A.第1の実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1(および後述する図8から図10)のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1(および後述する図8から図10)のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図であり、図4は、図1(および後述する図8から図10)のIV−IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を「上方向」といい、Z軸負方向を「下方向」というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図5以降についても同様である。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を、面方向と呼ぶものとする。
燃料電池スタック100は、L(Lは3以上の整数であり、本実施形態ではL=15)個の燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。15個の発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、15個の発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
燃料電池スタック100が備える15個の発電単位102は、M(Mは1以上の整数であり、本実施形態ではM=9)個の上流側発電単位102Uと、N(Nは2以上の整数であり、本実施形態ではN=6)個の下流側発電単位102Dとを含む。より詳細には、15個の発電単位102の内、下から数えて1〜3,6〜8番目の発電単位102が下流側発電単位102Dであり、4,5,9〜15番目の発電単位102が上流側発電単位102Uである。本実施形態では、下流側発電単位102Dの個数Nは、上流側発電単位102Uの個数Mより小さい。上流側発電単位102Uは、特許請求の範囲における第1の電気化学反応単位に相当し、下流側発電単位102Dは、特許請求の範囲における第2の電気化学反応単位に相当する。
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、「連通孔108」という。
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2〜図4に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。該空間の内の少なくとも一部は、複数の発電単位102にわたって延びるガス流路であるマニホールドとして機能する。
具体的には、図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能する。また、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの頂点(X軸正方向側およびY軸負方向側の頂点)付近に位置するボルト22(ボルト22C)と、そのボルト22Cが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各上流側発電単位102Uに供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能する。また、図1、図3および図4に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各上流側発電単位102Uの燃料室176から排出されたガスである燃料中間ガスFMGを各下流側発電単位102Dに向けて運ぶ燃料ガス中継マニホールド172として機能する。また、図1、図3および図4に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各下流側発電単位102Dの燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド173として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。また、燃料中間ガスFMGには、各上流側発電単位102Uにおいて発電反応に利用されなかった水素等が含まれる。
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通している。すなわち、このガス通路部材27は、酸化剤ガスOGを燃料電池スタック100の外部から内部に供給する供給孔として機能する。また、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。すなわち、このガス通路部材27は、酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の内部から外部へ排出する排出孔として機能する。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Cの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通している。すなわち、このガス通路部材27は、燃料ガスFGを燃料電池スタック100の外部から内部に供給する供給孔として機能する。また、図4に示すように、燃料ガス排出マニホールド173を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド173に連通している。すなわち、このガス通路部材27は、燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の内部から外部へ排出する排出孔として機能する。
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
(発電単位102の構成)
図5は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102(1つの上流側発電単位102Uと1つの下流側発電単位102D)のXZ断面構成を示す説明図であり、図6は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102(2つの上流側発電単位102U)のYZ断面構成を示す説明図であり、図7は、図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102(2つの下流側発電単位102D)のYZ断面構成を示す説明図である。また、図8は、図5のVIII−VIIIの位置における発電単位102(上流側発電単位102U)のXY断面構成を示す説明図であり、図9は、図5のIX−IXの位置における発電単位102(上流側発電単位102U)のXY断面構成を示す説明図であり、図10は、図5のX−Xの位置における発電単位102(下流側発電単位102D)のXY断面構成を示す説明図である。
