本発明の第1の発明に係る水生生物収容装置は、水と水生生物を収容可能な収容容器と、
収容容器からの第1汚れを含む第1汚水を移動させる第1移動管路と、
収容容器からの第2汚れを含む第2汚水を移動させる第2移動管路と、
第1汚水および第2汚水の少なくとも一方における汚れを分離する泡沫分離部と、
泡沫分離部で汚れが分離された後の処理水を一時的に収容する一時保管容器と、
一時保管容器からの処理水を収容容器に移送する移送管路と、
移送管路で移送される処理水に空気もしくは酸素の少なくとも一方を溶存させる溶存処理部と、
第1移動管路、第2移動管路、移送管路および溶存処理部の少なくとも一方を制御する制御部を備え、
制御部は、収容容器内部の水があふれ出る状態を維持できるように、一時保管容器の処理水を、移送管路から収容容器に移送させる。
この構成により、収容容器内部で空気層が生じず、かつ、収容容器内部の水の衛生状態が清潔に維持できる。結果として、水生生物の保管や輸送において、水生生物を生きた状態で健康かつ鮮度よく維持できる。
本発明の第2の発明に係る水生生物収容装置では、第1の発明に加えて、収容容器の汚染度および残存酸素量の少なくとも一方を計測する計測部を更に備え、
計測部は、汚染度および残存酸素量の少なくとも一方の測定結果を、制御部に出力し、
制御部は、汚染度が所定値以上である、および残存酸素量が所定値以下である、の少なくとも一つの場合に、一時保管容器の処理水を、移送管路を通じて、収容容器に移送させる。
この構成により、収容容器の清潔度を、必要なレベルに維持することができる。
本発明の第3の発明に係る水生生物収容装置では、第1または第2の発明に加えて、収容容器は、
水と水生生物を収容可能な容器本体部と、
容器本体部の開口部を開閉可能な蓋と、
蓋に設けられる上部排出口と、
容器本体部内部の気体を吸引できる吸引口と、
容器本体部へ溶存処理部で空気もしくは酸素が溶存された処理水を供給する供給口と、
容器本体部の下部に設けられる下部排出口と、を備え、
蓋は、容器本体の容積を超える余分水を、第1汚水を漏出させ、
下部排出口は、第2汚水を排出させる。
この構成により、異なる種類や性質の汚れを、それぞれに適したルートで排出することができる。
本発明の第4の発明に係る水生生物収容装置では、第3の発明に加えて、第1汚れは、容器本体部において、水の上部に移動しやすい特性を有し、
第2汚れは、容器本体部において、水の下部に沈殿しやすい特性を有する。
この構成により、水生生物の種類に応じて生じやすい汚れの種類に応じた排出ができる。特にイカ類などは、上に上がりやすい汚れと下に溜まりやすい汚れとに分かれ、この汚れのそれぞれを、適切に排出できる。
本発明の第5の発明に係る水生生物収容装置では、第4の発明に加えて、上部排出口は、容器本体部の上部に移動する第1汚れを、第1汚水として、第1移動管路に漏出させ、
下部排出口は、容器本体部の下部に沈殿する第2汚れを、第2汚水として排出する。
この構成により、汚れの特性に合わせた排出が実現できる。
本発明の第6の発明に係る水生生物収容装置では、第4または第5の発明に加えて、水生生物がイカ類である場合には、
第1汚れは、イカ類が排出する粘液などの水溶性の有機物であり、
第2汚れは、イカ類が排出する卵や糞などの固形物である。
この構成により、イカ類の特性に合わせた汚水の排出と浄化を実現できる。
本発明の第7の発明に係る水生生物収容装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、一時保管容器の処理水の少なくとも一部を排出して運搬する運搬管路と、運搬管路で運搬された処理水に塩素混入させる塩素混入部を、更に備える。
この構成により、殺菌なども含めた浄化を行える。
本発明の第8の発明に係る水生生物収容装置では、第7の発明に加えて、制御部は、移送管路および運搬管路のそれぞれでの、一時保管容器からの処理水の排出割合を制御する。
この構成により、殺菌を必要とする浄化とそれ以外の浄化とのバランスを図ることができる。結果として、水生生物の特性に合わせた対応ができる。
本発明の第9の発明に係る水生生物収容装置では、第7または第8の発明に加えて、塩素混入部で塩素を混入された後の塩素混入水から、塩素を取り除く塩素部と、
脱塩素部で塩素が取り除かれた除去水を、泡沫分離部に送出する送出管路を、更に備える。
この構成により、塩素を残さずに、処理水を収容容器に供給できる。
本発明の第10の発明に係る水生生物収容装置では、第9の発明に加えて、泡沫分離部は、除去水の汚れを分離する。
この構成により、塩素で殺菌されて塩素が除去された水も、更に汚れを除去できる。この除去によって、より浄化レベルを上げることができる。
本発明の第11の発明に係る水生生物収容装置では、第1から第10の発明に加えて、一時保管容器への流入口に、フィルターを更に備える。
この構成により、異物を泡沫分離部に送ることを防止できる。
本発明の第12の発明に係る水生生物収容装置では、第1から第11のいずれかの発明に加えて、一時保管容器から、処理水の一部を、別体である第2の収容容器に移送する第2移送管路を更に備え、
第2移送管路は、第2の収容容器と接続される。
この構成により、複数の収容容器を含む構成に展開できる。
本発明の第13の発明に係る水生生物収容装置では、第3の発明に加えて、蓋は、容器本体部の上部に備わり、
上部排出口は、容器本体部の上部からあふれる態様で、第1汚水を外部に漏出させる。
この構成により、収容容器内部に空気層を形成することを防止できる。
本発明の第14の発明に係る水生生物収容装置では、第13の発明に加えて、上部排出口から漏出される第1汚水は、容器本体部内部の気泡を合わせて外部に排出し、容器本体部内部に空気層の形成を防止できる。
