JP2019211502A - カラー生成構造体 - Google Patents
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【課題】85000dpiを超える解像度の色設計を容易に行うことができるカラー生成構造体を提供する。【解決手段】カラー生成構造体1は、ミー共振器2と、金属マスク部3とを備える。ミー共振器2は、誘電体を含み、白色光の入射に応じてミー共振を励起する。金属マスク部3は、金属を含み、ミー共振器2の一部を覆う。カラー生成構造体1は、白色光の入射に応じて特定の色を生成する。【選択図】図1
Description
本発明は、カラー生成構造体に関する。
高屈折率誘電体ナノ構造に白色光を入射すると、誘電体内部に励起されるミー共振により、特定の波長を有する光が反射され、誘電体の色とは異なる色が生成される(例えば、非特許文献1〜7参照。)。ミー共振は、光が照射された誘電体がその光と同程度の寸法を有する場合に誘電体の内部で誘起される共振現象である。誘電体から反射する光の波長は、誘電体の寸法を調整することにより制御できる。本発明者らは過去に、シリコン(Si)ナノ構造を用いて、約85000dpi(dot per inch)の解像度を有するカラー印刷を実現した(非特許文献6)。
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本発明者は、誘電体ナノ構造の研究を更に進めて、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、85000dpiを超える解像度の色設計を容易に行うことができるカラー生成構造体を提供することにある。
本発明のカラー生成構造体は、ミー共振器と、金属マスク部とを備える。前記ミー共振器は、誘電体を含み、白色光の入射に応じてミー共振を励起する。前記金属マスク部は、金属を含み、前記ミー共振器の一部を覆う。前記カラー生成構造体は、前記白色光の入射に応じて特定の色を生成する。
ある実施形態において、前記カラー生成構造体は、前記ミー共振器の寸法に応じた色を生成する。
ある実施形態において、前記カラー生成構造体は、前記ミー共振器の寸法及び前記金属マスク部の厚みに応じた色を生成する。
ある実施形態において、前記ミー共振器は、100nm以上200nm以下の高さを有する。
ある実施形態において、前記ミー共振器は、50nm以上250nm以下の幅を有する。
ある実施形態において、前記金属マスク部は、5nm以上80nm以下の厚みを有する。
ある実施形態において、前記ミー共振器は先端面を有する。
ある実施形態において、前記金属マスク部は、前記ミー共振器の先端面の少なくとも一部を覆う。
ある実施形態において、前記金属は、クロム、金、銀、銅、アルミニウム、チタン、及び白金のうちの少なくとも1種を含む。
ある実施形態において、前記誘電体の屈折率は3以上である。
ある実施形態において、前記誘電体は、シリコン、リン化インジウム、ヒ化ガリウム、アンチモン化アルミニウム、ヒ化アルミニウム、テルル化亜鉛、及びリン化ガリウムのうちの少なくとも1種を含む。
ある実施形態において、前記カラー生成構造体は、前記ミー共振器が配置される基板を更に備える。
ある実施形態において、前記基板の屈折率は2以下である。
ある実施形態において、前記カラー生成構造体は、複数の前記ミー共振器と、前記複数のミー共振器の各々の一部を覆う前記金属マスク部とを備える。
ある実施形態において、前記複数のミー共振器は、350nm以下の周期で配列される。
ある実施形態において、前記カラー生成構造体は、複数種類の前記ミー共振器と、前記複数種類のミー共振器の各々の一部を覆う前記金属マスク部とを備える。
ある実施形態において、前記複数種類のミー共振器は、互いに異なる寸法を有する。
本発明によれば、85000dpiを超える解像度の色設計を容易に行うことができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。また、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
まず、図1(a)及び図1(b)を参照して、本実施形態のカラー生成構造体1について説明する。図1(a)及び図1(b)は、本実施形態のカラー生成構造体1の構成を示す図である。詳しくは、図1(a)は、本実施形態の単位構造体1aの構成を示す。
図1(a)に示すように、単位構造体1aは、ミー共振器2と、金属マスク部3と、基板4とを備える。単位構造体1aに白色光が入射すると、特定の色が生成される。具体的には、特定の色を示す光が単位構造体1aから反射する。あるいは、基板4が透明基板である場合、特定の色を示す光が単位構造体1aを透過する。
ミー共振器2は、基板4上に配置される。ミー共振器2は、突起形状を有し、基板4から突出する。ミー共振器2は、誘電体を含み、白色光の入射に応じてミー共振を励起する。ミー共振が励起されることにより、特定の波長を有する光がミー共振器2から散乱し、その結果、特定の色が生成される。詳しくは、ミー共振により、誘電体の内部に電気双極子及び磁気双極子が励起される。この結果、特定の波長を有する光がミー共振器2から散乱する。
本実施形態のミー共振器2は、円柱形状であり、先端面を有する。ミー共振器2の高さhは、100nm以上200nm以下であり、ミー共振器2の直径d(幅)は、50nm以上250nm以下である。ミー共振器2の寸法を調整することにより、単位構造体1aが生成する色を制御することができる。換言すると、単位構造体1aは、ミー共振器2の寸法に応じた色を生成する。例えば、単位構造体1aは、RGBの原色を発色することができる。
