本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態においては、診療器具および診療装置の1つの例示的形態として、歯科診療に用いることが可能な診療器具および診療装置について説明する。なお、診療器具および診療装置に対しては、歯科に限らず、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、および獣医科など、あらゆる医科の診療にも適用することが可能である。また、診療には、診断および治療が含まれる。
[管理システムの概要]
図1は、本実施の形態に係る管理システム1000の構成を説明するための概略図である。本実施の形態においては、歯科用診療装置10(以下、単に「診療装置10」と称する)に医療用ハンドピースなどの診療器具4を取り付けることで、術者が歯科診療を行うことができる。
診療器具4は、使用時に患者に接触することで様々な細菌やウィルスなどによって汚染される可能性がある。このため、使用後の診療器具4のメンテナンスにおいては、次の患者に使用する前に滅菌などのメンテナンス処理を診療器具4に施す必要がある。本実施の形態においては、メンテナンス処理時の工程として、洗浄装置60によって診療器具4を洗浄するメンテナンス処理を行うための洗浄工程と、給油装置70によって診療器具4を給油するメンテナンス処理を行うための給油工程と、滅菌装置80によって診療器具4を滅菌するメンテナンス処理を行うための滅菌工程とが設けられている。なお、洗浄装置60、給油装置70、および滅菌装置80は、「処理装置」の一実施形態であり、以下では、これらをまとめて「メンテナンス処理装置」とも称する。なお、本実施の形態における滅菌装置80は、高温蒸気滅菌(オートクレーブ)を行うものであるが、他の滅菌処理を行うものであってもよい。
一般的に、衛生上の観点から、診療器具4のメンテナンスにおいては、各メンテナンス処理が行われる順番が予め決められている。本実施の形態においては、最初に洗浄装置60による洗浄工程、次に給油装置70による給油工程、最後に滅菌装置80による滅菌工程といったように、予め決められた工程順で各メンテナンス処理が行われる。このように、予め決められた工程順でメンテナンス処理が行われることで、メンテナンス処理後の診療器具4を安全に次の患者に使用することができる。特に滅菌は、洗浄または給油によっても診療器具4に菌が付着する虞があるため、他の全てのメンテナンス処理が完了した最後のメンテナンス処理として行われる必要がある。
しかし、複数のメンテナンス処理を予め決められた工程順で行うことを術者頼りにしてしまうと、人為的ミスなどによって、一部のメンテナンス処理がスキップされたり、同じメンテナンス処理が重複して行われたりといったことが起こり得る。そこで、本実施の形態においては、診療器具4に取り付けられたRFIDタグ40を用いることで、予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理が行われたか否かについて診療器具4ごとに管理するようになっている。なお、診療器具4のメンテナンスにおいて、予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理が行われないようなエラーを、「メンテナンスエラー」とも称する。以下、本実施の形態における診療器具4のメンテナンスについて説明する。
図1に示すように、複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われることで診療器具4のメンテナンスを管理する管理システム1000は、洗浄装置60、給油装置70、および滅菌装置80を含む複数のメンテナンス処理装置と、診療器具4とを備える。
診療器具4は、診療装置10への取り付け、および診療装置10からの取り外しが可能である。診療器具4の本体部48には、RFIDタグ40が取り付けられている。本実施の形態に係るRFIDタグ40は、診療器具4の本体部48に取付け可能な弾性バンド式のICタグである。なお、RFIDタグ40は、弾性バンド式に限らず、診療器具4の本体部48に埋め込まれるような埋め込み式のICタグであってもよい。
RFIDタグ40には、後述するRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)チップ45が内蔵されている。RFICチップ45は、診療器具4を識別するための識別番号などの各種情報を記憶することが可能である。RFICチップ45は、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数mm〜数m)の無線通信によって、情報の読み書きを行うことができる。なお、本実施の形態に係るRFICチップ45は、パッシブ型であり、読み取り装置(後述するリーダライタ)から発信される電波をエネルギー源として動作可能である。このため、RFIDタグ40に電池を内蔵する必要がない。なお、RFICチップ45は、パッシブ型に限らず、RFIDタグ40に内蔵された電池からの電力をエネルギー源として動作するアクティブ型でもよい。
日本国内においてRFIDタグ40に使用できる周波数帯は、HF帯(13.56MHz)およびUHF帯(915MHz〜930MHz,いわゆる920MHz帯)の2種類である。HF帯は、非接触ICカードなどでも広く使用されており、極近距離でRFIDタグ40の読み取りが可能である。一方、UHF帯は、HF帯よりも電波の回り込みを期待でき、HF帯よりも遠い距離でもRFIDタグ40の読み取りが可能である。なお、欧州においては、860MHz帯の周波数をRFIDタグ40に使用できる。RFIDタグ40に使用できる周波数帯は、上記の周波数帯に限らず、国や規制により変更されることがある。
洗浄装置60は、処理部61を含む。洗浄装置60の処理部61は、チャンバ内に設置された診療器具4に対して、洗浄、すすぎ、消毒、および乾燥などのメンテナンス処理を施すことで、診療器具4に付着した汚れを取り除く。
洗浄装置60には、診療器具4に取り付けられたRFIDタグ40と通信可能なリーダライタ60aが取り付けられている。洗浄装置60の処理部61は、リーダライタ60aによって電磁気的に読み取られたRFIDタグ40に記憶された情報に基づき、診療器具4に対して洗浄などのメンテナンス処理を行う。
給油装置70は、処理部71を含む。給油装置70の処理部71は、チャンバ内に設置された診療器具4に対して、給油などのメンテナンス処理を施すことで、診療器具4に潤滑油となるオイルを補充する。
給油装置70には、診療器具4に取り付けられたRFIDタグ40と通信可能なリーダライタ70aが取り付けられている。給油装置70の処理部71は、リーダライタ70aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された情報に基づき、診療器具4に対して給油などのメンテナンス処理を行う。
また、給油装置70は、処理装置側制御部75として、警告制御部72と禁止制御部73とを含む。
警告制御部72は、給油装置70に設けられた図示しないLED(Light Emitting Diode)などのランプを点灯させたり、給油装置70に設けられた図示しないスピーカから音を出力させたりすることで、警告を発生させる制御を行う。なお、警告制御部72は、ランプおよびスピーカに限らず、図示しない表示画面に警告画像を表示するなど、その他の手段を用いて警告を発生するものであってもよい。本実施の形態においては、警告制御部72は、リーダライタ70aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された情報に基づき、給油の前工程である洗浄が行われていないと判断した場合に、警告を発生する。このように、警告制御部72は、洗浄工程をスキップして給油工程が行われるといったメンテナンスエラーが生じた場合に、ランプやスピーカを用いて警告を発生させる制御を行う。
禁止制御部73は、給油工程において、診療器具4に対する給油などのメンテナンス処理を禁止する制御を行う。本実施の形態においては、禁止制御部73は、リーダライタ70aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された情報に基づき、給油の前工程である洗浄が行われていないと判断した場合に、給油などのメンテナンス処理を禁止する制御を行う。このように、禁止制御部73は、洗浄工程をスキップして給油工程が行われるといったメンテナンスエラーが生じた場合に、給油工程における給油を禁止する制御を行う。
滅菌装置80は、処理部81を含む。たとえば、滅菌装置80がオートクレーブ滅菌装置の場合、滅菌装置80の処理部81は、チャンバ内に設置された診療器具4に対して、高温高圧の飽和水蒸気による滅菌処理(オートクレーブ)を行うことで、診療器具4に付着した被滅菌物を滅菌する。
滅菌装置80には、診療器具4に取り付けられたRFIDタグ40と通信可能なリーダライタ80aが取り付けられている。滅菌装置80の処理部81は、リーダライタ80aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された情報に基づき、診療器具4に対して滅菌などのメンテナンス処理を行う。
