JP2019187316A - 細胞培養基材、並びに細胞培養基材を用いた細胞培養容器、細胞の培養方法、及び薬剤の有効性又は毒性の試験方法 - Google Patents

細胞培養基材、並びに細胞培養基材を用いた細胞培養容器、細胞の培養方法、及び薬剤の有効性又は毒性の試験方法 Download PDF

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Abstract

【課題】培養される細胞の観察が容易であり、スフェロイドを選択的に形成することが可能な細胞培養基材、並びに細胞培養基材を用いた細胞培養容器、細胞の培養方法、及び薬剤の有効性及び/又は毒性を試験する方法を提供すること。【解決手段】本発明によれば、ホロセルロース繊維を含む細胞培養基材、並びに当該細胞培養基材を用いた細胞培養容器、細胞の培養方法、及び薬剤の有効性又は毒性の試験方法が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞培養基材、並びに細胞培養基材を用いた細胞培養容器、細胞の培養方法、及び薬剤の有効性又は毒性の試験方法に関する。
再生医療等の研究においては、in vivoでの薬物の有効性や毒性の予測等をより確実に行うため、in vitroでの様々なアッセイにおいて、生体内での環境を可能な限り再現することが望ましい。例えば、肝臓、膵臓、皮膚、血管等の各器官を形成する細胞は、生体内において、細胞同士が三次元的にネットワークを形成することで機能を発現している。したがって、in vitroの細胞培養においても、細胞同士が三次元的にネットワークを形成できるような培養(三次元培養)が求められる。
三次元培養を行うための手法としては、例えば、ヒドロゲル又は膜の形態の植物由来の機械的に崩壊させたセルロースナノファイバー、及び/又は化学的に修飾されたセルロースパルプ[例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルで酸化したセルロース(TEMPO酸化セルロースパルプと呼ぶ場合がある)]を機械的に崩壊させたセルロースナノファイバーヒドロゲルを含む細胞培養マトリックスを用いた培養が知られている(下記特許文献1参照)。
特表2013−541956号公報
細胞同士が三次元的に集合した細胞集合体の中でも、「スフェロイド」は、細胞同士の相互作用及び細胞外マトリックスが発達しており、より生体内の組織に近いものである。スフェロイドを形成する細胞は、例えば従来の二次元培養細胞と比較して、生体内において発現している機能をより忠実に維持できることから、生体に近いアッセイが期待できる。しかし、TEMPO酸化セルロースパルプを機械的に破砕させたセルロースナノファイバーを含む細胞培養マトリックスを用いても、スフェロイドを形成しない細胞が相当程度混在してしまい、生体内において発現している機能を忠実に維持できる程度にスフェロイドを選択的に形成することは困難であることが判明した。また、化学修飾をせずに機械的に破砕させたセルロースナノファイバーを含む細胞培養マトリックスを用いた場合、光学的な透明性を担保することができず、in vitro試験で画像解析等を実施する際に細胞を観察することが困難である。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、培養される細胞の観察が容易であり、スフェロイドを選択的に形成することが可能な細胞培養基材、並びに細胞培養基材を用いた細胞培養容器、細胞の培養方法、及び薬剤の有効性又は毒性を試験する方法を提供することを目的とする。
本発明は、ホロセルロース繊維を含む細胞培養基材を提供する。本発明に係る細胞培養基材によれば、透明度を高くすることができるため、細胞培養基材を通して、培養される細胞の観察が容易となる。また、当該細胞培養基材上で細胞を培養することでスフェロイドを選択的に形成することが可能になり、より生体内の組織に近い細胞塊を得ることができる。なお、本明細書におけるスフェロイドの意義は後述する。
細胞培養基材としては、例えば、厚さが5〜100μmのときに、ヘーズが40%以下となるものを採用できる。このようなヘーズ値である場合には、細胞培養基材を通した細胞の観察が特に容易となるため、スフェロイドの生成をより確実に早期に検出できる。これにより、in vitro試験において細胞をより詳細に観察することができ、細胞の画像取得及び機能解析、いわゆるハイコンテントアッセイ(例えば、細胞内のオルガネラ等の構造体の解析等)をより効率的且つ正確に実施することができる。
上記細胞培養基材は、細胞培養容器に適用できる。すなわち、本発明は、細胞培養基材を備える細胞培養容器を提供する。本発明はまた、上記細胞培養基材を用いた細胞の培養方法であって、細胞培養基材に細胞を接触させた状態で、細胞を培養して培養細胞を得る工程を備える培養方法を提供する。この培養細胞は、細胞を三次元培養して得られるものであることが好ましい。
上述した細胞培養容器又は培養方法を適用することで、スフェロイドを選択的に形成することが可能となる。また、スフェロイドの生成をより確実に実施できる。さらに、in vitro試験において細胞をより詳細に観察することができ、細胞の画像取得及び機能解析(例えば、細胞内のオルガネラ等の構造体の解析等)をより効率的且つ正確に実施することができる。
