JP2019206454A - 炭素材及び炭素材の表面処理方法 - Google Patents

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潔 恩田
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Junichi Morizaki
順一 森崎
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Takeshi Ogasawara
健 小笠原
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Abstract

【課題】生産性を上げ、製造コストを抑制して、改質した炭素材及び当該炭素材の表面処理方法を提供する。【解決手段】炭素材の表面処理方法は、所定の有機物を、所定の第1温度で加熱して、炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成する第1加熱処理工程と、前記炭化物を、非酸化性雰囲気中で、前記第1温度よりも高温で、かつ、前記炭化水素系ガスが発生する所定の第2温度で加熱する第2加熱処理工程と、前記炭化水素系ガスを前記第2温度で熱分解して、当該炭化水素系ガスが浸透した前記炭素材の表面近傍で熱分解炭素を形成する熱分解炭素生成工程と、前記熱分解炭素を前記所定時間、前記炭素材の表面に蒸着及び堆積させて、前記炭素材の表面に薄膜状の前記熱分解炭素層を形成する熱分解炭素層形成工程とを有している。この方法で処理された炭素材は、当該炭素材の表面に熱分解炭素が蒸着・堆積して薄膜状の熱分解炭素層が形成され、改質されている。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素材の表面近傍で加熱処理によって発生させた炭化水素系ガスを、前記炭素材の表面から浸透させ、又は当該表面に熱分解反応によって発生させた熱分解炭素を蒸着させて、当該熱分解炭素を前記炭素材の表面に堆積させて、前記炭素材の表面に薄膜状の熱分解炭素層を形成するようにした炭素材と、当該炭素材の表面処理方法に関する。
有機系ガスを用いて表面を被覆するコーティング方法の一例として、化学気相含浸(CVI:Chemical Vapor Infiltration)法、或いは化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法が知られている。
特開2009−155203号公報に開示されている炭素繊維強化炭素複合材及び単結晶引き上げ装置用部材、又は特開2016−069230号公報に開示されている熱分解炭素被膜黒鉛部材の製造方法には、CVI法又はCVD法を用いて、炭素複合材又は黒鉛部材を、炭化水素系ガスを熱分解して得られる炭素成分でコーティングして改質する方法が記載されている。
ここで、炭化水素系ガスを熱分解して得られる炭素成分は、熱分解炭素(Pyrolytic Carbon)、熱分解黒鉛(Pyrolytic Graphite)等様々な名称で呼称されている。これは処理条件、処理環境の差によるものであって、炭素の結晶性の差となって現れたものである。黒鉛結晶性が極めて発達したものは、熱分解黒鉛と呼ばれ、結晶性が低いもの或いは結晶が歪んでしまったものは熱分解炭素と呼ばれていることが多い。本明細書においては、これらを以下「熱分解炭素」と記載する。
なお、黒鉛は炭素の同素体であることから、以下本明細書において、特に断りが無い限り、「熱分解炭素」には熱分解黒鉛も含まれているものとする。
熱分解炭素が、ベース素材の炭素複合材、或いは黒鉛部材の表面に存在する気孔、或いは粒子又は繊維の隙間に浸透して析出され(CVI法)、又は蒸着する(CVD法)と、ベース素材の表面に形成された微細な気孔や繊維、粒子間の間隙は、熱分解炭素によって埋められて、熱分解炭素層が形成され、その表面は滑らかに改質することができる。
このような表面構造を備えた炭素材からなる炭素製品は、たとえば、HOPG(High Oriented Pyrolytic Graphite:高配向性熱分解グラファイト)、気相法ダイヤモンド、重負荷用C/C(Carbon Fiber/Carbon Matrix)摺動材等、高い付加価値を備えたものが知られている。
特開2009−155203号公報 特開2016−069230号公報
持田薫著 「炭素材の科学と工学」朝倉書店 1990年 稲垣道夫著 「炭素1963巻34号18頁 熱分解黒鉛の製造条件とその構造」炭素材料科学会 1963年 古沢正明 吉岡敏明 内田美穂 奥脇昭嗣著 「第3回研究討論会ポスターセッション P−6 紙・フェノール樹脂積層板の熱分解」プラスチックリサイクル化学研究会(FSRJ) 2000年 三林進 荒木文雄著 「討論会講演要旨26巻126頁 レゾール樹脂の合成条件と熱分解生成物の関係」合成樹脂工業会 1976年 大沢善美 中島剛著 「炭素2007巻230号362頁 CVD/CVI法によるリチウムイオン電池負極用炭素の表面修飾」炭素材料科学会 2007年
ここで、上記のようなCVI法又はCVD法によって表面処理が施された炭素製品は、いずれも高価格な製品となってしまうことが問題である。
これは、CVI法、CVD法がいずれも高コストな方法であって、当該高コストが上記の炭素製品に反映されていることによる。CVI法、CVD法が高コストとなる主な要因は、第一に原材料費等を仕入れる変動費が高いこと、第二に設備費用が高いこと、第三に生産性が悪いことの三点を挙げることができる。
第一の変動費が高くなる原因は、熱分解炭素に係る原材料等の費用が嵩むことによるものである。
熱分解炭素の原材料は、高純度の気体原料である炭化水素系ガス、又は炭化水素系ガスを発生可能な液体原料であって、たとえば、メタン、エタン、プロパン、ベンゼン、トルエン又はその他炭化水素基を備えた有機化合物である。さらに、これら原材料を炉内に誘導するキャリアガスが必要となる。当該キャリアガスは炉内を非酸化性雰囲気で維持可能な、たとえば、窒素(N)、アルゴン(Ar)、水素(H)である。当該原材料とキャリアガスの仕入れに伴う費用が、熱分解炭素で炭素材をコーティングする表面が大きく、広くなればなるほど大きな負担となる。
第二の設備費用が高くなる原因と、第三の生産性が悪くなる原因は、CVI法、CVD法がいずれも特殊な炉体構造を有する反応炉を使ってバッチ式によって行われることによるものである。
ここで、反応炉は、真空炉、ガス置換炉、ロータリーキルン等をベースにしたものであって、炉内が非酸化性雰囲気の高温環境に整えられているものである。当該炉内に、熱したベース素材と上記の原材料、また好ましくはキャリアガスが投入される。
CVI法又はCVD法は、炉内を非酸化性雰囲気の特殊な環境に維持しつつ、炭化水素系ガスをベース素材表面の近傍へ熱反応していない未反応状態で投入しなければならないので、炉体構造が複雑化し、設備費用が高くなる。また、ベース素材の量が炉内の容積、大きさによって制限され、さらには、1回の製造工程ごとに製品を取り出すバッチ式であることに加えて、炭素材の加熱時間及び冷却時間を十分に取らねばならないので、生産性が悪い。
