搬送装置10は、アテローム硬化性閉塞疾患を治療するための処置の一部として用いることができる。搬送装置は、タックなどの1または複数の管腔内装置2をプラーク蓄積部位に搬送するのに用いることができる。タックは部位を安定させ、および/または、プラーク片を血流の邪魔にならないように保つことができる。本願では搬送装置および方法を、おもに血管の処置に関して説明するが、当然ながら体の他の部分の治療にも用いることができる。
図1および図2は、複数の管腔内装置2を順次搬送するのに用いることができる搬送装置10の一実施形態を示す。搬送装置10はアテローム硬化性閉塞疾患治療の処置に用いることができるが、これらの処置に限られない。
図1の搬送装置10は図示の簡略化のために短縮しており、先端4および基端6を強調している。基端6は、外科医またはその他の医療従事者が、医療処置中に保持することができ、1または複数の管腔内装置またはタック2の搬送制御に用いられる。図2はそれぞれ専用の搬送プラットフォーム8に位置する6つの管腔内装置2を有する先端4を示す。図1と図2を比べると、図2では先端から外鞘12が引き戻されていることが分かる。このため搬送プラットフォーム8と各管腔内装置2が見えている。管腔内装置2は好ましくは自己拡張型で、圧縮位置で示されており、搬送プラットフォーム内に納まる様子を表している。通常の使用時には、この位置にあるときの管腔内装置2は外鞘12により覆われている。後で詳述するように、所望の治療位置で一度に1つずつ管腔内装置2を展開するように順序立てて外鞘12を引き戻すことができる。
たとえばセルを1列(図3および図3A)または2列のみ有する比較的小さな管腔内装置2を治療位置に正確に、重ならないよう適切な間隔で搬送することができる。図3Aは図3のタックの、平坦化した部分を示す。ブリッジ部材18により接続された波状ストラット16の2つの同心リングによりセル14が1列形成されることが分かる。ブリッジ部材18は一対のアンカー20とX線不透過性マーカ22を有する。管腔内装置は2以上のセルからなってもよく、または、従来技術で知られる他の構造からなってもよい。複数の小型管腔内装置2を、単一または複数の病変部の治療に用いることができる。これにより、必要な保持力を与えつつ、体内への異物量を最小限に抑えることができる。管腔内装置および搬送装置の様々な実施形態は、本出願人に関連の、米国特許出願公開第2012/0035705号(2011年7月8日出願の特許出願第13/179,458号)明細書(IVAS.002P4)、および、米国特許出願公開第2013/0144375号(2013年1月24日出願の特許出願第13/749,643号)明細書(IVAS.002P6)に詳述されており、両文献は参照により本願に組み込まれ、本明細書の一部をなす。
言うまでもなく、この搬送装置および方法は、より大きな装置を含む他の管腔内装置2に用いてもよく、セルを1、2列のみ有する管腔内装置2との使用に限られない。
次に、図1に戻って、図示した実施形態の基端6について説明する。搬送装置10は、外鞘12と、基端ハウジング24と、内軸26を備えることができる。外鞘12は、押出成形ポリマーと、押出成形ポリマー中に埋設した編組ワイヤとの積層体として構成することができる。柔軟性や硬度は、編組ワイヤの本数や編みパターンおよび編みピッチにより制御することができる。別の実施形態では、外鞘が、金属またはプラスチックなどのハイポチューブからなっていてもよい。外鞘の柔軟性や硬度は、ハイポチューブ長手方向の螺旋状切込みの角度や頻度など多くの特性により制御することができる。外鞘はまた、先端またはその付近に、X線不透過性(RO)マーカ28を備えていてもよい。実施形態によっては、X線不透過性マーカ28は、最先端から離間した環状バンドでもよい。
図示するように、外鞘12は編組シャフトであり、基端ハウジング24は、張力緩和部30を介して外鞘に接続する分岐ルアーである。張力緩和部30はどのような形態でもよく、たとえばポリオレフィンや他の類似の材料からなる。
分岐ルアー24は内軸26を収容するメインアームとサイドアームとを有する。分岐ルアーは外鞘の基端に設置することができる。サイドアームは、空気を押し出して外鞘と内軸との間の空間の潤滑性を高めるのに使用されるフラッシュポートを有する。
内軸26と外鞘12との間の空間の基端を収容し密閉するため、Tuohy−Borstアダプタ、止血弁、または他の密封構造32を分岐ルアー24の基端または内部に設けることができる。外鞘と内軸の固定関係を確保するため、Tuohy−Borstアダプタがねじロックなどの係止部をさらに提供してもよい。これにより外科医は先端を適切に設置でき、タックを早まって展開してしまうことがない。
内軸は、基端ルアーハブ34と展開基準マーク36とともに示されている。展開基準マーク36は、それぞれの展開基準マーク間の間隔が搬送プラットフォームの特徴間の間隔と同一になるように搬送プラットフォーム8に対応させることができる。たとえば、展開基準マーク間の間隔は、搬送プラットフォームの中心と中心の間の距離と同一にすることができる。
実施形態によっては、最先端の展開基準マーク、または、幅が広かったり色が違うなど他と異なるマークが、主要位置またはホーム位置を示すものとしてもよい。たとえば、他より幅が広い展開基準マークを、分岐ルアー24または止血弁32の基端に位置合わせることができる。これにより、外科医は、外鞘が、ノーズコーン38近辺の、完全に内軸26を覆う位置にあることを知ることができる。実施形態によっては、この位置合わせによって、外鞘上のROマーカ28が内軸26の先端上のROマーカに揃っていると解釈することもできる。
実施形態によっては、1または複数の展開基準マーク36が、システム内のタックの数を表していてもよい。したがって、タックを1つ放出すると、展開基準マーク36が隠れるので、外科医には、残りの展開基準マークが、使用できる残りのタックの数に対応することが分かる。このような実施形態では、分岐ルアー24または止血弁32の基端を、2つの基準マークのほぼ中間まで前進させ、展開したことを示すことができる。また当然ながら、搬送装置はハンドルまたはトリガ機構を有していてもよく、これらはたとえば2015年1月29日出願の米国仮出願第62/109550号明細書(Dkt.No.IVAS.025PR)、および、米国特許第9,192,500号明細書(Dkt.No.IVAS.025A)に記載されており、両文献は参照により本願に組み込まれ、本明細書の一部をなす。
次に図4を見ると、搬送装置10の先端4の詳細図が示されている。図示の実施形態の特徴には、先端の柔軟なチップ38を有する内軸26が含まれる。チップ38はテーパ状のノーズコーンとすることができる。ノーズコーン38は、組織を無外傷で変位させ、血管系を通して搬送装置を案内するのに役立つ拡張構造として機能する。チップ38自身がX線不透過性であってもよいし、チップ内または近傍にX線不透過性要素27を組み入れてもよい。基端ルアーハブ34(図1)まで内軸26内を貫通するガイドワイヤルーメン40が見えている。ガイドワイヤルーメン40は、内部のガイドワイヤを収容し前進させるよう構成されている。
搬送プラットフォーム8の各部も示されている。搬送プラットフォーム8は、図示する実施形態では同一であるが、他の実施形態では別々の搬送プラットフォーム間でサイズや構造が異なっていてもよい。搬送プラットフォーム8内に、収縮または圧縮されたタック2が示されている。
図2および図4に示すように、1又は複数の搬送プラットフォーム8を、搬送装置10の先端4に隣接させて内軸26上に配置することができる。搬送プラットフォーム8はそれぞれ、一対の環状押込バンド44の間に延在する凹部42を備えることができる。図5は搬送プラットフォーム8Aの一実施形態における搬送装置の断面図を示す。図示する実施形態では、第1プラットフォーム8Aの基端側環状押込バンド44Aは、そのすぐ基端側に位置するプラットフォーム8B(一部のみ図示)の先端側環状押込バンド44Aでもある。環状押込バンド44は、凹部42において、搬送プラットフォームに比べて大きな外径を有する。実施形態によっては、凹部とは、1または2の環状押込バンドおよび/または内軸26上のその他特徴に隣接または介在する小径部であると定義することができる。
1または複数の環状押込バンド44は、X線不透過性マーカバンドであってもよい。たとえば、基端および先端側X線不透過性マーカバンド44を設けて、標準的な可視化技術によりプラットフォーム8の両端を視認可能にしてもよい。環状マーカバンド44はどのような形態でもよく、たとえば1または複数のタンタル、イリジウム、プラチナ材料を含むことができる。実施形態によっては、押込バンド44は長さ4mmで、それらの間に6.75mmの凹部が存在していてもよい。6.5mmのタックを押込バンド44間に位置させることができる。実施形態によっては、押込バンドは、凹部および/またはタックの50〜70%のサイズとすることができる。実施形態によっては、押込バンドは約60%である。他の実施形態では、押込バンドのサイズは、凹部および/またはタックの10〜20%といった小さなものでもよい。特に、タックが長い場合はこの可能性がある。実施形態によっては、押込バンド44の少なくとも基端が、搬送装置を後退させる間に展開後のタックに引っかかる可能性を低くするような半径を有することができる。
凹部とタックの長さの差を小さくすると、特にタックがセルを1列または2列しか有していない場合は、タックの設置精度を高めることができる。実施形態によっては、凹部をタックより1、0.5、0.4、0.3、0.25、または0.2mm未満長くすることができる。タックは、長さ4、5、6、6.5、8、10、または12mmなど様々なサイズのいずれでもよい。
外鞘12は、商標名PEBAXとして市販されている熱可塑性エラストマ(TPE)であるポリエーテルブロックアミド(PEBA)からなることができる。実施形態によっては、外鞘12が、TEFLON(登録商標)などのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる、さらに薄い内側ライナーを有していてもよい。X線不透過性マーカバンド28またはその他X線不透過性材料がある場合はこれら2つの層の間に位置させればよい。他の実施形態では、X線不透過性マーカバンド28または他のX線不透過性材料を、外鞘12の1または複数の層内に埋設してもよい。X線不透過性マーカバンド28は幅が0.5mm〜5mmの範囲で、最先端のチップ52から0.5mm〜10mm基端側に位置させることができる。実施形態によっては、X線不透過性マーカバンド28が幅1mmで、最先端のチップ52から3mm基端側にあることができる。
