JP2019205829A - 生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキット、生体活性セメントペーストおよびその製造方法 - Google Patents

生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキット、生体活性セメントペーストおよびその製造方法 Download PDF

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【課題】適切な初期硬化時間を有する生体活性セメントペーストならびに非崩壊性および高い圧縮強度を有しかつ生体内で吸収されて骨と置換される生体活性セメントを製造するためのキットならびに生体活性セメントペーストおよびその製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、硬化剤としての生分解性多糖類および水を含む透明な中性水溶液との組み合わせであることを特徴とする生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキットにより、上記の課題を解決する。【選択図】図2−17

Description

本発明は、生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキット、生体活性セメントペーストおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、適切な初期硬化時間を有する生体活性セメントペーストならびに非崩壊性および高い圧縮強度を有しかつ生体内で吸収されて骨と置換される生体活性セメントを製造するためのキットならびに生体活性セメントペーストおよびその製造方法に関する。
近年、疾患や事故などによる骨折や骨欠損の修復のために、生体内で水和硬化する骨補填材が一般に用いられている。例えば、骨粗鬆症や骨腫瘍による椎体の圧迫骨折では、骨補填材としての骨セメントを穿刺針により経皮的に椎体内に注入して椎体を再建する経皮的椎体形成術が行われている。
骨セメントとしては、現在、ポリメチルメタクリレート(PMMA)セメントおよびリン酸カルシウムセメント(CPC)が主に用いられている。
PMMAセメントは、硬化速度および硬化後の強度に優れているが、骨伝導能がないため骨組織との親和性に乏しく、未反応モノマーの毒性や重合熱の発生による周辺組織の損傷などの問題がある。
一方、CPCは、PMMAセメントに比べて硬化速度および硬化後の強度の点で劣るが、生体内で骨類似ハイドロキシアパタイトに転化するので骨伝導能に優れている。CPCの材料であるリン酸カルシウム系化合物には、生体内で分解・吸収されることによって自然に消滅し、自家骨と置換されるという性質を有するものが多いことから、骨置換型のCPCの開発も進んでいる。また、生体適合性物質であるキトサンをCPCに配合することにより、機械的特性を改善したCPCも開発されている。
また、近年では、内部に気孔と呼ばれる微小な空隙を多数有する多孔質のCPCも開発され、ハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系化合物を主成分とし、生体内で分解・吸収される物質を含む補填材も提案されている。
しかしながら、CPCに配合するために、硬化剤としてキトサンをリンゴ酸で溶解した酸性硬化液を用いる従来のセメントペーストでは、動物実験において、埋入箇所の近傍で骨溶解が起こることが指摘され、またセメントペーストの粘性が高いために、シリンジでの吐出が難しいという問題があった。
そこで、本願出願人は、セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、硬化剤としてのカルシウム非含有のリン酸塩、炭酸水素ナトリウムおよびキトサンを含む中性水溶液(「中性硬化液」ともいう)との組み合わせを特徴とする生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキットを提案した(特開2018−038590号公報:特許文献1)。
すなわち、特許文献1では、キトサンを酸で溶解後、塩析にて可溶性粉末を得、得られた粉末を溶解した中性硬化液を用いることにより、セメントペーストの粘性を低下させ、シリンジ注入を容易にした。
特開2018−038590号公報
しかしながら、特許文献1の塩析粉末のキトサンを含有する中性硬化液を用いたセメントペーストでは、動物実験において、酸性硬化液のような骨溶解は起こらないものの、キトサン含有量がまだまだ低く、キトサン含有量の増加による、硬化体の圧縮強度のさらなる向上が望まれている。
他方、セメント粉の硬化において、その周囲に繊維状の膜が形成されることも報告されている。この現象は、セメント粉の硬化に伴い、硬化液中のキトサンの溶け残りが硬化体の周囲に吐き出されて膜が形成されているものと考えられる。
このような点から、キトサンが高含有量であることに加えて、キトサンの溶け残りのない中性硬化液およびそれを含有するセメントペーストが求められている。
また、硬化剤としてのキトサンに代わる高含有量の生分解性多糖類を含む中性硬化液およびそれを含有するセメントペーストが求められている。
そこで、本発明は、キトサン含有量を向上させた、溶け残りがない、すなわち透明度の高い中性硬化液および硬化剤としてのキトサンに代わる高含有量の生分解性多糖類を含む中性硬化液を見出し、適切な初期硬化時間を有する生体活性セメントペーストならびに非崩壊性および高い圧縮強度を有しかつ生体内で吸収されて骨と置換される生体活性セメントを製造するためのキットならびに生体活性セメントペーストおよびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、キトサンと共にポリオールを硬化液に配合することにより、キトサンの溶解性が向上し、溶け残りがなく、透明度が高い均一な中性硬化液、硬化剤としてのキトサンに代わる高含有量の生分解性多糖類としてアルギン酸を硬化液に配合することにより、透明度が高い均一な中性硬化液が得られ、上記の課題が解決できることを意外にも見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、硬化剤としての生分解性多糖類および水を含む透明な中性水溶液との組み合わせであることを特徴とする生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキットが提供される。
また、本発明によれば、セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体に、前記セメント粉が硬化するために必要な量の硬化剤としての生分解性多糖類および水を含む透明な中性水溶液を添加・混和して生体活性セメントペーストを得ることを特徴とする生体活性セメントペーストの製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の粉体と中性水溶液との混和物である生体活性セメントペーストが提供される。
本発明によれば、適切な初期硬化時間を有する生体活性セメントペーストならびに非崩壊性および高い圧縮強度を有しかつ生体内で吸収されて骨と置換される生体活性セメントを製造するためのキットならびに生体活性セメントペーストおよびその製造方法を提供することができる。
具体的には、実施例に記載のように、ポリオール含有の透明な中性キトサン含有硬化液(pH6.71、透過率43.73%)が得られ、それを用いたセメントペーストでは、初期硬化時間15.7±1.2分の短縮化を実現し、その硬化体では、殆ど溶解しないといえる静的崩壊率0.378±0.108%を実現し、かつ酸性硬化液での骨溶解現象および硬化体周辺での線維性組織生成の問題を解消した。
また、実施例に記載のように、透明なアルギン酸ナトリウム含有硬化液(pH7.00、透過率56.3%)が得られ、それを用いたセメントペーストでは、初期硬化時間11.5±0.5分の短縮化を実現し、その硬化体では、殆ど溶解しないといえる静的崩壊率0.63±0.30%を実現し、かつ酸性硬化液での骨溶解現象および硬化体周辺での線維性組織生成の問題を解消し、さらに骨形成能の優れた硬化体が得られた。
本発明のペーストは不定形混合物であり、セメント粉である粉体と硬化剤を含む中性水溶液とを混和した直後には、任意の形状に変化させることやチューブへの充填操作が可能である。そして、本発明のペーストは、時間経過により自己硬化し、水中または生体内において水和反応によりさらに硬化してCPCの一種である硬化体になる。したがって、本発明のペーストは、骨補填材の前駆体として好適に用いることができる。
また、本発明の生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキットは、少なくとも次のいずれか1つの要件を満足する場合に、上記の効果をさらに発揮する。
(1)セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、硬化剤としてのキトサン、該キトサンの可溶化成分としてのポリオールおよび水を含む透明な中性水溶液との組み合わせである。
(2)ポリオールが、β−グリセロリン酸二ナトリウムである。
(3)中性水溶液中のキトサンおよびポリオールの濃度が、それぞれ0.5重量%以上10重量%以下および0.5重量%以上5重量%以下である。
(4)セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、硬化剤としてのアルギン酸またはその塩および水を含む透明な中性水溶液との組み合わせである。
(5)中性水溶液中のアルギン酸またはその塩の濃度が、0.2重量%以上20重量%以下である
(6)リン酸水素カルシウム二水和物とリン酸四カルシウムとの配合割合が、モル比で1:1である。
(7)粉体Pと中性水溶液Lとの配合割合P/Lが、重量比で1〜4である。
また、本発明の生体活性セメントペーストの製造方法は、少なくとも次のいずれか1つの要件を満足する場合に、上記の効果をさらに発揮する。
(8)セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体に、セメント粉が硬化するために必要な量の硬化剤としてのキトサン、該キトサンの可溶化成分としてのポリオールおよび水を含む透明な中性水溶液を添加・混和して生体活性セメントペーストを得る。
(9)セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体に、セメント粉が硬化するために必要な量の硬化剤としてのアルギン酸またはその塩および水を含む透明な中性水溶液を添加・混和して生体活性セメントペーストを得る。
CPCペーストの調製(練和)に用いた器具、(a)シャーレおよび(b)薬さじと練和前の様子を示す図である。 CPCの作製に用いた器具、(a)テフロン(登録商標)割型、(b)プラスチック板および(c)クリップを示す図である。 CPCの作製に用いた器具、(a)テフロン割型、(b)テフロン型固定板、(c)平頭ネジ、(d)ナットおよび(e)組立図を示す図である。 CPCペーストの初期硬化に用いた保存容器およびその中の様子を示す図である。 CPCペーストの初期硬化時間の測定に用いた、(a)ビガー針試験機および(b)その試験の様子を示す図である。 CPC硬化体の圧縮強度試験に用いた引張−圧縮変換器を示す図である。 CPCの静的崩壊率の測定に用いた、(a)CPC計量用シリンジおよび(b)CPC分離膜を示す図である。 CPCの静的崩壊率の測定に用いた、(a)プラスチック容器および(b)ステンレス金網台を示す図である。 インビボ試験において家兎大腿骨関節部に作製した孔(矢印)の様子を示す図である。 比表面積測定に用いた細孔分布測定装置の外観を示す図である。 (a)生成TTCPおよび(b)市販TTCPの回折図形ならびに(c)TTCPの回折線図(ICDD PDF No.25−1137)である。 (a)湿式粉砕前のDCPDおよび(b)湿式粉砕後のDCPDの回折図形ならびに(c)DCPDの回折線図(ICDD PDF No.11−0293)である。 (a)湿式粉砕前のDCPAおよび(b)湿式粉砕後のDCPAの回折図形ならびに(c)DCPAの回折線図(ICDD PDF No.09−0080)である。 (a)生成TTCP、(b)市販TTCP、(c)湿式粉砕後のDCPDおよび(d)湿式粉砕後のDCPAの粒度分布を示す図である。 (a)生成TTCP、(b)市販TTCP、(c)湿式粉砕前のDCPD、(d)湿式粉砕後のDCPD、(e)湿式粉砕前のDCPAおよび(f)湿式粉砕後のDCPAのSEM像を示す図である。 生成TTCPのガス吸着量測定による(a)吸脱着等温線および(b)BETプロットを示す図である。 市販TTCPのガス吸着量測定による(a)吸脱着等温線および(b)BETプロットを示す図である。 湿式粉砕前のDCPDのガス吸着量測定による(a)吸脱着等温線および(b)BETプロットを示す図である。 湿式粉砕後のDCPDのガス吸着量測定による(a)吸脱着等温線および(b)BETプロットを示す図である。 (L1)キトサン含有酸性硬化液(Liquid1)、(L2)キトサン含有中性硬化液(Liquid2)、(L3)ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3)および(L4)キトサン溶液(Liquid4)の状態を示す図である。 (L2)キトサン含有中性硬化液(Liquid2)、(L3)ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3)および(L4)キトサン溶液(Liquid4)の可視光透過スペクトルを示す図である。 (L3)および(L3−1)〜(L3−4)ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3およびLiquid3−1〜Liquid3−4)の状態を示す図である。 (L3)および(L3−5)〜(L3−9)ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3およびLiquid3−5〜Liquid3−9)の状態を示す図である。 硬化液として(a)水、(b)キトサン含有酸性硬化液(Liquid1)および(c)キトサン含有中性硬化液(Liquid2)をそれぞれ用いたCTCペーストでのインビボ試験(動物埋入試験)の試料のマイクロX線CT画像である。 硬化体CPC1、CPC2およびCPC3のビガー針試験の結果を示す図である。 硬化体CPC3およびCPC4のビガー針試験の結果を示す図である。 硬化体CPC1、CPC2およびCPC3の各浸漬時間における圧縮強度を示す図である。 硬化体CPC3、CPC5、CPC6およびCPC7ならびにPAのセメント粉の各成分の粒径比と圧縮強度との関係を示す図である。 セメント粉1と硬化液Liquid3を用いて作製した硬化体CPC3の各浸漬時間における粉末X線回折図形である。 セメント粉1〜4と硬化液Liquid3を用いて作製した硬化体CPC3、CPC5、CPC6およびCPC7の1日浸漬における粉末X線回折図形である。 TTCP、DCPD、DCPAおよびHApの回折線図(それぞれICDD PDF No.25−1137、No.11−0293、No.09−0080およびNo.74−0566)である。 硬化体CPC3の静的崩壊率測定の様子を示す図である。