ここで本願発明者らは、コストを抑えるため、CVI法、CVD法によるベース素材、炭素複合材又は黒鉛部材の表面処理を、バッチ式に替えて連続式で実用化可能かどうか、ロータリーキルンを用いて検討したが、現時点において、従来のCVI法又はCVD法は、バッチ式から連続式に替えることはできるものの、連続式で実用化するとなると非常に困難であると結論付けた。
これはすなわち、ロータリーキルンはその構造上、非酸化性雰囲気で気密を保つことは容易であるが、CVI法、CVD法は、回転する炉内で転動するベース素材の表面近傍に、未反応状態の炭化水素系ガスを導入しなければならない。ここで生産性を上げるために、ロータリーキルンを大型化すると、加熱されるロータリードラム部分は大きくなる。そのため、炭化水素系ガスを発生させる原材料は、ベース素材の表面近傍へ到達する前に熱反応を起こしてしまうという問題が生じるからである。
また、ベース素材の表面に熱分解炭素を蒸着及び堆積させてコーティングすることに要する時間、換言すれば、炭化水素系ガスの熱分解反応によって、ベース素材表面を被覆するほど十分な熱分解炭素が生成される時間、ベース素材を炉内に留めておかなければならない。さらに、熱分解炭素でコーティングされたベース素材が、炉から排出され冷却されるまでの間、空気による酸化を抑制するために、非酸化性雰囲気が保たれた長時間の冷却工程をロータリーキルンに連設しなければならない。したがって、上記の問題を考慮して連続式を実現するためには、ロータリーキルンと冷却工程からなる生産ラインが、大型化、長大化することに加えて複雑化してしまうおそれがある。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、生産性を上げ、製造コストを抑制して、改質した炭素材及び当該炭素材の表面処理方法を提供することである。
請求項1に記載の炭素材は、炭素材の表面近傍に滞留させた炭化水素系ガスを前記炭素材の表面から浸透させ、当該炭化水素系ガスを熱分解して形成される熱分解炭素を前記炭素材の表面に蒸着及び堆積させて、
前記炭素材の表面に薄膜状の熱分解炭素層を形成するようにした炭素材であって、
前記炭化水素系ガスが、
所定の有機物を、所定の第1温度で加熱して、所定の炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成する第1加熱処理と、
前記炭化物を、非酸化性雰囲気中で、前記第1温度よりも高温で、かつ、前記炭化水素系ガスが発生する所定の第2温度で加熱する第2加熱処理とから形成され、
当該第2加熱処理で発生した前記炭化水素系ガスを、前記非酸化雰囲気中で前記炭素材と共に前記第2温度で加熱したとき、
当該第2温度で前記炭化水素系ガスが熱分解されて前記熱分解炭素が形成され、
当該熱分解炭素が、前記炭素材の表面で前記熱分解炭素層を形成するようにしたことを特徴とする。
請求項2に記載の炭素材は、請求項1に記載の発明において、前記第1温度が、430℃以上600℃以下であることを特徴とする。
請求項3に記載の炭素材は、請求項1に記載の発明において、前記第2温度が、800℃以上1200℃以下であることを特徴とする。
請求項4に記載の炭素材は、請求項1に記載の発明において、前記有機物から前記炭化物を形成したときの重量減少率が50%以下であり、前記炭化物から前記炭化水素系ガスが発生したときの重量減少率が4%以上であることを特徴とする。
請求項5に記載の炭素材の表面処理方法は、炭素材の表面近傍に滞留させた炭化水素系ガスを前記炭素材の表面から所定時間浸透させ、当該炭化水素系ガスを熱分解して形成される熱分解炭素を、所定時間、前記炭素材の表面に蒸着及び堆積させて、
前記炭素材の表面に薄膜状の熱分解炭素層を形成するようにした炭素材の表面処理方法であって、
所定の有機物を、所定の第1温度で加熱して、炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成する第1加熱処理工程と、
当該第1加熱処理工程後に、前記炭化物を、非酸化性雰囲気中で、前記第1温度よりも高温で、かつ、前記炭化水素系ガスが発生する所定の第2温度で加熱する第2加熱処理工程と、
当該第2加熱処理工程と同時に、前記炭化水素系ガスを前記第2温度で熱分解して、当該炭化水素系ガスが浸透した前記炭素材の表面近傍で熱分解炭素を形成する熱分解炭素生成工程と、
当該熱分解炭素生成工程と同時に、前記熱分解炭素を前記所定時間、前記炭素材の表面に蒸着及び堆積させて、前記炭素材の表面に薄膜状の前記熱分解炭素層を形成する熱分解炭素層形成工程と、
を有することを特徴とする。
請求項6に記載の炭素材の表面処理方法は、請求項5に記載の発明において、前記第1温度が、430℃以上600℃以下であることを特徴とする。
請求項7に記載の炭素材の表面処理方法は、請求項5に記載の発明において、前記第2温度が、800℃以上1200℃以下であることを特徴とする。
請求項8に記載の炭素材の表面処理方法は、請求項5に記載の発明において、前記第1加熱処理工において前記有機物から前記炭化物が形成されたときの重量減少率が50%以下であり、前記第2加熱処理工程において前記炭化物から前記炭化水素系ガスが放出されたときの重量減少率が4%以上であることを特徴とする。
本発明の炭素材によれば、熱分解炭素を生成するための炭化水素系ガスを、予め第1加熱処理によって所定の有機物を加熱処理して炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成し、さらに、非酸化性雰囲気中で当該炭化物を第2加熱処理に係る第2温度で加熱することによって、炭化水素系ガスを発生させるようにした。このとき、第2温度で当該炭化水素系ガスをベースとなる炭素材の近傍で熱分解すると、当該炭素材の表面に浸透した炭化水素系ガスから熱分解炭素が生成され、当該熱分解炭素が炭素材の表面に蒸着・堆積して、薄膜状の熱分解炭素層を形成することができる。また、炭化水素系ガスの発生源を、コーティング対象の炭素材の近傍に配置するようにしている。
これによって、炭素材の表面に熱反応が未反応状態の炭化水素系ガスを導入する複雑な炉構造を必要とせずに、熱分解炭素によるCVI法又はCVD法と同様に炭素材の表面をコーティングすることができる。そして、プッシャー炉或いはトンネル炉のような連続式反応炉を用いて、炭素材の表面に熱分解炭素層を形成することができる。そのため、生産性を上げて、コストを抑えることができる。
本発明の炭素材の表面処理方法によれば、所定の有機物を第1温度で加熱して炭化水素系ガスを発生可能な炭化物に形成する第1加熱工程と、当該炭化物に炭素材を加えて別途炉内で行われる第2加熱処理工程、熱分解炭素生成工程、熱分解炭素層形成工程の二段階で処理するようにした。そして、炉内では炭化物から発生した炭化水素系ガスが炭素材の近傍に滞留し、そのまま熱分解されて熱分解炭素が生成される。このとき、炭素材の表面に浸透した炭化水素系ガスから熱分解炭素が生成され、当該熱分解炭素が炭素材の表面に蒸着・堆積して薄膜状の熱分解炭素層を形成するようにした。
