JP2019218793A - き裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造 - Google Patents

き裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造 Download PDF

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Abstract

【課題】 き裂の進展を抑制する。【解決手段】 金属製物体のき裂2が生じた個所に、き裂2の先端と対応する位置にストップホール8を設け、ストップホール8の周壁におけるき裂2の伸びる方向と交差するストップホール8の直径の方向に沿う位置から、外側に延びる一対の取付溝4a,4bを設ける。各取付溝4a,4bは、ストップホール8の周壁に開口する開口部10の溝幅w1が、ストップホール8の直径の寸法よりも小さく設定され、ストップホール8の周壁よりも外側となる位置に、開口部10の溝幅w1よりも大となる溝幅w2を有する拡幅部11を備える形状として形成する。両端寄り部分5a,5bの板厚が、中央部分6の板厚に比して大となる形状を備えた挿入部材3の両端寄り部分5a,5bを、各取付溝4a,4bの内側に挿入し、接着して固定して、き裂進展抑制構造を形成する。【選択図】図2

Description

本発明は、金属製物体に生じたき裂の進展を抑制するために用いるき裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造に関するものである。
橋梁や、クレーン等の港湾構造物、その他、各種鋼構造物のような金属製物体には、繰り返し荷重等による疲労によってき裂が生じることがある。
このような金属製物体に生じたき裂は、その進展(伝播)を抑えることが求められる。特に、橋梁のようなインフラストラクチャでは、老朽化対策の点からも、き裂の進展を抑制することが求められる。
この種の金属製物体に生じたき裂の進展を抑制する手法としては、たとえば、き裂の先端にストップホールを設けることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
金属製物体に疲労により生じたき裂は、鋭くなっているき裂の先端が開口することによって進展する。したがって、き裂の先端にストップホールを設けた構成では、鋭くなっているき裂の先端をなくすことができて、き裂の進展を抑制することができる。
特開2010−255195号公報
ところで、ストップホールは、き裂の進展を抑制する効果を得るためには、鋭くなっているき裂の先端がなくなるように加工することが重要とされている。
ところが、板厚方向に複雑に変化したき裂の場合は、き裂の先端がどこにあるのかを目視による観察で特定することは難しい。
そのため、たとえば、金属製物体を構成している板材にて、表面にあるき裂の先端の位置よりも、板材の内部でき裂が進展していた場合は、板材の表面におけるき裂の先端を含むように円孔を加工してストップホールを設けたとしても、板材の内部のき裂が、形成されたストップホールの周縁に残る可能性が生じてしまう。万一、このように、ストップホールの周縁にき裂の先端が残った場合は、ストップホールにて、き裂の進展抑制の効果を得ることが難しくなってしまう。
そこで、本発明は、ストップホールにより金属製物体に生じたき裂の進展を抑制することができ、更に、き裂の先端が形成したストップホールの周縁に残った場合にも、き裂の進展の抑制を図ることができるき裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造を提供しようとするものである。
本発明は、前記課題を解決するために、金属製物体のき裂が生じた個所に、前記き裂の先端と対応する位置にストップホールを設ける処理と、金属製物体のき裂が生じた個所に、前記ストップホールの周壁における前記き裂の伸びる方向と交差する前記ストップホールの直径の方向に沿う位置から、外側に延びる一対の取付溝を設ける処理と、を行い、前記各取付溝は、前記ストップホールの周壁に開口する開口部の溝幅が、前記ストップホールの直径の寸法よりも小さく設定され、且つ、前記各取付溝は、前記ストップホールの周壁よりも外側となる位置に、前記開口部の前記溝幅よりも大となる溝幅を有する拡幅部を備える形状として形成し、前記各取付溝に取り付けられる両端寄り部分の板厚が、中央部分の板厚に比して大となる形状を備えた挿入部材の前記両端寄り部分を、前記各取付溝の内側に、接着して固定する処理を行うき裂進展抑制工法とする。