この構成により、収容容器内部に空気層を形成することを防止できる。
本発明の第15の発明に係る水生生物収容装置では、第3の発明に加えて、上部排出口および下部排出口の少なくとも一方は、フィルターを備える。
この構成により、異物の送出を防止できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(全体概要)
(水生生物の保管と輸送)
本発明の水生生物収容装置は、水生生物を収容して保管する、あるいは輸送する際に使用される。水生生物とは、魚介類、両生類など水中で生活を行う生物である。この魚介類としては、食用のもの、観賞用のものが含まれる。前者としては、漁獲地域で漁獲された食用の魚介類が含まれる。後者としては、個人宅で観賞される熱帯魚や、水族館で展示される魚介類が含まれる。
もちろん、上述の通り両生類のように水中生活を行う生物も対象となり得る。このとき、小型の水生生物から大型の水生生物も含まれる。
また、食用として使用される魚介類は、加工用として使用されることもあり、生食用として使用されることもある。これらのいずれの場合の水生生物も、本発明の対象である。
ここでの保管とは、一時的な保管や一定期間以上の期間での保管のいずれもありえる。例えば、水生生物が漁獲地域で漁獲された後で、当該漁獲地域において、一時的に保管される場合がある。あるいは、漁獲地域から輸送された後で、別の場所で保管される場合がある。すなわち、保管においても、輸送においても、本発明の水生生物用容器は使用される。
また、輸送とは、漁獲地域で漁獲された魚介類が、別の場所に輸送される場合である。例えば、漁獲地域から消費地域へ魚介類が輸送される場合がある。あるいは、消費地域の集積所から、個別の飲食店や販売店に輸送される場合がある。
このような水生生物の保管や輸送などにおいて、本発明の水生生物用容器が使用される。一般的に食用されるサバや鯛などの食用の魚介類が、輸送や保管などされるに際して、この水生生物用容器が使用される。
一例として、近年、イカの活き造りが食される機会が多くなってきている。また、これを好む消費者も多くなってきている。イカを活き造りとして食するには、新鮮で生きた状態のイカを必要とする。しかしながら、イカの漁獲地と、活き造りで食したい消費者の多い地域とは、遠隔であることが多い。
このため、イカの活き作り提供するためには、漁獲地から消費地への輸送が必要となる。従来技術で説明したように、従来の容器では、イカを収容した容器で輸送する際には、イカが容器内部の内壁に衝突してしまったり、イカ同士がぶつかったりして、身体が傷ついたり、場合によっては死んでしまったりしていた。これを防止するために、一度に輸送できるイカの数を減らすと、イカの輸送コストが高くなってしまい、経済的に適していない状況も起こっていた。
本発明の水生生物収容装置は、このような問題を解決するために、発明された。
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1における水生生物収容装置のブロック図である。水生生物収容装置1のそれぞれの要素とその関係を、模式的に示している。水生生物収容装置1は、収容容器2、第1移動管路3、第2移動管路4、泡沫分離部5、一時保管容器6、移送管路7、溶存処理部8と、制御部9、を備える。
収容容器2は、水と水生生物を収容可能である。水は、水生生物の保管や輸送に適した液体であり、真水、淡水、海水、塩水、調整水など、様々なものである。水生生物は、上述したようにイカ類を始めとした魚介類などである。以下においては、主にイカ類を水生生物の例として説明する。
第1移動管路3は、収容容器2からのある汚れの種類である第1汚れを含む第1汚水を移動させる。収容容器2は、その上部から収容容器2の体積を超える水をあふれさせる。あふれさせる際に、第1汚れを含んだ状態で水をあふれさせる。この第1汚れを含んで溢れる状態の水が、第1汚水である。第1移動管路3は、収容容器2からあふれ出るこの第1汚水を移動させる。ここで、第1移動管路3は、第1汚水を泡沫分離部5に移動させる(運搬する)。
第2移動管路4は、収容容器2からのある汚れの種類である第2汚れを含む第2汚水を移動させる。収容容器2は、その下部から第2汚れを収容している水と合わせて排出する。これが、第2汚水である。第2移動管路4は、収容容器2から排出される第2汚水を移動させる(運搬する)。ここで、第2移動管路4は、第2汚水を泡沫分離部5に移動させる(運搬する)。
泡沫分離部5には、第1移動管路3から第1汚水が運搬される。同様に、泡沫分離部5には、第2移動管路4から第2汚水が運搬される。このように、泡沫分離部5には、第1汚水と第2汚水が到達する。泡沫分離部5は、泡の混濁による作用で、第1汚水と第2汚水との少なくとも一方における汚れを分離する。少なくとも一方であるから、第1汚水および第2汚水の両方の汚れを分離してよい。
泡沫分離部5における分離によって、第1汚水から第1汚れが分離される。第2汚水からは第2汚れが分離される。分離された汚れは、泡沫分離部5から外部に排出等される。
泡沫分離部5は、汚れを分離した後の処理水を、一時保管容器6に送出する。一時保管容器6は、送出された処理水を、一時的に保管する。処理水は、やがて収容容器2に運搬されるが、収容容器2に適切な時間間隔により運搬されることが好適である。この適切な時間での運搬のために、処理水は、一時保管容器6に保管される。収容容器2内部に空気層が生じないような時間間隔であったり、第1汚れや第2汚れによる汚染が進みすぎないような時間間隔であったりで、処理水は、収容容器2に運搬されればよい。
