JP2019216628A - ビフィズス菌生残性向上用組成物 - Google Patents

ビフィズス菌生残性向上用組成物 Download PDF

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葵 遠藤
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茂樹 加田
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Akira Kimura
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Abstract

【課題】乳成分以外のものを外部から添加する必要がなく、そして食品の風味や物性に影響を与えることなく、ビフィズス菌の生残性、特に冷蔵保存時における生残性を向上させることを課題とする。【解決手段】乳タンパク質分解物を含むビフィズス菌の生残性向上用組成物を用いることにより、前記課題を解決することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、ビフィズス菌生残性向上用組成物に関する。
消化管内の細菌叢を改善するなど、宿主に有益な作用をもたらしうる有用な微生物は、プロバイオティクス菌と称され注目を集めている。このような有用な微生物として、ビフィズス菌がある。しかしながら、このような機能性を持つビフィズス菌は乳中での生育性および生残性に乏しいとされてきた。そこで、これまでに、乳中でプロバイオティクス菌を培養し、生残性を向上させるための様々な解決手段が開示されている。
特許文献1は、酸性(pHが低い)環境にあるプロバイオティクスの乳酸菌及びビフィズス菌の生残性を向上させることができる、乳酸菌及び/又はビフィズス菌の生残性向上剤及びそれを用いた食品組成物並びにその製造方法の提供を課題とし、その解決手段として、アミノ酸を有効成分とする、乳酸菌および/またはビフィズス菌の生残性向上剤を開示している。
特許文献2は、ビフィズス菌および乳酸菌の増殖を促進する新規物質の提供を課題とし、その解決手段として、蛋白分解酵素で処理した卵白をビフィズス菌および乳酸菌の増殖促進物質として用いることを開示している。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ヨーグルトミックスに種々のアミノ酸を添加する必要があり、このアミノ酸が最終製品の風味に影響を与える可能性が大きい。特許文献2においても、卵白分解物を培養培地に添加する必要がある。この場合においても風味に影響する可能性があり、またアレルギーの問題を生じ、喫食する者が制限される可能性も否定できない。
特許第6088821号 特開第2000-93166号公報
本発明の課題は、新規なビフィズス菌の生残性向上用組成物およびビフィズス菌の生残性向上方法を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明には以下の構成が含まれる。
(1)乳タンパク質分解物を含むビフィズス菌の生残性向上用組成物、
(2)ビフィズス菌培養用の培地である、(1)に記載のビフィズス菌の生残性向上用組成物、
(3)前記組成物におけるペプチド濃度が、1.8mg/L以上である、(1)又は(2)に記載のビフィズス菌の生残性向上用組成物、
(4)前記組成物におけるL−アミノ酸の合計濃度が、4.6mM以上である、(1)〜(3)のいずれかに記載のビフィズス菌の生残性向上用組成物、
(5)前記生残性向上が、ビフィズス菌菌体数の10℃以下条件における減少抑制である、(1)〜(4)のいずれかに記載のビフィズス菌の生残性向上用組成物、
(6)培地換算で1.8mg/L以上の乳タンパク質由来ペプチドを含有する培養培地において、ビフィズス菌を培養あるいは発酵させることを特徴とするビフィズス菌の生残性向上方法、
(7)前記培養培地におけるL−アミノ酸濃度が、4.6mM以上である、(6)に記載のビフィズス菌の生残性向上方法、
