JP2019516396A - Cd38及びpd−l1に対する結合分子 - Google Patents

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Abstract

本発明は、少なくとも1つの抗CD38ドメイン及び少なくとも1つの抗PD−L1ドメインを含む二重特異性分子であって、それぞれCD38及びPD−L1抗原に同時結合することができる二重特異性分子に関する。

Description

本発明は、CD38/PD−L1結合分子、特にCD38及びPD−L1をターゲティングする抗体、これらの分子の生産方法、組成物及びその使用に関する。
発明の背景
多発性骨髄腫(MM)は3番目に多い血液悪性腫瘍であり、年間症例数は世界中で114,000例である。処置の進歩にもかかわらず、MMは依然として、医学的必要性が満たされていない少数の血液悪性腫瘍の1つである。患者が最先端の治療を受けて、再発性又は難治性(r/r)疾患を有するならば、処置選択肢は非常に限られている。しかしながら、近年では、抗MM腫瘍ターゲット抗原(TAA)が開発されている。ある抗CD38抗体ダラツムマブは、再発性MMを有する患者の処置について承認されており、他の抗CD38抗体は現在開発中である(イサツキシマブ及びMOR−202。これは、米国特許第8,263,746号に記載されている)。しかしながら、現在のところ30〜35%の範囲内である応答を改善する必要がある。抗CD38抗体の活性は、患者の免疫系を刺激する免疫調節治療薬(例えば、レナリドマイド)によって増強され得ることが実証された。加えて、抗体療法に対するMM腫瘍細胞の耐性機構の1つは、チェックポイント阻害剤経路(例えば、PD−1/PD−L1)のシグナリングの増加に関連することが実証された。したがって、MM腫瘍細胞に対する抗CD38抗体の細胞傷害性を増強し、それと同時にチェックポイント阻害剤経路(例えば、PD−1/PD−L1)を阻害することによって免疫系を活性化する機会がある。
生理的状態では、PD−L1は、免疫系をダウンレギュレーションすることによって、自己免疫に対する保護として主要な役割を果たす。それは、免疫「APC様」細胞(T細胞、NK細胞、マクロファージ、骨髄性DC、B細胞、上皮細胞、血管内皮細胞)及び腫瘍細胞上で発現される。PD−L1は、その同種レセプターPD−1及びB7−1に結合し、それらの増殖及び活性化を阻害することによって、免疫細胞(T細胞、NK細胞など)をネガティブにレギュレーションする。
病的状態では、PD−L1は、腫瘍細胞によって高度に発現され(90%超のMM患者)、予後不良に関連する。免疫チェックポイント経路をターゲティングする遮断抗体(抗PD−1、抗CTLA−4、抗PD−L1など)は、異なるタイプのガン(肺、黒色腫など)において顕著な活性を示した。MMでは、有効性の兆候が観察されているが、しかしながら、MMでは、このクラスの有望な治療薬の活性は依然として最適以下である。理由の1つは、T細胞に対する最大免疫刺激効果を誘発するためには、有益な活性/副作用プロファイルを有する分子(例えば、抗PD−L1)が、それらのターゲットのほぼ化学量論的な遮断/飽和を必要とするということであり得る。
したがって、腫瘍部位に対する抗PD−L1抗体の特異的ターゲッティング(例えば、CD38+ガン細胞のターゲティング)は、免疫刺激が必要な部位への抗PD−L1治療薬の送達を支援し得、最大免疫細胞刺激をもたらして腫瘍及び微小環境細胞上のPD−L1の完全な遮断を可能にし得る。腫瘍部位におけるこのようなターゲット免疫細胞活性化はまた、免疫細胞の全身活性化を減少させ、有害な副作用を予防し、治療用抗体の大量投与を可能にし得る。
多発性骨髄腫(MM)及び他のガン、好ましくはCD38+ガンの処置のためにT細胞、BK細胞及び他の免疫細胞の細胞傷害性能力を利用するために、(それぞれCD38及びPD−L1に特異的な)2つの結合部位を有する二重特異性分子を設計した。本発明の二重特異性分子は、T細胞及びNK細胞上のPD−1と、腫瘍及び腫瘍微小環境細胞上で発現されるPD−L1との相互作用に関連する免疫系の阻害を除去する。このような分子は、PD−L1を過剰発現するガンであって、T細胞及びNK細胞をさらに阻害するPD−L1発現免疫細胞(形質細胞様樹状細胞、骨髄由来サプレッサー細胞)の微小環境において成長するガン(特に、多発性骨髄腫又は任意のCD38+ガン)の処置において有用である。本発明の分子は、CD38+/PD−L1+腫瘍細胞及び腫瘍微小環境細胞のPD−L1+細胞の抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、食作用及び補体依存性細胞傷害(CDC)を促進する。
本発明の実施態様の1つでは、抗CD38及び抗PD−L1ドメインを含むいくつかの二重特異性CD38/PD−L1分子が操作される。これらの二重特異性CD38/PD−L1分子は、両抗原に同時結合することができる。
より具体的には、抗CD38及び抗PD−L1ドメインを含む二重特異性CD38/PD−L1抗体が操作される。これらの二重特異性CD38/PD−L1抗体は、両抗原に同時結合することができる。
好ましい実施態様では、CHO細胞において二重特異性CD38/PD−L1抗体を発現させ、プロテインA樹脂を用いてアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。抗体結合特性は、in vitroアッセイにおいて特性評価される。ELISAアッセイにおいて、それらは、CD38及びPD−L1の両方に同時結合する。
図1A又は1Bの構造を有する二重特異性四価4Fab抗体は、BiXAb(登録商標)(Biomunex Therapeuticsの商標)という名称である。
本発明の抗体は、CD38及びPD−L1に対して二重特異性及び二価のものである。本発明の抗原結合二重特異性抗体は、(mAb1のIgGの天然重鎖と、それに続いてリンカーと、mAb2のFab重鎖とから作られた)連続「複合重鎖」からなる全長二重特異性抗体であり、これは、Fc(ヒンジ−CH2−CH3)と、それに続いて抗体1のFab重鎖(CH1−VH)及び抗体2の連続Fab重鎖(CH1−VH)(後者は、ヒンジ由来ポリペプチドリンカー配列によって接続されている)とから構築され、得られた複合重鎖は、タンパク質発現中に同一の第2の複合重鎖と会合し、抗体2及び抗体1の同時発現されたFab軽鎖(LC)は、最終的なタンデム型F(ab’)−Fc分子を形成するために、それらの同種重鎖ドメインと会合する;抗体1(Ab1)及び抗体2(Ab2)は異なるものであり、抗CD38抗体(ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR−202又は任意の他の抗CD38抗体)又はそれらの突然変異誘導体及び抗PD−L1抗体(アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、MDX−1105又は任意の他の抗PD−L1抗体)又はそれらの突然変異誘導体からなる群より選択される。
BiXAb(登録商標)抗体はCD38及びPD−L1の両方に二価結合することができる。
上記で定義される二重特異性抗体の重鎖からなるポリペプチド、及び前記ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドがさらに記載される。
前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクションされた宿主細胞も記載される。
本発明のさらに別の目的は、本発明の二重特異性抗体を調製するための方法である。
したがって、本発明の二重特異性抗体を生産するための方法であって、以下の工程:a)適切な培地中及び培養条件で、上記で定義される抗体重鎖及び上記で定義される抗体軽鎖を発現する宿主細胞を培養すること;並びにb)培養培地から、又は前記培養細胞から前記産生抗体を回収することを含む方法が提供される。
本発明は、本明細書で定義される重鎖及び軽鎖をコードするポリヌクレオチドであって、選択された宿主細胞において活性な転写及び翻訳コントロールエレメントに結合されたポリヌクレオチドを含むリコンビナントベクター、特に発現ベクターを使用する。本発明にしたがって発現ベクターを構築するために使用され得るベクターはそれ自体が公知であり、特に使用しようとする宿主細胞の機能に応じて選択されるであろう。好ましくは、前記宿主細胞は、重鎖をコードするポリヌクレオチドと、2本の異なる軽鎖をコードする2つのポリヌクレオチドとでトランスフォーメーションされる。前記ポリヌクレオチドは、同じ発現ベクター又は別個の発現ベクターに挿入され得る。本発明の抗体を生産するための方法は、このような宿主細胞を培養すること、及び前記培養物から前記抗原結合フラグメント又は抗体を回収することを含む。
図1A及び1Bは、2本の重鎖及び4本の軽鎖を含む本発明の二重特異性抗体の概略図である。 図1A及び1Bは、2本の重鎖及び4本の軽鎖を含む本発明の二重特異性抗体の概略図である。 図2は、還元条件下における二重特異性抗体BiXAb 4218、4219及び5104のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を示す。 図3は、非還元条件下におけるBiXAb 4218、4219及び5104のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を示す。 図4は、BiXAb 4218及び4219のELISA結合アッセイを示す。 図5は、還元条件及び非還元条件下におけるBiXAb-6567のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を示す。レーン1:還元条件下におけるBiXAb-6567の移動;レーン2:各バンドの重量を示す分子量マーカー;レーン3:非還元条件下におけるBiXAb-6567の移動。 図6は、BiXAb-6567のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。 図7は、デジタル走査熱量測定によって決定した2つの親抗体(抗CD38及び抗PD−L1)及びBiXAb-6567の融解プロファイルを示す。 図8Aは、直接CD38抗原結合ELISAにおける2つの親抗体(抗CD38及び抗PD−L1)及びBiXAb-6567の結合プロファイルを示す。 図8Bは、直接PD−L1抗原結合ELISAにおける2つの親抗体(抗CD38及び抗PD−L1)及びBiXAb-6567の結合プロファイルを示す。 図8Cは、二重抗原(PD−L1及びCD38)結合ELISAにおけるBiXAb-6567の結合プロファイルを示す。 図9A〜9Cは、3つの異なる細胞株における2つの親mAb(抗CD38及び抗PD−L1)及びBiXAb-6567の蛍光活性化細胞選別プロファイルを示す。9A:多発性骨髄腫RPMI−8226、9B:全長CD38で安定トランスフェクションしたCHO細胞、及び9C:卵巣ガン細胞株SKOV−3 図9A〜9Cは、3つの異なる細胞株における2つの親mAb(抗CD38及び抗PD−L1)及びBiXAb-6567の蛍光活性化細胞選別プロファイルを示す。9A:多発性骨髄腫RPMI−8226、9B:全長CD38で安定トランスフェクションしたCHO細胞、及び9C:卵巣ガン細胞株SKOV−3 図9A〜9Cは、3つの異なる細胞株における2つの親mAb(抗CD38及び抗PD−L1)及びBiXAb-6567の蛍光活性化細胞選別プロファイルを示す。9A:多発性骨髄腫RPMI−8226、9B:全長CD38で安定トランスフェクションしたCHO細胞、及び9C:卵巣ガン細胞株SKOV−3 図10は、CHO−CD38細胞株における2つの親抗体(抗CD38及び抗PD−L1)、BiXAb-6567及びネガティブコントロール抗CD20抗体の力価測定結合プロファイルを示す。 図11は、ターゲット細胞として多発性骨髄腫RPMI−8226を用い、エフェクター細胞として非分画非プレ活性化単核細胞を用いたADCCアッセイにおける2つの親抗体(抗CD38及び抗PD−L1)、BiXAb-6567並びに2つのネガティブコントロール抗体抗CD20及び抗HER2の細胞傷害活性プロファイルを示す。 図12は、ターゲット細胞としてCHO−CD38細胞株を用い、エフェクター細胞として非分画非プレ活性化単核細胞を用いたADCCアッセイにおける2つの親抗体(抗CD38及び抗PD−L1)、BiXAb-6567並びに2つのネガティブコントロール抗体抗CD20及び抗HER2の細胞傷害活性プロファイルを示す。 図13は、ターゲット細胞としてSKOV−3細胞株を用い、エフェクター細胞として濃縮IL−12プレ活性化NK細胞を用いたADCCアッセイにおける2つの親抗体(抗CD38及び抗PD−L1)、BiXAb-6567並びに2つのネガティブコントロール抗体抗CD20及び抗HER2の細胞傷害活性プロファイルを示す。 図14は、ターゲット細胞としてSKOV−3細胞株を用い、エフェクター細胞として濃縮IL−15プレ活性化NK細胞を用いたADCCアッセイにおける2つの親抗体(抗CD38及び抗PD−L1)、BiXAb-6567並びに2つのネガティブコントロール抗体抗CD20及び抗HER2の細胞傷害活性プロファイルを示す。