また、滅菌装置80は、処理装置側制御部85として、警告制御部82と禁止制御部83とを含む。
警告制御部82は、滅菌装置80に設けられた図示しないLEDなどのランプを点灯させたり、滅菌装置80に設けられた図示しないスピーカから音を出力させたりすることで、警告を発生させる制御を行う。なお、警告制御部82は、ランプおよびスピーカに限らず、図示しない表示画面に警告画像を表示するなど、その他の手段を用いて警告を発生するものであってもよい。本実施の形態においては、警告制御部82は、リーダライタ80aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された情報に基づき、滅菌の前工程である洗浄および給油の少なくともいずれかが行われていないと判断した場合に、警告を発生する。このように、警告制御部82は、洗浄工程や給油工程をスキップして滅菌工程が行われるといったメンテナンスエラーが生じた場合に、ランプやスピーカを用いて警告を発生させる制御を行う。
禁止制御部83は、滅菌工程において、診療器具4に対する滅菌などのメンテナンス処理を禁止する制御を行う。本実施の形態においては、禁止制御部83は、リーダライタ80aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された情報に基づき、滅菌の前工程である洗浄および給油の少なくともいずれかが行われていないと判断した場合に、滅菌などのメンテナンス処理を禁止する制御を行う。このように、禁止制御部83は、洗浄工程や給油工程をスキップして滅菌工程が行われるといったメンテナンスエラーが生じた場合に、滅菌工程における滅菌を禁止する制御を行う。
なお、診療器具4のメンテナンスにおいては、洗浄、給油、および滅菌に限らず、他のメンテナンス処理が診療器具4に施されてもよい。たとえば、洗浄と給油との間に、消毒などのメンテナンス処理が診療器具4に施されてもよい。
[診療装置の構成]
図2は、本実施の形態に係る診療装置10の外観構成を説明するための概略図である。図3は、本実施の形態に係る診療装置10の内部構成を説明するためのブロック図である。
図2および図3に示すように、診療装置10は、歯科用診療装置であり、診療椅子1と、フートコントローラ5と、トレーテーブル3と、制御装置9と、インスツルメントホルダ50と、操作パネル8と、表示モニタ6と、ベースンユニット2と、照明装置(無影灯)7とを備える。
診療椅子1は、患者の頭を支えるヘッドレスト1aと、患者の背中を支える背もたれ1bと、患者のでん部を支える座面シート1cと、患者の足を支える足置き台1dと、シート駆動部11とを備える。
シート駆動部11は、チェア制御基板上に実装されたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などによって構成され、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dのそれぞれの駆動を制御する。
座面シート1cは、シート駆動部11の動作に基づき上昇または下降する。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dのそれぞれは、シート駆動部11の動作に基づき座面シート1cに対して垂直方向または水平方向に移動する。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dが座面シート1cに対して垂直方向に位置すると、診療椅子1に座った患者が座位姿勢になる。ヘッドレスト1a、背もたれ1b、および足置き台1dが座面シート1cに対して水平方向に位置すると、診療椅子1に座った患者が仰向け姿勢になる。このように、シート駆動部11は、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dを駆動させて診療椅子1の姿勢を変更する。
なお、ヘッドレスト1a、背もたれ1b、座面シート1c、および足置き台1dは、それぞれ専用のシート駆動部11によって駆動されるものに限らず、1または複数のシート駆動部11を兼用してもよい。また、ヘッドレスト1aは手動としてもよいし、足置き台1dを用いない構成としてもよい。
フートコントローラ5は、ユーザの足踏操作を受け付ける複数のスイッチ(ペダル)を有する。ユーザは、これら複数のスイッチそれぞれに対して所定の機能を割り当てることができる。
ユーザは、診療椅子1の姿勢を変更する機能をフートコントローラ5のスイッチに対して割り当てることができる。ユーザが、診療椅子1の姿勢を変更する機能が割り当てられたスイッチを足踏操作すると、フートコントローラ5は、シート駆動部11に制御信号を出力する。シート駆動部11は、その制御信号に基づき、ヘッドレスト1aなどを駆動させる。
ユーザは、診療器具4を駆動する機能をフートコントローラ5のスイッチに対して割り当てることができる。ユーザが、診療器具4を駆動する機能が割り当てられたスイッチを足踏操作すると、フートコントローラ5は、後述する診療器具駆動部14に制御信号を出力する。診療器具駆動部14は、制御信号に基づき診療器具4の駆動を制御する。
なお、フートコントローラ5のスイッチには、照明装置7の照明および消灯を制御する機能など、その他の機能を割り当てることもできる。
トレーテーブル3は、診療時の物置台として用いられる。トレーテーブル3は、診療椅子1または床から延びるアーム(図示は省略する)に接続されている。このため、ユーザは、トレーテーブル3を診療椅子1に対して手動で回動、水平移動、および垂直移動させることが可能である。
制御装置9は、トレーテーブル3の下部に設けられている。制御装置9には、診療椅子1と、複数の診療器具4と、インスツルメントホルダ50と、操作パネル8と、表示モニタ6と、リーダライタ10aと、ベースンユニット2とが接続されている。制御装置9は、診療装置側制御部12と、診療器具駆動部14と、表示モニタ制御部15と、取出検出部19とを備える。これらの各部は、それぞれ、診療装置側基板、駆動制御基板、モニタ制御基板、および取出検出基板上に実装されたCPU、ROM、およびRAMなどによって構成される。
診療器具4は、たとえば、エアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピース、スケーラ、スリーウェイシリンジ、およびバキュームシリンジなどの歯科診療用のインスツルメントである。なお、診療器具4は、これらに限らず、口腔内カメラ、光重合用照射器、根管長測定器、3次元スキャナ、および根管拡大器などであってもよいし、デンタルミラー、注射器、および充填器具など、駆動しない器具であってもよい。
診療装置10においては、診療器具4a〜4eの5種類が用いられる。たとえば、診療器具4aおよび診療器具4bは、エアータービンハンドピースである。診療器具4cは、マイクロモータハンドピースである。診療器具4dは、スケーラである。診療器具4eは、スリーウェイシリンジである。
各診療器具4は、インスツルメントホルダ50によって保持される。診療器具4がインスツルメントホルダ50から取り出されると、インスツルメントホルダ50からの診療器具4の取出しが検出され、診療器具4が選択された状態(被選択状態)になる。
各診療器具4は、制御装置9が備える診療器具駆動部14に接続されている。診療器具駆動部14は、フートコントローラ5に対するユーザの足踏操作に基づきインスツルメントホルダ50からの取出しが検出された診療器具4を駆動する。たとえば、ユーザが、フートコントローラ5におけるエアータービンハンドピースを駆動するためのスイッチを足踏操作すると、診療器具駆動部14は、エアータービンハンドピースのヘッド部に保持される切削工具を回転させる。このように、診療器具駆動部14は、フートコントローラ5に対するユーザの操作に基づき診療器具4を駆動する。なお、各診療器具4には、本体部48にRFIDタグ40が取り付けられている。
インスツルメントホルダ50は、各診療器具4を保持する保持部である。インスツルメントホルダ50は、制御装置9が備える取出検出部19を介して診療装置側制御部12に接続されている。取出検出部19は、インスツルメントホルダ50からの診療器具4の取出しを検出するとともに、その検出結果を示す信号を診療装置側制御部12に出力する。診療装置側制御部12は、取出検出部19からの信号に基づき被選択状態の診療器具4を特定する。フートコントローラ5の操作によって、取り上げられた診療器具4に対して駆動信号が与えられることで、診療器具4が駆動する。
インスツルメントホルダ50には、報知部50aが設けられている。報知部50aは、LEDなどのランプであってもよいし、スピーカであってもよい。報知部50aがランプである場合、報知部50aは、メンテナンスエラーが生じた場合に、診療装置側制御部12による制御に基づき警告を示す点灯色で点灯または点滅する。また、報知部50aがスピーカである場合、報知部50aは、メンテナンスエラーが生じた場合に、診療装置側制御部12による制御に基づき警告を示す警告音を出力する。なお、報知部50aの代わりに、表示モニタ6や操作パネル8に警告画像が表示されてもよい。
