詳細な説明
本明細書では、リンカーおよびメディトープを含む自己架橋性組換えメディトープ利用可能抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。本発明のリンカーは、メディトープリンカーがメディトープ利用可能抗体またはその抗原結合フラグメントの相互作用または架橋を促進することを可能にする抗体、またはその抗原結合フラグメント上の位置で、メディトープおよび抗体または抗原結合フラグメントに付加するが、そのメディトープリンカーが付加する抗体中に存在するメディトープ結合部位に、メディトープが結合することを可能とはしない。自己架橋抗体またはそのフラグメントは、リンカーおよびメディトープを介して、他のメディトープ利用可能抗体の複合体を形成できる。一実施形態では、メディトープ利用可能抗体またはその抗体結合フラグメントは、細胞の表面に存在する1つまたは複数のエピトープに結合する。記載された自己架橋抗体またはその抗原結合フラグメントが複合体を形成する能力は、これらの抗体または抗原結合フラグメントが、複数の抗体またはその抗原結合フラグメントが結合する細胞表面抗原の分布を代替することを可能とする。標的抗原上の自己架橋抗体とそれらの同種エピトープとの相互作用による複合体形成は、複合体の内在化を増加または促進することができる細胞表面抗原の細胞上での、クラスター形成または共局在化を増加または促進することができる。次に、内在化の増大は、標的細胞の表面からの細胞表面抗原の濃度をクリアまたは減少させ、標的細胞への複合体の内在化の速度を増加させるために使用することができる。内在化の速度を増加は、ある治療の効果を増加できるか、または特定の治療の効果を達成するために必要な薬物の量を減少できる。細胞表面抗原のクラスター形成を増加または促進する方法は、細胞表面抗原に特異的に結合する1つまたは複数の自己架橋抗体を細胞に投与し、それによって標的細胞の表面上の細胞表面抗原のクラスター形成を促進することを含むことができる。ある実施形態では、自己架橋性抗体は、1つまたは複数の薬剤にコンジュゲートされる。
I.自己架橋性抗体
自己架橋性メディトープ利用可能抗体またはそれらの抗体結合フラグメントは、リンカー、メディトープ、およびメディトープ利用可能抗体またはその抗体結合フラグメントを含む。リンカーは、剛性セグメントとフレキシブルセグメントを構成し、メディトープに結合するように適合される。
本明細書に記載のリンカーは、それに結合したメディトープが、概ね同じ抗体内に含まれるメディトープ結合部位に結合しないが、他のメディトープ利用可能抗体またはその抗原結合フラグメント上のメディトープ結合部位に優先的に結合するように設計される。典型的には、リンカーは、アセンブルされた場合にリンカーが異なる構造的特徴を含むことを許容するアミノ酸といった反復単位を構成する。例えば、いくつかの実施形態では、リンカーは、運動範囲の制限または減少を伴う剛性セグメントを含む。いくつかの実施形態では、この剛性は、メディトープ対応抗体に融合したメディトープが、同じ抗体またはその抗原結合フラグメント上のメディトープ結合部位に結合するのを防止または減少させることができる。
いくつかの実施形態では、リンカーは、フレキシブルおよび/または組織化されていないセグメントを含む。いくつかの実施形態では、フレキシブルまたは組織化されていないセグメントは、リンカーの屈曲および/または回転を可能にし、よって、メディトープが他の抗体のメディトープ結合部位に結合することを可能にする。
いくつかの実施形態では、リンカーがペプチドである場合、剛性セグメントは典型的に、領域の屈曲および/または回転する能力を制限するのに十分な剛性を伴うペプチドを生成するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、剛性セグメントは、アルファヘリックス型構造を伴うペプチドを生成するアミノ酸配列を構成する。他の実施形態では、フレキシブルおよび/または組織化されていないセグメントは、柔軟性領域が屈曲および/または回転することを可能にする十分なフレキシビリティを有するペプチドを生成するアミノ酸配列、メディトープがメディトープ結合部位に結合するのに十分なフレキシビリティを可能にする、アミノ酸配列を含む。
A.リンカー
本明細書は、開示された自己架橋性メディトープ利用可能抗体または抗体結合フラグメントの構成物としてのリンカーを提供する。本明細書で使用される用語“リンカー”は、メディトープ利用可能抗体またはその抗体結合フラグメントを含む、抗体またはその抗体結合フラグメントに結合または接続されるメディトープによる組織をいう。リンカーは、メディトープを抗体から結合および分離するのに適切な組織になり得る。例示的なリンカーとしては、いくつかの実施形態において修飾ペプチド骨格、スモール・ケミカル・スカフォールド、ビオチン−ストレプトアビジン、有機または無機ナノ粒子、ポリヌクレオチド配列、ペプチド−核酸、または有機ポリマーを有する、ペプチドを形成するために使用されることができる、1つまたは複数の天然または非天然のアミノ酸を含むことができる。
リンカーは、メディトープ利用可能抗体またはその抗体結合フラグメントの部分に結合することができる。一実施形態では、リンカーは、メディトープ利用可能抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖または軽鎖のアミノ末端に結合する。いくつかの実施形態では、メディトープを伴うリンカーは、自己架橋性抗体またはフラグメントの、各重鎖または各軽鎖に結合する。いくつかの実施形態では、メディトープを伴うリンカーは、自己架橋性抗体の1つまたは複数または全ての重鎖または軽鎖に結合する。リンカーは、共有結合および/または非共有結合を介して、抗体に結合することが可能である。
1.リンカー構造
リンカーは、様々な機能や特性を提供する、様々な配列または他の組織の特徴を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、同じメディトープ利用可能抗体またはその抗原結合フラグメント上のメディトープ結合部位に結合する、リンカーの一端におけるメディトープの能力を、低下または阻害することが有利であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、剛性の組織化された、順番付けされた、または、いくつかの実施形態に従って、関連的に剛性の組織化された、または順番付けされた、1つまたは複数のセグメントを含むことができる。例示的な利点として、剛性セグメントは、リンカーの屈曲または運動能力を低下させることができ、それによって、屈曲、転回、または折り畳みの能力を低下させ、リンカーの一方の端のメディトープが、同一または異なるメディトープ利用可能抗体またはその抗原結合フラグメントのメディトープ結合部位に接触することを可能とさせる。
好ましい実施形態では、リンカーは、メディトープ可能結合またはその抗体結合フラグメントの同一の側(例えば、同側)または逆側(例えば、反対側)に結合するメディトープを阻止するに十分な剛性を有する。メディトープ自己結合の本減少は、自己架橋抗体の他のメディトープ利用可能抗体を結合する能力を強化することを可能にし、例えば、他のメディトープ利用可能抗体またはその抗体結合フラグメントに接続するメディトープに結合する、そのメディトープ結合部位を開放することによる。
剛性、リンカーの組織化されたセグメントは、リンカーの1つの末端でメディトープが同一のメディトープ結合部位または抗体の他のFab領域に接触することを可能にする仕方で、リンカーが屈曲、転回または折り畳みの能力を減少させる、ペプチド配列または化合物を含む事ができる。いくつかの実施形態では、剛性、構造化されたセグメントは、ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、剛性、アルファヘリックス型セグメント、領域、ドメイン、またはペプチドを含む1つまたは複数の構造素子を含むことができ、それらは、アルファヘリックス型を形成する傾向があるアミノ酸残基の配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、それぞれの配列は、Met、Ala、Leu、Lys、Gln、Arg、Glu、Ser、およびプロアミノ酸を含むことができ、それらは、アルファヘリックス型構造を促進する役割を果たすことができる。
いくつかの実施形態では、疎水性残基は、タンパク質の異なるセグメントまたはドメイン間の相互作用を増加させることができる。疎水性残基は、Gly、Ala、Val、Leu、He、Pro、Phe、Met、およびTrpを含む。ゆえに、いくつかの実施形態では、リンカーの剛性セグメントは、リンカーセグメント間および/またはリンカーとメディトープまたは抗体との間の相互作用を減少させるために、疎水性残基を含まないか、または減少した数の疎水性残基を含まない。いくつかの実施形態では、リンカーの剛性セグメントを含む複数のアルファヘリックス型間の相互作用を増加させるために、疎水性残基を含むことは、リンカーの剛性セグメントにとって有利である。複数のアルファヘリックス型を含む剛性セグメントの例は、4本のヘリックスバンドル1FHA(配列番号272)およびミオグロビン3RGK(配列番号273)を含む。
いくつかの実施形態では、剛性セグメント、構造化されたセグメントは、複数のアルファヘリックス型セグメント、領域、ドメイン、またはペプチドを含み、それらは、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のアルファヘリックス型セグメントを含む。いくつかの実施形態では、複数のアルファヘリックス型セグメントは、ターン、ループ、および/またはヘアピンを介して接続される。例示的なターンは、1つまたは複数のαターン、βターンγターン、δターン、およびπターンを含む。ヘアピンは、ベータヘアピンを含む。このようなターン、ループおよびヘアピンは、複数の剛性アルファヘリックス型セグメント間を折り畳むことを可能にする。折り畳むことは、アルファヘリックス型ドメイン間、およびこのような相互作用が剛性セグメントを強化することを可能とする。いくつかの実施形態では、剛性、構造化されたセグメントは、例えば、アルファヘリックス型のカルボキシまたはアミノ末端を含む310ヘリックスまたはπヘリックスを含む。
いくつかの実施形態では、他のメディトープ利用可能抗体のメディトープ結合部位に結合するリンカーを介して、抗体に接続するメディトープの能力を増加することが有利であると言える。ゆえに、いくつかの実施形態では、リンカーは、上述した結合を強化する構造の特徴を含む。例えば、いくつかの実施形態では、リンカーは選択的に、構造化されていない、フレキシブルな、無秩序の、または比較的構造化されていない、フレキシブルな、または障害のある、1つまたは複数のセグメントを含む。例示的な利点として、フレキシブルまたは無秩序なセグメントは、リンカーまたはリンカーの一部が屈曲または運動する能力を増加させ、それにより、リンカーの一端でメディトープが、他のメディトープ利用可能抗体上に接触および/または結合を維持することを可能とする仕方で、リンカーが湾曲、回転、または折り畳みの能力を増加させる。
いくつかの局面では、リンカーのフレキシブルなセグメントは、ペプチド骨格の大きなコンフォメーション上の自由度を有するといった、生理的条件下で変性ペプチド配列のように挙動するようにデザインすることができる。いくつかの例では、これらのセグメントは、例えば、生理的条件下または水溶液中で、本質的に二次構造を欠く。いくつかの実施形態では、フレキシブルセグメントは、1つまたは複数の連続したグリシン残基を含む、1つまたは複数のグリセリン残基を含むことができる。グリセリン残基は、アルファヘリックス型を含む、タンパク質構造を分裂させることができる。この分裂は、ある部分では、グリシンの最小限の側鎖の故であり、これは柔軟性を増加させることができる。ゆえに、いくつかの実施形態では、リンカーのフレキシブルセグメントは、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上の連続したグリセリン残基を含む、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のグリセリンを含む。いくつかの実施形態では、フレキシブルセグメントは、1つまたは複数のグリセリン残基および1つまたは複数のプロリン残基を含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカーのフレキシブルセグメントは、配列番号265のアミノ酸配列を含む。
いくつかの側面では、リンカーは1つまたは複数の特性を有する:
非構造化立体配座、配座フレキシビリティ、改善された水溶性、高度のプロテアーゼ耐性、低免疫原性、哺乳動物レセプターへの低結合性、決められた電荷度合、および増加した流体力学的(またはストークス)半径である。いくつかの実施形態では、リンカーは、抗体/エピトープ相互作用、抗体/抗体相互作用、または抗体/メディトープ相互作用の立体障害を防止または引き起こすために体系的またはランダムにデザインされる。例示的な修飾には、アミノ酸の置換、付加、欠失、または修飾が含まれる。いくつかの実施形態では、立体障害は、受容体がクラスター化、シグナル伝達、または受容体介在性エンドサイトーシスを受けないようにすることができる。いくつかの実施形態では、立体障害を阻止することは、受容体のクラスター化、シグナル伝達、または受容体介在性エンドサイトーシスを受ける原因となる。
フレキシブルセグメントは単独で使用されるか、または本明細書に記載の1つまたは複数の剛性セグメントに結合されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、下記の式を有する1つまたは複数の鎖(例えば、ポリペプチド鎖)を有する化合物である:
L1A−L2A (式I)
L1Aは剛性の構造化されたセグメントであり、L2Aはリンカーのフレキシブルセグメントである。
いくつかの実施形態では、リンカーは、下記の式を有する1つまたは複数の鎖(例えば、例えば、ポリペプチド鎖)を有する化合物である:
L2A−L1A (式II)
L2Aはフレキシブルな構造化されていないセグメントであり、L1Aはリンカーの構造化され剛性のセグメントである。
いくつかの実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のフレキシブルで構造化されていないセグメントを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、リンカーは、下記の式を有する1つまたは複数の鎖(例えば、ポリペプチド鎖)を有する化合物である:
L2B−L1A−L2A (数式III)
L1Aは、剛性で、構造化されたセグメントであり、L2AおよびL2Bはリンカーのフレキシブルで、構造化されていないセグメントである。
いくつかの実施形態では、リンカーは、下記の式を有する1つまたは複数の鎖(例えば、ポリペプチド鎖)を有する化合物である:
L1A−L2A−L1B (数式IV)
L1AおよびL1Bは、剛性で、構造化されたセグメントであり、L2Aは、リンカーのフレキシブルで構造化されていないセグメントである。例示的な剛性リンカーセグメントは、配列番号266−274のペプチド配列を含むが、これらには限されない。
2.リンカーおよびセグメントの長さ
リンカーの剛性およびフレキシブルセグメントの長さは、他の抗体上のメディトープ結合部位に結合するリンカーに結合することを可能にするよう任意的長さの十分な長さとすることができる。同一のメディトープ利用可能抗体またはその抗体結合フラグメント上のメディトープ結合部位に結合する、メディトープを阻止または低下させるに十分短いリンカーを使用することも有利である。いくつかの実施形態では、リンカーの長さは、少なくとも10Åとすることができる。いくつかの実施形態ではリンカーの長さは、少なくとも10Åであり、好ましくは80Å以下である。
いくつかの実施形態における、同一の抗体における1つのFab領域の重鎖のアミノ末端と反対側のFab領域のメディトープ結合部位との間の距離は、80Å以下である。この距離は、抗体の配列、構造、およびフレキシビリティにより変化することができる。いくつかの実施形態では、リンカーのカルボキシ末端およびメディトープは、10〜80、10〜70、15〜60、20〜50、または25〜40Åの間の距離で隔離される。いくつかの実施形態では、リンカーのカルボキシ末端およびメディトープの端部は、10〜80、10〜70、15〜60、20〜50、または25〜40Åの間の距離で隔離される。いくつかの実施形態では、リンカーまたはリンカーセグメントの長さは、適切なペプチド配列を選択することによって、変化することができる。
いくつかの実施形態では、リンカーの長さは、リンカーまたはリンカーセグメントを含むアミノ酸の数によって決定することができる。以下に記載されるアルファヘリックス型セグメントは、一連のターンを含む。各らせんのターンは、約5.4Åのピッチを有することができ、約3.6アミノ酸残基を含むことができる。ゆえに、リンカーの長さは、アミノ酸の付加または削除によって調整可能である。いくつかの実施形態では、リンカーまたはリンカーセグメントの長さは、リンカーの二次または三次構造によって決定付けることができる。以下に記載するように、いくつかの実施形態では、リンカーまたはセグメントは、複数の折り畳みのアルファヘリックス型を含む、ペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーの長さは、このようなペプチドの二次または三次構造の修飾によって、調整可能である。
メディトープの位置の制御および他のメディトープ利用可能抗体にメディトープ結合位置に結合する能力は、いくつかの実施形態では、リンカーの長さの変化、またはリンカーの末端およびリンカーのもう1つの末端の間の距離の変化によって、強化することも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、リンカーの長さは、リンカーが接続する抗体鎖のアミノ末端、およびリンカーが結合するメディトープ利用可能抗体またはその抗体結合フラグメントの同側のメディトープ結合部位の間の距離より短い。いくつかの実施形態では、リンカーの長さは、リンカーが接続する抗体鎖のアミノ末端、およびリンカーが結合するメディトープ利用可能抗体またはその抗体結合フラグメントの他の側のメディトープ結合部位の間の距離より短い。
メディトープの位置の制御は、いくつかの実施形態では、セグメントの長さおよびリンカーの構成物の変化によって強化されることも可能である。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の剛性セグメントの長さは、1つまたは複数のフレキシブルセグメントの長さより長い。これは、メディトープが、フレキシブル領域よりも長い剛性領域を伴う抗体Fab領域から離れてメディトープが伸長することによって、同一の抗体上のメディトープ結合部位に結合する可能性を低下させることを可能とする。
リンカーの長さは、クラスター化のジオメトリを代替することもできる。例えば、2つの受容体を近接させて、細胞内シグナル伝達分子のより高い活性を潜在的にもたらすことが有利なこともある。ここで、抗体とメディトープの間のリンカーは、およそ10Å以上とすることができる。代替的に、受容体をある距離に保つことが有利な場合もある。ここで、抗体とメディトープとの間の剛性リンカーおよび/またはより長いリンカーを用いて、特異的受容体を「押し離す」ことができる。
いくつかの側面では、リンカーは、標的となる細胞の表面上の2つの受容体間の距離と、同一またはほぼ同一の長さを有するように設計される。いくつかの実施形態では、受容体は、同一または異なることができる。例えば、2つの受容体は、異なるアミノ酸配列および/または異なるエピトープを含むことができる。いくつかの状況において、単一の抗原上の異なるエピトープを認識する2つのmAbsは、相乗的に作用する(Kamat, V. et al., Cancer Biol Ther 7, 726−733 (2008)を参照)。いくつかの例では、自己架橋性抗体は、メディトープ対応抗体と対にすることができるフレキシビリティを有することができる。いくつかの局面では、自己架橋性抗体の変化(例えば、リンカーのジオメトリを代替することによって生成される)は、さらに特異性および相乗効果を強化する。ゆえに、いくつかの例では、リンカーの長さは、細胞表面抗原に結合した自己架橋性抗体と、細胞表面抗原に結合した別の抗体のメディトープ結合部位との間の距離を、模倣または近似するように設計される。
様々な方法が、本技術においては所与のポリペプチド中の二次および三次構造の存在または非存在を識別するために、確立されている。特に、2次構造は、例えば“遠UV”スペクトル領域(190~250nm)における円二色性分光法によって、分光光度的に測定することができる。アルファヘリックス型およびベータシートなどの、二次構造要素は、それぞれCDスペクトルの特徴的な形状および大きさを生じさせる。
二次構造はまた、米国特許出願公開番号20030228309A1に記載された、周知のChou−Fasmanアルゴリズム(Chou,P.Y.,etal.(1974)Biochemistry, 13:222−45)およびGarnier−Osguthorpe−Robson(“GOR”)アルゴリズム(Gamier J,Gibrat JF,Robson B.(1996)、アミノ酸配列からタンパク質二次構造を予測するためのGOR法。Methods Enzymol 266:540−553)などの特定のコンピュータプログラムまたはアルゴリズムを介して、ポリペプチド配列について予測することもできる。所与の配列について、アルゴリズムは、例えばアルファヘリックス型またはベータシートを形成する配列の残基の総数および/またはパーセンテージもしくは、ランダムなコイル形成(二次構造を欠いている)をもたらすと予想される配列の残基のパーセンテージとして発現された、二次構造が何らかのまたは全く存在しないかどうかを予測することができる。
一実施形態では、リンカーは、Chou−Fasmanアルゴリズムによって決定された50%〜約95%以上の範囲のアルファヘリックスパーセンテージを有する。他の実施形態では、リンカーは、Chou−Fasmanアルゴリズムによって決定された0%〜約5%以下の範囲のベータ−シートパーセンテージを有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、Chou−Fasmanアルゴリズムによって決定された50%〜約95%以上の範囲のアルファヘリックスパーセンテージおよび0%〜約5%以下の範囲のベータ−シートパーセンテージを有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、Chou−Fasmanアルゴリズムによって決定された約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、または約95%以上の範囲のアルファヘリックスパーセンテージを有する。
提供されるリンカーの中には、配列番号262、263、および264として示されるアミノ酸配配列を有するもの、またはそれらの修飾された変異があり、ここで残基のいずれか1つ、2つ、3つまたは4つは、リジン残基の代わりに、例えば、コンジュゲートされたアミノ酸で任意に置換される。
3.修飾
リンカーは、リンカーが誘導体化されることを可能にする、様々な機能または特性を提供する様々な配列または他の構造的特徴を含むことができる。例示的な構造要素は、プロテアーゼ切断部位、免疫原性配列、および例えばホルミルグリシン生成酵素(FGE)、リジン、チロシン、グルタミン酸、アスパラギン酸および非天然アミノ酸を酸と適合するアルデヒドタグを含む残基、部位またはタグが存在するか、または存在しないものを挙げることができ、これらは、例えば、治療剤または診断剤のコンジュゲーションに使用することができる。
いくつかの局面では、例えば、MMP切断部位、ADAM切断部位、および/またはカテプシン切断部位など、リソソーム区画に存在するプロテアーゼの切断部位といった、提供された化合物のリンカーである。
いくつかの局面では、アミノ酸がセリンまたはグリシンでない場合に、同一のアミノ酸が3つ以上連続していないものを含むか、または10、9、8、7、6、5、4、3または2未満、またはまたは少なくともグリシンおよびセリン以外の1残基を含むサブ配列スコアを有するものを含む。いくつかの局面では、リンカーは任意の血清プロテアーゼの切断部位(または切断されない)を含まないか、または血液凝固経路ファミリーのタンパク質であって、因子XHIa、Xlla、XIa、Xa、IXa、およびVila、トロンビン、血漿カリクレイン、活性化PC、プロトロンビン、hKl、PSA/hK3、hK10、hK15、活性化タンパク質C(APC)、ヘゲマン因子(凝固因子XII)、因子Xa、ADAMTS13、フォンビルブラント因子切断プロテアーゼ(VWFCP)、プロテアーゼネキシン2、プラスミン、トリプシン、α−キモトリプシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9、エラスターゼ、MASP−1(マンノース結合レクチン−関連セリンプロテアーゼ−1)、MASP−2、MASP−3、カテプシンK、カテプシンB、ストレプトキナーゼ、血漿プロカルボキシペプチダーゼB、トロンビン活性化線維素溶解阻害剤(TAFI)、プラスミノーゲンアクチベーターファミリー(組織プラスミノーゲンアクチベーター、尿中プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)など)、ウロキナーゼ、補体コンバターゼファミリータンパク質、C4b2a、C3bBbおよびC3bBbC3bなどの因子Clr、 Cls、因子D、およびC3コンバターゼの1つまたは複数またはいずれかを含まない。
いくつかの実施形態では、リンカーは、T細胞エピトープの可能性を最小限にするなど、潜在的な免疫原性を回避または低減するように設計される。抗原提示細胞(APC)の表面上に提示するための所定のMHCクラスII分子に結合するペプチドの能力は、ペプチドの一次配列を含む、因子の数による。一局面では、本開示のペプチドまたはリンカーは、その配列がAPCsにおける抗原プロセシングに対して耐性であるため、低い程度の免疫原性を有する。もう1つの局面では、本開示のペプチドまたはリンカーは、MHC受容体に実質的に結合しないか、または免疫応答を誘発するのに十分な程度でMHC受容体に結合しない配列を有する。本開示は、リンカーおよびペプチドが、一次配列において実質的に非反復性であり、MHCII受容体との結合を低下させるように設計されるリンカーおよびペプチドを提供し、他の局面において、本開示のペプチドおよびリンカーは、T細胞受容体または抗体結合のためのエピトープを形成せずに、低い程度の免疫原性を生じさせる。一局面では、免疫原性の回避は、少なくとも部分的に、リンカー配列の配座フレキシビリティの結果に帰することができる;すなわち、アミノ酸残基の選択および順序による二次構造の欠如である。例えば、水溶液中または生理学的条件下でコンパクトに折り畳まれた立体配座に適応する傾向を有する配列は、水溶液中または生理学的条件下でコンパクトに折り畳まれた立体配座に適応する傾向が比較的低い配列よりも、立体配座エピトープをもたらす可能性がより高い。従来の治療法および投薬を用いた本開示のリンカーを含む融合タンパク質の投与は、一般的にはリンカー配列に対する中和抗体の形成をもたらさないであろう。一局面では、免疫原性の低いリンカー配列は、例えば、リンカーが融合してメディトープに結合している場合、融合パートナーの免疫原性を低下させる。
一実施形態では、リンカーは、ヒトT細胞によって認識されるエピトープを含み得るか、または実質的に含まない。より少ない免疫原性タンパク質を生成する目的での、そのようなエピトープの排除は以前に開示されている;例えばWO98/52976、WO02/079232、およびWO00/3317は、これらは参照により本明細書に組み込まれる。同じ原理、例えば、エピトープの同定は、このようなエピトープをリンカーに導入するために使用することができる。ヒトT細胞エピトープのアッセイが記載されている(Stickler,M.,ら(2003)J Immunol Methods,281:95−108)。特に興味深いのは、T細胞エピトープまたは非ヒト配列を生成するか、または生成せずにオリゴマー化され得るペプチド配列である。これは、T細胞エピトープの存在および6〜15merおよび特にヒトではない9mer配列の発生のためのこれらの配列の直接反復をテストし、次いでリンカーのデザインを変更することによって達成される、エピトープ配列を含むかまたは排除するか、または破壊する。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、MHC受容体に結合すると予測されるリンカーのエピトープの数の制限によって、実質的に非免疫原性である。
MHC受容体に結合することができるエピトープの数が減少すると、T細胞活性化ならびにT細胞ヘルパー機能、B細胞活性化またはアップレギュレーションの減少、および抗体産生の低下の可能性が付随して低下する。低程度の予測されたT細胞エピトープは、TEPITOPE(Sturniolo,T.,etal.(1999)Nat Biotechnol,17:555−61)のような、エピトープ予測アルゴリズムによって決定付けることができる。タンパク質内の所与のペプチドフレームのTEPITOPEスコアは、そのペプチドフレームの、最も一般的なヒトMHC対立遺伝子の複数のものへの結合のKd(解離定数、親和性)の対数であり、Sturniolo,T.etal.(1999) Nature Biotechnology 17:555)に記載されている。スコアは、10〜−10(バインディング・コンストレインツで10e10Kd〜10e−10Kdに相当する)で少なくとも20log以上の範囲であり、例えば、M、I、L、V、FのようなMHC上のペプチドディスプレイ中のアンカー残基として働く疎水性アミノ酸を避けることによって減少させることができる。リンカー配列は、約−5、−6、−7、−8、または−9のTEPITOPE閾値スコア、もしくはTEPITOPEスコア−10で、予測されたT細胞エピトープを有さない。本明細書で使用する「−9」のスコアは、スコア−5よりも厳しいTEPITOPE閾値である。
9merペプチド配列のTEPITOPEスコアは、ポケット電位を加えることによって計算することができ、Sturniolo[Sturniolo,T.,ら(1999)Nat Biotechnol,17:555]に記載される。TEPITOPEスコアは、約−10〜約+10の範囲のこの方法で計算される。
しかしながら、PI位置にある疎水性アミノ酸(FKLMVWY)(配列番号240)を欠く9マーペプチドは、−1009〜−989の範囲で計算されたTEPITOPEスコアを有する。この値は生物学的に無意味であり、疎水性アミノ酸がHLA結合のアンカー残基として機能し、PI中の疎水性残基を欠くペプチドがHLAに対する非結合体と考えられるという事実を反映する。
いくつかの実施形態では、リンカーは、例えば、エピトープ同定プログラムまたはアルゴリズムによって予想されるように、MHCクラスIIエピトープを含むことを予想されているか、または予想されていない。一実施形態では、本開示のリンカーは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のMHCクラスIIエピトープを有するか、または有すると予想される。他の実施形態では、本明細書に開示のリンカーは、約2を超えない、約3を超えない、約4を超えない、約5を超えない、約6を超えない、約7を超えない、約8を超えない、約9を超えない、約10を超えない、約11を超えない、約12を超えない、約13を超えない、約14を超えない、約15を超えない、約16を超えない、約17を超えない、約18を超えない、約19を超えない、約20を超えない、約21を超えない、約22を超えない、約23を超えない、約24を超えない、約25を超えない、約26を超えない、約27を超えない、約28を超えない、約29を超えないか、または約30個を超えないMHCクラスIIエピトープを有するか、または有すると予想される。
いくつかの実施形態では、リンカーは、ProPredツールによって予測されるような、予測されたMHCクラスIIエピトープを含んでもいなくてもよく、これは、Singh,H.およびRaghava,G.P.S.(2001),ProPred: HLA−DR結合部位の予測、バイオインフォマティクス、17(12):1236−37に記載されている。ProPredは、は、抗体タンパク質配列中のMHCクラスII結合領域を予測するための、グラフィカル・ウェブツールである。抗体一局面では、ProPredツールを用いたMHCクラスIIエピトープの予測は、Sturniolo,T.,etal.(1999) Nat Biotechnol,17: 555由来の定量的マトリックスを利用する。
加えて、リンカー配列内の非反復配列およびエピトープの欠如は、B細胞がリンカーに結合するかまたはリンカーによって活性化される能力を制限または強化する。反復配列が認識され、少数のB細胞でも多価の接触を形成することができ、この結果として複数のT細胞非依存性レセプターの架橋し、B細胞の増殖および抗体産生を刺激することができる。対照的に、リンカーは、その長い配列にわたって多くの異なるB細胞と接触することができるが、個々のB細胞は、配列の反復性の欠如のために、個々のリンカーとの接触を1つまたは少数だけ行うことができる。一実施形態では、本開示のリンカーは、典型的には、B細胞の増殖、したがって免疫応答を刺激する傾向がはるかに低い。一実施形態では、リンカーに融合したメディトープは、リンカーに融合していない、対応するメディトープと比較して、低下した免疫原性を有する。
一実施形態では、非反復性のリンカーは、典型的に、高い度合いの反復性を伴うリンカーよりも、抗体へのより弱い接触を形成する。抗体は、多価の分子であり、例えばIgGsは、2つの同一の結合部位を有し、IgMsは、10個の同一の結合部位を有する。ゆえに、反復配列に対する抗体は、高い結合活性を有する上述した反復配列と多価の接触を形成することができ、これは、このような反復配列の効力および/または排除に影響することができる。対照的に、非反復リンカーに対する抗体は、一価相互作用のみを生じ、非反復リンカーを含むペプチドが増加した期間循環中に留まるような免疫クリアランスの可能性を低下させる可能性が高い。
リンカー配列は、例えば、MHCクラスIエピトープの予測のためのアルゴリズムを使用する、候補MHCクラスIエピトープを同定して評価することができる。多くの異なる予測プログラムは、潜在的なMHCクラスIエピトープの同定のために利用可能であり、例えば、エピトープは、所与のポリペプチド内のMHCクラスIエピトープにディスプレイされことが可能ある。多くの例示的なアルゴリズムは、WO2009/051555に記載され、その開示は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。エピトープ同定プログラムの例は、以下の機関や施設のウェブサイトで閲覧できる:微生物学研究所(インド)、ProPred−I tool as described in Singh, H. and Raghavaに記載されたProPred−Iツール、G.P.S.バイオインフォマティクス22;19(8):1009−14 (2003)。Hans−Georg Rammenseeらにより記載されたSYFPEITHI、Immunogenetics(1999)50:213−219。免疫エピトープデータベース。Kim Y, Sidney J, Pinilla C, Sette A, Peters B、BMCバイオインフォマティクス10:394 (2009)。マックスプランク研究所・感染生物学研究所。J. Hakenberg, A. Nussbaum、H. Schild, H−G、Rammensee, C. Kuttler, H.−G.Holzhiitter,P.−M.Kloetzel,S.H.E.Kaufmann,H.−J.Mollenkopf(2003)MAPPP−MHC−I抗原ペプチドプロセシング予測。Applied Bioinformatics 2(3):155−158。デンマーク工業大学、Nielsen M,Lundegaard C,Lund O,Kesmir Cに記載されたNetChop Server、Immunogenetics5‘(1−2):33−41, 2005。
これらの予測ウェブサイト内で使用されるアルゴリズムは、同じサイトで閲覧できる。以下は、適切な予測アルゴリズムを説明する非網羅的な参照リストである: Parkerら(1994)個々のペプチド側鎖の独立した結合に基づいた、潜在的HLA−A2結合ペプチドをランク付けするためのスキーム、J. Immunol.,152,163−175;Hans−Georg Rammenseeら(1999)SYFPEITHI:MHCリガンドおよびペプチドモチーフのデータベース、Immunogenetics50:213−219;Recheら(2002)プロフィールモチーフを使用するMHCクラスI結合ペプチドの予測。Hum Immunol.63(9):701−9;Greenbaumら(2007)Journal of Molecular Recognition 20(2):75−82。
一実施形態では、本開示のリンカーは、MHC受容体のペプチドを含まない。一実施形態では、本開示のリンカーは、MHCクラスIまたはクラスIIエピトープを含まない。他の実施形態では、本開示のリンカーは、予測されたMHCクラスIエピトープ、例えば、エピトープ同定プログラムまたはアルゴリズムによって予想されたMHCクラスIエピトープを含まない。一実施形態では、本開示のリンカーは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のMHCクラスIエピトープを有するか、有すると予想される。他の実施形態では、本開示のリンカーは、約2を超えない、約3を超えない、約4を超えない、約5を超えない、約6を超えない、約7を超えない、約8を超えない、約9を超えない、約10を超えない、約11を超えない、約12を超えない、約13を超えない、約14を超えない、約15を超えない、約16を超えない、約17を超えない、約18を超えない、約19を超えない、約20を超えない、約21を超えない、約22を超えない、約23を超えない、約24を超えない、約25を超えない、約26を超えない、約27を超えない、約28を超えない、約29を超えないか、または約30個を超えないMHCクラスIエピトープを有するか、有すると予想される。
いくつかの実施形態では、リンカーは、反応性の機能を含んでおり、それは、誘導体化、例えば、メディトープのコンジュゲーション、基質またはリンカーを介して、例えば診断薬、例えば造影剤または治療剤といった薬剤に使用される。リンカーは、例えば、リジン、チロシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、FGE配列、またはコンジュゲーティングスカフォールドで使用できる非天然アミノ酸、リンカーまたは薬剤を含む、1つまたは複数のコンジュゲーション部位を含む。いくつかの実施形態では、コンジュゲーション部位の数および場所は、コンジュゲーション部位を追加または排除することによって制御でき、それによって配列的にコンジュゲートされた薬剤の量または場所を制御する。PAS化配列、ソルターゼ配列、またはインテイン配列を含むリンカーは、さらに1つまたは複数のコンジュゲーション部位を含む。例えば、いくつかの実施形態では、メディトープは、例えばリンカーに含まれる1つまたは複数のPAS化配列を含む。PAS化配列は、プロリン、アラニン、およびセリンを定義またはランダム配列を含むことができる。PAS化配列は、したがって中性および疎水性アミノ酸を含むペプチドを含むことができる。配列番号231は、典型的な三価メディトープを開示する。配列は、Morathらによって開示されたPAS化を含む。Mol Pharm 2015年、5月4日;12(5):1431−42。PAS化は、薬物送達を改善し、血漿半減期を延長し得る。例えば、PAS化は、タンパク質の流体力学的容積を増加させる頃ができ、したがって、腎臓濾過の前に循環を延長し、および/または生物活性を高める。
いくつかの実施形態では、チオール官能基は、リンカー上の任意の適切な位置に導入することができ、想像剤、他のタンパク質およびペプチド、金属キレート化剤、siRNAs、ナノ粒子、細胞傷害性剤などの診断剤または治療剤を含む、多数の外部試薬を用いて選択的に修飾することができる。
例えば、いくつかの実施形態では、メディトープ、その装飾された装飾体、またはリンカーは、任意の1、2、3または4つの残基が、リジンなどのコンジュゲートされたアミノ酸で任意に置換された配列を含む。いくつかの実施形態の鎖は、コンジュゲートされたペプチジル部分を含み、それは金属イオンに結合した金属キレート剤、小分子、化学療法剤、治療抗体またはその機能的フラグメント、毒素、放射性同位体、酵素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、オリゴヌクレオチド、有機または無機ナノ粒子、RNAi分子、siRNA、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、染料、蛍光物質または発光物質、酵素、増強剤、放射性物質またはキレート剤を含む。
B.メディトープ
本明細書では、細胞表面抗原の分布を代替えの開示された方法、ならびにベクター、細胞、ライブラリー、およびそれらを含有する他のシステムと共に使用するためのメディトープが提供される。
本明細書で使用される用語“メディトープ”は、メディトープ利用可能抗体またはその抗体フラグメントのメディトープ結合部位のような、中央空洞に結合するペプチドまたは複数のペプチドを参照し、その抗体またはその抗体結合フラグメントは、40位のスレオニン、41位のアスパラギン、およびその軽鎖の85位のアスパラギン酸を有し、Kabatナンバリングにしたがうか、または本開示のセツキシマブのメディトープ結合部位、メディトープ利用可能トラスツズマブ、またはメディトープ利用可能M5A内の対応する残基を含むメディトープ結合部位を含む。いくつかの実施形態では、メディトープは、好ましくは開示されたリンカーを介して、抗体に融合することができる。いくつかの実施形態では、メディトープは、遊離メディトープである。例示的なメディトープは、cQFD(配列番号1)およびcQYN(配列番号2)ペプチドおよびそのバリアント(“メディトープ・バリアント”または“バリアント・メディトープ”)を含むが、これらに限定されない。他の分子は、メディトープに類似した機能的特徴を有する、メディトープ利用可能抗体のメディトープ結合部位に結合することもできる。“メディトープ・アナログ”として定義される上述した分子は、低分子、アプタマー、核酸分子、ペプチボディ、およびメディトープと同じメディトープ結合部位に結合することができる他の物質を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、メディトープ配列は、本開示のように環化される。(例えば、末端(または末端近くの)システイン残基はジスルフィド結合を形成する)。
提供されたメディトープは、メディトープ・バリアント(バリアント・メディトープとも呼ばれる)であり、1つまたは複数の装飾、例えば、メディトープ1または2(メディトープ配列番号1または2)と比較した構造修飾、およびその製造方法を有する。いくつかの実施形態では、cQFDおよびcQYNメディトープは、メディトープ・バリアントのデザインにおける出発点として、使用される。いくつかの局面では、メディトープ・バリアントは、親和性の増加または代替、pH依存の代替、または異なる親和性などの代替特性を、例えば、非修飾のメディトープ、cQFDおよびcQYNと比較して、本開示のセツキシマブおよび他の抗体を含む、1つまたは複数の提供されたメディケート利用可能抗体の異なる生理的条件化で有するように設計される。メディトープ・バリアントは、種々の化学および生物物理学的方法を利用して、設計され製造される。
メディトープ・バリアントは、これに限定されるものではないが、メディトープへの修飾を含む、例えば、cQFD およびcQYNおよび他の本開示のバリアントを含む。適切な修飾には、限定されないが、ペプチド環化の様式および/または位置に対する修飾、環状ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸成分に対する修飾などの当技術分野で公知の任意のペプチド修飾が含まれるが、これらに限定されないか、または環状ペプチドから1つまたは複数のアミノ酸を付加または欠失させることである。具体的な例では、cQFDは、下記の修飾を1つまたは複数伴って代替され得る:Arg8の修飾、Phe3の修飾、Leu5の修飾、LeulOの修飾、ペプチド環化の様式への変化、および/または1つまたは複数の位置での水和可能なカルボニル官能性の取り込み、および1つまたは複数のアミノ酸の欠失または付加。cQYNのケースでは、下記を1つまたは複数含み得る:Arg8の修飾、Leu5の修飾、LeulO修飾、ペプチド環化の様式への変化、および/または1つまたは複数の位置での水和可能なカルボニル官能性の取り込み、および1つまたは複数のアミノ酸の欠失または付加。メディトープ内の或るアミノ酸は、欠失されるか、または異なる天然アミノ酸または非天然アミノ酸に置換されるか、またはメディトープは、例えば、“クリック化学”を使用して、化学的にフラグメントにコンジュゲートされ得る。本明細書では、配列番号1のArg9がシトルリンに変異したメディトープがセツキシマブに結合することが知られている。加えて、Fabへのさらなる接触を行うために、アミノおよびカルボキシ末端を、メディトープ・バリアントの環状部分を超えて(すなわち、付加的に)さらなるアミノ酸で伸長させることができる。例えば、タンパク質Lは、cQFDメディトープのC末端に付加され、一次データはそれがより高い親和性に結合することを示す。
