JP2019206465A - 化合物及びその製造方法 - Google Patents

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彰 伊豫
洋 永崎
Hiroshi Eisaki
洋 永崎
吉田 良行
Yoshiyuki Yoshida
良行 吉田
後藤 義人
Yoshito Goto
義人 後藤
裕司 藤久
Yuji Fujihisa
裕司 藤久
健司 川島
Kenji Kawashima
健司 川島
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Abstract

【課題】新規化合物及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係る化合物は、化学式Mg2−xRh3Pで表される。【選択図】図1

Description

本発明は、新規の化合物及びその製造方法に関する。
これまでに発見された超伝導体の多くは、その結晶構造に空間反転対称性を有している。しかし、近年、空間反転対称性の無い結晶構造を有する超伝導体が発見され、注目を集めている。なお、空間反転対称性とは、空間座標(x,y,z)から(−x,−y,−z)への変換における対称性を意味する。
例えば、特許文献1には、BaNiSn型結晶構造を有する化学式SrAuSiで表される化合物が記載されている。BaNiSn型結晶構造は、X軸方向及びY軸方向においては、軸に垂直な鏡映面を有しているものの、Z軸方向においては軸に垂直な鏡映面を有していない。BaNiSn型結晶構造は、X軸方向及びY軸方向においては反転対称性を有しているものの、Z軸方向においては反転対称性を有していない。したがって、この化合物は、対称中心を持たず、空間反転対称性が破られている。なお、鏡映とは、空間内の点をある平面に関して面対称な点に移すことである。結晶構造が、ある平面に対して鏡映対称の関係にあるとき、この平面を鏡映面という。また、ある結晶構造上の空間座標(x,y,z)を(−x,−y,−z)に変換した場合に、変換後の結晶構造がもとの結晶構造と一致するとする。この場合、この操作で基準となった原点を対称中心という。
特開2015−20915号公報
ところで、超伝導現象が発見されて以来、超伝導体として利用することができる新規化合物の探索が続けられている。なお、超伝導性を有しているか否かに関わらず、新規化合物の探索は、今なお重要な研究の1つである。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規化合物を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る化合物は、化学式Mg2−xRhPで表される。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る化合物の製造方法は、化学式Mg2−xRhPで表される化合物の製造方法であって、ロジウムとリンとを所定のモル比で混合することにより、上記ロジウムと上記リンとの混合物を得る混合工程と、上記混合物を加圧してペレットを作成する加圧工程と、上記ペレットとマグネシウムとを、不活性ガス雰囲気中にて、900℃以上1000℃以下の加熱温度で加熱する第1の加熱工程と、上記第1の加熱工程の後に上記ペレットを徐冷する第1の冷却工程と、を含んでいる。
本発明の一態様によれば、新規化合物及びその製造方法を提供することができる。
(a)及び(b)は、本発明の一実施形態である化合物の結晶構造を示す斜視図である。(b)においては、(a)に示した化合物の結晶構造において、RhPが構成する八面体を強調して示している。 本発明の一実施形態に係る化合物の製造方法のフローチャートである。 本発明の第1の実施例である化合物のX線回折パターンをリートベルト法によって解析した結果を示すグラフである。 (a)は、本発明の第1の実施例である化合物の電気抵抗率の温度依存性を示すグラフである。(b)は、本発明の第2の実施例である化合物の電気抵抗率の温度依存性を示すグラフである。 (a)は、本発明の第1の実施例である化合物において印加磁場を変化させた場合に得られた、電気抵抗率の温度依存性を示すグラフである。(b)は、本発明の第2の実施例である化合物の上部臨界磁場HC2の温度依存性を示すグラフである。
本発明の一実施形態である化合物10について、図1及び図2を参照して説明する。図1の(a)及び(b)は、化合物10の結晶構造を示す斜視図である。図1の(b)においては、図1の(a)に示した化合物の結晶構造において、RhPが構成する八面体を強調して示している。図2は、化合物10の製造方法M1のフローチャートである。