操作パネル8は、診療椅子1の姿勢を手動で操作する操作スイッチおよび診療器具4の制御を変更するための操作スイッチなど、各種の機能を設定するための複数のスイッチを点灯させる。ユーザは、操作パネル8において点灯しているスイッチを押圧操作することにより、押圧操作したスイッチに対応する機能を診療装置10に発揮させることができる。
表示モニタ6は、トレーテーブル3から上方に延びるアームに設けられている。表示モニタ6は、表示モニタ制御部15を介して診療装置側制御部12に接続されている。表示モニタ制御部15は、診療装置側制御部12からの指令に基づき、予め撮影された患者の口腔内画像やX線画像、および操作画像に関連した関連画像などを表示モニタ6に表示させる。さらに、本実施の形態においては、表示モニタ6は、メンテナンスエラーが生じた場合に、診療装置側制御部12による制御に基づき警告を示す警告画像を表示する。
なお、図2において、リーダライタ10aは、トレーテーブル3の下部に離れて設けられているが、トレーテーブル3の内部に設けられてもよく、あるいは、インスツルメントホルダ50、診療椅子1のヘッドレスト1a、および背もたれ1bの側面などに設けられてもよい。リーダライタ10aがこれらの位置に設けられている場合、術者は、診療椅子1に患者を座らせて治療する際に、手指を移動させられる範囲内で診療器具4に取り付けられたRFIDタグ40をリーダライタ10aに容易に読み取らせることができる。なお、リーダライタ10aが設けられる位置は、術者が患者を治療する際に、診療器具4に取り付けられたRFIDタグ40をリーダライタ10aに読み取らせることが容易な手の届く範囲内であればいずれの位置であってもよい。
ベースンユニット2は、診療椅子1の側部に備え付けられている。ベースンユニット2は、排水口が形成された鉢2aと、コップが載置されるコップ台2bと、コップに給水するための給水栓2cとを備える。患者は、給水栓2cによってコップに給水された水を用いてうがいをすることができる。
ベースンユニット2は、ベースン制御部16を備える。ベースン制御部16は、診療装置10で用いられる水の流れを制御する。ベースン制御部16は、図示しないベースン制御基板上に実装されたCPU、ROM、およびRAMなどによって構成される。
ベースンユニット2は、照明制御部17を備える。照明制御部17は、照明装置7の照明および消灯を制御する。照明制御部17は、図示しない照明制御基板上に実装されたCPU、ROM、およびRAMなどによって構成される。
ベースンユニット2は、診療装置10内の情報を収集する情報収集部18を備える。情報収集部18は、リーダライタ10aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶されている識別番号およびメンテナンス情報などの情報を収集することができる。情報収集部18は、図示しない情報収集基板上に実装されたCPU、ROM、およびRAMなどによって構成され、ベースンユニット2の保守扉2dの内側に設けられている。このため、所定の工具を用いて保守扉2dを開けなければ、ROMやRAMなどのメモリ18bを情報収集基板から取り外すことができない。
情報収集基板には、コンピュータ100に対して収集した情報を出力するための出力ポート18aが設けられている。保守作業者は、保守扉2dを開け、出力ポート18aにコンピュータ100からの配線を接続することで、収集した情報を取り出すことができる。もちろん、出力ポート18aを介してコンピュータ100と診療装置10の情報収集部18とが常に接続される構成でもよい。
情報収集部18が収集した情報は、情報収集基板から着脱可能なメモリ18bに記憶される。メモリ18bは、メモリカードなどの不揮発メモリで構成された記憶媒体である。保守作業者は、保守扉2dを開けて情報収集基板からメモリ18bを取り外すことができる。このため、保守作業者は、出力ポート18aにコンピュータ100からの配線を接続することなく、情報収集基板からメモリ18bを取り外してコンピュータ100に接続することで、収集した情報を取得することができる。保守作業者は、情報収集部18が収集した診療器具4の識別番号およびメンテナンス情報などをコンピュータ100で分析することで、診療器具4の滅菌処理の有無、消耗品の交換時期などのメンテナンスについて容易に管理することが可能となる。
なお、情報収集基板に出力ポート18aが設けられていない構成であってもよい。情報収集基板に出力ポート18aが設けられていない場合、コンピュータ100は、メモリ18bに直接的にアクセスして、診療装置10から情報を取得する。また、コンピュータ100と診療装置10との接続は、出力ポート18aを介して有線で接続されるものに限らず、無線で接続されてもよい。また、ベースンユニット2に診療装置10内の情報を収集する情報収集部18を備えていると説明したが、制御装置9などベースンユニット2以外に情報収集部18を備えてもよく、ベースンユニット2以外に設けた情報収集部18にコンピュータ100が接続されてもよい。
コンピュータ100は、ネットワーク回線を介して、クラウド上のサーバ200と通信可能である。コンピュータ100がクラウド上のサーバと通信することで、メンテナンス情報の共有および消耗品の発注などが容易になる。
[RFIDタグの構成]
図4は、本実施の形態に係るRFIDタグ40の内部構成を説明するためのブロック図である。パッシブ型のRFIDタグ40は、RFICチップ45を備える。RFICチップ45は、通信部41と、制御部42と、記憶部44とを含む。
通信部41は、診療装置10に取り付けられたリーダライタ10a、洗浄装置60に取り付けられたリーダライタ60a、給油装置70に取り付けられたリーダライタ70a、および滅菌装置80に取り付けられたリーダライタ80a(以下、これらをまとめて「リーダライタ」とも称する)のそれぞれが備える通信部91と通信可能である。具体的には、RFID40がリーダライタの通信範囲にまで近づくと、RFID側の通信部41に含まれるコイル41aとリーダライタ側の通信部91に含まれるコイル91aとの間で電磁結合が生じる。リーダライタは、RFIDタグ40との間で生じる電磁結合を利用して、RFIDタグ40に記憶された情報を読み書き可能である。また、パッシブ型のRFIDタグ40は、リーダライタとの間で生じる電磁結合によって給電された電力を用いて駆動する。
制御部42は、通信部41を介してリーダライタとの間で遣り取りされた情報に基づき、記憶部44に記憶された情報を更新したり、新たな情報を記憶部44に記憶させたりする。
RFICチップ45は、RFIDタグ40に内蔵された報知部43に接続されている。報知部43は、RFICチップ45と電気的に接続されたLEDなどのランプであってもよいし、LED以外のランプであってもよく、また、RFICチップ45と電気的に接続されたスピーカであってもよい。報知部43がランプである場合、報知部43は、メンテナンスエラーが生じた場合に、制御部42による制御に基づき警告を示す点灯色で点灯または点滅する。また、報知部43がスピーカである場合、報知部43は、メンテナンスエラーが生じた場合に、制御部42による制御に基づき警告を示す警告音を出力する。
報知部43は、RFICチップ45から供給される電力によって駆動する。前述したように、RFICチップ45は、リーダライタとの間の通信で生じる電磁結合によって給電されるため、報知部43は、通信部41と診療装置10などに取り付けられたリーダライタとの通信による電磁結合によって給電される。
[RFIDタグの記憶内容]
図4を参照しながら、RFICチップ45の記憶部44に記憶された情報について説明する。記憶部44に記憶された情報には、識別番号と、設置日と、管理番号と、術者番号と、患者番号と、警告フラグと、管理フラグと、洗浄時間と、給油時間と、滅菌時間と、洗浄回数と、給油回数と、滅菌回数とが含まれる。
識別番号は、RFIDタグ40が取り付けられた診療器具4に対して割り当てられた固有のシリアル番号など、診療器具4を識別するための識別情報である。たとえば、図4の例では、シリアル番号などの識別番号である“L102G12345K”を特定可能な識別情報として、「L102G12345K−」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に識別番号を記憶させておくことで、診療器具4を個別に管理することができる。
設置日は、診療器具4の使用が開始された日または診療器具4が製造された日などを特定するための日付情報である。たとえば、図4の例では、設置日である“2018年1月22日”を特定可能な日付情報として、「180122−1」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に設置日を記憶させておくことで、診療器具4の使用期間および残りの保証期間などを管理することができる。
