JP2019193243A - 水晶振動子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】CI改善が図れる新規な構造を持つ水晶振動子を提供する。【解決手段】水晶振動子は、ATカット水晶片10を具える。この水晶片は、平面形状が長方形状で一部分が厚肉部とされている。この水晶片は、その短辺の中央付近で長辺方向に沿って切った断面を見たとき、一方の短辺側から、第1端部10a、凹部10b、厚肉部10c及び第2端部10dをこの順に具える。凹部は、厚肉部から第1端部側に所定角度θaで下っていてその後登って第1端部と接続している凹部である。厚肉部の第1端部側の肩から第1端部の先端までの寸法Lは、L=λ(n/4±0.25 )となっている。nは奇数、λは当該水晶振動子のX軸方向に伝搬する屈曲振動の波長である。【選択図】図1
Description
本発明は、ATカット水晶片を用いた水晶振動子およびその製造方法に関する。
ATカット水晶振動子の小型化が進むに従い、機械式加工による製造方法では、水晶振動子用の水晶片の製造が困難になっている。そのため、フォトリソグラフィ技術及びウエットエッチング技術を用いて製造されるATカット水晶片が開発されている。
例えば特許文献1には、上述の技術により製造されたATカット水晶片を用いた水晶振動子が開示されている。具体的には、特許文献1の段落0053及び図6には、水晶のX軸と交差する側面(X面)のうち、+X側の側面が6つの面で構成され、−X側の側面が2つの面で構成され、かつ、当該水晶振動子の一部分が厚肉部(メサ状)とされた水晶振動子が開示されている。この水晶振動子によれば、CI(クリスタルインピーダンス)値が低い、周波数温度特性が改善された水晶振動子が実現できるという(特許文献1の段落0008)。
特許文献1の水晶振動子は、厚肉部と、この厚肉部両側に接続している傾斜部と、これら傾斜部に接続している薄肉部と、を具えたメサ構造のものである。傾斜部は、+X側の傾斜部(特許文献1の図6(b)の結晶面133)と、−X側の傾斜部(同図の傾斜面23)と2つある。
そして、+X側の傾斜部の傾斜面と、肉厚部の主面の法線との成す角度は、約27°と記載されている(特許文献1の段落57第4〜5行)。従って、+X側の傾斜部は薄肉部に向かって約63°の角度で傾斜している。また、−X側の傾斜部の結晶面と、肉厚部の主面の法線との成す角度は、約55°と記載されている(特許文献1の段落55第2〜3行)。従って、−X側の傾斜部は薄肉部に向かって約35°の角度で傾斜している。また、特許文献1の場合、その図8に記載されているように、厚肉部を形成する専用の耐エッチング性マスクを用いている。
この従来技術に対し、厚肉部と薄肉部との接続部分の他の好ましい構造が望まれる。また、厚肉部を形成する専用の耐エッチング性マスクを省略できる製法が望まれる。
この出願はこのような点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的はCI改善が図れる新規なメサ構造を持つ水晶振動子とその製造に好適な方法を提供することにある。
そして、+X側の傾斜部の傾斜面と、肉厚部の主面の法線との成す角度は、約27°と記載されている(特許文献1の段落57第4〜5行)。従って、+X側の傾斜部は薄肉部に向かって約63°の角度で傾斜している。また、−X側の傾斜部の結晶面と、肉厚部の主面の法線との成す角度は、約55°と記載されている(特許文献1の段落55第2〜3行)。従って、−X側の傾斜部は薄肉部に向かって約35°の角度で傾斜している。また、特許文献1の場合、その図8に記載されているように、厚肉部を形成する専用の耐エッチング性マスクを用いている。
この従来技術に対し、厚肉部と薄肉部との接続部分の他の好ましい構造が望まれる。また、厚肉部を形成する専用の耐エッチング性マスクを省略できる製法が望まれる。
この出願はこのような点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的はCI改善が図れる新規なメサ構造を持つ水晶振動子とその製造に好適な方法を提供することにある。
この目的の達成を図るため、この出願の水晶振動子の発明によれば、平面形状が長方形状で一部分が厚肉部となっているATカット水晶片を具える水晶振動子において、
前記水晶片は、その短辺の中央付近で長辺方向に沿って切った断面を見たとき、一方の短辺側から、第1端部、凹部、厚肉部及び第2端部をこの順に具え、
前記凹部は、前記厚肉部から第1端部側に所定角度θaで下っていてその後登って前記第1端部と接続している凹部であることを特徴とする。
前記水晶片は、その短辺の中央付近で長辺方向に沿って切った断面を見たとき、一方の短辺側から、第1端部、凹部、厚肉部及び第2端部をこの順に具え、
前記凹部は、前記厚肉部から第1端部側に所定角度θaで下っていてその後登って前記第1端部と接続している凹部であることを特徴とする。
また、この出願の水晶振動子の製造方法の発明によれば、平面形状が長方形状で一部分が厚肉部となっているATカット水晶片を具える水晶振動子であって、
前記水晶片は、その短辺の中央付近で長辺方向に沿って切った断面を見たとき、一方の短辺側から、第1端部、凹部、厚肉部及び第2端部をこの順に具え、
前記凹部は、前記厚肉部から第1端部側に所定角度θaで下っていてその後登って前記第1端部と接続している凹部である水晶振動子を製造するに当たり、
前記水晶片を多数製造するための水晶ウエハを用意する工程と、
前記水晶ウエハの表裏に、前記水晶片の外形を形成するための耐ウエットエッチング性マスクであって、前記凹部と対応する領域内の一部には、前記水晶ウエハを貫通しないが、前記水晶ウエハを所望量エッチングできる程度にウエットエッチング液が侵入できる開口を持つ耐ウエットエッチング性マスクを形成する工程と、
前記耐ウエットエッチング性マスクを形成した水晶ウエハを、ウエットエッチング液に所定時間浸漬する工程と、
を含むことを特徴とする。
なお、この出願でいう水晶振動子とは、一般的な水晶振動子、発振回路と共にパッケージに実装されて水晶発振器を構成する水晶振動子、及び、サーミスタやPNダイオード等の各種の温度センサ付きの水晶振動子等も含む。
また、この出願でいう平面形状が長方形状とは、長方形の角部がR状になっている等のこの発明の目的を損ねない範囲での略長方形状も含む。
前記水晶片は、その短辺の中央付近で長辺方向に沿って切った断面を見たとき、一方の短辺側から、第1端部、凹部、厚肉部及び第2端部をこの順に具え、
前記凹部は、前記厚肉部から第1端部側に所定角度θaで下っていてその後登って前記第1端部と接続している凹部である水晶振動子を製造するに当たり、