〔化合物〕
化合物10は、マグネシウムと、ロジウムと、リンとにより構成されており、化学式Mg2−xRhPで表される。
化合物10において、xは0以上であればよく、0を上回ることが好ましい。つまり、マグネシウムの組成比である2−xは、(2−x)<2の条件を満たすことが好ましい。マグネシウムの組成比がこの条件を満たすことにより、化合物10は、超伝導性を有する。
また、xは、例えば0.2以下であることが好ましい。つまり、マグネシウムの組成比は、1.8≦(2−x)の条件を満たすことが好ましい。マグネシウムの組成比がこの条件を満たすことにより、化合物10は、MoAlC型(空間群:P432(213))の結晶構造を有する。この結晶構造については、後述する。
本発明の一態様に係る化合物は、これまでに報告例がなく、本願の発明者らが初めて発見した化合物である。
〔化合物の結晶構造〕
化合物10は、図1の(a)及び(b)に示すように、MoAlC型(空間群:P432(213))の結晶構造を有する。
ロジウムのサイト11は、図1の(b)に示すように八面体111を構成する。すなわち、ロジウムのサイト11は、八面体111の各頂点に存在している。また、八面体111のうち互いに隣接する八面体111は、共通するロジウムを介して連結されている。すなわち、化合物10を構成する複数の八面体111は、2つの八面体111の間で頂点を共有することによって、ネットワークを形成している。
リンのサイト12は、八面体111に包含される位置に存在している。
このように、八面体111のネットワーク構造を有し、且つ、八面体111中にリンのサイト12が包含されていることにより、化合物10におけるロジウムとリンとの組成比は、3:1に固定されている。
マグネシウムのサイト13は、八面体111のネットワーク構造の隙間を埋める位置に配置されている。
このような結晶構造を有することにより、化合物10においては、RhPに対するマグネシウムの組成比が可逆的に変動し得る。より詳しくは、化合物10に対して所定の熱処理を施すことによって、マグネシウムのサイト13に対してマグネシウムを充填したり、マグネシウムのサイト13からマグネシウムを脱離させたりすることができる。この所定の熱処理については、参照する図を代えて後述する。
なお、上述したようにマグネシウムの組成比を1.8≦(2−x)の範囲内で変化させた場合であっても、図1に示した結晶構造においてマグネシウムの数は変化するものの、その結晶構造は、MoAlC型のまま変化しない。これは、八面体111のネットワーク構造が強固であるためと考えられる。
また、化合物10におけるマグネシウムの組成比を変化させることによって、化合物10が超伝導性を発現するか否かを制御することができる。したがって、化合物10は、目的に応じて、電気的な特性を変化させることができる。
また、上述したように、八面体111の隙間を埋める位置にマグネシウムのサイト13が存在するため、化合物10の結晶構造が含み得るマグネシウムの量には、上限値がある。化合物10におけるマグネシウムの組成比の上限値は、2である。
化合物10の結晶構造は、X,Y,Zの全ての軸方向において、軸に垂直な鏡映面が欠落している。すなわち、化合物10は、その結晶構造に対称中心が無く、空間反転対称性が破られた化合物といえる。
空間反転対称性の破られた結晶構造を有する化合物10が超伝導性を有する場合、クーパー対の波動関数において、スピン・シングレットとトリプレットとが混成する可能性がある。なお、化合物10の超伝導性については、参照する図を代えて後述する。
〔製造方法M1〕
図2に示すように、化合物10の製造方法M1は、混合工程S11と、加圧工程S12と、封入工程S13と、第1の加熱工程S14と、第1の冷却工程S15と、第2の加熱工程S16と、第2の冷却工程S17とを含んでいる。また、製造方法M1は、ロジウムと、リンと、マグネシウムとを出発原料として用いる。
なお、製造方法M1は、混合工程S11、加圧工程S12、第1の加熱工程S14、及び第1の冷却工程S15を少なくとも含んでいればよく、必要に応じて、封入工程S13、第2の加熱工程S16、及び第2の冷却工程17を更に含んでいてもよい。
(混合工程S11)
