JP2019209593A - 樹脂製成形物 - Google Patents

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淳 関口
朋季 西野
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Abstract

【課題】油性成分の付着を防止する新規な樹脂製成形物、シート、およびチューブを提供する。【解決手段】凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造を表面に有し、凸凹構造の凹部に水が保持されて水膜12を形成することで、表面への油性成分11の付着を防止できる樹脂製成形物、シートおよびチューブが得られる。【選択図】図1

Description

本発明は、表面への油性成分の付着を防止する樹脂成形物、特にはシートおよび内側表面への油性成分の付着を防止する樹脂製チューブに関する。本発明の樹脂製成形物は、成形物表面への油性物質の付着を防止する。特には本発明の樹脂製シートおよびチューブは、シート表面またはチューブの内側表面および/または外側表面への油性物質の付着を防止する。
ポリオレフィンなどの合成樹脂製のシートは油性成分との親和性を有することが多く、油性の汚れが付着しやすい。特に水中で使用する場合には油性成分が付着しやすくなり、その除去が困難となる。さらに油性成分を含む流体を輸送するチューブにおいては、内側表面に付着した油性成分が詰まりを発生されることがあった。
また体内留置ステントの1種である使用される胆道ステントとしてはメタリックステントとチューブステントが知られているが、ほとんどの胆道ステント留置術では、チューブステントが使われている。チューブステントは樹脂(ポリエチレン・ポリプロピレン)で出来ておりステント内壁は、なめらかな表面をしている。このようなステント内をコレステロールなどの油分を含む胆汁が流れるとき、しばしば、ステント内壁に付着し、ゲル化して胆固まって管が詰まってしまった。管が詰まるとその都度、胆道ステントを交換しなければならないが、頻回のステント交換処置は患者に大きな負担をかけることになる。したがって、油分による詰まりを防止できるステントに対する要望があった。
本発明者らは、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、油性成分の付着を防止する新規な樹脂成形物、シート、およびチューブを開発した。
本発明は、凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造を表面に有する樹脂製物品を提供する。本発明はさらに、凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造を内側表面に有する樹脂製チューブも提供する。
本発明において、凸部間の距離とは、凹部分を隔てて存在する凸部分の頂点または中心間の距離をいう。凸部間の距離は10nmから500nmであることが好ましく、より好ましくは50−200nm、最も好ましくは100−200nmである。また同様に凸部分を隔てて存在する凹部分の最深部または中心間の距離も、10nmから500nmであることが好ましく、より好ましくは50−200nm、最も好ましくは100−200nmである。凸部分の頂点と凹部分の底部との距離は特に規定するものではないが、一般的には50−200nm、好ましくは100−200nm、より好ましくは150−200nmである。
本発明において樹脂成形物とは、樹脂を成形して得られた任意の形状の成形物をいう。その表面の全部または一部に凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造を有することができる。金型や成型器具を適宜調整することにより肉厚の構造物や、種々の3次元形状を有する構造物の表面に凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造を形成することができる。成形物がシートの場合には、各種の油汚れ防止シートとして使用する事ができる。特には水中での油汚れを防止するためのシートとして有用に使用できる。なお、本発明のシートを接着などにより樹脂などの構造物の表面に取り付け、成形物とすることもできる。
本発明の成形物がチューブである場合、油分を含む液体の輸送に好適に使用する事ができる。また水中に敷設された場合にはチューブの外側への油汚れの付着を防止することができる。