このようにして、細胞培養基材上で三次元培養された培養細胞を得ることができる。また、この培養細胞と薬剤とをin vitroで接触させる工程を備える、薬剤の有効性又は毒性の試験方法が提供される。
本発明によれば、培養される細胞の観察が容易であり、スフェロイドを選択的に形成することが可能な細胞培養基材、並びに細胞培養基材を用いた細胞培養容器、細胞の培養方法、及び薬剤の有効性又は毒性の試験方法が提供される。
一実施形態に係る細胞培養容器を示す模式断面図である。 培養4日目の各細胞培養基材A〜EでのHepG2の生育状態を示す顕微鏡写真である。 培養4日目の各細胞培養基材A〜EでのMCF−7の生育状態を示す顕微鏡写真である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る細胞培養基材は、ホロセルロース繊維を含む。当該細胞培養基材を用いて細胞を培養することで、スフェロイドを選択的に形成することが可能となる。すなわち、本実施形態に係る細胞培養基材は、スフェロイド形成用細胞培養基材ということもできる。なお、本実施形態においてホロセルロースは、セルロース原料を脱リグニン処理(ホロセルロース化)することにより得られるものである。また、本実施形態においてスフェロイドとは、細胞が球状、塊状等に三次元的に集合した細胞集合体であり、細胞と細胞とがカドヘリン等の細胞表層タンパク質を介して結合することで、細胞の機能がin vivoに近い機能を発揮する細胞の凝集体をいう。さらに、本実施形態において「スフェロイドを選択的に形成する」とは、スフェロイドを形成しない細胞を含まないか、又は含むとしても、生体内において発現している機能を維持できる程度であることをいう。
ホロセルロース繊維を含む細胞培養基材を用いることで、スフェロイドを選択的に形成することができる理由は、細胞培養基材におけるカルボキシル基の存在量の特異性にあると本発明者等は推察する。
まず、従来の細胞培養基材に含まれる化学的に修飾されたセルロースナノファイバーは、セルロース原料を機械的に破砕処理する前に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)等を用いて酸化処理することで得られるものであり、細胞培養基材においてカルボキシル基が過度に存在する。カルボキシル基が過度に存在する細胞培養基材を用いて細胞を培養すると、細胞が当該基材の培養面に対して過度に接着するため、細胞が平面的に広がって増殖しやすくなるか、又は播種した細胞が遊走できず、凝集体を形成できなくなる。
これに対し、本実施形態の細胞培養基材は、セルロース原料に対して脱リグニン処理を行ったホロセルロース繊維を含むものであり、脱リグニン処理中に酸化は生じるものの、TEMPO等による強力な酸化処理をすることなく得られるものであるため、細胞培養基材においてカルボキシル基が適度な存在量を示す。カルボキシル基が適度に存在する細胞培養基材を用いて細胞を培養することにより、細胞が適度な接着力で基材の培養面に浮遊することなく付着するため、細胞の遊走を阻害することなく好適なスフェロイドが形成されると考えられる。
なお、培養細胞によってはスフェロイドを形成しやすい細胞(HepG2、ラット初代肝細胞等)とスフェロイドを形成しにくい細胞(MCF−7等)とが存在することが知られているが、本実施形態に係る細胞培養基材を用いることで、スフェロイドを形成しやすい細胞はもちろん、スフェロイドを形成しにくい細胞でも細胞培養基材を細胞毎に変更することなく、容易にスフェロイドを取得することが可能である。
また、ホロセルロース繊維を含む細胞培養基材を細胞培養に用いることで、セルロース繊維を含む同様の基材を細胞培養に用いた場合と比較して、培養される細胞の観察が容易となる。この理由は、後述するセルロース原料の脱リグニン処理によるものと考えられる。一般にセルロースは、リグニン、ヘミセルロース等の成分と化学的に結合しているため、脱リグニン処理を行わずに機械解繊処理を行って得られるセルロース繊維は、解繊が不十分な太い繊維を含んでしまい、微細なセルロース繊維を得ることが難しい。解繊が不十分な太い繊維を含むセルロース繊維は、顕微鏡観察の際に細胞とともに観察されるため、細胞の観察性が著しく低下する。また、太いセルロース繊維は、カビ等の微生物と見間違う可能性もあるため、細胞培養基材としては不適である。一方、脱リグニン処理後に機械解繊処理を行うことで効率的に太いセルロース繊維を含まないセルロース繊維(セルロースナノファイバー)を得ることができ、透明性が向上し、細胞の観察が更に容易となる。
上述したように、本実施形態においてホロセルロースは、セルロース原料を脱リグニン処理(ホロセルロース化)することにより得られるものである。
セルロース原料は、セルロースが含まれている材料であればよく、植物由来又は細菌由来のセルロースであってもよいが、入手容易性、コスト等の観点から、植物由来のセルロースをセルロース原料として使用することが好ましい。例えば、カラマツ、スギ、アブラヤシ、ヒノキ等から得られる各種木材;パルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙等の紙類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類をセルロース原料として使用してもよい。ここで、パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
