以下に図面を参照して、電動工具、集塵機、および無線連動システムの実施の形態を詳細に説明する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、本実施例における電動工具と集塵機を含むシステム(以下、連動駆動システム)1000の構成例を示す概略斜視図である。図1に示すように、連動駆動システム1000は、集塵機1と電動工具2とが集塵用ホース4で接続され、電動工具2で発生した切屑等を、集塵機1により吸引することができるようになっている。また、集塵機1と電動工具2とは、電源ケーブル3により接続され、電動工具2は集塵機1からの電力供給が可能となっている。
図2は、集塵機1の正面図である。図3は、集塵機1の右側断面図である。図4は、集塵機1の上側断面図である。図4では、操作部30がヘッド部20から取り外され、その裏面である操作部30の内面側が示されている。集塵機1は、相互に分離可能なタンク部10とヘッド部20とを備える。ヘッド部20は、図1及び図2に示すように、取付機構としてのクランプ機構5によってタンク部10の上部に着脱可能に固定される。
タンク部10は、上部が開放された底付の筒状であり、集塵用ホース4を接続するためのホース取付口11を側面(前側の側面)に有する。タンク部10内には、吸引した粉塵をろ過するほぼ円錐台形状のフィルタ12が設けられる。フィルタ12は、タンク部10及びヘッド部20に上下から気密に挟持される。設置面上を転動可能な複数のキャスター13が、タンク部10の下部に取り付けられる。
ヘッド部20は、ヘッドハウジングの内側に、モータ23(第2のモータ)と、バッテリパック40と、コントローラ50と、無線通信ユニット60(第2の無線通信部)とを有する。モータ23は、その出力軸26が鉛直方向上下に延びるようにヘッド部20内に配設される。ヘッド部20の前側の側面は、タンク部10側(下側)に向かうに従い外側(前側)に向かう傾斜面に、操作部30が設けられている。
操作部30は、電源スイッチ31と、操作パネル32とを有する。電源スイッチ31は、集塵機1を駆動するためのスイッチである。操作パネル32は、集塵機1の駆動状態や集塵機1と電動工具2との間のペアリング状態等の集塵機1の状態に関する情報を表示する表示パネルである。
集塵機1において、モータ23を駆動すると、モータ冷却用ファン及び集塵ファンが回転駆動される。集塵ファンの回転により、タンク部10内が負圧になり、ホース取付口11に吸込み力が発生する。すると、粉塵は空気と共に、不図示のホースを介してホース取付口11からタンク部10内に吸い込まれる。その後、フィルタ12によって粉塵と空気は分離される。
バッテリパック40は、集塵機1の各部を駆動するための電力を供給するユニットである。バッテリパック40は、例えば、ヘッド部20のヘッドハウジングに設けられたバッテリパック取付部に対して着脱自在に装着可能である。
コントローラ50は、集塵機1の各部を制御するユニットである。コントローラ50は、電動工具2から受信した連動信号を読み取り、電動工具2の種類や、電動工具2の制御モード、電動工具2のモータ23の回転数や周波数等の電動工具2に関する情報を読み取り、読み取った当該情報に応じてDuty比を制御する。コントローラ50が行う具体的な制御については後述する。
無線通信ユニット60は、Wi−Fi通信やBluetooth(いずれも登録商標)通信等の無線通信規格に従って、電動工具2との間で所定の情報を送受信するユニットである。
図5は、無線通信ユニット60の構成例を示す図である。図5に示すように、無線通信ユニット60は、基板601と、送受信部602とを有する。基板601は、例えば、上記規格で無線通信を行うための通信モジュールが搭載されたチップである。送受信部602は、上記規格で定められた周波数帯の電波を送受信するためのアンテナである。無線通信ユニット60は、コントローラ50と信号線Cを介して電気的に接続されている。
図6、図7は、電動工具2の構成例を示す図である。図6、図7では、電動工具の一例として、コードレス丸のこ2aの例を示している。図6は、コードレス丸のこ2aの側断面図であり、図7は、コードレス丸のこ2aの正面視断面図である。
図6、図7に示すように、コードレス丸のこ2aは、ベース210を有している。ベース210は、例えば、アルミ等の金属製の略長方形の板材である。ベース210の底面は、被削材との摺動面である。コードレス丸のこ2aの本体は、後述のようにベース210に前後2箇所で連結され、ベース210に対して回動可能かつ左右に傾動可能である。コードレス丸のこ2aの本体は、ハンドル部220と、スイッチ230と、コントローラ240と、丸のこ刃250と、保護カバー260と、バッテリパック270と、無線通信ユニット280と、ブラシレスモータ290(第1のモータ)とを有している。