移送管路7は、一時保管容器6から処理水を収容容器2に移送する(運搬する)。
溶存処理部8は、一時保管容器6から収容容器2に移送される処理水に対して、空気もしくは酸素の少なくとも一方を溶存させる。溶存処理部8の機能によって、収容容器2に供給される処理水は、空気や酸素を含んだ状態となる。この空気や酸素が溶存された処理水が供給されることで、収容容器2には、浄化されて水生生物の呼吸に対応する水が供給されることになる。この結果、収容容器2は、水生生物からの汚れが生じていても、浄化されて呼吸可能な水が、循環的に供給されることになる。
結果として、浄化されて呼吸可能な水が、収容容器2に供給される状態が維持される。また、この供給される浄化された水は、収容容器2から泡沫分離部5と一時保管容器6を介する経路で循環されるものである。この結果、循環経路によって浄化された水が収容容器2に供給され続け、保管はもちろん、輸送において外部から水を取り込む必要性を低減できる。
制御部9は、収容容器2、第1移動管路3、第2移動管路4、泡沫分離部5、一時保管容器6、移送管路7および溶存処理部8の少なくとも一つを制御する。例えば、制御部9は、第1移動管路3と第2移動管路4での汚水の運搬を制御する。あるいは、一時保管容器6から移送管路7を介して処理水を移送させるタイミングや量などを制御する。あるいは、溶存処理部8の動作内容を制御する。
もちろん、それぞれの要素が独立して動作できる部分と、制御部9によって制御される部分とが分かれていてよい。制御部9は、外部から制御すべき事項について、これらの要素の動作や機能を制御する。
また、制御部9は、収容容器2内部の水が、第1移動管路3にあふれ出る状態を維持できるように、一時保管容器6の処理水を、移送管路7から収容容器2に移送させるように制御する。この制御によって、収容容器2内部には空気層が生じず、常に水で満杯となった状態が維持される。
このように、制御部9の制御によって、収容容器2内部には空気層が生じない。空気層が生じないことで、従来技術で説明したように、イカ類などが輸送中に収容容器2の内壁に衝突したり、揺れすぎたりするなどの問題が回避される。また、収容容器2からあふれる第1汚水は(第2汚水と共に)、浄化されて再び収容容器2に供給される。この循環によって、輸送や保管においても、外部からの水の供給を最小限に抑えることができて効率的である。特に、輸送において、外部からの水供給を抑える(あるいはなくす)ことができ、輸送を容易化できる。
もちろん、保管用として使用される場合でも、外部からの水の供給や入れ替えを低減した状態で、収容容器2の水を清浄かつ呼吸可能に保つことができる。また、収容容器2に空気層を生じさせないので、イカ類を始めとした水生生物が、衝突したりするなどの問題を生じさせにくい。
これらの結果、保管や輸送においても、水生生物の鮮度や健康状態を維持できる。
次に、各部の詳細やバリエーションについて説明する。
(第1移動管路と第2移動管路)
第1移動管路3は、収容容器2からの第1汚水を、泡沫分離部5に移動させる(運搬する)。第1汚水は、収容容器2で発生する第1汚れを含んでいる水である。収容容器2は、その上部に上部排出口31を備えている。上部排出口31は、収容容器2内部の体積を超える水を溢れ出させる。このとき、第1汚れを含んだ水である第1汚水は、収容容器2の上部に上がってくる。このため、上部排出口31は、この第1汚水を、溢れ出させる。
第1移動管路3は、蓋3と接続されている。このため、上部排出口31は、あふれ出る第1汚水を、第1移動管路3に漏出させる。これを受けて、第1移動管路3は、第1汚水を運搬できる。なお、第1汚水とは、第1汚れを含んでいる水であり、収容容器2内部で発生して上方に移動する第1汚れを含んだ水である。第1汚れを含んでいることは、可能性としてなりやすいとのことであり、上部排出口31から第1移動管路3に漏出される第1汚水が、汚れを含んでいないことがあってもよい。
蓋然性として、第1汚れを含んだ第1汚水が、上部排出口31から漏出しやすく、これを受けて、第1移動管路3がこれを移動させるということである。
第1移動管路3は、漏出される第1汚水の水圧によって、泡沫分離部5に第1汚水を運搬してもよい。あるいは、第1移動管路3は、ポンプのような圧力機構を備えており、これによって第1汚水を泡沫分離部5に運搬してもよい。第1移動管路3は、管路形態を有していることで、第1汚水を運搬できる。
第2移動管路4は、収容容器2からの第2汚水を、泡沫分離部5に移動させる(運搬する)。第2汚水は、収容容器2で発生する第2汚れを含んでいる水である。収容容器2は、その下部に下部排出口41を備えている。下部排出口41は、収容容器2内部で発生する第2汚れを含む第2汚水を排出する。下部排出口41は、収容容器2の底面に備わっており、この底面に溜まる第2汚れを、第2汚水として排出することでもよい。
ここで、第2汚れは、収容容器2の下部に溜まりやすい。このため、収容容器2の下部に設けられる下部排出口41は、第2汚れを含む水である第2汚水を排出しやすい。この態様によって、下部排出口41は、第2汚水を排出できる。なお、第2汚水として排出されても、収容容器2の収容される水生生物の状態などによって、第2汚水に第2汚れが含まれていないこともあり得る。蓋然性として第2汚れを含んだ第2汚水であればよい。
第2移動管路4は、この下部排出口41と接続されている。このため、下部排出口41は、第2汚水を第2移動管路4に送り出す。これを受けて、第2移動管路4は、第2汚水を運搬できる。
第2移動管路4は、送出される第2汚水の水圧によって、泡沫分離部5に第2汚水を運搬してもよい。あるいは、第2移動管路4は、ポンプのような圧力機構を備えており、これによって第2汚水を泡沫分離部5に運搬してもよい。第2移動管路4は、管路形態を有していることで、第2汚水を運搬できる。
