JP2019194703A - 透明遮熱断熱部材及びその製造方法 - Google Patents

透明遮熱断熱部材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】保護層の耐擦傷性及び密着性に優れ、外観性に優れた透明遮熱断熱部材を提供する。【解決手段】透明基材11と、透明基材11の上に形成された機能層19とを備え、機能層19は、透明基材側から赤外線反射層12及び保護層18をこの順に含み、保護層18は、赤外線反射層側から中屈折率層13、高屈折率層14及び低屈折率層15をこの順で含み、赤外線反射層12は、金属酸化物層と金属層とを含み、中屈折率層13は、波長550nmの光の屈折率が1.45〜1.55であり、厚みが80〜200nmであり、高屈折率層14は、波長550nmの光の屈折率が1.65〜1.95であり、厚みが100〜350nmであり、低屈折率層15は、波長550nmの光の屈折率が1.30〜1.45であり、厚みが70〜150nmであり、前記機能層側のJIS R3106に基づく垂直放射率が、0.2以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、透明遮熱断熱部材及びその製造方法に関する。
地球温暖化防止及び省エネルギーの観点から、ビルディングの窓、ショーウインドウ、自動車の窓面等から太陽光の熱線(赤外線)をカットし、内部の温度を低減させることが広く行われている(特許文献1)。また、最近では、省エネルギーの観点から、夏場の温度上昇の原因となる熱線をカットする遮熱性のみならず、冬場の室内からの暖房熱の流出を抑え暖房負荷を低減させる断熱機能をも付与した遮熱断熱部材が提案され市場投入されつつある(特許文献2、3)。
特開2014−170171号公報 特開2014−141015号広報 特開2014−167617号公報
特許文献1には、透明基材にハードコート層、赤外線吸収層、高屈折率層、低屈折率層が順次積層されてなる反射防止機能を有する透明遮熱フィルムが開示されている。特許文献1に記載された透明遮熱フィルムは、室外から入射する赤外線を吸収する赤外線吸収タイプの透明遮熱フィルムであり、冬場において暖房器具から放射される波長5〜25μmの遠赤外線を室内側に反射させる断熱機能は有していない。
特許文献2では、基材に金属薄膜と金属酸化物薄膜を交互に積層した多層構造を有する熱線反射層と、ハードコート層とを順に積層した赤外線反射性を有する積層フィルムが開示されている。特許文献2に記載された積層フィルムは、赤外線反射タイプの積層フィルムであり、赤外線を室内側に反射させる断熱機能を有している。しかし、赤外線の吸収を抑制してその断熱機能を発現させるためにハードコート層を薄くして、特にハードコート層の厚みが可視光線の波長範囲(380〜780nm)と重なるような数百nmとした場合には、ハードコート層のわずかな厚みムラがあっただけでも、ハードコート層の界面反射と熱線反射層の界面反射との多重反射干渉による虹彩現象とよばれる外観のギラツキ現象が目立ちやすくなり、また、角度を変えて視認した場合の光路長の変化による反射色の変化も大きくなり、窓等に貼って使用する際に外観上問題となり得る懸念がある。
また、特許文献3では、透明フィルム基材上に、第一金属酸化物層と金属層と第二金属酸化物層とをこの順に備えた赤外線反射層と、有機物層からなる透明保護層とをこの順で備える赤外線反射フィルムが開示されている。特許文献3に記載された赤外線反射フィルムは、赤外線反射タイプであり、赤外線を室内側に反射させる断熱機能を有している。しかし、外観の虹彩現象を抑制するために透明保護層の厚みを、可視光線の波長範囲より小さい150nm以下とすると、耐擦傷性のような物理特性が低下する傾向が見られ、フィルム施工時や、長期間に渡るフィルム使用時にフィルム表面に傷が入りやすく、傷の影響による外観不良や腐食等の問題が懸念される。
特許文献2、3で記載されているような金属薄膜と金属酸化物薄膜の積層体からなる赤外線反射層による赤外線反射タイプの遮熱フィルムにおいては、金属薄膜は、一般に赤外線反射機能を有し且つ可視光透過率の高い低屈折率層から形成され、また、金属酸化物薄膜は、金属薄膜での赤外線反射機能を維持しつつ、可視光線領域波長での反射率を制御し可視光線領域での透過率を高め、且つ金属薄膜中の金属のマイグレーションを抑制する保護機能を有し、一般的に屈折率が1.7以上の高屈折率を有する材料から形成されている。
そのため、金属薄膜と金属酸化物薄膜の積層体からなる赤外線反射層の上に、その保護層として一般的によく用いられている、例えば、屈折率が1.5前後のアクリル系樹脂からなるUVハードコート層を設けた場合、赤外線反射層の各層とハードコート層との屈折率差及び各層の厚さに基づき、各界面での多重反射の干渉が起こる。その結果、この赤外線反射フィルムに入射した可視光線の各波長に対する反射率が大きく変動する。即ち、赤外線反射フィルムの可視光線反射スペクトルを測定した場合、所謂リップルと呼ばれる山・谷の大きなうねりを有する形状の反射率曲線となる。
また、通常、アクリル系樹脂からなるUVハードコート層等の保護層はウェットコーティング法により塗工形成されるが、基材全面に膜厚ムラ(膜厚のばらつき)なく均一にコーティングすることは現実的には困難である。そのため、乾燥ムラ、塗工ムラ、基材の表面状態等の影響により、膜厚ムラは完全になくすことはできない。このような保護層の膜厚ムラは、赤外線反射フィルムの可視光線反射スペクトルにおいて、山・谷のピークの波長のズレとして表れ、虹彩模様の発生の原因となる。
一方、保護層の厚さを、例えば数ミクロンと厚くした場合、赤外線反射フィルムの可視光線反射スペクトルにおいて、山・谷のうねりの間隔が狭くなり、保護層の膜厚に多少のばらつきがあっても、人間の目では特定の波長の反射色をそれぞれ区別して認識することは困難であり、虹彩模様として捉えることはほとんどできないので、外観上の問題は起こりにくい。しかし、保護層としてのアクリル系UVハードコート剤は、その分子骨格に、C=O基、C−O基、芳香族基を多く含むことから、波長5〜25μmの遠赤外線を吸吸しやすくなり、赤外線反射フィルムの断熱性が低下してしまう傾向にある。
従って、赤外線反射フィルムの断熱性を十分なものとするためには、保護層の厚さを、1μm以下として波長5〜25μmの遠赤外線の吸吸をできるだけ抑制すればよいが、前述の特許文献2に関して説明したように、保護層の厚さを可視光線の波長範囲と重なるような数百nmの厚さとした場合、赤外線反射フィルムの可視光線反射スペクトルにおいて、山・谷のうねりの間隔が広くなり、人間の目で特定の波長の反射色として認識できるようになるため、保護層にわずかな厚みムラがあっただけでも、虹彩現象として認識され、また角度を変えて視認した時の光路長の変化による反射色の変化も顕著に捉えることができてしまい、窓等に貼って使用する際に外観上問題となり得る懸念がある。
更に、前述の特許文献3に関して説明したように、保護層の厚さを可視光線の波長範囲より小さい150nm以下の厚さとした場合、赤外線反射フィルムの可視光線反射スペクトルにおいて、山・谷のうねりの間隔がさらに広くなり、干渉反射色として均一な色が観測されるようになるため、外観上の問題は起こりにくいが、耐擦傷性が低下する傾向が見られ、フィルム施工時や、長期間に渡るフィルム使用時にフィルム表面に傷が入りやすく、傷の影響による外観不良や腐食等の問題が依然として懸念される。
このように従来、夏場における優れた遮熱性能と冬場における優れた断熱性能とを両立し、且つ耐擦傷性に優れ、更に虹彩現象、視認角度による反射色変化を抑制した外観性に優れた透明遮熱断熱部材を提供することは困難であった。