管理番号は、識別番号とは別に歯科医院内や病院内などで診療器具4を個別に管理するために診療器具4に対して割り当てられた識別情報である。たとえば、図4の例では、管理番号である“K010”を特定可能な識別情報として、「K010」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に管理番号を記憶させておくことで、診療器具4を限られた範囲内で個別に管理することができる。
術者番号は、診療器具4を使用する術者を識別するための識別情報である。たとえば、各術者に対して「A」〜「Z」のうちのいずれかの術者番号が割り当てられており、図4の例では、術者番号として「C」を特定可能な識別情報が記憶部44に記憶されている。
患者番号は、診療器具4を使用した治療が行われる患者を識別するための識別情報である。たとえば、各患者に対して「001」〜「999」のうちのいずれかの患者番号が割り当てられており、図4の例では、患者番号として「230」を特定可能な識別情報が記憶部44に記憶されている。
警告フラグは、メンテナンスエラーの有無を特定可能なフラグである。たとえば、メンテナンスエラーがない場合には警告フラグとして「0」が割り当てられ、メンテナンスエラーがある場合には警告フラグとして「1」が割り当てられている。図4の例では、警告フラグとして、メンテナンスエラーがない旨を示す「0」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に警告フラグを記憶させておくことで、メンテナンスエラーの有無を管理することができる。
管理フラグは、各工程のメンテナンス処理が行われたか否かを特定可能なフラグであって、予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否かを特定可能な態様で記憶部44に記憶されている。たとえば、洗浄工程、給油工程、および滅菌工程のそれぞれに対して、未処理の場合にはフラグ情報として「0」が割り当てられ、処理済みの場合にはフラグ情報として「1」が割り当てられている。さらに、管理フラグは3桁で構成されており、1桁目に洗浄工程に対応するフラグ情報、2桁目が給油工程に対応するフラグ情報、および3桁目に滅菌工程に対応するフラグ情報が配置されている。
管理フラグにおいては、仮に全ての工程が完了している場合には「111」が記憶部44に記憶され、いずれの工程も完了していない場合には「000」が記憶部44に記憶される。図4の例では、管理フラグとして、「110」が記憶部44に記憶されている。すなわち、1桁目は「1」であるため、洗浄処理が済みである旨を特定可能であり、2桁目は「1」であるため、給油処理が済みである旨を特定可能であり、3桁目は「0」であるため、滅菌処理が済みでない旨を特定可能である。RFIDタグ40に管理フラグを記憶させておくことで、各工程のメンテナンス処理が行われたか否か、および予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否かを管理することができる。なお、管理フラグは、「特定情報」の一実施形態である。
洗浄時間は、洗浄が行われた時刻を特定するための時間情報である。たとえば、図4の例では、洗浄が行われた時刻である“12時50分”を特定可能な時間情報として、「1250」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に洗浄時間を記憶させておくことで、洗浄が行われた時刻を管理することができる。
給油時間は、給油が行われた時刻を特定するための時間情報である。たとえば、図4の例では、給油が行われた時刻である“13時15分”を特定可能な時間情報として、「1315」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に給油時間を記憶させておくことで、給油が行われた時刻を管理することができる。
滅菌時間は、滅菌が行われた時刻を特定するための時間情報である。たとえば、図4の例では、滅菌が行われた時刻である“13時40分”を特定可能な時間情報として、「1340」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に滅菌時間を記憶させておくことで、滅菌が行われた時刻を管理することができる。
なお、洗浄時間、給油時間、および滅菌時間などの処理時間は、管理フラグと同様に、各工程のメンテナンス処理が行われたか否か、および予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否かを管理することができる情報であるため、「特定情報」の一実施形態である。また、処理時間は、時刻に限らず、西暦、日付、および曜日の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
洗浄回数は、診療器具4に対して洗浄が行われた総回数を特定するための回数情報である。たとえば、図4の例では、洗浄が行われた回数である“105回”を特定可能な回数情報として、「0105」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に洗浄回数を記憶させておくことで、洗浄が行われた総回数を管理することができる。
給油回数は、診療器具4に対して給油が行われた総回数を特定するための回数情報である。たとえば、図4の例では、給油が行われた回数である“105回”を特定可能な回数情報として、「0105」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に給油回数を記憶させておくことで、給油が行われた総回数を管理することができる。
滅菌回数は、診療器具4に対して滅菌が行われた総回数を特定するための回数情報である。たとえば、図4の例では、滅菌が行われた回数である“104回”を特定可能な回数情報として、「0104」が記憶部44に記憶されている。RFIDタグ40に滅菌回数を記憶させておくことで、滅菌が行われた総回数を管理することができる。
さらに、記憶部44には、拡張領域(空き領域)が確保されており、将来的に新たな情報を拡張領域に追加して記憶することも可能である。記憶部44は、この拡張領域において、様々な情報を格納することが可能である。たとえば、拡張領域は、術者が個別に運用管理するための情報を追加して格納することが可能である。拡張領域に記憶された情報を含めて記憶部44に記憶された情報は、たとえば、図3に示すリーダライタ10aによって読み取られ、コンピュータ100に接続されたクラウド上のサーバ200において記憶、管理することができる。このように構成することで、記憶容量の大きなクラウド上のサーバ200によって、各診療器具4における記憶部44の情報を、各診療器具4と紐付けて記憶することができるため、万一RFIDタグ40が破損しても、各診療器具4における記憶部44の情報をバックアップとしてサーバ200で継承して管理することができる。
図4に示した記憶部44における記憶情報は、一例であり、その他の情報が記憶されるものであってもよいし、さらに、図4と異なる態様で記憶されていてもよい。
[診療装置の処理]
図5は、本実施の形態に係る診療装置10が実行する処理を説明するためのフローチャートである。図5に示すように、診療器具4が取り付けられると、診療装置10は、リーダライタ10aによって、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出す(S101)。なお、診療装置10は、診療器具4が取り付けられなくても、術者によって診療器具4がリーダライタ10aに近づけられることで、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出してもよい。
S101において、診療装置10は、RFID40から設置日を特定可能な日付情報を読み出し、読み出した日付情報をコンピュータ100に送信する。コンピュータ100は、受信した日付情報から特定した設置日と、現在の日付とに基づいて、診療器具4の使用期間を特定し、特定した使用期間を記憶する。また、診療装置10においても、読み出した日付情報から特定した設置日と、現在の日付とに基づいて、診療器具4の使用期間を特定する。なお、診療装置10は、自ら使用期間を特定するものに限らず、コンピュータ100から使用期間を取得してもよい。
S101において、診療装置10は、RFID40から洗浄回数、給油回数、および滅菌回数などのメンテナンス処理の処理回数を特定可能な回数情報を読み出し、読み出した回数情報をコンピュータ100に送信する。コンピュータ100は、受信した回数情報から特定した処理回数を記憶する。また、診療装置10においても、読み出した回数情報から処理回数を特定する。
S101において、診療装置10は、RFID40から警告フラグを読み出し、読み出した警告フラグからメンテナンスエラーの有無を特定する。
S101において、診療装置10は、RFID40から管理フラグを読み出し、読み出した管理フラグから、各工程のメンテナンス処理が行われたか否か、および予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否かを特定する。