前記各取付溝は、前記拡幅部から前記開口部に向けて溝幅が単調減少する係止部として形成し、前記各取付溝に前記挿入部材の前記両端寄り部分を挿入する状態で、前記各取付溝の各係止部に、前記挿入部材の前記両端寄り部分が係止されるようにしてもよい。
前記挿入部材は、前記中央部分の両側の外面が湾曲面とされるようにしてもよい。
前記各取付溝は、前記ストップホールにおける前記き裂と直角に交差する直径の方向に沿う配置で設けるようにしてもよい。
前記ストップホールおよび前記各取付溝は、前記金属製物体に貫通させて設け、前記挿入部材の前記各取付溝への挿入方向に沿う方向の寸法は、前記金属製物体における前記ストップホールおよび前記各取付溝を設けた個所の厚み以上となるようにしてもよい。
また、金属製物体のき裂が生じた個所に前記き裂の先端と対応する位置に設けられたストップホールと、前記ストップホールの周壁における前記き裂の伸びる方向と交差する前記ストップホールの直径の方向に沿う位置から、外側に延びる一対の取付溝と、前記各取付溝に取り付けられる両端寄り部分の板厚が、中央部分の板厚に比して大となる形状を備えた挿入部材と、を備え、前記挿入部材の前記両端寄り部分が、前記各取付溝の内側に、接着して固定された構成を有するき裂進展抑制構造とする。
本発明のき裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造によれば、ストップホールにより金属製物体に生じたき裂の進展を抑制することができ、更に、き裂の先端が形成したストップホールの周縁に残った場合にも、き裂の進展の抑制を図ることができる。
き裂進展抑制工法の第1実施形態を示す図である。 き裂進展抑制工法で使用する挿入部材を拡大して示す図である。 第1実施形態のき裂進展抑制工法の手順を示す図である。 き裂進展抑制工法の第2実施形態を示す図である。 第2実施形態のき裂進展抑制工法の手順を示す図である。
本発明のき裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、き裂進展抑制工法の第1実施形態を示すもので、図1(a)は、施工前の状態を示す概要図、図1(b)は、施工後の状態を示す概要図である。図2は、き裂進展抑制工法で用いる挿入部材を示すもので、図2(a)は、挿入方向に垂直な面での断面図、図2(b)は、図2(a)のA−A方向矢視図である。図3は、本実施形態のき裂進展抑制工法の実施手順を示すもので、図3(a)は、板材にき裂が生じた状態を、図3(b)は、板材に生じたき裂の先端にストップホールおよび取付溝を設けた状態を、図3(c)は、取付溝に挿入部材を取り付けて、き裂進展抑制構造が形成された状態をそれぞれ拡大して示す概略斜視図である。
本実施形態のき裂進展抑制工法は、図1(a)に示すように、金属製物体として、たとえば、鋼構造物を構成している板材1に生じたき裂2を適用対象とするものである。
ここで、先ず、図2(a)(b)に示す本実施形態で用いる挿入部材3の構成について説明する。
挿入部材3は、図2(a)(b)に示すように、板状とされている。挿入部材3は、図3(b)に矢印で示す一方向が、後述する取付溝4a,4bへの挿入方向xとして設定されている。
更に、挿入部材3は、挿入方向xに垂直な断面の形状が、図2(a)に示すように、両端寄り部分5a,5bの板厚が、中央部分6の板厚に比して大となる形状とされている。挿入部材3における中央部分6と、両端寄り部分5a,5bは、それぞれ、図2(a)に二点鎖線で示すように板材1に形成されるストップホール8と、取付溝4a,4bの内側に配置される部分である。
挿入部材3の両端寄り部分5a,5bは、外面7a,7bが連続する曲面とされている。この外面7a,7bにおいて外向きに凸となる曲面は、一定の曲率となっていることが好ましい。これは、取付溝4a,4bにおけるストップホール8から離れた端部側の面が、応力集中を抑制することを目的として曲面形状とされるので、この取付溝4a,4bの曲面形状に、挿入部材3の両端寄り部分5a,5bの外形を合わせるためである。なお、取付溝4a,4bにおけるストップホール8から離れた端部側は、以下、取付溝4a,4bの奥側という。
