JP2019213842A - インプラント用の医療材料 - Google Patents

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Yuka Sakaguchi
有佳 阪口
創 柿山
So Kakiyama
創 柿山
雅規 藤田
Masanori Fujita
雅規 藤田
棚橋一裕
Kazuhiro Tanahashi
一裕 棚橋
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Abstract

【課題】抗血栓性と細胞接着性を両立することにより、早期の内皮化による抗血栓性の維持が可能なインプラント用の医療材料を提供すること。【解決手段】本発明は、平均繊維径が1μm〜15μmの単繊維を含み、かつ、以下の式1の条件を満たすマルチフィラメントと、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーと、重量平均分子量が2000〜7000の低分子量ヘパリンと、を備え、上記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは、上記マルチフィラメント中の上記単繊維と共有結合し、上記低分子量ヘパリンは、上記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーとイオン結合している、インプラント用の医療材料を提供する。(Y/X)×100≧50 ・・・式1[式中、Xは、交差平均角度を調べた単繊維の本数を表し、Yは、Xの内で交差平均角度が25度以下の単繊維の本数を表す。]【選択図】なし

Description

本発明は、インプラント用の医療材料に関する。
脳卒中はガン、心臓病に次いで本邦における死因の第3位である。脳卒中の患者数は現在約170万人といわれており、毎年25万人以上が新たに発症していると推察されている。一旦脳卒中を罹患すると寝たきり状態となることが多く、寝たきりの原因の約3割近くが脳卒中等の脳血管疾患というデータもある。さらには、今後の高齢者の増加や糖尿病、高脂血症等の生活習慣病の増加により脳卒中の患者は増加の一途をたどっている状況であり、その対策は急務となっている。
脳卒中の一種である「心原性脳塞栓症」は、脳梗塞の中の20〜25%を占めており、心房細動等により心臓の拍動のリズムが乱れ、血液が鬱滞して血栓を形成し、それが脳へと飛散することで発症する。この時の血栓形成の大部分は、心臓の左心耳と呼ばれる、左肺静脈の根元と僧帽弁の間の左心房の前外側壁に連結された小さい親指又は吹き流し様の閉鎖した空洞で発生するか又はそこを原発とする。
心房細動患者に対する経皮的左心耳閉鎖治療では、左心耳閉塞デバイスの留置後デバイスの表面が生体由来の組織又は新生内膜により被覆されるまでは、血栓形成を阻害するため、一定期間の抗凝固剤や抗血小板薬の投与が必須である。
留置後デバイスの表面上で血栓が形成する原因は、留置後デバイスが生体側に異物として認識され、その表面で血液凝固反応が進行することである。一定期間の抗凝固剤や抗血小板薬の投与以外で血栓の形成を阻害する方法としては、カチオン性ポリマーを基材に固定し、そのカチオン性ポリマーを介して抗凝固剤であるヘパリン又はヘパリン誘導体を基材の表面上に固定化する方法が報告されている(特許文献1及び2)。また、カチオン性ポリマーを介して固定化するヘパリンとして、ヘパリンの中でも未分画ヘパリン、平均分子量が4000〜6000である低分子量ヘパリンやアンチトロンビンIIIに高親和性のヘパリン等のヘパリンを用いてもよいことが報告されている(特許文献3)。
血栓形成を抑制する別の方法としては、留置後デバイスの表面を早期に血管内皮細胞で被覆させる方法が知られている。具体的には、繊維繊度が0.5dtex以下の極細繊維を用いた上で、極細繊維に抗血栓性材料を結合する人工血管(特許文献4)、繊維の配向を揃えることで細胞の接着性及び増殖性を向上させた細胞足場材料(特許文献5)が報告されている。
一方、ヘパリンに代表される硫酸糖は、生体内で生理活性を示す多くのサイトカインや増殖因子と親和性が高く、これらの因子の局在化を生じ、造血作用を含む種々の生理作用を促進していると言われている。この作用を利用して、動物細胞が接着する基質表面にヘパリンを固定化することにより、動物細胞の近傍にサイトカインを局在化させ、より効果的に細胞培養を促進しようとする試みもなされてきた(非特許文献1)。
WO2015/080177 WO2016/190407 WO2014/168198 WO2015/122429 WO2016/068279
V.Sundararajan et al.、Stem Cells、1999年、第17巻、第295頁
しかしながら、特許文献1〜3はカチオン性ポリマーを介してヘパリンがイオン結合にて繊維表面に強固に固定化する方法が開示されており、繊維表面上での血栓形成は阻害できる。しかしながら、一般的にヘパリンは血管内皮細胞の接着・増殖を阻害することが知られているため、これらの技術を単純にインプラント用に用いた場合、血管内皮細胞による被覆時期が遅くなってしまう可能性がある。
また、特許文献4には、極細繊維を用いることで細胞親和性を向上させた織物が開示されているが、繊維の配向性に関する開示はなく、細胞の増殖にとって最適な足場となっていない可能性がある。
さらに、特許文献5には、マルチフィラメント中の単繊維の配向及び繊維径という物理的性質を制御することで細胞増殖に適した足場材料を提供することが開示されているが、血栓形成を防止する方法については記載がない。
非特許文献1は、ヘパリンを表面に固定化した基質を細胞培養方法又は基材として用いることを示唆しているが、生体インプラント用の材料に応用することについて具体的な記載はない。また、キトサンを固定化し、固定化したキトサンにヘパリンをイオン結合させることにより固定化したヘパリンを含む表面が、ヘパリンを含まない表面に比べて高い接着性を示すのは細胞播種後2週間までであり、4週間後以降の接着性はヘパリンを含まない表面と同程度となることから、当該技術を生体インプラント材料に適用した場合、長期間の生体適合性を発揮する可能性は低い。
このように、従来技術を用いても、繊維表面に固定化したヘパリンの親水性により細胞の接着性が低下する効果のため、抗血栓性と細胞接着性の両立によってインプラント用の医療材料に求められる早期の内皮化による抗血栓性を達成することはできなかった。
そこで、本発明は、抗血栓性と細胞接着性を兼ね備えることにより、早期の内皮化による抗血栓性の維持が可能なインプラント用の医療材料を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、(1)〜(3)の発明を見出した。
(1) 平均繊維径が1μm〜15μmの単繊維を含み、かつ、以下の式1の条件を満たすマルチフィラメントと、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーと、重量平均分子量が2000〜7000の低分子量ヘパリンと、を備え、上記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは、上記マルチフィラメント中の上記単繊維と共有結合し、上記低分子量ヘパリンは、上記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーとイオン結合している、インプラント用の医療材料。
(Y/X)×100≧50 ・・・式1
[式中、Xは、交差平均角度を調べた単繊維の本数を表し、Yは、Xの内で交差平均角度が25度以下の単繊維の本数を表す。]
(2) 上記低分子量ヘパリンの抗Xa因子活性と抗トロンビン活性との比は、2.0〜10.0である、(1)記載のインプラント用の医療材料。
(3) (1)又は(2)記載の医療材料を備える、心血管インプラント用の医療器材。
また、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(4)〜(6)の発明を見出した。
(4) 平均繊維径が1μm〜15μmの単繊維を含み、かつ、以下の式1の条件を満たすマルチフィラメントと、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーと、重量平均分子量が4000〜7000の低分子量ヘパリンと、を備え、上記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは、上記マルチフィラメント中の上記単繊維と共有結合し、上記低分子量ヘパリンは、上記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーとイオン結合している、インプラント用の医療材料。
(Y/X)×100≧50 ・・・式1
[式中、Xは、交差平均角度を調べた単繊維の本数を表し、Yは、Xの内で交差平均角度が25度以下の単繊維の本数を表す。]
