以下、本発明を適用した一実施形態である予備凍結装置について、これを用いる凍結保存システムとともに図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
<凍結保存システム>
先ず、本発明を適用した一実施形態である凍結保存システムの構成の一例について、図1〜図3を参照しながら説明する。ここで、図1は、本発明を適用した一実施形態である凍結保存システムの構成を示す斜視図である。図2は、本発明を適用した一実施形態である凍結保存システムの構成を示す正面図である。図3は、本発明を適用した一実施形態である凍結保存システムの構成を示す上面図である。
図1〜図3に示すように、本実施形態の凍結保存システム100は、予備凍結装置200と、凍結保存装置300と、エンベロープホルダ保持機構400とを備えて概略構成されている。凍結保存システム100は、予備凍結装置200、凍結保存装置300、及びエンベロープホルダ保持機構400がそれぞれ隣接した状態で設けられている。以下、凍結保存装置300とエンベロープホルダ保持機構400とが隣接する方向を「X方向」、予備凍結装置200とエンベロープホルダ保持機構400とが隣接する方向を「Y方向」、鉛直方向を「Z軸方向」という場合がある。
凍結保存システム100は、予備凍結装置200によって生物学的試料を任意の温度まで冷却して生物学的試料を予備凍結した後、凍結保存装置300によって、例えば−180℃の温度で長期間凍結保存するシステムである。
また、本実施形態の凍結保存システム100は、凍結保存システム100は、予備凍結装置200による予備凍結と、凍結保存装置300による凍結保存とを連続かつ自動で行うシステムである。
図2に示すように、本実施形態の凍結保存システム100は、1以上のエンベロープを収容するエンベロープホルダ(詳しくは、後述する)の受け渡しが可能なエンベロープホルダ保持機構400を備える。これにより、凍結保存システム100は、予備凍結及び凍結保存をエンベロープホルダ単位で一括して処理することができるため、大量の生物学的試料を効率的に処理することができる。
(予備凍結装置)
次に、本発明を適用した一実施形態である予備凍結装置200の構成の一例について説明する。ここで、図4は、本実施形態の予備凍結装置200の構成を示す側面図である。図5は、本実施形態の予備凍結装置200の構成を示す平面図である。
図1〜図5に示すように、予備凍結装置200は、予備凍結対象を収納する予備凍結用ドロワー2と、予備凍結用ドロワー2を内部に収容する予備凍結用容器3と、予備凍結用ドロワー2を鉛直方向に移動させる予備凍結用ドロワー昇降装置(昇降機構)4と、予備凍結用ドロワー2との間で予備凍結対象を受け渡し可能な回動テーブル5と、予備凍結対象を回動テーブル5から予備凍結用ドロワー2側に移動させる第1の押出アーム6と、予備凍結対象を予備凍結用ドロワー2側から前記回動テーブル5に移動させる第2の押出アーム7と、予備凍結対象を予備凍結装置200の内外に搬送する第1搬送機構27と、を備えて概略構成されている。
予備凍結装置200の予備凍結対象は、凍結保存の対象でもある、血液、実験動物の精子、受精卵、細胞などの生物学的試料である。すなわち、予備凍結装置200は、生物学的試料を凍結保存する前に、冷却速度を制御しながら、凍結保存する際の温度(例えば、−180℃)と同一又はそれよりも高い任意の温度まで、具体的には−80℃まで冷却して予備凍結(「緩慢凍結」ともいう)のみを行うための装置である。
ここで、図6は、本実施形態の凍結保存システム100に用いるエンベロープの構成を示す斜視図である。図7は、本実施形態の凍結保存システム100に用いるエンベロープホルダの構成を示す斜視図である。図8は、本実施形態の凍結保存システム100に用いるエンベロープホルダの構成を示す正面図である。図9は、本実施形態の凍結保存システム100に用いるエンベロープホルダの構成を示す底面図である。
図6及び図8に示すように、エンベロープ8は、厚み方向において互いに対向する第1の面8A及び第2の面8Bを有する箱(ボックス)型の収納部材であり、その中に血液バッグや臍帯血バッグ等のバッグ(収納袋)9を収納する保護具(プロテクタ)である。また、バッグ9の中には、生物学的試料が入れられている。バッグ9は、不定形状の生物学的試料を保存するための扁平状樹脂製の収納袋である。エンベロープ8を用いることにより、予備凍結対象が不定形状であっても取り出しまたは収納しやすくなると同時に、予備凍結対象を衝撃などから守ることもできる。本実施形態の予備凍結装置200では、凍結保存の対象でもある生物学的試料をエンベロープ8内に収容した状態で予備凍結を行うため、エンベロープ8が予備凍結対象ともいえる。
エンベロープ8は、それ自体の形状を維持できる材料であればどのような材料で形成されてもよい。エンベロープ8は、樹脂で形成されてもよいし、熱伝導率の大きい金属、例えばアルミニウムで形成されてもよい。予備凍結する際、エンベロープ8内への熱伝導の観点から、エンベロープ8はアルミニウム製であることが好ましい。
また、このエンベロープ8には、識別コードが設けられることが好ましい。
図7〜図9に示すように、エンベロープホルダ10は、1以上のエンベロープ8を収納する棚型の収納具である。エンベロープホルダ10は、底板11と、複数の仕切板12とを有している。底板11は、エンベロープ8の載置面11Aを有している。仕切板12は、載置面11Aに対して垂直方向となるようにそれぞれ立設されている。また、仕切板12の端部12aには、それぞれテーパが形成されている。
図8に示すように、エンベロープホルダ10には、一対の仕切板12,12によって区画される空間(「収納空間」ともいう)に、第1の面8A及び第2の面8Bが一対の仕切板12,12にそれぞれ対向するようにエンベロープ8が挿入される。本実施形態の予備凍結装置200では、1つのエンベロープホルダ10に、例えば10個のエンベロープ8を収納することができる。
図9に示すように、エンベロープホルダ10の底面11Bの中央部分には、円形の凹部11Cが設けられている。これにより、例えば、凹部11Cと形状が一致する円形の支持部を有する部材を用い、エンベロープホルダ10の下方から凹部11Cに円形の支持部を当接させることにより、エンベロープホルダ10を支持することができる。