第1移動管路3および第2移動管路4は、複数の管路から構成されてもよいし、途中に分岐や圧力強化部を備えていてもよい。また、泡沫分離部5に、それぞれの管路から独立して汚水が到達してもよいし、一度混合されてから到達してもよい。これらは泡沫分離部5の機構によって適宜定められれば良い。
(泡沫分離部)
泡沫分離部5は、泡の力によって、汚水から汚れを分離する。泡沫分離部5には、第1移動管路3から第1汚水が運搬され、第2移動管路4から第2汚水が運搬される。泡沫分離部5には、第1汚水と第2汚水が到達することになる。
泡沫分離部5は、微細な泡を内部に発生させて、この泡によって第1汚水に含まれる第1汚れを分離し、第2汚水に含まれる第2汚れを分離する。分離された第1汚れと第2汚れは、泡沫分離部5から外部に排出される。
泡沫分離部5の泡沫分離機能は、種々の技術が用いられればよい。汚れが分離されて浄化された水である処理水は、一時保管容器6に送られる。このとき、図1に示されるように、泡沫分離部5は、タンク51を備えていることも好適である。タンク51は、泡沫分離部5で汚れが分離された後の処理水をためる。タンク51から一時保管容器6に処理水が送出される。
タンク51を介して処理水が送出されることで、分離された汚れが混在して一時保管容器6に送出されることを防止できる。また、泡沫分離部5には、後述するように、第1汚水および第2汚水以外の経路での水が運搬されることもあり得る。この場合でも、泡沫分離部5は、運搬されてきた水から汚れを分離する機能を発揮する。
制御部9は、泡沫分離部5の動作を制御してもよい。例えば、泡沫分離部5での動作速度、動作時間などを制御する。泡沫分離部5で得られる処理水は、やがて収容容器2に循環する。収容容器2は、収容している水生生物の数や種類などによって、その浄化のための循環速度などが変わる。このため、泡沫分離部5での動作速度や動作時間は、この循環速度に合わせることが適当である。
制御部9は、この観点に基づき、泡沫分離部5の動作速度や動作時間を制御する。これは、制御部9が、第1移動管路3や第2移動管路4の運搬速度や運搬量を制御することと合わせて行われればよい。
(一時保管容器)
一時保管容器6は、泡沫分離部5で得られた処理水を一時的に保管する。泡沫分離部5は、汚水を浄化して浄化された処理水を生成する。この浄化された処理水は、水生生物の収容される収容容器2に戻される。浄化された処理水が連続的に循環して還流することで、収容容器2内部の水の清浄性が維持されて、水生生物の鮮度や健康状態が維持されるからである(生きた状態で)。
しかし、収容容器2内部における清浄水の供給は、水生生物の数や種類で様々である。このため、浄化された処理水が還流する速度や量は、フレキシブルに定められれば良い。このフレキシブルな処理水の還流を実現するために、処理水は、一時保管容器6に保管される。
この保管によって、処理水の還流速度や量は、フレキシブルにできる。
図2は、本発明の実施の形態1における一時保管容器の模式図である。制御部9は、図2に示されるように、一時保管容器6からの処理水の送出タイミングや量を制御する。あるいは、送出速度を制御する。
また、一時保管容器6は、処理水の流入口に流入口フィルター61を備えることも好適である。泡沫分離部5で汚れが分離されているとしても、不測の汚れなどが混在していることもありえる。流入口フィルター61によって、この不測の汚れを除去して一時保管容器6に処理水をためることができる。
また、一時保管容器6は、処理水の流出口に流出口フィルター62を備えることも好適である。流出口フィルター62が備わっていることで、収容容器2に送出される処理水の浄化レベルが高まるからである。
図2に示されるように、移送管路7は、複数であってもよい。一時保管容器6から処理水を送出する移送管路7が複数であることで、複数の収容容器2との循環経路を形成することができる。あるいは、溶存処理部8を経由する処理水と、これを経由しない処理水とを、混在して収容容器2に送出することもできるようになる。
(移送管路)
移送管路7は、処理水を収容容器2に運搬する。移送管路7は、一時保管容器6からの水圧によって処理水を運搬してもよいし、ポンプなどを備えていることで、運搬してもよい。移送管路7による処理水の運搬は、一時保管容器6が実行してもよいし(運搬タイミング、時間、水圧など)、移送管路7が実行してもよい。
制御部9は、この運搬タイミング、運搬時間、水圧、速度などを制御してもよい。この制御を受けて、一時保管容器6や移送管路7が、実際に処理水を運搬する。
(溶存処理部)
溶存処理部8は、移送管路7の経路の途中に設けられれば良い。図1においては、移送管路7と収容容器2との間に設けられている。溶存処理部8は、この位置に設けられることにより、一時保管容器6から送られる処理水に、空気および酸素の少なくとも一方を溶存させることができる。
溶存処理部8は、様々な技術で処理水に空気や酸素を溶け込ませればよい。例えば、空気や酸素の泡を処理水にぶつける。この泡が処理水に溶け込んで、処理水には空気や酸素が含まれた状態(溶存した状態)となる。
溶存処理部8を介することで、収容容器2には、空気や酸素が含まれた処理水が供給される。汚れが除去されて浄化されたことに加えて、新たに空気や酸素が含まれることで、収容容器2に収容される水生生物の鮮度や健康状態が維持される。例えば、イカ類が収容されている場合には、生きたままの状態で、イカ類が保管あるいは輸送される。
