JP2019187368A - インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法、インビボクローニング可能な細胞株の製造方法、細胞株、インビボクローニング方法、及びインビボクローニングを行うためのキット - Google Patents

インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法、インビボクローニング可能な細胞株の製造方法、細胞株、インビボクローニング方法、及びインビボクローニングを行うためのキット Download PDF

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【課題】高効率でインビボクローニング可能な細胞株のスクリーニング方法を提供する。【解決手段】本発明は、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法であって、細胞株について、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の有無を評価し、前記遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた細胞株を選択する選択工程を備える。【選択図】なし

Description

本発明は、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法、インビボクローニング可能な細胞株の製造方法、細胞株、インビボクローニング方法、及びインビボクローニングを行うためのキットに関する。
従来のDNAクローニング技術では、目的のDNAを制限酵素及びDNAリガーゼ等を用いてベクターに組み込み、目的のDNAを挿入したベクターを大腸菌等の宿主細胞に導入し発現させる(形質転換させる)ことで、目的のDNAをクローニングすることが一般的であった。
近年、相同な配列間の組換え反応を利用して目的のDNAをベクターへクローニングする方法、いわゆる、シームレスクローニングが活用されている(例えば、特許文献1参照。)。シームレスクローニングでは、まず、20bp程度の相同な配列を付加したプライマーを合成し、目的のDNA及びベクターをそれぞれPCR法により増幅させる。次いで、出芽酵母、又はRecETシステムが構築された大腸菌株に相同配列を有する目的のDNA及びベクターを導入し発現させることで、目的のDNAをクローニングすることができる。このように、酵母や大腸菌等の細胞内で目的のDNAをクローニングさせることをインビボクローニングと呼ぶ。
出芽酵母では、細胞内で相同組換えの活性が非常に高いため、容易にシームレスクローニングを行うことができる(例えば、非特許文献1参照。)。
また、RecETシステムが構築された大腸菌株では、Racプロファージ領域のRecE、RecTレコンビナーゼが過剰発現しており、このRecE、RecTレコンビナーゼにより大腸菌細胞内で相同組換えの効率が高まり、シームレスクローニングを行うことができる(例えば、特許文献2、特許文献3、及び非特許文献2参照。)。
最近では、相同配列を有する複数の目的のDNA及びベクターを大腸菌DH5α株に直接導入し発現させることで、目的のDNAをクローニングできることが報告されている(例えば、非特許文献3参照。)。
非特許文献1に記載の方法では、出芽酵母の細胞内において、クローニングされた目的のDNAが挿入されたベクターが不安定であるため、さらに大腸菌等の細胞株に導入し、クローニングする必要がある。
また、特許文献2、特許文献3、及び非特許文献2に記載の方法では、RecETシステムを有する大腸菌株を用いる必要があり、さらに、プラスミドDNA同士で相同組換えが起こり、ダイマー、又はマルチマーを形成されるという課題を有する。
さらに、非特許文献3に記載の方法では、大腸菌DH5α株を用いて直接目的のDNAをクローニングできることは報告されているが、そのメカニズムは明らかにされていない。また、非特許文献3に記載の方法では、クローニング効率が低く、よりクローニング効率の高い細胞株が求められていた。
このような課題に対して、本発明者は、xthA遺伝子の有無が、インビボクローニングの効率に関係していることを見出した(例えば、特許文献4参照。)。
米国特許出願公開第2002/0165175号明細書 米国特許出願公開第2010/0317061号明細書 米国特許出願公開第2013/0210681号明細書 特開2018−7589号公報
Ma, H., et al., "Plasmid construction by homologous recombination in yeast", GENE, vol.58, p201-216, 1987. Oliner, J. D., et al., "In vivo cloning of PCR products in E.coli", NUCLEIC. ACIDS. RES., vol.21, no.22, p5192-5197, 1993. Kostylev, M., et al., "Cloning Should Be Simple: Escherichia coli DH5α-Mediated Assembly of Multiple DNA Fragments with Short End Homologies", PLOS ONE, 2015, DOI: 10.1371/journal.pone.0137466.