(5) 上記低分子量ヘパリンの抗Xa因子活性と抗トロンビン活性との比は、2.0〜4.5である、(4)記載のインプラント用の医療材料。
(6) (4)又は(5)記載の医療材料を備える、心血管インプラント用の医療器材。
本発明の医療材料によれば、抗血栓性と細胞接着性を両立することができ、早期の内皮化による抗血栓性の維持が可能なインプラント用の医療材料として使用でき、特に心血管インプラント用の医療器材として好適に使用できる。
本発明のインプラント用の医療材料は、平均繊維径が1μm〜15μmの単繊維を含み、かつ、以下の式1の条件を満たすマルチフィラメントと、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーと、重量平均分子量が2000〜7000の低分子量ヘパリンと、を備え、上記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは、上記マルチフィラメント中の上記単繊維と共有結合し、上記低分子量ヘパリンは、上記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーとイオン結合していることを特徴としている。
(Y/X)×100≧50 ・・・式1
[式中、Xは、交差平均角度を調べた単繊維の本数を表し、Yは、Xの内で交差平均角度が25度以下の単繊維の本数を表す。]
医療器材とは、医療機器及び医療器具を示す。ここで、医療機器及び医療器具として、具体的には、人工肺、人工心臓、人工弁、左心耳閉塞デバイス、ペースメーカー、人工血管、ステント、ステントグラフト、血管カテーテル、遊離血栓捕獲器具、血管閉塞器具、血管内視鏡、縫合糸、人工腎臓、血液回路、チューブ類、カニューレ、血液バッグ及び注射器等が挙げられるが、特に生体への埋め込み後に表面の組織による被覆又は新生内膜による被覆を促進するため、上記のインプラント用の医療材料は、人工肺、人工心臓、人工弁、左心耳閉塞デバイス、ペースメーカー、人工血管、ステント、ステントグラフト、血管カテーテル、遊離血栓捕獲器具、血管閉塞器具等のインプラント用の医療器材に好適に用いることができる。さらに、本発明のインプラント用の医療材料は、繊維を用いることで伸縮性、柔軟性及び耐圧性等の特性を有することから、左心耳閉塞デバイス等の心血管インプラント用の医療器材により好適に利用することができる。
上記の医療材料とは、医療器材を構成する材料として用いることができる材料である。本発明のインプラント用の医療材料は、マルチフィラメントと、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマー及び重量平均分子量が2000〜7000の低分子量ヘパリンを有しており、上記医療器材は、上記医療材料を備えている。
マルチフィラメントとは、単繊維を複数本束ねることで形成された繊維束を意味し、交差平均角度Sが25度以下の単繊維とは、マルチフィラメントに含まれる各単繊維同士が交差しており、かつ、交差平均角度Sが25度以下である単繊維、若しくは、マルチフィラメントを構成する各単繊維同士が交差していない(交差平均角度S=0度)単繊維を意味している。
低分子量ヘパリンとは、重量平均分子量が2000〜7000の範囲の低分子量であるヘパリンを意味している(以下、低分子量ヘパリンは通常、重量平均分子量が2000〜7000の範囲のヘパリンを指す)。上記医療材料において、低分子量ヘパリンは、重量平均分子量が2000〜7000の範囲の低分子量ヘパリンを用いることが好ましく、重量平均分子量が4000〜7000の範囲の低分子量ヘパリンを用いることがより好ましく、重量平均分子量が4400〜5000の範囲の低分子量ヘパリンを用いることがさらにより好ましい。また、低分子量ヘパリンの重量平均分子量は、液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
交差平均角度Sとは、インプラント用の医療材料中から任意に選んだマルチフィラメントを、400倍に拡大した写真(視野範囲の面積:約0.48mm)をもとに、マルチフィラメント中の単繊維が、隣接する単繊維と交差している箇所に着目し、交差する角度の大きいものから3つをピックアップし、その3つの交差角度から平均値を算出したものを意味している。なお、交差角度は、2本の単繊維が交差して形成される2つの角度のうち小さい方の角度、すなわち0度〜90度の値をとる角度とする。さらに、マルチフィラメント内において交差角度が25度以上となる箇所がまったく見当たらない場合、マルチフィラメントを構成する各単繊維同士が交差していない(交差平均角度S=0度)ものとした。
マルチフィラメントに含まれる各単繊維同士の交差平均角度Sが25度以上になると、単繊維の配向が異なることにより、細胞接着性及び細胞増殖性が低下する。単繊維の配向を揃えるためには、編物や織物を製造する際にマルチフィラメントの糸切れや毛羽等の繊維方向の乱れがないように留意し、マルチフィラメントの部分での起毛やウォータージェットパンチ等の外力付加を行う工程を避けることが好ましい。また、交差平均角度Sが0度であることが、単繊維の配向の点で最も好ましい。
本発明の医療材料は、マルチフィラメント中の交差平均角度Sが25度以下の単繊維の比率が以下の式1を満たす。X=40の場合、試料を交点の角度が90度になるように4等分にし、それぞれの箇所で10本ずつの単繊維(全体で40本の単繊維)の交差平均角度を測定(1本あたり3箇所観察して全体で120箇所を測定)する。
(Y/X)×100≧50 ・・・式1
[式中、Xは、交差平均角度を調べた単繊維の本数を表し、Yは、Xの内で交差平均角度が25度以下の単繊維の本数を表す。]
上記の式1において、(Y/X)×100の値は、50以上であると、細胞が単繊維の配向に沿って増殖できるため好ましく、100であることが最も好ましい。
平均繊維径とは、マルチフィラメント中の単繊維の断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で任意の10箇所を観察し、その直径の平均値から算出したものである。
上記マルチフィラメント中の単繊維の平均繊維径は、細胞の接着性を向上させるため、1μm〜15μmであることが好ましく、さらに好ましくは1μm〜10μmであることが好ましい。
上記マルチフィラメントは、例えば、不織布、織物、編物又は組みひも等の繊維構造体を構成していることが好ましい。上記マルチフィラメントを心血管インプラント用の医療材料に用いる場合、心臓の拍動に追従するため伸縮性及び柔軟性が要求され、また血圧に耐える耐圧性が要求されることから、編物又は織物の繊維構造体を構成していることがより好ましい。
上記単繊維の種類は限定されないが、マルチフィラメントの表面に配置された単繊維が、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、ポリアミド及びポリスチレンからなる群から選択されるポリマーからなる単繊維であることが好ましく、コストと細胞接着性の観点から、ポリエステルからなる単繊維であることがより好ましい。
上記単繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はナイロンからなる単繊維であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートからなる単繊維であることがより好ましい。
上記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーの構成モノマーであるアルキレンイミンは、カチオン性の窒素原子を有するため、窒素含有ポリマーはカチオン性を示し、一方、低分子量ヘパリンはアニオン性を示すため、イオン結合することが可能である。ここで、構成モノマーとは、ポリマーを構成する繰り返し単位の由来となるモノマーを指し、アルキレンイミンを構成モノマーとして含むポリマーの場合であれば、アルキレンイミンが由来の繰り返し単位を有する。
アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。ポリマーが共重合体である場合には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体又は交互共重合体のいずれであってもよいが、低分子量ヘパリンと多点的にイオン結合できるため、窒素原子を含んだ繰り返し単位が連続するブロック重合体であることがより好ましい。
単独重合体とは、1種類の構成モノマーを重合して得られる高分子化合物をいい、共重合体とは、2種類以上のモノマーを共重合して得られる高分子化合物をいう。中でもブロック共重合体とは、繰り返し単位の異なる少なくとも2種類以上のポリマーが共有結合でつながり、長い連鎖になったような分子構造の共重合体をいい、ブロックとは、ブロック共重合体を構成する「繰り返し単位の異なる少なくとも2種類以上のポリマー」のそれぞれを指す。
アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは直鎖状でもよいし、分岐状でもよいが、低分子量ヘパリンと多点的にイオン結合を形成しやすくなるため、分岐状であることがより好ましい。
低分子量ヘパリンとイオン相互作用に基づく吸着量が多いことから、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーとしてポリアルキレンイミンを用いることが好ましい。ポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン及びアルコキシル化されたポリアルキレンイミン等が挙げられるが、カチオン性の窒素原子が最も高密度で存在するため、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは、ポリエチレンイミンがより好ましい。
ポリエチレンイミンの具体例としては、“LUPASOL”(登録商標)(BASF社製)や“EPOMIN”(登録商標)(株式会社日本触媒製)等が挙げられるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーとの共重合体であってもよく変性体であってもよい。ここでいう変性体とは、ポリマーを構成するモノマーの繰り返し単位は同じであるが、例えば、後述する放射線の照射により、その一部がラジカル分解や再結合等を起こしているものを指す。
アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは、特に限定されるものではないが、性能に影響を与えない範囲で他のモノマーを含んでいてもよく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びシロキサン等のモノマーを含んでいてもよい。
上記のアルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーの重量平均分子量は、600以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらにより好ましい。また、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーの重量平均分子量は、2,000,000以下であることが好ましく、1,500,000以下であることがより好ましく、1,000,000以下であることがさらに好ましい。アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーの重量平均分子量は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法や、光散乱法等により測定することができる。
上記インプラント用の医療材料において、上記低分子量ヘパリンは、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーと、低分子量ヘパリンとをイオン結合させてからマルチフィラメント中の単繊維と共有結合させてもよいし、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーをマルチフィラメント中の単繊維と共有結合させてから、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーと、低分子量ヘパリンとをイオン結合させてもよい。
本発明に用いた低分子量ヘパリンの重量平均分子量は、日本薬局方「パルナパリンナトリウム」の「分子量」の項記載の方法により、液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
上記低分子量ヘパリンは、酸性溶媒中のヘパリンに亜硝酸ナトリウムを添加しヘパリンを分解する方法、ヘパリンが持つエステル結合をアルカリ処理してヘパリンを分解する方法、過酸化水素水の存在下で発生するフリーラジカルによりヘパリンを分解する方法、非水性溶媒中で強塩基を用いることでヘパリンの四級アンモニウム塩部位でβ脱離反応を起こしヘパリンを分解する方法及びヘパリナーゼを用いて酵素特異的にヘパリンを分解する方法等の化学的手法によるヘパリンの解重合により得ることができる。
上記低分子量ヘパリンのうち、臨床で一般的に用いられている例としては、レビパリン、エノキサパリン、パルナパリン、セルトパリン、ダルテパリン及びチンザパリン等を挙げることができる。
上記低分子量ヘパリンは、未分画ヘパリンに比べて糖鎖が短いため、アンチトロンビンには結合できるがトロンビンには結合できないことから、抗トロンビン活性に対して抗ファクターXa活性が高い。そのため、低分子量ヘパリンの抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性との比は、2.0〜10.0が好ましく、2.0〜4.5がより好ましい。
抗ファクターXa活性は日本薬局方「パルナパリンナトリウム」の「定量法」の項に記載の方法に準じて、“テストチーム(登録商標) ヘパリンS”(積水メディカル株式会社製)を用いて測定することにより、低分子量ヘパリン1mg中の抗ファクターXa活性を測定することができる。
抗トロンビン活性は、日本薬局方「パルナパリンナトリウム」の「抗第IIa因子活性」の項に記載の方法に準じて、自動血液凝固装置CA−50(シスメックス株式会社製)を用いて、低分子量ヘパリンの生理食塩液溶液およびヒト血漿(血液凝固試験用標準ヒト血漿、シスメックス株式会社製)を等量混合した溶液50μLを37℃で1分間加温し、活性部分トロンボプラスチン時間測定用試液(アクチンFSL、シスメックス株式会社製)50μLを添加し、37℃で2分間インキュベートした後に塩化カルシウム溶液(0.02M塩化カルシウム液、シスメックス株式会社製)50μLを添加して、フィブリンの凝固が起こるまでの時間を測定することにより、低分子量ヘパリン1mg中の抗トロンビン活性を測定することができる。
抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性との比は、低分子量ヘパリン1mg中の抗ファクターXa活性の値を低分子量ヘパリン1mg中の抗トロンビン活性の値で除して求めることができる。
アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーが血液等の体液中に溶出すると、アニオン性の抗凝固活性を有する有機硫黄化合物を単繊維の表面に保持できなくなるため、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは単繊維の表面と共有結合している。
本発明においては、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマー及び単繊維の表面が有する原子(具体的には炭素、窒素、酸素、硫黄等)同士の共有結合であり、単結合であっても多重結合であってもよい。アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーが単繊維と共有結合していることは、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーの良溶媒で洗浄した際の洗浄液中にアルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーが溶出しないことから判定することができる。ここで、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーの良溶媒としては、単繊維を溶解せず、共有結合を化学的に切断しない溶媒を選択する。
以下、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例及び比較例中の単糸繊度は、JIS L 1013(2010)8.3.1 A法に従って、所定荷重0.045cN/dtexで正量繊度を測定して総繊度とし、それを単繊維数で除することで単糸繊度を算出している。
(実施例1)
総繊度が66dtex、9フィラメントの海島複合繊維であるマルチフィラメント糸を経糸及び緯糸として使用し、脱海処理後の織密度が経糸169本/2.54cm、緯糸124本/2.54cmの平織物を作製した。
ここで、海島複合繊維は、島成分がポリエチレンテレフタレートで構成され、海成分が5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートで構成される。
次に、経糸及び緯糸の脱海処理を行うため、平織物に対し次の(c−1)酸処理工程及び(c−2)アルカリ処理工程を行い、マルチフィラメントからなる平織物で構成された繊維構造体1を得た。
(c−1)酸処理工程