図5の断面から、2つの環状バンド44間の内軸26外周にスリーブ46が位置していることが分かる。実施形態によっては、搬送プラットフォーム8が、内軸26とは異なる材料からなる、または異なる材料特性を有し、内軸26を囲むスリーブ46を備えることができる。実施形態によっては、スリーブが、粘着性を有する材料、グリップ、溝パターン、および/または、タックが搬送プラットフォーム内にとどまるのに役立つ他の特徴を提供する。実施形態によっては、スリーブがPEBAからなっていてもよい。いくつかの実施形態に係る内軸は、PTFE/ポリイミド複合材からなる押出成形複合体である。スリーブは、内軸および/または押込バンド44より柔らかい(押込硬度が低い)ものとすることができる。これは、たとえ類似の種類の材料でできていても当てはまる場合がある。実施形態によっては、スリーブは、粘着性を有する材料、グリップ、溝パターン、および/または、外鞘12を引き戻すとき(たとえば内軸に対して長手方向の位置に)タックが所定位置にとどまるのに役立つ他の特徴を有する材料からなることができる。これにより展開中の制御度合が高まり、タックが搬送プラットフォームの先端から飛び出してしまう可能性(業界では「スイカの種まき」として知られる現象)を低減することができる。場合によっては、外鞘を部分的に取り除いて管腔内装置を一部露出させ、管腔内装置が完全に放出される前に、搬送装置にしっかり保持されつつも部分的に拡張させることができる。
スリーブ46は、タック2が搬送プラットフォーム8内にある状態で、タックと外鞘間に間隙がほとんどまたはまったく無いようなサイズにすることができる。実施形態によっては、スリーブ46は、内軸26と共成形、または内軸26上に押出成形することができる。実施形態によっては、搬送装置10は、1本のスリーブ46が内軸26の長さに渡って延びるよう形成することができる。たとえば、スリーブが、第1搬送プラットフォームから最後の搬送プラットフォームまで延びていてもよい。環状バンド44は、スリーブ46の、他と区別できる部分を囲んでいてもよいし、または、スリーブ46内に格納されていてもよい。実施形態によっては、搬送プラットフォーム8がそれぞれ、凹部42内に位置する別々のスリーブ46を有する。環状バンド44は別材料内に格納されていても、または、まったく格納されていなくてもよい。
図5から分かるように、スリーブ46は、その円形断面がスリーブの一部分または全長にわたって維持される円筒形であることができる。別の実施形態では、スリーブは特殊形状を有し、テーパ形状(図6A〜図6E)、くびれ形状(図6A)、突条(図6B)、くぼみ(図6C)、点突起(図6D)、2以上の異なる直径(図6E)などのうちの1または複数を含むことができる。突条、点突起、くぼみなどの特徴は、複数の異なるパターンやグループごとに位置させてもよい。さらに、スリーブ(図6B〜図6D)、またはスリーブの一部分(図6E)は、凹部全体の長さより短くてもよい。実施形態によっては、スリーブまたは外径の大きい部分の長さがタックの長さと一致していてもよい。たとえばスリーブまたは外径の大きい部分の長さは凹部および/またはタックの3/4、2/3、1/2、2/5、1/3、1/4でもよい。さらに、スリーブまたは外径の大きい部分の長さは、最基端の波状リングなどの波状リング16中のストラット寸法に関連させてもよい。たとえばストラット長または最基端の波状リングの長さの全長、または、4/5、3/4、2/3、または1/2に渡って延びることができる。短いスリーブまたはスリーブの外径の大きい部分は、凹部の基端から先端に向けて延びるのが好ましいが(図6D〜図6E)、凹部内で中心にあっても、先端側に接していても(図6C)、または凹部内のその他位置にあってもよい。
図6Eに示すスリーブは、異なる均一外径を有する2つの部分と、その間の短いテーパ部分を有する。スリーブは熱接合された2つの別部分から形成することができる。テーパ部分も熱接合によって形成することができ、均一外径を有する2つの部分の間は滑らかにつながっている。前述のように、大きい方の均一外径を有する部分は、凹部の基端から先端に向けて延びていると好ましい。この大きい方の外径を有する部分は、その外径は均一でも均一でなくてもよいが、前述のように、凹部全体よりも短い長さに沿って延びることができる。
実施形態によっては、内軸26が、押込部44間に低押込硬度のスリーブ46を有することができる。タック2は波状に縮めてスリーブ46上に置き、外鞘12が縮められたタックを定位置に拘束することができる。スリーブ46と外鞘12間の空隙により、縮められたタック2は内外の要素とわずかな力で嵌り合うことができる。このようにわずかな力で嵌合することで、搬送システムは、展開中に、タックがほぼ完全に剥き出しになるまで、収縮状態のタックを拘束することができるので、タックの先端部分は「花びら」のように開いて血管壁と係合することができ、飛び出る可能性が低減する。
いくつかの実施形態によると、内軸26は、ポリイミド−PEBAからなることができ、低押込硬度のPEBAスリーブ46は押込部44間に熱結合することができる。タック2は波状に縮めてスリーブ46上に置き、内側にPTFE層を有する外鞘12が縮められたタックを定位置に拘束することができる。
図5に戻ると、X線不透過性マーカバンド44のいくつかの実施形態の特徴が示されている。前述のようにスリーブ46は環状バンド44を格納してもよい。これに代えて、他の材料で金属バンドを格納し環状マーカバンド44を形成してもよい。環状マーカバンド44は、ワイヤ48または多数の材料片からなるか、または、X線不透過性を保ちつつ柔軟性を高めるためのスリットを有することができる。実施形態によっては、ワイヤが、内軸26に巻回された螺旋コイルを形成していてもよい。
次に図7A〜図7Cを参照し、いくつかの展開方法を説明する。搬送装置10は、アテローム硬化性閉塞疾患を治療するための処置の一部として用いることができる。搬送装置は、タックなどの1または複数の管腔内装置2をプラーク蓄積部位に搬送するのに用いることができる。タックは部位を安定させ、および/または、プラーク片を血流の邪魔にならないように保つことができる。
タックは自己拡張型であると好ましい。したがって、外鞘12を引き戻してタック2が現れると、タックを自己拡張により搬送装置10から展開させることができる。外鞘を少しずつ引き戻して、タックを血管内の所望の位置に順次搬送することができる。実施形態によっては、この少しずつの移動量が展開基準マーク36に対応していてもよい。展開基準マーク36は少なくともタックの長さ分の間隔で離間させることができ、各タックを、通常の長いステントのように徐々に放出するのではなく一気に展開することができる。このためタックをより正確に設置することができる。
バルーン血管形成術は、体内のあらゆる血管床における閉塞または狭窄化した血管の開口方法として受け入れられている。バルーン血管形成術はバルーン血管形成カテーテルを用いて行われる。バルーン血管形成カテーテルは、カテーテルに装着される葉巻型の円筒形バルーンを備える。バルーン血管形成カテーテルは、経皮刺入または動脈切開により形成される離れたアクセス部位から動脈内に設置される。カテーテルは血管内で、カテーテルの進路を案内するワイヤ上を通される。カテーテルの、バルーンが装着された部分は、治療が必要な動脈硬化性プラークの位置に設置される。バルーンは、閉塞性疾患の進行前の元の動脈径に合ったサイズまで膨張させる。場合によってはバルーンが、薬剤や生物学的製剤でコーティングされていたり、またはその他、これらを組織に投与できるよう構成されている。バルーンを膨張させると、プラークは破壊される。プラーク内に亀裂面が形成され、拡張するバルーンとともにプラークが拡径する。プラークの一部分が他の部分より拡張に対する抵抗性が高いことがよくある。このようなときはバルーンに送給する圧力を増加し、この結果、バルーンは所期のサイズまで完全に拡張する。バルーンは収縮されて取り出され、動脈の該当部分は再検査される。バルーン血管形成術の工程は、無制御プラーク断裂術の1つである。治療部位の血管腔は通常やや大きいが、常に確実にそうとは限らない。
バルーン血管形成術に伴いプラーク破損が原因で形成される亀裂面の中には解離部を形成し得るものがある。一般に、プラークまたは組織の一部が動脈から持ち上がり、動脈に完全に接着しておらず移動または離間し得るときに解離が起きる。解離により断裂したプラークまたは組織の一部は血流中に突出する。プラークまたは組織の一部が血流方向に完全に浮き上がると、流れを阻害、または血管の急激な閉塞が起きる可能性がある。閉塞を防止し、後遺症の狭窄を消散するためにはバルーン血管形成術後の解離の処置が必要であることが証明されている。また、状況によっては、ステントや他の管腔内装置などの金属製保持構造を留置することは、血管形成術後の動脈を開いておく、および/または、解離物質を強制的に血管壁に再び戻し、適切な血流腔を形成するために有利であることが証明されている。
タック2などの管腔内装置を展開するには、様々な搬送方法および装置を使用することができ、そのうちいくつかを以下で説明する。たとえばタックは血管内挿入により血管内に搬送することができる。プラーク用タックの様々な実施形態の搬送装置はそれぞれ異なっていても同一でもよく、特定のタックを搬送する用に特別に設計された特徴を有していてもよい。タックと設置方法は、(バルーン拡張などの)搬送メカニズムの拡張力、および/または、波状リングの拡張力を利用して、タックを血管内の定位置に移動させ、血管内で拡張状態へと放出する一般的な技法を使う様々なやり方で設計することができる。タック展開方法は、展開前に、外鞘上と展開対象のタック上のX線不透過性マーカを揃える工程を含むことができる。
図7Aを参照すると、外鞘12を有する搬送装置10が第1の展開前状態で示されている。複数のタック2を搬送装置10内で外鞘12により圧縮状態で保持することができる。実施形態によっては、搬送装置への装填を容易にするために、タック2は圧縮状態で急速冷凍されている。タックは前述のように搬送装置の所定の長さに渡って延びることができる。
搬送装置は患者の血管系内でガイドワイヤ50上を治療部位まで前進させることができる。ガイドワイヤ50は、血管形成術バルーンの位置決めに使われたガイドワイヤなど、処置の前段階で使ったものと同じガイドワイヤでもよい。治療位置に位置決めした後、外鞘12を第2展開前位置まで引き戻す、または後退させる(図7B)ことができる。第2展開前位置は、タックの放出前に調整が必要となるような伸びやねじれなどを考慮するために外鞘の位置を調節するのに利用することができる。第2展開前位置では、外鞘の先端52は、展開対象のタックの先端または、そのやや先端側に位置させることができる。
いくつかの実施形態によれば、外鞘12はX線不透過性マーカバンド28を有することができ、タックも1または複数のX線不透過性マーカ22を有することができる。X線不透過性マーカ22はタック外周に1列に位置させることができる。タック先端からX線不透過性マーカ22までの距離Lは、外鞘12の先端52からX線不透過性環状マーカバンド28までの距離と同一としてもよい。実施形態によっては、この距離は、マーカ22とマーカバンド28の中心までの距離である。実施形態によっては、外鞘上の長さLは、タック上の長さLをわずかに超えることがなくとも、少なくとも同一である。外鞘にはそれ以外のX線不透過性マーカは設けなくてもよい。さらに、タックにも、それ以外のX線不透過性マーカやX線不透過性マーカ列は設けなくてもよい。したがって、外鞘は、少なくともタック2の最先端からX線不透過性マーカ22またはX線不透過性マーカ列までの距離分だけ外鞘12の最先端52から離間したマーカバンド28を先端に1つだけ有することができる。図示する実施形態では、X線不透過性マーカ22またはX線不透過性マーカ列が、装置の中央に位置している。X線不透過性マーカは、波状ストラット16の隣接するリングを接続するブリッジ部材18上にも位置している。実施形態によっては、X線不透過性マーカ22またはX線不透過性マーカ列が、タックの最先端から少なくとも波状ストラット16の1リング分だけ離れていることができる。図示する実施形態では、X線不透過性マーカ22またはX線不透過性マーカ列がタック2の最先端ではなく、そこから離れている。