また、提供されるのは、メディトープ利用可能抗体のメディトープ結合部位への特異親和性を伴う、自己架橋性抗体である。いくつかの実施形態では、自己架橋性抗体は、例えば配列番号1または配列番号2と比較して、メディトープ結合部位の低いか、または低下した結合親和性を伴う、メディトープまたはバリアントを含む。いくつかの実施形態では、低い、または低下した結合親和性を伴うメディトープまたはバリアントを含む自己架橋性抗体は、ある条件下で自己架橋性を低下または排除することができる。例えば、より高い濃度で、および/または追加の遊離メディトープを必要とせずに、自己架橋能力を低下させた自己架橋抗体を、使用または貯蔵することが可能である。このような抗体は、生産または貯蔵中に溶液から析出したり、大きな凝集物を形成したりする可能性が低く、抗体―抗体自己架橋相互作用を促進するのに十分高い抗原濃度で、抗体または抗原内在化も改善する。
いくつかの実施形態では、自己架橋性抗体は、例えば、配列番号1または配列番号2と比較した、メディトープ結合部位の高いまたは増加した結合親和性を伴う、メディトープまたはそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、高いまたは増加した結合親和性を伴うメディトープまたはバリアントを含む自己架橋性抗体は、ある条件下で自己架橋性を増加することができる。これは、例えば、抗原の濃度が特に細胞の表面で低いまたは低下した場合、抗体または抗原の内在化の増加に利点的である。これは、また、自己架橋性抗体のより低い量または濃度の投与が望まれる場合に、有利である。
いくつかの実施形態では、メディトープは、表1および2にリストされたものと同時に、長さが16アミノ酸までのものなどの、追加のアミノ酸を有するメディトープを含む。例えば、いくつかの局面では、メディトープは、メディトープ1、2または15〜55のうちの1つであり、第1の残基の前、すなわち0位にセリンをさらに含む。表1にリストされたメディトープは、ジスルフィド結合を用いてC末端とN末端とを連結するが、特定のメディトープは、連結が2つの末端残基の間にないような追加の配列、例えばテールまたはリーダーを含む。例示的なテールおよびリーダーの配列は、長さが1〜50のアミノ酸を有し、例えば、長さが1および40、1および30、1および25、1および20、1および15、1および10、9、8、7、6、5、4、3、または2のアミノ酸を有し、本明細書では上述したテールはR5AおよびR5Bと記載されている。例示的なテールおよびリーダーの配列は、1つまたは複数のG、S、P、K、およびまたはD残基を含む。例示的なテールおよびリーダーは、GGGSK、G、GPGGSDPGおよびGPGGSDPGを含む。例えば、配列番号31を有するメディトープは追加のテールを含み、ジスルフィド結合は、2つの末端残基の間にないことを意味する。同様に、表(配列番号187〜190、207)の或る他のメディトープは、テールおよび/またはリーダーを含み、末端残基以外の残基間の結合をもたらす。表2のペプチドについては、ラクタム架橋、ジスルフィド以外の結合([3+2]環化付加など)、または結合がない(例えば、非環式または線状バリアント)ものが使用される。本明細書に記載された実施形態に従って使用される追加のメディトープは、セツキシマブまたは任意の他の治療抗体の抗体フレームワーク結合界面(すなわち、Fab軽鎖と重鎖との間)に結合する、本明細書で定義されるいずれかのメディトープを含む。例えば、環状ペプチドcQFDおよびcQYNに加え、いくつかの実施形態は、cQFDおよびcQYNの1つまたは複数のバリアントを含む。
メディトープ・バリアントは、典型的にアミノ酸の5と16の間の長さのアミノ酸配列を有し、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16の長さのアミノ酸、8から13の間の長さのアミノ酸、9から12の間の長さのアミノ酸を有する。メディトープは、追加的にリンカーまたは薬剤を含むもう1つペプチドなどの、もう1つの分子に(融合タンパク質またはペプチドの一部として)コンジュゲートまたは連合されることができる。ゆえに、本ケースで、メディトープを含む化合物は、本パラグラフに記載された長さ以上の追加アミノ酸残基を含み、そのメディトープ部分は5および16の間のアミノ酸を含み、複合体または化合物は、追加のアミノ酸を含む。実施例は本明細書に記載され、例えば上記配列番号31である。
いくつかの実施形態では、バリアント・メディトープは環状ペプチドである。他の実施形態では、それらは直鎖または非環状ペプチドである。
メディトープは、ペプチドまたはそのようなペプチドに由来する環状ペプチドを含むことができ、例えば、ペプチドは、以下の式を有する:
上式中、
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12 (式V)、
例えば:
X1=Cys、Gly、β−アラニン、ジアミノプロピオン酸、β−アジドアラニン、または空;
X2=Ginまたは空;
X3=Phe、Tyr、β−β’―ジフェニル−Ala、His、Asp、2−ブロモ―L―フェニルアラニン、3−ブロモ―L―フェニルアラニン、または4−ブロモ―L―フェニルアラニン、Asn、Gln、修飾Phe、水和可能なカルボニル含有残基;またはボロン酸含有残基;
X4=AspまたはAsn;
X5=Leu;β―β’−ジフェニル−Ala;Phe;Trp;Tyr;フェニルアラニン、トリプトファン、またはチロシンの非天然類似体;水和可能なカルボニル含有残基;またはボロン酸含有残基;
X6=Ser;
X7=ThrまたはSer;
X8=Arg、Ser、修飾Arg、または水和可能なカルボニルまたはボロン酸含有残基;
X9=Arg、Ala;
X10=Leu、Gln、Glu、β−β’−ジフェニル−Ala;Phe;Trp;Tyr;フェニルアラニン、トリプトファン、またはチロシンの非天然類似体;水和可能なカルボニル含有残基;またはボロン酸含有残基;
X11=Lys;および
X12=Cys、Gly、7−アミノヘプタン酸、β−アラニン、ジアミノプロピオン酸、
プロパルギルグリシン、アスパラギン酸、イソアスパラギン酸、または空、である。
いくつかの局面では、修飾されたArgは、図1に示される式の構造を有する。いくつかの局面では、修飾されたPheは、フェニル環に組み込まれた1つまたは複数のハロゲンを伴うPheである。いくつかの局面では、式Vは、配列番号1または配列番号2ではない。
いくつかの実施形態では、メディトープは、式(VI)の構造を有するペプチドである:
上式中、“*”でマークされたセンターは、“R”または“S”の外形であり;
R3およびR3’は、独立したHまたはフェニルであり、C1−4アルキル、−OH、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから、独立して選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよく;
R5は、
(A)C1−8アルキルであり、オキソ、アセチル、ケタール、−B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、−CO2C1−4アルキル、
−CH=CH−CHO、−CH=CH−C(O)C1−4アルキル、−CH=CH−CO2C1−4アルキル、−CO2Hおよび−CONH2から選択された、1つまたは複数の置換基で置換されてもよく;または
(B)以下で置換されたC1−4アルキル;
a)1または2のフェニルであって、各フェニルは、−OH、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから独立して選択される1個、2個または3個の置換基で置換されてもよく、 または
b)ナフチル、イミダゾール、またはインドールであり;
R6は、−C1―4アルキレン―OHまたは−C1―4アルキレン―SHであり;
R7は、−C1―4アルキレン―OHまたは−C1―4アルキレン―SHであり;
mは、0、1、2、3、4、または5であり;
R8は:
(a)−OH、−NRaRb、−N(Rc)C(0)Re、または−N(Rc)C(= Rd)Reであって;
Raは、Hであり;
Rbは、HまたはC1−8アルキルであり、オキソ、アセタール、ケタール、−B(OH)2、−SH、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、−CH=CH−CHO、−CH=CH−C(O)C1−4アルキル、−CH=CH−CO2C1−4アルキル、−CO2Hおよび−CO2C1−4アルキルからなる群から選択された、1つまたは複数の置換基で置換されてもよく;
Rcは、H、C1−8アルキル、C3−8シクロアルキル、分枝アルキルまたはアリールであり;
Rdは、HまたはC1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C3−8シクロアルキル、分岐アルキル、アリール基であり、−N3、−NH2、−OH、−SH、ハロゲン、オキソ、アセタール、ケタール、−B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、−CH=CH―CHO、−CH=CH−C(O)C1−4アルキル、−CH=CH−CO2C1−4アルキル、−CO2H、および−CO2C1−4アルキル基からなる群より選択された、1つまたは複数の置換基によってそれぞれ置換されても良く;
Reは、H、−NHRd、もしくはC1−12アルキル、C3−8シクロアルキル、C2−12アルケニル、C2−8アルキニルまたはアリール基であり、−N3、−NH2、−OH、−SH、オキソ、C2−4アセタール、C2−4ケタール、―B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、−CH=CH−CHO、−CH=CH−CHO、−CH=CH−C(O)C1−4アルキル、−CH=CH−CO2C1−4アルキル、および−CO2−C1−4アルキルからなる群より選択された、1つまたは複数の置換基によって、それぞれ置換されることができるか、または
(b)オキソ、アセタール、ケタール、―B(OH)2、ボロン酸エステル、−SH、−OH、ホスホン酸エステル、オルトエステル、−CH=CH―CHO、−CH=CH−C(O)C1―4アルキル、−CH=CH−CO2C1―4アルキル、または−O2C1―4アルキル;
R9は、C1−4アルキルまたは−C1−2アルキレン−Rxであり;
Rxは、−CO2H、−CONH2、−CH2NHC(O)NH2、または−CH2NHC(=NH)NH2であり;
R10は:
(1)オキソ、アセタール、ケタール、−B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホネートエステル、オルトエステル、−CH=CH―CHO、−CH=CH−C(O)C1−4アルキル、−CH=CH−CO2C1−4アルキル、−CO2C1−4アルキル、−CO2H、および−CONH2からなる群より選択された、1つまたは複数の置換基によってに置換されることができる、C1−8アルキル;または
(2)1または2個のフェニル、1個のナフチル、イミダゾール、またはインドールによって置換されたC1−4アルキルであり、各フェニルは、−OH、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから独立して選択される1個、2個または3個の置換基で置換されることができ;
nは、0または1であり;
pは、0または1であり;
Xは、C1−8アルキレンまたはC2−8アルケニレンであり、それらの各炭素は、オキソ、−C(O)−、−NHC(O)−、−CO2H、−HN2、または−NHC(O)Ryによって置換できる;
上述したアルキレンの1つの炭素は、−C(0)NH−、5員ヘテロアリール環、または−S‐S‐によって置き換えができ; および
Ryは、−C1―4アルキル、−CH(Rz)C(O)−または−CH(Rz)CO2Hであり;
Rzは、−OH、−SH、または−NH2によって置換可能な−Hまたは−C1−4アルキルであるか;
またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかのケースでは、XはC1−8アルキリンまたはC2−8アルケニレンであり、それらの各炭素は、オキソ−CO2H、−H2、または− HC(O)Ryによって置換されてもよく;上述のアルキレンの1つの炭素は、−C(O)NH−、−HNC(O)−、5員ヘテロアリール環、または−S‐S‐によって任意的に置き換えられ;上述のアルケニレンの1つ炭素は、−NHC(O)−によって任意的に置き換えられ;Ryは、−C1−4アルキル、−CH(Rz)C(O)−または−CH(Rz)CO2Hであり;Rzは、−OH、−SH、または−NH2によって置換可能な−Hまたは−C1−4アルキルであるか;またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかのケースでは、XはC1−8アルキレンまたはC2−8アルケニレンであり、それらは−CO2H、−H2、または‐HC(O)Ryであり;上述したアルキレンの1つの炭素は、‐C(O)H−、5員ヘテロアリール環、または−S‐S‐によって任意的に置き換えられ;Ryは、−C1−4アルキルまたは−CH(Rz)CO2Hであり;Rzは、‐OH、‐SH、または−NH2によって置換可能な−Hまたは−C1−4アルキルであるか;またはその薬学的に許容される塩である。
いくつかのケースでは、それらのメディトープは配列番号1や2ではなく、またはこのような配列が由来の環状ペプチドでもなく、および/またはメディトープ1または2ではない。
式(VI)のメディトープのいくつかの実施形態では、mは、0、1、または2である。他の実施形態では、R3は、Hまたはフェニルであり、R3はフェニル、2−ブロモフェニル、3−ブロモフェニルまたは4−ブロモフェニルである。R5は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec‐ブチルまたはtert‐ブチルであり、それぞれ、オキソ、‐B(OH)2、‐CO2H、または‐CONH2基によって置換されるか、またはブロモまたはクロロ置換基によってそれぞれ置換された1つまたは2つのフェニル基によってそれぞれ置換できる。さらなる実施形態では、R8は、−OH、‐NH2、‐N(Rc)C(O)Re、または‐N(Rc)C(=NRd)Reである。またさらなる実施形態では、RcはHまたはメチルであり、RdはHまたはC1−4アルキルであり、 ReはC1−4アルキルまたは‐NH(C1―4アルキル)である。他の実施形態では、R9はメチルまたはエチルであり、−CO2H、−CONH2、−CH2NHC(O)NH2、または−CH2NHC(=NH)NH2によって置換される。さらに他の実施形態では、R10は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec‐ブチルまたはtert‐ブチルであり、オキソ、−B(OH)2、−CO2H、または‐CONH2基によってそれぞれ置換される。さらに他の実施形態では、‐X−NH‐は、‐Cys−Cys‐、‐Gly‐Gly‐、‐C(O)(CH2)6−NH−、‐β‐Ala−p‐Ala‐、‐C(O)CH(NH2)CH2CH=CHCH2CH(CO2H)−NH−、‐C(O)CH(H2)CH2 HC(O)CH2CH(CO2H)−H−、−β−Ala―C(O)CH2CH(CO2H)−NH−、または‐C(O)CH(H2)CH2―トリアジニル−CH2−CH(CO2H)−NH−である。
いくつかの実施形態では、メディトープは、式(VII)の構造を有するペプチドである:
“*”でマークされたセンターは、“R”または “S”の形である。記号
は、R1AからL1Aへの結合点を示す。
R3およびR3’は、それぞれ独立して、Hまたはフェニルであり、任意的にC1−4アルキル、−OH、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから独立して選択される1、2または3個の置換基で置換される。
R5は:(A)C1−8アルキルであり、任意的にオキソ、アセタール、ケタール、‐B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、‐CO2C1−4アルキル、−CH=CH−CHO、 −CH=CH−C(O)C1−4アルキル、−CH=CH−CO2C1−4アルキル、−CO2H、および−CONH2から選択された1つまたは複数の置換基によって置換されるか;もしくは
(B)C1−4アルキルであって:a)1つまたは複数のフェニル基であって、各フェニルは、任意的に−OH、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードより独立して選択された、1、2、または3個の置換基で置換されるか;またはb)ナフチル基、イミダゾール基、またはインドール基によって置換される。
R6は、‐C1−4アルキレン−OH、または‐C1−4アルキレン−SHである。R7は、C1−4アルキレン−OH、または‐C1−4アルキレン−SHである。シンボルmは、0、1、2、3、4、または5である。
R8は、‐OH、‐NRaRb、‐N(Rc)C(O)Re、または‐N(Rc)C(=NRd)Reである。Ra、はHである。Rbは、H、または、任意的にオキソ、アセタール、およびケタール−B(OH)2、−SH、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、−CH=CH−CHO、−CH=CH―C(O)C1−4アルキル、CH=CH−CO2C1−4アルキル、‐CO2H、または‐CO2C1−4アルキルより選択された1つまたは複数の置換基によって置換されるC1−8アルキルである。Rcは、H、C1−8アルキル、C3−8シクロアルキル、分岐アルキルまたはアリールである。Rdは、HまたはC1−8アルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、C3−8シクロアルキル、分岐アルキル、またはアリールであり、それらは、任意的に−N3、−NH2、−OH、−SH、ハロゲン、オキソ、アセタール、ケタール、−B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、−CH=CH‐CHO、−CH=CH−C(O)C1−4アルキル、−CH=CH−CO2C1−4アルキル、−CO2H、および−CO2C1−4アルキル基より選択される1つまたは複数の置換基によって、置換される。ReはHであり;‐HRd;またはC1−2アルキル、C3−8シクロアルキル、C2−12アルケニル、C2−8アルキニル、またはアリール基であり、それぞれ任意的に−N3、−NH2、−OH、−SH、オキソ、C2−4アセタール、C2−4ケタール、−B(OH)2、ボロン酸エステル、ホスホン酸エステル、オルトエステル、−CH=CH−CHO、−CH=CH−C(O)C1−4アルキル、−CH=CH−O2C1−4アルキル、および‐CO2C1−4アルキルから選択された1つまたは複数の置換基によって置換される。代替的に、R8は、C1−12アルキルであり、オキソ、アセタール、ケタール、−B(OH)2、ボロン酸エステル、−SH、−OH、ホスホン酸エステル、オルソエステル、−CH=CH−CHO、−CH=CH−C(O)C1−4アルキル、‐CH=CH−CO2C1−4アルキル、または−CO2C1−4アルキルによって置換される。
R9はC1−4アルキルまたは−C1−2アルキレン−Rxである。Rxは、−CO2H、−COH2、‐CH2NHC(O)NH2、または‐CH2NHC(=NH)H2である。
R10は:(1)C1−8アルキルであって、任意的にオキソ、アセタール、ケタール、−CH=CH−CHO、−CH=CH−C(O)C1−4アルキル、−CH=CH−CO2C1―4アルキル、−CO2C1−4アルキル、−CO2H、および−CO H2から選択された1つまたは複数の置換基から置換されるか;または(2)C1−4アルキル基であって、1または2つのフェニル基、または1つのナフチル、イミダゾール、またはインドール基によって置換され、各フェニルは、−OH、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードより独立して選択された1、2、または3つの置換基によって置換される;
記号nは、0または1である。記号pは0または1である。
Xは、(1)本明細書で論じるメディトープ環化ストラテジーのいずれかから生じるリンカーであり;(2)置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、置換シクロアルキレン、置換ヘテロシクロアルキレン、置換アリーレンまたは置換ヘテロアリーレンもしくは(3)C1−8アルキレンまたはC2−8アルケニレンであり、それらの各炭素は、オキソ、−C(O)−、−NH2、−NHC(O)−または−NHC(O)Ryによって任意的に置換される。XC1−8アルキレンの1つ炭素は、任意的に−C(O)NH−、5員ヘテロアリール環、または−S‐S‐によって置き換えられる。Ryは、−C1−4アルキルまたは‐CH(Rz)C(O)−または‐CH(Rz)CO2Hである。Rzは、−Hまたは、任意的に−OH、−SH、または−NH2によって置換される−C1−4アルキルである。式VIIは、全ての適切な薬学的に許容される塩である。(1)では、Xはその化学的に三価のため、置換リンカーであると考えられる。Xは、任意的に上記のように(例えば、−NH2およびオキソ)更なる置換基を任意的に含むことができるためである。いくつかの実施形態では、Xは、:
であり、上式中、**は、式VIIのXに結合したグルタミンへの結合点を表し、***は、式VIIのXおよびリジンに結合した窒素への結合点を示す。記号
は、分子の残りの部分へのXの結合点を示す。
式VIIのメディトープのいくつかの実施形態では、mは、0、1、または2である。他の実施形態では、R3は、Hまたはフェニルであり、R3はフェニル、2−ブロモフェニル、3−ブロモフェニルまたは4−ブロモフェニルである。さらなる実施形態では、R5は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec‐ブチルまたはtert‐ブチルであり、それぞれ任意的にオキソ、−B(OH)2、−CO2H、または−CONH2基によって置換されるか、またはブロモまたはクロロ置換基にそれぞれ置換された1または2のフェニル基によって、それぞれ置換される。R8は、−OH、−NH2、−N(Rc)C(O)Re、または−N(Rc)C(=NRd)Reである。またさらなる実施形態では、Rcは、Hまたはメチル、Rdは、HまたはC1‐4アルキル、ReはC1‐4アルキル、または−NH(C1‐4アルキル)である。他の実施形態では、 R9は、メチルまたはエチルであり、任意的に−CO2H、−CO NH2、‐CH2NHC(O)NH2、または‐CH2NHC(=NH)NH2に置換される。さらに他の実施形態では、R10はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、またはtert‐ブチルであり、それぞれ任意的に、オキソ、−B(OH)2、−CO2H、または−CONH2基で置換される。さらに他の実施形態では、−X−H−は、−Cys−Cys‐(例えば、ジスルフィド架橋を介して結合している)、−Gly‐Gly−、−C(O)(CH2)6−NH−、‐β‐Ala−β‐Ala−、−C(O)CH(NH2)CH2CH=CHCH2CH(CO2H)−NH−、−C(O)CH(NH2)CH2NHC(O)CH2CH(CO2H)−NH−、−β‐Ala−C(O)CH2CH(CO2H)−NH−、または−C(O)CH(NH2)CH2−トリアジニル‐CH2−CH(CO2H)−NH−である。
1.装飾
構造的および熱力学的データに基づいて、本明細書に記載のメディトープ1および2内の複数の位置が、修飾のための標的部位として同定されており、例えば、全体的な結合親和性を増強し、および/または本明細書に記載の別の特性を代替えするために、異なる天然または非天然アミノ酸で置換することができる。このような修飾は、ヘッド−テールの環状ラクタムペプチドを生成するcQFDまたはcQYNの修飾、Arg8の修飾、3位の修飾(例えば、cQFDのPhe3またはそのバリアント)、Leu5の修飾、Leu10の修飾、および/または水和可能なカルボニル官能性の組み込み(図2を参照)を含むが、これらに限定されない。本明細書に示すように、cQFDのオリジナルのメディトープにおけるアラニンへのPhe3、Leu5およびArg8のそれぞれの変異は、得られた化合物のメディトープ利用可能抗体結合界面に対する親和性を10〜140倍低下させた。いくつかの局面では、バリアント・メディトープは、配列番号1または2、または表1または2にリストされた他のメディトープの1つまたは複数の位1、3、5、8、10、および12での修飾を有するものを含む。
a.位置8
いくつかの実施形態では、メディトープ・バリアントは、メディトープ1または2の位置8(Arg8)に対応する、位置の修飾を含む。非修飾ペプチド(cQFD;配列番号1)、Arg8は伸長され、メディトープが利用可能抗体重鎖のQ105の重鎖カルボニルと水素結合を形成する。この残基に関する直接的な領域は、疎水性であるが溶媒に曝露されている。いくつかの局面では、メディトープは、本位置(例えば、修飾Arg8)での修飾された残基を含む。いくつかの実施例では、修飾された残基は、メディトープ利用可能抗体H結合に有用なArg8残基のイミニウム官能性を維持し、置換または非置換疎水性アームを導入して空洞を満たす。このような修飾は、リガンドドッキング計算によって支持されるように、エントロピー増加のために結合の有意な増加をもたらす。そのような修飾は、N―アルキルグアニジニウム基またはアルキル−アミジン官能基を使用することによって組み込むことができる。どちらの場合にも、末端N−原子の置換基は、アルキルまたはアリールになることができ、アルキルまたはアリール基の各位置は、グループ内の末端位置を含む追加の機能性に置換されることができる。一実施例では、修飾されたアルギニン(修飾されたArg8)は、図1に示した構造を有し、例えば、NH2上のブチル基(NHRとして図1に示す)で、配列番号1または2のメディトープのArg8のため置換される。いくつかの局面では、バリアント・メディトープは、8位のn−ブチル‐アルギニンまたはブチルアミジン修飾を含む。
b.3位
いくつかの実施形態では、メディトープ・バリアントは、メディトープ1のPhe3のような3位に対応する位置で修飾を含む。メディトープ・バリアントPhe3Tyr cQYN(配列番号2)のヒドロキシル基は、cQFD(配列番号1)と比較して、Arg8側鎖の伸長された配座における代替例を有する。本明細書のデータによって、Fabへの水結合を伴う、好ましい水素結合ネットワークの形成が示唆される。エンタルピーによって駆動される最適化は、薬物デザインにおける多くの小分子手法で成功することが判明しており、提供するメディトープには、エントロピーの上昇を操作する機会がある。いくつかの実施形態では、メディトープデザインにおいてエンタルピーおよび/またはエントロピーを上昇させる手法を使用して、例えば、結合を最適化してバリアント・メディトープを生成する。
例えば、メディトープ利用可能抗体に結合すると、Phe3の疎水性フェニル環は、メディトープ利用可能抗体Fabの側鎖残基のかなり極性の配列に囲まれる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のハロゲンをこの残基のフェニル環に導入して、極性側鎖残基とのハロゲン結合相互作用を可能にする。ハロゲン結合は、水素結合と類似しているが、臭素または塩素(または他のハロゲン)などのハロゲンと酸素原子との相互作用を伴う比較的強い非共有結合である。いくつかの局面では、その位置での残基は、ハロゲン残基を組み込むよう修飾される。いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体との、例えば、メディトープ利用可能抗体のそれぞれ、Tyr87(軽鎖)、Gln38、および/またはTyr91(重鎖)位でのハロゲン結合に適した位置に臭素原子が位置するように、Phe3を、2−ブロモ−、3−ブロモ−、または4−ブロモフェニルアラニンで置き換える。そのようなフェニルアラニン誘導体は市販されており、いくつかの局面では、固相ペプチド合成(SPPS)によって、環式ペプチド・メディトープ・バリアントに組み込まれる。例示的なバリアント・メディトープには、2−ブロモ−L−フェニルアラニン、3−ブロモ−L−フェニルアラニン、または4−ブロモ−L−フェニルアラニンをメディトープ1のPhe3に対応する位置に含有するものを挙げることができる。
他の例では、メディトープに、追加のフェニル基をこの位置で、例えば、Phe3をβ,β’−ジフェニルアラニンに置き換えることによって組み込む。
c.5および10位(例えば、メディトープ1または2のLeu5、Leu10)
いくつかの実施形態では、メディトープ・バリアントは、メディトープ1または2の5または10位(Leu5またはLeu10)に対応する位置に修飾を含有する。本明細書において示されているとおり、メディトープ1のLeu5およびLeu10の側鎖は、疎水性をメディトープ利用可能Fabに接触させる。或る実施形態では、異なる天然アミノ酸または非天然アミノ酸を、これらの位置のうちの一方または両方に組み込み、例えばそれによって、伸長され得る表面積量を変え、メディトープの1つまたは複数の特性、例えば、親和性を代替する。一実施形態では、天然アミノ酸(Phe/Tyr/Trp)および非天然類似体(例えば、β,β’−ジフェニル−L−アラニンまたは、分枝アルキル、ナフチルなどの伸長された芳香族、もしくは他の疎水基を包含する側鎖が組み込まれているアミノ酸)を、SPPSを介して、一方または両方の位置に体系的に導入する。
2.コンジュゲーション
ある実施形態では、メディトープは、治療剤、診断剤、または検出可能な薬剤のような薬剤にコンジュゲートされる。ペプチドは、化学リンカーのような適切な方法で、薬剤にコンジュゲートされる。或る実施形態では、化学リンカーは、共有リンカーである。実施形態では、化学リンカーは、置換または非置換ヘテロアルキレン、置換または非置換シクロアルキレン、置換または非置換ヘテロシクロアルキレン、置換または非置換アリーレンおよび/または置換または非置換ヘテロアリーレンを含む。
ある実施形態では、化学リンカーは、PEGリンカーを含む。ある実施形態では、化学リンカーは、ペプチド・リンカーを含む(例えば、グリシン、リジン、チロシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン酸、グルタミン酸、などの1つまたは複数の天然アミノ酸、非天然アミノ酸)。
化学的リンカーは、N末端、C末端および/または側鎖のような、いかなる適切な位置でメディトープに結合することができる。或る実施形態では、化学リンカーは、N末端に結合する。もう1つの実施形態では、化学リンカーは、C末端に結合する。さらにもう1つの実施形態では、メディトープは1つまたは複数の化学リンカーを含み、その化学リンカーはN末端およびC末端に結合する。いくつかの実施形態では、化学リンカーは、アミノ酸配列GGGKを含む。
本開示の或る実施形態では、化学リンカーは、抗体‐薬物コンジュゲートを形成するための当該分野で公知の市販のリンカーをさらに含み得る。従って、或る実施形態では、化学リンカーは、下記を構成する類から選択されたリンカーを含み得る:Ala‐Ala‐Asn−PAB、ALD‐BZ‐OSu、ALD‐ジ‐EG‐OPFP、ALD‐ジ‐EG‐OSu、ALD‐モノ‐EG‐OPFP、ALD‐モノ‐EG‐OSu、ALD‐テトラ‐EG‐OPFP、ALD‐テトラ‐EG‐OSu、 ALD‐トリ‐EG‐OPFP、ALD‐トリ‐EG‐OSu、BCOT−ジ‐EG‐OPFP、BCOT‐ジ‐EG‐Osu、BCOT‐テトラ‐EG‐OPFP、BCOT‐テトラ‐EG‐OSu、BCOT‐トリ‐EG‐OPFP、BCOT‐トリ‐EG―Osu、Boc‐NMe‐DAE、BrAH、Br‐ジ‐EG‐OSu、Br‐テトラ‐EG‐OSu、Br‐トリ‐EG‐OSu、COT‐酢酸、COT‐ジ‐EG‐OPFP、COT‐ジ‐EG‐OSu、COT‐テトラ‐EG‐OPFP、COT‐テトラ‐EG‐OSu、COT‐トリ‐EG‐OPFP、COT‐トリ‐EG‐OSu、DHA、DHH、Fmoc‐Ala‐Ala‐Asn−PAB―PNP、Fmoc−Phe‐Lys(Trt)−PAB‐PNP、Fmoc‐Val‐Cit−PAB、Fmoc−Val‐Cit−PAB―PNP、HAC、MAH、MAL‐di‐EG‐OPFP、MAL‐ジ‐EG‐OSu、MAL‐HA‐OSu、MAL‐テトラ‐EG‐OPFP、MAL‐テトラ‐EG‐OSu、MAL‐トリ‐EG‐OPFP、MAL‐トリ‐EG‐OSu、MBA、MC―Val―Cit−PAB―PNP、MDB、MEL‐ジ‐EG‐OPFP、MEL‐ジ‐EG‐OSu、MEL‐tetra‐EG‐OPFP、MEL‐テトラ‐EG‐OSu、MEL‐トリ−EG‐OPFP、MEL‐トリ‐EG‐OSu、MMC、N3BA、N3−ジ−EG−OPFP、N3−ジ‐EG−OSu、N3−テトラ−EG−OPFP、N3−テトラ‐EG−OSu、N3−トリ−EG−OPFP、N3−トリ‐EG−OSu、PAB、PHA−ジ−EG−OPFP、PHA−ジ−EG‐OSu、PHA‐テトラ‐EG‐OPFP、PHA‐テトラ‐EG‐OSu、PHA‐トリ‐EG‐OPFP、PHA‐トリ‐EG‐OSu、Phe−Lys(Fmoc)−PAB、Phe−Lys(Trt)−PAB、Py‐ds‐But‐OPFP、Py‐ds‐But‐OSu、Py‐ds‐dmBut‐OPFP、Py‐ds‐dmBut‐OSu、Py‐ds‐Prp‐OPFP、Py‐ds‐Prp‐OSu、およびVal‐Cit−PAB (ALB Materials Inc, Nevada, U.S.)。
コンジュゲートされたメディトープペプチドの非限定的な例を、以下の表に示す。
MMAD:モノメチルオーリスタチン D
3.代替的な環化戦略およびジスルフィド架橋の置き換え
ある実施形態では、バリアント・メディトープは、cQFDおよびcQYNとしての、ジスルフィド架橋を含む。ジスルフィド架橋は、2つのシステイン残基の側鎖の反応によって形成され得る。ある実施形態では、メディトープ(例えば、メディトープ1または2)のジスルフィド架橋は、代替のリンケージで置換されるか、または除去される。ゆえに、バリアント・メディトープの中には、元のメディトープのジスルフィド架橋がないか、または代替のリンケージを有するものがある。
いくつかの局面では、リンケージはアミノ酸鎖内で1つまたは複数の非天然アミノ酸間で作られる。非天然アミノ酸で製造されるリンケージの例は、(i)アルデヒドまたはケトンを含む残基とアミン基を含む残基との反応によって製造された、安定ヒドラゾンまたはオキシムに基づくリンケージであって、アミン窒素が−NH2またはアルキルオキシ基で置換されている(例えば、p−アセチルフェニルアラニン、m−アセチルフェニルアラニン、もしくはp−(3−オキソブタノイル)−L−フェニルアラニン残基と、p−(2−アミノ−3−ヒドロキシエチル)−フェニルアラニン残基との反応)、(ii)フェニルセレニジルアラニンを取り込むことによる反応性のチオール、(iii)p−ベンゾイル−L−フェニルアラニンを組み込むことによりベンゾフェノンを含有するUV架橋剤;(iv)p−イソプロピルチオカルボニル−フェニルアラニンまたはp−エチルチオカルボニル−フェニルアラニンを組み込むことによるアミン反応性;(v)例えばアジド基を含む残基とHuisgen付加環化(例えば、p−プロパギルオキシフェニルアラニン山気とp−アジドフェニルアラニン残基との反応)を介して、アルキン基を含有する残基との反応により製造される、トリアジン、チアゾール、チアゾリジンまたはオキサゾール結合のような複素環式リンケージ;(v)1つの残基の酸基と他の残基のアミン基との反応によって作られるアミド結合;(vi)1つの残基の酸基と別の残基のアルコール、例えばセリンとの反応によって作られるエステル結合;(vii)末端オレフィンをそれぞれ含有する2つの残基、例えばオレフィンメタセシスによる反応によって作られた二重結合(例えば、2つのアリルグリシン残基または2つのN−アリール置換アミノ酸の反応)、または(viii)当該分野で公知の任意の他の対の適切な残基の反応によるものを含む。レビューとして、“ペプチドおよびデプシペプチドの環化”J.Peptide Sci.2003,9,471−501を挙げることができる。一実施形態では、メディトープは、p−アセチルフェニルアラニンなどのFabに組み込まれた非天然アミノ酸に反応性基を指向させることができる。
メディトープの環化のための種々の方法を用いて、例えばin vivoでの安定性に対処し、その後のコンジュゲーション化学のための化学選択的制御を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、環化ストラテジーは、ヘッド−テール(頭−尾)ラクタム環化(非環式ペプチドの末端残基間)および/または他の残基間のラクタムリンケージを含むラクタム環化ストラテジーである。ラクタム形成は、また、グリシン、β‐Ala、7−アミノヘプタン酸などの残基を非環式メディトープ環化前駆体に組み込んで、異なるラクタム環の大きさおよび連結様式を製造することによって行うことができる。「クリック」化学およびオレフィンメタセシスなどの付加環化ストラテジーも使用することができる(図2右のボックスを参照)。ペプチドおよびペプチド模倣環化の上述した方法は、当技術分野で周知である。
いくつかの実施形態では、ラクタム結合を含むメディトープはin vivoでより安定であり、例えば他の結合を有するメディトープと比較してin vivoでより安定なリンケージを有する。
いくつかの実施形態では、非環状ペプチドの末端残基は、反応して環状メディエート、例えば環状メディトープ・バリアントを形成する。いくつかの実施形態では、他の位置は、残基3と11との間および4と11との間を含む環化を受けやすい。ゆえに、いくつか局面では、メディトープは、N末端およびC末端残基以外の残基、例えば残基3と11および/または4と11の間、例えば12アミノ酸ペプチドの間に形成されたリンケージを含む。
いくつかの実施形態では、例えば、バリアント・メディトープは、反応性アミン官能基(例えば、Lys11)を含み、これは、例えば、基質またはリンカー、または、例えば、本開示の造影剤といった診断薬、または治療剤といった薬剤に引き続いて連繋させるために使用することができる。例えば、図3は、FACS分析のための、メディトープ・バリアントと、フルオレセインとを連携させるための手順を示し;このストラテジーは、in vivo PETイメージングのためのDOTAを含む他のイメージングおよび他の薬剤に適用することができる。
A.メディトープ利用可能抗体
提供されるのは、メディトープ結合部位を介して1つまたは複数のメディトープに結合することができるメディトープ利用可能抗体およびその抗原結合フラグメントである。いくつかのケースでは、メディトープ利用可能抗体は、配列番号1または2(メディトープ1または2)および/または1つまたは複数のそれらのバリアントに結合し、それらのメディトープは、1、2、16〜18、23、29、31、32、36、39、42、43、45、46、51、52、54、または55(配列番号1、2、16〜18、23、29、31、32、36、39、42、43、45、46、51、52、54、または55に記載の配列を有するペプチドを基本としたメディトープ)、またはいくつかのケースでは、1、2、または15〜55のいずれかのメディトープおよび/または配列番号186〜190および207のいずれかのメディトープである。提供されるメディトープ利用可能抗体の中には、セツキシマブと類似の親和性でメディトープまたはメディトープに結合するものがある。例えば、或る側面では、抗体は、約10μM未満、約5μM未満、約2μM未満、¥約1μM未満、約500、400、300、200、100nM未満、約200ピコモル未満の解離定数でメディトープに結合する。いくつかのケースでは、本明細書にリストされたいかなる解離定数は、表面プラズモン共鳴(SPR)、等温滴定熱量測定(ITC)、蛍光、蛍光偏光、NMR、IR、熱量測定滴定などの特定の技術、動態的排除;示差走査熱量測定法、または他の公知の方法によって測定することができる。例えば、いくつかのケースでは、アナローグまたはメディトープは、10μM未満、5μM未満、2μM未満、1μM未満、500、400、300、200、100nm未満の結合定数を示し、SPRによって測定されるか、またはITCによって測定されるか、またはこれらの方法のいずれかによって測定される。
いくつかの実施例では、メディトープ結合部位は、モノクローナル抗体セツキシマブの構造的特徴である。ゆえに、いくつかのケースでは、メディトープ結合部位は、セツキシマブのメディトープ結合部位内に応答する残基を含む。X線結晶学的分析は、配列番号1のペプチドが、重鎖および軽鎖の様々な残基によって定義されるセツキシマブFabフラグメントの中央空洞内のメディトープ結合部位に結合することを明らかにした(図4Aおよび5参照)約700nMまでの結合定数を有する。
ある実施形態では、メディトープとメディトープ結合部位との間の固有の相互作用が、追加のメディトープ対応抗体を生成するために利用される。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、セツキシマブまたはセツキシマブ以外の抗体(時として鋳型抗体と呼ばれる)を修飾することによって生成され、例えば、セツキシマブのものとは異なる1つまたは複数のCDRを有する抗体など、提供されたメディトープ(例えば、配列番号1または2のメディトープまたはそのバリアント)の1つまたは複数に結合する能力を付与することができる。
鋳型抗体は、ヒトまたはヒト化抗体またはマウス抗体であり得る。いくつかの側面では、修飾には、典型的には、重鎖および軽鎖可変領域および/または定常領域のフレームワーク領域(FR)内のFabフラグメントの中央空洞内の残基を置換して、鋳型抗体をメディエトープ利用可能にすることが含まれる。例えば、鋳型抗体がヒトまたはヒト化抗体である場合、その修飾は、概して、重鎖および軽鎖可変領域FR内の残基における置換を含む。いくつかの実施形態では、このような残基は、セツキシマブまたは同等のアミノ酸に存在する対応する残基で置換される。ゆえに、ある実施形態では、ヒトまたはヒト化抗体のFR内の残基は、対応するマウス残基で置換され;或る実施形態では、それらは、メディトープと相互作用するための同様の官能基または部分を有する残基などの他の残基によって置換される。典型的に、対応するムリン(または他の)残基によって置換された残基は、中心Fab空洞内に見出され、したがって、免疫系に曝露されない。このように、いくつかの実施形態では、ヒトまたはヒト化抗体にこれらのアミノ酸置換を導入することは、ヒト被験体への送達の状況において、修飾された鋳型抗体の抗原性を増加させず、または実質的に増加させることがない。加えて、点変異を有するヒト配列が抗原性であってはならないことを示すために、さらに、抗原性予測アルゴリズムをさらに使用することができる。
いくつかの実施形態では、メディトープ結合部位で置換される1つまたは複数の残基は、自己架橋性抗体に対して、特異的なメディトープの特異的な結合親和性を与えるように選択され、これは遊離メディトープ、リンカーを介して抗体に結合したメディトープ、またはその両方であり得る。例えば、自己架橋性抗体のいくつかの実施形態は、第1のメディトープに対する高いまたは増加した親和性、および第2のメディトープに対する低いまたは減少した親和性を示すメディトープ結合部位を含む。いくつかの実施形態では、本開示では、第1メディトープは遊離メディトープであり、第2メディトープは自己架橋性抗体に結合する。このような実施形態は、本開示では、例えば、遊離メディトープが抗体自己架橋性を制御または調整するために使用する場合に、有利である。他の実施形態では、第1メディトープはリンカーを介して自己架橋性抗体に結合し、第2メディトープは遊離メディトープである。このような実施形態は、例えば、遊離メディトープの高い濃度が使用される場合および/または抗体レベルか濃度が低いまたは減少した場合に、有利である。
いくつかの実施形態では、置き換えられた1つまたは複数の残基は、Kabatの番号付け(Kabat E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版。NIH出版番号91−3242、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、軽鎖フレームワーク残基数10、39〜43、45、83、85、100および/または104より選択されおよび/またはKabatの番号付けに従って、重鎖フレームワーク残基数40、89および/または105より選択される。概ね別段の指定がない限り、抗体の重鎖または軽鎖中のアミノ酸位置は、Kabatの番号付けを意味する。本開示はまた、例えば、セツキシマブ・メディトープ結合部位内の残基といった本明細書に記載のセツキシマブの残基に対応する他の抗体の残基が包含される。いくつかの実施形態では、軽鎖残基9、10、39、40、41、42、43、45、83、85、100および/または104に対応する鋳型抗体中の残基、および/または重鎖残基40、89、および/または105は、例えば、セツキシマブ内の上記の位置に存在するアミノ酸と置換される。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、軽鎖領域内(または1つまたは複数のFR、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、およびまたはFR−L4)に、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%と同一の鋳型抗体と同様の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれ1つまたは複数のFR−L)を含み;およびまたは重鎖フレーム領域内(または1つまたは複数のFR、例えば、FR−H1、FR−H2、FR−H3、およびまたはFR−H4)内に、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%と同一の鋳型抗体と同様の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれ1つまたは複数のFR−H)を含み;およびまたはVH内に、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%と同一の鋳型抗体VH領域を含み;および/またはVL内に、少なくとも1つの75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%と同一の鋳型抗体のVL領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、鋳型抗体と比較して、重鎖および/または軽鎖内のCDRの1つまたは複数(例えば、すべて)内に、すべてまたは少なくとも95、96、97、98、または99%の同一性を含む。いくつかの局面では、鋳型抗体と比較して、軽鎖内(例えば、FR−L)に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の修飾を含む;および/または、鋳型抗体と比較して、重鎖(例えば、FR−H)に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の修飾を含む。