ブラシレスモータ290は、モータハウジングに内蔵され、先端工具である丸のこ刃250を回転駆動させる。ハンドル部220は、使用者がコードレス丸のこ2aを握るためのグリップである。ハンドル部220には、使用者がブラシレスモータ290の駆動を制御するためのスイッチ230が設けられる。
ハンドル部220の後端下部には、バッテリパック取付部が設けられ、当該バッテリパック取付部には、バッテリパック270(蓄電池)が着脱自在に装着される。バッテリパック270は、ブラシレスモータ290に駆動電力を供給するための電源である。保護カバー260は、例えば、樹脂製の部材から構成され、切断作業を行っていない状態では、丸のこ刃250の下半分(ベース1の底面から下方に突出した部分)を、前方の一部を除いて覆う。
コントローラ240は、コードレス丸のこ2aの各部の動作を制御する制御ユニットである。無線通信ユニット280は、Wi−Fi通信やBluetooth通信等の無線通信規格に従って、集塵機1との間で所定の情報を送受信するユニットである。無線通信ユニット280は、図5に示した無線通信ユニット60と同様の構成を採用することができる。
図1に示した連動駆動システム1000で用いられるコードレス丸のこ2aは、実際には、図8、図9に示すように、丸のこ刃250の回転方向下流側におけるダストカバー910の部分に、図1に示した集塵用ホース4を接続可能な筒状口部920を有する接続部が設けられている。
以上、図1に示した連動駆動システム1000で用いられる電動工具2として、コードレス丸のこを例示したが、例えば、ジグソー、グラインダ、ハンマドリル等の他の様々な電動工具2についても同様に適用することができる。
図10は、電動工具2の他の一例であるコードレスジグソー2bの側断面図である。図10に示すように、コードレスジグソー2bは、ベース310を有している。ベース310は、例えば、アルミ等の金属製の略長方形の板材である。ベース310の底面は、被削材との摺動面である。コードレスジグソー2bの本体は、ハウジング320と、スイッチ330と、コントローラ340と、ブレード350と、バッテリパック360と、無線通信ユニット370(第1の無線通信部)と、モータ380(第1のモータ)とを有している。
モータ380は、ハウジング320に内蔵され、先端工具であるブレード350を往復駆動させる。ハウジング320には、使用者がモータ380の駆動を制御するためのスイッチ330が設けられる。
ハウジング320の前端部には、バッテリパック取付部が設けられ、当該バッテリパック取付部には、バッテリパック360(蓄電池)が着脱自在に装着される。バッテリパック360は、モータ380に駆動電力を供給するための電源である。
コントローラ340は、コードレスジグソー2bの各部の動作を制御する制御ユニットである。無線通信ユニット370は、Wi−Fi通信やBluetooth通信等の無線通信規格に従って、集塵機1との間で所定の情報を送受信するユニットである。無線通信ユニット370は、図5に示した無線通信ユニット60と同様の構成を採用することができる。
図11は、電動工具2の他の一例であるコードレスグラインダ2cの側断面図である。図11に示すように、コードレスグラインダ2cは、先端工具として回転する砥石440を備えており、溶接部の表面を平坦にする研削作業などに用いられる。なお、先端工具として切断用の砥石を用いることで、切断作業を行うことも可能である。また、コードレスグラインダ2cは、ハウジング410(例えば、樹脂製の部材)を有している。
ハウジング410は、全体として略円筒形状を成しており、ハウジング410の内部には、駆動源としてのブラシレスモータ470(第1のモータ)が収容されている。ブラシレスモータ470は、ハウジング410の後端に着脱可能に装着されるバッテリパック450から電力供給を受ける。
また、ハウジング410内には、バッテリパック450とブラシレスモータ470との間における電気的接続をオンオフするスイッチ420が設けられる。砥石440は、ブラシレスモータ470によって回転駆動されるスピンドルに固定され、スピンドルと一体的に回転する。使用者が電源レバーを操作すると、バッテリパック450からブラシレスモータ470に電力が供給されてスピンドルが回転し、当該スピンドルに固定されている砥石440が回転する。
また、コードレスグラインダ2cは、ハウジング410内に、コントローラ430と、無線通信ユニット460(第1の無線通信部)とを有している。
コントローラ430は、コードレスグラインダ2cの各部の動作を制御する制御ユニットである。無線通信ユニット460は、Wi−Fi通信やBluetooth通信等の無線通信規格に従って、集塵機1との間で所定の情報を送受信するユニットである。無線通信ユニット460は、図5に示した無線通信ユニット60と同様の構成を採用することができる。
