JP2019195282A - 殺菌処理による死菌の回収方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来の殺菌方法として、加熱殺菌が一般的に知られている。しかし、殺菌のために原材料や製品を加熱すると、変質や加熱臭が発生し、栄養成分や風味が損なわれる場合がある。
電界殺菌とは、原材料や製品を電極で挟み、交流高電圧を印加することで、電気的な殺菌作用により、混入した微生物を殺菌する方法である。電界殺菌方法は、従来の加熱のみによる殺菌方法に比べて、熱による変色や加熱臭の発生、栄養成分の減少を抑えることができる。
さらに、点滴や注射液など、安全性の高い液体医薬品を提供するために、電界殺菌の利用も検討されている。
本発明はこれらの知見に基づき完成に至ったものである。
さらに本発明では、電界殺菌処理などにより死滅した死菌をメンブレンフィルターに吸着及び固定し、目的の死菌をメンブレンフィルターごと回収する。回収したメンブレンフィルターは、所定の処理を行うことで電子顕微鏡での撮像に供することができる。そのため、本発明により回収した死菌の撮像を容易に行うことができる。
具体的には、細胞表層は、約0.01〜0.5μmの細孔状であり、かつ突起構造を有する。また、ひだ状の突起が、細胞表層の全体にわたり存在するのも、電界殺菌処理後の死菌特有の特徴である。図1(A)〜(C)に示す死菌はいずれも、これらのような構造が細胞表層の全体にわたり存在し、表面が粗面化している。
さらに、電界殺菌処理後の死菌の多くは断片化され、細胞表層に孔が存在する(図1(A)〜(C)参照)。この孔から、細胞内物質が細胞外に漏洩している。
さらに、電界殺菌処理後の死菌は、電界殺菌処理前の生菌よりも細胞径は小さくなる傾向がある。例えば、電界殺菌処理前の黄色ブドウ球菌の生菌の細胞径は約0.8〜1.0μmである。これに対して、電界殺菌処理後の黄色ブドウ球菌の死菌の細胞径は、約0.4〜1.0μmであり、その多くは約0.4〜0.5μmである(図1(A)〜(C)参照)。
また、死菌を遠心分離後の上清に移行させるために、溶媒の濃度を適宜設定することが好ましい。例えば、0.05〜0.2質量%が好ましい。
細胞形状が大きく変化した死菌を分離できれば、遠心分離条件に特に制限はなく、遠心分離により細胞が損傷を受けて崩壊しない範囲で適宜設定することができる。例えば、7000〜15000Gで5〜15分間遠心分離することが好ましく、10000〜15000Gで10〜15分間することがより好ましく、15000Gで15分間することがさらに好ましい。懸濁液を冷却しながら遠心分離を行うことが好ましいこの遠心分離条件は、例えば特開2008−286591号公報等に示される従来法における条件(10,000Gで10分間程度)よりも、遠心分離の度合いが大きい。このような条件を採用することにより、細胞形状が大きく変化した死菌を上清中に移行させることができる。
本発明において、遠心分離前の懸濁液には、電界殺菌などにより細胞形状が大きく変化した死菌に加え、細胞のサイズが大きい生菌や死菌、微生物の細胞片などが含まれる。このような懸濁液に対して、遠心分離を行わずに後述するメンブレンフィルターを用いたろ過を行うと、容易に目詰まりが起きてしまい、死菌の回収効率が大きく低下する。これに対して、メンブレンフィルターを用いたろ過を行う前に懸濁液の遠心分離を行うことで、細胞のサイズが大きい生菌や死菌、微生物の細胞片等の夾雑物の多くはペレットとして分離できる。その結果、後段のメンブレンフィルターを用いたろ過を効率的に行うことができる。さらに、従来法における条件よりも遠心分離の度合いを高めることで、生菌などの夾雑物の大部分が上清に残らず、死菌と生菌との識別能を上げることができる。そのため、残渣の少ない鮮明な死菌画像の撮像を行うことができる。
具体的には、黄色ブドウ球菌の生菌の細胞径は約0.8〜1.0μmである。これに対して、電界殺菌処理後の死菌をSEMで観察したところ、細胞形状が大きく変化しており、死菌の多くは、約0.4〜0.5μmである。よって、細胞形状が大きく変化した死菌の大きさが生菌の約半分程度であることを考慮して、メンブレンフィルターの孔径を設定することが好ましい。具体的には、メンブレンフィルターの孔径は、0.1〜0.45μmが好ましい。