CPCペーストの調製(練和)に用いた治具と練和前の様子を示す図である。 CPCの作製(初期硬化)に用いた型の構成(器具)を示す図である。 テフロン製割型、(a)テフロン型、(b)テフロン型固定板、(c)平頭ネジ、(d)ナットおよび(e)組立図を示す図である。 CPCの初期硬化に用いる容器を示す図である。 CPC硬化体の圧縮強度試験に用いた引張−圧縮変換器を示す図である。 CPC硬化体の初期硬化時間測定に用いた(a)ビガー針試験機および(b)その試験の様子を示す図である。 CPC硬化体の静的崩壊率測定に用いた(a)プラスチック容器および(b)ステンレス金網台を示す図である。 CPC硬化体の押出力測定に用いた、先端を切断したシリンジを示す図である。 CPC硬化体の押出力測定の様子を示す図である。 CPC硬化体の吸収性インビトロ試験(溶解性試験)の(a)試験装置の様子を示す図および(b)その模式図である。 (a)生成物A、(b)市販TTCPおよび(c)市販TTCP(2)の回折図形ならびに(d)TTCP(ICDD PDF No.25−1137)の回折線図である。 (a)湿式粉砕前のDCPA、(b)30時間湿式粉砕後のDCPA、(c)48時間湿式粉砕後のDCPAおよび(d)96時間湿式粉砕後のDCPAの回折図形ならびに(e)DCPA(ICDD PDF No.09−0080)の回折線図である。 乾式粉砕のTTCP(粉砕時間1時間)、(II)乾式粉砕のTTCP(粉砕時間1.5時間)、(III)市販のTTCPおよび(IV)市販TTCP(2)の粒度分布を示す図である。 (V)湿式粉砕のDCPA(粉砕時間30時間)、(VI)湿式粉砕のDCPA(粉砕時間48時間)および(VII)湿式粉砕のDCPA(粉砕時間96時間)の粒度分布を示す図である。 アルギン酸含有硬化液、(a)LiquidA2、(b)LiquidA3および(c)LiquidA4の様子を示す図である。 アルギン酸含有硬化液、(a)LiquidA2、(b)LiquidA3および(c)LiquidA4の透過率を示す図である。 硬化体CPC4、CPC7およびCPC8の24時間浸漬における圧縮強度を示す図である。 硬化体CPC4の各浸漬時間に対する圧縮強度を示す図である。 硬化体CPC4、CPC2およびCPC4の1日および7日浸漬における圧縮強度を示す図である。 硬化体CPC10およびCPC6の1日および7日浸漬における圧縮強度を示す図である。 1日および7日浸漬した硬化体CPC4の回折図形である。 1日、7日および1ヶ月浸漬した硬化体CPC2の浸漬時間ごとの回折図形である。 1日および7日浸漬した硬化体CPC9の浸漬時間ごとの回折図形である。 1日および7日浸漬した硬化体CPC10の浸漬時間ごとの回折図形である。 1日および7日浸漬した硬化体CPC6の浸漬時間ごとの回折図形である。 TTCP、DCPD、DCPAおよびHApの回折線図(それぞれICDD PDF No.25−1137、No.11−0293、No.09−0080およびNo.74−0566)である。 硬化体CPCの静的崩壊率の実験の様子を示す図である。 pH5.5に調製した酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液中での硬化体CPC2のカルシウム濃度の経時変化を示す図である。 pH5.5に調製した酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液中での硬化体CPC6のカルシウム濃度の経時変化を示す図である。 吸収性試験後の硬化体CPC2のマイクロフォーカスX線CT像を示す図である。 硬化体CPC2のFE−SEMを示す図である。 硬化体CPC6のFE−SEMを示す図である。
(1)生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキット
本発明の生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキット(以下、単に「キット」ともいう)は、セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、硬化剤としての生分解性多糖類および水を含む透明な中性水溶液との組み合わせであることを特徴とする。
本発明において「生体活性セメントペースト(以下、単に「ペースト」ともいう)」とは、上記セメント粉としての粉体と硬化剤を含む中性水溶液とを混和した直後、少なくともシリンダに充填して押し出すまでの混和物をいう。後述するように、ペーストは混和直後から徐々に初期硬化が始まり、生体内でさらに水和反応により硬化体(生体活性セメント)になる。
本発明のキットは、セメント粉を含む粉体と、硬化剤を含む中性水溶液とがそれぞれ別個の容器に収められた二試薬型のキットであることが好ましい。
それらの容器の形状は特に限定されず、例えば、粉体を中性水溶液との混和が可能な混練注入器に収め、中性水溶液も注入器に収めることなどが挙げられる。この場合、本発明のキットは、注入針をさらに含んでいてもよく、得られる組成物の粘度を調整するための水をさらに含んでいてもよい。
本発明において用いられる生分解性多糖類とは、セメント粉と組み合わせてその硬化剤となり、かつ優れた骨形成機能を発揮させ得るものであれば特に限定されない。
このような生分解性多糖類としては、キトサン、アルギン酸、デンプン、グリコーゲン、デキストラン、イヌリン、コンドロイチンなどが挙げられ、これらの中でも、キトサンおよびアルギン酸が特に好ましい。
したがって、本発明のキットは、
セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、硬化剤としてのキトサン、該キトサンの可溶化成分としてのポリオールおよび水を含む透明な中性水溶液との組み合わせである(実施形態1)、および
セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、前記硬化剤としてのアルギン酸またはその塩および水を含む透明な中性水溶液との組み合わせである(実施形態2)
であるのが好ましい。
粉体および中性水溶液の各構成成分およびそれらの配合割合などの詳細については、以下の(2)生体活性セメントペーストの製造方法および(3)生体活性セメントペーストにおいて説明する。
上記の(2)については、実施形態1および実施形態2に分けて説明する。
(2)生体活性セメントペーストの製造方法
(2−1)実施形態1
本発明の生体活性セメントペーストの製造方法は、セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体に、セメント粉が硬化するために必要な量の硬化剤としてのキトサン、該キトサンの可溶化成分としてのポリオールおよび水を含む透明な中性水溶液を添加・混和して生体活性セメントペーストを得ることを特徴とする。
[セメント粉]
セメント粉は、リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)およびリン酸四カルシウム(TTCP)を含む。
DCPDとTTCPとを配合することで、自己硬化後の水和反応による硬化が進行すると共に、得られる硬化体において両者が反応してハイドロキシアパタイトへと徐々に転化する。
[リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)]
DCPDは、市販のものを用いてもよいし、公知の方法により自ら製造したものを用いてもよい。
また、DCPDに代えて、その無水物であるリン酸水素カルシウム(DCPA)を用いることもできる。DCPAは、市販のものを用いてもよいし、公知の方法により自ら製造したものを用いてもよい。
DCPDおよびDCPAの粒径は特に限定されないが、水和反応およびTTCPとのハイドロキシアパタイトの転化形成の点で、0.2〜10μmの範囲が好ましく、0.5〜5μmの範囲がより好ましい。なお、DCPDおよびDCPAの粉体が好ましい粒径でない場合には、湿式粉砕などの公知の方法で粉砕して粒径を調節してもよい。
また、リン酸水素カルシウム二水和物の代わりにリン酸水素カルシウム無水物を用いることができ、その他の条件にも因るが、無水物の方が二水和物に比べて、得られる硬化体の強度向上に優れることがある。
[リン酸四カルシウム(TTCP)]
TTCPは、市販のものを用いてもよいし、公知の方法により自ら製造したものを用いてもよい。
例えば、TTCPの粉体は、炭酸カルシウムの粉体とリン酸水素カルシウム二水和物の粉体とを水性媒体中で湿式混合し、得られた混合物を温度1200〜1700℃で3〜6時間焼成し、得られた焼成物を粉砕することで製造することができる。
TTCPの粒径は特に限定されないが、水和反応およびDCPDとのハイドロキシアパタイトの転化形成の点で、150μm未満であるのが好ましく、75μmを超える場合には硬化体中にTTCPが残存することがあり、32μm未満であるのがより好ましい。なお、TTCPの粉体が好ましい粒径でない場合には、ふるい選別などの公知の方法で選別して粒径を調節してもよい。
[DCPDとTTPCとの割合]
DCPDとTTPCとの配合割合は、モル比で1:1であるのが好ましい。
このような配合割合のセメント粉とすることにより、下式のようにハイドロキシアパタイトが生成され、均一な組成物(ペースト)を得ることができる。
2Ca4O(PO4)2+2CaHPO4→10Ca2++6PO4 3-+2OH-
→Ca10(PO4)6(OH)2
[中性水溶液]
中性水溶液(「中性硬化液」ともいう)は、硬化剤としてのキトサン、該キトサンの可溶化成分としてのポリオールおよび水を含む。
本発明の「透明な中性水溶液」の「透明な」とは、含有するキトサンの溶け残りがないことを示す指標であり、実施例において記載するように、可視光透過率スペクトル測定において、40%以上の透過率を有することを意味する。
透過率が40%未満では、水溶液中にキトサンの溶け残りが存在して、配合した量のキトサンの効果が得られないことがある。
また、「中性」とは、pHが6〜7.5であることを意味する。
pHが6未満では、生体内の硬化体周辺で骨溶解現象が起こることがある。一方、pHが7.5を超えると、不均一な硬化による強度低下や硬化液化液の調合中に泡を生じることがある。
[ポリオール]
ポリオールは、中性水溶液中のキトサン含有量を増加させる機能、ひいては中性かつ透明な硬化液を与え得る機能を有する。
ポリオールは、複数のアルコール性ヒドロキシ基を有する脂肪族化合物、すなわち多価アルコールであり、2個のヒドロキシ基を有する、エチレングリコール(C24(OH)2)などのグリコール(ジオール)、3個のヒドロキシ基を有する、グリセロール(C25(OH)3)などのトリオールが挙げられる。
本発明においては、セメント粉との親和性の観点で、複数のヒドロキシ基のいずれかがリン酸エステル化されたものおよびその塩が好ましい。ここで、塩としては、ナトリウムなどのアルカリ金属塩が挙げられる。
このようなリン酸エステル化されたポリオールとしては、例えば、グリセロールの3個のヒドロキシ基のいずれかがリン酸エステル化されたグリセロールリン酸およびその塩が挙げられ、これらの中でも、硬化液の粘性とペーストの注入の観点で、β−グリセロリン酸二ナトリウム(NaGP:C37Na26P)が特に好ましい。
NaGPは、骨芽細胞の培地に用いられる化合物であり、骨化の誘導や良好な石灰化を示すこと、固相時に水を急速に吸収する一方で、溶媒中では水の放出が遅いため吸湿性を示すことが知られている。
また、NaGPをキトサン溶液に加えることにより、インジェクタブルで中性を示す生分解性の溶液が得られることも知られている。この中性溶液は、キトサンとNaGPの水素結合や静電相互作用および疎水相互性作用の相乗的な力から得られるものと推測され、生細胞や治療用タンパク質の保持などに用いられている。さらに、セメント粉にNaGPを配合することにより、注出時の押出力の低下、すなわち流動性の向上につながることが知られている。しかしながら、本発明のように、NaGPをキトサンと共に、セメント粉と併用した例は知られていない。
NaGPは、下式のような化学構造を有する。
[キトサン]
キトサンは、ペーストの硬化速度およびその硬化体の圧縮強度を向上させる機能、さらにはペーストのゲル化剤としての機能、ならびに硬化体を生体内に注入もしくは埋入した後に、ペーストが硬化した硬化体から溶出して硬化体を多孔化させる機能を有する。
キトサンは、カニやエビなどの甲殻類の外骨格およびキノコなどの菌類の細胞壁に含まれるキチンを濃アルカリによって脱アセチル化することで得られる天然高分子として知られているが、本発明においては、キトサンの由来は特に限定されない。
キトサンの形態は特に限定されず、粉体、溶液のいずれの形態であってもよい。
本発明において、キトサンの脱アセチル化度は特に限定されないが、生分解がより容易である点で、70〜100%であるのが好ましい。
キトサンは、下式のような化学構造を有する。
キトサンの分子量は、一般にキトサン溶液の粘度に比例することが知られている。
本発明において、キトサンの平均分子量は、粘度に基づく分子量として10,000以上310,000以下であるのが好ましい。
平均分子量が比較的中程度の上記範囲のキトサンを含むペーストは、平均分子量が比較的小さい190,000未満のキトサンを含むペーストよりも、水和反応により得られる硬化体の破壊エネルギーが大きくなる傾向にあるので好ましい。
本明細書において、キトサン溶液の粘度は、1%酢酸水溶液にキトサンを1重量%となるように溶解させ、得られたキトサン溶液について、溶液温度20℃でB型回転粘度計により測定した値をいう。そして、測定した粘度に基づいてキトサンの固有粘度を算出し、Mark-Houwink-Sakuradaの式より、キトサンの分子量を算出する。
[その他の成分]
中性水溶液は、本発明の効果を阻害しない限り、当該技術分野において公知の成分を含んでいてもよい。
リン酸二水素カリウムのようなカルシウム非含有のリン酸塩は、セメント粉を構成するリン化合物のリン成分を補足する機能を有するものと考えられる。
カルシウム非含有とは、リン酸塩がカルシウムを含まないこと、すなわちカルシウム塩でないことを意味する。カルシウムは、セメント粉の硬化過程において、リン酸と反応して針状あるいは棒状の長軸方向の成長が優越した結晶を析出し、それらが立体的に交差して初期硬化に作用し、硬化に弊害を及ぼすため、本発明ではリン酸のカルシウム塩を除外する。
カルシウム非含有のリン酸塩は、正リン酸および亜リン酸のアルカリ金属塩、ならびにリン酸水素アンモニウムから選択されるのが好ましく、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、例えば、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4);リン酸三カリウム(K3PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸水素二カリウム(K2HPO4);亜リン酸ナトリウム(Na2PHO3)、亜リン酸水素ナトリウム(NaHPHO3);亜リン酸カリウム(K2PHO3)、亜リン酸水素カリウム(KHPHO3);リン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)などが挙げられる。これらの中でも、リン酸水素二カリウムおよびリン酸水素二ナトリウムがキトサン再析出を阻害する点で、特に好ましい。キトサンに対する量は、150〜200重量%程度である。
クエン酸などのジカルボン酸は、キトサンの溶解に作用すると考えられる。キトサンに対する量は、30〜200重量%程度である。
デキストラン硫酸ナトリウムなどの高分子化合物は、前述のキトサン溶解液にゲル化剤として作用し、キトサン含有塩形成に働くものと考えられる。キトサンに対する量は、30〜200重量%程度である。
塩化ナトリウムなどは、塩形成に補助的に作用するものと考えられる。キトサンに対する量は、30〜800重量%程度である。
[中性水溶液の組成]
本発明の中性水溶液中のキトサンおよびポリオールの濃度は、それぞれ0.5重量%以上10重量%以下および0.5重量%以上5重量%以下であるのが好ましい。
キトサンの濃度が0.5重量%未満では、硬化後多孔化の効果が乏しく、破壊エネルギーが上がらないことがある。一方、キトサンの濃度が10重量%を超えると、硬化液の粘性が上がり、注入(インジェクタビリティ)が困難になることがある。完全に溶解しないことがある。