ミー共振器2を構成する誘電体は、特に限定されないが、屈折率が3以上であることが好ましい。屈折率が3以上であることにより、誘電体の内部に電場及び磁場をより強固に閉じ込めることができる。したがって、より高い彩度の色を生成することができる。例えば、誘電体は、シリコン(Si)、リン化インジウム(InP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、テルル化亜鉛(ZnTe)、及びリン化ガリウム(GaP)のいずれかであり得る。これらの屈折率は3以上である。なお、シリコンは低損失の材料であるため、ミー共振器2をシリコンで形成することで、より高い彩度の色を生成することができる。
金属マスク部3は、金属を含み、ミー共振器2の一部を覆う。金属マスク部3がミー共振器2の一部を覆うことにより、誘電体からの電場の漏れが抑制される。金属マスク部3を配置する位置は、誘電体の内部でミー共振が励起されるとともに、誘電体からの電場の漏れが抑制される限り、特に限定されないが、好ましくは、単位構造体1aの反射率又は透過率がより高くなる位置に金属マスク部3を配置する。例えば、ミー共振器2が円柱形状である場合、ミー共振器2の先端面に金属マスク部3を配置することが好ましい。なお、以下の説明において、ミー共振器2と金属マスク部3とからなる構造を、「マスク付きミー共振器2a」と記載する場合がある。
金属マスク部3の厚みtは、5nm以上80nm以下である。金属マスク部3の厚みtを調整することによって、単位構造体1aが生成する色を制御することができる。換言すると、単位構造体1aは、ミー共振器2の寸法及び金属マスク部3の厚みtに応じた色を生成する。
金属マスク部3に使用される金属は、誘電体からの電場の漏れを抑制できる限り、特に限定されない。例えば、金属は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、白金(Pt)、及びクロム(Cr)のいずれかであり得る。
基板4の材料は、特に限定されないが、単位構造体1aの反射率又は透過率がより高くなる材料を使用することが好ましい。具体的には、基板4の屈折率は2以下であることが好ましい。例えば、基板4の材料は、石英(SiO2)及び酸化アルミニウム(Al2O3)のいずれかであり得る。石英の屈折率は、1.46であり、酸化アルミニウムの屈折率は、1.76である。
以上、図1(a)を参照して、本実施形態の単位構造体1aを説明した。なお、以下の説明において、本実施形態の単位構造体1aを「マスク付き単位構造体1a」と記載する場合がある。
続いて図1(b)を参照して、本実施形態のカラー生成構造体1を更に説明する。図1(b)は、本実施形態のアレイ構造体1bを示す。図1(b)に示すように、アレイ構造体1bは、複数のマスク付きミー共振器2aと、基板4とを備える。図1(b)にアレイ構造体1bにおいて、マスク付きミー共振器2aは、周期的に配列されている。換言すると、図1(b)に示すアレイ構造体1bは、図1(a)に示すマスク付き単位構造体1aが周期的に配列された構造を有する。周期Pは、例えば、150nm以上350nm以下である。以下、本実施形態のアレイ構造体1bを「マスク付きアレイ構造体1b」と記載する場合がある。
以上、図1(a)及び図1(b)を参照して、本実施形態のカラー生成構造体1を説明した。なお、カラー生成構造体1は、例えば、電子線リソグラフィ法又はナノインプリント法によって製造することができる。
本実施形態によれば、回折限界解像度の色設計を容易に行うことができる。回折限界解像度は、光学顕微鏡の解像度の原理的限界を示す。具体的には、本実施形態のカラー生成構造体1により、85000dpiを超える解像度の色設計を容易に行うことができる。以下、85000dpiを超える解像度の色設計を容易に行い得ることについて、図2(a)及び図2(b)に示す比較例と比べながら説明する。
図2(a)及び図2(b)は、比較例のカラー生成構造体11の構成を示す図である。詳しくは、図2(a)は、比較例の単位構造体11aを示し、図2(b)は、比較例のアレイ構造体11bを示す。
図2(a)及び図2(b)に示すように、比較例の単位構造体11a及びアレイ構造体11bは、図1(a)及び図1(b)を参照して説明したマスク付き単位構造体1a及びマスク付きアレイ構造体1bと比べて、金属マスク部3を備えていない。このため、比較例のアレイ構造体11bにおいて、85000dpiを超える解像度に対応する周期Pでミー共振器2を配列した場合、電場の漏れに起因して、隣り合うミー共振器2間で相互作用が起こる。具体的には、隣り合うミー共振器2間で漏洩電場が重なり、ミー共振波長がシフトする。その結果、アレイ構造体11bに含まれる各単位構造体から、単位構造体11aと異なる色が生成される。したがって、比較例において、アレイ構造体11bに含まれる各単位構造体から所望の色を発生させるには、隣り合うミー共振器2間の相互作用を考慮してミー共振器2の寸法を調整する必要がある。このため、比較例では、85000dpiを超える解像度で色設計を行うことが困難となる。
これに対し、本実施形態によれば、金属マスク部3により、ミー共振器2から漏れる電場が抑制される。したがって、85000dpiを超える解像度に対応する周期Pでミー共振器2を配列しても、隣り合うミー共振器2間の相互作用を抑制することができる。したがって、マスク付きアレイ構造体1bに含まれる各マスク付き単位構造体から、マスク付き単位構造体1aと略同じ色が生成される。よって、本実施形態によれば、マスク付きアレイ構造体1bにおいて、隣り合うミー共振器2の相互作用を考慮することなく、各ミー共振器2の寸法を調整して、各マスク付き単位構造体から所望の色を発生させることができる。このため、85000dpiを超える解像度であっても容易に色設計を行うことができる。例えば、本実施形態によれば、100000dpiの解像度の色設計を容易に行うことができる。