いくつかの実施形態では、置き換えられた1つまたは複数の残基は、Kabatの番号付けに従って、10、40、41、83および85を含むが、これらに限定されない軽鎖フレーム残基である。いくつかの実施形態では、軽鎖残基40はトレオニンに置き換えられ;軽鎖残基41がアスパラギンに置き換えられ、軽鎖残基83はイソロイシンまたはバリンに置き換えられ、および/または軽鎖残基85はアスパラギン酸に置き換えられる。一実施形態では、軽鎖残基40はトレオニンに置き換えられ;軽鎖残基41がアスパラギンに置き換えられ;軽鎖残基83はグルタミン酸塩に置き換えられ;および/または軽鎖残基83がアスパラギンに置き換えられる。具体的な例では、軽鎖フレームワークPro40は、Thr(P40T)またはSer(P40S)に置き換えられ、軽鎖フレームワークGly41はAsn (G41N)に置き換えられ、軽鎖フレームワーク残基Phe83は、Ile (F83i)、Val (F83V)、またはグルタミン酸塩(F83E)に置き換えられ、軽鎖フレームワーク残基Thr85は、Asp(T85D)またはAsn(T85N)に置き換えられる。例えばセツキシマブを含むいくつかの実施形態では、軽鎖フレームワーク残基Ile83は、グルタミン酸塩(I83E)に置き換えられる。
ゆえに、提供されたメディトープが可能な抗体の中には、セツキシマブまたは他のメディトープが可能な抗体のメディトープ結合部位内の位置に対応する残基(例えば、メディトープを含む、本明細書に記載されるもの)に1つまたは複数の修飾、トラスツズマブおよびメディトープ対応M5Aが含まれる。抗体の中には、Kabat番号付けに従って、40位にスレオニン、セリンまたはアスパラギン酸、41位にグリシン以外の残基、85位にアスパラギン酸またはアスパラギンを有するVL領域を有するもの、例えば、40位にスレオニン、41位にアスパラギン、85位にアスパラギン酸を有するVL領域を含む。いくつかの実施形態では、Kabat番号付けに従って、抗体は、40位にセリン、89位にイソロイシン、および/または40位にセリンまたはプロリン、89位にイソロイシン、チロシン、メチオニン、フェニルアラニンまたはトリプトファンを有するVH領域を有する。いくつかの実施形態では、VL領域は、10位にイソロイシンまたはロイシン、および/または83位にイソロイシンまたは83位にグルタミン酸を有する。いくつかの実施形態では、VL領域は、9位にバリンまたはイソロイシンおよび/または100位にグルタミン以外の残基を有する。
いくつかの例では、Kabat番号付けに従って、VL領域は、9位にバリンまたはイソロイシンを、10位にイソロイシンまたはロイシンを、39位にアルギニンを、40位にスレオニンを、41位にアスパラギンを、42位にグリシンを、43位にセリンを、83位のイソロイシンまたはグルタミン酸、85位のアスパラギン酸および100位のアラニンを有し;並びにVH領域は、40位にセリン、89位にイソロイシンを有する。いくつかの例では、Kabat番号付けに従って、VL領域は、40位にプロリン、41位にグリシン、または85位にスレオニンを含まず、および/またはKabat番号付けに従って、VH領域は、40位にアスパラギンまたはアラニンを、または89位にバリンを含まない。いくつかの例では、Kabat番号付けに従って、VL領域は、10位にセリン、40位にプロリン、41位にグリシン、83位にフェニルアラニン、または85位にスレオニンを含まず、および/またはVH領域は、40位にアスパラギンまたはアラニンを、または89位にバリンを含まない。
いくつかの局面では、Kabat番号付けに従って、抗体はP8、V9もしくI9、I10またはL10、Q38、R39、T40、N41、G42、S43、P44、R45、D82、I83、A84、D85、Y86、Y87、G99、A100、G101、T102、K103、L104、E105、R142、S162、V163、T164、E165、Q166、D167、S168、およびY173を有する軽鎖を有し、および/またはKabat番号付けに従って、Q6、P9、R38、Q39、S40、P41、G42、K43、G44、L45、S84、D86、T87、A88、I89、Y90、Y91、W103、G104、Q105、G106、T107、L108、V109、T110、V111、Y147、E150、P151、V152、T173、F174、P175、A176、V177、Y185、S186、およびL187を有する重鎖を有する。
いくつかの局面では、Kabat番号付けに従って、抗体はP8、V9もしくはI9、I10もしくはL10、Q38、R39、T40、N41、G42、S43、P44、R45、D82、 E83、A84、D85、Y86、Y87、G99、A100、G101、T102、K103、L104、E105、R142、S162、V163、T164、E165、Q166、D167、S168、およびY173を有する軽鎖を有し、および/またはKabat番号付けに従って、Q6、P9、R38、Q39、S40、P41、G42、K43、G44、L45、S84、D86、T87、A88、I89、Y90、Y91、W103、G104、Q105、G106、T107、L108、V109、T110、V111、Y147、E150、P151、V152、T173、F174、P175、A176、V177、Y185、S186、およびL187を有する重鎖を有する。
いくつかの実施形態では、メディトープ可能抗体は、ヒトまたはヒト化抗体のような抗体の軽鎖中の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11残基を変異させることによって生成され、 例えばトラスツズマブを(Kabat番号付けに基づいて)セツキシマブ中の対応する位置に似せることができる。いくつかの局面では、このような抗体は、ヒトまたはヒト化配列と比較して、Kabat番号付けに基づいて、軽鎖の9、10、39、40、41、42、43、45、83、85、および100位に変異残基を含む。一局面では、メディトープ利用可能抗体の軽鎖は、Kabat番号付けに基づいて、V9もしくはI9、I10もしくはL10、R39、T40、N41、G42、S43、R45、I83もしくはE83、D85、およびA100、例えばV9、I10、R39、T40、N41、G42、S43、R45、I83、D85、およびA100を含む。いくつかの実施形態では、他の点では抗体はヒトまたはヒト化されている。
いくつかの実施形態では、メディトープが可能な抗体は、ヒトなどの抗体の重鎖において1または2残基などの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11残基を変異させることによって生成されるか、またはヒト化抗体、例えばトラスツズマブを用いて、セツキシマブの対応する位置に似ている。いくつかの局面では、このような抗体は、ヒトまたはヒト化配列と比較して、Kabat番号付けに従って、重鎖内に40または89位の変異残基を含む。いくつかの局面では、重鎖は、Kabat番号付けに従って、S40およびI89を含む。いくつかの実施形態では、他の点では抗体はヒトまたはヒト化されている。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、例えばヒトまたはヒト化配列と比較して、13個の変異を含む。一局面では、メディトープ利用可能抗体は、ヒトまたはヒト化配列と比較して、11個の変異を有する軽鎖および2個の変異を有する重鎖を含む。一局面では、抗体は、Kabat番号付けに従って、V9もしくはI9、I10もしくはL10、R39、T40、N41、G42、S43、R45、I83、D85およびA100を軽鎖に含み、S40およびI89を重鎖に含む。一局面では、Kabat番号付けに従って、V9もしくはI9、I10もしくはL10、R39、T40、N41、G42、S43、R45、E83、D85、およびA100を軽鎖に含み、S40および I89を重鎖に含む。一局面では、Kabat番号付けに従って、抗体は、V9、I10、R39、T40、N41、G42、S43、R45、I83、D85、およびA100を軽鎖に含み、S40およびI89を重鎖に含む。一局面では、Kabat番号付けに従って、抗体は、V9、I10、R39、T40、N41、G42、S43、R45、E83、D85およびA100を軽鎖に含み、S40およびI89を重鎖に含む。いくつかの実施形態では、抗体および/またはそのフレームワーク領域は、他の点では抗体はヒトまたはヒト化されている。
いくつかの実施形態では、メディトープ対応抗体は、典型的には、メディトープ対応抗体の重鎖および/または軽鎖の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)(例えば、1つまたは複数のCDR1〜〜3)を修飾することによって、CDR移植を介して生成され、既存のまたは新しい抗体のCDRのような他のCDRとそれらを置き換えるために、本明細書に記載されているメディトープ利用可能抗体のいずれかのようなものである。CDR移植は、ヒト化モノクローナル抗体を産生するために、例えばマウスのような非ヒト種で生成された抗体のCDRを、ヒト抗体フレームワークに移植することによって標準的に行われている。米国特許番号5,558,864および8,133,982;Kettleboroughら、“CDR移植によるマウスのモノクローナル抗体のヒト化:ループ構造上のフレームワーク残基の重要性”Protein Eng.,4:773−783(1991)を参照。ゆえに、ある実施形態では、メディトープ利用可能抗体の抗原特異性は、既存のまたは新たに生成された目的の抗体のCDRを移植することによって代替される。提供されたメディトープ利用可能抗体の中にも、このようなCDR移植メディトープ利用可能抗体がある。
いくつかの実施形態では、鋳型配列として本明細書に開示される抗体(例えば、セツキシマブ、メディトープ利用可能トラスツズマブまたはメディトープ使用M5A(抗CEA)抗体)の1つを使用して、メディトープ可能抗体を生成し、1つまたは複数の既知の抗体、それを代替するための工学的方法、例えば、その抗原結合特性を代替すること、異なる特徴を有するメディトープ利用可能抗体を産生することがある。抗原結合および他の特性を代替委するために典型的に用いられる既知の抗体工学方法は、エラープローンPCR、スパイクPCR、部位特異的変異誘発、ファージディスプレイおよび他の選択方法を含む、様々なin vitroランダム化、親和性成熟、および選択方法を含む。また、そのような方法を実施するための構築物、ライブラリー、および発現系(GPI連鎖発現系を含む)も提供される。ゆえに、ある実施形態では、提供されたメディトープ利用可能抗体は、セツキシマブ、メディトープ利用可能トラスツズマブ、またはメディトープ利用可能なM5A(またはこれらの抗体のFRと同一の、少なくともまたは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%のFR)などのメディトープ利用可能抗体のフレームワーク領域または領域(FR)を伴う軽鎖および/または重鎖の可変領域を有する。
例えば、いくつかの実施形態では、VL領域は、軽鎖フレームワーク領域は、配列番号71(または、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4、それらは、少なくともまたは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、配列番号71のFR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4と同一)に記載の、軽鎖配列の、軽鎖フレーム領域(FR)1(FR−L1)、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4を含むアミノ酸配列、およびいくつかの局面では、配列番号71に記載の軽鎖配列のCDRより区別された少なくとも1つのCDR;およびまたは配列番号72(または、FR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4、それらは、少なくともまたは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、配列番号72のFR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4と同一)に記載の重鎖配列の、重鎖FR1(FR−H1)、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4を有する、アミノ酸配列を伴うVH領域、およびいくつかの局面では、配列番号72に記載の重鎖配列のCDRより区別される少なくとも1つのCDRを有する、アミノ酸配列を有する。
いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号9に記載の軽鎖配列の軽鎖配列領域(FR)1(FR−L1)、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4を含む、アミノ酸配列を有し、(またはFR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4、それらは少なくともまたは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、配列番号9のFR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)およびいくつかの局面では、配列番号9に記載された軽鎖のCDRより区別された少なくとも1つのCDR;および/または重鎖FR1(FR−H1)、FR−H2、FR−H3、および/または配列番号6に記載した重鎖配列のFR−H4を有するアミノ酸配列を含むVH領域(またはFR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4、これらは少なくともまたは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、配列番号6のFR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4と同一である)、いくつかの局面では、配列番号6に記載された重鎖のCDRより区別された少なくともの1つのCDRを有するアミノ酸配列を有する。
いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号68に記載された軽鎖配列の、軽鎖フレームワーク領域(FR)1(FR−L1)、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4(またはFR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4、これらは少なくともまたは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、配列番号68のFR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4と同一である)、およびいくつかの局面では、配列番号68に記載された軽鎖のCDRより区別された少なくとも1つのCDR;および/または配列番号70に記載された重鎖配列の重鎖FR1(FR−H1)、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4、を有するアミノ酸配列を伴うVH領域、(またはFR−H1、FR−H2、 FR−H3、および/またはFR−H4、それらは少なくともまたは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、配列番号70に記載のFR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4と同一である)、いくつかの局面では、配列番号70に記載された重鎖配列のCDRより区別された少なくとも1つのCDRを含む、アミノ酸配列を有する。
いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号61に記載された軽鎖の軽鎖フレーム領域(FR)1(FR−L1)、FR−L2、FR−L3および/またはFR−L4を有するアミノ酸配列、(またはFR−L1、FR−L2、 FR−L3、および/またはFR−L4、これらは少なくともまたは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、 96、97、98、または99%、配列番号61のFR−L1、FR−L2、FR−L3および/またはFR−L4と同一である)、いくつかの局面では、配列番号61に記載された軽鎖のCDRより区別された少なくとも1つのCDR;および/または配列番号63に記載された重鎖配列の重鎖FR1(FR−H1)、FR−H2、FR−H3、およびまたはFR−H4を有するアミノ酸配列を伴うVH領域、(またはFR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4、これらは少なくともまたは約75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、配列番号61のFR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4と同一である)、いくつかの局面では、配列番号63に記載された重鎖配列より区別された少なくとも1つのCDRを含むアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、配列番号6、7、9、10、12、14、61、63、68、69、70、71、および/または72に記載された、CDRより区別された1つまたは複数のCDRを有する。
いくつかの実施形態では、抗体はセツキシマブ以外であり、EGFRに特異的に結合せず、EGFR以外の抗原に結合し、および/またはセツキシマブに特異的に結合するEGFR上のエピトープに特異的に結合しない。
いくつかの実施例では、メディトープ利用可能抗体は、以下の中から選択される鋳型抗体を基礎として生成される:アバゴボマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アレムツズマブ、アルトモマブ、アルテモマブペンテエート、アナトモマブ、アナトモマブ・マフェナトックス、アークトモマブ、アトリズマブ、バシリキシマブ、ベクトモマブ、エクトモマブ、ベリムマブ、ベナリズマブ、ベバシズマブ、ブレンチキシマブ、カヤキナブ、カンプマブ、カンプマブペンデチド、カツマキソマブ、セトリツズマブ、クリバツズマブ・テトラキセタン、ダクリズマブ、デノスマブ、エクリズマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エタラシズマブ、テルマキソマブ、ファノソマブ、Fbta05、フォンゾリズマブ、ゲムツズマブ、リンツズマブ、ギレムキシマブ、ゴリムマブ、イブリトモマブ、イグボマブ、インフリキシマブ、イピリムマブ、ラベツズマブ、メポリザブ、ムロモナブ、ムロモナブ−CD3、ナタリズマブ、ネチツムマブニモツズマブ、オアツムマブ、オマリズマブ、オレゴボマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、サトモマブ、セツソマブ、イブリツモマブ、イブリツモマブ・チウセタン、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、Trbs07、ウシキヌマブ、ビシリズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ブロルダルマブ、アンスキンズマブ、バピネツズマブ、ダロツズマブ、デムシズマブ、ガニトマブ、イノツズマブ、マブリリムマブ、モクセトモマブ・パズドトキシム、リトルムズマブ、シファリムマブ、タネツマブ、トラロキヌマブ、トレメリムマブ、ハイブリドーマ10B5、B6H12.2、およびウレウマブによって産生される抗体、そのフラグメント、CDRおよび/またはその抗原結合領域を有する抗体、および/またはそのような抗体との結合を競合する抗体;およびまたは配列番号78〜124および/または125〜170のいずれかに記載の配列を有する抗体、そのフラグメント、配列番号78〜124、および/または125〜170のいずれかに記載の配列を有する抗体、そのフラグメント、CDRおよび/またはその抗原結合領域を有する抗体、および/またはそのような抗体との結合について競合する抗体。表3は、或る抗体のCAS(登録商標)の登録番号をリストする。
他の実施形態では、鋳型抗体は以下の中から選択される:アバゴボマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アレムツズマブ、アルトモマブ、ペンテタイトアルトモマブ、アナトモマブ、アナトモマブ・マフェナトックス、アキトモマブ、アトリズマブ、バシリキシマブ、ベクトモマブ、エクトモマブ、ベリムマブ、ベナラリズマブ、ベバシズマブ、ブレントキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、セルトリズマブ、クリバツズマブ・テトラキセタン、ダクリズマブ、デノスマブ、エクリズマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エタラシズマブ、エルツマキソマブ、ファノレソマブ、Fbta05、フォントリズマブ、ゲムツズマブ、リンツズマブ、ギレンテキシマブ、ゴリムマブ、イブリトモマブ、イゴボマブ、インフリキシマブ、イピリムマブ、ラベツズマブ、メポリズマブ、ムロモナブ、ムロモナブ−CD3、ナタリズマブ、ネシムマブ、ニモツズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、オレゴボマブ、パリビツマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、サトモマブ、スレソマブ、イブリツモマブ、イブリツモマブ・チウセタン、トシリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、Trbs07、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ハイブリドーマ10B5によって産生された抗体、およびブロダルマブまたはチウゼタン。いくつかのこのような実施例では、いつ以上のCDRは、これらの鋳型抗体内に存在し、および/または抗体はこのような抗体としての同一の抗原またはエピトープに特異的に結合し、および/またはそのような抗原との結合を競合する。
ゆえに、いくつかのケースでは、メディトープ利用可能抗体(そのフラグメントを含む)は、以下を構成する群から選択される抗原に特異的に結合する:CA−125、糖タンパク質(GP)IIb/IIIa受容体、TNF−アルファ、CD52、TAG−72、癌胎児性抗原(CEA)、インターロイキン6受容体(IL−6R)、IL−2、インターロイキン2ロイキンa鎖(CD25)、CD22、CD23(FcεRII、FcεRII、FCE2、CLEC4J、C型レクチンドメインファミリー4メンバーJ、免疫グロブリンE結合因子、リンパ球IgE受容体、BLAST−2またはIGEBFとしても既知である)、CD37(テトラスパイン26、TSPAN26、tspan26、またはGP52−40としても既知である)、ムチン1、プロラクチン受容体(PRL‐Rとしても既知である)、SDC−1(CD138、シンデカンプロテオグリカン1、シンデカン1、またはヘパラン硫酸プロテオグリカン線維芽細胞増殖因子受容体としても既知である)、B細胞活性化因子、インターロイキン‐5受容体(CD125)、VEGF、VEGF−A、 CD30、IL−1ベータ、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD3、EpCAM、EGF受容体(EGFR)、MUC1、ヒトインターロイキン2受容体、Tac、RANKガンド、補体タンパク質、例えば、C5、EpCAM、CD11A、例えば、ヒトCD11a、インテグリン、例えば、アルファ−v−ベータ3インテグリン、ビトロネクチン受容体アルファvベータ3インテグリン、HER2、neu、CD3、CD15、CD20(小および/または大ループ)、インターフェロンガンマ、CD33、CA―IX、TNFアルファ、CTLA−4、癌胎児性抗原、IL−5、CD3エプシロン、CAM、アルファ−4−インテグリン、IgE、例えば、IgE、Fc領域、RSV抗体、例えば、呼吸器合胞体ウイルスの融合タンパク質(RSV)、TAG−72、NCA−90(顆粒球細胞抗原)、IL−6、GD2、GD3、IL−12、IL−23、IL−17、CTAA16.88、IL13、インターロイキン1ベータ、ベータアミロイド、IGF−1受容体(IGF―1R)、デルタ様リガンド4(DLL4)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体のアルファサブユニット、肝細胞成長因子、IFN−アルファ、神経成長因子、IL−13、PD−L1、CD326、CD47、およびCD137。いくつかの実施例では、メディトープが可能な抗原は、癌または他の疾患のような目的の疾患または状態において標的として同定された別の抗原に結合する。
1.CD19
一実施形態では、鋳型抗体は、例えば、ヒトまたはヒト化された抗体またはMOR28のようなCD19のマウス抗体、または抗体のような重鎖、軽鎖、VHまたはVLを有する抗体、またはそのフラグメントといった抗CD19抗体である。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、CD19に特異的に結合する。CD19(または分化のクラスター19)は、例えば、NCBIアクセッション番号NP_001171569またはUniProt Identifier P15391によって同定される一局面では、CD19は、B細胞芽細胞への発達中に最も早期に認識可能なB系列細胞からB細胞表面に見出されるが、形質細胞への成熟で失われる。一局面では、CD19は、抗原受容体依存性刺激の閾値を低下させる調節分子である。
いくつかの実施形態では、鋳型抗体は、配列番号226および/または配列番号227(リーダー配列を伴うまたは伴わない)を含み、それらの配列は、それぞれ上記のMOR208(XmAb(登録商標)5574)の軽鎖または重鎖アミノ酸配列であり、(CD19に特異的に結合するモノクローナル抗体、例えば、未熟で成熟した悪性B細胞のCD19)、および/またはアミノ酸配列番号245 および/または246(リーダー配列を伴うまたは伴わない)を含み、それらは、それぞれ上記したMOR208のVLおよびVHアミノ酸配列である。
いくつかの局面では、配列番号226に記載された軽鎖配列のCDR(例えば、1つまたは複数のCDR、つまりCDR1、CDR2、および/またはCDR3)または軽鎖またはMOR208のVLのCDRを有し、および/または配列番号227に記載の重鎖のCDR(例えば、1つまたは複数のCDR、つまりCDR1、CDR2、および/またはCDR3)または重鎖またはMOR208のVHのCDRを有する。
いくつかの局面では、メディトープ利用抗体のVL領域は、1つまたは複数、概して複数の修飾を有し、(それらは概してフレーム領域の中にある)、それは、リーダー配列を伴うまたは伴わない配列番号245に記載されたアミノ酸と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の修飾を有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、1つまたは複数、概して複数の修飾を有し、(それらは概してフレームワークの領域の中にある)、それらは、それは、リーダー配列を伴うまたは伴わない配列番号246に記載されたアミノ酸と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の修飾を有する。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、軽鎖フレームワークの領域内に(または1つまたは複数のこのような領域、例えばFR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、MOR208または配列番号226の軽鎖フレームワークの領域内に(またはそれぞれ1つまたは複数のFR−L)と同一性を含有し、および/または重鎖フレームワーク内に(または1つまたは複数のこのような領域、つまりFR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4)、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、 92、93、94、95、96、97、98、または99%、MOR208または配列番号227の重鎖フレーム領域(または1つまたは複数のFR−H)の同一性を含有し;および/またはVH領域内に少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、MOR208または配列番号246と同一性を含有し;および/またはVL内に、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、MOR208または配列番号;245と同一性を含有する。いくつかの実施形態では、抗体は、MOR208と比較して(例えば、配列番号226または227のCDRと比較して)、重鎖および/または軽鎖内のCDRの1つまたは複数、例えばすべてのCDR内に、すべてまたは少なくとも95、96、97、98、または99%の同一性を含有する。
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体は、MOR208に特異的に結合したCD19のエピトープに特異的に結合しないが、CD19に特異的に結合するか、またはMOR208のCDRを含まない、および/またはMOR208に結合する抗体と競合はしないが、CD19に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号305のアミノ酸配列を含む軽鎖を有するが、および/または配列番号306のアミノ酸配列を含む重鎖を有する。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、cQFDメディトープ、バリアント3リンカーを含み、およびまたはメディトープ利用可能抗CD19抗体(例えば、配列番号306)の重鎖に融合される。
2.CD22
実施形態によっては、鋳型抗体は、抗CD22抗体であり、例えば、エプラツヅマブやモキセツモマブなどCD22に対するヒトもしくはヒト化抗体またはマウス抗体、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHもしくはVLを有する抗体、またはそれらの機能的フラグメントである。実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、CD22に特異的に結合する。CD22(または分化クラスター−22)は、レクチンのSIGLECファミリーに属する分子であり、例えば、NCBI受入番号NP_001762またはUniProt識別子P20273によって特定されるようなものがある。一態様では、CD22は、成熟したB細胞の表面上に、および比較的少ない程度でいくつかの未成熟のB細胞上に見出される。ある種の態様では、CD22は、免疫系の過剰活性化および自己免疫疾患の発達を防止する制御分子である。一実施形態では、CD22に対する鋳型抗体は、配列番号175のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくはタンパク質上の、または配列番号176の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくはタンパク質上の、1つまたは複数のエピトープに特異的に結合する。
実施形態によっては、鋳型抗体は、エプラツヅマブ(CD22、例えば、成熟した悪性のB細胞のCD22に特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体)の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列がそれぞれ記載された配列番号177および/または配列番号178のアミノ酸配列(各配列中で配列内のアミノ酸位置によって特定されるリーダー配列を含むか含まない)を含み、および/またはエプラツヅマブのVLおよびVHのアミノ酸配列がそれぞれ記載された配列番号179および/または183のアミノ酸配列(各配列中で配列内のアミノ酸位置によって特定されるリーダー配列を含むか含まない)を含む。
エプラツヅマブの軽鎖配列は、配列番号177に規定されており、配列番号177のアミノ酸1〜20位に規定されたリーダー配列を含む。エプラツヅマブ重鎖配列は、配列番号178に規定されており、配列番号178のアミノ酸1〜19位に規定されたリーダー配列を含む。エプラツヅマブの軽鎖可変(VL)領域配列は、配列番号179に規定されており、配列番号179のアミノ酸1〜20位に規定されたリーダー配列を含む。エプラツヅマブの重鎖可変(VH)領域配列は、配列番号183に規定されており、配列番号183のアミノ酸1〜19位に規定されたリーダー配列を含む。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号177もしくは配列番号179に規定される軽鎖もしくはVLの配列の、またはエプラツヅマブの軽鎖もしくはVLのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)、および/または配列配列番号178もしくは183に規定される重鎖もしくはVHの、またはエプラツヅマブの重鎖もしくはVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR,例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、リーダー配列を含むか含まない配列番号179に記載のアミノ酸配列に比べて、1つまたは複数の、一般に複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変を含有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、リーダー配列を含むか含まない配列番号183に記載のアミノ酸配列に比べて、1つまたは複数の、例えば複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変)を含有する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)内に、エプラツヅマブのまたは配列番号177もしくは179の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−L(複数可))と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはその重鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−H1、FR−H、FR−H3、および/またはFR−H4)内に、エプラツヅマブのまたは配列番号178もしくは183の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−H)と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVH領域内に、エプラツヅマブのVH領域と(例えば、配列番号183のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVL領域内に、エプラツヅマブのVL領域と(例えば、配列番号179のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。実施形態によっては、抗体は、重鎖および/または軽鎖内の1つまたは複数の、例えば全てのCDR内に、エプラツヅマブに比べて(例えば、配列番号177もしくは179または配列番号178もしくは183のCDR(複数可)に比べて)、完全にまたは少なくとも95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体は、エプラツヅマブが特異的に結合するCD22のエピトープには特異的に結合しないがCD22に特異的に結合するか、またはエプラツヅマブのCDRを含有しないか、および/または抗原結合をエプラツヅマブと競合しないがCD22に特異的に結合する。
実施形態によっては、鋳型抗体は、それぞれモキセツモマブ(抗CD22マウスモノクローナル抗体)のVLおよびVHのアミノ酸配列を規定する配列番号65および/または配列番号67(配列番号67のN末端メチオニンであるリーダー配列/残基を含むか含まない)のアミノ酸配列を含み、および/またはモキセツモマブの重鎖アミノ酸配列を規定する配列番号66(配列番号66のN末端メチオニンであるリーダー配列を含むか含まない)アミノ酸配列を含む。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号65に規定されるVL配列の、またはモキセツモマブの軽鎖もしくはVLのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)、および/または配列配列番号66もしくは67に規定される重鎖もしくはVHの、またはモキセツモマブの重鎖もしくはVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、リーダー配列を含むか含まない配列番号65に記載のアミノ酸配列またはモキセツモマブのVLに比べて、1つまたは複数の、一般に複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19や20などの改変を含有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、リーダー配列を含むか含まない配列番号67に記載のアミノ酸配列またはモキセツモマブのVHに比べて、1つまたは複数の、例えば複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個、13、14、15、16、17、18、19や20などの改変)を含有する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)内に、モキセツモマブのまたは配列番号65の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−L(複数可))と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはその重鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−H1、FR−H、FR−H3、および/またはFR−H4)内に、モキセツモマブのまたは配列番号178もしくは183の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−H)と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVH領域内に、モキセツモマブのVH領域と(例えば、配列番号67のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVL領域内に、モキセツモマブのVL領域と(例えば、配列番号65のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。実施形態によっては、抗体は、重鎖および/または軽鎖内の1つまたは複数の、例えば全てのCDR内に、モキセツモマブに比べて(例えば、配列番号177または179または配列番号178または183のCDR(複数可)に比べて)、完全にまたは少なくとも95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体は、モキセツモマブが特異的に結合するCD22のエピトープに特異的に結合しないがCD22に特異的に結合するか、またはモキセツモマブのCDRを含有しないか、および/または抗原結合をモキセツモマブと競合しないがCD22に特異的に結合する。
2.CD23
いくつかの実施形態では、鋳型抗体は、抗CD23抗体、例えば、ヒトまたはヒト化抗体、またはCD23に対するマウス抗体、例えばルミリキシマブ、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHもしくはVLを有する抗体、またはその機能的フラグメントである。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、CD23に特異的に結合する。CD23は、FcエプシロンRIIまたはFcεRIIとしても知られており、IgEの「低親和性」受容体、アレルギーおよび寄生虫耐性に関与する抗体アイソタイプであり、IgEレベルの調節において重要である。CD23は、C型レクチンであり、例えば、NCBI受託番号NP_001193948.2またはUniProt 識別子P06734によって同定される。CD23抗原は、いくつかの造血細胞型で発現される45kDaのII型膜貫通糖タンパク質である。いくつかの局面では、CD23は、成熟B細胞、活性化マクロファージ、好酸球、濾胞性樹状細胞、および血小板上に発現される。CD23は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーに属さない唯一のFcRである。CD23の機能には、B細胞によるIgE産生の調節および胚中心由来のB細胞の生存を促進することが含まれる。CD23の発現は、正常に活性化された濾胞性B細胞およびCLL細胞において高度にアップレギュレートされる。
いくつかの実施形態では、CD23の鋳型抗体は、配列番号172のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはタンパク質上の1つまたは複数のエピトープに特異的に結合するか、または配列番号184の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはタンパク質を含む。
いくつかの実施形態では、鋳型抗体は、配列番号185および/または配列番号190のアミノ酸配列(該当する場合、配列番号185のアミノ酸1〜22に対応するリーダー配列/残基の有無にかかわらず、 配列番号190のアミノ酸1〜19)、それぞれルミリキシマブのVLおよびVHアミノ酸配列を記載する。
ルミリキシマブ(IDEC−152、P5E8、ゴミリシマブ;Biogen Idecとしても既知である)は、カニクイザル可変領域およびヒト定常領域(IgG1−Κ)を含む霊長類化された抗CD23mAbである。これはもともと、活性化されたヒト末梢血B細胞によるIgEの産生を阻害するために開発されたものであるが、しかしながら、後にそれは強力な抗CD23mAbとして認定を受けた。前臨床データは、ルミキシマブが、主にアポトーシスの内因性経路によって、CLL細胞およびCD23発現B細胞に対するその抗腫瘍効果を媒介することを示唆している(すなわち、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2、Bcl―XLおよびXIAPのダウンレギュレーション、Baxの活性化およびミトコンドリアシトクロムcの放出を誘導する)。相乗的細胞傷害性は、異種移植モデルにおいて、ルミキシマブをリツキシマブまたはフルダラビンと組み合わせた場合、CD23発現B細胞系および原発性CLL細胞においても示されている。重度に前処置した46人のCLL患者の第I相臨床試験において、ルミキシマブは単一の薬剤として適度な臨床活性を示した。ルミキシキシマブは、客観的完全応答(CR)または部分応答(PR)は認められなかったが、患者の52%ではリンパ節の大きさが縮小し、患者の91%では末梢血リンパ球数が減少した。ルミリキシマブの安全性プロファイルは、有害事象(AEs)の大部分が等級1/2に限定されることを実証したルミリキシマブは免疫抑制剤ではなく、MTD(最大耐量)には達しなかった。
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号185に記載のVL配列のCDR(即ち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、 CDR2、および/またはCDR3)を有するか、または配列番号190に記載のVH配列の(即ち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有するか、または重鎖、またはルミリキシマブのVHを有する。
いくつかの局面では、リーダーの有無に関わらず、配列番号185に記載のアミノ酸配列と比較して、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、1つまたは複数、概して複数の修飾は(それらは概してフレームワーク領域にある)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20といった修飾を含むか、またはリーダーの有無に関わらず、配列番号190のアミノ酸配列、またはルミリキシマブVHと比較して、ルミリキシマブまたはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、1つまたは複数、概して複数の修飾、それらは概してフレームワーク領域にある)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20といった修飾を含む。.