本実施形態の予備凍結装置200は、エンベロープ8が収容されたエンベロープホルダ10単位で、予備凍結を行う。すなわち、予備凍結装置200は、エンベロープ8を収納したエンベロープホルダ10ごと、予備凍結を行う。
したがって、エンベロープホルダ10は、エンベロープ8を効率よく冷却する観点から、大きな熱容量を有することが好ましい。エンベロープホルダ10を構成する底板11及び仕切板12の材質としては、熱伝導率の大きい金属、例えばアルミニウムで形成されることが好ましい。また、底板11及び仕切板12の厚みは、熱容量を高める観点から、より厚くすることが好ましい。各仕切板12の厚みとしては、一対の仕切板12,12によって区画される収納空間にエンベロープ8を挿入した際に、エンベロープ8の第1及び第2の面8A,8Bが仕切板12,12にそれぞれ接触する程度であることが好ましい。
本実施形態の予備凍結装置200によれば、エンベロープ8を収納したエンベロープホルダ10ごと予備凍結を行う際、エンベロープホルダ10が熱伝導性に優れるとともに、エンベロープホルダ10に各エンベロープ8が密着するように保持されているため、各試料を均等に冷却することができる。また、熱容量が大きなエンベロープホルダ10ごと冷却するため、予備凍結が完了した後に予備凍結装置200から凍結保存装置300に移送する際の、各試料の昇温を抑制することができる。
図1、図2及び図4に示すように、予備凍結用ドロワー2は、1以上のエンベロープホルダ10を鉛直方向に並べた(重ねた)状態で収納する部材である。図2に示すように、予備凍結用ドロワー2は、側面となる一対の縦板2A,2Aと、縦板2A,2A間に亘って設けられた複数の床板2Bとによって構成される。これにより、縦板と床板とによって区画された棚(以下、「収納空間」という場合がある)がZ軸方向に連続して設けられ、各棚にエンベロープホルダ10を収納することができる。また、一対の縦板と直交する少なくとも一つの側面が開口しているため、エンベロープホルダ10の出し入れが可能となっている。
また、予備凍結用ドロワー2には、区画された収納空間の上部に断熱部材13が設けられている。断熱部材13の材質としては、断熱性能の高いものであれば特に限定されないが、例えば、発泡ウレタン樹脂などを用いることができる。
予備凍結用ドロワー2は、後述の予備凍結用ドロワー昇降装置4によって、Z軸方向に上昇および下降させることができる。予備凍結用ドロワー2としては、エンベロープホルダ10を収納することができ、かつ、予備凍結用ドロワー昇降装置4によりZ軸方向に上昇および下降させることが可能であれば、特に限定されない。
図2〜図4に示すように、予備凍結用容器3は、本実施形態の予備凍結装置200の下方に設けられた容器である。予備凍結用容器3は、予備凍結用ドロワー2を容器の内部に収容し、所要の温度まで冷却して予備溶結する、液体窒素式プログラムフリーザーの機能を有する。予備凍結用容器3としては、ステンレス鋼などからなる内槽と外槽とから形成される二重構造であり、内槽と外槽との間の空隙が真空である真空二重断熱容器を用いることができる。
予備凍結用容器3には、容器内に液体窒素を供給する噴射ノズル14と、容器内に供給された液体窒素を撹拌する電動ファン(ファン)15と、容器内の温度を測定するための温度センサ(図示略)とが設けられている。ここで、噴射ノズル14は、図2に示すように、予備凍結用容器3の内側に、Z軸方向に沿って異なる高さに5個ずつ、これを2列となるように設けられている。また、電動ファン15は、図3及び図4に示すように、Z軸方向に沿って異なる高さとなるように2基設けられている。したがって、予備凍結用容器3の内部に噴射ノズル14から液体窒素を噴出し、これを電動ファン15によって撹拌することにより、液体窒素の冷熱によって容器の内側を低温状態に保持することができる。これにより、予備凍結用ドロワー2内に収納されたエンベロープホルダ10を、室温(1〜30℃)から任意の温度(例えば、−80℃)まで制御しながら冷却して予備凍結(緩慢凍結)することができる。
図3及び図5に示すように、予備凍結用容器3の上面には平坦部16が設けられており、この平坦部16には2つの開口部16A,16Bが設けられている。また、2つの開口部16A,16Bは、Y軸方向に互いに隣接するように設けられている。この開口部16A,16Bを介して、予備凍結用容器3の内部空間と平坦部16が面する作業空間(外部)21とが連通されている。
各開口部16A,16Bの開口面積は、予備凍結用ドロワー2を平面視した際の面積とほぼ同等となっている。このため、作業空間21において予備凍結用ドロワー2からエンベロープホルダ10を搬送する際に、誤ってエンベロープホルダ10が開口部16A,16Bから予備凍結用容器3内に落下することを防止することができる。
図2〜図5に示すように、各開口部16A,16Bには、それぞれ予備凍結用ドロワー2が挿入されている。この際、予備凍結用ドロワー2の上部に設けられた断熱部材13の上面と、各開口部16A,16Bが設けられた平坦部16の上面とを同じ高さとすることにより、当該開口部16A,16Bが閉塞されるため、予備凍結用容器3内の温度の上昇を抑制することができる。
また、開口部16A,16Bに予備凍結用ドロワー2をそれぞれ挿入する際、予備凍結用ドロワー2の開口側がX軸方向となるように方向を整える。このような向きに予備凍結用ドロワー2を開口部16A,16Bに挿入することで、後述するように、回動テーブル5との間でエンベロープホルダ10の受け渡しが可能となる。
作業空間21は、図1〜図5に示すように、予備凍結用容器3の上方に設けられており、開口部16A,16Bを介して予備凍結用容器3と連通している。本実施形態の予備凍結装置200は筐体に囲まれており、作業空間21は、予備凍結用容器3内から蒸発した窒素ガスなどにより、例えば露点−40℃以下、好ましくは露点−50℃以下のドライ環境に維持されている。予備凍結用容器3の開口部16A,16Bを含んだ作業空間21を筐体で覆うことによって、予備凍結用ドロワー2や液体窒素に作業者が直接触れることによる凍傷や、開口部16A,16Bから蒸発する窒素ガスによる酸欠の危険を解消できる。また、ドライ環境に筐体内を維持することにより、作業空間21内での結露などを防止することができる。
図2〜図5に示すように、予備凍結用ドロワー昇降装置4は、開口部16A,16Bを閉塞するとともに予備凍結用容器3にそれぞれ収納された予備凍結用ドロワー2を鉛直方向に上昇および下降させるとともに任意の高さに維持するための部材であり、作業空間21内に設けられている。この予備凍結用ドロワー昇降装置4は、支持柱17と、可動部18と、連結部材20とによって構成されている。
