JP2019514442A - 凍結防止培地及び再結晶防止方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、非極低温凍結温度で細胞を保存するための培地に関する。この培地は、親水性かつ非毒性のポリマー又は他の巨大分子、水性液体、及び凍結防止剤を含む。巨大分子の分子は、水性液体に溶解されたときに、形状が球形であるコンパクトな三次元構造を形成する。本発明の培地は、非低温での細胞の長期貯蔵に使用することができ、低温度で貯蔵した場合と同様の結果を得ることができる。

Description

関連出願への相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2016年5月13日に出願された米国仮出願第62/36,142号に基づく優先権を主張する。
1.発明の分野
本発明は、低温生物学及び凍結保存の分野に関する。
2.関連技術の記載
細胞膜を透過する凍結防止剤を含有する一般的に使用される凍結防止培地は、非低温(例えば−80℃)で凍結されると熱的に不安定であるため、細胞ストックの現在の長期間の貯蔵には液体窒素(LN)の使用が日常的に必要である。それにより、氷の再結晶化をもたらし、大部分の実験室のディープリーザーによって提供される貯蔵条件下で経時的に細胞生存性の漸進的喪失を引き起こす。細胞貯蔵のためのLNへの依存は、操作上の費用を大幅に増加させ、作業効率及び安全性の障害に関する多くの問題を引き起こす。
凍結保存には、平衡(低速凍結)及び非平衡(ガラス化)冷却手順の2つの一般的なアプローチが広く使用されている。ガラス化方法及びその「低速ガラス化」変形体は、浸透性凍結保護物質の高濃度(典型的には40〜50%v/v)の使用による細胞の浸透圧による損傷及び毒性をもたらすだけでなく、例えば、1気圧(−196℃)又はLN蒸気(典型的には−120℃)におけるLNの飽和温度などの低温温度で、細胞内溶液と細胞外溶液の両方のガラス化を達成及び維持するために、LN又は他の低温液体の供給が必要である。低速の凍結アプローチについて、細胞は、最初に、比較的に低い濃度(典型的には10%v/v)の凍結防止剤を負荷し、次いで、例えば、ディープリーザー中で−80℃など中間の非低温までゆっくりと冷却される。冷却中、氷沈殿は、溶質濃度を徐々に増加させ、そのため、中間温度に達した後、細胞を含む残留溶液は高濃度で粘性の液体状態になる。このような部分的に凍結された系の細胞外氷は不安定であり、冷却中に形成された小さな氷晶は自然に融合し始めて、大きな結晶を形成し、表面エネルギーを最小限に抑え、試料全体に徐々に分布するようになる。このような現象、いわゆる再結晶化は、出現する大きな結晶に接触する細胞に重度の機械的損傷を引き起こすか、又は致死的な細胞内氷の形成を引き起こす。この細胞の損傷過程は非常に遅い(通常、数時間ではなく数週間で起こる)が、−80℃という低温でさえ進行性である。多数の出版物、科学的研究論文又は凍結防止培地製品マニュアルで実証された−80℃のディープフリーザーでの現在の貯蔵は、一時的又は短期間の使用目的にのみ適している。したがって、細胞を−80℃でゆっくりと凍結させた後に、細胞を長期貯蔵するためには、試料を低温に冷却する2ステップが必要であった。
不凍液タンパク質及びある種の小分子は、熱ヒステリシスを誘導することによって氷の再結晶を消滅させることができるが、このプロセスは氷の融点直下の温度範囲でしか起こらず、低温では効果がない。
液体窒素中での貯蔵後の溶液粘度の増加又は細胞膜の安定性の改善により、解凍後の細胞生存率及び機能性を改善するための様々なポリマー及び関連方法が開発されている。しかしながら、現在、これらのポリマー及び方法を使用することにより、研究及び生物医学的用途の両方において、−80℃での長期保存後に非常に価値のある多くの細胞型の低い生存率に有意な改善はなかった。凍結保存のためのこれらの広く使用されているポリマーの応用、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)などは非低温での凍結防止剤溶液の再結晶の防止には不十分である。
本発明は、水性液体に溶解されたときに球形のコンパクトな三次元構造を形成する巨大分子を含む非極低温凍結温度で細胞を保存するための培地に関する。本発明はまた、本発明の培地、及び培地中に懸濁させた細胞を含む培地−細胞懸濁液に関する。本発明はさらに、細胞を保存するために本発明の培地を使用する方法に関する。非極低温凍結温度では、コンパクトで球形の構造が細胞と共に培地の凍結していない部分に濃縮されており、この密集効果は非低温で貯蔵中の氷の再結晶化を防止する。
本発明の特定の態様において、培地は、親水性かつ非毒性の巨大分子、水性液体、及び凍結防止剤を含む。巨大分子は、培地中の濃度が約20%(w/v)、約25%(w/v)以上、約35%(w/v)以上、又は約50%(w/v)以上であり得る。
本発明の特定の態様において、凍結防止剤は、培地中の巨大分子濃度の約20%以上、培地中の巨大分子濃度の約50%以上、培地中の巨大分子濃度の約75%以上、培地中の巨大分子濃度の約100%以上の濃度である。
本発明の特定の態様において、巨大分子はポリマーである。ポリマーは、水性液体に溶解されたときにほぼ球形のコンパクトな三次元構造を形成する分子を含むことができる。このような実施形態において、ポリマーは、球状親水性多糖類、重合シクロデキストリン又は糖類、球形タンパク質又は球状タンパク質、球状タンパク質にオリゴ糖鎖を結合させることによって形成される球状糖タンパク質、球状タンパク質の他の誘導体又はそれらの組み合わせからなる群から選択され得るポリマーは、親水性多糖類であってもよく、ショ糖とエピクロロヒドリンとの共重合によって形成されてもよい。
本発明の特定の態様では、凍結防止剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロパンジオール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明の特定の態様において、水性液体は、細胞培養培地、栄養培地、生理食塩水及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。水性液体は、血清、FBS(ウシ胎仔血清)、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピエラジンエタンスルホン酸)、FHM(フラッシング保持培地)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、DPBS(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)、RPMI(ロズウェルパークメモリアルインスティテュート培地)、BF5培地、EX−CELL培地、Lysogeny broth(LB)培地、CaCl水溶液、NaCl水溶液、KCl水溶液及びそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明の特定の態様では、浮遊細胞は真核細胞である。真核細胞は哺乳動物細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、マウス細胞、ブタ細胞、ヒト細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。哺乳動物細胞は、幹細胞、体細胞、再生細胞及びそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。本発明の他の態様において、懸濁細胞は原核細胞である。
本発明の特定の態様において、コンパクトなほぼ球形の構造は、それらの最も広い寸法が約100nm(ナノメートル)以下であり、それらの最も広い寸法が約1〜50nmの範囲の構造を含むか、又はそれらの最も広い寸法が約5nm〜10nmの範囲である構造を含む。
本発明の特定の態様において、培地は、血清、動物タンパク質又はヒトタンパク質を実質的に含まない。
本発明の特定の態様は、非極低温凍結温度で細胞を保存する方法に関し、親水性かつ非毒性の巨大分子、凍結防止剤、及び水性液体を含む凍結防止培地を提供することを含む。特定の実施形態において、巨大分子は、10%(w/v)を超える培地中の濃度であり、巨大分子は、水性液体に溶解された場合、非常にコンパクトなほぼ球状の構造を形成する。細胞を培地に添加して、培地−細胞懸濁液を形成する。培地−細胞懸濁液は、非極低温凍結温度に冷却され、非極低温凍結温度は約−85℃以上である。培地−細胞懸濁液は、非極低温凍結温度又はそれに近い温度、又は異なる非極低温凍結温度で、3週間以上の時間維持され、細胞の解凍後の細胞生存率が維持され、同じ期間、液体窒素中の細胞の貯蔵について得られるのと等しいか又はほぼ同じである。この方法の特定の態様において、巨大分子はポリマーである。
この方法の特定の態様では、凍結防止培地中のポリマー又は他の巨大分子の濃度は、水性液体中の10%からポリマーの溶解度までの範囲、又は20%〜50%の範囲である。
この方法の特定の態様において、培地に添加される細胞は、細胞の第1の懸濁液中にあり、凍結防止培地と細胞の第1の懸濁液の体積比は10:1〜1:5であり、又は3:2〜1:5である。
本発明の特定の態様において、培地−細胞懸濁液は、約3週間の期間貯蔵され、その期間は少なくとも1年まで延長され、細胞の解凍後の細胞生存率が維持され、そのような期間、液体窒素中の細胞の貯蔵について得られるのと等しいか又はほぼ等しい。特定の実施形態では、期間は1年以上、5年以上、又は10年以上である。
特定の実施形態では、解凍後の細胞生存率は、同じ期間における液体窒素中の細胞の保存について得られたものの約70%以上である。
特定の実施形態において、非低温温度は、−100℃〜−20℃の範囲であり、−85℃〜−65℃の範囲であり、又は−80℃〜−75℃の範囲である。