木材パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ、広葉樹未漂白クラフトパルプ、針葉樹漂白クラフトパルプ、針葉樹未漂白クラフトパルプ、亜硫酸木材パルプ、ソーダパルプ、未晒しクラフトパルプ、酸素漂白クラフトパルプ、加水分解クラフトパルプ等の化学修飾パルプ;セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプなどが挙げられる。
非木材パルプとしては、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ(綿セルロース)、麻(麻セルロース)、麦わら(麦わらセルロース)、バガス(サトウキビの搾りかす)、空果房(EFB)、稲わら、とうもろこし茎、ホヤや海草等から単離されるセルロースなどが挙げられる。
脱墨パルプとしては、古紙を原料とする脱墨パルプ等が挙げられる。
上記セルロース原料は、1種を単独で使用しても、2種以上の混合物の形態で使用してもよい。これらのうち、入手容易性、繊維径の制御のしやすさ、繊維微細化(解繊)等の観点から、セルロースを含む木材パルプ及び化学修飾パルプからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、セルロース原料は市販品を使用してもよい。
脱リグニン処理(ホロセルロース化)の方法は、例えば、セルロース原料を、酸(例えば、硫酸、塩酸、酢酸、無水酢酸)及び酸化剤(漂白剤)(例えば、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素)を含む脱リグニン用溶液に添加し、これを加熱する方法が好ましく使用できる。ここで、加熱条件は、使用するセルロース原料の種類及び酸又は酸化剤の種類によって適宜選択すればよい。例えば、加熱温度は通常、50〜120℃、好ましくは60〜100℃である。加熱時間は通常、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間である。
上記のようにして得られたホロセルロースを解繊することでホロセルロースを微細化させ、ホロセルロース繊維を得ることができる。ここで、ホロセルロースの解繊方法としては、機械解繊等を採用することができる。具体的には、ホロセルロースを含む水性分散液を、解繊処理装置を用いて微細化(解繊)処理する方法が挙げられる。水性分散液を得るために使用される水性媒体としては、水、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等)などが挙げられる。上記水性媒体は、1種を単独で使用しても、2種以上の混合液の形態で使用してもよい。これらのうち、水が好ましい。水性分散液におけるホロセルロース濃度は、機械解繊(微細化)効率の観点から、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.3〜10質量%である。必要に応じて、ホロセルロースの分散性向上の観点から、分散液のpHを調整してもよい。
機械解繊処理としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー等の機械的処理などが挙げられる。また、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーター等、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。このような機械解繊処理を行うことにより、分散液中のホロセルロースが微細化され、ホロセルロース繊維分散液を得ることができる。
ホロセルロース繊維は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲において、上述した脱リグニン処理の前又は後に、予め脱脂処理、アルカリ処理等の物理的又は化学的処理を施してもよい。上記の処理は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
脱脂処理は、例えば、セルロース原料を脱脂用溶液中に浸漬することによって行われる。脱脂用溶液の調製に用いられる溶媒は、使用するセルロース原料の種類等によって適宜選択すればよく、例えば、水、アセトン、アルコール等が挙げられる。上記溶媒は、1種を単独で、又は2種以上の混合溶液の形態で使用してもよい。また、脱脂条件は、使用するセルロース原料の種類等によって適宜選択すればよく、例えば、脱脂処理温度は通常、10〜100℃、好ましくは15〜50℃である。脱脂処理時間は通常、1〜30時間、好ましくは15〜20時間である。また上記脱脂処理は、撹拌下で行われてもよい。