S101において、診療装置10は、RFID40から、洗浄時間、給油時間、および滅菌時間などのメンテナンス処理の処理時間を特定可能な時間情報を読み出し、読み出した処理時間から、各工程のメンテナンス処理が行われたか否か、および予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否か、さらに、各工程間の時間間隔が適切であるか否かを特定する。
次に、診療装置10は、診療器具4の使用期間または処理回数が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する(S102)。診療装置10は、診療器具4の使用期間または処理回数が予め設定された閾値以上である場合(S102でYES)、報知部50aや表示モニタ6によって部品交換の案内を報知する(S103)。つまり、取り付けられた診療器具4の使用期間がメーカが推奨する限界の使用期間を超えた場合、または取り付けられた診療器具4の使用回数がメーカが推奨する限界の使用回数を超えた場合、診療装置10は、部品交換を術者に促す。たとえば、診療装置10は、部品交換の案内を示す画像を表示モニタ6に表示させたり、部品交換の案内を示す音を報知部50aであるスピーカから出力させたり、部品交換の案内を示す光を報知部50aであるLEDから発したりする。その後、診療器具4は治療に用いられることなく、取り外される。
診療装置10は、診療器具4の使用期間または処理回数が予め設定された閾値以上でない場合(S102でNO)、警告フラグが「0」であるか否かを判定する(S104)。つまり、診療装置10は、メンテナンスにおける全ての工程が順番通りに完了したか否かを判定する。さらに、診療装置10は、洗浄時間、給油時間、および滅菌時間などの処理時間が適切か否かを判定する。つまり、診療装置10は、洗浄工程と給油工程との間の間隔、給油工程と滅菌工程との間隔、および滅菌工程と現在の時刻との間隔のそれぞれが、予め設定された閾値を超えているか否かを判定する。
診療装置10は、警告フラグが「0」でない場合(S104でNO)、メンテナンスエラーが生じているため、取り付けられた診療器具4の駆動を禁止する(S105)。そして、診療装置10は、インスツルメントホルダ50に設けられた報知部50aおよび/または表示モニタ6によって警告を発する(S106)。その後、診療器具4は治療に用いられることなく、取り外される。
一方、診療装置10は、警告フラグが「0」である場合(S104でYES)、メンテナンスエラーが生じていないため、取り付けられた診療器具4の駆動を許可する(S107)。その後、診療装置10は、リーダライタ10aによって、RFID40の記憶部44に記憶された管理フラグおよび処理時間を初期化する(S108)。具体的には、診療装置10は、記憶部44に記憶された管理フラグを「000」に更新する。また、診療装置10は、洗浄時間、給油時間、および滅菌時間を「0000」に更新する。
なお、診療器具4の使用期間または処理回数が予め設定された閾値以上であるか否かを判定するS102の判定処理と、警告フラグが「0」であるか否かを判定するS104の判定処理とでは、いずれの処理が先に行われてもよい。
また、S107において駆動が許可される場合、診療装置10は、これから施術に使用される診療器具4が所定の順番通りに洗浄、給油、および滅菌の各工程が完了して使用しても問題なく安全に使用できることを、報知部50aおよび/または表示モニタ6によって報知してもよい。この例については、図8を用いて後述する。
また、S108において特定情報が初期化される一方で、洗浄、給油、および滅菌の各工程における処理の総回数などの情報は記憶部44に記憶され続ける。さらに、診療装置10における情報収集部18のメモリ18bにおいても、洗浄、給油、および滅菌の各工程における処理の総回数などの情報が記憶され続ける。なお、メモリ18bは、S108における初期化に関わらず、特定情報の記憶の更新履歴を記憶し続けてもよい。メモリ18bは、記憶部44に記憶されている情報と同じ情報を記憶してもよいし、さらに記憶部44から消去された情報も履歴として記憶し続けてもよい。
また、記憶部44における特定情報の初期化のタイミングは、診療器具4の駆動を契機とするものに限らず、使用後の診療器具4がインスツルメントホルダ50に戻されてインスツルメントホルダ50によって診療器具4が保持されたことを契機としてもよいし、その他のことを契機としてもよい。さらに、記憶部44における特定情報の初期化のタイミングが診療器具4の駆動を契機とする一方で、メモリ18bにおける特定情報の記憶の更新は、使用後の診療器具4がインスツルメントホルダ50に戻されてインスツルメントホルダ50によって診療器具4が保持されたことを契機としてもよいし、その他のことを契機としてもよい。
そして、診療装置10は、術者の操作に基づき診療器具4を駆動する(S109)。診療器具4の駆動情報は、コンピュータ100に記憶される。その後、治療に用いられた診療器具4は、取り外されてメンテナンス処理が行われる。
[メンテナンス処理装置によるメンテナンス処理]
図6は、本実施の形態に係る各メンテナンス処理装置が実行するメンテナンス処理を説明するためのフローチャートである。
まず、洗浄装置60におけるメンテナンス処理を説明する。診療装置10で使用された診療器具4が取り外されてチャンバ内に設置されると、洗浄装置60は、リーダライタ60aによって、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出す(S601)。なお、洗浄装置60は、診療器具4が設置されなくても、術者によって診療器具4がリーダライタ60aに近づけられることで、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出してもよい。S601において、洗浄装置60は、RFID40から、管理フラグ、処理時間、および洗浄回数を読み出す。
洗浄装置60は、リーダライタ10aによって、RFID40の記憶部44に記憶された管理フラグ、洗浄時間、および洗浄回数を更新する(S602)。具体的には、洗浄装置60は、記憶部44に記憶された管理フラグを「100」に更新する。これにより、洗浄が行われていることが管理フラグから特定可能となる。また、洗浄装置60は、記憶部44に記憶された洗浄時間を、現在の時刻となるように更新する。これにより、洗浄が完了していること、および洗浄が行われる時間が時間情報から特定可能となる。さらに、洗浄装置60は、記憶部44に記憶された洗浄回数に1を加算する。これにより、洗浄回数が回数情報から特定可能となる。更新後の管理フラグ、洗浄時間、および洗浄回数は、洗浄装置60からコンピュータ100に送信され、コンピュータ100において洗浄情報として記憶される。
そして、洗浄装置60は、診療器具4を洗浄する(S603)。その後、洗浄された診療器具4は、次工程の給油のために給油装置70に設置される。
次に、給油装置70におけるメンテナンス処理を説明する。診療装置10で使用された診療器具4がチャンバ内に設置されると、給油装置70は、リーダライタ70aによって、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出す(S701)。なお、給油装置70は、診療器具4が設置されなくても、術者によって診療器具4がリーダライタ70aに近づけられることで、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出してもよい。S701において、洗浄装置60は、RFID40から、管理フラグ、処理時間、および給油回数を読み出す。
給油装置70は、メンテナンスにおける前工程(洗浄工程)が順番通りに完了したか否かを判定する(S702)。つまり、給油装置70は、読み出した管理フラグおよび処理時間の少なくともいずれかに基づき、予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否かを判定する。たとえば、管理フラグが「100」であれば洗浄が既に行われているが、管理フラグが「000」であれば洗浄が未だ行われていない。また、洗浄時間に何らかの時間が格納されていれば洗浄が既に行われているが、洗浄時間が「0000」であれば洗浄が未だ行われていない。
給油装置70は、メンテナンスにおける前工程(洗浄工程)が順番通りに完了していない場合(S702でNO)、メンテナンスエラーが生じているため、警告フラグを「1」に更新する(S703)。これにより、仮にこの状態で診療器具4が診療装置10に取り付けられると、診療装置10によって、図5のS104でNOと判定されて、診療器具4の駆動が禁止され(S105)、かつ警告が発生する(106)。さらに、警告フラグが「1」になると、RFIDタグ40に内蔵された報知部43によっても警告が発生するなどの報知が行われる。
その後、給油装置70は、メンテナンスエラーが生じているため、診療器具4の給油を禁止し(S704)、警告を発する(S705)。
