度の試験化合物に曝露し、アゴニスト活性(EC50および有効性)について直ちに測定した。パートIIでは、試験化合物との20分のインキュベーションに続いて、一定濃度のアゴニスト(アンギオテンシンII)を添加し、結果として得られる蛍光を再度測定してアンタゴニスト活性(IC50および有効性)を決定した。
ChanTest hAT1R安定細胞を、10%(v/v)の熱不活性化ウシ胎児血清(FBS−HI)、4mMグルタマックス、1%NEAA、50ng/mLプラスモシン、400μg/mL G418を含有するHam‘s F12で、加湿雰囲気内で5%CO中で37℃で維持した。
FLIPRアッセイについては、ChanTest hAT1R細胞をTrypsin EDTA溶液6mlでトリプシン処理し、10%FBS−HI、4mMグルタマックスを含有するフェノールレッドフリーのDMEM中で回収し、カウントし、遠心沈殿し、同じ培地に再懸濁させた。細胞懸濁液を、384ウェルの黒色PDL透明底プレートのウェルに、2.5×10細胞/ウェル、20μl/ウェルで添加した。
FLIPRアッセイ
ローディングバッファの調製:
・ローディングバッファ:Calcium 5 Bulk Assay試薬1バイアルを1× HBSS−20mM へペスバッファ100mlに溶かした。
・プロベネシドを1M NaOH中に1Mで再懸濁させた。プロベネシドが溶液になったら、等容量のHOを添加して、500mMの溶液を調製し、続いて、5mMの使用濃度へとローディングバッファで1:100希釈を行った。1M NaOHを使用してpHを7.4に調整した。
ローディングバッファで細胞をロードする
・細胞プレートをインキュベーターから取り出し、プロベネシド(5mM)を含有するローディングバッファ25μlを各ウェルに添加した。
・プレートを、加湿雰囲気中、5%CO2中、37℃で1時間インキュベートした。
カルシウム画像の取得
・FLIPR Tetraを、以下のデフォルトパラメーターで、ならびにフィルター選択により定めた励起波長470〜495nmおよび発光波長515〜575nmの読み取りモードで設定した。
〇 ゲイン50
〇 励起強度80%(デフォルト)
〇 露光時間0.4秒(デフォルト)
・細胞プレートを384ウェル化合物プレートと共にFLIPR Tetraに移した。アッセイの残りのステップを、FLIPR Tetraによって前進させた。10秒の間、1秒の間隔でベースライン読み取りを行い、続いて、10×化合物5μlを添加した。次いで、化合物誘発蛍光シグナルを、1秒間隔での読み取りによって3分間測定した。
・細胞プレートをFLIPRから取り出し、さらなる17分間放置しておいた。
・次いで、細胞プレートを384ウェルアンギオテンシンIIアゴニスト希釈プレートと共に、FLIPR Tetraに戻し移した。10秒の間、1秒の間隔でベースライン読み取りを行い、続いて、10×アンギオテンシンIIアゴニスト5.5μlを添加した。次いで、アゴニスト誘発蛍光シグナルを、1秒間隔での読み取りによって3分間測定した。
・全体として、FLIPRアッセイの各ウェルは、総容量55.5μlで以下の成分で構成されていた:
20μl 2.5×10細胞
25μl Calcium 5ローディングバッファ
5μl 10×試験化合物または参照化合物
5.5μl 10×アンギオテンシンIIアゴニスト(最終濃度10nM)
FLIPR Calcium 5アッセイからの経時的推移の結果を、相対蛍光単位(RFU)として表した。最大値マイナス最小値(Max−Min)を使用してシグナルの強度を定量化した。平均RFUを、反復値から計算し、x軸上の対数スケールの化合物濃度に対してy軸上にプロットし、単結合部位、4パラメーター濃度応答モデル:(MIN+((MAX−MIN)/(1+((EC50/x)^Hill))))を使用して非線形回帰分析を行い、その結果、濃度応答曲線を作製した。報告パラメーターには、アゴニスト効力EC50(最大アゴニスト応答の半分を引き起こす濃度)、アンタゴニスト効力IC50(アンタゴニスト化合物に関して、アゴニスト応答の最大阻害の半分を引き起こす濃度)および有効性(%MPE:最大可能効果のパーセント)が含まれた。
化合物1〜46および4つの参照化合物を上のアッセイで試験した。4つの参照化合物は、(1)サリレシン(すなわち、[Sar1、Ile8]AngII:Sar−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Ile−OH、(「参照化合物1」)、(2)[Sar1、D−Phe8]AngII:Sar−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−D−Phe−OH(「参照化合物2」)、Samanenら J.Med.Chem 1988、31、510〜516、(3)アンギオテンシンII:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−OH(すなわち、アンタゴニスト活性を有さない内因性アゴニスト)(「参照化合物3」)、および(4)バルサルタン「参照化合物4」)である。結果が下の表4にまとめられている。
表4に示すように、化合物1〜46は、参照アンタゴニスト(すなわち参照化合物1、2および4)と同様のアンタゴニスト活性を示し、かつ、参照であるペプチド性AT1Rアンタゴニスト(すなわち、参照化合物1および2)と比較して有意に低下したアゴニスト活性を有していた。このことによって、これらの化合物は、望ましくない昇圧効果を引き起こさずに、妊娠中の患者における障害(例えば、高血圧障害、子癇前症または腎疾患)を処置するために使用することができる、ことが示唆されている。
子癇前症のインビボ動物モデルにおける評価
本開示に記載の化合物を、改変と共にHeringら、Hypertension 2010、56、311〜318によって記載の通りに、子癇前症のインビボ動物モデルにおいて評価した。簡潔にいえば、GD13から20の実験で使用するために、交配日指定妊娠のベンダーカテーテル処置(vendor−catheterized)(頸静脈および頸動脈)ラットが妊娠日(GD)10に到着した。GD10〜12の母体体重(BW)を使用して、処置指定のため妊娠状態の予測に役立てた。GD12に、ラットを処置群に割り当てた。GD13に、ラットに、典型的には、ALZET(登録商標)ポンプを、1つにはアンギオテンシンII(または対照ラットについては生理食塩水、IV注入)を含有するものを、および1つには試験化合物(または対照ラットについては媒体、SC注入)を含有するものを、植え込んだ。GD14からGD20まで、毎日のBW測定を行った。GD14からGD19までの間で、平均動脈圧(MAP)測定を、少なくとも2つの別々の日(GD14およびGD17)で行なったが、毎日行ってもよい。GD19に、最終MAP測定に続いて、ラットを尿収集のために代謝ケージの中に4時間置いた。尿試料を遠心分離し、上清をラットアルブミンELISAによって分析して、アルブミン尿について試験した。
本開示に記載の化合物によって、19日目に、媒体と比較してMAPおよびアルブミン尿の低下が示され、したがって、子癇前症に伴う妊娠性高血圧症およびタンパク尿が改善されることがわかった。
その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。

Claims (28)

  1. 式(I):
    AA1−Arg−Val−AA4−AA5−His−Pro−AA8−OH (I)
    [式中、
    AA1は、サルコシンおよび((2S,3R,4R,5R)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル)グリシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり;
    AA4は、チロシンまたはメタ−チロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、それらはそれぞれ、ハロおよびヒドロキシルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されており;
