本発明のブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされている。
具体的には、ブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物とブロック剤との反応物である。
イソシアネート化合物は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含有する。
キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートは、キシリレンジイソシアネートの三量体である。
キシリレンジイソシアネートとしては、例えば、1,2−キシリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3−キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
また、このようなキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートは、後述する方法により、アルコール類によって変性されている。
具体的には、このようなキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートは、キシリレンジイソシアネートと、アルコール類とをウレタン化反応させ、次いで、そのウレタン反応液にイソシアヌレート化触媒を添加して、ウレタン反応液(具体的には、キシリレンジイソシアネート、および、キシリレンジイソシアネートとアルコール類との反応生成物、以下同様。)をイソシアヌレート化反応させた後、必要により、未反応のキシリレンジイソシアネートを除去することにより得られる。
より具体的には、まず、キシリレンジイソシアネートとアルコール類とを混合してウレタン化反応させる。
なお、キシリレンジイソシアネートには、貯蔵安定性および反応性の観点から、酸成分を配合してもよい。
酸成分としては、特に制限されず、例えば、塩化水素(塩酸)、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、例えば、スルホン酸、酢酸などの有機酸などが挙げられる。
酸成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
酸成分として、好ましくは、無機酸が挙げられ、より好ましくは、塩化水素が挙げられる。
酸成分の含有割合は、特に制限されないが、キシリレンジイソシアネートおよび酸成分(以下、キシリレンジイソシアネート組成物とする。)の総量に対して、例えば、10ppm以上、好ましくは、20ppm以上、より好ましくは、30ppm以上、さらに好ましくは、40ppm以上であり、例えば、100ppm以下、好ましくは、80ppm以下、より好ましくは、75ppm以下、さらに好ましくは、70ppm以下である。
なお、酸成分の含有割合は、JIS K−1603−2:2007に準拠して、塩化水素換算値(すなわち、酸度)として測定される(以下同様)。
キシリレンジイソシアネート純度(すなわち、キシリレンジイソシアネート組成物に対する、キシリレンジイソシアネートの含有割合)は、例えば、98.0質量%以上、好ましくは、98.5質量%以上、より好ましくは、99.0質量%以上であり、通常、100質量%未満である。
アルコール類としては、例えば、1価アルコール、多価アルコールなどが挙げられる。
1価アルコールは、1分子中に水酸基を1つ有する有機化合物であって、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール(ラウリルアルコール)、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノール、n−ヘキサデカノール、n−ヘプタデカノール、n−オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n−ノナデカノール、エイコサノールなどの直鎖状の1価アルコール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2−エチルへキサン−1−オール、イソノナノール、イソデカノール、5−エチル−2−ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、3,9−ジエチル−6−トリデカノール、2−イソヘプチルイソウンデカノール、2−オクチルドデカノール、その他の分岐状アルカノール(炭素数5〜20)などの分岐状の1価アルコールが挙げられ、好ましくは、分岐状の1価アルコール、より好ましくは、イソブタノールが挙げられる。
多価アルコールは、1分子中に水酸基を2つ以上有する有機化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−または1,3−プロパンジオールもしくはその混合物)、ブチレングリコール(1,2−または1,3−または1,4−ブチレングリコールもしくはその混合物)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタンなどのアルカンジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどの脂肪族多価アルコールが挙げられる。
アルコール類として、好ましくは、多価アルコール、より好ましくは、脂肪族多価アルコール、さらに好ましくは、2価アルコール、とりわけ好ましくは、ブチレングリコール、最も好ましくは、1,3−ブチレングリコールが挙げられる。
アルコール類が、2価アルコールであれば、耐候性および相溶性に優れるコーティング剤(後述)を得ることができる。
アルコール類の配合割合(アルコール類の、キシリレンジイソシアネート100質量部に対する変性量)は、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、2質量部以上、好ましくは、4質量部を超過、さらに好ましくは、5質量部以上、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、8質量部以下である。
なお、上記変性量は、アルコール類により変性された、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートにおいて、イソシアヌレートに対するアルコール類の変性量と同義である。
上記の変性量が、上記下限以上であれば、耐候性および相溶性に優れるコーティング剤(後述)を得ることができる。
また、上記の変性量が、上記上限以下であれば、耐候性に優れるコーティング剤(後述)を得ることができる。
また、アルコール類のヒドロキシ基に対する、キシリレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、例えば、5以上、好ましくは、10以上、さらに好ましくは、20以上、通常、1000以下である。
このようなキシリレンジイソシアネートとアルコール類との混合は、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下において実施される。混合条件として、混合温度は、例えば、室温(例えば、25℃)以上、好ましくは、40℃以上、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下であり、混合時間は、例えば、3分間以上、好ましくは、12分間以上、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下である。