図12は、電動工具2の他の一例であるコードレスハンマドリル2dの側断面図である。図12に示すように、コードレスハンマドリル2dは、先端工具として被削材に対して回転・打撃を行うドリル刃540を備えている。コードレスハンマドリル2dは、ハウジング510(例えば、樹脂製の部材)を有している。
ハウジング510には、ブラシレスモータ570(第1のモータ)が設けられ、当該モータは、コードレスハンマドリル2dの駆動源として構成され、バッテリパック550から電力供給を受けることができるようになっている。また、ブラシレスモータ570は、スイッチ520に電気的に接続され、また、ハウジング510の後端に着脱可能に装着されるバッテリパック550から電力供給を受ける。
また、ハウジング510内には、バッテリパック550とブラシレスモータ570との間における電気的接続をオンオフするスイッチ520が設けられる。ドリル刃540は、ブラシレスモータ570によって回転駆動されるスピンドルに固定され、スピンドルと一体的に回転する。使用者が電源レバーを操作すると、バッテリパック550からブラシレスモータ570に電力が供給されてスピンドルが回転し、当該スピンドルに固定されているドリル刃540が回転・打撃を行う。
また、コードレスハンマドリル2dは、ハウジング510内に、コントローラ530と、無線通信ユニット560(第1の無線通信部)とを有している。
コントローラ530は、コードレスハンマドリル2dの各部の動作を制御する制御ユニットである。無線通信ユニット560は、Wi−Fi通信やBluetooth通信等の無線通信規格に従って、集塵機1との間で所定の情報を送受信するユニットである。無線通信ユニット560は、図5に示した無線通信ユニット60と同様の構成を採用することができる。
上述したように、連動駆動システム1000を構成する集塵機1および電動工具2では、以下に示すように、使用者が電動工具2のスイッチを押下すると、当該電動工具2のコントローラがこれを検知し、ブラシレスモータを駆動して電動工具2に設けられた先端工具を動作させる。このとき、電動工具2のコントローラは、電動工具2に接続された集塵機1との間で、無線通信ユニットを介してペアリング処理を実行する。以下に示すように、本システムでは、ペアリング処理を実行すると、集塵機1が、電動工具2の種類、あるいは電動工具2が駆動するモータの制御状態に応じて、Duty比(吸い込み力)を自動的に設定し、電動工具2との間で連動作業を行う。
図13は、電動工具2のコントローラが行うペアリング処理の処理手順を示すフローチャートである。ペアリング処理は、連動作業を行う際に、集塵機1と電動工具2とを互いに識別し、当該識別の結果に応じて集塵機1の駆動を制御するための処理である。図13では、電動工具2のスイッチがONされ、電動工具のコントローラが連動信号を集塵機1に送信したものとする。
上述したように、連動信号は、電動工具2と集塵機1との間で連動作業を行うための信号である。当該連動信号には、電動工具の種類を識別するための種類識別情報(例えば、電動工具の型番)と、当該電動工具のモータの駆動状態を示す情報であって、集塵機1の駆動開始時の制御を切り換える駆動状態識別情報(例えば、モータの回転数)とを含む。なお、駆動状態識別情報に、上記電動工具の種類に関する情報として上記種類識別情報を含めてもよい。具体的には、駆動状態識別情報は、電動工具2側のモータの駆動状態に応じて、電動工具2側のモータの駆動開始から集塵機1が作業速度で駆動するまでの始動時間を変更する情報である。具体的には後述するが、集塵機1のコントローラ50は、上記駆動状態識別情報に応じて、外部の電動工具の駆動開始時から、あるいは集塵機1のモータへの電力供給開始時から、集塵機1のモータへの供給電力が実作業時電圧へ到達するまでの時間である始動時間を切り換える。また、集塵機1のコントローラ50は、上記駆動状態識別情報に含まれる電動工具2の種類に応じて、上記始動時間の長さを変更する。
また、駆動状態識別情報には、電動工具が行う作業の負荷に応じてモータの回転数を変化させるか否かを示すモード設定情報を含む。当該モード設定情報には、例えば、電動工具の先端工具への負荷が所定の閾値に満たない場合に所定の回転数未満となるようにモータの回転数を維持し、その後、当該先端工具への負荷が所定の閾値以上となった場合に所定の回転数以上となるようにモータの回転数を引き上げるオートモード、あるいは当該先端工具への負荷にかかわらずモータの回転数を一定の速度で所定の回転数となるまで引き上げる通常モード等、モータの駆動状態に応じて定められる電動工具の設定を示す情報が含まれる。