本発明は上記問題を解決したもので、赤外線反射層の保護層を、特定の屈折率及び厚みからなる積層体で形成することにより、耐擦傷性及び外観性に優れた透明遮熱断熱部材を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、金属や金属酸化物から形成される赤外線反射層上に、特定の厚み・屈折率を有する中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に積層した保護層を設けることで、断熱性を維持しつつフィルムの耐擦傷性といった物理特性に優れ、且つ虹彩現象、視認角度による反射色変化を抑制した外観性にも優れた透明遮熱断熱部材を得られることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明の透明遮熱断熱部材は、透明基材と、前記透明基材の上に形成された機能層とを含む透明遮熱断熱部材であって、前記機能層は、前記透明基材側から赤外線反射層及び保護層をこの順に含み、前記保護層は、前記赤外線反射層側から中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順で含み、前記赤外線反射層は、金属酸化物層と金属層とを含み、前記中屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.45〜1.55であり、厚みが80〜200nmであり、前記高屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.65〜1.95であり、厚みが100〜350nmであり、前記低屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.30〜1.45であり、厚みが70〜150nmであることを特徴とする。
また、本発明の透明遮熱断熱部材の製造方法は、透明基材の上に赤外線反射層を形成する工程と、前記赤外線反射層の上に、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順にウェットコーティング法にて形成する工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、可視光線領域における反射スペクトルの隣り合う山と谷の反射率の差を小さくすることができるため、外観的に虹彩現象や視認角度による反射色変化を抑制した遮熱機能及び断熱機能に優れた透明遮熱断熱部材を提供できる。
図1は、本発明の透明遮熱断熱部材の一例を示す概略断面図である。 図2は、本発明の透明遮熱断熱部材の他の例を示す概略断面図である。 図3は、透明遮熱断熱部材の代表的な反射スペクトルを示す図である。
本発明の透明遮熱断熱部材は、透明基材と、上記透明基材の上に形成された機能層とを備えている。また、上記機能層は、上記透明基材側から赤外線反射層及び保護層をこの順に含み、上記保護層は、上記赤外線反射層側から中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順で含み、上記赤外線反射層は、金属酸化物層と金属層とを含み、上記中屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.45〜1.55であり、厚みが80〜200nmであり、上記高屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.65〜1.95であり、厚みが100〜350nmであり、上記低屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.30〜1.45であり、厚みが70〜150nmであることを特徴とする。
上記構成とすることにより、本発明の透明遮熱断熱部材は、外観的に虹彩現象が抑制され、視認角度による色変化が少ない(視野角依存性の低い)と共に、遮熱機能及び断熱機能に優れる。
以下、本発明の透明遮熱断熱部材を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の透明遮熱断熱部材の一例を示す概略断面図である。図1において、本発明の透明遮熱断熱部材10は、透明基材11と、赤外線反射層12と、中屈折率層13と、高屈折率層14と、低屈折率層15と、粘着剤層16とを備え、中屈折率層13と高屈折率層14と低屈折率層15とは保護層18を形成し、赤外線反射層12と保護層18とは機能層19を構成している。また、図2は、本発明の透明遮熱断熱部材の他の例を示す概略断面図である。図2において、本発明の透明遮熱断熱部材20は、透明基材11と、赤外線反射層12と、中屈折率層13と、高屈折率層14と、低屈折率層15と、コレステリック液晶ポリマー層17と、粘着剤層16とを備え、中屈折率層13と高屈折率層14と低屈折率層15とは保護層18を形成し、赤外線反射層12と保護層18とは機能層19を構成している。即ち、図2に示す透明遮熱断熱部材は、図1に示す透明遮熱断熱部材の透明基材11と粘着剤層16との間にコレステリック液晶ポリマー層17を更に備えるものである。
上記保護層は、赤外線反射層上に中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の順に構成されている。以下、各層について説明する。
<中屈折率層>
上記中屈折率層では、波長550nmの光の屈折率が1.45〜1.55の範囲に設定され、上記屈折率は1.43〜1.53の範囲であることがより好ましい。また、上記中屈折率層の厚みは、80〜200nmの範囲に設定され、上記厚みは90〜180nmの範囲であることがより好ましい。上記中屈折率層の厚みが80nmを下回ると赤外線反射層との密着性の低下につながるおそれがあり、上記厚みが200nmを超えると赤外線領域の光の吸収が大きくなるおそれがあるため好ましくない。
上記中屈折率層の屈折率が上記範囲内に設定できれば、上記中屈折率層の構成材料は限定されず、例えば、熱可塑性樹脂や、電離放射線硬化型樹脂が好適に用いられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂等を用いることができる。
また、上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、不飽和基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマー等を用いことができる。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサントリメタクリレート等のアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のポリウレタンポリアクリレート;ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とから生成されるエステル類;1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等のビニルベンゼン及びその誘導体等が挙げられ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電離放射線を照射して硬化させることで上記中屈折率層を形成できる。
上記中屈折率層の構成材料の中でも、赤外線反射層との密着性や、赤外線領域の光の吸収能が低い点から、ポリオレフィン樹脂が好ましく、特に、酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。上記中屈折率層を上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂で形成することにより、赤外線反射層との密着性をより向上できるからである。また、上記中屈折率層の密着性が低下しなければ、上記中屈折率層は、水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂から形成することもできる。
上記変性ポリオレフィン樹脂の骨格となるポリオレフィン樹脂としては特に限定はされないが、ポリプロピレンやポリプロピレン−α−オレフィン共重合体が好ましく用いられる。上記ポリプロピレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのうち1種又は数種を用いることができる。上記ポリプロピレン−α−オレフィン共重合体におけるポリプロピレンの比率は特に限定はされないが、有機溶剤に対する溶解性の観点から、50モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂としても、特に限定はされないが、例えば、上記ポリオレフィン樹脂にα,β−不飽和カルボン酸やその酸無水物の少なくとも1種をグラフト共重合することにより酸変性したものが使用できる。上記α,β−不飽和カルボン酸や酸無水物としては特に限定はされないが、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、アコニット酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アクリル酸等やその無水物が挙げられ、これらは単独で使用しても2つ以上を併用してもよい。これらの中でも、汎用性の点から、無水マレイン酸、無水イタコン酸の少なくも1種を上記ポリオレフィン樹脂にグラフト共重合して変性するのが好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸やその酸無水物のポリオレフィン樹脂に対するグラフト共重合の量は、0.2〜30質量%の範囲が好ましく、1.0〜10.0質量%の範囲がより好ましい。上記グラフト共重合の量が0.2質量%未満であると、有機溶媒に対する溶解性が低くなって、中屈折率塗料としての安定性が悪くなる恐れや、赤外線反射層との密着性が不十分となる恐れがあり、逆に、30質量%を超えると、赤外線領域波長の光の吸収が大きくなり始め、垂直放射率及び熱貫流率が増大する恐れがある。