さらに本発明のチューブは動物および人間の体内で使用されることができ、たとえば体内留置チューブ、栄養補給チューブ、および点滴チューブのような医療用チューブ、胆管ステントのような各種ステント、カテーテル、人工血管などの医療用途において好適に使用することができる。
以下においてシートおよびチューブの場合に関して本発明を説明するが、本発明の要点は凸凹構造の凹部に水を保持する事により油性成分の付着を防止することにあり、以下の説明は各種の成形物にも同様に適用されるものである。
凸凹構造としては、様々な態様のものが使用でき、たとえば以下の構造であることができる。
1) ランダムの位置に形成された凸部を有する構造。
2) ナノポーラス構造。
3) 半径に比較して深さが浅いクレーター状の形状。
4) 独立した凸部が配置されたエンボス状の構造。
5) 複数の縞状の凸部とその間の凹部を有する構造。
6) 矩形の凹部とそれを取り囲む凸部を有する略碁盤の目構造。
図1はナノ親水効果のメカニズムを説明する図である。 図2は、ナノインプリント法の説明図である。 図3は、水中でのSi基板への油滴の接触状態を示す写真である。 図4は、実施例1で得られた成型用基板表面の顕微鏡写真である。 図5は、図4に示された基板への油滴の接触状態を示す写真である。 図6は、実施例1でのナノインプリント法の模式図と得られたポリエチレン基板表面の顕微鏡写真である。 図7は、実施例1で得られたポリエチレン基板表面への油滴の接触状態を示す写真である。 図8は、無成型ポリエチレン基板表面の顕微鏡写真である。 図9は、無成型ポリエチレン基板表面への油滴の接触状態を示す写真である。 図10は、シートからチューブを製造する方法の例を示す図である。 図11は、実施例3の結果を示す図である。 図12は、実施例4の結果を示す図である。 図13は、実施例5の結果を示す図である。 図14は、ステンレス基板表面のSEM写真である。 図15は、実施例6で得られたサンプルの表面のSEM写真である。 図16は、実施例6で得られたサンプルの表面への油滴の接触状態を示す写真である。 図17は、実施例6で得られたサンプルの表面の、レーザー顕微鏡により得られた表面の写真である。 図18は、表面の凹凸が測定された直線を示す図である。 図19は、測定された表面の凹凸の結果を示す。 図20は、実施例6で得られたサンプルの日立ハイテック社製AFM5300Eにより表面粗さを測定した結果と測定された表面のSEM写真を示す。 図21は、実施例7で得られたサンプルの日立ハイテック社製AFM5300Eにより表面粗さを測定した結果と測定された表面のSEM写真を示す。 図22は、実施例8で得られたサンプルの断面の電子顕微鏡写真である。 図23は、実施例9で得られたサンプルのAFMによる写真である。
理論により拘束されるものではないが、本発明の成形物表面への油性成分の付着が防止されるメカニズムを図1に示す。凸凹構造10は約200nmの間隔で凸部および凹部を有している。この凸凹構造の凹部に水が保持されて水膜12を形成する。形成された水膜がタンパク質などを含む油性成分11をはじくため、油性成分の付着が防止されると考えられている。したがって、本発明にかかる成形物が油性成分の付着を防止するためには、成形物表面の凸凹構造の凹部をほぼ満たす量の水が存在していることが必要である。この構造を超ナノ親水構造と呼ぶ。図1から理解されるように、凹部の間隔は油滴の大きさよりも十分に小さく、凹部間に油滴が入り込むのを防ぐことができるような間隔であることが必要とされる。なお、凸部間または凹部間の距離が大きすぎると、凸凹構造がない場合に近づき本発明の効果が得られない。また凸部間または凹部間の距離が短すぎると加工が困難になり、コストパフォーマンスが悪くなり現実的ではなくなる。
本発明の成形物がチューブの場合には、その内側表面および/または外側表面に凸凹構造を形成することができる。内側表面に凸凹構造を形成した場合には、輸液される流体内の油性成分の付着を防止し、チューブの詰まりを防止することができる。また外側表面に凸凹構造を形成した場合には、油性成分を含む環境中に敷設した場合の外側表面の汚染を防止することができる。
本発明の成形物は、水溶性ではない任意の合成または天然の樹脂で作ることができる。好ましくは熱可塑性プラスチック、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、およびポリカーボネートなどのほとんどの工業用プラスチックを使用することができ、また、HSQ(Hydrogen silsequioxane)、PDMS(ポリジメチルシロキサン:polydimethylsiloxane)などのSi系樹脂を使用することもできる。また光硬化性樹脂を使用することもできる。光硬化性樹脂は、エポキシ系、ウレタン系などのベース樹脂に、光重合開始剤、ラジカル発生剤を混合した樹脂溶液であり、光硬化前後での体積変化が小さく、粘度の低い材料が望ましい。