特許文献4で見出した遺伝子以外に、インビボクローニング効率に関与する遺伝子を同定できれば、同定した遺伝子の発現を調節することにより、更にインビボクローニング効率を上げることができる。例えば、欠失変異により、インビボクローニング効率が50%上昇する遺伝子を6個同定できれば、これら遺伝子の6重変異株を得ることにより効率を11.4倍に上昇させることができる。
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、高効率でインビボクローニング可能な細胞株のスクリーニング方法を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、又はsapC遺伝子の欠失変異が、インビボクローニングの効率に影響を及ぼしていることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法であって、
細胞株について、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の有無を評価し、評価された前記遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた細胞株を選択する第1の選択工程を備えることを特徴とする方法。
[2]さらに、前記第1の選択工程の後に、xthA遺伝子の有無を評価し、xthA遺伝子を有する細胞株を選択する第2の選択工程、及び/又は、hsdR遺伝子の有無を評価し、hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた細胞株を選択する第3の選択工程を備える[1]に記載の方法。
[3]前記細胞株が大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである[1]又は[2]に記載の方法。
[4]インビボクローニング可能な細胞株の製造方法であって、前記細胞株がrpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子を有する場合に、前記遺伝子の少なくとも一部の機能を失わせる工程Aを備える細胞株の製造方法。
[5]さらに、前記細胞株がxthA遺伝子を有しない場合に、前記xthA遺伝子を細胞株の染色体に挿入し、xthA遺伝子を発現させる工程C、及び/又は、前記細胞株がhsdR遺伝子を有する場合に、前記hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能を失わせる工程Bを備える[4]に記載の製造方法。
[6]前記細胞株が大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである[4]又は[5]に記載の製造方法。
[7]rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の少なくとも一部の機能が失われたことを特徴とする細胞株。
[8]さらに、xthA遺伝子を有し、及び/又は、hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた[7]に記載の細胞株。
[9]前記細胞株が、大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである[7]又は[8]に記載の細胞株。
[10][1]〜[3]のいずれか一つに記載の方法、又は[4]〜[6]のいずれか一つに記載の製造方法を用いて、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニング、又は製造した後、得られた細胞株に、ベクターと、5’末端領域及び3’末端領域に前記ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する目的の二本鎖DNAとを導入する導入工程と、前記導入工程後、前記細胞株を培養し、前記目的の二本鎖DNAを相同組換えにより前記ベクターに挿入する挿入工程と、を備えることを特徴とするインビボクローニング方法。
[11]インビボクローニングを行うためのキットであって、[7]〜[9]のいずれか一つ記載の細胞株を備えることを特徴とするキット。
本発明によれば、高効率でインビボクローニング可能な細胞株のスクリーニング方法を提供することができる。
xthA遺伝子を有する細胞内での相同組換えのメカニズムを模式的に示す図である。 iVEC(in vivo E. coli Cloning)活性の高い大腸菌株の探索方法のスキームを示す図である。 iVEC3株を用いた特定の遺伝子欠損変異株におけるiVEC活性のコンファメーション実験の結果である。 iVEC3株を用いた特定の遺伝子欠損変異株におけるiVEC活性のコンファメーション実験の結果である。
<<インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法>>
本発明のスクリーニング方法について、以下に詳細を説明する。
[第1の選択工程]
本発明のスクリーニング方法は、細胞株について、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の有無を評価し、評価された前記遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた細胞株を選択する第1の選択工程を備える。
本発明におけるスクリーニング対象となる細胞株としては、通常、宿主細胞としてDNAクローニング及びタンパク質発現系として用いられるものであればよく、その由来となる生物種は限定されない。細胞株の由来となる生物種としては、例えば、大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞(特に、哺乳動物細胞)等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、細胞株の由来となる生物種としては、取扱いの容易さから、大腸菌又は哺乳動物細胞であることが好ましく、大腸菌であることがより好ましい。