(8)前記ビフィズス菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムである、(6)又は(7)に記載のビフィズス菌の生残性向上方法、
(9)前記培養培地において合計で0.2mM以上のフェニルアラニンとセリンとを生じさせることをさらに含む、(6)〜(8)のいずれかに記載のビフィズス菌の生残性向上方法、並びに
(10)前記生残性向上が、ビフィズス菌菌体数の10℃以下条件における減少抑制である、(6)〜(9)のいずれかに記載のビフィズス菌の生残性向上方法。
本発明は、従来にないビフィズス菌の生残性向上用組成物、およびビフィズス菌の生残性向上方法を提供するものである。本発明によれば、乳成分以外のものを外部から添加する必要がなく、そして食品の風味や物性に影響を与えることなく、ビフィズス菌の生残性、特に冷蔵保存時における生残性を向上させることができる。
10種類のタンパク質分解酵素処理培地の各々とコントロール培地(タンパク質分解酵素無処理)における、ビフィドバクテリウム・ロンガム到達菌数の相対比を示したグラフである。 4種類のタンパク質分解酵素処理培地の各々とコントロール培地(タンパク質分解酵素無処理)における、ペプチド濃度を示したグラフである。 4種類のタンパク質分解酵素処理培地の各々とコントロール培地(タンパク質分解酵素無処理)における、L−アミノ酸濃度を示したグラフである。 4種類のタンパク質分解酵素処理培地及びコントロール培地(タンパク質分解酵素無処理)を用いて5種のバルクスターターを調製し、該5種のバルクスターターを用いて調製した発酵乳を冷蔵保存した場合の、ビフィドバクテリウム・ロンガム生残率を示したグラフである。
本発明について以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特に明示しない場合でも%表示は重量%を示す。
[1]ビフィズス菌の生残性向上用組成物
(生残性向上)
本発明における「生残性向上」とは、ビフィズス菌の死滅を抑え、生き残っている菌体数を維持すること(減少抑制)、並びに菌体の生育促進を促すこと(増殖促進)の2つの意味を含む。
また、本発明において「生残性向上」は、特定の条件下、例えば10℃以下の保存条件で、一定期間保存した場合に、菌体数の減少を抑制することを含む。
(ビフィズス菌の生残性向上用組成物)
本発明のビフィズス菌の生残性向上用組成物は、乳タンパク質をタンパク質分解酵素で処理して得られる乳タンパク質分解物を含むものである。この乳タンパク質分解物は分子量が10,000以下のペプチド及びL−アミノ酸を含むことが好ましい。
このペプチドは乳タンパク質由来のペプチドであればどのようなものでもよいが、カゼイン由来のペプチド、β‐ラクトグロブリン由来のペプチド、α‐ラクトアルブミン由来のペプチドから選択される1つ以上であることが好ましく、カゼイン由来のペプチドと、カゼイン以外のペプチドの比が75:25〜85:15程度となるように調整することがさらに好ましい。
本発明のビフィズス菌の生残性向上用組成物におけるL−アミノ酸濃度は、組成物における濃度が4.6mM以上であることが好ましく、4.65mM以上であることがより好ましく、4.7mM以上であることがさらに好ましい。
(乳タンパク質)
本発明のビフィズス菌の生残性向上用組成物の製造に用いる乳タンパク質は、ウシ、水牛、羊、山羊、ウマ等の獣乳に含まれるタンパク質であればどのようなものも用いることができる。よって、本発明のビフィズス菌の生残性向上用組成物の製造には、上記したタンパク質を含む乳素材であればどのようなものも用いることができ、乳タンパク質濃縮物(Milk Protein Isolate、Milk Protein Concentrate)やホエイタンパク濃縮物(Whey Protein Isolate、Whey Protein Concentrate)等のタンパク質を多く含有する乳素材だけでなく、乳タンパク質を含む生乳、牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳、全脱脂乳、脱脂粉乳、全粉乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、調整粉乳、乳タンパク質などを用いることができ、これらの素材を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(乳タンパク質の分解)