詳細な説明
定義:
天然に存在する抗体分子の基本構造は、非共有結合的相互作用及び鎖間ジスルフィド結合によって互いに保持される2本の同一の重鎖及び2本の同一の軽鎖からなるY字型テトラマ−四次構造である。
哺乳動物種では、免疫グロブリンのクラス(アイソタイプ):それぞれIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMを決定する5つのタイプの重鎖:α、δ、ε、γ及びμがある。重鎖N末端可変ドメイン(VH)と、それに続いて、重鎖γ、α及びδにおいて(N末端からC末端へCH1、CH2及びCH3とナンバリングされる)3つのドメインを含有する定常領域とがあり、重鎖μ及びεの定常領域は、(N末端からC末端へCH1、CH2、CH3及びCH4とナンバリングされる)4つのドメインから構成される。IgA、IgG及びIgDのCH1及びCH2ドメインは、異なるクラス間で並びにIgA及びIgGの場合には異なるサブタイプ間で長さが異なるフレキシブルヒンジによって分離されている:IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4は、それぞれ15、12、62(又は77)及び12アミノ酸のヒンジを有し、IgAl及びIgA2は、それぞれ20及び7アミノ酸のヒンジを有する。
重鎖アイソタイプのいずれかと会合し得る2つのタイプの軽鎖:λ及びκがあるが、所定の抗体分子では両方とも同じタイプのものである。両軽鎖は、機能的に同一であると思われる。N末端可変ドメイン(VL)と、それに続いて、CLと称される単一ドメインからなる定常領域とがある。
重鎖及び軽鎖は、CH1及びCLドメイン間のタンパク質/タンパク質相互作用によって、並びにVH/VL相互作用を介して対合し、2本の重鎖は、それらのCH3ドメイン間のタンパク質/タンパク質相互作用によって会合する。免疫グロブリン分子の構造は、一般に、CH1及びCLドメイン間並びにヒンジ間の鎖間ジスルフィド結合によって安定化される。
抗原結合領域は、重鎖のVH及びCH1ドメインと対合した各完全軽鎖からなるY字型構造のアームに対応し、Fabフラグメント(Fragment antigen bindingの略)と称される。最初、Fabフラグメントは、ヒンジ領域において鎖間ジスルフィド結合のアミノ末端側で抗体分子を切断して2つの同一の抗原結合アームを放出させるパパイン消化によって、ネイティブな免疫グロブリン分子から生成された。ペプシンなどの他のプロテアーゼもまた、ヒンジ領域においてただし鎖間ジスルフィド結合のカルボキシ末端側で抗体分子を切断して、2つの同一のFabフラグメントからなるフラグメントであって、ジスルフィド結合によって依然として連結されたフラグメントを放出させる;F(ab’)2フラグメントにおけるジスルフィド結合の還元により、Fab’フラグメントが生成される。
VH及びVLドメインに対応する抗原結合領域の部分は、Fvフラグメント(Fragment variableの略)と称される;それは、抗原結合部位(パラトープとも称される)を形成するCDR(相補性決定領域)を含有する。
エフェクター分子又は細胞に対する結合に関与する抗体のエフェクター領域は、Y字型構造のステムに対応し、重鎖の対合したCH2及びCH3ドメイン(又は、抗体のクラスに応じて、CH2、CH3及びCH4ドメイン)を含有し、Fc(Fragment crystallisableの略)領域と称される。
2本の重鎖及び2本の軽鎖の同一性により、天然に存在する抗体分子は、2つの同一の抗原結合部位を有し、それにより、2つの同一のエピトープに同時結合する。
抗体は、それが他の物質に結合するよりも高い親和性、アビディティで、より容易に、及び/又は長い持続時間で結合する場合に、ターゲット抗原に「特異的に結合する」。「特異的結合」又は「優先的結合」は、排他的結合(を含み得るが)を必ずしも必要としない。一般に、必ずではないが、結合への言及は、優先的結合を意味する。
「被験体」、「個体」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、処置について評価されている及び/又は処置されている哺乳動物を指す。被験体はヒトであり得るが、他の哺乳動物、特にヒト疾患のための研究室モデルとして有用な哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌなども挙げられ得る。
「処置」又は「処置する」という用語は、被験体の症状を直接的又は間接的に改善することを目的として、ヒトを含む被験体を医学的支援に供する行為、適用又は治療を指す。特に、この用語は、いくつかの実施態様では発生率の減少、症候の緩和、再発の排除、再発の予防、発生の予防、症候の改善、予後の改善又はそれらの組み合わせを指す。当業者であれば、処置が症候の完全な非存在又は除去を必ずしももたらさないことを理解するであろう。例えば、ガンに関して「処置」又は「処置する」は、新生物若しくは悪性細胞成長、増殖若しくは転移の減速、新生物若しくは悪性細胞成長、増殖若しくは転移の発症の予防若しくは遅延、又はそれらのいくつかの組み合わせを指し得る。
好ましい二重特異性抗体の設計:
本発明は、それらの各ターゲットに対する2つの結合部位と、抗体依存性細胞性傷害(ADCC)、食作用及び補体依存性細胞傷害(CDC)などのエフェクター機能の活性化を可能にする機能的Fcドメインとを含む二重特異性四価抗体を提供する。
本発明の抗体は、全長抗体である。それらは、好ましくは、ヒト免疫グロブリン、好ましくはIgG、さらに好ましくはIgG1由来の重鎖及び軽鎖を含む。
軽鎖は、好ましくは、κ軽鎖である。
好ましい実施態様では、本発明のリンカーは、テトラ−Fab二重特異性抗体フォーマットで2組のIgG Fabドメインを接続し、このアミノ酸配列は、リンカーによって接続された少なくとも2つのFabの重鎖配列と、それに続いてネイティブなヒンジ配列と、それに続いて適切なIgG軽鎖配列と共に同時発現されたIgG Fc配列とを含む。
IgG様構造を有する本発明の抗体の例は、図1A及び1Bに示されている。
本発明の二重特異性抗体は、典型的には、
−Fc(ヒンジ−CH2−CH3)から構築される連続重鎖
−それに続いて、抗体1のFab重鎖(CH1−VH)及び抗体2の連続Fab重鎖(CH1−VH)(後者は、ヒンジ由来ポリペプチドリンカー配列によって接続されている)
を含み、
−タンパク質発現中に、得られた重鎖はダイマーにアセンブルし、同時発現された抗体1及び抗体2軽鎖(VL−CL)は、最終的なタンデム型F(ab)’2−Fc分子を形成するために、それらの同種重鎖と会合し、
抗体1(Ab1)及び抗体2(Ab2)は異なるものである。
Ab1及びAb2は異なるものであり、抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ)及び抗PD−L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)からなる群より独立して選択される。
ダラツムマブは、ヒトCD38のC末端領域(アミノ酸233〜246及び267〜280。272位及び274位のアミノ酸は、結合に特に重要である)において、ユニークなCD38エピトープに結合する。有利には、Ab1及び/又はAb2は、ダラツムマブと同じエピトープ又は重複エピトープ(例えば、少なくとも4アミノ酸の重複)に結合する抗体であり得る。
別の実施態様では、Ab1及び/又はAb2は、アテゾリズマブと同じエピトープ又は重複エピトープに結合する抗体であり得る。
特定の実施態様では、二重特異性分子は、a)2本の重鎖であって、それぞれが配列番号:1を含み、好ましくは配列番号:1からなる2本の重鎖と、b)4本の軽鎖であって、2本が配列番号:2を含み、好ましくは配列番号:2からなり、他の2本が配列番号:3を含み、好ましくは配列番号:3からなる4本の軽鎖とを含み、好ましくはそれらからなる二重特異性抗体である。このような二重特異性抗体は、BiXAb-4218という名称である。
別の特定の実施態様では、二重特異性分子は、a)2本の重鎖であって、それぞれが配列番号:4を含み、好ましくは配列番号:4からなる2本の重鎖と、b)4本の軽鎖であって、2本が配列番号:5を含み、好ましくは配列番号:5からなり、他の2本が配列番号:6を含み、好ましくは配列番号:6からなる4本の軽鎖とを含み、好ましくはそれらからなる二重特異性抗体である。このような二重特異性抗体は、BiXAb-4219という名称である。
別の特定の実施態様では、二重特異性分子は、a)2本の重鎖であって、それぞれが配列番号:7を含み、好ましくは配列番号:7からなる2本の重鎖と、b)4本の軽鎖であって、2本が配列番号:8を含み、好ましくは配列番号:8からなり、他の2本が配列番号:9を含み、好ましくは配列番号:9からなる4本の軽鎖とを含み、好ましくはそれらからなる二重特異性抗体である。このような二重特異性抗体は、BiXAb-5104という名称である。
好ましい実施態様では、二重特異性分子は、a)2本の重鎖であって、それぞれが配列番号:10を含み、好ましくは配列番号:10からなる2本の重鎖と、b)4本の軽鎖であって、2本が配列番号:11を含み、好ましくは配列番号:11からなり、他の2本が配列番号:12を含み、好ましくは配列番号:12からなる4本の軽鎖とを含み、好ましくはそれらからなる二重特異性抗体である。このような二重特異性抗体は、BiXAb-6567という名称である。
重鎖(配列番号:10)は、
−ダラツムマブのVH(配列番号:22)
−ダラツムマブFabのCH1ドメイン(突然変異L124Q及びS188Vを有するG1m(3)アロタイプのヒトIgG1)(配列番号:23)
−APリンカー(配列番号:15)
−アテゾリズマブのVH(配列番号:24)
−アテゾリズマブFabのCH1ドメイン(突然T192Dを有するG1m(3)アロタイプのヒトIgG1)(配列番号:25)
−ヒトIgG1のヒンジ(配列番号:26)