一方、給油装置70は、メンテナンスにおける前工程(洗浄工程)が順番通りに完了している場合(S702でYES)、リーダライタ70aによって、RFID40の記憶部44に記憶された管理フラグ、給油時間、および給油回数を更新する(S706)。具体的には、給油装置70は、記憶部44に記憶された管理フラグを「110」に更新する。これにより、給油が行われていることが管理フラグから特定可能となる。また、給油装置70は、記憶部44に記憶された給油時間を、現在の時刻となるように更新する。これにより、給油が完了していること、および給油が行われる時間が時間情報から特定可能となる。さらに、給油装置70は、記憶部44に記憶された給油回数に1を加算する。これにより、給油回数が回数情報から特定可能となる。更新後の管理フラグ、給油時間、および給油回数は、給油装置70からコンピュータ100に送信され、コンピュータ100において給油情報として記憶される。
そして、給油装置70は、診療器具4を給油する(S707)。その後、給油された診療器具4は、次工程の滅菌のために滅菌装置80に設置される。
次に、滅菌装置80におけるメンテナンス処理を説明する。診療装置10で使用された診療器具4がチャンバ内に設置されると、滅菌装置80は、リーダライタ80aによって、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出す(S801)。なお、滅菌装置80は、診療器具4が設置されなくても、術者によって診療器具4がリーダライタ80aに近づけられることで、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出してもよい。S801において、滅菌装置80は、RFID40から、管理フラグ、処理時間、および滅菌回数を読み出す。
滅菌装置80は、メンテナンスにおける前工程(洗浄工程および給油工程)が順番通りに完了したか否かを判定する(S802)。つまり、滅菌装置80は、読み出した管理フラグおよび処理時間の少なくともいずれかに基づき、予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否かを判定する。たとえば、管理フラグが「110」であれば洗浄および給油が既に行われているが、管理フラグが「000」であれば洗浄および給油のいずれもが未だ行われておらず、また、管理フラグが「100」であれば洗浄が既に行われているが給油が未だ行われていない。また、洗浄時間および給油時間に何らかの時間が格納されていれば洗浄および給油が既に行われているが、洗浄時間が「0000」であれば洗浄が未だ行われておらず、給油時間が「0000」であれば給油が未だ行われていない。
滅菌装置80は、メンテナンスにおける前工程(洗浄工程および給油工程)が順番通りに完了していない場合(S802でNO)、メンテナンスエラーが生じているため、警告フラグを「1」に更新する(S803)。これにより、仮にこの状態で診療器具4が診療装置10に取り付けられると、診療装置10によって、図5のS104でNOと判定されて、診療器具4の駆動が禁止され(S105)、かつ警告が発生する(106)。さらに、警告フラグが「1」になると、RFIDタグ40に内蔵された報知部43によっても警告が発生するなどの報知が行われる。
その後、滅菌装置80は、メンテナンスエラーが生じているため、診療器具4の滅菌を禁止し(S804)、警告を発する(S805)。
一方、滅菌装置80は、メンテナンスにおける前工程(洗浄工程および給油工程)が順番通りに完了している場合(S802でYES)、リーダライタ80aによって、RFID40の記憶部44に記憶された管理フラグ、滅菌時間、および滅菌回数を更新する(S806)。具体的には、滅菌装置80は、記憶部44に記憶された管理フラグを「111」に更新する。これにより、滅菌が行われていることが管理フラグから特定可能となる。また、滅菌装置80は、記憶部44に記憶された滅菌時間を、現在の時刻となるように更新する。これにより、滅菌が完了していること、および滅菌が行われる時間が時間情報から特定可能となる。さらに、滅菌装置80は、記憶部44に記憶された滅菌回数に1を加算する。これにより、滅菌回数が回数情報から特定可能となる。更新後の管理フラグ、滅菌時間、および滅菌回数は、滅菌装置80からコンピュータ100に送信され、コンピュータ100において滅菌情報として記憶される。
そして、滅菌装置80は、診療器具4を滅菌する(S807)。その後、滅菌された診療器具4は、保管され、診療時に診療装置10に取り付けられる。
[コンピュータにおける管理]
図6に示したように、コンピュータ100には、使用期間、処理回数、洗浄情報、給油情報、滅菌情報、および駆動情報などの複数種類の情報が記憶される。たとえば、コンピュータ100においては、これらの情報を管理テーブルに格納した状態で管理する。図7は、本実施の形態に係るコンピュータ100が記憶する管理テーブルを説明するための概略図である。
図7に示すように、管理テーブルには、診療器具4ごとに、シリアル番号、ステータス、使用期間、残り保証期間、洗浄回数、給油回数、滅菌回数、および点検までの残り使用回数などの情報が格納されている。シリアル番号は、診療器具4の識別番号である。ステータスは、診療器具4の現在の状態を示す情報であり、洗浄済み、給油済み、滅菌済み、および診療装置接続などを特定可能である。使用期間は、診療器具4が使用されている期間であり、診療器具4の設置日と現在の日付とから算出される。残り保証期間は、保証期間(この例では365日)に至るまでの残り期間であり、使用期間と保証期間とから特定される。洗浄回数は、洗浄工程において診療器具4に対して洗浄が行われた回数である。給油回数は、給油工程において診療器具4に対して給油が行われた回数である。滅菌回数は、滅菌工程において診療器具4に対して滅菌が行われた回数である。点検までの残り使用回数は、推奨使用回数(この例では100回)ごとに推奨される点検までの残り使用回数であり、滅菌回数と推奨使用回数とから算出される。
上述したように、コンピュータ100には、RFID40から取得した情報に基づいて、診療器具4をメンテナンスするための情報が記憶されている。これにより、術者またはサービスマンは、診療器具4のメンテナンスなどを容易に管理することができる。また、術者またはサービスマンは、各診療器具4の稼働状況や使用履歴なども管理することができるため、診療器具4の補充などを検討し易くなる。さらに、コンピュータ100が複数の診療装置10と通信可能に接続され、各診療装置10で用いられる診療器具4について管理テーブルを用いて管理するものであれば、各診療装置10で用いられる診療器具4のメンテナンスについて一括管理することができる。
[RFIDタグの他の応用]
図4に示したように、RFIDタグ40には、診療器具4を使用した治療が行われる患者を識別するための患者番号が記憶されている。そこで、メンテナンス処理装置は、RFIDタグ40に記憶された患者番号を利用して、患者に合わせたメンテナンスを行うものであってもよい。具体的には、図5に示すように、サーバ200に患者情報として患者ごとのカルテなどの情報を記憶しておき、滅菌装置80がリーダライタ80aによってRFIDタグ40に記憶された患者番号を読み出したときに、サーバ200に記憶された患者番号に対応するカルテに基づいて、患者が肝炎などの感染症の疑いのあると判断した場合には、通常よりも入念(たとえば、時間または回数を増やすなど)に診療器具4の滅菌を行ってもよい。なお、サーバ200に患者情報を予め記憶するものに限らず、コンピュータ100または滅菌装置80に患者情報を予め記憶するものであってもよい。
図4に示したように、RFIDタグ40には、診療器具4を使用する術者を識別するための術者番号が記憶されている。そこで、診療装置10は、RFIDタグ40に記憶された術者番号を利用して、術者好みの設定に、診療装置10および診療器具4の設定を自動的に更新するものであってもよい。具体的には、図5に示すように、サーバ200に術者情報として術者ごとの設定内容を記憶しておき、診療装置10がリーダライタ10aによってRFIDタグ40に記憶された術者番号を読み出したときに、サーバ200に記憶された術者番号に対応する設定内容となるように、診療装置10および診療器具4の設定を自動的に更新してもよい。なお、サーバ200に術者ごとの設定内容を予め記憶するものに限らず、コンピュータ100または診療装置10に術者ごとの設定内容を予め記憶するものであってもよい。診療器具4の設定内容としては、診療器具4が根管治療用のモータハンドピースであれば、回転数、設定位置に切削工具が達したときに切削工具の回転方向を反転させる機能(オートアピカルリバース)における設定位置、および切削工具のトルク値が基準値に達したときに切削工具の回転方向を反転させる機能(オートトルクリバース)におけるトルク値などが挙げられる。
[本実施の形態の主な内容]
図4に示すように、RFIDタグ40の記憶部44には、予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否かを特定可能な態様で管理フラグが記憶されている。また、RFIDタグ40の記憶部44には、予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否かを特定可能な態様で、洗浄時間、給油時間、滅菌時間などの処理時間が記憶されている。これにより、診療装置10、洗浄装置60、給油装置70、および滅菌装置80のそれぞれでリーダライタによってRFIDタグ40の記憶情報を読み取ることで、メンテナンスエラーの有無を容易に判断することができる。