言い換えると、当該モード設定情報には、駆動指示を受けると通常の作業速度よりも低いアイドリング速度で駆動し、負荷が所定値を超えると上記作業速度で駆動するオートモードと、駆動指示を受けるとアイドリングすることなく上記作業速度で駆動する通常モードと、を含む。後述するように、本実施例では、電動工具の無線通信ユニットが、モータの駆動に関する上記モード設定情報を含み、オートモード時には通常モード時よりも始動時間が長くなるように集塵機を連動して駆動させる上記連動信号を集塵機に送信する。
図13に示すように、集塵機1のコントローラ50は、電動工具2から上記連動信号を受信すると、ペアリング処理を開始する(S1301)。集塵機1のコントローラ50は、連動信号に含まれる種類識別情報を読み取り、電動工具の種類を判定する(S1302)。以下では、電動工具の種類の一例として、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーである場合、グラインダである場合、ハンマドリルである場合、の3つの場合について説明するが、他の様々な電動工具についても同様に考えることができる。
S1302において、集塵機1のコントローラ50は、連動信号の種類識別情報が、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーを示す情報であるか否かを判定し、当該種類識別情報が、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーを示す情報であると判定した場合(S1302;Yes)、さらに、連動信号の駆動状態識別情報に含まれるモード設定情報が、オートモードであるか否かを判定する(S1303)。
なお、以下では、電動工具2がコードレス丸のこまたはコードレスジグソーである場合にモード設定情報に示されたモードに応じて集塵機1の駆動に関する設定を行っているが、他の電動工具についても同様に適用することができる。
集塵機1のコントローラ50は、連動信号の駆動状態識別情報に含まれるモード設定情報が、オートモードでないと判定した場合(S1303;No)、電動工具が通常モードで設定されていると判断し、集塵機1のモータのスタート時間S1、Duty比D1、停止時間T1を設定し(S1304)、電動工具と集塵機との間のペアリング設定を終了する(S1305)。スタート時間は、集塵機1のモータが停止状態から通常の作業速度となるまでの時間である。また、Duty比は、集塵機1のモータの吸い込み力であり、停止時間は、通常の作業速度で駆動するモータを停止させるまでの時間である。
図14は、通常モードに設定されているコードレス丸のこまたはコードレスジグソー側のモータの回転数(a)と、集塵機側のDuty比(b)との関係を示すグラフである。
図14に示すように、集塵機1はコードレス丸のこまたはコードレスジグソーから、随時、連動信号を受信しているため、電動工具側のモータの回転数が上昇すると、集塵機側のDuty比も上昇する。工具側のモータの回転数が、通常の作業速度となる値αに達すると、集塵機1のコントローラ50は、集塵機側のDuty比を、その値αに対応する値D1に設定する。この間の時間が上記スタート時間S1となる。
集塵機1のコントローラ50は、引き続き、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーから、受信する連動信号を読み出して、工具側のモータの回転数に応じたDuty比で吸い込みを続ける。集塵機1のコントローラ50は、電動工具のモータが停止し、連動信号が受信されなくなると、吸い込みを停止し、モータ駆動前の状態に戻す。この間の時間が上記停止時間T1となる。次に示すように、S1304における通常モード時の設定では、上記スタート時間が、オートモード時よりも短時間で設定されている。
このように、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーのモータが駆動を開始してから通常動作時までの回転数が上昇するにつれて、集塵機1のコントローラ50は、集塵機のモータのDuty比を上げるようにモータを制御する。コードレス丸のこまたはコードレスジグソーからは、随時、上記駆動状態識別情報を受信しているため、その都度、電動工具側のモータの回転数に応じて、集塵機側のモータの回転数を制御することができる。
図13に戻り、S1303において、集塵機1のコントローラ50は、連動信号の駆動状態識別情報に含まれるモード設定情報が、オートモードであると判定した場合(S1303;Yes)、電動工具がオートモードで設定されていると判断し、集塵機1のモータのスタート時間S2、Duty比D1、停止時間T1を設定し(S1306)、電動工具と集塵機との間のペアリング設定を終了する(S1307)。