前記水晶片を多数製造するための水晶ウエハを用意する工程と、
前記水晶ウエハの表裏に、前記水晶片の外形を形成するための耐ウエットエッチング性マスクであって、前記凹部と対応する領域内の一部には、前記水晶ウエハを貫通しないが、前記水晶ウエハを所望量エッチングできる程度にウエットエッチング液が侵入できる開口を持つ耐ウエットエッチング性マスクを形成する工程と、
前記耐ウエットエッチング性マスクを形成した水晶ウエハを、ウエットエッチング液に所定時間浸漬する工程と、
を含むことを特徴とする。
なお、この出願でいう水晶振動子とは、一般的な水晶振動子、発振回路と共にパッケージに実装されて水晶発振器を構成する水晶振動子、及び、サーミスタやPNダイオード等の各種の温度センサ付きの水晶振動子等も含む。
また、この出願でいう平面形状が長方形状とは、長方形の角部がR状になっている等のこの発明の目的を損ねない範囲での略長方形状も含む。
この発明の水晶振動子によれば、厚肉部と第1端部との間に所定の凹部を持つ水晶振動子が得られる。凹部であるので、厚肉部から第1端部に向かって水晶片の厚みが一度薄くなりその後厚くなる新規なメサ構造が得られる。このようなメサ構造は、単なるメサ構造に比べ、厚肉部への振動の閉じ込めが良好に行われると考えられる。このため、水晶振動子の特性改善が図れると考えられる。
また、この発明の水晶振動子の製造方法によれば、水晶片の外形加工用のマスクに所定の開口を設けることで、水晶片の外形加工の際に凹部の加工を同時に行える。従って、厚肉部形成用の専用のマスクを用いることなく、目的の厚肉部を持つ水晶振動子を形成することができる。
また、この発明の水晶振動子の製造方法によれば、水晶片の外形加工用のマスクに所定の開口を設けることで、水晶片の外形加工の際に凹部の加工を同時に行える。従って、厚肉部形成用の専用のマスクを用いることなく、目的の厚肉部を持つ水晶振動子を形成することができる。
以下、図面を参照してこの発明の水晶振動子及び水晶振動子の製造方法の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこれらの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明中で述べる形状、寸法、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
1. 水晶振動子の説明
1−1.構造
先ず、図1、図2を参照して、実施形態の水晶振動子に具わるATカット水晶片10について説明する。なお、図1(A)は水晶片10の平面図、図1(B)は図1(A)中のP−P線に沿った水晶片10の断面図、図1(C)は図1(A)中のQ−Q線に沿った水晶片10の断面図である。なお、図1(B)では、この発明の特徴である第1端部10a、凹部10b及び第2端部10dを理解し易くするため、これらの部分を拡大して示すと共に、紙面の都合から厚肉部10cについては水晶片10の長辺方向に沿う領域を一部省略して示してある。また、図2(A)は、図1(C)の拡大図、図2(B)は図2(A)中のN部分を拡大して示した図である。
1−1.構造
先ず、図1、図2を参照して、実施形態の水晶振動子に具わるATカット水晶片10について説明する。なお、図1(A)は水晶片10の平面図、図1(B)は図1(A)中のP−P線に沿った水晶片10の断面図、図1(C)は図1(A)中のQ−Q線に沿った水晶片10の断面図である。なお、図1(B)では、この発明の特徴である第1端部10a、凹部10b及び第2端部10dを理解し易くするため、これらの部分を拡大して示すと共に、紙面の都合から厚肉部10cについては水晶片10の長辺方向に沿う領域を一部省略して示してある。また、図2(A)は、図1(C)の拡大図、図2(B)は図2(A)中のN部分を拡大して示した図である。
また、図1(A)中に示した座標軸X,Y′、Z′は、それぞれATカット水晶片10での水晶の結晶軸を示す。なお、ATカット水晶片自体の詳細は、例えば、文献:「水晶デバイスの解説と応用」。日本水晶デバイス工業会2002年3月第4版第7頁等に記載されているので、ここではその説明を省略する。
この実施形態の水晶片10は、平面形状が長方形状で、一部分が厚肉部10cとされ、所定の方向角の水晶片から形成され、その長辺が水晶のX軸に平行であり、その短辺が水晶のZ′軸に平行なATカットの水晶片である。
然も、この水晶片10は、その短辺の中央付近で長辺方向に沿って切った断面(すなわちP−P線に沿って切った断面)を見たとき、一方の短辺側(図1の例の場合、+X側短辺)から、第1端部10a、凹部10b、厚肉部10c及び第2端部10dをこの順に具える。
然も、特に図1(B)に示したように、凹部10bは、厚肉部10cから第1端部10a側に所定角度θaで下っていてその後登って、第1端部10aと接続している凹部である。なお、凹部10bは、その領域内に多少の凸領域があっても良い。
ここで、角度θaは、厚肉部10cの主面と、凹部10bの厚肉部側の斜面との成す角度であり、具体的には4〜8°、典型的には約6°である。この角度θaは、多少のバラツキを示すが、この出願に係る発明者のこれまでの実験によれば、上記の通り、角度θaは6±2°を示すことが分かっている。
また、図1(B)に示したように、第1端部10aは、4つの面で構成され、+X方向に向かって凸状の形状を持つ構造となっており、また、第2端部10dは、4つの面で構成され、−X方向に向かって凸状の形状を持つ構造となっている。なお、第2端部10dは5つ以上の面、例えば5つ又は6つの面で構成される場合があっても良い。
然も、この水晶片10は、その短辺の中央付近で長辺方向に沿って切った断面(すなわちP−P線に沿って切った断面)を見たとき、一方の短辺側(図1の例の場合、+X側短辺)から、第1端部10a、凹部10b、厚肉部10c及び第2端部10dをこの順に具える。
然も、特に図1(B)に示したように、凹部10bは、厚肉部10cから第1端部10a側に所定角度θaで下っていてその後登って、第1端部10aと接続している凹部である。なお、凹部10bは、その領域内に多少の凸領域があっても良い。
ここで、角度θaは、厚肉部10cの主面と、凹部10bの厚肉部側の斜面との成す角度であり、具体的には4〜8°、典型的には約6°である。この角度θaは、多少のバラツキを示すが、この出願に係る発明者のこれまでの実験によれば、上記の通り、角度θaは6±2°を示すことが分かっている。
また、図1(B)に示したように、第1端部10aは、4つの面で構成され、+X方向に向かって凸状の形状を持つ構造となっており、また、第2端部10dは、4つの面で構成され、−X方向に向かって凸状の形状を持つ構造となっている。なお、第2端部10dは5つ以上の面、例えば5つ又は6つの面で構成される場合があっても良い。