すなわち、炉外からガス化された状態で炭化系水素ガスを導入して、炭素材の表面近傍で熱分解炭素を形成する従来のCVI法或いはCVD法と異なり、炉内に配置した炭素材の近傍に炭化水素系ガスの発生源を配置して、炭素材の表面を薄膜で被覆する処理方法を実現することができる。したがって、従来のCVI法又はCVD法のように、非酸化性雰囲気下で炭素材の表面近傍へ炭化水素ガスを導入する工程を省くことができるので、炉体構造を簡略化し、またバッチ式から連続式に変更することができる。そのため、生産性を上げて、コストを抑えることができる。
第1実施例に係る第1実験の実験結果を示す表である。 第2実施例に係る第2実験の実験結果を示す表である。 第3実施例に係る第3実験で用いた実験装置の構成の概略を示す説明図である。 第3実施例に係る第3実験のうち、第1炭素材に係る実験結果を示す表である。 第3実施例に係る第3実験のうち、第2炭素材に係る実験結果を示す表である。 第4実施例に係る第4実験で用いた実験装置の構成の概略を示す説明図である。 第4実施例に係る第4実験の実験結果を示す表である。 第5実施例に係る第5実験の実験結果を示す表である。
本発明は、炭素材の表面に存在する気孔、炭素繊維間の隙間に、より低分子な炭素を蒸着させて埋め、さらに当該炭素を堆積させて、炭素材の表面を薄膜状にコーティングするものである。
ここで、炭素材は、有機物を十分に炭化処理、すなわち800℃以上で熱処理した有機物からなるもの、天然に産出される炭素を主成分としたもの、又は炭素粉フィラーとバインダーからなる炭素材料を成形型内に入れて800℃以上で熱処理して形成される炭素バルク材、或いはそれらの加工品をいう。具体的には、樹脂炭化物(ガラス状カーボン)、コークス、カーボンブラック、炭素繊維、人造又は天然の黒鉛、C/C(Carbon Fiber/Carbon Matrix)複合材、CIP(Cold Iso−static Press)等方性黒鉛材等であるが、これらに限定されず、炭素又はその同素体を構成材料に備えるものを含めても良い。
炭素材の表面をコーティングする方法は、上記のCVI法又はCVD法に準ずるものであって、非酸化性雰囲気の中で、低分子量の炭化水素系ガスを炭素材の表面近傍で滞留させて熱分解して熱分解炭素を形成することによって行われる。
本発明では、所定の有機物を所定の第1温度で加熱する第1加熱処理によって、炭化水素系ガスを発生可能な炭化物が形成されている。
本発明に係る所定の有機物とは、比較的炭化率の高い樹脂、たとえばフェノール樹脂、フラン樹脂等の樹脂類、木材、セルロースといった天然由来の有機物であって、固相炭化するもの、又は、石油系或いは石炭系のピッチ等が好ましい。なお、これらに限定されるものではなく、後述するように低分子量の炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成することができる有機物であれば良い。
また、所定の有機物は、液体状であっても良い。これは液体状の有機物であっても、乾燥、凝固等によって固化可能なものがあり、430℃以上で加熱処理を行うと炭化が開始されて、硬化するものがあることによる。
液体から炭化、硬化した炭化物は、容易に破砕することができ、容易に取り扱うことができるので、後述する第2加熱処理工程以降の各種処理を行う場合に、固体状の有機物と同様に利用することができる。
本発明では、所定の有機物を所定の第1温度、すなわち、430℃〜600℃で加熱処理して炭化物を形成する工程を第1加熱処理工程とする。
第1温度の下限を430℃と定めたのは、一般的に有機物内で炭素構造骨格の形成が始まる、いわゆる炭化開始温度が400℃とされていること、及び炭化水素系ガスの発生順序に関係する。
ここで、炭化開始温度については、前記の非特許文献1を参照のこと。
有機物を加熱処理したとき、約400℃を超えると炭化が開始される。このとき、有機物からは熱分解によって、炭素原子数の多い、すなわち分子量の大きいガスから順に発生する。この高分子の有機化合ガスは、後述する第2加熱処理において不都合が生じるので除いておくことが好ましい。
また、このような高分子有機化合ガスは、所定の有機物からなる生材(Green Body)を炭化して炭素材、炭素焼成品を生産する工業的な熱処理工程において、特に約400℃までの昇温処理工程で大量に発生することが知られている。当該高分子有機化合ガスは、未処理状態で大気中に放出されると重大な大気汚染問題を引き起こす原因となるので、排ガス処理によって無害化してから大気中に放出することが行われている。
このような有害な高分子有機化合ガスは約400℃の炭化開始温度から430℃ぐらいまでには大部分が放出されるため、本発明では、第1温度の下限を430℃としている。
430℃〜600℃で有機物を加熱処理すると、高分子有機化合ガスに係るガス成分も抜けて、続いて低分子炭化水素系ガスが発生可能な状態で炭化が進行して、炭化物が形成される。当該炭化物からは、後述する第2加熱処理で加熱処理をしたとき、低分子炭化水素系ガスが放出される。
ここで、本発明に係る低分子炭化水素系ガスは、メタン、エタン、プロパン、ベンゼン、トルエン等の低分子量炭化水素系有機化合物と水素を含むガスである。
第1加熱処理工程において、所定の有機物から高分子有機化合ガスに係るガス成分が抜けて炭化物が形成されると、当初の有機物の重量よりも炭化物の重量は軽くなる。このときの、有機物から炭化物の重量減少率は50%以下であることが好ましい。
第1加熱処理に係る第1温度、すなわち430℃〜600℃で有機物を炭化物に変成する加熱処理を行ったとき、当該炭化物から発生可能となる上記の低分子炭化水素系ガスについては、前記の非特許文献2〜非特許文献5を参照のこと。
そして、第1温度の上限を600℃と定めたのは、600℃を超えるまで昇温処理を施すと、上記の低分子炭化水素系ガスに係るガス成分が抜けてしまって、第2加熱処理工程において、炭化物から十分な量の低分子炭化水素系ガスが発生し難くなり、コーティングに必要な熱分解炭素を生成することが困難になるおそれがあるからである。
予め第1加熱処理を行って、所定の有機物から高分子炭化水素系ガスに係るガス成分を除去し、所定の低分子炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成しておくことによって、続く第2加熱処理で速やかに当該炭化物から所定の低分子炭化水素系ガスを放出させることができる。
また、第1加熱処理によって予め有害となる高分子有機化合物ガスに係るガス成分を除去されていることから、第2加熱処理において当該高分子有機化合ガスの発生を抑えることができる。そのため、後述する第2加熱処理を所定の反応炉内で行うとき、排ガス処理に係る工程、又は炉体構成を省くことができる。
したがって、生産コストを抑えることができ、また素早く処理を行うことができるので、連続生産することができる。
第2加熱処理は、非酸化性雰囲気に保たれた所定の反応炉内で行われる。第1加熱処理で形成した炭化物に基づいて、所定の第2温度に係る第2加熱処理によって、本発明に係る所定の低分子炭化水素系ガスは、形成されている。