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク内に(または1つまたは複数の領域内、すなわちFR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4内に)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、ルミリキシマブまたは配列番号185の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれ1つまたは複数のFR−L)との同一性を含み、および/または重鎖フレームワーク領域内に(または1つまたは複数の領域、すなわちFR−H1、FR−H2、 FR−H3、および/またはFR−H4内に)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、 87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、ルミリキシマブまたは配列番号190の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれ1つまたは複数のFR−H)と同一性を含み;および/またはVH領域内に、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、ルミリキシマブのVH領域(例えば、配列番号190のアミノ酸配列)と同一性を含み;および/またはVL領域内に、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、ルミリキシマブのVL領域(例えば、配列番号185のアミノ酸)と同一性を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ルミキシマブと比較して(例えば、配列番号185または配列番号190のCDRと比較して)、重鎖および/または軽鎖内のCDRの1つまたは複数、例えばすべてのCDR内に、すべてまたは少なくとも95、96、97、98、または99%の同一性を含む。
いくつかの局面では、メディトープ可能抗体は、ルミキシマブに特異的に結合するCD23のエピトープに特異的に結合しないが、CD23に特異的に結合するか、またはルミキシマブのCDRを含まず、かつ/またはルミキシマブとの抗原結合に競合しないCD23に特異的に結合する。
4.CD33
一実施形態では、鋳型抗体は抗CD33抗体、例えばゲムツズマブのようなヒトまたはヒト化抗体またはCD33に対するマウス抗体、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHもしくはVLを有する抗体であり、またはその機能的フラグメントである。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、CD33に特異的に結合する。CD33(または分化のクラスター33)は、例えばUniProt識別P20138によって同定される。一局面では、CD33は、骨髄細胞の表面上に見出される。
いくつかの実施形態では、鋳型抗体は、それぞれゲムツズマブ(マイロターグ)の軽鎖および重鎖アミノ酸配列を示す配列番号224および/または配列番号225のアミノ酸配列(リーダー配列の有無にかかわらず)を含む。(CD33に特異的に結合するモノクローナル抗体、例えば、未成熟で成熟した悪性B細胞のCD33)、および/または配列番号243および/または245のアミノ酸配列(リーダー配列の有無にかかわらず)それぞれ、ゲムツズマブのVLおよびVHアミノ酸配列を記載する。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは配列番号293のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、および/または配列番号294のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、cQFDメディトープ、1リンカーを含み、および/またはメディトープ利用可能ゲムツズマブ(例えば、配列番号294)の重鎖に融合される。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号295のアミノ酸配列を含む軽鎖を有し、および/または配列番号296のアミノ酸配列を含む重鎖を有する。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、cQFDメディトープ、バリアント2リンカーを含み、および/またはメディトープ利用可能ゲムツズマブ(例えば、配列番号296)の重鎖に融合される。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号297のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、および/または配列番号298のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、cQFDメディトープ、バリアント3リンカーを含み、および/またはメディトープ利用可能ゲムツズマブ(例えば、配列番号298)の重鎖に融合される。
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号224に記載の軽鎖配列のCDR(例えば、1つまたは複数のCDR、すなわちCDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有するか、または軽鎖またはゲムツズマブのVLを有し、および/または配列番号225に記載の重鎖のCDR(例えば、1つまたは複数のCDR、すなわち、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)または重鎖またはゲムツズマブのVHを有する。
いくつかの局面では、リーダー配列の有無にかかわらず、配列番号243に記載のアミノ酸配列と比較して、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、1つまたは複数、概して複数の修飾(概してこれらはフレームワーク領域にある)、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の修飾を含み、および/またはリーダー配列の有無にかかわらず、配列番号244に記載のアミノ酸配列と比較して、メディトープ利用可能抗体のVH領域は、1つまたは複数、概して複数の修飾(概して、それらはフレームワーク領域内にある)は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の修飾を含む。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、軽鎖フレームワーク内に(または1つまたは複数のこのような領域、すなわちFR−L1、FR−L2、 FR−L3、および/またはFR−L4内に)少なくとも75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、ゲムツズマブまたは配列番号224の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれ1つまたは複数のFR−L)と同一性を含み、および/または重鎖フレームワーク領域内(1つまたは複数のこのような領域内に、すなわち、FR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4)、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、 93、94、95、96、97、98、または99%、ゲムツズマブ、または配列番号;225の重鎖フレームワーク内(それぞれ1つまたは複数のFR−H)との同一性を含み、gおよび/または、VH領域内に、少なくとも、または約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、 98、または99%、ゲムツズマブ、または配列番号;224のVH領域との同一性を含み;および/または、VL領域内に、少なくとも、または約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、ゲムツズマブ、または配列番号;223との同一性を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖および/または軽鎖内に、ゲムツズマブと比較して、(例えば、配列番号224または225のCDRと比較して)、95、96、97、98、または99%、1つまたは複数の、例えば全てのCDRとの同一性を含む。
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体は、ゲムツズマブに特異的に結合するCD33のエピトープに特異的に結合しないが、CD33に特異的に結合するか、またはゲムツズマブのCDRを含まない、および/またはゲムツズマブに結合する抗体と競合しないが、CD33に特異的に結合する。
一実施形態では、本開示は、メディトープ利用可能リンツズマブを提供する。一実施形態では、メディトープ利用可能リンツズマブは、配列番号289、290、291または292の重鎖を含む。一実施形態では、メディトープ利用可能リンツズマブは、配列番号285、286、287または288の軽鎖を含む。リンツズマブのオリジナルのアミノ酸配列は、参考として、配列番号284(重鎖)および283(軽鎖)に提供される。
一実施形態では、鋳型抗体は抗CD33抗体であり、例えば、リンタズマブなどのヒトまたはヒト化抗体またはCD33に対するマウス抗体、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHまたはVLを有する抗体、またはその機能的フラグメントである。いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、CD33に特異的に結合する。CD33(または分化のクラスター33)は、例えば、UniProt識別P20138によって同定される。一局面では、CD33は、骨髄細胞の表面上に見出される。
いくつかの実施形態では、鋳型抗体は、配列番号285〜288および/または配列番号289〜292(下線で示された残基のリーター配列の有無にかかわらず)のアミノ酸配列を含み、それらは、リンツズマブの軽鎖および重鎖アミノ酸配列にそれぞれ記載した(CD33に特異的に結合するモノクローナル抗体、例えば、未熟で成熟した悪性B細胞のCD33)。
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号284に記載された軽鎖、または軽鎖またはリンツズマブのVLのCDR(例えば、1つまたは複数のCDR、すなわちCDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有し、および/または配列番号283に記載された重鎖、または重鎖、またはリンツズマブのVHのCDR(例えば、1つまたは複数のCDR、すなわちCDR1、CDR2および/またはCDR3)を有する。
一局面では、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、1つまたは複数、概して、複数の修飾(それらはフレームワーク内にある)を有し例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の修飾を有する、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、1つまたは複数、概して複数の修飾(それらはフレームワーク内にある)を有し、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、 9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の修飾を有する。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、軽鎖領域内に(または1つまたは複数のこのような領域内、すなわち、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4内に)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、リンツズマブ、または配列番号285〜288の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれ1以上のFR−L)との同一性を含み;および/または重鎖フレームワーク領域内に(または1つまたは複数のそのような領域、すなわち、FR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4内に)少なくとも、または約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、リンツズマブ、または配列番号289〜292の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれ1つまたは複数のFR−H)との同一性を含み;および/またはVH領域内に、少なくともまたは約75、 76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、 88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、リンツズマブ、または配列番号 289〜292のVH領域との同一性を有し; および/またはVL領域内に、少なくとも、または約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、 89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、リンツズマブ、または配列番号 285〜288のVL領域との同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、リンツズマブと比較して、(例えば、配列番号285〜288または289〜292のCDRと比較して)すべてまたは少なくとも95、96、97、98、または99%の同一性を、1つまたは複数、例えば、全てのCDRを重鎖および/または軽鎖内に含む。
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体は、リンツズマブに特異的に結合するCD33のエピトープに特異的に結合しないが、に特異的に結合するか、またはリンツズマブのCDRを含まない、および/またはリンツズマブに結合する抗体と競合しないが、CD33に特異的に結合する。
5.CD37
一実施形態では、鋳型抗体は抗CD37の抗体であり、例えば、ヒトまたはヒト化抗体またはオトレルツズマブなどのCD37に対するマウス抗体、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHまたはVLを有する抗体、またはその機能的フラグメントである。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、CD37に特異的に結合する。CD37は、GP52−40またはTSPAN26としても既知であり、膜貫通4スーパーファミリーのメンバーであり、テトラスパニンファミリーとしても既知である。WO2011112978は、CD37結合分子およびその免疫複合体を開示しており、その開示は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
一実施形態では、CD37に対する鋳型抗体は、アミノ酸配列番号191を有するポリペプチドまたはタンパク質の1つまたは複数のエピトープに特異的に結合するか、または配列番号192の該核酸配列を含むポリヌクレオチドを有するポリペプチドまたはタンパク質を有する。
いくつかの実施形態では、鋳型抗体は配列番号193および/または194のアミノ酸配列を含み、オトレルツズマブのVLおよびVHアミノ酸配列をそれぞれ記載した。オトレルツズマブ(BetalutinまたはIMGN529としても既知である)は、NHLサブタイプのCD20と類似の発現プロファイルを有するCD37を標的とする。
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号193に記載されたVL配列、または軽鎖、またはオトレルツズマブのVLのCDR(すなわち、1つまはたそれ以上のCDR、例えばCDR1、CDR2および/またはCDR3)および/または配列番号194に記載されたVH配列、または重鎖またはオトレルツマズのVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR例えばCDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、配列番号193のアミノ酸、またはオトレルツズマブのVLと比較して、1つまたは複数、概して、複数の修飾(それらは概してフレームワーク領域内にある)を有し、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の修飾を有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、配列番号194のアミノ酸配列、またはオトレルツズマブのVHと比較して、1つまたは複数、概して複数の修飾(それらは、概してフレームワーク領域内にある)を有し、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の修飾を有する。
いくつかの実施形態では、メディトープ利用可能抗体は、軽鎖フレームワーク領域内に(または1つまたは複数のこのような領域、すなわち、FR−L1、FR−L2、FR−L3および/またはFR−L4内に)、少なくとも、または約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、 98、または99%、オトレルツズマブの重鎖フレームワーク領域(またはFR−L(s)のそれぞれ1つまたは複数)または配列番号193の軽鎖フレームワーク領域との同一性を含み;および/または重鎖フレームワーク領域内に(または1つまたは複数のこのような領域、すなわち、FR−H1、FR−H2、FR−H3、および/またはFR−H4内に)少なくとも、または約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、配列番号194のオトレルツズマブの重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれ1つまたは複数のFR−H)との同一性を含み;および/またはVH領域内に、少なくとも、または約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、オトレルツズマブのVH領域(例えば、アミノ酸配列番号194)との同一性を含み;および/またはそのVL領域内に、少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、 90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%、オトレルツズマブのVL領域(例えば、アミノ酸配列番号193)のVL領域との同一性を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、オトレルツズマブと比較して、(例えば、配列番号193または194と比較して)すべてまたは少なくとも95、96、97、98、または99%の同一性1つまたは複数、例えばすべてのCDRを重鎖および/または軽鎖内に含む。
いくつかの局面では、メディトープ利用可能抗体は、オトレルツズマブに特異的に結合するCD37のエピトープに特異的に結合しないが、CD37に特異的に結合するか、またはオトレルツズマブのCDRを含まず、および/またはオトレルツズマブに結合する抗体と競合しないが、CD37に特異的に結合する。
6.ムチン−1
一実施形態では、鋳型抗体は、抗ムチン−1抗体であり、例えば、hPAM4−Cide(クリバツズマブテトラキセタンとしても知られる)などムチン−1に対するヒトもしくはヒト化抗体またはマウス抗体、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHもしくはVLを有する抗体、またはそれらの機能性フラグメントである。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、ムチン1に特異的に結合する。ムチン−1は、ムチン1、細胞表面関連(MUC1)、または多型上皮ムチン(PEM))としても知られ、ヒトではMUC1遺伝子によってコードされるムチンであり、その例としては、NCBI受入番号NP001018021またはUniProt識別子PI5941によって特定されるようなものがある。一実施形態では、ムチン−1に対する鋳型抗体は、配列番号195のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくはタンパク質上の、または配列番号196の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくはタンパク質上の、1つまたは複数のエピトープに特異的に結合する。
実施形態によっては、鋳型抗体は、hPAM4−Cide(クリバツズマブテトラキセタンとしても知られる)のVLおよびVHのアミノ酸配列がそれぞれ記載された配列番号197および/または198のアミノ酸配列を含む。国際特許出願公開第2010042562号は、追加のムチン1抗体を開示し、その開示はあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれている。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号197に規定されるVLの配列の、またはhPAM4−Cideの軽鎖もしくはVLのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)、および/または配列番号178もしくは198に規定されるVH配列の、またはhPAM4−Cideの重鎖もしくはVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR,例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、リーダー配列を含むか含まない配列番号197に記載のアミノ酸配列、またはhPAM4−CideのVLに比べて、1つまたは複数の、一般に複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変を含有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、リーダー配列を含むか含まない配列番号198のアミノ酸配列、またはhPAM4−CideのVHに比べて、1つまたは複数の、例えば複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変)を含有する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)内に、hPAM4−Cideのまたは配列番号197の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−L(複数可))と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはその重鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−H1、FR−H、FR−H3、および/またはFR−H4)内に、hPAM4−Cideのまたは配列番号198の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−H)と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVH領域内に、hPAM4−CideのVH領域と(例えば、配列番号198のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVL領域内に、hPAM4−CideのVL領域と(例えば、配列番号197のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。実施形態によっては、抗体は、重鎖および/または軽鎖内の1つまたは複数の、例えば全てのCDR内に、hPAM4−Cideに比べて(例えば、配列番号197または198のCDR(複数可)に比べて)、完全にまたは少なくとも95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。配列番号197は、hPAM4−Cideの軽鎖可変(VL)領域配列を示し、配列番号198は、hPAM4−Cideの重鎖可変(HL)領域配列を示す。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体は、hPAM4−Cideが特異的に結合するムチン1のエピトープに特異的に結合しないがムチン1に特異的に結合するか、またはhPAM4−CideのCDRを含有しないか、および/または抗原結合をhPAM4−Cideと競合しないがムチン1に特異的に結合する。
7.プロラクチン受容体
一実施形態では、鋳型抗体は、抗プロラクチン受容体(PRLR)抗体であり、例えば、LFA−102や002−H08などプロラクチン受容体に対するヒトもしくはヒト化抗体またはマウス抗体、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHもしくはVLを有する抗体、またはそれらの機能性フラグメントである。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、プロラクチン受容体に特異的に結合する。一態様では、プロラクチン受容体は、染色体5p13−14上の遺伝子によってコードされ、膜貫通受容体としてプロラクチン分子と相互作用する。プロラクチン受容体は、プロラクチンに結合する細胞外領域、膜貫通領域、および細胞質領域を含有する。
実施形態によっては、鋳型抗体は、LFA−102のVLおよび/またはVHのアミノ酸配列を含み、LFA−102は、IgGlカッパサブタイプのヒト化モノクローナル抗体であり、リガンドのない競合的な様式でPRLRの推定二量体化領域に結合して、PRLにより誘導されるシグナル伝達を阻害する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、LFA−102のVLのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)、および/またはLFA−102のVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR,例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、LFA−102のVLに比べて、1つまたは複数の、一般に複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変を含有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、LFA−102のVHに比べて、1つまたは複数の、例えば複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変)を含有する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)内に、LFA−102の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−L(複数可))と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはその重鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−H1、FR−H、FR−H3、および/またはFR−H4)内に、LFA−102の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−H)と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVH領域内に、LFA−102のVH領域と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVL領域内に、LFA−102のVL領域と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。実施形態によっては、抗体は、重鎖および/または軽鎖内の1つまたは複数の、例えば全てのCDR内に、LFA−102に比べて、完全にまたは少なくとも95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体は、LFA−102が特異的に結合するプロラクチン受容体のエピトープには特異的に結合しないがプロラクチン受容体に特異的に結合するか、またはLFA−102のCDRを含有しないか、および/または抗原結合をLFA−102と競合しないがプロラクチン受容体に特異的に結合する。
実施形態によっては、鋳型抗体は、002−H08のVLおよびVHのアミノ酸配列がそれぞれ記載された配列番号208および/または209のアミノ酸配列を含む。米国特許出願公開第20120315276号は、002−H08を含むプロラクチン受容体抗体を開示し、その開示はあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれている。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号208に規定されるVL配列の、または002−H08の軽鎖もしくはVLのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)、および/または配列番号209に規定されるVH配列の、または002−H08の重鎖もしくはVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR,例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、配列番号208に記載のアミノ酸配列または002−H08のVLに比べて、1つまたは複数の、一般に複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変を含有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、配列番号209のアミノ酸配列または002−H08のVHに比べて、1つまたは複数の、例えば複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変)を含有する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)内に、002−H08のまたは配列番号208の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−L(複数可))と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはその重鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−H1、FR−H、FR−H3、および/またはFR−H4)内に、002−H08のまたは配列番号209の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−H)と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVH領域内に、002−H08のVH領域と(例えば、配列番号209のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVL領域内に、002−H08のVL領域と(例えば、配列番号208のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。実施形態によっては、抗体は、重鎖および/または軽鎖内の1つまたは複数の、例えば全てのCDR内に、モキセツモマブに比べて(例えば、配列番号208または209のCDR(複数可)に比べて)、完全にまたは少なくとも95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体は、002−H08が特異的に結合するプロラクチン受容体のエピトープに特異的に結合しないがプロラクチン受容体に特異的に結合するか、または002−H08のCDRを含有しないか、および/または抗原結合を002−H08と競合しないがプロラクチン受容体に特異的に結合する。
8.SDC−1
一実施形態では、鋳型抗体は、抗SDC−1抗体であり、例えば、インダツキシマブ・ラブタンシンなどSDC−1(シンデカン1またはCD138としても知られる)に対するヒトもしくはヒト化抗体またはマウス抗体、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHもしくはVLを有する抗体、またはそれらの機能性フラグメントである。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、SDC−1に特異的に結合する。一態様では、SDC−1は、膜貫通(I型)ヘパラン硫酸プロテオグリカンであり、シンデカンプロテオグリカンファミリーのメンバーである。このシンデカンは、細胞の結合、細胞のシグナル伝達、および細胞骨格の組織化を媒介し、シンデカン受容体は、HIV−1 tatタンパク質の内在化に必要である。シンデカン−1タンパク質は、内在性膜タンパク質として機能し、細胞外マトリックスタンパク質に対するその受容体を介して、細胞の増殖、細胞の遊走、および細胞−マトリックスの相互作用に関与する。シンデカン−1の発現の変化が、異なる複数の腫瘍型で検出されている。この遺伝子には複数の転写物バリアントが存在する可能性があるとともに、完全長の形体はこれまでに2種のみ記載されている。これら2種は、この遺伝子の主要なバリアントを表し、同じタンパク質をコードする。一実施形態では、SDC−1に対する鋳型抗体は、配列番号210のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはタンパク質上の1つまたは複数のエピトープに特異的に結合する。
実施形態によっては、鋳型抗体は、インダツキシマブ・ラブタンシンのVLおよびVHのアミノ酸配列がそれぞれ記載された配列番号211および/または配列番号212のアミノ酸配列を含む。インダツキシマブ・ラブタンシン(BT−062、BT062、またはB−B4としても知られる)は、SDC−1抗体である。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号211に規定されるVL配列の、またはインダツキシマブ・ラブタンシンの軽鎖もしくはVLのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)、および/または配列番号212に規定されるVH配列の、またはインダツキシマブ・ラブタンシンの重鎖もしくはVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR,例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、配列番号211に記載のアミノ酸配列、またはインダツキシマブ・ラブタンシンのVLに比べて、1つまたは複数の、一般に複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変を含有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、リーダー配列を含むか含まない配列番号212のアミノ酸配列、またはインダツキシマブ・ラブタンシンのVHに比べて、1つまたは複数の、例えば複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変)を含有する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)内に、インダツキシマブ・ラブタンシンのまたは配列番号211の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−L(複数可))と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはその重鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−H1、FR−H、FR−H3、および/またはFR−H4)内に、インダツキシマブ・ラブタンシンのまたは配列番号212の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−H)と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVH領域内に、インダツキシマブ・ラブタンシンのVH領域と(例えば、配列番号212のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVL領域内に、インダツキシマブ・ラブタンシンのVL領域と(例えば、配列番号211のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。実施形態によっては、抗体は、重鎖および/または軽鎖内の1つまたは複数の、例えば全てのCDR内に、インダツキシマブ・ラブタンシンに比べて(例えば、配列番号211または212のCDR(複数可)に比べて)、完全にまたは少なくとも95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体は、インダツキシマブ・ラブタンシンが特異的に結合するSDC−1のエピトープには特異的に結合しないがSDC−1に特異的に結合するか、またはインダツキシマブ・ラブタンシンのCDRを含有しないか、および/または抗原結合をインダツキシマブ・ラブタンシンと競合しないがSDC−1に特異的に結合する。
9.HER−2
一実施形態では、鋳型抗体は、抗HER−2抗体であり、例えばトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))などHER−2(ERBB2としても知られる)に対するヒトもしくはヒト化抗体またはマウス抗体、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHもしくはVLを有する抗体、またはそれらの機能性フラグメントである。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、HER−2に特異的に結合する。態様によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号303に規定されるVL配列の、またはトラスツズマブの軽鎖もしくはVLのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)、および/または配列番号304に規定されるVH配列の、またはトラスツズマブの重鎖もしくはVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR,例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、トラスツズマブのアミノ酸配列に比べて、1つまたは複数の、一般に複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変を含有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、トラスツズマブのアミノ酸配列に比べて、1つまたは複数の、例えば複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変)を含有する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)内に、トラスツズマブの軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−L(複数可))と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはその重鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−H1、FR−H、FR−H3、および/またはFR−H4)内に、トラスツズマブの重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−H)と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVH領域内に、トラスツズマブのVH領域と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVL領域内に、トラスツズマブのVL領域と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。実施形態によっては、抗体は、重鎖および/または軽鎖内の1つまたは複数の、例えば全てのCDR内に、トラスツズマブに比べて(例えば、配列番号65または66または67のCDR(複数可)に比べて)、完全にまたは少なくとも95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体は、トラスツズマブが特異的に結合するHER−2のエピトープには特異的に結合しないがHER−2に特異的に結合するか、またはトラスツズマブのCDRを含有しないか、および/または抗原結合をトラスツズマブと競合しないがHER−2に特異的に結合する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号303のアミノ酸配列を含む軽鎖を有し、および/または配列番号304のアミノ酸配列を含む重鎖を有する。実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、cQFDメディトープ、バリアント3リンカーを含み、および/またはメディトープ利用可能なトラスツズマブ(例えば、配列番号304)の重鎖に融合されている。
10.EGFR
一実施形態では、鋳型抗体は、抗EGFR抗体抗体であり、例えば、ABT−806やザツキシマブなどEGFRに対するヒトもしくはヒト化抗体またはマウス抗体、またはそのような抗体の重鎖、軽鎖、VHもしくはVLを有する抗体、またはそれらの機能性フラグメントである。態様によっては、抗EGFR鋳型抗体は、セツキシマブではなく、セツキシマブの全てもしくはいくつかのCDRを含有せず、および/または結合をセツキシマブと競合しない。
一実施形態では、EGFRに対する鋳型抗体は、配列番号213のアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくはタンパク質上の、または配列番号214の核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドもしくはタンパク質上の、1つまたは複数のエピトープに特異的に結合する。
実施形態によっては、鋳型抗体は、EGFR抗体であるABT−806(mAb806/414としても知られる)のVLおよびVHのアミノ酸配列をそれぞれ規定する配列番号215および/または配列番号216のアミノ酸配列を含み、および/またはABT−806の軽鎖および重鎖の配列をそれぞれ規定する配列番号217および/または218のアミノ酸配列を含む。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号215に規定されるVL配列の、またはABT−806の軽鎖もしくはVLのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)、および/または配列番号216に規定される重鎖もしくはVHの、またはABT−806の重鎖もしくはVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR,例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、配列番号215に記載のアミノ酸配列またはABT−806のVLに比べて、1つまたは複数の、一般に複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変を含有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、リーダー配列を含むか含まない配列番号216に記載のアミノ酸配列またはABT−806のVHに比べて、1つまたは複数の、例えば複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変)を含有する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)内に、ABT−806のまたは配列番号215の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−L(複数可))と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはその重鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−H1、FR−H、FR−H3、および/またはFR−H4)内に、ABT−806のまたは配列番号216の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−H)と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVH領域内に、ABT−806のVH領域と(例えば、配列番号216のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVL領域内に、ABT−806のVL領域と(例えば、配列番号215のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。実施形態によっては、抗体は、重鎖および/または軽鎖内の1つまたは複数の、例えば全てのCDR内に、ABT−806に比べて(例えば、配列番号215または216のCDR(複数可)に比べて)、完全にまたは少なくとも95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体は、ABT−806が特異的に結合するEGFRのエピトープには特異的に結合しないがEGFRに特異的に結合するか、またはABT−806のCDRを含有しないか、および/または抗原結合をABT−806と競合しないがEGFRに特異的に結合する。
実施形態によっては、鋳型抗体は、ザツキシマブのそれぞれVLおよびVHのアミノ酸配列を規定する配列番号219および/または配列番号220のアミノ酸配列を含み、ならびに/またはEGFR抗体であるザツキシマブの軽鎖および重鎖の配列を規定する配列番号221および/もしくは222のアミノ酸配列を含む。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号219に規定されるVL配列の、またはザツキシマブの軽鎖もしくはVLのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR、例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)、および/または配列番号220に規定されるVH配列の、またはザツキシマブの重鎖もしくはVHのCDR(すなわち、1つまたは複数のCDR,例えば、CDR1、CDR2、および/またはCDR3)を有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体のVL領域は、配列番号219に記載のアミノ酸配列またはザツキシマブのVLに比べて、1つまたは複数の、一般に複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変を含有し、および/またはメディトープ利用可能抗体のVH領域は、配列番号220に記載のアミノ酸配列またはザツキシマブのVHに比べて、1つまたは複数の、例えば複数の改変(一般にフレームワーク領域中にある)を、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個や20個などの改変)を含有する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体は、その軽鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−L1、FR−L2、FR−L3、および/またはFR−L4)内に、ザツキシマブのまたは配列番号219の軽鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−L(複数可))と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはその重鎖フレームワーク領域(または1つもしくは複数のそのような領域内の、例えば、FR−H1、FR−H、FR−H3、および/またはFR−H4)内に、ザツキシマブのまたは配列番号220の重鎖フレームワーク領域(またはそれぞれの1つもしくは複数のFR−H)と少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVH領域内に、ザツキシマブのVH領域と(例えば、配列番号220のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有し;および/またはそのVL領域内に、ザツキシマブのVL領域と(例えば、配列番号220のアミノ酸配列と)少なくともまたは約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。実施形態によっては、抗体は、重鎖および/または軽鎖内の1つまたは複数の、例えば全てのCDR内に、ザツキシマブに比べて(例えば、配列番号219または220のCDR(複数可)に比べて)、完全にまたは少なくとも95、96、97、98、もしくは99%の同一性を含有する。
態様によっては、メディトープ利用可能抗体は、ザツキシマブが特異的に結合するEGFRのエピトープには特異的に結合しないがEGFRに特異的に結合するか、またはザツキシマブのCDRを含有しないか、および/または抗原結合をザツキシマブと競合しないがEGFRに特異的に結合する。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号299のアミノ酸配列を含む軽鎖を有し、および/または配列番号300のアミノ酸配列を含む重鎖を有する。実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、cQFDメディトープ、バリアント3リンカーを含み、および/またはセツキシマブに融合されている。
実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、配列番号301のアミノ酸配列を含む軽鎖を有し、および/または配列番号302のアミノ酸配列を含む重鎖を有する。実施形態によっては、メディトープ利用可能抗体またはフラグメントは、cQFDメディトープ、バリアント3リンカーを含み、および/またはI83E(Kabatナンバリング)として置換されたセツキシマブ、例えば配列番号302に融合されている。
メディトープ利用可能抗体は、概して、定常領域、典型的には重鎖および軽鎖の定常領域をさらに含み、これらの定常領域は概して、ヒトまたは部分的にヒトの定常領域である。態様によっては、重鎖定常領域は、CH1またはその一部を含む。態様によっては、軽鎖定常領域は、CLまたはその一部を含む。実施形態によっては、定常領域の一部は、抗体をメディトープに、例えば必要な結合親和性を伴って結合可能とするのに充分である。態様によっては、定常領域は、セツキシマブまたはトラスツズマブの定常領域である、それゆえ、態様によっては、重鎖定常領域は、1つまたは複数のヒトIgGl定常領域であり、態様によっては、軽鎖定常領域は、カッパ定常鎖領域である。他の例では、定常領域は、他のアイソタイプの物を含むことができ、そのようなものとしては、ヒト(または他の生物、例えばマウスやニワトリ)のIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgA1、IgA2、IgD、またはIgMが挙げられ、またカッパまたはラムダの定常領域を含むことができる。それゆえ、提供されるメディトープ利用可能抗体の中には、ヒト、マウスやニワトリなどの他のIgG、または他のイムノグロブリンにおける残基の変異によって生成されるものがある。換言すれば、本明細書に提供されるメディトープ利用可能な方法は、任意の抗体に、すなわちIgA、IgE、IgD、およびIgMを含み、以下に限定されないがニワトリ、マウス、ラット、ウシ、ウサギ、霊長類、およびヤギを含めた抗体を産生する任意の生物に由来する抗体に、使用されてもよい。
例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の第1定常領域(CH1)の配列は、セツキシマブのメディトープ結合領域内でない残基で異なっており、このことは、メディトープ利用可能技術がIgGlのセツキシマブ以外のアイソタイプに適用可能であることを裏付ける。別の例として、IgGlとIgEのFabドメインとの配列および構造のアラインメントによって、IgE上の残基がメディトープ結合部位の近くにあることが示されている。
モノクローナル抗体内でFab空洞のメディトープ部位移植を行うための提供される方法は、メディトープの結合のためのユニークな取っ手を作製することができ、既に開示されておりかつ新たに作出される抗体のための技術とともに使用することができる。ある特定の実施形態では、メディトープ結合部位を、既存のおよびあらゆる今後のモノクローナル抗体の上に作製することができる。
また提供されるのは、メディトープ利用可能抗体を改変するための、例えば、メディトープ利用可能抗体の様々な性質を変えるように改変するための方法であり、そのような性質としては、メディトープとの相互作用の面、例えば親和性、アビディティー、pH依存性、ならびに他の面、例えば抗体の薬物動態(PK)および薬力学(PD)が挙げられる。それゆえ、提供されるメディトープ利用可能抗体の中には、例えばファルマコフォア結合モデルを作出することによるなどの方法に従って、作出された改変抗体もあり、そのようなものとしては、下記の項目Fに記載の改変のうち任意の1つまたは複数を有する抗体が挙げられる。
またメディトープ利用可能抗体を作出するための鋳型抗体として使用される抗体の中には、CovX−Body(登録商標)などの改変抗体またはその一部もある。そのため、提供されるメディトープ利用可能抗体の中には、提供されるメディトープのうち1つまたは複数に、例えば本明細書に記載されるような親和性を伴って結合することを可能にするように改変された、CovX−bodyがある。
また提供されるのは、本明細書に記載のいずれかの抗体など、メディトープ利用可能抗体に結合している1つまたは複数のメディトープを含有する複合体である。
また提供されるのは、メディトープ利用可能抗体をコードするcDNA分子やRNA分子などの核酸、同上を含有するベクターおよびライブラリー、ならびにそれらの使用の方法であり、そのような方法としては、上記構築物を使用した選抜方法および発現方法、ならびにトランスジェニック動物を作出するための方法が挙げられる。
下記の表は、本願で参照される追加のリンカーおよびメディトープ利用可能抗体の配列を示す。
II.自己架橋抗体を作出するための組成物および方法
A.核酸、ベクター、および同上を含む細胞
また提供されるのは、本明細書に記載の任意の抗体をコードする単離された核酸である。実施形態によっては、核酸は、既に記載された任意の自己架橋性抗体をコードする核酸の発現に適したベクターをさらに含む。さらにいっそう特殊な態様では、ベクターは、その核酸の発現に適した宿主細胞中にある。さらにいっそう特殊な態様では、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。さらにいっそう特殊な態様では、真核細胞は、哺乳類細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)またはHEK−293やそれらのバリアントなどである。
実施形態によっては、核酸は、遊離メディトープをコードするヌクレオチドの配列をさらに含む。実施形態によっては、第1の核酸は、自己架橋性抗体をコードするヌクレオチドの配列を含み、第2の核酸は、遊離メディトープをコードするヌクレオチドの配列を含む。遊離メディトープは、本明細書に記載される環状ペプチドのいずれかを含むことができ、そのようなペプチドは、例えば、配列番号1、2、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、186、187、188、189、もしくは207のいずれか、またはそれらに由来する環状ペプチドを含む。実施形態によっては、遊離メディトープは、上記核酸によってコードされる自己架橋性抗体上のメディトープ結合部位に結合することが可能である。
抗体またはその抗原結合フラグメントは、当技術分野に公知の方法を使用して作製されてもよく、そのような方法は、例えば、既に記載された任意の自己架橋性抗体または抗原結合フラグメントをコードする核酸を発現に適した形態で含有する宿主細胞を、そのような抗体またはフラグメントを生産するのに適した条件下で培養すること、およびその抗体またはフラグメントを回収することを含む、プロセスによって行われるものである。
実施形態によっては、自己架橋性抗体は、組換え法を用いて生産することができる。抗抗原抗体の組換え生産に用いるために、抗体をコードする核酸を単離して、別途クローニング用(DNAの増幅)または発現用の複製可能なベクター内に挿入することができる。抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離およびシークエンシングされることがある。数多くのベクターが利用可能であり、そのようなものとしては、例えばpCEP4ベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはガンマレトロウイルスベクターが挙げられる。一般に、ベクターのコンポーネントとしては、以下に限定されないが、シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終結配列のうち1つまたは複数が挙げられる。
1.ポリシストロン性発現ベクター
実施形態によっては、発現ベクターは、自己架橋性抗体と遊離メディトープとの両方を共発現することが可能なバイシストロン性、トリシストロン性、またはポリシストロン性のベクター(マルチシストロン性ベクターとも呼ばれる)である。実施形態によっては、遊離メディトープをコードするヌクレオチドの配列と、自己架橋性抗体をコードするヌクレオチドの配列とは、動作可能に連結されているか、または自己切断ペプチドをコードするヌクレオチドの配列によって隔てられている。実施形態によっては、それらは、ピコルナウイルス2AリボソームスキップペプチドやT2Aペプチドなど、リボソームスキップを引き起こすペプチドをコードするヌクレオチドの配列によって隔てられている。
実施形態によっては、遊離メディトープをコードする一連の核酸と、自己架橋性抗体をコードする一連の核酸とは、動作可能に連結されていつか、または内部リボソーム進入部位(IRES)によって隔てられている。実施形態によっては、IRES配列の前にある遺伝子は、IRES配列の後ろにある遺伝子よりも高いレベルで発現する。遊離メディトープをコードするヌクレオチドの配列をIRES配列の前に、自己架橋性抗体をコードするヌクレオチドの配列をIRES配列の後ろに配することが、実施形態によっては有利であることがある。この配置によって、自己架橋性抗体に比べて過剰な遊離−メディトープペプチドの発現を可能にし、それによって、生産、単離の間および/または保存の間、抗体が自己架橋するのを低減または防止することができる。
2.シグナル配列コンポーネント
実施形態によっては、自己架橋性抗体は、組換えにより、直接的にのみでなく、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとして生産されることがあり、この異種ポリペプチドは、シグナル配列とすることも、成熟したタンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的な切断部位を有する他のポリペプチドとすることもできる。好ましく選択される異種のシグナル配列は、宿主細胞によって認識およびプロセシングされる(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然の抗体シグナル配列を認識およびプロセッシングしない原核の宿主細胞については、シグナル配列を、例えば、アルカリホスファターゼリーダー、ペニシリナーゼリーダー、lppリーダー、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される、原核シグナル配列に置換する。酵母の分泌については、天然のシグナル配列を、例えば、酵母のインベルターゼリーダー、因子リーダー(サッカロマイセス(Saccharomyces)およびクルイベロマイセス(Kluyveromyces)のα−因子リーダー)または酸性ホスファターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、または国際特許出願公開第90/13646号に記載のシグナルに置換してもよい。哺乳類細胞の発現では、哺乳類のシグナル配列ならびにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスのgDシグナルが利用可能である。
3.複製起点
発現ベクターとクローニングベクターはどちらも、一般に、1つまたは複数の選択された宿主細胞でベクターを複製することを可能にする、核酸配列を含有する。クローニングベクターでは、この配列を、ベクターが宿主の染色体DNAに非依存的に複製することを可能にするものとすることができ、複製起点または自律複製配列を含むものとすることができる。そのような配列は、種々の細菌、酵母、およびウイルスについて周知である。プラスミドpBR322由来の複製の起点は、多くのグラム陰性細菌に適しており、2μプラスミドの起点は、酵母に適しており、様々なウイルスの起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、またはBPV)は、哺乳類細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点のコンポーネントは、哺乳類発現ベクターには必要とされないが、SV40起点は、初期プロモーターを含有することから使用されることがある。
4.選択コンポーネント
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択遺伝子を含有し、それは選択可能マーカーともよばれる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するか、(b)栄養要求性欠損を相補するか、または(c)複合培地から利用できない必須の栄養を供給する、タンパク質をコードし、例えば、バシラス(Bacilli)に用いるD−アラニンラクタマーゼをコードする遺伝子がある。
選択スキームの一例では、宿主細胞の成長を阻止するための薬剤が利用される。異種遺伝子を用いて首尾良く形質転換された細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を生産し、それゆえ選択レジメンを生き残る。そのような優性選択の例では、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸、およびハイグロマイシンが使用される。
哺乳類細胞に適した選択可能マーカーの別の例は、抗体をコードする核酸を取り込む能力のある細胞を特定することを可能にするものであり、例えば、DHFR、グルタミンシンターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネインIおよびII、好ましくは霊長類のメタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどである。
例えば、DHFR遺伝子を用いて形質転換された細胞は、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中で、形質転換体を培養することによって特定される。これらの条件下では、DHFR遺伝子は、共形質転換された任意の他の核酸と共に増幅する。内在性DHFRの活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL−9096)を使用してもよい。
あるいは、GS遺伝子を用いて形質転換された細胞は、GSの阻害剤であるL−メチオニンスルホキシミン(Msx)を含有する培養培地中で、形質転換体を培養することによって特定される。これらの条件下では、GS遺伝子は、共形質転換された任意の他の核酸と共に増幅する。GS選抜/増幅系を、上に記載のDHFR選抜/増幅系と組み合わせて使用してもよい。
あるいは、目的の抗体、野生型DHFR遺伝子、およびアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)などの別の選択可能マーカーをコードするDNA配列を用いて形質転換または共形質転換された宿主細胞(具体的には、内在性のDHFRを含有する野生型の宿主)は、選択可能マーカーに対するアミノグリコシド系抗生物質などの選択薬剤、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418を含有する培地中での、細胞の成長によって選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
酵母での使用に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombら、Nature、282巻、39頁(1979年))。trp1遺伝子は、トリプトファン中で成長する能力を欠失した酵母の変異株、例えば、ATCC番号44076またはPEP4−1に選択マーカーを与える。Jones、Genetics、85巻、12頁(1977年)。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1の損傷が存在すると、トリプトファン非存在下での成長によって形質転換を検出するための有効な環境がもたらされる。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を担持する公知のプラスミドによって相補される。
さらに、1.6μmの環状プラスミドpKD1に由来するベクターを、クルイベロマイセス酵母の形質転換に使用することができる。あるいは、組換えウシキモシンの大規模生産のための発現系が、クルイベロマイセス・ラクティス(K.lactis)について報告された。Van den Berg、Bio/Technology、8巻、135頁(1990年)。クルイベロマイセスの工業用株によって成熟した組換えヒト血清アルブミンを分泌するための、安定なマルチコピー発現ベクターもまた開示されている。Fleerら、Bio/Technology、9巻、968〜975頁(1991年)。
5.プロモーターコンポーネント
発現ベクターおよびクローニングベクターは、一般に、宿主生物によって認識され、かつ抗体をコードする核酸に動作可能に連結された、プロモーターを含有する。実施形態によっては、ベクターは、自己架橋性抗体の転写を制御するための1つのプロモーターを含む。実施形態によっては、ベクターは、自己架橋性抗体と1つまたは複数の遊離メディトープとの両方をコードする核酸の配列に動作可能に連結された、1つのプロモーターを含む。別の実施形態では,ベクターは、第1のプロモーターに動作可能に連結された、組換えのメディトープ利用可能抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするヌクレオチドの配列、および第2のプロモーターに動作可能に連結された遊離メディトープをコードするヌクレオチドの配列を含む。第1および第2のプロモーターは、同じとすることも異なるものとすることもできる。
実施形態によっては、遊離メディトープおよび自己架橋性抗体を異なるレベルで発現することが遊離である場合がある。例えば、生産、単離、または保存の間に自己架橋を防止するために、遊離メディトープを自己架橋性抗体よりも高いレベルで発現することが遊離である場合がある。そのため、実施形態によっては、一方のプロモーターが、他方よりも強いプロモーターである可能性があるか、他方よりも高い転写開始率に繋がることがあるか、またはRNAポリメラーゼに対し他方よりも高い親和性を有する。実施形態によっては、プロモーターのうち一方または両方は、条件的プロモーターである。
原核宿主を用いる使用に適したプロモーターとしては、phoAプロモーター、β−ラクタマーゼプロモーター系およびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかし、他の公知の細菌性プロモーターが適する。細菌系での使用のためのプロモーターは、抗体をコードするDNAに動作可能に連結されたシャイン−ダルガルノ(S.D.)配列を含有することができる。
プロモーター配列は真核生物について公知である。実質的に全ての真核遺伝子は、転写が始まる部位からおよそ25塩基から30塩基上流に位置する、ATに富んだ領域を有する。数多くの遺伝子の転写の開始点から70塩基から80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域であり、ここで、Nは任意のヌクレオチドとしてよい。殆どの真核の遺伝子の3’端には、AATAAA配列があり、これは、コーディング配列の3’端にポリAテールを添加するシグナルとなることがある。これらの配列は全て、真核発現ベクターに適切に挿入される。.
