JP2019217975A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】コードを螺旋状に巻いて構成されたベルト層を有するタイヤの操縦安定性向上効果を維持しながら耐久性を損なうことなく軽量化する。【解決手段】空気入りタイヤ10は、環状のタイヤ骨格部材としてのカーカス16と、カーカス16の外周側に接合されると共に、カーカス16の外周にタイヤ周方向に螺旋状に巻かれる補強コード30を樹脂層40で被覆して構成されたベルト層26とを備えている。このベルト層26は、ベルト層26のタイヤ軸方向端部の面内剪断剛性が、ベルト層26のタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定されている。【選択図】図1
Description
本発明は、空気入りタイヤに関する。
下記特許文献1には、補強コードを被覆樹脂で被覆してなる補強コード部材を、タイヤ骨格部材の外周にタイヤ周方向に螺旋状に巻いて接合したベルト層を有するものが開示されている。この先行技術に係るベルト層では、タイヤ軸方向に沿って補強コードが等間隔に配置されている。
ところで、一般的な空気入りタイヤのタイヤ軸方向両側部は、走行時に最も屈曲の激しい部位である。そのため、タイヤ骨格部材の外周に接合されたベルト層では、特にタイヤ軸方向の両端部に応力が集中し、ベルト層に故障が生じやすくなる。他方、このベルト層端部の領域は、面内剪断剛性向上に大きく寄与する部位であり、ベルト層の端部を補強しつつ面内剪断剛性を向上させる目的で補強コードの打ち込み本数を増やす方法はよく用いられる。この方法を用いる場合、補強コードが増えることで重量が増すため、軽量化の妨げとなっていた。
本発明は上記事実を考慮し、コードを螺旋状に巻いて構成されたベルト層を有するタイヤの操縦安定性向上効果を維持しながら耐久性を損なうことなく軽量化することを目的とする。
第1の態様に係る空気入りタイヤは、環状のタイヤ骨格部材と、前記タイヤ骨格部材の外周側に接合されると共に、前記タイヤ骨格部材の外周にタイヤ周方向に螺旋状に巻かれるコードを被覆樹脂で被覆して構成されたベルト層と、を備え、前記ベルト層のタイヤ軸方向端部の面内剪断剛性が、前記ベルト層のタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定されている。
ところで、ベルト層のタイヤ軸方向端部は、走行時に最も屈曲の激しい空気入りタイヤのタイヤ軸方向両側部からの影響を受けて変形しやすい部位である。このため、ベルト層のタイヤ軸方向の端部に配置されたコードに応力が集中しやすくなる。
これに対して、第1の態様に係る空気入りタイヤでは、タイヤ骨格部材の外周側にベルト層が接合されており、ベルト層のタイヤ軸方向端部の面内剪断剛性が、ベルト層のタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定されている。このため、走行時におけるベルト層のタイヤ軸方向端部の変形を抑制し、ベルト層のタイヤ軸方向端部に配置されたコードの応力を低減させつつ、タイヤ軸方向中央部の補強コードの打ち込みを減らすことで他性能と軽量化の両立を図ることができる。
第2の態様は、第1の態様に係る空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層のタイヤ幅方向断面における前記コードの単位幅当たりの本数は、タイヤ軸方向中央よりもタイヤ軸方向端部の方が多い構成とされている。
第2の態様に係る空気入りタイヤでは、ベルト層のタイヤ幅方向断面における前記コードの単位幅当たりの本数をタイヤ軸方向中央よりもタイヤ軸方向端部の方が多い。このため、ベルト層のタイヤ軸方向端部において、タイヤ幅方向断面に配置されたコード1本あたりが負担する応力が、ベルト層のタイヤ軸方向中央よりも低減される。これにより、ベルト層のタイヤ軸方向端部の面内剪断剛性が向上され、他性能と軽量化の両立を図ることができる。
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層は、被覆樹脂で構成され、タイヤ径方向内側面が前記タイヤ骨格部材の外周側に接合されると共に、タイヤ径方向外側面が前記コードと接合された下層部と、被覆樹脂で構成され、前記下層部のタイヤ径方向外側面に接合される上層部と、を備えている。