本発明のビフィズス菌の生残性向上用組成物は上記した乳タンパク質を1〜10%程度含む水溶液を調製し、これに後述するタンパク質分解酵素を添加し、乳タンパク質を分解することで得ることができる。タンパク質分解は、ペプチドの分子量が10,000以下、かつタンパク質分解によって生じるフェニルアラニンとセリンの合計量が0.2mM以上となるよう行なうことが好ましい。また、タンパク質分解は、タンパク質分解によって生じるフェニルアラニンとセリンの合計量が0.2〜0.5mMとなるよう行なうことがより好ましい。
この時の乳タンパク質の濃度、使用する酵素、反応温度、反応時間、失活等の条件は、ペプチドの分子量が10,000以下、かつタンパク質分解によって生じるフェニルアラニンとセリンの合計量が0.2mM以上となるよう、使用する乳タンパク質、酵素、設備等に応じて適宜調整することができる。
得られたペプチドを含む溶液はそのままビフィズス菌の生残性向上用組成物として用いることができるが、これを乾燥して粉末にして用いることもできる。あるいは、分離、分画等によりペプチドを精製したものを用いることもできる。
タンパク質分解酵素は、微生物などに由来する食品利用可能なタンパク質分解酵素が制限なく利用でき、エンド型プロテアーゼ、エキソ型プロテアーゼの制限はなく特に限定されないが、上記したように、分子量が10,000以下のペプチドを生じさせ、かつタンパク質分解によって生じるフェニルアラニンとセリンの合計量を0.2mM以上とすることができるものを用いることが好ましく、Aspergillus.oryzae(米麹菌)由来のエンド型プロテアーゼ及びエキソ型プロテアーゼを混合したもの、又はAspergillus.oryzae(米麹菌)由来のエキソ型プロテアーゼがより好ましく、Aspergillus.oryzae(米麹菌)由来のエンド型プロテアーゼ及びエキソ型プロテアーゼを混合したもの、又はAspergillus.oryzae(米麹菌)由来のエキソ型プロテアーゼのうち、至適pHが7付近、至適温度が50〜70℃程度であるものがさらに好ましい。さらに好ましい酵素としてデナチームAP(ナガセケムテックス株式会社)、プロテアックス(天野エンザイム株式会社)を例示できる。
その他使用可能な酵素として、スミチームLP50D(新日本化学工業株式会社)、スミチームFL-G(新日本化学工業株式会社)、スミチームLPL-G(新日本化学工業株式会社)、スミチームDPP-G(新日本化学工業株式会社)、スミチームP(新日本化学工業株式会社)、プロテアーゼA「アマノ」SD(天野エンザイム株式会社)、プロテアーゼM「アマノ」SD(天野エンザイム株式会社)、パンチダーゼNP-2(ヤクルト薬品工業株式会社)等を例示することができる。
(ビフィズス菌の生残性向上用組成物の使用方法)
ビフィズス菌の生残性向上用組成物は所望の培地や食品等にペプチドが1.8mg/mL以上、好ましくは1.85mg/mL以上、より好ましくは1.90mg/mL以上となるように添加することができる。使用態様として以下を例示することができる。
1)ビフィズス菌を使用する培地中に、ペプチドが1.8mg/mL以上となるようにビフィズス菌の生残性向上用組成物を添加し、培地を殺菌処理する。殺菌処理した培地にビフィズス菌を植菌し、所望の温度と時間でビフィズス菌を培養する。ここで得られたビフィズス菌の培養物は発酵乳等の食品の原材料として使用することができる。
2)乳を含む培地中に、ペプチドが1.8mg/mL以上となるようにタンパク質分解酵素を添加してインキュベーションし、ビフィズス菌の生残性向上用組成物(培地)を調製する。このビフィズス菌の生残性向上用組成物(培地)を殺菌処理する。殺菌処理したビフィズス菌の生残性向上用組成物(培地)にビフィズス菌を植菌し、所望の温度と時間でビフィズス菌を培養する。ここで得られたビフィズス菌の培養物は発酵乳等の食品の原材料として使用することができる。例えば、バルクスターターとして脱脂粉乳等に添加して、発酵乳を得ることができる。