上記のウレタン化反応において、キシリレンジイソシアネートのウレタン転化率は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、25質量%以下である。
なお、上記のウレタン転化率は、キシリレンジイソシアネートのイソシアネート基濃度に対する、ウレタン反応液のイソシアネート基濃度の減少率を算出することにより求めることができる。
次いで、得られたウレタン反応液に、イソシアヌレート化触媒を添加し、ウレタン反応液をイソシアヌレート化反応させる。
イソシアヌレート化触媒としては、イソシアヌレート化に有効な触媒であれば、特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムなどのトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸などのアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、上記アルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛などの金属塩、例えば、アルミニウムアセチルアセトン、リチウムアセチルアセトンなどのβ−ジケトンの金属キレート化合物、例えば、塩化アルミニウム、三フッ化硼素などのフリーデル・クラフツ触媒、例えば、チタンテトラブチレート、トリブチルアンチモン酸化物などの種々の有機金属化合物、例えば、ヘキサメチルシラザンなどのアミノシリル基含有化合物などが挙げられる。
具体的には、例えば、Zwitter ion型のヒドロキシアルキル第4級アンモニウム化合物などが挙げられ、より具体的には、例えば、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート、N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサノエート、トリエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサデカノエート、トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・フェニルカーボネート、トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・フォーメートなどが挙げられる。
これらイソシアヌレート化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
イソシアヌレート化触媒として、好ましくは、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられ、さらに好ましくは、テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられる。
イソシアヌレート化触媒の使用形態は、特に制限されず、イソシアヌレート化触媒の固形分を直接使用してもよく、また、イソシアヌレート化触媒を有機溶媒に溶解させた触媒溶液を使用してもよい。
好ましくは、イソシアヌレート化触媒は、触媒溶液として使用される。
触媒溶液において、有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル類(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、極性非プロトン類(例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなど)などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
有機溶媒のなかでは、好ましくは、グリコールエーテルエステル類が挙げられ、さらに好ましくは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。
触媒溶液の固形分濃度(イソシアヌレート化触媒の含有割合)は、例えば、60.0質量%以下、好ましくは、50.0質量%以下、より好ましくは、10.0質量%以下である。
イソシアヌレート化触媒(固形分換算)の添加割合は、ウレタン反応液100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上、例えば、0.1質量部以下、好ましくは、0.05質量部以下である。
イソシアヌレート化触媒の添加割合が上記下限以上であれば、ウレタン反応液を確実にイソシアヌレート化反応させることができる。イソシアヌレート化触媒の添加割合が上記上限以下であれば、ウレタン反応液にイソシアヌレート化触媒を添加したときに、ゲルの発生を安定して抑制できる。
このイソシアヌレート化反応は、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下において実施される。イソシアヌレート化反応の反応条件として、反応温度は、例えば、室温(例えば、25℃)以上、好ましくは、40℃以上、より好ましくは、60℃以上、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下であり、反応時間は、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上、さらに好ましくは、2時間以上、例えば、12時間以下、好ましくは、10時間以下、さらに好ましくは、8時間以下である。
上記のイソシアヌレート化反応において、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート転化率は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、18質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、23質量%以下である。
イソシアヌレート転化率が、上記下限以上であれば、耐候性に優れるコーティング剤(後述)を得ることができる。
また、イソシアヌレート転化率が、上記上限以下であれば、相溶性に優れるコーティング剤(後述)を得ることができる。
なお、上記のイソシアヌレート転化率は、ウレタン反応液のイソシアネート基濃度に対する、イソシアヌレート化反応後のイソシアヌレート反応液のイソシアネート基濃度の減少率を算出することにより求めることができる。
コーティング剤(後述)では、耐候性および相溶性は、上記のアルコール変性量およびイソシアヌレート転化率に依存する。
すなわち、コーティング剤(後述)が、ポリオール成分(主剤)と、遊離のイソシアネート基を有するイソシアネート(硬化剤)とを含む場合には、主剤と硬化剤とを使用直前に配合に反応させるものであり、耐候性の向上を図る観点から、アルコール類の変性量を増やして、イソシアヌレート転化率を高くする傾向にある。