酵母宿主を用いる使用に適したプロモーター配列の例としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、または他の解糖系酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼやグルコキナーゼなどのプロモーターが挙げられる。
成長状態によって転写が制御されるという追加の利点を持つ誘導性プロモーターである、他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、およびマルトースおよびガラクトースの利用に関わる酵素のプロモーター領域である。酵母発現での使用に適したベクターおよびプロモーターは、欧州特許出願公開第73,657号にさらに記載されている。酵母エンハンサーもまた、酵母プロモーターとともに有利に使用される。
哺乳類宿主細胞内でのベクターからの抗体の転写は制御することができ、例えば、宿主細胞システムに互換性のあるプロモーターとして提供される、ポリオーマウィルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2といった)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、シミアンウイルス40(SV40)といったウイルスのゲノムから得られるプロモーター、または例えば、アクチンプロモーターや免疫グロブリンプロモータといった異種の哺乳動物プロモーター、または熱ショックプロモーターにより制御することができる。
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、また、複製のSV40ウイルス起源を含むSV40制限フラグメントとして利便性良く得ることができる。ヒトサイトメガロウイルの直接的な早期プロモーターは、Hind III E制限フラグメントとして利便性良く得られる。ウシパビローマウイルスをベクターとして使用する哺乳類ホスト内でのDNA発現のためのシステムは、米国特許第4,419,446号に開示されている。このシステムの修正は、米国特許第4,601,978号に記載されている。また、単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制限下、マウス細胞内でのヒトβ−インターフェロンcDNAの発現については、Reyesら、Nature 297:598−601(1982)を参照されたい。これとは別に、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復、PGK、EF1α、NSE、UBC、CAGG、シナプシン、β−アクチンまたはGFAPは、プロモーターとして使用することができる。
実施形態によっては、発現は、条件的なプロモーター、エンハンサー、またはトランスアクティベーターの制御下にある。実施形態によっては、自己架橋性抗体の発現は、条件的なプロモーター、エンハンサー、またはトランスアクティベーターの制御下にあり、遊離メディトープの発現は、恒常的に活性のプロモーターの制御下にある。例示的な利点として、そのような実施形態は、生産される自己架橋性抗体の量、発現のタイミング、および自己架橋性抗体と遊離メディトープトの比の制御を可能にすることができる。実施形態によっては、自己架橋性抗体の発現は、恒常的に活性のプロモーター、エンハンサー、またはトランスアクティベーターの制御下にあり、遊離メディトープの発現は、条件的プロモーターの制御下にある。例示的な利点として、そのような実施形態は、生産、単離、または保存の間.に抗体の自己架橋を変調させる必要がある場合にのみ、遊離メディトープの発現を可能にすることができる。実施形態によっては、条件的なプロモーター、エンハンサー、またはトランスアクティベーターは、誘導性のプロモーター、エンハンサー、もしくはトランスアクティベーター、抑圧性のプロモーター、エンハンサー、もしくはトランスアクティベーター、または組織−特異的なプロモーター、エンハンサー、もしくはトランスアクティベーターである。.
実施形態によっては、本明細書に記載のいずれのペプチドまたは核酸の発現も、調節因子、例えばドキシサイクリン、テトラサイクリンやそれらの類似体などを用いて細胞を処理することによって、外部から制御されることがある。テトラサイクリンの類似体としては、例えば、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメチルクロロテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、およびミノサイクリンが挙げられる。
実施形態によっては、誘導型の転写および/または発現は、トランスアクティベーターをトランスアクティベーター誘導プロモーターと共に使用して実行することができる。実施形態によっては、そのようなトランスアクティベーター誘導プロモーターは、目的の導入遺伝子または核酸の転写を増強または抑制するための制御因子を含む。制御因子としては、制限はないが、オペレーター、エンハンサー、およびプロモーターが挙げられる。実施形態によっては、トランスアクティベーター誘導性プロモーターは、トランスアクティベーターが結合した際に、例えば上記に挙げたものから選択される因子を変調させることによって、転写的に活性となり、ここでトランスアクティベーターは、特異的な一連の条件下で、例えば化学的シグナルの特殊な組合せの存在下または非存在下で、次々に活性化される。
トランスアクティベーター誘導プロモーターは、複数のtetオペロン配列、例えば3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のtetオペロン配列などのトランスアクティベーター結合配列を組み入れるように改変されている、本明細書に記述される任意のプロモーターとしてもよい。実施形態によっては、tetオペロン配列は縦列に並んでいる。
調節因子の存在下で発現を誘導する転写調節因子ドメインの具体的な例としては、以下に限定されないが、以下の転写調節因子に見られる転写調節因子ドメイン、すなわち、Tet−On転写調節因子、ならびにTet−On Advanced転写調節因子およびTet−On 3G転写調節因子が挙げられ、これらは全て、Clontech Laboratories、マウンテンビュー、カリフォルニア州から入手可能である。調節因子の非存在下で発現を誘導する転写調節因子ドメインの具体的な例としては、以下に限定されないが、以下の転写調節因子に見られる転写調節因子ドメイン、すなわち、Tet−off転写調節因子およびTet−Off Advanced転写調節因子が挙げられ、どちらともClontech Laboratories、マウンテンビュー、カリフォルニア州から入手可能である。当技術分野に周知であるおよび当業者に馴染みのあるものとなる手順に従って、これらの系を適応および使用することができる。
実施形態によっては、トランスアクティベーター誘導プロモーターは、阻害的な核酸分子に動作可能に連結された複数のトランスアクティベーター結合配列を含む。
トランスアクティベーターは、トランスアクティベーターをコードする配列に動作可能に連結された調節因子依存的なプロモーターを含む、同じ発現ベクターまたは異なる発現ベクター内の、核酸配列によって提供されてもよい。用語「異なる発現ベクター」は、核酸のデリバリのための任意の媒体、例えば、ウイルス、プラスミド、コスミド、またはトランスポゾンを含むことが意図されている。前記核酸配列の使用に適したプロモーターとしては、例えば、恒常的な、調節的な、組織−特異的な、またはユビキタスなプロモーターが挙げられ、それらは細胞由来、ウイルス由来、または合成由来であってもよく、例えばCMV、RSV、PGK、EF1α、NSE、シナプシン、β−アクチン、GFAPなどがある。
いくつかの実施形態による例示的なトランスアクティベーターは、rtTA2−M2のDNA結合ドメインとOct−2Q(Q→A)活性化ドメインとから構成される、rtTA−Oct.2トランスアクティベーターである。いくつかの実施形態による別の例示的なトランスアクティベーターは、Tetリプレッサータンパク質(大腸菌(E.coli))のDNA結合ドメインとOct−2Q(Q→A)活性化ドメインとから構成される、rtTA−Oct.3トランスアクティベーターである。どちらも国際特許出願公開第2007/004062号に記載されている。
6.エンハンサー因子コンポーネント
高等真核生物による、この発明の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、ベクター内にエンハンサー配列を挿入することによって増加する。数多くのエンハンサー配列が、哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインシュリン)を由来として今では公知である。しかし、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用するものとなる。例としては、SV40の複製起点(bp100〜270)の後期側のエンハンサー、サイトメガロウイルスの初期プロモーターのエンハンサー、ポリオーマの複製起点の後期側のエンハンサー、およびアデノウイルスのエンハンサーが挙げられる。また、真核プロモーターの活性化のための増強因子に関してはYaniv、Nature、297巻17〜18頁(1982年)を参照されたい。エンハンサーは、抗体をコードする配列の5’位または3’位でベクター内に接合されていることがあるが、好ましくはプロモーターの5’部位に位置する。
7.転写終結コンポーネント
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用される発現ベクターはまた、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列を含むものとなる。そのような配列は、真核またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’の、および場合によっては3’の非翻訳領域を由来として、一般に利用可能である。これらの領域は、ポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドのセグメントを、抗体をコードするmRNA非翻訳部分に含有する。有用な転写終結コンポーネントの1つは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際特許出願公開第94/11026号およびそこに開示されている発現ベクターを参照されたい。
8.宿主細胞の形質転換の選択
本明細書のベクター中のDNAをクローニングまたは発現するのに適した宿主細胞は、上に記載された原核生物、酵母、または高等真核細胞である。この目的に適した原核生物は、グラム陰性またはグラム陽性の生物などの真正細菌が挙げられ、例えば、エシェリキアなどの腸内細菌科、例えば大腸菌;エンテロバクター属;エルウィニア属;クレブシエラ属;プロテウス属;サルモネラ属、例えばマウスチフス菌(Salmonella typhimurium);セラチア属、例えばセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescans);およびシゲラ属;ならびにバチルス綱、例えば枯草菌(B.subtilis)やバチルス・リシェニフォルミス(B.licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266,710に開示されたバチルス・リシェニフォルミス41P)など;シュードモナス属、例えば緑膿菌(P.aeruginosa);およびストレプトマイセス属がある。好適な大腸菌クローニング宿主の1つは、大腸菌294(ATCC31,446)であるが、もっとも、他の株、例えば大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31,537)や大腸菌W3110(ATCC27,325)なども適する。これらの例は、限定するというよりも例証的なものである。
完全長抗体、抗体融合タンパク質、および抗体フラグメントは、細菌で生産することができ、それは具体的には、グリコシル化およびFcのエフェクター機能が必要でない際に、例えば、それ自体で腫瘍細胞の破壊の有効性を示す細胞毒性剤(例えば毒素)に、治療抗体がコンジュケートされている際などである。完全長抗体は、循環系内でより長い半減期を有する。大腸菌での生産は、より早く、よりコスト効率が良い。細菌での抗体フラグメントおよびポリペプチドの発現のためには、例えば、発現および分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)およびシグナル配列が記載されている、米国特許第5,648,237号(Carterら)、米国特許第5,789,199号(Jolyら)、米国特許第5,840,523号(Simmonsら)を参照されたい。また、大腸菌での抗体フラグメントの発現を記載している、Charlton、Methods in Molecular Biology、248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、トトワ、ニュージャージー州、2003年)、245〜254頁も参照されたい。発現後、抗体を可溶性画分中の大腸菌細胞のペーストから単離してもよく、例えば、アイソタイプに応じてプロテインAまたはGカラムを通じて、精製することができる。最終的な精製は、例えばCHO細胞で発現される抗体を精製するプロセスと同様に、実施することができる。
原核に加えて、糸状菌や酵母などの真核微生物は、抗体をコードするベクターに適したクローニング宿主または発現宿主である。サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)または一般的なパン酵母は、下等真核宿主微生物の中でも最も一般的に使用される。しかし、数多くの他の属、種、および株が、一般に利用可能でかつ本明細書では有用であり、例えば、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe);クルイベロマイセス宿主、例えばクルイベロマイセス・ラクティス(K.lactis)、クルイベロマイセス・フラジリス(K.fragilis)(ATCC12,424)、クルイベロマイセス・ブルガリカス(K.bulgaricus)(ATCC16,045)、クルイベロマイセス(K.wickeramii)(ATCC24,178)、クルイベロマイセス・ワルティ(K.waltii)(ATCC56,500)、クルイベロマイセス・ドロソフィラルム(K.drosophilarum)(ATCC36,906)、クルイベロマイセス・サーモトレランス(K.thermotolerans)やクルイベロマイセス・マルシアヌス(K.marxianus)など;ヤロウイア(欧州特許出願公開第402,226号);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許出願公開第183,070号);カンジダ;トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)(欧州特許出願公開第244,234号);アカパンカビ(Neurospora crassa);シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)など;ならびに糸状菌、例えば、アカパンカビ属(Neurospora)、アオカビ属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、およびアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)やクロコウジカビ(A.niger)などのコウジカビ属(Aspergillus)宿主がある。治療タンパク質の生産に用いる酵母および糸状菌の使用を議論している総説については、例えば、Gerngross,Nat.Biotech.、22巻、1409〜1414頁(2004年)を参照されたい。
グリコシル化経路が「ヒト化」されており、その結果として部分的にまたは完全にヒトのグリコシル化パターンを持つ抗体を生産する、ある特定の真菌株および酵母株が選択されることがある。例えば、Liら、Nat.Biotech.、24巻、210〜215頁(2006年)(ピキア・パストリスのグリコシル化経路のヒト化を記載している);および前掲のGerngrossなどを参照されたい。
グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎生物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物および昆虫細胞が挙げられる。非常に多くのバキュロウイルス株およびバリアントと、宿主由来の対応の受動昆虫宿主細胞とが特定されており、宿主としては例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ)、およびカイコガ(Bombyx mori)がある。トランスフェクションに用いる種々のウイルス株は、公的に利用可能であって、例えば、キンウワバ(Autographa californica)NPVのL−lバリアントおよびカイコガNPVのBm−5株があり、そのようなウイルスは、本発明による本明細書のウイルスとして、具体的にはヨトウガ細胞をトランスフェクションするために、使用されることがある。
また、ワタ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、ウキクサ(ウキクサ亜科(Leninaceae))、アルファルファ(タルウマゴヤシ(M.truncatuld))、およびタバコの植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を生産するためのPLANTIBODIES(登録商標)技術を記載)を参照されたい。
脊椎動物細胞を宿主として使用してもよく、培養(組織培養)で脊椎動物細胞を増殖させることは、定型の手順となりつつある。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓株(浮遊培養における成長のためにサブクローニングされた細胞を含む、293細胞もしくはHEK−293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.、36巻、59頁(1977年);またはFREESTYLE(登録商標)293−F細胞(Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア州)を含む、他のバリアント);仔ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);マウスセルトーリ細胞s(TM4、Mather、Biol.Reprod.、23巻、243〜251頁(1980年));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝臓細胞(BRL3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.、383巻、44〜68頁(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌株(Hep G2)である。
他の有用な哺乳類宿主細胞株としては、DHFR−CHO細胞(Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77巻、4216頁(1980年))を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;およびNS0やSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体生産に適したいくつかの哺乳類宿主細胞株を概観するには、例えば、YazakiおよびWu、Methods in Molecular Biology、第248巻(B.K.C.Lo,編、Humana Press、トトワ、ニュージャージー州、2003年)、255〜268頁を参照されたい。
宿主細胞は、抗体生産のために、上述の発現ベクターまたはクローニングベクターを用いて形質転換されて、プロモーターを誘導するために、形質転換体を選択するために、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切となるように改変された、従来の栄養培地中で培養される。
9.宿主細胞の培養
自己架橋性抗体を生産するのに使用される宿主細胞は、種々の培地で培養されてもよい。ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの商業的に利用可能な培地が、宿主細胞を培養するのに適している。さらに、Hamら、Meth.Enz.、58巻、44頁(1979年)、Barnesら、Αnal.Biochem.、102巻、255頁(1980)、米国特許第4,767,704号、第4,657,866号、第4,927,762号、第4,560,655号、または第5,122,469号、国際特許出願公開第90/03430号、国際特許出願公開第87/00195号、または米国再発行特許第30,985号に記載されているいずれかの培地を、宿主細胞のための培養培地として使用してもよい。これらの培地のいずれかに、必要に応じて、ホルモン、および/または他の成長因子(インシュリン、トランスフェリンや上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩など)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンやチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(登録商標)薬剤)、微量元素(通常はマイクロモルの範囲の終濃度で存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは同等のエネルギー源を補充してもよい。他の任意の必要な補充物も、当業者に公知であろう適切な濃度で含まれることがある。培養条件、例えば温度、pHなどは、発現用に選択された宿主細胞を用いて既に使用されているものであり、当業者には明らかとなるものである。
B.抗体の精製
組換え手法を使用する際に、抗体を細胞内で、ペリプラズム内で、または培地内に直接的に分泌させて、生産することができる。抗体を細胞内で生産する場合には、第1のステップとして、宿主細胞または溶解したフラグメントのどちらかである微粒子の残骸を、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去する。Carterら、Bio/Technology、10巻、163〜167頁(1992年)は、大腸菌のペリプラズム空間に分泌される抗体を単離するための手順を記載している。簡単に述べれば,細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で、約30分間にわたって解凍する。細胞の残骸は、遠心分離によって除去することができる。抗体を培地中に分泌する際には、そのような発現系から得られた上清を、商業的に利用可能なタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して、概ね最初に濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を、タンパク質分解を阻害するために任意の上述にステップに含めてもよく、抗生物質を、偶発的な汚染物の成長を防止するために含めてもよい。
細胞から調製される抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティクロマトグラフィーを使用し、親和性クロマトグラフィーを典型的に好適な精製ステップのうちの1つとして用いて、精製することができる。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意のイムノグロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、basedonヒトγ1、γ2、またはγ4の重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.、62巻、1〜13頁(1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に推奨される(Gussら、EMBO J.、5巻、15671575頁(1986))。アフィニティリガンドが付加するマトリックスは、殆どの場合はアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。物理的に安定なマトリックス、例えば制御された多孔ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどは、アガロースを用いて達成するよりも流速を速く、プロセス時間を短くすることを可能にする。抗体がCH3ドメインを含む際には、Bakerbond ABX(登録商標)樹脂(J.T.Baker、フィリップスバーグ、ニュージャージー州)が精製に有用である。タンパク質精製のための他の手法、例えばイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(登録商標)でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿などもまた、回収される抗体に応じて利用可能である。
概して、研究、試験、および臨床で使用するための抗体を調製するための様々な方法論は、当技術分野では充分に確立されており、上述の方法論と一貫性があり、および/または当技術分野の当業者によって具体的な目的の抗体には適切であると考えられるようなものである。
C.自己架橋性抗体−薬剤コンジュゲートを含む組成物
ある特定の実施形態では、自己架橋性抗体は、1つまたは複数の治療剤または診断剤、例えばイメージング剤、治療有効量の治療有効剤もしくは化合物またはその両方にコンジュゲーションされる。提供されるのは、そのような複合体であり、実施形態によっては、その複合体は、複数のメディトープ、1つまたは複数のリンカー、および1つまたは複数の剤を含む。
現時点の開示は、疾患または状態を治療、予防、診断、またはモニターするために、治療用または診断用(例えばイメージング用)の剤または化合物をメディトープもしくはそれらのバリアント、リンカー、および/または抗体にコンジュゲーションすることを想定している。一態様では、そのような自己架橋性抗体と剤とのコンジュゲーションは、疾患を治療および検出するためのmAbベースの治療法およびイメージング法を大幅に改善する、高度に応用の利くプラットフォーム技術を提供する。
剤は、当技術分野に公知の任意の手段によってコンジュゲーションすることができる。実施形態によっては、剤は、リジン、チロシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ホルミルグリシン、もしくはアルデヒドのタグ、非天然アミノ酸などにコンジュゲーションされる。ホルミルグリシンまたはアルデヒドのタグは、反応性アルデヒド基を生成するホルミルグリシン生成酵素(FGE)によって認識され標的とされる、6アミノ酸(LCTPSR、配列番号247)または13アミノ酸(LCTPSRGSLFTGR、配列番号248)の配列を含むことがある。反応性アルデヒド基は、メディトープを剤にコンジュゲーションすることを含むそれ以降の反応において、有用となることがある。Carricoら、Nature Chemical Biology、3巻、321〜322頁(2007年)を参照されたい。
診断剤および治療剤としては、関連の技術分野に周知である任意のそのような剤が挙げられる。イメージング剤の中には、蛍光物質および発光物質があり、そのようなものとしては、以下に限定されないが、一般に「染料」、「標識」、または「指示剤」と称する種々の有機のまたは無機の小分子が挙げられる。例としては、フルオレセイン、ローダミン、アクリジン染料、Alexa染料、およびシアニン染料が挙げられる。本開示の実施形態に従ってイメージング剤として使用されることがある酵素は、以下に限定されないが、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコロニダーゼ(glucoronidase)、またはβ−ラクタマーゼが挙げられる。このような酵素は、検出可能なシグナルを生成する、クロモゲン、蛍光発生化合物、または発光発生化合物と組み合わせて使用されることがある。
本開示の実施形態に従ってイメージング剤として使用されることがある放射活性物質としては、以下に限定されないが、18F、32P、33P、45Ti、47Sc、52Fe、59Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、77As、86Y、90Y、89Sr、89Zr、94Tc、94Tc、99mTc、99Mo、105Pd、105Rh、111Ag、111In、123I、124I、125I、131I、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、154−1581Gd、161Tb、166Dy、166Ho、169Er、175Lu、177Lu、186Re、188Re、189Re、194Ir、198Au、199Au、211At、211Pb、212Bi、212Pb、213Bi、223Raおよび225Acが挙げられる。本開示の実施形態に従って追加のイメージング剤として使用されることがある常磁性イオンとしては、以下に限定されないが、遷移金属およびランタノイド金属のイオン(例えば21〜29、42、43、44、または57〜71の原子番号を持つ金属)が挙げられる。これらの金属としては、Cr、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuのイオンが挙げられる。
イメージング剤が放射活性金属または常磁性イオンである際には、これらのイオンに結合させるために1つまたは複数のキレート基が付加されたロングテールを有する別のロングテール試薬に、剤を反応させることがある。このロングテールは、ポリリジン、ポリサッカライド、または金属またはイオンを結合のために追加されることがあるペンダント基を有する他の誘導体のもしくは誘導体化可能な鎖など、ポリマーとしてもよい。本開示に従って使用されることがあるキレート基の例としては、以下に限定されないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、DOTA、NOTA、NETA、TETA、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリオキシム、および同様の基が挙げられる。キレートは通常、最小限の免疫反応性の喪失、最小限の凝集および/または内部の架橋を伴って分子との結合の形成を可能にする基によって、PSMA抗体または機能性抗体フラグメントに連結される。同じキレートは、マンガン、鉄やガドリニウムなどの非放射活性金属と複合体を形成させると、MRIに用いる際に、本明細書に記載の抗体および担体と共に使用される場合に有用である。NOTA、DOTAやTETAなどの大環状キレートが、以下に限定されないが、それぞれガリウム、イットリウム、および銅の放射性核種を含む種々の金属および放射性金属とともに使用される。RAIT用の223Raなどの核種を安定的に結合するために重要な大環状ポリエーテルなど、他の環型キレートが使用されることがある。ある特定の実施形態では、PET分析での使用のためのA1−18F複合体などのPETイメージング剤を標的化分子に付加させるために、キレート部分が使用されることがある。
例示的な治療剤としては、以下に限定されないが、薬剤、化学療法剤、治療抗体および抗体フラグメント、毒素、放射性同位体、酵素(例えば、腫瘍の部位でプロドラッグを細胞毒性剤に切断する酵素)、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi分子(例えば、siRNAまたはshRNA)、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、および染料が挙げられる。治療剤はまた、キレート剤に結合している金属、金属合金、金属間物、またはコアシェルナノ粒子を含み、上記キレート剤は、標的細胞の放射線療法への感度を健康な細胞に比べてさらに高いものとする、放射線増感剤として機能する。さらに、治療剤は、MRI造影剤用の常磁性ナノ粒子(例えば、磁鉄鉱またはFe3O4)を含んでいてもよく、他のタイプの療法(例えば、光線力学療法および温熱療法およびイメージング(例えば、蛍光イメージング(AuおよびCdSe))と共に使用されてもよい。
化学療法剤は、多くの場合、細胞毒性または細胞分裂抑制性を本質的に有し、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤 ホルモン療法、標的療法剤、および免疫療法剤を含むことがある。実施形態によっては、本開示の実施形態に従う治療剤として使用される化学療法剤としては、以下に限定されないが、13−cis−レチノイン酸、2−クロロデオキシアデノシン、5−アザシチジン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アクチノマイシン−D、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、all−transレチノイン酸、アルファインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミホスチン、アナグレリド、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、三酸化ヒ素、アムサクリン、アミノカンプトテシン、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、アウリスタチン、ジメチルバリン−バリン−ドライソロイシン−ドラプロイン−フェニルアラニン−p−フェニレンジアミン(AFP)、ドバリン−バリン−ドライソロイシン−ドラプロイン−フェニルアラニン(MMAF)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、オーレオマイシン、アザシチジン、カルメット−ゲラン棹菌(BCG)、ベンダムスチン、ベバシズマブ、エタネルセプト、ベキサロテン、ビカルタミド、ビスマス、ボルテゾミブ、ブレオマイシン、ブスルファン、カルシウムロイコボリン、シトロボラム因子、カペシタビン、カネルチニブ、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルチゾン、シクロホスファミド、シタラビン、ccl065、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、デシタビン、デニロイキンジフチトクス、デキサメタゾン、デキサゾン、デクスラゾキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ダカルバジン、ドセタキセル、ドロスタチン、ドキソルビシン、ドキシフルリジン、エニルウラシル、エピルビシン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、エベロリムス、エキセメスタン、エストラムスチン、エチジウムブロミド、エトポシド、フィルグラスチム、フルオキシメステロン、フルベストラント、フラボピリドール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、リンツズマブ、オゾガマイシン、ゴセレリン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヘキサメチルメラミン、ヒドロコルチゾンヒドロキシ尿素、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ、インターロイキン−2、インターロイキン−11、イソトレチノイン、イクサベピロン、イダルビシン、メシル酸イマチニブ、イホスファミド、イリノテカン、ラパチニブ、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、リュープロリド、リポソームAra−C、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、マイタンシノイド、ネララビン、ニルタミド、オクトレオチド、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペメトレキセド、パニツムマブ、PEGインターフェロンペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG−L−アスパラギナーゼ、ペントスタチン、プリカマイシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカルバジン、ラロキシフェン、リシン、リシンA鎖、リツキシマブ、ロミプロスチム、ラリトレキセド、サパシタビン、サルグラモスチム、サトラプラチン、ソラフェニブ、スニチニブ、セムスチン、ストレプトゾシン、タキソール、タモキシフェン、テガフール、テガフール−ウラシル、テムシロリムス、テモゾラミド、テニポシド、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、トリミトレキサート、アルルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、またはゾレドロン酸が挙げられる。
本開示の実施形態に従って治療剤として使用されることがある治療抗体およびその機能性フラグメントとしては、以下に限定されないが、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、エドレコロマブ、ゲムツズマブ、リンツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、およびトラスツズマブ、ならびに本明細書に列挙されている具体的な疾患に関連する他の抗体が挙げられる。
本開示の実施形態に従って治療剤として使用されることがある毒素としては、以下に限定されないが、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNaseI、ブドウ球菌エンテロトキシンA、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が挙げられる。
本開示の実施形態に従って治療剤として使用されることがある放射性同位体としては、以下に限定されないが、32P、89Sr、90Y、99mTc、99Mo、131I、153Sm、177Lu、186Re、213Bi、223Ra、および225Acが挙げられる。
D.自己架橋性抗体および遊離メディトープを含む組成物
また本明細書に提供されるのは、自己架橋性抗体および遊離メディトープを含む組成物である。本明細書に記載されるように、そのような組成物は、発現、製剤、および保存の間の自己架橋を変調または調節する際に、または本明細書に記載のいずれかの方法を用いた使用のために、有利であることがある。遊離メディトープは、上に記載されるように自己架橋性抗体と共発現するか、または組成物に別々に添加することができる。
実施形態によっては、組成物は、自己架橋性抗体に比べて高濃度の遊離メディトープを含む。例えば、実施形態によっては、自己架橋性抗体と遊離メディトープとの比は、1:1と1:1,000の間であり、そのような比としては、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:10、1:15、1:20、1:25、1:50、1:75、1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:400、1:500、および1:750が挙げられる。
実施形態によっては、組成物は、自己架橋性抗体のメディトープ結合部位に対し、自己架橋性抗体にリンカーを介して付加しているメディトープよりも高い親和性を持つ、遊離メディトープを含む。実施形態によっては、組成物は、自己架橋性抗体のメディトープ結合部位に対し、自己架橋性抗体にリンカーを介して付加しているメディトープよりも低い親和性を持つ、遊離メディトープを含む。実施形態によっては、自己架橋性抗体のメディトープ結合部位は、上に記載のように1つまたは複数のメディトープに対する結合親和性を変える、1つまたは複数の置換を含む。例えば、メディトープ結合部位は、遊離メディトープに対し、自己架橋性抗体に融合されているメディトープよりも大きな親和性を示すか、またはその逆である可能性がある。
様々な濃度と親和性との組合せも想定される。遊離メディトープが自己架橋抗体のメディトープ結合部位に対し高い親和性を有する際に、低濃度の自己架橋性抗体と高濃度の遊離メディトープとを含む組成物は、実施形態によっては有利である場合がある。例えば、そのような実施形態は、自己架橋性抗体の生産もしくは保存の間に、自己架橋を最小にすることがあるか、またはさらに高い自己架橋能を持つ自己架橋性抗体の生産、保存、および使用を可能にすることがある。実施形態によっては、組成物は、高濃度の自己架橋性抗体と、自己架橋性抗体のメディトープ結合部位に対し高い親和性を持つ高濃度の遊離メディトープとを含む。例示的な利点としては、そのような実施形態によって、自己架橋性抗体の組成物をさらに濃縮することが可能になることがある。
既に記載されているように、実施形態によっては、製剤は、あるpHを有し、そこでは、遊離メディトープが、第1の自己架橋またはメディトープ利用可能抗体のメディトープ結合部位に対し、増加した親和性を有する。実施形態によっては、選択されたpHにおける遊離メディトープのこの増加した親和性は、第1の自己架橋またはメディトープ利用可能抗体のメディトープ結合部位に対する第2の自己架橋性抗体のメディトープの親和性よりも高い。実施形態によっては、そのような神話性の差は、抗体の自己架橋活性を防止または低減する際に有利となることがある。
さらに、実施形態によっては、自己架橋性抗体のメディトープは、同系抗原の部位に存在するpHでは、メディトープ結合部位に対し、遊離メディトープよりも高い親和性を示す。実施形態によっては、同系抗原の部位は、がんを含めた疾患または障害を有する細胞または組織を含む、標的の細胞または組織である。
E.自己架橋性抗体の特性解析
メディトープ利用可能抗体へのメディトープの結合性を、SPRおよびITCを含む任意の複数の公知の方法によって特徴付けて、例えば、自己架橋性抗体とのコンジュゲーションがメディトープ−Ig相互作用に影響を及ぼさないことを保証することができる。場合によっては、そのような測定は、一般にこれらのアプローチが細胞表面(腫瘍細胞の表面など)に存在する抗原を含まないことを考えると、それらの能力を相乗的な効果に限定する可能性がある。そのため、態様によっては、FACS分析および/または細胞生存能アッセイを使用して、抗体によって認識される抗原を発現している細胞(例えば、セツキシマブのコンテキストでは、EGFRを過剰発現している細胞)の上に直接的に存在する、自己架橋性抗体の効果を定量する。概して、自己架橋性抗体によって認識される抗原を発現(例えば過剰発現)している細胞株を、細胞上に発現する抗原に抗体が結合する条件下で、自己架橋性抗体と共にインキュベーションする。場合によっては、様々な濃度の抗体を使用する。適切なインキュベーションの時間および洗浄を実施する。多価または一価のメディトープに係合された非自己架橋型のメディトープ利用可能抗体を、それぞれ陽性対照および陰性対照として使用してもよい。抗体およびメディトープを、フローサイトメトリーまたは顕微鏡によって検出可能な周知の剤を用いて標識化してもよい。例によっては、例えば非自己架橋性抗体を比べた際などの、自己架橋性抗体の存在下でのシフト(FACSの場合)またはシグナルの増加は、相乗的または相加的な効果を標示する。別の例では、自己架橋性抗体の相加的な効果をさらに確認するために、非標識の一価のメディトープを競合アッセイに使用して、それが他の抗原結合自己架橋性抗体との結合について、標識化された自己架橋性抗体と競合するか否かを決定することができる。
他の例では、細胞生存能アッセイを使用して、自己架橋性抗体の殺細胞効果を増強する能力を決定する。例えば、目的の抗原を発現する細胞を、様々な濃度の自己架橋性抗体と共にインキュベーションしてもよい。非自己架橋メディトープ利用可能抗体に再度結合する多価のメディトープおよび一価のメディトープが、対照として有用である。例によっては、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を使用して、生細胞の数またはパーセンテージを定量する。細胞の生存能、増殖、および/または死を測定するための他のアプローチは、当技術分野に公知であり、使用されることがある。
別の例では、そのようなアッセイで活性を示す自己架橋性抗体について、ウェスタンブロット分析または他の生化学的もしくはシグナル伝達のアプローチを実施して、細胞表面の受容体(例えば、セツキシマブの場合、EGFRシグナル伝達経路の一部であるEGFR、AKT、MAPのリン酸化の状態を追うために)など、特定の抗原に関連するシグナル伝達の阻害を精査する。そのような研究から得られるデータを、メディトープ利用可能抗体(すなわち、メディトープがない)のみを用いて、一価のメディトープを用いて、多価のメディトープを用いて、および/またはチロシンキナーゼまたは他の公知の阻害剤(AG1478など)を用いて処理した、細胞から得たデータと比較してもよい。例によっては、自己架橋性抗体の濃度の関数として細胞死の増加が観察され、このことは、自己架橋性抗体の相乗的な殺細胞効果を示す。
F.生物活性抗体の選択
上に記載されたように生産された抗体は、治療上の見地から有益な性質を持つ抗体を選択するための、または抗体の生物活性を保持する処方および状態を選択する、1種または複数の「生物活性」アッセイに供されてもよい。抗体は、それを樹立した際の標的の抗原に結合する能力について試験されてもよい。実施形態によっては、抗体の結合は、例えば、飽和結合、ELISA、および/または競合アッセイ(例えばRIA)よって決定されることがある。また、抗体は、例えば、治療法としてのその有効性を評価するために、他の生物活性アッセイに供されてもよい。そのようなアッセイは、当技術分野に公知であり、標的とする抗原および抗体の目的とする用途に依存する。
目的の抗原上の特定のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory、HarlowおよびDavid Lane編(1988年)に記載されるものなど、定型の交差遮断アッセイを実施することができる。あるいは、エピトープマッピング、例えばChampeら、J.Biol.Chem.、270巻、1388〜1394頁(1995年)に記載されるようなものを実施して、抗体が目的のエピトープに結合するか否かを決定することができる。
G.製剤の調製
目的の抗体の調製(例えば、本明細書に記載されるように製剤化することのできる抗体を生産するための手法は、下記に詳述され、当技術分野に公知である)の後、それを含む医薬製剤を調製する。ある特定の実施形態では、製剤化される抗体は、予め凍結乾燥には供されておらず、本明細書の目的の製剤は、水性製剤である。ある特定の実施形態では、抗体は、完全長の抗体である。一実施形態では、製剤中の抗体は、F(ab’)2などの抗体フラグメントであり、その際には、完全長の抗体には起こらないと思われる事例の問題(抗体がFabに切り取られるなど)に対処する必要がある場合がある。製剤中に存在する抗体の治療有効量は、例えば、所望の用量の体積および投与の方式(複数可)を考慮して、決定される。約25mg/mLから約150mg/mLまで、または約30mg/mLから約140mg/mLまで、または約35mg/mLから約130mg/mLまで、または約40mg/mLから約120mg/mLまで、または約50mg/mLから約130mg/mLまで、または約50mg/mLから約125mg/mLまで、または約50mg/mLから約120mg/mLまで、または約50mg/mLから約110mg/mLまで、または約50mg/mLから約100mg/mLまで、または約50mg/mLから約90mg/mLまで、または約50mg/mLから約80mg/mLまで、または約54mg/mLから約66mg/mLまでが、製剤中の例示的な抗体濃度である。
実施形態によっては、製剤は、遊離メディトープをさらに含む。遊離メディトープは、自己架橋性抗体が生産、単離、および/または保存中に自己架橋するのを低減または防止することができる。そのような遊離メディトープは、上に記載されるように自己架橋性抗体と共に発現および単離するか、または別々に生産して組成物および製剤に添加することができる。過剰の遊離のメディトープペプチドを含有する実施形態もある。実施形態によっては、遊離メディトープの量を、自己架橋性抗体の量に化学量論的に関連付けることができる。例えば、実施形態によっては、自己架橋性抗体と遊離メディトープとの比は、1:1と1:1,000の間であり、そのようなものとしては、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:10、1:15、1:20、1:25、1:50、1:75、1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:400、1:500、および1:750が挙げられる。実施形態によっては、メディトープペプチドの遊離量は、例えば約0.1mg/mLから約150mg/mLまでを含めた、濃度によって決定される。