第3の態様に係る空気入りタイヤでは、ベルト層のコードは、該コードのタイヤ径方向両側にそれぞれ配置された上層部と下層部が接合されることにより樹脂被覆されている。このため、例えば、コードを被覆樹脂で被覆してなるコード部材をタイヤ骨格部材の外周にタイヤ周方向に螺旋状に巻いて接合したベルト層を形成する場合と比較して、タイヤ軸方向に互いに隣接した被覆樹脂同士の接合処理が不要となる。これにより、被覆樹脂同士の接合処理が容易となり、空気入りタイヤの生産性が向上される。
第4の態様は、第1〜第3の何れか一態様に係る空気入りタイヤにおいて、前記ベルト層は、前記上層部を構成する前記被覆樹脂の引張弾性率が前記下層部を構成する前記被覆樹脂の引張弾性率よりも高く設定されている。
第4の態様に係る空気入りタイヤでは、ベルト層は、上層部を構成する被覆樹脂の引張弾性率が下層部を構成する被覆樹脂の引張弾性率よりも高く設定されている。このため、ベルト層のタイヤ径方向外側面は、ベルト層のタイヤ径方向内側面よりも面内剪断剛性が高くなる。これにより、走行時、路面側に位置するベルト層のタイヤ径方向外側面では空気入りタイヤにスリップ角を付与した場合の横力を充分に発生させることができる。一方で、ベルト層のタイヤ径方向外側面よりも曲率の高いタイヤ径方向内側面は、該外側面よりも面内剪断剛性を低くすることで曲げ変形に対する柔軟性が付与され、該内側面の被覆樹脂の破断が抑制される。その結果、空気入りタイヤの操縦安定性の確保と耐久性の向上とを両立することができる。
以上説明したように本発明の空気入りタイヤによれば、コードを螺旋状に巻いて構成されたベルト層を有するタイヤの操縦安定性向上効果を維持しながら耐久性を損なうことなく軽量化する、という優れた効果を有する。
以下、図1〜図4を用いて、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ10について説明する。なお、各図においてタイヤ軸方向(タイヤ幅方向と読み替えてもよい)を矢印Wで示し、タイヤ径方向を矢印Rで示している。タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を意味する。
また、タイヤ軸方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ軸方向外側」、タイヤ軸方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ軸方向内側」として説明する。更に、タイヤ径方向に沿ってタイヤ軸線から遠い側を「タイヤ径方向外側」、タイヤ径方向に沿ってタイヤ軸線に近い側を「タイヤ径方向内側」とする。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10は、例えば、乗用車に用いられる所謂ラジアルタイヤであり、ビードコア12が埋設された一対のビード部20を備え、一方のビード部20と他方のビード部20との間に、1枚のカーカスプライ14からなるカーカス16が跨っている。なお、図1は、空気入りタイヤ10の空気充填前の自然状態の形状を示している。
カーカスプライ14は、空気入りタイヤ10のラジアル方向に延びる複数本のコード(図示せず)をコーティングゴム(図示せず)で被覆して形成されている。即ち、本実施形態の空気入りタイヤ10は、所謂ラジアルタイヤである。カーカスプライ14のコードの材料は、例えば、PETであるが、従来公知の他の材料であっても良い。
カーカスプライ14は、タイヤ幅方向の端部分がビードコア12をタイヤ径方向外側に折り返されている。カーカスプライ14は、一方のビードコア12から他方のビードコア12に跨る部分が本体部14Aと呼ばれ、ビードコア12から折り返されている部分が折り返し部14Bと呼ばれる。
カーカスプライ14の本体部14Aと折返し部14Bとの間には、ビードコア12からタイヤ径方向外側に向けて厚さが漸減するビードフィラー18が配置されている。なお、空気入りタイヤ10において、ビードフィラー18のタイヤ径方向外側端18Aからタイヤ径方向内側の部分がビード部20とされている。
カーカス16のタイヤ内側にはゴムからなるインナーライナー22が配置されており、カーカス16のタイヤ幅方向外側には、第1のゴム材料からなるサイドゴム層24が配置されている。
なお、本実施形態では、ビードコア12、カーカス16、ビードフィラー18、インナーライナー22、及びサイドゴム層24によってタイヤケース25が構成されている。タイヤケース25は、言い換えれば、空気入りタイヤ10の骨格を成すタイヤ骨格部材のことである。
なお、本実施形態では、ビードコア12、カーカス16、ビードフィラー18、インナーライナー22、及びサイドゴム層24によってタイヤケース25が構成されている。タイヤケース25は、言い換えれば、空気入りタイヤ10の骨格を成すタイヤ骨格部材のことである。