また、この水晶片10では、厚肉部10cの第1端部10a側の肩から第1端部10aの先端までの寸法をL(図1(A),(B)参照)と定義したとき、Lは下記(1)式を満たす寸法としてある。
ただし、(1)式において、nは奇数、λは当該水晶振動子における水晶のX軸に沿って伝搬する屈曲振動すなわち不要振動の波長である。なお、nは理屈では1,3、のような小さな値をとり得るが、実際の水晶片の長辺寸法を考慮すると、nは比較的大きな整数であり、これに限られないが、2桁以上の奇数である。また、屈曲振動の波長は、水晶片10の本来の振動周波数すなわち厚みすべり振動の周波数に応じて生じる固有の値であり、例えば厚みすべり振動の周波数をF0と定義した場合、例えば下記の(2)式等で与えられる値である。なお、(1)式が妥当な理由は、後の試作結果及びシミュレーション結果の説明欄にて詳述する。
L=λ(n/4±0.25) ・・・(1)
λ=1943/F0−12.8 ・・・(2)
凹部10bを有し、かつ、上記寸法Lを(1)式で与えられる寸法とすることにより、後述するように、クリスタルインピダンス(CI)が小さくなる範囲が周期的に得られる。然も、後述するように、水晶片10の第1端部10aを当該水晶振動子用の容器に例えば導電性接着剤によって固定する前後のクリスタルインピダンス(CI)の変動を、抑制することができる。
ただし、(1)式において、nは奇数、λは当該水晶振動子における水晶のX軸に沿って伝搬する屈曲振動すなわち不要振動の波長である。なお、nは理屈では1,3、のような小さな値をとり得るが、実際の水晶片の長辺寸法を考慮すると、nは比較的大きな整数であり、これに限られないが、2桁以上の奇数である。また、屈曲振動の波長は、水晶片10の本来の振動周波数すなわち厚みすべり振動の周波数に応じて生じる固有の値であり、例えば厚みすべり振動の周波数をF0と定義した場合、例えば下記の(2)式等で与えられる値である。なお、(1)式が妥当な理由は、後の試作結果及びシミュレーション結果の説明欄にて詳述する。
L=λ(n/4±0.25) ・・・(1)
λ=1943/F0−12.8 ・・・(2)
凹部10bを有し、かつ、上記寸法Lを(1)式で与えられる寸法とすることにより、後述するように、クリスタルインピダンス(CI)が小さくなる範囲が周期的に得られる。然も、後述するように、水晶片10の第1端部10aを当該水晶振動子用の容器に例えば導電性接着剤によって固定する前後のクリスタルインピダンス(CI)の変動を、抑制することができる。
また、この水晶片10の場合、そのZ′軸と交差する側面(Z′面)各々は、特に図2(B)に示したように、第1の面10f,第2の面10gおよび第3の面10hの、3つの面で構成された側面としてある。しかも、第1の面10fは、この水晶片10の主面10iと交わっている面であり、然も、主面10iを水晶のX軸を回転軸としてθ1回転させた面に相当する面である。
さらに、この水晶片10では、第1の面10f、第2の面10gおよび第3の面10hがこの順で交わっている。しかも、第2の面10gは、主面10iを水晶のX軸を回転軸としてθ2回転させた面に相当する面であり、第3の面10hは、主面10iを水晶のX軸を回転軸としてθ3回転させた面に相当する面である。これらの角度θ1、θ2、θ3は、この出願人に係る実験から、下記が好ましいことが分かっている。θ1=4°±3.5°、θ2=−57°±5°、θ3=−42°±5°、より好ましくは、θ1=4°±3°、θ2=−57°±3°、θ3=−42°±3°である。なお、θ1〜θ3に関しては、この出願人に係る、特開2016−197778号公報に記載されているので、ここではその説明は省略する。
Z′軸と交差する側面(Z′面)を上記のように所定の3つの面で構成すると、水晶片10の短辺方向での不要振動の抑制が図れ、好ましい。
Z′軸と交差する側面(Z′面)を上記のように所定の3つの面で構成すると、水晶片10の短辺方向での不要振動の抑制が図れ、好ましい。
また、この水晶片10は、厚肉部11cの表裏面上に、又は、そこを含む更に広い所定領域に、励振用電極11を具え、更に、この励振用電極11から水晶片の1つの短辺側、具体的には第1端部10a側に引き出された引出電極13を具える(図1等参照)。励振用電極11及び引出電極13各々は、典型的には、クロム及び金の積層膜により構成できる。
このように形成した水晶片10を、図3に示したように、例えば周知のセラミックパッケージ15内に、引出電極13の位置で、例えばシリコーン系の導電性接着剤17により接着固定し、さらに、このセラミックパッケージを所定の蓋部材(図示せず)によって真空封止又は不活性ガス雰囲気等の封止状態で封止することで、実施形態の水晶振動子を構成できる。なお、水晶片10の固定位置を詳述すると、図3に示したように、水晶片10は、その第1端部10a側の水晶片の短辺の両端付近各々で、セラミックパッケージ15の接着パッド15aに、導電性接着剤17により固定してある。
このように形成した水晶片10を、図3に示したように、例えば周知のセラミックパッケージ15内に、引出電極13の位置で、例えばシリコーン系の導電性接着剤17により接着固定し、さらに、このセラミックパッケージを所定の蓋部材(図示せず)によって真空封止又は不活性ガス雰囲気等の封止状態で封止することで、実施形態の水晶振動子を構成できる。なお、水晶片10の固定位置を詳述すると、図3に示したように、水晶片10は、その第1端部10a側の水晶片の短辺の両端付近各々で、セラミックパッケージ15の接着パッド15aに、導電性接着剤17により固定してある。
1−2.シミュレーション結果および試作結果
発振周波数を所定の周波数とした試作水晶片10であって、寸法Lを種々に変えた複数種類の試作水晶片を、各々複数個作製した。そして、それらを用い、上述した実装構造及び封止構造による複数種類の実施例の水晶振動子を作製した。
また、有限要素法によるシミュレーショモデルとして、上述した水晶片10であって寸法Lを種々に変えたシミュレーションモデルを用意し、寸法Lと第1端部10aでの変位量との関係を調査した。
また、比較例の水晶片20として、図4に図1(B)と同様の断面図で示すような、実施例では設けていた凹部10bは設けない構造の、水晶片20を、複数個作製した。そして、それらを用い上述した実装例の構造及び封止構造による比較例の水晶振動子を作製した。
発振周波数を所定の周波数とした試作水晶片10であって、寸法Lを種々に変えた複数種類の試作水晶片を、各々複数個作製した。そして、それらを用い、上述した実装構造及び封止構造による複数種類の実施例の水晶振動子を作製した。