図5〜図7に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2〜図4参照)。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、CaSZ(カルシア安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されている。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子とからなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、ステンレス等の金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、単セル110に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
空気極側フレーム130は、図8に示すように、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、空気室166と酸化剤ガス導入マニホールド161とを連通する空気室入口側連通ガス流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する空気室出口側連通ガス流路133とが形成されている。空気室入口側連通ガス流路132および空気室出口側連通ガス流路133は、空気極側フレーム130に形成された面方向に延びる孔である。
燃料極側フレーム140は、図9および図10に示すように、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、ステンレス等の金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料室176と1つのマニホールドとを連通する燃料室入口側連通ガス流路142と、燃料室176と他の1つのマニホールドとを連通する燃料室出口側連通ガス流路143とが形成されている。燃料室入口側連通ガス流路142および燃料室出口側連通ガス流路143は、燃料極側フレーム140に形成された面方向に延びる孔である。図9に示すように、上流側発電単位102Uにおいては、燃料室入口側連通ガス流路142は、燃料室176と燃料ガス導入マニホールド171とを連通し、燃料室出口側連通ガス流路143は、燃料室176と燃料ガス中継マニホールド172とを連通する。また、図10に示すように、下流側発電単位102Dにおいては、燃料室入口側連通ガス流路142は、燃料室176と燃料ガス中継マニホールド172とを連通し、燃料室出口側連通ガス流路143は、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド173とを連通する。
空気極側集電体134は、図5〜図8に示すように、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、所定の間隔をあけて並べられた複数の略四角柱状の導電性部材から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されていてもよい。
燃料極側集電体144は、図5〜図7、図9および図10に示すように、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、複数の電極対向部145と、各電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えた導電体であり、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。各電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図5に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102(上流側発電単位102Uおよび下流側発電単位102D)の空気室入口側連通ガス流路132を介して空気室166に供給され、各発電単位102の単セル110の空気極114に供給される。
また、図3および図6に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各上流側発電単位102Uの燃料室入口側連通ガス流路142を介して燃料室176に供給され、各上流側発電単位102Uの単セル110の燃料極116に供給される。なお、燃料ガス導入マニホールド171は、各下流側発電単位102Dの燃料室176には連通しておらず、燃料ガス導入マニホールド171から各下流側発電単位102Dの燃料室176に燃料ガスFGが供給されることはない。
また、図3、図4、図6および図7に示すように、各上流側発電単位102Uの燃料室176から燃料室出口側連通ガス流路143を介して燃料ガス中継マニホールド172に排出された燃料中間ガスFMGは、各下流側発電単位102Dの燃料室入口側連通ガス流路142を介して燃料室176に供給され、各下流側発電単位102Dの単セル110の燃料極116に供給される。
各発電単位102(上流側発電単位102Uおよび下流側発電単位102D)の単セル110の空気極114に酸化剤ガスOGが供給され、単セル110の燃料極116に燃料ガスFGまたは燃料中間ガスFMGが供給されると、各単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGまたは燃料中間ガスFMGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
図2および図5に示すように、各発電単位102(上流側発電単位102Uおよび下流側発電単位102D)の空気室166から空気室出口側連通ガス流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、図4および図7に示すように、各下流側発電単位102Dの燃料室176から燃料室出口側連通ガス流路143を介して燃料ガス排出マニホールド173に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド173の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
このように、本実施形態の燃料電池スタック100では、燃料電池スタック100の外部から導入された燃料ガスFGが、燃料ガス導入マニホールド171を介して複数の上流側発電単位102Uに並列に供給され、その後、各上流側発電単位102Uから排出された燃料中間ガスFMGが、燃料ガス中継マニホールド172を介して複数の下流側発電単位102Dに並列に供給される。すなわち、本実施形態の燃料電池スタック100は、いわゆる並直列型の燃料電池スタックである。
A−3.各発電単位102の燃料極側の詳細構成:
次に、各発電単位102の燃料極側の構成について、さらに詳細に説明する。上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100が備えるL(本実施形態ではL=15)個の発電単位102は、M(本実施形態ではM=9)個の上流側発電単位102Uと、N(本実施形態ではN=6)個の下流側発電単位102Dとを含む。本実施形態の燃料電池スタック100では、下流側発電単位102Dの個数Nは、上流側発電単位102Uの個数Mより小さい(N<M)。
本実施形態の燃料電池スタック100では、6個の下流側発電単位102Dのそれぞれの燃料室176における、Z軸方向に燃料極116と対向する部分の高さHd(以下、単に「下流側発電単位102Dの燃料室176の高さHd」という)は、互いに等しい(図5および図7参照)。なお、下流側発電単位102Dの燃料室176の高さHdが、燃料室176における面方向の各位置で異なる場合には、下流側発電単位102Dの燃料室176の高さHdは、各位置での高さHdの最小値を意味するものとする。また、本明細書において、複数の燃料室176の高さが互いに等しいとは、各燃料室176の高さの差が±0.01mm以下であることを意味する。各下流側発電単位102Dの燃料室176の高さHdは、例えば、1.9mm〜2.3mm程度である。
同様に、本実施形態の燃料電池スタック100では、9個の上流側発電単位102Uのそれぞれの燃料室176における、Z軸方向に燃料極116と対向する部分の高さHu(以下、単に「上流側発電単位102Uの燃料室176の高さHu」という)は、互いに等しい(図5および図6参照)。なお、上流側発電単位102Uの燃料室176の高さHuが、燃料室176における面方向の各位置で異なる場合には、上流側発電単位102Uの燃料室176の高さHuは、各位置での高さHuの最小値を意味するものとする。各上流側発電単位102Uの燃料室176の高さHuは、例えば、1.4mm〜1.8mm程度である。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、各下流側発電単位102Dの燃料室176の高さHdは、各上流側発電単位102Uの燃料室176の高さHuより高い(Hd>Hu)。本実施形態では、各下流側発電単位102Dの燃料極側フレーム140の厚さ(Z軸方向における大きさ)を各上流側発電単位102Uの燃料極側フレーム140の厚さより厚くすることにより、上記関係(Hd>Hu)を実現している。下流側発電単位102Dの燃料室176の高さHdと、上流側発電単位102Uの燃料室176の高さHuとの差(=Hd−Hu)は、0.5mm以上であることが好ましい。
また、図11は、燃料電池スタック100を構成する各発電単位102における燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woを示す説明図である。図11の右端の表には、燃料電池スタック100を構成する各発電単位102について、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの値が示されている。
ここで、図9および図10に示すように、各発電単位102における燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiは、Z軸方向視で、燃料室入口側連通ガス流路142の延伸方向に直交する方向の大きさである。燃料室入口側連通ガス流路142の各位置において幅Wiが異なる場合には、燃料室入口側連通ガス流路142における燃料室176との接続位置において幅Wiを特定するものとする。また、1つの発電単位102に複数の燃料室入口側連通ガス流路142が存在する場合には、各燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの合計を、該発電単位102の燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiというものとする。同様に、各発電単位102における燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woは、Z軸方向視で、燃料室出口側連通ガス流路143の延伸方向に直交する方向の大きさである。燃料室出口側連通ガス流路143の各位置において幅Woが異なる場合には、燃料室出口側連通ガス流路143における燃料室176との接続位置において幅Woを特定するものとする。また、1つの発電単位102に複数の燃料室出口側連通ガス流路143が存在する場合には、各燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの合計を、該発電単位102の燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woというものとする。
図11に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100では、6個の下流側発電単位102Dのそれぞれにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiは、互いに等しくない。すなわち、6個の下流側発電単位102Dは、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiが互いに異なる複数の下流側発電単位102Dを含む。なお、本明細書において、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiが互いに異なるとは、各幅Wiの差が±0.01mmより大きいことを意味する。具体的には、本実施形態の燃料電池スタック100では、下から数えて1,2,3,6,7,8番目の下流側発電単位102Dの燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiは、それぞれ、「j」mm、「j+0.1」mm、「j+0.2」mm、「j+0.1」mm、「j+0.2」mm、「j+0.3」mmである。ここで、「j」は、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの基準値(以下、「入口側基準幅j」という)であり、本実施形態では、最も下に位置する発電単位102(下流側発電単位102D)の燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiと同値である。なお、入口側基準幅jは、例えば、1.2mm〜1.6mm程度である。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、各下流側発電単位102Dにおいて、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiは、燃料室176の高さHdより小さい。燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiに対する燃料室176の高さHdの比(=Hd/Wi)は、1.1以上であることが好ましい。