アルカリ処理は、例えば、セルロース原料をアルカリ溶液中に浸漬することによって行われる。アルカリ溶液の調製に用いられるアルカリは、無機物でも有機物でもよい。無機物(無機アルカリ)としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩などが挙げられる。有機物(有機アルカリ)としては、例えば、アンモニア;ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等の、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物、並びにこれらの水酸化物、炭酸塩及びリン酸塩などが挙げられる。また、アルカリ溶液の調製に使用される溶媒は、アルカリを溶解できるものであればよく、水やメタノール、エタノール等の低級アルコールなどを用いることができるが、水を含むことが好ましい。すなわち、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液をアルカリ溶液として好ましく使用できる。アルカリ溶液におけるアルカリ濃度は、例えば、1〜15質量%、好ましくは3〜7質量%である。また、アルカリ処理条件は、使用するセルロース原料やアルカリの種類等によって適宜選択すればよい。例えば、アルカリ処理温度は通常、10〜50℃、好ましくは15〜40℃である。アルカリ処理時間は通常、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間である。また、上記アルカリ処理は、撹拌下で行われてもよい。なお、アルカリ処理を行う場合には、アルカリ処理後のセルロースを洗浄して余分なアルカリを除去してもよい。洗浄に使用できる洗浄液としては、例えば、上記アルカリ溶液に使用したものと同様の溶媒を使用することができる。
上記で得られたホロセルロース繊維分散液は、そのままホロセルロース繊維を含む塗布液(以下、単に「塗布液」ということもある)として使用してもよい。または、ホロセルロース繊維分散液からホロセルロース繊維を分離した後、適当な溶媒に分散させて、塗布液としてもよい。後者の場合に使用できる溶媒は、細胞培養に悪影響を及ぼさないものであることが好ましく、例えば、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等)などが挙げられる。上記溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を併用して用いてもよい。これらのうち、水が好ましい。塗布液におけるホロセルロース繊維の濃度は、スフェロイドをより効率的に形成させるとともに、塗布のしやすさ、目視容易性等の観点から、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜10質量%である。当該濃度範囲となるように、上記で得られたホロセルロース繊維分散液を濃縮してもよい。また、必要に応じて、ホロセルロースの分散性向上のために、分散液のpHを調整してもよい。
塗布液は、ホロセルロース繊維のみを含んでいても(すなわち、基材がホロセルロース繊維のみから構成されていても)、他の成分を含んでいても(すなわち、基材がホロセルロース繊維に加えて他の成分を含んでいても)よい。後者の場合の他の成分としては特に制限はないが、細胞培養に用いられる成分(例えば、血清、各種成長因子、分化誘導因子、細胞外マトリックス、抗生物質、ホルモン、アミノ酸、糖、塩類等)などが挙げられる。また、塗布液が他の成分を含む場合の、他の成分の添加量は、培養細胞に悪影響を与えない量であればよく、例えば、ホロセルロース繊維の添加量100質量部に対して、0.01〜100質量部である。
続いて、上記で得られたホロセルロース繊維分散液を、支持体の培養面又は塗布面に塗布する。支持体の材質としては、例えば、無機ガラス;カーボン;シリコン等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;エポキシ樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニルエーテル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアリールエーテル、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン、フェノール樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂(含フッ素ポリイミド樹脂)、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。支持体の厚みは特に制限されないが、通常、0.01〜10mm、好ましくは0.05〜0.5mmである。
ホロセルロース繊維分散液を支持体の培養面又は塗布面に塗布する塗布方法としては、例えば、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ロールコート、エアーナイフコート、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、スピンコーター、アプリケーター、ベーカーアプリケーター、グラビアコーター、スクリーン印刷機等の装置を用いる種々の塗布方法が挙げられる。塗布は、数回から十数回繰り返し行ってもよい。また、塗布液の支持体への塗布量は、目的とする細胞培養基材の厚みに応じて適宜調整し得る。塗布量は、例えば、支持体の培養面又は塗布面の単位面積当たりのホロセルロース繊維の質量として、0.01mg/cm〜5.0mg/cmであってよい。
塗布後の乾燥条件は、主に溶媒の沸点等を考慮して適宜選択することができる。例えば乾燥温度は、好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜70℃である。乾燥時間は、好ましくは10〜30時間、より好ましくは15〜20時間である。