図15は、オートモードに設定されているコードレス丸のこまたはコードレスジグソー側のモータの回転数(a)と、集塵機側のDuty比(b)との関係を示すグラフである。
図15では、図14の場合と同様に、工具側のモータの回転数が上昇すると、集塵機側のDuty比も上昇するが、電動工具はオートモードに設定されているため、ある一定の回転数α’まで上昇し、その後は、負荷がかかるまでアイドリング状態となる。その後、電動工具の先端工具に負荷がかかると、回転数がさらに通常の作業速度となる回転数αまで上昇する。集塵機1のコントローラ50は、工具側のアイドリング状態となっている時間を考慮し、工具側のモータの回転数が通常の作業速度となる値αに達するまでの時間S2を、上記スタート時間S1にアイドリング状態となる時間を加えたスタート時間S2を設定する。
すなわち、集塵機1のコントローラ50は、工具側のアイドリング時間を考慮して、工具側が作業速度に達するまでに時間がかかると判断し、スタート時間をS1よりも遅いS2に設定し、通常モードのときに比べて緩やかにモータの回転数を作業速度まで引き上げる。そして、工具側のモータの回転数が、通常の作業速度となる値αに達すると、集塵機1のコントローラ50は、集塵機側のDuty比を、その値αに対応する値D1に設定する。この間の時間が上記スタート時間S2となる。
図14の場合と同様に、集塵機1のコントローラ50は、引き続き、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーから、受信する連動信号を読み出して、工具側のモータの回転数に応じたDuty比を出力し続ける。集塵機1のコントローラ50は、電動工具のモータが停止し、連動信号が受信されなくなると、Duty比をモータ駆動前の状態に戻す。この間の時間が上記停止時間T1となる。
なお、図15では、集塵機1のコントローラ50は、工具側から受信したモード設定情報を読み出して、スタート時間S2を設定することとしたが、アイドリングを示す駆動状態信号を一定時間受信し続けたか否かを判定し、アイドリングを示す駆動状態信号を一定時間受信し続けたと判定した場合、電動工具がオートモードに設定されていると判断し、上記スタート時間S2を設定してもよい。これにより、連動信号にモード設定情報が含まれない場合でもスタート時間S2を設定することができる。もちろん、工具側と同様に、集塵機1のコントローラ50が、アイドリング状態を経由して、通常の作業速度に達するように制御してもよい。
このように、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーのモータが駆動を開始してから通常動作時までの回転数が上昇するにつれて、集塵機1のコントローラ50は、工具側のアイドリング状態を考慮して、集塵機のモータのDuty比を上げるようにモータを制御する。コードレス丸のこまたはコードレスジグソーからは、随時、上記駆動状態識別情報を受信しているため、その都度、工具側のアイドリング状態を考慮して、電動工具側のモータの回転数に応じて、通常モードの場合に比べて緩やかに集塵機側のモータの回転数を制御することができる。なお、図14、図15では、通常モードとオートモードとで停止時間を同じ時間に設定することとしたが、モードの違いによって停止時間を変えてもよい。
図13に戻り、S1302において、集塵機1のコントローラ50は、連動信号の種類識別情報が、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーを示す情報であるか否かを判定し、当該種類識別情報が、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーを示す情報でないと判定した場合(S1302;No)、さらに、当該種類識別情報が、グラインダを示す情報であるか否かを判定する(S1308)。集塵機1のコントローラ50は、当該種類識別情報が、グラインダを示す情報であると判定した場合(S1308;Yes)、集塵機1のコントローラ50は、集塵機1のモータのスタート時間S2、Duty比D2、停止時間T1を設定し(S1309)、電動工具と集塵機との間のペアリング設定を終了する(S1310)。なお、グラインダの被削材は、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーの被削材に比べて硬い材質であるため、上記Duty比D2は、Duty比D1よりも大きい値となっている。
図16は、グラインダ側のモータの回転数(a)と、集塵機側のDuty比(b)との関係を示すグラフである。