上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂の製造は、溶融法又は溶液法等の公知の方法により行うことができる。
また、上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂は、(メタ)アクリル酸系モノマーを更に加えてアクリル変性することにより、極性溶媒に対する溶解性やハードコート剤等との密着性や相溶性をより向上させることもできる。これらは、具体的には、上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分と反応する官能基(水酸基やグリシジル基)を有する不飽和結合含有化合物を反応させ、二重結合を導入した後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することにより得ることができる。
上記官能基を有する不飽和結合含有化合物としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を用いることが好ましい。これらの不飽和結合含有化合物は、酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂に対して10〜90質量%程度用いることが好ましい。
このように、酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂に二重結合を導入した後に、グラフト共重合させる(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸系モノマーは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
また、上記水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂は、酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂に二重結合を導入した後に、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合させることにより得ることができる。
上記変性ポリオレフィン樹脂のGPC法で測定した重量平均分子量は、10,000〜200,000の範囲であることが好ましい。上記重量平均分子量が10 ,000 より小さいと、中屈折率層としての強度が劣る傾向にあり、上記重量平均分子量が200,000より大きいと中屈折率塗料の粘度の増加により作業性が低下する傾向にある。
上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂については、市販品を用いることができ、例えば、三井化学社製の“ユニストールP902”(商品名)、東洋紡社製の“ハードレン”(商品名)、日本製紙ケミカル社製の“アウローレン”(商品名)、三菱化学社製の“サーフレン”(商品名)、住化ケムテックス社製の“スミフィット”(商品名)、住友精化社製の“ザイクセン”(商品名)等が挙げられる。上記水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂についても、市販品を用いることができ、例えば、三井化学社製の“ユニストールP901”(商品名)、三菱化学社製の“ポリテール”(商品名)等が挙げられる。
<高屈折率層>
上記高屈折率層では、波長550nmの光の屈折率が1.65〜1.95の範囲に設定され、上記屈折率は1.70〜1.90の範囲であることがより好ましい。また、上記高屈折率層の厚みは、100〜350nmの範囲に設定され、上記厚みは120〜300nmの範囲であることが好ましい。上記高屈折率層の厚みが100nmを下回るとフィルム表面の耐擦傷性といった物理特性が低下する懸念があり、上記厚みが350nmを超えると、上記高屈折率層が無機微粒子を大量に含有する場合に赤外線領域での光の吸収が大きくなり、熱貫流率の低下をもたらす可能性があるため好ましくない。
上記高屈折率層の屈折率が上記範囲内に設定できれば、上記高屈折率層の構成材料は特に限定はされないが、耐擦傷性といった物理特性の面から、電離放射線硬化型樹脂と、上記電離放射線硬化型樹脂中に分散された無機微粒子とからなる材料が好ましい。上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、不飽和基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマー等を用いことができる。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサントリメタクリレート等のアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のポリウレタンポリアクリレート;ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とから生成されるエステル類;1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等のビニルベンゼン及びその誘導体等が挙げられ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電離放射線を照射することで硬化させることで上記高屈折率層を形成できる。
また、上記無機微粒子は、上記高屈折率層の屈折率を調整するために添加される。上記無機微粒子としては、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化イットリウム(Y23)、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン(Sb23)、酸化タンタル(Ta25)、酸化タングステン(WO3)等を使用できる。上記無機微粒子の中でも、少量添加で高屈折率化が可能な酸化チタン及び酸化ジルコニウムが好ましく、赤外線領域の光の吸収が少ない点で酸化チタンがより好ましい。
上記無機微粒子の粒子径としては、平均粒子径が5〜100nmの範囲であることが高屈折率層の透明性の観点から好ましく、10〜80nmの範囲であることがより好ましい。上記平均粒子径が100nmを超えると、高屈折率層を形成した際にヘイズ値の増大等が生じて透明性の低下が起きやすくなり、また、上記平均粒子径が5nmを下回ると、高屈折率塗料とした場合に無機微粒子の分散安定性を維持することが難しくなるためである。
<低屈折率層>
上記低屈折率層では、波長550nmの光の屈折率が1.30〜1.45の範囲に設定され、上記屈折率は1.35〜1.43の範囲であることがより好ましい。また、上記低屈折率層の厚みは、70〜150nmの範囲に設定され、上記厚みは80〜130nmの範囲であることが好ましい。上記低屈折率層の厚みが70〜150nmの範囲を外れると可視光線領域の反射スペクトルのリップルの大きさが大きくなり、虹彩模様が目立ちやすくなるだけでなく視野角によって反射色の変化が大きくなり、外観として問題となり得る可能性がある。
上記低屈折率層の屈折率が上記範囲内に設定できれば、上記低屈折率層の構成材料は特に限定はされないが、耐擦傷性といった物理特性の面から、電離放射線硬化型樹脂と低屈折率無機微粒子とからなる材料が好ましい。上記電離放射線硬化型樹脂については、前述の中屈折率層の構成材料として挙げた不飽和基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマー等を用いことができる。また、上記低屈折率無機微粒子としては、例えば、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム等を用いることができるが、フィルム表面の物理特性の観点から酸化ケイ素系材料、中でも低屈折率化を発現させるために内部に空隙を有する中空タイプの酸化ケイ素(中空シリカ)が特に好ましい。