特定の実施形態において、培地−細胞懸濁液は、約0.01℃/分〜1000℃/分の速度、約0.1〜10℃/分の速度、又は約0.5〜1℃/分の速度で冷却される。
ある実施形態では、冷却ステップの後、培地−細胞懸濁液は部分的に凍結され、巨大分子は、培地−細胞懸濁液の未凍結部分において少なくとも25%(w/v)の濃度であるか、又は少なくとも40%(w/v)の濃度で存在する。
本発明のさらなる態様は、それに付随する利点及び新規な特徴とともに、以下の説明に部分的に記載され、以下を検討すると当業者には部分的に明らかになるか、又は学ぶことができる本発明の実施からのものである。本発明の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された手段及び組み合わせによって実現及び達成され得る。
図1Aは、−80℃でのフィコール−DMSO−水系の巨大分子密集挙動の分子動力学的実証、及び成長する氷核とのそれらの相互作用を記述する。 図1Bは、−80℃での均一に分布したショ糖−DMSO−水系の分子動力学的実証、及び成長する氷核とのそれらの相互作用を記述する。 図1Cは、−80℃で均一に分布したDMSO−水系の分子動力学的実証、及び成長する氷核とのそれらの相互作用を記述する。 図2は、図1に示す成長中の氷核を有する3つの系の水原子位置の二乗平均平方根(RMS)距離の値を分子動力学シミュレーション結果で示している。上段の曲線はDMSO−水を示し;中段の曲線はショ糖−DMSO−水を示し;下段の曲線はフィコール−DMSO−水を示す。 図3Aは、正常な凍結凍結保存溶液の破砕試料のSEM観察を示す。 図3Bは、本発明の培地の破砕試料のSEM観察を示す。 図4は、(A)凍結された正常凍結保存溶液、及び(B)−80℃での5週間の貯蓄後の本発明の培地の光学観察を示す。 図5は、(A)FBSベースの培地、又は(B)無血清DMEM/F12ベースの培地中のフィコール70の培地−細胞懸濁液中の、異なる混合後の濃度(すなわち、濃度値は、本発明の培地の実施形態を細胞懸濁液と混合した後に計算される)で凍結保存されたナイーブ型O2KブタiPSCの細胞回収の評価を示す。 図6は、延長された貯蔵期間中の(A)ナイーブ型O2KブタiPSC、(B)胚盤胞型ID6ブタiPSC、(C)胚盤胞型ヒトiPSC、及び(D)胚盤葉型H1 hESCからのコロニーの解凍後の回復を示す。各貯蔵期間について:左のバー:液体窒素中に貯蔵された細胞。中央のバー:本発明の培地を使用せずに−80℃の冷凍庫に保存された細胞。右のバー:本発明の培地を用いて−80℃の冷凍庫に保存された細胞。 図7は、異なる方法による胚盤葉型幹細胞の解離を示す。 図8Aは、ROCKiの助けを借りてトリプシンによる単一細胞解離後、H1 hESCに対して実施された4つの異なる凍結保存プロトコールの有効性の比較を示す。左のバーは、液体窒素中に貯蔵された細胞である。各貯蔵期間について:中央の左のバーは、液体窒素中で本発明の培地を用いて凍結保存するためのものであり、−80℃と液体窒素貯蔵の両方について、又はその間の任意の温度に適していることを示している。右の中央のバーは、本発明の培地を使用せずに−80℃の冷凍庫に保存された細胞である。右のバーは、本発明の培地を用いて−80℃の冷凍庫に保存された細胞である。 図8Bは、ROCKiの助けを借りてトリプシンによる単一細胞解離後、H1 hESCに対して実施された4つの異なる凍結保存プロトコールの有効性の比較を示す。左のバーは、液体窒素中に貯蔵された細胞である。各貯蔵期間について:中央の左のバーは、液体窒素中で本発明の培地を用いて凍結保存するためのものであり、−80℃と液体窒素貯蔵の両方について、又はその間の任意の温度に適していることを示している。右の中央のバーは、本発明の培地を使用せずに−80℃の冷凍庫に保存された細胞である。右のバーは、本発明の培地を用いて−80℃の冷凍庫に保存された細胞である。 図9は、−80℃での本発明の培地を用いて、凍結保存から回復した後の、上記すべての4つの幹細胞型(図6と同じ順序)の多分化能に特徴的なバイオマーカーの発現を示す。 図10は、2週間の凍結保存後に大きな塊(約100個の細胞)に分断されたID6ブタのiPSCコロニーの形態を示す。
本発明は、非極低温凍結温度で細胞を保存するための培地に関する。この培地は、親水性かつ非毒性のポリマー又は他の巨大分子、水性液体、及び凍結防止剤を含む。ポリマー又は他の巨大分子の分子は、水性液体に溶解されたときに、形状が球形であるコンパクトな三次元構造を形成する。
実施例においてより詳細に記載されるように、驚くべきことに、細胞が本発明の培地中に懸濁される場合、得られる混合物(本明細書では培地−細胞懸濁液とも称される)は、予期せず長期間、非極低温凍結温度で保存することができ、極低温凍結温度で液体窒素による貯蔵で得られた結果と同様の結果をもたらすことを見出した。これは、本発明の培地中の巨大分子によって形成された非常にコンパクトで機械的に強い三次元構造から生じることが発見された巨大分子密集効果によるものと考えられる。非極低温凍結温度では、三次元構造はまた、培地−細胞懸濁液の培地の未凍結部分の大部分を占めるか又は高度に濃縮される。培地の凍結していない部分は、細胞と共に凍結中に形成される氷結晶と相平衡であり、この密集効果は、非極低温凍結温度で貯蔵中の氷の再結晶化を防止する。特定の実施形態において、培地−細胞懸濁液の培地の非凍結部分におけるポリマー又は他の巨大分子の濃度は、少なくとも約25%(w/v)、少なくとも約35%(w/v)、少なくとも約40%(w/v)又はその中の任意の値又は範囲である。
この新たに発見された巨大分子密集効果は、実施例1により詳細に記載されたシミュレーションによって裏付けられる。図1に示すように、シミュレーションは、本発明の培地を−80℃に冷却した場合、個々の非常にコンパクトで機械的に強い巨大分子球が、氷核の成長を止める機械的障壁として形成されることを実証する。図2に示すように、ポリマーの存在は、原子位置のRMS距離がより小さくなり、シミュレーションボックスに人為的に配置された氷核の周りの水分子のより高い熱安定性を示す。この巨大分子密集効果が発見されるまで、凍結保存培地は、長期間の極低温凍結と同様の非低温でも細胞生存率を維持することが期待されていなかった。
実施例2は、巨大分子密集効果から生じる氷の再結晶化の低下の走査型電子顕微鏡(SEM)による証拠を提供する。図3に示すように、本発明の培地は、氷晶形態を顆粒として保存し、単一の氷晶が容易に同定される(図3(B))。これは、10%DMSO培地(図3(A))における氷結晶の重ね合わせた大きなブロック又はシートとは対照的である。これは、図4に示すように、(A)対照と(B)本発明の培地とを比較する単純な光学的観察によって支持される。
本発明の巨大分子は、水性液体中に溶解されたときに球形であるコンパクトな三次元構造を形成する任意の親水性かつ非毒性の巨大分子であり得る。コンパクトな構造は、好ましくは、最も広い寸法において約100nm(ナノメートル)以下である。特定の実施形態では、コンパクト構造は、その最も広い寸法が約1〜50nm、最も広い寸法が約5〜10nm、又はそれらの間の任意の値又は範囲の構造を含む。培地に含まれる全ての巨大分子が所望の範囲内になければならないわけではないことを理解されたい。用語「球形」は、巨大分子が完全な球体である構造を形成することを必要としない。むしろ、巨大分子は、概して球形の構造を形成する。
特定の実施形態では、巨大分子はポリマーである。ポリマーは、水性液体に溶解されたときに球形であるコンパクトな三次元構造を形成する分子を有する親水性多糖類又は同様の構造をした高分子であってもよい。適切なマクロ分子には、球状親水性多糖、シクロデキストリン又は大きな球状分子、球状タンパク質又は球形タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)などのアルブミン)を形成するための任意の糖、オリゴ糖鎖を球状タンパク質に付着させることによって形成される球状糖タンパク質又はこれらの球状タンパク質の誘導体が含まれる。親水性ナノ粒子も好適な高分子であり得る。1つの好適なポリマーは、GE Healthcare BioScience ABによって商品名フィコールで販売されているような、イオン化された基を含まずに、ショ糖とエピクロロヒドリンの共重合によって形成されたポリマーである。
特定の実施形態において、巨大分子は、約300,000〜約500,000、好ましくは400,000の分子量を有し、商品名フィコール400で販売されているものなどが挙げられる。他の実施形態では、巨大分子は、約60,000〜約80,000、好ましくは約70,000の分子量を有し、例えば商品名フィコール70で販売されているものなどが挙げられる。
培地の特定の実施形態では、細胞の添加前に、ポリマー又は他の高分子は、約10%(w/v)以上、約20%(w/v)以上、約25%(w/v)以上、約35%(w/v)以上、若しくは約50%(w/v)、又はその中の任意の範囲若しくは値の濃度で存在する。特定の実施形態では、ポリマー又は他の巨大分子は、水性液体又は水中のポリマー(又は他の高分子)の溶解度までの濃度で存在する。
凍結防止剤は、当該技術分野で公知の任意の凍結防止剤であり得る。好ましくは、凍結防止剤は、細胞透過性の小さな有機分子である。本発明における使用に適した凍結防止剤には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロパンジオール、及びそれらの組み合わせが含まれる。
本発明の培地は、標準的な凍結防止培地よりも少ない量の凍結防止剤の使用を可能にする。凍結防止剤は、培地中のポリマー(又は他の巨大分子)濃度の約20%以上、培地中のポリマー濃度の約50%以上、培地中のポリマー濃度の約75%以上、又は培地中のポリマー濃度の約100%以上、又はその中の任意の値若しくは範囲で培地中に存在し得る。凍結防止剤に対するポリマー(又は他の巨大分子)及び水性液体の体積比は、10:1〜1:1、5:1〜1:1、又はそれらの間の任意の範囲若しくは値である。