同様に、本実施形態の燃料電池スタック100では、6個の下流側発電単位102Dのそれぞれにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woは、互いに等しくない。すなわち、6個の下流側発電単位102Dは、燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが互いに異なる複数の下流側発電単位102Dを含む。なお、本明細書において、燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが互いに異なるとは、各幅Woの差が±0.01mmより大きいことを意味する。具体的には、本実施形態の燃料電池スタック100では、下から数えて1,2,3,6,7,8番目の下流側発電単位102Dの燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woは、それぞれ、「k」mm、「k+0.1」mm、「k+0.2」mm、「k+0.1」mm、「k+0.2」mm、「k+0.3」mmである。ここで、「k」は、燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの基準値(以下、「出口側基準幅k」という)であり、本実施形態では、最も下に位置する発電単位102(下流側発電単位102D)の燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woと同値である。なお、出口側基準幅kは、例えば、1.2mm〜1.6mm程度である。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、各下流側発電単位102Dにおいて、燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woは、燃料室176の高さHdより小さい。燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woに対する燃料室176の高さHdの比(=Hd/Wo)は、1.1以上であることが好ましい。
一方、本実施形態の燃料電池スタック100では、9個の上流側発電単位102Uのそれぞれにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiは、互いに等しい(すべて、「j+0.5」mmである)。また、9個の上流側発電単位102Uのそれぞれにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woも、互いに等しい(すべて、「k+0.5」mmである)。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、6個の下流側発電単位102Dにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最大値(=「j+0.3」mm)は、9個の上流側発電単位102Uにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最小値(=「j+0.5」mm)より小さくなっている。すなわち、各下流側発電単位102Dにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiは、各上流側発電単位102Uにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiと比較して、全体的に狭くなっている。同様に、本実施形態の燃料電池スタック100では、6個の下流側発電単位102Dにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの最大値(=「k+0.3」mm)は、9個の上流側発電単位102Uにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの最小値(=「k+0.5」mm)より小さくなっている。すなわち、各下流側発電単位102Dにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woは、各上流側発電単位102Uにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woと比較して、全体的に狭くなっている。
なお、本実施形態における燃料室入口側連通ガス流路142および燃料室出口側連通ガス流路143は、特許請求の範囲における特定連通ガス流路に相当する。
また、Z軸方向に互いに隣接する複数の下流側発電単位102Dから構成されたグループを、下流側発電単位グループ102DGと呼ぶものとすると、本実施形態の燃料電池スタック100では、6個の下流側発電単位102Dは、2つの下流側発電単位グループ102DGを有すると言える(図2〜図4,図11参照)。すなわち、本実施形態では、下から数えて1,2,3番目の3つの下流側発電単位102Dから構成された下流側発電単位グループ102DG(以下、「下側下流側発電単位グループ102DG1」という)と、下から数えて6,7,8番目の3つの下流側発電単位102Dから構成された下流側発電単位グループ102DG(以下、「上側下流側発電単位グループ102DG2」という)とが存在する。
1つの下流側発電単位グループ102DGに着目すると、該下流側発電単位グループ102DGを構成する複数の下流側発電単位102Dの内、より下側に位置する下流側発電単位102Dほど、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが狭くなっている。例えば、下側下流側発電単位グループ102DG1を構成する3つの下流側発電単位102Dの内、最も上側に位置する下流側発電単位102Dにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiは「j+0.2」mmであり、最も下側に位置する下流側発電単位102Dにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiは、それより狭い「j」mmであり、両者の中間に位置する下流側発電単位102Dにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiは、両者の中間である「j+0.1」mmである。下側下流側発電単位グループ102DG1における燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woや、上側下流側発電単位グループ102DG2の燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woについても同様となっている。