図16では、工具側のモータの回転数が上昇すると、集塵機側のDuty比が、図14に示したDuty比D1よりも大きい値であるD2まで上昇する。工具側のモータの回転数が、通常の作業速度となる値βに達すると、集塵機1のコントローラ50は、集塵機側のDuty比を、その値βに対応する値D2に設定する。この間の時間が上記スタート時間S1となる。図16では、スタート時間を図14と同じ時間に設定しているが、異なる時間を設定してもよい。
集塵機1のコントローラ50は、引き続き、グラインダから、受信する連動信号を読み出して、工具側のモータの回転数に応じたDuty比を出力し続ける。集塵機1のコントローラ50は、電動工具のモータが停止し、連動信号が受信されなくなると、Duty比をモータ駆動前の状態に戻す。この間の時間が上記停止時間T1となる。図16では、停止時間を図14と同じ時間に設定しているが、異なる時間を設定してもよい。
このように、グラインダのモータが駆動を開始してから通常動作時までの回転数が上昇するにつれて、集塵機1のコントローラ50は、集塵機のモータのDuty比を上げるようにモータを制御する。グラインダからは、随時、上記駆動状態識別情報を受信しているため、その都度、コードレス丸のこまたはコードレスジグソーよりもグラインダ側のモータの回転数に応じて、集塵機側のモータの回転数を制御することができる。
図13に戻り、S1308において、集塵機1のコントローラ50は、連動信号の種類識別情報が、グラインダを示す情報でないと判定した場合(S1308;No)、さらに、当該種類識別情報が、ハンマドリルを示す情報であるか否かを判定する(S1311)。集塵機1のコントローラ50は、当該種類識別情報が、ハンマドリルを示す情報であると判定した場合(S1311;Yes)、集塵機1のコントローラ50は、集塵機1のモータのスタート時間S0、Duty比D2、D3、停止時間T2を設定し(S1312)、電動工具と集塵機との間のペアリング設定を終了する(S1313)。なお、集塵機1のコントローラ50は、当該種類識別情報が、ハンマドリルを示す情報でないと判定した場合(S1311;No)、S1301に戻ってそのまま待機する。
ハンマドリルの被削材は、グラインダの被削材に比べて削られた箇所が細長いためにその中に削り屑が残ってしまう。そのため、モータ停止後にさらにDuty比を上げて、その削り屑を吸い取るため、上記Duty比D3は、Duty比D2よりも大きい値となっている。また、ハンマドリルでは、他の電動工具と異なり、コンクリートの穴あけなどのため、モータ駆動前から被削材に押し当てた状態である。そのため、スタート時間は、S1よりも短いS0に設定されている。
図17は、ハンマドリル側のモータの回転数(a)と、集塵機側のDuty比(b)との関係を示すグラフである。
図17では、工具側のモータの回転数が上昇すると、集塵機側のDuty比が、図16に示したDuty比D2まで上昇する。工具側のモータの回転数が、通常の作業速度となる値βに達すると、集塵機1のコントローラ50は、集塵機側のDuty比を、その値γに対応する値D2に設定する。この間の時間が上記スタート時間S0となる。図17では、スタート時間がS1よりも短いS0に設定されている。なお、図17ではDuty比を図16と同じ前提で説明しているが、異なる値としてもよい。
集塵機1のコントローラ50は、引き続き、ハンマドリルから、受信する連動信号を読み出して、工具側のモータの回転数に応じたDuty比を出力し続ける。集塵機1のコントローラ50は、電動工具のモータが停止し、連動信号が受信されなくなると、Duty比をモータ駆動前の状態に戻す。この間の時間が上記停止時間T2となる。このとき、上述したように、集塵機1のコントローラ50は、被削材の残りの粉塵を吸い取るために、一定時間のあいだ、さらにDuty比を上げた上で、Duty比をモータ駆動前の状態に戻す。
このように、ハンマドリルのモータが駆動を開始してから通常動作時までの回転数が上昇するにつれて、集塵機1のコントローラ50は、集塵機のモータのDuty比を上げるようにモータを制御する。ハンマドリルからは、随時、上記駆動状態識別情報を受信しているため、その都度、ハンマドリルのモータの回転数に応じて、集塵機側のモータの回転数を制御することができる。さらに、停止した後も通常時とは異なるDuty比で吸い取りを継続しているので、工具が停止した後も、引き続き残りの粉塵を除去することができる。
すなわち、集塵機1のコントローラ50は、電動工具2の駆動が停止すると集塵機1のモータへの電力供給を停止する通常停止モード(例えば、図14(b)、図15(b)、図16(b))と、電動工具2の駆動が停止すると、所定時間、集塵機1のモータへの供給電圧を増加させた後に電力供給を停止する追加集塵モード(例えば、図17(b))と、を含む複数の駆動モードにより、集塵機1のモータの駆動を制御している。なお、本実施例では、電動工具の種類に応じて集塵機1の立ち上がりの早さを変化させることとしたが、電動工具に設定されたモードの違いにより、集塵機1の立ち上がりの早さを変化させてもよい。
