JP2019506601A - 予後診断方法及び該方法において有用なキット - Google Patents

予後診断方法及び該方法において有用なキット Download PDF

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Abstract

本発明は、大まかには、乳がんための診断、予後診断及びモニタリング方法並びにアッセイ、そしてかかる方法において用いられ得るキットに関する。より詳細には、本発明は、乳がんに罹患した患者の予後診断の方法であって、前記患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定することを含む、方法に関する。
【選択図】図3

Description

分野
本発明は、大まかには、乳がんための診断、予後診断及びモニタリング方法並びにアッセイ、そしてかかる方法において用いられ得るキットに関する。
より具体的には、本出願は、生じ得る局所無病生存期間の長さを予測するための、HER2/CBヘテロマー発現の使用に関する。生じ得る転移、乳がん患者の全生存期間の長さ及び乳がん治療の予後の評価も可能である。それは更に、改善された薬物標的に関する。
背景
乳がんは、世界中で最も頻発する悪性腫瘍の1つであり、公衆衛生上の重要な問題となっている。乳がんは、該疾患の理解が継続的に改善しているにもかかわらず、医学的介入に対する抵抗が依然として大きい。大抵の臨床戦略は早期診断に焦点を当てており、従来型の介入、特に外科手術、放射線、ホルモン抑制、及び化学療法はその次になっている。かかる介入の成功は、特に腫瘍が転移を経た患者においては、限定的である。従って、可能な限り侵襲の少ない方法で首尾よく治療することを可能にする、より正確でより効果的な情報を提供するために、有利な診断のツール及び方法を改良することが急務である。引き続き、薬物治療の更なる、より良好な標的を同定する必要もある。
ここ何年かの間、乳がんは分子パラメータに従って異なるサブタイプに分類されている。1つのサブタイプは、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の過剰発現を特徴とし、全乳がんの20%〜25%に相当する。これとは別に、CBがHER2+乳がんにおいて過剰発現されること、及びCBが、c−SRCキナーゼを介したHER2前がん化シグナル伝達を活性化することによって、腫瘍の発生及び進行を促進することが実証されている。ヒト乳がん試料において、CBがHER2とヘテロマーを形成することも示されている。
引き続き、乳がん、特にHER2+乳がんの診断、予後診断及びモニタリングのためのより良好なツールを開発するニーズがある。新たな治療標的を同定することも重要である。
要旨
本発明者らは、HER2/CBの発現が、乳がん患者における局所無病生存期間と相関することを発見した。最近、HER2/CBが、乳がん細胞においてヘテロマーとして存在することも記述された。本発明者らは、HER2/CBヘテロマーの発現が、患者の不良な予後と相関することも示した。HER2/CBヘテロマーが、がん細胞をΔ−テトラヒドロカンナビノール(THC)で処理すると解離することも示した。
従って、第1の態様においては、本発明は、乳がんに罹患した患者の予後診断の方法であって、前記患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定することを含む、方法を提供する。
第2の態様においては、本発明は、乳がん患者の全生存期間の長さを予測する方法であって、前記患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定すること;前記レベルを、健康な個人を示す基準又はより長いか、若しくはより短い全生存期間を示す基準と比較すること;及びそれによりHER2/CBヘテロマー発現の前記レベルと関連付けられる全生存期間の長さを予測することを含む、方法を提供する。
第3の態様においては、本発明は、乳がん患者の無病生存期間の長さを予測する方法であって、前記患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定すること;前記レベルを、健康な個人を示す基準又はより長いか、若しくはより短い全生存期間を示す基準と比較すること;及びそれによりHER2/CB2ヘテロマー発現の前記レベルと関連付けられる無病生存期間の長さを予測することを含む、方法を提供する。
第4の態様においては、本発明は、被験体における乳がんの診断又は予後診断の方法であって、被験体の組織を準備すること;組織中のHER2/CBヘテロマーの発現レベルを測定すること;及び発現レベルが基準よりも高い場合に乳がんを診断又は予後診断することを含む、方法を提供する。
態様1〜4における、HER2/CBヘテロマーの発現レベルを測定する工程は、当該技術分野で公知の任意の方法によるものであり得る。しかし、いくつかの実施形態においては、HER2/CBヘテロマーの発現レベルを測定する方法は、共局在プロトコール、共免疫沈降アッセイ、共鳴エネルギー移動技術、近接ライゲーションアッセイであり、又はヘテロマーを検出するように設計された特異的プローブの使用による。
第5の態様においては、本発明は、HER+乳がんを治療する方法であって、HER2/CBヘテロマーを破壊することができ、それにより前記HER+乳がんを治療する医薬品を投与する工程を含む、方法を提供する。
第6の態様においては、本発明は、HER2/CBヘテロマーを検出することができる薬剤及び使用のための説明書を含む、キットを提供する。
図面の簡単な説明