溶存処理部8は、種々の技術により、処理水に酸素や空気を溶け込ませればよい。また、溶存処理部8は、処理水に空気や酸素を溶け込ませることが好適である。溶け込ませることで、分離した泡のような状態で処理水に空気や酸素が混じっていることにならない。この結果、処理水が収容容器2に供給されても、収容容器2内部で空気層が生じることを低減できる。
(収容容器)
収容容器2は、水生成物を実際に収容して、生かした状態で保管や輸送を実現する。図3は、本発明の実施の形態1における収容容器の斜視図である。収容容器2の内部が透視できる状態で、示されている。また、説明の容易性の為、水生生物の一例としてイカ類200が収容されている。
収容容器2は、容器本体部22、蓋23、吸引口24、供給口25と、を備える。また、蓋23は、上部排出口31を有する。加えて、下部排出口41を備える。
容器本体部22は、水と水生生物を収容可能である。ここで、水とは、水生生物が生活できる水であり、水生生物の種類や特性に合わせて、淡水や海水である。あるいは、特定の組成に調整された水である。イカ類200と水が収容されている。
ここで、容器本体部22は、開口部を有している。図3では、容器本体部22は、上方に開口部を有している。この開口部から、水と水生生物が投入される。また、開口部は、容器本体部22の上部全体に広がっていても、一部に広がっていてもよい。
蓋23は、容器本体部22の開口部を開閉可能である。図3では、容器本体部22の開口部が上方にあるので、この上方の開口部を塞ぐような位置関係で、蓋23が設けられる。蓋23は、上下方向あるいは水平方向などに動作が可能であり、この動作によって、開口部を開閉する。
吸引口24は、容器本体部22内部の空気を吸引できる。容器本体部22に蓋23が嵌められると、容器本体部22の一部、蓋23の内部、容器本体部22と蓋23との間に空間が生じうる。吸引口24は、取り外すこともできる吸引装置27と接続されている。この吸引装置27による吸引動作を受けて、吸引口24は、上述した空間に存在する空気を吸引できる。これにより、蓋23で締められた容器本体部22の内部は、真空に近いような密閉状態となる。この密閉状態によって、容器本体部2は、水が充満された状態となる。
吸引装置27は、常時備わることで容器本体部22内部の状態に応じて吸引動作を行ってもよいし、必要な時だけ取り付けられることでもよい。
供給口25は、移送管路7と接続されている。移送管路7からの処理水が、供給口25を通じて、容器本体部22に供給される。このとき、溶存処理部8で空気および酸素の少なくとも一方を溶存させた処理水が供給される。もちろん、溶存処理部8を介していない処理水が供給されてもよい。図3では、供給口25から処理水51が供給される状態が示されている。図3の処理水51は、泡のように見えるが、処理水が供給されていることを、イメージとして示しているものである。
容器本体部22には、水が充満されている。このとき、イカ類200が呼吸することによって生じる空気や供給口25から供給される処理水に含まれる微細な泡によって、容器本体部22には空気層が生じる可能性もある。
ここで、供給口25を通じて、容器本体部22内部の最大体積を超える処理水が、供給される。すなわち、処理水(水)は、容器本体部22の最大体積を超えるように供給される。この結果、容器本体部22からは、水があふれ出る状態が生じる。
蓋23は、容器本体部22内部の容積を超える余分水を、外部に漏出させる。図3では、蓋23に上部排出口31が設けられている。この上部排出口31が、余分水を外部に溢れさせることで、漏出させる。この余分水は、第1汚れを含んだ第1汚水である。
第1汚れは、その性質上、容器本体部22の水において、上方に移動しやすい。あふれ出る余分水も、上部排出口31から漏出するので、上方に移動した水である。すなわち、供給口25から処理水や水が供給され続けると、水は上方に移動する。この移動の中で、第1汚れを含んだ第1汚水となって上方に移動する。このように、供給される処理水や水が、容器本体部22の容積を超えることで、余分水は上方に向かう第1汚れを含んで、あふれ出る態様となる。このあふれ出る余分水が、第1汚水である。
蓋23の上部排出口31が、このあふれ出る余分水としての第1汚水を、第1移動管路3に送出する。このとき、第1汚水の送出によって、第1汚れが容器本体部22から外部に排出される。加えて、容積を超える余分水が漏出する状態が維持されるので、容器本体部22においては、発生しうる空気も一緒に漏出される。結果として、容器本体部22において、空気層が生じることを防止できる。常に、水が満々に充填された状態が実現される。
空気層が生じないことで、水生生物収容装置1が保管や輸送に使われる際に、容器本体部22内部の水生生物が、揺れなどによる物理的な損傷から逃れられる。空気層があることで水面が揺れるなどによって、水生生物に物理的あるいは生理的にストレスを与えることが無い。特に、イカ類200は、保管中や輸送中に、水面の揺れがあると、容器本体部22の内壁に衝突してしまうこともある。あるいは、揺れのストレスにより、墨を吐いて汚れを出したり、生理的な負担を感じたりすることがある。
供給口25から処理水が供給されて余分水が上部排出口31から漏出される態様が継続されることで、空気層が生じるのを防止できる。結果として、これらの問題を回避できる。供給口25から供給される空気や酸素が溶存した処理水が供給される以上、どうしても気体成分が発生しうるが、これは、第1汚水としての余分水として、上部排出口31から漏出されるので、空気層の形成が防止されることによるメリットである。空気層の原因となる気体成分が、余分水と一緒に漏出されるからである。
加えて、上部排出口31から漏出される余分水は、第1汚水である。すなわち、上部に移動しやすい第1汚れが合わせて漏出される。この結果、容器本体部22内部の第1汚れも合わせて排出される。