水性液体は、懸濁細胞における使用に適した任意の水性液体であり得て、細胞培養培地、栄養培地、生理食塩水及びそれらの組み合わせからなる群から選択される液体であり得る。本発明による使用に適した水性液体には、血清、FBS(ウシ胎仔血清)、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピエラジンエタンスルホン酸)、FHM(フラッシング保持培地)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、DPBS(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)、RPMI(ロズウェルパーク記念研究所培地)、BF5培地、EX−CELL培地、Lysogenyブロス(LB)培地、CaCl水溶液、NaCl水溶液、KCl水溶液及びこれらの組み合わせが含まれる。この培地は、血清、動物性タンパク質又はヒトタンパク質を実質的に含まなくてもよい。
本発明の培地は、任意のタイプの細胞での使用に適している。例えば、浮遊細胞は真核細胞であり得る。真核細胞は、マウス細胞、ブタ細胞、ヒト細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される哺乳動物細胞などの哺乳動物細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、幹細胞、体細胞、再生細胞及びそれらの組み合わせからなる群から選択される細胞を含む、任意のタイプの細胞であり得る。再生細胞は、例えば、胚及び卵母細胞を含み得る。使用され得る他の真核細胞には、昆虫細胞が含まれる。他の実施形態では、細胞は原核細胞であってもよい。原核細胞は、大腸菌、Streptococcus及びStaphylococcusなどの細菌であり得る。
細胞は単一の細胞に分離されていてもよく、又は塊状であってもよい。細胞は、単離された細胞として、又は懸濁液として添加することができる。用語「細胞」はまた、組織を含む複数の細胞を含む他の細胞材料も包含し得る。
哺乳動物細胞の懸濁液については、それらの細胞濃度は、0.5〜1mlの細胞懸濁液試料あたり10〜10細胞の範囲であり得る。卵母細胞及び胚については、数百万の胚又は卵母細胞を得ることが困難であるため、細胞密度(数)は低く、典型的には1試料(試料体積は約0.25〜0.5mlである)で約10〜10細胞である。特定の実施形態では、1試料(例えば、胚又は卵母細胞を含む0.5mlのストロー(straw))中に数百の胚又は卵母細胞のみを保存することが可能であり、いくつかの実施形態において、試料中の胚又は卵母細胞の数は約20である。原核生物、例えば大腸菌は、高密度で利用可能である。凍結する前に、細胞濃度は1mlあたり109〜10細胞に達することができる。
本発明はまた、本発明の培地中の非極低温凍結温度で細胞を保存するための方法に関する。本明細書で使用される場合、非極低温凍結温度という用語は、1気圧でのLN(−196℃)又はLN蒸気(典型的には−120℃)の飽和温度より高い任意の温度であり得る。非極低温凍結は、一般的に−80℃に設定された冷凍庫で行われるが、温度は−85℃と低くなる可能性があるが、冷凍庫のドアを開けたり、凍結していない材料を冷凍庫に入れたりすることによって生じる温度の変動のために、−80℃を超えて上昇する可能性がありる。本発明の培地はまた、受容可能な細胞生存率を維持しながら、細胞をドライアイスにより凍結維持させる。適切な非極低温凍結温度には、約−100℃〜−20℃、約−85℃〜−65℃、又は約−80℃〜−75℃の温度及びそれらの間の任意の値及び範囲の温度が含まれ得る。
この方法は、親水性及び非毒性の巨大分子、凍結防止剤、及び水性液体を含む凍結防止培地を提供するステップであって、ここで、巨大分子は、水性液体に溶解されたときに非常にコンパクトな球形構造を形成するステップ、上記培地を細胞懸濁液に添加するステップ、若しくは細胞若しくは細胞懸濁液を上記培地に添加するステップ、又は又は任意の順番で授記培地若しくは懸濁液の一部を添加して、培地−細胞懸濁液を形成するステップ、及び培地−細胞懸濁液を非低温凍結温度に冷却するステップを提供する。
凍結前の培地−細胞懸濁液中の細胞の総濃度は、当業者に容易に理解されるように、意図される用途に応じて広範囲に変化し得る。特定の実施形態では、凍結前の凍結防止培地中の細胞の濃度は、全系で102〜4細胞/ml、105〜6細胞/ml、10以上の細胞/ml、又はさらには組織全体又はそれらの間の任意の値又は範囲で、単一又は分散的に分布された細胞である。特定の実施形態では、細胞を細胞懸濁液として添加し、凍結防止培地の細胞懸濁液に対する体積比は、約10:1〜約1:5、約2:1〜約1:2、約3:2〜1:1、又はそれらの間の任意の値及び範囲であり得る。
冷却ステップは、一般に、徐冷を伴う。そのような実施形態において、培地−細胞懸濁液は、約0.01℃/分〜約1000℃/分、約0.1〜約10℃/分、約0.5〜1℃/分、又はそれらの間の任意の値又は範囲の速度で冷却することができる。
上記及び実施例でより詳細に検討されるように、ポリマー又は他の巨大分子は、冷却ステップ後の培地−細胞懸濁液の未凍結部分において濃縮される。特定の実施形態では、培地の未凍結部分におけるポリマー又は他の巨大分子の濃度は、少なくとも約25%(w/v)、少なくとも約35%(w/v)、少なくとも約40%(v/v)又はその中の任意の値又は範囲である。
培地−細胞懸濁液は、長期間にわたって非極低温凍結温度に維持することができる。培地−細胞懸濁液は、凍結されている時間全体にわたって元の非極低温凍結温度で又はその近くに維持することができるが、温度は、遊離期間中の様々な非極低温凍結温度間で変化し得ることを理解されたい。貯蔵中、培地−細胞懸濁液は、期間中、極低温の凍結温度まで冷却することができ、残りの時間中は、非極低温温度範囲に温め戻されることもできる(例えば、細胞が1人のユーザーによって液体窒素に保存され、次に、別のユーザーがディープフリーザーに保存され場合;又は細胞が液体窒素に保存されるが、温められ、ドライアイスボックス(−78℃を超える)中で出荷される場合)。
上記で検討したように、培地−細胞懸濁液は、同期間に液体窒素中の細胞の貯蔵について得られたのと同程度に細胞の解凍後の細胞生存率を維持しながら、驚くほど長期間、非極低温凍結温度で維持することができる。本発明と一致して、培地−細胞懸濁液は、約3週間にわたり、約3週間から延長して少なくとも1年、約1年以上、約5年以上、又は約10年以上、及びその中の任意の期間又は期間の範囲で、非極低温凍結温度で維持することができる。
実施例に示されるように、凍結期間の終わりに、培地−細胞懸濁液中に貯蔵された細胞は、同期間で液体窒素中の上記細胞の貯蔵について得られたのとほぼ同じ解凍後の細胞生存率を有する。細胞生存率は、同期間に液体窒素に保存された細胞の細胞生存率の少なくとも約80%、少なくとも約90%、約100%又はそれ以上、及びそれらの間の任意の値又は範囲であり得る。本発明の培地を使用せずに、例えば、凍結防止剤として10%DMSOのみを使用した場合、(液体窒素中での貯蔵から生き残った細胞の数の)5%〜30%の細胞(細胞タイプに依存する;図6A、B及びD参照)は、−80℃で約2〜3カ月の貯蔵後に市損し、1年の貯蔵後には0%の生存である(図6A参照、58週)。したがって、本発明の培地を使用して貯蔵された細胞の細胞生存率は、本発明の培地を使用しないで−80℃で貯蔵された細胞の細胞生存率よりも有意に高い。
ポリマー(又は他の巨大分子)及び凍結防止剤は、ポリマーを所望の濃度で溶解させることを可能にする任意の順序で、互い及び液体と組み合わせることができる。特定の実施形態では、ポリマーをまず水性液体に溶解して第1の混合物を形成し、次いで凍結防止剤を添加するか又はその順序を逆にすることができる。他の実施形態では、凍結防止剤及びポリマーを同時に添加するか、又はそれぞれの少量を所望の比に達するまで添加することができる。フィコール/水性液体対凍結防止剤の体積比は、約10:1〜1:5、約5:1〜1:1、約2:1〜1:1、又はそれらの間の任意の値又は範囲であり得る。
本発明は、典型的な凍結防止溶液に本発明の親水性及び非毒性巨大分子を添加することにより、非極低温凍結温度でシステム熱安定性を有意に改善することを実証する。これは、低速凍結手順の後に巨大分子によって達成される巨大分子密集効果によって起こると考えられている。したがって、本発明の凍結保存培地を使用することにより、LN貯蔵で達成された細胞表現型に匹敵する解凍後生存率、播種効率及び完全な細胞表現型を有する、少なくとも−80℃で少なくとも1年間、様々な種類の細胞を確実に凍結保存することができる。本発明の培地で達成されたこれらの結果は、LNの必要性を完全に排除する非極低温細胞貯蔵方法の実用性を示す。
本発明の特定の態様は、以下の非限定的な実施例によって例示される。
実施例1
氷の再結晶化を防止するためのコンパクト3D構造の親水性多糖分子の巨大分子密集効果を実証する分子動力学的研究
フィコール70−DMSO−水、ショ糖−DMSO−水、及びDMSO−水を含む分子システム用の3つのシミュレーションボックスを、分子動力学シミュレーション用に調製した。これらすべてのシステムでは、系統的な温度は−80℃として固定された。各成分の濃度は、これらの三元系の予め測定された状態図によって決定される。フィコールとDMSOの質量比が1:1であるフィコール70−DMSO−水系について、状態図は、−80℃で、フィコール、DMSO及び液体水の濃度がそれぞれ35%、35%及び30%(w/w)とされ、固体水(氷相)との相平衡に達することを決定する。換言すれば、本発明の培地では、DMSO及び細胞懸濁液と混合した後、新しい混合物をゆっくりと−80℃に冷却し、フィコール濃度を有意に増加させる。図1(A)は、体系安定性を試験するために氷核を中心に置いた、−80℃でのフィコール−DMSO−水系の巨大分子密集挙動の分子動力学的実証を示す。左の写真はシミュレーションボックス全体である。右の写真は氷核を示すシステムの横断面図である。図1(B)は、体系安定性を試験するために氷核を中心に置いた、−80℃で均一に分布させたショ糖−DMSO−水系の分子動力学的実証を示す。左の写真はシミュレーションボックス全体である。右の写真は氷核を示すシステムの横断面図である。図1(C)は、体系安定性を試験するために氷核を中心に置いた、−80℃でのDMSO−水系の均一分布の分子動力学的実証を示す。左の写真はシミュレーションボックス全体である。右の写真は、氷核を示すシステムの横断面図である。