<保護層>
上記中屈折率層、上記高屈折率層及び上記低屈折率層からなる上記保護層のトータル厚みは250〜700nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは300〜600nmの範囲である。上記トータル厚みが250nmを下回ると耐擦傷性や腐食性といった物理特性が低下する懸念があり、上記トータル厚みが700nmを超えると赤外線の吸収が大きくなり、断熱性の低下につながる可能性があり好ましくない。また、上記トータル厚みが上記範囲内であれば、JIS R3106に基づく機能層側の垂直放射率が0.2以下となり、断熱性能を十分に発現できる。
<赤外線反射層>
上記赤外線反射層は、導電性積層膜から構成されていることが好ましく、更に上記導電性積層膜は、可視光線領域の透過率を向上させる目的で、少なくとも上記透明基材側から金属酸化物層と、銀、銅、金、アルミニウム等の金属により形成される金属層と、上記金属酸化物層とをこの順に備えていることが好ましい。
上記金属酸化物層の構成材料としては、酸化インジウムスズ(屈折率n=1.92)、酸化インジウム酸化亜鉛(n=2.00)、酸化インジウム(n=2.00)、酸化チタン(n=2.50)、酸化スズ(n=2.00)、酸化亜鉛(n=2.03)、酸化ニオブ(n=2.30)、酸化アルミニウム(n=1.77)等の金属酸化物材料が適宜使用可能であり、これらの材料をスパッタリング法、蒸着法等のドライコーティング法により膜化することにより上記金属酸化物層を形成できる。上記金属酸化物層の一層当たりの厚さは、5〜30nmとすればよい。また、上記金属酸化物層の屈折率としては1.6以上が好ましく、より好ましくは1.7以上である。
また、上記金属層の構成材料としては、銀(n=0.12)、銅(n=0.95)、金(n=0.35)、アルミニウム(n=0.96)等の金属材料が適宜使用可能であり、中でも透明性の観点から銀が好ましい。また、腐食性の向上を目的にパラジウム、金、銅、アルミニウム、ビスマス、ニッケル、ニオブ、マグネシウム、亜鉛等を少なくとも1種又は2種以上含む合金として使用してもよい。これらの材料をスパッタリング法、蒸着法等のドライコーティング法により膜化することにより上記金属層を形成できる。上記金属層の一層当たりの厚さは、3〜15nmとすればよい。
また、上記赤外線反射層の波長5.5〜25.2μmの光の平均反射率は、80%以上に設定することが好ましく、より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは90%以上である。これにより、本発明の透明遮熱断熱部材に保護層を設けた場合でも垂直放射率が0.2以下になるよう調整でき、透明遮熱断熱部材に断熱機能を確実に付与できる。
<透明基材>
本発明の透明遮熱断熱部材を構成する透明基材としては、透光性を有する材料で形成されていれば特に限定されない。上記透明基材としては、例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、セルロース系樹脂(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、ノルボルネン系樹脂等の樹脂を、フィルム状又はシート状に加工したものを用いることができる。上記樹脂をフィルム状又はシート状に加工する方法としては、押し出し成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法、射出成形法、上記樹脂を溶剤に溶解させてキャスティングする方法等が挙げられる。上記樹脂には、酸化防止剤、難燃剤、耐熱防止剤、紫外線吸収剤、易滑剤、帯電防止剤等の添加剤を添加してもよい。上記透明基材の厚みは、例えば、10〜500μmであり、加工性、コスト面を考慮すると25〜125μmが好ましい。
<コレステリック液晶ポリマー層>
本発明の透明遮熱断熱部材は、その透明性を損なわなければ、上記赤外線反射層が形成されていない側の上記透明基材の上にコレステリック液晶ポリマー層を更に形成してもよい。これにより、本発明の透明遮熱断熱部材の遮熱機能をより向上させることができる。
上記コレステリック液晶ポリマー層は、重合性官能基を有する液晶化合物と、重合性官能基を有するキラル剤と、多官能アクリレート化合物とを含む材料を光重合して形成することができる。
コレステリック液晶ポリマーは、棒状分子であるネマチック液晶化合物に少量の光学活性化合物(キラル剤)を添加することにより得ることができる。このコレステリック液晶ポリマーは、ネマチック液晶化合物が幾重にも重なる層状の構造を有している。この層内では、それぞれのネマチック液晶化合物が一定方向に配列しており、互いの層は液晶化合物の配列方向が螺旋状になるように集積している。そのため、コレステリック液晶ポリマーは、この螺旋のピッチに応じて、特定の波長の光のみを選択的に反射することができる。
通常のコレステリック液晶ポリマーは、温度により螺旋のピッチが変わり、反射する光の波長が変わるという特徴がある。重合性官能基を有する液晶化合物と、重合性官能基を有するキラル剤とを含有する混合物を、液晶状態で均一にさせた後、液晶状態を保持したまま紫外線等の活性エネルギー線を照射すると、液晶化合物の配向状態を半永久的に固定化したコレステリック液晶ポリマーを含有する層を作製することが可能となる。
このようにして得られたコレステリック液晶ポリマー層は、温度によって反射する光の波長が変わることがなく半永久的に反射波長を固定化することが可能となる。また、このコレステリック液晶ポリマー層は、コレステリック液晶旋光性を有することから、円偏光の回転方向と波長が、液晶分子の回転方向と螺旋ピッチと等しい場合、その光を透過せずに反射する。通常、太陽光は、右螺旋と左螺旋の円偏光から合成されている。そのため、旋光性の向きが右螺旋のキラル剤を用いて特定の螺旋ピッチとしたコレステリック液晶ポリマー層と、旋光性の向きが左螺旋のキラル剤を用いて特定の螺旋ピッチとしたコレステリック液晶ポリマー層とを積層させることにより、選択反射波長での反射率をより高くすることができる。
上記コレステリック液晶ポリマー層の厚みは、入射光を最大反射させる波長(最大反射率波長)の1.5倍以上4.0倍以下が好ましく、最大反射率波長の1.7倍以上3.0倍以下がより好ましい。コレステリック液晶ポリマー層の厚みが最大反射率波長の1.5倍を下回ると、コレステリック液晶ポリマー層の配向性を維持することが困難になり、光反射率が低下することがある。また、コレステリック液晶ポリマー層の厚みが最大反射率波長の4.0倍を超えると、コレステリック液晶ポリマー層の配向性と光反射率は良好に維持できるが、厚みが厚くなり過ぎることがある。コレステリック液晶ポリマー層の厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下である。
また、上記コレステリック液晶ポリマー層は、単層構造に限らず、複数層構造であってもよい。複数層構造の場合、それぞれの層が、異なる選択反射波長を有すれば、光を反射する波長領域を広げることができ、好ましい。
以下、上記コレステリック液晶ポリマー層の形成材料について詳細に説明する。
[重合性官能基を有する液晶化合物]
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成には、重合性官能基を有する液晶化合物を用いる。上記液晶化合物としては、例えば、「液晶の基礎と応用」(松本正一、角田市良 共著;工業調査会)第8章に記載されているような公知の化合物を用いることができる。
上記液晶化合物の具体例としては、例えば、特開2012−6997号公報、特開2012−168514号公報、特開2008−217001号公報、国際公開WO95/22586号パンフレット、特開2000−281629号公報、特開2001−233837号公報、特表2001−519317号公報、特表2002−533742号公報、特開2002−308832号公報、特開2002−265421号公報、特開2005−309255号公報、特開2005−263789号公報、特開2008−291218号公報、特開2008−242349号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成に用いられる液晶化合物は、一種類を単独で用いてもよいし、単独で用いた場合に、コレステリック液晶ポリマー層の配向が乱れやすいのであれば、高融点液晶化合物と低融点液晶化合物とを併用してもよい。この場合、高融点液晶化合物の融点と低融点液晶化合物の融点との差が、15℃以上30℃以下であることが好ましく、20℃以上30℃以下がより好ましい。
