JP2019199606A - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材に塗布された後、高温多湿条件下に置かれても、接着強度の低下が小さい熱硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】本発明は、(A)ポリグリシジルエーテルを含むエポキシ樹脂成分と、(B)コアシェル構造を有するゴム粒子と、(C)エポキシシランカップリング剤と、(D)両末端にアルコキシシリル基を有するポリブタジエンおよび/または(E)両末端にエポキシ基を有するポリブタジエンと、を含み、前記(A)および前記(B)の合計100重量部に対し、前記(D)の含有量が0〜3.2重量部であり、前記(E)の含有量が0〜1.5重量部であり、かつ(D)と(E)との合計含有量が0重量より大きい、熱硬化性樹脂組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物、これを含む構造用接着剤、これの硬化物、およびこれらを含む車両等に関する。
構造用接着剤は、車両組立品(例えば自動車、航空機および船舶)で使用されており、溶接、ナットとボルト、およびリベットなどの従来の接合技術に代わって、またはそれらを補強する接着剤である。プレス成形された鋼板から車体を組立てる車体組立工程において、ドア、フード、トランクリッド等の開きもの(蓋もの)と呼ばれるヘミング部やホイールアーチ部の組立に使用する構造用接着剤として、1液型の熱硬化性エポキシ樹脂組成物が広く使用されている。1液型の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、金属との結合性に優れ、強度が高く、車両の軽量化と溶接コストの低減に貢献する。例えば、特許文献1には、低温における耐衝撃性および剥離強度が改善された、エポキシ樹脂およびゴム粒子等を含む組成物が記載されている。
自動車の組み立て工程において、熱硬化性エポキシ樹脂の接着剤(構造用接着剤)は、接合部位に塗布された直後に加熱硬化されてもよいが、通常は、工数の低減やコスト削減等の観点から、車体組み立て工程の後に行われる電着塗装工程後の塗装乾燥炉での電着塗膜の焼付等と同時に、塗装乾燥炉の熱を利用して硬化される。そのため、構造用接着剤は、未硬化の状態で、例えば1〜3日間、放置されたり輸送されたりする場合が多い。一方、自動車製造工場等では、エレクトロニクス製品の製造と異なり、温度および湿度等の環境条件が厳密に制御されていないため、日本の夏、東南アジア等の高温多湿の環境下では、塗布された未硬化の接着剤が吸湿により劣化してしまい、その後の熱硬化の際、接着剤中で発泡がおこり、塗布後にすぐ熱硬化させた場合に比べて接着強度が大きく低下してしまうという問題があった。
特表2009−506169号公報
そこで、本発明は、未硬化の状態で高温高湿度環境下に置かれても、硬化後の接着強度の低下が抑制されたエポキシ系熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の好ましい態様は下記のとおりである。
1. (A)ポリグリシジルエーテルを含むエポキシ樹脂成分と、
(B)コアシェル構造を有するゴム粒子と、
(C)エポキシシランカップリング剤と、
(D)両末端にアルコキシシリル基を有するポリブタジエンおよび/または(E)両末端にエポキシ基を有するポリブタジエンと、
を含み、前記(A)および前記(B)の合計100重量部に対し、前記(D)の含有量が0〜3.2重量部であり、前記(E)の含有量が0〜1.5重量部であり、かつ(D)と(E)との合計含有量が0重量部より大きい、熱硬化性樹脂組成物。
2. (A)および(B)の合計100重量部に対し、前記(D)の含有量が、0.1〜3.2重量部である、上記1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
3. (A)および(B)の合計100重量部に対し、前記(E)の含有量が、0.1〜1.5重量部である、上記1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
4. 前記(D)両末端にアルコキシシリル基を有するポリブタジエンが、下記式(D1):
(式(D1)中、Rは単結合または2価の有機基を示し、R’はアルキル基または水素原子を示す。複数のRおよび複数のR’は互いに独立である。x+y+z=30〜80である。)
で表される化合物を含む、上記1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
5. 前記(E)両末端にエポキシ基を有するポリブタジエンが、下記式(E1):
(式(E1)中、x+y+z=30〜80である。)
で表される化合物を含む、上記1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
6. 前記(C)エポキシシランカップリング剤が、下記式(C1):
(式(C1)中、Zは、アルキレン基または−R−O−R−(RおよびRは、互いに独立にアルキレン基を示す)で表される2価の基を示し、R、RおよびRは、互いに独立に、アルキル基または水素原子を示す。)
で表される化合物を含む上記1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
7. さらに、加硫成分を含む、上記1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
8. 上記1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含む、構造用接着剤。
9. 上記1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
10. 上記8の構造用接着剤により接合された部分を有する車両。
本発明によれば、エポキシ系熱硬化性樹脂組成物であって、未硬化状態で高温高湿度環境下に置かれても、熱硬化後の接着強度の低下が抑制された組成物を提供できる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物(単に「組成物」とも記載する)は、
(A)ポリグリシジルエーテルを含むエポキシ樹脂成分と、
(B)コアシェル構造を有するゴム粒子と、
(C)エポキシシランカップリング剤と、
(D)両末端にアルコキシシリル基を有するポリブタジエンおよび/または(E)両末端にエポキシ基を有するポリブタジエンと、
を含み、(A)および(B)の合計100重量部に対し、(D)の含有量が0〜3.2重量部であり、(E)の含有量が0〜1.5重量部であり、かつ(D)と(E)との合計含有量が0重量部より大きい。
本明細書においては、上記(A)〜(E)の成分をそれぞれ、成分(A)〜成分(E)とも記載する。また、本明細書において、化合物の「末端」とは、化合物の相対的に最も長い結合鎖(主鎖)の端部のことをいうものとする。
本発明の発明者は、組成物が、成分(A)および成分(B)に加えて、成分(C)と、所定量の成分(D)および所定量の成分(E)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含むことにより、基材に塗布された後高温多湿環境下に未硬化状態で放置されても、接着強度の低下を大きく抑制できることを見出した。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、その製造方法およびその使用について、以下説明する。
<(A)ポリグリシジルエーテルを含むエポキシ樹脂成分(成分(A))>
熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分(成分(A))を含み、成分(A)は少なくともポリグリシジルエーテルを含む。なお、本明細書において、後述する成分(C)または成分(E)に該当する化合物は、成分(A)とは異なるものとする。
エポキシ樹脂成分は、好ましくは1分子内に2つ以上の1,2−エポキシ基を有するポリエポキシドである。ポリエポキシドは、飽和、不飽和、環式又は非環式、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式ポリエポキシド化合物であってもよい。
本明細書において、「エポキシ基」は、エポキシ構造(炭素−酸素−炭素からなる3員環構造)を有する結合基であり、炭素−炭素部は直鎖又は分岐した炭化水素構造の一部でもよいし、5員環や6員環等の環状構造を形成した炭化水素構造の一部であってもよい。これら炭化水素構造にはフッ素、塩素、臭素等のハロゲンや、水酸基、ニトリル基等の官能基が結合していてもよい。さらに、エポキシ構造を形成する炭素原子には、メチル基等のアルキル基やフェニル基などのアリール基や、ハロゲン等が結合していてもよい。これらエポキシ基としてはグリシジル基や、下式(I)で表される結合基が挙げられる。特にグリシジル基が、アリルアルコールやエピクロルヒドリンから工業的に製造され、入手が容易なため望ましい。
(式中、R及びRは炭素数1〜12の炭化水素基を、mは0〜3の整数を表す。)
成分(A)は、好ましくはポリグリシジルエーテルを含む。ポリグリシジルエーテルは、アルカリの存在下、エピクロロヒドリン又はエピブロモヒドリンとポリフェノールとの反応によって得られる。ポリフェノールとしては、例えば、レゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン及び1,5−ヒドロキシナフタレンが挙げられる。ポリグリシジルエーテルのベースとしての他の適当なポリフェノールは、フェノールと、ホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとのノボラック樹脂系の縮合生成物が挙げられる。
ポリエポキシドの別の一態様として、多価アルコールまたはポリアミンのポリグリシジルエーテルまたはポリグリシジルアミンが挙げられる。そのようなポリグリシジルエーテルは、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール又はトリメチロールプロパン)から誘導される。
ポリエポキシドの別の一態様として、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルが挙げられる。例えば、グリシドール又はエピクロロヒドリンと脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸(シュウ酸、琥珀酸、グルタル酸、テレフタル酸又は脂肪酸の二量体等)との反応生成物が挙げられる。
ポリエポキシドの別の一態様として、オレフィン系不飽和脂環式化合物のエポキシド化生成物又は天然油脂から誘導される化合物が挙げられる。
成分(A)は、ビスフェノールA又はビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応によって誘導される液状エポキシ樹脂を含むのが好ましく、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応によって誘導される液状エポキシ樹脂がより好ましい。一般に、室温(約22℃)で液体であるエポキシ樹脂は、150〜約480のエポキシ当量を有する。