3)乳を含む培地中に、ペプチドが1.8mg/mL以上となるようにタンパク質分解酵素を添加してインキュベーションして、ビフィズス菌の生残性向上用組成物(培地)を調製する。このビフィズス菌の生残性向上用組成物(培地)を殺菌処理する。殺菌処理したビフィズス菌の生残性向上用組成物(培地)にビフィズス菌からなるバルクスターターを添加し、所望の温度と時間で発酵させ、発酵乳を得る。
本発明においては、前記使用態様2)のように、ビフィズス菌の生残性向上用組成物の存在下でビフィズス菌を培養すれば、その後、本発明のビフィズス菌の生残性向上用組成物を含有しない培地で培養しても、ビフィズス菌の生残性が高いという効果を得ることができる。この理由は、現在のところ明確ではないが、以下のように推定することもできる。もっとも、本発明は、以下の推定に限定されるものではない。
ビフィズス菌の培養の初期段階において冨栄養条件におかれることが、その後の良好な生育に寄与すると考えられる。したがって、低温下のような過酷な状況下でも、菌体数の減少を抑制できると考えられる。
(対象となるビフィズス菌)
ビフィズス菌の生残性向上用組成物の対象とするビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム属の細菌であれば特に限定されないが、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・カテヌラタム、ビフィドバクテリウム・デンティウムなどが挙げられる。また、菌株としては、ビフィドバクテリウム・ロンガムSBT2928株、およびビフィドバクテリウム・シュードロンガムSBT2908株を例示できる。
本発明のビフィズス菌の生残性向上用組成物は、ペプトン、酵母エキス、及びアミノ酸などのビフィズス菌生育のための外部添加物質を含むことができる。また、ペプチド濃度やL−アミノ酸濃度、セリン及びフェニルアラニンの濃度を調整するために、これらの物質を外部添加物質として含有することもできる。しかしながら、風味を考慮して、これらの外部添加物質を、好ましくは、実質的に含有しない、さらに好ましくは全く含有しないことが好ましい。なお、「実質的に含有しない」とは、最終製品の風味に影響する程度の量を含有しないことを意味する。
(ペプチドの測定方法)
ペプチド濃度の測定方法については、公知の任意の方法(Lowry法、Bradford法、BCA法などの比色法)により決定することができる。市販のタンパク質濃度測定試薬(商品名:DC プロテインアッセイキット,BIO-RAD社製)等を用いて測定してもよい。
(L-アミノ酸の測定方法)
L-アミノ酸濃度の測定については、公知の任意の方法(アミノ酸定量用酵素を用いた測定法、高速液体クロマトグラフィーやアミノ酸自動分析装置による測定法)により決定することができる。市販のL-アミノ酸濃度測定試薬(商品名:L-Amino Acid Quantitation Kit,Bio Vision社製)等を用いて測定してもよい。
[2]ビフィズス菌の生残性向上方法
本発明のビフィズス菌の生残性向上方法では、培地換算で1.8mg/L以上の乳タンパク質由来ペプチドを含有する培養培地において、ビフィズス菌を培養あるいは発酵させる。乳タンパク質由来ペプチドは、外部から添加してもよいが、風味を考慮して、タンパク質分解酵素を添加することにより、培地内において生じさせ、外部から添加するものは含まないことが好ましい。
本発明のビフィズス菌の生残性向上方法では、培養培地において合計で0.2mM以上のフェニルアラニンとセリンとを生じさせることをさらに含むことが好ましい。「生じさせる」とは、外部からフェニルアラニンとセリンを添加することも含むが、風味を考慮して、タンパク質分解酵素を添加することにより、培地内において生じさせ、外部から添加するものは含まないことが好ましい。