一般に凸凹構造は表面の全体にわたり形成されるが、用途によって必要な部分のみに凸凹構造を提供することができる。
本発明の成形物は、熱インプリント法により作成することができる。すなわち、希望の形状に成形した型を、ガラス転移温度(Tg)より高い温度に加熱された熱可塑性樹脂に押付け、金型の表面形状を樹脂に転写した後、型の温度を樹脂のガラス転移温度より低い温度に下げ、樹脂が十分に硬くなった後に離型することにより、型の表面の反転形状の表面を有する樹脂成形物を得ることができる。
図2にナノインプリント法の手順を示す。
1)金型と樹脂を配置する。
2)金型を、Tg(ガラス転移点温度)より高い温度に加温して柔らかくなった樹脂に押し付ける。
3)Tgより温度を下げ、樹脂が固くなった状態で金型を離型する。
4)金型の反転構造が転写された樹脂を得る。
型を光透過性の物質で形成すると、光硬化性樹脂を使用することもできる。すなわち、光硬化性樹脂の上に型を配置し、型の上から紫外線を照射して樹脂を硬化することにより、型の反転構造を有するシートを形成することもできる。
熱インプリント法で使用される型は、任意の公知の方法で作成することができる。上記の1)−6)の構造の反転した構造を金属またはガラスなどの表面に形成することにより作成される。
またたとえば上記の1)、および3)−6)の構造の反転構造は、ドライエッチング技術を用いてブラックSiを作る方法、またはアルミ基板の陽極酸化によりポーラス構造を作る方法を使用することができる。また、Si基板や金属製の基板に公知の方法により所望のパターンを形成して型とすることもできる。
上記の2)のナノポーラス構造の反転構造は、それ自体がナノポーラス構造であることができる。本明細書においてナノポーラス構造は、非常に細かな孔を有する構造をいい、たとえば無機物質微粒子の集合体であって、粒子の間にナノメートル単位の連続した空隙が形成された構造をいう。熱インプリント法で使用されるナノポーラス構造の型は、微粒子無機物質を樹脂バインダーに分散し、基体表面に塗布した後、加熱して樹脂バインダーを分解除去することによっても作成することができる。微粒子無機物質および基体は樹脂バインダーの加熱による分解除去の際に分解または溶融しないことが必要である。加熱温度は一般に600−1200℃、好ましくは800−1000℃であり、典型的には約800℃である。
前記の基体としては、樹脂バインダーを加熱により分解除去する際に溶融または分解しない任意の物質、好適には金属およびガラスなどの耐熱性物質を使用する事ができる。金属としては、たとえばステンレス、鉄、Cu、Ni、チタン合金、アルミニウム、Siなどを使用する事ができる。また、ガラスなどの各種セラミックスも使用できる。本明細書においては、樹脂バインダーを分解除去する際に溶融または分解しない物質を「耐熱性物質」と呼ぶ。
微粒子無機物質としては、樹脂バインダーを分解除去する際に溶融、分解しない任意の物質を使用することができる。たとえば、(1)シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等の金属酸化物、(2)フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等のフッ化物、(3)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩、(4)硫化鉄、硫化マグネシウム、硫化亜鉛等の硫化物、(5)窒化マグネシウム、窒化炭素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒化物等が挙げられる。好ましくはZrO、およびHfOを使用する事ができる。微粒子無機物質は使用する樹脂バインダー内に良好に分散されることが好ましい。微粒子無機物質は表面処理されることができ、たとえば界面活性剤またはシランカップリング剤などで表面処理されることができる。
微粒子無機物質の粒径は、約50−100nm、好ましくは100−200nmである。微粒子無機物質は、2以上の異なる物質の微粒子を混合使用する事ができる。また2以上の粒径の異なる粒子を混合使用する事もできる。