(ベルト層)
カーカス16のクラウン部の外側、言い換えればカーカス16のタイヤ径方向外側には、ベルト層26が配置されており、ベルト層26はカーカス16の外周面に密着している。ベルト層26は、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された複数本(本実施形態では3本)の補強コード30を、被覆樹脂としての樹脂層40で被覆することにより形成されている。なお、ベルト層26の製造方法は後述する。
カーカス16のクラウン部の外側、言い換えればカーカス16のタイヤ径方向外側には、ベルト層26が配置されており、ベルト層26はカーカス16の外周面に密着している。ベルト層26は、タイヤ周方向に螺旋状に巻回された複数本(本実施形態では3本)の補強コード30を、被覆樹脂としての樹脂層40で被覆することにより形成されている。なお、ベルト層26の製造方法は後述する。
図2に示されるように、補強コード30は、コード材32をコーティング樹脂34で被覆して形成されている。コード材32は、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成することができる。また、コード材32は、カーカスプライ14のコードよりも太く、かつ、強力(引張強度)が大きいものを用いることが好ましい。本実施形態のコード材32は、スチールコードである。補強コード30としては、例えば、直径が0.225mmの“1×5”のスチールコードを用いることができるが、従来公知の他の構造のスチールコードを用いることもできる。
なお、コーティング樹脂34は、後述する樹脂層40との接着性を向上させる接着層として機能する。このコーティング樹脂34には、樹脂層40を構成する樹脂材料よりも水分が浸透し難いもの、言い換えれば、水分を吸収し難いものを用いることが好ましい。具体的には、変性オレフィン系樹脂(変性ポリエチレン系樹脂、変性ポリプロピレン系樹脂等)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、変性ポリエステル系樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を主成分(主剤)として含むものが挙げられる。これらの中でも、金属部材及び樹脂層との接着性の観点から、変性オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、変性ポリエステル系樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むホットメルト接着剤が好ましく、変性オレフィン系樹脂及び変性ポリエステル系樹脂より選ばれる少なくとも1種を含むホットメルト接着剤がより好ましく、その中でも酸変性オレフィン系樹脂及び変性ポリエステル系樹脂より選ばれる少なくとも1種を含むホットメルト接着剤がさらに好ましく、酸変性ポリエステル系樹脂を含むホットメルト接着剤が特に好ましい。
また、コーティング樹脂34の厚みは、一例として、0.05mm程度とすることができるが、0.05mmよりも薄い場合、0.05mmよりも厚い場合も有り得る。
また、コーティング樹脂34の厚みは、一例として、0.05mm程度とすることができるが、0.05mmよりも薄い場合、0.05mmよりも厚い場合も有り得る。
補強コード30を被覆する被覆樹脂としての樹脂層40は、タイヤ径方向内側面がカーカス16の外周面(外周側)に接合される下層部42と、下層部42のタイヤ径方向外側面に接合される上層部44と、によって構成されている。そして、下層部42と上層部44との間に補強コード30が埋設されている。これにより、補強コード30が、樹脂層40で被覆されている。
なお、下層部42及び上層部44を構成する樹脂には、サイドゴム層24を構成するゴム、及び後述するトレッド36を構成する第2のゴム材料よりも引張弾性率の高い樹脂材料が用いられている。さらに、上層部44を構成する樹脂には、下層部42を構成する樹脂よりも引張弾性率の高い樹脂材料が用いられている。なお、下層部42と上層部44を構成する樹脂材料を、同一の樹脂材料としてもよい。
図2及び図3(A)、(B)に示されるように、ベルト層26には、螺旋状に巻回された3本の補強コード30が用いられている。具体的には、ベルト層26のタイヤ軸方向一端部から他端部まで、螺旋状に巻回して配置されたベースコード30Aと、ベルト層26のタイヤ軸方向両端部近傍に螺旋状に巻回された一対のサイドコード30Bが用いられている。また、本実施形態では、ベースコード30Aとサイドコード30Bは同一の断面形状とされ、かつ、同一材料で構成されている。なお、図2及び図3(A)、(B)では、説明の便宜上、ベースコード30Aとサイドコード30Bの色調を変えて図示している。