また、有限要素法によるシミュレーショモデルとして、上述した水晶片10であって寸法Lを種々に変えたシミュレーションモデルを用意し、寸法Lと第1端部10aでの変位量との関係を調査した。
また、比較例の水晶片20として、図4に図1(B)と同様の断面図で示すような、実施例では設けていた凹部10bは設けない構造の、水晶片20を、複数個作製した。そして、それらを用い上述した実装例の構造及び封止構造による比較例の水晶振動子を作製した。
上記のシミュレーション結果及び試作結果について、以下に説明する。
図5は、横軸に(1)式中のn/4をとり、左縦軸に第1端部10aの先端点での変位量をとり、右縦軸に試作した複数種水晶振動子ごとのCI値の平均値をとり、n/4に対する変位量及びCI値の関係を示した図である。従って、波長λを所定値として考えた(1)式で与えられる寸法Lに対する変位量及びCI値の関係を示した図である。
ただし、変位量とは、水晶片10の第1端部10aの先端点での変位量であり、以下のような定義で与えられる変位量である。すなわち、プラスの変位量とは、第1端部10aの先端点が、水晶片10のY′軸のプラス側に変位したことを意味し、マイナスの変位量とは、第1端部10aの先端点が、水晶片10のY′軸のマイナス側に変位したことを意味する。従って、変位量の絶対値が小さい程、好ましい水晶片である。
また、右縦軸のCI値は、各水準の水晶振動子ごとのCI値の平均値を、この水晶振動子に要求される規格値によって正規化した値である。従って、正規化したCI値が1より小さい程、好ましい水晶片である。
なお、図5では、nが9〜19の範囲、従ってLが2.25〜4.75の範囲での検討結果を示している。しかし、nが図5に示した範囲外の場合であっても上記(1)式を満たす範囲が周期的に現れ、それぞれの領域で、この発明の効果が得られる。
なお、上記の試作及びシミュレーションは、水晶片10のX方向の寸法が約740μm、共振周波数が40MHzとした条件で行った。もちろん、これらの寸法や周波数は一例であり、これらに本発明が限定されるものではない。
図5は、横軸に(1)式中のn/4をとり、左縦軸に第1端部10aの先端点での変位量をとり、右縦軸に試作した複数種水晶振動子ごとのCI値の平均値をとり、n/4に対する変位量及びCI値の関係を示した図である。従って、波長λを所定値として考えた(1)式で与えられる寸法Lに対する変位量及びCI値の関係を示した図である。
ただし、変位量とは、水晶片10の第1端部10aの先端点での変位量であり、以下のような定義で与えられる変位量である。すなわち、プラスの変位量とは、第1端部10aの先端点が、水晶片10のY′軸のプラス側に変位したことを意味し、マイナスの変位量とは、第1端部10aの先端点が、水晶片10のY′軸のマイナス側に変位したことを意味する。従って、変位量の絶対値が小さい程、好ましい水晶片である。
また、右縦軸のCI値は、各水準の水晶振動子ごとのCI値の平均値を、この水晶振動子に要求される規格値によって正規化した値である。従って、正規化したCI値が1より小さい程、好ましい水晶片である。
なお、図5では、nが9〜19の範囲、従ってLが2.25〜4.75の範囲での検討結果を示している。しかし、nが図5に示した範囲外の場合であっても上記(1)式を満たす範囲が周期的に現れ、それぞれの領域で、この発明の効果が得られる。
なお、上記の試作及びシミュレーションは、水晶片10のX方向の寸法が約740μm、共振周波数が40MHzとした条件で行った。もちろん、これらの寸法や周波数は一例であり、これらに本発明が限定されるものではない。
図5から、n/4が約2.85〜3.5の範囲において、変位量は、絶対値で言って0.02以下の極小な範囲になることが分かる。また、CI値についても、Lが約2.85〜3.5の範囲において、1以下の値、すなわち規格値を満たすことが分かる。ここで、nが13の場合、n/4は3.25である。従って、n/4が2.85〜3.5の範囲とは、nが13であるときのn/4=3.25を基準にして考えた場合、マイナス0.4〜プラス0.25の範囲である。この範囲であれば、変位量及びCI値ともに、所望の値を示すことが分かる。より好ましくは、n/4=3.25±0.25の範囲、さらに好ましくはn/4=3.25±0.15の方が変位量及びCI値とも小さくなるので、n/4=3.25±0.15の範囲が良いことが分かる。なお、水晶片10の好ましい実際の寸法Lは、(1)式の通りであり、n/4±0.25に波長λを乗じることで算出できる。例えば、上記の例であれば、波長λは約62μmであるから、Lの中心値は、L=3.25*62で与えられ、約200μmである。なお、第1端部10aの水晶のX軸に沿う寸法は、これに限られないが、例えば50μm程度とするのが良い。
また、試作した実施例及び比較例の各水晶片について、容器に接着する前のCI値と容器に接着した後のCI値とを、1対1で追跡確認をして、接着前後でのCI値の変化を調査した。図6(A)、(B)はその結果を示したもので、横軸に接着前、接着後をとり、縦軸に接着前後のCI値の比をとって示したものである。図6(A)は実施例の水晶片10での結果を示し、図6(B)は比較例の水晶片20での結果を示す。いずれの場合もサンプル数は7個である。なお、接着前の水晶片のCI値とは、後述する製法説明で示すウエハ中のフレームに連結されている状態の水晶片での測定値である。
図6(A)、(B)から、実施例の水晶片ではCI変動比は最大でも1.5であるのに対し、比較例の水晶片ではCI変動比は最大で2を超え、しかも、1.5を越える個数が4個もある。従って、実施例の水晶片10は、振動部へのエネルギー閉じ込めが比較例より優れていることが分かる。
図6(A)、(B)から、実施例の水晶片ではCI変動比は最大でも1.5であるのに対し、比較例の水晶片ではCI変動比は最大で2を超え、しかも、1.5を越える個数が4個もある。従って、実施例の水晶片10は、振動部へのエネルギー閉じ込めが比較例より優れていることが分かる。
2. 製造方法の説明
次に、水晶振動子の製造方法の実施形態について、図7〜図9を参照して説明する。
実施形態の水晶片10は、フォトリソグラフィ技術およびウエットエッチング技術により水晶ウエハから多数製造できる。そのため、以下の製法例の説明で用いる図の一部では、水晶ウエハ10wの平面図と、その一部分Mを拡大した平面図を示してある。さらに、製法例の説明で用いる図の一部の図では水晶片10の断面図も併用している。いずれの断面図も、対応する平面図中の、R−R線、又は、S−S線に沿った断面を示してある。
次に、水晶振動子の製造方法の実施形態について、図7〜図9を参照して説明する。