続いて、本実施形態のカラー生成構造体1(マスク付き単位構造体1a及びマスク付きアレイ構造体1b)について、比較例と比較しながら更に説明する。なお、以下の説明において、比較例の単位構造体11aを「マスク無し単位構造体11a」と記載し、比較例のアレイ構造体11bを「マスク無しアレイ構造体11b」と記載する場合がある。また、本実施形態のカラー生成構造体1(マスク付き単位構造体1a及びマスク付きアレイ構造体1b)を「実施例」と記載する場合がある。
まず、図3(a)〜図3(d)を参照して、マスク付き単位構造体1aの後方散乱断面積スペクトルと、マスク付きアレイ構造体1bの反射率スペクトルとについて説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、ミー共振器2の高さhは150nmであり、ミー共振器2の直径は150nmであり、金属マスク部3の厚みtは30nmであり、周期Pは250nmである。また、ミー共振器2の材料はシリコンであり、金属マスク部3の材料はクロムであり、基板4の材料は石英である。また、金属マスク部3は、ミー共振器2の先端面の全面を覆う。
図3(a)は、マスク無し単位構造体11aの後方散乱断面積の計算結果を示す図であり、図3(b)は、マスク付き単位構造体1aの後方散乱断面積の計算結果を示す図である。また、図3(c)は、マスク無しアレイ構造体11bの反射率の計算結果を示す図であり、図3(d)は、マスク付きアレイ構造体1bの反射率の計算結果を示す図である。
詳しくは、図3(a)及び図3(b)は、ミー共振器2の直径dを「100nm」に設定して計算した後方散乱断面積の計算結果と、ミー共振器2の直径dを「150nm」に設定して計算した後方散乱断面積の計算結果と、ミー共振器2の直径dを「200nm」に設定して計算した後方散乱断面積の計算結果とを示す。また、図3(c)及び図3(d)は、ミー共振器2の直径dを「100nm」に設定して計算した反射率の計算結果と、ミー共振器2の直径dを「150nm」に設定して計算した反射率の計算結果と、ミー共振器2の直径dを「200nm」に設定して計算した反射率の計算結果とを示す。図3(a)及び図3(b)において、縦軸は後方散乱断面積を示し、横軸は波長を示す。図3(c)及び図3(d)において、縦軸は反射率を示し、横軸は波長を示す。
後方散乱断面積の計算には、市販の3次元FDTD(Finite−Difference Time−Domain)シミュレーション(Lumerical社の「FDTD Solutions」)を用いた。反射率の計算には、市販の厳密結合波解析(Rigorous Couple−Wave Analysis:RCWA)シミュレーション(Synopsys社の「DiffractMod」)を用いた。シリコンの比誘電率は、実験により求めた。なお、以下の説明において、後方散乱断面積スペクトルを「散乱スペクトル」と記載する場合がある。
図3(a)及び図3(b)に示すように、マスク無し単位構造体11aの散乱スペクトルのピーク位置は、ミー共振器2の直径dの増加に応じて赤外線領域に向けてシフトした。同様に、マスク付き単位構造体1aの散乱スペクトルのピーク位置も、ミー共振器2の直径dの増加に応じて赤外線領域に向けてシフトした。図3(c)及び図3(d)に示すように、マスク無しアレイ構造体11bの反射率スペクトルのピーク位置は、ミー共振器2の直径dの増加に応じて赤外線領域に向けてシフトした。同様に、マスク付きアレイ構造体1bの反射率スペクトルのピーク位置も、ミー共振器2の直径dの増加に応じて赤外線領域に向けてシフトした。
また、図3(a)及び図3(c)に示すように、比較例において、ミー共振器2の直径dを100nmに設定した場合、反射率スペクトルのピーク位置は、散乱スペクトルのピーク位置と略同じ位置となった。図3(b)及び図3(d)に示すように、実施例においても、ミー共振器2の直径dを100nmに設定した場合、反射率スペクトルのピーク位置は、散乱スペクトルのピーク位置と略同じ位置となった。
一方、図3(a)及び図3(b)に示すように、実施例における散乱スペクトルのピーク波形の形状は、比較例における散乱スペクトルのピーク波形の形状と比べてシャープになった。同様に、図3(c)及び図3(d)に示すように、実施例における反射率スペクトルのピーク波形の形状は、比較例における反射率スペクトルのピーク波形の形状と比べてシャープになった。これらの計算結果は、ミー共振器2の一部を金属マスク部3で覆うことによりQ値が増加することを示す。
また、図3(a)及び図3(c)に示すように、比較例において、ミー共振器2の直径dを150nm又は200nmに設定した場合、反射率スペクトルのピーク位置は、散乱スペクトルのピーク位置と比べて、紫外線領域に向けてシフトした。更に、反射率スペクトルの形状は、散乱スペクトルの形状から大きく変化した。これらの計算結果は、マスク無しアレイ構造体11bが、マスク無し単位構造体11aと異なる色を生成することを示している。
一方、図3(b)及び図3(d)に示すように、実施例では、反射率スペクトルと後方散乱断面積スペクトルとの間において、ピーク位置のずれは略生じなかった。また、反射率スペクトルの形状は、散乱スペクトルと略同じ形状となった。これらの計算結果は、マスク付きアレイ構造体1bが、マスク付き単位構造体1aと略同じ色を生成することを示している。