HER2+乳房腫瘍(陽性対照、上パネル)及びHER2−乳房腫瘍(陰性対照、下パネル)におけるHER2、CB及びHER2−CBヘテロマーの発現を示す代表的な画像。HER2及びCB染色は茶色で、ヘテロマー染色は桃色で現れる。細胞核をDAPI(青色)で染色した。 局所無再発生存率(local relapse−free survival)についてのカプラン−マイヤー曲線。試料をHER2−CBヘテロマー発現によってランク付けし、最良のカットオフを手動で選択することにより2群(低発現及び高発現)に分布させた。 表示した細胞株における、HER2及びCBのウエスタンブロット解析。細胞をCB−HAをコードするプラスミドでトランスフェクションし、THCで4時間処理した。次いで、HER2を抗HER2抗体で免疫沈降させ、ブロットを抗HA抗体で発色させた。 HCC1954細胞におけるHER2−CBヘテロマー発現。表示された処理に対応する、PLA実験の代表的な画像。 HCC1954細胞におけるタンパク質発現。THCに応答する全HER2及びリン酸化(即ち活性化)HER2の、ウエスタンブロットによるタンパク質発現解析。 HCC1954細胞におけるHER2−HER2ヘテロマー発現。表示された処理に対応する、PLA実験の代表的な画像。
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の方法及びキットが記述される前に、本発明は、記述される特定の方法論、プロトコール及び試薬には、これらが変わることがあるため、限定されないことが理解される。本明細書で用いる用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲によって記述される本発明の範囲の限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別段明確に指示されない限り、複数形の言及を含むことを留意するべきである。従って、例えば、「細胞」への言及は、複数のかかる細胞を含み、「抗体」への言及は、1以上の抗体及び当業者に公知のその均等物等を含む。
別段定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。方法、器具及び材料がここで説明されるが、本明細書に記載されているものと類似又は均等な任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験に用いられ得る。本明細書中に言及される全ての刊行物は、本発明に関連して用いられ得る、刊行物に報告されている抗体、タンパク質、核酸及び方法論を記述及び開示する目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書においては何れも、本発明が、先行発明に基づくかかる開示に先行する権利を持たないとする承認として解釈されるべきではない。
本明細書においていずれかの先行技術刊行物が言及されている場合、かかる言及は、刊行物が、オーストラリア又は他のいずれの国においても、当該技術分野における一般的な知識の一部を形成することの承認を構成するものではないことが理解されるべきである。
以下の特許請求の範囲及び本発明の上記説明において、文脈が明示的な言語又は必要な意味のために別段必要とする場合を除いて、単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprissing)」等の変形は、包括的な意味で、即ち、記載された特徴の存在を明示するが、本発明の様々な実施形態における更なる特徴の存在又は追加を排除しないために、用いられる。
本発明によれば、乳がん、特にHER2+乳がんに罹患した患者の予後診断のための方法であって、前記患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定することを含む、方法が提供される。
一実施形態においては、方法は、前記生体試料をHER2/CBヘテロマー結合組成物と接触させることを含み得る。
別の実施形態においては、方法は、前記生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを基準と比較し、及びそれにより前記測定されたレベルのHER2/CBヘテロマー発現と関連付けられる予後診断を提供することを更に含み得る。
別の実施形態においては、HER2/CBヘテロマー発現のレベルの上昇は、局所無病生存期間の長さの減少した患者と関連付けられることが見出された。
本発明の一実施形態においては、HER2/CBヘテロマー発現のレベルの上昇が、無増悪生存期間の長さが減少した患者と関連付けられることが発見された。
別の実施形態においては、HER2/CBヘテロマー発現のレベルの上昇は、無症候生存期間(event−free survival)の長さが減少した患者と関連付けられることが見出された。
HER2/CBヘテロマー発現のレベルは、疾患状態を評価する際の唯一の因子として、又はリンパ節状態、エストロゲン受容体状態等を含む追加の因子と共に、用いられ得る。
用語「診断」は、本明細書においては、乳がん、特にHER2+乳がんに罹患している患者の確認を指すために用いられる。
本願において用いられる場合、「予後診断」は、乳がんからの起こり得る回復、又は乳がんの、発症の可能性若しくは予後の予測(全生存期間の長さ、無乳がん生存期間の長さ、無増悪生存期間、無症候生存期間、患者において生じ得る乳がん再発及び生じ得る乳がん転移を予測することが含まれるが、これらに限定されない)を意味する。