また、成分(A)として、室温で固体のエポキシ樹脂を含んでもよく、液状エポキシ樹脂と同様にポリフェノールとエピクロロヒドリンとから得られ、好ましくは45〜130℃、より好ましくは50〜80℃の融点を有するビスフェノールA又はビスフェノールFに基づくものが好ましい。それらは、その高分子量によって実質的に液状エポキシ樹脂とは異なり、その結果、室温で固体になる。固体状のエポキシ樹脂は、一般に400以上のエポキシ当量を有する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、成分(A)として官能基等を付与した変性エポキシ樹脂を含んでもよい。変性エポキシ樹脂として、例えば、キレート変性エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、キレート変性エポキシ樹脂を含んでもよい。キレート変性エポキシ樹脂は、接着促進剤として機能し、基材面、特に車両組み立て作業においてよく遭遇するような油状物質で汚染された金属基材表面への硬化接着剤の接着性を改善できる。キレート変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂とキレート官能基を含有する化合物との1以上の反応生成物のことをいう。
キレート官能基は、それら自体で又は同じ分子に配置する他の官能基と協同して、二価又は多価金属原子とキレート結合を形成することができる官能基を含む。好適なキレート官能基としては、例えば、リン含有酸基(例えば、−PO(OH))、カルボン酸基(−COH)、硫黄含有酸基(例えば、−SOH)、アミノ基及び水酸基(特に、芳香環において互いに隣接した水酸基)が挙げられる。そのような反応生成物の製造は、例えば、米国特許第4,702,962号及び第4,340,716号、欧州特許第342035号及び日本公開公報第58−063758号及び第58−069265号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に記載された方法等、当該分野で公知の方法によって行うことができる。エポキシ樹脂(特に好ましくはビスフェノールA及びビスフェノールFのようなポリフェノールのジグリシジルエーテル)とキレート官能基含有化合物との反応生成物が好ましい。このような化合物の市販品として、例えば、Asahi Denkaによって市販されているADEKA樹脂EP−49−10N、EP−49−55C、EP−49−10、EP−49−20、EP−49−23及びEP−49−25等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、成分(A)としてアミン変性エポキシ樹脂を含んでもよい。アミン変性エポキシ樹脂を含むことにより、組成物の耐衝撃特性が向上する。
アミン変性エポキシ樹脂は、1以上のエポキシ樹脂に、アミン末端ポリエーテル及びアミノシラン末端ポリマーのような1以上のアミン末端ポリマーを反応させることによって得られるエポキシ系プレポリマーが好ましい。アミン変性エポキシ樹脂の製造には、上述のポリグリシジルエーテルとして挙げたエポキシ樹脂を用いることができ、特にビスフェノールA及びビスフェノールFのようなポリフェノールのジグリシジルエーテル(例えば、約150から約1000のエポキシ当量を有する)が好ましい。エポキシ樹脂は液状のものと固体のものを混合して用いてもよい。
アミン末端ポリエーテルからのアミン変性エポキシ樹脂の製造は、例えば、米国特許第5084532号及び第6015865号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に記載されているように、公知の方法である。一般に、アミン末端ポリエーテル:エポキシ樹脂の比率を、アミノ基が完全に反応するように、アミノ基に対してエポキシ基が過剰となるように(すなわち、エポキシ系プレポリマーが実質的に遊離のアミノ基を含まないように)調整することが好ましい。
ジ及びトリ官能化アミン末端ポリエーテルを、1種を単独で、または2種以上の混合物を用いてもよい。例えば、オキシエチレン及びオキシプロピレンの双方の繰り返し単位(例えば、ブロック、キャップ、ランダム構造を有する、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの共重合体)を含むアミン末端ポリエーテルを用いてもよい。アミン末端ポリエーテルは、1分子につき少なくとも2つのアミン基を含むことが好ましい。該アミン基は、1級アミン基であることが好ましい。アミン末端ポリエーテルは、脂肪族化合物であることが好ましい。
エポキシ樹脂をアミン末端ポリエーテルに反応させる際、アミノ基が完全にエポキシ基と反応するように、アミノ基に対してエポキシ基を過剰にすることが好ましい。一般に、アミン末端ポリエーテルの活性水素当量(AHEW)に対して、エポキシ基が1.5〜10倍の過剰、例えば、3〜4倍程度過剰であるのが好ましい。エポキシ樹脂とアミン末端ポリエーテルとの反応は、例えば、好ましくは90℃から130℃、より好ましくは約120℃で、例えば3時間行うことが好ましい。
アミン変性エポキシ樹脂の製造において、例えば、以下の化合物(1)〜(4)を用いることができる。
(1)下記構造:
H2N-(CH2)2-[O-(CH2)2-O-(CH2)2]n-NH2(nは17から27が好ましい)
を有する鎖状アミン末端ポリオキシエチレンエーテル。
(2)下記構造:
を有する鎖状アミン末端ポリオキシプロピレン又はその異性体。ここで、nは5〜100が好ましい。これらは、商品名JEFFAMINE(登録商標)(D−シリーズ)で、Huntsman Chemicalから得ることができる。そのようなアミン末端ポリオキシプロピレンエーテルの数平均分子量は、例えば、約300から約5000で変化させることができる。
(3)下記構造:
の三官能化化合物であり、ここで、Aは、
であり、x、y及びzはそれぞれ独立して1〜40であり、好ましくは、x+y+z>6である。これら三官能化化合物の具体的な実施例は、商品名Jeffamine(登録商標)(Tシリーズ)で、Huntsman Chemicalから市販されている。そのような物質は、約300から約6000の数平均分子量を有している。
(4)アミノシランキャップポリマーであり、例えば、
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アリール及びアリールオキシからなる群から選択され、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、アルキル及びアリールから選択され、Xは、ヘテロ原子を含んでもよいアルキレン、アルケニレン、アリーレン;ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリジエン、ポリシロキサン及びポリイミド骨格から選択される。)
が挙げられる。
アミノシラン末端ポリマーとして、アミン末端シロキサンが好ましく、例えば、
(式中、R11及びR12は、同一又は異なって、アルキレン、アリーレン、アルキレンオキサイド、アリーレンオキサイド、アルキレンエステル、アリーレンエステル、アルキレンアミド又はアリーレンアミドからなる群から選択され、R、R、R及びR10は、互いに独立に、アルキル又はアリールから選択され、複数のR及びR10は、互いに同一であっても異なっていてもよく、nは1〜1200である)
で表されるジアミノシロキサンを用いることができる。
アミン末端シロキサンとして、登録商標KF857、KF858、KF859、KF861、KF864及びKF880で信越から入手可能なアミノ改変シリコーン流体を用いてもよい。また、L650、L651、L653、L654、L655及びL656として登録された(ワッカーシリコーン社製)鎖状アミノ官能化シリコーン流体、商品名WACKER FINISH WR 1600のアミノ官能化ポリジメチルシロキサンを用いてもよい。
アミン変性エポキシ樹脂の形成において用いることができる他のアミノ官能化シラン又はアミノ官能化シロキサンとして、アミノ官能化シラン組成物(DYNASYLAN(登録商標)1126)、オリゴマージアミノシラン系(DYNASYLAN(登録商標)1146)、N−ビニルベンジル−N’−アミノエチル−e−アミノプロピルポリシロキサン(DYNASYLAN(登録商標)1175)、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)1189)、アミノ官能化シラン組成物(DYNASYLAN(登録商標)1204)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)1411)、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)1505)、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)1506)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)AMEO)、アミノシラン組成物(DYNASYLAN(登録商標)AMEO−T)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)AMMO)、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)DAMO)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)DAMO−T)及びトリアミノ官能化プロピルトリメトキシシラン(DYNASYLAN(登録商標)TRIAMO)等のDegussa’s Sivento divisionから市販された材料が挙げられる。
本発明の組成物は、成分(A)として、下記式:
(式中、
はO、S又はNHであり;
は、反応性ポリマー(例えば、ポリプロピレングリコール又はポリテトラヒドロキシフランジオール等のアミノ、チオール又はヒドロキシ末端ポリオキシアルキレン)の末端の、アミノ、チオール又はヒドロキシ基が除去された後のn価の基であり;
は、脂肪族、脂環式、芳香族もしくはアリール脂肪族ジイソシアネートから、イソシアネート基が除去された2価の基、あるいは、脂肪族、脂環式、芳香族又はアリール脂肪族ジイソシアネートの三量体またはビウレットから、イソシアネート基が除去された3価の基であり;
は、1級もしくは2級のヒドロキシ基を含む、脂肪族、脂環式、芳香族又はアリール脂肪族エポキサイドから、ヒドロキシ基およびエポキシド基が除去された基であり;
qは1、2又は3であり、;
mは1又は2であり;
nは2、3又は4である。)
で表されるポリウレタン構造を有するエポキシ樹脂を含んでもよい。ポリウレタン構造を有することにより、組成物の硬化物に耐衝撃性および柔軟性を付与することができる。
上記のようなポリウレタンは、例えば、カナダ特許出願第2,510,486号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)において記載されているように、公知である。
また、強化剤又は衝撃改良剤として公知の他のエポキシ樹脂を成分(A)として含んでもよい。一般に、そのような強化剤及び衝撃改良剤は、約0℃以下の、好ましくは約−30℃以下の、より好ましくは−50℃以下のガラス転移温度を有する。強化剤または衝撃改良剤としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