一方、コーティング剤(後述)が、ポリオール成分(主剤)と、ブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネート(硬化剤)とを含む場合には、主剤と硬化剤とを予め配合し、使用時にブロック剤を解離させて反応させるものであり、耐候性を確保するとともに、硬化剤の主剤に対する相溶性の向上を図ることが求められる。
そのため、本発明のブロックイソシアネートにおいて、アルコール類の変性量を増やす一方、イソシアヌレート転化率を低くすれば、具体的には、上記のアルコール類の変性量を、キシリレンジイソシアネート100質量部に対して、4質量部を超過、好ましくは、5質量部以上、また、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下とし、かつ、上記のイソシアヌレート転化率を、15質量%以上、好ましくは、18質量%以上、また、25質量%以下、好ましくは、23質量%以下とすれば、耐候性に優れつつ、硬化剤の主剤に対する相溶性に優れるコーティング剤(後述)を得ることができる。
また、上記のイソシアヌレート化反応においては、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、助触媒(例えば、有機亜リン酸エステルなど)などの公知の添加剤を添加することができる。
添加剤として、好ましくは、酸化防止剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、衛生性の観点から、好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、例えば、2,6?ジ(tert-ブチル)?4?メチルフェノール(別名:ジブチルヒドロキシトルエン、以下、BHTと略する場合がある。)、[3−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシ]−2,2−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシメチル]プロピル]3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパノエート(イルガノックス1010、チバ・ジャパン社製、商品名)、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製、商品名)、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチルエステル(イルガノックス1135、チバ・ジャパン社製、商品名)、ビス[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)プロピオン酸]エチレンビスオキシビスエチレン(イルガノックス245、チバ・ジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
これら酸化防止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
酸化防止剤として、衛生性の観点から、好ましくは、BHTを除くヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、より好ましくは、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製、商品名)が挙げられる。
なお、添加剤を添加するタイミングは、特に制限されず、イソシアヌレート化反応前のキシリレンジイソシアネートまたはウレタン反応液に添加してもよく、また、イソシアヌレート化反応中のイソシアヌレート反応液に添加してもよく、さらには、イソシアヌレート化反応後のイソシアヌレート反応液に添加してもよい。好ましくは、キシリレンジイソシアネートに添加する。
添加剤の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、上記の反応において、イソシアヌレート転化率が上記した範囲に到達した後に触媒失活剤が添加されることで、イソシアヌレート化反応が停止される。
触媒失活剤としては、例えば、リン酸化合物、スルホン酸化合物、スルホンアミド化合物などが挙げられる。
リン酸化合物としては、例えば、リン酸、リン酸エステルなどが挙げられる。リン酸エステルとしては、例えば、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸プロピル、リン酸ブチル、リン酸ジプロピル、リン酸ブトキシエチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸(C12〜18)アルキル、リン酸イソトリデシル、リン酸オレイル、リン酸テトラコシル、リン酸エチレングリコール、リン酸2−ヒドロキシエチルメタクリレート、リン酸ジブチルなどが挙げられる。
スルホン酸化合物としては、例えば、スルホン酸、スルホン酸エステルなどが挙げられる。スルホン酸としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などが挙げられる。スルホン酸エステルとしては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸メチル、ドデシルベンゼンスルホン酸エチル、ドデシルベンゼンスルホン酸プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸ブチルなどのドデシルベンゼンスルホン酸アルキルエステル、例えば、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸プロピル、パラトルエンスルホン酸ブチルなどのパラトルエンスルホン酸アルキルエステルなどが挙げられる。
スルホンアミド化合物としては、例えば、芳香族スルホンアミド類(例えば、ベンゼンスルホンアミド、ジメチルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、o−およびp−トルエンスルホンアミド、ヒドロキシナフタレンスルホンアミド、ナフタレン−1−スルホンアミド、ナフタレン−2−スルホンアミド、m−ニトロベンゼンスルホンアミド、p−クロロベンゼンスルホンアミドなど)、脂肪族スルホンアミド類(例えば、メタンスルホンアミド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジメチルエタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、N−メトキシメタンスルホンアミド、N−ドデシルメタンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−1−ブタンスルホンアミド、2−アミノエタンスルホンアミドなど)などが挙げられる。
また、触媒失活剤としては、上記のほか、例えば、モノクロル酢酸、ベンゾイルクロリドなども挙げられる。
これら触媒失活剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、触媒失活剤は、上記のイソシアヌレート反応液に対して、貯蔵安定剤としても作用する。
触媒失活剤として、好ましくは、リン酸化合物および/またはスルホン酸化合物が挙げられる。換言すれば、触媒失活剤として、好ましくは、リン酸および/またはスルホン酸、あるいは、そのエステルが挙げられる。