また、細胞株として、大腸菌株以外の株を用いる場合、存在の有無を評価する遺伝子は、対応する生物のホモログ遺伝子となる。例えば、細胞株としてヒト培養細胞株を用いる場合、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子のそれぞれのヒトホモログの存在の有無を評価する。
なお、本明細書において、「インビボクローニング」とは、細胞内で目的のDNAをクローニングする技術を意味する。
rpoZ遺伝子は、RNA polymerase subunit ωをコードする遺伝子であり、yfaH遺伝子は、consereved proteinをコードする遺伝子であり、rsxC遺伝子は、member of SoxR−reducing complexをコードする遺伝子であり、yeaE遺伝子は、methylglyoxal reductaseをコードする遺伝子であり、slyA遺伝子は、DNA−binding transcriptional dual regulator SlyAをコードする遺伝子であり、sapC遺伝子は、putrescine ABC expoter membrane protein SapCをコードする遺伝子である。
実施例で後述するように、発明者は、これらの遺伝子に欠損変異を有する大腸菌株が、iVEC(in vivo E. coli Cloning)活性が高いことを見出した。
なお、本明細書において、「iVEC活性」とは、PCR増幅した挿入DNA断片とベクターDNAを同時にトランスフォームするだけでクローニングできる、大腸菌株の能力を意味し、例えば、挿入DNA断片が導入された大腸菌株のコロニー数で表される。
これらの遺伝子の有無を評価する方法としては、公知の方法を用いて行えばよく、例えば、細胞株からDNAを抽出し、これらの遺伝子に対するプライマーセットを用いたPCR法により、これらの遺伝子を増幅し、アガロースゲルにより分離し、エチジウムブロマイド等のインターカレーターによる染色を行い、紫外線を照射して検出する方法が挙げられる。
または、例えば、細胞株からDNAを抽出し、これらの遺伝子に対するプライマーセットを用いたリアルタイムPCR法により、反応液に予め蛍光プローブ又は蛍光色素を添加し、リアルタイムでこれらの遺伝子の増幅をモニタリングしながら定量的に検出する方法が挙げられる。
または、例えば、細胞株からRNAを抽出し、これらの遺伝子から転写されたmRNAを逆転写酵素及びこれらの遺伝子に対するプライマーセットを用いたRT−PCR法により、mRNAから変換されたcDNAを増幅し、上述の検出法(アガロースゲル分離後のインターカレーターによる染色法、又は蛍光プローブ又は蛍光色素を用いたリアルタイムでの検出法)により、検出する方法も挙げられる。
本明細書において、「機能の少なくとも一部が失われた」とは、標的遺伝子が、欠失、置換、挿入等されることにより、標的遺伝子がコードするタンパク質の生理的機能の少なくとも一部を果たすことができない状態を意味する。相同染色体上の片方の標的遺伝子が、欠失、置換、挿入等されていてもよく、両方の標的遺伝子が、欠失、置換、挿入等されていてもよい。
[第2の選択工程]
本発明のスクリーニング方法は、さらに、前記第1の選択工程の後に、xthA遺伝子の有無を評価し、xthA遺伝子を有する細胞株を選択する第2の選択工程を備えることが好ましい。
一般に、xthA遺伝子は、二本鎖DNAの3’−OH末端から5’−モノヌクレオチドを遊離させる3’→5’エキソヌクレアーゼをコードする遺伝子であり、遺伝子産物である3’→5’エキソヌクレアーゼは、損傷を受けて、DNAグリコシラーゼの活性により除去された塩基を有するDNAや、自然に塩基が欠損したDNAを修復する機能を有する。
本発明のスクリーニング対象となる細胞株において、xthA遺伝子を有することにより、3’→5’エキソヌクレアーゼを発現することができる。
図1は、xthA遺伝子を有する細胞内での相同組換えのメカニズムを模式的に示す図である。図1において、相同配列を有する部位3a及び3bのうち、相同配列を有する部位3bにおける相同組換えのメカニズムを示している。また、相同配列を有する部位3bにおける相同配列を配列Xとした場合、目的の二本鎖DNA1(以下、「dsDNA」と称する場合がある。)及びベクターにおいて、相同配列を有する部位3bは、配列Xを有する部位3b−1と、配列Xと相補的な配列を有する部位3b−2とからなる。
まず、発現した3’→5’エキソヌクレアーゼ4は、目的のdsDNA1及びベクター2が導入された細胞内において、目的のdsDNA1の3’末端から内側へ向かって配列Xを有する部位3b−1を分解し、配列Xと相補的な配列を有する部位3b−2を含む末端部に1本鎖領域を生成する。また、3’→5’エキソヌクレアーゼ4は、ベクター2の3’末端から内側へ向かって配列Xと相補的な配列を有する部位3b−2を分解し、配列Xを有する部位3b−1を含む末端部に1本鎖領域を生成する。その結果、目的のdsDNA1の配列Xと相補的な配列を有する部位3b−2を含む末端部と、ベクター2の配列Xを有する部位3b−1を含む末端部とがアニールする。次いで、細胞内に存在するDNAポリメラーゼ5によりニックが埋められ、DNAリガーゼ6により結合される。逆側の相同配列を有する部位3aを含む末端部でも同様のメカニズムで相同組換えが行われているため、その結果、目的の二本鎖DNAがベクターに挿入される。
よって、xthA遺伝子を有する細胞株を選択することで、高効率で相同組換えが行われ、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターを得ることができ、高効率でインビボクローニングを行うことができる。
xthA遺伝子の有無を評価する方法としては、上述の[第1の選択工程]において、標的遺伝子の有無を評価する方法として例示された方法と同様の方法が挙げられる。
[第3の選択工程]
本発明のスクリーニング方法は、第2の選択工程に代えて、又は第2の選択工程とともに、hsdR遺伝子の有無を評価し、hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた細胞株を選択する第3の選択工程を備えることが好ましい。