また、挿入部材3は、両端寄り部分5a,5b同士の間でくびれる中央部分6の両側の外面9a,9bが、連続する湾曲面とされている。これは、挿入部材3の中央部分6の幅寸法の変化が連続するようにして、外面9a,9bに、応力集中が生じ易くなる屈曲した個所が形成されないようにするためである。
本実施形態で用いる挿入部材3は、図2(b)に示すように、挿入方向xの両端面が、挿入方向xに垂直な平面とされている。また、挿入部材3の挿入方向xの寸法Lは、き裂2が生じている板材1の板厚t(図3(a)参照)と同等か、又は、板厚tよりも大となるように設定されていることが好ましい。これは、板材1の取付溝4a,4bに挿入する挿入部材3を、板材1の板厚tの全域に亘って配置できるようにするためである。
挿入部材3の外形の加工は、たとえば、放電加工により実施することが好適である。なお、挿入部材3の外形の加工は、放電加工以外の加工方法を採用してもよいことは勿論である。
また、挿入部材3は、たとえば、板材1よりも強度が高い高強度鋼(高張力鋼)を用いるようにしてもよい。この構成は、後述するように取付溝4a,4bに挿入部材3を取り付けた状態において、挿入部材3自体の疲労による損傷を防止するために有効である。
本実施形態のき裂進展抑制工法では、図2(a)に二点鎖線で示すように、板材1には、板材1に生じたき裂2の先端と対応する個所に、き裂2の先端を含む円孔として形成されるストップホール8と、ストップホール8の周壁に開口する開口部10から、設定された寸法でストップホール8の外側に延びる一対の取付溝4a,4bが、板材1の板厚方向に貫通して設けられる。一対の取付溝4a,4bは、ストップホール8に対し、き裂2が延びる方向と交差するストップホール8の直径の方向に沿う配置で設けられる。
ストップホール8は、鋼構造物が設けられている現場で、板材1に生じたき裂2の先端を含む円孔として穿設される。そのため、使用する工具や、加工精度などの点に鑑みて、ストップホール8の直径の寸法は、2mm以上に設定される。
各取付溝4a,4bは、挿入部材3の両端寄り部分5a,5bをそれぞれ収容可能な形状とされている。
各取付溝4a,4bが設けられるストップホール8の直径の方向は、き裂2が延びる方向に対して、できるだけ直角に近い角度で交差する方向であることが好ましい。これは、き裂2を開く方向に作用する荷重が、各取付溝4a,4bに両端寄り部分5a,5bが挿入して取り付けられた状態の挿入部材3に対して、挿入部材3の両端側に向く引張方向の応力として伝達されるようにするためである。
各取付溝4a,4bは、ストップホール8の周壁に開口する開口部10の溝幅w1が、ストップホール8の直径の寸法よりも小さく設定されている。且つ、各取付溝4a,4bは、ストップホール8の周壁よりも外側となる位置に、溝幅w1よりも大となる溝幅w2を有する拡幅部11を備えている。
各取付溝4a,4bは、開口部10から拡幅部11の内面、および、拡幅部11よりも奥側の部分を含む内面の形状が、連続する曲面で形成されるようにして、各取付溝4a,4bの一部に応力集中が生じないようにしてある。更に、各取付溝4a,4bは、奥側にて外向きに凸となる曲面が、一定の曲率の曲面とされることが好ましい。これは、各取付溝4a,4bにおける応力集中をより確実に避けるためである。
各取付溝4a,4bにおける拡幅部11から開口部10までの溝幅が単調減少する部分は、ストップホール8を挟んで対称に配置された係止部12とされている。
これにより、各取付溝4a,4bに挿入部材3の両端寄り部分5a,5bが挿入された状態では、各取付溝4a,4bの各係止部12に挿入部材3の両端寄り部分5a,5bが係止されることにより、板材1に作用するき裂2を開く方向の荷重は、板材1から挿入部材3に伝えることができる。このため、板材1のき裂2が開く方向への変形は、各取付溝4a,4bに取り付けられる挿入部材3によって拘束することができる。
各取付溝4a,4bの形状は、挿入部材3の両端寄り部分5a,5bの形状に比して、わずかに大きい相似形状として、各取付溝4a,4bの内面と挿入部材3の両端寄り部分5a,5bの外面との隙間ができるだけ小さくなるようにすることが好ましい。これは、後述する接着剤13の強度が鋼構造物を構成している板材1の強度よりも小さいことを考慮して、各取付溝4a,4bと、挿入部材3の両端寄り部分5a,5bの対向する面同士の間に介在する接着剤13の層の厚みをできるだけ小さくして、各取付溝4a,4bと挿入部材3との間での荷重の伝達性の向上化を図るためである。図2(a)、図3(c)では図示する便宜上、各取付溝4a,4bと挿入部材3との間を拡大して示してある。