混合工程S11は、ロジウムとリンとを所定のモル比で混合することにより、ロジウムとリンとの混合物を得る工程である。混合工程S11において用いるロジウム及びリンは、何れも粉末であることが好ましい。ロジウム及びリンがともに粉末であることによって、より均一にロジウム及びリンを混合することができる。なお、リンが粉末でない場合であっても、混合工程S11を念入りに実施することによって、リンは砕かれ、その結果として粉末になる。ロジウムは、混合工程S11において砕くことが容易ではないため、最初から粉末であることが好ましい。
ロジウムとリンとの上記所定のモル比は、3:1.05〜1.1であることが好ましい。これは、リンの蒸気圧は、ロジウムの蒸気圧よりも高いためである。後述する第1の加熱工程S14におけるリンの蒸発量がロジウムの蒸発量を上回ることを考慮して、製造後の化合物10としてターゲットとするロジウムとリンとの組成比よりも、リンの割合が5〜10モル%高い仕込み組成比を採用することにより、ターゲットとする組成比により近い化合物10を得ることができる。
なお、本願明細書において、2つの数値A,Bをそれぞれ下限値及び上限値とする範囲をA〜Bと記載する場合、この範囲は、A及びBを含む。すなわち、A〜Bと記載された範囲は、A以上B以下であることを意味する。
混合工程S11は、不活性ガス雰囲気中で実施されることがより好ましい。不活性ガスの例としては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウム等が挙げられる。不活性ガス雰囲気の環境は、例えばグローブボックス内に不活性ガスを充満させることによって実現できる。
不活性ガス雰囲気中で混合工程S11を実施することにより、出発原料(特にリン)が混合工程において酸化することを防止することができる。
なお、混合工程S11において用いる器具は、ロジウムとリンとを混合可能な器具であれば特に限定されるものではない。例えば、当該器具として乳鉢を用いることができる。
(加圧工程S12)
加圧工程S12は、混合工程S11により得られた上記混合物を加圧することによって、ペレットを作成する工程である。加圧工程S12を実施する装置の例としては、静水圧を利用したプレス装置が挙げられる。また、加圧するときの圧力としては、75MPa以上150MPa以下が好ましい。加圧工程S12を実施することにより、ロジウムとリンとを密に接触させることができる。これにより、後述する第1の加熱工程S14におけるロジウムとリンとの反応が促進され、より純度の高い化合物10を製造することができる。また、ロジウムとリンとを密に接触させることにより、より結晶性のよい化合物10を製造することができる。
加圧工程S12も、混合工程S11と同様に、不活性ガス雰囲気中で実施されることが好ましい。
(封入工程S13)
封入工程S13は、上記ペレットとマグネシウムとを、不活性ガス雰囲気中にて容器に挿入した後、封止することにより密閉する封入工程を更に含んでいることが好ましい。
容器は、密閉することができる容器であれば特に限定されないが、例えば、石英製や、金属製等の筒状部材が挙げられる。なお、本実施形態においては、この容器として石英管を用いる。
容器として石英管を用いる場合、マグネシウムと石英管とは反応するため、石英管との反応量を考慮してマグネシウムの量を、ターゲットとする組成比と比べて過剰に(例えば250〜400モル%過剰に)設定する必要がある。
容器として金属管を用いる場合、金属管との反応量を考慮してマグネシウムの量を設定する必要はない。これは、マグネシウムと金属管を構成する金属(例えばステンレス)とは、ほとんど反応しないためである。しかしながら、マグネシウムが容器内に拡散することを考慮して、例えば10〜25モル%過剰に設定することが好ましい。
マグネシウムの形状は、粉末であっても、顆粒であってもよい。
マグネシウムの仕込み量は、製造された化合物10の超伝導性の有無、並びに、第1の加熱工程における温度及び時間によって適宜設定する必要がある。なお、マグネシウムを過剰に封入したとしても、〔化合物の結晶構造〕の項において説明したように、結晶構造がMoAlC型であることにより、化合物10中のロジウム3モルに対するマグネシウムのモル数は2を超えることはない。
マグネシウムの仕込み量は、容器の種類および容積、第1の加熱工程S14での加熱温度および加熱時間等により適宜設定する必要がある。なお、超伝導性を有する化合物10を製造したい場合には、例えば容積が3ccの石英管を用い、第1の加熱工程S14での加熱温度が925℃、加熱時間12時間であるとき、マグネシウムの仕込み量を、ペレット中のロジウム3モルに対してマグネシウムが4モル以上6モル以下となるように定めることが好ましい。これにより、超伝導性を有する化合物10を得ることができる。また、超伝導性を有さない(すなわち常伝導性を有する)化合物10を製造したい場合には、上記の条件であるとき、マグネシウムの仕込み量を、ペレット中のロジウム3モルに対してマグネシウムが8モル以上となるように定めることが好ましい。これにより、超伝導性を有さない化合物10を得ることができる。