酸としてマレイン酸を使用した。平織物を0.2重量%のマレイン酸水溶液に浸漬し、130℃まで昇温した後、30分加熱することで酸処理を行った。
(c−2)アルカリ処理工程
アルカリとして水酸化ナトリウムを使用した。平織物を1重量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、80℃まで昇温した後、90分加熱することでアルカリ処理を行った。
得られた繊維構造体1の経糸及び緯糸のポリエチレンテレフタレート製のマイクロファイバーマルチフィラメント糸の総繊度は、52.8dtex、630フィラメントであった。
繊維構造体1に抗血栓処理を行った。硫酸を0.6mol/L、過マンガン酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)を3.0重量%含む水溶液に繊維構造体1を浸漬し、60℃で3時間反応させて繊維構造体1の表面を加水分解及び酸化した(加水分解及び酸化する工程)。反応後に水溶液を除去し、塩酸を6mol/L含む水溶液で3回、蒸留水で1回洗浄した。
4(−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルフォリニウムクロリドn水和物(以下、「DMT−MM」)(和光純薬工業株式会社製)を2.0重量%、ポリエチレンイミン(LUPASOL(登録商標) P;BASF社製、重量平均分子量:750,000)を5.0重量%含む水溶液に繊維構造体1を浸漬し、50℃で2時間反応させて繊維構造体1にポリエチレンイミンを縮合反応により共有結合させた。反応後に水溶液を除去し、50℃の蒸留水及びPBS(−)(日水製薬株式会社製)で洗浄した。
臭化エチルを1.0容量%、メタノールを30容量%含む水溶液に繊維構造体1を浸漬し、35〜50℃で5時間反応させ、繊維構造体の表面に共有結合されたポリエチレンイミンを第4級アンモニウム化した。ポリエチレンイミンを第4級アンモニウム化した後に水溶液を除去し、メタノールを30容量%含む水溶液及び蒸留水で洗浄した。
ダルテパリンナトリウム(ダルテパリンNa静注5000単位/5mL「サワイ」、沢井製薬株式会社製)を54国際単位/mL、塩化ナトリウムを0.1mol/L含む水溶液を調製し、pH4に調整した。繊維構造体1をこの水溶液に浸漬し、70℃で6時間反応させて、ポリエチレンイミンとイオン結合させた。水溶液を除去し、蒸留水で洗浄後、真空乾燥した。真空乾燥後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを実施例1とした。実施例1において使用したダルテパリンナトリウムの走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。また、交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例1において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
また、実施例1に用いたダルテパリンナトリウムの抗ファクターXa活性を“テストチーム(登録商標) ヘパリンS”(積水メディカル株式会社製)を用いて測定し、抗トロンビン活性を自動血液凝固装置CA−50(シスメックス株式会社製)を用いて測定し、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比を算出したところ、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比は、2.4であった。未分画ヘパリンに比べて糖鎖が短く分子量が小さい低分子量ヘパリンは、アンチトロンビンIIIとは結合できるがトロンビンとは結合できない。抗ファクターXa活性を発揮するためには、ヘパリンとアンチトロンビンIIIとの結合のみで十分であるが、抗トロンビン活性を発揮するためには、ヘパリンがアンチトロンビンとトロンビンの両者に結合する必要がある。抗トロンビン活性が強すぎると出血の副作用が発現することから、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比は、1.0よりも大きい場合、副作用を低減するためにより好ましいと考えられる。
実施例1に固定化されたダルテパリンナトリウムの重量平均分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPC)によって測定した。塩化ナトリウムを0.01mol/L、ホウ酸を0.6mol/Lを含む水溶液を調製し、pH9に調整した。この水溶液に実施例1を24時間浸漬した後、実施例1を除去し、溶液を凍結乾燥して溶出物を回収した。
[前処理条件]
溶出物を0.1M塩化ナトリウム水溶液に1mg/mLの濃度となるよう溶解し、HPLC用メンブレンフィルター“DISMIC−13HP”(孔径0.45μm、アドバンテック東洋株式会社製)にて不溶物除去し、測定サンプルとした。実施例1に用いたダルテパリンナトリウム1mg/mLを0.1M塩化ナトリウム水溶液に溶解し、上記と同様の操作を行って測定サンプルとした。
[測定条件]
装置:高速液体クロマトグラフProminence(株式会社島津製作所製)
移動相:0.1M塩化ナトリウム水溶液(HPLC)(和光純薬工業株式会社製)
流速:0.5mL/分
注入量: 100μL
カラム:OH−PAK SB−804HQ(φ7.8mm×300mm、昭和電工株式会社製)
検出器:RI
カラム、検出器温度:40℃
標準物質:プルラン(Shodex Standard Pullulan P−82およびP−1、昭和電工株式会社製)
実施例1から溶出物中のダルテパリンナトリウムの分子量は15199と算出されたのに対し、実施例1に用いた固定化前のダルテパリンナトリウムの分子量は15862と算出された。両者の間に差がなかったことから、本発明記載の医療材料に固定化された低分子量ヘパリンの重量平均分子量は、固定化前の低分子量ヘパリンの重量平均分子量と同等のものであると判断した。
(実施例2)
製織工程において、下記の経糸(経糸A及びB)並びに緯糸(緯糸C及びD)を使用した。
経糸A(海島複合繊維):ポリエチレンテレフタレート繊維、66dtex、9フィラメント(脱海処理後:52.8dtex、630フィラメント)
経糸B(溶解糸):5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合した易アルカリ溶解性のポリエステル繊維、84dtex、24フィラメント
緯糸C(内層)(海島複合繊維):ポリエチレンテレフタレート繊維、66dtex、9フィラメント(脱海処理後:52.8dtex、630フィラメント)
緯糸D(外層):ポリエチレンテレフタレート繊維、56dtex、18フィラメント
そして、製織時において、ジャガードシャトル織機を用いて、経糸Bの張力を0.9cN/dtex、経糸Aの張力を0.1cN/dtexとして、経糸A(後加工後の織密度が201本/2.54cm)、緯糸C(後加工後の織密度が121本/2.54cm)、緯糸D(後加工後の織密度が121本/2.54cm)となる、内径3mmの筒状織物を製織した。なお、経糸Aと経糸Bの配置は、経糸A3本に対して経糸B1本の比率で配置した。また、経糸Bは、内層に位置する緯糸Cと外層に位置する緯糸Dの間に配置した。
次に、下記の工程により、後加工を行い、人工血管1を得た。
(a)湯洗工程
筒状織物を98℃のお湯に20分浸漬し、筒状織物を湯洗した。
(b)プレ熱セット工程
外径2.8mmの丸棒(材質:ステンレス鋼)を筒状織物の内腔に挿入し、両端を針金で固定した。筒状織物及び丸棒をオーブンに入れ、丸棒に取り付けた温度計が180℃であることを確認してから5分間加熱することで、プレ熱セットを行った。
(c)脱海処理工程
経糸A及び緯糸Cの脱海処理を行うとともに、経糸Bの溶解除去を行うため、(c−1)酸処理工程及び(c−2)アルカリ処理工程を行った。
(c−1)酸処理工程
酸としてマレイン酸を使用した。筒状織物を0.2重量%のマレイン酸水溶液に浸漬し、130℃まで昇温した後、30分加熱することで酸処理を行った。
(c−2)アルカリ処理工程
アルカリとして水酸化ナトリウムを使用した。筒状織物を1重量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、80℃まで昇温した後、90分加熱することでアルカリ処理を行った。
(d)熱セット(1回目)工程
外径3mmの丸棒(材質:ステンレス鋼)を筒状織物の内腔に挿入し、経糸A方向にシワが入らないよう最大限圧縮した状態で、両端を針金等で固定した。筒状織物及び丸棒をオーブンに入れ、丸棒に取り付けた温度計が180℃であることを確認してから5分間加熱することで、熱セット(1回目)を行った。
(e)熱セット(2回目)工程