次に、挿入部材3を用いる本実施形態のき裂進展抑制工法について説明する。
本実施形態のき裂進展抑制工法では、先ず、図1(a)および図3(a)に示すような板材1のき裂2が生じている個所について、図3(b)に示すように、き裂2の先端と対応する位置に、き裂2の先端がなくなるように、円孔であるストップホール8を板厚方向に貫通させて設ける。板材1には、ストップホール8の外側で、且つ、き裂2の伸びる方向とできるだけ直角に近い角度で交差するストップホール8の直径の方向となる2個所に、ストップホール8の周壁に設けた開口部10(図2(a)参照)から外側に延びる一対の取付溝4a,4bを、板厚方向に貫通させて設ける。
板材1にストップホール8および各取付溝4a,4bを設ける加工は、たとえば、板材1に、目視により特定されるき裂2の先端を中心として、ドリルにより板厚方向に貫通する円孔を穿設して、ストップホール8を形成する。次いで、板材1には、ストップホール8の周縁部における取付溝4a,4bの形成予定個所に、ストップホール8の周壁から外周方向に延びる切り込みをカッターで設け、その後、放電加工により、各取付溝4a,4bを、図2(a)に二点鎖線で示した如き形状に仕上げるようにすればよい。
なお、前記した所定の形状のストップホール8および各取付溝4a,4bを形成することができれば、板材1にストップホール8および各取付溝4a,4bを設ける加工は、放電加工以外の加工方法を採用してもよいことは勿論である。また、板材1にストップホール8を設ける加工、および、各取付溝4a,4bを設ける加工は、任意の順序で実施してもよいし、並行して進めるようにしてもよいことは勿論である。
板材1にストップホール8および各取付溝4a,4bを形成した後は、図3(c)に示すように、各取付溝4a,4bに、挿入部材3の両端寄り部分5a,5bを、両端寄り部分5a,5bの外面に接着剤(構造用接着剤)13を塗布した状態で挿入する。なお、接着剤13は、各取付溝4a,4bの内面に塗布してもよいし、挿入部材3の両端寄り部分5a,5bの外面と、各取付溝4a,4bの内面の双方に塗布してもよい。
その後は、接着剤13を硬化させて、各取付溝4a,4bの内側に、挿入部材3の両端寄り部分5a,5bを接着により固定した状態で取り付ける。
これにより、図1(b)に示すように、板材1に生じたき裂2は、き裂2の先端に対応する部分にストップホール8が形成されると共に、ストップホール8の周壁におけるき裂2の延びる方向と交差する方向に位置する個所同士が、挿入部材3を介して連結される。よって、板材1には、本実施形態におけるき裂進展抑制構造が形成される。
本実施形態のき裂進展抑制工法により形成したき裂進展抑制構造は、板材1におけるき裂2の先端と対応する位置にストップホール8を設けたことに伴い、き裂2の鋭くなっている先端がなくなっている。このため、本実施形態のき裂進展抑制構造が適用された板材1は、き裂2を開く方向の荷重が作用しても、き裂2がストップホール8を超えた先へ進展することを抑制することができる。
なお、たとえば、板材1に板厚方向に複雑に変化したき裂2が生じた場合などには、目視により確認されたき裂2の先端と対応する個所にストップホール8を設けたとしても、ストップホール8の周縁に、き裂2の先端が残る可能性がある。
しかし、本実施形態におけるき裂進展抑制構造が適用された板材1は、き裂2を開く方向の荷重が作用すると、その荷重は、ストップホール8に加えて設けられた取付溝4a,4bの内面から、固化した接着剤13の層を介して挿入部材3に引張方向の応力として伝達されて、挿入部材3により受けられる。更に、挿入部材3は、中央部分6よりも板厚が大とされた両端寄り部分5a,5bが、取付溝4a,4bの各係止部12に係止されるため、このことによっても、き裂2を開く方向の荷重は、挿入部材3によってより確実に受けられるようになる。
これにより、本実施形態におけるき裂進展抑制構造は、板材1にてストップホール8の周縁にき裂2の先端が残っていたとしても、そのき裂2の先端に対して、き裂2を開く方向に作用する応力を低減させて、き裂2の進展を抑制することができる。