上記液晶化合物について、高融点液晶化合物と低融点液晶化合物とを併用する場合、高融点液晶化合物の融点は、透明基材のガラス転移温度以上であることが好ましい。上記液晶化合物の融点が低い場合、キラル剤や溶剤との相溶性や溶解性に優れるが、融点が低すぎると作製した透明遮熱断熱部材の耐熱性に劣る。そのため、少なくとも高融点液晶化合物の融点を透明基材のガラス転移温度以上とするのがよい。
上記高融点液晶化合物と上記低融点液晶化合物との組合せとしては、市販品を用いることができ、例えば、ADEKA社製の“PLC7700”(商品名、融点90℃)と“PLC8100”(商品名、融点65℃)との組合せ、上記“PLC7700”(融点90℃)と“PLC7500”(商品名、融点65℃)との組合せ、DIC社製の“UCL−017A”(商品名、融点96℃)と“UCL−017”(商品名、融点70℃)との組合せ等が挙げられる。
上記重合性官能基を有する液晶化合物を三種類以上用いる場合は、それらの中で、最大の融点を有するものを高融点液晶化合物とし、最小の融点を有するものを低融点液晶化合物とする。
上記重合性官能基を有する液晶化合物を二種以上併用する場合は、上記高融点液晶化合物を全体の質量割合で90質量%以下の範囲で含むことが好ましい。上記高融点液晶化合物の割合が90質量%を超えると、上記液晶化合物の相溶性が低下する傾向があり、その結果、コレステリック液晶ポリマー層の配向性が一部乱れることにより、ヘーズの上昇が生じる場合がある。
[重合性官能基を有するキラル剤]
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成に用いられる重合性官能基を有するキラル剤としては、上記液晶化合物との相溶性が良好で、且つ、溶剤に溶解可能なものであれば、特に構造についての制限はなく、従来の重合性官能基を有するキラル剤を用いることができる。
上記キラル剤の具体例としては、例えば、国際公開WO98/00428号パンフレット、特表平9−506088号公報、特表平10−509726号公報、特開2000−44451号公報、特表2000−506873号公報、特開2003−66214号公報、特開2003−313187号公報、米国特許第6468444号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。また、このようなキラル剤としては、市販品を用いることができ、例えば、メルク社製の“S101”、“R811”、“CB15”(商品名);BASF社製の“PALIOCOLOR LC756”(商品名);ADEKA社製の“CNL715”、“CNL716”(商品名)等が挙げられる。
上記コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長は、螺旋ピッチを調整することにより制御することができる。この螺旋ピッチは、上記液晶化合物及び上記キラル剤の配合量を調整することにより、制御することができる。例えば、上記キラル剤の濃度が高い場合、螺旋の捻じり力が増加するため、螺旋のピッチは小さくなり、コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長λは短波長側へシフトする。また、上記キラル剤の濃度が低い場合、螺旋の捻じり力が低下するため、螺旋のピッチは大きくなり、コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長λは長波長側へシフトする。よって、上記キラル剤の配合量としては、上記液晶化合物と上記キラル剤との合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上7.0質量部以下がより好ましい。上記キラル剤の配合量が0.1質量部以上10質量部以下であれば、得られるコレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長を近赤外線領域に制御することができる。
上記のようにキラル剤の配合量を調整することにより、コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長を制御することができる。この選択反射波長を近赤外線領域に制御すれば、可視光領域に実質的に吸収がなく、即ち、可視光領域で透明で、且つ近赤外線領域の光を選択的に反射可能な透明遮熱断熱部材を得ることができる。例えば、上記透明遮熱断熱部材の最大反射率波長を800nm以上とすることができる。
[多官能アクリレート化合物]
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成に用いられる上記多官能アクリレート化合物としては、上記液晶化合物及び上記キラル剤との相溶性が良好で、コレステリック液晶ポリマー層の配向性を乱さないものであれば、適宜使用可能である。
上記多官能アクリレート化合物は、重合性官能基を有する液晶化合物と重合性官能基を有するキラル剤との硬化性を向上させるために用いられるが、コレステリック液晶ポリマー層の配向性が乱れない量で添加される。具体的には、多官能アクリレート化合物の含有量は、上記液晶化合物と上記キラル剤との合計100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下であればよいが、好ましくは1質量部以上3質量部以下である。
<粘着剤層>
本発明の透明遮熱断熱部材は、上記保護層の反対側に粘着剤層を配置することが好ましい。これにより、本発明の透明遮熱断熱部材をガラス基板等に容易に貼り付けることができる。上記粘着剤層の材料としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系等の樹脂を使用できる。また、上記粘着剤層の厚さは、10〜100μmとすればよいが、より好ましくは15〜50μmである。
<透明遮熱断熱部材>
本発明の透明遮熱断熱部材は、JIS A5759に準拠する1000時間の耐候性試験を行っても、上記保護層が、JIS D0202−1998に準拠する碁盤目密着性試験において剥離が認められない。
また、本発明の透明遮熱断熱部材は、上記透明基材側に配置した粘着剤層をガラス基板に貼り合わせた場合において、上記ガラス基板とは反対側から光を照射して測定した際の波長5.5〜25.2μmの光の平均反射率を70%以上とできる。
また、本発明の透明遮熱断熱部材は、上記赤外線反射層により断熱機能及び遮熱機能を発揮でき、また、上記保護層により耐擦傷性を向上できる。更に、本発明の透明遮熱断熱部材は、上記コレステリック液晶ポリマー層を配置することで、遮熱機能をより向上できる。
本発明の透明遮熱断熱部材は、フィルム状又はシート状の形態でガラス基板等に貼り合わせて用いることができるが、他の形態で用いてもよい。
次に、本発明の透明遮熱断熱部材の製造方法の一例を図1を参照しながら説明する。
先ず、透明基材11の一方の面に赤外線反射層12を形成する。赤外線反射層12は、例えば、導電性材料をスパッタリングする方法等で形成できるが、他の方法によって形成してもよい。赤外線反射層12は、高屈折率導電層と、低屈折率導電層と、高屈折率導電層との三層構造とするのが、遮熱・断熱機能の点で好ましい。
次に、赤外線反射層12の上に、中屈折率層13を形成する。続いて、中屈折率層13の上に、高屈折率層14を形成する。更に、高屈折率層14の上に低屈折率層15を形成する。これらの各層は、ウェットコーティング法にて形成できる。これにより、赤外線反射層12を室内側に配置しても、窓拭き等により赤外線反射層12が損傷することが防止でき、且つ、外観的にも虹彩現象や視認角度による反射色の変化といった角度依存性を抑制することができる。
最後に、透明基材11の他方の面に粘着剤層16を形成する。粘着剤層16を形成する方法も特に制限されず、透明基材11の外面に、粘着剤を直接塗布してもよいし、別途用意した粘着剤シートを貼り合わせてもよい。
以上の工程により、本発明の透明遮熱断熱部材の一例が得られ、その後に必要に応じてガラス基板等に貼り合わせて用いられる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
(屈折率の測定)