樹脂バインダーとしては、加熱により分解除去することができる任意の樹脂が使用できる。使用する微粒子無機物質を分散する能力や、塗布する際に好適な粘度が得られるように、適宜選択することができる。一般的には熱可塑性樹脂が使用されるが、光、放射線、水分、および/または熱により硬化される硬化性樹脂を使用することもできる。たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、グリセリン、ポリヒドロキシスチレン、メチルメタクリル酸、水溶性アクリル酸系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが使用でき、好ましくは、ポリビニルアルコール、グリセリン、ポリヒドロキシスチレン、メチルメタクリル酸、水溶性アクリル酸系樹脂が使用され、さらに好ましくはポリビニルアルコールまたはグリセリンが使用される。
樹脂バインダーの量は、微粒子無機物質に対して10−90重量%、好ましくは20−80重量%、より好ましくは40−60重量%である。また必要に応じてシランカツプリング剤などの分散剤を使用することができる。
上記の製造方法から理解されるように、基体表面上には、分解除去された樹脂バインダーが占めていた空間が間隙として存在する微粒子無機物質の層が形成される。樹脂バインダーが占めていた空間は本質的には非常に小さな径の通路のような連続した空間として残る。したがって、形成された微粒子無機物質の層は、内部に非常小さな連続した空隙を有するナノポーラス構造が形成される。
微粒子無機物質粉末は凝集しており、数ミクロンの塊になっているため、これを細かく分散して1次粒子にばらばらにして分散させることがナノポーラス構造を作成するために重要である。この分散操作がうまくいかないと、微粒子無機物質粉末が塗布液中で「だま」になってしまい、良好なナノポーラス構造を作ることができない。凝集塊がばらばらにされた後に、真空ろ過機などの濾過器により、たとえばメッシュ10ミクロンのフィルターを使用して濾過を行う事により凝集塊をさらに砕くことができ、または凝集したままの粒子を除去することができる。
チューブは熱インプリント法により得られた、表面に凸凹構造を有するシートを熱融着などの方法により接合して作成することができる。
チューブの内側表面に凸凹構造を形成する場合には、凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造の反転構造を表面に有する棒状の型を形成する工程、該棒状の型よりも大きな直径を有する円筒状の型の中心に前記棒状の型を配置する工程、および前記棒状の型と円筒状の型の間に樹脂を射出する工程を含む方法により製造することもできる。
またチューブの外側表面に凸凹構造を形成する場合には、凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造の反転構造を内側表面に有する円筒状の型を形成する工程、該円筒状の型よりも小さな直径を有する棒状の型を該円筒状の型の中心に配置する工程、および前記棒状の型と円筒状の型の間に樹脂を射出することを含む方法により製造することもできる。
さらに内側表面と外側表面の両方に凸凹構造を有するチューブを製造する場合には、凸凹構造の反転構造を表面に有する棒状の型と凸凹構造の反転構造を内側表面に有する円筒状の型の両方を使用して作成することができる。
参考例1
構造体がナノ親水効果を有するかどうかを評価するために、新たに水中油滴接触角測定装置を開発した。
水中油滴接触角測定装置においては、水中に被測定物を置き、ナノシリンジの先から油滴を被測定物に接触させて、油滴が被測定物に付着するかどうかを、CCDカメラの画像により評価した。Si基板に対する評価結果を図3に示す。Si基板31を水32の中に保持した。ナノシリンジの先から排出された油滴33をSi基板に接触させたところ、油滴はSi基板にくっつき(34)、平坦なSi基板はナノ親水効果を有しないことが示された。Si基板への油滴の接触角は73度であった。油としてなたね油を使用した。
実施例1
SiOのナノ粒子(日産化学製、スノーテックス30、粒径10−15nm)を、PGMEA(プロピレングリコール モノメチル エーテル アセテート)溶剤中に分散して、ケイ酸リチウムを無機バインダーとして加え(重量比で1:1)、基板にスピン塗布した。膜厚は約1ミクロンであった。その後、真空中で24時間乾燥、次いで100度で60分ベークして、高温ベーク炉において、600〜1000℃で、1時間、焼成してナノポーラス構造を作った。得られた基板表面の顕微鏡写真を図4に示す。非常に微細な凸凹構造が得られたことが示された。得られた基板表面に水中で油滴を近づけ、接触後、シリンジ針を回避させて測定した結果を図5に示す。基板に油滴を接触させた(51)が油滴は基板に付着しなかった(52)。この状態が超ナノ親水効果を示しており、撥油(防汚機能)があったことを証明している。