−ヒトIgG1のCH2ドメイン(配列番号:27)
−G1m(3)アロタイプのヒトIgG1のCH3ドメイン(配列番号:28)
を含む。
配列番号:11の軽鎖は、
−ダラツムマブのVL(配列番号:29)
−突然変異V133T及びS176Vを有するダラツムマブのCκドメイン(配列番号:30)
を含む。
配列番号:12の軽鎖は、
−アテゾリズマブのVL(配列番号:31)
−突然変異S114A及びN137Kを有するアテゾリズマブのCκドメイン(配列番号:32)
を含む。
改善された特性を有する二重特異性抗体であって、CD38及び/又はPD−L1に対するより高い結合親和性を示す二重特異性抗体も記載される。例えば、このような二重特異性抗体は、CD38及び/又はPD−L1に対して、1×10−7M未満、10−8M、好ましくは1×10−9未満又は1×10−10MのKdを示し得る。
リンカーの設計
「ヒンジ由来ポリペプチドリンカー配列」又は「シュードヒンジリンカー」とも称されるポリペプチドリンカーは、好ましくはヒト起源のIgA、IgG及びIgDから選択される1つ以上の免疫グロブリンのヒンジ領域の配列の全部又は一部を含む。前記ポリペプチドリンカーは、ただ1つの免疫グロブリンのヒンジ領域の配列の全部又は一部を含み得る。この場合、前記免疫グロブリンは、隣接CH1ドメインが由来する免疫グロブリンと同じアイソタイプ及びサブクラスに属し得るか、又は異なるアイソタイプ若しくはサブクラスに属し得る。あるいは、前記ポリペプチドリンカーは、異なるアイソタイプ又はサブクラスの少なくとも2つの免疫グロブリンのヒンジ領域の配列の全部又は一部を含み得る。この場合、CH1ドメインの直後にあるポリペプチドリンカーのN末端部分は、好ましくは、前記CH1ドメインが由来する免疫グロブリンと同じアイソタイプ及びサブクラスに属する免疫グロブリンのヒンジ領域の全部又は一部からなる。
場合により、前記ポリペプチドリンカーは、免疫グロブリンのCH2ドメインの2〜15個、好ましくは5〜10個のN末端アミノ酸の配列をさらに含み得る。
ポリペプチドリンカー配列は、典型的には、80個未満のアミノ酸、好ましくは60個未満のアミノ酸、さらに好ましくは40個未満のアミノ酸からなる。
いくつかの場合では、ネイティブなヒンジ領域由来の配列が使用され得る;他の場合では、望ましくない鎖内又は鎖間ジスルフィド結合を回避するために、点突然変異(特に、アラニン又はセリンによるネイティブなIgG1、IgG2又はIgG3ヒンジ配列中の1つ以上のシステイン残基の置換)がこれらの配列にもたらされ得る。
特定の実施態様では、ポリペプチドリンカー配列は、アミノ酸配列EPKXCDKXHXPPXPAPELLGGPXX7PPXPXPX10GG(配列番号:13)(同一の又は異なるX、X、X、X、X、X、X、X、X、X10は、任意のアミノ酸である)を含むか、又はそれからなる。特に、ポリペプチドリンカー配列は、

からなる群より選択される配列を含み得るか、又はそれからなり得る。
本発明の多重特異性抗原結合フラグメントにおいて使用され得るヒンジ由来ポリペプチドリンカーの非限定的な例は、配列番号:17を有するポリペプチドである。前記ポリペプチドは、ヒトIgG1ヒンジの全長配列と、それに続いてヒトIgG1 CH2の9個のN末端アミノ酸(APELLGGPS、配列番号:19)と、ヒトIgA1ヒンジの配列の一部(TPPTPSPS、配列番号:20)と、補足的なフレキシビリティをリンカーに提供するために付加されたジペプチドGGとからなる。別の好ましい実施態様では、ヒンジ由来ポリペプチドリンカー配列は、配列番号:15又は配列番号:18である。
特定の実施態様では、同一の又は異なるX、X及びXは、トレオニン(T)又はセリン(S)である。
別の特定の実施態様では、同一の又は異なるX、X及びXは、Ala(A)、Gly(G)、Val(V)、Asn(N)、Asp(D)及びIle(I)からなる群より選択され、さらに好ましくは、同一の又は異なるX、X及びXは、Ala(A)又はGly(G)であり得る。
あるいは、同一の又は異なるX、X及びXは、Leu(L)、Glu(E)、Gln(Q)、Met(M)、Lys(K)、Arg(R)、Phe(F)、Tyr(T)、His(H)、Trp(W)、好ましくはLeu(L)、Glu(E)又はGln(Q)であり得る。
特定の実施態様では、同一の又は異なるX及びXは、セリン(S)、システイン(C)、アラニン(A)及びグリシン(G)からなる群より選択される任意のアミノ酸である。
好ましい実施態様では、Xは、セリン(S)又はシステイン(C)である。
好ましい態様では、Xは、アラニン(A)又はシステイン(C)である。
特定の実施態様では、同一の又は異なるX、X、X、X、X10は、トレオニン(T)又はセリン(S)以外の任意のアミノ酸である。好ましくは、同一の又は異なるX、X、X、X、X10は、Ala(A)、Gly(G)、Val(V)、Asn(N)、Asp(D)及びIle(I)からなる群より選択される。
あるいは、同一の又は異なるX、X、X、X、X10は、Leu(L)、Glu(E)、Gln(Q)、Met(M)、Lys(K)、Arg(R)、Phe(F)、Tyr(T)、His(H)、Trp(W)、好ましくはLeu(L)、Glu(E)又はGln(Q)であり得る。
好ましい実施態様では、同一の又は異なるX、X、X、X、X10は、Ala(A)及びGly(G)からなる群より選択される。
さらに好ましい実施態様では、X及びXは同一のものであり、好ましくは、Ala(A)及びGly(G)からなる群より選択される。
好ましい実施態様では、ポリペプチドリンカー配列は、配列番号:13の配列
(同一の又は異なるX、X及びXは、トレオニン(T)、セリン(S)であり;
は、セリン(S)又はシステイン(C)であり;
は、アラニン(A)又はシステイン(C)であり;
同一の又は異なるX、X、X、X、X10は、Ala(A)及びGly(G)からなる群より選択される)を含むか、又はそれからなる。
別の好ましい実施態様では、ポリペプチドリンカー配列は、配列番号:13の配列
(同一の又は異なるX、X及びXは、Ala(A)又はGly(G)であり;
は、セリン(S)又はシステイン(C)であり;
は、アラニン(A)又はシステイン(C)であり;
同一の又は異なるX、X、X、X、X10は、Ala(A)及びGly(G)からなる群より選択される)を含むか、又はそれからなる。
二重特異性抗体の生産:
当業者であれば、多重特異性抗体を発現させる一般的な技術について、国際公開公報第2013/005194号(これは、参照により本明細書に組み入れられる)を参照し得る。
本発明の分子又は抗体のタンパク質鎖をコードする配列を含むポリヌクレオチドも本明細書に記載される。前記ポリヌクレオチドはまた、さらなる配列を含み得る;特に、それは、有利には、前記タンパク質鎖の分泌を可能にするリーダー配列又はシグナルペプチドをコードする配列を含み得る。前記ポリヌクレオチドでトランスフォーメーションされた宿主細胞も開示される。
典型的には、異なる抗CD38及び抗PDL−1モノクローナル抗体のアミノ酸配列は、場合により哺乳動物発現のためのコドン最適化後に、DNA配列を設計するために使用される。重鎖については、制限酵素消化のための隣接配列と共に、シグナルペプチドと、Fab1の可変領域及び定常CH1ドメインと、それに続いてヒンジリンカーと、Fab2の可変領域及び定常CH1ドメインとをコードするDNAが合成される。軽鎖については、シグナルペプチドと、可変及び定常κ領域とをコードするDNAが合成される。
本発明の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸は、発現ベクターに挿入される。軽鎖及び重鎖は、同じ又は異なる発現ベクターにクローニングされ得る。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を保証する発現ベクター中のコントロール配列に作動可能に連結される。このようなコントロール配列は、シグナル配列、プロモーター、エンハンサー及び転写終結配列を含む。発現ベクターは、典型的には、宿主生物において、エピソームとして、又は宿主染色体DNAの必須部分として複製可能である。一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列でトランスフォーメーションされた細胞の検出を可能にするための選択マーカー、例えばテトラサイクリン又はネオマイシンを含有するであろう。
一例では、重鎖コード配列及び軽鎖コード配列(例えば、VH及びVL、VH−CH1及びVL−CL、又は全長重鎖及び全長軽鎖をコードする配列)は両方とも、1つの発現ベクターに含まれる。別の例では、抗体の重鎖及び軽鎖をそれぞれ個々のベクターにクローニングする。後者の場合、両鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを1つの宿主細胞にコトランスフェクションし得、これらをin vivo又はin vitroでアセンブルして、インタクトな抗体を形成し得る。あるいは、重鎖及び軽鎖それぞれの発現のために、重鎖をコードする発現ベクター及び軽鎖をコードするものを異なる宿主細胞に導入し得、次いで、これらを精製及びアセンブルして、in vitroでインタクトな抗体を形成し得る。
特定の実施態様では、宿主細胞は、プラスミドなどの3つの独立した発現ベクターでコトランスフェクションされ、3本の鎖の全て(すなわち、それぞれ重鎖HC並びに2本の軽鎖LC1及びLC2)が同時産生され、二重特異性抗体が分泌される。
より具体的には、3つのベクターは、有利には、以下の分子比2:1:1(HC:LC1:LC2)で使用され得る。
本明細書に記載される抗体の発現のためのリコンビナントベクターは、典型的には、構成的又は誘導性のいずれかのプロモーターに作動可能に連結された抗体アミノ酸配列をコードする核酸を含有する。ベクターは、原核生物、真核生物又はその両方における複製及び統合に適切であり得る。典型的なベクターは、転写及び翻訳終結と、開始配列と、抗体をコードする核酸の発現のレギュレーションに有用なプロモーターとを含有する。ベクターは、少なくとも1つの独立した終結配列と、原核生物及び真核生物の両方においてカセットの複製を可能にする配列(すなわち、シャトルベクター)と、原核生物系及び真核生物系の両方のための選択マーカーとを含有する遺伝子発現カセットを場合により含有する。
本明細書に記載される二重特異性抗体は、原核生物及び真核生物発現系、例えば細菌、酵母、糸状菌、植物、昆虫(例えば、バキュロウイルスベクターを使用)及び哺乳動物細胞において産生され得る。本発明のリコンビナント抗体は、真核細胞においてグリコシル化又は発現される必要はない;しかしながら、一般に、哺乳動物細胞における発現が好ましい。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、ヒト胎性腎臓細胞株(293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/−又は+DHFR(CHO、CHO−S、CHO−DG44、Flp−in CHO細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO細胞)及びヒト肝細胞(Hep G2細胞)である。
インタクトな免疫グロブリンを分泌することができる多くの適切な宿主細胞株が当技術分野で開発されており、CHO細胞株、様々なCos細胞株、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞(例えば、NS0)又はトランスフォーメーションB細胞若しくはハイブリドーマが挙げられるので、哺乳動物組織細胞培養は、ポリペプチドを発現及び生産するために好ましい。