本発明のビフィズス菌の生残性向上方法により得られたビフィズス菌は、スターターとして用いてもよく、又は発酵乳等の最終製品の調製用として用いてもよい。前述のように、スターターとして用いる場合は、添加される培地が本発明のビフィズス菌の生残性向上用組成物を含有しない培地であっても、本発明の効果を得ることができる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(1)タンパク質分解酵素処理乳培地の調製、およびビフィドバクテリウム・ロンガムの培養
15%還元脱脂乳培地を調製し、培地に対して0.001%の食品利用可能なタンパク質分解酵素10種類をそれぞれ添加し、十分に撹拌した後、酵素の至適温度付近(各メーカー発行データシート記載温度を参考に反応温度を設定)にて、1時間静置で酵素反応させた。各タンパク質分解酵素と、その酵素反応温度について表1に示す。
酵素反応終了後、95度、30分間の加熱処理にて酵素の失活と培地の殺菌を実施した。そこへ、ビフィドバクテリウム・ロンガムSBT2928(受託番号:FERM P-10657,寄託日:1989年4月13日,独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)の濃縮菌体を最終1%で添加し、36度、16時間培養した。
(2)乳培地における到達菌数の確認
培養後、改変A希釈水(0.6% NaHPO4,0.45% KH2PO4,0.05% L-cysteinHCl-H2O,0.05% agar,溶解後121度・15分滅菌処理)を用いて段階希釈した菌液をTOSムピロシン培地を用いて混釈し、嫌気培養システム(商品名:アネロパック,三菱ガス化学株式会社製)を用いて37度、72時間嫌気培養した。培養終了後、プレートカウント法によりビフィドバクテリウム・ロンガムの生菌数を測定した。コントロール(タンパク質分解酵素による処理無しの培地)における16時間培養後の到達菌数を1として、タンパク質分解酵素処理によって得られる生残性向上物質を含む乳培地における到達菌数の相対比を図1に示す。
結果、コントロールでのビフィドバクテリウム・ロンガムの到達菌数と比較して、本発明のタンパク質分解酵素処理によって得られる生残性向上物質を含む乳培地においては到達菌数が1.4〜3.6倍向上するという結果となった。全ての酵素処理によってビフィドバクテリウム・ロンガムの生育性は向上したが、酵素ごとに生育促進効果は様々であった。最も生育促進効果が認められたのは、プロテアックスで処理した乳培地であった。
以上から、ヒトに有益な効果を示すプロバイオティクスとして、食品利用されているビフィズス菌の1菌種であるビフィドバクテリウム・ロンガムの生残性が向上することが確認された。
表 1. タンパク質分解酵素と酵素反応温度
実施例2
(1)タンパク質分解酵素処理乳培地の調製、およびバルクスターターの調製
15%還元脱脂乳培地を調製し、培地に対して0.001%の食品利用可能なタンパク質分解酵素4種類(スミチームLP50D、プロテアックス、スミチームFL-G、デナチームAP)を添加し、十分に撹拌した後、酵素の至適温度付近(各メーカー発行データシート記載温度を参考に反応温度を設定)にて、1時間静置にて酵素反応を行った(表1と同温度条件)。酵素反応終了後、95度、30分間の加熱処理にて酵素の失活と培地の殺菌を実施した。
タンパク質分解酵素処理を施した乳培地におけるペプチド濃度は1.9〜2.0 mg/mL(図2)、且つL-アミノ酸濃度は4.7〜5.0 mM(図3)であった。タンパク質分解酵素処理を施していないコントロールのアミノ酸濃度が4.5mMであったことから、タンパク質分解酵素処理を施した乳培地では0.2〜0.5mMのアミノ酸が生成したと考えられた。
また、生成したアミノ酸はフェニルアラニンとセリンであった。その他のアミノ酸の酵素処理後の増加は認められなかった。
なお、ペプチド濃度、L-アミノ酸濃度の測定および遊離アミノ酸組成分析は、以下の方法で実施した。
まず、酵素失活および殺菌処理後の乳培地を15000 rpmで10分間遠心分離した。得られた上清は遠心濾過装置(商品名:Amicon Ultra-0.5 Centrifugal Filter Unit with Ultracel-3 membrane,10 kD MWCO,ミリポア社製)を用いて限外濾過処理を行い、分子量10 kDa以上のタンパク質を除去した。透過した画分を適切な濃度にイオン交換水で希釈した後、それぞれペプチド濃度とL-アミノ酸濃度の測定に供した。