語句「全生存」は、当業者に周知であり、患者における死因ががんの影響に直接起因しない可能性があっても、診断後の患者の運命を指す。語句「無病生存」は、当業者に周知であり、モニタリングされている疾患なく生存することを意味する。例えば、乳がんを診断又はモニタリングするために、HER2/CBヘテロマー発現が用いられる場合、無病生存は、検出可能な乳がんがないことを意味する。語句「起こり得る回復」は、当業者に周知であり、がんの診断後の、患者の回復をもたらす腫瘍の消滅又は腫瘍再発の欠如の可能性を指し、該可能性は、本発明の方法に従って判定される。語句「生じ得る再発」は、当業者に周知であり、がんの診断後の、患者における腫瘍再発又は転移の可能性を指し、該可能性は本発明の方法に従って判定される。語句「無症候生存」は、当業者に周知であり、特定の作用(例、治療)後の、具体的な一群の明白な症候(例えば、がんの進行)の発生なしに生存することを意味する。語句「無増悪生存期間」は、当業者に周知であり、患者が悪化しない疾患を有して生存している、治療中及び治療後の時間の長さを指し、臨床試験又は治験において、治療がいかに良好に機能しているかを見出すのに役立てるために用いられ得る。用語「転移」は、当業者に周知であり、原発性のがん性腫瘍の器官に直接結合していない器官又は身体部分におけるがん性腫瘍の成長を指す。転移は、原発性のがん性腫瘍の器官に直接結合していない器官又は身体部分における、検出不能な量のがん性細胞の存在である微小転移を含むと理解される。従って、本発明は、乳房に直接結合していない器官又は身体部分における、1以上のがん性腫瘍の更なる増殖のリスクを判定する方法を企図する。
本明細書で用いられる場合、語句「生体試料」は、被験体から得られた、本発明の手順において有用な様々なタイプの試料を包含する。生体試料としては、固体組織試料、液体組織試料、生体液、吸引物、細胞及び細胞断片が挙げられ得るが、これらに限定されない。生体試料の特定の例としては、外科的除去によって得られた固体組織試料、病理標本、保存試料又は生検標本、組織培養物又はそれ由来の細胞及びその子孫、並びにこれらのソースのいずれかから調製された切片又は塗抹標本が挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例は、乳房組織、リンパ節及び乳房腫瘍から得られた試料である。生体試料の全部又は一部は、1以上の疾患状態(複数可)に特徴的なレベルのHER2/CBヘテロマー発現を有し得る。
本明細書で用いられる場合、「基準」は、他のデータの比較のための基礎として機能する基準である。基準としては、生体試料、生体試料の写真若しくは顕微鏡写真、又は生体試料の解析に由来する正常範囲(例えば、健康な個体の範囲内)が挙げられ得る。例えば、基準としては、陽性対照としての使用のための様々なレベルでのHER2/CBヘテロマータンパク質発現を含有する正常組織及び/若しくはがん組織、がんを含まない組織若しくは保存病理試料、並びに陰性対照試料としての、HER2/CBヘテロマー発現レベルを示さない腫瘍組織若しくは他の組織、写真若しくは顕微鏡写真、又は前記試料に由来する正常範囲が挙げられ得る。かかる基準は、無病生存期間及び全生存期間の長さの予測、無増悪生存期間の予測、無病期間又は全生存期間の低下のリスクの予測、がんに罹患している患者の、起こり得る回復の予測、がん腫瘍を有する個体における、がん及び/又は転移の、生じ得る再発の予測、がんの再発のリスクの予測が挙げられるが、これらに限定されない方法、がんに罹患している患者をスクリーニングして腫瘍転移のリスクを判定するための方法、がんに罹患している患者の適切な治療経過を判定するための方法、及びがんに罹患している患者の治療経過の有効性をモニタリングするための方法において用いられ得る。
「HER2/CBヘテロマー結合組成物」としては、HER2/CBヘテロマーに特異的に結合することができるリガンド、抗HER2/CBヘテロマー抗体又はその抗原結合断片を含むが、これらに限定されない任意の薬剤が挙げられ得る。本明細書で用いられる場合、用語「HER2/CBヘテロマーに結合する(又は結合することができる)薬剤」は、抗体若しくはその抗原結合断片が挙げられるがこれらに限定されない、HER2/CBヘテロマー又はそのポリペプチド断片に特異的に結合し、及びそれによりHER2/CBヘテロマー発現のレベルを検出する任意の分子を指す。かかる薬剤は、好ましくは、当業者に周知の方法を用いて検出のために標識される。標識の例としては、放射性標識、発色団、蛍光色素分子、酵素、結合部分(例えば、ビオチン)等が挙げられるが、これらに限定されない。
「HER2」、「ErbB2」、「c−Erb−B2」は互換的に用いられる。別段表示されない限り、用語「ErbB2」「c−Erb−B2」及び「HER2」は、本明細書で用いられる場合、ヒトのタンパク質を指す。ヒトErbB2遺伝子及びErbB2タンパク質は、例えば、Semba et al.,PNAS(USA)82:6497−650(1985)及びYamamoto et al.Nature 319:230−234(1986)に記載されている(Genbankアクセッション番号X03363)。HER2に特異的に結合する抗体の例は、米国特許番号第5,677,171号;同5,772,997号;Fendly et al.,Cancer Res.,50:1550−1558(1990)に開示されており;ハイブリドーマ細胞株(ATCC CRL 10463)により産生されるHER2モノクローナル抗体4D5、ハイブリドーマ細胞株(ATCC番号PTA−5262)によって産生されるHER2モノクローナル抗体6B3、ハイブリドーマ細胞株HB−11601及びHB−11602によって産生されるErbB2モノクローナル抗体;等である。
モノクローナル及びポリクローナルの両方の抗体又はその抗原結合断片は、HER2/CBヘテロマータンパク質又はそのポリペプチド断片に結合する、HER2/CBヘテロマー結合組成物として用いられ得る。本明細書においては、また、HER2/CBヘテロマー結合組成物として、付加(例、GSTドメイン又はGFPドメインの付加)によるか、又は配列改変(例、部位特異的突然変異誘発)等によるかは問わない、HER2/CBヘテロマーに特異的に結合するタンパク質の、任意の突然変異体が企図される。