なお、1つの下流側発電単位グループ102DGを構成する複数の下流側発電単位102Dの内、より下側に位置する下流側発電単位102Dは、燃料室176から排出されたガス(燃料オフガスFOG)を燃料電池スタック100の外部へ排出する排出孔(すなわち、燃料ガス排出マニホールド173の位置に設けられたガス通路部材27(図4参照))のより近くに位置する下流側発電単位102Dであると言える。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100では、1つの下流側発電単位グループ102DGを構成する複数の下流側発電単位102Dは、一の下流側発電単位102Dと、該一の下流側発電単位102Dと比較して、燃料室176から排出されたガスを燃料電池スタック100の外部へ排出する排出孔の近くに位置し、かつ、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが狭い他の下流側発電単位102Dとを含むと言える。
また、複数の下流側発電単位グループ102DGを互いに比較すると、より下側に位置する下流側発電単位グループ102DGほど、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最小値および燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの最小値が小さくなっている。例えば、下側下流側発電単位グループ102DG1における燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最小値(=「j」mm)は、上側下流側発電単位グループ102DG2における燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最小値(=「j+0.1」mm)より小さい。燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの最小値についても同様となっている。
なお、複数の下流側発電単位グループ102DGの内、より下側に位置する下流側発電単位グループ102DGは、燃料室176から排出されたガス(燃料オフガスFOG)を燃料電池スタック100の外部へ排出する排出孔(燃料ガス排出マニホールド173の位置に設けられたガス通路部材27)のより近くに位置する下流側発電単位グループ102DGであると言える。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100では、複数の下流側発電単位グループ102DGは、一の下流側発電単位グループ102DGと、該一の下流側発電単位グループ102DGと比較して、燃料室176から排出されたガスを燃料電池スタック100の外部へ排出する排出孔の近くに位置し、かつ、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最小値および燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの最小値が小さい他の下流側発電単位グループ102DGとを含むと言える。
A−4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、Z軸方向に並べて配置されたL(Lは3以上の整数であり、本実施形態ではL=15)個の発電単位102を備える。各発電単位102は、電解質層112と、電解質層112を挟んでZ軸方向に互いに対向する空気極114および燃料極116と、を含む単セル110を有する。燃料電池スタック100には、それぞれ複数の発電単位102にわたって延びるガス流路である複数のマニホールド161,162,171,172,173が形成されている。各発電単位102には、燃料極116に面する燃料室176と、燃料室176と複数のマニホールドの1つ(燃料ガス導入マニホールド171または燃料ガス中継マニホールド172)とを連通する燃料室入口側連通ガス流路142と、燃料室176と複数のマニホールドの1つ(燃料ガス中継マニホールド172または燃料ガス排出マニホールド173)とを連通する燃料室出口側連通ガス流路143とが形成されている。L個の発電単位102は、M(Mは1以上の整数であり、本実施形態ではM=9)個の上流側発電単位102Uと、N(Nは2以上の整数であり、本実施形態ではN=6)個の下流側発電単位102Dとを含む。各下流側発電単位102Dの燃料室入口側連通ガス流路142は、燃料ガス中継マニホールド172を介して、各上流側発電単位102Uの燃料室出口側連通ガス流路143と連通している。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、各下流側発電単位102Dの燃料室176におけるZ軸方向に燃料極116と対向する部分の高さHdは、互いに等しく、かつ、各上流側発電単位102Uの燃料室176におけるZ軸方向に燃料極116と対向する部分の高さHuより高い。また、N個の下流側発電単位102Dは、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが互いに異なる複数の下流側発電単位102Dを含む。また、N個の下流側発電単位102Dにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最大値は、M個の上流側発電単位102Uにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最小値より小さく、かつ、N個の下流側発電単位102Dにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの最大値は、M個の上流側発電単位102Uにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの最小値より小さい。
このように、本実施形態の燃料電池スタック100は、M個の上流側発電単位102UとN個の下流側発電単位102Dとを備え、各下流側発電単位102Dの燃料室入口側連通ガス流路142は、燃料ガス中継マニホールド172を介して、各上流側発電単位102Uの燃料室出口側連通ガス流路143と連通している。そのため、各上流側発電単位102Uの燃料室176から排出されたガス(燃料中間ガスFMG)は、各下流側発電単位102Dの燃料室176内に導入され、その後、各下流側発電単位102Dの燃料室176から燃料オフガスFOGとして排出され、最終的に燃料電池スタック100の外部に排出される。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、上流側発電単位102Uにおける発電反応に利用された後のガスが、下流側発電単位102Dにおける発電反応にも利用されることとなり、燃料ガスFGの利用率を向上させることができる。