重要なことに、図1(A)に示すように、多くの個々のフィコール球(約5nm径)の固有のネットワークが形成される。
状態図によれば、ショ糖とDMSOの重量比が1:1のショ糖−DMSO−水系では、氷相と相平衡を到達する場合、ショ糖、DMSO及び水の濃度はそれぞれ36%、36%及び28%(w/w)である;凍結前(広く使用されている凍結保存法の場合)、DMSO及び水の重量比が1:9であるDMSO−水系では、それらの相平衡濃度は、それぞれ58%及び42%である。これらの3つのケース:フィコール−DMSO−水(図1(A))、ショ糖−DMSO−水(図1(C))、及びDMSO−水(図1(C))のシミュレーションボックスの寸法は、156.929×159.481×159.300Å、163.532×169.882×159.953Å、140.624×145.061×135.631Åであり、一方、総原子数は、それぞれ235,440、242,118及び175,744である。
上記のシステムの熱安定性を実証するために、10nm立方体を形成する512個の水分子群として提示された典型的な立方氷の核が、図1に示すように人工的に各シミュレーションボックスの中央に配置され、冷凍又は貯蔵の間、上記の凍結していない溶液中で氷核形成が開始されるが、それ以上発達しない場合をシミュレートする。これらの3つの異なる系におけるこの氷核の安定性を分子動力学によって分析した。シミュレーションは、Sandia National Laboratoriesによって分布される一般的に使用される大規模原子/分子超並列シミュレータ(LAMMPS)を用いて実施された。VMD(視覚的分子動力学)を用いて、データ処理及びデータ処理を視覚化した。シミュレーションを実施する前に、これらの分子システムはすべて、エネルギーの最小化手順を用いて実施され、より良好な初期開始構成を見出した。潜在的に最小化された構造が見出されると、システム全体が、固定密度及び所望の温度を有する状態で平衡化された。シミュレーション全体は、平衡のために15,4000で、1fsの同じ時間ステップでデータサンプリングのためにさらに504,000ステップで実行された。
氷核を取り囲む液体水分子の活動は、原子位置の二乗平均平方根(RMS)距離を介して、これらの3つのシステムの最終的な平衡構造と共に測定され、結果は図2に示されている。このフィコール−DMSO−水は下の曲線であり、ショ糖−DMSO−水は中央の曲線にあり、DMSO−水は上の曲線にある。DMSO−WaterのシステムはRMS距離の最大値をもたらし、最も低い熱不安定性を示すことが実証されている。ショ糖−DMSO−Waterシステムでは、RMS距離の値がわずかに低下している。フィコールの存在を伴うシステムは、RMS値を著しく低下させ、言い換えれば、核周囲の水分子の熱安定性が最も高くなる。したがって、液体水分子と氷核の間の直接的相互作用の可能性は、フィコール球の存在によって著しく減弱する可能性があり、このメカニズムは−80℃での氷の再結晶を防止すると結論付けることができる。PVP、PEG、HES、PVAなどの分子の非晶質構造のために、それらを分子動力学モデルに含めることは技術的に困難であるが、それらのむしろ均一に分布した線状分子又はその結果生じる緩やかな3D構造は、ショ糖−DMSO−水系のRMS距離と比較して同等のRMS距離をもたらし、フィコール高密度球状分子を用いた系に比べてはるかに低い熱安定性をもたらす。
実施例2
非極低温での凍結防止溶液の再結晶の防止
試料中の氷結晶の熱安定性を著しく改善する本発明の培地の能力を実証するために、走査型電子顕微鏡(SEM)を実施した。
本発明の培地の一実施形態では、DMEM培地中の20%(w/v)フィコール70及び20%(v/v)DMSOの溶液を、細胞懸濁液の代替物、例えば、いずれもの細胞を含まないDMEM培地と、体積比が3:2でゆるかに混合し、1.5mlのクリオバイアルに移した。次いで、これらバイアルは、広く使用されている凍結容器(Nalgene Mr.Frosty)に入れ、約−80℃の冷凍庫に入れて、翌日まで1℃/分の冷却速度で与えられた。次に、これらのバイアルは、冷凍庫内の予め冷却して密封したバイアル容器に移され、5週間貯蔵された。比較のために、DMEM培地中の10%(v/v)DMSOの溶液としての対照群も冷却し、同じ方法で同じ時間貯蔵した。5週間の終わりに、クリオバイアルをLNに直接投下して氷結晶の形態を固定し、LN内で破砕した。固定及び破砕された試料は、銅ステージでLNで覆われ、SEMシステムの真空チャンバに移された。LNが蒸発し、チャンバー圧が10−2Pa未満になった後、試料の表面をSEMで走査して、破砕表面の氷の形態を観察した。図3は、500μmと同じ増幅とバーの長さで、5週間の貯蔵後の破砕試料のSEM観察を示す。図3Aは、正常凍結防止溶液のSEM観察を示し、図3Bは同じ凍結防止剤を含む本発明の培地のSEM観察を示す。図3Aに示すように、10%DMSOのみを含む対照溶液では、5週間の貯蔵後に氷晶が大きなブロック又はシートに重ね合わせられ、単一の氷晶を同定することは困難である。対照的に、図3Bに示すように、本発明の培地は、顆粒及び単一の氷結晶が容易に同定されるので、氷結晶形態を保存する。図4に示すように、5週間貯蔵された試料の簡単な光学観察は、同じ結論を支持した:対照溶液(10%DMSO及び90%DMEM)(A)は、大きなサイズの再結晶化した氷であるために不透明である(写真中のバイアルショーでより白色である)。一方、本発明の培地とDMEMとの混合物(B)は、上記されるように、氷晶のより少ない量及びより小さなサイズのために、より透明な(すなわち、より白色ではない)凍結溶液をもたらした。
実施例3
熱安定性を調べるための示差走査熱量計の使用
水溶液中でコンパクトで球形の親水性多糖類であるフィコールを混入すると、ミクロスケールの拡散が制限され、巨大分子の構造的再構成が制限される可能性がある。氷の再結晶化の可能性を探るために、示差走査熱量測定(DSC)を使用して非極低温でのDMSO及びフィコール(フィコール70及びフィコール400)の水溶液の熱安定性を調べた。比較のために、DMSO及びポリビニルピロリドン(PVP)又はショ糖(一般に使用されているポリマー及び凍結保存に使用される小分子を表す)を含む同様の三元系も試験した。低速凍結プロセスの終わりに残留溶液をモデル化するために、1:1の重量比の非浸透性溶質の1つ及び浸透性凍結保護剤DMSOからなる高濃度溶液を、同じ全溶質濃度(50%w/w)で調製した。Pyris Diamond DSC(Perkin−Elmer Corp)を用いて、ガラス化及び失透を検出するための標準DSC手順を追跡した。8μlの各モデル溶液の容量を、液体試料用に設計された標準的な10μlアルミニウムるつぼ(Perkin−Elmer Corp)に封入し、次いでDSC装置の試料ホルダーに充填した。すべての試料を100℃/分で1℃から−160℃まで冷却して完全なガラス化を達成した。これは冷却中及び加温後のすべての試料について−130℃付近の連続熱容量変化によって確認され、試料のいずれも冷却プロセス中に何ら結晶化を経験しなかった。−160℃で1分間保持した後、試料を10℃/分の加温速度で20℃に加熱した。すべての資料において失透が検出され、対応する発熱曲線の開始温度を、Perkin−Elmer Corp.が提供するPyris(商標)熱分析ソフトウェアを用いて失透温度の値として決定した。表1は、緩慢な凍結プロセスの終わりに1つのポリマー(又はショ糖)及びDMSOを含有する水溶液の凍結していない残留部分をモデリングする高濃縮溶液の失透温度を示す。各溶液の全溶質重量パーセントは、50%w/wとして固定されている。
再結晶は検出可能な潜熱放出を生じさせない自発的プロセスを含むので、これらのモデル溶液の熱安定性は、それらの失透温度(Td)によって評価された。このアプローチは、Tdが再結晶が始まる温度よりも常に低いが、それに近いので可能である。したがって、フィコール70(Td、−67℃)又はフィコール400(Td、−75.7℃)を含む溶液で観察されるように、緩慢な加温中にこれらのモデル溶液のいずれかについて測定したTdが−80℃より高い場合、熱的に安定であり、−80℃で再結晶化は起こらない(表1)。2つのフィコールポリマーのうち、フィコール70はDMSOと1:1の重量比でより高いTd値を示したので、潜在的に有用な凍結防止培地を提供する上で優れているようであった。これらの結果は、凍結貯蔵培地がはるかに濃縮されている場合に−80℃に冷却することによって十分な高分子密集を達成するために、フィコール70及びDMSOのより低い濃度(例えばそれぞれ10%)でゆっくりと凍結を開始することにより、潜在的に、細胞外溶液中での再結晶を妨げ、したがって、−80℃での細胞の長期貯蔵を実現することを示唆した。
実施例4
−80℃での長期貯蔵後のO2KブタのiPSC細胞の生存性及び多能性の特徴の検討