本明細書においては、用語、抗体は、ヒト及び非ヒトのポリクローナル抗体、ヒト及び非ヒトのモノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体(抗IdAb)及びヒト化抗体を含むが、これらに限定されない。
用語、抗体は、完全な分子並びに、例えば、Fab、F(ab)、Fab’、F(ab’)、Fd、Fd’、Fv及び、抗原に結合することができる一本鎖抗体(天然又は組換え)のscFv等の、その断片の両方を含むことも意味する。抗体又は抗原結合構成要素は、溶液中に存在し得、又は支持体(プレート、ビーズ、磁気ビーズ等)に結合され得る。
抗体又は抗体の断片は、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、又は蛍光測定での検出と共に蛍光標識抗体を用いる有用な免疫蛍光法であり得る。本発明の抗体及びポリペプチドの反応は、当該技術分野で周知のイムノアッセイ法により検出され得る。本発明の抗体は、組織試料又は生検におけるHER2/CBヘテロマータンパク質のin situ検出のために、光学顕微鏡法、イメージング法、免疫蛍光法又は免疫電子顕微鏡法のように、組織学的に用いられ得る。in situ検出は、患者から組織学的標本を取り出し、適切に標識された本発明の抗体を適用することによって達成され得る。
生体試料は、細胞又は細胞粒子又は可溶性タンパク質を固定することができるニトロセルロース若しくは他の固体支持体等の固相支持体又は担体で処理され得る。次いで、支持体は洗浄され、続いて検出可能に標識された抗HER2/CBヘテロマー抗体で処理され得る。これに続いて、未結合の抗体を除去するために、支持体が洗浄される。次いで、前記支持体上の結合標識の量が、従来の手段によって検出され得る。固相支持体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン(polystyrene polypropylene)、ナイロン、変性セルロース、又はポリアクリルアミド等であるが、これらに限定されない、抗原又は抗体に結合することができる任意の支持体が意図される。代替的に、抗原は溶液の状態であり得、抗体は支持体(プレート、ビーズ、磁気ビーズ等)に結合される。
ある特定のロットの抗体の、HER2/CBヘテロマータンパク質に対する結合活性は、周知の方法に従って測定され得る。当業者は、日常的な実験を用いることにより、各測定のための有効且つ最適なアッセイ条件を決定することができる。
一実施形態においては、本発明は、HER2/CBヘテロマーの発現レベルを検出することによる、HER2+乳がんの予後診断のための方法を提供する。
本発明の好ましい実施形態は、前記患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定すること、前記レベルを健康な個人を示す基準又は、より長いか、若しくはより短い、無HER2+乳がん生存期間(HER2+ breast cancer−free survival)を示す基準と比較すること、及びそれによってHER2/CBヘテロマー発現の前記レベルと関連付けられる無HER2+乳がん生存期間の長さを予測することにより、HER2+乳がんに罹患している患者の無HER2+乳がん生存期間の長さを予測するための方法であって、HER2/CBヘテロマー発現のレベルの上昇が、無乳がん生存期間の長さの減少と関連付けられる、方法を提供する。
本発明の更に別の実施形態においては、腫瘍発生の初期段階におけるHER2/CBヘテロマー発現のレベルの測定のための方法が提供される。例えば、Markman,(1997),Basic Cancer Medicineに例示されるように、腫瘍発生の様々な段階が、当業者に周知である。
HER2/CBヘテロマーの発現レベルの測定
HER2/CBヘテロマー発現の測定は、当業者に知られている1以上の方法によって行われ得る。例えば、HER2/CBヘテロマー発現レベルは、共局在プロトコール、共免疫沈降アッセイ、共鳴エネルギー移動技術、近接ライゲーションアッセイを用いて、又はヘテロマーを検出するように設計された特異的プローブの使用によって、測定され得る。
近接アッセイは、分子複合体の生物学的役割の理解のために、及びバイオマーカーの研究において、ますます有用である。例えば、HER2/CBヘテロマー結合組成物、即ち(ie)HER2/CBヘテロマーに特異的に結合する組成物は、HER2/CBヘテロマーの存在及び/又は量を測定するために、多くの異なる検出系と組み合わされ得る。当業者に、HER2/CBヘテロマーの量を測定するために有用であると知られている任意の方法が、本発明に従って用いられ得る。かかる方法としては、Foerster共鳴エネルギー移動(FRET)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、生体分子蛍光補完、近接ライゲーションアッセイ(PLA)及びシンチレーション近接アッセイ(SPA)が挙げられるが、これらに限定されない。
HER2/CBヘテロマー発現のレベルは、HER2/CBヘテロマー結合組成物を用いてHER2/CBヘテロマータンパク質のレベルを測定することによっても検出され得る。HER2/CBヘテロマータンパク質レベルの検出は、化学発光法、組織化学的染色又は生化学的検出(即ち、免疫組織化学アッセイ)、ウエスタンブロット解析、フローサイトメトリー、免疫沈降(又は非抗体剤についてのその均等物)、プラズモン共鳴吸光度測定等が挙げられるがこれらに限定されない、当業者に公知の方法のいずれかを用いて行われ得る。本発明の一実施形態においては、HER2/CBヘテロマータンパク質レベルを検出する方法は、少なくとも1の抗体の使用を含むイムノアッセイ(ELISA等)である。本発明の更に別の実施形態においては、HER2/CBヘテロマー染色は、組織試料、例えばホルマリン固定パラフィン包埋組織切片において、抗HER2/CBヘテロマー抗体を用いて、免疫組織化学によって行われ得、HER2/CBヘテロマーの発現が測定される(determinig)。