支持柱17は、図2及び図4に示すように、予備凍結用ドロワー2をZ軸方向に沿って上方に引き上げるための柱状部材であり、開口部16A,16Bを閉塞するとともに予備凍結用容器3内にそれぞれ収納された予備凍結用ドロワー2をZ軸方向に沿って上方に引き上げることができる。
支持柱17には、図示しないボールねじ式アクチュエータ等によって支持柱17に沿ってZ軸方向に移動可能な可動部18が設けられている。また、可動部18にはZ軸方向に沿って下方に垂下するように連結部材20が設けられている。
連結部材20は、可動部18と予備凍結用ドロワー2の上端との間に所定の間隔(クリアランス)を設けた状態となるように、可動部18と予備凍結用ドロワー2とを連結する部材であり、予備凍結用ドロワー2を保持できる機能を発揮できる限りにおいて、特に限定されるものではない。
また、予備凍結用ドロワー昇降装置4は、開口部16A,16Bをそれぞれ閉塞するとともに、予備凍結用容器3内に収納された予備凍結用ドロワー2ごとに、それぞれ1基ずつ設けられている。これにより、複数の開口部16A,16Bを介して予備凍結用容器3内に収納された予備凍結用ドロワー2を、それぞれ独立して入出庫することができる。
さらに、アクチュエータの駆動を停止することにより、可動部18をZ軸方向の任意の高さに維持することができる。すなわち、予備凍結用ドロワー2を任意の高さに維持することができる。
図5に示すように、作業空間21の下方には、エンベロープホルダ保持機構400の近傍まで延在するプレート22がY軸方向に亘って設けられている。プレート22上には、第1のY軸レール23がプレート22の延在方向(すなわち、Y軸方向)に沿って設けられている。第1のY軸レール23には搬送ステージ24が設けられており、駆動装置25によってY軸方向の任意の位置に移動可能とされている。また、搬送ステージ24上には、回動テーブル5と、回動テーブル5を回動させる回動機構26とが設けられている。
なお、本実施形態の予備凍結装置200では、搬送ステージ24と駆動装置25とによって、第1搬送機構27が構成される。第1搬送機構27は、搬送ステージ24をY軸方向に移動することで、平面視で開口部16Aおよび開口部16Bのそれぞれに隣接する位置に回動テーブル5に載置されたエンベロープホルダ10を搬送することができる。また、第1搬送機構27は、搬送ステージ24をY軸方向に移動することで、回動テーブル5に載置されたエンベロープホルダ10を予備凍結装置200の内外に搬送することができる。
回動テーブル5が、平面視で開口部16A,16Bのいずれかに隣接することにより、予備凍結用ドロワー2の任意の高さの収納空間にエンベロープホルダ10を収納する際、あるいは予備凍結用ドロワー2から任意の高さに収納された所望のエンベロープホルダ10を取り出す際、予備凍結用ドロワー2全体を予備凍結用容器3から出庫させる必要がなくなる。これにより、所望のエンベロープホルダ10が収納されている収納空間の底面と回動テーブル5とが同じ高さとなるまで予備凍結用ドロワー2を上昇させることにより、後述する第1の押出アーム6によって、予備凍結処理前のエンベロープホルダ10を予備凍結用ドロワー2の所望の高さの収納空間へ収納することができる。同様に、第2の押出アーム7によって、予備凍結処理が完了した所望のエンベロープホルダ10のみを回動テーブル5上に取り出すことができる。したがって、目的の試料以外の試料が昇温することを抑えることができる。さらに、予備凍結用ドロワー2の全体を引き上げる必要がないため、装置の高さ方向を小型化することができる。
ここで、図10は、本実施形態の予備凍結装置200を構成する回動テーブルの動作を説明するための平面図である。図11は、本実施形態の予備凍結装置200を構成する回動テーブルの動作を説明するための側面図である。
図10及び図11に示すように、回動テーブル5は、予備凍結用容器3の上方においてエンベロープホルダ10を保持した状態で、平面視した際に開口部16A,16Bそれぞれに隣接するように移動可能であり、予備凍結用ドロワー2との間でエンベロープホルダ10を受け渡し可能な可動テーブルである。
回動テーブル5は、エンベロープホルダ10を搬送する際に用いる搬送テーブル部(搬送テーブル)28と、予備凍結用ドロワー2との間でエンベロープホルダ10の受け渡しを行う際に用いる待機テーブル部(待機テーブル)29とが結合(接合)して一体化されたものである。したがって、回動テーブル5がY軸方向に移動する際、搬送テーブル部28と待機テーブル部29とが一体となって移動する。
具体的には、搬送テーブル部28は、搬送ステージ24をY軸方向に移動させて、平面視で開口部16A,16Bそれぞれに隣接する位置にエンベロープホルダ10を搬送する際、エンベロープホルダ10を載置する部分である。搬送テーブル部28は、エンベロープホルダ10を搬送する際、底板11が水平となるように底面11Bを支持する。すなわち、搬送テーブル部28は、エンベロープホルダ10の載置面11Aが水平方向となる状態でエンベロープホルダ10を載置する載置面(第2載置面)28Aを有する。
載置面28Aには、開口部30が設けられている。開口部30は、載置面28Aの中央部分を貫通する円形部30Aと、平面視で円形部30Aからエンベロープホルダ保持機構400と対向する側の側面に向かって設けられたスリット部30Bとから構成されている。これにより、開口部30を介して、回動テーブル5に載置されたエンベロープホルダ10を底板11の底面11B側から押し出す、あるいは押し上げることができる。
なお、開口部30の形状としては、エンベロープホルダ10の底板11を押し出す、あるいは押し上げることが可能であれば、特に限定されるものではない。例えば、円形ではなく、多角形であってもよい。
また、載置面28Aの外周部には、ホルダガイド31が設けられている。このホルダガイド31により、後述の回動テーブル5が回動する際に、エンベロープホルダ10が載置面28A上の所定の位置に載置されるように位置を規制することができる。これにより、回動テーブル5によってエンベロープホルダ10を安全に搬送することができる。