ここで反応炉は、プッシャー炉、又はトンネル炉であって、連続式で処理可能な炉であれば良い。なお、コーティング対象の炭素材に制限が課されるが、ロータリーキルンを使用することもできる。
本発明では、第1加熱処理工程に係る第1温度である430℃〜600℃よりも高い第2温度、すなわち、800℃〜1200℃で加熱して、第1加熱処理による炭化物から低分子炭化水素系ガスを発生、放出する工程を第2加熱処理工程とする。
第2加熱処理に係る第2温度とした、800℃〜1200℃で炭化物を加熱すると、低分子炭化水素ガスに係るガス成分が抜けて、炭化物は軽くなる。第2加熱処理前と第2加熱処理後で炭化物の重量を比較すると、当該炭化物の重量減少率は4%以上であることが好ましい。当該重量減少率が4%以上の場合、必要十分な量の低分子炭化水素系ガスが発生、放出される。
ここで、第2温度の下限を800℃としたのは、800℃未満であると、後述する熱分解炭素生成工程と、熱分解炭素層形成工程において、炭素材が十分に加熱されず、当該炭素材の表面における熱分解反応が抑制されて熱分解炭素層が形成され難くなるからである。
一方、第2温度の上限を1200℃としたのは、第一に1200℃を超えると、低分子炭化水素系ガスが炭素材の表面ではなく、炉内の気相中で熱分解反応を呈して熱分解炭素を形成してしまう問題があるからである。この場合には、熱分解反応の開始当初に形成された熱分解炭素が炭素材の表面に蒸着し難くなり、既に形成された熱分解炭素が炭素材の表面に堆積するのみになる。これによって、炭素材の表面と熱分解炭素の密着性が悪化し、炭素材の表面には均一な薄膜が形成されなくなるおそれがある。
第二に1200℃を超えると、炉内を非酸化性雰囲気に維持するために窒素(N)ガス或いはアルゴン(Ar)ガスで雰囲気調整可能な連続式の炉の種類が少なくなり、耐熱加工等から高価な炉となることが挙げられる。そのため、本発明の目的である低コスト化にそぐわない。
低分子炭化水素系ガスは、第1加熱処理において所定の有機物から形成された炭化物を、第2加熱処理におけるガス発生源として、当該炭化物から発生し、炭素材の表面近傍に放出される。当該低分子炭化水素系ガスがさらに高熱な炭素材の表面に浸透すると熱分解反応が発生し、熱分解炭素が生成される。炭素材の表面に浸透した低分子炭化水素系ガスから生成された熱分解炭素が、炭素材の表面に蒸着・堆積して、薄膜状の熱分解炭素層が形成される。これによって、炭素材の表面は、均され、熱分解炭素層でコーティングされた炭素材を得ることができる。
ここで、第1加熱処理工程は、所定の有機物から炭化物を形成する第1加熱処理を行う工程である。また第2加熱処理工程は、炭化物から所定の低分子炭化水素系ガスを発生させる第2加熱処理を行う工程である。当該第1加熱処理工程と第2加熱処理工程を経て低分子炭化水素系ガスが形成される。
また、炭素材の表面処理は、第2加熱処理工程と同時に、熱分解炭素生成工程と、熱分解炭素層形成工程が必要となる。
熱分解炭素生成工程は、第2加熱処理工程で発生し、炭素材の表面に浸透した低分子炭化水素系ガスを第2温度、すなわち800℃〜1200℃で熱分解して、熱分解炭素を生成する工程である。
炭化物を第2温度で熱分解すると低分子炭化水素系ガスと水素(H)ガスが発生し、炉内へ放出される。発生した低分子炭化水素ガスが熱分解されて熱分解炭素を生成する一方で、発生した水素(H)ガスは、炉内に充満し非酸化性雰囲気を作り出すことができる。これによって、熱分解炭素の生成を促進することができ、また、非酸化性雰囲気を形成するためにアルゴン(Ar)ガス等の希ガス類を必要以上に使用しなくても良くなるので、低コスト化を図ることができる。
ここで、熱分解炭素生成工程では、第2加熱処理工程で発生させた低分子炭化水素ガスを炭素材の表面近傍に滞留させて、必要十分量以上の熱分解炭素が当該炭素材の表面近傍に生成されるように、反応炉内へ投入する炭素材及び炭化物の配置、量等を考慮しなければならない。すなわち、発生した低分子炭化水素系ガスが、炭素材の表面に容易に浸透し、さらには当該低分子炭化水素系ガスから生成された熱分解炭素が炭素材の表面に容易に蒸着・堆積するような環境を整えておくことによって、次の熱分解炭素層形成工程へ容易に移行させることができる。
炭素材と低分子炭化水素ガスを発生可能な炭化物は、たとえば、図3に示すように、二重ルツボ10内に配置される。二重ルツボ10は、内側ルツボ11に炭化物20が配され、外側ルツボ12に炭素材21が配されている。そして、反応炉内で外部から二重ルツボ10が加熱されると、内側ルツボ11内は、外側ルツボ12よりも昇温が遅れるので、低分子炭化水素系ガスの発生を遅らせることができる。これによって、当該低分子炭化水素系ガスの熱反応を遅らせて、未反応状態の低分子炭化水素系ガスを炭素材21の表面近傍に充満させることができる。
なお、炭素材と炭化物を収める容器は、二重ルツボ10に限定されるものではなく、たとえば、匣鉢、サガー等の耐熱性に優れた容器を使用しても良い。ただし、炭素材の近傍に炭化物が配置されているようにする必要がある。これは、炭素材と炭化物の距離が離れている場合、炭化物から発生した低分子炭化水素系ガスは、拡散して薄まり、また、炭素材の表面に到達するまでに熱反応を起こして煤を発生させてしまい、熱分解炭素を炭素材の表面に形成することができなくなるおそれがあるからである。
従来のCVI法、又はCVD法によれば、所定温度に加熱された炭素材の表面近傍に、熱反応が未反応状態の低分子炭化水素系ガスを滞留させると、炭素材の表面と低分子炭化水素系ガスの間で熱分解反応が誘起され、熱分解炭素を生成することができる。これはすなわち、炭素材表面の温度を炭化物の温度よりも高温に保っておくことが望ましいということである。
ここで、二重ルツボ10を用いることによって、外側ルツボ12に配した炭素材21の温度が、先に第2温度、すなわち800℃〜1200℃に到達しても、炭化物20の温度を炭素材21の温度よりも低くしておくことができるので、より低い温度から低分子炭化水素系ガスを発生させることができ、熱反応が未反応状態の低分子炭化水素系ガスを炭素材21の表面近傍に滞留させることができる。
また、低分子炭化水素系ガスの発生を遅らせるために、内側ルツボ11に入れる炭化物20の量を増やしても良い。これによって、低分子炭化水素系ガスの発生量を多くすることができ、炭化物20の中心温度が第2温度まで到達するまでに時間がかかるようにすることができる。
さらに、内側ルツボ11に入れる炭化物に、吸熱反応を呈する、たとえば、炭酸カルシウムといった物質を混ぜ込んで当該炭化物の昇温を遅らせるようにしても良い。
さらにまた、二重ルツボ10ではなく、たとえば、炭化物20を断熱性に優れた発泡体状に形成したり、或いは発泡体で炭化物20を包むようにしても良い。このとき、当該発泡体が吸熱性を有している場合には、断熱性と併せて炭化物20の昇温を遅らせて、より多くの低分子炭化水素系ガスを発生させることができる。
このように、炭化物20の昇温を遅らせることによって、低分子炭化水素系ガスから十分な量の熱分解炭素を生成する時間を確保することができる。