タックと外鞘上にそれぞれ対応するX線不透過性マーカ22、28を有することで、外科医は、マーカ22、28をタック展開前に揃えることができる。さらに、外科医は、位置を合わせたマーカを、所望の治療部位に揃えることができる。当然ながら、これらの位置合わせは標準的な可視化技術を用いて行なうことができる。前述のように、内軸上の環状押込バンド44もX線不透過性であることができる。実施形態によっては、押込バンド44がどれも同じで、かつ、可視化した際に外鞘上のマーカとタック上のマーカの双方と異なって見えるようにすることができる。したがって外科医には、すべてのマーカがどこにあり、どれがどのマーカであるかがはっきり分かる。たとえば、押込バンド44を、外鞘上のマーカ28とタック上のマーカより軸方向に長くすることができる。さらに、搬送装置上のマーカはバンドにし、タック上のマーカは点状にしてもよい。
図7Bを見ると、外鞘12上のマーカ28が第1タック2上のマーカ22に揃えられ、外鞘の先端は第1タックの先端に位置していることが分かる。搬送装置は今、X線不透過性マーカを所望位置の中心に合わせるなどにより、治療する病変部に対して位置決めすることができる。外鞘はその後に引き戻して、タックを所望位置に設置することができる。
実施形態によっては、搬送装置が、装置の中央にマーカを1列有するタックの長さの少なくとも半分の長さ分、先端から基端側に位置するマーカバンドを外鞘上に有することができる。展開方法は、外鞘上のマーカと搬送対象のタックとが揃うまで外鞘を引き戻し、次いで、タックの放出前に、これら2つのマーカを治療対象の病変部(またはその他治療部位)の中央に揃える工程を含むことができ、外鞘をさらに引き戻すことでタックは放出される。当然ながら、押込バンド44上のマーカも、展開前の搬送装置の位置合わせに役立つよう利用することができる。
この方法を繰り返し、複数のタックを搬送することができる(参照のみを目的として図7Cにタックを圧縮状態で示す)。タック展開の合間に搬送装置をまったく別の病変部または治療部位に移動させてもよいし、または、単に、設置後の隣接タック間に確実に空間が存在するように再位置決めしてもよい。
前述のように実施形態によっては、搬送装置からのタック放出と同時にタック全体が設置されるようにすることができる。さらに、血管の治療部分内の先端から基端までの配置で複数のタックを所望通りに設置することもできる。
実施形態によっては、図3および図3Aに示すような拡張型タックが、幅広い範囲の血管腔径に対して比較的一定の力を加えるもので、これにより、搬送カテーテル1本によって複数のタックを様々な寸法の血管に展開させることができるようにすることができる。理想的には、タックは寸法が2〜8mmの範囲の血管を治療するよう設計することができるが、その他の寸法のタックを搬送することも可能である。タックが血管に加える力のばらつきは、3mmの拡張域で5N以下とするのが望ましい。加えられる力のばらつきが3mmの拡張域で1.5N以下であるとさらに理想的である。
血管内にステントを設置する代わりに薬剤をコーティングしたバルーンが使われる場合がある。バルーンは血管内の狭窄部を拡張させることができ、薬剤は、動脈の再狭窄化につながり得る、膨張後の炎症反応を抑制するのに役立つ。バルーンと薬剤の組合せは、従来から短期的、長期的足場を設けるのに用いられてきた典型的なステントの挿入に代わり得るという臨床的証拠がある。薬剤コーティングしたバルーンは、挿入物が長期間血管内に留置されないという点で望ましい。しかし、薬剤コーティングバルーン拡張の際に、組織解離という形で血管にダメージを与える可能性があり、その場合は組織のフラップや破片が血管腔中に突出する。解離は、バルーンによる治療区間内だけでなく治療区間外または治療区間に隣接して起き得る。このような場合は、解離した組織を動脈壁に留めつけることが有用である。外向きの力が小さなタックは、ステントが適さない、または望ましくない解離の治療に有利に用いることができる可能性がある。
実施形態によっては、マーカの位置に基づいて血管内にカテーテルを位置決めすると同時にタックを正確に設置することができる。位置決め後、カテーテルは定位置に維持したまま外鞘をゆっくり抜去することで、1または複数のタックを展開することができる。
実施形態によっては、1または複数のタックを組織の解離部に展開することができる。血管形成術を行なうと、通常は、1)さらなるステントや過剰治療の必要もない最適結果、2)後遺症の狭窄があり、通常はステントを設置して血管を開いたままにしておく、または血管に足場を設け、血管が再び前の閉塞状態または部分的閉塞状態に戻らないよう開いておく必要がある、3)組織解離、の3つのうちの1つの結果が得られる。組織解離とは、血管が、血管内膜層の分離につながる動脈壁の断裂などの外傷を受けた部分とも言える。これは、血流を妨げる場合もあるし妨げない場合もある。このような組織解離部に1または複数のタックを展開すると有用な場合がある。小型のタックは、バルーン血管形成術により治療された血管のうちの一部分の治療を可能にし、これにより、長い金属ステントを血管形成術治療部位の全体に渡って挿入する必要のない治療法が提供される。理想的には、血管形成術治療部位の血管長の60%以下の部分の治療に1または複数のタックを使用することができる。1列のセル(図示例)または2列のセルを有する小型タックは、組織解離に一般的に使用されるステントに比べ損傷を起こしにくく回復期間も短いことが示されている。
タックの設置と同時に、血管内構造が生体内で形成される。生体内設置は、末梢動脈のいずれかなど、適切な血管内のいずれでも行なうことができる。構造は2つのタックのみに限られない。実際、生体内で形成される血管内構造には少なくとも3つの血管内タックを設けることができる。一実施形態では、各タックの長さが、非圧縮状態で8mm以下、たとえば約6mmである。ある構成では、少なくとも1つのタック、たとえば各タックが、少なくとも約4mm、または約4mm〜8mm、または約6mm〜8mm、隣接タックから離間している。長さが8mm以下の実施形態もあれば、これより長い、たとえば約12または15mmの実施形態もある。また、隣接するタック同士は、特に屈曲や他の動きが少ない血管内では、2mm間隔まで近接して位置させてもよい。実施形態によっては、搬送装置にそれぞれ約6.5mm長のタックを6個装填し、長さ15cmまでの病変部の治療に用いることができる。
本願で説明する様々な搬送装置では、挿入されたタック間の間隔を、各タック間の固定間隔または最小間隔を維持するように制御することができる。以上のように、搬送装置および/またはタックは、タック間の所望距離を維持するのに役立つ特徴を含むことができる。タック間の間隔を適切に維持することで、タックが互いに接触したり治療対象の血管の一領域にだけ集まったりすることなく所望の長さに渡って均一に分布させることができる。これにより、タックが配置された血管のねじれを防ぐのに役立つ場合がある。
症状によっては3つのタックの生体内構造が適している場合もあるが、少なくとも5つの血管内タックを有する血管内構造が、不安定なプラーク、血管フラップ、解離、他の、かなり長尺な(非限局的)病弊の治療に有用な場合がある。たとえば、ほとんどの解離は限局的である(軸方向に短い)が、複数の解離が連なる場合はこれを長尺の病弊と考えて治療する場合がある。
場合によっては、軸長がさらに短いタックを、より離れた複数箇所の治療に用いることさえできる。たとえば、それぞれ長さが約7mm以下の複数のタックを、タックで留めることができる病弊の治療のために血管中に設置することができる。少なくともタックのうちのいくつかは、隣のタックから少なくとも約5mm離間させることができる。場合によっては、隣接タック間に、約6mm〜約10mmの範囲の空隙を設けるのが好ましいこともある。
たとえばタック2などの血管挿入物を設置すると、挿入物の一部が、自然の血管壁と付着しない場合がある。これは内腔壁表面の凹凸が原因である場合がある。挿入物が腔表面と付着しない部分があると、血行力学的に最適ではない血流につながる可能性がある。したがって、随意により、たとえばタック2などの血管挿入物を展開後に確実に付着させるために、装置を挿入してタック2をさらに拡張させてもよい。たとえばバルーンカテーテルを展開後の拡張用に導入し、タック2内に位置させた後に拡張させ、タック2のストラットを腔壁にそっと押しつけることができる。
上述のように、元々使用していた血管形成術バルーンまたは新しいものなど別の装置を用いて、所望の拡張状態にタックを拡張させるには、タック2を搬送装置10で設置し、搬送装置10を抜去し、新装置(たとえば新しいバルーンまたは血管形成術バルーン)を挿入し、新装置を膨張させてタック2を拡張させ、新装置を収縮させ、新装置を血管系内から抜去する工程が必要となる。このように新たなカテーテルに交換することは処置時間とコストの増大につながり、脱落など挿入物との望ましくない干渉のリスクや、血管壁損傷のリスクが生まれる。
したがって、搬送装置10のいくつかの実施形態は、タック2を展開後に拡張するための部分を含む。一体型拡張機構(たとえば機械的拡張機構)が組み込まれた様々な展開後拡張装置を備える挿入物搬送システムの様々な実施形態を開示する。拡張機構は、自己拡張型血管内挿入物の展開後に、挿入物が確実に最適に係止され周方向に血管内腔に付着するために使用することができる。設置された展開後拡張装置による利点としては、複数の自己拡張型挿入物の展開、自己拡張型挿入物拡張後に必要なカテーテル交換と交換過程に伴う難点やリスクの排除、挿入物を後から拡張するために別のバルーンカテーテルを消費することに伴うコストの削減または除去、処置時間の短縮、および最終的なコストの削減が挙げられる。
搬送装置は、本願に記載のその他の搬送装置に、展開後拡張装置を加えたものと同一とすることができる。展開後拡張装置は、拡張要素と拡張制御部1730とを有することができる。拡張要素は、たとえば拡張フィラメント1710、1910、ベローズ2010、または内芯バルーン2110など多様な形態をとることができる。実施形態によっては、拡張要素が可動フレームからなり、フレームの一端が他端に向けて移動しフレームが拡張するように構成される。フレームは、いくつかの設計の中でも特に、拡張フィラメント1710、1910またはベローズ2010からなることができる。拡張要素は、展開プラットフォーム内に位置させることができる。
拡張制御部1730は搬送装置10の基端に位置させ、ユーザにより作動させて拡張要素の拡張を制御することができる。実施形態によっては、拡張制御部1730は、トリガ、ケーブル、1または複数のフィラメント端などであり得る。
展開後拡張装置は、バンドやリング1720、1722などのX線不透過性マーカを1または複数備えることができる。1または複数のX線不透過性マーカは、展開後拡張装置の1または複数の端部、中央、または他の箇所に位置させることができる。1または複数のX線不透過性マーカはまた、拡張要素の拡張とともに移動可能であってもよい。実施形態によっては、内軸上にある最先端の環状押込バンド44が、展開後拡張装置の基端を画定していてもよい。ノーズコーン38は展開後拡張装置の先端を画定することができる。ノーズコーン38と押込バンド44の双方がX線不透過性であり得るので、展開後拡張装置はX線不透過性マーカをさらに備えていなくてもよい。