より好ましいキトサンの濃度は、1重量%以上10重量%以下であり、さらに好ましくは1.5重量%以上2重量%以下である。
ポリオールの濃度が0.5重量%未満では、ゲル化が起こり、注入が困難となり、また中性にならないことがある。一方、ポリオールの濃度が5重量%を超えると、硬化が進まないことがある。
より好ましいポリオールの濃度は、1重量%以上4重量%以下であり、さらに好ましくは2重量%以上3重量%以下である。
[中性水溶液の調製]
本発明の中性水溶液は、例えば、キトサンを酸で溶解させたキトサン溶液に、ポリオール溶液を添加・混合することにより得ることができる。
[粉体粉Pと中性水溶液Lとの比率]
粉体Pと中性水溶液Lとの配合割合(粉液比)P/L(またはPL比)は、重量比で1〜4であるのが好ましい。
PL比が1未満では、硬化強度が不足することがある。一方、PL比が4を超えると均等な練和が困難となることがある。
より好ましいPL比は、2〜4であり、特に好ましいPL比は、3〜4である。
[ペーストの調製]
本発明のペーストは、上記の粉体に、セメント粉が硬化するために必要な量の硬化剤としてのキトサン、該キトサンの可溶化成分としてのポリオールおよび水を含む透明な中性水溶液を添加・混和(混合または練和)することにより得ることができる。
その添加・混和手段は特に限定されず、添加量(混和量)などに応じて公知の混合手段から適宜選択すればよい。
粉体と中性水溶液との混合後、本発明のペーストは、通常3〜20分程度で自己硬化が完了する(初期硬化)。このときの温度および湿度の条件は、一般的なCPCの調製条件と特に変わるところはないが、通常、温度20〜40℃および湿度50〜100%であればよい。
(2−2)実施形態2
本発明の生体活性セメントペーストの製造方法は、セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体に、セメント粉が硬化するために必要な量の硬化剤としてのアルギン酸またはその塩および水を含む透明な中性水溶液を添加・混和して生体活性セメントペーストを得ることを特徴とする。
実施形態2では、硬化剤成分のアルギン酸およびその塩は、実施形態1の硬化剤成分のキトサンのようにポリオールのような可溶化剤を必要とせず、中性水溶液により多くの硬化剤を添加することができる。
また、実施形態2の硬化剤としてアルギン酸およびその塩を用いた場合は、実施形態1の硬化剤としてキトサンを用いた場合と同様に、「酸性硬化液での骨溶解現象を解消」および「硬化体周辺での線維性組織生成を解消」効果が得られ、かつ実施形態1と比較して、骨形成に優れている。
[セメント粉]
実施形態1に準ずる。
[リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)]
実施形態1に準ずる。
[リン酸四カルシウム(TTCP)]
実施形態1に準ずる。
[DCPDとTTPCとの割合]
実施形態1に準ずる。
[中性水溶液]
中性水溶液は、硬化剤としてのアルギン酸および水を含む。
本発明の「透明な中性水溶液」の「透明な」とは、含有するアルギン酸の溶け残りがないことを示す指標であり、実施例において記載するように、可視光透過率スペクトル測定において、実施形態1と同様に、40%以上の透過率を有することを意味する。
しかしながら、実施形態2では、透過率が数%以上40%未満でも、室温で一定期間保持してもゲル化などの変化は見られず、安定であり、中性水溶液として用いることもできる。
また、「中性」とは、pHが6〜7.5であることを意味する。
pHが6未満では、生体内の硬化体周辺で骨溶解現象が起こることがある。一方、pHが7.5を超えると、不均一な硬化による強度低下や硬化液化液の調合中に泡を生じることがある。
[アルギン酸]
アルギン酸は、ペーストの硬化速度およびその硬化体の圧縮強度を向上させる機能、さらにはペーストのゲル化剤としての機能、ならびに硬化体を生体内に注入もしくは埋入した後に、ペーストが硬化した硬化体から溶出して硬化体を多孔化させる機能を有する。
アルギン酸は、褐藻や紅藻のサンゴモなどに含まれる植物由来の多糖類であり、白または淡黄色で、繊維状、顆粒状または粉末状の形態を示す。
アルギン酸塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウムなどが挙げられ、これらは可溶性塩である。
アルギン酸は、下式のような化学構造(左:β-D-マンヌロン酸、右:α-L-グルロン酸)を有する。
アルギン酸の粘度は、一般にその重合度(分子量)に比例し、重合度が増す程より顕著になることが知られている。
本発明において用いられるアルギン酸は、アルギン酸ナトリウムの場合、低分子量(粘度20〜50mPa・s)、中分子量(粘度80〜120mPa・s)のものが挙げられ、硬化液への添加割合を多くできかつ硬化液を低粘度にできることから、低分子量のものが好ましい。
[その他の成分]
実施形態1に準ずる。
[中性水溶液の組成]
本発明の中性水溶液中のアルギン酸の濃度は、0.2重量%以上20重量%以下であるのが好ましい。
アルギン酸の濃度が0.2重量%未満では、硬化後多孔化の効果が乏しく、破壊エネルギーが上がらないことがある。一方、アルギン酸の濃度が20重量%を超えると、硬化液の粘性が上がり、注入(インジェクタビリティ)が困難になることがある。完全に溶解しないことがある。
より好ましいアルギン酸の濃度は、2重量%以上20重量%以下であり、さらに好ましくは8.8重量%以上16.3重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以上15重量%以下である。
[中性水溶液の調製]
本発明の中性水溶液は、例えば、水にアルギン酸を添加・混合することにより得ることができる。
[粉体粉Pと中性水溶液Lとの比率]
実施形態1に準ずる。
[ペーストの調製]
実施形態1に準ずる。
(3)生体活性セメントペースト
本発明のペーストは、上記の粉体と中性水溶液との混和物である。
[用途]
上記の混和により得られた本発明のペーストは、賦形性があり、複雑形状に変化させて成形することができ、上述のとおり、骨補填材として生体に用いることができる。そして、本発明のペーストは、生体内で上記の初期硬化からさらに水和反応により硬化体(生体活性セメント)になる。
混和直後からシリンダに充填して押し出すまでのペーストの押出力が小さく、流動性が高いと、生体への注入が容易になるが、ペーストの粉液比(PL比)が低くなり、硬化体の強度が低下することになるので、ペーストは、その粉液比で規定するのが好ましい。一方、ペーストの押出力が2000g(1.2MPa)を超えると、両手を用いないとシリンダから押し出すことが困難になる。
好ましいペーストの押出力は、200g以下である。
水和反応により得られた硬化体は、少なくとも10MPaの圧縮強度を示す。
さらに、硬化体は、生体内ではそこに含まれるキトサンが溶出することにより、多孔化する。このような硬化体の多孔化は、表面積を増大させ、生体内での骨置換を起こり易くさせることから、本発明のペーストは、骨補填材として好適に用いることができる。
なお、硬化体を生理食塩水に浸漬することにより硬化体の多孔化を生じさせることができる。したがって、硬化体を生理食塩水中に浸漬した後、重量測定や走査型電子顕微鏡などによる観察により、多孔化の有無およびその状態(崩壊率)を確認することができる。
本発明を以下の実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において「水」は、特に断りのない限り、超純水製造装置(メルク株式会社製、超純水システム Smartシリーズ、機種:Direct−Q UV 3)を用いて精製したMilli−Q(登録商標)水「超純水」を意味する。
[実施形態1]
以下に記載の略号等は、本実施形態1内のみで有効とする。
[セメント粉の調製]
(1)リン酸四カルシウム(TTCP)の調製
電子天秤(アズワン株式会社製、型式:sefi IBA−200:以下、原料(試薬の秤量に使用)を用いて、Ca/P比が2になるように、水酸化カルシウム(Ca(OH)2、MW74.0927、ナカライテスク株式会社製、等級:特級)および正リン酸(H3PO4、MW98.00、和光純薬工業株式会社(現:富士フィルム和光純薬株式会社)製、等級:特級、含有率85%)をそれぞれ31.32g(0.4mol)および23.06g(0.2mol)秤量し、それらのそれぞれを、メスシリンダーで秤量した400mLの水が入った容量500mLビーカーおよび50mLの水が入った容量100mLビーカーに加え、撹拌子を用いて回転数200rpmおよび温度25℃に設定したホットスターラー(アズワン株式会社製、型式:RSH−1DN)で撹拌し、Ca(OH)2溶液およびH3PO4溶液を得た。
次いで、得られたCa(OH)2溶液のビーカーにウォータージャケットを装着し、ウォータージャケットに低温恒温水槽(アズワン株式会社製、型式:LTB−125A)から温度5℃の水を循環させて、溶液温度を温度10℃以下に保持し、かつトルネード(アズワン株式会社製、型式:PM−203)を用いて、軽く渦が生じる程度に撹拌力を適宜調節して溶液を撹拌しつつ、ガラスコック付きビュレット(アズワン株式会社製)を用いて、Ca(OH)2溶液にH3PO4溶液を一定量ずつ2時間かけて滴下した。
滴下終了後、混合液を室温で24時間保持し、熟成させた。
その後、遠心分離機(株式会社トミー精工製、型式:Suprema21)を用いて、得られた混合液を回転数5000rpmで10分間遠心分離し、デカンテーションで上澄み液を取り除き、さらに回転数5000rpmで7分間遠心分離した。分離した沈殿物をシャーレに入れ、プログラム定温乾燥機(アズワン株式会社、型式:DOV−450P)内に設置し、温度110℃で24時間乾燥させた。
乾燥させた試料をアルミナ製ボート(株式会社ニッカトー製、型式:SSA−H2B)に入れ、電気炉(丸祥電器株式会社製、高性能小型高温電気炉SUPER MINI、型式:SPM)を用いて、大気中、温度1500℃、昇降温速度10℃/minの条件で5時間焼成した。
焼成後、試料を電気炉から取り出し、超硬質鋼乳鉢(株式会社伊藤製作所、型式:WD)で粉砕し、さらにメノウ乳鉢で乾式粉砕した。さらに、ミニふるい振とう機(アズワン株式会社製、型式:MVA−1)およびステンレス製ふるい(サイズφ75μm)を用いて、回転数2500rpmで75μm以下に分級し、生成TTCPを得た。
(2)リン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)の調製
電子天秤を用いて秤量したリン酸水素カルシウム二水和物(CaHPO4・2H2O、MW172.09、和光純薬工業株式会社(現:富士フィルム和光純薬株式会社)製、等級:特級)15.00g(0.087mol)およびメスシリンダーで計量したエタノール(C25OH、キシダ化学株式会社製、等級:特級)180mLを、パーソナル電子天秤(アズワン株式会社、型式:EK600i)で秤取った直径10mmのジルコニアボール(株式会社ニッカトー製)500gと共に、ポットミル(株式会社ニッカトー製、型式:HD−A3、外径:φ90mm、容量:400mL)に加えた。次いで、卓上型ポットミル回転台(アズワン株式会社製、型式:ANZ−51S)を用いて、ポットミルを室温、回転数110rpmの条件で48時間回転させ、その内容物を湿式粉砕した。
得られた湿式粉砕生成物を、ブフナー漏斗、ろ紙(JIS、種類:5C)およびアスピレータ(東京理化器械株式会社(EYELA)製、型式:A−3S)を用いて吸引ろ過し、固形物をシャーレに入れ、温度50℃に設定したプログラム定温乾燥器(アズワン株式会社製、型式:DOV−450A)で24時間乾燥させた。得られた試料をメノウ乳鉢で乾式粉砕し、DCPDを得た。
(3)リン酸水素カルシウム(DCPA)の調製
電子天秤を用いて秤量したリン酸水素カルシウム(CaHPO4、MW136.06、太平化学工業株式会社製)5.00g(0.11mol)を用いて、(2)と同様にして48時間湿式粉砕して、DCPAを得た。
(4)セメント粉の混合
電子天秤を用いて、(1)で得られた生成TTCP(CaHPO4、MW366.26)6.80g(0.019mol)および(2)で得られたDCPD3.20g(0.019mol)をそれぞれ秤量した。それらを容量50mLのマルエム目盛付試験管ねじ口(アズワン株式会社製、型式:NX−50)に入れ、振とう機(アズワン株式会社製、型式:MALTI SHAKER MS−300)に設置し、回転数1300rpmで100分間振とう混合を行った。得られた混合物をメノウ乳鉢で5分間乾式混合し、セメント粉1を得た。
生成TTCP7.33g(0.020mol)および(3)で得られたDCPA2.72g(0.020mol)、市販されているTTCP(太平化学工業株式会社製、市販TTCP)6.80g(0.019mol)およびDCPD3.20g(0.019mol)、ならびに市販TTCP(太平化学工業株式会社製)7.33g(0.020mol)およびDCPA2.72gg(0.020mol)をそれぞれ用いること以外は上記と同様にして、セメント粉2、3および4を得た(表1−1)。
[硬化液の調製]
(1)キトサン含有酸性硬化液の調製
メスシリンダーで計量した10mLの水を容量50mLビーカーに加え、そこに電子天秤(前記と同様)で秤量したキトサン((C611NO4)n、アルドリッチ社製、中分子量(medium molecular weight)50,000〜190,000、脱アセチル化度:約81.3%)1.25g加えた。次いで、リンゴ酸(C465(HOOC-CH(OH)-CH2-COOH)、和光純薬工業株式会社(現:富士フィルム和光純薬株式会社)製、等級:特級)1.25gを加え、撹拌し溶解させて、キトサン含有酸性硬化液(「Liquid1」ともいう)を得た。
(2)キトサン含有中性硬化液の調製
メスシリンダーで計量した5mLの水を容量50mLビーカーに加え、そこに電子天秤で秤量したキトサン(前記と同様)0.13gを加え、ホットスターラー(アズワン株式会社製、型式:RSHJ−1DN)および撹拌子を用いて、回転数500rpmで撹拌することで懸濁液を得た。そこに、クエン酸(C687(C(OH)(CH2COOH)2COOH)、和光純薬工業株式会社(現:富士フィルム和光純薬株式会社)製、等級:特級)0.17gを加え、均一に溶解するまで撹拌した。また、メスシリンダーで計量した5mLの水を容量50mLビーカーに加え、そこに電子天秤で秤量したデキストラン硫酸ナトリウム((C67Na3143)n、和光純薬工業株式会社(現:富士フィルム和光純薬株式会社)製、等級:特級)0.21gを加え、撹拌した。前者に後者を加え、撹拌・混合し、さらに塩化ナトリウム(NaCl、キシダ化学株式会社製、等級:特級)1.0gを加え、塩析により凝固物を生成させた。
さらに3時間撹拌し、生成した凝固物を遠心分離し、上澄みを除去した。得られた凝固物に水10mLを加えて洗浄し、これを計3回繰り返した。洗浄した凝固物に水10mLを加えて懸濁させ、低温恒温水槽を用いて温度−30℃に冷却し、凍結乾燥機(アズワン株式会社製、型式:FDU−12AS)で乾燥させた。乾燥後、メノウ乳鉢で粉砕してキトサン含有粉末を得た。
メスシリンダーで計量した10mLの水を容量50mLビーカーに加え、そこに電子天秤で秤量したキトサン含有粉末0.16g、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、キシダ化学株式会社製、等級:特級)0.40gおよびリン酸水素二カリウム(K2HPO4、キシダ化学株式会社製、等級:特級)0.50gを加え、撹拌して、キトサン含有中性硬化液(「Liquid2」ともいう)を得た。
(3)ポリオール−キトサン含有硬化液の調製