なお、封入工程S13を実施することによって、ペレット及びマグネシウムは、容積が小さな空間内に密封される。その結果、次の第1の加熱工程S14においてマグネシウムの蒸気圧を好ましい蒸気圧まで容易に高めることができるため、マグネシウムの蒸気圧が好適な状態でペレットを加熱することができる。そのため、製造方法M1は、封入工程S13を含むことが好ましい。
(第1の加熱工程S14)
第1の加熱工程S14は、上記ペレットとマグネシウムと封入した上記石英管を、不活性ガス雰囲気中にて、900℃以上1000℃以下の加熱温度で加熱する工程である。加熱温度が上記の条件を満たすことにより、結晶性がよい化合物10を得ることができる。第1の加熱工程S14においては、ロジウムとリンとからなるペレットがマグネシウムの蒸気を吸引することによって、化合物10が生成される。
なお、出発原料であるマグネシウムの表面は酸化物(MgO)で覆われているため、ロジウムとリンとマグネシウムとの混合物または当該混合物のペレットを加熱する方法では、当該酸化物が製造した化合物10に残る可能性が高い。これに対して、ロジウムとリンとからなるペレットがマグネシウムの蒸気を吸引する方法は、酸素の混入を防ぐことができる。そのため、前述した方法と比較して、化合物10の純度を高めることができる。
加熱温度は、920℃以上950℃以下であることがより好ましい。加熱温度が当該範囲であることにより、加熱時間に許容幅ができるため、得られる化合物の超伝導性の有無を制御し易くなる。
昇温速度は、特に限定されるものではなく、例えば、4℃/分以上8℃/分以下の範囲内で設定することができる。
加熱のために用いられる炉は、加熱温度を所望の温度に制御可能な炉であればよい。炉の一例として、電気炉を挙げられるがこれに限定されるものではない。また、加熱のために用いられる炉は、炉の内部に不活性ガスを流すことができる炉であってもよい。この構成によれば、不活性ガス雰囲気中で加熱工程を実施することができ、加熱工程中にペレットとマグネシウムとを封入した容器が劣化することを防止できる。
なお、炉内の圧力は、特に限定されるものではない。例えば、炉内の圧力として、大気圧を採用することができる。
(第1の冷却工程S15)
第1の冷却工程S15は、第1の加熱工程S14の後に上記ペレットを徐冷する工程である。
第1の冷却工程S15における冷却方法及び冷却速度は、特に限定されるものではない。例えば、冷却方法としてく、炉の加熱を切ることによる自然冷却を採用することができる。この点については、後述する第2の冷却工程S17においても同様である。
以上のように、混合工程S11〜第1の冷却工程S15を実施することによって化合物10を得ることができる。
(マグネシウムの組成比を変化させる)
上述したように、化合物10においては、RhPに対するマグネシウムの組成比を可逆的に変化させることができる。第2の加熱工程S16及び第2の冷却工程S17は、混合工程S11〜第1の冷却工程S15を実施することによって製造した化合物10のマグネシウムの組成比を変化させるための工程である。以下では、超伝導性を持たせる場合と、超伝導性を失わせる場合とについて、説明する。
なお、得られた化合物10の電気的な特性を変化させる必要がない場合には、第2の加熱工程S16及び第2の冷却工程S17を実施する必要はない。すなわち、製造方法M1において、第2の加熱工程S16及び第2の冷却工程S17は、適宜、省略可能である。
(第2の加熱工程S16)
第2の加熱工程S16は、混合工程S11〜第1の冷却工程S15により得られた化合物10を、不活性ガス雰囲気中にて、900℃以上1000℃以下の加熱温度で再加熱する工程である。
A:超伝導性を持たせる場合
第1の加熱工程S14におけるマグネシウムの蒸気圧が好適な蒸気圧よりも高かった場合、得られた化合物10は、超伝導性を持たない。その場合、得られた化合物10を、マグネシウム非存在化、又は、封入工程S13におけるマグネシウムの仕込み量よりも少ないマグネシウムが存在する環境下(マグネシウムの蒸気圧が第1の加熱工程S14における蒸気圧よりも低い環境下)において再加熱することにより、化合物10におけるマグネシウムの含有量を低下させることができる。すなわち、再加熱前の化合物10よりもマグネシウムの組成比が少ない化合物10を得ることができる。このように第2の加熱工程S16を実施することにより、超伝導性を有さない化合物10に対して、超伝導性を持たせることができる。