以下の実施例・比較例にて記載した中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の屈折率については、下記に示す方法にて測定した。
片面を易接着処理した東洋紡社製のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム“A4100”(商品名、厚み:50μm)の易接着層処理がされていない面に、各層形成用塗料を厚みが500nmとなるように塗布し、乾燥させて屈折率測定用フィルムサンプルを作製する。また、各層形成用塗料に紫外線硬化型塗料を用いる場合には、乾燥させた後に、更に高圧水銀灯にて300mJ/cm2の光量の紫外線を照射して硬化させ、屈折率測定用フィルムサンプルを作製する。
作製した屈折率測定用サンプルの塗布裏面側に黒色テープを貼り、反射分光膜厚計“FE−3000”(大塚電子社製)にて反射スペクトルを測定し、測定した反射スペクトルに基づき、n−Cauchyの式からフィッティングを行い、各層の波長550nmの光の屈折率を求めた。
(膜厚の測定)
以下の実施例・比較例にて記載した中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の膜厚については、透明基材の赤外線反射層及び保護層が形成されていない面側に黒色テープを貼り、瞬間マルチ測光システム“MCPD−3000”(大塚電子社製)により、各層ごとに反射スペクトルを測定し、得られた反射スペクトルから、上記屈折率の測定により求めた屈折率を用いて、最適化法によるフィッティングを行い各層の膜厚を求めた。
(実施例1)
<赤外線反射層付き透明基材の作製>
先ず、透明基材として前述のPETフィルム“A4100”を用い、上記PETフィルムの易接着処理面側に、厚さ30nmのITO(酸化インジウムスズ)層、厚さ12nmの銀層、厚さ30nmのITO層からなる三層構造の導電性積層膜(赤外線反射層)をスパッタリングにより形成し、赤外線反射層付き透明基材を作製した。上記赤外線反射層付き透明基材の赤外線反射層側の反射スペクトルを参考例として図3に示す。図3から、参考例の反射スペクトルには、山と谷の大きなうねり(リップル)は認められないことが分かる。
<中屈折率層の形成>
東洋紡社製の変性ポリオレフィン樹脂溶液“ハードレンNS−2002”(商品名、酸変性タイプ、固形分濃度20質量%、屈折率1.51)10部と、希釈溶剤としてメチルシクロヘキサン80部及びメチルイソブチルケトン20部とをディスパーにて混合し、中屈折率塗料Aを作製した。次に、上記中屈折率塗料Aを、マイクログラビアコータ(廉井精機社製)を用いて上記赤外線反射層の上に乾燥後の厚さが130nmになるよう塗工し、乾燥することにより、上記赤外線反射層の上に厚さ130nmの中屈折率層を形成した。
<高屈折率層>
石原産業社製の酸化チタン超微粒子“TTO−55(A)”(商品名)30部と、共栄社化学社製のジメチルアミノエチルメタクリレート“ライトエステルDM”(商品名)1部と、日本化薬社製のリン酸基含有メタクリレート“KAYAMER PM−21”(商品名)4部と、シクロヘキサノン65部とを混合して混合液を調製した。この混合液に直径0.3mmのジルコニアビーズを加えて、ペイントコンディショナー(東洋精機社製)を用いて分散処理し、酸化チタン超微粒子分散体を調製した。この酸化チタン超微粒子分散体に、日本化薬社製のウレタン変性アクリレート系樹脂“DPHA−40H”(商品名)15部と、BASF社製の光重合開始剤“イルガキュア184”(商品名)1部と、メチルイソブチルケトン600部とを添加して高屈折率塗料Aを作製した。作製した高屈折率塗料Aの屈折率を前述の方法で測定したところ1.80であった。
次に、上記高屈折率塗料Aを、上記マイクログラビアコータを用いて上記中屈折率層の上に乾燥後の厚さが300nmになるよう塗工し、乾燥させた後、高圧水銀灯にて300mJ/cm2の光量の紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ300nmの高屈折率層を形成した。
<低屈折率層>
日揮触媒化成社製の中空シリカ含有低屈折率塗料“ELCOM P−5062”(商品名、固形分濃度3質量%、屈折率1.38)を低屈折率塗料Aとして用い、上記低屈折率塗料Aを、上記マイクログラビアコータを用いて上記高屈折率層の上に乾燥後の厚さが100nmになるよう塗工し、乾燥させた後、高圧水銀灯にて300mJ/cm2の光量の紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ100nmの低屈折率層を形成した。
以上のようにして、保護層付き赤外線反射フィルム(透明遮熱断熱部材)を作製した。上記保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側の反射スペクトルを実施例1として図3に示す。図3から、実施例1の可視光線領域の反射スペクトルには、山と谷の大きなうねり(リップル)はほとんど認められないことが分かる。
<粘着剤層の形成>
先ず、片面がシリコーン処理された中本パックス社製のPETフィルム“NS−38+A”(商品名、厚さ:38μm)を用意した。また、綜研化学社製のアクリル系粘着剤“SKダイン2094”(商品名、固形分:25質量%)100部に対して、和光純薬社製の紫外線吸収剤(ベンゾフェノン)1.25部及び綜研化学社製の架橋剤“E−AX”(商品名、固形分:5%)0.27部を添加し、ディスパーにて混合して粘着剤塗料を調製した。
次に、上記PETフィルムのシリコーン処理された側の面上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように上記粘着剤塗料を塗布し、乾燥させた後に粘着剤層を形成した。更に、この粘着剤層の上面に、上記保護層付き赤外線反射フィルムの赤外線反射層が形成されていない側を貼り合わせて、粘着剤層付き赤外線反射フィルムを作製した。
<ガラス基板との貼り合わせ>
先ず、ガラス基板として、厚さ3mmのフロートガラス(日本板硝子社製)を用意した。次に、上記粘着剤層付き赤外線反射フィルムからPETフィルムを剥離して、上記粘着剤層付き赤外線反射フィルムの粘着剤層側を上記フロートガラスに貼り合せた。
(実施例2)
堺化学社製の酸化ジルコニウム分散液“SZR−K”(商品名、固形分濃度:30質量%)100部と、日本化薬社製のウレタン変性アクリレート系樹脂“DPHA−40H”(商品名)7.5部と、BASF社製の光重合開始剤“イルガキュア184”(商品名)0.3部とを、ディスパーにて混合して高屈折率塗料Bを作製した。作製した高屈折率塗料Bの屈折率を前述の方法で測定したところ1.74であった。次に、上記高屈折率塗料Bを用いた以外は、実施例1と同様にして保護層付赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(実施例3)
実施例1の高屈折率塗料Aにおいて、ウレタン変性アクリレート系樹脂“DPHA−40H”の添加量を7.5部に変更した以外は実施例1と同様にして、高屈折率塗料Cを作製した。作製した高屈折率塗料Cの屈折率を前述の方法で測定したところ1.90であった。次に、上記高屈折率塗料Cを用いた以外は、実施例1と同様にして保護層付赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(実施例4)
表面がアクリル基で修飾されたシーアイ化成社製のフッ化マグネシウムスラリー“MFDNB15WT%−G37”(商品名)40部と、共栄社化学社製のペンタエリスリトールトリアクリレート“PE−3A”(商品名)10部と、ダイキン工業社製の光硬化性フッ素樹脂“AR−100”(商品名)50部と、BASF社製の光重合開始剤“イルガキュア907”(商品名)5部と、メチルイソブチルケトン1330部とをディスパーにて混合して低屈折率塗料Bを作製した。作製した低屈折率塗料Bの屈折率を前述の方法で測定したところ1.40であった。次に、上記低屈折率塗料Bを使用した以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(実施例5)
共栄社化学社製のペンタエリスリトールトリアクリレート“PE−3A”(商品名)9.5部と、日本化薬社製のリン酸基含有メタクリレート“KAYAMER PM−21”(商品名)0.5部と、BASF社製の光重合開始剤“イルガキュア184”(商品名)0.3部と、メチルイソブチルケトン490部とをディスパーにて混合して、中屈折率塗料Bを作製した。作製した中屈折率塗料Bの屈折率を前述の方法で測定したところ1.50であった。