これらの図に示されるように、ベースコード30Aは、ベルト層26のタイヤ軸方向断面視でタイヤ軸方向に沿って略均一に配置されている。また、一対のサイドコード30Bは、ベルト層26のベルト幅方向両端部で、巻回されたベースコード30Aのコード間に挿入されるように巻回されている。
このため、ベルト層26のタイヤ幅方向断面における補強コード30の単位幅当たりの本数は、タイヤ軸方向中央よりもタイヤ軸方向端部の方が多い構成とされている(図1参照)。これにより、ベルト層26は、ベルト層26のタイヤ軸方向両端部の面内剪断剛性が、ベルト層26のタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定されている。
また、周上でベースコード30Aとサイドコード30Bがタイヤ径方向に重なることがないため、補強コード30は、タイヤ周方向において厚さが略均一となっている。
なお、サイドコード30Bは、ベースコード30Aと同一の断面形状を有し、ベースコード30Aよりも引張強度が大きい材料で構成してもよい。また例えば、サイドコード30Bを、ベースコード30Aと同一の断面形状を有し、ベースコード30Aよりも引張強度が小さい材料で構成してもよい。さらに、サイドコード30Bを、ベースコード30Aよりも小さな断面形状を有し、ベースコード30Aと同一材料で構成されるものとしてもよい。又は、サイドコード30Bを、ベースコード30Aよりも大きな断面形状を有し、ベースコード30Aと同一材料で構成されるものとしてもよい。
なお、本実施形態の樹脂層40の下層部42及び上層部44を構成する樹脂としては、弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)、及び熱硬化性樹脂等を用いることができる。走行時の弾性と製造時の成形性を考慮すると、熱可塑性エラストマーを用いることが望ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。さらに、熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定されている荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸びが50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上であるものを用いることができる。
下層部42又は上層部44を構成する樹脂の引張弾性率(JIS K7113:1995に規定される)は、50MPa以上が好ましい。また、下層部42又は上層部44を構成する樹脂の引張弾性率の上限は、1000MPa以下とすることが好ましい。なお、下層部42又は上層部44を構成する樹脂の引張弾性率は、200〜700MPaの範囲内が特に好ましい。
図1に示すように、本実施形態のベルト層26の厚さ寸法tは、補強コード30の直径寸法よりも大きくすることが好ましい、言い換えれば、補強コード30が完全に樹脂層40に埋設されていることが好ましい。ベルト層26の厚さ寸法tは、空気入りタイヤ10が乗用車用の場合、具体的には、0.70mm以上とすることが好ましい。
ベルト層26のタイヤ径方向外側には、第2のゴム材料からなるトレッド36が配置されている。トレッド36に用いる第2のゴム材料は、従来一般公知のものが用いられる。トレッド36には、排水用の溝37が形成されている。また、トレッド36のパターンも従来一般公知のものが用いられる。
タイヤ軸方向に沿って計測するベルト層26の幅BWは、タイヤ軸方向に沿って計測するトレッド36の接地幅TWに対して75%以上とすることが好ましい。なお、ベルト層26の幅BWの上限は、接地幅TWに対して110%とすることが好ましい。
ここで、トレッド36の接地幅TWとは、空気入りタイヤ10をJATMA YEAR BOOK(2018年度版、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、静止した状態で水平な平板に対して回転軸が平行となるように配置し、最大の負荷能力に対応する質量を加えたときのものである。なお、使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