この第1汚れは、既述したように、泡沫分離部5で汚れが除去されて浄化されて処理水として、再び容器本体部22に戻る。この循環が続くことで、容器本体部22内部には空気層が生じず、加えて、水の清浄性が保たれる。
言い換えれば、余分水が生じるということは、内部空間に空気層ができない状態であり、この余分水が発生すれば常に、この余分水が漏出される構成であるので、内部空間に水が充填された状態が維持される。結果として、空気層が形成されることが抑制される。
図1では、イカ10が収容されている。空気層が形成されないことで、例えば水生生物用容器1が輸送に用いられる場合でも、水面や水が揺れることが抑えられる。この揺れが抑えられることにより、イカ10は、お互いに衝突したり、内壁に衝突したりすることが少なくなる。また、揺れによるストレスも感じにくくなる。
これらの結果、イカ10を保管したり輸送したりする際に、イカ10の新鮮さや健康状態を維持でき、活き造りなどの食用にも適した状態を提供できる。
また、容器本体部22は、下部排出口41を備えている。容器本体部22の水に生じる汚れの内、第2汚れは、下方に移動しやすい。この移動によって、容器本体部22の下方(底面側)には、第2汚水が溜まってくる。下部排出口41は、この第2汚水を、第2移動管路4に排出できる。漏出と同じ仕組みで排出されてもよいし、機械的な圧力付与により排出されてもよい。
水に水生生物が収容されていると、水生生物から様々な汚れが排出される。水生生物の体表面から生じたり、排泄物から生じたりする汚れである。様々な種類の汚れにおいては、水の上部へ移動しやすい第1汚れと、水の下部へ沈殿しやすい第2汚れとがあることを、発明者は解析した。すなわち、第1汚れは容器本体部22の上部に移動しやすく、第2汚れは、容器本体部22の下方に沈殿しやすい。
水生生物がイカ類200である場合には、上方に移動しやすい第1汚れは、イカ類200が排出する粘液などの水溶性の有機物である。例えば、イカ類200が排出する墨や身体の表面から出る粘液などである。一方、下方に沈殿しやすい第2汚れは、イカ類200の場合には、卵や糞などの固形物である。イカ類200は、収容容器2に収容されている間にも、糞などの排泄を行うし、卵を産んでしまうこともあり得る。
このような固形物は、下方に移動しやすい(沈殿しやすい)第2汚れとなる。
第1汚れは、上方に移動しやすいので、上部排出口31から第1汚水として排出され、第2汚れは、下方に沈殿しやすいので、下部排出口41から第2汚水として排出される。
このように、水生生物から排出される様々な種類の排出物の内、上部および下部のそれぞれの移動容易性に分けて収容容器2から排出することで、収容容器2内部の清浄性を維持することが容易となる。
以上のように、実施の形態1の水生生物収容装置1は、異なる種類の汚れの排出を確実にできる。このとき、余分水として汚水を排出することで、収容容器2内部を常に水で充満させて、空気層が生じるのを防止できる。また、排出された汚水を浄化して処理水として、収容容器2に還流させることができる。このような循環経路を構築することで、長時間の保管や輸送においても、水生生物の鮮度や健康状態を維持して生きたままとすることができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、追加のバリエーションなどについて説明する。
(計測部による制御)
図4は、本発明の実施の形態2における水生生物収容装置のブロック図である。図4の水生生物収容装置1は、計測部10を更に備えている。計測部10は、収容容器2の汚染度および残存酸素量の少なくとも一方を計測する。収容容器2は、水を収容しており、この水の汚染度や残存酸素量(残存している溶存酸素量)が計測される。
収容容器2に水と水生生物が収容されていると、時間経過と共に、水の汚染が進むことがある。あるいは、酸素量が減少していくこともある。いずれの場合も、収容されている水生生物にとって好ましくない。計測部10は、これらの汚染度や残存酸素量の少なくとも一つを計測する。計測部10は、計測結果を、制御部9に出力する。
計測結果を受けた制御部9は、汚染度や残存酸素量の状態に応じて、一時保管容器6の処理水を、移送管路7を通じて、収容容器2に移送させる。処理水は、清浄化された水であり、これが収容容器2に移送されることで、収容容器2の水の汚染度や残存酸素量の問題を低減できるからである。
例えば、制御部9は、汚染度が所定値以上である場合に、一時保管容器6の処理水を、収容容器2に移送させる(運搬させる)。これにより、清浄化された処理水が収容容器2に供給されて、汚染度を低下させることができる。
あるいは、制御部9は、残存酸素量が所定値以下である場合に、一時保管容器6の処理水を、収容容器2に移送させる(運搬させる)。これにより、溶存処理部8で空気や酸素が溶存された処理水が収容容器2に供給されて、溶存酸素量を増加させることができる。
このように、計測部10が収容容器2の汚染度および残存酸素量の少なくとも一方を計測することで、収容容器2への処理水の供給を適切なタイミングで行えるようになる。この結果、収容容器2内部の水の汚染が進みすぎるのを防止出来たり、残存酸素が不足してしまうなどの問題を回避したりできる。
(塩素混入)
図5は、本発明の実施の形態2における水生生物収容装置のブロック図である。図5の水生生物収容装置1は、一時保管容器6からの処理水の少なくとも一部を送出(排出)して運搬する運搬管路11と、運搬管路で運搬された処理水に塩素を混入させる塩素混入部12を、更に備える。