一般に、hsdR遺伝子は、特定の塩基配列を切断する制限酵素をコードする遺伝子であって、hsdM遺伝子がコードするメチル化修飾酵素、及びhsdS遺伝子がコードするメチル化認識タンパク質と共に、制限−修飾システムを担う。この制限−修飾システムでは、細胞内において、特定の塩基配列の片側のみがメチル化されている(宿主細胞中の染色体のDNA複製の間に起こるように片側だけがメチル化されている)場合、制限−修飾システムにおけるメチル化修飾酵素が働き、特定の塩基配列を切断から守る。一方、その特定の塩基配列がいずれの鎖においてもメチル化されていない場合、制限−修飾システムにおける制限酵素が働き、特定の塩基配列を切断する。
通常、外来DNAである目的の二本鎖DNA及びベクターは、特定の塩基配列を有する場合、いずれの鎖においても該配列はメチル化されていないため、上記制限−修飾システムにより切断される。
よって、hsdR遺伝子の機能が失われた細胞株を選択することで、外来DNAである目的の二本鎖DNA及びベクターが上記制限−修飾システムによる切断を受けないため、高効率で相同組換えが行われ、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターを得ることができ、高効率でインビボクローニングを行うことができる。
hsdR遺伝子の有無を評価する方法としては、上述の[第1の選択工程]において、標的遺伝子の有無を評価する方法として例示された方法と同様の方法が挙げられる。
<<インビボクローニング可能な細胞株の製造方法>>
本発明のインビボクローニング可能な細胞株の製造方法は、前記細胞株がrpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子を有する場合に、前記遺伝子の少なくとも一部の機能を失わせる工程Aを備える。
本発明において用いられる細胞株としては、通常、宿主細胞としてDNAクローニング及びタンパク質発現系として用いられるものであればよく、その由来となる生物種は限定されない。細胞株の由来となる生物種としては、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法>>において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、細胞株の由来となる生物種としては、取扱いの容易さから、大腸菌又は哺乳動物細胞であることが好ましく、大腸菌であることがより好ましい。また、細胞株として、大腸菌株以外の株を用いる場合、存在の有無を評価する遺伝子は、対応する生物のホモログ遺伝子となる。
本発明の製造方法について、以下に詳細を説明する。
[工程A]
rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の少なくとも一部の機能を失わせる方法としては、これらの標的遺伝子をノックアウトする方法、又はこれらの標的遺伝子をノックダウンする方法が挙げられる。
細胞株として大腸菌株を用い、これらの遺伝子をノックアウトする場合、λRedレコンビナーゼを利用した相同組み換え方法(参考文献:Datsenko and Wanner, “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”, PNAS, vol.97, no.12, p6640-6645, 2000.)が挙げられる。
また、これらの標的遺伝子をノックアウトする技術として、ゲノム編集技術が挙げられる。ゲノム編集技術としては、例えば、CRISPR−Cas9システム、TALENシステム、Znフィンガーヌクレアーゼシステム等が挙げられる。
また、これらの標的遺伝子をノックダウンする方法としては、RNAi誘導性核酸(例えば、siRNA、shRNA、miRNA等)を用いる方法が挙げられる。
これらの標的遺伝子が欠損したかを確認する方法としては、上述の[第1の選択工程]において標的遺伝子の有無を評価する方法として例示された方法と同様の方法が挙げられる。
[工程B]
本発明のインビボクローニング可能な細胞株の製造方法は、前記細胞株がhsdR遺伝子を有する場合に、前記hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能を失わせる工程Bを備えることが好ましい。
hsdR遺伝子を有する場合に、前記hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能を失わせる方法、及びhsdR遺伝子が欠損したかを確認する方法としては、上述の[第1の選択工程]において標的遺伝子の有無を評価する方法として例示された方法と同様の方法が挙げられる。
[工程C]
本発明のインビボクローニング可能な細胞株の製造方法は、工程Bに代えて、又は工程Bとともに、xthA遺伝子を細胞株の染色体に挿入し、xthA遺伝子を発現させる工程Cを備えることが好ましい。
特に、細胞株がxthA遺伝子を有しない場合に、xthA遺伝子を細胞株の染色体に挿入し、xthA遺伝子を発現させることが好ましい。また、既にxthA遺伝子を有する細胞株においても、さらにxthA遺伝子を挿入することにより、xthA遺伝子を高発現させてもよい。
xthA遺伝子の染色体上の挿入する遺伝子領域としては、恒常的且つ安定的に発現が行われている遺伝子領域であり、当該領域に本来コードされている遺伝子が欠損又は改変された場合であっても、生命の維持が可能な領域であればよい。
また、xthA遺伝子の染色体への挿入方法としては、相同組換えによる方法が好ましく、ゲノム編集技術を用いた相同組換えによる方法がより好ましい。ゲノム編集技術としては、CRISPR−Cas9システム、TALENシステム、Znフィンガーヌクレアーゼシステム等が挙げられ、操作が簡便であり、高い選択性で目的部位に標的遺伝子を挿入できることから、CRISPR−Cas9システムを用いることが好ましい。
xthA遺伝子は、タグ配列、プロモーター配列、転写終結配列、及び薬剤選択マーカー遺伝子の組み合わせとともに導入してもよい。ここで、タグの中には、蛍光タグ(GFPなど)、アフィニティータグ、デグロンタグ、局在タグ等が挙げられる。