商業的なディープフリーザーにおける長期貯蔵中のブタ誘導性多能性幹細胞(iPSC)のO2K株の生存性及び多能性の特徴を保存する本発明の培地の能力を試験した。ブタのiPSCのO2K株は、白血病抑制因子(LIF)及び自己再生のためのSTAT3シグナル伝達に依存するナイーブ型の多能性幹細胞であり、生存性を有意に損なうことなく単細胞に分散することができる。日常的な維持のために、O2K piPSCを、3つの阻害剤(CHIR99021(Stemgent)、PD032591(Stemgent)及びPD173074)、2μg/mlドキシサイクリン(Stemgent)、及び1000単位/mlヒトLIF(Millipore)が捕捉されたN2B27(Gibco)培地中の6ウェル培養プレート(Nunc)上のラミニン(Gibco)被覆基層又は照射マウス胚線維芽細胞フィーダー上で培養された。O2K piPSCを、Accutase(Millipore)を用いて37℃で7分間分散させた後、3日ごとに継代した。細胞コロニーを、Innovative Cell Technologies、Inc.によりAccutase(登録商標)の商品名で販売されている細胞剥離溶液で単細胞に分散させた。解離した細胞を遠心分離(200×g、5分間)により集め、冷却培地に再懸濁した。本発明の培地の様々な実施形態を10%(w/v)フィコール70及び20%(v/v)DMSO、20%(w/v)フィコール70及び20%(v/v)DMSO、30%(w/v)フィコール及び20%(v/v)DMSOとして調製した。これらの培地は、FBS(血清)又はダルベッコ改変イーグル培地(DMEM/F12、無血清)のいずれかに基づき、別の言葉では、フィコール80及びDMSOが排除され、培地の液体部分はFBS又はDMEMのいずれかである。これらの培地の各々を、その培養培地中の細胞の懸濁液に滴下して加えた(細胞懸濁液と添加された全ての培地液滴との間の総容量比は約3:2である)。混合後、DMSOの培地−細胞懸濁液中の最終濃度は、凍結前に、それぞれ約10%v/v及びフィコール70を5%、10%又は15%w/vであった。そのような混合手順は、凍結防止培地全体を細胞懸濁液と直接混合することによって生じる浸透圧損傷によって引き起こされる細胞損傷を改変することである。次に、多くの細胞型の現在の凍結保存に広く使用されている冷凍ボックス(Mr.Frosty、Nalgene)にクリオバイアルを入れた。後者を一晩、−80℃の冷凍庫に入れ、約1℃/分の冷却速度を与えた。翌日、バイアルを−80℃の冷凍庫に2週間保管した。対照群は、凍結防止培地がFBS単独に基づくものであり、幹細胞LN貯蔵に一般的に使用されるフィコールを含まないことを除いて、同じ最終濃度のDMSO(10%)を達成するために同様の手順で処理された細胞であった。これらの対照試料を同じ低速凍結手順で冷却し、次いで−80℃(陰性対照として)又はLNデュワー(陽性対照として)で保存した。
解凍のために、すべてのクリオバイアルは、氷塊が消失するまで約1分間、37℃の水浴中で急速に暖められた。次に、培地−細胞懸濁液を15mlの遠心管に移し、5mlの加温培養培地とゆっくりと混合した。遠心分離(200×gで5分間)後、上清溶液を除去し、細胞ペレットを1mlの新しい培地に再懸濁した。
解凍し培養した細胞を6穴プレートに播種し、一晩培養した。最初の培地交換の後、接着性コロニーの画像を各ウェル内の5つの異なる領域にわたって獲得した。播種効率は、コロニー/最初に播種された細胞の数×100%として推定された。次に、Accutaseによりコロニーを完全に分散させ、総細胞数をTC10自動細胞計数器(Bio−Rad)を用いて評価した。
2週間の貯蔵後の結果を、(A)FBSベースの培地及び(B)無血清DMEM/F12ベースの培地について図5に示す。各図において、バー値は平均±SEM(n=3)であり、異なる文字(a、b、c)は有意に異なる(P<0.05)値を示す。
細胞懸濁液と20%フィコール及び20%DMSO培地の混合物を含む培地−細胞懸濁液中で−80℃で凍結保存された細胞のみ(最終の混合後及び凍結前のフィコール濃度は図5に示され及び上記に説明される)は、LN貯蔵対照に匹敵する播種効率を提供した。低濃度及び高濃度のフィコールは、生存率が有意に悪かった。FBSの存在は、試験した凍結条件のいずれにおいても結果に影響を与えなかった。次いで、20%フィコール70及び20%DMSO培地を使用して、その後の長期貯蔵用及び他の細胞タイプ用の細胞懸濁液と混合した。
2、5、10及び58週後に解凍したO2KブタのiPSCの結果を図6Aに示す。図6は、3つの条件下で凍結保存された細胞についての結果を示す:10%v/vのDMSO及びLNでの保存(左バーとして示される)、10%v/vのDMSO及び−80℃のフリーザーでの保存(中央バーとして示される)、及び細胞懸濁液と20%フィコール70及び20%DMSO培地との混合物を含む培地−細胞懸濁液及び−80℃のフリーザーでの保存(右バーとして示される)。バー値は、平均±SEM(n=3)であり、同じ検査点の結果内で著しく異なる(P<0.05)値を示す異なる文字(a、b)を示す。
第2週が終わっても、−80℃で本発明の培地を用いずに細胞の凍結防止能力は、他の2つの処置と比較してコロニーを付着、増殖及びコロニー(赤色棒)を提供する能力が著しく低下した。これらの減少は、10週間での回収率が非常に低く、58週間の貯蔵後にコロニーが全く形成されないように、貯蔵期間で漸進的であり、結果は、再結晶プロセスが即時の細胞損傷というようりはむしろ進行性の原因となる結果と一致した。対照的に、ブタiPSCは、細胞懸濁液の混合物中に−80℃で保存され、本発明の培地の実施形態は、経時的にLN貯蔵と比較して、プレーティング効率(図6A、左パネル)又は増殖能(図6A、右パネル)のいずれかにおいてみかけの減少を示さなかった。
解凍した細胞の多能性の試験について、解凍後、細胞をコロニーを確立させ、継代し、カバーガラスで増殖させた。検体を室温で15分間、PBS中の4%v/vパラホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、5%v/vヤギ血清又は5%v/vロバ血清、1%w/vウシ血清アルブミン、及び0.1%v/vのTriton X−100(Fisher)をPBS中で30分間インキュベートした。次に、固定した検体を一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、それらを二次抗体に曝露した。二次抗体のみに曝露されたコロニーは対照として役立った。カバースリップを取り付けるために、DAPI(Vector Laboratories)を備えたVECTASHIELDマウント培地を使用した。一次抗体は、POU5F1(1:100、Santa Cruz Biotechnology)、SOX2(1:1000;Millipore)、NANOG(1:200;Abcam)、SSEA1(1:50;Developmental Studies Hybridoma Bank[DSHB])であった。図9Aに示すように、本発明の方法を用いて−80℃で貯蔵した細胞も多能性表現型を保持していた。
実施例5
−80℃での長期貯蔵後のID6ブタのiPSC細胞の生存性及び多能性の特徴の検討
培養中のID6ブタのiPSCの形態を図7Aに示す。細胞は平らで接着性のコロニーを形成し、そのコロニーは、概して、特別な予防措置が取られない限り、互いに解離した場合に死滅する。結果として、それらは歴史的に継代され、塊としてLNに凍結保存されている。しかしながら、細胞塊を凍結することには限界があり、凍結防止剤はそれらにあまり効率的に浸透せず、細胞の僅かな部分のみが凍結保存後に生存する可能性がある。播種効率は一般的に低く、クローン増殖は困難である。
上記の技術的問題を克服するために、ID6細胞を、「穏やかな解離試薬」(Stem Cell Technologies)を用いて6分間凍結し、凍結前に10μMのROCK阻害剤を補充することにより、より小さい細胞凝集物に分散させた。このように分離された細胞は、典型的には、図7Bに示されるように、6〜8個の細胞の塊を提供した。
維持のために、ID6piPSCを、20%ノックアウト血清置換(KOSR、Gibco)及び4ng/mlヒトFGF2を補充した標準hESC培地(hESCM)中の6ウェル培養プレートの照射マウス胚線維芽細胞(iMEF)フィーダー層上で培養した。冷却、貯留及び解凍の手順は、実施例4に記載したものと同じであった。5及び15週間の貯蔵後、試料を解凍した。各処理群の3つのサンプルからの解凍細胞を、iMEFでコーティングした6ウェルプレートに移し、1つのバイアルからの細胞を2つのウェルの間で等しく分割した。解凍及びプレーティング後の4日目に、各培養ウェルの異なる領域の5つの画像を倍率40倍で撮像して、LNに保存された対照群に対するコロニー面積を決定した。次いで、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS、Hyclone)中の4%v/vパラホルムアルデヒド中で2分間固定し、アルカリ性ホスファターゼ活性について染色してコントラストを増加させた。9枚の画像を8倍の倍率で採取して、ウェルの全領域をカバーし、存在するコロニーの総数を測定した。すべての画像をImage Jソフトウェアで分析した。その結果を図6Bに示す。実施例4(図6A)から観察されるように、−80℃で本発明の培地を用いて凍結保存された細胞(右のバー)は、LN2(左バー)の貯蔵のように、ウェルあたり同様の数のコロニー(図6B、左パネル)及び類似のコロニーサイズ(図6B、右パネル)を提供しし、経時的な凍結保存効率の低下はなかった(図6B)。本発明の培地を使用せずに−80℃で保存した細胞(中央のバー、図6B)では、解凍後の細胞生存及びコロニーサイズの有意な低下は、わずか5週間後でさえ経時的に観察されたので、もはや長蔵期間を追跡しなかった。解凍された細胞の多能性の試験のために、一次抗体がNANOGを含まないことを除いて、実施例4に記載したのと同じ手順に従う。図9Bに示すように、本発明の方法を用いて−80℃貯蔵した細胞も多能性表現型を保持していた。
実施例6
−80℃での長期貯蔵後のヒトiPSC細胞の生存性及び多能性の特徴の検討