患者の分類
本明細書で用いられる場合、用語「乳がん」は、in situの乳管がん腫(乳管内がん腫)、in situの小葉がん腫、浸潤性(invasive)(又は浸潤性(infiltrating))乳管がん腫、浸潤性(invasive)(又は浸潤性(infiltrating))小葉がん腫、炎症性乳がん、トリプルネガティブ乳がん、乳頭のパジェット病、葉状腫瘍、血管肉腫又は浸潤性乳がん腫を含む。いくつかの実施形態において、浸潤性乳がん腫は更にサブタイプに分類される。いくつかの実施形態においては、サブタイプとしては、腺様嚢胞(又は腺嚢)がん腫、低悪性度腺扁平上皮がん腫、髄様がん腫、粘液(又はコロイド)がん腫、乳頭がん腫、管状がん腫、化生性がん腫、微小乳頭がん腫又は混合がん腫が挙げられる。好ましくは、本明細書で用いられる場合、該用語は、HER2+乳がんを指す。
用語「乳がんに罹患した患者」は、ヒト被験体が、本明細書で定義された乳がんを有すると診断されていることを意味する。
患者は、患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを、基準と比較することによって、分類され得る。例えば、試料中のHER2/CBヘテロマー発現レベルを測定した後、測定されたレベルが基準と比較される。この基準は、患者の生体試料中のHER2/CBヘテロマーの発現のレベルを評価するために用いられるHER2/CBヘテロマーの発現のレベルである。例えば、一実施形態においては、患者試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルが、基準のレベルよりも高い場合、患者試料は、HER2/CBヘテロマー発現のレベルが上昇していると考えられる。逆に、別の実施形態においては、試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルが、基準よりも低い場合、試料は、HER2/CBヘテロマー発現のレベルが低いと考えられる。
別の実施形態においては、患者に、ある特定の生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現と関連付けられる「スコア」が与えられ得る。乳がんの診断又はモニタリングの間に、試料が「スコア化」され得る。スコア化は、生体試料中のHER2/CBヘテロマーの発現のレベルによって判定され得る。一実施形態においては、生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルの上昇は、比較的低いスコアが与えられる低レベルのHER2/CBヘテロマー発現と比較して、高いスコアを与えられる。スコア化は、免疫組織化学による試料の視覚的検査によっても判定され得る。別の実施形態においては、より定量的なスコア化は、例えば、(i)染色の強度及び(ii)採取される染色(「陽性」)細胞の割合といった、2以上のパラメータを測定することを含む。これらの複数のパラメータに基づいて、陽性染色のレベルの増加を反映するスコアが与えられ得る。
従って、一実施形態においては、患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルと関連付けられるスコアが、基準におけるHER2/CBヘテロマー発現のレベルと関連付けられるスコアと、又は対照として用いられる、HER2/CBヘテロマー発現レベルがないか、低いか、若しくは上昇した細胞と比較され得る。かかる比較は、患者のより良好な予後診断の基礎を提供し得る。例えば、一実施形態においては、本発明の方法は、0〜3+の等級を用いることによりHER2/CBヘテロマー発現のレベルをスコア化し得、ここで0は陰性(検出可能なHER2/CBヘテロマー発現なし)であり、1+及び2+は、弱い及び弱〜中程度の染色とそれぞれ関連付けられ、3+は、10%超の腫瘍細胞における高強度の染色と関連付けられ;スコアが低いほど良好な患者の予後を示す。
種々のレベルのHER2/CBヘテロマーを発現する患者の予後診断は、単変量又は多変量の解析を用いて行われ得る。これらの方法は、1以上の変数とある特定の予後との間に生じ得る相関を判定する。一実施形態においては、方法は、HER2/CBヘテロマー発現レベル(又は別の変数と組み合わせたHER2/CBヘテロマー発現レベル)と、乳がん患者の無病生存期間又は全生存期間との間に生じ得る相関を判定する。これらの解析を行うための、当業者に周知の複数の方法のいずれか1つが用いられ得る。単変量解析の例は、カプラン−マイヤー法又はログランク検定である。多変量解析の一例は、Cox比例ハザード回帰モデル(Cox proportional−hazards regression model)である。本発明の方法は、HER2/CBヘテロマー発現のレベルを、追加の乳がんマーカーと併せて解析することを更に含み得る。Cox比例比(Cox proportional ratio)は、様々なレベルのHER2/CBヘテロマー発現を有する患者のために、無病生存期間及び全生存期間についてのハザード比(hazard ration)又は危険率(risk)を提供する。
カプラン・マイヤーの方法を用いた生存解析は、がん治験における使用に推奨される統計的手法である。それは、研究への患者の採用後、その生存期間の分布を解析することによって適用される。該解析は、これらを、採用後一定の時間まで依然生存している患者の割合の観点から表す。グラフ的観点からは、時間に対する、生存患者の割合のプロットは、特徴的な減少(指数関数的であることが多い)を有し、曲線の勾配が、調査されている治療の有効性を示している。生存曲線が緩やかなほど治療の効果が高い。カプラン−マイヤー解析は、2つの異なる治療と関連する生存曲線間の差異の統計的有意性を試験するために用いられ得る。