次に、上記中屈折率塗料Bを、上記マイクログラビアコータを用いて、実施例1と同様にして作製した赤外線反射層の上に乾燥後の厚さが130nmになるよう塗工し、乾燥させた後、高圧水銀灯にて300mJ/cm2の光量の紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ130nmの中屈折率層を形成した。上記のように中屈折率層を形成した以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(実施例6)
中屈折率層の厚みを80nmとし、高屈折率層の厚みを100nmとした以外は、実施例1と同様にして保護層付赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(実施例7)
高屈折率層の厚みを210nmとし、低屈折率層の厚みを150nmとした以外は、実施例1と同様にして保護層付赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(実施例8)
中屈折率層の厚みを80nmとし、低屈折率層の厚みを120nmとした以外は、実施例1と同様にして保護層付赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(実施例9)
実施例1の保護層形成後に透明基材の保護層とは反対面側(PETフィルムの易接着未処理面側)に下記のとおりコレステリック液晶ポリマー層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
<コレステリック液晶ポリマー層の形成>
下記材料を攪拌して混合し、コレステリック液晶ポリマー塗料を調製した。
(1)重合性官能基を有する液晶化合物I(ADEKA社製、高融点液晶化合物、商品名“PLC−7700”、融点:90℃):86.4部
(2)重合性官能基を有する液晶化合物II(ADEKA社製、低融点液晶化合物、商品名“PLC−8100”、融点:65℃):9.6部
(3)キラル剤(ADEKA社製、右旋光性キラル剤、商品名“CNL−715”):4.0部
(4)多官能アクリレート化合物(共栄社化学製、商品名“ライトアクリレートPE−3A”):1.5部
(5)光重合開始剤(BASF社製、商品名“イルガキュア819”):3.0部
(6)溶剤(シクロヘキサノン):464部
上記コレステリック液晶ポリマー塗料を、マイクログラビアコータを用いて、実施例1で作製した保護層付き赤外線反射フィルムの赤外線反射層が形成されていない面上に塗布し、100℃で乾燥させて塗膜を形成した。その塗膜に高圧水銀灯にて300mJ/cm2の光量の紫外線を照射して硬化させることにより、右旋向性コレステリック液晶ポリマー層(厚さ:3μm)を形成した。この右旋向性コレステリック液晶ポリマー層の中心反射波長は890nmであった。
(実施例10)
透明基材として前述のPETフィルム“A4100”を用い、上記PETフィルムの易接着処理面側に、厚さ30nmのZnO(酸化亜鉛)層、厚さ12nmの銀層、厚さ30nmのZnO層からなる三層構造の導電性積層膜(赤外線反射層)をスパッタリングにより形成し、赤外線反射層付き透明基材を作製した以外は、実施例1と同様にして保護層付赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(比較例1)
実施例1と同様にして中屈折率塗料Aを用いて厚み130nmの第1中屈折率層を形成した。次に、実施例2で用いたウレタン変性アクリレート樹脂“DPHA−40H”20部と、実施例2で用いた光重合開始剤“イルガキュア184”0.4部と、メチルイソブチルケトン80部とを、ディスパーにて混合して中屈折率塗料Cを作製した。作製した中屈折率塗料Cの屈折率を前述の方法で測定したところ1.52であった。その後、上記第1中屈折率層の上に上記中屈折率塗料Cを乾燥後の厚さが0.7μmになるよう塗工し、乾燥させた後、高圧水銀灯にて300mJ/cm2の光量の紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ0.7μmの第2中屈折率層を形成した。上記のように第1中屈折率層及び第2屈折率層を形成した以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
また、上記保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側の反射スペクトルを比較例1として図3に示す。図3から、比較例1の可視光線領域の反射スペクトルには、山と谷の大きなうねり(リップル)が認められることが分かる。
(比較例2)
中屈折率層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(比較例3)
高屈折率層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして保護層付赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(比較例4)
赤外線反射層の上に、実施例1と同様にして高屈折率塗料Aを用いて厚み300nmの高屈折率層を形成し、上記高屈折率層の上に、実施例1と同様にして中屈折率塗料Aを用いて厚み130nmの中屈折率層を形成し、上記中屈折率層の上に、実施例1と同様にして低屈折率塗料Aを用いて厚み100nmの低屈折率層を形成した以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(比較例5)
赤外線反射層の上に、実施例1と同様にして中屈折率塗料Aを用いて厚み130nmの中屈折率層を形成し、上記中屈折率層の上に、実施例1と同様にして低屈折率塗料Aを用いて厚み100nmの低屈折率層を形成し、上記低屈折率層の上に、実施例1と同様にして高屈折率塗料Aを用いて厚み300nmの高屈折率層を形成した以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
<透明遮熱断熱部材の評価>
上記実施例1〜10及び上記比較例1〜5に関して、ガラス基板に貼り付けた状態での保護層付き赤外線反射フィルムの可視光線透過率、ヘーズ、垂直放射率、遮蔽係数、熱貫流率を以下のように測定し、また、保護層の初期密着性、耐候性試験後の密着性及び耐擦傷性を評価し、更に保護層付き赤外線反射フィルムの外観として虹彩性及び角度依存性を観察した。
[可視光線透過率]
ガラス基板側を入射光側として、380〜780nmの範囲において日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計“Ubest V−570型”(商品名)を用いて分光透過率を測定し、JIS A5759に基づき、ガラス基板に貼り付けた状態での可視光線透過率を算出した。
[ヘーズ]
ガラス基板側を入射光側として、日本電色社製のヘーズメーター“NDH−2000”(商品名)を用いて、JIS K7136に基づきヘーズ値を測定した。
[垂直放射率]
島津製作所製の赤外分光光度計“IR Prestige21”(商品名)に正反射測定用アタッチメントを取り付け、保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側について分光反射率を5〜25.2μmの範囲において測定し、JIS R3106に基づき垂直放射率を求めた。
[遮蔽係数]
ガラス基板側を入射光側として、300〜2500nmの範囲において上記紫外可視近赤外分光光度計“Ubest V−570型”を用いて分光透過率及び分光反射率を測定し、これに基づきJIS A5759に準拠して日射透過率及び日射反射率を求め、JIS R3106に準拠して垂直放射率を求め、その日射透過率、日射反射率及び垂直放射率の値からガラス基板に貼り付けた状態での保護層付き赤外線反射フィルムの遮蔽係数を求めた。
[熱貫流率]
上記赤外分光光度計“IR Prestige21”に正反射測定用アタッチメントを取り付け、保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側及びガラス基板側の分光反射率を5〜25.2μmの範囲において測定し、これに基づきJIS R3106に準拠して保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側及びガラス基板側の垂直放射率を求め、これに基づきJIS A5759に準拠して保護層付き赤外線反射フィルムの熱貫流率を求めた。