メスシリンダーで計量した塩酸(HCl、MW36.46、35%含有、d=1.18g/cm3、キシダ化学株式会社製、等級:特級)8.8mL(0.10mol)を、容量1000mLのメスフラスコに入れ、水を加えて1000mLとして0.1M−HCl溶液を得た。
メスシリンダーで計量した0.1M−HCl溶液9mLを容量50mLビーカーに加え、そこに電子天秤で秤量したキトサン(前記と同様)0.20gを加えて溶解させ、さらに撹拌することでキトサン溶液を得た。次いで、メスシリンダーで計量した1mLの水を容量50mLビーカーに加え、そこにβ−グリセロリン酸二ナトリウム四水和物(C37Na26P・4H2O、MW216.04、東京化成工業株式会社製)0.56g(0.0259mol)を加え、攪拌し溶解させてβ−グリセロリン酸二ナトリウム溶液を得た。キトサン溶液の撹拌下に、メスピペットを用いてβ−グリセロリン酸二ナトリウム溶液を滴下し、撹拌・混合して、ポリオール−キトサン含有硬化液(「Liquid3」ともいう)を得た。
[硬化液の評価]
(1)透過率測定
紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、型式:V−500)を用い、下記の測定条件で、調製した硬化液(Liquid1〜3)のスペクトルおよび固定波長を測定し、各硬化液の透過率を調べた。
(測定条件)
・使用セル:角型石英セル(10mm、日本分光株式会社製)
・バンド幅:1.0nm
・走査速度:200nm/min
・測定波長:380〜780nm
・固定波長:550nm
(2)pH測定
作製した硬化液のpH測定を行った。
pHメーター(株式会社掘場製作所製、型式:D−51)を用いて、調製した硬化液(Liquid1〜3)のpHを測定した。測定にあたり、pH標準液(pH4.01、6.86および9.18、和光純薬工業株式会社(現:富士フィルム和光純薬株式会社)製)を用いて、3点校正を行った。
[CPC硬化試験]
(1)CPCペーストの調製
以下、JIS T0330−4に準拠して行った。
設定した粉液比(粉体Pと中性水溶液Lとの配合割合P/L)になるように、電子天秤を用いて、調製したセメント粉1〜4を秤量した。硬化液は練和に用いるシャーレに入れた状態で、電子天秤を用いて秤量した。
図1−1に示すように、(a)シャーレにセメント粉を入れ、OHPシートを適宜切断して作成したヘラ(図面左下)を用いて塊を潰すように伸ばした。次いで、ヘラとステンレス製の(b)薬さじを用いて、セメント粉と硬化液とを混ぜ合わせた。具体的には、大気中(温度25℃)で、セメント粉を3等分し、まず始めに1/3量のセメント粉と硬化液とを20秒間練和し、次いで1/3量のセメント粉を加えて30秒間練和し、最後に1/3量のセメント粉を加えて40秒間練和し、合計90秒間練和することにより、CPCペーストを得た。
(2)CPCの作製
(1)で得られたCPCペーストを直ちに、図1−2に示す(a)テフロン割型(穴の内径φ6mm×長さ12mm)に、ステンレス製薬さじ(図示せず)およびガラス棒(外径φ5.6mm、図示せず)を用いて充填した。具体的には、(a)テフロン製割型を1枚の(b)プラスチック板(厚さ2mm)の上に載置し、薬さじを用いて(a)テフロン製割型の穴にCPCペースト詰め、気泡が入らないように適宜ガラス棒で上から抑えた。詰めた後、テフロン製割型の上面をもう1枚の(b)プラスチック板(厚さ2mm)で押さえ、さらに(c)クリップを用いて上下の(b)プラスチック板を留めた。
図1−3は、CPCの作製に用いた器具、(a)テフロン割型、(b)テフロン型固定板(30mm×12mm×2.3mm、中央の穴の内径φ5mm)、(c)平頭ネジ(M5×33mm)、(d)ナットおよび(e)組立図を示す
次いで、容量約100mLの密閉容器(保存容器)の底に水を浸み込ませたスポンジを敷き、練和物を詰め、上下を(b)プラスチック板と(c)クリップで挟んだ(a)テフロン製割型をその上に載置した。この状態で湿度100%とし、保存容器ごと、クールインキュベーター(アズワン株式会社製、型式:CN−40A)に設置し、温度37℃で1時間保持して初期硬化をさせた。
その後、図1−4に示すように、メスシリンダーで秤量し(100mL)、予め温度37℃に保温した水中に(a)テフロン製割型のまま練和物を浸漬させた。さらに、クールインキュベーター中、温度37℃で保温し浸漬させ、その後脱型してCPC硬化体の試料を得た。
セメント粉と硬化液との組み合わせを表1−2に示す。なお。セメント粉1とLiquid1〜3それぞれを練和して得られた硬化体をCPC1〜3ともいう。
(3)初期硬化時間測定
JIS T0330−4に準拠して、ビガー針試験機(株式会社日本メック、型式:試験機A−004)を用いて、CPCペーストの初期硬化時間を測定した。
具体的には、図1−5に示すように、CPCペーストを練和開始から90秒後に、テフロン型シリンジ(φ10mm×5mm)に入れ、CPCの表面にビガー針(重量(荷重)300g、先端断面積2mm2)を試料表面真上から静かに落とし、表面に圧痕が残らなくなった時間を記録した。1条件につき3回測定し、その平均値を初期硬化時間(分)とした。
測定期間中、測定時以外のビガー針を、(2)の条件、底に水を浸み込ませたスポンジを敷いた保存容器に中に入れ、クールインキュベーター中、温度37℃で保存した。
(4)圧縮強度試験
JIS T0330−4に準拠して、CPC硬化体の圧縮強度を測定した。
(2)の手順により、各浸漬条件ごとにCPC硬化体の圧縮試験片を各5個作製した。作製にあたり、突出部分に応力が集中して本来より低い測定値が得られないように、CPC硬化体の上面と下面が平行になるよう留意した。浸漬後、CPC硬化体の表面の水を拭い、試験に供した。
圧縮強度測定には、図1−6に示すような、引張方向を圧縮方向に転換する引張−圧縮変換器を用いた5kNロードセル(株式会社島津製作所製、型式:87394)を備えた万能試験機(株式会社島津製作所製、型式:AUTGRAPH AG−10)を用いた。引張−圧縮変換器と試料の間に水で濡らした濾紙を挟み、荷重が1Nかかった時点で変位を0mmとし、ゼロ点を合わせた。試験途中に微小破壊による圧縮強度の急激な減少があっても試験を中断せず、変位が2mmになるまで連続して行った。測定条件は、ヘッドスピード0.500mm/sec、サンプリング間隔100msecで、制御・解析ソフト(株式会社島津製作所、Tranpezium)を用いて計測を行った。
(5)静的崩壊率測定
JIS T0330−4に準拠して、CPCの静的崩壊率を測定した。
図1−7に示すように、φ9mmの先端を5mm切り落とし、(b)分離膜(シート、φ10mm)を挿入したプラスチック製の(a)CPC計量用シリンジに、(1)の手順により得られたCPCペースト(練和物)0.5mLを、練和開始から3分以内に充填した。気泡の混入を防ぐために、押出棒を先端近くに位置させ、少しずつ押出棒を引きながらCPCペーストを先端から充填した。
予め、図1−8に示すような(a)プラスチック容器(内径φ70mm×深さ40mm)に生理食塩水80mLを入れ、温度37℃に設定したクールインキュベーター内で加温しておいた。生理食塩水は、電子天秤で秤量した塩化ナトリウム(NaCl、和光純薬工業株式会社(現:富士フィルム和光純薬株式会社)製、等級:特級)9.00gを、容量1000mLのメスフラスコに入れ、水を加えて1000mLとして調製した。
練和開始から5分後に、図1−8に示すような(b)ステンレス金網台(50mm×50mm、2mm×2mmメッシュ)上に、シリンジからCPCペーストを静かに押し出した。試料を載せた(b)ステンレス金網台を、生理食塩水を入れ加温していた(a)プラスチック容器に静かに入れて生理食塩水に水没させた。これにより崩壊したCPC(残渣)は(b)ステンレス金網台から落下する。その後、(a)プラスチック容器の蓋を閉め、温度37℃のクールインキュベーター中で72時間静置して硬化させた。
静置後、(a)プラスチック容器からCPCと共に(b)ステンレス金網台を取り出し、別のプラスチック容器に移した。(a)プラスチック容器の底の残渣が流出しないように、スポイトを使用して(a)プラスチック容器内の生理食塩水を破棄し、分離シートを除去した。試料と金網台、崩壊したCPCの入った(a)プラスチック容器を温度50℃の定温乾燥器内で24時間乾燥させ、電子天秤を用いて下記のa〜dの重量を測定し、下式により崩壊率を求めた。
崩壊率(%)=[(c−d)/((a−b)+(c−d))]×100
a:乾燥させたCPCとステンレス金網台の重量(g)
b:CPCを除去し、洗浄・乾燥させたステンレス金網台の重量(g)
c:乾燥させた残渣とプラスチック容器の重量(g)
d:残渣を除去し、洗浄・乾燥させたプラスチック容器の重量(g)
(6)インビボ試験
図1−9に示すように、ニュージーランド産家兎(雄、体重:3.0〜3.5kg)の前足部の皮膚を切開し、大腿骨関節丘に直径4.2mm、深さ5.0mmの孔を作製した。その孔に(1)の手順により得られたCPCペースト(練和物)を充填して縫合した。CPCペースト試料の埋入から3週間後に家兎を麻酔死処分し、充填した骨を取り出したものを試料とした。
得られた試料を、マイクロX線CT(株式会社島津製作所製、型式:inspeXio SMX−90CT Plus)を用いて、下記の条件で撮影し、観察した。
(撮影条件)
・管電圧:90kV
・管電流:110μA
・ビュー数:600
・アベレージ数:2
得られた画像を、三次元画像解析ソフトウェア(日本ビジュアルサイエンス株式会社、製品名:ExFact VR)を用いて解析した。
CPCペーストの調製には、セメント粉にセメント粉1を、硬化液に水、Liquid1(キトサン含有酸性硬化液)、Liquid2(キトサン含有中性硬化液)を用い、粉液比を3とした。
[試料の分析]
(1)粉末X線回折による試料の同定
X線回折装置(株式会社リガク製、型式:rint2200)、解析ソフト(株式会社リガク製、製品名:JADE6)およびX線発生の封入管(ターゲットCo、2kW、波長:1.790Å)を用い、下記の測定条件で、生成TTCP、湿式粉砕前後のDCPDおよびDCPAの粉末X線回折を行い、試料の結晶相のピークを調べた。
(測定条件)
・測定角度:10〜50°
・サンプリング角度:0.02°
・スキャン速度:1.0°(min-1
・管電圧:40kV
・管電流:20mA
・スリット:DS=1°、ss=1°、RS=0.3mm
(2)粒度分布測定
レーザー回折/錯乱式測定装置(株式会社掘場製作所製、型式:LA920)を用いて、合成し75μm以下に分級した生成TTCP、湿式粉砕後のDCPDおよびDCPAならびに市販TTCPの粒度分布を測定した。
分散媒には超純水を用い、分散剤には界面活性剤が含まれている台所用合成洗剤(P&G社製)を1滴用いた。また、測定直前に分散液を10分間の超音波処理に付し、試料を分散させた状態にした。水に対するリン酸カルシウムの屈折率を1.24とした。
(3)比表面積測定
図1−10に示すように、細孔分布測定装置(ユアサアイオニクス株式会社(現:スペクトリス株式会社)製、型式:AUTOSORB−1)を用いて、合成し75μm以下に分級した生成TTCP、湿式粉砕後のDCPDおよびDCPAならびに市販TTCPの比表面積を測定した。
吸着ガスに窒素ガスを用い、測定により得られた吸脱着等温線から比表面積を算出した。
測定前に重量を測定した空のセルに、秤量した約300mgの試料を入れ、セルを測定装置にセットし、セルの周囲をマントルヒータで覆った。次いで、真空脱気し、温度約300℃で1時間保持することで試料表面の付着分子等を除去した。その前処理終了後、試料の入ったセルを室温まで冷却し重量を測定した。この重量から最初に測定した空のセルの重量を差し引き、試料の重量とした。
その後、再度試料の入ったセルを測定装置にセットし、セルの周囲を液体窒素で覆うことで測定中セル内の温度を一定(液体窒素温度−196℃)に保持した。そして、セル内を真空状態から徐々に窒素ガスを吹き込み測定した。吸着平衡圧pと飽和平衡圧p0との相対圧p/p0が1になるまで吸着量を測定した。次いで、相対圧が1に達した後、相対圧が0になるまで圧力を下げ、試料に吸着した窒素ガス分子を脱着させた。なお、測定点数を79点とした。
(4)粉末X線回折によるCPC硬化体の結晶相の考察
(1)粉末X線回折による試料の同定と同様にして、作製したCPC硬化体を乾燥させ、メノウ乳鉢で粉砕した測定試料の粉末X線回折を行い、試料の結晶相のピークを調べた。
(5)FE−SEMによる試料の観察
電界放射型走査型顕微鏡(日本電子株式会社製、型式:FE−SEM JSM−6500F)を用いて、合成し75μm以下に分級した生成TTCP、湿式粉砕後のDCPDおよびDCPAならびに市販TTCPを観察した。
導電性テープを用いて各粉末試料をアルミウム板に固定し、エアダスターを用いて固定されなかった粉末を除去した。次いで、オスミウムプラズマコーター(日本電子株式会社製、型式:OPC60A Filgen)を用いて、OsO4を12nmコーティングしてSEM試料とした。観察時の加速電圧を15kV、真空度を5.00×10-4Pa以下とした。
[セメント粉の分析]
(1)粉末X線回折による試料の同定
図2−1は、(a)生成TTCPおよび(b)市販TTCPの回折図形ならびに(c)TTCPの回折線図(ICDD PDF No.25−1137)である。
図2−1によれば、(a)生成TTCPの回折図形と(c)TTCPの回折線図とのピーク位置および強度はほぼ一致し、これら以外に特にピークが観察されず、したがって生成TTCPはTTCPの単一相であると考えられる。また、(a)生成TTCPの回折図形と(b)と市販TTCPの回折図形とを比較しても明白な差異は観察されない。
図2−2は、(a)湿式粉砕前のDCPDおよび(b)湿式粉砕後のDCPDの回折図形ならびに(c)DCPDの回折線図(ICDD PDF No.11−0293)である。
図2−2によれば、(b)湿式粉砕後のDCPDの各ピークの強度が低下し、半値幅が大きくなっている。前者はアモルファス化、後者は結晶子径の低下によるものと考えられる。また、(020)および(040)面の強度が大きく低下している。これは、DCPDでは{010}面が最も成長して板状晶を示すが、その成長面が粉砕されて均質化したためと考えられる。
図2−3は、(a)湿式粉砕前のDCPAおよび(b)湿式粉砕後のDCPAの回折図形ならびに(c)DCPAの回折線図(ICDD PDF No.09−0080)である。
図2−3によれば、(b)湿式粉砕後のDCPAの各ピークの強度が低下し、半値幅が大きくなっている。しかし、回折ピーク強度の相対的関係においては、DCPDのような変化は観察されない。
(2)粒度分布
図2−4は、(a)生成TTCP、(b)市販TTCP、(c)湿式粉砕後のDCPDおよび(d)湿式粉砕後のDCPAの粒度分布を示す図であり、表2−1は、(a)〜(d)の算術平均径およびメジアン径を示す。
図2−4によれば、(a)生成TTCPは、粒径が1μm未満から70μm程度の範囲にある左右非対称の粒度分布を有している。これは、粉砕により微細化した部分と微細化されていない部分を含むことによるものと考えられる。
一方、(b)市販TTCPは、粒径6.72μmをピークとするシャープな粒度分布を有している。(c)湿式粉砕後のDCPDは、粒径2.98μmをピークとする粒度分布を有し、略1μm以下の粒径に分布を有するが、1μm以上の粒子が多少存在している。(d)湿式粉砕後のDCPAは、粒径0.77μmをピークとする粒度分布を有し、(c)湿式粉砕後のDCPDほどシャープではないが、略1μm以下の粒径に分布している。
(3)SEM像
図2−5は、(a)生成TTCP、(b)市販TTCP、(c)湿式粉砕前のDCPD、(d)湿式粉砕後のDCPD、(e)湿式粉砕前のDCPAおよび(f)湿式粉砕後のDCPAのSEM像を示す図である。各図の右下のスケールバーは、(a)〜(e)では10μmを、(f)では1μmを示す。