薬剤選択マーカー遺伝子は、xthA遺伝子の上流(5’側)又は下流(3’側)に、作動可能に連結されていればよい。薬剤選択マーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ヒスティディノール耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子等が挙げられ、これらに限定されない。薬剤選択マーカー遺伝子を挿入することにより、該薬物を含む培地を用いて細胞を培養することで、xthA遺伝子が導入された細胞を選択することができる。
工程Cにおいて、xthA遺伝子の転写を制御するプロモーター配列がxthA遺伝子に上流(5’側)に作動可能に連結されていることが好ましい。
なお、本明細書において、「作動可能に連結」とは、遺伝子発現制御配列(例えば、プロモーター又は一連の転写因子結合部位)と発現させたい遺伝子(本発明においては、xthA遺伝子)との間の機能的連結を意味する。ここで、「発現制御配列」とは、その発現させたい遺伝子(本発明においては、xthA遺伝子)の転写を指向するものを意味する。
xthA遺伝子の細胞株への導入方法としては、公知の遺伝子導入手法(例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法等)を用いることができる。
xthA遺伝子が挿入されたか否かの確認方法としては、公知の方法を用いればよく、例えば、薬剤選択マーカー遺伝子をxthA遺伝子と共に挿入することにより、薬剤を含む培地にて、細胞株を培養し、生育可能な細胞を選択する方法が挙げられる。
または、[第1の選択工程]において標的遺伝子の有無を評価する方法として例示された方法と同様の方法が挙げられる。
<<細胞株>>
本発明の細胞株は、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた細胞株である。
本発明の細胞株は、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる遺伝子の多重変異株であることが好ましい。多重変異により、インビボクローニング効率を劇的に上昇させることができる。
また、本発明の細胞株は、さらに、xthA遺伝子を有することが好ましい。xthA遺伝子を有することにより、エキソヌクレアーゼ活性により、高効率で相同組換えが行われる。
また、本発明の細胞株は、xthA遺伝子を有することに代えて、又はxthA遺伝子を有することに加えて、hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた細胞株であることが好ましい。hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能が失わることにより、外来DNAが、制限−修飾システムによる切断を受けず、高効率で相同組換えが行われる。
本発明の細胞株としては、通常、宿主細胞としてDNAクローニング系及びタンパク質発現系として用いられるものであればよく、その由来となる生物種は限定されない。細胞株の由来となる生物種としては、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法>>において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、細胞株の由来となる生物種としては、取扱いの容易さから、大腸菌又は哺乳動物細胞であることが好ましく、大腸菌であることがより好ましい。
<<インビボクローニング方法>>
本発明のインビボクローニング方法は、上述のスクリーニング方法、又は上述の製造方法を用いて、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニング、又は製造した後、得られた細胞株に、ベクターと、5’末端領域及び3’末端領域に前記ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する目的の二本鎖DNAとを導入する導入工程と、前記導入工程後、前記細胞株を培養し、前記目的の二本鎖DNAを相同組換えにより前記ベクターに挿入する挿入工程と、を備えるインビボクローニング方法を提供する。
本発明のインビボクローニング方法において用いられる細胞株は、上述のスクリーニング方法、又は上述の製造方法で得られたインビボクローニング可能な細胞株である。また、細胞株の由来となる生物種は限定されない。細胞株の由来となる生物種としては、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法>>において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、細胞株の由来となる生物種としては、取扱いの容易さから、大腸菌又は哺乳動物細胞であることが好ましく、大腸菌であることがより好ましい。
本発明のインビボクローニング方法において用いられる細胞株は、導入工程で用いられるのに適した細胞数となるように、予め培養しておけばよい。
本発明のインビボクローニング方法について、以下に詳細に説明する。
[導入工程]
まず、上述のスクリーニング方法、又は上述の製造方法で得られた細胞株に、ベクターと、5’末端領域及び3’末端領域に前記ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する目的の二本鎖DNAとを導入する。
導入工程において用いられるベクターは、直鎖状であることが好ましい。係るベクターとしては、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13、pUC57等の大腸菌由来のプラスミド;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のプラスミド;pSH19、pSH15等の酵母由来プラスミド;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス等のウイルス;これらを改変したベクター等が挙げられる。