一般的に、搬送装置10は、本願に記載のように、外鞘12を基端側に軸方向に摺動させることにより露出され(または、外鞘12を先端側に軸方向に摺動させることにより覆われる)1または複数の搬送プラットフォームを備えることができる。搬送プラットフォームは1または複数の管腔内装置(たとえば自己拡張型タック2)を受容し保持するよう構成される。管腔内装置は、血管などのある容積内で、搬送プラットフォームが露出するように外鞘12を引き戻すことで放出または展開することができる。1または2以上の(複数の)管腔内装置を保持し、かつ、放出するよう構成された搬送プラットフォームに加えて、搬送装置10は展開後拡張装置を備えることができる。
本願に記載のように、展開後拡張装置は搬送装置10の一部であり、少なくともその一部分が、展開後またはすでに拡張後の管腔内装置(たとえば拡張された後の自己拡張型タック2)内に位置することができる。本願に開示の展開後拡張装置は、搬送装置の内側部分の直径にほぼ等しいかこれに近い、第1の展開前直径を有することができる。また、第1の展開前直径より大きい第2の展開前直径を有することができる。管腔内装置内に位置決めされると、展開後拡張装置は径方向に拡張して管腔内装置の内面を外方に押しつけることができる。言い換えると、展開後拡張装置は、展開後拡張装置の少なくとも一部分が管腔内装置の内面の少なくとも一部分に接触し、その管腔内装置の内面に径方向の力を加えるように構成される。管腔内装置の内側(すなわち管腔内装置の内面の少なくとも一部分)に外方または径方向の力を加えることで、展開後拡張装置は、管腔内装置をさらに拡張させて、および/または、内包されている容積(たとえば血管)の表面に対し一層均一に着座させることができる。展開後拡張装置が拡張して管腔内装置に外方または径方向の力を加えた後は、収縮または圧縮させて下から引き出し(引き戻し)、管腔内装置に絡まることなく管腔内装置の内部から抜去することができる。
搬送装置10は展開後拡張装置を1つのみ備えていても複数備えていてもよい。展開後拡張装置を1つのみ備えている場合は、この展開後拡張装置は第1搬送プラットフォームの先端か、第1と第2搬送プラットフォームの間か、搬送プラットフォームの下側か、またはすべての搬送プラットフォームの基端側に位置させることができる。搬送装置10は、2以上の展開後拡張装置、たとえば2、3、4、5、または6つの展開後拡張装置を備えることができる。展開後拡張装置を2つ以上備えている場合は、これらの展開後拡張装置は搬送プラットフォームの先端および基端か、2つ以上の搬送プラットフォームの間か、または2つ以上の搬送プラットフォーム内に位置させることができる。
本願で先に述べたように、搬送装置10は、たとえば外鞘12を引き戻し1または複数のタック2を展開するのに、基端側で操作する、または作動させることができる。同様にして、本願に開示の展開後拡張装置は、搬送装置10の基端側から作動させることができる。これにより、オペレータは、患者の血管などの容積内に搬送装置10を挿入し、搬送装置10を標的部位まで前進させ、外鞘12を引き戻し、タック2を展開し、展開後拡張装置を使用するといった動作をすべて搬送装置10の基端側から行なうことができる。
展開後拡張装置の少なくともいくつかの実施形態は、図8A〜図10Fに示すように複数の拡張フィラメント1710、1910を含む。以下に詳述するように、拡張フィラメントは、自由に動くものや展開後拡張装置の基端または先端に対し固定されるなど、どのような形態でもよい。拡張フィラメントは、拡張されると円筒形状または血管の所望形状に合った他の形状となるように、予め曲げ加工または成形しておくことができる。たとえば図8Fに示すように、拡張フィラメント1710は、両端に2つの曲げ部を有し、これらがまとまって、内軸の長手方向軸に平行な長手方向部分につながるエンドキャップを形成している。
展開後拡張装置の先端に対し固定される場合(図8A〜図8G)、拡張フィラメント1710は、展開後拡張装置の先端に向けて押し出す、または延出させてもよい。このように押し出す、または延出させることで拡張フィラメントを外方に弓状に曲げる、またはバックリングさせることができる。さらに押し出す、または延出させれば、拡張フィラメントをさらに外方に弓状に曲げる、またはバックリングさせることができる。展開後拡張装置が管腔内装置内にあれば、拡張フィラメントが管腔内装置に接触し、外方または径方向の力を加えるに充分なほど拡張フィラメントを押し出し、または延出させることができる(前述の通り)。展開後拡張装置の使用後は(たとえば管腔内装置の内面に径方向の力を加えた後)、拡張フィラメントは後退させることができる。拡張フィラメントを後退させると、搬送装置10上で平らになるので、搬送装置10を管腔内装置に引っかかることなく引き戻すことができる。
または、拡張フィラメント1910は、展開後拡張装置の基端に対し固定してもよい(図10A〜図10F)。展開後拡張装置の基端に対し固定されている場合は、拡張フィラメントは、その先端においてたとえばリング1920のように摺動可能な構造に固定されていてもよい。摺動可能な構造を(引っ張られ、または引き寄せられて)搬送装置10の基端に向けて(拡張フィラメントの基端固定点にも向けて)に摺動させると、拡張フィラメントは外方に弓状に曲がる、またはバックリングする。摺動可能な構造を基端側にさらに摺動させれば、拡張フィラメントはさらに外方に弓状に曲がる、またはバックリングする。展開後拡張装置が管腔内装置内にあれば、拡張フィラメントが弓状に外方に曲がって管腔内装置に接触し、外方または径方向の力を加えるよう、摺動可能な構造を基端に向けて充分に摺動させることができる(前述の通り)。展開後拡張装置の使用後は(たとえば管腔内装置の内面に径方向の力を加えた後)、摺動可能な構造は先端に向けて押し出せばよい。摺動可能な構造を先端に向けて押し出すと、拡張フィラメントは搬送装置10上に平らになるので、搬送装置10を管腔内装置に引っかかることなく引き戻すことができる。拡張フィラメント型の展開後拡張装置を1つだけ含むことができる。ただし、2つ以上含んでいてもよい(たとえば拡張フィラメント一組を各搬送プラットフォームに組み込むなど)。
実施形態によっては、拡張フィラメント1910が内側部材のルーメン内に位置しており、リング1920を先端側に移動させることでフィラメント1910を引き出してもよい。次いでフィラメント1910は、予め曲げられた、または成形された拡張形状となり、管腔内装置をさらに拡張させることができる。
本願に開示の別の展開後拡張装置は、柔軟性を有するベローズを備える(図11A〜図11F)。このような柔軟性を有するベローズは、搬送装置10上でほぼ平らになるよう広がった第1構造を有することができる。また、ベローズが短縮または収縮または拡張した第2構造を有することができる。第2構造にあるとき、ベローズは第1構造にあるときより大きい直径を有することができる。本願に開示のベローズは、アコーディオン状に形成されており、完全に広がったとき(展開前構造)は、ほぼ平らになる。しかし、このベローズを後退させると、アコーディオンのように折り重なる。このアコーディオン状の動作によって、ベローズが縮むにつれその直径は増大する。このベローズは、展開後拡張装置の基端に対し固定(すなわちベローズの基端を展開後拡張装置の基端に固定)させてもよいし、展開後拡張装置の先端に対し固定(すなわちベローズの先端を展開後拡張装置の先端に固定)させてもよいし、または、ベローズの基端と先端の両方がそれぞれ独立して可動であってもよい。ベローズ型の展開後拡張装置を1つだけ含むことができる。ただし、2つ以上含んでいてもよい(たとえばベローズを1つずつ各搬送プラットフォームに組み込むなど)。
本願に開示のまた別の展開後拡張装置は、膨張性バルーン(たとえば図12A〜12Fの内芯バルーン2110)を備える。このようなバルーンは、搬送装置10の内側部分にぴったり沿えるよう(外鞘12がバルーンに覆いかぶされるよう)な第1直径を有する展開前構造を有することができる。バルーンはまた、バルーンが膨張した第2直径を有する展開構造を有することができる。言うまでもなく、実質的に固定の容積内に置かれたとき、バルーンをさらに膨張させれば、容積の内面に径方向または外方の圧力が加わることになる。バルーン型の展開後拡張装置を1つだけ含むことができる。ただし、2つ以上含んでいてもよい(たとえばバルーンを1つずつ各搬送プラットフォームに組み込むなど)。膨張性バルーンはまた、血管壁への薬剤投与や生物学的治療に用いることもできる。
展開後拡張装置にバルーンを組み入れた1または複数の実施形態はまた、展開前構造においてバルーンを捕捉する螺旋コイル2330(図14B)を含む。螺旋コイル2330は、螺旋コイルルーメン2320(図14A)から延出させたりルーメン内に後退させたりすることができる。ルーメン内に螺旋コイルを後退させるとバルーンが解放されるので、バルーンを膨張させることができる。螺旋コイルをルーメンから延出させると螺旋状にバルーンに巻きついて、搬送装置10の内側部分に接するよう捕捉する。したがって、バルーンをいったん使用した後(たとえば管腔内装置内に設置し、膨張させて管腔内装置を展開させ、収縮させた後)、螺旋コイルでバルーンを捕捉することが特に有用である場合がある。螺旋コイルなしでは、収縮後のバルーンが生物学的構造や管腔内装置に引っかかる虞がある。螺旋コイルがあれば、バルーンを再度、搬送装置の内側部分にぴったり沿わせることができる。
図8A〜図8Gは、展開後拡張装置の一実施形態を組み込んだ搬送装置10を示す。詳しくは、搬送システムは、挿入物と血管壁が確実に理想的に付着するよう、展開後に挿入物を拡張させるのに用いる、一体型の先端拡張要素を備える。図7Aに示す搬送装置10と同様に、図8Aに示す搬送装置10は、第1展開前位置にある外鞘12を備える。前述のように、外鞘12により複数のタック2を圧縮状態で搬送装置10内に保持することができ、タックが搬送装置の所定長さに渡って延びることができる。搬送装置10は、ガイドワイヤ50を覆って延びるガイドワイヤルーメン40を備えるので、搬送装置10は、患者の血管系内で治療部位までガイドワイヤ50上を前進させることができる。前述のように、ガイドワイヤ50は、処置の前段階で使用したのと同じものでもよい。外鞘12は第2展開前位置まで引き戻す、または後退させることができる(図7Bおよび図7C)。第2展開前位置では、外鞘の先端52は、展開対象のタックの先端または、そのやや先端側に位置させることができる。
前出の図に示すシステムと同様に、外鞘12はX線不透過性環状マーカバンド28を有することができ、タックも1または複数のX線不透過性マーカ22を有することができる。X線不透過性マーカ22はタック外周に1列に位置させることができる。タックと外鞘上にそれぞれ対応するX線不透過性マーカ22、28を有することで、外科医は、図8Cに示すようにマーカ22、28をタック展開前に揃えることができる。さらに、位置合わせしたマーカを、所望の治療部位に揃えることができる。位置合わせは標準的な可視化技術を用いて行なうことができる。前述のように、内軸上の環状押込バンド44もX線不透過性であることができる。