続いて、図4(a)及び図4(b)を参照して、マスク付き単位構造体1aの散乱スペクトルについて更に説明する。具体的には、後方散乱断面積の計算結果に対して多重極分解分析(Multipole Decomposition Analysis:MDA)を行った結果について説明する。
図4(a)は、マスク付き単位構造体1aの後方散乱断面積に対して多重極分解分析を行った結果を示す図であり、図4(b)は、マスク無し単位構造体11aの後方散乱断面積に対して多重極分解分析を行った結果を示す図である。詳しくは、図4(a)及び図4(b)は、散乱スペクトルにおいて電気双極子(ED)及び磁気双極子(MD)が寄与する成分を示す。図4(a)及び図4(b)において、縦軸は後方散乱断面積を示し、横軸は波長を示す。なお、多重極分解分析には、市販の有限要素法(Finite Element Method:FEM)シミュレーション(COMSOL社の「COMSOL Multiphysics」)を用いた。
図4(a)に示すように、マスク付き単位構造体1aでは、電気双極子(ED)に由来するスペクトルのピーク位置と、磁気双極子(MD)に由来するスペクトルのピーク位置とが一致した。一方、図4(b)に示すように、マスク無し単位構造体11aでは、電気双極子(ED)に由来するスペクトルのピーク位置と、磁気双極子(MD)に由来するスペクトルのピーク位置とは一致しなかった。その結果、図3(a)〜図3(d)を参照して説明したように、実施例における散乱スペクトル及び反射率スペクトルのピーク波形が、比較例における散乱スペクトル及び反射率スペクトルのピーク波形と比べてシャープになったものと推察される。
続いて図5(a)〜図5(d)を参照して、マスク付き単位構造体1aの散乱スペクトルについて更に説明する。具体的には、電気双極子(ED)に由来するスペクトルのピーク位置と金属マスク部3の厚みtとの関係、及び、磁気双極子(MD)に由来するスペクトルのピーク位置と金属マスク部3の厚みtとの関係について説明する。
図5(a)〜図5(d)は、マスク付き単位構造体1aの後方散乱断面積に対して多重極分解分析を行った結果を示す図である。詳しくは、図5(a)は、金属マスク部3の厚みtを「10nm」に設定して計算した後方散乱断面積に対して多重極分解分析を行った結果を示し、図5(b)は、金属マスク部3の厚みtを「20nm」に設定して計算した後方散乱断面積に対して多重極分解分析を行った結果を示し、図5(c)は、金属マスク部3の厚みtを「30nm」に設定して計算した後方散乱断面積に対して多重極分解分析を行った結果を示し、図5(d)は、金属マスク部3の厚みtを「40nm」に設定して計算した後方散乱断面積に対して多重極分解分析を行った結果を示す。より具体的には、図5(a)〜図5(d)は、散乱スペクトルにおいて電気双極子(ED)及び磁気双極子(MD)が寄与する成分を示す。図5(a)〜図5(d)において、縦軸は後方散乱断面積を示し、横軸は波長を示す。
図5(a)〜図5(d)に示すように、電気双極子(ED)に由来するスペクトルのピーク位置は、金属マスク部3の厚みtの増加に応じて徐々に赤外線領域に向けてシフトした。一方、磁気双極子(MD)に由来するスペクトルのピーク位置は、金属マスク部3の厚みtの増加に応じて、ごくわずかに紫外線領域に向けてシフトした。この結果、図4(a)に示すように、電気双極子に由来するスペクトルのピーク位置と、磁気双極子に由来するスペクトルのピーク位置とが一致したものと推察される。
続いて図6を参照して、散乱スペクトルのピーク位置と反射率スペクトルのピーク位置との差について説明する。なお、以下の説明において、散乱スペクトルのピーク位置と反射率スペクトルのピーク位置との差を「シフト量」と記載する場合がある。
図6は、散乱スペクトルのピーク位置と反射率スペクトルのピーク位置との差(シフト量)を示す図である。図6において、縦軸はシフト量を示し、横軸はミー共振器2の直径dを示す。また、図6において、実線は、実施例のシフト量を示す。破線は、比較例のシフト量を示す。
図6に示すように、ミー共振器2の直径dが100nmになるまで実施例のシフト量と比較例のシフト量との間に差はほとんどなかった。一方、直径dが100nmよりも大きくなると、実施例のシフト量と比較例のシフト量との間の差が広がった。具体的には、比較例のシフト量が、直径dの増加に応じて、実施例のシフト量よりも大きくなり、直径dが200nmに達すると、比較例のシフト量は80nmとなった。一方、実施例は、比較例の半分程度のシフト量となった。この計算結果は、マスク付きアレイ構造体1bが、マスク付き単位構造体1aと略同じ色を生成することを示している。
なお、図7(a)〜図7(c)及び図8(a)〜図8(c)に示すように、金属マスク部3を構成する金属をクロム以外の金属に変更しても、クロムと同様の計算結果が得られた。図7(a)〜図7(c)及び図8(a)〜図8(c)は、散乱スペクトルのピーク位置と反射率スペクトルのピーク位置との差(シフト量)を示す図である。
詳しくは、図7(a)は、金属マスク部3を構成する金属の種類を金(Au)に変更して計算したシフト量を示す図である。図7(b)は、金属マスク部3を構成する金属の種類を銀(Ag)に変更して計算したシフト量を示す図である。図7(c)は、金属マスク部3を構成する金属の種類を銅(Cu)に変更して計算したシフト量を示す図である。図8(a)は、金属マスク部3を構成する金属の種類をアルミニウム(Al)に変更して計算したシフト量を示す図である。図8(b)は、金属マスク部3を構成する金属の種類をチタン(Ti)に変更して計算したシフト量を示す図である。図8(c)は、金属マスク部3を構成する金属の種類を白金(Pt)に変更して計算したシフト量を示す図である。図7(a)〜図7(c)及び図8(a)〜図8(c)において、縦軸はシフト量を示し、横軸はミー共振器2の直径dを示す。また、図7(a)〜図7(c)及び図8(a)〜図8(c)において、実線は、実施例のシフト量を示す。破線は、比較例のシフト量を示す。