図2−5によれば、(a)生成TTCPは、1〜10数μm程度の凝集粒子であり、(b)市販TTCPは、均一で微細な粒子であることがわかる。また、(c)湿式粉砕前のDCPDは、比較的大きな板状晶であるが、(d)湿式粉砕後のDCPDは、微細化されていることがわかる。同様に、(e)湿式粉砕前のDCPAは、板状でお互いに絡み合ったような形態であるが、(d)湿式粉砕後のDCPDは、粒径が1μm以下に微細化されていることがわかる。
(4)表面積測定
図2−6〜図2−9は、それぞれ生成TTCP、市販TTCP、湿式粉砕前のDCPDおよび湿式粉砕後のDCPDのガス吸着量測定による(a)吸脱着等温線および(b)BETプロットを示す図である。
また、BETプロットから得られたBET式の傾き(C−1)/Cνmと切片1/Cνm、それらから算出される定数Cと単分子層吸着量νm、さらに下式から算出される比表面積Asを表2−2に示す。
s=νm×(n/m)×am[m2/g]
N:アボガドロ定数(=6.022×1023
M:窒素のモル質量(=28.0134[g/mol])
m:窒素1分子の吸着占有面積(=0.162[nm2
表2−1のように、生成TTCPの算術平均径は21.41μmであり、市販TTCPの6.14μmに比べて3倍以上大きいが、その比表面積は0.89m2/gであり、市販TTCPの0.87m2/gと差異がない。
また、湿式粉砕前後のDCPDの表面積は、それぞれ16.8m2/gおよび27.8m2/gであり、比較的大きい。また、これらの吸脱着等温線では、相対圧が0.4を超えたあたりからヒステリシスが起きている。このようなヒステリシスは、通常メソ細孔を有する場合にみられるが、測定したDCPDでは、粒子間の隙間がくさび形の細孔であり、その細孔がヒステリシスとして現れたものと考えられる。
[硬化液の分析]
(1)硬化液の特性
キトサン含有酸性硬化液(Liquid1)、キトサン含有中性硬化液(Liquid2)およびポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3)の組成を表2−3に示す。
表中、Liquid4は、Liquid3の調製に用いたキトサン溶液であり、ポリオールの配合による影響を調べるための比較とした。
また、図2−10は、(L1)キトサン含有酸性硬化液(Liquid1)、(L2)キトサン含有中性硬化液(Liquid2)、(L3)ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3)および(L4)キトサン溶液(Liquid4)の状態を示す図である。
図2−10に示される各液体の観察によれば、Liquid1はゲル状で流動性に乏しく、Liquid2〜4はゾル状で流動性はあるものの、やや粘性を有していた。
(2)硬化液の透光性
図2−11は、(L2)キトサン含有中性硬化液(Liquid2)、(L3)ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3)および(L4)キトサン溶液(Liquid4)の可視光透過スペクトルを示す図である。
また、表2−4に、キトサン含有酸性硬化液(Liquid1)、キトサン含有中性硬化液(Liquid2)、ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3)およびキトサン溶液(Liquid4)のpH、透過率およびキトサン含有量を示す。
キトサン含有酸性硬化液(Liquid1)は、キトサン含有量が多い一方で、強い酸性を示し、ゲル状で粘度が高いために、透過率測定用セルに空気を混入させずに充填することが困難で、透過率測定ができなかった。また、目視でキトサンの溶け残りが観察され、すべての溶液の中で一番透明度が低かった。
キトサン含有中性硬化液(Liquid2)は、体液に近い弱塩基性を示す一方で、キトサン含有量が最も少なかった。また、目視観察ではキトサンの溶け残りが確認できないが、透過率は13.48%であった。
本発明のポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3)は、略中性を示し、そのキトサン含有量がLiquid2の4.6倍であった。また、Liquid3の調製に用いたキトサン溶液(Liquid4)がpH2.05の強酸であるのに対して、pH6.71の中性であり、Liquid4の透過率が24.9%であるのに対して、43.7%で透過率が高く、キトサンの溶け残りが殆ど観察されなかった。
Liquid1、2および4では、長波長側で錯乱を受け難くなるためか、低波長から高波長になるにつれて透過率が上昇しているのに対して、本発明のLiquid3では、波長380〜780nmの可視光領域のすべてにおいて透過率が高い。
[ポリオール−キトサン含有硬化液の調製]
中性硬化液のうち、ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3)は、高い透過率を示す一方で、キトサン含有量が低く、キトサン含有量では、キトサン含有酸性硬化液(Liquid1)が最も多く、硬化体の機械的特性に優れていた。
そこで、キトサン含有量の向上を目的として、0.1M−HCl溶液以外の酸とポリオールを用い、様々な量のキトサンを溶解させ、CPCのP/L=3として、硬化液Liquid3−1〜Liquid3−4を調製した。Liquid3および各硬化液の組成およびpHを表2−5に示す。
また、図2−12は、(L3)および(L3−1)〜(L3−4)ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3およびLiquid3−1〜Liquid3−4)の状態を示す図である。
Liquid3−1、Liquid3−2およびLiquid3−4の結果から、1M−HClまたは1M−酢酸を用いることで、Liquid3に比べて、キトサン含有量を増加させることが可能であることがわかる。しかし、酸性が強まり、Liquid3と同量のポリオールを添加しても強酸を示している。
キトサン含有量がキトサン含有酸性硬化液(Liquid1)と同量の2.5wt%になるようにキトサンを加えたLiquid3−3はゲル状になった。これは、硬化液の成分に対する過剰なキトサンの添加によるものと考えられる。
Liquid3−1、Liquid3−2およびLiquid3−3を比較すると、キトサン含有量の増加に伴い、pHが中性にシフトしている。これは、キトサンが有するアミノ基によると考えられる。
後述するように、ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3)を硬化液として用いたCPCペーストの初期硬化時間は長い。
そこで、CPCペーストの初期硬化時間の短縮を目的として、酸性であるリン酸二水素カリウム(KH2PO4)と弱塩基性であるリン酸水素二カリウム(K2HPO4)を、Liquid3に適宜添加して硬化液Liquid3−5〜Liquid3−9を調製した。
具体的には、Liquid3−5〜Liquid3−8の調製では、Liquid3を調製した後にリン酸塩を添加した。また、Liquid3−9の調製では、Liquid3の調製過程のポリオール溶液にリン酸塩を溶解させて添加した。
硬化液の他の配合成分は、キトサン0.20g、水1.0g、ポリオール0.56gおよび0.1M−HCl溶液9.0gであり、CPCのP/L=3とした。
各硬化液の組成およびpHを表2−6に示す。
また、図2−13は、(L3)および(L3−5)〜(L3−9)ポリオール−キトサン含有硬化液(Liquid3およびLiquid3−5〜Liquid3−9)の状態を示す図である。
すべての硬化液でpHが中性から大きく外れることはなかった。
Liquid3−5は、添加したK2HPO4がそのまま白い沈殿となり溶解しなかった。その後、NaHCO3を加えたものがLiquid3−6であるが、K2HPO4とNaHCO3の両者とも溶解しなかった。また、Liquid3−7も添加したKH2PO4により硬化液が白濁した。その後、NaHCO3を加えたものがLiquid3−8であるが、KH2PO4とNaHCO3が反応して発泡した。これは、KH2PO4が酸性でNaHCO3が弱塩基性であるために中和反応が起きたものと考えられる。
一方、Liquid3−9では、溶け残りがない透明な硬化液が得られた。溶液の表面に練和の際に混入した気泡が見られた。β−グリセロリン酸二ナトリウム溶液にK2HPO4とKH2PO4を加えた際にも反応は起こらず、透明なままであった。
これらの結果から、Liquid3−9がリン酸塩を加えつつも、最も中性で高い透明度を示す硬化液であることがわかった。
[硬化体の分析]
(1)インビボ試験
図2−14は、硬化液として(a)水、(b)キトサン含有酸性硬化液(Liquid1)および(c)キトサン含有中性硬化液(Liquid2)をそれぞれ用いたCTCペーストでのインビボ試験(動物埋入試験)の試料のマイクロX線CT画像である。P/L=3としてCTCペーストを調製した。
硬化液として(b)キトサン含有酸性硬化液(Liquid1)を用いた場合にのみ、CPCと生体骨の境界部において骨溶解らしき状態が観察された。これは、Liquid1のpHが3.06であることから、CPCと接触する境界部の生体骨が溶解した可能性が高いと考えられる。
硬化液として(c)キトサン含有中性硬化液(Liquid2)を用いた場合には、骨溶解は観察されないが、CPC周辺に線維状組織の析出が観察された。これは、硬化液中のキトサンの溶け残りがセメント粉の硬化に伴って硬化体周囲に吐き出されてCPCの周囲を覆ったものと考えられる。
比較として硬化成分を含む硬化液の代わりに(a)水を用いた場合には、骨細胞が硬化体に直接接触する様子が観察された。これは、CPCの骨伝導性のためと考えられる。
これらの結果から、生体内でCPCが吸収されて生体骨に置換されるためには、キトサンの溶け残りのない透明な中性硬化液が必要であると考えられる。
(2)硬化時間
図2−15は、硬化体CPC1、CPC2およびCPC3のビガー針試験の結果を示す図である。試験の検体数nは5である。図中、「p<0.01」は、有意差があるのは1%未満であることを意味する。
また、各硬化体の初期硬化時間を、CPCペーストの調製に用いたセメント粉および硬化液と共に表2−7に示す。表中、セメント粉1は、生成TTCPとDCPDのモル比1:1の混合物であり、P/L=3としてCTCペーストを調製した。
硬化液としてLiquid3を用いた本発明のCPC3の初期硬化時間は47.7分であり、硬化液としてLiquid1およびLiquid2を用いた従来のCPC1およびCPC2と比較して長くなった。これは、ポリオールとしてのβ−グリセロリン酸二ナトリウムが吸湿性を有するために、硬化液の水分が硬化反応場に提供されるのを遅延させたためと考えられる。
CPCペーストの初期硬化時間は、セメント粉と硬化液との混練から椎体内への注入(補填)までの操作を行うための時間を確保する必要があるため、通常8〜15分程度が望ましい。これらの試験結果からみれば、CPC1の初期硬化時間はやや短く、CPC2の初期硬化時間はほぼ望ましい。CPC1では、硬化液Liquid1がジカルボン酸でキレート効果を有するリンゴ酸を含有するために、硬化時間が短縮されたと考えられ、CPC2では、硬化液Liquid2がリン酸塩を含有するために、硬化の反応場にリン酸イオンが供給されて早期硬化されたと考えられる。しかしながら、Liquid2を用いた場合には、図2−14のように、CPC周辺に線維状組織が析出するという問題がある。
そこで、CPC3の初期硬化時間短縮を目的として、硬化液Liquid3にリン酸塩を添加した硬化液Liquid3−9を用いて作製した硬化体CPC4としてビガー針試験実施した。
得られた結果を、比較としてCPC3の結果と共に図2−16に示す。図中、「p<0.01」は、有意差があるのは1%未満であることを意味する。
また、硬化体の初期硬化時間を、CPCペーストの調製に用いたセメント粉および硬化液と共に表2−8に示す。表中、セメント粉1は、生成TTCPとDCPDのモル比1:1の混合物であり、P/L=3としてCTCペーストを調製した。
得られた結果によれば、CPC4の初期硬化時間は15.7分であり、CPC3と比較して大幅な短縮と、混練から補填までの操作に必要な時間として適性であることが確認された。
(3)圧縮強度
図2−17は、硬化体CPC1、CPC2およびCPC3の各浸漬時間(左:1日浸漬、中央:3日浸漬および右:7日浸漬)における圧縮強度を示す図である。図中、「p<0.01」は、有意差があるのは1%未満であることを意味する。
また、硬化体CPC1、CPC2およびCPC3の各浸漬時間(1日浸漬、3日浸漬および7日浸漬)における圧縮強度を、キトサン含有量と共に、表2−9に示す。
CPC1は、圧縮強度が最も高く、1日浸漬で30MPaに近い強度を発揮した。このようにCPC1は、硬化時間が短く、高い圧縮強度を発揮する反面、酸性を示すため、インビボ試験の結果のように、骨溶解が起こる可能性があり、好ましくない。
CPC2およびCPC3は、CPC1に比べて低く、ばらつきがあるものの、10MPa程度、すなわち生体材料であり不均質で異方性が強いためにばらつきが強い、海綿骨程度の強度を発揮した。また、CPC2およびCPC3では、経時的な強度の低下がみられた。これは、浸漬により硬化した後、リン酸カルシウムが溶解したことによるものと考えられる。
CPC3の圧縮強度は、CPC2に比べて高い傾向にある。これは、キトサン含有量の差によるものと考えられ、キトサン含有量の増加により、さらなる圧縮強度の向上が期待できる。
図2−18は、硬化体CPC3、CPC5、CPC6およびCPC7ならびにPAのセメント粉の各成分の粒径比と圧縮強度との関係を示す図である。
すなわち、硬化液Liquid3とセメント粉1〜4のいずれか1つを用い、P/L=3で練和し、1日浸漬させて得られた硬化体CPC3、CPC5、CPC6およびCPC7の圧縮強度を測定し、各セメント粉のTTCPとDCPDまたはDCPAとの粒子比との関係を調べた。得られた結果を表2−10に示す。
図中、PAは、参考として、K. Ishikawa、「Bioactive Ceramics: Cements」、Comprehensive Biomaterials、2011年、第1巻、p.267-283に記載の文献値である。
表2−10に示されるように、硬化体CPC3、CPC5、CPC6およびCPC7の圧縮強度は、13.0〜20.2MPaの海綿骨程度の強度を示した。
(4)粉末X線回折による結晶相の分析
図2−19は、セメント粉1と硬化液Liquid3を用いて作製した硬化体CPC3の各浸漬時間(1日浸漬、3日浸漬および7日浸漬)における粉末X線回折図形である。
すべての回折図形においてハイドロキシアパタイト(Hap、図中「H」)のピークが確認でき、HApが析出し硬化したことが確認できた。同様にすべての回折図形において原料のセメント粉1のTTCP(図中「T」)のピーク、すなわちTTCPの残存が確認できた。
セメント粉の原料であるDCPDとTTCPとの溶解速度を合わせるために、溶解度の小さいDCPDを湿式粉砕して粒径を小さくすることで表面積を増やし溶解速度を上げることを試みたが、DCPDの溶解速度がTTCPの溶解速度を上回り、DCPDが先にすべて消費され、TTCPが残存する結果になったものと考えられる。
図2−20は、セメント粉1〜4と硬化液Liquid3を用いて作製した硬化体CPC3、CPC5、CPC6およびCPC7の1日浸漬における粉末X線回折図形である。
CPC3とCPC5とを比較すると、出現ピークに殆ど差異はなく、セメント粉の原料であるTTCPと析出物であるHApのピークが確認できた。TTCPの特徴的な(032)面および(040)面のピークをみると、CPC5がCPC3より強い。
DCPAがDCPDよりも溶解度が高く溶解し易いため、よりDCPAが消費されTTCPの残存量が増加しピークが強く出たものと考えられる。