最も好ましい実施態様では、本発明の二重特異性抗体は、CHO細胞株、最も有利にはCHO−S又はCHO−DG−44細胞株又はそれらの誘導体を使用することによって生産される。
これらの細胞の発現ベクターは、発現コントロール配列、例えば複製起点、プロモーター及びエンハンサー、並びに必要なプロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写終結配列を含み得る。好ましい発現コントロール配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなどに由来するプロモーターである。
目的のポリヌクレオチド配列(例えば、重鎖コード配列及び軽鎖コード配列並びに発現コントロール配列)を含有するベクターは、細胞宿主のタイプに応じて異なる周知の方法によって、宿主細胞に移入され得る。例えば、リン酸カルシウム処理又はエレクトロポレーションは、他の細胞宿主に使用され得る。(一般に、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, 2nd ed., 1989を参照のこと)。重鎖及び軽鎖が別個の発現ベクターにクローニングされる場合、ベクターは、インタクトな免疫グロブリンの発現及びアセンブリを得るためにコトランスフェクションされる。宿主細胞は、(例えば、化学的トランスフェクション法又はエレクトロポレーション法によって)ベクターでトランスフォーメーション又はトランスフェクションされ、プロモーターを誘導し、トランスフォーマントを選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために、従来の(又は、必要に応じて改変された)栄養培地中で培養される。
抗体の発現は、一過性又は安定であり得る。
好ましくは、二重特異性抗体は、安定発現方法によって生産され、BiXAb-6567などの二重特異性抗体の全てのポリペプチド鎖をコードするDNAで安定にトランスフェクションされた細胞株は、持続的な発現が可能であり、治療薬の製造を可能にする。例えば、CHO細胞株における安定発現が特に有利である。
発現させたら、本発明の全抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖及び重鎖又は他の免疫グロブリン形態をさらに単離又は精製して、さらなるアッセイ及び適用のために実質的に均一な調製物を得ることができる。当技術分野で公知の標準的なタンパク質精製方法が使用され得る。例えば、適切な精製手順としては、免疫親和性又はイオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、硫酸アンモニウム沈殿及びゲルろ過が挙げられ得る(一般に、Scopes, Protein Purification (Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照のこと)。医薬用途では、少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%又はそれ以上の均一性が最も好ましい。
in vitro生産は、本発明の所望の二重特異性抗体を大量に得るスケールアップを可能にする。このような方法は、例えばエアリフト反応器若しくは連続撹拌反応器における均一懸濁培養、又は例えば中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズ若しくはセラミックカートリッジにおける固定化若しくは封入細胞培養を用い得る。
突然変異誘導体及び突然変異:
CD38に結合するポリペプチド配列は、例えば、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR−202又はそれらの突然変異誘導体からなる群より選択される任意の抗CD38抗体に由来し得る。
PD−L1に結合するポリペプチド配列は、例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、MDX−1105又はそれらの突然変異誘導体からなる群より選択される任意の抗PD−L1抗体に由来し得る。
「突然変異誘導体」、「突然変異体」又は「機能的変異体」という用語は、1個又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は挿入によって、それが指す親配列と異なる配列を表す。好ましくは、突然変異誘導体は、好ましくは、ネイティブな配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%の配列相同性を示す。特定の実施態様では、突然変異は、抗体の機能に実質的な影響を与えない。
突然変異誘導体又は機能的変異体は、本明細書に記載される参照配列のいずれかと少なくとも85%(例えば、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)同一のアミノ酸配列を含むVH鎖、本明細書に記載される参照配列のいずれかと少なくとも85%(例えば、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)同一のアミノ酸配列を有するVL鎖、又はその両方を含み得る。これらの変異体は、CD38及びPD−L1に結合することができる。いくつかの例では、変異体は、上記参照抗体と同様の抗原結合親和性を有する(例えば、1×10−7M未満、10−8M、好ましくは1×10−9未満又は1×10−10MのKDを有する)。
結合の親和性は、ka(会合速度定数)、kd(解離速度定数)又はKD(平衡解離)という用語によって定義される。典型的には、抗体に関して使用される場合、特異的な結合は、10−7M未満、好ましくは10−8M未満、例えば10−9M未満又は10−10Mの親和性(KD)値で、そのターゲットに特異的に結合する(「認識する」)抗体を指す。10−9のKD値は、10−8のKD値よりも高い結合親和性を示すように、より低いKD値は、より高い結合親和性(すなわち、より強力な結合)を表す。
2つのアミノ酸配列の「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77, 1993のように改変されたKarlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズムを使用して決定される。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al. J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。score=50、wordlength=3でXBLASTプログラムを用いてBLASTタンパク質検索を実施して、目的のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402, 1997に記載されているように、Gapped BLASTが利用され得る。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る。
他の実施態様では、本明細書に記載される機能的変異体は、CDRの1つ以上と相互作用すると予測される残基において存在しないことが好ましい1つ以上の突然変異(例えば、保存的置換)を含有し得る。
参照抗体と実質的に同一の突然変異誘導体又は機能的変異体が本明細書に記載される。
「実質的に同一」又は「非実質的」という用語は、変異体が、参照抗体と比べて実質的に類似の結合活性(例えば、親和性、特異性又はその両方)及び生物活性を有するように、変異体の(例えば、フレームワーク領域(FR)、CDR、VH又はVLドメインにおける)関連アミノ酸配列が、参照抗体と比較して非実質的に異なる(例えば、保存的アミノ酸置換を含む)ことを意味する。このような変異体は、指定領域の5アミノ酸の配列において軽微なアミノ酸の変化、例えば1つ又は2つの置換を含み得る。一般に、CDR領域とは対照的に、FR領域では、抗体の結合機能に有害な影響(例えば、元の抗体と比較して結合親和性の50%超の減少)を与えない限り、より多くの置換が行われ得る。いくつかの実施態様では、配列同一性は、元の抗体と改変抗体との間で、約85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上であり得る。いくつかの実施態様では、改変抗体は、元の抗体と同じ結合特異性を有し、元の抗体の親和性の少なくとも50%を有する。
保存的置換は、このような改変が行われる元の分子のものと類似の機能的及び化学的な特徴を有する分子を生じさせるであろう。例えば、「保存的アミノ酸置換」は、その位置におけるアミノ酸残基の極性又は電荷に対してほとんど又は全く効果がないように、別の残基でネイティブなアミノ酸残基を置換することを伴い得る。(保存的又は非保存的にかかわらず)所望のアミノ酸置換は、当業者によって決定され得る。例えば、アミノ酸置換は、分子配列の重要な残基を同定するために、又は本明細書に記載される分子の親和性を増加若しくは減少させるために使用され得る。1つ以上の保存的アミノ酸置換を含む変異体は、ポリペプチド配列を変化させるための当業者に公知の方法、例えばこのような方法を集めた参考文献、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989又はCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに見られるものにしたがって調製され得る。アミノ酸の保存的置換としては、以下のグループ内のアミノ酸間で行われる置換が挙げられる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;及び(g)E、D。
本開示はまた、抗体の改善された生物学的特性、例えばより高い若しくはより低い結合親和性を有する、又はCD38及び/若しくはPD−L1発現細胞に対する変化したADCC特性を有する抗体変異体を提供する。
抗体のアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することによって、又はペプチド合成を介して調製され得る。このような改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失及び/又は前記残基への挿入及び/又は前記残基の置換が挙げられる。最終構築物が所望の特徴を有する限り、最終構築物を達成するために、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせが行われる。抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野で公知の様々な方法によって調製され得る。これらの方法としては、限定されないが、以前に調製された変異型又は非変異(天然)型の抗体のオリゴヌクレオチド媒介性(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発及びカセット突然変異誘発が挙げられる。一実施態様では、本発明の抗体の平衡解離定数(KD)値は、10−7M未満、特に10−8M未満、10−9M又は10−10Mである。結合親和性は、当技術分野で公知の技術、例えばELISA若しくは(例えば、表面プラズモン共鳴を使用した)生体特異的相互作用分析、又は当技術分野で公知の他の技術を使用して決定され得る。