図8Bを参照すると、外鞘12上のマーカ28が第1タック2上のマーカ22に合わせられ、外鞘の先端は第1タックの先端に位置していることが分かる。搬送装置10は今、X線不透過性マーカを所望位置の中心に合わせるなどにより、治療する病変部に対して位置決めすることができる。外鞘はその後に引き戻して、タックを所望位置に設置することができる。タック2を展開できるよう外鞘12を位置決めすることに加え、外鞘12上のX線不透過性マーカバンド28を第1タック2上のX線不透過性マーカ22に合わせることで、展開後拡張装置を組み込んだ第1プラットフォームが露出される。
図8Bおよび図8Cは、展開後拡張装置の折畳み状態を示す。展開後拡張装置は先端側X線不透過性リング1720、基端側X線不透過性リング1722、および複数の拡張フィラメント1710を備える。先端側X線不透過性リング1720は概して展開後拡張装置のプラットフォームの先端または先端付近に位置している。同様に、基端側X線不透過性リング1722は概して展開後拡張装置のプラットフォームの基端または基端付近に位置している。図8に示す展開後拡張装置の展開前構造と以下で詳述する展開構造は、流線型である。図8Bおよび図8Cは展開前構造にある展開後拡張装置を示している。
前述のように、展開後拡張装置は、複数の拡張フィラメント1710を有する。拡張フィラメント1710はフレームを形成することができる。実施形態によっては、展開後拡張装置が3つの拡張フィラメント1710を有する。別の実施形態では、展開後拡張装置が先端4、5、6、7、8、9、10、11、または12の拡張フィラメント1710を有する。また別の実施形態では、展開後拡張装置が13以上の拡張フィラメント1710を有する。拡張フィラメント1710は、後述するように、径方向外方への押込が可能な充分な剛性を保持する柔軟材料から製造される。実施形態によっては、拡張フィラメント1710はポリマーから形成される。別の実施形態では、拡張フィラメント1710は(ニチノールなどの)超弾性金属から形成される。各拡張フィラメント1710の先端部分は、挿入物の内面との最適な係合およびこれに続く挿入物の拡張が可能なように予め成形加工することができる。実施形態によっては、拡張フィラメント1710がそれぞれ薄い柔軟性ポリマーフィルムで覆われている。これにより血管内装置の表面領域に渡ってより均一に拡張力を分布させるのに有利に役立つ場合がある。ポリマーフィルムはまた、拡張中に血管内装置の構造にフィラメントが絡まってしまう可能性を低減するのに役立つ場合がある。ポリマーフィルムはまた、血管壁への薬剤投与や生物学的治療に用いることもできる。これに代えて、別の実施形態では、拡張フィラメント1710が、バルーンなどの非常に細密で柔軟性が高く連続的な膨張可能構造の壁内に埋め込まれていてもよい。このように埋め込むことで、拡張フィラメント1710が、展開中のタック2のストラットまたはアンカーに絡まったり、および/または引っかかることが防止され有利である。
図示するように、複数の拡張フィラメント1710中の各拡張フィラメント1710の先端部分は、展開後拡張装置のプラットフォーム先端付近(たとえば先端側X線不透過性リング1720付近)で内軸26に対して固定されている。フィラメントは搬送装置10外周に概ね等間隔で固定されている。たとえば展開後拡張装置が拡張フィラメント1710を3つしか有していない実施形態では、各拡張フィラメント1710が、隣接する拡張フィラメント1710から約120°離間している。同様に、展開後拡張装置が拡張フィラメント1710を6つ有する搬送装置10の実施形態では、各拡張フィラメント1710が、隣接する拡張フィラメント1710から約60°離間している。
拡張フィラメント1710は、内軸26に対する装着点から基端に向けて、展開後拡張装置のプラットフォームを越え、環状マーカバンド44と様々な搬送プラットフォーム8の下を通って、搬送装置10の基端まで延びている。様々な拡張フィラメント1710の1つ1つがそれぞれ搬送装置10の基端に到るまで延びていてもよい。または、様々な拡張フィラメント1710が、展開後拡張装置のプラットフォームの基端で結合して、搬送装置10の基端まで基端側に延びる1本のケーブルを形成してもよい。各拡張フィラメント1710(または上述のように拡張フィラメント1710それぞれからなる1本のケーブル)の基端部分は、搬送装置10の基端にある、外科医などのユーザにより作動される拡張制御部1730に固定されている。
実施形態によっては、内軸26が、拡張フィラメント1710がその中を通って展開後拡張装置から搬送装置10の基端まで移動可能な複数のルーメンを含めて押出成形される。内軸26は図9Aに示すように複数のルーメンを含む押出成形品からなることができる。図9Aは中央にガイドワイヤルーメン40と、ガイドワイヤルーメン40とほぼ平行な6つの別個のフィラメントルーメン1810を壁内部に有する内軸26の断面を示す。拡張フィラメント1710は展開後拡張装置から搬送装置10の基端に到るまでこれらのフィラメントルーメン1810を貫通することができる。フィラメントルーメン1810は概して、搬送装置10の基端から先端部分までフィラメントルーメン1810を貫通する複数の拡張フィラメント1710を支持し、同軸状に収納する。
当然ながら、内軸26は3本のフィラメントルーメン1810を含め、フィラメントルーメン1810を何本含んでいてもよい。実施形態によっては内軸26が4、5、6、7、8、9、10、11、または12のフィラメントルーメン1810を有する。さらに別の実施形態では、内軸26が13以上のフィラメントルーメン1810を有する。各フィラメントルーメン1810はそれぞれ拡張フィラメント1710を収納することができる。たとえば、内軸26はある数のフィラメントルーメン1810(たとえば8本のフィラメントルーメン1810)を備えるように押出成形することができ、この場合、同数の拡張フィラメント1710(たとえば8本の拡張フィラメント1710)がフィラメントルーメン1810に挿通される。高度なオーダーメードシステムにはこのような1:1の比が役立つ場合がある。これに対して、押出成形のフィラメントルーメン1810のいくつかは空のままであってもよい。たとえば、内軸26が比較的多数のフィラメントルーメン1810(たとえば12本のフィラメントルーメン1810)を備えるよう押出成形される場合がある。その場合は、所望の数の拡張フィラメント1710(たとえば6本の拡張フィラメント1710)だけがフィラメントルーメン1810に挿通される。このタイプのシステムは、1つの押出成形内軸26が様々な数の拡張フィラメント1710を収容できるので、モジュラー性に優れ、製造コストを低減できる場合がある。
図9Bに示すように、拡張フィラメント1710は、フィラメントルーメン1810から延出して展開後拡張装置プラットフォームの表面(たとえば内軸26の外面)を横切っていてもよい。実施形態によっては、複数のルーメンを含む押出成形品が、フィラメントルーメン1810を有する先端部分に、長手方向に配された複数の開口またはポケットを成形品の壁に含んでいる(たとえば各1810ごとに1つの開口またはポケット)。開口またはポケットは概して、拡張フィラメント1710の先端部分が露出できるように、複数のルーメンを含む押出成形品の内芯内のフィラメントルーメン1810の先端部分に位置合わせされている。(たとえば拡張フィラメント1710はこれらの開口から延出し展開後拡張装置プラットフォームの表面を横切り、それぞれの装着点に到っていてもよい。) または、図9Bに示すように、拡張フィラメント1710が、実質的にフィラメントルーメン1810の上部が開放したものである複数のフィラメント凹部1820内にあってもよい。このようなフィラメント凹部1820を用いることで、有利に省スペースが図られ、拡張フィラメント1710同士の干渉を防止し、外鞘12、拡張フィラメント1710、および内軸26間の拘束および/または過剰な摩擦を防止することができる。
実施形態によっては、拡張フィラメント1710は、押込バンド44に隣接するフィラメントルーメン1810から延出していてもよい。このようにすると、内軸26の剛性および構造的完全性を増強するために押込バンド44を用いることができる。ノーズコーン38もまたこのように用いることができる。たとえば、押込バンド44およびノーズコーン38内の金属製X線不透過性マーカバンドが、拡張フィラメントの出口位置に隣接するフィラメントルーメン1710を囲んでいてもよい。これにより、拡張フィラメントが拡張位置にあるときに増大する、内側部材に加わる応力に、搬送装置が対応しやすくなる。前述のように、押込バンドやノーズコーンによって、展開後拡張装置の基端および先端をそれぞれ画定することができる。
図示するように、展開後拡張装置の展開前の状態では、拡張フィラメント1710はそれぞれ内軸26上に(または内軸26のフィラメント凹部1820内で)ほぼ平たく延びている。展開前の状態では、各拡張フィラメント1710に弛みはほとんどない。すなわち、拡張フィラメント1710の、展開後拡張装置のプラットフォーム先端における固定点と、フィラメントルーメン1810の先端との間の長さは、展開後拡張装置のプラットフォームの長さとほぼ等しい。
拡張機構を作動させるとフィラメントがルーメン内を先端に向け前進し、これによって、成形品の壁に開いた開口を通してフィラメントの先端部分が径方向に拡大する。様々な拡張フィラメント1710(または様々な拡張フィラメント1710により形成されるケーブル)の基端側を押し込むことにより展開(すなわち拡張機構を作動)させることができる。これにより拡張フィラメント1710がフィラメントルーメン1810の先端から延出し(たとえば、フィラメントがルーメン内を先端に向け前進し)、フィラメントルーメン1810を通して拡張フィラメント1710の先端部分が延出および径方向に拡張し、これが、成形品の壁に開いた開口を通したフィラメントの先端部分の径方向拡張につながる。拡張フィラメント1710の先端部分が延出することで、展開後拡張装置先端における装着点と、フィラメントルーメン1810の先端との間の拡張フィラメント1710の長さが増大する。展開後拡張装置上の拡張フィラメント1710の長さが増大するにつれ、外側に向けて「バックリング」する。フィラメントルーメン1810から拡張フィラメント1710をさらに押し出すと、拡張フィラメント1710は外側にさらにバックリングする。すなわち、拡張フィラメント1710の拡張径は、拡張フィラメント1710基端の長手方向の移動により制御される。
図8D〜図8Gは、上で述べたばかりの展開後拡張装置の使用方法を図示している。図8Dは、外鞘12を前述のように後退させたところである。X線不透過性マーカバンド28は後退させられてX線不透過性マーカ22に重なり、第2タック2を展開する用意ができている。図示するように第1の自己拡張型タック2は腔内壁にほぼ付着するように拡張されている。外鞘12内に収納されているときは、タック2のX線不透過性マーカ22は、圧縮されたリング状に、ほぼ密着しあっている。これに対して、タック2を拡張すると、X線不透過性マーカ22も外方に拡張し、より分散されたリングを形成する。したがって、外科医は、本願で前述したように標準的な画像化技術を用いて、タック2が搬送プラットフォーム8から離脱して血管内で拡張するのを観察することができる。個々の自己拡張型挿入物(たとえばタック2)の展開中は、フィラメントはポケット/凹部と内芯壁内に完全に収納されている。