ベクターは、タグ配列、プロモーター配列、転写終結配列、及び薬剤選択マーカー遺伝子の組み合わせを含んでいてもよい。ここで、タグの中には、蛍光タグ(GFPなど)、アフィニティータグ、デグロンタグ、局在タグ等が挙げられる。
導入工程において用いられる目的の二本鎖DNAは、5’末端領域及び3’末端領域にベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有し、該相同な塩基配列の長さは、例えば10bp以上30bp以下であればよく、例えば15bp以上25bp以下であればよい。
ベクターと、5’末端領域及び3’末端領域に前記ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する外来DNAとの細胞株への導入方法としては、公知の遺伝子導入手法(例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法等)等が挙げられる。
[挿入工程]
次いで、導入工程後の細胞株を培養し、目的の二本鎖DNAを相同組換えによりベクターに挿入する。
細胞株の培養条件としては、培養する細胞の種類により適宜選択することができる。
培養温度としては、例えば25℃以上40℃以下であってもよく、例えば30℃以上39℃以下であってもよく、例えば35℃以上39℃以下であってもよい。
また、培養環境は、例えば約5%のCO条件下であってもよい。
培養時間としては、細胞の種類、細胞数等により適宜選択することができ、例えば1日以上15日以下であってもよく、例えば1日以上10日以下であってもよく、例えば1日以上7日以下であってもよい。
また、使用する細胞培養用培地としては、細胞の生存増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン)等を含む基本培地であればよく、細胞の種類により適宜選択することができる。
細胞培養用培地としては、例えば、LB培地、大腸菌用最少培地(Davis培地)、大腸菌用最少塩培地(MS)等の大腸菌培養用培地;枯草菌用最少培地(Spizizen最少培地)、枯草菌用最少塩培地、枯草菌形質転換用培地I、枯草菌形質転換用培地II等の枯草菌培養用培地;酵母用最少培地(YPD培地)、酵母用完全培地(YPAD培地)等の酵母培養用培地;MurashigeとSkoogの培地(MS培地)、B5培地、ハイポネックス培地等の植物培養用培地;グレース昆虫培地、シュナイダー昆虫培地等の昆虫細胞培養用培地;DMEM、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI−1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium:Nutrient Mixture F−12(DMEM/F−12)、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)等の動物細胞培養用培地等が挙げられ、これらに限定されない。
さらに、挿入工程の後に、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターが形成されているか否かを確認する確認工程を有していてもよい。
確認工程において、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターが形成されているか否かを確認する方法としては、公知の方法を用いればよく、例えば、薬剤選択マーカー遺伝子を目的の二本鎖DNAと共に挿入することにより、薬剤を含む培地にて、細胞株を培養し、生育可能な細胞を選択する方法が挙げられる。
ベクターにおいても薬剤選択マーカー遺伝子を有する場合は、目的の二本鎖DNAと共に挿入される薬剤選択マーカー遺伝子と、ベクターが有する薬剤選択マーカー遺伝子とは異なる種類のものであることが好ましい。
または、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターが形成されているか否かを確認する方法としては、例えば、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法>>の[第1の選択工程]においてxthA遺伝子の有無を評価する方法として例示された方法と同様の方法が挙げられる。
<<キット>>
本発明のキットは、インビボクローニングを行うためのキットであって、上述した細胞株を備えるキットを提供する。
本発明のキットに備えられた細胞株の由来となる生物種としては、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法>>において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、細胞株の由来となる生物種としては、取扱いの容易さから、大腸菌又は哺乳動物細胞であることが好ましく、大腸菌であることがより好ましい。
本発明のキットは、さらに、ベクターを備えていてもよい。
本発明のキットに備えられたベクターとしては、特別な限定はなく、上述の<<インビボクローニング方法>>において例示されたものと同様のものが挙げられる。
本発明のキットは、5’末端領域及び3’末端領域に前記ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する目的の二本鎖DNAを準備することで、目的の二本鎖DNAを容易かつ高効率でインビボクローニングすることができる。