除塵処理は、通常の除塵目的のフィルター、例えばストマフィルター等のデプスタイプのフィルターを用いて行うことができる。除塵処理に用いることができるフィルターは、遠心処理でも落としきれなかったサイズの大きい残渣や、一部生菌の透過を阻止するが、粒径が小さい本発明で回収する死菌は透過できるよう、適宜選択することができる。
さらに本発明の死菌の回収方法では、死菌をメンブレンフィルターごと回収する。そのため、メンブレンフィルターをSEMなどの電子顕微鏡で観察することで、目的の死菌の撮像も容易に行うことができる。
より具体的には、ろ過後のメンブレンフィルターに前固定(予備固定)として2%グルタールアルデヒドを通液し、その後、100mM HEPESを用いてメンブレンフィルター及び吸着した死菌を洗浄する。その後、メンブレンフィルターをディスポーサブルディッシュに菌体を吸着させた表面が上になるように、かつ死菌がはがれ落ちないように極力静かに、メンブレンフィルターの下面が空気を巻き込まないように設置する。空気を巻き込んでしまった場合は、適宜ピンセットで空気抜きを行う。その後、4℃に冷却した2%グルタールアルデヒドを、メンブレンフィルター表面の菌がはがれないように、ディスポーサブルディッシュの壁面に当たるように、緩やかに4〜5mL滴下する。その後、4℃で18時間以上固定する。固定の際、メンブレンフィルターが浮き上がり、メンブレンフィルターに菌体(死菌)が固定されないことがあるため、一定時間毎にメンブレンフィルターが固定液(グルタールアルデヒド)に完全に浸漬されているかを確認する。メンブレンフィルターが浮かび上がっている場合は、メンブレンフィルター外周部をピンセットで押さえつけ、完全に固定液に浸漬させる。そして、メンブレンフィルターに固定した死菌に対して50〜100容量%の数段階の濃度区の脱水溶液(エタノール上昇系が好ましい)を低濃度から段階的に順次滴下し、メンブレンフィルターに固定した死菌を脱水する。脱水処理後、メンブレンフィルターを回収する。
電子顕微鏡を用いた撮像方法に特に制限はなく、常法により行うことができる。以下、死菌の撮像方法について具体的に説明する。しかし本発明は、これに制限するものではない。
例えば、脱水処理後のメンブレンフィルターをディスポーサブルディッシュに移し、t-ブタノール(試薬特級)などの臨界点乾燥溶液に完全に浸漬させ、凍結させる。その後、凍結したメンブレンフィルターをディスポーサブルディッシュごと臨界点乾燥器に設置し臨界点乾燥を行う。臨界点乾燥前にメンブレンフィルターを臨界点乾燥溶液に浸漬させることで、死菌の細胞表層の微細構造(鞭毛や繊毛など)を保護ないし維持したまま、乾燥させることができる。本発明において臨界点乾燥は、常法により行うことができる。なお本発明において「臨界点乾燥」とは、脱水後の試料を液化炭酸ガスと共に圧力容器中に入れて加温する方法であり、常法により行うことができる。
臨界点乾燥溶液を完全に揮散させた後、メンブレンフィルターをSEM試料台に観察面が上になるように載置し、イオンスパッターで白金バナジウムを蒸着させる。その後、常温SEMやクライオ(FIB)SEMなどにより、死菌を撮像することができる。
<3>前記臨界点乾燥溶液がt-ブタノールである、前記<1>又は<2>項記載の方法。
<5>遠心分離後の上清に対して除塵処理を行い、除塵処理後の上清に対して前記メンブレンフィルターを用いてろ過を行う、前記<1>〜<4>のいずれか1項記載の方法。
<6>デプスタイプのフィルターを用いて前記除塵処理を行う、前記<5>項記載の方法。
<7>前記除塵処理により、上清に含まれる細胞形状が大きく変化した死菌を、細胞径の大きい生菌及び死菌、並びに微生物の細胞片などと分離する、前記<5>又は<6>項記載の方法。
<8>メンブレンフィルターの孔径が0.1〜0.45μmである、前記<1>〜<7>のいずれか1項記載の方法。
<9>前記懸濁液を7000〜15000Gで5〜15分間、好ましくは10000〜15000Gで10〜15分間、より好ましくは15000Gで15分間遠心分離する、前記<1>〜<8>のいずれか1項記載の方法。
<10>前記溶媒が、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート、モノパルミタートモノステアラート及びモノステアラートモノオレアートからなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含有する水溶液である、前記<1>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