本発明の培地はまた、ヒトiPSCに対して効果的な凍結保存を提供することができた。ヒトiPSC株は、エピソームプラスミドトランスフェクションを用いて5つの因子(POU4F1、SOX2、KLF4、LIN28、及びMYCL)及びTP53 shRNAで再プログラムしたヒト臍帯繊維芽細胞に由来した。細胞を、定義されたmTeSR1培地(STEMCELL Technologies)中のマトリゲル(BD Bioscience)で被覆した6ウェル培養プレート(Nunc)上で培養した。ヒトiPSC株の細胞コロニーの形態は、実施例5のID6細胞と同様である。したがって、凍結前に、細胞コロニーもまた、実施例5に記載されているように、より小さい細胞凝集物中に分散させた。冷却、貯蔵、解凍、解凍後の生存率試験は、解凍した細胞をマトリゲルでコーティングした6ウェルプレートに移す以外は、実施例5に記載したものとほぼ同じであった。図6Cに示すように、貯蔵の65週後、解凍後の生存率及びコロニーサイズは、対照群(本発明の培地を使用しない液体窒素貯蔵(左のバー))、及び処置群(本発明の培地を用いた−80℃貯蔵、右のバー)とほぼ同じである。SSEA1をSSEA4に置き換えたことを除いて、実施例4に記載したのと同様の手順に従い、解凍細胞の多能性試験により、65週間後の−80℃の低温保存細胞が多能性表現型を保持していることが示された(図9C参照)。
実施例7
−80℃での長期貯蔵後のヒトESC細胞の生存性及び多能性の特徴の検討
H1 hESC(WA01)は、2002年にウィスコンシン州マディソンのWiCell Research Instituteから入手した。生存率試験の培養、維持、分散、冷却、貯蔵、解凍及び解凍後の手順は、実施例6に記載したものと同じであった。結果は図6Dに示されており、本発明の培地を使用した場合(左パネルの右バー)には、−80℃貯蔵の5及び15週間後には解凍後生存率は低下せず、液体窒素貯蔵からのもの(左パネルの左バー)と匹敵し得た。本発明の培地(両チャンネルの中央のバー)を使用しないと、細胞生存率及びコロニーサイズの両方が有意に低下した。図6Dの右パネルに示すように、本発明の培地を使用すると、コロニーサイズは減少したが、結果は、本発明の培地を使用せずに−80℃で保存したものよりも100%良好であった。
あるいは、次に、hESCを細胞死から保護するRHOキナーゼ阻害剤(ROCKi、Y−27632)の存在下でH1 hESCコロニーのTrypLE分散液を用いて、混合及び凍結前の単一細胞の懸濁液を得た(図7C)。また、その使用が低温貯蔵効率に影響するかどうかを試験するために、液体窒素貯蔵のための本発明の培地の使用を試験した。冷却、貯蔵、解凍手順は上記と同じであった。解凍後の生存性及び機能性試験のために、より詳細な比較を提供するフローサイトメトリーを実施した。hESCを37℃で7分間TrypLE(Invitrogen)処理により単一細胞に分散させ、氷上で1時間Foxp3固定化/浸透化溶液(eBioscience)に固定し、5%(v/v)ロバ血清中で15分間インキュベートし、抗体の非特異的結合を減少させた。次いで、細胞をブロッキング緩衝液中でPOU5F1(1:200、Santa Cruz Biotechnology)又はIgG(0.4μg/mL;Santa Cruz Biotechnology)に対する抗体に1時間曝露した。すべてのステップを氷上で暗所にて行い、細胞を各ステップの間に3回、Permeabilization Solution(eBioscience)で洗浄した。各細胞集団について、Accuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences)で少なくとも10,000細胞を分析した。データは、FlowJo(バージョンX)ソフトウェアによって分析した。結果を図8に示した。
第1に、本発明の培地を作製するための異なる基礎培地(左パネル中のFBS及び右パネル中のDMEM)の使用は、解凍後の細胞生存及び播種効率に顕著な差を生じさせない。したがって、本発明の培地は完全に無血清であり得る。第2に、本発明の培地の使用は、いずれもの負の影響を与えることなく、中央左バー(液体窒素貯蔵のために本発明の培地を使用)及び左バー(液体窒素貯蔵ために唯一の10%DMSOを使用)において実証されたデータと比較し、液体窒素中の凍結保存効率をわずかに改善した。第3に、本発明の培地を用いた−80℃貯蔵(右バー)は、液体窒素貯蔵(左バー)とほぼ同じ細胞生存率及び解凍後の効率をもたらした。最後に、本発明の媒体を使用しない−80℃の貯蔵は、他の処理よりも、解凍後の播種効率及び生存率(中央の右バー)を有意に低下させた。
本発明の培地を使用した場合の−80℃貯蔵からの解凍後のH1 hESC細胞について、図9Dは、凍結保存H1 hESC:KRT7(栄養外胚葉)、DESMIN(中胚葉)、NESTIN(外胚葉)、及びSOX17(内胚葉)から分化した胚様体(EB)において発現した系統マーカーを示し、上記の実施例と同様の免疫組織化学手順を実施した(特徴的なバイオマーカーは明らかに異なる)。EB形成によるhESCの自発的分化を達成するために、解凍後hESCのコロニーをディスパーゼ/機械的解離によって分散させ、低付着プレート(Corning)中のDMEM/F12、15%FBS、1%非必須アミノ酸、1mMのL−グルタミン、及び0.1mMのβ−メルカプトエタノールからなるEB分化培地に移された。懸濁液中で5日間増殖させた後、EBをゼラチン被覆プレート上に播種し、免疫組織化学のための固定の前に同じ培地でさらに9日間培養した。
図9Eはまた、本発明の培地を用いて−80℃で保存された凍結保存H1 hESCから分化した心筋細胞を示す:上パネル、拍動心筋細胞のコロニー;下パネル、心臓マーカーTNNT2の発現。スケールバー=200μm。解凍後のhESCを、キット(Cardiomyocyte Differentiation Kit;Gibco)のコンポーネントを使用し、製造者の指示に従って心筋細胞に分化させた。要約すると、mTeSR1培地(STEMCELL Technologies)中のマトリゲル(BD Bioscience)被覆プレート上で培養したhESCコロニーを、心筋細胞分化培地A(Gibco)で2日間処理し、続いて心筋細胞分化培地Bでさらに2日間処理した。その後、自発的に収縮する心筋細胞が出現したとき、細胞を心筋細胞維持培地中でさらに8日間培養した。心筋細胞マーカーTNNT2の発現はまた、免疫組織化学によって確認され、上記の実施例と同様の手順であった。
実施例8
本発明の培地を使用する実験はまた、異なる方法を使用して分離されたID6ブタのiPSC胚盤葉型細胞を用いて行った。コロニー(図7A)は、ディスパーゼ処理及びその後の切断ツールの使用後に大きな密集体(約100個の細胞)に壊れ、均一なサイズの密集体を得て、図7Dに示される。(図7では、スケールバー=500μm)。そのような方法は、歴史的にそのような細胞を継代する標準的な方法であったが、凍結保存前に胚盤葉型幹細胞を処理する方法としてはもはや好ましい方法ではない。前述の実施例に関して論じられ、図7B及び図7Cに示される解離方法がより好ましく使用され、このような手段によって解離された細胞は、上述のように本発明の培地を用いて保存された場合に陽性結果を示した。しかしながら、ディスパーゼ/切断処理によって生じたより大きなコロニーを直接保存するためには、本発明の培地と混合する前に、ある量の凍結保護物質を大きなコロニーに予め装填するという潜在的な処理が知られており、得られた細胞を本発明の培地に保存した方がより良好な結果が得られる。その改善の理由は、本発明の培地中のフィコールの存在が、凍結防止剤の大きなコロニーの内層への浸透を遅延させるか又は遅らせるという事実にある。したがって、本発明の培地を混合する前に、ある量の凍結防止剤のみを大きなコロニーに装填する前処理によりこの問題が解決される。図10は、上記の前処理なしの切断方法が、本発明の方法の適用のための好ましい方法ではないことを確認する。図10は、コロニーの機械的解離及び2週間の凍結保存の後に形成されたコロニーを示す。図10A及び10Bは、それぞれ、−80℃及びLN貯蔵条件下で本発明の培地を用いずに保存した図7Dの大きなコロニーを示す。図10Cは、上記の前処理なしで本発明の培地中に−80℃で保存された細胞を示す。
実施例9
−80℃での3つの貴重な細胞型の中期凍結保存における効率
精子、末梢血単核細胞(PBMC)、及び大腸菌(E.coli)は、貯蔵期間が長年に及ぶ場合であっても、低温貯蔵中に細胞生存率を漸減させることなく液体窒素中で首尾よく凍結保存することができる典型的な細胞型である。しかしながら、自家製又は市販の凍結保存培地を用いた−80℃での貯蔵は、貯蔵期間の中期(例えば数ヶ月)後でも生存率及び機能性の著しい喪失をもたらし、このような喪失の比率及び程度は細胞型に依存する。以下に記載する実施例を用いて、本発明の凍結保存がこれらの細胞型に採用された場合、これらの損失が防止されたことを実証した。
実施例9.1
ブタ精子を−80℃で貯蔵するための本発明の培地と市販の凍結防止培地の比較
ブタ静止の保存効率の改善は、ブタの繁殖の改善にとって重要であり、食品産業にとって非常に貴重である。液体窒素デワール、乾燥出荷又ははるかに高価な極低温フリーザーを使用した液体窒素又はその蒸気中のブタ精液の凍結保存又は輸送は、ほとんどの農場操作での使用には非常に高価で実用的ではない。その結果、新しく採取した精子は市販のエクステンダー溶液(凍結保護剤なし)と約4℃で広く混合されているが、この方法では精子の生存率を約1週間しか維持できない。