待機テーブル部29は、回動テーブル5が平面視で開口部16A,16Bそれぞれに隣接する位置に移動した後、予備凍結用ドロワー2との間でエンベロープホルダ10を受け渡す際に用いる部分である。待機テーブル部29は、予備凍結用ドロワー2との間でエンベロープホルダ10の受け渡しを行う際、底板11(換言すると載置面11A)が垂直となるように、両端の仕切板12のうち一端側の仕切板12を支持する。すなわち、待機テーブル部29は、エンベロープホルダ10の載置面11Aが垂直方向となる状態でエンベロープホルダ10を載置する載置面(第1載置面)29Aを有する。
また、載置面29Aの外周部には、ホルダガイド32が設けられている。ホルダガイド32は、載置面29A上にX軸方向に延在する一対のレールから構成されている。このホルダガイド32により、予備凍結用ドロワー2との間でエンベロープホルダ10を受け渡す際に、エンベロープホルダ10が載置面29A上の一対のレールの間を移動するため、Y軸方向への移動を規制することができる。これにより、予備凍結用ドロワー2との間でエンベロープホルダ10を確実に受け渡すことができる。
回動テーブル5は、搬送テーブル部28の載置面28Aと待機テーブル部29の載置面29Aとが直交する状態、かつ載置面28Aと載置面29Aとが隣接する状態で、搬送テーブル部28と待機テーブル部29とがL字状に一体化されている。回動テーブル5にエンベロープホルダ10を載置する際、底板11を搬送テーブル部28の載置面28Aに、両端の仕切板12のうち、一方の仕切板12を待機テーブル部29の載置面29Aに、それぞれ当接した状態となる。
回動機構26は、搬送テーブル部28の載置面28Aと待機テーブル部29の載置面29Aとが交わる線を回動軸(軸)33として、載置面28A及び載置面29Aのいずれか一方が水平となるように、回動テーブル5を直角(90°)に回動させる装置である。
回動機構26は、回動軸33と、搬送ステージ24上に設けられ、回動テーブル5の両端にて回動軸33の両端を支持する支持部34と、回動軸33に軸支される回動プレート35と、回動プレート35と接触して動力を伝達するローター部36と、搬送ステージ24上に設けられた駆動部37と、駆動部37の回転運動をローター部36に伝達するベルト38とを備えて概略構成されている。また、回動プレート35は、円周の四分の一の大きさの円板状の部材であって、円の中心部分で回動軸33と接続されるとともに、円周部分でローター部36と当接されている。したがって、駆動部37を時計回り、あるいは反時計回りに回転させると、回転運動がベルト38を介してローター部36に伝達される。そして、ローター部36が回動プレート35の円周部分に当接したまま回転すると、回動プレート35も円周の四分の一(すなわち、90°)だけ回転する。これにより、回動プレート35の中心部分に接続された回動軸33が円周の四分の一(すなわち、90°)だけ回転することで、回動テーブル5を90°回動させることができる。
なお、搬送ステージ24には、搬送テーブル部28の載置面28Aが水平となる状態にて、回動テーブル5(すなわち、搬送テーブル部28)を支持する支持部材39が設けられている。また、プレート22には、待機テーブル部29の載置面29Aが水平となる状態にて、回動テーブル5(すなわち、待機テーブル部29)を支持する支持部材40が設けられている。これらの支持部材39,40により、回動テーブル5を2つの状態で安定して支持することができる。
図4に示すように、作業空間21内であってプレート22の上方には、プレート41が設けられている。プレート41の底面には、Y軸方向に延在する一対のレール42,42が設けられている。搬送ステージ43は、一対のレール42,42上に取り付けられており、搬送ステージ24及び回動テーブル5の上方においてY軸方向に移動可能とされている。そのため、搬送ステージ43は、平面視で開口部16A,16Bのそれぞれに隣接する位置に移動することができる。
また、作業空間21の下方であって、開口部16A,16Bを挟んでプレート22の反対側に、プレート44が設けられている。プレート44上には、Y軸方向に延在する一対のレール45,45が設けられている。搬送ステージ46は、一対のレール45,45上に取り付けられており、Y軸方向に移動可能とされている。そのため、搬送ステージ46は、平面視で開口部16A,16Bのそれぞれに隣接する位置に移動することができる。
搬送ステージ43および搬送ステージ46は、上述したようにY軸方向に移動可能であり、一対となってY軸方向に移動可能である。これにより、図4及び図5に示すように、例えば、開口部16A側の予備凍結用ドロワー2を予備凍結用容器3から入出庫する際に、搬送ステージ43、回動テーブル5(待機テーブル部29)、開口部16A、および搬送ステージ46が、X軸方向にこの順に隣接して並ぶことができる。なお、搬送ステージ43および搬送ステージ46は、一対で同時に動くだけでなく、個々に動作することも可能である。
図4に示すように、第1の押出アーム6は、待機テーブル部29に載置されたエンベロープホルダ10を、予備凍結用ドロワー2の所定の収納空間に移動させるための部材である。第1の押出アーム6は、搬送ステージ43上に設けられている。第1の押出アーム6は、第1の支持部47と、第1の押圧部48とによって構成されている。
第1の支持部47は、搬送ステージ43の下方であって、開口部16A,16Bと対向する側の側面と反対側の側面に基端が設けられている。この第1の支持部47は、先端がX軸方向に移動可能に取り付けられている。
第1の押圧部48は、第1の支持部47の先端に設けられている。この第1の押圧部48により待機テーブル部29上のエンベロープホルダ10をX軸方向に押圧することができる。
なお、上述したように、回動テーブル5を構成する搬送テーブル部28の載置面28Aには開口部30が設けられているため、この開口部30を介して第1の押圧部48がエンベロープホルダ10を押圧することができる。
また、第1の押出アーム6は、回動テーブル5が回動する際、第1の押圧部48をX軸方向のいずれかの位置に退避させることができる。このため、回動テーブル5と第1の押出アーム6との干渉を避けることができる。
このように構成された第1の押出アーム6によれば、待機テーブル部29の載置面29A上に載置されたエンベロープホルダ10を予備凍結用ドロワー2側へ押圧することで、エンベロープホルダ10を予備凍結用ドロワー2の所定の収納空間に収納することができる。