上記方法により形成された塗膜を所望により支持体から剥離することによって、本実施形態に係る細胞培養基材を得ることができる。当該細胞培養基材は、好ましくは培養に使用する前に滅菌処理を行ってから培養に使用する。細胞培養用器具類の滅菌処理としては、オートクレーブ滅菌、乾熱滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、ガンマ線滅菌、電子線滅菌等の滅菌方法が利用可能である。これらのうち、耐熱耐圧性の低い器具類の滅菌にも適用でき、且つエチレンオキサイドガスのような残留ガスの問題もない点で、ガンマ線滅菌が好ましい。
本実施形態に係る細胞培養基材の厚み(乾燥膜厚)は特に制限されないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜80μmである。
上述したように、本実施形態に係る細胞培養基材においては、カルボキシル基が適度な存在量を示す。細胞培養基材におけるカルボキシル基の存在量は、例えば0.08〜0.55mmol/gであってよく、0.09〜0.50mmol/gであってよく、0.15〜0.25mmol/gであってよい。なお、本明細書における「細胞培養基材におけるカルボキシル基の存在量」は、セルロース原料(セルロースパルプ)の単位重量当たりのカルボキシル基の量として算出できる。カルボキシル基の存在量は、電気伝導度測定によって測定することができ、電気伝導度の緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウムの量(物質量)から算出することができる。
本実施形態に係る細胞培養基材は、培養中の細胞を目視により容易に観察できる観点から、透明であることが好ましい。ここで、透明性は、ヘーズ(濁度)によって評価でき、例えば、細胞培養基材のヘーズは、40%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが更により好ましく、6%以下であることが特に好ましい。このようなヘーズであれば、培養中の細胞をより容易に目視できる。なお、細胞培養基材のヘーズは低いほど好ましいため、下限は特に限定されないが、例えば0.1%以上である。なお、本明細書においてヘーズは、JIS K7136:2000に準拠し、ヘーズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製:HZ−V3(商品名))を用いて測定した値を意味する。
本実施形態に係る細胞培養容器は、上述した細胞培養基材を備える。本実施形態に係る細胞培養容器は、上述した本実施形態に係る細胞培養基材上で細胞を培養する限り、当該細胞培養基材と他の部材とが組み合わされていてもよいし、細胞培養基材と他の部材とが一体化されて構成されていてもよいし、細胞培養基材のみにより構成されていてもよい。本実施形態に係る細胞培養基材がフィルム状等の柔軟な基材である場合は、剛性を有する適当な支持部材と組み合わせて形成してもよい。
図1は、一実施形態に係る細胞培養容器を示す模式断面図である。図1(a)に示されるように、一実施形態において、細胞培養容器100は、細胞培養基材1からなるものでもよく、図1(b)に示されるように、他の実施形態において、細胞培養容器101は、底面及び外周側面を有する支持部材20と、該支持部材20の底面上に配置された細胞培養基材1と、を備えていてもよいし、図1(c)に示されるように、他の実施形態において、細胞培養容器102は、細胞培養基材1と、細胞培養基材1を取り囲むように配置され、外周側面を有する支持部材20と、を備えていてもよい。
細胞培養容器において、開口下側から平面視したときの内郭形状及び外郭形状は、それぞれ例えば円、多角形(四角形、三角形等)などの任意の形状であることができる。支持部材20を構成する材料としては、例えば、無機ガラス;カーボン;シリコン等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;エポキシ樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニルエーテル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアリールエーテル、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン、フェノール樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)等が例示できる。上述した支持体を支持部材として使用してもよい。
本実施形態に係る細胞培養容器は、本実施形態に係る細胞培養基材を備えていればよく、全体としてどのような形状であってもよい。例えば、シングル又はマルチウェルプレート等の培養用プレート、シャーレ、ディッシュ、フラスコ、バッグ等の各種容器の形状であることができる。本実施形態に係る細胞培養容器は、大量培養装置や潅流培養装置などの培養装置における細胞培養容器の形態であってもよい。
本実施形態に係る細胞の培養方法は、上記細胞培養基材に細胞を接触させた状態で、細胞を培養して培養細胞を得る工程を備える。当該細胞培養基材は、ホロセルロース繊維を含むことから、細胞培養基材上で細胞を三次元培養することによりスフェロイドを選択的に形成することができる。また、細胞は適度な接着力で細胞培養基材上に付着するため、スフェロイドの大きさを制御することも可能である。したがって、中心部の壊死等に伴う細胞の機能低下を抑制・防止できる。また、当該細胞培養基材を用いて培養した培養細胞は、細胞培養基材に適度に接着するため、細胞培養中に培地交換する際でも、細胞が培地と一緒に除去されることを抑制することができ、細胞ロスを低減すること可能である。