また、本実施の形態においては、診療装置10および各メンテナンス処理装置がともにコンピュータ100に接続されているが、診療装置10および各メンテナンス処理装置は互いに独立していてもよい。このような場合であっても、診療装置10および各メンテナンス処理装置は、診療器具4に取り付けられたRFIDタグ40の記憶情報に基づいて、診療装置10および各メンテナンス処理装置においてメンテナンスエラーの有無を容易に判断することができる。
RFIDタグ40は、警告フラグによってメンテナンスエラーがあると判断すると、報知部43によって警告を発するなどの報知を行う。これにより、予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われなかった場合に、診療器具4に取り付けられたRFIDタグ40から発せられる警告によって、術者などの周囲に異常を知らせることができる。
図5のS108に示すように、診療装置10は、診療器具4が駆動したときに管理フラグおよび処理時間を初期化する。あるいは、診療装置10は、使用後の診療器具4がインスツルメントホルダ50によって保持されたときに管理フラグおよび処理時間を初期化する。これにより、診療器具4を用いて診療を行った後においては、RFIDタグ40に記憶された管理フラグおよび処理時間に基づき滅菌などのメンテナンス処理が行われていないことが特定可能となる。このため、診療器具4の使用後において、滅菌などのメンテナンス処理を確実に術者に促すことができる。
図6に示すように、給油装置70は、リーダライタ70aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された管理フラグおよび処理時間に基づき、メンテナンスエラーがあると判断した場合に、給油を禁止し、かつ警告を発する。これにより、たとえば、洗浄工程がスキップされた状態で給油が行われようとした場合であっても、そのまま給油が行われてしまうことがなく、さらに、警告によって術者などの周囲に異常を知らせることができる。
図6に示すように、滅菌装置80は、リーダライタ80aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された管理フラグおよび処理時間に基づき、メンテナンスエラーがあると判断した場合に、滅菌を禁止し、かつ警告を発する。これにより、たとえば、洗浄工程および給油工程のいずれかがスキップされた状態で滅菌が行われようとした場合であっても、そのまま滅菌が行われてしまうことがなく、さらに、警告によって術者などの周囲に異常を知らせることができる。
図5に示すように、診療装置10は、リーダライタ10aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された警告フラグに基づき、メンテナンスエラーがあると判断した場合に、診療器具4の駆動を禁止し、かつ警告を発する。これにより、たとえば、洗浄工程、給油工程、および滅菌工程のいずれかがスキップされた状態で診療器具4が使用されようとした場合であっても、診療器具4が駆動されてしまうことがなく、さらに、警告によって術者などの周囲に異常を知らせることができる。さらに、警告は、インスツルメントホルダ50の報知部50aによって報知されるため、たとえば、インスツルメントホルダ50付近にリーダライタ10aを設けた場合には、インスツルメントホルダ50に診療器具4を取り付けたときにインスツルメントホルダ50によって分かり易く異常を知らせることができる。また、警告は、表示モニタ6における画像表示でも行われるため、術者などの周囲に分かり易く異常を知らせることができる。
[変形例]
本発明は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な変形例について説明する。
本実施の形態においては、診療装置10が図5に示す処理を実行するものとしたが、図8に示す処理を実行するものであってもよい。図8は、変形例に係る診療装置10bが実行する処理を説明するためのフローチャートである。
図8に示すように、診療器具4が取り付けられると、診療装置10bは、リーダライタ10aによって、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出す(S151)。なお、診療装置10は、診療器具4が取り付けられなくても、術者によって診療器具4がリーダライタ10aに近づけられることで、RFID40の記憶部44に記憶された情報を読み出してもよい。
S151において、診療装置10bは、RFID40から設置日を特定可能な日付情報を読み出し、読み出した日付情報をコンピュータ100に送信する。コンピュータ100は、受信した日付情報から特定した設置日と、現在の日付とに基づいて、診療器具4の使用期間を特定し、特定した使用期間を記憶する。また、診療装置10bにおいても、読み出した日付情報から特定した設置日と、現在の日付とに基づいて、診療器具4の使用期間を特定する。なお、診療装置10bは、自ら使用期間を特定するものに限らず、コンピュータ100から使用期間を取得してもよい。
S151において、診療装置10bは、RFID40から洗浄回数、給油回数、および滅菌回数などの処理回数を特定可能な回数情報を読み出し、読み出した回数情報をコンピュータ100に送信する。コンピュータ100は、受信した回数情報から特定した処理回数を記憶する。また、診療装置10bにおいても、読み出した回数情報から処理回数を特定する。
S151において、診療装置10bは、RFID40から警告フラグを読み出し、読み出した警告フラグからメンテナンスエラーの有無を特定する。
S151において、診療装置10bは、RFID40から管理フラグを読み出し、読み出した管理フラグから、各工程のメンテナンス処理が行われたか否か、および予め決められた工程順で複数の処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否かを特定する。
S151において、診療装置10bは、RFID40から、洗浄時間、給油時間、および滅菌時間などの処理時間を特定可能な時間情報を読み出し、読み出した処理時間から、各工程のメンテナンス処理が行われたか否か、および予め決められた工程順で複数の処理装置のそれぞれによってメンテナンス処理が行われたか否か、さらに、各工程間の時間間隔が適切であるか否かを特定する。
次に、診療装置10bは、診療器具4の使用期間または処理回数が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する(S152)。診療装置10bは、診療器具4の使用期間または処理回数が予め設定された閾値以上である場合(S152でYES)、報知部50aや表示モニタ6によって部品交換の案内を報知する(S153)。つまり、取り付けられた診療器具4の使用期間がメーカが推奨する限界の使用期間を超えた場合、または取り付けられた診療器具4の使用回数がメーカが推奨する限界の使用回数を超えた場合、診療装置10bは、部品交換を術者に促す。たとえば、診療装置10bは、部品交換の案内を示す画像を表示モニタ6に表示させたり、部品交換の案内を示す音を報知部50aであるスピーカから出力させたり、部品交換の案内を示す光を報知部50aであるLEDから発したりする。その後、診療器具4は治療に用いられることなく、取り外される。
診療装置10bは、診療器具4の使用期間または処理回数が予め設定された閾値以上でない場合(S152でNO)、警告フラグが「0」であるか否かを判定する(S154)。つまり、診療装置10bは、メンテナンスにおける全ての工程が順番通りに完了したか否かを判定する。さらに、診療装置10bは、洗浄時間、給油時間、および滅菌時間などの処理時間が適切か否かを判定する。つまり、診療装置10bは、洗浄工程と給油工程との間の間隔、給油工程と滅菌工程との間隔、および滅菌工程と現在の時刻との間隔のそれぞれが、予め設定された閾値を超えているか否かを判定する。
診療装置10bは、警告フラグが「0」でない場合(S154でNO)、メンテナンスエラーが生じているため、インスツルメントホルダ50に設けられた報知部50aや表示モニタ6によって警告を発する(S155)。その後、診療装置10bは、診療器具4の取り出しを検出したか、または診療器具4の駆動信号を検出したかを判定する(S156)。診療装置10bは、診療器具4の取り出しおよび駆動信号のいずれも検出しない場合(S156でNO)、S155の処理を繰り返して警告を発する。一方、診療装置10bは、診療器具4の取り出しおよび駆動信号のいずれかを検出した場合(S156でYES)、取り出しおよび駆動信号が検出された診療器具4の駆動を禁止する(S157)。その後、診療器具4は治療に用いられることなく、取り外される。