なお、本実施形態の予備凍結装置200によれば、待機テーブル部29の載置面29A上に載置されたエンベロープホルダ10は、図11に示すように、底板11の載置面11Aが鉛直方向となる向きで、予備凍結用ドロワー2内に収納される。このため、エンベロープホルダ10内に収納されている各エンベロープ8は、厚み方向において互いに対向する第1の面8A及び第2の面8Bがそれぞれ水平となる向きで予備凍結される。このように、各エンベロープ8をいわゆる寝かせた状態で予備凍結(緩慢凍結)するため、エンベロープ8に収納された扁平状のバッグ9内で生物学的試料が偏ってしまうおそれがない。したがって、生物学的試料の温度を均一に保った状態で予備凍結(緩慢凍結)できる。
図4及び図5に示すように、第2の押出アーム7は、予備凍結用ドロワー昇降装置4により待機テーブル部29と隣接する高さに維持される予備凍結用ドロワー2の収納空間に収容されたエンベロープホルダ10を待機テーブル部29側へ押圧することで、エンベロープホルダ10を待機テーブル部29側に移動させる部材である。第2の押出アーム7は、搬送ステージ46上に設けられている。この第2の押出アーム7は、第2の支持部49と、第2の押圧部50とによって構成されている。
第2の支持部49は、搬送ステージ46上であって、開口部16A,16Bと対向する側の側面と反対側の側面に基端が設けられている。この第2の支持部49は、先端がX軸方向に移動可能に取り付けられている。
第2の押圧部50は、第2の支持部49の先端に設けられている。この第2の押圧部50により所定の高さに押し上げられ、その高さに維持された予備凍結用ドロワー2内の所定のエンベロープホルダ10をX軸方向に押圧することができる。
このように構成された第2の押出アーム7によれば、予備凍結用ドロワー2の内の、待機テーブル部29と隣接する高さに位置する収納空間に収納されたエンベロープホルダ10を、待機テーブル部29側へ押圧することにより、エンベロープホルダ10を待機テーブル部29の載置面29Aに載置することができる。
予備凍結用ドロワー昇降装置4と、回動テーブル5と、第1の押出アーム6と、第2の押出アーム7とが、連携して動作することにより、待機テーブル部29上に載置されたエンベロープホルダ10を予備凍結用ドロワー昇降装置4により予備凍結用容器3から出庫した予備凍結用ドロワー2へ収納可能とされている。また、予備凍結用ドロワー昇降装置4により予備凍結用容器3から出庫した予備凍結用ドロワー2からエンベロープホルダ10を待機テーブル部29上に載置可能とされている。
例えば、図4,図5,図10及び図11に示すように、予備凍結用ドロワー2からエンベロープホルダ10を待機テーブル部29に載置する場合、先ず、回動テーブル5および搬送ステージ46が、平面視で開口部16Aを挟んで対向する位置へ移動する。次いで、待機テーブル部29の載置面29Aが水平となるように回動テーブル5が回動する。これにより、載置面29Aと開口部16AとがX軸方向に隣接した状態となる。
次に、予備凍結用ドロワー昇降装置4により、予備凍結用容器3から開口部16Aを介して予備凍結用ドロワー2を出庫し、目的のエンベロープホルダ10が収納されている収納空間の底面と待機テーブル部29の載置面29Aとが同じ高さとなるまで予備凍結用ドロワー2を上昇させる。
次に、予備凍結用ドロワー2を所要の高さに維持した状態で、第2の押出アーム7によよって目的のエンベロープホルダ10をX軸方向に押圧することで、所望のエンベロープホルダ10を予備凍結用ドロワー2から待機テーブル部29の載置面29Aへ移動させる。以上の動作により、待機テーブル部29上に所望のエンベロープホルダ10を載置することができる。
次に、待機テーブル部29の載置面29A上に載置されたエンベロープホルダ10の底板11が搬送テーブル部28の載置面28Aに当接した状態で、回動テーブル5を90°回動する。これにより、水平となった搬送テーブル部28の載置面28Aにエンベロープホルダ10が載置される。
次に、搬送テーブル部28上に取り出されたエンベロープホルダ10は、図5に示すように、作業空間21に設けられている第1搬送機構27によって、本実施形態の予備凍結装置200の筐体の取り出し口51の外側まで搬送される。
図示略の入出力装置(操作パネル)は、筐体の外部に設けられた、表示部および入力部を持つ例えばパーソナルコンピュータである。作業者は、入出力装置を操作して、予備凍結装置200に内蔵された制御装置52に指示を出すことにより、エンベロープホルダ10を収納および取り出しするための様々な操作をすることができる。例えば、作業者が、筐体の外部において回動テーブル5にエンベロープホルダ10を載置し、エンベロープホルダ10の収納を指示することで、自動で第1搬送機構27によって開口部16A又は開口部16Bに隣接する位置まで移動し、エンベロープホルダ10を予備凍結用ドロワー2内に収納、予備凍結用容器3内にて予備凍結させることができる。また、外部の入出力装置が備える記憶部において、予備凍結装置200において予備凍結されるエンベロープホルダ10の情報を記憶することもできる。
また、図2〜図4に示すように、予備凍結装置200内の制御装置52には、予備凍結用ドロワー昇降装置4、第1搬送機構27、回動テーブル5、搬送ステージ43、搬送ステージ46、第1の押出アーム6、第2の押出アーム7などへ動作を指示する制御プログラムが組み込まれている。これにより、例えば、第2の押出アーム7によりエンベロープホルダ10を待機テーブル部29の載置面29A上に載置した後に、予備凍結用ドロワー昇降装置4により予備凍結用ドロワー2を下降させ、予備凍結用容器3内に移動させるといった動作指示をすることができる。これにより、予備凍結用ドロワー2内に収納された他のエンベロープホルダ10(生物学的試料)が昇温するのを抑制することができる。
次に、本実施形態の予備凍結装置200の運転方法、すなわち、上述した予備凍結装置200を用いて、凍結保存前に生物学的試料を予備凍結する方法について説明する。
先ず、図6に示すように、予めバッグ9を収納したエンベロープ8をエンベロープホルダ10に複数個(例えば、10個)収納する。