更に、挿入部材3は、応力集中が生じるような屈曲した部分のない形状としてあるために、挿入部材3自体の疲労による損傷を抑制することができる。
また、板材1に設けた取付溝4a,4bは、その内面に応力集中が生じるような屈曲した部分がないため、板材1に、取付溝4a,4bにおける応力集中個所を起点とする新たなき裂が発生する虞を抑制することができる。
取付溝4a,4bへの挿入部材3の取り付けは、接着剤13を介した接着によって行うようにしてあるため、板材1が加熱されることはなく、よって、板材1に加熱に起因する新たな応力が生じることはない。
なお、本実施形態のき裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造は、鋼構造物を構成している板材1に生じたき裂2を適用対象として説明した。これに対し、本開示のき裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造は、鋼構造物にて同一平面内に配置された板材同士を突き合わせ溶接した溶接部に生じたき裂や、この溶接部から一方又は双方の板材に延びるき裂に適用してもよいことは勿論である。
[第2実施形態]
図4は、き裂進展抑制工法の第2実施形態を示すもので、図4(a)は、施工前の状態を示す概要図、図4(b)は、施工後の状態を示す概要図である。図5は、本実施形態のき裂進展抑制工法の実施手順を示すもので、図5(a)は、金属製物体にき裂が生じている状態を、図5(b)は、き裂の先端に設けたストップホールから延びる取付溝に挿入部材を取り付けて、き裂進展抑制構造が形成された状態をそれぞれ拡大して示す断面図、図5(c)は、図5(b)のB−B方向矢視図である。
なお、図4(a)(b)、図5(a)(b)(c)において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態のき裂進展抑制工法は、図4(a)に示すように、金属製物体における屈曲部(不連続部)として、たとえば、鋼構造物である橋梁の隅角部となるデッキプレート14の下面と、その下側に配置されたUリブ15の上端縁との溶接による接合部(溶接ビード)16に生じたき裂2aを適用対象とするものである。
デッキプレート14とUリブ15の一方の側壁(ウェブ)15aは、たとえば、図5(a)に示すように、デッキプレート14の平面である下面に、この下面に対し垂直な方向から或る角度傾斜した姿勢とされた側壁15aの上端縁が、突き合わされて溶接されている。
本実施形態で使用する挿入部材3は、図5(b)に示すように、図2(a)(b)に示した挿入部材3と同様の構成において、挿入方向xの寸法のみが変更されている。
本実施形態のき裂進展抑制工法では、先ず、図4(a)、図5(a)に示すような接合部16に生じたき裂2aの先端と対応する位置に、図4(b)、図5(b)(c)に示すように、図2(a)、図3(b)に示したと同様のストップホール8を形成すると共に、ストップホール8の周壁の位置からストップホール8の外側へ延びる一対の取付溝4a,4bを設ける。
各取付溝4a,4bは、ストップホール8に対し、き裂2aが延びる方向と交差するストップホール8の直径の方向に沿う配置で設けられる。この際、各取付溝4a,4bが設けられるストップホール8の直径の方向は、き裂2aが延びる方向に対して、できるだけ直角に近い角度で交差する方向であることが好ましく、これは、第1実施形態と同様の理由による。
ストップホール8および一対の取付溝4a,4bは、深さ方向(奥行き方向)が、デッキプレート14の下面、および、側壁15aの側面のいずれに対しても平行にならない方向に設定されている。これは、デッキプレート14と側壁15aの間の空間17から、挿入部材3を、各取付溝4a,4bに挿入する作業を行うことができるようにするためである。
本実施形態では、図5(b)に示すように、ストップホール8および一対の取付溝4a,4bは、深さ方向が、側壁15aに対して垂直な方向となるよう設定されている。更に、ストップホール8および一方の取付溝4bは、側壁15aを貫通するように形成されている。この構成によれば、取付溝4bに挿入する挿入部材3を、側壁15aの板厚の全域に亘り配置することができる。また、側壁15aと、取付溝4bに挿入された状態の挿入部材3との間では、力の伝達を、側壁15aの板厚方向の偏りを抑制した状態で行うことができる。