<11>前記溶媒の濃度が0.05〜0.2質量%である、前記<1>〜<10>のいずれか1項記載の方法。
<12>前記死菌の形状が、他の殺菌方法(好ましくは加熱殺菌又はアルコール殺菌)により死滅した死菌の形状とは大きく異なる、前記<1>〜<11>のいずれか1項記載の方法。
<13>前記死菌が、細胞表層を細孔状とし、かつ細胞表層に突起構造を有する粗面化死菌である、前記<1>〜<12>のいずれか1項記載の方法。
<14>前記死菌の細胞表層の細孔のサイズが約0.01〜0.5μmである、前記<13>項記載の方法。
<15>前記死菌が、細胞表層にひだ状の突起を有する、前記<1>〜<14>のいずれか1項記載の方法。
<16>前記死菌の細孔状かつ突起構造、及び/又はひだ状の突起が、細胞表層の全体にわたり存在する、前記<13>〜<15>のいずれか1項記載の方法。
<17>前記殺菌処理により細胞が断片化され、細胞表層に孔が存在する、前記<1>〜<16>のいずれか1項記載の方法。
<18>前記死菌の細胞内物質が、前記孔から細胞外に漏洩している、前記<17>項記載の方法。
<19>前記死菌の細胞径が約0.4〜1.0μm、好ましくは約0.4〜0.5μmである、前記<1>〜<18>のいずれか1項記載の方法。
<20>前記死菌が、電界殺菌処理により死滅した死菌である、前記<1>〜<19>のいずれか1項記載の方法。
黄色ブドウ球菌 NBRC 12732及び大腸菌 ATCC 8739をそれぞれ液体培地(ニュートリエントブロス)10mLに1白金耳量接種し、37℃、120rpmで24時間振盪培養を行った。その後、培養液100μLを液体培地(ニュートリエントブロス)10mLに接種し、37℃、120rpmで2〜4時間振盪培養(本培養)を行った。
本培養菌液を20倍に希釈したニュートリエントブロスを用いて、菌数を1〜3×105CFU/mLになるように調整し、菌液を調製した。
圧電性ポリ乳酸で作成したニットを伸長させると電界が発生する。この電界で菌を死滅させられることが知られている。
圧電性ポリ乳酸で作成したニットを引張機に150g加重で設置した。設置後、前記菌液200μLを10〜15スポット試験布上及びJIS L 1902指定の普通布に接種した。その後圧電性ポリ乳酸製ニットは引張機により10mmのストロークで、普通布は静置条件において、37℃で18時間培養した。
培養後の各試験布は抽出液を用いて、布上の菌を回収し、培養法にて生菌数を測定した。
0.2〜0.05質量%Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)水溶液20mLに、電界殺菌処理後の菌を懸濁した。そして、高速冷却遠心機(ヤマト科学)及びアングルローターF-35-6-30を用いて、15000Gで15分間、4℃に冷却しながら懸濁液を遠心分離した。
遠心分離後の上清を回収し、ストマフィルター(アズワン)でろ過し、除塵処理を行った。その後、ポアサイズ0.2μmのアイソポアGTTP04700及びディスポーサブルシリンジを用いて全量ろ過し、死菌をメンブレンフィルター上に吸着させた。
ろ過後のメンブレンフィルターに0.1MHEPES1mLを通液してメンブレンフィルターを洗浄し、さらに2%グルタールアルデヒド1mLを通液し前固定を行った。通液後のメンブレンフィルターを、ろ過面が上になるようにディスポーザブルディッシュに設置した。メンブレンフィルターに直接固定液がかからないようにディスポーザブルディッシュの壁面に2%グルタールアルデヒド4mLを滴下し、メンブレンフィルターが浮かび上がらないようにピンセットなどで押さえながら、4℃で18時間固定した。
その後、固定液全量を回収廃棄した後、フィルター表面に直接かからないようにしながら、エタノール上昇系(50、70、80、90、95、100(1回目)、100(2回目)%)で各30分間4℃で脱水した。
脱水処理後のメンブレンフィルターは4mlのt-ブタノールに完全に浸漬させてディスポーサブルディッシュごと−20℃で30分以上凍結させた。凍結後のディスポーサブルディッシュ及びメンブレンフィルターは臨界点乾燥器ES-2030(日立)を用いて臨界点乾燥を行った。乾燥後のメンブレンフィルターはSEM試料台(日新EM)に固定し、イオンスパッターE-1030(日立)を用いて30mAで80秒白金蒸着した。白金蒸着後のメンブレンフィルターはSEM S-4300E(日立)を用いて観察及び撮影を行った。