次に、図1、図2及び図5に示すように、予備凍結装置200の筐体の取り出し口51の外側において、エンベロープホルダ10の載置面11Aが水平となるように、回動テーブル5を構成する搬送テーブル部28の載置面28Aに、エンベロープホルダ10を載置する。次いで、入出力装置により、運転開始を実行する。これにより、第1搬送機構27によって回動テーブル5が取り付けられた搬送ステージ24が筐体の内側にY軸方向に沿って移動し、平面視で例えば開口部16Aに隣接する位置までエンベロープホルダ10を搬送する。また、搬送ステージ24の上方において、搬送ステージ43が回動テーブル5と同じ位置になるようにY軸方向に沿って移動する。
次に、図4、図5、図10及び図11に示すように、第1の押圧部48が退避していることを確認した後、回動機構26によって回動テーブル5が時計回りに90°回動することで、待機テーブル部29の載置面29Aが水平となる。そして、この載置面29A上に、エンベロープホルダ10の載置面11Aが垂直となるように、エンベロープホルダ10が載置される。
一方、予備凍結用ドロワー昇降装置4によって、開口部16Aを閉塞する予備凍結用ドロワー2がZ軸方向に沿って上方に引き上げられて、予備凍結用ドロワー2内の所望の収納空間の底面と待機テーブル部29の載置面29Aとが同一平面となる高さで維持される。
次に、第1の押出アーム6を構成する第1の押圧部48により、搬送テーブル部28の載置面28Aに設けられた開口部30を介して、エンベロープホルダ10の底板11の底面11Bを予備凍結用ドロワー2側へ押圧することで、エンベロープホルダ10を予備凍結用ドロワー2の所定の収納空間に自動的に収納する。
次に、エンベロープホルダ10の予備凍結用ドロワー2内への収納が完了すると、予備凍結用ドロワー昇降装置4によって、予備凍結用ドロワー2がZ軸方向に沿って下方に押し下げられ、予備凍結用ドロワー2によって開口部16Aが閉塞される。
一方、第1の押圧部48が退避していることを確認した後、回動機構26によって回動テーブル5が反時計回りに90°回動することで、搬送テーブル部28の載置面28Aが水平となる。次いで、第1搬送機構27によって回動テーブル5が取り付けられた搬送ステージ24がY軸方向に沿って移動し、筐体の取り出し口51から外側に搬送テーブル部28の載置面28Aが自動的に戻ってくる。
例えば、100個のエンベロープ8を10個のエンベロープホルダ10に収納した場合は、以上の操作を10回繰り返す。次いで、予備凍結装置200は、全てのエンベロープ8が予備凍結用容器3内に収納されたことを検知すると、液体窒素式プログラムフリーザーが自動で冷却を開始する。本実施形態の予備凍結装置200によれば、大量(最大で100枚)のバッグ9を、常温から−80℃まで1時間以内で冷却して、予備凍結(緩慢凍結)を完了することができる。
次に、予備凍結装置200は、予備凍結完了の信号を検知すると、予備凍結用容器3内から予備凍結用ドロワー2を引き上げ、収納されているエンベロープホルダ10を予備凍結装置200の筐体の取り出し口51の外側に次々と搬出する。
具体的には、先ず、第1搬送機構27によって回動テーブル5が取り付けられた搬送ステージ24が筐体の内側にY軸方向に沿って、平面視で例えば開口部16Aに隣接する位置まで移動する。
次に、図4、図5、図10及び図11に示すように、第1の押圧部48が退避していることを確認した後、回動機構26によって回動テーブル5が90°回動することで、待機テーブル部29の載置面29Aが水平となる。
一方、搬送ステージ46がY軸方向に沿って移動し、平面視で開口部16Aを挟んで待機テーブル部29の載置面29Aと反対側となる位置に移動する。
待機テーブル部29と搬送ステージ46とが平面視で開口部16Aと隣接する位置に移動したことを確認した後、予備凍結用ドロワー昇降装置4によって、開口部16Aを閉塞する予備凍結用ドロワー2がZ軸方向に沿って上方に引き上げられて、予備凍結用ドロワー2内の所望の収納空間の底面と待機テーブル部29の載置面29Aとが同一平面となる高さで維持される。
次に、第2の押出アーム7を構成する第2の押圧部50により、待機テーブル部29と隣接する高さに維持される予備凍結用ドロワー2の収納空間に収容されたエンベロープホルダ10を待機テーブル部29側へ押圧する。これにより、エンベロープホルダ10を待機テーブル部29側に移動させる。
次に、予備凍結用ドロワー2内から待機テーブル部29の載置面29Aへのエンベロープホルダ10の移動が完了すると、予備凍結用ドロワー昇降装置4によって、予備凍結用ドロワー2がZ軸方向に沿って下方に押し下げられて、予備凍結用ドロワー2によって開口部16Aが閉塞される。
一方、第1の押圧部48が退避していることを確認した後、回動機構26によって回動テーブル5が反時計回りに90°回動することで、搬送テーブル部28の載置面28Aが水平となる。そして、この載置面28A上に、エンベロープホルダ10の載置面11Aが水平となるように、エンベロープホルダ10が載置される。
次いで、第1搬送機構27によって回動テーブル5が取り付けられた搬送ステージ24がY軸方向に沿って移動し、筐体の取り出し口51から外側にエンベロープホルダ10が自動的に搬出される。
搬送テーブル部28の載置面28A上に載置されたエンベロープホルダ10は、後述する凍結保存装置300内に自動的に保存されるか、作業者によって取り出されることになる。その後、残りのエンベロープホルダ10についても同様に、自動的に搬出される。
以上、説明したように、本実施形態の予備凍結装置200によれば、生物学的試料を扁平状のバッグ(収納袋)9に入れるとともに、このバッグ9を箱型のエンベロープ8に収納した状態で凍結保存する前に、生物学的試料を凍結保存する際の温度(例えば、−180℃)と同一又はそれよりも高い任意の温度(例えば、−80℃)まで冷却するものであり、1以上のエンベロープ8を収納するエンベロープホルダ10と、1以上のエンベロープホルダ10を鉛直方向に並べて収納する予備凍結用ドロワー2と、1以上の予備凍結用ドロワー2を内部に収容するとともに、外部と連通する開口部16A,16Bが上面に設けられた予備凍結用容器3とを備える構成となっている。
このように、生物学的試料を大量に収容することが可能な予備凍結専用の予備凍結用容器3を備えるため、大量の生物学的試料をエンベロープ単位で一括して予備凍結処理を行うことができる。したがって、多くの生物学的試料を凍結保存前の所要温度まで短時間で冷却することができる。
また、本実施形態の予備凍結装置200によれば、エンベロープ8を収納したエンベロープホルダ10ごと予備凍結を行う際、エンベロープホルダ10が熱伝導性に優れるとともに、エンベロープホルダ10に各エンベロープ8が密着するように保持されているため、各試料を均等に冷却することができる。また、熱容量が大きなエンベロープホルダ10ごと冷却するため、予備凍結が完了した後に予備凍結装置200から凍結保存装置300に移送する際の、各試料の昇温を抑制することができる。