一実施形態においては、患者から得られた試料中のHER2/CBヘテロマーの発現のレベルが測定され、基準と比較された後、次いで、患者は、特定の無病生存期間又は全生存期間が生じ得る群に分類される。次いで、患者について、生じ得る無病生存期間又は全生存期間が、その群中の患者について生じ得る無病生存期間又は全生存期間に基づいて評価される。例えば、患者から得られた生体試料は、基準と比較してHER2/CBヘテロマー発現のレベルが上昇していると判定され得る。次いで、この患者は、HER2/CBヘテロマー発現のレベルが上昇した一群の患者に分類される。本発明によれば、HER2/CBヘテロマー発現のレベルが上昇した群の患者の無病生存期間又は全生存期間の長さが減少することが発見されたので、がんに罹患した特定の患者は、無病生存期間又は全生存期間の長さが減少していると考えられる。
キット
本発明の検出方法は、望ましくは、従来の任意の試験キットの様式で行われる。例えば、イムノアッセイは、固体捕捉、競合、又はサンドイッチイムノアッセイであり得る。
固相捕捉(solid phase capture)イムノアッセイ試験キットは、HER2/CBヘテロマーに結合することができ、検出を可能にする標識を有する抗体と、固体支持体とを含む。固体支持体は、試験キットの一部として販売か、又はそれから分離のいずれかがされ得る。本発明の検出方法において利用される場合、抗体は試験試料と接触させられる。複合体が支持体に結合するように、生じた混合物が固体支持体と接触させられる。未結合物質の除去後、次いで抗体が検出され得る。
本発明の特に好ましい形態においては、HER2/CBヘテロマー抗体と試験試料との混合物が、アフィニティーマトリックスと接触させられ、複合体がアフィニティーマトリックスに結合し得る。未結合物質の除去後、複合体がアフィニティーマトリックスから溶出され、固体支持体に接触及び吸着させられる。アフィニティーマトリックスは、複合体に結合し、それにより、複合体を試験試料−HER2/CBヘテロマー抗体混合物の残りからサンドウィッチ及び競合様式で分離するためにも用いられ得る。それぞれにおいて、その後、複合体はアフィニティーマトリックスから溶出され、固体支持体との吸収的接触に供され得る。
イムノアッセイ試験キットのいずれかの様式で用いられる固体支持体は、かかるキットにおいて従来利用されている任意の水不溶性、水懸濁性の固体材料であり得る。好適な例は、ポリマー膜、プラスチック若しくはガラスビーズ、試験管、又はマイクロタイタープレートである。複合体中の結合物質は、共有結合又は吸着によって固体担体に結合され得る。試験管又はマイクロタイタープレートが利用される場合、かかる結合はこれらの担体の内壁で起こる。
競合及びサンドイッチイムノアッセイ試験キットにおいては、キットは、既に固体支持体に結合した結合物質を含んで商品化され得る。固体支持体表面へのかかる適用は、結合物質を固体支持体と接触させ、結合物質の第一の領域が固体支持体に結合するのを可能にするのに十分な時間、かかる接触を維持することによって達成される。典型的には、かかる接触は1時間〜18時間、好ましくは4時間を要する。非接着結合物質は、次いで、不溶化した結合物質(即ち、固体支持体に結合しているもの)から分離され、次いで固体支持体が洗浄される。
イムノアッセイ試験キットの3様式すべてにおいて、試験試料及びHER2/CBヘテロマー抗体は互いに接触させられ、結合を可能にするのに十分な時間インキュベーションさせられる。通常、かかる結合には2時間を要する。かかる接触の後に、試験試料及びHER2/CBヘテロマー抗体混合物を固体支持体と接触させることが望ましい。固相捕捉アッセイのためには、複合体は、固体支持体に直接結合するが、競合アッセイ又はサンドイッチ免疫アッセイにおいては、複合体は固体支持体に間接的に(即ち結合物質を介して)結合する。本発明のイムノアッセイ試験キットの3様式全てについて、インキュベーションのための十分な時間を可能にした後、残留試験試料及びHER2/CBヘテロマー抗体混合物が、固体支持体に結合した不溶化物質から分離される。次いで、不溶性物質が洗浄される。
本発明の教示を特定の問題又は環境に適用することは、本明細書に含まれる教示を考慮すると、当業者の能力の範囲内にあることが理解されるべきである。本発明は、以下の非限定的な例によってより十分に説明される。
実施例1: HER2+乳がんにおける予後診断ツールとしてのHER2/CB ヘテロマー発現
1999年から2013年の間、12 de Octubre Hospital(Madrid,Spain)で手術された症例に対応する57のHER2+乳がん試料を含有する組織マイクロアレイ(TMA)において、HER2−CBヘテロマーの発現を解析した。発現解析は、Duolink II in situ PLA検出キット(Olink、Bioscience、Uppsala、Sweden)を用いて、近接ライゲーションアッセイにより行った。試料を共焦点顕微鏡下で観察し、赤色蛍光シグナル(ヘテロマーに対応する)をImageJソフトウェアで処理した。試料をHER2−CBヘテロマー発現によってランク付けし、最良のカットオフを手動で選択した。
我々は、まず、HER2、CB及びHER2−CBヘテロマーについての染色確認(staining control)を行った(図1参照)。我々は、次に、PLAシグナル(桃色ドット数/PLA陽性細胞数)により試料をランク付けし、患者の予後に関連する臨床パラメータとの潜在的な関連性を解析した。図2に示すように、我々は、ヘテロマー高発現と、より短い局所無再発生存期間との間の有意な相関を見出した。
実施例2: THC作用のメカニズム