ブタジエンのエポキシ反応性コポリマー{特にブタジエンと、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸又はアルキルアクリレート等の比較的極性のコモノマーとのエポキシ反応性コポリマー、例えば、Noveonから商品名HYCARで市販されている製品のような、カルボキシ末端ブタジエン−ニトリルゴム}と、エポキシ樹脂との反応生成物(例えば、米国特許公開公報第2003/0196753号及び米国特許第6776869号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)参照);
無水物(例えば、マレイン酸無水物のような不飽和無水物)とジエンポリマー(例えば、液状1,4−シスポリブタジエン)の付加物、特に数平均分子量約1000から約5000であり、例えば、Degussa Corporationによって商品名POLYVESTで販売されている付加物;及びそのような付加物とエポキシ樹脂との反応生成物;
ポリエステル、例えば、アモルファス、結晶性及び/又は半結晶性ポリエステル等を含み、脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸(対応アルキルエステル又は無水物)とC2からC20の鎖長を有するジオールとの縮合によって製造された、飽和ポリエステル、そのポリエステルは、商品名DYNACOLLでDegussa Corporationによって販売されているような、中間分子量(例えば、約1000から約20000の数平均分子量を有する)のポリエステル及びカルボン酸及び/又はヒドロキシル末端基で官能化されたポリエステル、ならびにそのような官能化されたポリエステルとエポキシ樹脂の付加物;
脂肪酸の二量体とエポキシ樹脂との付加物{例えば、商品名EPON 872でResolution Performance Productsから市販されている付加物、商品名HYPOX DA323(以前はERISYS EMDA 3−23)でCVC Specialty Chemicalsから市販されている付加物、ならびに米国特許第5,218,063号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に記載された付加物};
ヒドロキシル含有トリグリセライド(例えば、ひまし油)とエポキシ樹脂との付加物(例えば、商品名HELOXY 505でResolution Performance Productsから市販されている付加物を含む);
ポリスルフィドとエポキシ樹脂との付加物(例えば、商品名THIOPLAST EPS 350でAkzo Nobelにより市販されている付加物を含む);
アミン末端ポリジエン及びジエンコポリマーとエポキシ樹脂との付加物であって、ジエンコポリマーとして下記のような化合物を用いることができる;
ブロックコポリマー、ポリブタジエンブロック又はポリイソプレンブロック又はそれらの水素化誘導体のような、そのコポリマーの少なくとも1つのポリマー性ブロックは20℃以下のガラス転移温度(好ましくは0℃以下又は−30℃以下又は−50℃以下)を有し、及びポリスチレンブロック又はポリメチルメタクリレートブロック、特に、ポリスチレンブロック、1,4−ポリブタジエンブロック(好ましくは、約−60℃以下のガラス転移温度を有する)のような、コポリマーの少なくとも1つのポリマー性ブロックは20℃より高い(好ましくは50℃より高い又は70℃より高い)ガラス転移温度を有し、及び/又はニトロキシド開始剤を用いたリビング重合(米国特許第5,677,387号、第5,686,534号及び第5,886,112号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に記載されているような方法)によって製造されるSBM(スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート)、MBM(メチルメタクリレート−ブタジエン−メチルメタクリレート)及びBM(ブタジエン−メチルメタクリレート)ブロックコポリマー及び商品名NANOSTRENGTHでArkemaによって市販されており、そのブロックコポリマーは、米国特許第6,894,113号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に記載されているような、1以上のポリメチルメタクリレートブロック(好ましくは高い、つまり、80%より高い、シンジオタクチック構造);
アミノ又はヒドロキシ末端ポリマー及びカルボキシル無水物のカルボキシ官能化付加物、ならびにそのような付加物とエポキシ樹脂とのさらなる反応生成物(例えば、米国特許第6,884,854号及び米国特許公開公報第2005−0215730号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)参照);
エポキシ末端ポリエーテル、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はこれらの混合物のようなアルキレンオキサイドのポリマー(エポキシ基で官能化され、ポリアルキレングリコールのヒドロキシ基とエピクロロヒドリンとの副反応によるものを含む)。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、成分(A)として、1種を単独で含んでも2種以上を組み合わせて含んでもよい。本発明の好ましい一態様として、組成物は、成分(A)としてビスフェノールAジグリシジルエーテル、アミン変性されたビスフェノールAジグリシジルエーテル、およびキレート変性されたビスフェノールAジグリシジルエーテルを含むのが好ましい。また、成分(A)中、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの含有量は、特に限定されないが、40重量%以上であるのが好ましく、50重量%以上であるのが好ましく、また、100重量%であってもよく、90重量%以下であるのが好ましい。アミン変性されたビスフェノールAジグリシジルエーテルの成分(A)中の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%である。キレート変性されたビスフェノールAジグリシジルエーテルの成分(A)中の含有量は、特に限定されないが、0〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の総重量に対する成分(A)の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であり、上限は、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは65重量%以下である。
<(B)コアシェル構造を有するゴム粒子(成分(B)>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、コアシェル構造を有するゴム粒子(成分(B))を含む。なお、本明細書において、後述する成分(D)または成分(E)に該当する化合物は、成分(B)とは異なるものとする。
コア−シェル構造を有するゴム粒子(「コアシェルゴム粒子」とも記載する)は、一般に、非エラストマーのポリマー材料(ガラス転移温度が周囲温度より高い(例えば、約50℃より高い)熱可塑性または熱硬化性/架橋ポリマー)からなるシェルで囲まれた、エラストマー又はゴム特性(例えば、好ましくは約0℃未満、より好ましくは−30℃未満のガラス転移温度)を有するポリマー材料からなるコアを有する。例えば、コアは、ジエンホモポリマー又はコポリマー(例えば、ブタジエン又はイソプレンのホモポリマー、ブタジエン又はイソプレンと、ビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレート等の1以上のエチレン性不飽和モノマーとのコポリマー)を含んでいてもよい。一方、シェルは、十分に高いガラス転移温度を有する、(メタ)アクリレート(例えば、メタクリル酸メチル)、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)、ビニルシアニド(例えば、アクリロニトリル)、不飽和酸及び無水物(例えば、アクリル酸)、(メタ)アクリルアミド等のような1以上のモノマーのポリマー又はコポリマーを含んでいてもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意味し、これは他の同様の表記についても適用される。
シェルで用いられるポリマーは、金属カルボキシレート構造によって(例えば、二価金属陽カチオンの塩類を形成することによって)イオンにより架橋された酸基を有していてもよい。シェルを構成するポリマー(ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい)は、1分子につき2以上の二重結合を有するモノマーを用いることにより、共有結合して架橋することもできる。シェルの外表面は、カルボン酸基のような基で官能化してもよい。また、ポリブチルアクリレート又はポリシロキサンエラストマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、特に架橋ポリジメチルシロキサン)を含む他のゴム様ポリマーを、コアに使用してもよい。ゴム粒子のコアおよびシェルは、それぞれ、2以上の層(例えば、1つのゴム様材料の中心コアが異なるゴム様材料の第2のコアに囲まれていてもよく、あるいは、ゴム様のコアが異なる組成の2つのシェルで囲まれていてもよく、あるいは、ゴム粒子がソフトコア、ハードシェル、ソフトシェル、ハードシェルを有していてもよい)から構成されていてもよい。
本発明の一態様において、コア−シェル構造を有するゴム粒子は、コアと、異なる化学組成及び/又は特性を有する少なくとも2つの同心のシェルとから構成される。コア又はシェルのいずれか、あるいはコアとシェルとの双方は、例えば、米国特許第5,686,509号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に記載されているように、架橋されていてもよい(例えば、イオンによって又は共有結合によって架橋されていてもよい)。シェルはコアにグラフト化されていてもよい。シェルを構成するポリマーは、本発明の組成物の他の成分と相互作用することができる1以上の官能基(例えば、エポキシ基、カルボキシ基)を有していてもよいし、あるいは組成物に存在する他の成分と反応することができる官能基を含まなくてもよい。
コア−シェル構造を有するゴム粒子は、ゴム粒子の総重量に対して、好ましくは50〜95重量%のコアと、好ましくは5〜50重量%のシェルとを含む。
コア−シェル構造を有するゴム粒子を製造する方法は、例えば、米国特許公開公報第3985703号、4180529号、4315085号、4419496号、4778851号、5223586号、5290857号、5534594号、5686509号、5789482号、5981659号、6111015号、6147142号、6180693号、6331580号及び米国公開公報第2005−124761号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に記載され、当該分野でよく知られている。