また、ベルト層26の面内剪断剛性は、ゴム被覆で形成されたベルト以上であることが好ましい。
(空気入りタイヤの製造方法)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の製造方法の一例を説明する。
まず、公知のタイヤ成形ドラム(不図示)の外周に、ゴム材料からなるインナーライナー22、ビードコア12、ゴム材料からなるビードフィラー18、コードをゴム材料で被覆したカーカスプライ14、及びサイドゴム層24からなる未加硫のタイヤケース25を形成する。ここまでの製造方法は、従来通りである。
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の製造方法の一例を説明する。
まず、公知のタイヤ成形ドラム(不図示)の外周に、ゴム材料からなるインナーライナー22、ビードコア12、ゴム材料からなるビードフィラー18、コードをゴム材料で被覆したカーカスプライ14、及びサイドゴム層24からなる未加硫のタイヤケース25を形成する。ここまでの製造方法は、従来通りである。
一方、ベースコード30Aとサイドコード30Bのコード材32をそれぞれコーティング樹脂で被覆し、3本の補強コード30とする。
ベルト層26は、樹脂層40の下層部42をベルト成形ドラム46の外周面に密着させ、3本の補強コード30をそれぞれ螺旋状に巻回した後に、樹脂層40の上層部44を下層部42に接合することにより形成されている。
以下に、ベルト層26の製造工程の一例を図3(A)、(B)及び図4にしたがって説明する。
まず、ベルト成形ドラム46の外周面に円環状の下層部42を密着させた状態にし、ベルト成形ドラム46の近傍にコード供給装置48、加熱装置50、押付ローラ52、及び冷却ローラ54を移動可能に配置する。
まず、ベルト成形ドラム46の外周面に円環状の下層部42を密着させた状態にし、ベルト成形ドラム46の近傍にコード供給装置48、加熱装置50、押付ローラ52、及び冷却ローラ54を移動可能に配置する。
コード供給装置48は、補強コード30を巻き付けたリール48Aと、このリール48Aから巻き出された補強コード30に所定の張力を付与しながら、ベルト成形ドラム46の外周に案内するためのガイド部材(図示せず)とを含んで構成されている。
樹脂供給装置49は、上層部44を構成する樹脂材料を下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに送り出すための部材である。一例として、樹脂供給装置49は筒状とされ、内部に樹脂材料が供給され、当該樹脂材料は、口部49Aを通って下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに送り出される。
加熱装置50は、熱可塑性樹脂に熱風を吹き当てて、吹き当てた部分を加熱し溶融させるものである。この熱風が吹き当てられる箇所は、補強コード30をベルト成形ドラム46に巻き付ける工程では被覆樹脂としての下層部42のタイヤ径方向外側面42Aである。また、下層部42に被覆樹脂としての上層部44を押し当てる工程では、下層部42のタイヤ径方向外側面42A、及び、外側面42Aに接合された補強コード30である。
加熱装置50は、電熱線(図示せず)で加熱した空気をファン(図示せず)で発生させた気流で吹出し口51から吹き出すようになっている。なお、加熱装置50の構成は、上記構成に限定されず、熱可塑性樹脂を加熱溶融できれば、どのような構成であってもよい。例えば、溶融させる箇所に熱鏝を接触させて接触部分を加熱溶融させてもよい。また、溶融させる箇所を、輻射熱で加熱溶融させてもよく、赤外線を照射して加熱溶融させてもよい。
押付ローラ52は、上層部44を下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに押し付けるものであり、押付力Fを調整できるようになっている。また、押付ローラ52のローラ表面には、溶融状態の樹脂材料の付着を防ぐための加工が施されている。そして、押付ローラ52は、回転自在となっており、上層部44を下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに押し付けている状態では、ベルト成形ドラム46の回転方向(図3及び図4に示す矢印A方向)に対して従動回転(図4に示す矢印B方向)するようになっている。