続いて図9(a)及び図9(b)を参照して、マスク付き単位構造体1aの電界分布について説明する。図9(a)は、波長640nmの白色光を入射したマスク無し単位構造体11aの電界分布を計算した結果を示す図である。図9(b)は、波長630nmの白色光を入射したマスク付き単位構造体1aの電界分布を計算した結果を示す図である。
図9(a)及び図9(b)に示すように、ミー共振器2の一部を金属マスク部3で覆うことにより、ミー共振器2の外部へ漏洩する電場が抑制された。この結果は、隣り合うミー共振器2間の相互作用が抑制されることを定性的に示している。
なお、図9(a)及び図9(b)に示すように、ミー共振器2において励起される共鳴現象は、プラズモン共鳴と異なる。これは、クロムの誘電率の実数部が負であるが0に近く、その結果、可視光領域においてプラズモン共鳴が励起されないためである。
続いて、本実施形態のカラー生成構造体1の製造方法の具体的な一例について説明する。本発明者は、実験のために、アンドープ単結晶[100]シリコン層が150nmの膜厚で積層された石英基板(信越化学工業社製)を用いて、電子ビームリソグラフィ法によりマスク付きアレイ構造体1bを作製した。詳しくは、基板のシリコン層側の表面に膜厚35nmのレジスト膜をコートし、電子ビーム描画装置を用いて、金属マスク部3のパターンをレジスト膜に描画した。その後、現像してレジストパターンを形成し、蒸着装置によりクロムを蒸着した。次に、残りのレジスト層をリフトオフした。その後、反応性イオンエッチングチャンバ内でシリコン層を選択的にエッチングした。反応性イオンエッチングには、SF6ガス及びC4F8ガスを用いた。図10は、作製したマスク付きアレイ構造体1bの走査イオン顕微鏡像を示す図である。以下、作製したマスク付きアレイ構造体1bを「サンプルS」と記載する場合がある。なお、クロム層の膜厚(厚みt)は、加速されたエッチングガスに長時間さらされた結果、35nmから30nmに減少した。
本発明者は、サンプルSの反射率スペクトルを測定した。図11は、反射率スペクトルの測定に用いた光学装置100の概略図である。図11に示すように、共焦点反射顕微鏡を用いて、サンプルS内の所望の領域からの反射光L1をスペクトロメーター101(Ocean Optics社の「E65 Pro」)で検出した。詳しくは、ハロゲンランプ102から発生した無偏光白色光L2を、偏光素子103によって偏光した後、対物レンズ104を介してサンプルSの表面に照射した。
本発明者は、サンプルS1〜サンプルS7を作製して、サンプルS1〜サンプルS7のそれぞれの反射率スペクトルを測定した。サンプルS1〜サンプルS7は、ミー共振器2の直径dが異なる。具体的には、サンプルS1のミー共振器2の直径dは、200nmである。サンプルS2のミー共振器2の直径dは、180nmである。サンプルS3のミー共振器2の直径dは、160nmである。サンプルS4のミー共振器2の直径dは、140nmである。サンプルS5のミー共振器2の直径dは、120nmである。サンプルS6のミー共振器2の直径dは、100nmである。サンプルS7のミー共振器2の直径dは、80nmである。
図12は、サンプルS1〜サンプルS7の反射率スペクトルを測定した結果示す図である。具体的には、上から順に、サンプルS1の反射率スペクトル、サンプルS2の反射率スペクトル、サンプルS3の反射率スペクトル、サンプルS4の反射率スペクトル、サンプルS5の反射率スペクトル、サンプルS6の反射率スペクトル、サンプルS7の反射率スペクトルを示す。図12において、縦軸は反射率を示し、横軸は波長を示す。また、図12において、実線が、測定した反射率スペクトルを示す。破線は、厳密結合波解析シミュレーションを用いて計算した計算結果を示す。
図12に示すように、ミー共振器2の直径dを調整することにより、反射率スペクトルのピーク位置がシフトした。具体的には、ミー共振器2の直径dの増加に応じて、反射率スペクトルのピーク位置が赤外線領域に向けてシフトした。この結果は、ミー共振器2の直径dに応じて、異なる色が生成されることを示している。また、図12に示すように、実験結果は計算結果と略一致した。
本発明者は更に、サンプルS8〜サンプルS14を作製して、サンプルS8〜サンプルS14のそれぞれの反射率スペクトルを測定した。サンプルS8〜サンプルS14は、ミー共振器2の周期Pが異なる。具体的には、サンプルS8の周期Pは、230nmである。サンプルS9の周期Pは、250nmである。サンプルS10の周期Pは、270nmである。サンプルS11の周期Pは、290nmである。サンプルS12の周期Pは、310nmである。サンプルS13の周期Pは、330nmである。サンプルS14の周期Pは、350nmである。
図13(a)は、サンプルS8〜サンプルS14の反射率スペクトルを測定した結果を示す図である。図13(b)は、厳密結合波解析シミュレーションを用いて計算した計算結果を示す図である。図13(a)及び図13(b)において、縦軸は反射率を示し、横軸は波長を示す。図13(a)に示すように、周期Pの減少に応じて、反射強度が増加した。一方、周期Pが変化しても、反射率スペクトルのピーク位置は変化しなかった。この結果は、周期Pを調整することにより、彩度を制御できることを示している。なお、図13(a)及び図13(b)に示すように、実験結果は計算結果と略一致した。