[初期密着性]
保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側についてJIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。具体的にはニチバン社製のセロハンテープ“CT24”(商品名)を用い、指の腹で上記保護層に密着させた後に剥離して密着性を評価した。その評価は100個のマスの内、剥離しないマス目の数で表し、保護層が全く剥離しない場合を100/100、保護層が完全に剥離する場合を0/100として表した。
[耐候性試験後の密着性]
保護層付き赤外線反射フィルムについて、JIS A5759に準拠して1000時間サンシャインカーボンアーク灯を照射する耐候性試験を行った後、上記初期密着性と同様にして密着性を評価した。
[耐擦傷性]
保護層付き赤外線反射フィルムの保護層上にボンスター社製のスチールウール(#0000)を配置し、250g/cm2の荷重をかけた状態で、スチールウールを10往復させた後、保護層の表面の状態を目視にて観察して、以下の3段階で評価した。
A:傷が全くつかなかった場合
B:傷が数本(5本以下)確認された場合
C:傷が多数確認された場合
[外観(虹彩性)]
保護層付き赤外線反射フィルムの外観について保護層側から3波長蛍光灯下で目視にて観察し、以下の3段階で評価した。
A:虹彩模様がほとんど確認されず、角度を変えて観察しても反射色の変化がほとんど見られない場合
B:虹彩模様がわずかに確認でき、角度を変えて観察するとわずかに反射色の変化が見える場合
C:虹彩模様が明らかに確認でき、角度を変えて観察すると明らかに反射色が変化して見える場合
[外観(角度依存性)]
保護層付赤外線反射フィルムの外観について保護層側から3波長蛍光灯下にて目視にて観察し、正面から確認した際と観察する角度を変えて確認した際の反射色の状態を以下の3段階で評価した。
A:正面から観察した際と角度を変えて観察した際の反射色の違いが色変化としてほとんど見られない場合
B:正面から観察した際と角度を変えて観察した際の反射色の違いが色変化としてわずかに感じられる場合
C:正面から観察した際と角度を変えて観察した際の反射色の違いが色変化として明らかに確認できる場合
以上の結果を、透明遮熱断熱部材の層構成と共に表1〜3に示す。
表1〜表3に示すように、実施例1〜3及び7〜10の透明遮熱断熱部材は、可視光線領域における反射スペクトルの隣り合う山と谷の反射率の差が小さいため、虹彩現象や視認角度による反射色変化等の外観性について優れており、また、遮蔽係数及び熱貫流率も低く夏場の遮熱性、冬場の断熱性とが共に優れ、且つ保護層の密着性及び耐擦傷性にも優れていることが分かる。更に、コレステリック液晶ポリマー層を設けた実施例9では、遮蔽係数及び可視光線透過率がコレステリック液晶ポリマー層を設けていない実施例1よりも優れていた。実施例4については、低屈折率層をシリカ系の材料を含まない塗料を用いて形成したため、若干耐擦傷性が劣る結果となった。また、実施例5については、中屈折率層を電離放射線硬化型樹脂を用いて形成したため、耐候性試験後の密着性がやや劣る結果となった。また、実施例6については、保護層のトータル厚みが300nmを下回る280nmであり、若干耐擦傷性が劣る結果となった。
一方、比較例1では、保護層として、高屈折率層及び低屈折率層を設けず、第1中屈折率層上に一般的なアクリル系樹脂からなる第2中屈折率層を積層したため、可視光線領域における反射スペクトルの隣り合う山と谷の反射率の差が大きくなり、得られたフィルムの外観として、虹彩模様が明らかに観察され、反射光の角度を変えて観察すると、反射色として赤と緑が変化して確認できる状態であり外観性が低下した。
また、比較例2では中屈折率層を設けなかったため、若干外観性が悪化し、赤外線反射層と保護層との密着性も低下し、一部剥離が見られた。比較例3では高屈折率層を設けなかったため、保護層の強度が低下し耐擦傷性の低下が確認された。比較例4では赤外線反射層上に高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層の順に保護層を形成したため、得られたフィルムの外観として、虹彩模様が明らかに観察され、また、反射光の角度を変えて観察すると、反射色の違いが明らかに色変化として認識できるレベルであり、赤外線反射層と保護層との密着性も低下した。比較例5では赤外線反射層上に中屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の順に保護層を形成したため、得られたフィルムの外観として、虹彩模様が明らかに観察され、また、反射光の角度を変えて観察すると、反射色の違いが明らかに色変化として認識できるレベルであった。
本発明は、高い断熱性を維持したまま、保護層の耐擦傷性及び密着性に優れ、且つ、外観としても虹彩模様や視認角度による反射色変化の小さい遮熱機能及び断熱機能に優れた透明遮熱断熱部材を提供できる。
10、20 透明遮熱断熱部材
11 透明基材
12 赤外線反射層
13 中屈折率層
14 高屈折率層
15 低屈折率層
16 粘着剤層
17 コレステリック液晶ポリマー層
18 保護層
19 機能層

Claims (9)

  1. 透明基材と、前記透明基材の上に形成された機能層とを含む透明遮熱断熱部材であって、
    前記機能層は、前記透明基材側から赤外線反射層及び保護層をこの順に含み、
    前記保護層は、前記赤外線反射層側から中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順で含み、
    前記赤外線反射層は、金属酸化物層と金属層とを含み、
    前記中屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.45〜1.55であり、厚みが80〜200nmであり、
    前記高屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.65〜1.95であり、厚みが100〜350nmであり、
    前記低屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.30〜1.45であり、厚みが70〜150nmであり、
    前記機能層側のJIS R3106に基づく垂直放射率が、0.2以下であることを特徴とする透明遮熱断熱部材。
  2. 前記高屈折率層が、樹脂と無機微粒子とからなる請求項1に記載の透明遮熱断熱部材。
  3. 前記低屈折率層が、樹脂と無機微粒子とからなり、前記無機微粒子が中空シリカを含む請求項1又は2に記載の透明遮熱断熱部材。
  4. 前記中屈折率層が、酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
  5. 前記赤外線反射層は、金属酸化物層と、金属層と、金属酸化物層とをこの順に含む導電性積層膜からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
  6. JIS A5759に準拠する1000時間の耐候性試験の後において、前記保護層が、JIS D0202−1998に準拠する碁盤目密着性試験において剥離がない請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
  7. 前記赤外線反射層が形成されていない側の前記透明基材の上にコレステリック液晶ポリマー層が更に形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
  8. 前記コレステリック液晶ポリマー層は、重合性官能基を有する液晶化合物と、重合性官能基を有するキラル剤と、多官能アクリレート化合物とを含む材料を光重合させて形成されたものである請求項7に記載の透明遮熱断熱部材。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材の製造方法であって、
    透明基材の上に赤外線反射層を形成する工程と、
    前記赤外線反射層の上に、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順にウェットコーティング法にて形成する工程とを含むことを特徴とする透明遮熱断熱部材の製造方法。
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