また、冷却ローラ54は、押付ローラ52よりもベルト成形ドラム46の回転方向下流側に配置され、上層部44を下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに押し付けつつ、上層部44を冷却するものである。この冷却ローラ54は、押付ローラ52と同様に、押付力を調整でき、かつ、ローラ表面に溶融状態の樹脂材料の付着を防ぐための加工が施されている。さらに、冷却ローラ54は、押付ローラ52と同様に、回転自在となっており、上層部44を下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに押し付けている状態では、ベルト成形ドラム46の回転方向に対して従動回転するようになっている。また、冷却ローラ54は、ローラ内部を液体(例えば、水など)が流通するようになっており、この液体の熱交換によりローラ表面に接触した部材(本実施形態では、上層部44)などを冷却することができる。なお、溶融状態の樹脂材料を自然冷却させる場合には、冷却ローラ54を省略してもよい。
次に、ベルト成形ドラム46を矢印A方向(図3及び図4参照)に回転させると共にコード供給装置48からベースコード30A(補強コード30)をベルト成形ドラム46の外周面に向けて送り出す。そして、ベースコード30Aをベルト層26(下層部42のタイヤ径方向外側面42A)のタイヤ軸方向一端部から他端部まで、螺旋状に巻回する(図3(A)参照)。
この際、図示はしないが、加熱装置50の吹出し口51から下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに向かって熱風を吹き出して加熱し、下層部42のタイヤ径方向外側面42Aの表面を溶融させながら、ベースコード30Aのコーティング樹脂34を下層部42に付着させる。
次に、コード供給装置48からサイドコード30B(補強コード30)をベルト成形ドラム46の外周面に向けて送り出す。そして、サイドコード30Bをベルト層26(下層部42のタイヤ径方向外側面42A)のタイヤ軸方向両端部近傍にそれぞれ螺旋状に巻回する(図3(B)参照)。この際、上記したベースコード30Aの巻回工程と同様に、加熱装置50を用いて下層部42のタイヤ径方向外側面42Aの表面を溶融させながら、サイドコード30Bのコーティング樹脂34を下層部42に付着させる。
その後、ベルト成形ドラム46を矢印A方向(図3及び図4参照)に回転させると共に樹脂供給装置49から上層部44を構成する樹脂材料を下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに向けて送り出す。
そして、加熱装置50の吹出し口51から下層部42のタイヤ径方向外側面42A及び補強コード30に向かって熱風を吹き出して加熱する。そして、下層部42のタイヤ径方向外側面42A及び補強コード30のコーティング樹脂34の表面を溶融させながら、上層部44の樹脂材料を下層部42に付着させつつ、上層部44を押付ローラ52で下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに押し付ける。この押付ローラ52によって、上層部44の樹脂材料は、タイヤ軸方向に膨出するように変形(押し潰しによる変形)して、下層部42のタイヤ径方向外側面42Aの全域と接触して溶着する。
その後、上層部44の溶融部分は、冷却ローラ54に接触して固化され、下層部42と上層部44の溶着が完了する。これにより、ベルト成形ドラム46の外周面に巻回された補強コード30が樹脂層40で被覆されたベルト層26が形成される。
その後、上層部44の溶融部分は、冷却ローラ54に接触して固化され、下層部42と上層部44の溶着が完了する。これにより、ベルト成形ドラム46の外周面に巻回された補強コード30が樹脂層40で被覆されたベルト層26が形成される。
なお、補強コード30を螺旋状に巻き付けるには、コード供給装置48のガイド部材(図示せず)の位置を、タイヤケース25の回転に伴ってタイヤ軸方向に移動させたり、タイヤケース25をタイヤ軸方向に移動させたりすればよい。
次に、樹脂層40が固化したベルト層26をベルト成形ドラム46から取り外し、タイヤ成形ドラムのタイヤケースの径方向外側に配置する。そして、タイヤケース25を拡張してタイヤケース25の外周面、言い換えればカーカス16の外周面をベルト層26の内周面(下層部42のタイヤ径方向内側面42B)に圧着する。
最後に、ベルト層26の外周面に、一般の空気入りタイヤと同様に未加硫のトレッド36を貼り付け、生タイヤが完成する。
最後に、ベルト層26の外周面に、一般の空気入りタイヤと同様に未加硫のトレッド36を貼り付け、生タイヤが完成する。