上記細胞の培養方法に用いられる細胞の種類は、例えば、正常細胞、がん細胞、幹細胞、ハイブリドーマ等の融合細胞などを用いることができ、遺伝子導入等の人工的処理がされた細胞であってもよい。例えば、人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cells:iPS細胞)、胚性幹細胞(Embryonic stem cells:ES細胞)、間葉系幹細胞等の一般的に三次元培養を行うことが求められている細胞や、各種前駆細胞及び幹細胞を含む、脂肪細胞、幹細胞、腎細胞、膵臓細胞、乳腺細胞、内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、心筋細胞、神経細胞、グリア細胞、樹状細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞、繊維芽細胞、各種血液系細胞、網膜細胞、角膜由来細胞、生殖腺由来細胞、各種腺細胞、その他間葉系前駆細胞、各種がん細胞等が挙げられる。これらの細胞が由来する生物種も特に限定されず、ヒト及び非ヒト動物由来の各種細胞を用いることができる。細胞が由来する生物種としては、例えば、ヒト、アカゲザル、ミドリザル、カニクイザル、チンパンジー、タマリン及びマーモセット等の霊長類、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の齧歯類、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ウズラ、ミンク、ツパイ、ゼブラフィッシュ等が挙げられる。
細胞培養に用いる培地は、細胞に合わせて適宜選択すればよい。培地の種類としては、例えば、任意の細胞培養基本培地や分化培地、初代培養専用培地等を用いることができる。具体的には、イーグル最小必須培地(EMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α−MEM、グラスゴーMEM(GMEM)、IMDM、RPMI1640、ハムF−12、MCDB培地、ウィリアムス培地E、及びこれらの混合培地等が挙げられるが、細胞が増殖や分化に必要な成分が含まれる培地であれば利用可能である。さらに、血清、各種成長因子、分化誘導因子、抗生物質、ホルモン、アミノ酸、糖、塩類等を添加した培地を使用してもよい。培養温度は、通常は25〜45℃程度で行う。
本実施形態に係る培養細胞は、上記細胞培養基材上で三次元培養された培養細胞であり、細胞培養基材上での三次元培養物ということもできる。本実施形態に係る培養細胞は、特にスフェロイドである。スフェロイドは、例えば肝細胞のような単一な細胞で形成された三次元細胞集合体でも、各種繊維芽細胞や血管内皮細胞等と肝細胞のような2種以上の異なる細胞腫が混在した三次元細胞集合体でもよい。使用できる細胞としては、上記の各種細胞が挙げられる。
本実施形態に係る細胞培養基材を用いることにより、生体内に近い機能を有する培養細胞(スフェロイド)を取得することが可能である。したがって、このような培養細胞と薬剤とをin vitroで接触させる工程を備える方法を用いることで、より生体内に近い環境を再現したin vitroでの薬剤の試験を行うことが可能となる。薬剤の試験は、例えば、医薬品開発時の有効性(薬効)試験や毒性試験等が挙げられる。具体的には、例えば、抗がん剤の開発において、がん細胞に対する薬効試験をin vitroで実施することで、ハイスループットに有効な抗がん剤をスクリーニングすることが求められているが、本実施形態に係る細胞培養基材を利用して取得した培養細胞は、生体内に近い抗がん剤への抵抗性を有するため、生体で実施した試験に近い抗がん剤の薬効データを取得することができる。
本実施形態に係る細胞培養基材を用いることで、生体に近い機能を持った培養細胞を取得することができるため、当該培養細胞を、例えば心疾患、肝臓疾患、加齢黄斑変性等の眼科領域の疾患等の様々な疾患に対する再生医療用途で利用することも可能である。また、本実施形態に係る細胞培養基材は、生体に安全なセルロースを使用しているため、より安全な培養細胞を取得することができ、再生医療用途での利用に好適である。したがって、本実施形態に係る細胞培養基材及び当該基材上での三次元培養物の両者を患部に移植することも可能である。これにより、細胞を基材から回収せずに患部に容易に移植することができ、且つ患部に細胞を長く留めさせることや、細胞の生存率を高く維持できる効果も期待できる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[細胞培養基材の調製]
(実施例1)
スギウッドチップ(40g)を室温(25℃)で一晩(15時間)、アセトンと水の混合液(アセトン:水=900mL:100mL)中で撹拌することによって脱脂処理を行った。続いて脱脂処理したウッドチップを、無水酢酸と過酸化水素の混合液(無水酢酸:過酸化水素=500mL:500mL)中で、90℃、2時間の条件で加熱することによって脱リグニン処理し、ブフナーロートと濾紙No.101を用いて濾過を行った後、蒸留水10Lで洗浄して、ホロセルロースパルプを得た。