コア−シェル構造を有するゴム粒子は、市販品を用いてもよい。市販品として以下の製品が挙げられる。GENIOPERL P22、P23、P52及びP53を含むGENIOPERLの商品名でWacker Chemieから入手可能な粉末形態のコア−シェル粒子であって、これは、架橋ポリシロキサンコア、エポキシ官能化ポリメチルメタクリレートシェルを有し、ポリシロキサン含量が65重量%、DSC/DMTAによる測定で軟化点約120℃、約100nmの一次粒径である。PARALOIDの商品名(特に、PARALOID EXL 2600/3600シリーズの製品)でRohm & Haasから入手可能なコア−シェル粒子であって、これはスチレン/メチルメタクリレートコポリマーがグラフト化されたポリブタジエンコアを含むグラフト化ポリマーであり、約0.1から約0.3μmの平均粒径を有する。商品名DEGALAN(例えば、DEGALAN 4899F、これは約95℃のガラス転移温度を有すると報告されている)のコア−シェルゴム粒子であり、Roehm GmbH又はRoehm America,Inc.から市販されている。商品名F351のコア−シェルゴム粒子であり日本ゼオンから市販されている。商品名BLENDEXのコア−シェルゴム粒子でありGeneral Electricで市販されている。
コア−シェル構造を有するゴム粒子は、該ゴム粒子がビスフェノールAに由来するジグリシジルエーテルのような1以上のエポキシ樹脂中に分散されているマスターバッチとして製造してもよい。例えば、ゴム粒子は、一般に、水溶性分散液又はエマルジョンとして製造されている。そのような分散液又はエマルジョンは、所望のエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂と水との混合物、蒸留等によって取り出された他の揮発性物質と組み合わせてもよい。そのようなマスターバッチを製造する一つの方法が、欧州特許出願公開公報EP 1632533号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に記載されている。
例えば、ゴム粒子の水性ラテックスを、水に部分的な溶解性を有する第1の有機媒体と接触させ、次いで、第1の有機媒体より水に対して溶解性を有する第2の有機媒体と接触させ、水を分離し、第2有機媒体中でゴム粒子の分散液を提供する。この分散液を、次いで、所望のエポキシ樹脂及び蒸留等で取り出された揮発成分と混合し、マスターバッチを提供する。
エポキシ樹脂マトリクス中に安定に分散したコア−シェル構造を有するゴム粒子のマスターバッチの他の製造方法は、米国特許公開公報第4,778,851号及び第6,111,015号(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に記載されている。好ましくは、ゴム粒子はエポキシ樹脂マトリクス中で安定して分散している(すなわち、コア−シェルゴム粒子は、マスターバッチが、室温に放置されることによってエージングされるにつれて、マスターバッチからの粒子の沈殿(沈降)がほとんどない又は全く凝集せずに分離した個々の粒子として存在する)。ゴム粒子のシェルは、シェルは官能化されていない(すなわち、組成物が硬化する際、組成物の他の成分のいずれかと反応する官能基を含まない)態様であってもよいし、マスターバッチの安定性を改善するために官能化されていてもよい。
エポキシ樹脂マトリクスにおけるコア−シェル構造を有するゴム粒子の好適な分散液は、カネカ社から商品名「ACE MX」等で入手可能である。
例えば、コアは、主に、ブタジエンのようなジエン、(メタ)アクリレート、特にアクリロニトリルのような不飽和ニトリル、及び/又は、重合もしくは共重合した場合、低いガラス転移温度を有するポリマーを生成できる他のモノマーの原料から形成することができる。外側のシェルは、主に、メチルメタクリレートのような(メタ)アクリレート、スチレンのようなビニル系芳香族モノマー、塩化ビニルのようなエチレン性不飽和ハロゲン化炭化水素、及び/又は、重合もしくは共重合した場合、高いガラス転移温度を有するポリマーを精製できる他のモノマーの原料から形成することができる。
コア−シェル構造を有するゴム粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、好ましくは0.07μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上であり、上限は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
このように作られるコア−シェルゴムは、エポキシマトリックスまたはフェノールマトリックス中に分散してもよい。エポキシマトリクスとして、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールS等のジグリシジルエーテル、ノボラックエポキシド及び脂環式エポキシが挙げられる。フェノール樹脂として、ビスフェノールA系フェノキシドが挙げられる。
コア−シェルゴム粒子は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは15〜40重量%の範囲の量でエポキシ又はフェノールマトリックス中に存在してもよい。
ゴム粒子のコアを構成するポリマーは、ジエンモノマー(共役ジエンモノマー)及び(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーの50重量%以上(重合された形で)と、他の共重合性ビニルモノマーの50重量%未満からなる弾性材料であることが好ましい。
好適な共役ジエンモノマーとして、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられ、なかでも、ブタジエンが特に好ましい。(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられ、なかでも、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
共役ジエンモノマー及び/又は(メタ)アクリレートモノマーの総量は、コアポリマーを構成するために用いられるモノマーの総重量に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、100重量%であってもよい。
コアポリマーは、共役ジエンモノマー及び/又は(メタ)アクリレートのみならず、それらと共重合可能な1以上のビニルモノマーを含んでいてもよい。共役ジエンモノマー又は(メタ)アクリレートモノマーとの共重合可能なモノマーとしては、限定されないが、芳香族ビニルモノマー及びビニルシアニドモノマーからなる群から選択されるモノマーが挙げられる。適当な芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルナフタレンが挙げられ、適当なビニルシアンニドモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及び他の置換アクリロニトリルが挙げられる。これらは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
これらの共重合可能なビニルモノマーの量は、コアポリマーを構成するために用いられるモノマーの総重量に対して、50重量%未満が好ましく、より好ましくは、40重量%未満であり、0重量%であってもよい。
架橋の程度を調節するために、多官能モノマーを、コアコポリマーの合成における成分として含有してもよい。多官能モノマーとしては、2以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物、例えば、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート等が挙げられる。用いられる多官能モノマーの量は、通常、コアポリマーを製造するために用いられるモノマーの総重量に対して、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下であり、0重量%であってもよい。
コアポリマーの分子量又はコアポリマーの架橋の程度を調整するために、連鎖移動剤を用いてもよい。例えば、炭素数5から20のアルキルメルカプタンをこの目的のために用いることができる。連鎖移動剤の量は、通常、コアポリマー用モノマーの総重量に対して、5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。
ポリシロキサンゴムは、単独で又は他のコアポリマーと組み合わせて、コア−シェルゴム粒子におけるコアを構成するポリマーとして使用してもよい。ポリシロキサンは、例えば、ジメチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ及びジフェニルシリルオキシ等のジアルキル又はアリール置換シリルオキシ単位から構成される。重合に部分的に多官能アルコキシシラン化合物を組み合わせて用いることにより、あるいは、ビニル反応基を有するシラン化合物とラジカル反応させることにより、あるいは、必要により他の方法を用いることにより、ポリシロキサンに架橋構造を導入することが好ましい。
シェル層として用いられるポリマー組成物は、結果として得られるゴム様コア−シェル粒子をエポキシ樹脂において一次粒子の形態で安定して分散させることができるように、エポキシ樹脂に対して十分な親和性を有することが好ましい。
シェル層を構成するポリマーは、ゴム粒子コアを構成するポリマーにグラフト重合されて実質的に結合していることが好ましい。シェル層を構成するポリマーの重量に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上が、粒子コアを構成するポリマーに共有結合している。
シェル層を構成するポリマーは、エポキシ樹脂又は硬化剤と反応するモノマー(反応性モノマー)由来の部分構造又はユニットを含有することが好ましい。シェル層を構成するポリマーに含有される反応性モノマーの官能基は、本発明の組成物中に存在するエポキシ樹脂又は硬化剤と化学的に反応し得るものであることが好ましい。
シェル層を構成するポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアニド化合物から選択される少なくとも1つの成分の共重合によって得られるポリマー又はコポリマーであることが好ましい。特に、シェル層が組成物の硬化時に化学的に反応することが好ましい場合、エポキシ基又はエポキシ硬化剤との高い反応性の観点から、シェル層を構成するポリマーが、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物及び/又はビニルシアニド化合物に加えて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、エポキシアルキル(メタ)アクリレートのような反応基を有する(メタ)アクリレート、エポキシアルキルビニルエーテル、不飽和酸誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体及びマレイミド誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含むことが好ましい。
好適なアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。ビニルシアニドとしては、(メタ)アクリルニトリル等が挙げられる。
反応基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。エポキシアルキルビニルエーテルとしては、グリシジルビニルエーテルが挙げられる。不飽和酸誘導体としては、α、β−不飽和酸、α、β−不飽和酸無水物、(メタ)アクリル酸、イタコン酸及びクロトン酸が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体としては、(メタ)アクリルアミド(それらのN−置換誘導体を含む)が挙げられる。好適なマレイミド誘導体としては、マレイン酸イミドが挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。