実施形態の水晶片10は、フォトリソグラフィ技術およびウエットエッチング技術により水晶ウエハから多数製造できる。そのため、以下の製法例の説明で用いる図の一部では、水晶ウエハ10wの平面図と、その一部分Mを拡大した平面図を示してある。さらに、製法例の説明で用いる図の一部の図では水晶片10の断面図も併用している。いずれの断面図も、対応する平面図中の、R−R線、又は、S−S線に沿った断面を示してある。
先ず、水晶ウエハ10wを用意する(図7(A))。ATカット水晶片10の発振周波数は、周知の通り、水晶片10の主面(X−Z′面)部分の厚みでほぼ決まるが、用意する水晶ウエハ10wは、最終的な水晶片10の厚さより厚いウエハとする。
次に、この水晶ウエハ10wの表裏両面に、水晶片の外形を形成するための耐ウエットエッチング性マスク40を周知の成膜技術及びフォトリソグラフィ技術により形成する。この実施形態の場合の耐ウエットエッチング性マスク40は、水晶片の外形に対応する部分、各水晶片を保持するフレーム部分、及び、水晶片とフレーム部分とを連結する連結部で構成したものとしてある。ただし、この発明では、前述した凹部10b(図1参照)と対応する領域内の一部に、水晶ウエハを貫通しないが、水晶ウエハを所望量エッチングできる程度にウエットエッチング液が侵入できる開口40aを持つ耐ウエットエッチング性マスクを形成する。具体的には、例えば、クロム膜と金膜との積層膜で構成した耐ウエットエッチング性マスク40であって、上記所定部分はこの金属膜が除去されて開口40aとされているマスク40を形成する。
この開口40aの、水晶片10の長辺方向に沿う寸法は、上述の通り、水晶ウエハを貫通しないが、水晶ウエハを所望量エッチングできる程度にウエットエッチング液が侵入できる寸法であり、典型的には、数μm、例えば2μmである。ただし、この値は水晶ウエハ10wの厚さや、凹部10bの深さ及び広さ等に応じて変更できる。また、この開口40aの、水晶片10の短辺方向に沿う寸法は、水晶片の幅寸法と同じ程度の寸法とするのが良い。ただし、この寸法も水晶ウエハ10wの厚さや、凹部10bの広さに応じて幅広にも幅狭にも変更できる。また、図7の例では、開口40aの数は1個としているが、これに限られず、凹部10bに対応する領域中に互いを近接させる等して複数個設けても良い。また、図7の例では、開口の平面形状を極めて細長い長方形状としているが、この形の変更もできる。
次に、耐ウエットエッチング性マスク40を形成した水晶ウエハを、ウエットエッチング液に所定時間浸漬する。エッチング液としては、フッ酸系エッチャントを用いる。所定時間とは、水晶片10の外形輪郭が得られるよう水晶ウエハ10wを貫通できる時間+αの時間である。
このエッチングにおいては、水晶ウエハの、水晶片10の形成予定領域の周囲の開口はエッチング液が良く侵入拡散するため、エッチングが進み水晶ウエハ自体を十分に貫通する。一方、開口40aの部分は開口寸法が狭いため、ウエットエッチング液は開口40a下の水晶ウエハ部分に少しずつ侵入するため、水晶ウエハを貫通するには至らず、開口40aの領域とその周囲のマスク下の水晶ウエハ部分がエッチングされる。
図8は上記の外形エッチングを終えた試料の様子を示したものであって、耐ウエットエッチング性マスク40のうちのフレーム部分以外は除去した状態を示した図である。第1端部、凹部、厚肉部、第2端部各々の完成前の中間体の状態を持った水晶ウエハが得られている。
このエッチングにおいては、水晶ウエハの、水晶片10の形成予定領域の周囲の開口はエッチング液が良く侵入拡散するため、エッチングが進み水晶ウエハ自体を十分に貫通する。一方、開口40aの部分は開口寸法が狭いため、ウエットエッチング液は開口40a下の水晶ウエハ部分に少しずつ侵入するため、水晶ウエハを貫通するには至らず、開口40aの領域とその周囲のマスク下の水晶ウエハ部分がエッチングされる。
図8は上記の外形エッチングを終えた試料の様子を示したものであって、耐ウエットエッチング性マスク40のうちのフレーム部分以外は除去した状態を示した図である。第1端部、凹部、厚肉部、第2端部各々の完成前の中間体の状態を持った水晶ウエハが得られている。
次に、この中間体状態の水晶ウエハ10wを、フッ酸を主とするエッチング液中に、再度、所定の時間浸漬する。ここで、所定の時間とは、水晶片10の肉厚部10e形成予定領域の厚みがこの水晶片10に要求される発振周波数の仕様を満たすことができる時間であって、かつ、水晶片10のZ′軸と交差する側面に第1〜第3の面10f〜10hが形成できる時間である。このエッチングが済むと、図9に示したように、第1端部10a、凹部10b、厚肉部11c及び第2端部10dを具えた水晶片10の主要部が完成する。
次に、上記のエッチングが終了した水晶ウエハから、耐ウエットエッチング性マスクの残存部分も除去して、水晶面全てを露出する(図示せず)。その後、この水晶ウエハ全面に、周知の成膜方法により、水晶振動子の励振用電極および引出電極形成用の金属膜(図示せず)を形成する。次に、この金属膜を、周知のフォトリソグラフィ技術およびメタルエッチング技術により、加工して、図1に示した水晶片10を多数有する水晶ウエハが完成する。
次に、水晶ウエハ10wの各水晶片の連結部に適当な外力を加えて、水晶片10を水晶ウエハ10wから分離し、個片化する。このように形成した水晶片を上述したように容器に実装し、封止することで、図3に示したような実施形態の水晶振動子を得ることができる。
上述した製造方法では、耐ウエットエッチング性マスク40に所定の開口40aを設けて外形エッチングを行うため、外形エッチングの際に凹部10bの前駆体も並行して形成できる。従って、凹部及び厚肉部形成を簡易に行うことができる。
上述した製造方法では、耐ウエットエッチング性マスク40に所定の開口40aを設けて外形エッチングを行うため、外形エッチングの際に凹部10bの前駆体も並行して形成できる。従って、凹部及び厚肉部形成を簡易に行うことができる。
3. 支持部を水晶の結晶軸の−X側にする例(変形例)
上述した実施形態では、水晶片10を支持する支持部を水晶の結晶軸の+X側としていたが、水晶片を水晶の結晶軸の−X軸側で支持しても良い。以下、この変形例について説明する。
図10はこの変形例の説明図であり、図1(B)と同様な断面図で示した図である。この変形例の水晶片50の、図1の水晶片10との相違点は、第1端部10a、凹部10b、厚肉部10c、第2端部10dを、水晶の結晶軸の−X側から定義している点である。ただし、水晶の結晶軸のウエットエッチング液に対する異方性から、この変形例の水晶片50での所定角度θaは、図1に示した水晶片10の場合と異なる値になる。具体的には、変形例の水晶片50での所定角度θaは、14〜18°、典型的には約16°である。この角度θaは、多少のバラツキを示すが、この出願に係る発明者のこれまでの実験によれば、上記の通り、角度θaは16±2°を示すことが分かっている。