水性製剤は、pH緩衝溶液中に抗体を含んで調製される。この発明の緩衝剤は、約5.0から約7.0までの範囲のpHを有する。ある特定の実施形態ではpHは、約5.0から約6.5までの範囲にあるか、pHは、約5.0から約6.4までの範囲にあるか、約5.0から約6.3までの範囲にあるか、pHは、約5.0から約6.2までの範囲にあるか、pHは、約5.0から約6.1までの範囲にあるか、pHは、約5.5から約6.1までの範囲にあるか、pHは、約5.0から約6.0までの範囲にあるか、pHは、約5.0から約5.9までの範囲にあるか、pHは、約5.0から約5.8までの範囲にあるか、pHは、約5.1から約6.0までの範囲にあるか、pHは、約5.2から約6.0までの範囲にあるか、pHは、約5.3から約6.0までの範囲にあるか、pHは、約5.4から約6.0までの範囲にあるか、pHは、約5.5から約6.0までの範囲にあるか、pHは、約5.6から約6.0までの範囲にあるか、pHは、約5.7から約6.0までの範囲にあるか、またはpHは、約5.8から約6.0の範囲にある。本発明のある特定の実施形態では、製剤は、6.0または約6.0のpHを有する。本発明のある特定の実施形態では、製剤は、5.9または約5.9のpHを有する。本発明のある特定の実施形態では、製剤は、5.8または約5.8のpHを有する。本発明のある特定の実施形態では、製剤は、5.7または約5.7のpHを有する。本発明のある特定の実施形態では、製剤は、5.6または約5.6のpHを有する。本発明のある特定の実施形態では、製剤は、5.5または約5.5のpHを有する。本発明のある特定の実施形態では、製剤は、5.4または約5.4のpHを有する。本発明のある特定の実施形態では、製剤は、5.3または約5.3のpHを有する。本発明のある特定の実施形態では、製剤は、5.2または約5.2のpHを有する。
この範囲内にpHを制御するものとなる緩衝剤の例としては、ヒスチジン(L−ヒスチジンなど)または酢酸ナトリウムが挙げられる。ある特定の実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムを約15mMから約25mMの濃度で含有する。本発明のある特定の実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムを、約15mMから約25mM、約16mMから約25mM、約17mMから約25mM、約18mMから約25mM、約19mMから約25mM、約20mMから約25mM、約21mMから約25mM、約22mMから約25mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、または約25mMの濃度で含有する。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.0の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.1の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.2の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.3の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.4.の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.5の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.6の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.7の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.8の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH5.9の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH6.0の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH6.1の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH6.2の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約20mM、pH6.3の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH5.2の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH5.3の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH5.4の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH5.5の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH5.6の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、〜の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。約25mM、pH5.7.一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH5.8の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH5.9の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH6.0の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH6.1の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH6.2の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。一実施形態では、緩衝剤は、約25mM、pH6.3の量のヒスチジン酢酸塩または酢酸ナトリウムである。
製剤は、ショ糖を約60mMから約240mMの量でさらに含むことができる。実施形態によっては、製剤中のショ糖は、約60mMから約230mM、約60mMから約220mM、約60mMから約210mM、約60mMから約200mM、約60mMから約190mM、約60mMから約180mM、約60mMから約170mM、約60mMから約160mM、約60mMから約150mM、約60mMから約140mM、約80mMから約240mM、約90mMから約240mM、約100mMから約240mM、約110mMから約240mM、約120mMから約240mM、約130mMから約240mM、約140mMから約240mM、約150mMから約240mM、約160mMから約240mM、約170mMから約240mM、約180mMから約240mM、約190mMから約240mM、約200mMから約240mM、約80mMから約160mM、約100mMから約140mM、または約110mMから約130mMである。実施形態によっては、製剤中のショ糖は、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、約140mM、約150mM、約160mM、約170mM、約180mM、約190mM、約200mM、約210mM、約220mM、約230mM、または約240mMである。
実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約40mg/mLから約125mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約40mg/mLから約120mg/mL、約40mg/mLから約110mg/mL、約40mg/mLから約100mg/mL、約40mg/mLから約90mg/mL、約40mg/mLから約80mg/mL、約40mg/mLから約70mg/mL、約50mg/mLから約120mg/mL、約60mg/mLから約120mg/mL、約70mg/mLから約120mg/mL、約80mg/mLから約120mg/mL、約90mg/mLから約120mg/mL、または約100mg/mLから約120mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約60mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約65mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約70mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約75mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約80mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約85mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約90mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約95mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約100mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約110mg/mLである。実施形態によっては、製剤中の抗体濃度は、約125mg/mLである。
実施形態によっては、界面活性剤が、抗体製剤に添加される。例示的な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例えばポリソルベート20、80など.)やポロキサマー(例えばポロキサマー188など)などが挙げられる。添加される界面活性剤の量は、製剤化される抗体の凝集を低減する、および/または製剤中の粒子の形成を最小にする、および/または吸着を低減するような量である。例えば、界面活性剤は、製剤中に約0.001%から約0.5%(w/v)までの量で存在することがある。実施形態によっては、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、約0.005%から約0.2%まで、約0.005%から約0.1%まで、約0.005%から約0.09%まで、約0.005%から約0.08%まで、約0.005%から約0.07%まで、約0.005%から約0.06%まで、約0.005%から約0.05%まで、約0.005%から約0.04%まで、約0.008%から約0.06%まで、約0.01%から約0.06%まで、約0.02%から約0.06%まで、約0.01%から約0.05%まで、または約0.02%から約0.04%までである。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.005%または約0.005%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)ispresentin製剤inan量of0.006%or約0.006%.ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.007%または約0.007%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.008%または約0.008%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.009%または約0.009%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.01%or約0.01%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.02%または約0.02%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.03%または約0.03%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.04%または約0.04%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.05%または約0.05%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.06%または約0.06%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.07%または約0.07%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.08%または約0.08%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.1%または約0.1%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.2%または約0.2%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.3%または約0.3%の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.4%または約0.4%)の量で存在する。ある特定の実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、製剤中に0.5%または約0.5%の量で存在する。
一実施形態では、製剤は、上記に特定された剤(例えば、抗体、緩衝剤、ショ糖、および/または界面活性剤)を含有し、1つまたは複数の保存剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール、およびベンゼトニウムClなどが本質的に遊離している。別の実施形態では、保存剤が製剤に含まれていてもよく、具体的にはその製剤は、複数回用量製剤である。保存剤の濃度は、約0.1%から約2%まで、好ましくは約0.5%から約1%までの範囲にあるものとしてもよい。1つまたは複数の他の医薬的に許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A編(1980年)に記載されるものなどが、提供される製剤中に含まれていてもよく、それらは、不利益な影響を製剤の所望の特徴に及ぼさないものである。許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤は、採用された投薬量および濃度ではレシピエントに非毒性であり、追加の緩衝剤;共溶媒;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);ポリエステルなどの生分解性ポリマー;および/または塩を形成する対イオンが挙げられる。本明細書の例示的な医薬的に許容可能な担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)などの間質薬剤分散剤、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質をさらに含む。ある例示的なsHASEGPおよび使用方法は、rHuPH20を含み、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPを、1つまたは複数の追加のグリコサミノグリカナーゼ、例えばコンドロイチナーゼと組み合わせる。
本明細書の製剤はまた、治療されている特有の適応のために必要に応じて、2つ以上のタンパク質を、好ましくは不利益な影響を他のタンパク質に及ぼさない相補的な活性を持つものを、含有していてもよい。例えば、自己架橋性抗体を、1つまたは複数の追加の剤(例えば、化学療法剤、抗新生物剤、またはイメージング剤)と組み合わせてもよい。
実施形態によっては、製剤中の抗体の物理的安定性、化学的安定性、または生物活性を評価および測定する。当技術分野に公知の、および本明細書の実施例に記載の任意の方法を使用して、製剤中の抗体の安定性および生物活性を評価してもよい。例えば、製剤中の抗体の安定性は、以下に限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー(SECまたはSE−HPLC)、画像化キャピラリー等電点フォーカシング(ICIEF)、ペプチドマッピング、小容量光遮蔽(HIAC)アッセイ、およびCE−ドデシル硫酸ナトリウム(CE−SDS)分析やCE−グリカン分析などのキャピラリー電気泳動(CE)手法によって、測定することができる。実施形態によっては、製剤中の抗体は、−20℃で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約14ヶ月間、少なくとも約16ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、少なくとも約20ヶ月間、少なくとも約21ヶ月間、少なくとも約22ヶ月間、少なくとも約23ヶ月間、少なくとも約24ヶ月間、少なくとも約3年間、または少なくとも約4年間、安定である。実施形態によっては、製剤中の抗体は、2℃から8℃(例えば5℃)で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約14ヶ月間、少なくとも約16ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、少なくとも約20ヶ月間、少なくとも約21ヶ月間、少なくとも約22ヶ月間、少なくとも約23ヶ月間、または少なくとも約24ヶ月間、安定である。実施形態によっては、抗体(すなわち、抗体単量体)の安定性を、保存後の製剤中のサイズ排除クロマトグラフィーによって測定する。実施形態によっては、抗体(すなわち、抗体単量体)の安定性を、保存後の製剤中の画像化キャピラリー等電点フォーカシングによって測定する。実施形態によっては、総タンパク質(例えば、抗体および凝集体を含む)に比較した際の製剤中の抗体単量体のパーセントは、−20℃で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、または少なくとも約24ヶ月間保存した後には、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、または約95%よりも大きい。実施形態によっては、(例えば、抗体および凝集体を含む)に比較した際の製剤中の抗体単量体のパーセントは、2℃から8℃(例えば5℃)で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、または少なくとも約24ヶ月間保存した後には、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、または約95%よりも大きい。実施形態によっては、(例えば、抗体および凝集体を含む)に比較した際の製剤中の抗体単量体のパーセントは、室温(例えば、約15℃から25℃)で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、または少なくとも約24ヶ月間振盪した後には、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、または約95%よりも大きい。実施形態によっては、製剤中の総凝集体(例えば、高分子量種および低分子量種)のパーセントは、−20℃で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、または少なくとも約24ヶ月保存した後には、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%のいずれかよりも小さい。実施形態によっては、製剤中の総凝集体(例えば、高分子量種および低分子量種)のパーセントは、2℃から8℃(例えば5℃)で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、または少なくとも約24ヶ月保存した後には、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%のいずれかよりも小さい。実施形態によっては、製剤中の総凝集体(例えば、高分子量種および低分子量種)のパーセントは、室温(例えば、約15℃から25℃)で、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、または少なくとも約24ヶ月振盪した後には、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%のいずれかよりも小さい。本明細書の実施形態のうちいずれかでは、安定な製剤を、ガラスバイアル、金属合金容器、または静脈内注入(IV)バッグに保存することができる。実施形態によっては、金属合金は、316Lのステンレス鋼またはハステロイである。
in vivo投与に使用される製剤は、滅菌されたものであるべきである。これは、製剤の調製の前に、または後に、滅菌された濾過膜を通して濾過することによって容易に達成される。
III.使用の方法
また本明細書に記載されるのは、自己架橋性抗体の方法および使用である。提供される方法の中には、コンジュゲーションされた剤を任意選択で含む、自己架橋性抗体およびその抗原結合フラグメントを、その自己架橋性抗体によって認識される抗原を発現する細胞および組織にデリバリする方法がある。実施形態によっては、自己架橋性抗体は、メディトープ利用可能な自己架橋性抗体を含めて、メディトープ利用可能抗体を架橋する。実施形態によっては、抗体は、細胞表面抗原を標的とする。例示的な抗原としては、その細胞または組織の疾患または状態が発現する抗原、または受容体を介したエンドサイトーシスが可能である細胞表面受容体が挙げられる。
A.細胞表面抗原の分布を変えるための方法
提供されるのは、細胞表面抗原を標的とし、かつ宿主細胞の表面のそれらの抗原の分布に変化を生じるために、メディトープ利用可能な自己架橋性抗体を含めて自己架橋性抗体を使用するための方法である。例えば、腫瘍関連抗原、GPCRなどの受容体、受容体チロシンキナーゼ、CTLA4などの他のシグナル伝達分子、および細胞表面タンパク質上に存在する他のエピトープなど、細胞表面抗原の提示は、それらの抗原上のエピトープを認識する自己架橋性抗体を使用することを介して操作および/または再組織化することができる。受容体およびシグナル伝達分子の再組織化は、シグナル伝達経路および細胞性応答に深い効果を有する。
in vivoでは、このタイプの再組織化は、細胞−細胞接触を通じて起こり、ここでは、ある細胞由来のリガンドは、他の細胞上の受容体と繋合し、効果的に多価の相互作用を作り上げる。この接触点を通じて、受容体/リガンドは、局在化するかまたは互いに近接するようになり、シグナル伝達「シナプス」を作り上げる。シグナル伝達シナプスは、細胞内で翻訳後修飾を開始し、例えば、アクチンおよび微小管の組織化、またはタンパク質のリン酸化を変えることができ、最終的に、特異的な転写事象に導く。
自己架橋性抗体を同様の様式で使用して、細胞表面抗原の分布を変えることができる。実施形態によっては、この方法は、標的細胞上の細胞表面抗原の共局在、凝集、またはクラスター化を増強するかまたは増加させる。態様によっては、この増加は、自己架橋性抗体の添加の前もしくは添加がない際に、またはメディトープ架橋物のない抗体の存在下で、観察されるものと比べた場合の、程度、スピード、および/または持続期間の増加である。特に、1つまたは複数の自己架橋性抗体を投与して、細胞の表面の標的とされている抗原に密に結合させることを可能にすることができる。この効果は、2種の自己架橋メディトープ利用可能抗体の使用によって説明される。この組合せによって、第1のメディトープ利用可能抗体のFabアームにリンカーを介して融合しているあるメディトープが、第2のメディトープ利用可能抗体のFabアームに繋合することが可能になる。この結合によって、同系抗原に結合している連結された抗体が複合体を形成することが可能になる。このシナリオでは、細胞表面抗原に結合している2種の自己架橋メディトープ利用可能抗体が「線状に」配列されることが予想されよう。態様によっては、メディトープは、隣接する抗体、例えばIgGに「ラッチオン(latch−on)」して、細胞表面抗原に結合している自己連結抗体からなる「デイジーチェーン」様のまたはクモの巣様のアレイを形成することができる。これらの抗体は、互いに会合して、互いの方に表面抗原を引き寄せるかまたは架橋し、細胞の表面のそれらの抗原の提示を効果的に変える。それゆえ、さらに数多くの自己架橋性抗体の使用を、例えば、腫瘍細胞で抗原密度が高いことを考慮して、腫瘍抗原を標的とする抗体に用いることができる。
実施形態によっては、自己架橋性抗体またはその抗原結合フラグメントの各アームは、抗体またはそのフラグメントに結合しているメディトープを含む。既に記載されたように、リンカーを、実施形態によっては、一方もしくは両方の重鎖、一方もしくは両方の軽鎖、または1つまたは複数の重鎖および軽鎖の組合せに付加することができる。そのため、実施形態によっては、自己架橋性抗体上の各メディトープは、独立して1つまたは複数の抗体上のメディトープ結合部位に結合することができる。例えば、実施形態によっては、自己架橋性抗体は、別のメディトープ利用可能抗体の各アーム上のメディトープ結合部位に結合することができる。実施形態によっては、このことによって、自己架橋性抗体の他の抗体との結合親和性が変わるかまたは増加する。別の例として、実施形態によっては、自己架橋性抗体の各メディトープは、異なる抗体上のメディトープ結合部位に結合することができる。そのような結合は、相互に接続された自己架橋性抗体の数を増加させることができ、この数は、結合ジオメトリ、表面抗原の分布、または抗体-抗原複合体をさらに変えることができる。
異なる実施形態では、自己架橋性抗体を使用して、免疫応答に特異的な細胞を印付けすることができる。この場合、自己架橋性抗体に会合する受容体のクラスター化によって、T細胞上のFcRに対し「高」濃度のFcドメインが提示される。数の限られた点変位によりFcドメインを特異的に調整して適切な応答を誘発できることが、複数の検討で実証されている。
提供されるのは、標的細胞上の細胞表面抗原を内在化および/または分解を増強または増加するための抗体をデリバリするための方法である。実施形態によっては、この方法は、細胞表面抗原(複数可)特異的に結合する1つまたは複数の自己架橋性抗体を細胞に投与することによって実施され、抗体にリンカーを介して係合されたメディトープを含む。実施形態によっては、抗原の内在化および/または分解が促進、増強、または増加される。態様によっては、内在化の増加は、自己架橋性抗体の添加の前もしくは添加がない際に、またはメディトープのない抗体の存在下で、観察されるものと比べた場合の、程度、スピード、および/または持続期間の増加である。実施形態によっては、この方法は、内在化または細胞内輸送を変えることができる。実施形態によっては、この方法は、細胞間または細胞内のシグナル伝達を変えることができる。
内在化速度を促進するかまたは変えるための代替のアプローチは、ある特定の実施形態で本明細書に記載されるように、細胞に結合している受容体の凝集を促進または制御することによるものである。本明細書での実施形態によっては、自己架橋性抗体を用いて、共局在化、クラスター化、凝集、内在化、および/または細胞内輸送もしくは選別が、達成、反復、または増強もしくは変更される。本明細書に観察されるのは、そのような受容体抗原を認識する自己架橋性抗体が細胞へ投与された後に、リンカーを介して融合されているメディトープを含まない抗体を含めた非自己架橋性抗体の投与を比べると、上記の表面受容体のクラスター化および/または内在化に差があるということである。提供される実施形態の中には、メディトープ利用可能抗体が認識する表面抗原の共局在およびクラスター化、および/または受容体など細胞表面抗原を含むそのような抗原の内在化/輸送/選別を、促進する自己架橋性抗体がある。内在化を強いられる宿主細胞上の細胞表面タンパク質は、同系リガンドとの相互作用にあまり利用できないものとなり、このことは、宿主細胞がそのリガンドに応答する能力に影響を与えることがある。
研究では、細胞膜に局在する粒子のサイズが、いくつかの内在化の機構に重要であることが実証されており(Biochem J.、2004年1月1日;377巻(パート1):159〜69頁;J Nanobiotechnology、2014年2月3日;12巻:5頁、doi:10.1186/1477−3155−12−5)、このことは、関連のリガンドのサイズが、いくつかの内在化経路に影響を及ぼすことがあることを示唆する。自己架橋性抗体の使用によって、細胞表面抗原に結合されている単一抗体に比べて、より粒子のサイズの大きいリガンドの外観が作り出されるものとなる。実施形態によっては、より大きなこの粒子のサイズによって、抗原または細胞表面受容体の内在化を増強することができる。
別の実施形態では、抗体治療の効能は、i)抗体に係合されたメディトープの、メディトープ利用可能抗体のメディトープ結合部位に対する結合親和性を操作することによって、ii)標的抗原上の同系エピトープに対する好適な結合親和性を持つ、メディトープ利用可能抗体を選択することによって、またはiii)自己架橋メディトープ利用可能抗体複合体の標的化の寿命ならびに特異性を最適化するために、両方の特長を操作することによって、変更または改善することができる。特に、相互作用の寿命は、速度論的な離脱速度に関連がある。いくつかの例では、あり得る最も長い寿命が有利になるものと想定することができる。他の例では、中程度の寿命(tau=10ミリ秒から10分)が有利になる。後者の場合では、腫瘍組織上で過剰発現されているが、ある種の健康な組織にもより低いレベル(10倍、100倍、または1000倍)ではあるものの発現されている、特異的な受容体(例えば、EGFRまたはHer2)がある。臨床的には、腫瘍に結合し、健康な組織には結合しないことが望ましい場合がある。中程度の寿命を持つ自己架橋性抗体の組合せを使用することによって、この選択性が増強される。特に、正常細胞に見られるような低い抗原濃度では、メディトープ利用可能抗体は、抗原に結合することができよう。しかし、第2のメディトープ利用可能抗体が抗原に繋合する見込みは低く、抗体の架橋は防止される。いくつかの病態を含めて高い抗原濃度の状態では、隣接するメディトープ利用可能抗体が抗原に繋合する見込みはさらに高く、2つ以上の自己架橋性抗体関連抗原の間を橋渡しすることが可能になる。
既に記載されたように、実施形態によっては、方法は、細胞表面抗原の内在化の程度および/またはスピードの増加をもたらす。内在化の増加および加速は、表面受容体または疾患の進行に関連するかもしくはその原因となる他の表面抗原の下方制御を促進するために抗体がデリバリされる際に、有利となることがある。また、それは、例えば、細胞の表面の受容体または他の表面抗原の量を低減することによって、例えば、分解するためにそれを標的とすることによって、有利となることがある。共受容体を含めて、そのような受容体のいくつかは、細胞のシグナル伝達をもたらすかまたは媒介することが可能である。
それゆえ、本明細書に記載の方法は、実施形態によっては、有害な細胞シグナル伝達を低減、干渉、または排除することができる。実施形態によっては、本明細書に記載の組成物および方法は、抗原の内在化を、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍またはそれ以上に増加させることができる。実施形態によっては、本明細書に記載の組成物および方法は、細胞の表面に存在する抗原の量を、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍またはそれ以上に低減することができる。実施形態によっては、本明細書に記載の組成物および方法は、内在化率の低い抗体の内在化を含めて、抗体の内在化を、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍またはそれ以上に増加させることができる。
より程度の低いまたはより速度の遅い内在化が、状況によっては望ましいことがあり、そのような状況としては、ADCCおよび/または補体を介した溶解などのエフェクター機能を促進するために、および/または細胞表面受容体抗原を介したシグナル伝達を繋合および促進するために、抗体がデリバリされる場合などがある。実施形態によっては、この方法は、細胞表面抗原を介したシグナルの程度および/または結合している抗体を介して媒介されるエフェクター機能を、促進または増強する。
実施形態によっては、非内在化抗原とは、リンカーを介して結合しているメディトープのない単一異的な二価抗体が結合する結果として、抗原の内在化がないものであり、この内在化の程度は、代謝回転の結果もしくは抗原に特異的な抗体の非存在下を超えない程度であるか、または代謝回転の結果もしくは抗原特異的な抗体の非存在下より2倍を超えない程度である。実施形態によっては、リンカーを介して結合しているメディトープのない単一特異的な二価抗体と共にインキュベーションした後の抗原は、代謝回転の結果または抗原特異的な抗体の非存在下より3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、または9倍大きな速度では内在化しない。
実施形態によっては、非内在化抗原は、細胞表面抗原に対する天然の結合パートナーまたはリガンドのみの結合の結果として、抗原の内在化がないか、あるいは代謝回転の結果またはパートナーもしくはリガンドの非存在下を超えない内在化の程度となるか、または代謝回転の結果もしくはリガンド/結合パートナーの非存在下より2倍を超えない内在化の程度となるものである。実施形態によっては、天然のリガンドまたは結合パートナーと共に細胞をインキュベーションした後の抗原は、代謝回転の結果またはリガンドもしくは結合パートナーの非存在下より3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、または9倍大きな速度では内在化しない。実施形態によっては、抗原は、リンカーを介して結合しているメディトープのない単一特異的な二価抗体、または天然のリガンド、または結合パートナーとの結合の後に、少なくとも10、11、12、13、14、15、もしくは16時間またはそれ以上の半減期で内在化される。
B.抗体療法の効能を増加させるための方法
また、提供されるのは、抗体を細胞にデリバリするための方法であり、この方法は、抗体に係合された剤を含む、抗体を含む。実施形態によっては、この方法は、細胞表面抗原(複数可)に特異的に結合し、かつリンカーを介して抗体に係合されたメディトープを含む、1つまたは複数の自己架橋性抗体を細胞に投与することによって実施される。
実施形態によっては、この方法は、細胞による抗体の内在化を増加させる。内在化の増加またはさらに速やかな内在化は、例えば、ADCまたは他の用途のコンテキストで有利になることがある。そのコンテキストでは、抗体を使用して剤を細胞にデリバリするか、または、抗体をデリバリして、がんなどの疾患の進行に関連するかもしくはその原因となる表面受容体もしくは他の表面抗原の下方制御を、分解のための標的化によって促進する。
他の実施形態では、提供される方法は、細胞の性質を利用し、コンジュゲーションされた生物薬剤の内在化および選別経路を変えて、自己架橋性抗体に会合する剤を効率良く放出する。既に議論されたように、研究により、細胞膜に局在化される粒子のサイズがいくつかの内在化機構に重要であることが実証されており、このことは、関連のリガンドのサイズがいくつかの内在化経路に影響を及ぼすことを示唆する。自己架橋性抗体を使用することによって、細胞表面抗原に結合している単一の抗体に比較してさらに大きな粒子サイズを有するリガンドの出現を生じることになる。
また、提供されるのは、遊離メディトープを含めたメディトープをデリバリする際のそのような自己架橋性抗体の方法および使用であり、そのようなメディトープとしては、多価のメディトープ、および他のタンパク質またはタンパク質ドメインに融合されているメディトープが含まれる。いくつかのメディトープは、例えば、治療方法およびイメージング方法の際に、剤に係合することができる。例示的な方法は、メディトープに係合されている治療剤やイメージング剤などの剤のデリバリを達成するものであり、そのようなメディトープには、多価のメディトープが含まれ、任意選択で、リンカーを介して抗体に融合されていないメディトープが含まれる。
標的細胞の表面に豊富に存在する特異的な抗原を認識する、有用となる可能性のあるいくつかの抗体は、「内在化能が乏しい」(Matzkuら、Int.J.Cancer、1988年、2巻、11〜14頁;Reillyら、Clin.Pharmacokinet.、1995年、28巻、126〜142頁)。内在化が乏しいかまたは準最適であることによって、標的とする器官または組織での細胞内デリバリおよび蓄積が減少する(Matzkuら、Int.J.Cancer、1988年、2巻、11〜14頁;Reillyら、Clin.Pharmacokinet.、1995年、28巻、126〜142頁)。そのため、これらの「内在化能が乏しい」抗体は、細胞内ターゲティングには最適化されていない。したがって、抗体のターゲティングおよび細胞による内在化を増強する抗体系が求められている。
いくつかの抗体は、細胞に進入した後に治療効果を発揮する。実施形態によっては、内在化の増加またはさらに速やかな内在化によって、抗体の効力または効能が増加する。したがって、実施形態によっては、さらに低い投薬量を使用して、同じ治療効果を達成することができる。実施形態によっては、自己架橋性抗体の投与により、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、200倍、300倍、400倍、または500倍少ない薬剤を用いて、抗体のみの投与と同じ治療効果を達成することができる。
実施形態によっては、内在化の増加またはさらに速やかな内在化の結果、エンドソームへの抗体のデリバリの増加またはさらに速やかなデリバリが生じる。いくつかの抗体は、タンパク質分解切断部位を含むリンカーを含む。リンカーは、イメージング剤および治療剤を含めて剤にコンジュゲートすることができ、それらの剤は内在化すると、次いで、抗体によって放出される。実施形態によっては、リンカーの切断は、エンドソームまたはリソソームで起こる。そのため、エンドソームまたはリソソームへの抗体のデリバリの増加またはさらに速やかなデリバリによって、抗体の効力および効能が増加することがある。
実施形態によっては、メディトープ、リンカー、または抗体は、化学療法剤、細胞毒素や放射性標識剤などの治療剤または診断剤に、例えばADCや放射免疫療法(RIT)などで使用するために、係合される。実施形態によっては、本明細書に記載の方法は、抗体が標的とする抗原を発現する細胞もしくは組織へ抗体を介してデリバリするための剤または他の方法を、増強するのに有用である。実施形態によっては、これらの方法は、非内在化抗原、例えば癌胎児性抗原(CEA)、腫瘍関連糖タンパク質(TAG−72)、KS1/4などのコンテキストでは、抗原、その抗原に結合している抗体、およびその抗体に関連する剤のクラスター化とそれゆえの内在化とを促進するという点で有利である(Schmidtら、Cancer Immunol Immunother.、2008年12月;57巻(12)、1879〜1890頁;Myerら、Cancer Res、1993年;53巻、3956〜3963を参照)。
同様に、イメージング剤などの様々な剤にコンジュゲーションされている抗体を用いると、細胞をクラスター化または共局在化するおよび/または表面抗原を内在化する能力が重要となることがある。例えば、抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)など、薬剤をコンジュゲーションされた生物薬剤は、一般に、標的組織内に、多くの場合は標的組織の細胞内もしくは腫瘍細胞などの標的細胞内に、剤、例えば活性薬剤を、選択的にデリバリすることを目標として設計される。標的化生物薬剤、例えば、抗体は、一般に、目的の細胞に優先的に結合するように設計される。そして、標的細胞または組織上にのみ存在する、および/または他の組織上に非常に低い量でもしくは稀に存在する、抗原への選択的な結合は、特に望ましいことがある。特に、疾患細胞、例えば腫瘍細胞を標的として直接的に向かう、薬剤コンジュゲート抗体については、剤コンジュゲート抗体が、細胞表面上の標的抗原との結合に続いて標的細胞内に内在化されることが、望ましいかまたは重要であることがある。例えば、Trailら、Antibodies、2013年、2巻、113〜129頁;H.L.Perezら、Drug Discov Today(2013年)を参照されたい。コンテキストによっては、結果として抗原の内在化を生じる抗体は、放射免疫療法(RIT)の状況でも望ましい。Boudousq Vら、PLoS ONE、8巻(7)、e69613(2013年)を参照されたい。概して、コンジュゲーションされた剤、例えば薬剤は、標的細胞内で放出され、活性である。コンテキストによっては、例えば、腫瘍環境に特異的なある特定の細胞外マトリックスコンポーネントおよび/または抗原を標的とする際に、内在化は必要でないことがある。Ackermanら、Cancer Immunol Immunother、2008年7月、57巻(7)、1017〜1027頁を参照されたい。
実施形態によっては、提供される方法は、腫瘍細胞の性質を利用し、コンジュゲーションされた生物薬剤の内在化および選別の経路を変えて、効率良く剤を放出する。実施形態によっては、この方法は、抗原および/またはメディトープ利用可能抗体の共局在化、クラスター化、凝集、内在化、および/または細胞内輸送もしくは選別、および/またはその反復もしくは増強もしくは変化を達成する。本明細書に観察されるのは、細胞への投与後、非自己架橋性抗体に比べて、自己架橋性抗体のクラスター化および/または内在化に差があるということである。
TDM1、すなわちKADCYLA(登録商標)として上市されている抗Her2のADCの開発が成功したとはいえ、コンジュゲーションされた薬剤のうち少量の画分(約2%)しか腫瘍にデリバリされない。そのようにデリバリの歩留まりが低いものとなる正確な理由は不明であるが、異なる内在化経路(例えば、クラスリンを介したエンドサイトーシスおよび/またはカベオラを介したエンドサイトーシスおよび/またはマクロピノサイトーシス)を細胞が利用すること、ならびにひとたび細胞の内部(リサイクリングエンドソームまたは後期エンドソームまたはリソソーム)にエンドサイトーシスされた物質はルーティングされることに起因するものと思われる。ジスルフィドリンカーを介して抗体にコンジュゲーションされた薬剤は、細胞の細胞質の還元環境を原因に放出されることがある。あるいは、オーリスタチンなど、薬剤コンジュゲートによっては、エンドソーム小胞中で活性を持つ特異的なプロテアーゼによって放出されることがある。異なるリンカーを使用した他の研究では、コンジュゲーションの化学に関わらず、薬剤の放出においてリソソームが有効な手段であることが示されている。さらに、ジスルフィドが血清中で低減することがあり、プロテアーゼが健康な組織で活性となることがある。実施形態によっては、提供される方法、抗体(自己架橋性抗体を含む)、およびメディトープによって、疾患を治療するための毒素などの剤をさらに特異的かつ有効にデリバリするなどの改善がもたらされる。
腫瘍免疫療法では、多くの抗原が、腫瘍特異的であるものとは対照的に、単に腫瘍に関連しているか、または高いレベルで腫瘍細胞/環境上に発現される。例えば、Her2およびEGFRが、Her2+乳がんや結腸直腸がんなどの腫瘍組織で著しく過剰発現される一方で、それらは、健康な組織にも発現され、その結果、標的特異的で組織非特異的な毒性(on−target,off−tissue toxicities)を生じることがある。腫瘍組織にのみ、および/またはその他最小限に、もしくはある特定の発生の段階で発現される、他のタイプの抗原(腫瘍−特異的抗原や腫瘍胎児性抗原、例えば、癌胎児性抗原(CEA)など)もある。同一抗原上のユニークなエピトープを認識するモノクローナル抗体(mAb)の組合せによって、相乗的な効果を生じることができ、そのような効果としては、様々な抗体のエフェクター機能(例えば、ADCC、補体依存的溶解、シグナル伝達阻害)の増強、細胞死の増進、およびがん標的化抗体の場合は腫瘍成長の阻害の増強が挙げられる。例えば、Dechant Mら、「Complement−dependent tumor cell lysis triggered by combinations of epidermal growth factor receptor antibodies」、Cancer Res、2008年7月l日、68巻(13)、4998〜5003頁;Scheuer Wら、「Strongly enhanced antitumor activity of trastuzumab and pertuzumab combination treatment on HER2−positive human xenograft tumor models」、Cancer Res、2009年12月15日、69巻(24)、9330〜6頁;Cardarelli PMら、「Binding to CD20 by anti−Bl antibody or F(ab’)(2) is sufficient for induction of apoptosis in B−cell lines」、Cancer Immunol Immunother、2002年、3月、51巻(1)、15〜24頁、電子公開2001年12月18日を参照されたい。
態様によっては、自己架橋性抗体を、二重特異性抗体の代わりに使用して、メディトープ利用可能抗体との組合せで相乗効果を達成する。態様によっては、自己架橋性抗体は、同一抗原上の2つの別々のエピトープを認識する二重特異性抗体の使用に比べて、利点をもたらす。例えば、自己架橋性抗体の生産は、二重特異性抗体の製造に比べた際に、さらに効率が良く費用効果の高いものであることがある。態様によっては、自己架橋性抗体はまた、比較的容易に、腫瘍などの疾患部位に標的として向けることができる。メディトープ結合部位(抗体のCDRとは隔てられている、メディトープ結合部位内)の本質と、選ばれた任意の抗体をメディトープ利用可能にするための本明細書に示される広く適用可能な方法とを前提にすれば、自己架橋性抗体およびメディトープ利用可能抗体はまた、治療的に許容可能な特徴を有する二重特異性抗体を生成する必要がなく、その開発の関連の甚大なコストがなく、広範な治療抗体に容易に適用可能であるという利点を有する。
実施形態によっては、化合物および方法は、相乗的な腫瘍阻害を導く際に有用であり(Kamat,V.ら、Cancer Biol Ther、7巻、726〜733頁(2008年);Koefoed Kら(2011年)、MAbs、3巻(6)、584〜595頁;Spangler JBら(2010年)、Proc Natl Acad Sci USA、107巻(30)、13252〜13257頁)、それは、トラスツズマブ−ペルツズマブの組合せに観察される通りである(BaselgaJら(2012年)、N Engl J Med、366巻(2)、109〜119頁)。例によっては、自己架橋性抗体は、第2の「mAb」様分子として、しかし適合する任意のメディトープ利用可能抗体と対になることができるようなフレキシビリティを伴って、機能する。態様によっては、このことによって、第2の治療mAbを特定および開発する費用が低減する。実施形態によっては、多価のメディトープのバリアント(例えば、結合価および/またはリンカーのジオメトリを変えることによって生成される)は、さらに特異性および相乗効果を増強する。
同様に、実施形態によっては、同一細胞の表面に発現する異なる抗原にそれぞれ特異的に結合する2種の自己架橋メディトープ利用可能抗体を、二価抗体の代わりに使用する。実施形態によっては、方法は、抗原(例えば受容体)の凝集の増進を、および/または2種の抗原の細胞表面での密度もしくは存在の互いに対する比に関わらずいくらかのレベルの凝集をもたらす。態様によっては、方法は、細胞表面での抗原のクラスター化および/または共局在化を増強する。一実施形態では、2種以上の自己架橋性抗体を使用して、複数の異なる抗原を認識すると共にそのようなクラスター化を達成する。そのため、実施形態によっては、抗体の各アームがそれぞれの抗原に結合している場合にのみクラスター化が起こる二重特異性抗体に比べると、そのような実施形態におけるクラスター化は、抗体の一方に結合される抗原が他方によって結合される抗原に比べてはるかに高い密度で細胞表面に存在する場合であっても、達成されることがある。さらに、実施形態によっては、2種の細胞表面抗原間の距離が二重特異性抗体の2つのアーム間の距離を超えるところでは、2種の自己架橋性抗体の使用によって、効能を増強することもできる。そのような実施形態では、リンカー長は、上に記載されたように、細胞表面抗原間の実際のまたは予想される距離に適応するように変わることがある。
実施形態によっては、自己架橋性抗体は、二価抗体を超える利点および/または二価抗体の改善をもたらす。実施形態によっては、自己架橋性抗体は、二重特異的なメディトープ利用可能抗体であり、二重特異性抗体のみの使用に比べて、例えば、二重特異性抗体の異なるアームによって結合される2種の抗原、例えば細胞表面抗原の凝集を増進するための、例えば、親和性、抗体によって誘導されるシグナル伝達、エフェクター機能、および/または内在化を増強するためのものである。そのため、態様によっては、自己架橋性の二重特異的なメディトープ利用可能抗体は、例えば、二重特異性抗体のみに比べて追加的な程度のクラスター化に起因して、効能のレベルの増加をもたらす。
提供される抗体および結合性化合物(例えばメディトープ)は、実用的な有用性を持ち、実施形態によっては、利用可能なmAbベースの技術に付随する障害を克服することができる。実施形態によっては、提供される化合物および方法は、非天然の試薬によって起こる可能性がある抗原性の問題、例えば、抗原性を持ち得る新しい表面を非天然の試薬が露出するなど、および/またはそのような分子の安定性および製造時のスケーラビリティに伴う懸念(Nelson AL(2010年)、Antibody fragments:hope and hype.MAbs、2号(l)、77〜83頁)に対処する。セツキシマブは、臨床での使用に成功しており、安定であり、大規模に生産されている。実施形態によっては、メディトープ結合部位を裏打ちする残基のユニークな組合せは、配列上遠くにあり(すなわち、ペプチドT−細胞エピトープとはなりそうにない)、深い空洞内に位置する(すなわち、表面に露出しているB−細胞エピトープとなりそうもない))。そのため、実施形態によっては、メディトープ結合部位を含有するmAbは、免疫原性ではない。