再加熱前の化合物10を、マグネシウム非存在下で再加熱することにより、再加熱後の化合物10におけるマグネシウムの組成比を確実に減少させることができる。
また、第2の加熱工程S16では、再加熱前の化合物10をマグネシウム存在下で再加熱する場合には、封入工程S13と同様の封入工程を実施することが好ましい。再加熱後の化合物10に対して超伝導性を持たせる場合には、マグネシウムの仕込み量を、封入工程S13において採用したマグネシウムの仕込み量より少なくすることが好ましい。換言すれば、第1の加熱工程S14において用いるマグネシウムのロジウム3モルに対するモル比を第1の比として、第2の加熱工程S16において用いるマグネシウムのロジウム3モルに対するモル比を第2の比として、第2の比は、上記第1の比を下回るように定められていることが好ましい。
これにより、再加熱後の化合物10におけるマグネシウムの組成比を、再加熱前の化合物10におけるマグネシウムの組成比と比較して、低下させることができ、延いては、化合物10に超伝導性を持たせることが容易になる。
B:超伝導性を失わせる場合
再加熱前の化合物10が超伝導性を有する場合であって、且つ、化合物10の超伝導性を失わせたい場合には、再加熱前の化合物10を、封入工程S13におけるマグネシウムの仕込み量よりも多いマグネシウムが存在する環境下(マグネシウムの蒸気圧が第1の加熱工程S14における蒸気圧よりも高い環境下)において再加熱することにより、化合物10におけるマグネシウム含有量を増加させればよい。換言すれば、第2の比は、上記第1の比を上回るように定められていればよい。このように第2の加熱工程S16を実施することにより、超伝導性を有する化合物から超伝導性を失わせることができる。
加熱温度は、上記Aおよび上記Bのどちらの場合であっても、920℃以上950℃以下であることがより好ましい。加熱温度が当該範囲であることにより、加熱時間に許容幅ができるため、得られる化合物の超伝導性の有無を制御し易い。
(第2の冷却工程S17)
第2の冷却工程S17は、第2の加熱工程S16の後に、再加熱された化合物10を徐冷する工程である。第2の冷却工程S17における条件は、第1の冷却工程S15と同様に定めることができる。
〔超伝導物質としての利用〕
化合物10は、xが0.3を上回る場合、温度を超伝導臨界温度未満に低下させることによって、常伝導状態から超伝導状態へ転移させることができる。したがって、超伝導状態にある化合物10も本発明の範疇に含まれる。また、化合物10の超伝導臨界温度は、外部磁場の大きさによっても変化する。
したがって、化合物10を超伝導状態にすることができる温度の条件は、化合物10の態様、外部磁場の大きさによっても異なる。例えば、外部磁場が0である場合には、化合物10の超伝導臨界温度は、3.5K以上4.0K以下である。
当業者は、化合物10を超伝導状態にするための温度及び外部磁場の条件を適宜見出すことができる。
このように、化合物10は、外部磁場が0であるときに、超伝導臨界温度を下回る温度で超伝導性を示すものであることが好ましい。このような性質を有することによって、例えば、超伝導線材や、超伝導デバイス等に利用できるという利点がある。超伝導デバイスの例としては、超伝導磁束量子干渉計や量子ビット等が挙げられる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔付記事項〕
以上のように、化合物10は、化学式Mg2−xRhPで表される。
また、化合物10では、MoAlC型の結晶構造を有することが好ましい。
また、化合物10では、上記xは0を上回ることが好ましい。
化合物10の製造方法は、化学式Mg2−xRhPで表される化合物の製造方法であって、ロジウムとリンとを所定のモル比で混合することにより、上記ロジウムと上記リンとの混合物を得る混合工程と、上記混合物を加圧してペレットを作成する加圧工程と、上記ペレットとマグネシウムとを、不活性ガス雰囲気中にて、900℃以上1000℃以下の加熱温度で加熱する第1の加熱工程と、上記第1の加熱工程の後に上記ペレットを徐冷する第1の冷却工程と、を含んでいる。
また、化合物10の製造方法では、上記加熱温度は、920℃以上950℃以下であることが好ましい。
また、化合物10の製造方法では、上記ロジウムと上記リンとの上記所定のモル比は、3:1.05〜1.1であることが好ましい。