得られたホロセルロースパルプを2000mLの水で懸濁し(固形分濃度0.5質量%)、Ball−collisionチャンバーを備えた高圧ウォータージェットシステム(株式会社スギノマシン製:スターバーストラボ「HJP−25005」(商品名))を用いて、245MPaの圧力で直径0.17mmのノズルから押出し、高圧ホモジネート(機械解繊)して、ホモジネート化スラリーを得た。この押出しを50回繰り返し、0.3質量%濃度のホロセルロース繊維分散液を得た。
得られたホロセルロース繊維分散液を0.8質量%濃度になるまで濃縮することで、塗布液Aを調製した。別途、支持体としてのアクリル板(日本テストパネル株式会社製:厚さ2mm)の一方の面に7cm×7cmの穴の開いた金属製の枠材を載せたもの(塗布板)を用意した。
上記にて調製した塗布液Aを上記塗布板の穴に40mL/穴の量で流し込んだ。ガラス棒で塗布液を穴の中全体に伸ばした。枠材を外し、50℃で一晩(15時間)オーブンで乾燥した後、塗膜をアクリル板から回収してホロセルロース繊維を含む細胞培養基材A(30μm厚)を作製した。
(比較例1)
ホロセルロースパルプに代えて、針葉樹溶解サルファイトパルプを2000mLの水で懸濁(固形分濃度0.5質量%)した以外は、実施例1と同様の操作を行い、塗布液B、及びセルロース繊維を含む細胞培養基材B(30μm厚)を作製した。
(比較例2)
湿潤状態の針葉樹溶解サルファイトパルプ(乾燥質量:20g)を、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)0.32g及び臭化ナトリウム2gを含む蒸留水(1500mL)中に懸濁して、セルロースパルプ懸濁液を得た。
得られたセルロースパルプ懸濁液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(4w/v%)を、3.0mmol/gセルロースパルプ濃度となるように撹拌しながら添加し、1.0M水酸化ナトリウム水溶液を加えることでpHを10〜11に維持しながら2時間撹拌しながら酸化処理し、ブフナーロートと濾紙No.101を用いて濾過を行った後、蒸留水10Lで洗浄して、TEMPO酸化セルロースパルプを得た。
得られたTEMPO酸化セルロースパルプを2000mLの水で懸濁し(固形分濃度0.5質量%)、Ball−collisionチャンバーを備えた高圧ウォータージェットシステム(株式会社スギノマシン製:スターバーストラボ「HJP−25005」(商品名))を用いて、245MPaの圧力で直径0.17mmのノズルから押出し、高圧ホモジネート(機械解繊)して、ホモジネート化スラリーを得た。この押出しを20回繰り返し、0.3質量%濃度のTEMPO酸化セルロース繊維分散液を得た。
得られたTEMPO酸化セルロース繊維分散液を0.8質量%濃度になるまで濃縮することで、塗布液Cを調製した。別途、支持体としてのアクリル板(日本テストパネル株式会社製:厚さ2mm)の一方の面に7cm×7cmの穴の開いた金属製の枠材を載せたもの(塗布板)を用意した。
上記にて調製した塗布液を上記塗布板の穴に40mL/穴の量で流し込んだ。ガラス棒で塗布液を穴の中全体に伸ばした。枠材を外し、50℃で一晩(15時間)オーブンで乾燥した後、塗膜をアクリル板から回収してTEMPO酸化セルロース繊維を含む細胞培養基材C(30μm厚)を作製した。
(比較例3)
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(4w/v%)を、5.0mmol/gセルロースパルプ濃度となるように撹拌しながら添加した以外は、比較例2と同様の操作を行い、塗布液D、及びTEMPO酸化セルロース繊維を含む細胞培養基材D(30μm厚)を作製した。
(比較例4)
次亜塩素酸ナトリウム水溶液(4w/v%)を、10mmol/gセルロースパルプ濃度となるように撹拌しながら添加した以外は、比較例2と同様の操作を行い、塗布液E、及びTEMPO酸化セルロース繊維を含む細胞培養基材E(30μm厚)を作製した。
[性能評価]
<ヘーズ(%)の測定>
JIS K7136:2000に準拠し、ヘーズメータ(株式会社村上色彩技術研究所製:HZ−V3(商品名))を用いて、実施例1及び比較例1〜4において作製した各細胞培養基材A〜Eのヘーズを測定した。結果を表1に示す。
<カルボキシル基の存在量の測定>
実施例1及び比較例1〜4において調製した各パルプの乾燥重量を精秤し、蒸留水70g、0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えた懸濁液を調製し、0.05M水酸化ナトリウム水溶液でpHを約8.0とし、30分間撹拌した。その後0.1M塩酸水溶液によってpHを約2.7〜3.0とし、30分間撹拌した後、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHが約11になるまで電気伝導度測定を行った。電気伝導度の緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量から下記の式によりカルボキシル基の存在量を算出した。結果を表1に示す。
カルボキシル基の存在量(mmol/g)=0.05(M)×水酸化ナトリウム量(mL)/パルプ重量(g)
<HepG2細胞付着挙動の評価>