一方、デッキプレート14には、ストップホール8および他方の取付溝4aが、取付溝4bが側壁15aを貫通する位置と対応する位置までの範囲に設けられている。これにより、デッキプレート14には、き裂2aが生じている側壁15aとの接合部16を含む領域に、ストップホール8および取付溝4aを設けることができる。
なお、ストップホール8および各取付溝4a,4bは、き裂2aの先端と対応する位置にストップホール8を設けることができ、且つデッキプレート14と側壁15aの間の空間17から挿入部材3を各取付溝4a,4bに挿入する作業を行うことができるようにしてあれば、深さ方向が、側壁15aに対して垂直な方向からずれていてもよいことは勿論である。
なお、ストップホール8および各取付溝4a,4bを設ける加工は、第1実施形態と同様にすればよい。
前記のようにしてストップホール8および各取付溝4a,4bを形成した後は、図5(b)(c)に示すように、各取付溝4a,4bに、挿入部材3を、第1実施形態の場合と同様に、接着剤(構造用接着剤)13を塗布した状態で挿入する。なお、接着剤13は、各取付溝4a,4bに挿入された挿入部材3を各取付溝4a,4bに接着して固定することができれば、他の任意の塗布の手法を採用してもよいことは、第1実施形態の場合と同様である。
その後は、接着剤13を硬化させて、各取付溝4a,4bの内側に挿入部材3を接着により固定した状態で取り付ける。
これにより、図4(b)、図5(c)に示すように、接合部16に生じたき裂2aは、き裂2aの先端に対応する部分にストップホール8が形成されると共に、ストップホール8の周壁におけるき裂2aの延びる方向と交差する方向に位置する個所同士が、挿入部材3を介して連結される。よって、接合部16には、本実施形態におけるき裂進展抑制構造が形成される。
本実施形態のき裂進展抑制工法により形成したき裂進展抑制構造は、接合部16におけるき裂2aの先端と対応する位置にストップホール8を設けたことに伴い、き裂2aの鋭くなっている先端がなくなっている。このため、本実施形態のき裂進展抑制構造が適用された接合部16は、デッキプレート14とUリブ15にて、き裂2aを開く方向の荷重が作用しても、き裂2aがストップホール8を超えた先へ進展することを抑制することができる。
また、本実施形態のき裂進展抑制構造は、万一、ストップホール8の周縁に、き裂2aの先端が残っていたとしても、デッキプレート14とUリブ15にて、き裂2aを開く方向の荷重が作用すると、その荷重は、第1実施形態と同様に、取付溝4a,4bに取り付けられた挿入部材3によって受けられるようになる。
したがって、本実施形態のき裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態のき裂進展構造は、挿入部材3におけるデッキプレート14、側壁15a、接合部16から突出している部分を、切除する加工を行ってもよいし、予め、この部分が切除された形状の挿入部材3を使用するようにしてもよいことは勿論である。
なお、本開示のき裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造は、前記各実施形態にのみ限定されるものではない。
本開示のき裂進展抑制工法およびき裂進展抑制構造の適用対象は、板材1や、橋梁のデッキプレート14とUリブ15の接合部16以外のき裂が生じた任意の金属製物体としてもよいことは勿論である。なお、金属製物体に生じたき裂は、疲労によるき裂(疲労き裂)以外のき裂であってもよい。
また、き裂が生じた金属製物体の内部形状や外形、き裂の奥行き方向に応じて、ストップホール8および取付溝4a,4bを設ける方向、配置、サイズは、適宜変更してもよいことは勿論である。また、ストップホール8および取付溝4a,4bに応じて、挿入部材3の挿入方向xの形状は適宜変更してもよいことは勿論である。
各取付溝4a,4bは、応力集中をできるだけ回避するという観点から考えると、奥側の内面が、一定の曲率の曲面とされることが好ましいが、内面が連続した曲面となっていれば、曲率が途中で変化していてもよい。
図示した挿入部材3の断面形状は、一例であって、両端寄り部分5a,5bの厚みがその間の中央部分6の厚みよりも大となるようにしてあれば、両端寄り部分5a,5bの板厚、中央部分6の板厚、両板厚の比、断面形状における長手方向とそれに直交する方向との寸法比、両端寄り部分5a,5bとその間の中央部分6の板厚が変化する位置と板厚の変化率等は適宜変更してもよい。