本明細書に記載される分子はいずれも、ルーチンな方法にしたがって、それらの特性、例えば抗原結合活性、抗原結合特異性及び生物学的機能を決定するために検査され得る。
本明細書に記載される分子はいずれも、例えば、PEG化、高度グリコシル化によって、当技術分野で公知の容易に利用可能なさらなる非タンパク質性部分を含有するように改変され得る。血清半減期を増強し得る改変が興味深い。
本明細書を通して、アミノ酸配列は、Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)にしたがって定義される。
突然変異は、定常領域に位置し得る。二重特異性抗体は、実際に有利には、CH1及びCLドメインの境界において突然変異を有するFabフラグメントを含み、前記突然変異は、重鎖/軽鎖の同種対合を促進し、それらの誤対合を防止する。
好ましい実施態様では、二重特異性抗体であって、
・異なる突然変異CH1及び突然変異CLドメインを有する2つのFabフラグメントであって、
a)ヒトIgG1/κ由来の突然変異CH1及び突然変異C−κドメインと、Ab1のVH及びVLドメインとを有するFabフラグメント、
b)ヒトIgG1/κ由来の突然変異CH1及び突然変異C−κドメインと、Ab2のVH及びVLドメインとを有するFabフラグメント、
c)ヒトκ定常ドメイン由来の突然変異軽鎖定常ドメイン
からなる2つのFabフラグメントを含み、前記Fabフラグメントが、以下の順序
−ポリペプチドリンカーを介してAb2 FabフラグメントのVHドメインのN末端に連結されたAb1 Fabフラグメントの突然変異CH1ドメインのC末端、
−Ab2フラグメントの突然変異CH1ドメインのC末端をCH2ドメインのN末端に連結するヒトIgG1のヒンジ領域、
−ヒトIgG1の二量体化CH2及びCH3ドメイン
でタンデムに配置されている二重特異性抗体が本明細書に記載される。
特定の例では、二重特異性抗体であって、Ab1若しくはAb2の一方のFab CH1ドメインが、前記CH1ドメインの192位のトレオニン残基をアスパラギン酸で置換することによって、免疫グロブリンのCH1ドメインから生じる突然変異ドメインであり、同種CLドメインが、前記CLドメインの137位のアスパラギン残基をリシン残基で置換し、前記CLドメインの114位のセリン残基をアラニン残基で置換することによって、免疫グロブリンのCLドメインから生じる突然変異ドメインであり、及び/又はAb1若しくはAb2の一方若しくは他方のFab CH1ドメインが、前記CH1ドメインの124位のロイシン残基をグルタミンで置換し、前記CH1ドメインの188位のセリン残基をバリン残基で置換することによって、免疫グロブリンのCH1ドメインから生じる突然変異ドメインであり、同種CLドメインが、前記CLドメインの133位のバリン残基をトレオニン残基で置換し、前記CLドメインの176位のセリン残基をバリン残基で置換することによって、免疫グロブリンのCLドメインから生じる突然変異ドメインである二重特異性抗体が記載される。
本発明の抗体はグリコシル化されていてもよいし、若しくはグリコシル化されていなくてもよく、又は様々なグリコシル化プロファイルを示してもよい。好ましい実施態様では、抗体は、重鎖の可変領域ではグリコシル化されていないが、Fc領域ではグリコシル化されている。
特定の突然変異誘導体は、ヒト化形態の参照抗体を使用し得る。ヒト化アプローチでは、ドナーマウス可変領域由来の相補性決定領域(CDR)及び特定の他のアミノ酸をヒト可変アクセプター領域に移植し、次いで、ヒト定常領域に結合する。例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988);米国特許第5,225,539号を参照のこと。
治療用途:
本発明の二重特異性分子、好ましくは抗体は、医薬として、特にガンの処置において有用である。
本明細書で使用される場合、「ガン」という用語は、任意のガン、特に血液悪性腫瘍、及びCD38又はPD−L1発現又は過剰発現を特徴とする任意の他のガン、特にCD38及びPD−L1の両方の同時発現を特徴とするガンを含む。
ガンの例は、リンパ腫又は白血病、例えば非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)又は多発性骨髄腫(MM)、乳ガン、卵巣ガン、頭頸部ガン、膀胱ガン、メラノーマ、結腸直腸ガン、膵臓ガン、肺ガン、平滑筋腫である。
したがって、本発明の二重特異性分子を、このような処置を必要とする患者に投与することによって、ガンを患っている患者を処置する方法が記載される。したがって、本発明の別の態様は、ガンの処置のための医薬を製造するための、本発明の二重特異性分子の使用である。
本発明の一態様は、本発明の二重特異性分子を含む医薬組成物である。本発明の別の態様は、医薬組成物を製造するための、本発明の二重特異性分子の使用である。本発明のさらなる態様は、本発明の二重特異性分子を含む医薬組成物を製造するための方法である。
別の態様では、本発明は、医薬担体と一緒に製剤化された本明細書で定義される二重特異性分子を含有する組成物、例えば医薬組成物を提供する。
本明細書で使用される場合、「医薬担体」は、生理学的に適合性の任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適切である。
本発明の組成物は、当技術分野で公知の様々な方法によって投与され得る。投与経路及び/又は投与様式は、所望の結果に応じて変動するであろう。
特定の投与経路によって本発明の二重特異性分子又は抗体を投与するために、その不活性化を防止するための材料で本発明の二重特異性分子若しくは抗体をコーティングするか、又はその不活性化を防止するための材料と共に本発明の二重特異性分子若しくは抗体を同時投与することが必要であり得る。例えば、本発明の二重特異性分子又は抗体は、適切な担体、例えばリポソーム又は希釈剤で被験体に投与され得る。薬学的に許容し得る希釈剤としては、生理食塩水及び水性緩衝溶液が挙げられる。医薬担体としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で公知である。
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含有し得る。微生物の存在の防止は、滅菌手順によって、並びに様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることによって保証され得る。塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることも望ましい場合がある。加えて、注射可能な医薬形態の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤を含めることによってもたらされ得る。
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対する毒性を伴わずに、特定の患者、組成物及び投与様式に関する所望の治療応答を達成するために有効な有効成分の量を得るように変更され得る。
選択される投与量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、処置継続期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、処置される患者の年齢、性別、体重、症状、全般的な健康及び過去の病歴、並びに医学分野で周知の同様の要因を含む様々な薬物動態要因に依存するであろう。例えば、本発明の二重特異性分子又は抗体は、投与量 0.2〜20mg/kgで3回/週〜1回/月投与され得る。
このように上記に一般的に記載されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるが、以下の実施例は実例として提供されており、本発明を限定することを意図しない。
実施例1.二重特異性抗体BiXAb-4218、BiXAb-4219及びBiXAb-5104の調製
遺伝子合成
GeneScriptプログラムを使用して哺乳動物発現のためにコドン最適化した後、異なる抗CD38及び抗PDL−1モノクローナル抗体のアミノ酸配列を使用して、DNA配列を設計した。重鎖については、制限酵素消化のための隣接配列と共に、シグナルペプチドと、Fab1の可変領域及び定常CH1ドメインと、それに続いてヒンジリンカーと、Fab2の可変領域及び定常CH1ドメインとをコードするDNAをGeneScriptによって合成した。軽鎖については、シグナルペプチドと、可変及び定常κ領域とをコードするDNAをGeneScriptによって合成した。
PfuTurbo Hot Startを使用したPCR反応を行ってインサートを増幅し、次いで、それぞれ重鎖及び軽鎖についてNotI+ApaI及びNotI+HindIIIによってこれを消化した。ヒトIgG1 CH1+ヒンジ+CH2+CH3ドメインが既に挿入されたNotI+ApaI消化Evitria専用発現ベクターと二重消化重鎖フラグメントをライゲーションした。NotI+HindIII処理Evitria専用ベクターと二重消化軽鎖フラグメントをライゲーションした。二本鎖DNA配列決定によって、プラスミドDNAを検証した。
発現、精製及び特性評価
50mLスケールの発現のために、1.5mLエッペンドルフチューブ中で、Evitria専用ベクター中のプラスミドDNA 合計50μg(重鎖 25μg+軽鎖LC1及びLC2 各12.5μg)を混合し、3mg/mL PEI(pH7.0) 25μLを含有するCHO SFM培地 1mLを追加し、室温で20分間インキュベーションした。125mL振盪フラスコ中で、DNA−PEIの混合物をFreeStyle(商標)CHO−S細胞 49mLに細胞 1〜2×10個/mLでロードした。細胞をさらに6日間振盪した。細胞を3,000rpmで15分間遠心分離することによって、上清を採取した。プロテインA樹脂によって、採取した上清を精製した。Gel Biorad Stain-Free 4-15%ゲル及び対応するランニングバッファーを用いて、還元条件及び非還元条件下で電気泳動を実施した。精製BiXAb(登録商標)抗体を2×SDSサンプルバッファーと合わせ、95℃で5分間加熱することによって、サンプルを調製した。還元サンプルの調製には、加熱前にNuPAGE還元剤を追加することが含まれていた。Ladder Precision Plus Protein Unstained Standards (Biorad)を使用して、見掛けのMWを決定した。図2は、還元条件下におけるCD38/PD−L1抗体のSDS−PAGEパターンを示す。複合重鎖及び2本の共移動軽鎖に対応する2つのバンドが観察され、予想分子量のものである。図3は、非還元条件下におけるCD38/PD−L1抗体のSDS−PAGEパターンを示す。250kDaの主要なバンドは、予想どおり、完全CD38/PD−L1 BiXAb(登録商標)分子に対応する。