この変形例の場合も、支持部と厚肉部との間に凹部を有し、然も、寸法Lを(1)式で与えられる所定寸法としてあるので、図1に示した水晶片10と同様な効果が期待できる。
上述した実施形態では、水晶片10を支持する支持部を水晶の結晶軸の+X側としていたが、水晶片を水晶の結晶軸の−X軸側で支持しても良い。以下、この変形例について説明する。
図10はこの変形例の説明図であり、図1(B)と同様な断面図で示した図である。この変形例の水晶片50の、図1の水晶片10との相違点は、第1端部10a、凹部10b、厚肉部10c、第2端部10dを、水晶の結晶軸の−X側から定義している点である。ただし、水晶の結晶軸のウエットエッチング液に対する異方性から、この変形例の水晶片50での所定角度θaは、図1に示した水晶片10の場合と異なる値になる。具体的には、変形例の水晶片50での所定角度θaは、14〜18°、典型的には約16°である。この角度θaは、多少のバラツキを示すが、この出願に係る発明者のこれまでの実験によれば、上記の通り、角度θaは16±2°を示すことが分かっている。
この変形例の場合も、支持部と厚肉部との間に凹部を有し、然も、寸法Lを(1)式で与えられる所定寸法としてあるので、図1に示した水晶片10と同様な効果が期待できる。
4. 励振用電極に関する実施形態
上記の説明では励振用電極の位置について言及しなかった。しかし、この出願に係る発明者の検討によれば、第1端部10a、凹部10b、厚肉部10c及び第2端部10dを有する水晶片10に励振用電極11を設ける位置を所定範囲にすると、水晶振動子の特性が良化することが判明した。以下、この点について図11〜図14を参照して説明する。
上記の説明では励振用電極の位置について言及しなかった。しかし、この出願に係る発明者の検討によれば、第1端部10a、凹部10b、厚肉部10c及び第2端部10dを有する水晶片10に励振用電極11を設ける位置を所定範囲にすると、水晶振動子の特性が良化することが判明した。以下、この点について図11〜図14を参照して説明する。
図11は、水晶片10に対する励振用電極の好ましい配置位置を説明する平面図である。この水晶振動子は、水晶片10の表裏面であって厚肉部10c上に、励振用電極11をそれぞれ具える。然も、水晶片10の長辺に沿う方向、すなわち水晶のX軸に沿う方向の水晶片10の中心点をCxと表し、また、水晶のX軸に沿う方向の励振用電極11の中心点をCeと表したとき、励振用電極の中心点Ceが水晶片の中心点Cxに対し第2端部10d側に、すなわち水晶片10の導電性接着剤で固定される側とは反対側に、偏心量ΔXで偏心するように、励振用電極11を水晶片10上に設けてある。
次に、偏心量ΔXの適正範囲と効果について説明する。先ず、発明者は、検討の1つとして、図11に示した第1端部10a、凹部10b、厚肉部10c及び第2端部10dを有する水晶片10であって、長辺寸法Lxが778μm、短辺寸法が570μm、第1端部10aの長さが71μm、第2端部10dの寸法が60μm、図11にLで示す寸法が上記(1)式を満たす寸法、そして、厚肉部10cの第1端部10a側の肩から凹部10bの一番深い箇所までの寸法が74μmである水晶片10のモデルを用い、励振用電極の偏心量ΔXを種々に変えた場合のクリスタルインピダンス(CI)の変化具合を、有限要素法によりシミュレーションした。
図12(A)、(B)はこのシミュレーション結果を示したもので、横軸に偏心量ΔXをとり、縦軸にクリスタルインピダンス(CI。相対値)をとって、偏心量ΔXとCIとの関係を示したものである。(A)図は偏心量ΔXを広い範囲としたもの、(B)図は(A)図中のW部分を拡大して示したものである。なお、図12(A)、(B)では、グラフの上部に新たな横軸として後述するL1/t′、L2/t′も示してある。
図12から、偏心量ΔXを所定範囲にすることでCI値が小さくなることが理解できる。然も、CI値が小さくなる範囲が周期的に現れることが理解できる。さらに詳細には、この水晶片で製造される水晶振動子の規格(図12中に示した破線)を満たすことができる偏心量ΔXは、52±4μmの範囲であることが理解できる(特に図12(B)参照)。また、実際に水晶振動子を試作した際のCIの実測値を図13に示した。図13からも、偏心量ΔXが52μm付近でCIは極小範囲になり、偏心量ΔXが56μmを越えるとCIの規格を満たさなくなることが理解できる。この試作結果からも、偏心量ΔXは52±4μmの範囲が良いことが理解できる。なお、試作の場合、偏心量ΔXが52μmより小さい水準は、都合により、実施しなかったが、偏心量ΔXが52μmより4μm程度小さい場合もシミュレーション同様にCIは小さくなると推定できる。
ここで、ATカット水晶振動子の場合、水晶振動子の種々の設計思想は、単一の周波数の水晶片に限られるものではなく、例えば水晶片の長辺寸法Lx、短辺寸法Lzを、水晶片の圧肉部の厚みtaで、正規化した値が同様な値である水晶片に広く適用できるので、上記偏心量ΔXを適用できる水晶片は、発振周波数が37.4MHzの水晶片に限られないと推定できる。
また、励振用電極の偏心量は、水晶片の長辺寸法Lxが決まっていれば電極の長辺方向の端部の位置によっても表すことも出来る。図1、図10に表すように、励振用電極の第1端部側の端から水晶片第1端部の先端までの距離をL1、励振用電極の第2端部側の端から水晶片第2端部の先端までの距離をL2としたとき、Lxが778μmであればL1=221±4μm、L2=116±4μmとなる。これを前記肉厚部の厚みと前記表裏面の励振用電極の実効的な厚みの和t′=1670/Fで正規化すると、L1/t′=4.949±0.0.090、L2/t′=2.598±0.090となる。
また、図12において偏心量ΔXを広い範囲で見ると、凡そλ/2の周期でCIが良好になることが予測される。このとき、整数n1、n2を用いるとL1/t′=4.949±0.101+0.745×n1、L2/t′=2.598±0.101+0.745×n2において電極端部の位置を表すことができる。
ただし、n1及びn2は整数で、n1≧−6、n2≧−3を満たす値である。n1、n2がこの条件を満たさない場合は、励振用電極が水晶片の領域外に広がってしまう。つまり、励振用電極は水晶片より大きくなってしまう。しかも、n1とn2との関係は、n2−n1≦3を満たす関係である。このような関係とする理由は、励振用電極が水晶片の第2端部側に偏心しているという本発明の要件を満たすためには、n1とn2とはn2−n1≦3の関係を満たす必要がある。なお、好ましくは、n1=n2=0である。