CPC6とCPC7とを比較すると、出現ピークに殆ど差異はなく、両者をCPC3およびCPC5の回折図形と比較すると、TTCPの最強以外のピークはほとんど消失し、HApのピークが大きく出現している。これらは、TTCPの粒径が減少したためTTCPの消費も進み、HApへの転化が進んだことに因るものと考えられる。また、CPC6およびCPC7のHApのピークは、CPC3およびCPC5と比較して幅が広いため、結晶性が低くかつCPC3およびCPC5と比較して低結晶性のHAp相が析出しているものと考えられる。
図2−21は、本発明の基準となる化合物、TTCP、DCPD、DCPAおよびHApの回折線図(それぞれICDD PDF No.25−1137、No.11−0293、No.09−0080およびNo.74−0566)である。
(5)静的崩壊率
セメント粉としてセメント粉1、硬化液としてLiquid3を用いて作製した硬化体CPC3について、前記条件および方法により静的崩壊率を測定した。
図2−22は、硬化体CPC3の静的崩壊率測定の様子を示す図である。
得られた結果、5回の測定における各測定値とそれらから算出した崩壊率およびそれらの平均値を表2−11に示す。
CPC3は、崩壊率が0.378±0.108%であり、殆ど崩壊しないことが確認できた。すなわち、Liquid3はCPCに非崩壊性を付与し、CPCの硬化液として有用であることがわかる。
ポリオール含有の中性透明キトサン含有硬化液(pH6.71、透過率43.73%)を用いた、本発明のセメントペーストは、初期硬化時間の短縮化を実現し、その硬化体では、殆ど溶解しないといえる静的崩壊率を実現し、かつ酸性硬化液での骨溶解現象および硬化体周辺での線維性組織生成の問題を解消することができる。
[実施形態2]
対比のため、一部、実施形態1を含む。
以下に記載の略号等は、本実施形態2内のみで有効とする。
[セメント粉の調製]
(1)リン酸四カルシウム(TTCP)の調製
市販の水酸化カルシウム(Ca(OH)2、MW74.0927、等級:特級、ナカライテスク株式会社製)と正リン酸(H3PO4、MW98.00、含有率85%、等級:特級、和光純薬工業株式会社製)を原料に用いた。Ca/P比が2になるようにCa(OH)2を31.32g(0.4mol)、H3PO4を23.06g(0.2mol)、分析天秤(型式:sefi IBA−200、アズワン株式会社製)で秤量し、前者をメスシリンダーで秤量した400mLの水が入った500mLビーカー、後者を50mLが入った100mLビーカーにそれぞれ加え、撹拌子を用い回転数200rpmに設定したホットスターラー(型式:RSH−1DN、アズワン株式会社製)で撹拌し、Ca(OH)2溶液とH3PO4溶液を得た。
得られたCa(OH)2溶液にH3PO4溶液を、ガラスコック付きビュレット(アズワン株式会社製)を用い、一定量ずつ2時間をかけて滴下し、トルネード(型式:PM−203、アズワン株式会社製)を用いて撹拌した。その際、撹拌により溶液が軽く渦を生じる程度に回転数を適宜調節した。低温恒温水槽(型式:LTB−125A、アズワン株式会社製)から温度5℃の水をウォータージャケットに循環させ、Ca(OH)2溶液の入った500mLビーカーをウォータージャケット中で温度10℃以下に保持した。滴下後、24時間室温で保持し、熟成させた。
その後、遠心分離機(型式:Suprema21、株式会社トミー精工製)を用い回転数5000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を取り除き、さらに回転数5000rpmで7分間遠心分離した。分離した沈殿物をシャーレに入れプログラム定温乾燥機(型式:DOV−450P、アズワン株式会社製)内、温度110℃で24時間乾燥させた。乾燥させた試料をアルミナ製ボート(型式:SSA−H2B、株式会社ニッカトー製)に入れ、炉床昇降式電気炉(型式:Super Boy、丸祥電器株式会社製)で、大気中、温度1500℃、5時間焼成した。昇降温速度は10℃/minとした。
焼成後、試料を電気炉から取り出し、ミニブレンダー(型式:セレクトグラインドCG−II、メリタジャパン株式会社製)で5分間粉砕し、さらにメノウ乳鉢で1時間或いは1.5時間乾式粉砕した。さらに、ミニふるい振とう機(型式:MVA−1、アズワン株式会社製)とステンレスふるい(サイズφ75μm)を用い、回転数2500rpmで75μm以下に分級したものを生成物Aとした。
市販TTCP(Ca4(PO4)2O、MW366.26、社内規格品、太平化学産業株式会社製)をハイスピードミル(型式:HS−15、ラボネクト株式会社製)で粉砕し、20wt%スラリーとなるよう2−プロパノール(イソプロピルアルコール(IPA)、等級:特級、和光純薬工業株式会社製)をメスシリンダーで、直径3mmのジルコニアボール(型式:YTZ−3、直径3mm、株式会社ニッカトー製)900gをパーソナル電子天秤(型式:EK600i、アズワン株式会社製)で秤取り、共にポットミル(型式:HD−B−104、株式会社ニッカトー製)に加えた。室温、回転数490rpmで5時間、卓上型ポットミル回転台(ユニバーサルボールミル、型式:UBM−2、増田理化工業株式会社製)にて湿式粉砕した。得られた生成物を、プログラム定温乾燥機(型式:DOV−450P、アズワン株式会社製)内、温度50℃で48時間乾燥させ、メノウ乳鉢で乾式粉砕し、市販TTCP(2)を得た。
(2)リン酸水素カルシウム(DCPA)の調製
リン酸水素カルシウム無水和物(CaHPO4、MW136.06、太平化学工業株式会社製)を15.00g(0.11mol)、分析天秤で秤量し、メスシリンダーでエタノール(C25OH、等級:特級、キシダ化学株式会社製)を180mL、パーソナル電子天秤(型式:EK600i、アズワン株式会社製)で直径10mmのジルコニアボール(型式:YTZ−10、直径10mm、株式会社ニッカトー製)を500g秤取り、共にポットミル(型式:HD−A−3、株式会社ニッカトー製)に加えた。室温、回転数110rpmで30時間、48時間、96時間に分け、卓上型ポットミル回転台(型式:ANZ−51S、アズワン株式会社製)にて湿式粉砕した。得られた湿式粉砕生成物を、ろ紙(5C、アズワン株式会社製)とブフナー漏斗、アスピレータ(型式:A−3S、EYELA東京理化器械株式会社製)を用いて吸引濾過し、シャーレに入れ、プログラム定温乾燥機内、温度50℃で24時間乾燥した。さらにメノウ乳鉢で乾式粉砕した。後述するように粉砕時間を変えても粒径は変わらないので、この方法で得られたものを以降、DCPAと称す。
(3)セメント粉の混合
セメント粉末は以下の通り調製した。TTCP6.00g(0.0164mol)とDCPA2.23g(0.0164mol)を分析天秤で秤量した。50mLマルエム目盛付試験管ねじ口(型式:NX−50、アズワン株式会社製)に入れ、振とう機(型式:MALTI SHAKER MS−300、アズワン株式会社製)に設置し、回転数1600rpm、100分間振とう混合を行った。得られた混合物をメノウ乳鉢で10分間乾式混合し、セメント粉とした。
後述するように生成物A、市販TTCPはTTCP単一相で、市販TTCP(2)もほぼTTCP単一相であった。また、後述するように、メノウ乳鉢の乾式粉砕時間1時間と1時間半での生成物Aの平均粒径は、各々25−30μmと10−15μm、市販TTCP、市販TTCP(2)は各々7.2μm、2.0μmであった。それぞれ粒径で区別するため、メノウ乳鉢での乾式粉砕時間1時間と1時間半で得られた生成物AをTTCP(25-30)、TTCP(10-15)、市販TTCP、市販TTCP(2)をTTCP(7.2)、TTCP(2.0)とし、各々の組合せのセメント粉を、以降、表3−1の通りに称す。
[硬化液の調製]
(1)アルギン酸ナトリウム含有硬化液の調製
メスシリンダーで秤量した水10mLを50mLビーカーに入れ、中分子量アルギン酸ナトリウム((NaC676)n、等級:一級、80〜120mPa・s、和光純薬工業株式会社製)を0.20g、リン酸水素二カリウム(K2HPO4、MW136.086、等級:特級、キシダ化学株式会社製)を0.20g、リン酸二水素カリウム(KH2PO4、MW174.2、等級:特級、キシダ化学株式会社製)を0.10g、分析天秤で秤量して加えた。この溶液をLiquidA1とする.また、中分子量アルギン酸ナトリウム0.20gの代わりに、低分子量アルギン酸ナトリウム((NaC676)n、20〜50mPa・s、キミカ株式会社製)を分析天秤で1.0g、1.5g、2.0gを秤量して加えた溶液をそれぞれLiquidA2、A3、A4とする。溶液混合は、撹拌子とホットスターラー(型式:REXIM RSH−1DN、アズワン株式会社製)を用い、室温、回転数300rpmで15分撹拌して均一に溶解した。
(2)ポリオール−キトサン含有硬化液の調製
塩酸(HCl、MW36.46、等級:特級、35%含有、d=1.18g/cm3、キシダ化学株式会社製)をメスシリンダーで8.828mL(0.10mol)秤量し、1Lメスシリンダーを用い、水を加え1000mLとし0.1M−HCl溶液を作製した。作製した0.1M−HClをメスシリンダーで9mL秤量し、分析天秤で秤量した低分子量キトサン0.20g加え、ガラス棒で撹拌することでキトサン溶液を得た。
次に、メスシリンダーで秤量した1mLの水にβ-グリセロリン酸二ナトリウム四水和物(C37Na26P・4H2O、MW216.04、TCI東京化成工業株式会社製)を分析天秤で0.56g(0.0259mol)秤量して加え、ガラス棒で撹拌し溶解させ、さらにリン酸二水素カリウム(KH2PO4、MW136.086、和光純薬工業株式会社製)と弱塩基性であるリン酸水素二カリウム(K2HPO4、MW174.2、和光純薬工業株式会社製)を添加し、β-グリセロリン酸二ナトリウム溶液を得た。キトサン溶液にβ−グリセロリン酸二ナトリウム溶液1mLを、メスピペットで一滴ずつ加え撹拌し得られた溶液をポリオール−キトサン含有硬化液とした。これを以後、LiquidC1と称す。
[硬化液の評価]
(1)透過率測定
紫外可視分光光度計(型式:V-500、日本分光株式会社製)を用いてスペクトル測定と固定波長測定を行い、作製した硬化液の透過率を調べた。測定条件を以下の表3−2に示す。作製した硬化液を角型石英セル(10mm、日本分光株式会社製)に入れ測定を行った。
(2)pH測定
作製した硬化液のpH測定を、pHメーター(型式:D−51、株式会社製掘場製作所)を用いて行った。使用前には、ほう酸塩緩pH標準液(pH9.18)、中性リン酸塩pH標準液(pH6.86)、フタル酸塩pH標準液(pH4.01)(すべて和光純薬工業株式会社製)を用いて3点校正した。
(3)アルギン酸ナトリウムの評価
アルギン酸の粘度測定を行った。破骨細胞はプロトンと塩素イオンを産生し、体内で骨を溶解するが、塩素イオン濃度の異なる生理食塩水、Tris−HCl水溶液、擬似体液(SBF)中に浸漬し、アルギン酸の分子量変化を粘度から推定した。
生理食塩水は、塩化ナトリウム(NaCl、MW58.44、等級:特級、和光純薬工業株式会社製)9.000gを分析天秤で秤量し、1Lメスフラスコに入れ、水を加えて定容した。SBF、Tris−HCl水溶液の作製に先立ち、1N−HCl溶液を、塩酸(HCl、35.0〜37.0mass/mass%、等級:特級、和光純薬工業株式会社製)をメスシリンダーで用いて秤量し、水を加えて12倍に希釈することで得た。
SBFは、S. B. Cho、K. Nakanishi、T. Kokubo、N. Soga、C. Ohtsuki、T. Nakamura、T. Kitsugi、T. Yamamuro、J. Am. Ceram. Soc.、第78巻、第7号、p.1769-1774(1995)に従い、以下の通り調製した。2Lポリ瓶中にメスシリンダーで水700mLを秤量して入れ、撹拌子とホットスターラーを用い、回転数500rpmで撹拌しながら、表3−3の試薬(等級:特級、和光純薬工業株式会社製)を、順に分析天秤で精秤して加え、溶解したら、次の試薬を同様に精秤、溶解を行った。ホットスターラーで、温度36.5±0.5℃となるように調整し、アルコール温度計で確認した。顆粒状のCaCl2は、一粒ずつ逐次添加し投入の一粒が溶けてから次の一粒を加えた。Na2SO4を加えた時点でpHメーターの電極を溶液に浸した。水をさらに200mL加えて液量を900mLとしたのち、pHメーターを見ながらpH7.45以下の範囲でtris(トリス−ヒドロキシメチルアミノメタン)を添加し、pHが7.45まで上昇したら、1M−HCl溶液を滴下し、pHを7.42まで下げた。次いで、trisを加え、pH7.45まで上昇したら1M−HCl溶液を加える操作はtrisを使い切るまで繰り返し、最終的にpH7.40に調整した。調整後の水溶液を1000 mLメスフラスコに移し水冷、液温が温度20℃以下になったあと、水を加え定容した。SBFは調製後1カ月以内に使用した。SBFの塩素濃度は、148.8mmolである。pH測定をpHメーター(型式:D−51、株式会社製掘場製作所)を用いて行った。
Tris−HClは以下の通り調製した。メスシリンダーで秤取った水900mLを、撹拌子とホットスターラーを用いて温度36.5±0.5℃に調整した。1.0M−HClをメスシリンダーで39mL秤量して加え、pHメーター電極を浸した。分析天秤で秤量したTrisを入れ、pH7.45まで上昇したら1.0M−HCl溶液を加え、Tris6.118gを使い切るまで繰り返し、最終的にpH7.40に調整した。調整後の水溶液を1000mLのメスフラスコに移し水冷、液温が温度20℃以下になるまで静置した。その後、水で定容した。
生理食塩水、Tris−HCl、擬似体液(SBF)、それぞれの塩素濃度は、145mM、50mM、170mMである。それぞれメスシリンダーで秤量し200mLをビーカーに入れ、分析天秤で秤量したアルギン酸ナトリウム(等級:特級、和光純薬工業株式会社製)粉末2.00gを加え、24時間、室温で静置した。粘度測定にはB型回転粘度計(型式:ブルックフィールドDV−I Prime、英弘精機株式会社製)を用いた。回転数は60rpmとし、回転子は62番(φ19×7mm)を用いた。また測定は、二重管式反応容器(φ150×100mm、株式会社三商製)に水を入れ、低温恒温水槽(型式:LTB−400A、アズワン株式会社製)から循環し、温度20℃(室温)に保持した。データは、表示された数値を読取り記録した。
[CPC硬化試験]
(1)CPCペーストの調製
CPCの調製は、JIS T0330−4に準拠して行った。設定した粉液比になるように、セメント粉1〜4を分析天秤で秤量した。硬化液は練和に用いるシャーレに入れた状態で、分析天秤で秤量した。練和は、図3−1の治具を用いて行った。シャーレにセメント粉を硬化液に触れないように入れ、もし塊があれば練和前にプラスチック板(図3−1、(a))で押さえて潰した。セメント粉は3回に分け、プラスチック板とステンレス製薬サジ(図3−1、(b))を用い、硬化液(図中は、LiquidC2)と合わせ練和した。大気中(温度25℃)で70秒間練和し、練和物を得た。
練和物は、練和後直ちに、プラスチック板一枚の上に載せたφ6×12mmのテフロン(登録商標)製割型(図3−2、(a))にステンレス製薬さじとガラス棒(φ5.6mm)を用いて詰込んだ。その際、気泡が入らないように、ステンレス製薬さじでテフロン製割型の中央の穴に押し込み、適宜ガラス棒で上から抑えることを繰り返す。さらに、両側をプラスチック板(図3−2、(b))とクリップ(図3−2、(c))で留めた。型の構成を図3−2に示す。
予め温度37℃に保持したクールインキュベーター(型式:CN−40A、三菱電機エンジニアリング株式会社製)中に、水を含ませたスポンジを入れた容器およびメスシリンダーで秤量した水50mLを入れた栓付スクリュー管瓶を入れた。練和物をテフロン製割型ごと、スポンジの上に載せ、容器に蓋をして1時間保持し、初期硬化体を得た。その後、予め温度37℃に保温した水中に割型のまま練和物を浸漬した。クールインキュベーター中、温度37℃で保温し浸漬させ、その後脱型し得られたCPC硬化体を試料とした。