二重抗原結合プレートELISAアッセイでは、以下の試薬を使用した:リコンビナントヒトCD38、Fcタグ付(Creative BioMart);ビオチン化ヒトPD−L1、Aviタグ(AcroBiosystems);ストレプトアビジン−HRP(Biotechne RD-Systems)。Maxisorpプレート中で、ヒトCD38−Fc融合タンパク質を100μL/ウェル、2μg/mL、1×PBS pH7.4、4℃で一晩コーティングした。0.05%Tween−20(1×PBST)を含有する1×PBSでプレートを5回洗浄し、次いで、室温で1時間振盪しながら3%脱脂乳/1×PBSTによって200μL/ウェルでブロッキングした。1mg/ml ストック溶液を1/500希釈から開始して1×PBSによって1:3系列希釈したBiXAb(登録商標)4218及びBiXAb(登録商標)4219を1ウェル当たり100μL追加した。プレートを振盪しながら室温で1時間インキュベーションし、続いて、1×PBSTで5回洗浄した。1×PBS中の1μg/mL ビオチン−ヒトPD−L1タンパク質を1ウェル当たり100μL追加し、プレートを室温で1時間振盪した。1×PBSTで5回洗浄した後、1×PBS中の0.1μg/mL ストレプトアビジンコンジュゲートHRPを1ウェル当たり100μL追加した。プレートを室温で1時間振盪し、続いて、1×PBSTで5回洗浄した。発色のために、1×PBS中のTMB基質を1ウェル当たり100μL追加した。Victor IIマルチファンクションプレートリーダーによって、0.1秒/ウェルでデータを405nmで収集した。図4は、2つのCD38/PD−L1 BiXAb(登録商標)の二重抗原結合プロファイルを実証する。このプロファイルは、これらの分子の両タイプの結合ドメイン(抗CD38ドメイン及び抗PD−L1ドメイン)が、それらの同種抗原ターゲットに結合することを裏付けている。
実施例2.本発明の二重特異性抗体BiXAb-6567の調製
遺伝子合成
GeneScriptプログラムを使用して哺乳動物発現のためにコドン最適化した後、抗CD38(ダラツムマブ)及び抗PDL1(アテゾリズマブ)のアミノ酸配列を使用して、DNA配列を設計した。これらの抗体は、「親」抗CD38及び「親」抗PD−L1 mAbと称される。
シグナルペプチド(配列番号:21)、それに続いて配列番号:10の配列[これは、可変領域と、それに続いてFab1(抗CD38)の定常CH1ドメイン(これは、Kabat位置124及び188において、LeuからGlnへの突然変異及びSerからValへの突然変異をそれぞれ導入した)と、それに続いてリンカーと、それに続いて可変領域と、それに続いてFab2(抗PD−L1)の定常CH1ドメイン(これは、Kabat位置192において、ThrからAspへの突然変異を導入した)とからなる]のように、重鎖のDNA構築物を設計した;制限酵素消化のための隣接配列を重鎖DNA構築物の両端に導入した。シグナルペプチド(配列番号:21)、それに続いて可変領域、それに続いて定常κ領域のように、軽鎖のDNA構築物を設計した;抗CD38軽鎖については、定常κドメインのKabat位置143(LeuからGlnへ)及び188(SerからValへ)において、突然変異を導入した。抗PDL1軽鎖については、Kabat位置133(ValからThrへ)及び176(SerからValへ)における突然変異を定常κドメインに導入した。DNA構築物は全て、Gene Artによって合成された。
PfuTurbo Hot Startを使用したPCR反応を行ってインサートを増幅し、次いで、それぞれ重鎖及び軽鎖についてNotI及びApaI並びにNotI及びHindIIIでこれを消化した。ヒトIgG1ヒンジとそれに続いてCH2+CH3ドメインが既に挿入されたNotI及びApaI処理pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen)と二重消化重鎖フラグメントをライゲーションした。NotI及びHindIII処理pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen)と二重消化軽鎖フラグメントをライゲーションした。二本鎖DNA配列決定によって、プラスミドDNAを検証した。
発現及び精製
懸濁液の無血清培地(CHO SFM-II培地、Life Technologies(商標))に適合されたCHO−S細胞において、2:1:1=HC:LC1:LC2の分子比で別個のベクター上でコードされる3つの遺伝子(1本の重鎖(HC)及び2本の軽鎖(LC))をコトランスフェクションすることによる一過性遺伝子発現を用いて、二重特異性抗体BiXAb-6567を生産した。典型的には、50mLスケールの発現のために、1.5mLエッペンドルフチューブ中で、プラスミドDNA 合計50μg(重鎖 25μg、抗CD38軽鎖 12.5μg及び抗PD−L1軽鎖 12.5μg)を混合し、次いで、3mg/mL PEIトランスフェクション試薬pH7.0(Polyplus) 25μLを含有するCHO SFM培地 1mLを追加し、反応物を室温で20分間インキュベーションした。続いて、125mL振盪フラスコ中で、DNA−PEIの混合物をLife Technologies’ Invitrogen FreeStyle(商標)CHO−S細胞 49mLに1〜2×106/mLで追加した。細胞を6日間振盪した。3,000rpmで15分間遠心分離することによって、上清を採取した。ForteBioのプロテインAバイオセンサー(Octet(登録商標)Systems)を使用して、上清中のBiXAb-6567の発現力価を決定した。次いで、プロテインAアフィニティー樹脂(MabSelect SuRe, GE Healthcare Life Sciences)によって、BiXAb-6567を精製した。0.1MグリシンpH3.5を使用してプロテインAから抗体を溶出させ、1Mトリスによって溶出液を中和した。ダルベッコPBS(Lonza)中の精製抗体を滅菌ろ過(0.2μM滅菌フィルタ、Techno Plastic Products AG)し、280nmの光学密度を読み取ることによって(Eppendorf BioSpectrometer(登録商標))、最終濃度を決定した。
BiXAab-6567は、典型的には、一過性CHO発現において良好な発現力価(>180mg/リットル)を示した。この発現レベルは、従来のモノクローナル抗体で見られる発現レベルと同程度である。
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
精製BiXAb-6567の品質を評価するために、本発明者らは、SDS−PAGE(Experion(商標)自動電気泳動システム、BioRad)を実施した。ランニングバッファー中のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在下では、抗体がゲル中で移動する速度はそのサイズに主に依存するので、分子量決定が可能になる。非還元条件下及び還元条件下で、このアッセイを実施した;後者は、ジスルフィド結合の破壊を可能にするので、個々のポリペプチド鎖(軽鎖及び重鎖)の可視化を可能にする。
SDS−PAGEのデータは、図5に示されている。非還元条件下では、抗体の四次構造が維持され、観察される分子量は、異なる重鎖及び軽鎖の分子量の合計を表すはずである。本発明の二重特異性抗体(BiXAb-6567)は、6本の鎖(2本の重鎖及び4本の軽鎖)からなる。翻訳後修飾(PTM)、例えばアスパラギン297におけるFcのN−グリコシル化を考慮しなければ、BiXab-6567の理論分子量は244.40kDaである。既知分子量の標準の混合物を使用して、ゲルを較正した。非還元データは、主なバンドが分子量標準 250kDa(これは、Fcドメインにおける297位の2つのアスパラギンの計算分子量及び予想グリコシル化と一致する)付近にあることを示している。還元条件下では、ジチオスレイトール(DTT)は、ジスルフィド結合を還元して四次構造を破壊することによって、BiXAb-6567をさらに変性させるので、6本のポリペプチド鎖は、それらの分子量に応じてゲル中で別々に移動するはずである。BiXAb-6567の2本の同一の重鎖は、単一のバンドとして共に移動し、2組の軽鎖は、それらの分子量がほぼ同一であるため、第2のバンドとして共に移動した。したがって、データは、分子量標準の移動度に基づいて、約75kDa及び25kDaの2つの主なバンドを示している。各重鎖は、アスパラギン297において1つのN−グリコシル化部位を有していたが、これは、より高分子量のバンドの広がりと、観察された分子量が計算よりもわずかに高いこと(75.44kDa)とを説明している;この幅広さは、グリコシル化タンパク質に典型的である。抗CD38(23.40kDa)及び抗PD−L1(23.36kDa)の軽鎖の計算分子量は非常に類似しているので、その結果、それらは共に移動した。
結論として、BiXAb-6567のSDS−PAGEは、非還元条件下及び還元条件下の両方における予想プロファイルを示しており、重鎖におけるN−グリコシル化部位の存在を考慮すると、理論上の計算分子量と一致していた。
サイズ排除クロマトグラフィー分析
操作されたタンパク質分子では、タンパク質凝集が頻繁に観察される。本発明者らは、分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施して、一段階アフィニティー精製BiXAb-6567調製物の高分子量種含有量をアッセイした(変異体の発現及び精製を参照のこと)。本発明者らは、SEC-s3000 (300× 7.8 mm)カラム(BioSep)及びAktapurifier 10システム(GE Healthcare)を用いた;PBSバッファーpH7.4を使用して、流速 1mL/分でアッセイを行った。
図6に示されているSECクロマトグラムにより、主ピークは、モノマーBiXAb-6567の予想サイズに対応することが実証された;このピークは、全サンプルの98.2%を占めていた。加えて、より高分子量の種(おそらくは、ダイマー)に対応する小さなピークが観察された;このピークは、全サンプルの1.8%を占めていた。したがって、本発明者らは、より高分子量の種の含有率がわずかであり、CHO発現系において産生される従来のモノクローナル抗体と同様であると結論付けた。モノマーピークの狭い対称形状により、BiXAb-6567は正しくアセンブルされ、単一の種によって占められていたことが示唆された。
実施例3.示差走査熱量測定によるBiXAb-6567の特性評価
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、BiXAb-6567、親抗CD38 mAb及び親抗PD−L1 mAbの熱安定性を比較した。MicrocalTM VP-Capillary DSCシステム(Malvern Instruments)を使用して、示差走査熱量測定実験を実施した。
全てのサンプルを遠心分離(20,000×g、5分間、4℃)し、IgG分析プログラムを用いたNanodrop ND-1000分光光度計(Thermo Scientific)を使用したDSC分析の前に、それらのタンパク質含有量を定量した。アッセイのために、全てのサンプルをPBSで最終濃度 1mg/mLに希釈した。
予備平衡時間は3分間であり、得られたサーモグラムは、走査速度 60℃/時、ろ過時間 25秒間及びメディウムフィードバックにおいて20〜110℃で取得されたものであった。サンプル分析の前に、5回のバッファー/バッファースキャンを測定して機器を安定化し、各タンパク質/バッファースキャンの間にバッファー/バッファースキャンを実施した。データを非二状態アンフォールディングモデルにフィッティングし、ベースラインを差し引くことによって遷移前及び遷移後を調整した。