我々は以前に、THCが、抗腫瘍応答をもたらす濃度で用いられると、BT474細胞中のHER2−CBヘテロマーを破壊することを報告した。実施例1で検討したように、我々は、近接ライゲーションアッセイ(PLA)及び生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイを用いてこれらの効果を観察した。我々は、同一細胞株において、付随するHER2の分解も観察したが、これは、THCが、HER2−CBヘテロマーを破壊し、HER2を不安定化することによって、その抗増殖効果を誘導することを示唆している。
我々は、THCが、2つの異なるHER2+乳がん細胞株(BT474及びHCC1954)において、別の技術(共免疫沈降、co−IP)によってHER2−CBヘテロマーを破壊することを確認した。結果を図3に示す。
我々は、SR2(選択的CBアンタゴニスト)が、THCに誘導されたヘテロマー破壊を阻止することを示すHCC1954細胞においても、PLAを実施した。これらの観察により、THCがCBに作用することによってヘテロマーを破壊することが確認される(図4)。
我々は、以前に、BT474細胞におけるTHC処理時のHER2の分解を観察した。我々は今回、ウエスタンブロットより、この観察をHCC1954細胞において確認した(図5)。
我々は、THCが、HER2−CBのみならずHER2−HER2二量体(HER2+乳がんにおいて腫瘍進行を促進する非常によく知られたシグナル伝達複合体である)も破壊することを示すPLAを行った。これらのデータを図6に示す。
材料と方法
細胞、細胞培養、及びトランスフェクション
BT474及びHCC1954ヒト乳腺がん腫細胞を、10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI培地中で維持した。
In Situ近接ライゲーションアッセイ(PLA)
細胞をガラスカバースリップ上で増殖させ、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、20mmグリシンを含有するPBSで洗浄し、0.05%Triton X−100を含有する同じ緩衝液で透過処理し、PBSで連続的に洗浄した。Duolink in situ Probemarker kit(Olink,Bioscience,Uppsala,Sweden)を用いて、HER2−CBRヘテロマーを検出した。予熱した湿度室中で、ブロッキング溶液と37℃で1時間インキュベーション後、細胞を、等量の、プラスPLAプローブに直接結合した抗CBウサギ抗体(1:50,Cayman Chemical,Ann Arbor,MI)と、マイナスPLAプローブに直接結合した抗HER2ウサギ抗体(1:50,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,US)との混合物を含む抗体希釈培地中で、一晩インキュベーションした。細胞を、室温で洗浄緩衝液Aで洗浄し、ライゲーション溶液(Duolink II ligation stock,1:5,及びDuolink II ligase,1:40)と、予熱した湿度室中で37℃で30分間インキュベーションして2つのDNAプローブのアニーリング及びライゲーションを誘導した。蛍光ヌクレオチドを含有するDuolink II detection reagents red kitを用いて増幅を行った。洗浄緩衝液Bを用いて室温で徹底的に洗浄した後、細胞を、DAPIを含む封入剤を用いて封入した。Leica SP2共焦点顕微鏡(Leica Microsystems,Mannheim,Germany)の下で試料を観察した。赤色蛍光画像をImageJソフトウェアで処理した。PLAは、両方の受容体が、2つの異なる抗体−DNAプローブをライゲーション可能にするよう、十分に近接している(17nm未満)ことを要する(Soderberg et al.,(2008),Methods.,45:227-232;Trifilieff et al.,(2011),BioTechniques,51:111-118)。受容体が十分に近接している場合、点状の蛍光シグナルが共焦点顕微鏡法によって検出され得る。
ウエスタンブロッティング
プロテアーゼインヒビター(ペプスタチン、ロイペプチン、アプロチニン、キモスタチン、アンチパイン、及びフェニルメチルスルホニルフルオライド)のカクテル及びホスファターゼ阻害剤(NaVO及びNaF;Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)を含有するRIPAバッファー(50mM Tris,150mM NaCl,1%NP−40,0.5%デオキシコール酸ナトリウム,及び0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)でHCC1954細胞を処理した。ドデシル硫酸ナトリウム−10%ポリアクリルアミド還元ゲルによって分離されたタンパク質を、ポリビニリデンジフルオライド膜(Bio−Rad Laboratories,Hercules,Calif.)に転写した。5%スキムミルク及び1%ウシ血清アルブミンでブロッキングの後、膜を、1:500に希釈した抗ErbB2抗血清(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,California)と、室温で3時間インキュベーションした。結合した抗体を、ペルオキシダーゼ標識抗ウサギ免疫グロブリンG(IgG)ヤギ抗体(Zymed Laboratories,South San Francisco,Calif.)で可視化した。ペルオキシダーゼを可視化するために、化学発光検出システム(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,N.J.)を用いた。1:5,000に希釈した抗アクチンモノクローナル抗体(MAb;Boehringer Mannheim,Indianapolis,Ind.)、続いて1:4,000に希釈したペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(Zymed)を用いて対照を実施した。