コア−シェル構造を有するゴム粒子における、コア層とシェル層との重量比は、好ましくは50:50〜95:5、より好ましくは60:40〜90:10である。
コア−シェル構造を有するゴム粒子は、乳化重合、懸濁重合、マイクロ懸濁重合等の当該分野で公知の方法によって製造することができる。特に、乳化重合法が好ましい。
コア−シェル構造を有するゴム粒子がエポキシ樹脂中のマスターバッチの形態で用いられる場合、本実施形態の一態様では、ゴム粒子の濃度は特に限定されない。マスターバッチを形成するために用いられるエポキシ樹脂は、組成物に別個に導入されるエポキシ樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態の一態様において、熱硬化性樹脂組成物のエポキシ樹脂の全ては、コア−シェルゴム粒子と共に、マスターバッチの形態で導入されてもよい。マスターバッチ中のエポキシ樹脂とコア−シェル構造を有するゴム粒子との総量が100重量%であるとすると、コア−シェル構造を有するゴム粒子の含量は、例えば、0.5から80重量%、好ましくは1から70重量%、より好ましくは3から60重量%、さらに好ましくは20から40重量%とすることができる。
エポキシ樹脂中に分散した相分離粒子の形態で、カネカから入手可能な多くのコア−シェルゴムの構造は、(メタ)アクリレート−ブタジエン−スチレンのコポリマー(ブタジエンは、コアにおいてコポリマーの主要な成分である)から形成されたコアを有していると考えられる。エポキシ樹脂中に分散するコア−シェルゴム粒子の他の市販のマスターバッチとしてWacker Chemie GmbH から入手可能なGENIOPERL M23Aが挙げられる(ビスフェノールAジグリシジルエーテルベースの芳香族エポキシ樹脂中の30重量パーセントのコア−シェル粒子の分散液、そのコア−シェル粒子は約100nmの平均粒径を有し、エポキシ官能化アクリレートコポリマーがグラフト化された架橋シリコーンエラストマーコアを含有し、そのシリコーンエラストマーコアは、コア−シェル粒子の約65重量%に相当する)。
コア−シェル構造を有するゴム粒子は、粒子がエポキシ樹脂マトリクス中に分散したマスターバッチの形態および/またはエポキシ樹脂等のマトリクス材料を含まない乾燥粉末のまま用いてもよい。
本実施形態の組成物の一態様において、好ましくは0.1〜約10μm(より好ましくは0.2〜2μm)の平均粒径を有する乾燥粉末の形態での第1のタイプのコア−シェル構造を有するゴム粒子と、液状ビスフェノールAジグリシジルエーテルのマトリクス中に、好ましくは5〜50重量%の濃度で、好ましくは25〜200nmの平均粒径を有して、安定に分散する第2のタイプのコア−シェル構造を有するゴム粒子との双方を用いて製造してもよい。第1のタイプ:第2のタイプのコア−シェル構造を有するゴム粒子の重量比は、例えば、約1.5:1〜約0.3:1であってよい。第1のタイプのコア−シェルゴム粒子として、例えば、商品名F351で、日本ゼオンから販売されているコア−シェルゴムを用いることができ、第2のタイプのコア−シェルゴムとして、例えば、商品名ACE MX120及びACE MX156で、カネカ・コーポレーションから市販されているコア−シェルゴムを用いることができる。
組成物は、成分(B)として、1種を単独で含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の総重量に対する成分(B)の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは8重量%以上であり、上限は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。なお、コアシェル構造を有するゴム粒子がエポキシ樹脂マトリクス中に分散したものを用いた場合は、コアシェル構造を有するゴム粒子の重量が成分(B)の重量に含まれるものとし、エポキシ樹脂マトリクスの重量は成分(A)の重量に含まれるものとする。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の総重量に対する、成分(A)と成分(B)の合計含有量は、特に限定されないが、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上であり、上限は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは85重量%以下である。
<(C)エポキシシランカップリング剤(成分(C))>
熱硬化性樹脂組成物は、エポキシシランカップリング剤(成分(C))を含む。エポキシシランカップリング剤は、一分子内に、1以上のエポキシ基と、1以上の加水分解性シリル基とを有する。エポキシシランカップリング剤中の加水分解性シリル基は、水分のある環境下で、成分(D)の末端のアルコキシシリル基等と縮重合し、エポキシ基は、加熱されたとき組成物中のエポキシ基と反応して硬化する。組成物が成分(C)を含むことにより、硬化後の組成物の接着性が向上する。
エポキシシランカップリング剤中の加水分解性シリル基は、ケイ素原子上にアルコキシ基を1以上有する基が好ましい。好ましいエポキシシランカップリング剤の一態様として、下記式(C1)で表される化合物が挙げられる。
(式(C1)中、Zは、アルキレン基または−R−O−R−(RおよびRは、互いに独立にアルキレン基を示す)で表される2価の基を示し、R、RおよびRは、互いに独立に、アルキル基または水素原子を示す。)
式(C1)において、Zは、アルキレン基または−R−O−R−(RおよびRは、互いに独立にアルキレン基を示す)で表される2価の基を示す。
式(C1)において、Zがアルキレン基を示す場合、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、より好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖状でも分岐していてもよいが、好ましくは−(CH−(nは、1以上の整数)で表される直鎖状のアルキレン基であり、より好ましくは−(CH−(nは、2〜6の整数)であり、さらに好ましくは−C−である。
式(C1)において、Zが−R−O−R−(RおよびRは、互いに独立にアルキレン基を示す)で表される2価の基を示す場合、RおよびRの炭素数の合計は1〜10であるのが好ましく、2〜6であるのがより好ましい。RおよびRは、直鎖状でも分岐していてもよいが、好ましくは−(CH−(nは、1以上の整数)で表される直鎖状のアルキレン基である。−R−O−R−として、例えば、−CH−O−CH−、−CH−O−C−、−CH−O−C−、−C−O−C−等が挙げられる。
式(C1)において、R、RおよびRは、互いに独立にアルキル基または水素原子を示し、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。R、RおよびRは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
成分(C)として用いることができる化合物としては、例えば、4−オキシラニルブチルトリメトキシシラン、4−オキシラニルブチルトリエトキシシラン、8−オキシラニルオクチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(下記式(C2)で表される化合物)、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリヒドロキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上であり、また、好ましくは5重量部以下であり、より好ましくは3重量部以下であり、さらに好ましくは1.5重量部以下である。
<(D)両末端にアルコキシシリル基を有するポリブタジエン(成分(D))>
熱硬化性樹脂組成物は、両末端にアルコキシシリル基を有するポリブタジエン(成分(D))を含むのが好ましい。組成物が成分(D)を含むことにより、水分のある環境下でアルコキシシリル基が縮重合して高分子量のポリマーまたはオリゴマーを形成し、組成物の粘度が増加することにより、物理的に水分の浸入を抑制できる。また、成分(D)は疎水性のポリブタジエン構造を有するため、組成物の耐水性が向上する。組成物中に水分が浸入すると、その後熱硬化処理の際に組成物中で発泡が起こり、接着性が低下する問題があったが、本発明の組成物が成分(D)を含むと、このような発泡が起こりにくく、接着性の低下を抑制できるものと推察される。
成分(D)の化合物は、主鎖にポリブタジエン構造を有し、ポリブタジエン構造は、1,2−ポリブタジエン構造であっても1,4−ポリブタジエン構造であってもよく、1分子内にこれら構造の両方を含んでもよい。1,4−ブタジエン構造は、シス型であってもトランス型であってもよい。1分子内のポリブタジエン構造はブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。
成分(D)の化合物において、ポリブタジエンの両末端に結合しているアルコキシシリル基は、ケイ素に結合する少なくとも1つのアルコキシ基を有し、好ましくは2つまたは3つのアルコキシ基を有し、より好ましくは、式:
−Si(−OR)(−OR)(−OR
(R,R、Rは、それぞれ独立して、アルキル基を表し、好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表される、トリアルコキシ基がケイ素に結合した基である。ポリブタジエン構造の両末端に結合しているアルコキシシリル基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
成分(D)の一態様として、例えば、下記式(D1)で表される化合物が好ましい。
(式(D1)中、Rは単結合または2価の有機基を示し、R’はアルキル基または水素原子を示す。ここで、複数のRは互いに独立であり、複数のR’は互いに独立である。x+y+zは、30〜80である。)
式(D1)中、R’は、アルキル基または水素原子を示し、アルキル基は直鎖状であっても分岐していてもよい。R’は、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基またはエチル基である。複数のR’は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
式(D1)中、Rは、単結合または2価の有機基を示し、特に限定されない。Rが2価の有機基の場合、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、好ましくは炭素数1〜10個のアルキレン基(直鎖状であっても分岐していてもよく、直鎖状であるのが好ましい)を示し、より好ましくは炭素数1〜6個のアルキレン基を示す。アルキレン基は分岐していてもよいが、−(CH−(nは、1以上の整数、好ましくは、1〜6の整数)で表される直鎖状のアルキレン基であるのが好ましい。アルキレン中の任意の−(CH)−は、他の2価の基で置換されていてもよく、例えば−O−で置換されていてもよい(ただし、化合物中に−O−O−の構造は含まないとする)。また、複数のRは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