ペプチド濃度測定はLowry法に従い、市販のキット(商品名:DCプロテインアッセイキット,BIO-RAD社製)を用いて定量した。キットのプロトコルに従って試薬を添加後、室温で15分発色反応を行った後、750 nmの吸光度を測定した。得られた吸光度と予め作成した検量線(ウシ血清アルブミンを使用)に基づき、ペプチド濃度を算出した。
L-アミノ酸濃度測定は市販のキット(L-Amino Acid Quantitation Kit,Bio-Vision社製)を用いて定量した。キットのプロトコルに従って試薬を添加後、37度で30分発色反応を行った後、570 nmの吸光度を測定した。得られた吸光度と予め作成した検量線(キット付属のスタンダードを使用)に基づき、L-アミノ酸濃度を算出した。
遊離アミノ酸組成分析については、それぞれ次の方法で実施した。トリプトファンは高速液体クロマトグラフ法により測定し、トリプトファン以外の遊離アミノ酸は自動分析法により測定した。
酵素失活および殺菌処理後の乳培地へ、ビフィドバクテリウム・ロンガムSBT2928(受託番号:FERM P-10657,寄託日:1989年4月13日,独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)の濃縮菌体を1%で添加し、36度、16時間培養した。16時間培養後、速やかにバルクスターターを4度へ冷却して、バルクスターターとした。なお、バルクスターター到達菌数はペプチド濃度およびL-アミノ酸濃度との間に、有意に正の相関が認められた(p<0.01,スピアマンの順位相関係数)。
(2)発酵乳の調製・保存
脱脂粉乳12%、無塩バター2%を混合溶解し、湯せんにて60度で加温して、均質後、95度で5分間保持して加熱殺菌し、40度に冷却して発酵乳ベースミックスを調製した。発酵乳ベースミックスを殺菌した後、本発明のタンパク質分解酵素処理物を含む培地で調製したビフィドバクテリウム・ロンガムのバルクスターターを4%接種した。さらに、ラクトバチルス・デルブリッキ・サブスピーシズ・ブルガリカス、ストレプトコッカス・サーモフィルスの混合濃縮菌体を0.1%接種した。接種後、酸度が0.8に達するまで39度で発酵させた。発酵終了後、各サンプルの発酵乳を保存用容器に分注し、アルミ蓋のシールを施した。24日間冷蔵(10度)保存した。
(3)発酵乳における生残性の確認
培養後、改変A希釈水(0.6% NaHPO4,0.45% KH2PO4,0.05% L-cysteinHCl-H2O,0.05% agar,溶解後121度・15分滅菌処理)を用いて段階希釈した菌液をTOSムピロシン培地を用いて混釈し、嫌気培養システム(商品名:アネロパック,三菱ガス化学株式会社)を用いて37度、72時間嫌気培養した。培養終了後、プレートカウント法によりビフィドバクテリウム・ロンガムの生菌数を測定し、保存より24日目の生菌数を1日目の生菌数で除算し、商を%に換算して生残率を求めた。結果を図4に示す。
タンパク質分解酵素処理物を含む培地で調製したビフィドバクテリウム・ロンガムのバルクスターターを用いて調製した発酵乳では、コントロールの発酵乳に対して、いずれも生残率が上昇する結果となった。
また、コントロールの生残率を1として、タンパク質分解酵素処理物を含む培地で調製したビフィドバクテリウム・ロンガムのバルクスターターを用いて調製した発酵乳における生残率の相対比を求めた。その結果、冷蔵保存した発酵乳における生残率は、コントロールと比較して、本発明のタンパク質分解酵素処理物を含む培地で調製したビフィドバクテリウム・ロンガムのバルクスターターを用いて調製した発酵乳では、1.8〜2.1倍向上した。
また、調製した発酵乳は、良好な風味を有しており、コントロールの実施例と風味において差異がなかった。
実施例3
1)脱脂粉乳12%、無塩バター2%を混合溶解し、60℃に加温して均質化処理に供した。