タック2が標的位置に展開され血管内で拡張しなくなったら(すなわちX線不透過性マーカ22の動きがほぼ観察されなくなったら)、搬送装置10を基端側または先端側に移動させ、図8Eに示すように展開後拡張装置がタック2の下に来るよう位置決めし直す。この位置では、拡張フィラメント1710の露出された先端の中心が、展開後の挿入物のほぼ中心に位置している。
拡張フィラメント1710を展開後の挿入物内で長手方向に最適に位置合わせできるよう、内軸26の一部分または拡張フィラメント1710の一部分が1または複数のX線不透過性要素を含んでいてもよい。たとえば、展開後拡張装置が、先端側X線不透過性リング1720と基端側X線不透過性リング1722とを含み、これを用いて展開後拡張装置の中心をタック2の中心に合わせてもよい。先端側X線不透過性リング1720と基端側X線不透過性リング1722は、X線不透過性マーカ22と同様に、従来の画像化技術を用いて観察することができる。この結果、外科医は、X線不透過性マーカ22が先端側X線不透過性リング1720と基端側X線不透過性リング1722のほぼ中間に来るまで搬送装置10を前進または後退させることができる。このとき、タック2は、展開後拡張装置の作動に適切な位置である、展開後拡張装置のほぼ中心にある。
展開後拡張装置を挿入物下の中心に合わせると、拡張フィラメント1710の基端、または拡張フィラメント1710を備えるケーブルの基端を先端に向けて押すことで、拡張フィラメント1710の基端にて拡張機構を作動させることができる。これにより、前述のように、各拡張フィラメント1710が、先端部分のポケットまたは凹部から拡張する。拡張フィラメント1710が径方向に拡張、または「バックリング」することで、図8Fに示すように、フィラメントは血管内挿入物の内面と係合する。拡張フィラメント1710が径方向に拡張し続けながら血管内挿入物の内面を径方向外方に押し続けるので、展開後の挿入物を血管の内壁に対して完全に拡張させることができる。
拡張フィラメント1710が径方向に拡張しタック2が完全に展開した後、拡張フィラメント1710の基端、または拡張フィラメント1710を備えるケーブルの基端を基端に向けて引くことで、拡張フィラメント1710の基端にて拡張機構を作動停止させることができる。これにより、前述のように、各拡張フィラメント1710が先端部分のポケットまたは凹部内に後退し、図8Gに示すように再び内軸26上で平らになる。
図8A〜図8Fに示す展開後拡張装置は、搬送装置10先端の、チップ38と最先端のタック2との間に位置するものとして説明したが、搬送装置10は言うまでもなくこのような展開後拡張装置を複数含むことができる。たとえば、各タック2の下、たとえばタック2の下にあるプラットフォーム内に、それぞれ展開後拡張装置を1つ(たとえば複数の拡張フィラメント1710)含むことができる。このような実施形態では、各展開後拡張装置が、搬送装置10の基端でアクセスできる制御部を備えることができる。したがって、ユーザは、外鞘12を後退させてタック2を展開し、かつ、搬送装置10を動かすことなく、タック2の下にある展開後拡張装置を作動させて、挿入物を後から拡張することができる。
図8A〜図8Gは、展開後拡張装置の先端に固定されて展開後拡張装置(および搬送装置10全体)の基端に対して移動可能/延出可能な拡張フィラメント1710を含む展開後拡張装置を有する搬送装置10を示している。図10A〜図10Fの搬送装置10は図8A〜図8Gの搬送装置10とほぼ同様である。ただし、図10A〜図10Fでは、拡張フィラメント1910の基端が展開後拡張装置の基端に固定されている。そして、拡張フィラメント1910を径方向に拡張させるために移動させるのは、拡張フィラメント1910の先端側である。
図10A〜図10Cは、様々な展開段階にある展開後拡張装置を示す。図10Aは展開前の(完全に収縮した)状態にある展開後拡張装置を示し、図10Bは部分的に展開した状態にある展開後拡張装置を示し、図10Cはほぼ完全に展開した状態にある展開後拡張装置を示す。
図示する展開後拡張装置は概して、先端側X線不透過性リング1720、基端側X線不透過性リング1722、および複数の拡張フィラメント1910を備える。先端側X線不透過性リング1720と基端側X線不透過性リング1722は、図8を参照してすでに説明したものと同一のものでよい。実施形態によっては、展開後拡張装置が3つの拡張フィラメント1910を有する。別の実施形態では、展開後拡張装置が4、5、6、7、8、9、10、11、または12の拡張フィラメント1910を有する。また別の実施形態では、展開後拡張装置が13以上の拡張フィラメント1910を有する。拡張フィラメント1910は、後述するように、径方向外方への押込が可能な充分な剛性を保持する柔軟材料から製造される。図8の拡張フィラメント1710と同様に、拡張フィラメント1910はポリマーまたは(ニチノールなどの)超弾性金属からなることができる。各拡張フィラメント1910の先端部分は、挿入物の内面との最適な係合およびこれに続く挿入物の拡張が可能なように予め成形加工することができる。実施形態によっては、拡張フィラメント1910がそれぞれ薄い柔軟なポリマーフィルムで覆われている。これに代えて、別の実施形態では、拡張フィラメント1910が、バルーンなどの非常に細密で柔軟性が高く連続的な膨張可能構造の壁内に埋め込まれていてもよい。したがって拡張フィラメント1910はバルーン内でフレームを形成することができる。
図8とは対称的に、複数の拡張フィラメント1910中のそれぞれの拡張フィラメント1910の基端部分は、展開後拡張装置のプラットフォーム基端付近(たとえば基端側X線不透過性リング1722付近)で内軸26に対して固定されている。フィラメントは搬送装置10外周に概ね等間隔で固定されている。たとえば展開後拡張装置が拡張フィラメント1910を3つしか有していない実施形態では、各拡張フィラメント1910が、隣接する拡張フィラメント1910から約120°離間している。同様に、展開後拡張装置が拡張フィラメント1910を6つ有する搬送装置10の実施形態では、各拡張フィラメント1910が、隣接する拡張フィラメント1910から約60°離間している。実施形態によっては、拡張フィラメント1910の基端が展開後拡張装置のプラットフォーム基端にて内軸26に装着されている。他の実施形態では、拡張フィラメント1910が、図9Aを参照して説明したように、フィラメントルーメン1810を通るなどして、内軸26の壁内部にある程度後方に延出している。このような実施形態では、複数の拡張フィラメント1910が、内軸26外周に径方向に区画されたポケット(図9Aのフィラメントルーメン1810など)と同位置にあって、第1の収縮タック2近傍の内軸26の壁内部のルーメン中の固定位置がその終端となる。
拡張フィラメント1910は、内軸26に対する装着点から展開後拡張装置のプラットフォーム上を先端に向かって延び、摺動スリーブ1920に装着される。拡張フィラメント1910は、展開されないときは、前述のようにポケットまたは凹部内に収納させておくことができる。拡張フィラメント1910の(直線状で曲がっていないときの)長さによって、摺動スリーブは、図10Aに示す与圧のかからない相対的な「ホーム」位置(たとえば先端側X線不透過性リング1720付近)に位置することになる。摺動スリーブは、搬送装置10の基端で、リトラクタなどの拡張制御部1730に作動可能に連結される。リトラクタにより、ユーザは、摺動スリーブ1920を内軸26に沿って同軸状に摺動させることができる。実施形態によっては、リトラクタは単に、摺動スリーブに装着されて展開後拡張装置のプラットフォーム表面上に延び内軸26の壁内部に(たとえばフィラメントルーメン1810を通って)入り搬送装置10の基端に到る1本のフィラメントまたは数本のフィラメントであってもよい。
施術中、リトラクタを基端に向けて引っ張ることで、摺動スリーブ1920を内軸26表面に沿って基端に向けて摺動させることができる。図10Bは、基端方向に部分的に摺動させた摺動スリーブ1920を示す。図10Cは、基端方向にさらに摺動させた摺動スリーブ1920を示す。前述のように、拡張フィラメント1910は固定の長さを有する。したがって、摺動スリーブ1920を基端側へ、拡張フィラメント1910の内軸26への装着点に向けて摺動させると、拡張フィラメント1910が外方に「バックリング」する。摺動スリーブ1920をさらに基端に向けて摺動させると、拡張フィラメント1910は外方にさらに「バックリング」する。すなわち、拡張フィラメント1910の拡張径は、摺動スリーブ1920の長手方向の移動により制御される。
図10D〜図10Fは、上で述べたばかりの展開後拡張装置の使用方法を図示している。図10Dでは、X線不透過性マーカバンド28がX線不透過性マーカ22に重なるまで(すなわち搬送装置10が第2タック2を展開する準備ができるまで)外鞘12は後退させられている。図10Dに示すように第1の自己拡張型タック2は腔内壁にほぼ付着するように拡張されている。個々の自己拡張型挿入物(たとえばタック2)の展開中は、フィラメントはポケット/凹部と内芯壁内に完全に収納しておくことができる。
タック2が標的位置に展開され血管内で拡張しなくなったら(すなわちX線不透過性マーカ22の動きがほぼ観察されなくなったら)、搬送装置10を基端側または先端側に移動させ、図10Eに示すように展開後拡張装置がタック2の下に来るよう位置決めし直す。この位置では、拡張フィラメント1910の露出された中心が、展開後のタック2のほぼ中心に位置している。
展開後拡張装置をタック2に位置合わせするために、X線不透過性マーカ、たとえば先端側X線不透過性リング1720および基端側X線不透過性リング1722を用いることができる。実施形態によっては、タック2を展開後拡張装置の中央に合わせるために先端側X線不透過性リング1720および基端側X線不透過性リング1722を用いる。他の実施形態では、基端側X線不透過性リング1722を、タック2のX線不透過性マーカ22寄りに配置する(図10Eに示す)。基端側X線不透過性リング1722を、X線不透過性マーカ22寄りに配置すると、展開後拡張装置の最大展開径が(図8に示すシステムとは対称的に)基端側X線不透過性リング1722側に寄るので有利な場合がある。摺動スリーブ1920が基端に向けて移動するにつれて展開径は拡大する。この結果、外科医は、X線不透過性マーカ22が基端側X線不透過性リング1722のちょうど先端側に来るまで搬送装置10を前進または後退させることができる。このとき、タック2は、展開径がタック2にとって充分大きい、展開後拡張装置の作動に適した位置に位置することができる。
展開後拡張装置が挿入物下の所望位置に位置すると、リトラクタを基端に向けて引っ張ることで拡張機構を作動させることができる。これにより、前述のように、摺動スリーブ1920が基端に向けて摺動するので、拡張フィラメント1910は図10Eに示すように径方向外方に拡張する。拡張フィラメント1910が径方向に拡張、または「バックリング」することで、図10Eに示すように、フィラメントは血管内挿入物の内面と係合する。拡張フィラメント1910が径方向に拡張し続けながら血管内挿入物の内面を径方向外方に押し続けるので、展開後の挿入物を血管の内壁に対して完全に拡張させることができる。