成分(D)としては、市販品を用いてもよく、例えば、エボニックデグザ製のPOLYVEST EP ST−E100、POLYVEST EP ST−E60、POLYVEST EP ST−E80、POLYVEST EP ST−M等が挙げられる。
成分(D)の化合物の20℃における粘度は、特に限定されないが、9.0〜12Pa・sであるのが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中の成分(D)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100重量部に対し、0重量部であってもよいが、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上であり、また、好ましくは3.2重量部以下であり、より好ましくは3重量部以下であり、さらに好ましくは2.8重量部以下である。成分(D)の含有量が多すぎると組成物の接着力が大きく減少してしまう場合がある。
<(E)両末端にエポキシ基を有するポリブタジエン(成分(E))>
熱硬化性樹脂組成物は、両末端にエポキシ基を有するポリブタジエン(成分(E))を含むのが好ましい。成分(E)のエポキシ基は、加熱されたとき組成物中のエポキシ基と反応して硬化する。また、成分(E)のポリブタジエン骨格は、成分(D)のポリブタジエン骨格と加硫により架橋構造を形成できる。
成分(E)の化合物は、主鎖にポリブタジエン構造を有し、1,2−ポリブタジエン構造であっても1,4−ポリブタジエン構造であってもよく、1分子内にこれら構造の両方を含んでもよい。1,4−ブタジエン構造は、シス型であってもトランス型であってもよい。1分子内のポリブタジエン構造はブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。
成分(E)の化合物において、ポリブタジエン構造と末端のエポキシ基とは、例えば下記式(e)のように結合しているのが好ましい。
(式(e)中、Xは、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であるのが好ましく、−(CH−(yは1〜4の整数)であるのがより好ましく、メチレン基であるのがさらに好ましい。)
成分(E)の好ましい一態様として、下記式(E1)で表される化合物が好ましい。
(式(E1)中、x+y+zは、30〜80である。)
成分(E)の化合物の20℃における粘度は、特に限定されないが、9.0〜12Pa・sであるのが好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物中の成分(E)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100重量部に対し、0重量部であってもよいが、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上であり、また、好ましくは1.5重量部以下であり、より好ましくは1.3重量部以下であり、さらに好ましくは1.0重量部以下である。成分(E)の含有量が多すぎると組成物の接着力が大きく減少してしまう場合がある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、成分(D)および成分(E)の少なくとも一方を含み(すなわち、成分(D)と成分(E)の合計含有量は0重量部より大きく)、好ましくは成分(D)と成分(E)の両方を含む。成分(D)と成分(E)の合計含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100重量部に対し、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、上限は好ましくは4.7重量部以下、より好ましくは4重量部以下である。
<(F)加硫成分>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、上記成分(A)〜(E)に加えて、加硫成分(成分(F))を含むのが好ましい。加硫成分としては、硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤等が挙げられる。
組成物は、加硫成分として、硫黄と加硫促進剤を含むことにより、成分(D)および成分(E)が有するポリブタジエン部分が硫黄により架橋された構造とすることができ、硬化物の弾性率を向上させることができる。
組成物中、加硫成分としての硫黄の含有量は、0重量部であってもよいが、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対し、好ましくは0.1〜2重量部、より好ましくは0.1〜1.5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部である。該硫黄の含有量が0.1〜2.0重量部であると柔軟性に優れた硬化物を得ることができる。また、硫黄の含有量が多すぎると剥離強度等の物性が大きく低下してしまう場合がある。
加硫促進剤としては、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤およびジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が挙げられる。
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
本発明の組成物は、加硫反応の進行をさらに促進するために、加硫促進助剤として酸化亜鉛(亜鉛華)を含んでもよい。酸化亜鉛は微粉化する等して比表面積を大きくして反応性を高めた活性亜鉛華であってもよい。
また、接着剤の特に高い熱安定性および戻り強度を達成するために、加硫成分は、2官能架橋剤を含有してもよい。その具体例としては、2官能ジチオカルバメート、例えば、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンに基づく架橋剤が挙げられる。さらに、他の通常のゴム加硫補助剤、例えば脂肪酸(例えばステアリン酸)が、組成物中に存在していてもよい。
加硫促進剤の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対し、0重量部であってもよいが、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、また、好ましくは1.5重量部以下、より好ましくは1.0重量部以下である。
また、酸化亜鉛等の加硫促進助剤の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対し、0重量部であってもよいが、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、また、好ましくは1.5重量部以下、より好ましくは1.0重量部である。
本発明の一態様として、加硫成分として、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対し、硫黄を0.1〜1.0重量部、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛を0.05〜1.0重量部、および、亜鉛華を0.05〜1重量部含むのが好ましい。
<(G)硬化剤成分>
本発明の組成物は、硬化剤成分を含むのが好ましい。硬化剤成分は、加熱により活性化し、組成物中のエポキシ基と反応して、組成物中に架橋を形成し、組成物を硬化することができる。
硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、グアニジン、置換グアニジン、置換尿素、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、環状第三アミン、芳香族アミン及び/又はそれらの混合物を、熱的に活性可能硬化剤又は潜硬化剤として用いることができる。置換グアニジンとしては、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン、シアノグアニジン(ジシアンジアミド)が挙げられる。グアナミン誘導体の典型例として、アルキル化ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂又はメトキシメチルエトキシメチルベンゾグアナミンが挙げられる。
本発明に用いる硬化剤は、室温において、樹脂系への溶解性が低いのが好ましく、固体であることがより好ましく、粉末であってもよい。良好な貯蔵安定性の観点から、硬化剤としてジシアンジアミドが特に好ましい。
上記の硬化剤に加えて又は代えて、触媒活性置換尿素を用いてもよい。触媒活性置換尿素としては、例えば、p−クロロフェニル−N,N−ジメチルウレア(モニュロン)、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア(フェヌロン)および3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチルウレア(ジウロン)が挙げられる。触媒活性3級アリール−又はアルキル−アミン(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)フェノール、ピペリジン又はピペリジン誘導体)を用いると、それらは、多くの場合、接着剤システムに非常によく溶解するため、1液型の組成物の有用な貯蔵安定性が達成されない場合がある。触媒的に活性な促進剤として、種々のイミダゾール誘導体、好ましくは固体イミダゾール誘導体を使用することができる。その例として、2−エチル−2−メチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、N−C1〜C12−アルキルイミダゾール、およびN−アリールイミダゾールが挙げられる。
組成物中の硬化剤成分(硬化促進剤も含む)の含有量は、用いる硬化剤が、触媒の働きをするかどうか、直接組成物の架橋に関与するかどうか、組成物におけるエポキシ基及び他の活性基の濃度、所望の硬化速度等を考慮して決めることができる。硬化剤成分の含有量は、特に限定はされないが、熱硬化性樹脂組成物の総重量に対し、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは2重量%以上であり、また、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
<(H)その他の成分>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記成分(A)〜成分(G)以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分として、ウレタン樹脂、膨張剤、フィラー、添加剤、ゴム成分等が挙げられる(ただし、上記成分(A)〜成分(G)に該当するものを除く)。
ウレタン樹脂としてはブロックウレタン樹脂が好ましい。ブロックウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーの末端にあるイソシアネート基を活性水素化合物で保護したものである。したがって、常温において安定であり、加熱により活性水素化合物が脱落して、反応性のあるイソシアネート基によって硬化するものである。硬化物はウレタンプレポリマーに由来する基がソフトセグメントとなり、優れた伸びと低い初期弾性率を実現し、組成物の耐衝撃性が向上する。