(50〜100℃の範囲をカバーする)図7に示されているDSC曲線により、個々のFv領域が異なるFabアンフォールディングプロファイルにつながり得る方法が実証された;また、この実験により、Fv領域がFabの見掛けの安定性を決定することが実証された。抗CD38 mAbのDSCプロファイルは、2つの遷移(170Kcal/モル/℃のCp max及び70.9℃のTm1を有する大きなピーク(これは、CH2及びFabドメインの両方のアンフォールディングに対応する)、並びに20Kcal/モル/℃のCp max及び81.5℃のTm2を有する小さなピーク(これは、CH3ドメインのアンフォールディングに対応する))を示した。抗PD−L1 mAbのDSCプロファイルは、2つの遷移(20Kcal/モル/℃のCp max及び69.9℃のTm1を有する小さなピーク(これは、CH2ドメインのアンフォールディングに対応する)、並びに160Kcal/モル/℃のCp max及び83.4℃のTm2を有する大きなピーク(これは、CH3ドメイン及びFabドメインの両方のアンフォールディングに対応する))を示した。
BiXAb-6567のDSCプロファイルもまた、2つの大きなピークを有する2つの遷移を示した。第1のピークは、130Kcal/モル/℃のCp max及び71.5℃のTm1を有しており、抗CD38 mAbのCH2及びFabドメインのアンフォールディングに対応していた;第2のピークは、170Kcal/モル/℃のCp max及び81.5℃のTm2を有しており、抗PD−L1 mAbのCH3及びFabドメインのアンフォールディングに対応していた。したがって、BiXAb-6567のDSCプロファイルは、2つの親mAbの2つのDSCプロファイルを重ね合わせたものに似ており、BiXAb-6567の優れたアセンブリ及び安定性を示した。BiXAb-6567のTonset(63.3℃)は、親mAbのもの(抗CD38のTonset=63.5℃及び抗PD−L1のTonset=63.2℃)と同様であったが、これは、BiXAb-6567が、親抗体のものと同様の安定特性を有していたことを示している。BiXAb-6567の計算ΔHは1560kcal/モルであったが、これは、二重特異性分子のサイズが、2つの親抗体(抗CD38 ΔH=963kcal/モル及び抗PD−L1 ΔH=820kcal/モル)と比べて大きいことを反映している。
定義:
Tm又は変性/融解温度は、アンフォールディング種及びフォールディング種の濃度が等しい点であり、アンフォールディング遷移の中間点である。パラメータとして、それは、熱変性に対するタンパク質の感受性を表すので、それは、タンパク質の安定性に関連する。Tmが高いほど、タンパク質はより安定である。
Tonsetは、アンフォールディング遷移が開始する温度である。このパラメータの値は、通常、Tmよりも5〜10℃低い。それはまた、タンパク質の安定性を表すパラメータであるが、熱変性に対する耐性に関連する。
ΔHは、アンフォールディングの熱量測定エンタルピーであり、タンパク質中の分子内相互作用の破壊(すなわち、ドメイン内及びドメイン間相互作用の破壊)を反映する。熱アンフォールディングプロセスは吸熱性であるので、正のエンタルピー値が生じる。熱量測定エンタルピー(ΔH)は、熱アンフォールディング遷移ピーク下面積である。
実施例.4BiXAb-6567の無細胞結合特性
直接CD38抗原結合プレートELISAアッセイ
PBS pH7.4による希釈によって調製した濃度 各3μg/mLの親mAb抗CD38又は抗PDL1 100μlを使用して、Maxisorpプレートを4℃で一晩コーティングした。また、PBS pH7.4による希釈によって調製した濃度 5μg/mLのBiXAb-6567を使用して、Maxisorpプレートを4℃で一晩コーティングした。0.05%Tween−20(PBST)を含有する1×PBSでプレートを5回洗浄し、次いで、1ウェル当たり1×PBS中1%BSA 200μLによって室温で2時間ブロッキングした。続いて、1×PBSTでプレートを5回洗浄した。1μg/mLから開始して、7点3倍希釈系列の1×PBS中His/Flagタグ付リコンビナントCD38(Creative Biomart)を調製した;各希釈段階を1アッセイウェル当たり100μL追加した。プレートを室温で1時間インキュベーションし、1×PBSTで5回洗浄した。1×PBSで10,000倍希釈した抗Flagタグ抗体コンジュゲートHRP(Abcam)を1ウェル当たり100μL追加し、プレートを室温で1時間インキュベーションした。1×PBSTで5回洗浄した後、比色読み取りのために1×PBS中TMB基質を1ウェル当たり100μL追加し、発色のためにプレートを室温で15分間インキュベーションした。Victor2マイクロプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて、アッセイデータを650nmで収集した。
BiXAb-6567は、親抗CD38抗体のものと非常に類似の用量依存的結合曲線を示した(図8A)。両抗体のCD38結合のEC50は、以下のとおりであった:EC50[BiXAb-6567]=171ng/mL及びEC50[抗CD38]=199ng/mL。この結果により、BiXAb-6567は、親抗CD38 mAbのものと同様の結合を示したので、正しくアセンブルされた抗CD38 Fabドメインを有していたことが示唆された。ネガティブコントロールとして使用した親抗PDL1 mAbは、予想どおり、いかなる結合も示さなかった。
直接PDL1抗原結合プレートELISAアッセイ。
1×PBS pH7.4による希釈によって調製した濃度 1μg/mLのビオチン化ヒトPD−L1タンパク質(AcroBiosystems)100μLを使用して、Maxisorpプレートを4℃で一晩コーティングした。PBSTでプレートを5回洗浄し、次いで、1ウェル当たり1×PBS中1%BSA 200μLによって室温で2時間ブロッキングした。その後、1×PBSTでプレートを5回洗浄した。7点3倍希釈系列の1×PBS中抗CD38 mAb(0.3mg/mLから開始)又は抗PD−L1 mAb(0.3mg/mLから開始)又はBiXAb-6567(0.5mg/mLから開始)を調製した;各希釈段階を1アッセイウェル当たり100μL追加した。プレートを室温で1時間インキュベーションし、1×PBSTで5回洗浄した。1×PBSで5,000倍希釈した抗ヒト抗体(IgG H&L)コンジュゲートHRP(Abliance)を1ウェル当たり100μL追加し、プレートを室温で1時間インキュベーションした。1×PBSTで5回洗浄した後、比色読み取りのために1×PBS中TMB基質を1ウェル当たり100μL追加し、発色のためにプレートを室温で15分間インキュベーションした。Victor2マイクロプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて、アッセイデータを650nmで収集した。
BiXAb-6567は、親抗PD−L1抗体のものと非常に類似の用量依存的結合曲線を示した(図8B)。両抗体のPD−L1結合のEC50は、以下のとおりであった:EC50[BiXAb-6567]=93ng/mL及びEC50[抗PD−L1]=72ng/mL。この結果により、BiXAb-6567は、親抗PD−L1 mAbのものと同様の結合を示したので、正しくアセンブルされた抗PD−L1 Fabドメインを有していたことが示唆された。ネガティブコントロールとして使用した親抗CD38 mAbは、予想どおり、いかなる結合も示さなかった。
二重抗原結合ELISAアッセイ
1×PBS pH7.4による希釈によって調製した2μg/mLのリコンビナントヒトFcタグ付CD38(Creative BioMart)100μLを使用して、Maxisorpプレートを4℃で一晩コーティングした。1×PBSTでプレートを5回洗浄し、次いで、1ウェル当たり1×PBS中1%BSA 200μLによって室温で2時間ブロッキングした。1×PBSTでプレートを5回洗浄した。7点3倍希釈系列の1×PBS中BiXAb-6567(1μg/mLから開始)を調製し、各希釈段階を1アッセイウェル当たり100μL追加した。プレートを室温で1時間インキュベーションし、続いて、1×PBSTで5回洗浄した。1×PBS中1μg/mL ビオチン化ヒトPD−L1(AcroBiosystems)を1ウェル当たり100μL追加し、プレートを室温で1時間インキュベーションした。1×PBSTで5回洗浄した後、1×PBSによる希釈によって調製した0.1μg/mL ストレプトアビジンコンジュゲートHRP(Biotechne)を1ウェル当たり100μL追加した。プレートを室温で1時間インキュベーションした。1×PBSTで5回洗浄した後、比色読み取りのために100μL/ウェルの1×PBS中TMB基質を追加し、発色のためにプレートを室温で15分間インキュベーションした。Victor2マイクロプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて、アッセイデータを650nmで収集した。
BiXAb-6567は、二重ELISAフォーマットにおいて用量依存的結合曲線を示したが、これは、それが、正しくアセンブルされた抗CD38及び抗PD−L1 Fabドメインを有していたことを示唆している(図8C)。これにより、BiXAb-6567は、EC50=144ng/mLでCD38及びPD−L1に同時結合することができる二重特異性抗体であることが実証された。2つの親mAb抗CD38及び抗PDL1はいずれも、予想どおり、この二重ELISAフォーマットにおいていかなる結合も示さなかった。
実施例5.蛍光活性化細胞選別(FACS)による相対結合活性の決定
100μg/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、10%ウシ胎児血清及び500μg/ml ジェネテシンを補充したDMEM−Glutamax−I培地中で、CHO−CD38細胞(全長ヒトCD38で安定トランスフェクションしたCHO細胞)を培養した。100μg/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン及び10%ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640−Glutamax−I培地中で、SKOV−3細胞及びRPMI−8226細胞を培養した。
各サンプル当たり細胞(CHO−CD38又はSKOV−3又はRPMI−8226)3×105個を使用した。PBA溶液(1%BSA及び0.05%Na−アジドを補充したPBS)で細胞を1回洗浄した。FACSプロファイルの決定のために、容量 30μl中濃度 50μg/mlの各抗体で細胞を染色した。BiXAb-6567及び親抗CD38抗体の力価測定並びにその後の結合パラメータの決定のために、容量 30μl中の示されている濃度の各抗体でCHO−CD38細胞を染色した。氷上で細胞を30分間インキュベーションし、次いで、PBA溶液 1mlで2回洗浄した。暗所の氷上で、細胞を蛍光標識抗ヒトκ又は抗ヒトIgG Fcγ特異的二次抗体と共に30分間インキュベーションし、次いで、PBA溶液 1mlで2回洗浄した;最後に、細胞をPBA溶液 最終容量500μlに再懸濁した。Epics-XL又はNaviosフローサイトメーター(Beckman Coulter)のいずれかを使用して、サンプルをアッセイした。各実験において、10.000個の事象が得られた。
BiXAb-6567並びに親抗CD38及び抗PD−L1親抗体の結合プロファイルは、図9A〜Cに示されている。本発明者らは、高レベルのCD38及び無視可能なレベルのPD−L1を発現する多発性骨髄腫細胞株RPMI−8226(図9A);安定トランスフェクションした全長CD38により、非常に高レベルのCD38を発現するCHO−CD38細胞株(図9B);並びにPD−L1を発現することが公知の卵巣ガン細胞株SKOV−3(図9C)を試験することを選択した。3つの細胞株において、これらのプロファイルは、BiXAb-6567について単一のピークを示し、これは、両親抗体のプロファイルと非常に類似していた。これにより、BiXAb-6567は正しくフォールディングされており、親抗体のものと同様の結合特性を有することが示唆された。予想どおり、CHO−CD38は、PD−L1を発現せずにCD38のみを発現したのに対して、SKOV−3は、CD38を発現せずにPD−L1のみを発現した。