ただし、本実施形態の燃料電池スタック100では、上記構成であるため、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスが他の発電単位102を経由せずに燃料電池スタック100の外部に排出される構成と比較して、燃料電池スタック100全体としての燃料極側の圧力損失が増大するおそれがある。しかしながら、本実施形態の燃料電池スタック100では、各下流側発電単位102Dの燃料室176の高さHdが、各上流側発電単位102Uの燃料室176の高さHuより高い。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、燃料ガスFGの利用率を向上させつつ、各下流側発電単位102Dの燃料室176における圧力損失を低減させることができ、その結果、燃料電池スタック100全体としての燃料極側の圧力損失の増大を抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、各下流側発電単位102Dの燃料室176の高さHdが比較的高いため、各下流側発電単位102Dの燃料室176における圧力損失を低減させることができる一方で、複数の下流側発電単位102D間で、燃料室176へ供給されるガス(燃料中間ガスFMG)の流量にバラツキが発生しやすく、各下流側発電単位102Dにおける反応バラツキに起因して燃料電池スタック100全体の発電性能が低下するおそれがある。しかしながら、本実施形態の燃料電池スタック100では、N個の下流側発電単位102Dは、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが互いに異なる複数の下流側発電単位102Dを含んでいる。そのため、各下流側発電単位102Dの燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woを適切に設定することにより、各下流側発電単位102Dの燃料室176へ供給されるガスの流量のバラツキを抑制することができ、その結果、該バラツキに起因して燃料電池スタック100全体の発電性能が低下することを抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、N個の下流側発電単位102Dは、Z軸方向に互いに隣接する複数の下流側発電単位102Dから構成された下流側発電単位グループ102DGを含む。下流側発電単位グループ102DGを構成する複数の下流側発電単位102Dは、一の下流側発電単位102Dと、該一の下流側発電単位102Dと比較して、燃料室176から排出されたガス(燃料オフガスFOG)を燃料電池スタック100の外部へ排出する排出孔(燃料ガス排出マニホールド173の位置に設けられたガス通路部材27)の近くに位置し、かつ、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが狭い他の下流側発電単位102Dとを含む。下流側発電単位グループ102DGを構成する複数の下流側発電単位102Dの内、上記排出孔の比較的近くに位置する下流側発電単位102Dでは、燃料室176に供給されるガス(燃料中間ガスFMG)の流量が多くなりやすい。本実施形態の燃料電池スタック100では、下流側発電単位グループ102DGを構成する複数の下流側発電単位102Dの内、燃料室176に供給されるガスの流量が多くなりやすい下流側発電単位102Dにおいて、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが比較的狭くなっている。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、下流側発電単位グループ102DGを構成する複数の下流側発電単位102Dの燃料室176へ供給されるガスの流量のバラツキを抑制することができ、その結果、該バラツキに起因して燃料電池スタック100全体の発電性能が低下することを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、N個の下流側発電単位102Dは、それぞれZ軸方向に互いに隣接する複数の下流側発電単位102Dから構成された複数の下流側発電単位グループ102DGを含む。複数の下流側発電単位グループ102DGは、一の下流側発電単位グループ102DGと、該一の下流側発電単位グループ102DGと比較して、燃料室176から排出されたガス(燃料オフガスFOG)を燃料電池スタック100の外部へ排出する排出孔(燃料ガス排出マニホールド173の位置に設けられたガス通路部材27)の近くに位置し、かつ、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最小値および燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの最小値が小さい他の下流側発電単位グループ102DGとを含む。複数の下流側発電単位グループ102DGの内、上記排出孔の比較的近くに位置する下流側発電単位グループ102DGでは、燃料室176に供給されるガス(燃料中間ガスFMG)の流量が多くなりやすい。本実施形態の燃料電池スタック100では、複数の下流側発電単位グループ102DGの内、燃料室176に供給されるガスの流量が多くなりやすい下流側発電単位グループ102DGにおいて、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiの最小値および燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woの最小値が比較的小さくなっている。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、複数の下流側発電単位グループ102DG間での、下流側発電単位102Dの燃料室176へ供給されるガスの流量のバラツキを抑制することができ、その結果、該バラツキに起因して燃料電池スタック100全体の発電性能が低下することを効果的に抑制することができる。
なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、下流側発電単位102Dの個数Nは、上流側発電単位102Uの個数Mより小さい(N<M)。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、燃料ガスFGの利用率を向上させつつ、下流側発電単位102Dにおいてガス(水素)が不足して反応性が低下することを抑制することができる。ただし、本実施形態の燃料電池スタック100では、下流側発電単位102Dの個数Nが上流側発電単位102Uの個数Mより小さいため、上流側発電単位102Uと比較して下流側発電単位102Dの方が、1つの発電単位102あたりの燃料室176へ供給されるガスの流量が多くなり、各下流側発電単位102Dの燃料室176へ供給されるガスの流量にバラツキが発生しやすい。本実施形態の燃料電池スタック100によれば、そのようなバラツキが発生しやすい構成においても、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woを適切に設定することにより、各下流側発電単位102Dの燃料室176へ供給されるガスの流量のバラツキを抑制することができ、その結果、該バラツキに起因して燃料電池スタック100全体の発電性能が低下することを抑制することができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態の燃料電池スタック100における、発電単位102の個数L、上流側発電単位102Uの個数M、下流側発電単位102Dの個数N、下流側発電単位グループ102DGの個数、各下流側発電単位グループ102DGを構成する下流側発電単位102Dの個数等は、あくまで一例であり、任意に変更可能である。例えば、上記実施形態では、下流側発電単位102Dの個数Nは上流側発電単位102Uの個数Mより小さいが(N<M)、下流側発電単位102Dの個数Nは上流側発電単位102Uの個数M以上であってもよい(N≧M)。