このような観点から、触媒失活剤として、さらに好ましくは、スルホン酸が挙げられ、とりわけ好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
触媒失活剤の使用形態は、特に制限されず、触媒失活剤の有効成分を直接使用してもよく、また、触媒失活剤を上記の有機溶媒に溶解させた触媒失活剤溶液を使用してもよい。好ましくは、触媒失活剤溶液を使用する。
触媒失活剤を、触媒失活剤溶液として使用する場合、有機溶媒として、好ましくは、グリコールエーテルエステル類が挙げられ、さらに好ましくは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。
また、触媒失活剤の有効成分濃度(触媒失活剤の含有割合)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
また、触媒失活剤の添加割合(有効成分換算)は、イソシアヌレート反応液の総量に対して、例えば、300ppm以上、好ましくは、400ppm以上であり、例えば、3000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは、800ppm以下である。
これにより、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートと、未反応のキシリレンジイソシアネートとを含むイソシアヌレート反応液を得ることができる。
また、得られたイソシアヌレート反応液に、必要に応じて、塩化水素など公知の酸や、高酸度のキシリレンジイソシアネート(例えば、酸度が2000ppm以上のキシリレンジイソシアネート組成物など)を添加することによって、酸度を調整することもできる。
そして、この方法では、上記のイソシアヌレート化反応終了後において、イソシアヌレート反応液から、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含む分離液と、未反応のキシリレンジイソシアネートを含む回収液とを、それぞれ分離する。
これらを分離する方法としては、特に制限されないが、例えば、薄膜蒸留装置が用いられる。
薄膜蒸留における蒸留条件としては、蒸留温度が、例えば、120℃以上、好ましくは、150℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、蒸留圧力(絶対圧力)が、例えば、1PaA以上であり、例えば、60PaA以下である。
また、イソシアヌレート反応液のフィード量が、例えば、1g/時間以上、好ましくは、5g/時間以上であり、例えば、1000g/時間以下、好ましくは、500g/時間以下である。
これにより、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含む分離液が、高沸点成分として分離される。
また、分離されたキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含む分離液に、必要により、上記の有機溶媒を適宜の割合で添加して、固形分濃度を調整することができる。
このような場合において、その固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
なお、このような場合には、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートは、有機溶媒を含む反応液のまま、後述するブロック剤と反応させることができる。
また、必要により、分離されたキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含む分離液に、上記の触媒失活剤(貯蔵安定剤)をさらに添加して、含有割合を上記範囲に調整することもできる。
また、分離されたキシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含む分離液には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤(上記のスルホンアミド化合物など)、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを添加することができる。
これにより、アルコール類により変性された、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートが得られる。
また、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートは、アルコール類により変性されているため、耐候性および相溶性に優れるコーティング剤(後述)を得ることができる。
そして、ブロックイソシアネートは、上記のイソシアネート化合物とブロック剤とを反応させることにより得られる。
ブロック剤としては、特に限定されず、公知のブロック剤が採用され、例えば、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ピリミジン系化合物、グアニジン系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩などが挙げられる。
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール(解離温度100℃)、ベンズイミダゾール(解離温度120℃)、2−メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4−メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2−エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
イミダゾリン系化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾリン(解離温度110℃)、2−フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
ピリミジン系化合物としては、例えば、2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
グアニジン系化合物としては、例えば、3,3−ジメチルグアニジンなどの3,3−ジアルキルグアニジン、例えば、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(解離温度120℃)などの1,1,3,3−テトラアルキルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンなどが挙げられる。
アルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、1−または2−オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、2−(ヒドロキシメチル)フラン、2−メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール、n−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエトキシエタノール、2−エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2−ブトキシエチルエタノール、2−ブトキシエトキシエタノール、N,N−ジブチル−2−ヒドロキシアセトアミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−モルホリンエタノール、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、3−オキサゾリジンエタノール、2−ヒドロキシメチルピリジン(解離温度140℃)、フルフリルアルコール、12−ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、s−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−s−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4−[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−ヒドロキシピリジン(解離温度80℃)、2−または8−ヒドロキシキノリン、2−クロロ−3−ピリジノール、ピリジン−2−チオール(解離温度70℃)などが挙げられる。
活性メチレン系化合物としては、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルs−ブチル、マロン酸エチルs−ブチル、マロン酸メチルt−ブチル、マロン酸エチルt−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t−ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなど)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなど)、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどが挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン(解離温度130℃)、イソプロピルエチルアミン、2,2,4−、または、2,2,5−トリメチルヘキサメチレンアミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン(解離温度140℃)、ジシクロヘキシルアミン(解離温度130℃)、ビス(3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン(解離温度130℃)、t−ブチルメチルアミン、t−ブチルエチルアミン(解離温度120℃)、t−ブチルプロピルアミン、t−ブチルブチルアミン、t−ブチルベンジルアミン(解離温度120℃)、t−ブチルフェニルアミン、2,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(解離温度80℃)、(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン、6−メチル−2−ピペリジン、6−アミノカプロン酸などが挙げられる。
イミン系化合物としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、グアニジンなどが挙げられる。
オキシム系化合物としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム(解離温度130℃)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt−ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4−ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3−エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n−アミルケトンオキシム、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’−ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2−ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
カルバミン酸系化合物としては、例えば、N−フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
尿素系化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
酸アミド系(ラクタム系)化合物としては、例えば、アセトアニリド、N−メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、ピロリドン、2,5−ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
酸イミド系化合物としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度120℃)、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3,5−ジフェニルピラゾール、3,5−ジ-t-ブチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾールなどが挙げられる。
メルカプタン系化合物としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
重亜硫酸塩としては、例えば、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
ブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ブロック剤としては、好ましくは、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物、より好ましくは、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物、さらに好ましくは、メチルエチルケトンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、とりわけ好ましくは、耐候性および相溶性の観点から、3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。
そして、イソシアネート化合物とブロック剤とを反応させるには、イソシアネート化合物とブロック剤とを混合する。
イソシアネート化合物とブロック剤との配合割合としては、ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基(すなわち、ブロック基)の、イソシアネート化合物のイソシアネート基に対する当量比(活性基/イソシアネート基)が、例えば、0.8以上、好ましくは、1.0以上であり、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