また、本実施形態の予備凍結装置200によれば、待機テーブル部29の載置面29A上に載置されたエンベロープホルダ10が、底板11の載置面11Aが鉛直方向となる状態で予備凍結用ドロワー2内に収納される。このため、エンベロープホルダ10内に収納されている各エンベロープ8は、厚み方向において互いに対向する第1の面8A及び第2の面8Bがそれぞれ水平となる向きで予備凍結される。このように、各エンベロープ8をいわゆる寝かせた状態で予備凍結(緩慢凍結)するため、エンベロープ8に収納された扁平状のバッグ9内で生物学的試料が偏ってしまうおそれがない。したがって、生物学的試料の温度を均一に保った状態で予備凍結(緩慢凍結)することができる。
また、本実施形態の予備凍結装置200によれば、エンベロープホルダ10を載置した状態でエンベロープホルダ10の載置面11Aが水平又は垂直となるように回動する回動テーブル5を備えた構成となっている。このため、エンベロープホルダ10の向きを自動で変更することができる。
また、本実施形態の予備凍結装置200によれば、自動的にエンベロープホルダ10を予備凍結用ドロワー2及び予備凍結用容器3内に収納、搬出することができるため、大量のバッグ9を一括で予備凍結する場合であっても、膨大な時間及び労力を要することがない。
本実施形態の凍結保存システム100によれば、上述した予備凍結専用の予備凍結装置200と、この予備凍結装置200によって予備凍結された生物学的試料をエンベロープ8に収納した状態で凍結保存する、凍結保存専用の凍結保存装置300とを備える構成となっている。このように、予備凍結と凍結保存とを別々の装置で行う構成であるため、多くの生物学的試料を短時間で凍結保存することができる。
なお、発明の一実施形態である予備凍結装置200について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述した予備凍結装置200では、2つの予備凍結用ドロワー2が予備凍結用容器3内で隣接するように並べられ、2つの開口部16A,16Bを備える例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、1つの予備凍結用ドロワー2が予備凍結用容器3内に収納され、開口部が1つであってもよいし、予備凍結用ドロワー2が予備凍結用容器3内で3つ以上隣接するように並べられ、開口部が3つ以上であってもよい。
また、上述した予備凍結装置200では、入出力装置(図示略)が筐体の外部に設けられている例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、入出力装置の入力部および表示部の一方又は両方が筐体の外壁に設けられる等により、予備凍結装置200と一体に構成されていても構わない。
また、上述した予備凍結装置200では、制御装置52に、予備凍結用ドロワー昇降装置4、第1搬送機構27、回動テーブル5、搬送ステージ43、搬送ステージ46、第1の押出アーム6、第2の押出アーム7などへ動作を指示する制御プログラムが組み込まれ、外部に接続された入出力装置を作業者が操作することにより制御部に各種指示を出す例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、入出力装置を介さず、作業者が制御装置52を操作することにより、予備凍結用ドロワー昇降装置4などの各動作部に直接指示するものであってもよい。
また、上述した予備凍結装置200では、エンベロープ8内に扁平状のバッグ9を収容する場合について説明したが、チューブ形状等、エンベロープ8内に収納可能であれば特に限定されるものではない。
(エンベロープホルダ保持機構)
次に、本発明を適用した一実施形態であるエンベロープホルダ保持機構400の構成の一例について説明する。
図1〜図3、図5に示すように、エンベロープホルダ保持機構400は、予備凍結装置200の筐体(図示略)及び凍結保存装置300の筐体(図示略)の外側であって、予備凍結装置200及び凍結保存装置300のそれぞれに隣接する位置に設けられている。エンベロープホルダ保持機構400は、予備凍結装置200と凍結保存装置300との間で、1以上のエンベロープ8を収容するエンベロープホルダ10の受け渡しを行う際、エンベロープホルダ10を一時的に保持するための装置である。
ここで、図12は、本発明の一実施形態であるエンベロープホルダ保持機構400の構成を示す平面図である。図13は、本発明の一実施形態であるエンベロープホルダ保持機構400の構成を示す側面図である。図14は、本発明の一実施形態であるエンベロープホルダ保持機構400の構成を示す側面図である。
図12〜図14に示すように、本発明を適用した一実施形態であるエンベロープホルダ保持機構400は、軸部材453と、支持部454と、駆動部455によって概略構成されている。
軸部材453は、鉛直方向上下に延在する棒状の部材である。この軸部材453は、駆動部455によってZ軸方向上下に移動可能に取り付けられている。また、軸部材453は、上述した回動テーブル5を構成する搬送テーブル部28の載置面28Aに設けられた開口部30のうち、Y軸方向に延在するスリット部30Bの幅よりも細い幅となっている。さらに、軸部材453は、後述する凍結保存装置300の第1のステージ305の載置面305Aに設けられた開口部352のうち、X軸方向に延在するスリット部352Bの幅よりも細い幅となっている。
支持部454は、軸部材453の上端に設けられた円盤状の部材である。支持部454の上面は、エンベロープホルダ10の底面11Bの中央部分に設けられた円形の凹部11Cと一致する形状となっている。エンベロープホルダ10の下方から凹部11Cに円形の支持部454の上面を当接させることにより、エンベロープホルダ10を支持することができる。
また、支持部454は、上述した回動テーブル5を構成する搬送テーブル部28の載置面28Aに設けられた開口部30のうち、載置面28Aの中央部分を貫通する円形部30Aよりも小さな面積となっている。さらに、支持部454は、後述する凍結保存装置300の第1のステージ305の載置面305Aに設けられた開口部352のうち、載置面305Aの中央部分を貫通する円形部352Aよりも小さな面積となっている。