実施形態によっては、利用可能な方法による有効なADCの開発に典型的に影響を及ぼす不均一性およびコンジュゲーション効率の問題を回避する際に有用な、特異的なコンジュゲーション地点として、メディトープ結合部位を使用する。実施形態によっては、毒素を担持するメディトープは、特異性および単位の化学量論の点で有利に、反応性の化学物質をFabの空洞に向かわせることができる。
態様によっては、中程度の親和性のメディトープ(例えば、cQFDおよびcQYNメディトープ)が、多価のアプローチ((Mammen M、Choi S&Whitesides G(1998年)、Polyvalent interactions in biological systems:Implications for design and use of multivalent ligands and inhibitor.Angew.Chem.、Int.Ed.Eng、37巻、2755頁))を考える際などに有利であり、実施形態によっては、異なる非天然アミノ酸、環化ストラテジー、および/またはスクリーニング方法を使用して、親和性および/または薬物動態/薬力学/毒性を改善する。本明細書に実証されるように、実施形態によっては、メディトープ結合部位を適応させて、メディトープの変化を変調させることが同様に可能である。
C.医薬組成物の治療用および診断用の使用
一実施形態では、自己架橋性抗体を、疾患または状態の治療、診断(例えばイメージング)のために、治療剤、診断剤(例えばイメージング剤)、またはそれらの組合せをデリバリするために使用する。自己架橋性抗体−薬剤コンジュゲートを、治療抗体が標的とすることのできる疾患または状態において、特定のタイプの細胞または細胞集団に対し治療を方向付けるための方法に使用してもよい。そのような治療の方法は、疾患または状態にある対象に、適した任意の投与経路を介して治療有効量の医薬組成物を投与することを含むことがある。その医薬組成物は、自己架橋性抗体またはその機能性フラグメントを含むことがある。
実施形態によっては、提供される自己架橋性抗体およびその複合体は、疾患または状態の治療、診断、またはイメージングに使用され、そのような疾患または状態としては、治療抗体を使用して治療されるかもしくは標的とされることがある任意のがん、疾患、または他の状態が挙げられる。がんは、免疫系を積極的に抑制することによって、免疫監視を回避する。この免疫抑制を打ち消すために想定される方法の1つは、腫瘍細胞がユニークに発現しているかまたは過剰発現している抗原のエピトープを用いたワクチン接種を介する。例えば、シグナル伝達経路を遮断し、成長因子を隔絶し、および/または免疫応答を誘導する、自己架橋性抗体は、がんおよび他の疾患を治療するために臨床に組み込むことに成功している。
このように、上記疾患および状態は、治療用モノクローナル抗体(mAb)を用いて標的とされるものを含めて、任意のがん、ならびに他の疾患および状態を含んでおり、そのようなものとしては、以下に限定されないが、白血病およびリンパ腫(例えば、アレムツマブ、ベクツモマブ、ゲムツズマブ、リンツズマブ、FBTA05、イブリツモマブチウキセタン、オファツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、乳がん(例えば、トラスツズマブ、アデカツムマブ、エルツマキソマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、前立腺がん(例えば、アデカツムマブ、カプロマブペンデチド、エタラシズマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、結腸直腸がん(例えば、ラベツズマブ、パニツムマブ、ペンテト酸アルツムマブ、ボツムマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、胃腸がん(例えば、アルシツモマブ,カツマキソマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、卵巣がん(例えば、アバゴボマブ,カツマキソマブ,エタラシズマブ,イゴボマブ,オレゴボマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、肺がん(例えば、アナツモマブマフェナトクスの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、膵臓がん(例えば、クリバツズマブテトラキセタンの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、腎がん(例えば、ギレンツキシマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、黒色腫がん(例えば、エタラシズマブ、イピリムマブ、TRBS07の自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、神経膠腫(例えば、ニモツズマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、骨転移(例えば、デノスマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、頭頸部がん(例えば、ザルツムマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、心血管疾患(例えば、アブシキシマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、自己免疫障害(例えば、アダリムマブ、インフリキシマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、関節リウマチ(例えば、アトリズマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、移植拒絶(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ムロモナブ−CD3の自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、クローン病(例えば、セルトリズマブ、フォントリズマブ、ナタリズマブ、インフリキシマブ,ビシリズマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、ヘモグロビン尿症(エクリズマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、乾癬(例えば、エファリズマブ、インフリキシマブ、ウステキヌマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、多発性硬化症(例えば、ナタリズマブ、ウステキヌマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、喘息(例えば、ベンラリズマブ、メポリズマブ、オマリズマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)(例えば、パリビズマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、黄斑変性症(例えば、ラニビズマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、虫垂炎(例えば、ファノレソマブの自己架橋バージョンを使用して、治療またはイメージングできるもの)、および抗体を用いて標的とされるかまたは治療されることがある任意の他の状態が挙げられる。上記の一覧にある抗体および関連の疾患または障害は、例に過ぎず、プラットフォームを限定するものではない。
ある特定の実施形態では、メディトープ利用可能な自己架橋性抗体は、1つまたは複数の遊離メディトープ、メディトープバリアント、多価メディトープ係留剤(tethering agent)または多価メディトープバリアント係留剤によって結合することができる。そのようなメディトープは、1つまたは複数のイメージング剤、治療有効量の治療的に有効な剤もしくは化合物、またはその両方に、コンジュゲーションされていることがある。メディトープまたはそのバリアントによって治療有効化合物に結合しているメディトープ利用可能な自己架橋性抗体を投与することによって、疾患または状態が治療、予防、診断、またはモニタリングされることがある。高親和性および/または多価のメディトープがメディトープ利用可能なmAbsに係合されているそのようなコンジュゲーションは、疾患を治療および検出するためのmAbペースの治療法およびイメージング方法を大幅に改善する、極めて汎用性のあるプラットフォーム技術をもたらす。
実施形態によっては、提供される方法および化合物は、sareusefulin抗体工学、抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)、抗体誘導性酵素プロドラッグ療法(ADEPT)、免疫系の繋合[例えば、Fcの改変(Desjarlais JR&Lazar GA(2011年)、Modulation of Antibody effector function.Exp Cell Res、317巻(9)、1278〜1285頁)、ケモカインの融合、二重特異的なT細胞エンゲージャー(engager)(Wolf E、Hofmeister R、Kufer P、Schlereth B&Baeuerle PA(2005年)、BiTEs:bispecific antibody constructs with unique anti−tumor activity.Drug Discov Today、10巻(18)、1237〜1244頁)、および疾患のイメージング[例えば、免疫PETおよびプレターゲティング放射性核種イメージング(GoldenbergDMら(2012年)Pretargeted molecular imaging and radioimmunotherapy.Theranostics、2巻(5)、523〜540頁;PagelJMら(2006年)、Comparison of a tetravalent single−chain antibody−streptavidin fusion protein and an antibody−streptavidin chemical conjugate for pre−targeted anti−CD20 radioimmunotherapy of B−cell lymphomas.Blood、108巻(l)、328〜336頁)。
態様によっては、提供される方法および化合物は、そのような利用可能な方法、例えば、翻訳後の化学的改変または遺伝子配列の操作を用いるものであって、例えば、治療およびイメージングの用途に有害な望ましくない結果に繋がり得るものに観察される課題を克服する。例えば、利用可能な方法を用いて疾患部位を標的として細胞毒素を向かわせるADCでは、毒素の化学コンジュゲーション(典型的にはmAb上のリジン、還元システイン、または糖を伴う)によって、不均一な混合物が生産されることがあり、そのような混合物は、mAbの特異性および安定性に不利な影響を及ぼし、その生体内分布を変えることがある。
他の実施形態では、腫瘍または他の組織をイメージングするための方法が提供される。そのような方法では、イメージング剤を用いて標識化された自己架橋性抗体が、任意の適した投与経路を介して投与され、標的の腫瘍または組織に結合している治療抗体に結合することになる。イメージング剤の例としては、以下に限定されないが、放射標識(例えば、3H、14C、35S、90Y、99mTc、125I、131I、177Lu、166Ho、および153Sm)、金属標識もしくは磁気標識(例えば、金、鉄、ガドリニウム)、ビオチン、キレート剤(例えば、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(「DOTA」))、または上に記載の任意の剤が挙げられる。一実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて使用されるイメージング剤は、DOTAである。
別の例として、腫瘍での浸透を促進し、利用可能な方法を用いたイメージングを増強するために、mAbのサイズをFabフラグメント(例えば、単鎖Fab可変ドメイン(scFvs))に低減することによって、元のmAbに比べて、結合価が低減し、それゆえ親和性と組織特異性の両方に影響が及ぶことがある。他の場合では、利用可能な方法を用いて、検出を増強するためのプレターゲティングイメージングのプロトコールの一部としては、ストレプトアビジンにコンジュゲーションされたmAb、または足場を通じて共に綴じ合わされた複数のFab/scFv(例えば、「ドック・ロック(lock−and−dock)」)は、免疫原性であり、血清中で不安定であり、技術的に生産が、特に臨床用途に必要な規模では難しく高価であることがある。提供される化合物および方法は、実施形態によっては、そのような難題を、例えば、がん、および他の疾患および状態に用いる代替のmAbプラットフォームおよび改良型のmAbベースのデリバリ系を提供することによって、克服する際に有用である。
D.自己架橋性抗体の効果の変調
また、提供されるのは、遊離メディトープを用いて自己架橋性抗体の効果を変えるための方法である。実施形態によっては、遊離メディトープは、メディトープ結合部位への結合を、自己架橋性抗体に融合されたメディトープと競合することができる。概して、この方法は、メディトープ利用可能抗体のメディトープ結合部位を遊離メディトープに接触させることを含む。メディトープ結合部位と遊離メディトープとの間の結合は、メディトープ結合部位を占有し、それによって、自己架橋性抗体由来のメディトープがメディトープ結合部位に接触または結合するのを阻害、低減、または防止することができる。実施形態によっては、この遊離メディトープは、リンカーを介して自己架橋性抗体に融合されたメディトープを退かせるかまたは途絶させることができる。メディトープとメディトープ結合部位との間の結合は、一般に非共有結合性であることから、そのような結合は、一時的または可逆的であることがある。
実施形態によっては、この方法は、自己架橋性抗体の効果を逆転または低減する。そのような効果は、例えば、細胞表面抗原の分布、共局在化、または内在化を変えるための、自己架橋性抗体の能力を、逆転または低減することを含む。また、そのような効果は、例えば、抗体の内在化率、抗体の効能を変えるかもしくは増加させるか、または所望の治療効果を達成するのに必要な抗体療法の投薬量を減少させるための、自己架橋性抗体の能力を、逆転または低減することを含む。
例示的な利点として、そのような方法によって、時間と共にある特定の治療を変調させることが可能になることがある。例えば、実施形態によっては、半減期の長い自己架橋性抗体が投与されても、抗体の効果は、半減期の短い遊離メディトープの投与によって変調される。実施形態によっては、この遊離メディトープのより短い半減期により、遊離メディトープのレベルが分解またはクリアランスのために低下するまで、抗体の自己架橋を一時的に阻害することが可能になる。遊離メディトープのレベルが低下すると、このペプチドは自己架橋の阻害に対し効果が少なくなるため、自己架橋が再開する。そのような半減期は、遊離メディトープの構造とそれを使用する状態に応じて、分、時間、日、または週の長さとすることができる。
これらの効果は、自己架橋性抗体療法を含めた抗体療法の副産物となり得る副作用を、変調するかまたは最小限にする際に、有用である可能性がある。例えば、実施形態によっては、遊離メディトープは、自己架橋性抗体の投与と同時に、直前に、または直後に投与される。実施形態によっては、方法は、自己架橋性抗体および遊離メディトープの両方を含む組成物を使用するか、または自己架橋性抗体を含む第1の組成物と遊離メディトープを含む第2の組成物とを使用することを含む。実施形態によっては、遊離メディトープは、抗体がその同系抗原に結合する前に、自己架橋およびそれゆえの凝集を低減または防止する。実施形態によっては、このことによって、血中に生じる自己架橋の量を低減することができ、それによって、毛細血管中に堆積する可能性がある自己架橋性抗体の量を低減することができる。実施形態によっては、自己架橋および凝集を低減することによって、腎臓または肝臓によりクリアランスされる抗体の量が低減する。このように、自己架橋性抗体を、遊離メディトープ、例えば自己架橋性抗体よりも半減期の短い遊離メディトープペプチドと共に投与することによって、自己架橋を一時的に低減するかまたは遅延させることができる。そのような低減または遅延によって、自己架橋性抗体が他の抗体との自己架橋を始める前にその同系抗原に結合する時間を与え、それによって、抗体の標的として意図されていない血管、組織、または器官における自己架橋または凝集を低減することができる。
別の例示的な方法では、自己架橋性抗体の効果を逆転するか、低減するか、または変えるために、既に自己架橋性抗体を受けている対象に遊離メディトープを投与することができる。そのような方法は、自己架橋性抗体に起因する治療効果または副作用を低減する際に、有用であることがある。実施形態によっては、それは、自己架橋を一時的に制御するのに有用であることがある。既に記載されたように、自己架橋性抗体を使用して、細胞の表面の抗原の分布を変えるか、または抗体または抗原の内在化の率を増加させることができる。実施形態によっては、それは、自己架橋を低減または阻害することによって、これらの効果を制御または低減するのに有利であることがある。そのような方法は、遊離メディトープの投与を含むことがある。
実施形態によっては、遊離メディトープは、長い半減期を有し、それによって、永続的にまたは準永続的に自己架橋を変える。実施形態によっては、自己架橋性抗体の半減期よりも半減期の短い遊離メディトープが投与される。実施形態によっては、半減期の短い遊離メディトープの投与は、自己架橋の一時的な低減または阻害を引き起こす。実施形態によっては、対象は、複数の遊離メディトープの投与を受ける。そのような投与は、阻害または低減された遊離メディトープの効果を延長または拡大するための「ブースター用量」としてデリバリされることがある。あるいは、そのような投与は、さらに長期にわたってデリバリされ、それによって、抗体の自己架橋能を時間と共に阻害および回復することが可能になることがある。そのような実施形態では、高レベルの遊離メディトープが、自己架橋を阻害することができる。遊離メディトープはクリアランスまたは分解されることから、より少ない量が、自己架橋性抗体のメディトープ結合部位を占有するのに利用可能にあり、それによって、抗体の自己架橋が回復する。続いて追加の遊離メディトープペプチドを投与することで、抗体の自己架橋を再度低減または阻害することができる。
自己架橋の阻害または低減の程度は、実施形態によっては、さらに高いまたは低い投薬量の遊離メディトープを投与することによって変調させる。実施形態によっては、より多い用量の遊離メディトープを投与することによって、より少ない用量よりも阻害効果が大きくなる。そのような投薬量は、例えば、遊離メディトープと自己架橋性抗体との比として、所望の時間にわたって治療効果を生じるのに必要な量として、相対または絶対IC50として、または重量もしくは体積により算出される量として、算出することができる。
自己架橋の阻害または低減の程度は、実施形態によっては、メディトープ結合部位に特異的な親和性を有する遊離メディトープを投与することによって変調させることができる。例えば、実施形態によっては、親和性の高い遊離メディトープは、より親和性の低い遊離メディトープよりも高いか、強いか、または長期の効果を自己架橋の阻害または低減に及ぼす。実施形態によっては、より親和性の高い遊離メディトープは、より親和性の低い遊離メディトープよりも強く、または長い離脱速度でメディトープ結合部位に結合する。実施形態によっては、抗体の自己架橋は、より少ない量のより親和性の高い遊離メディトープを用いると、同じ効果を達成するのに必要なより親和性の低い遊離メディトープの量に比べて低減または阻害することができる。
実施形態によっては、より親和性の低い遊離メディトープを使用して、より控えめまたは一時的な効果を自己架橋に及ぼすことができる。実施形態によっては、そのようなメディトープを使用して、特定の抗体療法の効能を調整することができる。
実施形態によっては、遊離メディトープは、複数回で、例えば、任意選択で2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回回以上で投与される、実施形態によっては、投与は、何分間か、何時間か、何日間か、何ヶ月間か、または何年間かにわたって行われる。実施形態によっては、複数の遊離メディトープが投与され、その複数が、同じであるかまたは異なっている遊離メディトープを含むことができる。例えば、実施形態によっては、第1の遊離メディトープは、メディトープ結合部位について第1の親和性を含むことができ、第2の遊離メディトープは、そのメディトープ結合部位について第2の親和性を含むことができる。第1および第2の遊離メディトープは、半減期またはIC50が異なるものとすることができる。第1および/または第2の遊離メディトープを投与することによって、メディトープの自己架橋を変えるための追加の機構をもたらすことができる。
IV.投与の方法
製剤は、抗体を用いた治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに、静脈内投与(例えば、ボーラスとして、または一定期間にわたる継続的な輸液によって)などの公知の方法を踏まえて、by筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、局所、または吸入の経路によって、投与される。一実施形態では、製剤は、静脈内投与によって、哺乳動物に投与される。そのような目的のために、製剤は、例えば、シリンジを使用して、またはIV経路を介して注入されてもよい。一実施形態では、製剤は、皮下投与によって、哺乳動物に投与される。
抗体の適切な投薬量(「治療有効量」)は、例えば、治療される状態、状態の重症度および経過、抗体が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるかに関わらず、過去の療法、患者の臨床歴および抗体に対する応答、使用される抗体のタイプ、および担当医の判断に依存するものとなる。抗体は、1回、または一連の治療にわたって、適切に患者に投与され、診断以降はいつでも患者に投与されてもよい。抗体は、唯一の治療として投与されてもよいし、問題となっている状態を治療するのに有用な他の薬剤または療法との併用で投与されてもよい。
一般命題として、ヒトに投与される抗体の治療有効量は、投与が1回であろうと複数回であろうと、患者の体重当たり約0.01から約50mg/kgの範囲となる。実施形態によっては、使用される抗体は、例えば、約0.01から約45mg/kg、約0.01から約40mg/kg、約0.01から約35mg/kg、約0.01から約30mg/kg、約0.01から約25mg/kg、約0.01から約20mg/kg、約0.01から約15mg/kg、約0.01から約10mg/kg、約0.01から約5mg/kg、または約0.01から約1mg/kg、毎日投与される。実施形態によっては、抗体は、15mg/kgで投与される。しかし、他の投薬レジメンが有用であることがある。一実施形態では、本明細書に記載の自己架橋性抗体は、21日周期の1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、または約1400mgの用量で、ヒトに投与される。用量は、輸液などで、単回用量としても複数回用量(例えば、2回または3回の用量)としても投与されてもよい。併用治療で投与される抗体の用量は、単独治療に比べて低減されていてもよい。この療法の進捗は、従来の手法によって容易にモニターすることができる。
実施形態によっては、疾患または障害とは、がんである。実施形態によっては、がんは、局所的に進行性であるかまたは転移性である。実施形態によっては、がんは、固形腫瘍、血液がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、胃がん(gastric cancer)、神経膠腫、頭部がん、白血病、肝臓がん、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、リンパ腫、骨髄腫、頸部がん、卵巣がん、黒色腫、膵臓がん、腎がん、唾液腺がん、胃がん(stomach cancer)、胸腺上皮がん、甲状腺がん、および頭頸部の扁平上皮細胞癌腫からなる群から選択される。
実施形態によっては、疾患または障害とは、感染である。実施形態によっては、感染とは、持続性の感染である。実施形態によっては、感染とは、ウイルス感染、細菌感染、糸状菌感染、蠕虫感染、または原虫感染である。実施形態によっては、ウイルス感染は、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、B型肝炎、C型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、インフルエンザ、ヒト免疫不全症ウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、呼吸器多核体ウイルス、および/またはライノウイルスからなる群から選択される。実施形態によっては、細菌感染は、ヘリコバクター属、マイコバクテリウム属、ポルフィロモナス属、クラミジア属、サルモネラ属、リステリア属、ストレプトコッカス属、ヘモフィルス属、ナイセリア属、クレブシエラ属、ボレリア属、バクテロイデス属、およびトレポネーマ属からなる群から選択される。実施形態によっては、原虫感染は、リーシュマニア属、熱帯熱マラリア原虫、住血吸虫属、トキソプラズマ属、トリパノソーマ属、および条虫属からなる群から選択される。実施形態によっては、糸状菌感染は、ブラストミセス症、コクシジオイデス症(coccidioiodmycosis)、ヒストプラズマ症、カンジダ症、クリプトコッカス症、アスペルギルス症、ムコール症(mucomycosis)、およびニューモシスチス症からなる群から選択される。
実施形態によっては、疾患または障害とは、炎症性疾患である。実施形態によっては、炎症性疾患は、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、アルツハイマー病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、アテローム性動脈硬化、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、関節炎、ベーチェット病、ベルジェ病、水疱性類天疱瘡、セリアック病、シャーガス病、胆管炎、クローン病、皮膚筋炎、糖尿病1型、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、蕁麻疹、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、紅斑性狼瘡、ループス腎炎、多発性硬化症、器官移植拒絶、パーキンソン病、天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー症候群、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、甲状腺炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、およびウェゲナー肉芽腫症からなる群から選択される。
実施形態によっては、抗体を含有する製剤は、疾患または障害を治療するために、別の治療剤とともに対象または個体に投与されてもよい。例えば、がんを治療するために、本明細書に記載の自己架橋性抗体製剤が、別の抗がん治療(例えば、化学療法または異なる抗体治療)とともに投与されてもよい。
V.製造物またはキット
また、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の実施形態のいずれかの水性の医薬製剤を保持し、任意選択でその使用のための手引き書を提供する容器を含む、製造品またはキットである。適した容器としては、例えば、ビン、バイアル、バッグ、およびシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニルやポリオレフィンなど)や金属合金(ステンレス鋼やハステロイなど)などの種々の材料から形成される。例示的な容器の1つは、300ccの金属合金容器(例えば−20℃で保存するための)である。別の例示的な容器は、10〜50ccのガラスバイアル(例えば2〜8℃で保存するための)であることがある。例えば、容器は、10cc、15cc、20cc、または50ccのガラスバイアルであることがある。容器は製剤および表面のラベルを保持するか、または関連して、容器は使用のための指示を標示する。製造品は、商用および使用の検知から望ましい他の材料をさらに含むことがあり、そのようなものとしては、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用のための手引きを付したパッケージ同封書が挙げられる。実施形態によっては、製造品は、1つまたは複数の別の剤(例えば、化学療法剤、および抗新生物剤)をさらに含む。1つまたは複数の剤に適した容器としては、例えば、ビン、バイアル、バッグ、およびシリンジが挙げられる。
実施形態および説明的な例を参照して本発明が記載されていることから、当業者は、記載および説明されるような本発明に対する、本明細書に開示されるような本発明の趣旨および範囲を逸脱しない改変を認識することがある。例示は、本発明の理解に役立てるために記載されているが、形はどうあれ、その範囲を限定するものと解釈されることを意図するものではなく、そう解釈されるべきではない。これらの例示は、従来の方法の詳細な記載を含まない。そのような方法は、当業者に周知であり、数多くの刊行物に記載されている。さらに、上記および下記の実施例に引用されている参考文献は全て、本明細書に完全に記載されるかのように、参照によりその全体がここに組み込まれる。
以下の文書、すなわち2012年2月10日出願の米国特許出願第61/597,708号;2011年10月10日出願の米国特許出願第13/270,207号であり、現在では米国特許第8,658,774号;2011年10月10日出願の国際特許出願PCT/US2011/055656;2012年4月10日出願の国際特許出願PCT/US12/32938;2012年4月10日出願の米国特許出願第13/443,804号であり、現在では米国特許第8,962,804号;2012年2月10日出願の米国特許出願第61/749,830号;および2013年2月11日出願の米国特許出願第13/764,762号は、あらゆる目的のために、参照によりその全体をここに組み込まれる。
VI.定義
「抗体」は、本明細書に使用される際に、抗原もしくはエピトープに特異的に結合するかまたは免疫学的に反応性であるイムノグロブリン分子を指し、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方、ならびに機能性抗体フラグメントを含み、そのようなものとしては、以下に限定されないが、フラグメント抗原結合(Fab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fvフラグメント、組換えIgG(rlgG)フラグメント、単鎖可変フラグメント(scFv)、および単ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)フラグメントが挙げられる。用語「抗体」は、遺伝子工学的に操作されたかまたはその他改変されたイムノグロブリンの形態を含み、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、メディトープ利用可能抗体やヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、タンデムジ−scFv、タンデムトリ−scFv)などがある。特段に明記されない限り、用語「抗体」は、その機能的性抗体フラグメントを包含するものと理解されるべきである。
用語「相補性決定領域」および「CDR」は、抗原特異性および結合親和性をもたらす、抗体可変領域内の不連続なアミノ酸の配列を指すことが、当技術分野に公知である。一般に、各重鎖可変領域に3つのCDR(CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3)があり、各軽鎖可変領域に3つのCDR(CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3)がある。「フレームワーク領域」および「FR」は、部分重鎖および軽鎖の可変領域の非CDRを指すことが、当技術分野に公知である。一般に、各重鎖可変領域に4つのFR(FR−H1、FR−H2、FR−H3、およびFR−H4)があり、各軽鎖可変領域に4つのFR(FR−L1、FR−L2、FR−L3、およびFR−L4)がある。
所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列の境界は、複数の周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定することができ、そのようなスキームとしては、Kabatら(1991)年、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、公衆衛生局、国立衛生研究所、ベセズダ、メリーランド州(「Kabat」ナンバリングスキーム)、Al−Lazikaniら(1997年)、JMB、273巻、927〜948頁(「Chothia」ナンバリングスキーム)、MacCallumら、J.Mol.Biol.、262巻、732〜745頁(1996年)、「Antibody−antigen interactions:Contact analysis and binding site topography」、J.Mol.Biol.、262巻、732〜745頁「(Contact」ナンバリングスキーム)、Lefranc MPら、「IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V−like domains」、Dev Comp Immunol、2003年1月、27巻(l)、55〜77頁(「IMGT」ナンバリングスキーム)、およびHonegger AおよびPluckthun A、「Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool」、J Mol Biol、2001年1月8日、309巻(3)、657〜70頁(AHoナンバリングスキーム)に記載されたものがある。
所与のCDRまたはFRの境界は、特定のために使用されるスキームに応じて変わることがある。例えば、Kabatスキームは、構造的なアラインメントに基づくのに対し、Chothiaスキームは、構造情報に基づく。KabatとChothiaの両方のスキームについてのナンバリングは、最も共通する抗体領域配列の長さに基づき、いくつかの抗体に現れる挿入文字、例えば「30a」によって調整される挿入、および欠失を有する。この2つのスキームは、いくらかの挿入および欠失(「indel」)を異なる位置に配し、その結果、異なるナンバリングが生じる。Contactスキームは、複合体の結晶構造の解析に基づき、数多くの点でChothiaナンバリングスキームに類似している。
下記の表4は、Kabat、Chothia、およびContactのスキームによってそれぞれ特定されたCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、およびCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3の位置の一覧である。CDR−H1については、残基のナンバリングは、KabatとChothiaの両方のナンバリングスキームを使用した一覧で示されている。KabatナンバリングスキームがH35AおよびH35Bに挿入を配することから、ChothiaのCDR−H1ループの終端は、Kabatナンバリング方式を用いて数えた際に、ループの長さに応じてH32とH34の間で変わることに留意されたい。
1−Kabatら(1991年)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、公衆衛生局、国立衛生研究所、ベセズダ、メリーランド州
2−Al−Lazikaniら(1997年)、JMB、273巻、927〜948頁
それゆえ、特段に指定のない限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域などの「CDR」または「相補性決定領域」または個々の指定されたCDR(例えば、「CDR−H1、CDR−H2)は、公知のスキームのいずれかによって規定されるような、ある(またはある特異的な)相補性決定領域を包含するものと理解されるべきである。同様に、特段に指定のない限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域などの「FR」または「フレームワーク領域」または個々の指定されたFR(例えば、「FR−H1、FR−H2)は、公知のスキームのいずれかによって規定されるような、ある(またはある特異的な)フレームワーク領域を包含するものと理解されるべきである。いくつかの例では、具体的なCDR、FR、または複数のFRもしくは複数のCDRを特定するためのスキームが指定されており、例えば、Kabat、Chothia、またはContactの方法によって規定されるようなCDRなどがある。他の場合では、CDRまたはFRの具体的なアミノ酸配列が与えられる。
用語「メディトープ利用可能な」抗体および「メディトープ利用可能抗体」および「メディトープ利用可能抗体」とは、メディトープ結合部位を介してメディトープに結合することが可能な抗体またはその機能性フラグメントを指す。メディトープ利用可能抗体の例としては、以下に限定されないが、セツキシマブおよび本明細書に記載の他のものが挙げられる。「メディトープ結合部位」とは、結合しているメディトープと相互作用するアミノ酸残基を含有する、メディトープ利用可能抗体の領域であり、上記残基は、重鎖および軽鎖のフレームワーク領域(FR)残基を含む。抗体のFabフラグメントまたはFab部分に関して、メディトープ結合部位は、Fabフラグメントまたは部分の中央空洞内に位置する。
Fabの3次元構造に関する「中央空洞」とは、重鎖および軽鎖の可変領域および定常領域の一部によって0されている、Fabの内部空洞を指す。そのため、中央空洞は、VH領域、VL領域、CH1領域、およびCL領域の残基によって裏打ちされ、抗原結合部位を含まない。
実施形態によっては、メディトープ結合部位は、Kabatナンバリングに従うと、メディトープ利用可能抗体の軽鎖の残基40、41、83、および85、および/またはKabatナンバリングに従うと、メディトープ利用可能抗体の重鎖の残基39、89、105、および108を含む。
実施形態によっては、メディトープ結合部位は、Kabatナンバリングに従うと、抗体の軽鎖の残基8、9、10、38、39、40、41 42、43、44、45、82、83、84、85、86、87、99、100、101、102、103、104、105、142、162、163、164、165、166、167、168、および173、および重鎖の6、9、38、39、40、41、42、43、44、45、84、86、87、88、89、90、91、103、104、105、106、107、108、111、110、147、150、151、152、173、174、175、176、177、185、186、および187によって形成される、空洞内に位置する。
メディトープ利用可能抗体のFab部分に関しては、メディトープ結合部位は、中央空洞内に残基を含む。メディトープ−結合部位は、典型的には、定常領域の残基をさらに含む。
「治療剤」とは、本明細書に使用される際には、疾患または状態の治療の際に有用な原子、分子、または化合物である。
「治療有効量」、「治療有効濃度」、または「治療有効用量」は、標的とする状態を予防もしくは治療すること、その状態に関連する症状を緩和すること、所望の生理的効果を生じることや、疾患もしくは状態の治療に繋がる状態のイメージングまたは診断を可能にすることなど、対象に所望の治療効果を生じる化合物の量である。正確な治療有効量は、所与の対象における治療の効能に関して、最も有効な結果をもたらす組成物の量である。この量は、種々の要因に応じて変わるものとなり、そのような要因としては、以下に限定されないが、治療化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、および生物学的利用能を含む)、対象の生理的状態(年齢、性別、疾患のタイプおよび段階、全身状態、所与の投薬量および薬物治療のタイプに対する反応性を含む)、製剤中の医薬的に許容可能な1種または複数の担体の性質、および投与経路が挙げられる。臨床分野および薬理学分野の当業者であれば、日常的な実験を介して、すなわち、化合物の投与に対する対象の反応をモニタリングし、それにしたがって投薬量を調整することによって、治療有効量を決定することができる。例として、実施形態によっては、抗体の治療有効量は、約1から約1000mg/m2まで、または代替的に、1から約1000mg/m2まで、1から約1000mg/m2まで、1から約1000mg/m2まで、10から約900mg/m2まで、20から約800mg/m2まで、30から約700mg/m2まで、40から約600mg/m2まで、50から約500mg/m2まで、100から約400mg/m2まで、1から約500mg/m2まで、10から約400mg/m2まで、50から約300mg/m2まで、100から約1000mg/m2まで、150から約900mg/m2まで、200から約800mg/m2まで、250から約700mg/m2までである。追加のガイダンスについては、Remington:TheScienceandPracticeofPharmacy、第21版、Univ.ofSciencesinPhiladelphia(USIP)、LippincottWilliams&Wilkins、フィラデルフィア、ペンシルバニア州、2005年を参照されたい。
「医薬的に許容可能な担体」とは、目的の化合物をある組織、器官、または身体の一部から、別の組織、器官、または身体の一部へと運搬または輸送することに関与する医薬的に許容可能な材料、組成物、または媒体を指す。例えば、この担体は、液体または固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、もしくは被包材、またはいくつかのそれらの組合せとしてもよい。担体の各構成成分は、担体が製剤の他の成分と相容性でなければならないという点で「医薬的に許容可能」でなければならない。また、それは、遭遇し得るいずれの組織、器官、または身体の一部との接触にも適するものでなければならず、このことは、それが、毒性、刺激作用、アレルギー性応答、免疫原性、またはその治療効果を上回る何らかの他の合併症のリスクを持っていてはならないことを意味している。
「投与経路」とは、当技術分野に公知の任意の投与経路を指すことがあり、そのようなものとしては、以下に限定されないが、エアロゾル、腸内、鼻、眼、経口、非経口、直腸、経皮、または膣が挙げられる。「経皮」投与は、局所用クリーム剤もしくは軟膏剤を使用して、または経皮パッチによって、達成されることがある。「非経口」とは、一般に注射に関連する投与経路を指し、そのようなものとしては、眼窩内、輸液、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、くも膜下腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、嚢下、皮下、経粘膜、または経気管が挙げられる。
「組み合わせて」または「と組み合わせて」は、複数の剤、治療法、または治療のコンテキストにおいて本明細書に使用される際には、対象で同じ疾患または状態を治療する過程において、2種以上の剤、薬剤、治療レジメン、治療様式、またはそれらの組合せ(例えば、メディトープと組み合わせた抗体またはメディトープ)を任意の順序で投与することを意味する。このようなものとしては、同時投与(または「共投与」)、第2の剤を投与する前または後に第1の剤を投与すること、ならびに、最大で数日間の間隔で一時的に空けた順番で投与することが挙げられる。また、そのような併用治療は、任意の1種または複数の剤、薬剤、治療レジメン、または治療様式の単回を超える投与を含むことがある。さらに、2種以上の剤、薬剤、治療レジメン、治療様式、またはそれらの組合せの投与は、同じ投与経路によるものでも異なる投与経路によるものでもよい。
「治療抗体」とは、がん、自己免疫疾患、移植拒絶、心血管疾患、または本明細書に記載されるものなど他の疾患および状態を治療するのに使用される、任意の抗体またはその機能性フラグメントを指すことがある。本明細書に記載の実施形態に従って使用されることがある治療抗体の例としては、以下に限定されないが、マウス抗体、マウス化もしくはヒト化キメラ抗体、またはヒト抗体が挙げられ、そのようなものとしては、以下に限定されないが、アービタックス(セツキシマブ)、レオプロ(アブシキシマブ)、シムレクト(バシリキシマブ)、レミケード(インフリキシマブ);オルソクローンOKT3(ムロモナブ−CD3);リツキサン(リツキシマブ)、ベクサール(トシツモマブ) ヒュミラ(アダリムマブ)、キャンパス(アレムツマブ)、シムレクト(バシリキシマブ)、アバスチン(ベバシズマブ)、シムジア(セルトリズマブペゴル)、ゼナパックス(ダクリズマブ)、ソリリス(エクリズマブ)、ラプティバ(エファリズマブ)、マイロターグ(ゲムツズマブ)、リンツズマブ、ゼバリン(イブリツモマブチウキセタン)、タイサブリ(ナタリズマブ)、ゾレア(オマリズマブ)、シナジス(パリビズマブ)、ベクティビックス(パニツムマブ)、ルセンティス(ラニビズマブ)、およびハーセプチン(トラスツズマブ)が挙げられる。
ある状態をの「治療すること」またはその「治療」はその状態を予防すること、その状態の発症または発生速度を遅らせること、その状態が発生するリスクを低減すること、その状態に関連した症状の発生を予防するかまたは遅延させること、その状態に関連する症状を低減また終了させること、その状態の完全なまたは部分的な退縮を生じること、またはいくつかのそれらの組合せを指すことがある。
本明細書に使用される際に、用語「含む(including)」、「含有する(containing)」、および「含む(comprising)」は、オープンの非限定的な意味合いで使用される。
本明細書に使用される際に、単数形「a」、「an」、および「the」は、特段に明確な指示のない限り、複数の指示物を含む。
さらに簡明な記載を提供するために、本明細書に示される定量表現のいくつかは、用語「約」を用いて適格化されていない。用語「約」が明示的に使用されているか否かに関わらず、本明細書に示されるあらゆる数量は、実際に示される値を指すことを意味すること;ならびに、それはまた、所与の値の概算を指し、この概算は、そのような所与の値のための実験上および/または測定上の条件に起因する等量および概その量を含めて、当技術分野の通常の技量に基づき合理的に推測されるものであることを理解されたい。
本明細書に使用される際に、「アルキル」とは、1個から12個までの炭素原子を有する、飽和の直鎖または分岐鎖の炭化水素基を指す。代表的なアルキル基としては、以下に限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチル−l−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−l−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−l−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−l−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−l−ブチル、3,3−ジメチル−l−ブチル、2−エチル−l−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルなど、およびさらに長いアルキル基、例えばヘプチル、オクチルなどが挙げられる。用語「Cx−yアルキル」とは、x〜y個の炭素原子を持つアルキルを指し、上式でxおよびyは整数である。
本明細書に使用される際に、「アルケニル」は、1つまたは複数の二重結合をその中に有し、2個から12個までの炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖の炭化水素基を指す。実例となるアルケニル基としては、以下に限定されないが、エチレニル、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルなどが挙げられる。用語「Cx−yアルケニル」とは、x〜y個の炭素原子を持つアルケニルを指し、上式でxおよびyは整数である。
用語「アルキレニル」または「アルキレン」は、二価のアルキル基を指す。用語「アルケニレン」または「アルケニレン」は、二価のアルケニル基を指す。
本明細書に使用される際に、「アルキニル」とは、1つまたは複数の三重結合をその中に有し、2個から10個までの炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖の炭化水素基を指す。例示的なアルキニル基としては、以下に限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルヘキシニル、メチルプロピニル、4−メチル−1−ブチニル、4−プロピル−2−ペンチニル、4−ブチル−2−ヘキシニルなどが挙げられる。