実施例2
防汚構造を持つナノポーラス構造の樹脂への転写
超ナノ親水効果を有する構造体を金型として樹脂に転写して、樹脂が防汚機能を有しているかどうか検証した。実施例1で得られた超ナノ親水効果を有するナノポーラス構造体を、樹脂に転写した。樹脂としてはポリエチレンを使用した。転写方法は、熱ナノインプリントによった。
樹脂としてポリエチレンを使用して得られたポリエチレンシートの表面の顕微鏡写真を図6に示す。
得られたポリエチレン樹脂の防汚機能を確認した。結果を図7に示す。基板に油滴を接触させた(71)が油滴は基板に付着しなかった(72)。水中で油を弾き、防汚機能を有していることがわかった。
比較例
比較例として、平坦なポリエチレンの防汚効果を調べたところ、防汚機能を有していないことがわかった。ポリエチレン表面の顕微鏡写真を図8に、結果を図9に示す。基板に油滴を接触させた(91)ところ、油滴は基板に付着した(92)。
実施例3
胆管ステントを製造し、性能評価した。
胆管ステントの製造方法:
シリコーンゴムを使用して実施例2と同様の操作により、実施例1で得られた超ナノ親水効果を有するナノポーラス構造体を、樹脂に転写してシートを形成した(図10の左端が形成されたシートを示す)。得られたシートをカットしてシャフトに巻きつけ円筒形状にした(図10の真ん中に巻き付けた状態を示す)。得られたチューブを「ナノ親水構造を有するチューブ」と呼ぶ。さらに同じシリコーンゴムを用いて、図10の右端に示すようにしてチューブを覆った。その後再成形融着工法により一本のチューブとした。ナノ親水構造を有するチューブの部分を拡大してみると、ナノ構造体の特色である「干渉色で虹色に輝く」現象が確認できた。
胆管ステントの評価方法:
水9:ラード1を混ぜ、食品用の着色剤で赤色を付け、40℃に加温した。分散されたラードの粒子径は0.1から2mm程度だった。本液をステントに流して、ナノ親水構造を有するチューブ部分の通液の様子を観察した。図11に通液テスト結果を示す。図11Aの真ん中の点線より左側はナノ親水構造を有しないチューブ部分であり、右側はナノ親水構造を有するチューブ部分である。図11Aは通液前のチューブの状態を示す。図11Bは通液中のチューブの状態を示し、図11Cは通液後のチューブの状態を示す。ナノ親水構造を有しないチューブ部分では油分が付着していたのに対し、ナノ親水構造を有するチューブ部分では油をはじいて油分が残っていなかった。
実施例4
実施例3で得られたチューブに 胆汁9:ラード1を混ぜ、食品用の着色剤で赤色を付け、40℃に加温した。なお、胆汁として乾燥胆汁(牛胆汁)を使用した。本液をステントに流して、ナノ親水構造を有するチューブ部分の通液の様子を観察した。図12に通液テスト結果を示す。図12Aの真ん中の点線より左側はナノ親水構造を有しないチューブ部分であり、右側はナノ親水構造を有するチューブ部分である。図12Aは通液中のチューブの状態を示す。図12Bは通液後のチューブの状態を示し、図12Cは通液後に水を通液した後のチューブの状態を示す。ナノ親水構造を有しないチューブ部分では油分が付着していたのに対し、ナノ親水構造を有するチューブ部分では油をはじいて油分が残っていなかった。
実施例5
実施例3で得られたチューブに 人工血液9:ラード1を混ぜ、食品用の着色剤で赤色を付け、40℃に加温した。なお、人工血液としてLaerc社のBLOOD−COLORED CONCENTRATEを使用した。本液をステントに流して、ナノ親水構造を有するチューブ部分の通液の様子を観察した。図13に通液テスト結果を示す。図13Aの真ん中の点線より左側はナノ親水構造を有しないチューブ部分であり、右側はナノ親水構造を有するチューブ部分である。図13Aは通液後のチューブの状態を示し、図13Bは通液後に水を通液した後のチューブの状態を示す。ナノ親水構造を有しないチューブ部分では油分が付着していたのに対し、ナノ親水構造を有するチューブ部分では油をはじいて油分が残っていなかった。
実施例6
微粒子無機物質としてZrOナノパーティクル(東ソー製、ジルコニア粉末、TZ−8Y−E:直径100nm)を使用した。
樹脂バインダーとして、ポリビニルアルコール(PVA)を使用した。
以下の材料を使用して、以下の手順により複合材料を作成した。
材料
A:TZ−8Y−E 25g
B:純水 60g
C:分散剤 A6270 1.25g (東亜合成(株)水溶性アクリル酸系分散剤 アロンシリーズ)
D:YTZビーズ:東ソー(株) 直径30μm
作成手順
1) A,B,Cを混ぜた。