また、上記実施形態では、各下流側発電単位102Dの燃料室入口側連通ガス流路142が、1つのマニホールド(燃料ガス中継マニホールド172)を介して各上流側発電単位102Uの燃料室出口側連通ガス流路143と連通しているが、各下流側発電単位102Dの燃料室入口側連通ガス流路142が、複数のマニホールドを介して各上流側発電単位102Uの燃料室出口側連通ガス流路143と連通しているとしてもよい。例えば、各下流側発電単位102Dの燃料室入口側連通ガス流路142が、1つのマニホールドを介して上流側発電単位102U以外に形成された面方向のガス流路に連通し、該ガス流路が燃料ガス中継マニホールド172を介して各上流側発電単位102Uの燃料室出口側連通ガス流路143と連通しているとしてもよい。
また、上記実施形態において、各発電単位102の燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woは、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、6個の下流側発電単位102Dは、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiが互いに異なる複数の下流側発電単位102Dを含み、かつ、6個の下流側発電単位102Dは、燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが互いに異なる複数の下流側発電単位102Dを含むとしているが、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiと燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woとの一方について、6個の下流側発電単位102Dのそれぞれにおける連通ガス流路の幅が等しい構成としてもよい。この場合において、燃料室入口側連通ガス流路142と燃料室出口側連通ガス流路143との内、幅が等しくない方の連通ガス流路が、特許請求の範囲における特定連通ガス流路に相当する。また、例えば、上記実施形態では、9個の上流側発電単位102Uのそれぞれにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woは等しい構成としているが、燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiと燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woとの少なくとも一方について、連通ガス流路の幅が等しくないとしてもよい。
また、上記実施形態では、各下流側発電単位グループ102DGを構成する複数の(3つの)下流側発電単位102Dの燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiおよび燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woが互いに異なっているが、該複数の下流側発電単位102Dの内の少なくとも一部の下流側発電単位102Dについて、幅Wiおよび幅Woの少なくとも一方が互いに同一であるとしてもよい。すなわち、各下流側発電単位グループ102DGは、幅Wiおよび幅Woの少なくとも一方が互いに同一である複数の下流側発電単位102Dを含んでいてもよい。例えば、図11に示す下側下流側発電単位グループ102DG1を構成する3つの下流側発電単位102Dの内、最も上側に位置する下流側発電単位102Dにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiと、中央に位置する下流側発電単位102Dにおける燃料室入口側連通ガス流路142の幅Wiとが、共に「j+0.2」mmであるとしてもよい。あるいは、下側下流側発電単位グループ102DG1を構成する3つの下流側発電単位102Dの内、最も下側に位置する下流側発電単位102Dにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woと、中央に位置する下流側発電単位102Dにおける燃料室出口側連通ガス流路143の幅Woとが、共にkmmであるとしてもよい。なお、これらの変形例においても、下流側発電単位グループ102DGを構成する複数の下流側発電単位102Dは、一の下流側発電単位102Dと、該一の下流側発電単位102Dと比較して、燃料室176から排出された燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出する排出孔の近くに位置し、かつ、燃料室入口側連通ガス流路142および/または燃料室出口側連通ガス流路143の幅Wi,Woが狭い他の下流側発電単位102Dと、を含んでいると言える。
また、上記実施形態における各マニホールドや各連通ガス流路の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、各下流側発電単位102Dに形成される燃料室入口側連通ガス流路142や燃料室出口側連通ガス流路143の個数は1つであるが、各下流側発電単位102Dに形成される燃料室入口側連通ガス流路142や燃料室出口側連通ガス流路143の個数は、任意に設定可能であり、複数であってもよい。また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、マニホールドを介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、マニホールドを介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様の構成を採用すると、各電解セル単位の燃料室へ供給されるガスの利用率を向上させつつ、電解セルスタック全体としての圧力損失の増大を抑制することができ、さらに、各電解セル単位の燃料室へ供給されるガスの流量のバラツキに起因して電解セルスタック全体の性能が低下することを抑制することができる。
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本願発明は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池スタック(または電解セルスタック)にも適用可能である。