拡張フィラメント1910が径方向に拡張しタック2が完全に展開した後、たとえば搬送装置10の基端にてリトラクタを先端に向けて押すことで、拡張機構を作動停止させることができる。これにより、前述のように、各拡張フィラメント1910が先端部分のポケットまたは凹部内に後退し、再び内軸26上で平らになる。
図10A〜図10Fに示す展開後拡張装置は、搬送装置10先端の、チップ38と最先端のタック2の間に位置するものとして説明したが、搬送装置10は言うまでもなくこのような展開後拡張装置を複数含むことができる。たとえば、各タック2の下、たとえばタック2の下にあるプラットフォーム内に、それぞれ展開後拡張装置を1つ(たとえば摺動スリーブ1920と複数の拡張フィラメント1910)含むことができる。このような実施形態では、各展開後拡張装置が、搬送装置10の基端でアクセスできる制御部を備えることができる。したがって、ユーザは、外鞘12を後退させてタック2を展開し、かつ、搬送装置10を動かすことなく、タック2の下にある展開後拡張装置を作動させて、挿入物を後から拡張することができる。
図11A〜図11Fは、予備成形された拡張型フレームを含む展開後拡張装置を有する搬送装置10を示す。フレームはベローズとすることができる。この搬送装置10は図10A〜図10Gの搬送装置10とほぼ同様である。ただし、図10に示す展開後拡張装置が摺動スリーブ1920に装着された複数の拡張フィラメント1910を含むのに対し、図11の展開後拡張装置は摺動リングまたはスリーブ2020(摺動スリーブ1920と同様)に装着された拡張型ベローズ2010を含む。
図11A〜図11Cは、様々な展開段階にある展開後拡張装置を示す。図11Aは展開前の(完全に収縮した)状態にある展開後拡張装置を示し、図11Bは部分的に展開した状態にある展開後拡張装置を示し、図11Cはほぼ完全に展開した状態にある展開後拡張装置を示す。
展開後拡張装置は概してベローズ2010を含む。概して、ベローズ2010の基端が展開後拡張装置のプラットフォーム基端またはその付近にて内軸26に装着されている。ベローズ2010の先端は摺動スリーブまたはリング2020に装着されている。摺動スリーブ2020は、搬送装置10の基端で、拡張制御部1730またはリトラクタに作動可能に連結することができる。リトラクタにより、ユーザは、摺動スリーブ2020を内軸26に沿って同軸状に摺動させることができる。実施形態によっては、リトラクタは単に、摺動スリーブ2020に装着されて展開後拡張装置のプラットフォーム表面上に延び内軸26の壁内部に(たとえばフィラメントルーメン1810を通って)入り搬送装置10の基端に到る数本のフィラメントである。
摺動スリーブ2020は、図11Aに示す相対的な「ホーム」位置(たとえば先端側X線不透過性リング1720付近)に位置させることができる。実施形態によっては、摺動スリーブ2020をその最先端位置に保持するには軸方向の力がある程度必要になる。このような実施形態では、このような軸方向の力を先端方向に与えるためにリトラクタを用いてもよい。展開後拡張装置の非展開状態で摺動スリーブ2020が「ホーム」位置にあるとき、ベローズ2010は展開後拡張装置のプラットフォームに対しほぼ平らになる。
施術中、リトラクタを基端に向けて移動させることで、摺動スリーブ2020を内軸26表面に沿って基端に向けて摺動させることができる。実施形態によっては、リトラクタを基端に向けて引っ張る。ただし、別の実施形態では、先端方向への軸方向の力を単に減じるだけで、リトラクタを基端に向け移動させることができる。図11Bは、基端方向に部分的に摺動させた摺動スリーブ2020を示す。図11Cは、基端方向にさらに摺動させた摺動スリーブ2020を示す。摺動スリーブ2020を基端側に、ベローズ2010の内軸26への装着点に向けて摺動させると、ベローズ2010は折り畳まれる。ベローズ2010は折り畳まれると、ほぼ直線状のシース構造から、複数のベローズ凹部2012と、ベローズ径2020とを有する複数のベローズ凸部2014を有するアコーディオン構造に移動する。図11Bと図11Cを参照すると分かるように、ベローズ径2020は、摺動スリーブ2020の長手方向移動により制御される。すなわち、摺動スリーブ2020がさらに基端側に移動すると、ベローズ2010はさらに折り畳まれ、ベローズ径2020はさらに増大する。ベローズ2010は、多数のフィラメントをフレーム状に形成しカバーを設けて凹部2012と凸部2014を形成することで作ることができる。たとえばフィラメントを螺旋構造に巻回してもよい。フレームは、一方を他方に近づけることでベローズが拡張するように移動させることができる。
図11D〜図11Fは、上で述べたばかりの展開後拡張装置の使用方法を図示している。この方法は図10D〜図10Fに関して説明した方法とほぼ同一である。手短に言うと、タック2を血管系内で展開させてから、1または複数のX線不透過性マーカをタック2のX線不透過性マーカ22と協働させて、展開後拡張装置をタック2に位置合わせする。タック2を展開後拡張装置に所望通りに位置合わせしてから、リトラクタを用いて摺動スリーブ2020を基端方向に移動させ、展開後拡張装置を作動させる。摺動スリーブ2020が移動するにつれてベローズ2010が折り畳まれ、ベローズ山部2014がタック2の内面に接触するようにベローズ径が増大する。ベローズ2010が径方向に拡張し続けながら(すなわちベローズ径が拡大し続けながら)血管内挿入物の内面を径方向外方に押し続けるので、展開後の挿入物を血管の内壁に対して完全に拡張させることができる。
図11A〜図11Fに示す展開後拡張装置は、搬送装置10先端の、チップ38と最先端のタック2との間に位置するものとして説明したが、搬送装置10は言うまでもなくこのような展開後拡張装置を複数含むことができる。たとえば、各タック2の下、たとえばタック2の下にあるプラットフォーム内に、それぞれ展開後拡張装置を1つ(たとえばベローズ2010)含むことができる。このような実施形態では、各展開後拡張装置が、搬送装置10の基端でアクセスできる制御部を備えることができる。したがって、ユーザは、外鞘12を後退させてタック2を展開し、かつ、搬送装置10を動かすことなく、タック2の下にある展開後拡張装置を作動させて、挿入物を後から拡張することができる。
図12A〜図12Fは、バルーンを組み入れた展開後拡張装置を有する搬送装置10の別の実施形態を示す。図12A〜図12Cは、様々な展開段階にある展開後拡張装置を示す。図12Aは展開前の状態(すなわち完全に収縮した状態)にある展開後拡張装置を示し、図12Bは部分的に展開した状態(すなわち部分的に膨張させただけの状態)にある展開後拡張装置を示し、図12Cはほぼ完全に展開した状態(すなわち完全に膨張させた状態)にある展開後拡張装置を示す。
展開後拡張装置は概して、先端側X線不透過性リング1720、基端側X線不透過性リング1722、および内芯バルーン2110を備える。先端側X線不透過性リング1720と基端側X線不透過性リング1722は、図8を参照してすでに説明したものと同一のものでよい。内芯バルーン2110は柔軟弾性材料(シリコーン、ナイロン、またはポリウレタン)から構成することができる。
内芯バルーン2110は、概ね先端側X線不透過性リング1720または展開後拡張装置のプラットフォーム先端から、概ね基端側X線不透過性リング1722または展開後拡張装置のプラットフォーム基端まで延びることができる。図12に示すように、内芯バルーン2110は内芯軸(たとえば内軸26)上の、挿入物、たとえば拡張前のタック2の先端側に設置することができる。ただし、内芯バルーン2110は、同様の構造原理を用いて、外鞘12上に設置してもよい。
実施形態によっては、内芯バルーン2110が内軸26よりわずかに大きい展開前直径を有する。このような実施形態では、内芯バルーン2110が内軸26と外鞘12の間に介在できるように、充分小さな展開前直径を有する。実施形態によっては、内芯バルーン2110の完全展開直径は約8mmである。他の実施形態では、内芯バルーン2110の展開直径は約0.4、0.6、0.8、1、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.2、3.4、3.6、3.8、4、4.2、4.4、4.6、4.8、5、5.2、5.4、5.6、5.8、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8、8、8.2、8.4、8.6、8.8、9、9.2、9.4、9.6、9.8、または10mmである。他の実施形態では、内芯バルーン2110は、被験者の血管系内で血管装置を完全に展開するのに適したその他の展開直径を有していてもよい。
内芯バルーン2110は、搬送装置10の基端から1または複数のルーメンを通って内芯バルーン2110まで搬送される流体により膨張させることができる。実施形態によっては、内軸26が、搬送装置10の一端から他端に流体が移動できる1または複数のルーメンを含むよう押出成形される。内軸26は、図13Aに示すように複数ルーメンを含む成形品からなることができる。同図は、中心のガイドワイヤルーメン40と、このガイドワイヤルーメン40とほぼ平行で壁内部にある2本の流体ルーメン2220とを有する内軸26を示す。流体(ガスまたは液状の流体)は、搬送装置10の基端から搬送装置10の先端まで圧送することができる。たとえば流体を、搬送装置10の基端から図12A〜図12Fの展開後拡張装置まで圧送し、内芯バルーン2110を膨張させることができる。実施形態によっては、前述の図13Aに示す複数ルーメン成形品ではなく、図13Bに一例を示す同軸チューブシステムを含んでいてもよい。同軸チューブシステムは、同軸に配される複数のチューブ、たとえば図示する実施形態に示すように同軸に配された2本以上のチューブを含むことができる。図示する実施形態では、外側チューブ262が、内側チューブ261の少なくとも一部分に重なって延びることができ、内側チューブはガイドワイヤルーメン40を画定することができる。流体ルーメン2221は、内側チューブ261の外面と外側チューブ262の内面とにより画定することができる。3本以上の同軸に配されるチューブを含むことで、2以上の同軸流体ルーメンを形成することができる。たとえば、3本のチューブがあれば、2本の流体ルーメンとその中心にあるガイドワイヤルーメンを画定することができる。そして、4本のチューブがあれば、3本の流体ルーメンとその中心にあるガイドワイヤルーメンを画定することができる。当然ながら、このような複数の流体ルーメンシステムは、1つの膨張性バルーンに異なる流体を搬送するのに使用したり、複数のバルーンに同一の流体を搬送するのに使用したり、異なる流体を複数のバルーンに搬送するのに使用することができる。バルーンはこのような同軸チューブシステムに様々なやり方で装着することができる。たとえば一実施形態では、バルーンの先端を内側チューブ261の先端に装着することができる(実施形態によっては液密シールとともに)。バルーンの基端を外側チューブ262の先端に装着してもよい(実施形態によっては液密シールとともに)。このような構成では、内側チューブが、ガイドワイヤ通路を形成するガイドワイヤルーメン40を、外側チューブが、バルーン内部と流体接続する環状膨張流体ルーメン2221を画定することができる。環状膨張流体ルーメン2221は、バルーンを膨張および収縮させる膨張流体の通路を形成することができる。