外径3mmの丸棒(材質:ステンレス鋼)を筒状織物の内腔に挿入し、経糸A方向に30%伸長した状態で、両端を針金等で固定した。筒状織物及び丸棒をオーブンに入れ、丸棒に取り付けた温度計が170℃であることを確認してから5分間加熱することで、熱セット(2回目)を行った。
繊維構造体1に変えて、上記で得られた人工血管1を用いた点を除き、実施例1と同様の抗血栓処理及びエチレンオキシドガス滅菌を行い、実施例2を得た。片刃カミソリを用いて実施例2を長軸方向に切開し、内表面の繊維について走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例2において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(実施例3)
実施例1の抗血栓性処理において、ダルテパリンナトリウム(ダルテパリンNa静注5000単位/5mL「サワイ」、沢井製薬株式会社製)を54国際単位/mL、塩化ナトリウムを0.1mol/L含む水溶液をpH6に調整した点を除き、実施例1と同様の抗血栓処理を行った。抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを実施例3とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は、2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例3において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(実施例4)
実施例1の繊維構造体1の代わりに、ポリエステル繊維からなる単繊維から構成された、単糸繊度が約2.33dtex、総繊度84dtexのマルチフィラメントを用いて作製した編物を用いた以外は、実施例1に記載の抗血栓処理と同様の抗血栓処理及びエチレンオキシドガス滅菌を行い、実施例4を得た。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は15μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例4において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(実施例5)
実施例1のダルテパリンナトリウムの代わりに、レビパリンナトリウム(クリバリン透析用1000単位/mL バイアル5mL、マイランEPD合同会社)を54国際単位/mL、塩化ナトリウムを0.1mol/L含み、pH4に調整した水溶液を用いた以外は、実施例1に記載と同様の抗血栓処理を行った。抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを実施例5とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例3において、上記式1の(Y/X)×100の値は100となった。実施例5に用いたレビパリンナトリウムの抗ファクターXa活性を“テストチーム(登録商標) ヘパリンS”(積水メディカル株式会社製)を用いて測定し、抗トロンビン活性を自動血液凝固装置CA−50(シスメックス株式会社製)を用いて測定し、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性との比を算出したところ、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性との比は、4.3であった。
(実施例6)
実施例1の繊維構造体1の10分の1部分をアブレイシブペーパーで起毛して、上記式1の(Y/X)×100の値が90となるようにし、これを繊維構造体2とした。実施例1の繊維構造体1の代わりに、繊維構造体2を用いた以外は、実施例1に記載の抗血栓処理と同様の抗血栓処理及びエチレンオキシドガス滅菌を行い、実施例6を得た。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例6において、上記式1の(Y/X)×100の値は、90であった。
(実施例7)
実施例1の繊維構造体1の5分の1部分をアブレイシブペーパーで起毛して、上記式1の(Y/X)×100の値が80となるようにし、これを繊維構造体3とした。実施例1の繊維構造体1の代わりに、繊維構造体3を用いた以外は、実施例1に記載の抗血栓処理と同様の抗血栓処理及びエチレンオキシドガス滅菌を行い、実施例7を得た。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例7において、上記式1の(Y/X)×100の値は、80であった。
(実施例8)
実施例2の人工血管1の内表面5分の1部分をアブレイシブペーパーで起毛して、上記式1の(Y/X)×100の値が80となるようにし、これを人工血管2とした。実施例2の人工血管1の代わりに、人工血管2を用いた以外は、実施例2に記載の抗血栓処理と同様の抗血栓処理及びエチレンオキシドガス滅菌を行い、実施例8を得た。片刃カミソリを用いて実施例8を長軸方向に切開し、内表面の繊維について走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例8において、上記式1の(Y/X)×100の値は、80であった。
(実施例9)
下記の(a)〜(e)の工程を連続的に行なうことで、生成物1を得た。
(a)過ヨウ素酸によるヘパリン鎖の切断工程
ヘパリンナトリウム(Organon API社製)を4重量%含む、40℃の水溶液を調製し、塩酸を6mol/L含む水溶液を用いて溶液のpHを5.0に調節した。この溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を4重量%含む、4℃の水溶液を攪拌しながら添加した。塩酸を6mol/L含む水溶液を用いて、溶液のpHを5.0に調節した。溶液を4℃で24時間保存した。
(b)残留過ヨウ素酸塩の除去工程
過ヨウ素酸によるヘパリン鎖の切断工程で得た溶液を、再生セルロース製の透析チューブ(多孔率3〜2000Da)内に分散させ、蒸留水に対して15時間透析を行った。
(c)塩基性溶媒中での解重合工程
水酸化ナトリウムを10mol/L含む水溶液を、残留過ヨウ素酸塩の除去工程で得た溶液に対して2容量%となるよう添加し、20℃で3時間攪拌した。
(d)還元工程
塩基性溶媒中での解重合工程で得た溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を0.0625重量%となるよう添加し、20℃で4時間攪拌した。塩酸を6mol/L含む水溶液を用いて溶液のpHを4.0に調節した。15分間攪拌した後、水酸化ナトリウムを10mol/L含む水溶液を用いてpH7.0に調整した。この溶液に、塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を2重量%となるよう添加し、さらに1.5倍容のエタノールを添加し、混合した。溶液を3時間静置した後、2500回転で20分間、遠心分離した。沈殿物を回収し、99.5容量%エタノール(和光純薬工業株式会社製)200mL中に懸濁させ、ホモジナイザーを用いて破砕し、ブフナーロートを用いて減圧濾過により回収した。回収物を40℃で真空乾燥させた。
(e)アルコール分画工程
還元工程で得た回収物8.9gを蒸留水120mLに溶解させた。回収物の20倍重量の塩化ナトリウムを添加し、塩酸を6mol/L含む水溶液を用いて溶液のpHを3.5に調節した。溶液中の塩化ナトリウム濃度が1g/mLとなるよう蒸留水を添加した。溶液量の50%容の99.5容量%エタノールを攪拌しながら添加した。さらに15分間攪拌し、その後、溶液を室温で10時間静置した。溶液を2500回転で20分間、遠心分離した。沈殿物を回収し、99.5容量%エタノール150mL中に懸濁させ、ホモジナイザーを用いて破砕し、ブフナーロートを用いて減圧濾過により回収した。回収物を99.5容量%エタノール300mLで洗浄し、40℃で24時間、真空乾燥させ、生成物1を得た。
生成物1の抗ファクターXa活性を“テストチーム(登録商標) ヘパリンS”(積水メディカル株式会社製)を用いて測定し、抗トロンビン活性を自動血液凝固装置CA−50(シスメックス株式会社製)を用いて測定し、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比を算出したところ、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比は、9.1であった。
生成物1の重量平均分子量を、日本薬局方「パルナパリンナトリウム」の「分子量」の項記載の方法により測定したところ、生成物1の重量平均分子量は、2500であった。