熱分解炭素層形成工程は、炭素材の表面近傍で生成された熱分解炭素を、所定時間、炭素材の表面に蒸着・堆積させることで、炭素材の表面に薄膜状の熱分解炭素層を形成する工程である。
熱分解炭素層形成工程と同時に行われる第2加熱処理工程及び熱分解炭素生成工程で発生した水素(H)ガスは、酸素(O)との反応性が高いため、炭素材の表面近傍を非酸化性雰囲気に維持することができる。また、反応炉内も、水素(H)ガスによって非酸化性雰囲気に変えることができ、当該水素(H)ガスと、炉内へ別途導入された窒素(N)ガス、水素(H)ガス、又はアルゴン(Ar)ガス或いはこれに類する希ガス類からなる非酸化性ガスによって、炉内に残存している酸化性ガスに基づく酸化性雰囲気を容易にパージすることができ、炉内雰囲気を非酸化性雰囲気へ調整することができる。
上記の第2加熱処理工程、熱分解炭素生成工程、熱分解炭素層形成工程は、たとえば、プッシャー炉或いはトンネル炉等の連続炉の炉内で、ほぼ同時進行で処理される。
当該連続炉は昇温速度を調整可能に形成されており、当該昇温速度は、第2温度、すなわち800℃〜1200℃に至るまでに数時間、たとえば、2時間乃至は6時間程度となるように調整されている。これによって、第2加熱処理工程で、発生した低分子炭化水素系ガスが未反応状態で炭素材の表面に浸透し、先に昇温した炭素材の表面で熱分解反応を起こすことによって、熱分解炭素が生成され、生成された熱分解炭素は、時間をかけてその結晶構造を成長させて、炭素材表面の気孔、炭素繊維の隙間に浸透し、さらには蒸着・堆積するので、炭素材の表面に薄膜状の熱分解炭素層を形成することができる。
なお、昇温速度が遅い場合、すなわち、炭化物が数日かけて第2温度まで昇温される炉内の場合、熱分解反応が開始される約800℃に至るまでに、低分子炭化水素系ガスは炭化物からすべて放出されてしまうため、熱分解炭素生成工程において十分な熱分解炭素の生成を望むことができない。
一方、昇温速度が速い場合、すなわち、数十分〜1時間程度で第2温度まで昇温される炉内の場合、低分子炭化水素系ガスは一気に大量発生する。しかしながら、当該低分子炭化水素系ガスは、大量発生したことによって一気に拡散する一方で、炭素材の表面温度は、低分子炭化水素系ガスの熱分解反応が呈され、熱分解炭素が生成される温度には達していない。そのため、熱分解炭素生成工程において十分に熱分解炭素が生成されず、熱分解炭素層形成工程において、薄膜状の熱分解炭素層を形成することが困難となる。
本発明の炭素材、又は炭素材の表面処理方法によれば、所定の有機物を第1温度、すなわち430℃〜600℃で加熱して低分子炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成し、当該炭化物をコーティング対象の炭素材の近傍に配置して、第2温度で保たれた連続炉、たとえば、プッシャー炉或いはトンネル炉に入れて焼き上げるようにした。
これによって、非酸化性雰囲気下で低分子炭化水素系ガスを炭素材の表面近傍で熱分解して、熱分解炭素を生成することができる。そのため、CVI法、又はCVD法を連続式で処理することができ、生産コストを抑えることができる。
したがって、従来、バッチ式のCVI法又はCVD法で製造していた炭素製品のみならず、他のセラミックス製品、或いは従来コスト的に見合わなかった分野についても応用して利用することができる。
上記の形態で実施される本発明について、以下のような実施例を用意して、当該実施例を用いた実験を行った。当該実施例、及び実験結果は、添付した図にしたがって説明する。
炭素材の表面に薄膜状の熱分解炭素層が形成されたか否かは、
1)重量の増加、
2)窒素吸着測定法によるBET比表面積の減少、
を測定して比較することによって確認した。さらに、当該表面物性の変化をラマン分光分析で分析して、総合的に判断することによって、熱分解炭素層が形成されたことによって、炭素材の表面が均され、改質されたか否かを判断することができる。
これは、すなわち、炭素材の表面に熱分解炭素層が形成された場合、炭素材の重量は、第2加熱処理前よりも第2加熱処理工程後の方が、熱分解炭素が堆積した分、増加する。また炭素材の表面の隙間や気孔が、熱分解炭素で埋められることによって、第2加熱処理前よりも第2加熱処理工程後の方がBET比表面積は減少する。さらに、炭素材の表面が熱分解炭素によってコーティングされて変化したとき、炭素材に係る炭素分子構成と、熱分解炭素に係る炭素分子構成が異なる場合には、ラマン分光分析に係るR値は変化する。
上記の測定実験のうち、2)窒素吸着測定法によるBET比表面積の測定には、島津製作所製ASAP 2000を使用し、3)ラマン分光分析による得られるR値の測定には、日本分光製NRS3100を使用した。
第1実施例に係る第1実験は、以下のように、所定の炭素材及び有機物を使用し、所定の条件を整えて行った。
炭素材は、多孔質炭素板である。当該多孔質炭素板は、有機繊維とフェノール樹脂結着剤を含むものであって、リン酸型燃料電池のリン酸リザーバーとして使用されている。また、当該多孔質炭素板は、2800℃で処理されたものであって、ポアー径が25μm、気孔率が56%、圧縮強度が4.4MPa、固有抵抗が4800μΩcm、熱伝導率が3.5W/m/Kの特性を有している。
第1実験に係る炭素材は、当該多孔質炭素板を20mm四方で厚さが2mmの平板状に複数枚切り出して使用する。複数枚の炭素材のうち、1枚を取り出し、基準値となる代表サンプルとして、窒素吸着法によるBET比表面積の測定と、ラマン分光分析によるR値の測定を行った。この結果、基準値となる比表面積は25m/g、R値は0.23であった。なお、BET比表面積の測定においては、20mm四方の平板から10mm四方の平板を切り出して測定している。
有機物は、楢の木板である。当該木板から一辺が20mmの立方体を複数個切り出して使用する。
第1加熱処理工程に係る実験は、上記の有機物を3つのグループに分け、1日かけて、それぞれ430℃、530℃、630℃の各温度で加熱処理を行って炭化物を形成した。
この結果、すべての立方体は、体積と重量が減少していることを確認することができた。ここで、430℃で第1加熱処理を行ったグループの立方体を測定したところ、有機物に対する炭化物の重量減少率は、平均して44%であった。また全ての立方体は、外観が黒色を呈し、取り扱い容易で良好である。
上記の炭素材と炭化物を第2加熱処理工程、熱分解炭素生成工程、熱分解炭素層形成工程で処理するため、以下の条件で次の実験を行った。
第2加熱処理工程は、炭素材を黒鉛ルツボに入れ、その周りを炭化物で黒鉛ルツボ上縁まで埋めたものを、電気加熱される連続式プッシャー炉へ入れて行われる。なお、黒鉛ルツボの大きさは、内径300mm×深さ300mmである。
このとき、炉内は窒素(N)ガスによって非酸化性雰囲気に調整される。炭素材及び炭化物は2時間かけて850℃、1150℃の各温度で焼き上げてから放熱させて冷却した。
冷却後、黒鉛ルツボから取り出された炭化物は、重量が測定され、減少量が計測される。また、黒鉛ルツボから取り出された炭素材は、重量の測定、BET比表面積の測定、R値の測定が行われる。当該測定結果に基づいて、基準値と比較した結果を図1に表示する。