続いて図14を参照して、本実施形態のカラー生成構造体1によって生成可能な色について説明する。図14は、CIE1931色空間を示す図である。図14において、黒点は、マスク付きアレイ構造体1bの反射率のxy値を示す。具体的には、ミー共振器2の直径dを70nmから200nmまで5nm刻みで増加させて得た各反射率(計算値)をCIE1931色空間のxy値に変換して、CIE1931色空間にプロットした。
図14に示すように、ミー共振器2の直径dを調整することにより、RGBを含む略全ての色を生成できた。また、比較例では生成することが困難なマゼンタを生成することができた。
続いて、マスク付き単位構造体1aの反射率スペクトルについて説明する。本発明者は、サンプルS15〜S17を作製して、サンプルS15〜S17のそれぞれの反射率スペクトルを測定した。サンプルS15〜S17は、マスク付き単位構造体1aである。サンプルS15〜サンプルS17は、ミー共振器2の直径dが異なる。具体的には、サンプルS15のミー共振器2の直径dは、120nmである。サンプルS16のミー共振器2の直径dは、160nmである。サンプルS17のミー共振器2の直径dは、200nmである。なお、サンプルS15〜S17の反射率スペクトルを示す信号は、弱い信号であったため、増幅して測定した。
図15(a)は、サンプルS15の反射率スペクトルを測定した結果を示す図である。詳しくは、図15(a)において、実線は、サンプルS15の反射率スペクトルを示す。破線は、図12を参照して説明したサンプルS5(直径d=120nm)の反射率スペクトルを示す。また、図15(a)において、左側の縦軸は、サンプルS15の反射率を示し、右側の縦軸は、サンプルS5の反射率を示し、横軸は波長を示す。
図15(b)は、サンプルS16の反射率スペクトルを測定した結果を示す図である。詳しくは、図15(b)において、実線は、サンプルS16の反射率スペクトルを示す。破線は、図12を参照して説明したサンプルS3(直径d=160nm)の反射率スペクトルを示す。また、図15(b)において、左側の縦軸は、サンプルS16の反射率を示し、右側の縦軸は、サンプルS3の反射率を示し、横軸は波長を示す。
図15(c)は、サンプルS17の反射率スペクトルを測定した結果を示す図である。詳しくは、図15(c)において、実線は、サンプルS17の反射率スペクトルを示す。破線は、図12を参照して説明したサンプルS1(直径d=200nm)の反射率スペクトルを示す。また、図15(c)において、左側の縦軸は、サンプルS17の反射率を示し、右側の縦軸は、サンプルS1の反射率を示し、横軸は波長を示す。
図15(a)〜図15(c)に示すように、マスク付きアレイ構造体1bの反射率スペクトルのピーク位置は、マスク付き単位構造体1aの反射率スペクトルのピーク位置と一致した。これらの結果は、マスク付きアレイ構造体1bから発生する色が、マスク付き単位構造体1aから発生する色と一致することを示す。
続いて図16を参照して、マスク付きアレイ構造体1bにおけるミー共振器2の高さhと反射率との関係について説明する。図16は、ミー共振器2の高さhを変化させて計算した反射率の計算結果(2次元反射率マップ)を示す図である。詳しくは、ミー共振器2の高さhを50nmから300nmまで変化させて、図16に示す2次元反射率マップを得た。図16において、縦軸はミー共振器2の高さhを示し、横軸は波長を示す。
図16に示すように、反射率のピークは、ミー共振器2の高さhの増加に応じて赤外線領域へ向けてシフトした。また、ミー共振器2の高さhの増加に応じて、反射率の強度が増加した。これらの結果は、ミー共振器2の高さhに応じて、異なる色が生成されることを示している。したがって、ミー共振器2の高さhを調整することにより、カラー生成構造体1が生成する色を制御することができる。
続いて図17を参照して、マスク付きアレイ構造体1bにおける金属マスク部3の厚みtと反射率との関係について説明する。図17は、金属マスク部3の厚みtを変化させて計算した反射率の計算結果(2次元反射率マップ)を示す図である。詳しくは、金属マスク部3の厚みtを0nmから100nmまで変化させて、図17に示す2次元反射率マップを得た。図17において、縦軸は金属マスク部3の厚みtを示し、横軸は波長を示す。
図17に示すように、反射率のピークは、金属マスク部3の厚みtの増加に応じて赤外線領域へ向けてシフトした。したがって、金属マスク部3の厚みtを調整することにより、カラー生成構造体1が生成する色を制御することができる。なお、金属マスク部3の厚みtに応じた反射率のピークのシフトは、図5(a)〜図5(d)を参照して説明した電気双極子(ED)に由来するスペクトルのピーク位置のシフトに起因する。
続いて図18及び図19を参照して、マスク付きアレイ構造体1bを透過する光について説明する。図18は、マスク付きアレイ構造体1bの2次元透過率マップを示す図であり、図19は、マスク付きアレイ構造体1bの2次元吸収率マップを示す図である。詳しくは、図18は、ミー共振器2の直径dを0.05μm(50nm)から0.20μm(200nm)まで変化させて計算した透過率の計算結果(2次元透過率マップ)を示す。また、図19は、ミー共振器2の直径dを0.05μm(50nm)から0.20μm(200nm)まで変化させて計算した吸収率の計算結果(2次元吸収率マップ)を示す。図18及び図19において、縦軸はミー共振器2の直径dを示し、横軸は波長を示す。
図18及び図19に示すように、ミー共振器2の直径dの変化に応じて透過率及び吸収率が変化した。この結果は、ミー共振器2の直径dに応じて、カラー生成構造体1を透過する光の色が異なることを示している。