    AA5は、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、それらはそれぞれ、C1〜6アルキル、C4〜6シクロアルキル、NH、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されており;
    AA8は、1−ナフチルアラニンと、(3−ベンゾチエニル)アラニンと、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C4〜6シクロアルキル、ハロ、CN、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されているフェニルアラニンとからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、少なくとも1つの置換基はフェニルアラニンのフェニル環上の2位にあり、
    AA8はD−アミノ酸残基であり、かつ式(I)においてArg、Val、AA4、AA5、HisおよびProはそれぞれL−アミノ酸残基である]
    の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  2. AA4が少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されているチロシンであり、ここで、前記少なくとも1つの置換基は前記チロシンのフェニル環上の3位にある、請求項1に記載の化合物。
  3. AA4が、チロシン、メタ−チロシン、3−ヒドロキシチロシンまたは3−クロロチロシンである、請求項2に記載の化合物。
  4. AA5が、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジンおよびチロシンからなる群から選択されるアミノ酸残基であり、それらはそれぞれ、CH、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、NH、チエニルおよびチアゾリルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で任意選択で置換されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
  5. AA5が、バリン、イソロイシン、シクロブチルグリシン、シクロペンチルグリシン、シクロヘキシルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ロイシン、o−メチルトレオニン、リシン、フェニルアラニン、チロシン、4−アミノフェニルアラニン、3−チエニルアラニン、2−チエニルアラニン、または4−チアゾリルアラニンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
  6. AA5が、バリン、イソロイシン、シクロペンチルグリシン、シクロヘキシルグリシンまたはO−メチルスレオニンである、請求項5に記載の化合物。
  7. AA8が、D−1−ナフチルアラニンと、D−(3−ベンゾチエニル)アラニンと、CH、CF、Cl、Br、CNおよびフェニルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されているD−フェニルアラニンとからなる群から選択されるアミノ酸残基である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
  8. AA8が、D−1−ナフチルアラニン、D−(3−ベンゾチエニル)アラニン、D−2−クロロフェニルアラニン、D−2−ブロモフェニルアラニン、D−2−メチルフェニルアラニン、D−2−トリフルオロメチルフェニルアラニン、D−2−シアノフェニルアラニン、D−2−フェニルフェニルアラニン、D−2,4−ジクロロフェニルアラニン、またはD−2,6−ジメチルフェニルアラニンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
  9. AA1がサルコシンである、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
  10. AA4が、チロシン、メタ−チロシン、3−ヒドロキシチロシンまたは3−クロロチロシンである、請求項9に記載の化合物。
  11. AA5が、バリン、イソロイシン、リシン、チロシン、4−アミノフェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロペンチルグリシン、シクロヘキシルグリシン、フェニルアラニン、O−メチルトレオニン、3−チエニルアラニン、2−チエニルアラニン、または4−チアゾリルアラニンである、請求項9または10に記載の化合物。
  12. AA8が、D−1−ナフチルアラニン、D−(3−ベンゾチエニル)アラニン、D−2−クロロフェニルアラニン、D−2−ブロモフェニルアラニン、D−2−メチルフェニルアラニン、D−2−トリフルオロメチルフェニルアラニン、D−2−シアノフェニルアラニン、D−2−フェニルフェニルアラニン、D−2,4−ジクロロフェニルアラニン、またはD−2,6−ジメチルフェニルアラニンである、請求項9、10または11に記載の化合物。
  13. AA1が、((2S,3R,4R,5R)−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル)グリシンである、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
  14. AA4がチロシンである、請求項13に記載の化合物。
  15. AA5がバリンまたはシクロヘキシルグリシンである、請求項13または14に記載の化合物。
  16. AA8が、D−1−ナフチルアラニン、D−(3−ベンゾチエニル)アラニン、D−2−クロロフェニルアラニン、D−2−メチルフェニルアラニンまたはD−2−フェニルフェニルアラニンである、請求項13、14または15に記載の化合物。
  17. (1) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (2) Sar−Arg−Val−Tyr−Lys−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (3) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−CF))−OH;
    (4) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (5) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−CN))−OH;
    (6) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Ph))−OH;
    (7) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2,4−diCl))−OH;
    (8) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2,6−diMe))−OH;
    (9) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH;
    (10) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−(3−ベンゾチエニル)アラニン)−OH;
    (11) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Br))−OH;