2)均質化処理した発酵乳ベースを65℃に調整し、プロテアックスを0.001%添加し、1時間静置した。
3)静置後、95℃で15分間保持して加熱殺菌するとともに酵素を失活させた。
4)酵素を失活させた発酵乳ベースを40℃に調整し、ビフィドバクテリウム・ロンガムのバルクスターターを4%接種した。さらに、ラクトバチルス・デルブリッキ・サブスピーシズ・ブルガリカス、ストレプトコッカス・サーモフィルスの混合濃縮菌体を0.1%接種した。
5)接種後、酸度が0.8に達するまで39度で発酵させた。発酵終了後、各サンプルの発酵乳を保存用容器に分注し、アルミ蓋のシールを施した。24日間冷蔵(10度)保存した。
上記の実施例品に加えて、2)以外は同じ条件で調製した発酵乳をコントロールとして調製した。
(1)発酵乳における生残性の確認
実施例2と同様、プレートカウント法によりビフィドバクテリウム・ロンガムの生菌数を測定した。保存より24日目の生菌数を1日目の生菌数で除算し、商を%に換算して生残率を求めた。コントロールの生残率を1とした時、実施例品では、ビフィズス菌の生残性が2.1倍向上した。また、調製した発酵乳は、良好な風味を有しており、コントロールの実施例と風味において差異がなかった。
以上、本発明により、別途ペプチドなどの成分を添加する必要がない、食品に利用可能となる新規なビフィズス菌の生残性向上用組成物が提供される。本生残性向上用組成物により、ビフィズス菌培養時の生育性、およびビフィズス菌の冷蔵保存中における生残性を大幅に向上させることができる。それによって、ビフィズス菌体の活性を長時間、高く持続できることから、使用するビフィズス菌体の使用量(食品組成物への添加量)を低減させることが可能となり、コストダウンが期待できる。並びに、ビフィズス菌を含む食品組成物の安定供給と品質維持が可能となる。
また、本発明における生残性向上用組成物は、乳素材をごく微量の食品利用可能な酵素で処理して得られたものであることから、発酵乳などの食品組成物の風味や物性に影響を与えることなく、乳本来の風味を確保することが可能である。ビフィズス菌を含有するあらゆる食品に対して極めて有効である。

Claims (10)

  1. 乳タンパク質分解物を含むビフィズス菌の生残性向上用組成物。
  2. ビフィズス菌培養用の培地である、請求項1に記載のビフィズス菌の生残性向上用組成物。
  3. 前記組成物におけるペプチド濃度が、1.8mg/L以上である、請求項1又は2に記載のビフィズス菌の生残性向上用組成物。
  4. 前記組成物におけるL−アミノ酸の合計濃度が、4.6mM以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のビフィズス菌の生残性向上用組成物。
  5. 前記生残性向上が、ビフィズス菌菌体数の10℃以下条件における減少抑制である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のビフィズス菌の生残性向上用組成物。
  6. 培地換算で1.8mg/L以上の乳タンパク質由来ペプチドを含有する培養培地において、ビフィズス菌を培養あるいは発酵させることを特徴とするビフィズス菌の生残性向上方法。
  7. 前記培養培地におけるL−アミノ酸濃度が、4.6mM以上である、請求項6に記載のビフィズス菌の生残性向上方法。
  8. 前記ビフィズス菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムである、請求項6又は7に記載のビフィズス菌の生残性向上方法。
  9. 前記培養培地において合計で0.2mM以上のフェニルアラニンとセリンとを生じさせることをさらに含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載のビフィズス菌の生残性向上方法。
  10. 前記生残性向上が、ビフィズス菌菌体数の10℃以下条件における減少抑制である、請求項6〜9のいずれか一項に記載のビフィズス菌の生残性向上方法。
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