一時保管容器6は、処理水を保管している。この処理水は、移送管路7を通じて収容容器2へ移送される(その際に溶存処理部8を経由することもある)。この処理水の一部もしくは全部が、移送管路7ではなく、運搬管路11から送り出される。送り出された処理水は、塩素混入部12に到達する。
塩素混入部12は、この処理水に塩素を混入させる。塩素混入により、処理水の清浄化レベルを更に上げることができる。例えば、細菌などの除菌を行うことができる。このレベルを上げた処理水が、塩素混入部12によって生成される。
ここで、加える塩素としては、次亜塩素酸が用いられることが多い。殺菌能力などに優れているからである。もちろん、他の成分が用いられてもよい。また、塩素は、水生生物からの排泄物に含まれるアンモニアを分解することもでき、これにより、水の清浄度を維持できる。塩素混入部12において塩素が加えられることで、殺菌に加えて、アンモニア分解もできて、より浄化された水を、収容容器2へ還流させることができる。特に、保管期間や輸送期間が長くなる場合には、水生生物からの排泄部に含まれるアンモニアを、塩素が分解できることは、水質の維持に好適であり、水生生物の鮮度や健康の維持に最適である。
後述するが、塩素混入部12によって塩素により殺菌などがされた処理水は、最終的には、収容容器2に供給される。この供給経路によって、収容容器2に供給される水の清浄化がより高まっている。
ここで、一時保管容器6は、処理水の少なくとも一部を、運搬管路11から塩素混入部12に排出する。一方で、処理水の少なくとも一部を、移送管路7から収容容器2へ向けて排出する。すなわち、運搬管路11と移送管路7との両方に処理水を排出することがありえる。処理水の一部を運搬管路11へ、一部を移送管路7へ、排出する態様があり得る。
制御部9は、一時保管容器6から、移送管路7に排出する処理水の割合と運搬管路11に排出する処理水の割合とを制御する。制御部9が、この制御を行うことで、塩素混入による殺菌などを行う処理水の割合と、これ以外の処理水の割合とを、制御部9が制御できる。
塩素混入による殺菌は、最終的に収容容器2に還流する処理水の浄化度を高めることができる。しかしながら、塩素による殺菌が強すぎることが好ましくない水生生物も存在する。塩素によって殺菌された水の割合が高すぎると、水生生物の種類によっては、生活維持が困難となったり、健康状態の維持が困難となったりすることがあるからである。
収容容器2には、塩素により殺菌された処理水と、それ以外の処理水が合わせて還流できる。このため、制御部9は、収容容器2に収容されている水生生物の種類、特性、個体数、密度等に応じて、移送管路7に排出する処理水の割合と運搬管路11に排出する処理水の割合とを制御する。また、計測部10で計測された汚染度や残存酸素量に基づいて、移送管路7に排出する処理水の割合と運搬管路11に排出する処理水の割合とを制御することでもよい。
制御部9による割合の制御によって、水生生物にとって最適な生活環境となる水を、収容容器2に還流させることができる。結果として、収容容器2における水生生物の生活環境を最適に維持できる。
(脱塩素)
図6は、本発明の実施の形態2における脱塩素部を備える水生生物収容装置のブロック図である。図6の水生生物収容装置1は、脱塩素部13を更に備える。更には、送出管路14も備える。
塩素混入部12において塩素を混入された後の処理水である塩素混入水が、脱塩素部13に運搬される。塩素混入によって殺菌などがされているが、塩素が残った状態であるのが、塩素混入水である。脱塩素部13は、この塩素混入水から塩素を取り除く。塩素が取り除かれることで、殺菌は終わっていてかつ塩素も残っていない除去水が、脱塩素部13で得られる。
脱塩素部13は、この除去水を送出管路14に排出する。送出管路14は、この除去水を、泡沫分離部5に送出する。泡沫分離部5には、塩素で殺菌された上で、塩素が取り除かれた除去水が到達する。この除去水に対して、再び泡沫分離部5によって汚れが除去される処理が繰り返されて、最終的により浄化レベルの上がった処理水が、収容容器2に供給されるようになる。
泡沫分離部5は、塩素が除去された除去水の汚れを分離して、浄化レベルを上げた処理水として、一時保管容器6に送出できる。
すなわち、泡沫分離部5による汚れの除去に加えて、塩素による殺菌も加わった水の浄化が繰り返される循環路が形成される。この循環路が全体の一部を形成することで、収容容器2に供給される水の浄化レベルを上げつつ、塩素による殺菌が強すぎないように、移送管路7のみで供給される塩素殺菌されていない処理水も合わせて供給される。
これらの複数の循環路によって、水生生物にとって最適な水の供給が実現できる。特に、水生生物がイカ類である場合には、空気層ができることでの揺れに加えて、収容容器2の水質について、非常にデリケートである。イカ類は、保管や輸送中にもストレスで身体を傷つけたり、墨を吐いたり、排卵したりする。このような状態では、収容容器2の水質がどんどんと汚れてしまう。この場合でも、収容容器2に空気層ができないこと、あふれ出る汚水が泡沫分離により浄化されること、更には、塩素殺菌などされることのそれぞれがミックスされている。このミックスがなされた水生生物収容装置1は、イカ類のようなデリケートな水生生物であっても、鮮度や健康状態を維持して生きたままの保管や輸送を実現できる。
この実現によって、イカ類の活き造りを漁獲地はもちろん、漁獲地から離れた場所でも提供できる。イカ類に限らず、他の水生生物であっても同様である。
(フィルター)
収容容器2は、蓋23と蓋23に備わる上部排出口31を備える。更に、下部排出口41を備える。