また、化合物10の製造方法は、(1)上記第1の冷却工程により得られた化合物であって超伝導性を有さない化合物を、又は、(2)当該化合物とマグネシウムとを、不活性ガス雰囲気中にて、900℃以上1000℃以下の加熱温度で加熱する第2の加熱工程と、上記第2の加熱工程の後に上記化合物を徐冷する第2の冷却工程と、を更に含み、上記第1の加熱工程において用いる上記マグネシウムの上記ロジウム3モルに対するモル比を第1の比として、上記第2の加熱工程において用いる上記マグネシウムの上記ロジウム3モルに対するモル比である第2の比は、上記第1の比を下回る、ことが好ましい。
また、化合物10の製造方法は、上記第1の冷却工程により得られた化合物であって超伝導性を有する化合物とマグネシウムとを、不活性ガス雰囲気中にて、900℃以上1000℃以下の加熱温度で加熱する第2の加熱工程と、上記第2の加熱工程の後に上記化合物を徐冷する第2の冷却工程と、を更に含み、上記第1の加熱工程において用いる上記マグネシウムの上記ロジウム3モルに対するモル比を第1の比として、上記第2の加熱工程において用いる上記マグネシウムの上記ロジウム3モルに対するモル比である第2の比は、上記第1の比を上回ることが好ましい。
〔第1の実施例〕
上述した製造方法M1を用いて第1の実施例である化合物10を得た。その具体的な方法を以下に説明する。
混合工程S11において、ロジウムの粉体とリンの粉体とを、モル比が3:1.1になるように、乳鉢を用いて混合することによって、ロジウムとリンとの混合物を得た。
加圧工程S12において、混合工程S11により得られた混合物を、一軸性の加圧成形機を用いて100MPaの圧力で加圧し、ペレットを作成した。
封入工程S13において、上記ペレットとマグネシウムとを、マグネシウムとペレット中のロジウムとのモル比が、5:3になるように石英管の内部に挿入した。その後、石英管の両端を加熱して溶融することによって内部空間を封止し、冷却により石英管の両端を硬化させることにより、石英管を密閉した。
なお、混合工程S11、加圧工程S12、及び封入工程S13の各々は、不活性ガスである窒素ガスを充満させたグローブボックス内、すなわち、窒素ガス雰囲気中において実施した。
第1の加熱工程S14において、ペレットとマグネシウムとを封入した石英管を箱形電気炉で加熱した。加熱温度を925℃に設定し、加熱時間を12時間に設定した。
第1の冷却工程S15において、常温まで徐冷した。加熱を停止してから100℃以下になるまで4時間であった。
以上の製造方法M1により第1の実施例の化合物10を得た。エネルギー分散型X線分光法を用いて組成分析を行った結果、第1の実施例の化合物はMg1.9Ph3.01.0であった。
〔第2の実施例〕
上述した製造方法M1を用いて第2の実施例である化合物10を得た。その具体的な方法のうち、第1の実施例と異なる点についてのみ、以下に説明する。
封入工程S13において、マグネシウムとペレット中のロジウムとのモル比を8:3とした。
第1の加熱工程S14において、加熱温度を875℃に設定し、加熱時間を12時間に設定した。
第1の実施例と同様に組成分析を行った結果、第2の実施例の化合物はMg2.0Ph3.01.0であった。
〔結晶構造〕
第1の実施例のX線回折(XRD)パターンをリートベルト法によって解析した結果を、図3を参照して説明する。図3は、第1の実施例のXRDをリートベルト法によって解析した結果を示すグラフである。図3の上図に示した点プロットは、測定したXRDパターンを示し、図3の上図に示した実線は、その測定したXRDパターンのフィッティングした結果を示し、図3の下図は、測定したXRDパターンとフィッティング結果との差分を示すグラフである。
リートベルト法によって解析した結果より、第1の実施例の結晶構造は、図1に示した結晶構造である、MoAlC型であることが分かった。すなわち、第1の実施例の結晶構造は、空間群がP432(213)であることが分かった。
この解析の結果より、第1の実施例の結晶構造パラメータを、表1の通りに決定した。
第2の実施例についてもXRDパターンをリートベルト法によって解析した結果、第2の実施例の結晶構造は、MoAlC型の結晶構造を有することが分かった。すなわち、第2の実施例の結晶構造は、空間群がP432(213)であることが分かった。
この解析の結果より、第2の実施例の結晶構造パラメータを、表2の通りに決定した。
なお、これらの解析において、Mgの占有率は、何れも1に固定してある。これは、X線を用いた構造解析では、軽元素であるMgを定量することが困難であるためである。