その制限を克服するために、本発明の培地を−80℃でのブタ精子凍結保存に使用した。これにより、回収者は、(多くのスーパーマーケットで入手できる)ドライアイス上で精子懸濁液を効率的に冷却して輸送し、−80℃のディープフリーザーに貯蔵することができる。雄精子の精子濃縮画分(約100ml)を集め、精子フィルターで2回ろ過し、室温で1.5時間置いた。ろ過した精子試料(各試料について25ml)を50mlコニカルチューブに移し、25mlの精子洗浄培地で1:1(v/v)で穏やかに混合して洗浄し、次いで1000×gで7分間遠心分離した。各サンプルの上清を除去し、市販の精子エクステンダー(BF5、主成分が卵黄及びグルコースなどを含む)5mlを標準的な伸長又は懸濁法として遠心分離した精子と穏やかに混合した。各懸濁液サンプルは、凍結前に冷蔵庫で4℃に予冷した。対照に関して、液体窒素中のブタ精子の貯蔵にのみ有効である市販の雄ブタ精子凍結培地(BF5+4%v/v細胞培養グレードのグリセロール)を最終体積比を1:1として懸濁液に滴下して混合し、最終体積は約10mlとした。新しい懸濁液を0.5mlのストロー(10〜20ストロー)に分注し、ストローをドライアイス上に1時間入れた後、−80℃の冷凍庫に保存した。処置群については、BF5を新しい凍結培地の基礎培地として使用した(前の実施例では幹細胞のための基礎培地としてDMEMを使用したのと同様である)。2つの処置群を調製した:処理Aの凍結防止培地は、4%v/v細胞培養グレードのグリセロール及び20%w/vフィコール70と混合したBF5であった;処理Bは、4%v/v細胞培養グレードのグリセロール及び10%w/vフィコール70と混合したBF5であった。両方の処理について、BF5中の精子懸濁液を、新しいフィコール含有凍結培地(それぞれA及びB)と1:1の比で混合した。次に、0.5mlのストローに分注し、ドライアイス上に置いて凍結させ、ディープフリーザーに保存した(対照と同じ)。
貯蔵2ヶ月後、ストローを室温の水に直接入れることによって、3つの群のストローを解凍した。各群について、2つのストローからの懸濁液を10倍に希釈し、2時間培養した。解凍後の運動性を評価し、他のストロー由来の細胞を採取し、IVF効率評価のためにIVF培地中の約100個のブタ卵母細胞と共培養した。結果を以下の表2に列挙する。
処理A、本発明の典型的な実施形態、例えば、透過性凍結防止剤として20%w/vフィコール70及び4%v/vグリセロールを添加し、それと1:1の比率で細胞懸濁液を混合することによる基本培地の使用は、生存率とIVF効率が液体窒素貯蔵の結果に匹敵する、2ヶ月の貯蔵後のブタ精子の解凍後の運動性を有意に改善したことを結論付けることは容易である。対照的に、培地にフィコールが含まれていないかフィコールの量が不十分であった場合、解凍後の運動性及び機能性は、−80℃の冷凍庫で2ヶ月間の貯蔵後に著しく損なわれた。
すべての凍結防止培地を1:1の体積比で細胞懸濁液と混合した。
実施例9.2
−80℃でのブタPBMCの貯蔵のための本発明の培地と広く使用されているDMSO+FBS培地との比較
PBMCは、血液バンクのために非常に有益であり、免疫学(自己免疫障害を含む)、感染症、血液悪性腫瘍、ワクチン開発などに関連する研究又は生物医学的応用に広く使用される。DMSO、FBS又はBSA、及び基本培地(例えば、DMEM)を用いると、これらの細胞は、細胞の生存率を失うことなく、長年、液体窒素又はその蒸気中で首尾よく凍結保存することができる。しかしながら、それらが−80℃の冷凍庫に保存されると、徐々に細胞が失われ、1年をわずかに超える貯蔵後に回復が最小限に抑えられる。また、液体窒素又はその蒸気中に予め保存された試料を輸送するためにドライアイスボックスを使用すると、輸送中の再結晶化(−120℃以下から−78℃以上の温暖化)による細胞損失が避けられない。多くの小規模のクリニック又は病院では、高価な液体窒素施設を使用せずにPBMCの細胞ストックを確立することは技術的に不可能である。さらに、PBMC凍結防止培地で使用される高濃度のFBS(一般に40%v/v)は、FBS(800〜1,000ドル/L)の価格がDMEM又は他の単純塩基培地(約20ドル/L)、さらに重要なのは、動物用製品としてのFBSは汚染及び規制上の問題を引き起こす。
これらの実際的な問題を解決するために、本発明の培地を、FBSを使用せずに−80℃冷凍庫でブタPBMC凍結保存に使用した。およそ10mlのブタ血液を最初に等量のPBS+2%FBSと混合し、上層を用いて標準密度勾配遠心分離(1200g、10分間)により細胞を回収した。富化した細胞を洗浄し、再度遠心分離(450gで10分間)し、希釈GM−CSF(ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)を添加した市販の培地(RPMI)中、37℃、5%COインキュベーター内で6日間培養した。次いで、細胞を回収し、遠心分離によって濃縮し、RPMI中に再懸濁させた。新しい懸濁液を各1mlのクリオバイアル(バイアル当たり約10個の細胞)に0.5mlずつ分注した。対照群を、20%v/vのDMSO、40%v/vのFBS及び40%v/vのDMEMを含有する伝統的な凍結保存培地で、0.5mlの培地をクリオバイアル中の細胞懸濁液に滴下して処理した。そのため、細胞懸濁液と凍結保存培地との間の最終体積比は1:1である。処理群を、20%v/vのDMSO及び20%w/vフィコール70を添加したDMEMに基づく任意のFBSを用いずに本発明の培地で処理し、また細胞浮遊液と一緒にクリオバイアル中で最終的な1:1の体積比で混合した。
混合後、クリオバイアルを市販のフリーズボックス、Mr.Frostyに入れ、ボックスを−80℃のラボ冷凍庫で一晩冷却し、クリオバイアルを貯蔵用の同じ冷凍庫の貯蔵ボックスに入れた。2ヶ月間の貯蔵後、クリオバイアルを37℃の水浴中で解凍した。凍結前及び解凍後の全サンプルの細胞生存率を、TC20(商標)自動化細胞計数器を用いて測定した。両群の解凍後の生存率と凍結前の生存率の間の比を以下の表3に示す。結果は、PBMCを液体窒素中で保存した場合の公表されたデータに匹敵する、本発明の培地が細胞の高い回収率をもたらし、より重要なことは、従来のDMSO+FBS培地を用いた場合の群の結果において示される2ヶ月間の貯蔵期間中の細胞損失を効率的に防止したことを明らかに実証した。本発明の培地はまた、無血清(FBSなし)である。
両方の凍結防止培地を1:1の体積比で細胞懸濁液と混合した。
実施例9.3
−80℃での大腸菌コンピテント細胞(典型的な原核細胞)の貯蔵のための本発明の培地と広く使用される培地との比較
大腸菌コンピテント細胞は、分子生物学の研究及び技術開発におけるDNAの形質転換のために最も一般的に使用される細菌細胞型である。DMSOを用いた液体窒素中の大腸菌コンピテント細胞の凍結保存は、長期貯蔵のために広く使用されているプロトコールである。多くの実験室では、−80℃のディープフリーザーで一時貯蔵に高濃度のグリセロールを使用しているが、保存された細胞ストックは、数ヶ月後に伸び、高濃度のグリセロール(高粘性)を使用すると操作上問題がある。
ディープフリーザー中の大腸菌コンピテント細胞の長期貯蔵効率を改善するために、本発明の培地は、細胞を−80℃で2ヶ月間保存したときに低濃度のDMSO及び高濃度のグリセロールを使用する処理と比較して試験された。NEB(登録商標)5−アルファF’Iqコンピテント大腸菌の前培養物を希釈(−37℃でLB培地中1:50)し、ODが0.6になるまで増殖させ、次いで氷上で冷却した。試料を遠心管に移し、3000rpmで5分間遠心分離し、次いでペレットを25ml DI水中に再懸濁させた。この洗浄ステップをすべての試料について3回繰り返した。ペレットの最終プールを0.1MのCaCl水溶液に再懸濁し、各0.5mlクリオバイアルに0.1mlとして分注し、氷上で冷却した。3つの異なる処理のために3つの凍結防止培地を調製した:DI水中の14%v/vのDMSO及び0.1MのCaClとしての処理A;DI水中の40%v/vグリセロール及び0.1MのCaClとしての処理B;DI水中の14%v/vのDMSO、20%w/vフィコール70及び0.1MのCaClとしての処理C(本発明の培地)。各処理のための全ての試料(上記のように氷上で予め冷却された0.1mlの細胞懸濁液)について、0.1mlの対応する凍結防止培地を細胞懸濁液に直接加えた(すなわち体積比も1:1である)。その後、穏やかに振とうして完了させ、試料を氷上で20分間保持した。クリオバイアルを試料貯蔵ボックス(10×5×2cm)に取り付け、−80℃冷凍庫に直接取り付けて冷却保存しました(冷却速度は約15〜20℃/分に近似している)。
1日、1ヶ月及び2ヶ月の貯蔵期間後、各処理群のクリオバイアルを解凍して、異なる処理間での貯蔵期間の影響を細胞生存率に比較した。各試料のコロニー形成単位(CFU)の値を、大腸菌コンピテント細胞の標準的な培養及び計数プロトコールを行った後に決定した。これらの処理の1日後、1及び2ヶ月間の貯蔵後のCFU値を以下の表4に示す。表4に示されているように、処理A及びBの両方の解凍後のコロニー形成効率は徐々に低下した。対照的に、処理Cは依然として十分にコロニー形成効率を維持した。これは、多数の分子生物学研究室が大腸菌ストックをディープフリーザーで維持するのに有益である。処理Aは、大腸菌の液体窒素貯蔵には一般的に使用されるが、−80℃貯蔵では使用されないので、処理Aから得られるCFU値は他の2つよりもずっと低い(1桁低い)。治療Cを用いた1日の貯蔵は治療Bより低いCFU値をもたらしたが、長期貯蔵期間(特に2ヶ月より長い)に関する観点から、その利点は明らかである。それはまた、原核細胞に対する本発明の培地の有用性を確立する。
すべての凍結防止培地を1:1の体積比で細胞懸濁液と混合した。
上記の実施例に示された結果を要約すると、本発明は、高濃度のフィコール70、ショ糖の合成ポリマーを含有する本発明の培地の使用に基づいて、−80℃でのヒト及びブタ多能性幹細胞の長期貯蔵のための簡易かつ容易な方法であり、培地は、以前にはこの目的又はそれに匹敵する目的で使用されていないと考えられる。この方法の成功は、非凍結温度で透過性凍結保護剤の熱安定性を向上させ、一般的に、非凍結温度での長期貯蔵中に細胞喪失を引き起こす、対応する氷の再結晶化を防止するフィコールポリマーの能力に起因すると考えられる。分子メカニズムは、恐らく半径約5nmの小さな球で構成されるフィコール70の物理的性質によるものである。ゆっくりと冷却することで、−80℃で凍結しない状態である溶液中に巨大分子密集をもたらし、それにより、パックされたフィコール70球体は、小さな氷結晶の拡大を妨げる機械的障壁を形成する。さらに、フィコール70は、凍結保存溶液中のFBSを避けることができ、したがって細胞産物への細胞の曝露を回避することができる。前述のことから、本発明は、明白であり本発明に固有の他の利点とともに、上記の全ての目的及び目的を達成するのに十分に適合したものであることが理解される。