本実施例に示した電動工具およびバッテリパックは、例えば、図18に示すような回路により構成されている。以下では、電動工具の一例として、丸のこ2(MCUあり)について説明している。
図18は、丸のことバッテリパックの接続回路構成の概略図である。図18に示すように、丸のこ2は、工具側プラス端子1411と、バッテリパック270から供給される電力をモータ1414に供給するためのメインスイッチ1412と、バッテリパック270から電力が供給されていることを検出するための工具側トリガ検出端子1413と、丸のこ2を駆動するためのモータ1414と、工具側プラス端子1411から工具側マイナス端子1416への充電電流の通過、遮断を切り替えるためのスイッチング素子1415と、工具側マイナス端子1416と、電動工具の電圧値を出力する工具側LD端子1417とを有している。スイッチング素子1405は、例えば、Pチャネル型のFET(Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor)により構成される。
また、丸のこ2は、電池電圧検出回路1418と、電源回路1419と、トリガ検出回路1420と、電流検出回路1421と、制御部1422と、通信接続端子1423と、無線通信部1424と、通信スイッチ1425と、通信状態表示パネル1426とを有している。
電池電圧検出回路1418は、バッテリパック270の電圧を測定するための検出手段であり、その出力は制御部1422のA/Dコンバータに接続される。A/Dコンバータからは、検出した電池電圧に対応するデジタル値が入力され、制御部1422は、当該デジタル値とあらかじめ設定した所定値とを比較し、電池残量が所定値より少なくなった場合、即ち過放電状態となった時にFETを遮断状態、即ちFETのゲート信号をLOWにすることで一時的にモータ1414が回転しない状態にしてバッテリパック270を保護する。
電源回路1419は、制御部1422の電源を保持するための回路である。制御部1422の電源が入っていない状態で、メインスイッチ1412を閉じた場合、制御部1422が起動し、制御部1422から電源回路1419に電源保持の命令が継続的に出されることでメインスイッチ1412が戻された状態であっても制御部1422への電源供給が維持され、動作を継続する。
トリガ検出回路1420は、メインスイッチ1412が閉じたことを検出するための回路であり、メインスイッチ1412が閉じた旨の信号を制御部1422に出力する。
電流検出回路1421は、回路内を流れる電流(モータ1414に流れる電流)を検出する回路であり、制御部1422のA/Dコンバータに接続される。放電経路においてバッテリパック270のマイナス端子に接続される工具側マイナス端子1416と、工具側マイナス端子1416に対して放電経路の上流側の工具側プラス端子1411との電位差(シャント抵抗の両端電圧)を電流検出回路1421が検出し、制御部1422のA/Dコンバータには電流検出回路1421によって検出された電流値に対応するデジタル値が入力される。制御部1422は、変換されたデジタル値とあらかじめ設定された閾値とを比較し、電位差が閾値以上であればトリガオン(スイッチオン)と判断し、電位差が所定値以下又はゼロであればトリガオフ(スイッチオフ)と判断する。
制御部1422は、例えば、マイコン(マイクロコンピュータ)から構成され、丸のこ2の各部を制御する。
通信接続端子1423は、制御部422が、バッテリパック270の充電/放電制御部620と通信して各種制御情報を送受信するための接続端子である。
無線通信部1424は、Wi−Fi通信やBluetooth(いずれも登録商標)通信等の無線通信規格に従って、外部機器(例えば、集塵機1)との間で通信するための回路である。
通信スイッチ1425は、使用者がバッテリパック270の通信状態を確認するためのスイッチである。
通信状態表示パネル1426は、使用者により通信スイッチ425が押下された場合に、制御部422がその時点の通信状態を表示するためのパネルである。例えば、制御部422は、通信速度が一定以上である場合には、図示しない表示パネルに通信状態が良好であることを示す緑色のランプを表示し、通信速度が一定未満である場合には、上記表示パネルに通信状態が不良であることを示す赤色のランプを表示する。