2本の流体ルーメン2220を示しているが、内軸26が流体ルーメン2220を1本しか含まなくてもよいのは言うまでもない。実施形態によっては内軸26が3、4、5、6、7、または8本もの流体ルーメン2220を含む。別の実施形態では、内軸26が9本以上の流体ルーメン2220を有する。
施術中は、図12A〜図12Fに示すように、流体を搬送装置10の基端から内芯バルーン2110に圧送することで、内芯バルーン2110を膨張させることができる。内芯バルーン2110内に圧送または注入する流体量を変更することで、内芯バルーン2110の壁に様々な径方向圧力を加えることができる。図12Aは、ほぼ完全に収縮して内軸26に接した展開前状態の内芯バルーン2110を示す。図12Bは、部分的にのみ膨張させた内芯バルーン2110を示す。最後に、図12Cは、完全に膨張させた内芯バルーン2110を示す。最終的には、内芯バルーン2110の拡張は、内芯バルーン2110内に圧送される流体量によって制御される。実施形態によっては、搬送装置10が、内芯バルーン2110内の圧力を検出可能な圧力センサを備える。このような実施形態では、内芯バルーン2110の破裂圧に達する前にポンプ(搬送装置10の基端から内芯バルーン2110内に流体を圧送している)を自動停止させるように、圧力センサとポンプとが有益に通信することができる。
図12D〜図12Fは、上で述べたばかりの展開後拡張装置の使用方法を図示している。図12Dでは、X線不透過性マーカバンド28がX線不透過性マーカ22に重なるまで(すなわち搬送装置10が第2タック2を展開する準備ができるまで)外鞘12を後退させている。図10Dに示すように第1の自己拡張型タック2は腔内壁にほぼ付着するように拡張されている。個々の自己拡張型挿入物の展開中は、内芯バルーン2110は完全に収縮されて内軸26の外径に接している。
タック2が標的位置に展開され血管内で拡張しなくなったら(すなわちX線不透過性マーカ22の動きがほぼ観察されなくなったら)、搬送装置10を基端側または先端側に移動させ、図12Eに示すように展開後拡張装置がタック2の下に来るよう位置決めし直す。この位置では、内芯バルーン2110の中心が、展開されたタック2のほぼ中心に位置している。
展開後拡張装置をタック2に位置合わせするために、前述のように、X線不透過性マーカ、たとえば先端側X線不透過性リング1720および基端側X線不透過性リング1722を用いることができる。実施形態によっては、タック2を展開後拡張装置の中央に合わせるために先端側X線不透過性リング1720および基端側X線不透過性リング1722を用いる。他の実施形態では、基端側X線不透過性リング1722を、タック2のX線不透過性マーカ22寄りに位置させる。
展開後拡張装置が挿入物下の所望位置に位置決めされると、搬送装置10の基端から1または複数の流体ルーメン2220を通って内芯バルーン2110内に流体を圧送することにより内芯バルーン2110を膨張させることができる。これにより、前述のように、(部分的拡張を示す)図12Eおよび(ほぼ完全な拡張を示す)図12Dに示すように内芯バルーン2110は径方向外方に拡張する。内芯バルーン2110が径方向に拡張することで、図12Eに示すように、内芯バルーン2110の外面は血管内挿入物の内面と係合する。内芯バルーン2110が径方向に拡張し続けながら血管内挿入物の内面を径方向外方に押し続けるので、展開後の挿入物を血管の内壁に対して完全に拡張させることができる。
内芯バルーン2110が径方向に拡張しタック2が完全に展開した後、たとえば拡張流体を除去することで内芯バルーン2110を収縮させて、拡張機構を作動停止させることができる。実施形態によっては、拡張流体を、たとえばポンプにより能動的に除去する。他の実施形態では、拡張流体を、たとえばパージ弁をただ開き、存在する圧力差によって拡張流体を流出させることにより、受動的に除去する。前述のように、内芯バルーン2110を収縮させるとバルーンは後退し(たとえば内芯バルーン2110の弾性特性により)、再び内軸26上で平らになる。
図12A〜図12Fに示す展開後拡張装置は、搬送装置10先端の、チップ38と最先端のタック2との間に位置するものとして説明したが、搬送装置10は言うまでもなくこのような展開後拡張装置を複数含むことができる。たとえば、各タック2の下、たとえばタック2の下にあるプラットフォーム内に、それぞれ展開後拡張装置を1つ(例えば内芯バルーン2110)含むことができる。このような実施形態では、各展開後拡張装置が、搬送装置10の基端でアクセスできる制御部を備えることができる。したがって、ユーザは、外鞘12を後退させてタック2を展開し、かつ、搬送装置10を動かすことなく、タック2の下にある展開後拡張装置を作動させて、挿入物を後から拡張することができる。
内芯バルーン2110を内軸26上に収納する一助として、タック2展開のために展開後拡張装置を使用する前と後に、螺旋状フィラメント2330を使用してもよい。螺旋状フィラメント2330は、螺旋状の先端と、長尺のほぼ直線状の基端部分とを有する長尺のフィラメントとすることができる。螺旋状フィラメント2330の螺旋状先端は、図14Bに示すように、展開後拡張装置と内芯バルーン2110の領域においてのみ螺旋状であればよい。螺旋状フィラメント2330の残りの部分は直線で、搬送装置10の基端まで内軸26を貫通することができる。
図14Aは、中心にガイドワイヤルーメン40、2本の流体ルーメン2220、および螺旋状フィラメントルーメン2320(螺旋状フィラメント2330を収納するよう図示)を含む複数のルーメンを備えるよう押出成形された内軸を示す。螺旋状フィラメント2330は展開後拡張装置のプラットフォームから搬送装置10の基端に到るまでこの螺旋状フィラメントルーメン2320内を貫通することができる。一実施形態では、螺旋状フィラメントルーメン2320が、前述の同軸チューブシステムの外側チューブ262に含まれていてもよい。このような実施形態では、外側チューブが螺旋状フィラメントルーメン2320を含み、その双方が同軸に配された内側チューブ262に重なって延びることができる。螺旋状フィラメントルーメン2320を有する同軸チューブシステムを用いる場合は、バルーンを外側チューブ262の内面に装着すると有利な場合がある。こうすることで、螺旋状フィラメント2330は螺旋状フィラメントルーメン2320からバルーン上へ容易に滑らかに延出することができる。
螺旋状フィラメント2330は、後述するように、変形後に元の形状に復元可能な充分な剛性を保持する柔軟材料から形成すると好ましい。実施形態によっては、螺旋状フィラメント2330はポリマーから形成される。他の実施形態では、螺旋状フィラメント2330は(ニチノールなどの)超弾性金属から形成される。
展開前状態では、図14Bに示すように、螺旋状フィラメント2330は内芯バルーン2110外周に螺旋状に巻きついている。タック2が展開されて、展開後拡張装置が展開後のタック2の下の中心に位置決めされると、螺旋状フィラメント2330を螺旋状フィラメントルーメン2320内に引き戻すために、基端側に向けて1または複数回、引きおよび捩り動作を行なうことで、螺旋状フィラメント2330を内芯バルーン2110上から後退させることができる。螺旋状フィラメント2330を螺旋状フィラメントルーメン2320内に引き戻すと、フィラメントの螺旋状の先端部分は弾性変形する。螺旋状フィラメント2330を内芯バルーン2110上から完全に引き戻すと、内芯バルーン2110は前述のように使用することができる。
内芯バルーン2110の使用後、内芯バルーン2110は前述のように収縮される。次いで螺旋状フィラメント2330を使用して、収縮後の内芯バルーン2110を捕捉し外径を囲み内芯バルーン2110の断面形状を最小限にすることで、不規則形状の収縮後の内芯バルーン2110と展開後の挿入物(たとえばタック2)および血管と間の干渉のリスクを抑えることができる。内芯バルーン2110を再捕捉するためには、先端側に向けて1または複数回、押しおよび捻り動作を行なうことで、螺旋状フィラメント2330を螺旋状フィラメントルーメン2320から再び突出させる。螺旋状フィラメント2330の螺旋状の先端部分が螺旋状フィラメントルーメン2320から突出すると、弾性性状によって元の形状に復帰し、収縮後の内芯バルーン2110外周に螺旋状に巻きついて内芯バルーン2110を囲い込み、その収縮後の断面形状を最小化する(図14Bに図示)。実施形態によっては、内芯バルーン2110の素材への絡まり、および/または引っかかりを防ぐため、螺旋状フィラメント2330が丸みを帯びた、または鈍らせた先端チップを有する。
螺旋状フィラメント2330が螺旋状フィラメントルーメン2320から再び突出した後は、別の挿入物を後から拡張させるため搬送装置10を基端側または先端側に移動させることができる。螺旋状フィラメント2330が内芯バルーン2110を囲い込むため、不規則形状の収縮後の内芯バルーン2110と他の構造物との干渉のリスクを抑えることができる。展開後拡張装置と内芯バルーン2110が別の挿入物(たとえばタック2)に対する所望の位置に位置決めされると、螺旋状フィラメント2330は螺旋状フィラメントルーメン2320内に後退させ、内芯バルーン2110を膨張させることができる。この工程を繰り返し、複数の挿入物を順次、後から拡張させることができる。
別の実施形態では、螺旋状フィラメント2330を後退させるのではなく、螺旋状フィラメント2330を前進させてルーメン2320から延出させ、寸法を拡大させることができる。または、バルーン2110を充填することで螺旋状フィラメント2330をバルーンとともに膨張させ、フィラメントをルーメン2320から引き出すことができる。液体を除去することで螺旋状フィラメントをバルーン上に縮まらせ、バルーンのサイズ減少とともに自然にルーメン内に後退させることができる。
本発明を所定の好ましい実施形態や実施例の観点から説明したが、本発明の範囲は具体的に開示された実施形態を越えて、他の代替的実施形態および/または発明の利用、および発明の自明の改変や等価物にも及ぶことは、当業者にとっては明らかである。さらに、発明の数々の変形例を示し詳述したが、本発明の範囲内にあるその他の改変は、本開示に基づいて、当業者にとっては明白であろう。また、当然ながら、本発明の範囲内で、実施形態の具体的特徴や態様を様々に組み合わせたり部分的に組み合わせたりすることができる。したがって、開示された実施形態の様々な特徴や局面は、お互いに組み合わせたり置換したりして、開示された発明の異なる形態を形成することができると理解すべきである。ゆえに、本願に開示の本発明の範囲は、前述の開示された特定の実施形態により限定されるものでなく、以下の請求の範囲の公正な解釈によってのみ定義されるべきである。
同様に、この開示方法は、いずれかの請求項がその請求項内に明記されている以上の特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、発明の態様は、以下の請求の範囲に反映されるように、先に開示した実施形態のいずれか1つのすべての特徴より少ない数の特徴の組合せの中にある。ゆえに、「実施形態の詳しい説明」に続く請求の範囲は、ここに、この「実施形態の詳しい説明」に明確に組み込まれるものとし、各請求項はそれ自体が別個の実施形態として成立する。