続いて図20を参照して、金属マスク部3の直径dmとマスク付きアレイ構造体1bの反射率との関係を説明する。図20は、金属マスク部3の直径dmとマスク付きアレイ構造体1bの反射率との関係を示す図である。詳しくは、図20は、金属マスク部3の直径dmを「50nm」に設定して計算した反射率の計算結果と、金属マスク部3の直径dmを「110nm」に設定して計算した反射率の計算結果と、金属マスク部3の直径dmを「150nm」に設定して計算した反射率の計算結果と、金属マスク部3の直径dmを「170nm」に設定して計算した反射率の計算結果と、金属マスク部3の直径dmを「200nm」に設定して計算した反射率の計算結果とを示す。図20において、縦軸は反射率を示し、横軸は波長を示す。
図20に示すように、金属マスク部3の直径dmを変化させても、反射率及び反射率スペクトルのピーク位置は大きくは変化しなかった。この結果は、金属マスク部3が、ミー共振器2の先端面の全面を覆ってもよいし、ミー共振器2の先端面の一部を覆ってもよいことを示す。
続いて図21(a)〜図21(c)を参照して、金属マスク部3とマスク付きアレイ構造体1bの反射率との関係について更に説明する。図21(a)は、マスク付き単位構造体1aの第1変形例の上面図である。図21(b)は、マスク付き単位構造体1aの第2変形例の上面図である。
図21(a)に示すマスク付き単位構造体1aは、マスク付きミー共振器2aの構成が、図1(a)に示すマスク付き単位構造体1aと異なる。具体的には、図21(a)に示すマスク付き単位構造体1aは、5個の金属マスク部3を備える。各金属マスク部3は円盤状であり、各金属マスク部3の直径dmはミー共振器2の直径dよりも小さい。5個の金属マスク部3は、ミー共振器2の先端面に配置される。
図21(b)に示すマスク付き単位構造体1aは、マスク付きミー共振器2aの構成が、図1(a)に示すマスク付き単位構造体1aと異なる。具体的には、図21(b)に示すマスク付き単位構造体1aは、13個の金属マスク部3を備える。各金属マスク部3は円盤状であり、各金属マスク部3の直径dmはミー共振器2の直径dよりも小さい。また、各金属マスク部3の直径dmは、図21(a)に示す金属マスク部3の直径dmよりも小さい。13個の金属マスク部3は、ミー共振器2の先端面に配置される。
図21(c)は、第1変形例に対応するマスク付きアレイ構造体1bの反射率の計算結果と、第2変形例に対応するマスク付きアレイ構造体1bの反射率の計算結果とを示す図である。図21(c)において、縦軸は反射率を示し、横軸は波長を示す。詳しくは、図21(c)において、実線は、第1変形例に対応するマスク付きアレイ構造体1bの反射率の計算結果を示し、一点鎖線は、第2変形例に対応するマスク付きアレイ構造体1bの反射率の計算結果を示す。なお、破線は、図1(b)に示すマスク付きアレイ構造体1bの反射率の計算結果を示す。具体的には、破線は、金属マスク部3の直径dmを「150nm」に設定して計算した反射率の計算結果を示す。
図21(c)に示すように、金属マスク部3の数を変化させても、反射率及び反射率スペクトルのピーク位置は大きくは変化しなかった。この結果は、ミー共振器2の先端面に、1つの金属マスク部3を配置してもよいし、複数の金属マスク部3を配置してもよいことを示す。
続いて図22を参照して、基板4の屈折率nとマスク付きアレイ構造体1bの反射率との関係について更に説明する。図22は、基板4の屈折率nとマスク付きアレイ構造体1bの反射率との関係を示す図である。詳しくは、図22は、基板4の屈折率nを「1.0」に設定して計算した反射率の計算結果と、基板4の屈折率nを「1.5」に設定して計算した反射率の計算結果と、基板4の屈折率nを「2.0」に設定して計算した反射率の計算結果と、基板4の屈折率nを「2.5」に設定して計算した反射率の計算結果と、基板4の屈折率nを「3.0」に設定して計算した反射率の計算結果とを示す。図22において、縦軸は反射率を示し、横軸は波長を示す。
図22に示すように、基板4の屈折率nが2以下である場合、反射率スペクトルに対する基板4の影響は小さかった。具体的には、基板4の屈折率nが2以下である場合、反射率スペクトルのピーク位置、及び反射率スペクトルのピーク強度が略一定となった。
続いて図23(a)及び図23(b)を参照して、ミー共振器2を構成する材料をリン化ガリウム(GaP)に変更して計算した後方散乱断面積及び反射率の計算結果について説明する。
図23(a)は、マスク付き単位構造体1aの後方散乱断面積の計算結果と、マスク付きアレイ構造体1bの反射率の計算結果とを示す図である。図23(b)は、マスク無し単位構造体11aの後方散乱断面積の計算結果と、マスク無しアレイ構造体11bの反射率の計算結果とを示す図である。詳しくは、図23(a)及び図23(b)において、破線は散乱スペクトルを示し、実線は反射率スペクトルを示す。図23(a)及び図23(b)において、左側の縦軸は後方散乱断面積を示し、右側の縦軸は反射率を示し、横軸は波長を示す。
図23(a)及び図23(b)に示すように、ミー共振器2を構成する材料がリン化ガリウム(GaP)であっても、散乱スペクトルのピーク位置と反射率スペクトルのピーク位置との差(シフト量)は、ミー共振器2の一部を金属マスク部3で覆うことによって小さくなった。
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