バッテリパック270は、定格出力電圧が、18Vのセルユニットを2つ備え、36Vと18Vの2種類の電圧に対応可能なバッテリである。図18に示すように、バッテリパック6は、上記18Vのセルユニットのうちの1つのユニットである第1のセルユニットと上記工具側プラス端子401とを接続するための上プラス端子601aと、上記18Vのセルユニットのうちの他の1つのユニットである第2のセルユニットと上記工具側プラス端子401とを接続するための下プラス端子601bと、プラス端子601にかかる電圧を検出するための電圧検出回路602とを有している。電圧検出回路602は、上プラス端子601aにかかる電圧を検出するための上プラス電圧検出回路602aと、下プラス端子601bにかかる電圧を検出するための下プラス電圧検出回路602bとを備える。
また、バッテリパック270は、工具側トリガ検出端子403に接続するためのバッテリ側トリガ検出端子603と、バッテリ側トリガ検出端子603が電動工具からの電力の供給を受けていることを検出するためのトリガ検出回路604と、上記第1のセルユニットと上記工具側マイナス端子406とを接続するための上マイナス端子606aと、上記第2のセルユニットと上記工具側マイナス端子406とを接続するための下マイナス端子606bとを有している。
さらに、バッテリパック270は、電動工具の電圧値を入力するバッテリ側LD端子607と、バッテリ側LD端子607が電動工具の電圧値を検出するための機器電源検出回路608とを有している。また、バッテリパック270は、上記上プラス端子601aに接続された上記第1のセルユニットであるセルユニット609aと、セルユニット609aを保護する上段セルユニット保護回路610aとを有している。セルユニット609aは、複数の電池セルが直列に接続されている。上段セルユニット保護回路610aには、過充電検出回路611aと過放電検出回路612aとが接続される。
また、バッテリパック270は、上記下プラス端子601bに接続された上記第2のセルユニットであるセルユニット609bと、セルユニット609bを保護する下段セルユニット保護回路610bとを有している。セルユニット609bは、複数の電池セルが直列に接続されている。下段セルユニット保護回路610bには、過充電検出回路611bと過放電検出回路612bとが接続される。
これらの保護回路は、個々の電池セルの電圧を監視し、その中の一つでも過放電又は過充電になることを防止するためのものである。充電に伴い電池セルの電圧は上昇するため、充電を継続し、満充電となる閾値電圧(充電限界電圧)に達すると、上記保護回路から信号が出力される。これらの保護回路は、電池セルの少なくとも1つが過放電のおそれがある閾値電圧(放電限界電圧)まで低下した場合にも信号を出力する。一例として、上記保護回路は、バッテリパック270が過放電及び満充電のいずれでもない通常の使用電圧ではハイ信号を出力し、過放電又は満充電を知らせる場合等、通常状態以外では、設置電圧などのロー信号を出力する。
電源回路613は、上記第1のセルユニットおよび上記第2のセルユニットの電圧に基づいて電池側制御部11の動作電圧を生成し、充電/放電制御部620に供給する回路である。
セル温度検出回路614は、セルユニット609aおよびセルユニット609bを構成する各電池セルの近傍に配置された不図示のサーミスタ等の温度検出素子を含み、各電池セルの温度を検出し、充電/放電制御部620に送信する。
電流検出回路615は、セルユニット609bと直列接続された抵抗621(固定抵抗)の両端の電圧に基づいてセルユニット609bの電流を検出し、充電/放電制御部620に送信する。
残量スイッチ616は、使用者がバッテリパック270の残容量を確認するためのスイッチである。残量表示パネル618は、使用者により残量スイッチ616が押下された場合に、充電/放電制御部620がその時点のバッテリパック270の残容量を表示するためのパネルである。例えば、充電/放電制御部620は、バッテリパック270の残容量が所定の閾値以上である場合には、残量表示パネル618に残容量が多いことを示す緑色のランプを表示し、バッテリパック270の残容量が所定の閾値未満である場合には、残量表示パネル618に残容量が少ないことを示す赤色のランプを表示する。
充電/放電制御部620は、プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力する中央処理装置(CPU)、プログラムとデータを記憶するROM(Read Only Memory)、データを一時記憶するRAM(Random Access Memory)、及びタイマ等を含む回路であり、バッテリパック270の各部の動作を制御する。
以上、図13〜17を用いて説明したように、本実施例における連動駆動システム1000では、電動工具の種類やモードに応じて集塵機の制御を行うことができ、また、電動工具の種類やモードに応じて集塵機の立ち上がりの早さを変化させることができる。また、切削や穴あけ等の作業に応じて作業開始前・終了後の挙動を最適化することで、集塵率や作業性の向上を図ることができる。