    (12) Sar−Arg−Val−Tyr−Tyr−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (13) Sar−Arg−Val−Tyr−Aph−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (14) Sar−Arg−Val−Tyr−Cha−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (15) Sar−Arg−Val−Tyr−Cpg−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (16) Sar−Arg−Val−Tyr−Phe−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (17) Sar−Arg−Val−Tyr−Thr(Me)−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (18) Sar−Arg−Val−Tyr−Cpg−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (19) Sar−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (20) Sar−Arg−Val−Tyr−Aph−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (21) Sar−Arg−Val−Tyr−Thr(Me)−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (22) Sar−Arg−Val−Tyr−(3−Thi)−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (23) Sar−Arg−Val−Tyr−(2−Thi)−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (24) Sar−Arg−Val−Tyr−(Ala(4−Thz))−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (25) Sar−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (26) Sar−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−CF))−OH;
    (27) Sar−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH;
    (28) Sar−Arg−Val−Tyr(3−Cl)−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (29) Glac−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (30) Sar−Arg−Val−(m−Tyr)−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (31) Glac−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (32) Sar−Arg−Val−DOPA−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (33) Sar−Arg−Val−Aph−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (34) Sar−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (35) Sar−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−(3−ベンゾチエニル)アラニン)−OH;
    (36) Sar−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Ph))−OH;
    (37) Glac−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (38) Glac−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−(3−ベンゾチエニル)アラニン)−OH;
    (39) Glac−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Ph))−OH;
    (40) Glac−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−1Nal)−OH;
    (41) Glac−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−(3−ベンゾチエニル)アラニン)−OH;
    (42) Glac−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Ph))−OH;
    (43) Glac−Arg−Val−Tyr−Cpg−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (44) Glac−Arg−Val−Tyr−Cpg−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH;
    (45) Glac−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH;または
    (46) Glac−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH
    である、請求項1に記載の化合物。
  18. (4) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (9) Sar−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH;
    (29) Glac−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (31) Glac−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Cl))−OH;
    (45) Glac−Arg−Val−Tyr−Val−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH;または
    (46) Glac−Arg−Val−Tyr−Chg−His−Pro−(D−Phe(2−Me))−OH
    である、請求項1に記載の化合物。
  19. 請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
  20. 高血圧症を処置する方法であって、請求項19に記載の医薬組成物の有効量をそれを必要とする患者に投与するステップを含む、方法。
  21. 高血圧症が妊娠により誘発される、請求項20に記載の方法。
  22. 子癇前症をまたは妊娠により誘発される腎疾患を処置する方法であって、請求項19に記載の医薬組成物の有効量をそれを必要とする患者に投与するステップを含む、方法。
  23. 高血圧症の処置に使用するための、請求項19に記載の医薬組成物。
  24. 高血圧症が、妊娠、子癇前症または腎疾患によって誘発される、請求項23に記載の使用のための医薬組成物。
  25. 子癇前症のまたは妊娠により誘発される腎疾患の処置に使用するための、請求項19に記載の医薬組成物。
  26. 高血圧症の処置のための医薬の製造における、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物の使用。
  27. 高血圧症が、妊娠、子癇前症または腎疾患によって誘発される、請求項26に記載の化合物の使用。
  28. 子癇前症のまたは妊娠により誘発される腎疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物の使用。
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