さらに、黄色ブドウ球菌の死菌は、ブドウの房状の連結が認められなくなる(図1(A)及び(B)参照)。
さらに、目的の死菌を吸着及び固定したメンブレンフィルターごと回収するため、回収したメンブレンフィルターを電子顕微鏡での撮像に供することで、目的の死菌の撮像も容易に行うことができる。
Claims (14)
- 殺菌処理後の菌を溶媒で懸濁し、
懸濁液を遠心分離し、
遠心分離後の上清をメンブレンフィルターを用いてろ過して死菌をメンブレンフィルターに吸着し、
メンブレンフィルターに死菌を固定し、
死菌をメンブレンフィルターごと回収する、
死菌の回収方法。 - 殺菌処理後の菌を溶媒で懸濁し、
懸濁液を遠心分離し、
遠心分離後の上清をメンブレンフィルターを用いてろ過して死菌をメンブレンフィルターに吸着し、
メンブレンフィルターに死菌を固定し、
死菌をメンブレンフィルターごと回収し、
回収したメンブレンフィルターを臨界点乾燥溶液に浸漬させ、
メンブレンフィルターを凍結させ、
凍結したメンブレンフィルターを臨界点乾燥させ、
臨界点乾燥させたメンブレンフィルターを電子顕微鏡を用いた撮像に供する、
死菌の撮像方法。 - 前記臨界点乾燥溶液がt-ブタノールである、請求項2記載の方法。
- メンブレンフィルターを固定液で処理して目的の死菌を固定し、脱水溶液を用いてメンブレンフィルターに固定した死菌を脱水し、死菌をメンブレンフィルターごと回収する、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
- 遠心分離後の上清に対して除塵処理を行い、除塵処理後の上清に対して前記メンブレンフィルターを用いてろ過を行う、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
- メンブレンフィルターの孔径が0.1〜0.45μmである、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- 前記懸濁液を7000〜15000Gで5〜15分間遠心分離する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
- 前記死菌が、細胞表層を細孔状とし、かつ細胞表層に突起構造を有する粗面化死菌である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
- 前記死菌の細胞表層の細孔のサイズが約0.01〜0.5μmである、請求項8記載の方法。
- 前記死菌が、細胞表層にひだ状の突起を有する、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
- 前記死菌の細孔状かつ突起構造、及び/又はひだ状の突起が、細胞表層の全体にわたり存在する、請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。
- 前記殺菌処理により細胞が断片化され、細胞表層に孔が存在する、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
- 前記死菌の細胞径が約0.4〜1.0μmである、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
- 前記死菌が、電界殺菌処理により死滅した死菌である、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
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US20150090252A1 (en) * | 2011-03-16 | 2015-04-02 | Federation Des Producteurs Acericoles Du Quebec | Apparatus and process for pasteurization of sap and product thereof |
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