表1及び表2によれば、超伝導を有する第1の実施例の格子定数は、超伝導を有さない第2の実施例の格子定数よりわずかに小さい。これは、第2の実施例においては、Mgがわずかに欠損しており、その結果、格子がわずかに縮んでいるためである。
〔超伝導特性〕
第1の実施例及び第2の実施例の各々の電気的な特性として、抵抗率の温度依存性を、図4の(a)及び(b)に示す。
図4の(a)は、第1の実施例の電気抵抗率の温度依存性を示すグラフである。また、図4の(a)に挿入した挿入図は、温度が3K以上5K以下である範囲を拡大したものである。
図4の(b)は、第2の実施例の電気抵抗率の温度依存性を示すグラフである。また、図4の(b)に挿入した挿入図は、温度が2K以上5K以下である範囲を拡大したものである。
図4の(a)によれば、第1の実施例は、約3.9Kの超伝導臨界温度を有することが分かった。したがって、第1の実施例は、超伝導性を有することが分かった。
図4の(b)によれば、第2の実施例は、約3.9Kに小さな転移が確認されたものの、温度を2Kまで下げても超伝導状態を示さなかった。約3.9Kの小さな転移は、試料中に含まれる僅かな超伝導性を示す相に起因するものであると考えられる。したがって、第2の実施例は、超伝導性を有さないことが分かった。
〔上部臨界磁場HC2
超伝導性を有する第1の実施例について、図5の(a)及び(b)を参照して説明する。
図5の(a)は、第1の実施例に磁場を印加した場合における、電気抵抗率の温度依存性を示すグラフである。ここでは、0.1T以上1.4T以下の磁場を印加した。なお、図5の(a)には、磁場を印加していない状態で得られた電気抵抗率も併せて図示している(0Tのプロットを参照)。
図5の(b)は、第1の実施例の上部臨界磁場HC2の温度依存性を示すグラフである。図5(b)によれば、温度を0Kに外挿した場合の上部臨界磁場HC2は、3.3Tと比較的高いことが分かった。
本発明により得られた化合物は、超伝導体として利用することができる。したがって、本発明は、例えば、超伝導線材や、超伝導デバイス等に利用できる。

Claims (8)

  1. 化学式Mg2−xRhPで表される化合物。
  2. MoAlC型の結晶構造を有する、
    請求項1に記載の化合物。
  3. 上記xは0を上回る、
    請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 化学式Mg2−xRhPで表される化合物の製造方法であって、
    ロジウムとリンとを所定のモル比で混合することにより、上記ロジウムと上記リンとの混合物を得る混合工程と、
    上記混合物を加圧してペレットを作成する加圧工程と、
    上記ペレットとマグネシウムとを、不活性ガス雰囲気中にて、900℃以上1000℃以下の加熱温度で加熱する第1の加熱工程と、
    上記第1の加熱工程の後に上記ペレットを徐冷する第1の冷却工程と、を含む、
    化合物の製造方法。
  5. 上記加熱温度は、920℃以上950℃以下である、
    請求項4に記載の化合物の製造方法。
  6. 上記ロジウムと上記リンとの上記所定のモル比は、3:1.05〜1.1である、
    請求項4又は5に記載の化合物の製造方法。
  7. (1)上記第1の冷却工程により得られた化合物であって超伝導性を有さない化合物を、又は、(2)当該化合物とマグネシウムとを、不活性ガス雰囲気中にて、900℃以上1000℃以下の加熱温度で加熱する第2の加熱工程と、
    上記第2の加熱工程の後に上記化合物を徐冷する第2の冷却工程と、を更に含み、
    上記第1の加熱工程において用いる上記マグネシウムの上記ロジウム3モルに対するモル比を第1の比として、上記第2の加熱工程において用いる上記マグネシウムの上記ロジウム3モルに対するモル比である第2の比は、上記第1の比を下回る、
    請求項4〜6の何れか1項に記載の化合物の製造方法。
  8. 上記第1の冷却工程により得られた化合物であって超伝導性を有する化合物とマグネシウムとを、不活性ガス雰囲気中にて、900℃以上1000℃以下の加熱温度で加熱する第2の加熱工程と、
    上記第2の加熱工程の後に上記化合物を徐冷する第2の冷却工程と、を更に含み、
    上記第1の加熱工程において用いる上記マグネシウムの上記ロジウム3モルに対するモル比を第1の比として、上記第2の加熱工程において用いる上記マグネシウムの上記ロジウム3モルに対するモル比である第2の比は、上記第1の比を上回る、
    請求項4〜6の何れか1項に記載の化合物の製造方法。
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