実施例1のダルテパリンナトリウムの代わりに、生成物1を54国際単位/mL、塩化ナトリウムを0.1mol/L含み、pH4に調整した水溶液を用いた以外は、実施例1に記載と同様の抗血栓処理を行った。抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを実施例9とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例9において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100となった。
(実施例10)
実施例2の抗血栓性処理において、生成物1を54国際単位/mL、塩化ナトリウムを0.1mol/L含む水溶液をpH6に調整した点を除き、実施例2と同様の抗血栓処理を行った。抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを実施例10とした。片刃カミソリを用いて実施例10を長軸方向に切開し、内表面の繊維について走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例10において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(実施例11)
下記の(a)〜(c)の工程を連続的に行なうことで、生成物2を得た。
(a)ヘパリンの解重合工程
ヘパリンナトリウム(Organon API社製)1gを蒸留水50mLに溶解させ、ヘパリンナトリウムと同量の酢酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)と、ヘパリンナトリウムの10%量の塩化カルシウム(和光純薬工業株式会社製)を添加した。次亜塩素酸を0.5mol/L含む水溶液を用いてpH7.2に調整した。ヘパリナーゼII(デクストララボラトリーズ社製)を0.4mg添加し、30度で15時間インキュベートした。99.5容量%エタノール10容にて沈殿させた後、得られた解重合生成物を乾燥した。
(b)ゲル濾過による解重合混合物の分画工程
DEAEセファデックス(登録商標)A−25(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)50mLを充填したカラムを、塩化ナトリウムを0.1mol/L含み、pH7.0に調製した水溶液で平衡化させた。ヘパリンの解重合工程で得られた解重合生成物を、90mg/mLとなるよう塩化ナトリウムを0.1mol/L含み、pH7.0に調製した水溶液に溶解させ、カラムの頂部に載せた。塩化ナトリウムを0.1mol/L含み、pH7.0に調製した水溶液250mLから、塩化カルシウムを0.5mol/L含み、pH7.0に調製した水溶液250mLまでの勾配で溶出した。溶出液を10mLずつ採取し、波長232nmにおける吸光度の最も高かった画分を集めた。
(c)クロマトグラフィーによる生成物2の選択工程
アンチトロンビンを固定化したアガロースを充填したカラムを、塩化ナトリウムを0.1mol/L含む水溶液と0.025mol/Lのトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)で平衡化した。ゲル濾過による解重合混合物の分画工程で得た画分を、カラム頂部に載せた。塩化カルシウムを2mol/L含む水溶液を用いて溶出し、1個のピークを得た。ピークを示す画分を含む溶出液に5倍容の99.5容量%エタノールを添加し、形成された沈殿物を遠心分離により回収し、99.5容量%エタノールで洗浄し、減圧下、60度で乾燥させ、生成物2を得た。
生成物2の抗ファクターXa活性を“テストチーム(登録商標) ヘパリンS”(積水メディカル株式会社製)を用いて測定し、抗トロンビン活性を自動血液凝固装置CA−50(シスメックス株式会社製)を用いて測定し、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比を算出したところ、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比は、25.0であった。
生成物2の重量平均分子量を、日本薬局方「パルナパリンナトリウム」の「分子量」の項記載の方法により測定したところ、生成物2の重量平均分子量は、4500であった。
実施例1のダルテパリンナトリウムの代わりに、生成物2を54国際単位/mL、塩化ナトリウムを0.1mol/L含み、pH4に調整した水溶液を用いた以外は、実施例1に記載と同様の抗血栓処理を行った。抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを実施例11とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、実施例11において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100となった。
(比較例1)
硫酸を0.6mol/L、過マンガン酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)を5.0重量%含む水溶液に実施例1の繊維構造体1を浸漬し、60℃で3時間反応させて繊維構造体1の表面を加水分解及び酸化した(加水分解及び酸化する工程)。反応後に水溶液を除去し、塩酸及び蒸留水で洗浄した。
続いて、DMT−MM(和光純薬工業株式会社製)を0.5重量%、ポリエチレンイミン(LUPASOL(登録商標) P;BASF社製、重量平均分子量:750,000)を5.0重量%含む水溶液に繊維構造体1を浸漬し、30℃で2時間反応させて繊維構造体1にポリエチレンイミンを縮合反応により共有結合させた。反応後に水溶液を除去し、蒸留水等で洗浄した。
続いて、臭化エチルを1重量%、メタノールを30重量%含む水溶液に繊維構造体1を浸漬し、35℃で1時間反応させた後、50℃に加温して4時間反応させ、ポリエチレンイミンを第4級アンモニウム化した。反応後の水溶液を除去し、メタノールや蒸留水で洗浄した。
最後に、ヘパリンナトリウム(Organon API社製)を0.75重量%、塩化ナトリウムを0.1mol/L含む水溶液(pH4に調整)に浸漬し、70℃で6時間反応させて、アルキルスルホン酸化ポリエチレンイミンとイオン結合させた。水溶液を除去し、蒸留水で洗浄後、真空乾燥した。
真空乾燥後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを比較例1とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例1において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
比較例1に用いたヘパリンナトリウムの抗ファクターXa活性を“テストチーム(登録商標) ヘパリンS”(積水メディカル株式会社製)を用いて測定し、抗トロンビン活性を自動血液凝固装置CA−50(シスメックス株式会社製)を用いて測定し、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性との比を算出したところ、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性との比は、1.1であった。
(比較例2)
実施例2の人工血管1に対し、比較例1と同様の抗血栓処理を行い、抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを比較例2とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例2において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(比較例3)
実施例1の繊維構造体1にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを比較例3とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例3において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(比較例4)
ポリエステル繊維からなる単繊維から構成された単糸繊度が約5.6dtex、総繊度84dtexのマルチフィラメントが、経糸及び緯糸として構成されている織物を作製し、繊維構造体4とした。エチレンオキシドガス滅菌を行い、これを比較例4とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は23μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、繊維構造体4において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(比較例5)