本発明のキットは、さらに、細胞株を培養するための細胞培養用培地を備えていてもよい。細胞培養用培地としては、キットに備えられた細胞株の種類に応じて、適宜選択することができ、上述の<<インビボクローニング方法>>において例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、本発明のキットは、さらに、目的の二本鎖DNA及びベクターを細胞株へ導入するためのトランスフェクション試薬を備えていてもよい。トランスフェクション試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬及びリン酸カルシウムからなる群より選択される。このようなトランスフェクション試薬としては、例えば、Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA)、TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI)、TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI)、SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA)、PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA)、LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA)、JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)、ExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]iVEC(in vivo E. coli Cloning)活性の高い大腸菌株の探索
(1)インサートDNA及びベクターの作製
図2は、iVEC活性の高い大腸菌株の探索方法のスキームを示す。
インサートDNAとして、pACYC184由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子を有し、かつ5’末端側及び3’ 末端側それぞれにベクターに対して相同な配列(20bp)を有するDNA(992bp)を用いた(インサートDNAの塩基配列を配列番号1に示した)。
また、ベクターとして、アンピシリン耐性遺伝子を有するpUC19ベクター(2.6kb)を用いた(pUC19ベクターの塩基配列を配列番号2に示した)。
まず、インサートDNA及びベクターを以下の表1に示すPCRでの増幅用プライマーの塩基配列を用いて、PCRを行い、反応液を得た。
PCR反応液を精製してその後のスクリーニングに用いた。
Figure 2019187368
(2)iVEC活性に関与する遺伝子のスクリーニング
次いで、3909種の大腸菌株を備えたKeio collection(参考文献:Baba et al., (2006) Molecular Systems Biology, doi:10.1038/msb4100050)を用いて、iVEC活性の高い株をスクリーニングした。具体的には、1mlのL倍地中で、37℃で一晩静置培養した培養液を氷上で10分間静置した後に、5,000g、4℃で1分間遠心して、上清を除いた。沈殿した大腸菌株を、(1)で増幅したベクター及びインサートDNAをそれぞれ0.05pmol, 0.15pmolを加えたTSS溶液(10%PEG8000,10%glycerol,50mM MgSO,10%DMSO in L培地)に懸濁して、液体窒素を用いて凍結させた。これを氷上で10分間静置して溶かした後、軽く混ぜて、さらに10分間氷上で静置した。これにL培地を1mL加えて37℃で45分間培養した。次いで、5,000gで1分間遠心し、培地の大半を捨て、培地を100μL程度残した。次いで、各大腸菌株のペレットを懸濁し、クロラムフェニコール及びアンピシリンを含むLB寒天培地に塗り広げ、大腸菌を植菌したこのLB寒天培地を37℃で16時間培養し、1枚のLB寒天培地プレートに出現したコロニー数を計測した。BW25113株を用いて同様の操作を行い、1枚のLB寒天培地プレートに出現したコロニー数を計測し、コントロールとした。BW25113株のコロニー数を1としたときに、2.5倍以上のコロニー数を有する(iVEC活性を有する)株として、ΔrpoZ::kan株、ΔyfaH::kan株、ΔrsxC::kan株、ΔyeaE::kan株、ΔslyA::kan株、及びΔsapC::kan株を見出した。
(3)iVEC3株を用いた特定の遺伝子欠損変異株におけるiVEC活性のコンファメーション
rpoZ欠失株の作製では、まずプラスミドベクターpKH5002SBを鋳型にしてプライマーセット[pKH_F, pKH_R]を用いてPCRすることにより線状化した。大腸菌野生株であるMG1655株のゲノムより、rpoZ遺伝子の上流部分と下流部分の約1.5kbの領域を、それぞれプライマーセット[rpoZ_up_F, rpoZ_up_R],[rpoZ_down_F, rpoZ_down_R]を用いてPCRにより増幅して、得られたDNA断片をそれぞれrpoZ_up, rpoZ_downとした。rpoZ_up_F及びrpoZ_down_RはそれぞれpKH_R及びpKH_Fと相補的な20bpの塩基配列が付加されている。また、rpoZ_up_RとrpoZ_down_Fは相補的な配列である。線状化したpKH5002SBとrpoZ_up, rpoZ_downはKeioコレクションのΔrnhA::kan株を用いてiVEC法によりアッセンブルすることで環状プラスミドpKH5002SBΔrpoZを得た。このプラスミドをiVEC3(recA+)株 [MG1655 ΔhsdR ΔendA]に導入することで、北川らの方法(Genes Dev. 1998 Oct 1; 12(19): 3032-3043. )を用いて2回の相同組換えを経ることでrpoZ遺伝子を欠失させた。yfaH, rsxC, yeaE, slyA, sapC遺伝子についても同様の方法で欠失株を作製した。各プライマーの塩基配列は、表2に示す通りである。
Figure 2019187368
次いで、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子のそれぞれをノックアウトしたiVEC3(recA+)株、並びに野生型のiVEC3(recA+)株を1mlのL培地に植菌し、37℃で20時間静置培養した。次いで、培養を止めて、培養液をそれぞれ氷中で10分間冷やした。また、以降の操作は全て氷中の冷やした状態で行った。次いで、5,000g、4℃で1分間遠心し、上清を捨てた。