このようにして製造された生タイヤは、一般の空気入りタイヤと同様に加硫成形モールドで加硫成形され、空気入りタイヤ10が完成する。
(作用、効果)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用、効果を説明する。
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用、効果を説明する。
本実施形態の空気入りタイヤ10は、カーカス16の外周面にタイヤ周方向に螺旋状に巻かれる補強コード30を被覆樹脂としての樹脂層40で被覆して構成されたベルト層26を備えている。このベルト層26は、ベルト層26のタイヤ幅方向断面における補強コード30の単位幅当たりの本数をタイヤ軸方向中央よりもタイヤ軸方向両端部の方が多い構成とされている。そのため、ベルト層26のタイヤ軸方向端部に配置された補強コード30一本あたりの負担する応力を低減させることができ、ベルト層26のタイヤ軸方向両端部の面内剪断剛性が、ベルト層26のタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定されている。
ここで、ベルト層26のタイヤ軸方向両端部は、走行時に最も屈曲の激しい空気入りタイヤ10のタイヤ軸方向両側部からの影響を受けて変形しやすい部位である。このため、ベルト層26のタイヤ軸方向の端部に配置された補強コード30に応力が集中しやすくなる。
これに対して、本実施形態の空気入りタイヤ10では、ベルト層26のタイヤ軸方向両端部の面内剪断剛性が、ベルト層26のタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定されている。このため、走行時におけるベルト層26のタイヤ軸方向両端部の変形が抑制される。これにより、補強コード30の樹脂層40への干渉が低減され、空気入りタイヤ10の耐久性を損なうことなく操縦安定性効果を維持することができる。さらに、ベルト層26におけるタイヤ軸方向中央部の補強コード30の打ち込みを減らすことで、空気入りタイヤ10の軽量化を図ることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ10では、ベルト層26の補強コード30は、該補強コード30のタイヤ径方向両側にそれぞれ配置された上層部44と下層部42が接合されることにより樹脂被覆されている。このため、例えば、コードを被覆樹脂で被覆してなるコード部材をタイヤ骨格部材の外周にタイヤ周方向に螺旋状に巻いて接合したベルト層を形成する場合と比較して、タイヤ軸方向に互いに隣接した被覆樹脂同士の接合処理が不要となる。これにより、被覆樹脂同士の接合処理が容易となり、空気入りタイヤ10の生産性が向上される。
また、本実施形態の空気入りタイヤ10では、ベルト層26は、上層部44を構成する被覆樹脂の引張弾性率が下層部42を構成する被覆樹脂の引張弾性率よりも高く設定されている。このため、ベルト層26のタイヤ径方向外側面は、ベルト層26のタイヤ径方向内側面よりも面内剪断剛性が高くなる。これにより、走行時、路面側に位置するベルト層26のタイヤ径方向外側面では空気入りタイヤにスリップ角を付与した場合の横力を充分に発生させることができる。一方で、ベルト層26のタイヤ径方向外側面よりも曲率の高いタイヤ径方向内側面は、該外側面よりも面内剪断剛性を低くすることで曲げ変形に対する柔軟性が付与され、下層部42の破断が抑制される。その結果、空気入りタイヤ10の操縦安定性の確保と耐久性の向上とを両立することができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、ベルト層26は、下層部42の表面に補強コード30を巻回させた後、樹脂供給装置49から上層部44を構成する樹脂材料を下層部42のタイヤ径方向外側面42Aに向けて送り出すことで形成される。しかしながら、本発明はこれに限らない。図5(A)、(B)に示されるように、樹脂層40の上層部62を射出成型により形成してもよい。具体的には、ベルト成形ドラム64の外周面で下層部42の表面に補強コード30を螺旋状に巻回させた後、ベルト成形ドラム64のタイヤ径方向外側から外型66を嵌合させる。このようにして、円環状の金型内に下層部42及び補強コード30を設置し、金型を用いた射出成型により下層部42のタイヤ径方向外側の空間に上層部62を構成する樹脂材料を充填する。これにより、下層部42及び上層部62により樹脂被覆されたベルト層60を形成してもよい。