走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で実施例1の繊維構造体1中の単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。繊維構造体1の4分の3部分をアブレイシブペーパーで起毛して、上記式1の(Y/X)×100の値が25となるように、境界部分を打抜きポンチで打ち抜き、これを繊維構造体5とした。繊維構造体5にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを比較例5とした。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例5において、上記式1の(Y/X)×100の値は、25であった。
(比較例6)
実施例1の繊維構造体1の代わりに、比較例4の繊維構造体4を用いた以外は、実施例1に記載の抗血栓処理と同様の抗血栓処理及びエチレンオキシドガス滅菌を行い、比較例6を得た。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は23μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例6において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(比較例7)
実施例1の繊維構造体1の代わりに、比較例5の繊維構造体5を用いた以外は、実施例1に記載の抗血栓処理と同様の抗血栓処理及びエチレンオキシドガス滅菌を行い、比較例7を得た。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例7において、上記式1の(Y/X)×100の値は、25であった。
(比較例8)
実施例2の抗血栓性処理において、ダルテパリンナトリウム(ダルテパリンNa静注5000単位/5mL「サワイ」、沢井製薬株式会社製)を54国際単位/mL、塩化ナトリウムを0.1mol/L含む水溶液を調製し、pH4に調整する代わりに、ヘパリンナトリウム(Organon API社製)を0.75重量%、塩化ナトリウムを0.1mol/L含む水溶液をpH7に調整した点を除き、実施例2と同様の抗血栓処理を行った。抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを比較例8とした。片刃カミソリを用いて比較例8を長軸方向に切開し、内表面の繊維について走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例8において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(比較例9)
実施例2におけるダルテパリンナトリウムをポリエチレンイミンとイオン結合させる工程の代わりに、0.75重量%のヘパリンナトリウム(Organon API社製)、5mg/mLのDMT−MM(和光純薬工業株式会社製)を含む水溶液に人工血管1を浸漬し、30℃で2時間反応させて、PBSで洗浄後に真空乾燥させた点を除き、実施例2と同様の抗血栓処理を行った。抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを比較例9とした。片刃カミソリを用いて比較例9を長軸方向に切開し、内表面の繊維について走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例9において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100であった。
(比較例10)
ヘパリンナトリウム(Organon API社製)60gを2重量%となるよう4℃の蒸留水に溶解させ、亜硝酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を0.05mol/Lとなるよう添加し、塩酸を6mol/L含む水溶液を用いてpH2.5に調整した。4℃で10分間攪拌し、水酸化ナトリウムを5mol/L含む水溶液を用いてpH7.5に調整した。5倍容の99.5容量%エタノールを添加し、形成された沈殿物を遠心分離により回収し、99.5容量%エタノールで洗浄し、60度で減圧乾燥させ、生成物3を得た。
生成物3の抗ファクターXa活性を“テストチーム(登録商標) ヘパリンS”(積水メディカル株式会社製)を用いて測定し、抗トロンビン活性を自動血液凝固装置CA−50(シスメックス株式会社製)を用いて測定し、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比を算出したところ、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比は、86.7であった。
生成物3の重量平均分子量を、日本薬局方「パルナパリンナトリウム」の「分子量」の項記載の方法により測定したところ、生成物3の重量平均分子量は、1000であった。
実施例1のダルテパリンナトリウムの代わりに、生成物3を54国際単位/mL、塩化ナトリウムを0.1mol/L含み、pH4に調整した水溶液を用いた以外は、実施例1に記載と同様の抗血栓処理を行った。抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを比較例10とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例10において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100となった。
(比較例11)
下記の(a)〜(c)の工程を連続的に行なうことで、生成物4を得た。
(a)ヘパリンの解重合工程
ヘパリンナトリウム(Organon API社製)を、酢酸ナトリウムを0.15mol/L、塩化ナトリウムを0.15mol/L、塩化カルシウムを0.005mol/L含み、pH6.9に調整した水溶液に2重量%となるよう溶解させ、30℃で24時間静置した。ヘパリナーゼII(デクストララボラトリーズ社製)を0.4mg添加し、8時間後にさらに0.2mg、24時間後に0.2mg、36時間後に0.2mg添加した。99.5容量%エタノール10容にて沈殿させた後、得られた解重合生成物を乾燥した。
(b)クロマトグラフィーによる選択工程
アンチトロンビンを固定化したセファロース(登録商標)を充填したカラムを、塩化ナトリウムを0.1mol/L含む水溶液と0.05mol/Lのトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化した。ヘパリンの解重合工程で得た解重合生成物をカラム頂部に乗せた。平衡化に用いた溶液でカラムを洗浄して非固定化成分を除去したのち、塩化カルシウムを1mol/L含み、pH7.2に調整した水溶液で溶出した。ピークを示す画分を含む溶出液に5倍容の99.5容量%エタノールを添加し、形成された沈殿物を遠心分離により回収し、99.5容量%エタノールで洗浄し、減圧下で60度で乾燥させた。
(c)ゲル濾過工程
クロマトグラフィーによる選択工程で得た生成物25gをセファデックス(登録商標)G50スーパーファイン(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)に乗せ、塩化カルシウムを0.2mol/L含む水溶液で溶出される画分を回収した。これをセファデックスG25を用いて脱塩し、凍結乾燥させて生成物4を得た。
生成物4の抗ファクターXa活性を“テストチーム(登録商標) ヘパリンS”(積水メディカル株式会社製)を用いて測定し、抗トロンビン活性を自動血液凝固装置CA−50(シスメックス株式会社製)を用いて測定し、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比を算出したところ、抗ファクターXa活性と抗トロンビン活性の比は、1.5であった。
生成物4の重量平均分子量を、日本薬局方「パルナパリンナトリウム」の「分子量」の項記載の方法により測定したところ、生成物4の重量平均分子量は、1200であった。
実施例1のダルテパリンナトリウムの代わりに、生成物4を54国際単位/mL、塩化ナトリウムを0.1mol/L含み、pH4に調整した水溶液を用いた以外は、実施例1に記載と同様の抗血栓処理を行った。抗血栓処理後にエチレンオキシドガス滅菌を行い、これを比較例11とした。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で単繊維の平均繊維径を評価した結果、単繊維の平均繊維径は2.5μmであった。交差平均角度SをマイクロスコープVHX‐2000(株式会社キーエンス製)を用いて測定したところ、比較例11において、上記式1の(Y/X)×100の値は、100となった。
(評価1:細胞接着性試験1)