また、上記の反応は、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下において、実施される。
反応条件として、反応温度が、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上であり、また、例えば、80℃以下、好ましくは、70℃以下であり、また、反応時間が、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、また、例えば、6時間以下、好ましくは、3時間以下である。
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法、アミン当量の測定を用い、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
溶剤としては、例えば、上記の有機溶媒が挙げられる。
また、上記の反応では、必要により、ブロック化触媒を添加することができる。
ブロック化触媒としては、例えば、塩基性化合物が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチララート、ナトリウムフェノラート、カリウムメチラートなどのアルカリ金属アルコラート、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、例えば、テトラアルキルアンモニウムなどの酢酸塩、オクチル酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩などの有機弱酸塩、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸などのアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、上記のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛などの金属塩、例えば、ヘキサメチレンジシラザンなどのアミノシリル基含有化合物、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが挙げられる。また、これらブロック化触媒は、必要により、上記の溶剤や水、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどのアルコール類に溶解された溶液として用いることもできる。
これらブロック化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ブロック化触媒の配合割合は、特に制限されないが、例えば、イソシアネート化合物100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、3質量部以下、好ましくは、2質量部以下、より好ましくは、0.3質量部以下、さらに好ましくは、0.2質量部以下である。
そして、上記のようにイソシアネート化合物とブロック剤とを反応させることにより、イソシアネート化合物(具体的には、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート)のイソシアネート基が、ブロック剤によってブロックされ、ブロックイソシアネートが得られる。
また、このようなブロックイソシアネートは、例えば、上記の溶剤に溶解された溶液として用いることもできる。
ブロックイソシアネートを溶剤に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
このようなブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされている。そのため、貯蔵安定性に優れるコーティング剤(後述)を得ることができる。
また、イソシアネート化合物では、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含有し、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートは、アルコール類により変性されている。そのため、耐候性および相溶性に優れるコーティング剤(後述)を得ることができる。
本発明のコーティング剤は、上記のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール成分を含む主剤とを含有する。このコーティング剤は、例えば、上記のブロックイソシアネートからなる硬化剤と、ポリオール成分からなる主剤とを、それぞれ個別に調製し、それらを配合することにより得られる。
硬化剤は、上記のブロックイソシアネートとともに、他のブロックイソシアネートを含むこともできる。
他のブロックイソシアネートとしては、例えば、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネートまたはその誘導体のブロックイソシアネート、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)などの脂環族ジイソシアネートまたはその誘導体のブロックイソシアネート、例えば、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソシアネートまたはその誘導体のブロックイソシアネートなどが挙げられる。
誘導体としては、例えば、イソシアヌレート誘導体、アロファネート誘導体、ビウレット誘導体、ウレトジオン誘導体、3価以上のアルコール類とのアルコール変性体(アダクト体)などが挙げられる。
他のブロックイソシアネートの配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
ポリオール成分は、マクロポリオールを含んでいる。つまり、主剤は、マクロポリオールを含んでいる。
マクロポリオールは、水酸基を2つ以上有する、数平均分子量が、300以上、好ましくは、400以上、さらに好ましくは、500以上、通常、20000以下、好ましくは、10000以下の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレン(炭素数(C)2〜3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
マクロポリオールの水酸基価は、例えば、50mgKOH/g以上であり、また、例えば、500mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下、より好ましくは、180mgKOH/g以下、さらに好ましくは、150mgKOH/g以下、とりわけ好ましくは、100mgKOH/g以下である。
マクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
マクロポリオールとして、好ましくは、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールが挙げられる。
また、ポリオール成分は、低分子量ポリオールを含むこともできる。
低分子量ポリオールとしては、上記のアルコール類が挙げられ、好ましくは、多価アルコール、より好ましくは、2〜8価アルコール、さらに好ましくは、2価アルコール、3価アルコール、とりわけ好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