図1に示すように、条件1〜条件4では、全て炭素材の重量の増加、比表面積の減少、及びR値の変化が認められる。これによって、炭素材の表面の物性が変化しているので、炭素材の表面構造は変化し、改質されているものと判断することができる。
一方、条件5及び条件6で使用した炭化物は、第1加熱処理に係る第1温度、すなわち430℃〜600℃の範囲を外れた630℃で加熱処理したものである。
ここで条件5及び条件6と、条件1〜条件4と比べると、重量の増加量、比表面積の減少量が共に少なく、R値の変化も小さい結果が得られた。ここで、条件5及び条件6の重量減少率について着目すると、第2加熱処理に係る炭化物の重量減少率はいずれも4%以下である。ここから、低分子炭化水素系ガスの発生量が十分ではなかったことが推察される。そのため、条件5及び条件6では、熱分解炭素の生成量が少なくなって、炭素材の表面に大きな変化として現れるほど熱分解炭素層が形成されてはいないと考察することができ、これによって、炭素材の表面構造は大きく変化していないので、改質されてはいないと判断することができる。
次に条件を変えて、第2実施例に係る第2実験を行った。
炭素材は、東洋炭素製IG11である。これを10mm厚×50mm角の平板状に複数枚切り出して使用した。複数枚の炭素材のうち、1枚を取り出し、基準値となる代表サンプルとして、窒素吸着法によるBET比表面積の測定と、ラマン分光分析によるR値の測定を行った。この結果、基準値となる比表面積は25m/g、R値は0.17であった。なお、BET比表面積の測定においては、10mm厚×50mm角の平板から一辺10mmの立方体を切り出して測定している。
有機物は、第1実施例と同様に、楢の木板である。当該木板から一辺が20mmの立方体を複数個切り出して使用する。
第1加熱処理工程に係る実験は、第1実施例と同様に、上記の有機物を3つのグループに分け、1日かけて、それぞれ430℃、530℃、630℃の各温度で加熱処理を行って炭化物を形成した。
この結果、すべての立方体は、体積と重量が減少していることを確認することができた。ここで、430℃で第1加熱処理を行ったグループの立方体を測定したところ、第1実施例と同様に、有機物に対する炭化物の重量減少率は、平均して44%であった。また全ての立方体は、外観が黒色を呈し、取り扱い容易で良好である。
上記の炭素材と炭化物を第2加熱処理工程、熱分解炭素生成工程、熱分解炭素層形成工程で処理するため、以下の条件で次の実験を行った。
第2加熱処理工程は、炭素材を黒鉛ルツボに入れ、その周りを炭化物で黒鉛ルツボ上縁まで埋めたものを、電気加熱される連続式プッシャー炉へ入れて行われる。なお、黒鉛ルツボの大きさは、内径300mm×深さ300mmである。
このとき、炉内は窒素(N)ガスによって非酸化性雰囲気に調整される。炭素材及び炭化物は2時間かけて850℃、1150℃の各温度で焼き上げてから放熱させて冷却した。
冷却後、黒鉛ルツボから取り出された炭化物は、重量が測定され、減少量が計測される。また、黒鉛ルツボから取り出された炭素材は、重量の測定、BET比表面積の測定、R値の測定が行われる。当該測定結果に基づいて、基準値と比較した結果を図2に表示する。
図2に示すように、条件1〜条件4では、全て炭素材の重量の増加、比表面積の減少、及びR値の変化が認められる。これによって、炭素材の表面の物性が変化しているので、炭素材の表面構造は変化し、改質されているものと判断することができる。
一方、条件5及び条件6で使用した炭化物は、第1加熱処理に係る第1温度、すなわち430℃〜600℃の範囲を外れた630℃で加熱処理したものである。ここで条件5及び条件6と、条件1〜条件4と比べると、重量の増加量、比表面積の減少量が共に少なく、R値の変化も小さい結果が得られた。
ここで、条件5及び条件6の重量減少率について着目すると、第2加熱処理に係る炭化物の重量減少率はいずれも4%以下である。ここから、低分子炭化水素系ガスの発生量が十分ではなかったことが推察される。そのため、条件5及び条件6では、熱分解炭素の生成量が少なくなって、炭素材の表面に大きな変化として現れるほど熱分解炭素層が形成されてはいないと考察することができ、これによって、炭素材の表面構造は大きく変化していないので、改質されてはいないと判断することができる。
また、第1実施例に係る第1実験、及び第2実施例に係る第2実験の結果から、所定の有機物を加熱して炭化物を形成する第1加熱処理工程において、第1温度の範囲は、430℃〜600℃であることが好ましいということを確認することができた。当該範囲内で有機物を加熱処理すると、別途行われる第2加熱処理工程において、炭化物は、所定量の低分子炭化水素系ガスを放出することができる。
次に条件を変えて、第3実施例に係る第3実験を行った。当該段3実験では二種類の炭素材を用意した。
第1の炭素材は、カーボンブラックである。当該カーボンブラックは、ライオン製ケッチェンブラックを使用し、窒素吸着法によるBET比表面積の測定と、ラマン分光分析によるR値の測定を行って基準値とした。当該基準値は、比表面積が980m/g、R値が0.54である。
第2の炭素材は、鱗片状黒鉛粉である。当該鱗片状黒鉛粉は、丸豊鋳材製作所製であって、約4μm径のものを使用する。測定した基準値は、比表面積が26m/g、R値が0.17である。
有機物は、タールピッチである。当該タールピッチは、JFEケミカル製PK−Eを使用している。当該タールピッチを第1加熱処理工程で加熱処理して炭化物を形成した。処理温度は、350℃、430℃、500℃、650℃、処理時間は3日間である。第1加熱処理工程後、室温まで冷却してから破砕した。当該破砕には、ハンマーミル粉砕機と5φmm穴スクリーンを使用し、粒度を揃えた破砕粒を形成した。
ここで、350℃で加熱処理した炭化物は、破砕中に煙が発生するトラブルが生じたため、破砕を中止し、第3実験で使用する炭化物から外すこととした。
なお、430℃で加熱処理した炭化物は、第1加熱処理工程前の有機物と比較して、その重量減少率は31%であった。第3実験には、図4及び図5に示すように、500℃で加熱処理した炭化物と、650℃で加熱処理した炭化物を使用する。
紛体状の炭素材と、粒体状の炭化物が収納される容器は図3に示すような蓋付きの二重ルツボ10である。二重ルツボ10は、内側ルツボ11と外側ルツボ12とからなる。内側ルツボ11は、内径100mm×深さ200mm、肉厚10mmの大きさで、炭化物20が約180mmの深さまで収納される。外側ルツボ12は、内径250mm×深さ300mm、肉厚20mmの大きさで、炭素材21、すなわち本実施例においては第1炭素材21a又は第2炭素材21bが収納される。
上記の第1炭素材21a及び第2炭素材21b、並びに炭化物20を、第2加熱処理工程、熱分解炭素生成工程、熱分解炭素層形成工程で処理するため、以下の条件で次の実験を行った。
第2加熱処理工程は、内側ルツボ11に炭化物20を収納し、外側ルツボ12に炭素材21、すなわち第1炭素材21a、又は第2炭素材21bを収納した二重ルツボ10を、電気加熱される連続式ローラーハースキルンへ投入して行われる。