共免疫沈降アッセイ
Fugene HD Transfection Reagent(Promega,Madison,WI)を用いて、HCC1954及びBT474細胞を、pcDNA3−HA−hCB又は対応する空ベクター(pcDNA3)で一過的にトランスフェクションした。トランスフェクション後48時間で、細胞を3μM THC又は対応するビヒクル(DMSO)で4時間処理し、共免疫沈降のための特定の緩衝液(1mMベンズアミジン及び0.1mM PMSFを新たに添加した、40mM Hepes pH7.5,120mM NaCl,1mM EDTA,10mMピロリン酸ナトリウム,10mMグリセロリン酸ナトリウム,50mMフッ化ナトリウム,0.5mMオルトバナジン酸ナトリウム,0.3%CHAPS)を用いて溶解した。5μLプロテインG−セファロースに共有結合した5μgの抗ErbB2抗体(Neu C−18,Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,US)を用いて、細胞溶解物(1mg)を免疫沈降させた。免疫沈降後、タンパク質をSDS−10%ポリアクリルアミド還元ゲルにより分離し、PVDF膜に転写した。TBST中5%w/v脱脂粉乳でブロッキング後、膜を、抗ErbB2抗体(1:1000)及び抗HA抗体(1:1000,Cell Signaling Technology,Danvers,MA)と4℃で一晩インキュベーションした。結合した抗体を、ペルオキシダーゼ標識抗ウサギ免疫グロブリンG(IgG)ロバ抗体(GE Healthcare,UK)で検出した。ペルオキシダーゼ活性を検出するために、化学発光検出システム(Bio−Rad,California,EEUU)を用いた。

Claims (15)

  1. 乳がんに罹患した患者の予後診断の方法であって、前記患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定することを含む、方法。
  2. 乳がん患者の全生存期間の長さを予測する方法であって、前記患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定すること;前記レベルを、健康な個人を示す基準又はより長いか、若しくはより短い全生存期間を示す基準と比較すること;及びそれによりHER2/CBヘテロマー発現の前記レベルと関連付けられる全生存期間の長さを予測することを含む、方法。
  3. 乳がん患者の局所無病生存期間の長さを予測する方法であって、前記患者から得られた生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定すること;前記レベルを、健康な個人を示す基準又はより長いか、若しくはより短い全生存期間を示す基準と比較すること;及びそれによりHER2/CBヘテロマー発現の前記レベルと関連付けられる局所無病生存期間の長さを予測することを含む、方法。
  4. 被験体における乳がんの診断又は予後診断の方法であって、被験体からの生体試料を準備すること;生体試料中のHER2/CBヘテロマー発現のレベルを測定すること;及び発現レベルが基準よりも高い場合に乳がんを診断又は予後診断することを含む、方法。
  5. HER2/CBヘテロマーの発現レベルを測定する工程が、HER2/CBヘテロマー結合組成物を接触させる工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. HER2/CBヘテロマーの発現レベルを測定する工程が、共局在プロトコール、共免疫沈降アッセイ、共鳴エネルギー移動技術、近接ライゲーションアッセイ及びヘテロマーを検出するように設計された特異的プローブの使用からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. HER2/CBヘテロマーの発現レベルを測定する工程が、近接ライゲーションアッセイ(PLA)又は生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. HER2/CBヘテロマー結合組成物が、HER2/CBヘテロマーに特異的に結合することができる抗体を含む、請求項5に記載の方法。
  9. HER2/CBヘテロマーを検出することができる薬剤及び使用のための説明書を含む、キット。
  10. HER2/CBヘテロマーを検出することができる薬剤及び使用のための説明書を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において用いるためのキット。
  11. 前記薬剤がHER2/CBヘテロマー結合組成物である、請求項9又は請求項10に記載のキット。
  12. 前記HER2/CB結合組成物が、HER2/CBヘテロマーに特異的に結合することができる抗体を含む、請求項11に記載のキット。
  13. 前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項12に記載のキット。
  14. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項12に記載のキット。
  15. 前記薬剤が、HER2/CBヘテロマーを検出するように設計された特異的プライマー又はプローブである、請求項9〜14のいずれか1項に記載のキット。
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