低分子量ポリオールの配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
ポリオール成分は、好ましくは、マクロポリオールからなる。
なお、ポリオール成分の使用形態は、特に制限されず、ポリオール成分をそのまま使用してもよく、また、ポリオール成分を上記の有機溶媒に溶解させたポリオール成分溶液を使用してもよい。
ポリオール成分を、ポリオール成分溶液として使用する場合、有機溶媒として、好ましくは、酢酸ブチル、シクロヘキサンが挙げられる。
また、ポリオール成分の有効成分濃度(ポリオール成分の含有割合)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
ブロックイソシアネートを含む硬化剤と、マクロポリオールを含む主剤との配合割合は、例えば、マクロポリオールの水酸基に対するブロックイソシアネートのイソシアネート基(ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基)の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上、さらに好ましくは、0.3以上、とりわけ好ましくは、0.9以上、例えば、5以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、1.1以下となる割合である。
そして、このようなコーティング剤は、その使用時において、ブロックイソシアネートからブロック剤を、例えば、加熱することにより、解離させる。
解離条件は、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤が解離する条件であれば、特に制限されないが、具体的には、解離温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、160℃以下である。
ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオール化合物の水酸基との加熱条件下における反応時間は、例えば、10分以上、好ましくは、20分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
これにより、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤を解離させるとともに、ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、マクロポリオールの水酸基とを反応させ、コーティング剤を硬化させることができる。
また、硬化反応は、室温(20〜30℃)で熟成させることによっても進行することもできる。
なお、上記した説明では、コーティング剤の使用時において、ブロックイソシアネートからブロック剤を解離させコーティング剤を硬化させたが、ブロック剤の種類によっては、ブロック剤とマクロポリオールの水酸基とを反応させ、コーティング剤を硬化させることもできる。
また、このようなコーティング剤は、例えば、溶媒に溶解させて用いることができる。
溶媒としては、上記の有機溶媒が挙げられ、好ましくは、酢酸エチルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
コーティング剤(主剤および硬化剤)を溶媒に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
また、コーティング剤は、必要に応じて、さらに、上記の酸性化合物、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、触媒、塗工性改良剤、レベリング剤、核剤、滑剤、離型剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、顔料分散剤、染料、有機または無機微粒子、防黴剤、難燃剤、密着改良剤、つや消し剤などの添加剤を含有することができる。
なお、これら添加剤の添加のタイミングは、特に制限されず、上記の各成分(ブロックイソシアネート、マクロポリオールなど)に予め添加してもよく、また、上記の各成分の混合時に同時に添加してもよく、さらに、上記の各成分の混合後に、別途添加してもよい。
このようなコーティング剤は、上記のブロックイソシアネートを含有するため、耐候性および相溶性に優れる硬化膜(後述)を得ることができる。
そして、コーティング剤から硬化膜を得る方法としては、例えば、コーティング剤を基材に塗布し、上記の条件で、硬化反応させる。
基材としては、特に制限されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂などの(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
コーティング剤を基材に塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法などによる塗布、例えば、バーコーター、アプリケーターなどを用いたキャスティングなどが挙げられる。
これにより、硬化膜が得られる。
また、必要により、硬化膜を、20℃以上300℃以下にて1分間以上30日間以下養生することもできる。
そして、得られた硬化膜は、上記のブロックイソシアネートを含有するため、耐候性および相溶性に優れる。
このように、上記のブロックイソシアネートは、コーティング剤として好適に用いられる。
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
1.成分の詳細
各実施例、各比較例および各参考例で用いた各成分を以下に記載する。
タケネートD−110N:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン変性体、三井化学社製、固形分濃度75%、溶剤(酢酸エチル)
1,3−BG:1,3−ブチレングリコール
IBA:イソブタノール
TMP:トリメチロールプロパン
DMP:3,5−ジメチルピラゾール
MEKO:メチルエチルケトンオキシム
Q−166:アクリルポリオール、オレスターQ−166(商品名、三井化学社製)の溶剤置換品、溶剤(酢酸ブチル、シクロヘキサン)、水酸基価(固形分)60mgKOH/g、水酸基価(溶剤中)29mgKOH/g、固形分濃度40%
Q−750:アクリルポリオール、オレスターQ−750(商品名)、三井化学社製、溶剤(酢酸ブチル、シクロヘキサン)、水酸基価(固形分)200mgKOH/g、水酸基価(溶剤中)80mgKOH/g、固形分濃度40%
LNB−800:ポリエステルポリオール、タケラックLNB−800(商品名)、水酸基価(固形分)138mgKOH/g、三井化学社製、固形分濃度100%
U−26:ポリエステルポリオール、タケラックU−26(商品名、三井化学社製)の溶剤置換品、溶剤(酢酸ブチル、シクロヘキサン)、水酸基価(固形分)162mgKOH/g、水酸基価(溶剤中)114mgKOH/g、固形分濃度70%
2.ブロックイソシアネートの製造
実施例1