実施例1、3〜7、9及び11並びに比較例1、3〜7及び10〜11を打抜ポンチで直径15mmの円形に打ち抜いたものを3枚ずつ準備し、これをサンプルとした。細胞培養用の24ウェルマイクロプレート(住友ベークライト株式会社製)のウェルに1枚ずつ入れ、上から肉厚1mmの金属パイプ状錘を乗せた。10容量%ウシ胎児血清(MP Biochemicals,LLC.製)含有DMEM培地(和光純薬工業株式会社)(以下、「培地」)を1mL添加し、37℃、5%COの環境下で1時間静置した後、培地を除去した。1mLの培地に懸濁したNIH/3T3細胞(ATCC(登録商標))を1ウェル当たり1.5×10個になるように添加し、37℃、5%COの環境下で96時間培養した。その後、サンプルを新しいウェルに移し、PBS(−)(日水製薬株式会社製)でリンスした後に、1mLの培地を添加し、Cell Counting Kit−8(株式会社同仁化学研究所製)を75μL添加して37℃、5%COの環境下で90分間培養した。その後、450nmの吸光度をマイクロプレートリーダ(SpectraMAX(登録商標) M3;モレキュラーデバイスジャパン株式会社製)で測定して、以下の式2に示すように、吸光度As1を算出した。

As1 = At1−Ab1 ・・・式2
At1 : 測定値の吸光度
Ab1 : ブランク溶液の吸光度(培地及びCell Counting Kit−8の溶液のみで細胞なし。)
As1 : 算出された吸光度
実施例1、3〜7、9及び11並びに比較例1、3〜7及び10〜11について、各3枚のサンプルのAs1の平均値を求め、表1に示した。As1の平均値はサンプルの細胞接着性を示すため高い程よく、As1の平均値は、0.7以上であることが好ましい。
(評価2:細胞接着性試験2)
実施例2、8及び10並びに比較例2、8及び9を打抜ポンチで直径4mmの円形に打ち抜いたものを3枚ずつ準備し、これをサンプルとした。“3M(商標)両面粘着テープ1522”(スリーエム ヘルスケア株式会社製)を打抜ポンチで直径4mmの円形に打ち抜き、細胞培養用の96ウェルマイクロプレート(住友ベークライト株式会社製)のウェル底面に1枚ずつ接着させた。サンプルの内表面側が上になるようにウェルに入れ、サンプルとテープ接着面を接着させ、サンプルをウェルに固定した。10容量%ウシ胎児血清(MP Biochemicals,LLC.製)含有DMEM培地(和光純薬工業株式会社)(以下、「培地」)を0.2mL添加し、37℃、5%COの環境下で1時間静置した後、培地を除去した。0.2mLの培地に懸濁したNIH/3T3細胞(ATCC(登録商標))を1ウェル当たり2.5×10個になるように添加し、37℃、5%COの環境下で96時間培養した。その後、サンプルを新しいウェルに移し、PBS(−)(日水製薬株式会社製)でリンスした後に、0.2mLの培地を添加し、Cell Counting Kit−8(株式会社同仁化学研究所製)を15μL添加して37℃、5%COの環境下で90分間培養した。その後、450nmの吸光度をマイクロプレートリーダ(SpectraMAX(登録商標) M3;モレキュラーデバイスジャパン株式会社製)で測定して、以下の式3に示すように、吸光度As2を算出した。

As2 = At2−Ab2 ・・・式3
At2 : 測定値の吸光度
Ab2 : ブランク溶液の吸光度(培地及びCell Counting Kit−8の溶液のみで細胞なし。)
As2 : 算出された吸光度
実施例2、8及び10並びに比較例2、8及び9について、各3枚のサンプルのAs2の平均値を求め、表1に示した。As2の平均値はサンプルの細胞接着性を示すため高い程よく、As2の平均値は、0.7以上であることが好ましい。
(評価3:ヒト全血液凝固試験)
実施例1、3〜7、9及び11並びに比較例1、3〜7及び10〜11を表面積が1.0cmとなるようカットし、各実施例及び比較例のヒト全血液凝固試験用のサンプルを得た。各サンプルを生理食塩水で37℃、30分間洗浄してから2mLのマイクロチューブに入れた。ヒト新鮮血に0.4U/mLとなるようにヘパリンナトリウム注(味の素製薬株式会社製)を添加した後、このヒト血液を2mL添加し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベート後に血液を採取し、サンプル添加前の血液と共に4℃、2500×gで20分間、遠心分離し、上清を採取し測定まで−30℃で保存した。アセラクロムβ−TG(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製)を用いて上清中のβ−TG活性を測定し、サンプル添加前のβ−TG活性に対するインキュベート後のβ−TG活性の比を算出した。実施例1、3、4及び5並びに比較例1及び3〜7の各サンプルにおけるサンプル添加前のβ−TG活性に対するインキュベート後のβ−TG活性の比を表1に示した。サンプル添加前のβ−TG活性に対するインキュベート後のβ−TG活性の比は血小板活性化抑制効果の指標であるため1に近いほどよく、サンプル添加前のβ−TG活性に対するインキュベート後のβ−TG活性の比は、10以下であることが好ましい。
(評価4:イヌ移植実験における開存率評価)
実施例2、8及び10並びに比較例2、8及び9の人工血管を、イヌの左右の頸動脈に移植し、移植3ヶ月後の開存率を検討した。雄のビーグル犬に移植2日前から摘出日までアスピリン及びジピリダモールを投与した。イソフルラン吸入麻酔を行った。頸部を切開して頸動脈を露出させた後、ヘパリン100IU/kgを静脈内投与により全身ヘパリン化した。血流を遮断し、人工血管を端端吻合にて頸動脈に移植した。血流を再開させ、閉創し、麻酔から覚醒させた。移植1ヶ月後までは週1回、その後は移植3ヶ月後まで月1回、エコー装置(デジタル超音波画像診断装置Noblus(登録商標)、株式会社日立製作所)を用いて移植3ヶ月後までに閉塞した人工血管の数を確認した。その結果から、以下の式4を用いて開存率(%)を計算した。

P=(Na−Np)/Na×100 ・・・式4
P:開存率(%)
Np:移植3ヶ月後までに閉塞した人工血管の数(本)
Na:移植した人工血管の数(本)
ここで、一般的に移植3ヶ月後までに閉塞が起こらなければ長期開存が可能と言われていることから、イヌ移植実験における開存率評価については移植期間を3ヶ月間と設定した。
一方、評価の指標としては開存率を用いた。ヒト臨床において、下肢の閉塞性動脈硬化症に対するバイパス手術では代用血管として人工血管を用いた場合の開存率は60%であるのに対し、自家静脈を用いた場合は80%と報告されている。心臓の冠動脈バイパス術等の心血管インプラントでは、術後の閉塞や狭窄を考慮して人工血管ではなく自家静脈が選ばれていることから、心血管インプラントにおいて、開存率の20%程度の差は臨床においては大きな意味を持つと言える。
一方、現在市販されている内径3mmの小口径人工血管のイヌにおける移植3ヶ月後の開存率は75%と報告されている。当該人工血管をヒト下肢に使用した場合、移植3年後以降の開存成績は自家静脈より悪くなると報告されていることから、臨床において自家静脈より良好な開存成績を得るためには、イヌでの移植3ヶ月後の開存率は75%より高いことが求められる。
また、長期に開存するためには基材内表面が早期に内皮細胞で被覆され、抗血栓性を発揮することが必要であることから、開存率は、基材内表面において早期の内皮化が起こり、抗血栓性が維持されていることの指標となると言える。
得られた実施例2、8及び10並びに比較例2、8及び9の人工血管の開存率(%)を表1に示した。
Figure 2019213842
本発明のインプラント用の医療材料は、医療器材に好適に用いることができ、特に、左心耳閉塞デバイス等の心血管インプラント用の医療器材に用いることができる。

Claims (3)

  1. 平均繊維径が1μm〜15μmの単繊維を含み、かつ、以下の式1の条件を満たすマルチフィラメントと、アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーと、重量平均分子量が2000〜7000の低分子量ヘパリンと、を備え、
    前記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーは、前記マルチフィラメント中の前記単繊維と共有結合し、
    前記低分子量ヘパリンは、前記アルキレンイミンを構成モノマーとして含む窒素含有ポリマーとイオン結合している、インプラント用の医療材料。
    (Y/X)×100≧50 ・・・式1
    [式中、Xは、交差平均角度を調べた単繊維の本数を表し、Yは、Xの内で交差平均角度が25度以下の単繊維の本数を表す。]
  2. 前記低分子量ヘパリンの抗Xa因子活性と抗トロンビン活性との比は、2.0〜10.0である、請求項1記載のインプラント用の医療材料。
  3. 請求項1又は2記載の医療材料を備える、心血管インプラント用の医療器材。
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