2) 次に、YTZビーズ(Zr製)を361g(容量で90ml)を入れ、さらに純水25gを加え、よく混ぜた。
3) 混合分散後、真空ろ過機を用いてメッシュ10ミクロンのフィルターを通し、ZrOナノパーティクルが分散した液体を得た。得られた液体をステンレス基板上にスピン塗布した。
4)100℃で1時間乾燥した後、電気炉に入れ、100℃/時で昇温し、200℃で3時間保持した後、さらに100℃/時で昇温し、800℃にした。800℃で4時間保持した後、1晩放冷し、複合材料を得た。
ステンレス基板表面のSEM写真を図14に示す。また実施例1で得られた、基板表面に形成されたナノポーラス構造の、倍率の異なる3枚のSEM写真を図15に示す。ステンレス基板表面は研磨による細かな凸凹に覆われているのに対し、本発明の複合材料の表面には、ナノポーラス構造が形成されていた。
参考例1に記載した装置を用いてナノ親水効果を測定した。結果を図16に示す。油は複合材料表面に付着せず、得られた型の表面が、水中撥油性を有することが示された。
レーザー顕微鏡により得られたナノポーラス構造の観察を行った。表面の写真を図17に示す。粒子サイズは約100nmであった。
また図18にA−Aで示される直線において、表面の凹凸を調べた。測定結果を図19に示す。凸部間の距離が447.6nm、凸部の最高点と凹部の最低点との間の距離が854.4nmである構造と、凸部間の距離が180.1nm、凸部の最高点と凹部の最低点との間の距離が33.2nmである構造が観察された。
また日立ハイテック社製AFM5300Eにより表面粗さを測定した。結果を図20に示す。Raは平均面粗さ、P−Vは最大高低差、RMSは二乗平均面粗さ、Sは表面積、SRatioは表面積率、RZは表面粗さパラメータのn点平均粗さ、Zdttaは任意の点のzデータを示す。
実施例7
シリコーンゴムを使用して、実施例6で得られた超ナノ親水効果を有するナノポーラス構造体を、樹脂に転写してシートを形成した。シートの表面の写真、および日立ハイテック社製AFM5300Eによる表面粗さの測定結果を図21に示す。
転写されたシートにおいても微細な凹凸構造が得られたことが示された。
実施例8
ガラス基板を使用して、実施例6と同様の操作を行った。得られた複合材料の断面の、倍率の異なる3枚のSEM写真を図22に示す。ガラス基体の表面にナノポーラス構造が形成されたことが示された。
実施例9
実施例8と同様にしてナノポーラス構造体を作成した。さらに得られたナノポーラス構造体を使用し、東洋合成工業(株)製のアクリル樹脂PAK−01をPET(ポリエチレンテレフタレート)樹基体上に塗布し、インプリント成形した。構造体を樹脂に押し付け、UV照射して樹脂を硬化させた後、脱型した。AFMによる表面イメージを図23に示す。
両者ともに、ナノポーラス構造が形成されていることが示された。

Claims (7)

  1. 凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造を表面に有し、該凸凹構造が凹部に水を保持できる構造である、樹脂製成形物。
  2. 凹部間の距離が10nmから500nmである、請求項1記載の成形物。
  3. シートまたはチューブである、請求項1または2記載の成形物。
  4. 凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造を外側表面に有し、該凸凹構造が凹部に水を保持できる構造である、樹脂製チューブ。
  5. 体内留置ステントである、請求項3記載のチューブ。
  6. 凸部間の距離が10nmから500nmである凸凹構造の反転構造を表面に有する平面状の型を形成する工程、およびナノインプリントにより前記表面の反転構造を有する樹脂製物品を形成する工程を含む、請求項1から3のいずれか1項記載の成形物の製造方法。
  7. 請求項1また2記載のシートを丸棒の周囲に巻き、シート端を融着させてチューブを形成する、チューブの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113289070A (zh) * 2021-07-27 2021-08-24 中南大学湘雅医院 一种具有纳米结构的胆道支架

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CN113289070A (zh) * 2021-07-27 2021-08-24 中南大学湘雅医院 一种具有纳米结构的胆道支架

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