例えば、本発明の実施形態において、マスク付きアレイ構造体1bは、寸法が同じ複数のマスク付きミー共振器2aを備えたが、マスク付きアレイ構造体1bは、寸法が互いに異なる複数種類のマスク付きミー共振器2aを備え得る。換言すると、マスク付きアレイ構造体1bは、互いに異なる色を生成する複数種類のマスク付き単位構造体を含み得る。具体的には、マスク付きアレイ構造体1bにおいて、各マスク付き単位構造体に含まれるミー共振器2の直径dを調整することにより、各マスク付き単位構造体から異なる色を発生させることができる。
また、本発明の実施形態において、ミー共振器2は円柱形状を有したが、ミー共振器2の形状は、ミー共振を励起できる形状である限り特に限定されない。例えば、ミー共振器2の形状は、楕円柱状であり得る。あるいは、ミー共振器2の形状は、三角柱状や四角柱状のような多角形柱状、又は、五線星形柱状や六線星形柱状のような星形柱状であり得る。あるいは、ミー共振器2の形状は、円錐形状や三角錐形状のような錐形状であり得る。あるいは、ミー共振器2の形状は、滴形状、又は樽形状であり得る。
また、図1(b)を参照して、マスク付きミー共振器2aが周期的に配列される構造を説明したが、マスク付きミー共振器2aは周期的に配列されていなくてもよい。例えば、マスク付きミー共振器2aは、所望の画像が形成されるように配置することができる。
本発明は、解像度が300nm以下の微細なカラー画像、撮像デバイスに用いるイメージング受光素子用カラーフィルタ、光記録媒体の多波長化、及び、長期保存用のアーカイブ印刷物等に有用である。
1 カラー生成構造体
1a 単位構造体
1b アレイ構造体
2 ミー共振器
3 金属マスク部
4 基板
1a 単位構造体
1b アレイ構造体
2 ミー共振器
3 金属マスク部
4 基板
Claims (14)
- 誘電体を含み、白色光の入射に応じてミー共振を励起するミー共振器と、
金属を含み、前記ミー共振器の一部を覆う金属マスク部と
を備え、前記白色光の入射に応じて特定の色を生成する、カラー生成構造体。 - 前記ミー共振器の寸法に応じた色を生成する、請求項1に記載のカラー生成構造体。
- 前記ミー共振器の寸法及び前記金属マスク部の厚みに応じた色を生成する、請求項2に記載のカラー生成構造体。
- 前記ミー共振器は、100nm以上200nm以下の高さを有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。
- 前記ミー共振器は、50nm以上250nm以下の幅を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。
- 前記金属マスク部は、5nm以上80nm以下の厚みを有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。
- 前記ミー共振器は先端面を有し、
前記金属マスク部は、前記ミー共振器の先端面の少なくとも一部を覆う、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。 - 前記金属は、クロム、金、銀、銅、アルミニウム、チタン、及び白金のうちの少なくとも1種を含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。
- 前記誘電体の屈折率は3以上である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。
- 前記誘電体は、シリコン、リン化インジウム、ヒ化ガリウム、アンチモン化アルミニウム、ヒ化アルミニウム、テルル化亜鉛、及びリン化ガリウムのうちの少なくとも1種を含む、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。
- 前記ミー共振器が配置される基板を更に備える、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。
- 前記基板の屈折率は2以下である、請求項11に記載のカラー生成構造体。
- 複数の前記ミー共振器と、
前記複数のミー共振器の各々の一部を覆う前記金属マスク部と
を備え、
前記複数のミー共振器は、350nm以下の周期で配列される、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。 - 複数種類の前記ミー共振器と、
前記複数種類のミー共振器の各々の一部を覆う前記金属マスク部と
を備え、
前記複数種類のミー共振器は、互いに異なる寸法を有する、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のカラー生成構造体。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111426686A (zh) * | 2020-04-02 | 2020-07-17 | 中国科学院微电子研究所 | 基于硅纳米柱的结构色成像结构、测试系统及制备方法 |
CN113013630A (zh) * | 2021-02-18 | 2021-06-22 | 中国科学院微电子研究所 | 一种基于硅纳米结构的高分辨率结构色超表面及制备方法 |
CN113253369A (zh) * | 2021-05-13 | 2021-08-13 | 桂林电子科技大学 | 一种全介质纳米圆环阵列结构的宽色域颜色滤波器 |
CN114114485A (zh) * | 2021-11-24 | 2022-03-01 | 厦门大学 | 一种基于超构表面宽带吸收体的新型辐射制冷器件 |
-
2018
- 2018-05-31 JP JP2018104578A patent/JP2019211502A/ja active Pending
Cited By (5)
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