また、例えば、図6(A)、(B)に示されるように、樹脂層40の上層部72を、複数の樹脂製のシート材74を積層させて熱プレスすることにより形成してもよい。具体的には、ベルト成形ドラム76の外周面で下層部42の表面に補強コード30を螺旋状に巻回させた後、ベルト成形ドラム76のタイヤ径方向外側に複数(ここでは3枚)の樹脂製のシート材74を積層させる。その後、ベルト成形ドラム76のタイヤ径方向外側に配置された外型78を用いて熱プレスすることで、下層部42のタイヤ径方向外側に上層部72が形成される。これにより、下層部42及び上層部72により樹脂被覆されたベルト層70を形成してもよい。
また、本実施形態では、補強コード30がベースコード30Aと一対のサイドコード30Bとで構成されるものとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、図7(A)に示されるように、一本の補強コード80で構成されるものとしてもよい。この場合、ベルト層26のタイヤ幅方向断面における補強コード80の単位幅当たりの巻き数が、タイヤ軸方向中央よりもタイヤ軸方向端部の方が多くなる構成とする。これにより、ベルト層26のタイヤ軸方向両端部の面内剪断剛性を、ベルト層26のタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定することができ、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、図7(B)に示されるように、一本のセンターコード92と、センターコード92の両端部に連結具96を介してそれぞれ連結された一対のサイドコード94を備える補強コード90としてもよい。この場合、一対のサイドコード94は、センターコード92と比較してタイヤ周方向の曲げ剛性が高くなるように設定する。これにより、補強コード90がベルト層26のタイヤ軸方向断面視でタイヤ軸方向に沿って略均一に配置される構成としても、ベルト層26のタイヤ軸方向両端部の面内剪断剛性を、ベルト層26のタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定することができる。また、当然に、ベルト層26のタイヤ幅方向断面における補強コード90の単位幅当たりの本数がタイヤ軸方向中央よりもタイヤ軸方向両端部の方が多い構成としてもよい。
また、例えば、一対のサイドコード94がセンターコード92と比較してタイヤ周方向の曲げ剛性が高くなるように設定された補強コード90では、サイドコード94とセンターコード92の曲げ剛性の強度の差如何によって、ベルト層26のタイヤ幅方向断面における補強コード90の単位幅当たりの本数がタイヤ軸方向中央よりもタイヤ軸方向両端部の方が少ない構成としてもよい。この場合であっても、ベルト層26のタイヤ軸方向両端部の面内剪断剛性がタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定される限り、本発明の課題を解決することができる。
10…空気入りタイヤ、16…カーカス、26…ベルト層、30…補強コード(コード)、40…樹脂層(被覆樹脂)、42…下層部、44…上層部、60…ベルト層、62…上層部、70…ベルト層、72…上層部、80…補強コード(コード)、90…補強コード(コード)
Claims (4)
- 環状のタイヤ骨格部材と、
前記タイヤ骨格部材の外周側に接合されると共に、前記タイヤ骨格部材の外周にタイヤ周方向に螺旋状に巻かれるコードを被覆樹脂で被覆して構成されたベルト層と、を備え、
前記ベルト層のタイヤ軸方向端部の面内剪断剛性が、前記ベルト層のタイヤ軸方向中央部の面内剪断剛性よりも高く設定されている、
空気入りタイヤ。 - 前記ベルト層のタイヤ幅方向断面における前記コードの単位幅当たりの本数は、タイヤ軸方向中央よりもタイヤ軸方向端部の方が多い請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ベルト層は、被覆樹脂で構成され、タイヤ径方向内側面が前記タイヤ骨格部材の外周側に接合されると共に、タイヤ径方向外側面が前記コードと接合された下層部と、
被覆樹脂で構成され、前記下層部のタイヤ径方向外側面に接合される上層部と、
を備える請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。 - 前記ベルト層は、前記上層部を構成する前記被覆樹脂の引張弾性率が前記下層部を構成する前記被覆樹脂の引張弾性率よりも高く設定されている、
請求項3に記載の空気入りタイヤ。
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