BiXAb-6567の結合特性が親抗CD38抗体のものと同様であることを定量的に確認するために、図10に示されているように、CHO−CD38細胞を用いて、BiXAb-6567及び抗CD38親抗体の力価測定を実施した。BiXAb-6567のEC50は17.1nMであると決定され、親抗CD38のものは8.5nMであったが、これは、BiXAb-6567及び親抗CD38抗体における抗CD38 Fabドメインの結合特性が同様であることを裏付けている。この実験におけるネガティブコントロール抗PD−L1及び抗CD20抗体は、予想どおり、CHO−CD38細胞に対する結合を示さなかった。
実施例6.非分画非プレ活性化単核細胞(MNC)を用いた抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)
上記実施例5に記載されているように、CHO−CD38、SKOV−3及びRPMI−8226細胞を培養した。
MNCの調製では、以下の手順を用いた。新たに採血した末梢血をクエン酸塩で抗凝固処理した。続いて、抗凝固処理全血 6mlでFicoll-Paque PLUS溶液 5mlを層化した。その後に遠心分離破砕を伴わずに、サンプルを2,500rpm、室温で20分間遠心分離した。血漿/Ficoll界面からMNCを収集した。PBSでMNC細胞懸濁液を1:10希釈し、1,800rpm、室温で5分間遠心分離した。上清を除去し、氷冷蒸留水 45mlを細胞懸濁液に30秒間かけて追加することによって赤血球を溶解し、その後、10×PBS 5mlを追加した。細胞を1800rpm、室温で5分間遠心分離し、1×PBSで3回洗浄して、血小板を除去した。最後に、細胞を細胞培養培地 5mlに再懸濁した。ADCCアッセイにおいて40:1=エフェクター細胞:腫瘍細胞比を達成するように、細胞数を調整した。
ADCC51クロム放出アッセイでは、ターゲット細胞(RPMI8226、SKOV−3又はCHO−CD38)1×10個をPBS 200μl中の51クロム 100μCiと共に37℃及び5%CO2で2時間インキュベーションした。2時間のインキュベーション後、培地 7mlで細胞を3回洗浄し、最後に、細胞 0.1×106個/mlの濃度で再懸濁した。96ウェルマイクロタイタープレート(アッセイ容量 200μl)中で、抗体の存在下におけるターゲット細胞(細胞 5,000個/ウェル)及びMNCを37℃及び5%CO2で3時間インキュベーションした。最大ターゲット細胞溶解(=最大cpm)の決定のために、TritonX−100を追加した。基本51クロム放出(=基本cpm)を決定するために、ターゲット細胞をさらに操作しなかった。4時間のインキュベーション後、マイクロタイタープレートを2000rpmで5分間遠心分離し、上清 25μlをOptiphase Supermix (Perkin Elmer) 125μlと混合し、振盪インキュベーター中で1分間インキュベーションした。MicroBeta TriLux (Perkin Elmer)ベータカウンター機器で、サンプルをアッセイした。以下の式:
%溶解=(実験cpm−基本cpm)/(最大cpm−基本cpm)×100
を使用して、ターゲット細胞溶解を計算した。
全ての測定を3回反復で実施した。
エフェクター細胞として非プレ活性化MNCを用いて、CD38+細胞(RPMI−8226及びCHO−CD38)のADCCアッセイを実施した(図11及び12)。アッセイにより、RPMI−8226細胞に対するBiXAb-6567及び抗CD38抗体の細胞傷害性は強力であり、EC50はそれぞれ0.8nM及び0.3nMであることが示された;CHO−CD38細胞に対しては、BiXAb-6567及び抗CD38抗体の細胞傷害性は、それぞれ0.2nM及び0.07nMのEC50を有していた。抗PD−L1は、両細胞株に対して最小活性を示した;2つのネガティブコントロールmAb抗CD20及び抗HER2は、予想どおり、いかなる溶解も促進しなかった。これらの結果は、CD38+細胞に対するBMX−6567のADCC活性が強力であり、親抗CD38抗体のものと同様であることを実証している。
実施例7.濃縮プレ活性化NK細胞を用いたADCC
実施例5に記載されているように、SKOV3細胞、RPMI8226及びCHO−CD38細胞を培養した。実施例6に記載されているように、MNCを調製した。製造業者の説明書にしたがって、“NK cell isolation kit, human” (Miltenyi)を用いて陰性選択によって、MNCからNK細胞を単離した。10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI培地中で、NK細胞を細胞 2×10個/mlの播種密度で一晩培養した。IL−12又はIL−15を最終濃度 10ng/mlまで追加した。エフェクター細胞:腫瘍細胞比を10:1に維持し、反応時間を3時間に短縮した以外は実施例5に概説されているように、ADCCアッセイを実施した。
IL−12又はIL−15プレ活性化濃縮NK細胞のいずれかを用いて、PD−L1+細胞株SKOV−3において、BiXAb-6567の抗PD−L1部分のADCC特性をアッセイした。結果は、図13及び14に示されている。この実験では、BiXAb-6567のADCC特性と親抗PD−L1抗体のものとを比較した;SKOV−3細胞は、PD−L1+/HER2+/CD20−/CD38−であるので、ポジティブコントロールとして抗HER2抗体を用い、ネガティブコントロールとして抗CD20抗体及び親抗CD38抗体を用いた。図13及び14は、NK細胞の培養においてIL−12又はIL−15を用いたかにかかわらず、BiXAb-6567及び親抗PD−L1抗体のADCC活性が強力であることを実証している。IL−12を使用した場合、BiXAb-6567及び親抗PD−L1抗体のEC50は、それぞれ0.007nM及び0.03nMであった。IL−15を用いた場合、プロファイルはさらに類似していた;しかしながら、曲線適合は収束しなかったので、EC50値の計算が妨げられた。これらの結果は、PD−L1+細胞に対するBMX−6567のADCC活性が強力であり、親PD−L1抗体のものと同様である。ことを実証している。

Claims (16)

  1. 少なくとも1つの抗CD38ドメイン及び少なくとも1つの抗PD−L1ドメインを含む二重特異性分子であって、それぞれCD38及びPD−L1抗原に同時結合することができる、二重特異性分子。
  2. 抗体又はそのフラグメントである、請求項1に記載の二重特異性分子。
  3. 2本の重鎖及び4本の軽鎖を含む全長抗体であり、
    各重鎖が、
    a.ヒンジ−CH2−CH3ドメインを含むFc領域
    を含み、
    b.このFc領域が、抗体1(Ab1)のFab重鎖(CH1−VH)に連結されており、
    c.そしてこれが、ヒンジ由来ポリペプチドリンカー配列によって、抗体2(Ab2)のFab重鎖(CH1−VH)に連結されており、前記ポリペプチドリンカー配列が、Ab1の前記Fab重鎖VHドメインのN末端と、Ab2の前記CH1ドメインのC末端とを連結し、
    4本の軽鎖が、それらの同種重鎖ドメインと会合したAb1のFab軽鎖(CL−VL)及びAb2のFab軽鎖(CL−VL)を含み;
    Ab1及びAb2が異なるものであり、抗CD38抗体及び抗PD−L1抗体からなる群より選択される、請求項2に記載の二重特異性分子。
  4. Ab1が抗CD38抗体であり、Ab2が抗PD−L1抗体である、請求項3に記載の二重特異性分子。
  5. Ab1が抗PD−L1抗体であり、Ab2が抗CD38抗体である、請求項3に記載の二重特異性分子。
  6. 抗CD38抗体が、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR−202又はそれらの突然変異誘導体からなる群より選択される、請求項3〜5のいずれかに記載の二重特異性分子。
  7. 抗PD−L1抗体が、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、MDX−1105又はそれらの突然変異誘導体からなる群より選択される、請求項3〜6のいずれかに記載の二重特異性分子。
  8. Ab1のCH1及びCLドメインが、Ab2のCH1及びCLドメインと異なる配列を有する、請求項3〜7のいずれかに記載の二重特異性分子。
  9. Ab1若しくはAb2の一方のFab CH1ドメインが、前記CH1ドメインの192位のトレオニン残基をアスパラギン酸で置換することによって、免疫グロブリンのCH1ドメインから生じる突然変異ドメインであり、同種CLドメインが、前記CLドメインの137位のアスパラギン残基をリシン残基で置換し、前記CLドメインの114位のセリン残基をアラニン残基で置換することによって、免疫グロブリンのCLドメインから生じる突然変異ドメインであり、及び/又はAb1若しくはAb2の一方若しくは他方のFab CH1ドメインが、前記CH1ドメインの124位のロイシン残基をグルタミンで置換し、前記CH1ドメインの188位のセリン残基をバリン残基で置換することによって、免疫グロブリンのCH1ドメインから生じる突然変異ドメインであり、同種CLドメインが、前記CLドメインの133位のバリン残基をトレオニン残基で置換し、前記CLドメインの176位のセリン残基をバリン残基で置換することによって、免疫グロブリンのCLドメインから生じる突然変異ドメインである、請求項3〜7のいずれかに記載の二重特異性分子。
  10. a)2本の重鎖であって、それぞれが配列番号:10を含み、好ましくは配列番号:10からなる2本の重鎖と、b)4本の軽鎖であって、2本が配列番号:11を含み、好ましくは配列番号:11からなり、他の2本が配列番号:12を含み、好ましくは配列番号:12からなる4本の軽鎖とを含み、好ましくはそれらからなる、請求項1〜9のいずれかに記載の二重特異性分子。
  11. 請求項1〜10のいずれかで定義される二重特異性分子の重鎖を含み、好ましくはそれからなる、ポリペプチド。
  12. 請求項11に記載のポリペプチドをコードする配列を含む、ポリヌクレオチド。
  13. 請求項12に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクションされた、宿主細胞。
  14. 請求項1〜10のいずれかに記載の二重特異性分子を生産するための方法であって、以下の工程:
    a.適切な培地中及び培養条件で、請求項1〜10のいずれかで定義される抗体重鎖及び請求項1〜10のいずれかで定義される抗体軽鎖を発現する宿主細胞を培養すること、並びに
    b.培養培地から、又は前記培養細胞から前記産生抗体を回収すること
    を含む、方法。
  15. 医薬として使用するための、請求項1〜10のいずれかに記載の二重特異性分子。
  16. ガン、好ましくは多発性骨髄腫、リンパ腫又は白血病の処置において使用するための、請求項1〜10のいずれかに記載の二重特異性分子。
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