このとき、ローラーハースキルンには、窒素(N)ガスが流されて非酸化性雰囲気に調整される。第1炭素材21a及び第2炭素材21b、並びに炭化物20は、2時間かけて780℃、980℃、1180℃の各温度で焼き上げてから放熱させて冷却した。
冷却後、内側ルツボ11から取り出された炭化物20は、重量が測定され、減少量が計測される。また、外側ルツボ12から取り出された炭素材21は、重量の測定、BET比表面積の測定、R値の測定が行われる。当該測定結果に基づいて、基準値と比較した結果を、第1炭素材21aについては図4に表示し、第2炭素材21bについては図5に表示する。
図4及び図5に示すように、650℃で第1加熱処理を行った炭化物20は、それぞれ条件4〜条件6に表れているように、第2加熱処理工程後の重量減少率が4%以下である。したがって、低分子炭化水素系ガスが第2加熱処理工程において十分に放出されなかったと推測することができる。また980℃、又は1180℃で焼き上げた条件5、又は条件6に対して、780℃で焼き上げた炭化物20は、重量減少率がさらに小さい。
これに関して、条件1に着目すると、500℃で第1加熱処理を行った炭化物20について、980℃で焼き上げた条件2と1180℃で焼き上げた条件3ではいずれも第2加熱処理工程後の重量減少率が大きいのに対して、780℃で焼き上げた条件1では重量減少率が小さい。すなわち、第2温度、すなわち800℃〜1200℃の範囲から外れた780℃で第2加熱処理を行うと、炭化水素系ガスを発生可能に第1加熱処理した炭化物20であっても、低分子炭化水素系ガスが十分に放出されないと推察することができる。
したがって、それぞれ条件1〜条件6の結果を判断すると、第1温度、すなわち430℃〜600℃で加熱処理を行った炭化物を用いて、第2温度、すなわち800℃〜1200℃で加熱処理が行われた条件2と条件3以外の条件では、十分な熱分解炭素は生成されず、熱分解炭素層の被膜は形成されなかったものと判断することができる。
次に条件を変えて第4実施例に係る第4実験を行った。
炭素材は、炭素繊維フェルトである。当該炭素繊維フェルトは、約150mm角×約2mm厚の大きさであって、レドックスフロー二次電池の電極用に調整されているものである。当該炭素繊維フェルトもまた各実施例と同様に、BET比表面積の測定と、ラマン分光分析によるR値の測定を行い基準値とした。当該基準値は、比表面積が65m/g、R値が0.25である。
有機物は、レゾール系フェノール樹脂である。当該レゾール系フェノール樹脂は、昭和電工製BRL−120Zを使用している。当該レゾール系フェノール樹脂は、液体状であって加熱によって固化する特性を有していることから、ポリプロピレン製のバット状の型枠に流し込んで、120℃で保温し、1日放置して平板状に硬化させた。
平板状に硬化したフェノール樹脂は、ハンマーミル粉砕機と5φmm穴スクリーンで破砕され、粒度を揃えた粒状に形成されている。
こうして得られた粒状フェノール樹脂を、第1加熱処理工程において加熱処理して炭化物を形成した。この時の処理温度は、430℃、460℃、及び560℃であって、処理時間は2日間である。なお、第4実施例における第1加熱処理工程は、非酸化性雰囲気下で行われた。加熱処理前の粒状フェノール樹脂と、炭化物との重量減少率は、430℃で処理した場合、37%であった。
第4実施例に係る炭素材と炭化物が収納される容器は、図6に示すように、ステンレス製の二段式サガー10Aである。当該サガー10Aは、内寸が250mm×250mm、深さが100mmの上段鉢30と、内寸が250mm×250mm、深さが100mmの下段鉢31とからなる。上段鉢30の底面には、2φmm〜3φmmの通気孔32が複数個形成されている。
上段鉢30には、炭素材21Aが収納される。炭素材21A、すなわち炭素繊維フェルトは、上段鉢30の底面に配置され、当該炭素繊維フェルトは、約5φmmの黒鉛粒(カーボンコークス粒)からなる酸化防止材33で覆い隠されている。これによって、上段鉢30の上方から加熱したとき、当該加熱で炭素繊維フェルトが酸化することを防止することができる。
下段鉢31には、460℃又は560℃で第1加熱処理を行った炭化物20Aが収納される。上段鉢30と下段鉢31との間には、通気性を有するアルミナファイバー製の断熱材34が配置されている。
上記の炭素材21Aと炭化物20Aを、第2加熱処理工程、熱分解炭素生成工程、熱分解炭素層形成工程で処理するため、以下の条件で次の実験を行った。
第2加熱処理工程は、下段鉢31に炭化物20Aを収納し、上段鉢30に炭素材21Aと酸化防止材33を収納した二段式サガー10Aを、電気加熱される連続式プッシャー炉へ投入して行われる。
当該連続式プッシャー炉は、加熱ヒーターが炉内上部に取り付けられており、上方からのみ加熱可能に形成されている。これによって、二段式サガー10Aは上方から加熱され、上段鉢30に遅れて加熱された下段鉢31では、熱反応が未反応状態の低分子炭化水素系ガスと、水素(H)ガスが発生する。発生した低分子炭化水素系ガスと水素(H)ガスは、断熱材34と通気孔32を通じて上段鉢30に立ち上り、上段鉢30内の炭素繊維フェルトからなる炭素材21Aを、あたかも蒸すかのように滞留する。
炉内は、窒素(N)ガスが流されて非酸化性雰囲気に調整されている。炭素材21A及び炭化物20Aは、2時間かけて850℃、1150℃の各温度で焼き上げてから放熱させて冷却した。
冷却後、下段鉢から取り出された炭化物20Aは、重量が測定され、減少量が計測される。また、上段鉢30から取り出された炭素材21Aは、重量の測定、BET比表面積の測定、R値の測定が行われる。当該測定結果に基づいて、基準値と比較した結果を、図7に表示する。
図7に示すように、条件1〜条件4のいずれの結果も、第2加熱処理後の炭化物20Aの重量減少率は4%以上である。特に第1加熱処理時の第1温度が460℃であった条件1及び条件2は、560℃で処理した条件3及び条件4よりも重量減少率が大きい。これによって、第1加熱処理工程においては、第1温度、すなわち430℃〜600℃の範囲内であっても、より低い温度で第1加熱処理を施した方が、第2加熱処理工程において、より多くの低分子炭化水素系ガスを放出することができると推察することができる。
また、条件1〜条件4のいずれも結果も、比表面積は減少し、R値は大きくなっている。当該結果を、先の第1実験〜第3実験の実験結果と比較すると、炭素材21Aの表面に熱分解炭素層が形成されて、物性が変化した結果と同様の変化度合いであるから、条件1〜条件4においてはいずれも炭素材の表面構造は変化し、改質されているものと推察することができる。
次に条件を変えて第5実施例に係る第5実験を行った。
炭素材は、第1実施例に係る第1実験と同様に、多孔質炭素板である。当該多孔質炭素板は、有機繊維とフェノール樹脂結着剤を含むものであって、リン酸型燃料電池のリン酸リザーバーとして使用されている。
また、当該多孔質炭素板は、2800℃で処理されたものであって、ポアー径が25μm、気孔率が56%、圧縮強度が4.4Mp、固有抵抗が4800μΩcm、熱伝導率が3.5W/m/Kの特性を有している。