一方、診療装置10bは、警告フラグが「0」である場合(S154でYES)、使用可能な診療器具が取り付けられたことを報知する(S158)。具体的には、診療装置10bは、これから施術に使用される診療器具4が所定の順番通りに洗浄、給油、および滅菌の各工程が完了して使用しても問題なく安全に使用できることを、報知部50aや表示モニタ6によって報知する。
次に、診療装置10bは、診療器具4の駆動信号を検出したかを判定する(S159)。診療装置10bは、診療器具の駆動信号を検出しない場合(S159でNO)、S159の処理を繰り返す。一方、診療装置10bは、診療器具の駆動信号を検出した場合(S159でYES)、駆動信号を検出した診療器具4の駆動を許可する(S160)。そして、診療装置10は、診療器具4を駆動する(S161)。診療器具4の駆動情報は、コンピュータ100に記憶される。
その後、診療装置10bは、リーダライタ10aによって、RFID40の記憶部44に記憶された管理フラグおよび処理時間を初期化する(S162)。具体的には、診療装置10は、記憶部44に記憶された管理フラグを「000」に更新する。また、診療装置10は、洗浄時間、給油時間、および滅菌時間を「0000」に更新する。
なお、診療器具4の使用期間または処理回数が予め設定された閾値以上であるか否かを判定するS152の判定処理と、警告フラグが「0」であるか否かを判定するS154の判定処理とでは、いずれの処理が先に行われてもよい。
また、S162において特定情報が初期化される一方で、洗浄、給油、および滅菌の各工程におけるメンテナンス処理の総回数などの情報は記憶部44に記憶され続ける。さらに、診療装置10bにおける情報収集部18のメモリ18bにおいても、洗浄、給油、および滅菌の各工程におけるメンテナンス処理の総回数などの情報が記憶され続ける。なお、メモリ18bは、S108における初期化に関わらず、特定情報の記憶の更新履歴を記憶し続けてもよい。メモリ18bは、記憶部44に記憶されている情報と同じ情報を記憶してもよいし、さらに記憶部44から消去された情報も履歴として記憶し続けてもよい。
また、記憶部44における特定情報の初期化のタイミングは、診療器具4の駆動を契機とするものに限らず、使用後の診療器具4がインスツルメントホルダ50に戻されてインスツルメントホルダ50によって診療器具4が保持されたことを契機としてもよいし、その他のことを契機としてもよい。さらに、記憶部44における特定情報の初期化のタイミングが診療器具4の駆動を契機とする一方で、メモリ18bにおける特定情報の記憶の更新は、使用後の診療器具4がインスツルメントホルダ50に戻されてインスツルメントホルダ50によって診療器具4が保持されたことを契機としてもよいし、その他のことを契機としてもよい。
そして、診療装置10bは、診療が完了したか否かを判定する(S163)。診療装置10bは、診療が完了していない場合(S163でNO)、S163の処理を繰り返す。一方、診療装置10bは、診療が完了した場合(S163でYES)、診療器具4を取り外す案内を報知部50aおよび表示モニタ6によって報知する(S164)。その後、治療に用いられた診療器具4は、取り外されてメンテナンス処理が行われる。
このように、変形例に係る診療装置10bは、S152で診療器具4の使用期間または処理回数が予め設定された閾値以上でないと判定し、かつS154で警告フラグが「0」であると判定した場合、メンテナンスエラーが生じていないものとする。そして、診療装置10bは、S158において、これから施術に使用される診療器具4が所定の順番通りに洗浄、給油、および滅菌の各工程が完了して使用しても問題なく安全に使用できることを、報知部50aや表示モニタ6によって報知する。これにより、これから施術に使用する診療器具4が既にメンテナンス処理済みで安全であることを、術者が容易に確認することができる。
なお、サーバ200は院内に設置されたサーバであってもよく、この場合において、図8に示すように、サーバ200がクラウド上のサーバ300と通信可能であってもよい。たとえば、院内には複数の診療装置が設置され、各診療装置がコンピュータ100を備え、各診療装置のコンピュータ100が院内のサーバ200に接続される構成であってもよい。そして、このように構成された複数の医院における各サーバ200がクラウド上のサーバ300と通信可能に構成されてもよい。クラウド上のサーバ300は、複数の医院で収集された患者情報、術者情報、使用期間、処理回数、洗浄情報、給油情報、滅菌情報、および駆動情報などの様々な情報を集約し、ビッグデータとして記憶してもよい。このようなビッグデータを用いることで、複数の医院間においてメンテナンス情報の共有や消耗品の発注などを行うことができ、メンテナンスの管理が容易になり、メンテナンスに関するデータも分析することができる。
上述した実施形態においては、メンテナンス処理が、洗浄、給油、および滅菌であり、各メンテナンス処理が、洗浄装置60、給油装置70、および滅菌装置80のそれぞれによって個別に行われるものであった。しかしながら、これらのメンテナンス処理のうちの複数のメンテナンス処理が一つの装置でまとめて行われてもよい。たとえば、洗浄と給油については、術者または補助者が手作業で行ってもよいため、洗浄および給油のうちの少なくともいずれか一つと、滅菌とが、同じ装置によって行われてもよい。
本実施形態においては、診療装置10は、警告フラグに基づき、メンテナンスエラーの有無を判断するものであったが、リーダライタ10aによって読み取られたRFIDタグ40に記憶された管理フラグおよび処理時間に基づき、メンテナンスエラーの有無を判断するものであってもよい。
本実施形態においては、診療装置10およびメンテナンス処理装置は、RFIDタグ40に記憶された管理フラグおよび処理時間の両方に基づき、メンテナンスエラーの有無を判断するものであったが、これに限らない。たとえば、メンテナンス処理装置および診療装置10は、RFIDタグ40に記憶された管理フラグのみに基づき、メンテナンスエラーの有無を判断するものであってもよいし、RFIDタグ40に記憶された処理時間のみに基づき、メンテナンスエラーの有無を判断するものであってもよい。
また、予め決められた工程順で複数のメンテナンス処理装置のそれぞれによって診療器具4に対してメンテナンス処理が行われたか否かを特定可能な態様でRFIDタグ40に記憶されるものであれば、各装置は、いずれの情報を用いてメンテナンスエラーの有無を判断してもよい。
本実施形態においては、術者好みの設定を行うための情報として、術者を識別するための術者番号がRFIDタグ40に記憶されていたが、記憶情報はこれに限らない。たとえば、診療装置10または診療器具4の設定内容を識別可能な情報として、各設定内容に応じた設定番号がRFIDタグ40に記憶されていてもよい。この場合、診療装置10がリーダライタ10aによってRFIDタグ40に記憶された設定番号を読み出したときに、サーバ200に記憶された設定番号に対応する設定内容となるように、診療装置10および診療器具4の設定を自動的に更新してもよい。なお、サーバ200に設定番号ごとの設定内容を予め記憶するものに限らず、コンピュータ100または診療装置10に設定番号ごとの設定内容を予め記憶するものであってもよい。
本実施形態においては、メンテナンス処理装置のうち、給油装置70および滅菌装置80が、メンテナンスエラー時にメンテナンス処理を禁止したり、警告を発したりしたが、これに限らない。たとえば、滅菌装置80のみメンテナンスエラー時にメンテナンス処理を禁止したり、警告を発したりしてもよいし、洗浄装置60がメンテナンスエラー時にメンテナンス処理を禁止したり、警告を発したりしてもよい。なお、洗浄装置60においては、メンテナンスにおける前工程が存在しないが、たとえば、エアーの吹き付けによる埃の除去など、洗浄工程の前に行われるべき工程がスキップされた場合に、メンテナンス処理を禁止したり、警告を発したりすればよい。
本実施の形態においては、図5および図8に示すように、診療装置は、S102やS152で診療器具4の使用期間および処理回数が閾値以上であるか否かを判定するものであったが、診療器具4の使用回数が閾値以上であるか否かを判定するものであってもよい。この場合において、診療装置は、S109やS161で診療器具4を駆動するたびに診療器具4の使用回数をカウントし、カウントした使用回数を駆動情報としてコンピュータ100に記憶させればよい。そして、診療装置は、S102やS152でコンピュータ100から取得した駆動情報に基づいて、診療器具4の使用回数を特定すればよい。
本実施の形態においては、診療器具4を歯科診療用のインスツルメントとして、また、診療装置10,10bを歯科用診療装置として例示したが、これに限らない。たとえば、診療器具4は、口腔外科用診療器具、耳鼻咽喉科診療器具、産婦人科用診療器具、眼科用診療器具、および外科用診療器具のいずれであってもよい。また、診療装置10,10bは、口腔外科用診療装置、耳鼻咽喉科用診療装置、産婦人科用診療装置、眼科用診療装置、および外科用診療装置のいずれであってもよい。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。なお、本実施の形態で例示された構成および変形例で例示された構成は、適宜組み合わせることができる。