1,3−キシリレンジイソシアネート(m−XDI、三井化学社製)に塩化水素を添加して、酸度(JIS K−1603−2:2007に準拠)を50ppmに調整した。
温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入管が装置された反応器に、窒素雰囲気下、上記した1,3−キシリレンジイソシアネート 100質量部と、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、商品名:イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製)0.021質量部(0.02phr)とを仕込み、60℃〜65℃において混合した。
次いで、その混合物に、1,3−ブチレングリコール 7質量部を、70℃〜75℃において添加して混合し、ウレタン化反応させた。
次いで、得られたウレタン反応液に、テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイド(イソシアヌレート化触媒、TBAOH(37%メタノール溶液))のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度3.7質量%)を添加した。添加量は、ウレタン反応液に対して、TBAOH(37%メタノール溶液)が0.11質量部(有効成分として0.04質量部)となるように、調整した。
次いで、ウレタン反応液を混合しながら、70℃〜75℃において、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート転化率が20%に到達するまで、1,3−キシリレンジイソシアネートをイソシアヌレート化反応させた。
次いで、得られたイソシアヌレート反応液に、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA、触媒失活剤)のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶液(有効成分濃度50質量%)を添加し、イソシアヌレート化反応を停止させた。添加量は、DDBSAが0.054質量部(DDBSAの添加割合が、イソシアヌレート反応液に対して500ppm)となるように、調整した。
次いで、得られたイソシアヌレート反応液を、さらに、70〜75℃で30分撹拌した。次いで、酸度を調整するため、予め調製した高酸度(酸度2400ppm)のキシリレンジイソシアネート組成物を、イソシアヌレート反応液に2.66質量部添加し、30分撹拌した後、50℃以下まで冷却した。
次いで、得られたイソシアヌレート反応液を薄膜蒸留(圧力:60PaA以下、温度:160℃、フィード量:5g/時間)して、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレートを含有する分離液と、未反応のキシリレンジイソシアネートを含有する回収液とを、それぞれ分離した。
そして、得られた分離液には、酢酸エチルを添加して固形分濃度を75質量%に調整し、耐熱安定剤として、パラトルエンスルホンアミド0.04質量部を添加した。
これにより、1,3−ブチレングリコールによって変性された1,3−キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート(アルコール変性量7質量部、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート転化率20%)を得た。
なお、イソシアヌレート転化率は、以下の方法により算出した。
具体的には、ウレタン反応液およびイソシアヌレート反応液のイソシアネート基濃度を、JIS K−1556(2006年)のn−ジブチルアミン法に準拠してそれぞれ測定した。
次いで、ウレタン反応液のイソシアネート基濃度に対する、イソシアヌレート反応液のイソシアネート基濃度の減少率を算出することにより、イソシアヌレート転化率を求めた。
次いで、この1,3−キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート 100質量部にDMP 44.4質量部(ブロック剤/イソシアネート基=1.02(mol/mol))でブロック剤を添加し、40〜60℃、1〜2時間で反応させ、アミン当量が20,000以上となったところで反応を停止し、その後、固形分濃度70%になるように酢酸エチルを添加した。
実施例2〜実施例44、比較例1〜比較例4、参考例1〜参考例8
配合処方を、表1〜表4の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、ブロックイソシアネートを得た。
3.硬化膜の製造
実施例1のブロックイソシアネートとQ−166とを、当量比1.0(NCO/OH=1.0)で混合し、固形分濃度50%になるようにイソプロピルアルコールを添加し、23℃、5分間混合し、次いで、10分間超音波処理することにより、脱泡して、コーティング剤を得た。
得られたコーティング剤を、4milのアプリケーターによって、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)および鋼板(SPCC鋼板、PBN−144処理品)に塗工し、150℃のオーブンで30分加熱し、硬化膜を得た。
実施例2〜実施例44、比較例1〜比較例4、参考例1〜参考例8
配合処方を、表1〜表4の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、硬化膜を得た。
4.評価
(相溶性)
各実施例、各比較例および各参考例のPMMAに塗布した硬化膜について、ヘイズメーター(日本電色工業社製 NDH2000)を用いて、ヘイズを測定した。
相溶性について、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1〜表4に示す。
評価基準:
◎:0.5未満
○:0.5以上1未満。
△:1以上20未満
×:20以上
(耐候性)
促進耐候性試験機(紫外線蛍光灯ウェザーメーター FUV、スガ試験機社製)を用い、各実施例、各比較例および各参考例のPMMAに塗布した硬化膜を、昼間(60℃×相対湿度10%×4時間×光照射)、夜間(50℃×相対湿度95%×4時間×光照射なし)のサイクルで125回処理した。処理前後の硬化膜を色差計(日本電色工業社製、SE2000)にて評価し、処理前後の色差(ΔE)を算出した。また、光沢度を光沢度計(日本電色工業社製、VG2000)にて評価し、初期の光沢度を100としたときの光沢保持率(1000時間後)を算出した。
色差について、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1〜表4に示す。
評価基準:
◎:5未満
○:5以上10未満。
△:10以上15未満
×:15以上または白化
また、光沢度について、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1〜表4に示す。
評価基準:
◎:95%以上
○:90%以上95%未満。
△:50%以上90%未満
×:50%未満または白化
(鉛筆硬度)
各実施例、各比較例および各参考例の鋼板に塗布した硬化膜について、JIS K 5600−5−4(荷重は、1000g)に準拠して、硬化膜が破壊しない硬度を評価した。その結果を表1〜表4に示す。