図3−3は、テフロン製割型、(a)テフロン型、(b)テフロン型固定板(30mm×12mm×2.3mm、中央の穴径φ5mm)、(c)平頭ネジ(5M×33mm)、(d)ナットおよび(e)組立図を示す図である。
図3−4は、CPCの初期硬化に用いる容器を示す図である。
(2)圧縮強度試験
圧縮強度試験は、JIS T0330−4に準拠して行った。上記の通り調製したCPC硬化体を各浸漬条件ごとに5個作製した。CPC硬化体の上面と下面が平行になるよう留意した。平行でなく突出した部分があると応力が集中し、本来より低い値が得られるからである。浸漬後、表面の水を拭い、試験に供した。圧縮強度測定には、万能試験機(型式:AUTOGRAPH AGI−20kN、株式会社島津製作所製)、5kNロードセル(型式:87394、株式会社島津製作所製)を用い、また引張方向を圧縮方向に転換する引張−圧縮変換器(図3−5)を用いた。引張−圧縮変換器と試料の間に水で濡らした濾紙を挟み、荷重が1Nかかった時点で変位を0mmとし、ゼロ点を合わせた。試験途中に微小破壊による圧縮強度の急激な減少があっても試験を中断せず、変位が2mmになるまで連続して行った。測定条件は、ヘッドスピード0.500mm/sec、サンプリング間隔100msecで、制御・解析ソフト(Tranpezium、株式会社島津製作所製)を用いて計測を行った。
(3)初期硬化時間測定
初期硬化時間測定は、JIS T0330−4に準拠し行った。上記の要領で練和したCPCペーストを練和開始後90秒以内にテフロン製型(φ10×5mm)に入れ、初期硬化体の調製と同様、温度37℃に保持したクールインキュベーター中の水を含んだスポンジを入れた容器中に置き、ビガー針試験機(型式:A−004、株式会社日本メック製)を用い、ビガー針(300g、先端面積2mm2)を真上から静かに落とし、圧痕を確認後、圧痕が残れば容器内に戻すということを繰り返し、圧痕を示さなくなった時間を初期硬化時間とした。試験の様子を図3−6に示す。1条件につき3回行い、その平均値を初期硬化時間とした。
(4)静的崩壊率測定
静的崩壊率測定は、JIS T0330−4に準拠し行った。メスシリンダーで秤量した水に分析天秤で秤量した塩化ナトリウム(NaCl、等級:特級、キシダ化学株式会社製)を用いて生理食塩水(0.9%NaCl水溶液)を調製した。プラスチック容器(図3−7(a)、φ40×30mm)の中にステンレス金網台(図3−7(b)、30×30mm)と上記のように調整し、メスシリンダーで秤量した生理食塩水45 mLを入れ、予めクールインキュベーター内で温度37℃に加温した。上記の手順により得られたCPCペーストをシリンジ(φ10mm、40mL)に1mL充填し、プラスチック容器の中にあるステンレス金網台上に静かに押し出した。練和開始5分後に容器の蓋を閉めて、クールインキュベーター中で、温度37℃で72時間静置した。72時間後、容器内の生理食塩水を慎重に取り除き、金網台ごとプラスチック容器をプログラム定温乾燥機内、温度37℃で24時間乾燥し、分析天秤を用いて秤量し、以下の式より崩壊率を求めた。
崩壊率(%)=[(c−d)/((a−b)+(c−d))]×100
a:硬化した試料と金網台の重量(g)
b:硬化した試料を除去し、乾燥させた金網台の重量(g)
c:崩壊した試料とプラスチック容器の重量(g)
d:崩壊した試料を除去し、乾燥させたプラスチック容器の重量(g)
(5)押出力測定
CPCペーストの注入のし易さ(Injectability)を評価するため、JIS T0330−4の稠度試験の代わりに、以下の測定を行った。
CPCを70秒間練和し、90秒以内にCPC計量用シリンジ(図3−8、φ4.6mm)を用いて0.2mLを計量した。120秒後、図3−9のように電子天秤(型式:EK−4100i、株式会社エーアンドデイ製)上で筒先側を上にし、外筒を手で持って鉛直下方向に荷重を加えていき、シリンジが筒先から完全に出るまでにかかった最大荷重を測定した。なお、荷重測定時は電子天秤の液晶部を動画撮影し、動画にて最大荷重を確認した。測定は3回繰り返し、それらの平均値と標準偏差を得た。
[試料の分析]
(1)粉末X線回折による結晶相同定
上記により作製した生成物A、市販TTCP、市販TTCP(2)、DCPAおよび作製したCPC硬化体(シャーレに入れ、プログラム定温乾燥機内、温度50℃で乾燥した)の粉末X線回折を行った。X線回折装置(型式:RINT2200、リガク株式会社製)、解析ソフト(JADE6、リガク株式会社製)、X線発生には封入管(ターゲットCo、2kW)を用いた。測定条件は以下の通りである。測定角度10°〜70°、サンプリング角度0.02°、スキャン速度2.0°min-1、管電圧40kV、管電流20mA、スリットDS=1°、SS=1°、RS=0.3mm、Co−Kαの波長は1.790Åである。
(2)粒度分布測定
合成し分級したTTCP(生成物A)の粒度分布を測定した。レーザー回折/錯乱式測定装置(型式:LA920、株式会社堀場製作所製)で行った。分散媒は超純水、分散剤は使用しなかった。試料ごとに超音波洗浄機で分散後、測定した。水に対するリン酸カルシウムの屈折率は1.24とした。
(3)吸収性インビトロ試験
JIS T0330−3:2012に準拠して溶解性試験を行った。破骨細胞が作り出す環境下であるpH5.5の溶液中にて、試料からのカルシウムイオン溶出量、質量減少量の測定を行った。試料は上記と同様に練和後、温度37℃で初期硬化させ、温度37℃の生理食塩水50mL中、7日浸漬後、プログラム定温乾燥機(型式:DOV−450P、アズワン株式会社製)を用い、温度50℃で24時間乾燥した試料を吸収性試験試料とした。
酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)の調製
酢酸4.804g(0.08mL、CH3COOH、MW60.05、等級:特級、キシダ化学株式会社製)を分析天秤で秤量し、1Lメスフラスコに入れ、水を加えて1Lに定容し、0.08mol/L酢酸溶液を作製した。
酢酸ナトリウム6.562g(0.08mol、CH3COONa、MW82.0343、等級:特級、キシダ化学株式会社製)を同様に秤量し、1Lメスフラスコと水を用いて同様に、0.08mol/L酢酸ナトリウム溶液とした。この作業を2回繰り返し、0.08mol/L酢酸ナトリウムを2L作製した。
メスシリンダーで秤量した0.08mol/L酢酸溶液20.0mLに0.08mol/L酢酸ナトリウム溶液を加え、pHメーター(型式:D−51、株式会社堀場エステック製)を用いて、pH5.50±0.02に調整した。0.08mol/L酢酸ナトリウム溶液142mLでpH5.49〜5.50となった。よって、0.08mol/L酢酸溶液と0.08mol/L酢酸ナトリウム溶液を混合比1:7で混合してpH5.50±0.02の酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液を調製した。
校正用1mg/L、10mg/L、100mg/L Ca標準液の調製
1000ppm Ca2+標準液を以下の手順で作製した。
硝酸9.132g(0.1mol、HNO3、69〜70 mass/mass%、等級:特級、キシダ化学株式会社製)を分析天秤で秤量し、1Lメスフラスコに入れ、水を加えて1000mLに定容し、0.1mol/L硝酸溶液を作製した。
炭酸カルシウム(CaCO3、MW100.0869、等級:特級、和光純薬工業株式会社製)2.502gを分析天秤で秤量し、1Lメスフラスコに入れ、0.1mol/L硝酸溶液を加えて1000mLに定容し、1000ppm Ca2+標準溶液とした。
1000ppm Ca2+標準液を、100mLメスフラスコと10mLホールピペットを用いて段階希釈し、100ppm Ca2+標準液、10ppm Ca2+標準液を作製した。それぞれの Ca2+標準液10mLと0.8mol/L酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液10mLを10mLホールピペットで秤取り、100mLメスフラスコに入れ、さらに水を加えて100mLに定容し、0.08mol/L酢酸−酢酸ナトリウム−100mg/L、10mg/L、1mg/L Ca2+標準液を調製した。
(3)Caイオン溶出量測定
Caイオン電極(型式:CH−9101、メトロームジャパン株式会社製)を測定前に以下の通り、コンディショニングを行なった。
水中に2時間浸漬し、次いで0.08mol/L酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝液中で撹拌子とホットスターラー(型式:REXIM RSH−1DN、アズワン株式会社製)を用い、回転数430rpmで30分、室温で撹拌しながら浸漬した。
検量線は、上記で作製した校正用Ca標準液を用いて作成した。撹拌子とホットスターラー(型式:REXIM RSH−1DN、アズワン株式会社製)を用い、回転数430rpmで、室温で撹拌し浸漬しながら、1、10、100mg/L Ca2+標準液の順にCaイオン電極を浸漬し、イオン濃度を測定した。
図3−10に示すように、樹脂製の撹拌子台(研究室自作)の下に試験片を置き、上に撹拌子を載せ、Caイオン電極をセットし、0.08mol/L酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液100mLを容器に投入し、撹拌子、ホットスターラー(型式:REXIM RSH−1DN、アズワン株式会社製)を用いて回転数430rpmで撹拌してイオン濃度を測定した。酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液を入れてから1分以内に測定を開始した。測定開始20分後までは2分おき、30〜150分後までは15分おき、その後30分おきに測定し、300分後に終了した。測定後、緩衝液のpHを測定し、pH5.50であることを確認した。それぞれの条件について3回測定し、それらの平均を実験結果とした。また、生理食塩水に浸漬していた試料を取り出して乾燥、溶解性試験後の試料を、温度50℃で24時間乾燥した後、デシケーター(真空ポリカデシケーター、型式:240G型、アズワン株式会社製)中で2時間放冷後、重量を分析天秤で秤量し、その差を質量減少量とした。
(4)断層画像撮影
卓上型マイクロフォーカスX線CT(型式:SMX−90CT Plus、inspeXio、株式会社島津製作所製)を用いて、CPC硬化体の断層画像撮影を行った。
試料台に試料を取り付け、管電圧90kV、管電流110μAで断層画像を撮影した。データを3次元画像処理ソフト(ExFact VR、日本ビジュアルサイエンス株式会社製)を用いて、断層画像のボリュームレンダリングにより三次元可視化を行った.LUXテーブルを調整し、試料の3D断面を観察した。
(5)FE-SEMでの試料観察
吸収性インビトロ試験後の試料にOsmium Plasma Coater(型式:OPC60A、フィルジェン株式会社製)を用い、OsO4を12nmコーティングしてSEM試料とした。電界放射型走査型顕微鏡(FE−SEM、型式:JSM−6500F、日本電子株式会社製)で各試料の観察を行った。観察時の加速電圧は、15kV、真空度5.00×10-4 Pa以下で行った。
[セメント粉の分析]
(1)粉末X線回折(XRD)による試料の同定
(a)生成物A、(b)市販TTCPおよび(c)市販TTCP(2)の回折図形ならびに(d)TTCP(ICDD PDF No.25−1137)の回折線図を図4−1に示す。
図4−1によれば、(a)生成物Aおよび(b)市販TTCPの回折図形と(d)TTCPのICCDによる回折線図のピーク位置および強度がほぼ一致し、これら以外に特にピークはほとんど見られない。したがって、生成物Aおよび市販TTCPはTTCPの単一相であると考えられる。また、市販TTCPを湿式粉砕した市販TTCP(2)は、最強ピーク2本の強度比が異なり、ピーク分離がやや明確でなく、低結晶性アパタイトの存在を示唆している。
(a)湿式粉砕前のDCPA、(b)30時間湿式粉砕後のDCPA、(c)48時間湿式粉砕後のDCPAおよび(d)96時間湿式粉砕後のDCPAの回折図形ならびに(e)DCPA(ICDD PDF No.09−0080)の回折線図を図4−2に示す。
図4−2によれば、最強ピーク3つに注目すると、30時間の湿式粉砕により(112)面のピークが低下している。しかし、(020)面および(220)面との相対的なピーク強度は、粉砕時間を48時間から96時間としてもほとんど変わらない。DCPAはエタノールに不溶であるが、エタノールに含まれる水分により若干溶解すれば、Caとリン酸の割合から局所的には弱酸性になると思われる。弱酸性ではアパタイトの溶解度が最も低く安定であるが、アパタイトに相当するピークも見られない。粉砕効果により、c軸方向の粉体の形態が変化し、X線回折測定のためのガラス試料板への充填の結晶方位に変化があったためと思われる。
(2)粒度分布
(I)乾式粉砕のTTCP(粉砕時間1時間)、(II)乾式粉砕のTTCP(粉砕時間1.5時間)、(III)市販のTTCPおよび(IV)市販TTCP(2)の粒度分布を図4−3に、(V)湿式粉砕のDCPA(粉砕時間30時間)、(VI)湿式粉砕のDCPA(粉砕時間48時間)および(VII)湿式粉砕のDCPA(粉砕時間96時間)の粒度分布を図4−4に示し、それらの算術平均系およびメジアン径を表4−1に示す。
図4−3によれば、(I)と(II)を比較すると、粉砕時間を1時間から1.5時間に
するとTTCPの粒径が小さくなっているのが明瞭である。しかしながら、(II)でも分布が左右非対称であり、数μm以下の分布が多くなっている。ミニブレンダーにて粉砕後、メノウ乳鉢での粉砕を行ったが、さらなる微細化の可能性を示唆している。一方、(III)と(IV)を比較すると、市販TTCPと粉砕した市販TTCP(2)は、粒度分布が左右対称でシャープなピークを示し、粉砕による微細化が明瞭に見て取れる。
また、図4−4によれば、(V)〜(VII)を比較すると、粒度分布にほとんど変化が見られない。市販DCPAはエタノールを媒体とした湿式粉砕時間を30時間、48時間、96時間まで行ったが、XRDから示唆されるように湿式粉砕30時間で結晶形態に変化が生じた後は、粉砕による微細化はあまり進まなかったと考えられる。
[硬化液の分析]
(1)硬化液の組成
調製したアルギン酸含有硬化液(LiquidA1、LiquidA2、LiquidA3、LiquidA4)の組成を表4−2に示す。
中分子量アルギン酸ナトリウム(80〜120mPa・s)は、水に2%まで溶解させると、それ以上中分子量アルギン酸ナトリウムを溶解させることができたが、少しゲル状で流動性が低下した。水に中分子量アルギンナトリウムを2%溶解させ、硬化液として用いると、初期硬化時間が長くなり、セメント粉のTTCPの溶解を促進するため、リン酸塩を添加した。pHを調整するため酸性であるリン酸二水素カリウム(KH2PO4)と弱塩基性であるリン酸水素二カリウム(K2HPO4)を用いた結果、LiquidA1では初期硬化時間が8〜15分であった。さらにアルギン酸ナトリウムの溶解量を高めるため、LiquidA2、LiquidA3、LiquidA4では低分子量アルギン酸ナトリウム(20〜50mPa・s)を用いると、20%近くまで溶解することが可能であった。また、中分子量と比較して粘性の低下が見られた。
調製したキトサン含有硬化液(LiquidC1、LiquidC2、LiquidC3、LiquidC4)の組成を表4−3に示す。
また、用いたキトサンの種類とそれにより分類した硬化液を表4−4に示す。