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、特段に明記されない限りは、少なくとも1つの炭素原子と、O、N、P、Si、およびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを含む、安定な直鎖もしくは分岐鎖、またはそれらの組合せを意味し、ここで、窒素原子および硫黄原子は、任意選択で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されていてもよい。ヘテロ原子(複数可)O、N、P、S、およびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部の位置に、またはアルキル基が残りの分子に付加されている任意の位置に、配されていてもよい。例としては、以下に限定されないが、−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2、−S(O)−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3、−Si(CH3)3、−CH2−CH=N−OCH3、−CH=CH−N(CH3)−CH3、−O−CH3、−O−CH2−CH3、および−CNが挙げられる。2つまたは3つまでのヘテロ原子が、連続していてもよく、例えば、−CH2−NH−OCH3や−CH2−O−Si(CH3)3などがある。
同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体で、または別の置換基の一部として、特段に明記されない限り、ヘテロアルキルに由来する二価の基を意味し、以下に限定されないが、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−および−CH2−S−CH2−CH2−H−CH2−によって例示される。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子もまた、鎖の端(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)のどちらかまたは両方を占めることがある。さらに、アルキレン連結基およびヘテロアルキレン連結基について、連結基の式が書かれている方向によって含意される連結基の起点はない。例えば、式−C(O)2R’−は、−C(O)2R’−および−R’C(O)2−の両方を表す。上に記載されるように、ヘテロアルキル基は、本明細書に使用される際に、−C(O)R’、−C(O)NR’、−NR’R”、−OR’、−SR’および/または−SO2R’など、ヘテロ原子を通じて残りの分子に付加している基を含む。「ヘテロアルキル」が記載された後に、−NR’R”などの具体的なヘテロアルキル基の記載がある際には、用語ヘテロアルキルおよび−NR’R”は、重複していたり、相互に排他的であったりしないことが理解されよう。むしろ、具体的なヘテロアルキル基は、明確性を加えるために記載される。それゆえ、用語「ヘテロアルキル」は、本明細書では、−NR’R”などの具体的なヘテロアルキル基を除外するものとして解釈されるべきではない。
用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキルとは、それら自体で、または他の用語と組み合わせて、特段に明記されない限りそれぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状バージョンを意味する。さらに、ヘテロシクロアルキルについて、ヘテロ原子は、残りの分子に付加している位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、以下に限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、以下に限定されないが、l−(l,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられる。「シクロアルキレン」および「ヘテロシクロアルキレン」は、単独で、または別の置換基の一部としてそれぞれシクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルに由来する二価の基を意味する。
用語「アリール」は、特段に明記されない限り、ポリ不飽和の芳香族炭化水素置換基を意味し、単環とすることも、共に融合している(すなわち融合環アリール)かまたは共有結合で連結されている多環(好ましくは1環から3環まで)とすることもできる。融合環アリールとは、共に融合している多環を指し、そこでは、融合環のうち少なくとも1つがアリール環である。用語「ヘテロアリール」とは、N、OやSなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含有するアリール基(または環)を指し、そこでは、窒素原子および硫黄原子が任意選択で酸化されており、窒素原子(複数可)は任意選択で四級化されている、そのため、用語「ヘテロアリール」は、融合環のヘテロアリール基(すなわち、融合環のうち少なくとも1つがヘテロ芳香環である、共に融合している多環)を含む。5,6融合環ヘテロアリーレンとは、ある環が5員を有し、他の環が6員を有し、少なくとも1つの環がヘテロアリール環である、共に融合している2環を指す。同様に、6,6融合環ヘテロアリーレンとは、ある環が6員を有し、他の環が6員を有し、少なくとも1つの環がヘテロアリール環である、共に融合している2環を指す。6,5融合環ヘテロアリーレンとは、ある環が6員を有し、他の環が5員を有し、少なくとも1つの環がヘテロアリール環である、共に融合している2環を指す。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して残りの分子に付加していることがある。アリール基およびヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンゾイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリルが挙げられる。上述の各アリール環系およびヘテロアリール環系の置換基は、下に記載の許容可能な置換基の群から選択される。「アリーレン」および「ヘテロアリーレン」は、単独でまたは別の置換基の一部として、それぞれアリールおよびヘテロアリールに由来する二価の基を意味する。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、ピリジニル、ピリミジニル、チオフェニル、フラニル、インドリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、チアナフタニル、ピロロピリジニル、インダゾリル、キノリニル、キノキサリニル、ピリドピラジニル、キナゾリノニル、ベンゾイソキサゾリル、イミダゾピリジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピラジニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、フリルチエニル、ピリジル、ピリミジル、ベンゾチアゾリル、プリニル、ベンゾイミダゾリル、イソキノリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、またはキノリルが挙げられる。上記の例は、置換としても非置換としてもよく、上記の各ヘテロアリール例の二価の基は、ヘテロアリーレンの非限定的な例である。
用語「ホウ素エステル」とは、置換基−B(OR)2を指し、上式で、各R基が独立してC1−4アルキルであるか、または2つのR基が併せてC2−6アルキレンを形成する。
用語「アセタール」とは、−CH(OR)2基を指し、上式で、各R基が独立してC1−4アルキルであるか、または2つのR基が併せてC2−6アルキレンを形成する。例示的なアセタール基としては、ジメチルアセタールもしくはジエチルアセタール、または環状アセタールが挙げられる。用語「ケタール」とは、−C(OR)2−基を指し、上式で、各R基が独立してC1−4アルキルであるか、または2つのR基が併せてC2−6アルキレンを形成する。例示的なケタールとしては、ジメチルケタールもしくはジエチルケタール、または環状ケタールが挙げられる。
用語「ハロ」とは、クロロ、フルオロ、ブロモ、またはヨードを表す。実施形態によっては、ハロとはクロロ、フルオロ、またはブロモである。用語「ハロゲン」とは、本明細書に使用される際に、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。用語「オルトエステル」とは、−C(OR)3基を指し、上式で、各R基が独立してC1−4アルキルであるか、または2つのR基が併せてC2−6アルキレンを形成する。用語「オキソ」とは、=O基を意味し、炭素原子または硫黄原子に付加していることがある。用語「リン酸エステル」とは、−P(O)(OR)2基を指し、上式で、各R基が独立してC1−4アルキルであるか、または2つのR基が併せてC2−6アルキレンを形成する。
本明細書に使用される際に、用語「シクロアルキル」とは、3個から15個の環炭素原子を有する、飽和または部分的に飽和の、単環式、融合型多環式、架橋型多環式、またはスピロ多環式の炭素環を指す。シクロアルキル基の非限定的なカテゴリーは、3個から6個の炭素原子を有する、飽和または部分的に飽和の単環式の炭素環である。シクロアルキル基の説明的な例としては、以下に限定されないが、以下の部分が挙げられる。
本明細書に使用される際に、用語「5員ヘテロアリール」とは、炭素、酸素、窒素、および硫黄から選択される5つの環原子を有する、単環式の芳香族複素環を指す。5員ヘテロアリール基の例としては、以下に限定されないが、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、およびチアジアゾリルが挙げられる。5員ヘテロアリールの具体的な例としては、アジドとプロパルギル基との間のヒュスゲン反応などの1,3−シクロ付加反応によって形成される場合があるものが挙げられる。
本明細書に使用される際に、用語「置換」とは、指定の基または部分が1つまたは複数の適切な置換基を担持することを意味する。本明細書に使用される際に、用語「非置換」とは、指定の基が置換基を担持しないことを意味する。本明細書に使用される際に、用語「任意選択で置換」とは、指定の基が非置換であるか、または指定の数の置換基に置換されていることを意味する。用語「置換」が構造系を記載するために使用される際に、置換とは、系上の結合価の許容された任意の位置で起こることを意味する。本明細書に使用される際に、表現「1つまたは複数の置換基」とは、系上の結合価の許容された任意の位置で起こり得る、1から最大の可能な数の置換(複数可)を指す。ある実施形態では、「1つまたは複数の置換基」とは、1個、2個、3個、4個、または5個の置換基を意味する。別の実施形態では,1つまたは複数の置換基とは、1個、2個、または3個の置換基を意味する。
「置換基(substituent group)」または「置換基(substituent)」とは、本明細書に使用される際に、以下の部分から選択される基を意味する。
・(A)オキソ、ハロゲン、−CF3、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO2Cl、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC=(O)NHNH2、−NHC=(O)NH2、−NHSO2H、−NHC=(O)H、−NHC(O)−OH、−NHOH、−OCF3、−OCHF2、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、および
・(B)以下から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール:
i.オキソ、ハロゲン、−CF3、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO2Cl、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC=(O)NHNH2、−NHC=(O)NH2、−NHSO2H、−NHC=(O)H、−NHC(O)−OH、−NHOH、−OCF3、−OCHF2、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、および
ii.以下から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール:
1.オキソ、ハロゲン、−CF3、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO2Cl、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC=(O)NHNH2、−NHC=(O)NH2、−NHSO2H、−NHC=(O)H、−NHC(O)−OH、−NHOH、−OCF3、−OCHF2、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、および
2.以下から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリール:オキソ、ハロゲン、−CF3、−CN、−OH、−NH2、−COOH、−CONH2、−NO2、−SH、−SO2Cl、−SO3H、−SO4H、−SO2NH2、−NHNH2、−ONH2、−NHC=(O)NHNH2、−NHC=(O)NH2、−NHSO2H、−NHC=(O)H、−NHC(O)−OH、−NHOH、−OCF3、−OCHF2、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール。
「サイズの限定された置換基(substituent)」または「サイズの限定された置換基(substituent group)」とは、本明細書に使用される際に、「置換基」について上に記載された置換基の全てから選択される基を意味し、そこでは、各置換または非置換のアルキルは、置換または非置換のC1−C20アルキルであり、各置換または非置換のヘテロアルキルは、置換または非置換の2員から20員のヘテロアルキルであり、各置換または非置換のシクロアルキルは、置換または非置換のC3−C8シクロアルキルであり、各置換または非置換のヘテロシクロアルキルは、置換または非置換の3員から8員のヘテロシクロアルキルであり、各置換または非置換のアリールは、置換または非置換のC6−C10アリールであり、各置換または非置換のヘテロアリールは、置換または非置換の5員から10員のヘテロアリールである。「低度の置換基(substituent)」または「低度の置換基(substituent group)」とは、本明細書に使用される際に、「置換基」について上に記載された置換基の全てから選択される基を意味し、そこでは、各置換または非置換のアルキルは、置換または非置換のC1−C8アルキルであり、各置換または非置換のヘテロアルキルは、置換または非置換の2員から8員のヘテロアルキルであり、各置換または非置換のシクロアルキルは、置換または非置換のC3−C7シクロアルキルであり、各置換または非置換のヘテロシクロアルキルは、置換または非置換の3員から7員のヘテロシクロアルキルであり、各置換または非置換のアリールは、置換または非置換のC6−C10アリールであり、各置換または非置換のヘテロアリールは、置換または非置換の5員から9員のヘテロアリールである。
実施形態によっては、本明細書中の化合物に記載されている置換された各基は、少なくとも1つの置換基によって置換されている。さらに具体的には、実施形態によっては、本明細書中の化合物に記載されている各置換アルキル、置換ヘテロアルキル、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、置換アリール、置換ヘテロアリール、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、置換シクロアルキレン、置換ヘテロシクロアルキレン、置換アリーレン、および/または置換ヘテロアリーレンが、少なくとも1つ置換基によって置換されている。他の実施形態では、これらの基のうち少なくとも1つまたは全てが、サイズの限定された少なくとも1つの置換基によって置換されている。他の実施形態では、これらの基のうち少なくとも1つまたは全てが、少なくとも1つのより低度の置換基によって置換されている。
本明細書の他の実施形態では、各置換または非置換のアルキルは、置換または非置換のC1−C20アルキルであることがあり、各置換または非置換のヘテロアルキルは、置換または非置換の2員から20員のヘテロアルキルであり、各置換または非置換のシクロアルキルは、置換または非置換のC3−C8シクロアルキルであり、各置換または非置換のヘテロシクロアルキルは、置換または非置換の3員から8員のヘテロシクロアルキルであり、各置換または非置換のアリールは、置換または非置換のC6−C10アリールであり、および/または各置換または非置換のヘテロアリールは、置換または非置換の5員から10員のヘテロアリールである。本明細書の化合物の実施形態によっては、各置換または非置換のアルキレンは、置換または非置換のC1−C20アルキレンであり、各置換または非置換のヘテロアルキレンは、置換または非置換の2員から20員のヘテロアルキレンであり、各置換または非置換のシクロアルキレンは、置換または非置換のC3−C8シクロアルキレンであり、各置換または非置換のヘテロシクロアルキレンは、置換または非置換の3員から8員のヘテロシクロアルキレンであり、各置換または非置換のアリーレンは、置換または非置換のC6−C10アリーレンであり、および/または各置換または非置換のヘテロアリーレンは、置換または非置換の5員から10員のヘテロアリーレンである。
実施形態によっては、各置換または非置換のアルキルは、置換または非置換のC1−C8アルキルであり、各置換または非置換のヘテロアルキルは、置換または非置換の2員から8員のヘテロアルキルであり、各置換または非置換のシクロアルキルは、置換または非置換のC3−C7シクロアルキルであり、各置換または非置換のヘテロシクロアルキルは、置換または非置換の3員から7員のヘテロシクロアルキルであり、各置換または非置換のアリールは、置換または非置換のC6−C10アリールであり、および/または各置換または非置換のヘテロアリールは、置換または非置換の5員から9員のヘテロアリールである。実施形態によっては、各置換または非置換のアルキレンは、置換または非置換のC1−C8アルキレンであり、各置換または非置換のヘテロアルキレンは、置換または非置換の2員から8員のヘテロアルキレンであり、各置換または非置換のシクロアルキレンは、置換または非置換のC3−C7シクロアルキレンであり、各置換または非置換のヘテロシクロアルキレンは、置換または非置換の3員から7員のヘテロシクロアルキレンであり、各置換または非置換のアリーレンは、置換または非置換のC6−C10アリーレンであり、および/または各置換または非置換のヘテロアリーレンは、置換または非置換の5員から9員のヘテロアリーレンである。
原子価の満たされていないいかなる原子も、その原子の原子価を満たすために充分な数の水素原子を有するものと想定される。アルキル、R3やR5などのいかなる可変部も、本明細書に示される任意の式または記載の複数の場所に表される際には、各存在時のその可変部の定義は、他の各存在における定義とは無関係である。数値的な範囲は、本明細書に使用される際には、連続的な全体の数を含むことを意図される。例えば、「0から4まで」または「0〜4」と表現される範囲は、0、1、2、3、および4を含む。多機能の部分が示されている際には、コアへの付加の点は、線またはハイフンによって標示される。例えば、−OHとは、酸素原子が残りの分子へのヒドロキシル基の付加の点となる部分を指す。
本明細書に示されるいかなる式も、構造式ならびにいくらかのバリエーションおよび形態によって図示される構造を有する化合物を表すことが意図される。例えば、本明細書のいかなる式の化合物も、不斉中心またはキラル中心を有し、それゆえ異なる立体異性体の形態で存在することがある。光学異性体、エナンチオマー、およびジアステレオマーを含めて、一般式の化合物の立体異性体、ならびにそれらの混合物は全て、その式の範囲内にあるものと考えられる。さらに、或る構造は、幾何異性体(すなわち、cis異性体およびtrans異性体)として、互変異性体として、またはアトロプ異性体として、存在することがある。そのような異性体の形態およびそれらの混合物は全て、本発明の一部として本明細書に企図される。それゆえ、本明細書に示されるいかなる式も、ラセミ体、1つまたは複数のエナンチオマーの形態、1つまたは複数のジアステレオマーの形態、1つまたは複数の互変異性体もしくはアトロプ異性体の形態、およびそれらの混合物を表すことが意図される。
ジアステレオマー混合物は、物理化学的な差異に基づき、当業者に周知の方法によって、例えば、クロマトグラフィーおよび/または分別晶析法によって、個々のジアステレオマーに分離されてもよい。エナンチオマーは、適切な光学活性化合物(例えば、キラルアルコールやモッシャー酸塩化物などのキラル補助剤、またはジアステレオマー塩の混合物の形成)を用いた反応によりエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオマーを対応の純粋なエナンチオマーに変換する(例えば、加水分解または脱塩する)ことによって分離されてもよい。エナンチオマーはまた、キラルHPLCカラムを使用することによって分離されてもよい。本発明の化合物のキラル中心は、IUPAC1974の推奨に規定されている通りに「R」または「S」と称されてもよいし、ペプチドの文献に合わせて「D」または「L」の名称としてもよい。
本明細書に使用される際に、下付き文字と共に描かれた構造の一部の周囲の枠は、枠内に表示される構造的フラグメントが、下付き文字の通りに繰り返されることを示す。例えば、準構造:
[上式で、xは、0、1、または2である]は、フラグメントがその構造にはないか、−フラグメント−でるか、−フラグメント−フラグメント−であることを標示する。例えば、式VII内では、以下の準構造:
[上式で、pが0または1である]は、枠内の−X−H−基がその構造にはない(pが0である)か、または1回のみ存在する(pが1である)ことを意味する。
本発明の化合物は、医薬的に許容可能な塩を形成することができ、この塩も本発明の範囲内にある。「医薬的許容可能な塩」とは、非毒性であり、生理的に耐容可能であり、それを製剤化した医薬組成物と相容性であり、かつその他製剤および/または対象への投与に適している、本明細書に記載の化合物の遊離酸または遊離塩基の塩を指す。本明細書の化合物についての言及は、別段に示されていない限り、前記化合物の医薬的に許容可能な塩についての言及を含むことが理解される。
化合物塩としては、無機酸および/または有機酸を用いて形成される酸性塩、ならびに無機塩基および/または有機塩基を用いて形成される塩基性塩が挙げられる。さらに、所与の化合物が、以下に限定されないがピリジンやイミダゾールなどの塩基性部分と、以下に限定されないがカルボン酸などの酸性部分との両方を含有する際に、当業者は、その化合物が双性イオン(「内塩」)として存在する場合があることを認識することになる。そして、そのような塩は、本明細書に使用されるような用語「塩」の中に含まれる。本発明の化合物の塩は、例えば、塩が中で沈殿する媒質中でまたは水性媒質中で、ある量の、例えば同量などの適切な酸または塩基に化合物を反応させた後、凍結乾燥することによって、調製することができる。
例示的な塩としては、以下に限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩(「メシル酸塩」)、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス(2−ヒドロキシ−3−ナフトアート))が挙げられる。医薬的に許容可能な塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンや他の対イオンなど、別の分子の含有を伴うことがある。対イオンは、親化合物上の電荷を安定させる任意の有機または無機部分であることがある。さらに、医薬的に許容可能な塩は、その構造中に1個超の荷電原子を有することがある。複数の荷電原子が医薬的に許容可能な塩の一部である場合は、複数の対イオンを有することができる。したがって、医薬的に許容可能な塩は、1つもしくは複数の荷電原子および/または1つもしくは複数の対イオンを有することができる。
例示的な酸付加塩としては、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩としても知られる)などが挙げられる。
例示的な塩基性塩としては、アンモニウム塩;ナトリウム塩、リチウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ジシクロヘキシルアミン、t−ブチルアミンなどの有機塩基(例えば有機アミン)を有する塩;ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩などが挙げられる。塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物(例えば、塩化、臭化、およびヨウ化メチル、エチル、およびブチル)、ジアルキル硫酸塩(例えば硫酸ジメチル、ジエチルおよびジブチル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化、臭化、およびヨウ化デシル、ラウリル、およびステアリル)、アルキルハロゲン化物(例えば、臭化ベンジルおよびフェネチル)などの剤で四級化することができる。
医薬化合物から医薬的に有用な塩を形成するのに適すると一般に考えられている酸および塩基は、例えば、P.Stahlら、Camille G.(編)Handbook of PharmaceuticalSalts.Properties,Selection and Use.(2002年)チューリヒ:Wiley−VCH;S.Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences(1977年)66巻(1)1〜19頁;P.Gould、International J.of Pharmaceutics(1986年)33巻、201〜217頁;Andersonら、The Practice of Medicinal Chemistry(1996年)、Academic Press、ニューヨーク;およびOrange Book(米国食品医薬品局、メリーランド州、FDAから入手可能)により議論されている。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
本明細書に記載の化合物はいずれも、そのような化合物の任意の非溶媒和形態、または水和物、溶媒和物、もしくは多形、およびその混合物も指すことが、そのような形態が明確に列挙されていなくても意図されている。「溶媒和物」は、本発明の化合物と1つまたは複数の溶媒分子との物理的な会合を意味する。この物理的な会合は、水素結合を含めて、様々な程度のイオン結合および共有結合を含む。ある場合には、例えば1つまたは複数の溶媒分子が結晶質固体の結晶格子中に組み込まれている際には、溶媒和物を単離することが可能となる。「溶媒和物」は、溶液相および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。適切な溶媒和物としては、水、エタノールなどの医薬的に許容可能な溶媒と共に形成されるものが挙げられる。実施形態によっては、溶媒は水であり、溶媒和物は水和物である。
本明細書に示される式はいずれも、化合物の標識されていない形態、ならびに同位体標識された形態をも表すことが意図されている。同位体標識された化合物は、選択された原子質量または質量数を有する原子に1つまたは複数の原子が置き換えられていることを除いて、本明細書に示される式によって図示される構造を有する。本発明の化合物内に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、およびヨウ素の同位体が挙げられ、それらはそれぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、36Cl、および125Iなどである。そのような同位体で標識された化合物は、代謝研究(例えば14Cを用いる)、反応速度論研究(例えば2Hまたは3Hを用いる)、薬剤もしくは基質の組織分布アッセイを含む検出もしくはイメージング手法[陽電子放射型断層撮影法(PET)や単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)など]において、または患者の放射線治療において、有用である。具体的には、18Fまたは11Cで標識された化合物は、PETまたはSPECT研究に特に適することがある。さらに、ジュウテリウム(すなわち2H)などのさらに重い同位体で置換することによって、代謝安定性がさらに大きくなる結果、例えばin vivo半減期が増すかまたは必要投薬量が低減される結果、ある種の治療上の利点を得ることがある。この発明の同位体標識された化合物、およびそのプロドラッグは、一般に、下記に記載されるスキーム、または実施例および調製に開示されている手順を実施することによって調製することができ、この手順を、容易に利用可能な同位体標識された試薬を同位体標識されていない試薬の代わりに用いることによって実施する。
VII.実施例
以下の実施例は、例証の目的のためにのみ含まれ、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1 メディトープFcの結合
ポリグリシン−セリンリンカーを介してメディトープをFcドメインのN末端に融合することによって、メディトープ−Fc構築物を生成した。このメディトープ−Fc構築物の遺伝子を、DNA2.0により構築し(37残基のリンカーを介してcQFDメディトープをヒトIgGガンマ重鎖3(受入番号AAW65947)残基22〜241に連結した)、pAcGP67Aベクター(BD Biosciences)内にクローニングし、Sf9細胞中で生産した。プロテインAおよびサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、タンパク質を精製した。メディトープ−Fcは、以下の配列番号57(下記にリーダー(「G」)を1位に、メディトープを太字で、リンカーをイタリック体で、Fc部分を平明な文字で示す)に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
GCQFDLSTRRLRCGGSRSGGTSGGGSVPGSGSSGSTSGSGKSSEGSGQASTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:57)。
この構築物を用いて、セツキシマブFab、EGFRdlll、およびメディトープが複合体を形成することが、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって実証された。メディトープ−Fc構築物を、EGFRdlllとセツキシマブFabとの化学量論的複合体に添加すると、新しいピークが観察され、それは、Fab−EGFRdlll複合体よりもはるかに早く溶出され、水力学的な量の増加に一致した。この新しいピークのSDS−PAGEでは、3つのタンパク質全ての存在が示された。これらの研究によって、メディトープが抗原認識に大きくは干渉しなかったことがさらに裏付けられた。
実施例2 メディトープ利用可能なトラスツズマブの生成
メディトープ結合部位をヒトmAbフレームワーク上に移植して、メディトープ利用可能抗体(メディトープ利用可能抗体)、特にメディトープ利用可能抗体トラスツズマブを生成した。セツキシマブおよびトラスツズマブの配列をアラインメントして、配列の同一性をトラスツズマブの原子モデル(1N8Z、Choら、Nature、421巻、756〜760頁(2003年)を参照)上にマッピングした。このマッピングと、cQFD−セツキシマブおよびトラスツズマブの構造の重ね合わせとに基づいて、セツキシマブとトラスツズマブの間で異なっており、かつその側鎖がメディトープと直接的な接触を成すか、またはメディトープの結合に間接的に影響を及ぼす可能性がある、13の(13)残基を特定した。これらの残基は、軽鎖中のThr40、Asn41、Asp85(上記を参照);非結合のリン酸基を配位し、例によっては軽鎖中のThr40およびAsn41を含有するループを安定化する、軽鎖中のArg39およびArg45;メディトープ中のLeu10の側鎖の近くの浅い疎水性表面の形成に関わるVal9およびIle10;および軽鎖のGly42、Ser43、Ile83、およびAla100;ならびに重鎖のSer40およびIle89である。このメディトープ利用可能抗体の軽鎖配列は、配列番号303に記載され、重鎖は、配列番号304に示されている(メディトープペプチド配列およびリンカー配列を含まず)。
トラスツズマブ配列中の同等の位置を変異させ(Kabatナンバリングに基づき、軽鎖中のThr40、Asn41、Asp85、Arg39、Arg45、Ile9、Leu10、Gly42、Ser43、Ile83、およびAla100、ならびに重鎖中のSer40およびIle89に)、タンパク質を生産し精製した。SPRを用いたところ、cQFDメディトープがセツキシマブと同様の親和性(KD=1.2μΜ)で移植トラスツズマブFabに結合することが示された。また、メディトープ利用可能なトラスツズマブFabが、商用供給源から単離されたFabと同様の親和性で可溶性HER2に結合することが観察され、このことにより、それらの変異が抗原結合に悪影響を及ぼさないことが確認された。メディトープ利用可能なトラスツズマブ、sHER2、およびメディトープ−Fcが共溶出されることが、サイズ排除クロマトグラフィーによって実証された。
点変異がFabの全体構造を大きくは乱さないことをさらに確かめるために、トラスツズマブのメディトープ利用可能抗体のFabを、cQFDメディトープの有るものと無いもので結晶化した。良好に回折する結晶を、プロテインAおよびプロテインLの存在下で得て、結晶化を促進した。欠如したメディトープ利用可能抗体トラスツズマブおよびメディトープ含有複合体の構造を、それぞれ1.95Åおよび2.0Åで解析した。プロテインAおよびプロテインLに結合した親のトラスツズマブFabも結晶化し、分解能2.08Åに解析した。欠如した親トラスツズマブFabまたはHER2に結合した親トラスツズマブFab(22)のどちらかを、「欠如した」メディトープ利用可能抗体トラスツズマブに重ね合わせると、全体構造には僅かな変化が明示されたに過ぎなかった(433番および431番のCα原子にわたってそれぞれRMSD=0.22Åおよび0.56Å)。「欠如した」かつメディトープでリガンドされたメディトープ利用可能抗体トラスツズマブを重ね合わせると、セツキシマブに観察されたのと同様に、メディトープの占有によって重鎖のループ(残基s39−44)が開かれた立体配座に安定化され、一部が僅かに高いRMSDを占めることが示された。さらに重要なことに、配列マッピングによって特定された残基(Thr40、Asn41、およびAsp85)は、「欠如した」かつメディトープでリガンドされたメディトープ利用可能抗体は、本質的に、セツキシマブでのカウンターパートと同じ位置にあり、メディトープとの同様の相互作用を形成していた。メディトープの重要な側鎖回転異性体もまた、本質的に、cQFD−セツキシマブの構造にあるものと同じであった。セツキシマブにあったように、CDRループの大きな変化は観察されなかった。
これらのデータは、抗原結合に大きく影響を及ぼすことなく、メディトープ結合部位をヒトのFabのフレームワーク上に移植することに成功したことを示す。メディトープ部位の移植の成功によって、回折データおよび相互作用の特異性を通じて得られた当初のセツキシマブ−メディトープモデルが、さらに妥当であるものと認められた。このデータによって、アビディティーを介してメディトープ結合親和性を増強することの実行可能性がさらに裏付けられ、二価のメディトープが、抗原を過剰発現する細胞に対し、同系のメディトープ利用可能抗体の存在下だけでではなく、特異的であり、かつ高い親和性で結合することが示された。
実施例3 メディトープ融合抗体の架橋を用いた抗体内在化の増加
SnAPボディ(リンカーを介して重鎖のN末端に融合されたメディトープを含む、メディトープ利用可能抗体)を、標的抗原を発現する細胞によって内在化される能力について検討した。
A.抗体の生産
3種の異なる抗体を哺乳類発現系で生産した。各抗体は、配列番号254のアミノ酸配列を含む、メディトープ利用可能なゲムツズマブ軽鎖を含んでいた。SnAPボディ・バリアント1は、リンカーを介してメディトープに融合されたメディトープ利用可能なゲムツズマブIgGl重鎖配列(配列番号255)を含む、重鎖を有していた。SnAPボディ・バリアント2は、リンカーを介してメディトープに融合されたメディトープ利用可能なゲムツズマブIgGl重鎖配列(配列番号256)を含む重鎖を有していた。対照抗体は、メディトープ利用可能なゲムツズマブIgGl重鎖のアミノ酸配列(配列番号257)を有したが、メディトープまたはN末端に融合されるリンカーを含まなかった。
配列番号254〜257をコードする核酸を、EBV複製起点を含有するCMVベースのpCEP4発現ベクター(Invitrogen)内にクローニングした。発現ベクターをヒト胚性腎臓293細胞株(HEK−293)内にトランスフェクションし、この操作には、1μgのエンドトキシン不含DNAでのEpstein−Barrウイルス(EBV)/106個の細胞が含まれ、ポリエチレンイミンのトランスフェクション試薬(FuGENE(登録商標)HD、Promega)が使用された。25μg/mL ハイグロマイシンB(Thermo Fischer Scientific)および0.1%Pluronic(登録商標)F68(Thermo Fischer Scientific)を補ったFREESTYLE(登録商標)293発現培地(Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア州)中で、細胞を6日間から7日間培養した。次いで、細胞の培養上清を、0.22μΜフィルターを用いて滅菌し、精製まで4℃で保存した。
抗体を、タンパク質Aカラムに続いてサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムで精製し、純度95%かつエンドトキシンレベル<lEU/mgの産物を得た。抗体を、20mM ヒスチジンおよび5%ショ糖を含有する滅菌緩衝液中に、終濃度5mg/mLで製剤化した。濃度を分光測光法(Nanodrop 2000c、Thermo Fisher)によって決定した。無傷の抗体が生産されたことを、標準的なタンパク質ゲル上で可視化することによって確認した。
B.抗体の標識化
SnAPボディ・バリアント1、SnAPボディ・バリアント2、および対照抗体を、pHrodo(登録商標)Red SE(Thermo Fisher Scientific,ウォルサム、メリーランド州)を用いて、製造業者の指示書に従って標識した。pHrodo(登録商標)染料は、pH感受性であり、その蛍光は、pHの減少に伴って増加する。そのため、pHrodo(登録商標)標識抗体の蛍光の定量は、抗体のエンドサイトーシスの率を示す。簡単に述べれば、pHrodo(登録商標)を乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)(Invitrogen)中で調製して、終濃度2〜5μΜの染料とした。2mgの抗体を、2mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にpH9で溶解した。次いで、pHrodo(登録商標)染料を、4回の50uLの増分でゆっくりと抗体溶液に添加し、各添加に対し15分間、室温で振動させながらインキュベーションした。
C.蛍光顕微鏡観察
CD33を発現するHL−60細胞を、氷上でインキュベーションした後、抗体を添加した。細胞を、蛍光顕微鏡観察のためにpHrodo(登録商標)標識されたSnAPボディ・バリアント1、SnAPボディ・バリアント2、または対照抗体で染色し、受容体を介した抗体エンドサイトーシス率を決定した。標識された細胞を、37℃の水浴中で15分間インキュベーションした。細胞を氷冷緩衝液(1%BSAを補ったPBS)で洗浄し、100μLの緩衝液に再懸濁し、100μLの4%パラホルムアルデヒドの添加によって固定した。次いで、細胞を、1スライド当たり8穴(0.7cm2/穴)を備えたイメージング用のNunc(登録商標)Lab−Tek(登録商標)IIチャンバースライドシステムに添加した。その後、スライドをFluoromount G(Southern Biotechnology、バーミングハム、アラバマ州)中にマウントした。
pHrodo(登録商標)標識抗体用の適切な波長設定を使用し、共焦点顕微鏡を用いて、図7Aに示すように細胞をイメージングした。Zセクショニングによって、内在化された物質を可視化させ、同じ所定の高さで全ての定量測定を行った。30個超の細胞を可視化して、各可視化事例について、3つの共焦点視野を用いて各時点で定量化した。イメージングされた各細胞の蛍光を、ImageJを用いて計算し、各状態について平均化し、対照に対し正規化した。SnAPボディ・バリアント1の総染色は、対照の2.5倍超の大きさであった。SnAPボディ・バリアント2の総染色は、図7Bに示すように対照の2.0倍超であった。この結果は、HL−60細胞が、自己架橋SnAPボディを非架橋の対照抗体.の2倍超の率で内在化させることを示す。
実施例4 メディトープ融合抗体の架橋を使用した抗体の内在化の増加
CD33を発現するHL−60細胞を、氷上でインキュベーションした後、抗体を添加した。細胞を、実施例1に記載されたようにフローサイトメトリー分析用にpHrodo(登録商標)標識SnAPボディ・バリアント1、SnAPボディ・バリアント2、または対照抗体を用いて染色して、受容体を介した抗体のエンドサイトーシスの率を決定した。標識細胞を37℃の水浴中で15分間インキュベーションした。細胞を氷冷緩衝液(1%BSAを補ったPBS)で洗浄して、100μLの緩衝液中に再懸濁した。
細胞を、CytoFLEXフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて分析し、FloJoバージョン9を用いてヒストグラムで解析した。自己架橋性抗体(SnAPボディ・バリアント1および2)のデータでは、対照に比べて強度の増加した追加のピークが示され、このことは、HL−60細胞が対照に比べて増加した率で自己架橋性抗体を内在化することを示す(図8)。
実施例5 メディトープ−抗体融合体を使用した抗体の架橋の増加
4種の異なる抗体を哺乳類発現系で生産した。各抗体はは、配列番号254のアミノ酸配列を含む、メディトープ利用可能なゲムツズマブ軽鎖を含んでいた。SnAPボディ・バリアント1および2を、実施例1に記載されたように生産した。SnAPボディ・バリアント3は、リンカーを介してメディトープに融合されたメディトープ利用可能なゲムツズマブIgGl重鎖配列(配列番号279)を含む、重鎖を有していた。対照抗体は、メディトープ利用可能なゲムツズマブIgGl重鎖のアミノ酸配列(配列番号257)を有したが、メディトープまたはN末端に融合されるリンカーを含まなかった。配列を発現ベクター内にクローニングして、実施例1に記載されたように発現した。
次いで、Sepax technologiesから得たSRT−10C SECカラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーによって、抗体を精製し分析した。このカラムは、親水性かつ中性のナノメートル厚さのフィルムで被覆された5〜10μmのシリカ粒子を含有していた。この粒子はまた、100Åの孔を含有していた。カラムをまず、ヒスチジン−ショ糖緩衝液(ヒスチジン20mM、pH6、ショ糖5%)で平衡化した。試料をロードし、同じ緩衝液中1mL/分で溶出した。280nMに設定したUV検出器を用いて、クロマトグラムを記録した。
データでは、ゲムツズマブ対照抗体が単一のモノマーのピークとして溶出したのに対し(図9A)、より小さい早期のピークによって明示されるように、自己架橋SnAPボディ・バリアント1、2、および3は、二量体および多量体を形成することができることが示された(それぞれ図9B〜図9D)。
実施例6 抗体の自己架橋は濃度依存的とすることができる
実施例1で得たSnAPボディ・バリアント1、SnAPボディ・バリアント2、および対照ゲムツズマブ抗体を、リン酸緩衝生理的食塩水溶液中1nMおよび100nMの試料としてそれぞれ調製した。このPBSは、137nMのNaCl、2.7mMのKC1、10mMのNa2HPO4、および1.8mMのKH2PO4を含有していた。各試料を、62.5mM Tris−HCl、pH6.8、25%グリセロール、および1%ブロモフェノールブルーからなる等体積の2×試料緩衝液と、それら混合した。次いで、ラン用緩衝液(50mM BisTris、10mMトリシン、pH6.8)を含有するゲル電気泳動チャンバー中、ポリアクリルアミドゲル[3〜12%ポリアクリルアミド勾配NativePAGE(登録商標)Bis−Tris Gels(Thermo Fisher)]内に試料をロードした。ゲルを150V一定で90〜115分間ランさせた。次いで、Thermo Scientificから得たPierce銀染色キット(カタログ番号24612)を用いて、製造業者の指示書に従って、ゲルを染色した。
その結果、自己架橋性抗体が、濃度依存的に、二量体、三量体、および四量体を含めて多量体を形成することが示された(図10)。対照ゲムツズマブ抗体のみが単量体を形成し、自己架橋しなかった。.
実施例7 抗体の自己架橋は遊離メディトープペプチドによって変調させることができる
実施例1および3で得たSnAPボディ・バリアント1、SnAPボディ・バリアント2、および対照ゲムツズマブ抗体を、リン酸緩衝生理的食塩水溶液中100nMの試料としてそれぞれ調製した。次いで、遊離メディトープ(cQFD、配列番号1)を、試料の1つに終濃度1μMで添加し、30分間インキュベーションした。各試料を、62.5mM Tris−HCl、pH6.8、25%グリセロール、および1%ブロモフェノールブルーからなる等体積の2×試料緩衝液と、それら混合した。次いで、ラン用緩衝液(50mM BisTris、10mMトリシン、pH6.8)を含有するゲル電気泳動チャンバー中、ポリアクリルアミドゲル[3〜12%ポリアクリルアミド勾配NativePAGE(登録商標)Bis−Tris Gels(Thermo Fisher)]内に試料をロードした。ゲルを150V一定で90〜115分間ランさせた。次いで、Thermo Scientificから得たPierce銀染色キット(カタログ番号24612)を用いて、製造業者の指示書に従って、ゲルを染色した。
その結果、自己架橋性抗体の自己架橋能に遊離メディトープが干渉できることが示された。SnAPボディ・バリアント1、2、および3は、遊離メディトープの非存在下で、二量体、三量体、および四量体を形成する能力をそれぞれ示す(図11)。しかし、過剰の遊離メディトープが添加された際に、検出可能な多量体は殆どまたは全くなかった。
実施例8 ヌードマウスの卵巣異種移植モデルにおけるSnAPボディの効能
この試験は、HER2発現SK−OV−3−Luc卵巣の皮下異種移植モデルに対するADC構築物の効能を評価するために、生物発光イメージングおよび古典的な腫瘍のノギス測定を使用して実施した。65頭の4週齢の雌の胸腺欠損ヌードを、Charles Riverから入手した。標準的な組織培養手法を用いて、SK−OV−3−Luc細胞を拡大培養した。移植の当日に、30%マトリゲルを含む不完全培地中の2.5×106個の細胞を、各マウスの右脇腹下部に移植した。動物は、処置のために、pi10日目での総フラックス(Perkin Elmer IVIS Lumina XRMS II)に基づき、マウス8頭からなる7つの群に階層化した。動物を週2回、腫瘍の測定と併せて秤量した。生物発光イメージングを週1回実施した。腫瘍の質量を、以下の式を用いて算出した。
質量(mg)=腫瘍体積(mm3)=d2×D/2[上式でdおよびDは、それぞれ最短および最長のmm直径である]
動物を以下の表に従って処置した(BIW:週2回;QW:週1回、DM1:メルタンシン、MMAD:モノメチルオーリスタチンD、ADC:抗体−薬剤コンジュゲート)
MBI Her2 Snapbodyの配列は、配列番号303および304に示されている。MBI Her2抗体の軽鎖および重鎖は、Snapbodyと同じであるが、Her2抗体は、メディトープおよびリンカー配列を含まない(同様に実施例2の記載を参照)。結果を図12に示した。腫瘍は、pi10日目に生物発光によって検出可能であった。媒体群の腫瘍体積は、試験の終了まで増加し続けた。pi66日目に媒体群と比べると、グループ2(G2、9mg/kgでトラスツズマブを処置)のHER2発現腫瘍は、完全な退縮を示した。カドサイラ(マイタンシノイド毒素にコンジュゲーションされたトラスツズマブ)は、3mg/kgで効能を示した。ADCおよびSnAPボディによる治療群は全て、腫瘍成長の低減または抑制を示した。腫瘍は、より早くパクリタキセル(20mg/kg)に応答したが、全体的に最小限(2.80%TGI、pi52日目)の阻害を示した。殆どの動物が、試験を通じて各処置に対し副作用を示さず、全ての群の体重が、試験の終了まで増加し続けた(図13)。
この試験は、HER2発現卵巣の皮下異種移植モデルに対するADC構築物の効能を実証している。個々の抗体およびADCは、予想された効能を示した。MBI ADCおよびSnAPボディによる治療群は全て、腫瘍成長の低減または抑制を示した。カドサイラ(旧来のADCコンジュゲーション)とMBI DM1コンジュゲートADCとは、同様に比肩する結果を示し、このことは、SnAPボディ技術が抗体の活性を保持することを実証している。
本発明は、具体的に開示された実施形態の範囲に限定されることを意図するものではなく、これらの実施形態は、例えば、本発明の様々な態様を説明するために提供されている。記載されている組成物および方法への様々な改変は、本明細書の記載および教示から明らかになろう。そのようなバリエーションは、本開示の真の範囲および趣旨から逸脱することなく実践されることがあり、本開示の範囲内にあることを意図するものである。