組成物中のウレタン樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の総重量に対し、0重量%であってもよいが、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、また、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
本発明の一実施形態では、組成物は、1以上の膨張剤(時々、発泡剤として当該分野で呼ばれる)をさらに含む。結果として生じる接着剤の膨張可能な特性が、特に一部又は部材における隙間又は空隙を完全に充填することが部分又は部材の最大の構造一体性を維持するために重要である場合において、特に有用である。発泡した硬化接着剤は、破断靭性が向上し、それによって衝撃抵抗をアセンブリに与える。組成物がワンパート型(一液型)の又は単一成分組成物として使用される場合、膨張剤は、室温(一般に、接着剤の硬化が開始する温度範囲における温度)をかなり越える温度まで加熱される場合にのみ、接着剤の膨張又は発泡を引き起こす潜在性膨張剤であることが好ましい。化学膨張剤、例えば、アゾ化合物、ヒドラジド等のようないずれかの適当な膨張剤を用いることができるが、一態様として膨張可能なマイクロスフェアを用いてもよい。膨張可能なマイクロスフェアは、一般に、1以上の揮発性物質(例えば、軽量炭化水素又はハロカーボン)をカプセル化する小径の重合シェル又は泡を含む。外側のシェルは、通常、シェル内で捕捉された物質の揮発のため、加熱された場合、マイクロスフェアの軟化又は膨張を可能にする特性を有する熱可塑性物質である。シェルで用いられるポリマーは、線形、分岐又は架橋していてもよく、例えば、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ニトリルポリマー等とすることができる。一般に、膨張可能なマイクロスフェアの平均粒径は、約5から約100ミクロンの範囲である。適当な膨張可能なマイクロスフェアは、商品名DUALITE及びEXPANCELで、それぞれHenkel Corporation(以前はPierce&Stevens)及びCasco Nobelから市販されている。
本発明の一態様として、組成物は、1以上の板状のフィラー(例えば、雲母、タルカムパウダー又は粘土(例えば、カオリン))を含んでもよい。板状のフィラーは、粉末又は粉砕物の形態の白雲母マイカであることが好ましい。マイカ粒子は、例えば、比較的高いアスペクト比(例えば、約5から約15)、約10から約20lb/ftの容積密度、約10から約100ミクロンの中央粒径[D(V、0.5)、サンプルの50%がこの値より小さく、50%がこの値より大きい粒子サイズ値、マス・メジアン粒径として知られている]を有してもよい。一般に、組成物は、約0.1から約3重量%のマイカを含んでもよい。
本発明の一態様として、組成物は、中空ガラスのマイクロスフェアを含んでもよい。市販の中空ガラスマイクロスフェアは、商標SCOTCHLITE(型名B38、C15、K20及びVS 5500で入手可能な適当な等級)でMinnesota Mining & Manufacturingから販売されている材料等が挙げられる。ガラスマイクロスフェアは、約5から約200μmの範囲の直径及び/又は約0.3から約0.5g/ccの密度を有することが好ましい。一般に、組成物は、約0.5から約5重量%の中空ガラスマイクロスフェアを含むことができる。
また、本発明の組成物は、他の通常の、補助剤または添加剤として用いられる化合物(例えば、可塑剤、反応性及び/又は非反応性希釈剤、流動補助剤、結合剤(例えば、シラン)、粘着促進剤、湿潤剤、粘着付与剤、難燃剤、チキソトロピー及び/又は流動制御剤(例えば、フュームドシリカ、混合ミネラルチキソトロピー)、エージング及び/又は腐食抑制剤、安定化剤及び/又は着色顔料等)を含んでいてもよい。本発明の組成物は、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル微粒子を含んでもよい。その加工特性、その柔軟性、必要とされる剛性化作用及び基体に結合する接着性に関する接着性用途によって、組成物中の含有量を調整できる。
一実施形態では、組成物は、モノエポキシド(例えば、アルキル及びアルケニル置換フェノールのモノグリシジルエーテル)のような反応希釈剤を含んでもよい。一般に、組成物は、15重量%以下(例えば、約0.5から約10重量%)の反応希釈剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物は、他の添加剤として、リン酸トリクレジル等のリン酸トリエステル系可塑剤、チョーク、石英粉末、アルミナ、ドロマイト、炭素繊維、ガラス繊維、重合繊維、二酸化チタン、フューズドシリカ、カーボンブラック、酸化カルシウム、カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、バライト等の公知のフィラー、特に、ケイ酸アルミニウムマグネシウムカルシウムタイプのシリケート様フィラー(例えば、ウォラストナイト及びクロライト)を含んでもよい。これらフィラーの含有量は、熱硬化性樹脂組成物の総重量100重量部に対して、0重量部であってもよいが、例えば0.5〜20重量部が好ましく、1〜15重量部が好ましい。
本発明の組成物は、強化フィラーとして、好ましくはアラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維またはポリエチレン繊維に基づく繊維を含有してもよい。これらの繊維は、好ましくは、パルプ繊維またはステープル繊維の形態である短繊維である。これらの繊維は、例えば、100〜250μmの平均繊維長および5〜20μmの直径を有することが好ましい。ここで、最も長い繊維の繊維長が1000〜2000μmを超えないことが好ましい。ガラス繊維、アラミド繊維系のポリアミド繊維、ポリエステル繊維がより好ましい。これら繊維の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の総重量100重量部に対して、0重量部であってもよいが、例えば0.1〜10重量部が好ましい。
本発明の組成物は、上記成分(B)、成分(D)および成分(E)のいずれにも該当しないその他のゴム成分を含んでもよい。
ゴム成分は、特に限定されないが、好ましくは固体ゴムを含み、より好ましくは室温(22℃)においてエラストマー弾性を示す熱可塑性ポリマーを含む
ゴム成分としては、例えば、ポリブタジエンに基づく固形ゴム、スチレンブタジエンゴム(スチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBS))、ブタジエン/アクリロニトリルゴム、スチレン/イソプレンゴム(スチレン/イソプレン/スチレンコポリマー(SIS))、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンコポリマー(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレンコポリマー(SEEPS)、合成または天然イソプレンゴム、ポリシクロオクテナマー、ブチルゴム、ポリウレタンゴム等が挙げられる。
固体ゴムは、ゴム粒子であることが好ましく、ゴム粒子は、平均粒径が、例えば、好ましくは0.03μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、また、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下、よりさらに好ましくは1μm以下である。ゴム粒子は、平均粒径が、500nm未満であってもよく、例えば、好ましくは約25〜200nm、より好ましくは50〜150nmであってもよい。なお、本明細書で使用される粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
<製造方法>
本発明の組成物は、例えば、上述の各成分をビーズミル、擂潰機、ポットミル、三本ロールミル、回転式ミキサー、二軸ミキサー等の混合機に導入し、混合することにより製造することができる。混合順序は特に限定されず、全成分を同時に混合してもよい。
<使用方法>
本発明の組成物は、例えば、木、金属、被覆又は前処理された金属、プラスチック、充填プラスチック、シート成形化合物等の熱硬化性材料、ファイバーグラス等を含む異なる材料で形成された部分と接着させる用途に適している。本発明の組成物を用いて結合させる基体は、互いに同じであっても異なっていてもよい。金属部品の接着のために、例えば、冷却ロールスチールシートのようなスチールシートを接着するため用いられてもよい。また、これらは、例えば、電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき、ガルバアニール及び/又は亜鉛/ニッケル被覆のスチールシートとしてもよい。本発明の組成物は、汚染物質にもかかわらず良好な粘着力を達成するため、表面が油性物質で汚染されている基体を結合するために特に有用である。
本発明の組成物は、当該分野で公知の技術により基材表面に塗布することができる。例えば、基材上にビード形状でロボットから押し出す方法、コーキングガン等による機械的方法、又は手動による方法により塗布することができ、また、回転もしくは流動技術を使用して塗布してもよい。回転及び流動技術は、当該分野で周知の技術である装置(例えば、ポンプ、コントロールシステム、投与ガンアセンブリ、遠隔投与装置、塗布ガン)を利用できる。通常、接着剤は、接合する基材の一方又は両方に塗布される。接着剤が接合される基材間に位置するように、基材を接触させ、その後、接着剤を、硬化剤によるエポキシ樹脂の硬化が開始される温度に加熱する。
本発明の組成物は、接着する2つの部位の一方に溶融形態で堆積してもよい。一実施形態では、その接着剤は、ホットメルトとして作用するように、つまり、室温で固体であるが、室温より温度が熱されると、ポンピング可能又は流動可能な材料に変わることができるように配合されている。別の実施形態では、接着剤は潜在性硬化剤がまだ活性化しない温度にまでしか加熱されないことを確実にすることが好ましいため、本発明の組成物は、多くの用途において、周囲温度又はわずかに高い温度で、作用部位に流動又はポンピングすることができるように配合されている。溶融組成物は、直接基材表面に塗布することができるし、ヘムフランジング操作のように、結合する基材と分離する空間に流動させることもできる。別の実施形態では、組成物は、硬化プロセスが2段階以上(第1の温度で部分硬化が起こり、それより高い第2の温度で完全に硬化する)で行われるように、(例えば、細かく分離された熱可塑性物質の含有物によって又は異なる活性温度を有する複数の硬化剤を使用することによって)構成される。接着剤の塊を堆積した後、直ぐに2つの部位を結合することが好ましく、それによって2つの部位を互いに仮結合することができる。
例えば、互いに仮に結合される金属シートが、脱脂目的で洗浄浴中で、次いでリン酸浴中で、処理される場合、得られた結合が、まだ未硬化の接着剤が容易に洗い流されないように、すでに十分な強度を有していることが好ましい。そうでなければ、洗い流されてしまうからである。