沈殿した大腸菌株を、(1)で増幅したベクター及びインサートDNAをそれぞれ0.05pmol, 0.15pmolを加えたTSS溶液(10%PEG8000,10%glycerol, 50 mM MgSO,10% DMSO in L培地)に懸濁して、液体窒素を用いて凍結させた。これを氷上で10分間静置して溶かした後、軽く混ぜて、さらに10分間氷上で静置した。これにL培地を1mL加えて37℃で45分間培養した。次いで、5,000gで1分間遠心し、培地の大半を捨て、培地を100μL程度残した。次いで、各大腸菌株のペレットを懸濁し、クロラムフェニコール及びアンピシリンを含むLB寒天培地に塗り拡げ、大腸菌を植菌したLB寒天培地を37℃で16時間培養し、1枚のLB寒天培地プレートに出現したコロニー数を計測した。結果を図3〜4に示す。
図3に示すように、ΔrpoZのiVEC活性は、野生型と比較して120%上昇していた。ΔyfaHのiVEC活性は、野生型と比較して50%上昇していた。ΔrsxCのiVEC活性は、野生型と比較して30%上昇していた。ΔyeaEのiVEC活性は、野生型と比較して70%上昇していた。
図4に示すように、ΔslyAのiVEC活性は、野生型と比較して30%上昇していた。ΔsapCのiVEC活性は、野生型と比較して30%上昇していた。
これらのことから、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子の欠損変異は、iVEC活性を上昇させることが確かめられた。
本発明によれば、高効率でインビボクローニング可能な細胞株のスクリーニング方法を提供することができる。さらに、本発明のスクリーニング方法によって得られた細胞株によれば、目的の二本鎖DNA又は該DNAの遺伝子産物を高収率で得ることができる。
1…目的の二本鎖DNA(dsDNA)、1a,1b…目的の一本鎖DNA(ssDNA)、2…ベクター、3a,3b…相同配列を有する部位、3b−1…配列Xを有する部位、3b−2…配列Xと相補的な配列を有する部位

Claims (11)

  1. インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法であって、
    細胞株について、rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の有無を評価し、評価された前記遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた細胞株を選択する第1の選択工程を備えることを特徴とする方法。
  2. さらに、前記第1の選択工程の後に、xthA遺伝子の有無を評価し、xthA遺伝子を有する細胞株を選択する第2の選択工程、及び/又は、hsdR遺伝子の有無を評価し、hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた細胞株を選択する第3の選択工程を備える請求項1に記載の方法。
  3. 前記細胞株が大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである請求項1又は2に記載の方法。
  4. インビボクローニング可能な細胞株の製造方法であって、
    前記細胞株がrpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子を有する場合に、前記遺伝子の少なくとも一部の機能を失わせる工程Aを備える細胞株の製造方法。
  5. さらに、前記細胞株がxthA遺伝子を有しない場合に、前記xthA遺伝子を細胞株の染色体に挿入し、xthA遺伝子を発現させる工程C、及び/又は、前記細胞株がhsdR遺伝子を有する場合に、前記hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能を失わせる工程Bを備える請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記細胞株が大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである請求項4又は5に記載の製造方法。
  7. rpoZ遺伝子、yfaH遺伝子、rsxC遺伝子、yeaE遺伝子、slyA遺伝子、及びsapC遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の少なくとも一部の機能が失われたことを特徴とする細胞株。
  8. さらに、xthA遺伝子を有し、及び/又は、hsdR遺伝子の少なくとも一部の機能が失われた請求項7に記載の細胞株。
  9. 前記細胞株が、大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである請求項7又は8に記載の細胞株。
  10. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法、又は請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造方法を用いて、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニング、又は製造した後、得られた細胞株に、ベクターと、5’末端領域及び3’末端領域に前記ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する目的の二本鎖DNAとを導入する導入工程と、
    前記導入工程後、前記細胞株を培養し、前記目的の二本鎖DNAを相同組換えにより前記ベクターに挿入する挿入工程と、
    を備えることを特徴とするインビボクローニング方法。
  11. インビボクローニングを行うためのキットであって、請求項7〜9のいずれか一項に記載の細胞株を備えることを特徴とするキット。
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