ただし、n1及びn2は整数で、n1≧−6、n2≧−3を満たす値である。n1、n2がこの条件を満たさない場合は、励振用電極が水晶片の領域外に広がってしまう。つまり、励振用電極は水晶片より大きくなってしまう。しかも、n1とn2との関係は、n2−n1≦3を満たす関係である。このような関係とする理由は、励振用電極が水晶片の第2端部側に偏心しているという本発明の要件を満たすためには、n1とn2とはn2−n1≦3の関係を満たす必要がある。なお、好ましくは、n1=n2=0である。
一方、ATカット水晶振動子の場合、水晶片の長辺寸法および短辺寸法がある範囲であれば、例えばCI値は規格を満たすことができるが、その範囲を越えるとCIが悪化する傾向がある。この点について発明者は有限要素法により検討した。図14はその結果を示したものである。
図14は、水晶片10の長辺寸法Lxを765〜785μmの範囲で複数水準設定し、かつ、短辺寸法Lzを560〜600μmの範囲で複数水準設定した各種水晶片のCIの違いを示したものである。
図14から、CIの規格を満たすLx/ta、Lz/taについて検討すると、周波数が37.4MHzの例では、水晶片の肉厚部の厚みtaは39.748μmであり、然も、図14においてCIの規格値を満たしているとみられるLxは775〜785μm、Lzは560〜576μmであるから
19.50≦Lx/ta≦=19.75、かつ、14.08≦Lz/ta≦=14.49であるとCI規格を満たすことが理解できる。
また、CIが規格を満たし然も規格より小さい値となるためには、図14から、Lxは780〜785μm、Lzは568〜576μmであるから
19.62≦Lx/ta≦=19.75、かつ、14.29≦Lz/ta≦=14.49であるのが良いことが分かる。
図14から、CIの規格を満たすLx/ta、Lz/taについて検討すると、周波数が37.4MHzの例では、水晶片の肉厚部の厚みtaは39.748μmであり、然も、図14においてCIの規格値を満たしているとみられるLxは775〜785μm、Lzは560〜576μmであるから
19.50≦Lx/ta≦=19.75、かつ、14.08≦Lz/ta≦=14.49であるとCI規格を満たすことが理解できる。
また、CIが規格を満たし然も規格より小さい値となるためには、図14から、Lxは780〜785μm、Lzは568〜576μmであるから
19.62≦Lx/ta≦=19.75、かつ、14.29≦Lz/ta≦=14.49であるのが良いことが分かる。
従って、励振用電極の偏心量ΔXを適用して好適な水晶片の長辺、短辺、厚さ(励振用電極の厚さ踏む)の関係は、19.50≦Lx/ta≦=19.75、かつ、14.08≦Lz/ta≦=14.49が良く、より好ましくは、19.62≦Lx/ta≦=19.75、かつ、14.29≦Lz/ta≦=14.49が良い。
なお、上記の説明では、励振用電極は水晶片の厚肉部上に設ける例で説明したが、励振用電極は水晶片の厚肉部を含むこれより広い範囲に設けた場合も、励振用電極の偏心量ΔXの思想を適用できる。
なお、上記の説明では、励振用電極は水晶片の厚肉部上に設ける例で説明したが、励振用電極は水晶片の厚肉部を含むこれより広い範囲に設けた場合も、励振用電極の偏心量ΔXの思想を適用できる。
10:実施形態の水晶片、 10a:第1端部、
10b:凹部、 10c:厚肉部、
10d:第2端部、
10f:第1の面、 10g:第2の面、
10h:第3の面、 10i:主面
10w:水晶ウエハ、 11:励振用電極、
13:引出電極、 15:セラミックパッケージ、
15a:接続パッド、 17:導電性接着剤
40:耐ウエットエッチング性マスク、 40a:開口
50:変形例の水晶片
Cx:水晶片の長辺方向に沿う中心点、 Ce:励振用電極の長辺方向に沿う中心点
ΔX:偏心量、 Lx:水晶片の長辺寸法
Lz:水晶片の短辺寸法
ta:水晶片の肉厚部の厚み
10b:凹部、 10c:厚肉部、
10d:第2端部、
10f:第1の面、 10g:第2の面、
10h:第3の面、 10i:主面
10w:水晶ウエハ、 11:励振用電極、
13:引出電極、 15:セラミックパッケージ、
15a:接続パッド、 17:導電性接着剤
40:耐ウエットエッチング性マスク、 40a:開口
50:変形例の水晶片
Cx:水晶片の長辺方向に沿う中心点、 Ce:励振用電極の長辺方向に沿う中心点
ΔX:偏心量、 Lx:水晶片の長辺寸法
Lz:水晶片の短辺寸法
ta:水晶片の肉厚部の厚み
また、励振用電極の偏心量は、水晶片の長辺寸法Lxが決まっていれば電極の長辺方向の端部の位置によっても表すことも出来る。図1、図10に表すように、励振用電極の第1端部側の端から水晶片第1端部の先端までの距離をL1、励振用電極の第2端部側の端から水晶片第2端部の先端までの距離をL2としたとき、Lxが778μmであればL1=221±4μm、L2=116±4μmとなる。これを前記肉厚部の厚みと前記表裏面の励振用電極の実効的な厚みの和t′=1670/Fで正規化すると、L1/t′=4.949±0.090、L2/t′=2.598±0.090となる。
図14は、水晶片10の長辺寸法Lxを765〜785μmの範囲で複数水準設定し、かつ、短辺寸法Lzを560〜600μmの範囲で複数水準設定した各種水晶片のCIの違いを示したものである。
図14から、CIの規格を満たすLx/ta、Lz/taについて検討すると、周波数が37.4MHzの例では、水晶片の肉厚部の厚みtaは39.748μmであり、然も、図14においてCIの規格値を満たしているとみられるLxは775〜785μm、Lzは560〜576μmであるから
19.50≦Lx/ta≦19.75、かつ、14.08≦Lz/ta≦14.49であるとCI規格を満たすことが理解できる。
また、CIが規格を満たし然も規格より小さい値となるためには、図14から、Lxは780〜785μm、Lzは568〜576μmであるから
19.62≦Lx/ta≦19.75、かつ、14.29≦Lz/ta≦14.49であるのが良いことが分かる。
図14から、CIの規格を満たすLx/ta、Lz/taについて検討すると、周波数が37.4MHzの例では、水晶片の肉厚部の厚みtaは39.748μmであり、然も、図14においてCIの規格値を満たしているとみられるLxは775〜785μm、Lzは560〜576μmであるから
19.50≦Lx/ta≦19.75、かつ、14.08≦Lz/ta≦14.49であるとCI規格を満たすことが理解できる。
また、CIが規格を満たし然も規格より小さい値となるためには、図14から、Lxは780〜785μm、Lzは568〜576μmであるから
19.62≦Lx/ta≦19.75、かつ、14.29≦Lz/ta≦14.49であるのが良いことが分かる。