HepG2(ヒト肝癌細胞)はDSファーマバイオメディカル株式会社より購入した。終濃度10(v/v)%ウシ胎児血清(FBS)(DSファーマバイオメディカル株式会社製)、培地の1/100量(体積比)の100×MEM用非必須アミノ酸(DSファーマバイオメディカル株式会社製)、及び終濃度2mMグルタミン溶液(DSファーマバイオメディカル株式会社製)を添加したEMEM培地(DSファーマバイオメディカル株式会社製)(血清添加EMEM培地)を用いて、HepG2の培養を行った。HepG2を、2.0×10cells/cmとなるように、100mmセルカルチャーディッシュ(BD Falcon社)に播種し、37℃で5体積%CO条件下で培養した。100mmセルカルチャーディッシュで80%コンフルエントの状態まで培養したHepG2を、0.25%トリプシン/50mM EDTA溶液で処理した後、上記と同様の血清添加EMEM培地を添加してトリプシン反応を停止させ、HepG2の浮遊細胞懸濁液を得た。0.4(w/v)%トリパンブルー溶液(和光純薬株式会社製)を用いてHepG2の浮遊細胞懸濁液中の生細胞数を測定し、3.1×10cells/cmとなるように、実施例1及び比較例1〜4において作製した各細胞培養基材A〜Eに播種し、37℃で5体積%CO条件下で培養した。培養4日目に位相差顕微鏡を用いて細胞の付着形態やスフェロイド形成の有無を確認し、以下の基準にしたがって、HepG2細胞付着挙動を評価した。評価結果を表1に示す。また、図2に、培養4日目の各細胞培養基材A〜EでのHepG2の生育状態(顕微鏡写真)を示す。なお、各基材は予めγ線滅菌処理した後、上記細胞培養に使用した。
○:スフェロイドのみが形成されていた。
△:スフェロイドと伸展した細胞が混在していた。
×:伸展した細胞のみが存在していた。
<MCF−7細胞付着挙動の評価>
MCF−7(ヒト乳腺癌細胞)はDSファーマバイオメディカル株式会社より購入した。終濃度10(v/v)%ウシ胎児血清(FBS)(DSファーマバイオメディカル株式会社製)、培地の1/100量(体積比)の100×MEM用非必須アミノ酸(DSファーマバイオメディカル株式会社製)、及び終濃度2mMグルタミン溶液(DSファーマバイオメディカル株式会社製)を添加したEMEM培地(DSファーマバイオメディカル株式会社製)(血清添加EMEM培地)を用いて、MCF−7の培養を行った。MCF−7を、2.0×10cells/cmとなるように、100mmセルカルチャーディッシュ(BD Falcon社)に播種し、37℃で5体積%CO条件下で培養した。100mmセルカルチャーディッシュで80%コンフルエントの状態まで培養したMCF−7を、0.25%トリプシン/50mM EDTA溶液で処理した後、上記と同様の血清添加EMEM培地を添加してトリプシン反応を停止させ、MCF−7の浮遊細胞懸濁液を得た。0.4(w/v)%トリパンブルー溶液(和光純薬株式会社製)を用いてMCF−7の浮遊細胞懸濁液中の生細胞数を測定し、3.1×10cells/cmとなるように、実施例1及び比較例1〜4において作製した各細胞培養基材A〜Eを播種し、37℃で5体積%CO条件下で培養した。培養4日目に位相差顕微鏡を用いて細胞の付着形態やスフェロイド形成の有無を確認し、以下の基準にしたがって、MCF−7細胞付着挙動を評価した。評価結果を表1に示す。また、図3に、培養4日目の各細胞培養基材A〜EでのMCF−7の生育状態(顕微鏡写真)を示す。なお、各基材は予めγ線滅菌処理した後、上記細胞培養に使用した。
○:スフェロイドのみが形成されていた。
△:スフェロイドと伸展した細胞が混在していた。
×:伸展した細胞のみが存在していた。
実施例1で得られた細胞培養基材Aを用いてHepG2及びMCF−7を培養した場合、スフェロイドの形成が確認され、細胞の観察性にも優れていた。一方、比較例1で得られた細胞培養基材Bを用いて同様の細胞を培養した場合、スフェロイドの形成が確認されたが、細胞とともにセルロース繊維が多数観察され、細胞の観察性の点で著しく劣っていた。また、比較例2〜4で得られた細胞培養基材C〜Eを用いてHepG2を培養した場合、スフェロイドと伸展した細胞が混在していることが確認され、MCF−7を培養した場合、伸展した細胞のみが存在していることが確認された。
また、付着細胞の培養で一般的に使用されるマルチウェルセルカルチャープレート 24well(BD Falcon社製)を用いて、同様にHepG2及びMCF−7を培養した場合、細胞は進展して二次元培養の付着挙動を示した。
1…細胞培養基材(フィルム)、20…支持部材、100、101、102…細胞培養容器。

Claims (7)

  1. ホロセルロース繊維を含む細胞培養基材。
  2. 厚さが5〜100μmであり、且つヘーズが40%以下である、請求項1に記載の細胞培養基材。
  3. 請求項1又は2に記載の細胞培養基材を備える、細胞培養容器。
  4. 請求項1又は2に記載の細胞培養基材を用いた細胞の培養方法であって、前記細胞培養基材に前記細胞を接触させた状態で、前記細胞を培養して培養細胞を得る工程を備える、培養方法。
  5. 前記細胞を三次元培養して前記培養細胞を得る、請求項4に記載の培養方法。
  6. 請求項1又は2に記載の細胞培養基材上で三次元培養された、培養細胞。
  7. 請求項6に記載の培養細胞と薬剤とをin vitroで接触させる工程を備える、薬剤の有効性又は毒性の試験方法。
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