この上部排出口31は、収容容器2内部の体積を超える余分な水である余分水を、第1汚れを含む第1汚水として排出する。このとき、上部排出口31は、第1汚水を、あふれ出るように漏出させる。この漏出によって、余分水は気泡および第1汚れと合わせて、継続的にあふれ出る状態となる。この状態によって、収容容器2は、空気層を生じさせない。
蓋23が、収容容器2の容器本体部22の上部に備わっていることで、上部排出口31も、上部に備わって、上部から余分水を漏出させる。あふれ出る態様で、排出できる。
ここで、上部排出口31は、フィルターを備えることも好適である。フィルターを備えることで、第1汚水に含まれる第1汚れの内、泡沫分離部5により除去されることが好ましくない異物を排除できる。例えば、大きな異物である。
同様に、下部排出口41も、フィルターを備えることも好適である。同様の理由からである。
図7は、フィルターの模式図である。上部排出口31に、図7に示されるようなフィルター300が備わっていることも好適である。フィルター300は、網目状であり、泡沫分離部5で分離できないあるいは分離すべきでない異物をふるう。一時保管容器6への流入口に備わるフィルターと合わせて、異物の混入を防止できる。
(蓋のシーリング)
蓋23は、密閉を向上させる第1シーリングと第2シーリングを備えることも好適である。
蓋23の内側に2段階以上である第1シーリングと第2シーリングが設けられることで、蓋23と容器本体部との密閉度が高まる。ここで、第1シーリングは、容器本体部22内部の水を密閉する。第2シーリングは、容器本体部22と外部との接触部位を密閉する。更に、第3シーリングが設けられてもよい。
このように2段階、あるいは2段階以上のシーリングが設けられることで、蓋23と容器本体部22との密閉度を高めることができる。吸引装置による吸引とあいまって、内部を密閉状態にできることで、空気層の形成を防止できる。
(別の収容容器との接続)
図8は、本発明の実施の形態2における水生生物収容装置のブロック図である。図8の水生生物収容装置1は、一時保管容器6から処理水の一部を別体である第2収容容器2Bに移送する第2移送管路7Bを更に備える。この第2移送管路2Bは、第2収容容器2Bと接続される。
この接続によって、処理水の一部は、第2移送管路2Bを介して、第2収容容器2Bと接続できる。加えて、第2収容容器2Bは、収容容器2と同様に、第1汚水と第2汚水を、泡沫分離部5に運搬する接続もできる。これらの結果、一つの泡沫分離部5および一時保管容器6を基準に、複数の収容容器2の水の浄化と浄化された処理水の循環を実現できる。
例えば、第2収容容器2Bから第1汚水と第2汚水が泡沫分離部5に運搬される。泡沫分離部5は、これらの第2収容容器2Bからの第1汚水と第2汚水の汚れを分離する。これらの処理水は、一時保管容器6に運搬され、浄化された処理水が、第2収容容器2Bに還流する。このとき、塩素による殺菌などについての循環経路も同様であり、適宜、収容容器2と第2収容容器2Bとに、還流されればよい。
もちろん、第3収容容器が連結されてもよい。
このように、水の浄化を行う要素を基点として、収容容器2が追加されていく構成が取られることで、水生生物の量などにフレキシブルに対応できる。
以上のように実施の形態2における水生生物収容装置1は、種々のバリエーションによって、浄化レベルを上げたり、水生生物の量や種類の増加にフレキシブルに対応できたりする。
(実施の形態3)
次に実施の形態3について説明する。実施の形態3では、実施の形態1、2で説明した水生生物収容装置1が輸送用に用いられる場合および閉循環路が形成される場合について説明する。
実施の形態1、2で説明した水生生物収容装置1は、輸送機器によって輸送可能である。図9は、本発明の実施の形態3における輸送状態にある水生生物収容装置の模式図である。図9には、輸送機器20が、水生生物収容装置1を積載して輸送する状態が示されている。
輸送機器20は、例えば荷台のあるトラックである。輸送機器20の荷台に水生生物収容装置1が積載されている。水生生物収容装置1は、大きく分ければ、水生生物を収容する収容容器2と、内部の水の浄化を行う泡沫分離部5と一時保管容器6などに分けられる。この状態として、輸送容器20の荷台に載せられている。
積載されている水生生物収容装置1は、実施の形態1、2で説明した通りである。収容容器2の内部に空気層の形成が生じず、あふれ出る水と合わせた汚水が、浄化される。この浄化された処理水が循環して収容容器2の内部の清潔性が維持される。結果として、輸送機器20による輸送の間でも、水生生物の健康や鮮度が維持される。
例えば、イカ類200も健康や鮮度が維持されたまま輸送される。結果として、漁獲地から遠隔の場所でも、イカ類の活き造りを提供することができる。これにより、漁獲地への経済貢献も可能となる。
発明者は、実際に実施の形態1〜2に説明した水生生物収容装置1を製作して、イカを入れた状態で輸送等を行った。従来技術ではイカが死んだり傷ついたりしていたのが、これらが大きく減少したことを確認できた。これは、空気層が生じにくく、イカがぶつかったりストレスを受けたりすることが大きく軽減されたたからである。
また、イカの新鮮さや健康状態が維持されやすくなることで、同じ容積の水生生物用容器で同じ輸送時間であっても、より大量のイカを輸送することができることも確認した。
これらの結果、デリケートで新鮮さや健康状態が損なわれやすいイカであっても、活き造りなどの生食に適した状態で、漁獲地から離れた消費地へ輸送できる。しかも、コストを抑えることもできる。結果として、漁獲地および消費地のいずれにとっても高いメリットをもたらすことができる。
なお、実施の形態1〜3で説明された水生成物収容装置1は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。