キトサンはpH3以下の酸性条件下でプロトン化が進み、分子量の低下と共に溶解するが、pHが1程度の0.1M−HClでは中分子量キトサンでは2%まで、脱アセチル化度が高いダイキトサンでは2%で溶け残りがあり、1%添加に止まった。ダイキトサンはフレーク状塊であり、酸の浸透が良好でなく、溶解し難い傾向が見られた。フレーク状塊をさらに解砕することで溶解性の向上が期待される。また、より高濃度の酸を用いることで、よりプロトン化も促進されると考えられる。また、硬化液を中性にするため、水酸基が多いグリセロリン酸ナトリウムを添加したが、グリセロリン酸はやや粘性が高く、グリコール酸ナトリウムを使うことで粘性の低下が可能ではないかと思われる。低分子量キトサンを用いることで、粘性の低下が見られた。
(3)硬化液の特性
調製したアルギン酸含有硬化液(LiquidA1、LiquidA2、LiquidA3、LiquidA4)およびキトサン含有硬化液(LiquidC1、LiquidC2、LiquidC3、LiquidC4)のpHを表4−5に示す。
また、アルギン酸含有硬化液、(a)LiquidA2、(b)LiquidA3および(c)LiquidA4の様子を図4−5に、それらの透過率を図4−6に示す。
図4−5によれば、(a)LiquidA2、(b)LiquidA3、(c)LiquidA4とアルギン酸濃度が高くなるにつれて、やや着色が見られる。しかし、硬化液を調製し、室温で2週間置いてもゲル化など変質はしなかったため、溶け残りはないと考えられる。
(4)アルギン酸ナトリウムの評価
粘性試験の結果を表4−6に示す。
水に浸漬した場合と比較して、Tris−HClではほぼ同じであり、生理食塩水、SBFの順に粘度が低く、キトサンの場合と同様の結果となった。Clイオン含有量が大きいと粘度が低くなる傾向があった。粘度低下は分子量の低下を意味しており、破骨細胞が産生する塩素イオンにより、体内でアルギン酸は分解・吸収される可能性がある。一方、アルギン酸はCaイオンとキレート結合するため、体内の破骨細胞環境下でキトサンほど分解吸収されない可能性もある。
[硬化体の分析]
(1)硬化時間
硬化体CPC1〜5のビガー針試験の結果を表4−7に示す。
硬化液にリン酸塩を含有させることにより、初期硬化時間を早めることができるが、骨形成の手術の現場であまりに早い硬化であれば、混練〜注入の操作が困難となるため、一定の初期硬化時間が必要である。適用部位や術者によって、好ましい初期硬化時間に差があり、適切な初期硬化時間を定め難いが、数分〜20分程度が望ましいと考えられる。硬化体CPC5を除き、ほぼその範囲に入っている。異なるアルギン酸ナトリウム含有量と粒径は、初期硬化時間にほとんど違いが見られなかったが、粉液比を低くしたCPC5では硬化時間が長い結果となった。
表4−7中、硬化液のLiquidA1、LiquidA2、LiquidA4は、それぞれ水10mL、KH2PO4 0.2g、K2HPO4 0.1gおよびアルギン酸(括弧内のg数)を含み、LiquidC2は、水1mL、0.1M−HCl 9mL、ポリオール0.56gおよびキトサン(括弧内のg数)を含む。
(2)圧縮強度
表4−8に圧縮試験を行った硬化体CPCの条件を、図4−7に硬化体CPC4、CPC7およびCPC8の24時間浸漬における圧縮強度を示す。
表4−8中、硬化液のLiquidA2、LiquidA3、LiquidA4は、それぞれ水10mL、KH2PO4 0.2g、K2HPO4 0.1gおよびアルギン酸(括弧内のg数)を含む。
硬化体CPC8の圧縮強度が最も高く、50MPaもの強度を発揮した。アルギン酸ナトリウムの添加率が3.2%以上の添加は圧縮強度の向上には寄与しなかったが、多糖類含有量の増加より圧縮強度が上昇する既報、山田裕貴、大阪市立大学工学研究科修士論文、2013年およびH. H.K.Xu、C. G.Simon、Biomater、第26巻第12号、p.1337-1348、2005年と一致した。硬化体CPC7とCPC8の違いは、多糖類であるアルギン酸ナトリウム含有量の差によると考えられる。
表4−9と図4−8に硬化体CPC4の各浸漬時間に対する圧縮強度を示す。
浸漬時間が長くなると圧縮強度が低下する傾向が見られた。後述するように、セメント粉がCPC硬化体に残存しており、水和硬化に寄与していないセメント粉が溶出し、硬化体の密度が低下したためと思われる。水ではなく、体液のようにCaやリン酸が過飽和な場合、溶出分が補充される可能性もあるが、骨補填部では多方面から荷重がかかるため、崩壊のおそれがあり、改善が必要と思われる。また、低分子量アルギン酸により、粘性は低下し、容易に水に溶解するが、硬化に寄与しないアルギン酸は硬化体から溶出する可能性もある。
セメント粉は2種類のリン酸塩から構成されており、四リン酸カルシウムが残存し易いので、残存を回避するため、粒径の小さなTTCP(7.2)とTTCP(2.0)を用いた。
表4−10に圧縮試験を行った硬化体CPCの条件を、図4−9に硬化体CPC4、CPC2およびCPC9の1日および7日浸漬における圧縮強度を示す。
表4−10中、硬化液のLiquidA4は、水10mL、KH2PO4 0.2g、K2HPO4 0.1gおよびアルギン酸(括弧内のg数)を含む。
TTCP(7.2)を用いたCPC2は浸漬時間を長くすると圧縮強度は逆に向上した。一方、より粒径が小さいTTCP(2.0)を用いたCPC9は粉液比が小さいため、圧縮強度は低下した。
浸漬時間に伴い強度が向上したCPC2を1か月浸漬すると圧縮強度は22.488±2.076MPaで、7日後より低下した。後述するXRDでTTCPが消失し、水和硬化反応が完了したと思われるが、アルギン酸等の溶出により圧縮強度の低下をもたらしたと思われる。
次に、表4−11に圧縮試験を行ったキトサン含有硬化体CPCの条件を、図4−10に硬化体CPC10およびCPC6の1日および7日浸漬における圧縮強度を示す。
表4−11中、硬化液のLiquidC2は、水1mL、0.1M−HCl 9mL、ポリオール0.56gおよびキトサン(括弧内のg数)を含む。
粒径が異なるセメント粉による圧縮強度に変化は見られなかった。キトサン含有量はアルギン酸含量より低く、強度向上が低いと思われる。浸漬7日後はやや強度が低下し、1ヶ月浸漬したCPC6では8.935±1.563MPaまで低下した。
(3)粉末X線回折による結晶相の分析
1日および7日浸漬した硬化体CPC4の回折図形を図4−11に示す。
どちらの回折図形でもHApのピークが確認できるが、セメント粉の一つであるTTCPのピークも観察された。TTCPとDCPAの溶解度に差があるためと考えられる。
TTCPの粒径をさらに小さくし、表面積を増加させ溶解速度を高めた硬化体CPC2の浸漬時間ごとの回折図形を図4−12に示す。
HApの(300)面および(221)面のピークと比較すると、TTCPの(040)面および(032)面ピークが小さくなっている。また、1ヶ月浸漬するとTTCPのピークがほとんど消失し、水和硬化反応が完了したと考えられる。1ヶ月浸漬後のCPC2の強度が低下していたことから、アルギン酸等の溶出のためと思われる。
1日および7日浸漬した硬化体CPC9の回折図形を図4−13に示す。
粒径を小さくしたTTCP(2.0)を用いたCPC9では、TTCPのピークは見られず、HApのピークのみが観察できた。しかし、上記のように圧縮強度が低下した。TTCP(2.0)の回折図形では、ピーク分離がやや明確でなく、アモルファスリン酸カルシウムの存在が示唆される。粒度が小さくなることでTTCPも反応したが、アモルファスリン酸カルシウムが生成したため、その分、水和硬化に寄与するTTCPが減少し、強度低下につながったと考えられる。
次に、キトサンを含有するCPC10とCPC6の浸漬時間ごとの回折図形をそれぞれ図4−14および図4−15に示す。
強度の低下はなかったが、TTCPが消失し、水和硬化反応が完了したと考えられる。
図4−16は、本発明の基準となる化合物、TTCP、DCPD、DCPAおよびHApの回折線図(それぞれICDD PDF No.25−1137、No.11−0293、No.09−0080およびNo.74−0566)である。
(4)押出力
表4−12に押出力測定を行った硬化体CPCの組み合わせと結果を示す。
硬化体CPC2およびCPC6のそれぞれ押出力は、それぞれ169.52kPaおよび77.05kPaであった。CPC2のP/L比(粉液比)に応じて押出力が大きくなった。何れも片手で押出すことができる程度である。キトサンは、アルギン酸に比べて硬化液の含有量が少なく小さい値となった。CPC6はP/L比を2.6〜2.8程度に上げられると思われる。
表4−12中、硬化液のLiquidA2は、水10mL、KH2PO4 0.2g、K2HPO4 0.1gおよびアルギン酸(括弧内のg数)を含み、LiquidC2は、水1mL、0.1M−HCl 9mL、ポリオール0.56gおよびキトサン(括弧内のg数)を含む。
(5)静的崩壊率
硬化体CPC2およびCPC6の静的崩壊性試験の結果を、それぞれ表4−13および表4−14に示す。
CPC2の崩壊率は2.003±1.258%であり、CPC6の0.629±0.303%よりやや高い値となった。CPC2はP/L比が高く、強度は高かったが、一方、練和が部分的に不十分だったと思われる。静的崩壊率の実験の様子を図4−17に示す。
(6)吸収性インビトロ試験
[カルシウムイオン溶出量・質量減少量]
硬化体CPC2とCPC6を作製し、吸収性インビトロ試験を行った。JIS T0330−4に準拠し、破骨細胞が作り出す環境下であるpH5.5に調製した酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液中でのCPC2とCPC6のカルシウム濃度の経時変化を、それぞれ図4−18および図4−19に示す。
硬化体CPC2およびCPC6の吸収性試験後の溶液100mLあたりのカルシウムイオン溶出量とCPC質量減量とその差を、表4−15に示す。
試験前後で溶液のpHに変化は見られなかった。カルシウムイオン溶出量はあまり変わらないが、CPC2の方がCPC6よりも重量減少量が大きいという結果になった。リン酸もカルシウムに伴い溶出すると思われるので、重量減少の違いは、硬化液に添加したアルギン酸とキトサンの違いによると思われる。あまりに早く多糖類が溶出すると、硬化体CPCの強度低下をもたらすと思われる。水和硬化中の多糖類は、セメント粉同士を「のり」のように合着することが望ましく、添加量の最適化により強度向上、硬化後に一定の強度を維持したままの多孔化による骨置換という理想的なCPCペーストが期待される。
[吸収試験後の試料観察]
吸収性試験後の硬化体CPC2のマイクロフォーカスX線CT像(3D図)を図4−20に示す。
マトリックスと濃淡の異なる部分が多数見られる。CPCは直径6mm×深さ12mmのテフロン型の穴に充填するが、中央部に見えるのは、テフロン型への充填の不均一による気泡の可能性もある。
硬化体CPC2およびCPC6のFE−SEMを、それぞれ図4−21および図4−22に示す。CPC2およびCPC6の各図の倍率は、それぞれ5000倍および70倍である。
アルギン酸硬化液を用いた硬化体CPC2に比べて、キトサン硬化液を用いた硬化体CPC6の方が多数の微細な孔が見えるようである。
以上の結果から、次のことがわかる。
(1)低分子量アルギン酸ナトリウムを用いると、中分子量アルギン酸ナトリウムに比べて硬化液に添加できる割合が10倍になり、CPCペーストの粘性が低下すること
(2)アルギン酸を塩素量の異なる溶液に浸漬した後、粘度測定を行ったところ、浸漬した溶液の塩素量が高いほど粘度が低下し、重合度が低下すること、および破骨細胞により多孔化が促進されて体内で吸収される可能性があること
(3)リン酸二水素カリウムとリン酸水素二カリウムをアルギン酸含有硬化液に加え、初期硬化時間を測定したところ、硬化時間にはアルギン酸の量は影響しないが、リン酸塩量が多いと初期硬化時間が短縮する傾向があること
(4)セメント粉の粒径調整を行い、作製したCPCの圧縮強度を測定したところ、初期強度は劣るものの水浸漬による強度低下を防ぐこと、および体内での生体骨への置換のための日数を考えると、初期強度より経時的に強度が低下しない粒径を調節したセメント粉の方が有用であると予測できること
(5)粉末X線法で硬化体の結晶相を調べたところ、硬化後もセメント粉の原料であるTTCPのピークが残存したが、これは比較的DCPAの溶解度が高く溶け易いためと考えられること
(6)キトサン含有CPCおよびアルギン酸ナトリウム含有CPCは、後者がアルギン酸の溶出によるものと考えられる、やや高い静的崩壊率を示すものの、全体としてほとんど崩壊せず、多糖類含有でCPCに非崩壊性を付与でき、特にアルギン酸含有硬化液LiquidA4およびキトサン含有硬化液LiquidC2はCPCの硬化液として有用であると考えられること
(7)キトサン含有CPCおよびアルギン酸ナトリウム含有CPCは、吸収性インビトロ試験においてアルギン酸ナトリウムやキトサンの溶出に対応する重量減少が大きいものの、CPC硬化体からのカルシウム溶出量が少ないこと
(8)マイクロX線CTとSEMの表面観察によれば、キトサン含有CPCの方がアルギン酸含有CPCよりも微細な孔が観察されること

Claims (12)

  1. セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、硬化剤としての生分解性多糖類および水を含む透明な中性水溶液との組み合わせであることを特徴とする生体活性セメントペーストおよび生体活性セメントを製造するためのキット。
  2. 前記セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、前記硬化剤としてのアルギン酸またはその塩および水を含む透明な中性水溶液との組み合わせである請求項1に記載のキット。
  3. 前記中性水溶液中のアルギン酸またはその塩の濃度が、0.2重量%以上20重量%以下である請求項2に記載のキット。
  4. 前記セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体と、前記硬化剤としてのキトサン、該キトサンの可溶化成分としてのポリオールおよび水を含む透明な中性水溶液との組み合わせである請求項1に記載のキット。
  5. 前記ポリオールが、β−グリセロリン酸二ナトリウムである請求項4に記載のキット。
  6. 前記中性水溶液中のキトサンおよびポリオールの濃度が、それぞれ0.5重量%以上10重量%以下および0.5重量%以上5重量%以下である請求項4または5に記載のキット。
  7. 前記リン酸水素カルシウム二水和物とリン酸四カルシウムとの配合割合が、モル比で1:1である請求項1〜6のいずれか1つに記載のキット。
  8. 前記粉体Pと中性水溶液Lとの配合割合P/Lが、重量比で1〜4である請求項1〜7のいずれか1つに記載のキット。
  9. セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体に、前記セメント粉が硬化するために必要な量の硬化剤としての生分解性多糖類および水を含む透明な中性水溶液を添加・混和して生体活性セメントペーストを得ることを特徴とする生体活性セメントペーストの製造方法。
  10. 前記セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体に、前記セメント粉が硬化するために必要な量の硬化剤としてのアルギン酸またはその塩および水を含む透明な中性水溶液を添加・混和して生体活性セメントペーストを得る請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記セメント粉としてのリン酸水素カルシウム二水和物およびリン酸四カルシウムを含む粉体に、前記セメント粉が硬化するために必要な量の硬化剤としてのキトサン、該キトサンの可溶化成分としてのポリオールおよび水を含む透明な中性水溶液を添加・混和して生体活性セメントペーストを得る請求項9に記載の製造方法。
  12. 請求項1〜8のいずれか1つに記載の粉体と中性水溶液との混和物である生体活性セメントペースト。
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