本発明の組成物は、組成物が接合部位に塗布される温度より明らかに高い温度で及び硬化剤、硬化促進剤、及び/又は(存在するならば)潜膨張剤が活性化する温度(つまり、硬化剤の場合、硬化剤が接着剤の他の成分と反応する最低温度、膨張剤の場合、膨張剤が発泡又は接着剤の膨張を引き起こす最低温度)以上で、オーブン内で最終的に硬化されることが好ましい。硬化は、150℃より高い温度、例えば、160℃から190℃で、10分から60分間行うことが好ましい。本発明の一態様は、このように組成物が熱硬化された硬化物も包含する。
本発明の組成物は、電気又はエレクトロニクス産業におけるキャスト樹脂として又はプリント回路基板に部品を結合するためのエレクトロニクス産業におけるダイ付着用接着剤として用いることができる。本発明の他の用途として、複合物(例えば、繊維強化複合物)用のマトリックス材料が挙げられる。本発明による接着剤の1つの特に好ましい態様は、例えば、ヘリフランジにおけるような車両組み立ての構造結合の形成である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は接着剤として用いることができ、一態様として構造用接着剤として用いるのが好ましい。構造用接着剤は、汎用工業用途、並びに、自動車及び航空宇宙産業における高性能用途を含む様々な用途に使用される。自動車の製造においては、構造用接着剤を車体等の接合部位に塗布した後、未硬化の状態で保管されたり輸送されたりする場合があり、この間に吸湿すると、熱硬化の際接着剤中で発泡等が生じ接着強度が大きく低下するという問題があった。しかしながら、本発明の熱硬化性樹脂組成物は耐水性に優れるため、車体等に塗布された組成物が、高温高湿環境下で未硬化の状態のまま放置されても、接着剤の劣化を抑制することができる。本発明の一態様は、上記熱硬化性樹脂組成物を含む構造用接着剤により接合された部分を有する車両に関する。
1以上の膨張剤を含む組成物の本発明の一実施形態では、その接着剤を、固くなって、空洞、隙間、構造部材等を補強及び増強するために機能する構造フォームを形成するために利用することができる。その組成物は、硬化及び発泡を引き起こすために加熱した際、1以上の特別な方向に膨張するように接着剤を配置又は配向するように、賦形剤又はレセプタクル等内で支持又は含有されてもよい。このように、その組成物は、その組成物の近傍において、膨張剤が存在しない場合に起こりうるよりもさらに大きな基材表面の部位で接触するように膨張するため、その組成物は、不均一な形状の空間を充填することに特に有用である。発泡、硬化した組成物は、車両空洞及び構造部材のエネルギー吸収容量を補強及び/又は増大させる。
以下、本発明を実施例および比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
実施例および比較例で用いた化合物は下記のとおりである。
(成分(A):ポリグリシジルエーテルを含むエポキシ樹脂成分)
(a1)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名:DER331、Dow Chemical製)
(a2)アミン変性エポキシ樹脂(ヘンケル社製、米国特許公開公報第6,015,865号に基づいて製造)
(a3)キレート変性エポキシ樹脂(商品名:EP−49−10N、ADEKA製)
(成分(A)+(B):エポキシ樹脂成分+コアシェル構造を有するゴム粒子)
(b1)ビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂のマトリクス中に分散されたコア−シェルゴムのマスターバッチ(コア−シェルゴムが33重量%)(商品名:Kaneace MX153、Kaneka製)
(成分(C):エポキシシランカップリング剤)
(c1)前記式(C2)で表されるエポキシシランカップリング剤
(成分(D):両末端にエトキシシリル基を有するポリブタジエン)
(d1)上述の式(D1)で表される化合物(商品名:エボニックデグザ社製、POLYVEST EP ST−E100)
(成分(E):両末端にエポキシ基を有するポリブタジエン)
(e1)上述の式(E1)で表されるエポキシ末端ポリブタジエン
(成分(F):加硫成分)
(f1)硫黄(商品名:Sulfux PS、Tsurumi Chemical Industry製)
(f2)加硫促進剤(商品名:Nocceler ZTC、Ohuchi Shinko Chemical Industrial製)
(f3)活性亜鉛華(Seido Chemical製)
(成分(G):硬化剤成分)
(g1)エポキシ硬化剤(商品名:DICY、Air products製)
(g2)硬化促進剤(商品名:Dyhard UR700、AizChem製)
(成分(H):その他の成分)
(h1)ブロックウレタン(商品名:QR9466、ADEKA製)
(h2)リン酸トリクレジル(商品名:Daihachi Chemical Industry製)
(h3)ポリメタクリル酸エステル粉末(商品名:Zefiac F351、Aica Kogyo Co.Ltd.,製)
(h4)CaCO(商品名:Viscolite OS、Shiraishi Kogyo Kaisha製)
(h5)ヒュームドシリカ(商品名:Aerosil R972、Evonik製)
(h6)CaO(商品名:CML−35S、Ohmi Chemical Industry製)
(h7)ポリエチレン繊維(商品名:Sylothix 53、J.Rettenmaier & SOHNE製)
(h8)ゴム粉末(商品名:Nipol 1411、Nihon Zeon製)
<実施例1〜9、比較例1〜7>
各実施例および比較例において、それぞれ、上記の各成分の化合物を、表1および表2に記載の配合割合になるように混合して、真空ミキサーで撹拌して熱硬化性樹脂組成物を製造した。
<評価方法>
各実施例および比較例で作製した熱硬化性樹脂組成物について、以下の方法により評価した。
鋼板として、冷間圧延鋼板(SPCC)、幅25mm×長さ200mm×厚さ0.6mmのサイズのものを使用した。まず、鋼板面をアセトン等の有機溶剤で拭き取り、その上にプレス加工用防錆油を塗布し、室温条件下(約23℃50%RH)で約24時間立て掛けして油切りする。長さ150mmの部分にのみ接着剤を塗布し、残りの長さ50mmの部分を約90°変形させてL字状鋼板を作成する(予め変形させてから接着剤を塗布させても構わない)。接着剤を塗布していない同様のL字状鋼板をもう一枚用意する。2枚の鋼板を、厚さ0.2〜0.3mmの金属ワイヤまたはそれに準ずる太さの耐熱シート等を間に複数挟んで押し付けて、接着剤を間に挟んで圧着する。クリップ等で2枚の板を固定する。続いて、170℃のオーブンにこの固定された板を投入後、昇温時間を除き約20分間焼付を行う。この後、室温条件で24時間静置し、得られたT型試験片を試験に用いる。
T型試験片の接着剤非着部分(50mmの部分)を引張試験機チャックでつかみ固定する(チャック間距離は25mm前後が望ましい)。引張り速度は約200mm/minとし、接着部分の残りが約10mmになるまで測定する。横軸;変位(mm)、縦軸;荷重(N)のグラフを作成し、変位約50mm〜200mm間の平均値を測定値として算出する。ただし、金属ワイヤ(テフロンシート)の影響が明白に認められる測定値の乱れた箇所は平均の計算から除くこととする。算出した剥離強度を、初期剥離強度:N(単位はN/25mm)とした。
上記手法で接着剤を塗布した鋼板を、40℃75%RHの恒温恒湿環境下で約72時間暴露させた以外は上記と同様の方法で、もう一方の接着剤を塗布していない鋼板と張り合わせ加熱硬化させたT型試験片を得た。得られたT型試験片を用いて初期剥離強度と同様に剥離強度を測定し、高温多湿保管後の剥離強度:N(単位はN/25mm)とした。
(強度低下率)
上記で得られた剥離強度から、下記式により強度低下率(%)を算出した。
強度低下率(%)=100×(N−N)/N
表3に、各実施例および比較例における、成分(A)と成分(B)との合計を100重量部(A+B=100)としたときの成分(C)、(D)および(E)の重量割合、ならびに、上記方法により測定および算出された、初期剥離強度、高温多湿保管後の剥離強度、および強度低下率を示す。
上記実施例および比較例より、組成物が成分(A)と成分(B)に加え、成分(C)と、成分(D)および/または成分(E)とを含み、成分(D)の配合量と成分(E)の配合量とが所定の範囲内にあると、高温多湿で保管後の剥離強度の低下が小さかった。一方、比較例では、成分(C)を含まない、あるいは、成分(D)および/または成分(E)の含有量が多すぎることにより、高温多湿保管後の強度低下率が大きかった。
本発明は、未硬化の状態で高温高湿環境下に置かれても、硬化後の接着強度の低下が抑制されたエポキシ系熱硬化性樹脂組成物を提供する。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、構造用接着剤として、車両の組み立て等に用いることができる。

Claims (10)

  1. (A)ポリグリシジルエーテルを含むエポキシ樹脂成分と、
    (B)コアシェル構造を有するゴム粒子と、
    (C)エポキシシランカップリング剤と、
    (D)両末端にアルコキシシリル基を有するポリブタジエンおよび/または(E)両末端にエポキシ基を有するポリブタジエンと、
    を含み、前記(A)および前記(B)の合計100重量部に対し、前記(D)の含有量が0〜3.2重量部であり、前記(E)の含有量が0〜1.5重量部であり、かつ(D)と(E)との合計含有量が0重量部より大きい、熱硬化性樹脂組成物。
  2. (A)および(B)の合計100重量部に対し、前記(D)の含有量が、0.1〜3.2重量部である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. (A)および(B)の合計100重量部に対し、前記(E)の含有量が、0.1〜1.5重量部である、請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記(D)両末端にアルコキシシリル基を有するポリブタジエンが、下記式(D1):
    (式(D1)中、Rは単結合または2価の有機基を示し、R’はアルキル基または水素原子を示す。複数のRおよび複数のR’は互いに独立である。x+y+z=30〜80である。)
    で表される化合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 前記(E)両末端にエポキシ基を有するポリブタジエンが、下記式(E1):
    (式(E1)中、x+y+z=30〜80である。)
    で表される化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記(C)エポキシシランカップリング剤が、下記式(C1):
    (式(C1)中、Zは、アルキレン基または−R−O−R−(RおよびRは、互いに独立にアルキレン基を示す)で表される2価の基を示し、R、RおよびRは、互いに独立に、アルキル基または水素原子を示す。)
    で表される化合物を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. さらに、加硫成分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含む、構造用接着剤。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
  10. 請求項8の構造用接着剤により接合された部分を有する車両。
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