第5実験に係る炭素材は、当該多孔質炭素板を20mm四方で厚さが2mmの平板状に複数枚切り出して使用する。複数枚の炭素材のうち、1枚を取り出し、基準値となる代表サンプルとして、窒素吸着法によるBET比表面積の測定と、ラマン分光分析によるR値の測定を行った。この結果、基準値となる比表面積は25m/g、R値は0.23であった。なお、BET比表面積の測定においては、20mm四方の平板から10mm四方の平板を切り出して測定している。
有機物は、厚紙(クラフト紙)である。当該厚紙を一辺が20mmの正方形状に複数個切り出して使用する。
第1加熱処理工程に係る実験は、上記の有機物を、1日かけて、430℃で加熱処理を行って炭化物を形成した。この結果、厚紙は、体積と重量が減少していることを確認することができ、厚紙に対する炭化物の重量減少率は、平均して49%であった。第1加熱処理工程で有機物を加熱処理して炭化物を形成するとき、重量減少率は50%以下が好ましいとしているので、厚紙から炭化物を形成した場合にも重量減少率の値は範囲内に収まっている。
上記の炭素材と炭化物を第2加熱処理工程、熱分解炭素生成工程、熱分解炭素層形成工程で処理するため、以下の条件で次の実験を行った。
第2加熱処理工程は、炭素材を黒鉛ルツボに入れ、その周りを炭化物で黒鉛ルツボ上縁まで埋めたものを、電気加熱される連続式プッシャー炉へ入れて行われる。なお、黒鉛ルツボの大きさは、内径300mm×深さ300mmである。
このとき、炉内は窒素(N)ガスによって非酸化性雰囲気に調整される。炭素材及び炭化物は2時間かけて850℃、1150℃の各温度で焼き上げてから放熱させて冷却した。
冷却後、黒鉛ルツボから取り出された炭化物は、重量が測定され、減少量が計測される。また、黒鉛ルツボから取り出された炭素材は、重量の測定、BET比表面積の測定、R値の測定が行われる。当該測定結果に基づいて、基準値と比較した結果を図8に表示する。
図8に示すように、条件1及び条件2では、全て炭素材の重量の増加、比表面積の減少、及びR値の変化が認められる。これによって、炭素材の表面の物性が変化しているので、炭素材の表面構造は変化し、改質されているものと判断することができる。
しかしながら、第1実施例〜第4実施例に見られるような変化とは異なり、変化の度合いは小さい。これは、第1加熱処理工程で厚紙を加熱して炭化物を形成した際の重量減少率と、第2加熱処理工程で炭素材の重量増加率から、発生した低分子炭化水素系ガスの量が少なく、熱分解炭素の生成量が少なかったために、熱分解炭素層の厚さが他の実施例よりも薄くなったからだと推察することができる。
なお、本発明に係る実施例は、実験例と共に説明した上記の第1実施例から第5実施例に限定されるものではない。たとえば、有機物は、第1加熱処理に係る第1温度、すなわち430℃〜600℃で低分子炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成可能なものであればよく、コーティング対象の炭素材もまた、炭化物から発生した低分子炭化水素系ガスが、当該炭素材の表面に浸透可能であって、浸透した低分子炭化水素系ガスが熱せられた炭素材の表面で熱分解反応を呈して熱分解炭素が生成され、当該熱分解炭素が炭素材の表面に蒸着・堆積して薄膜状の熱分解炭素層を形成可能なものであれば良い。
10…二重ルツボ、
11…内側ルツボ、12…外側ルツボ、
20,20A…炭化物、21,21A…炭素材、
10A…二段式サガー、
30…上段鉢、31…下段鉢、
32…通気孔、33…酸化防止材、34…断熱材

Claims (8)

  1. 炭素材の表面近傍に滞留させた炭化水素系ガスを前記炭素材の表面から浸透させ、当該炭化水素系ガスを熱分解して形成される熱分解炭素を前記炭素材の表面に蒸着及び堆積させて、
    前記炭素材の表面に薄膜状の熱分解炭素層を形成するようにした炭素材であって、
    前記炭化水素系ガスが、
    所定の有機物を、所定の第1温度で加熱して、所定の炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成する第1加熱処理と、
    前記炭化物を、非酸化性雰囲気中で、前記第1温度よりも高温で、かつ、前記炭化水素系ガスが発生する所定の第2温度で加熱する第2加熱処理とから形成され、
    当該第2加熱処理で発生した前記炭化水素系ガスを、前記非酸化雰囲気中で前記炭素材と共に前記第2温度で加熱したとき、
    当該第2温度で前記炭化水素系ガスが熱分解されて前記熱分解炭素が形成され、
    当該熱分解炭素が、前記炭素材の表面で前記熱分解炭素層を形成するようにしたことを特徴とする炭素材。
  2. 前記第1温度が、430℃以上600℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭素材。
  3. 前記第2温度が、800℃以上1200℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭素材。
  4. 前記有機物から前記炭化物を形成したときの重量減少率が50%以下であり、前記炭化物から前記炭化水素系ガスが発生したときの重量減少率が4%以上であることを特徴とする請求項1に記載の炭素材。
  5. 炭素材の表面近傍に滞留させた炭化水素系ガスを前記炭素材の表面から所定時間浸透させ、当該炭化水素系ガスを熱分解して形成される熱分解炭素を、所定時間、前記炭素材の表面に蒸着及び堆積させて、
    前記炭素材の表面に薄膜状の熱分解炭素層を形成するようにした炭素材の表面処理方法であって、
    所定の有機物を、所定の第1温度で加熱して、炭化水素系ガスを発生可能な炭化物を形成する第1加熱処理工程と、
    当該第1加熱処理工程後に、前記炭化物を、非酸化性雰囲気中で、前記第1温度よりも高温で、かつ、前記炭化水素系ガスが発生する所定の第2温度で加熱する第2加熱処理工程と、
    当該第2加熱処理工程と同時に、前記炭化水素系ガスを前記第2温度で熱分解して、当該炭化水素系ガスが浸透した前記炭素材の表面近傍で熱分解炭素を形成する熱分解炭素生成工程と、
    当該熱分解炭素生成工程と同時に、前記熱分解炭素を前記所定時間、前記炭素材の表面に蒸着及び堆積させて、前記炭素材の表面に薄膜状の前記熱分解炭素層を形成する熱分解炭素層形成工程と、
    を有することを特徴とする炭素材の表面処理方法。
  6. 前記第1温度が、430℃以上600℃以下であることを特徴とする請求項5に記載の炭素材の表面処理方法。
  7. 前記第2温度が、800℃以上1200℃以下であることを特徴とする請求項5に記載の炭素材の表面処理方法。
  8. 前記第1加熱処理工において前記有機物から前記炭化物が形成されたときの重量減少率が50%以下であり、前記第2加熱処理工程において前記炭化物から前記炭化水素系ガスが放出されたときの重量減少率が4%以上であることを特徴とする請求項5に記載の炭素材の表面処理方法。
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