多くの可能な実施形態が本発明の範囲から逸脱することなくなされ得るので、添付の図面に記載され又は示されるすべての事項は、例示的なものとして解釈されるべきであり、限定的な意味ではなく解釈されるべきである。
特定の実施形態が示され、検討されたが、様々な変更が行われてもよく、本発明は、そのような制限が以下の特許請求の範囲に含まれる限り、本明細書に記載される特定の形態又は構成のステップに限定されない。さらに、特定の特徴及びサブコンビネーションは実用的であり、他の特徴及びサブコンビネーションを参照することなく使用され得ることが理解される。これは特許請求の範囲によって企図され、特許請求の範囲内にある。
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Claims (44)

  1. 非極低温凍結温度で細胞を保存するための培地であって、
    親水性かつ無毒性の巨大分子;
    水性液体;及び
    凍結防止剤
    を含み、ここで、前記巨大分子は、前記培地中の濃度が約20%(w/v)以上であり、前記高分子の分子は、前記水性液体に溶解されたときに、形状が球形であるコンパクトな三次元構造を形成する、上記培地。
  2. 培地中に懸濁させた細胞をさらに含む、請求項1に記載の培地。
  3. 前記非極低温凍結温度で、前記コンパクトかつ球状の構造体が、前記細胞と共に前記培地の凍結していない部分に濃縮され、前記密集効果は、前記非低温での貯蔵中の氷の再結晶を防止する、請求項2に記載の培地。
  4. 前記培地中の前記巨大分子の濃度が約25%(w/v)以上である、請求項1〜3のいずれかに1項に記載の培地。
  5. 前記培地中の前記巨大分子の濃度が約35%(w/v)以上である、請求項4に記載の培地。
  6. 前記培地中の前記巨大分子の濃度が約50%(w/v)以上である、請求項5に記載の培地。
  7. 前記凍結防止剤が、前記培地中の前記巨大分子の濃度の約20%以上、好ましくは約50%以上の濃度である、請求項1〜6のいずれかに記載の培地。
  8. 前記培地中の前記凍結防止剤の前記濃度が、前記培地中の前記巨大分子の濃度の約75%以上である、請求項7に記載の培地。
  9. 前記培地中の前記凍結防止剤の濃度が、前記培地中の前記巨大分子の濃度の約100%以上である、請求項8に記載の培地。
  10. 前記巨大分子がポリマーである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の培地。
  11. 前記ポリマーが、前記水性液体に溶解されたときに、形状がほぼ球形である前記コンパクトな三次元構造を形成する分子を含む、請求項10に記載の培地。
  12. 前記ポリマーが、球状(spherical)親水性多糖類、重合シクロデキストリン又は糖類、球形(globular)タンパク質又は球状タンパク質、球状タンパク質にオリゴ糖鎖を結合させることによって形成される球状糖タンパク質、それらの球形タンパク質の他の誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の培地。
  13. ポリマーが親水性多糖類である、請求項12に記載の培地。
  14. 前記ポリマーが、ショ糖及びエピクロロヒドリンの共重合によって形成されるポリマーである、請求項13に記載の培地。
  15. 前記凍結防止剤が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール、プロパンジオール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の培地。
  16. 前記水性液体が、細胞培養培地、栄養培地、生理食塩水及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の培地。
  17. 前記水性液体が、血清、FBS(ウシ胎仔血清)、DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピエラジンエタンスルホン酸)、FHM(フラッシング保持培地)、PBS(リン酸緩衝食塩水)、DPBS(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)、RPMI(ロズウェルパークメモリアルインスティテュート培地)、BF5培地、EX−CELL培地、Lysogeny broth(LB)培地、CaCl水溶液、NaCl水溶液、KCl水溶液及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の培地。
  18. 前記懸濁細胞が、真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞である、請求項2〜17のいずれか1項に記載の培地。
  19. 浮遊細胞が哺乳動物細胞であり、前記哺乳動物細胞が、マウス細胞、ブタ細胞、ヒト細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の培地。
  20. 前記哺乳動物細胞が、幹細胞、体細胞、再生細胞及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18又は19に記載の培地。
  21. 前記懸濁細胞が原核細胞である、請求項2〜17のいずれか1項に記載の培地。
  22. 前記コンパクトなほぼ球形の構造が、それらの最も広い寸法において約100nm(ナノメートル)以下である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の培地。
  23. 前記コンパクトなほぼ球形の構造が、それらの最も広い寸法において約1〜50nmの範囲の構造を含む、請求項22に記載の培地。
  24. 前記コンパクト構造が、それらの最も広い寸法において約5nm〜10nmの範囲の構造を含む、請求項23に記載の培地。
  25. 前記培地が、血清、動物タンパク質又はヒトタンパク質を実質的に含まない、請求項1〜24のいずれか1項に記載の培地。
  26. 非極低温凍結温度で細胞を保存するための方法であって、
    親水性かつ非毒性の巨大分子、凍結防止剤、及び水性液体を含む凍結防止培地を提供するステップであって、前記巨大分子は、約10%(w/v)を超える前記培地中の濃度であり、前記巨大分子は、前記水性液体中に溶解されたときに球状構造を形成するステップ;
    前記培地に前記細胞を添加して、培地−細胞懸濁液を形成するステップ;
    前記非極低温凍結温度まで前記培地−細胞懸濁液をを冷却するステップであって、前記非極低温凍結温度が約−85℃以上であるステップ;ならびに
    前記非極低温凍結温度で若しくは異なる非極低温凍結温度で又はその近傍で3週間よりも長い期間、培地−細胞懸濁液を維持し、一方、前記細胞の解凍後の細胞生存率を、前記期間、液体窒素中で前記細胞の貯蔵のために得られるのと等しい又はそれとほぼ同じである細胞の解凍後の細胞生存率を維持するステップ
    を含む方法。
  27. 前記巨大分子がポリマーである、請求項26に記載の方法。
  28. 前記凍結防止培地中の前記ポリマーの濃度が、前記水性液体中、10%から前記ポリマーの溶解度までの範囲である、請求項27に記載の方法。
  29. 前記凍結防止培地中の前記ポリマーの前記濃度が約20%〜50%である、請求項28に記載の方法。
  30. 前記培地に添加された細胞が、前記細胞の第1の懸濁液中にあり、前記凍結防止培地と前記細胞の前記第1の懸濁液の前記体積比が約10:1及び1:5である。
  31. 前記凍結防止培地と前記細胞の前記第1の前記体積比が約3:2〜1:5である、請求項30に記載の方法。
  32. 前記期間が約3週間であり、少なくとも約1年に及ぶ、請求項26〜31のいずれか1項に記載の方法。
  33. 前記期間が約1年以上である、請求項32に記載の方法。
  34. 前記期間が約5年以上である、請求項33に記載の方法。
  35. 前記期間が約10年以上である、請求項34に記載の方法。
  36. 前記解凍後の細胞生存率が、同じ時間期間の液体窒素中での前記細胞の貯蔵のために得られたものの約70%以上である、請求項26〜35のいずれか1項に記載の方法。
  37. 温度が約−100℃〜−20℃の範囲である、請求項26〜36のいずれか1項に記載の方法。
  38. 前記温度が約−85℃〜−65℃の範囲である、請求項37に記載の方法。
  39. 前記温度が約−80℃〜−75℃の範囲である、請求項38に記載の方法。
  40. 前記培地−細胞懸濁液を約0.01℃/分〜1000℃/分の速度で冷却する、請求項26〜39のいずれか1項に記載の方法。
  41. 前記培地−細胞懸濁液を約0.1〜10℃/分の速度で冷却する、請求項39に記載の方法。
  42. 前記培地−細胞懸濁液を約0.5〜1℃/分の速度で冷却する、請求項41に記載の方法。
  43. 前記冷却ステップの後に、前記培地−細胞懸濁液が部分的に凍結され、前記巨大分子が、前記培地−細胞懸濁液の凍結していない部分において少なくとも約25%(w/v)の濃度である、請求項26〜42のいずれか1項に記載の方法。
  44. 前記冷却ステップの後の前記培地−細胞懸濁液の前記凍結していない部分における前記巨大分子の濃度が、少なくとも約40%(w/v)である、請求項43に記載の方法。
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