従って、励振用電極の偏心量ΔXを適用して好適な水晶片の長辺、短辺、厚さ(励振用電極の厚さ踏む)の関係は、19.50≦Lx/ta≦19.75、かつ、14.08≦Lz/ta≦14.49が良く、より好ましくは、19.62≦Lx/ta≦19.75、かつ、14.29≦Lz/ta≦14.49が良い。
なお、上記の説明では、励振用電極は水晶片の厚肉部上に設ける例で説明したが、励振用電極は水晶片の厚肉部を含むこれより広い範囲に設けた場合も、励振用電極の偏心量ΔXの思想を適用できる。
なお、上記の説明では、励振用電極は水晶片の厚肉部上に設ける例で説明したが、励振用電極は水晶片の厚肉部を含むこれより広い範囲に設けた場合も、励振用電極の偏心量ΔXの思想を適用できる。
Claims (16)
- 平面形状が長方形状で一部分が厚肉部とされているATカット水晶片を具える水晶振動子において、
前記水晶片は、その短辺の中央付近で長辺方向に沿って切った断面を見たとき、一方の短辺側から、第1端部、凹部、厚肉部及び第2端部をこの順に具え、
前記凹部は、前記厚肉部から第1端部側に所定角度θaで下っていてその後登って前記第1端部と接続している凹部であることを特徴とする水晶振動子。 - 前記水晶片は、長辺が水晶のX軸に平行であり、短辺が水晶のZ′軸に平行であり、前記第1端部は+X側に位置することを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
- 前記水晶片は、長辺が水晶のX軸に平行であり、短辺が水晶のZ′軸に平行であり、前記第1端部は+X側に位置し、前記角度θaは6±2°であることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
- 前記水晶片は、長辺が水晶のX軸に平行であり、短辺が水晶のZ′軸に平行であり、前記第1端部は−X側に位置することを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
- 前記水晶片は、長辺が水晶のX軸に平行であり、短辺が水晶のZ′軸に平行であり、前記第1端部は−X側に位置し、前記角度θaは16±2°であることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
- 前記厚肉部の前記第1端部側の肩から前記第1端部の先端までの寸法をLと定義したとき、Lは下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水晶振動子。ただし、(1)式において、nは奇数、λは当該水晶振動子における水晶のX軸に沿って伝搬する屈曲振動の波長である。
L=λ(n/4±0.25 ) ・・・(1) - 前記厚肉部の前記第1端部側の肩から前記第1端部の先端までの寸法をLと定義したとき、Lは下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水晶振動子。ただし、(1)式において、nは奇数、λは当該水晶振動子における水晶のX軸に沿って伝搬する屈曲振動の波長である。
L=λ(n/4±0.15) ・・・(1) - 前記水晶片は前記第1端部側で当該水晶振動子の容器に固定部材によって固定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水晶振動子。
- 前記水晶片は前記第1端部側で当該水晶振動子の容器に固定部材によって固定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水晶振動子。
- 前記水晶片の表裏面であって前記厚肉部上又は前記厚肉部を含むそれより広い領域上に励振用電極をそれぞれ具え、
前記水晶片の前記長辺に沿う方向の中心点をCx、前記励振用電極の前記長辺に沿う方向の中心点をCeと表したとき、
前記中心点Ceが前記中心点Cxに対し前記第2端部側に偏心量ΔXで偏心するように、前記励振用電極を前記水晶片上に設けてあることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の水晶振動子。 - 前記偏心量ΔXが52±4μmである請求項10に記載の水晶振動子。
- 前記励振用電極の前記第1端部側の端から前記第1端部の先端までの距離をL1、前記励振用電極の前記第2端部側の端から前記第2端部の先端までの距離をL2、前記肉厚部の厚みと前記表裏面の励振用電極の厚みの実効的な和をt′=1670/Fと表したとき、
L1/t′=4.949±0.090+0.745×n1、
L2/t′=2.598±0.090+0.745×n2、
である請求項10又は11に記載の水晶振動子。
但し、n1及びn2は整数で、n1≧−6、n2≧−3、n2−n1≦3を満たす値である。また、当該水晶振動子の発振周波数である。 - 前記肉厚部の厚みをta、前記水晶片の前記長辺寸法をLx及び短辺寸法をLzと表したとき、
19.50≦Lx/ta≦=19.75、かつ、
14.08≦Lz/ta≦=14.49
である請求項10又は11に記載の水晶振動子。 - 前記肉厚部の厚みをta、前記水晶片の前記長辺寸法をLx及び短辺寸法をLzと表したとき、
19.62≦Lx/ta≦=19.75、かつ、
14.29≦Lz/ta≦=14.49
である請求項10又は11に記載の水晶振動子。 - 平面形状が長方形状で一部分が厚肉部とされているATカット水晶片を具える水晶振動子であって、前記水晶片を、その短辺の中央付近で長辺方向に沿って切った断面を見たとき、一方の短辺側から、第1端部、凹部、厚肉部及び第2端部をこの順に具え、前記凹部は、前記厚肉部から前記第1端部側に所定角度θaで下っていてその後登って前記第1端部と接続している凹部である水晶振動子を製造するに当たり、
前記水晶片を多数製造するための水晶ウエハを用意する工程と、
前記水晶ウエハの表裏に、前記水晶片の外形を形成するための耐ウエットエッチング性マスクであって、前記凹部と対応する領域内の一部には、前記水晶ウエハを貫通しないが、前記水晶ウエハを所望量エッチングできる程度にウエットエッチング液が侵入できる開口を持つ耐ウエットエッチング性マスクを形成する工程と、
前記耐ウエットエッチング性マスクを形成した水晶ウエハを、ウエットエッチング液に所定時間浸漬する工程と、
を含むことを特徴とする水晶振動子の製造方法。 - 前記ウエットエッチング液に所定時間浸漬する工程の後に、前記耐ウエットエッチング性マスクを除去する工程と、
前記耐ウエットエッチング性マスクを除去した後の水晶ウエハを、ウエットエッチング液に所定時間浸漬する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の水晶振動子の製造方法。
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