更に、挿入部材3は、両端寄り部分5a,5bの外面7a,7b、および、中央部分6の外面9a,9bに、曲面に連なる平面(平坦面)が部分的に存在していてもよい。同様に、各取付溝4a,4bの形状は、曲面に連なる平面(平坦面)が部分的に存在していてもよい。
金属製物体のき裂が生じた個所にストップホール8と共に設ける各取付溝4a,4bは、き裂を開く方向に作用する力を挿入部材3で受けやすくするという観点から考えると、き裂の延びる方向と直角に交差するストップホール8の直径の方向に沿う配置で設けることが好ましい。しかし、各取付溝4a,4bは、き裂との交差角度が直角からずれたストップホール8の直径の方向に沿う配置で設けてもよい。
き裂2,2aの両方の先端に設けるストップホール8、取付溝4a,4bと、取付溝4a,4bに取り付けられる挿入部材3は、サイズや形状が均一でなくてもよい。
第2実施形態は、金属製物体における任意の角度の屈曲部に適用してよい。更に、第2実施形態は、表面が凸に屈曲している部分に生じたき裂や、表面が曲面で凸面または凹面になる部分に生じたき裂に適用してもよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
1 板材(金属製物体)、2,2a き裂、3 挿入部材、4a,4b 取付溝、5a,5b 両端寄り部分、6 中央部分、7a,7b 外面、8 ストップホール、9a,9b 外面、10 開口部、11 拡幅部、12 係止部、w1 溝幅、w2 溝幅、x 挿入方向

Claims (6)

  1. 金属製物体のき裂が生じた個所に、前記き裂の先端と対応する位置にストップホールを設ける処理と、
    金属製物体のき裂が生じた個所に、前記ストップホールの周壁における前記き裂の伸びる方向と交差する前記ストップホールの直径の方向に沿う位置から、外側に延びる一対の取付溝を設ける処理と、を行い、
    前記各取付溝は、前記ストップホールの周壁に開口する開口部の溝幅が、前記ストップホールの直径の寸法よりも小さく設定され、且つ、前記各取付溝は、前記ストップホールの周壁よりも外側となる位置に、前記開口部の前記溝幅よりも大となる溝幅を有する拡幅部を備える形状として形成し、
    前記各取付溝に取り付けられる両端寄り部分の板厚が、中央部分の板厚に比して大となる形状を備えた挿入部材の前記両端寄り部分を、前記各取付溝の内側に、接着して固定する処理を行うこと
    を特徴とするき裂進展抑制工法。
  2. 前記各取付溝は、前記拡幅部から前記開口部に向けて溝幅が単調減少する係止部として形成し、
    前記各取付溝に前記挿入部材の前記両端寄り部分を挿入する状態で、前記各取付溝の各係止部に、前記挿入部材の前記両端寄り部分が係止される
    請求項1に記載のき裂進展抑制工法。
  3. 前記挿入部材は、前記中央部分の両側の外面が湾曲面とされる
    請求項1または2に記載のき裂進展抑制工法。
  4. 前記各取付溝は、前記ストップホールにおける前記き裂と直角に交差する直径の方向に沿う配置で設ける
    請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のき裂進展抑制工法。
  5. 前記ストップホールおよび前記各取付溝は、前記金属製物体に貫通させて設け、
    前記挿入部材の前記各取付溝への挿入方向に沿う方向の寸法は、前記金属製物体における前記ストップホールおよび前記各取付溝を設けた個所の厚み以上となるようにする
    請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のき裂進展抑制工法。
  6. 金属製物体のき裂が生じた個所に前記き裂の先端と対応する位置に設けられたストップホールと、
    前記ストップホールの周壁における前記き裂の伸びる方向と交差する前記ストップホールの直径の方向に沿う位置から、外側に延びる一対の取付溝と、
    前記各取付溝に取り付けられる両端寄り部分の板厚が、中央部分の板厚に比して大となる形状を備えた挿入部材と、を備え、
    前記挿入部材の前記両端寄り部分が、前記各取付溝の内側に、接着して固定された構成を有すること
    を特徴とするき裂進展抑制構造。
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