駆動部455は、軸部材453をZ軸方向上下に移動させるとともに、軸部材453を所定の高さに維持することができる。これにより、支持部454によって支持されたエンベロープホルダ10を所定の高さに押し上げるととともに、エンベロープホルダ10を所定の高さに維持することができる。
次に、本実施形態のエンベロープホルダ保持機構400の運転方法の一例について説明する。
予備凍結装置200との間でエンベロープホルダ10を受け渡す場合、先ず、支持部454の上面に予備凍結前のエンベロープホルダ10を載置する。この際、エンベロープホルダ10の底面11Bの中央部分に設けられた円形の凹部11Cと支持部454の上面との形状が一致するため、容易に位置決めすることができる。
次に、駆動部455を駆動して、軸部材453をZ軸方向上方に移動させた後、軸部材453を所定の高さに維持する。これにより、支持部454によって支持されたエンベロープホルダ10は、Z軸方向の上方に退避される。
次に、予備凍結装置200の第1搬送機構27により、搬送ステージ24をY軸方向に移動させて、取り出し口51から回動テーブル5を予備凍結装置200の筐体(図示略)の外側に送り出す。回動テーブル5は、支持部454によって支持されたエンベロープホルダ10の下方となり、エンベロープホルダ10と搬送テーブル部28の載置面28Aとが平面視で重なる位置まで移動する。なお、搬送テーブル部28の載置面28AにはY軸方向に延在するスリット部30Bが設けられているため、軸部材453は、回動テーブル5と干渉することなく開口部30の内側に移動できる。
次に、駆動部455を駆動して、軸部材453をZ軸方向下方に移動させる。これにより、エンベロープホルダ10は、回動テーブル5の搬送テーブル部28の載置面28Aに載置される。なお、支持部454は、軸部材453とともに下降し、載置面28Aに設けられた開口部30を介して回動テーブル5の下方に退避される。
次いで、予備凍結装置200の第1搬送機構27により、搬送ステージ24をY軸方向に移動させて、取り出し口51から回動テーブル5を予備凍結装置200の筐体(図示略)の内側に収容する。以上のようにして、エンベロープホルダ保持機構400から予備凍結装置200へ、予備凍結前のエンベロープホルダ10が受け渡される。
なお、予備凍結装置200からエンベロープホルダ保持機構400へ、予備凍結が済んだエンベロープホルダ10が受け渡される場合には、上述した手順と逆の手順が行われる。
同様に、後述する凍結保存装置300との間でエンベロープホルダ10を受け渡す場合、先ず、支持部454の上面にエンベロープホルダ10を載置する。次に、駆動部455を駆動して、軸部材453をZ軸方向上方に移動させた後、軸部材453を所定の高さに維持する。これにより、支持部454によって支持されたエンベロープホルダ10は、Z軸方向の上方に退避される。
次に、凍結保存装置300の後述する第2搬送機構361により、第1のステージ305をX軸方向に移動させて、取り出し口362から第1のステージ305を凍結保存装置300の筐体(図示略)の外側に送り出す。第1のステージ305は、支持部454によって支持されたエンベロープホルダ10の下方となり、エンベロープホルダ10と第1のステージ305の載置面305Aとが平面視で重なる位置まで移動する。なお、第1のステージ305の載置面305AにはX軸方向に延在するスリット部352Bが設けられているため、軸部材453は、第1のステージ305と干渉することなく開口部352の内側に移動できる。
次に、駆動部455を駆動して、軸部材453をZ軸方向下方に移動させる。これにより、エンベロープホルダ10は、第1のステージ305の載置面305Aに載置される。なお、支持部454は、軸部材453とともに下降し、載置面305Aに設けられた開口部352を介して第1のステージ305の下方に退避される。
次いで、凍結保存装置300の第2搬送機構361により、第1のステージ305をX軸方向に移動させて、取り出し口362から第1のステージ305を凍結保存装置300の筐体(図示略)の内側に収容する。以上のようにして、エンベロープホルダ保持機構400から凍結保存装置300へ、エンベロープホルダ10が受け渡される。
なお、凍結保存装置300からエンベロープホルダ保持機構400にエンベロープホルダ10が受け渡される場合には、上述した手順と逆の手順が行われる。
また、エンベロープホルダ保持機構400は、予備凍結装置200内の制御装置52によって運転を制御できるものであってもよい。
以上説明したように、本実施形態のエンベロープホルダ保持機構400によれば、予備凍結装置200と凍結保存装置300との間で、1以上のエンベロープ8を収容するエンベロープホルダ10の受け渡しを行う際、エンベロープホルダ10を一時的に保持することができる。その際、予備凍結装置200及び凍結保存装置300と連動することで、予備凍結前のエンベロープホルダ10を自動で予備凍結装置200に搬入することができ、予備凍結が済んだエンベロープホルダ10を予備凍結装置200から自動で取り出した後、そのまま凍結保存装置300内に搬入することができる。したがって、大量のエンベロープ8を一括で予備凍結、あるいは凍結保存する場合であっても、膨大な時間及び労力を要することがなく、安全である。
(凍結保存装置)
次に、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置の構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1〜図3に示すように、本実施形態の凍結保存装置300は、凍結保存容器302と、作業空間303にドロワー昇降装置(第1のアーム)304と、第1のステージ305と、第2のステージ306と、第1の押圧装置(第3のアーム)307と、第2の押圧装置(第2のアーム)308と、を備えて概略構成されている。
本実施形態の凍結保存装置300は、上述した予備凍結装置200に設けられた制御装置52によってドロワー昇降装置304および第2の押圧装置308を独立して駆動させることにより、凍結保存容器302内に保存されている目的の生物学的試料を自動で取り出すとともに、目的以外の生物学的試料の昇温を低減するものである。
図15に示すように、ドロワー(凍結保存用ドロワー)313は、側面となる一対の縦板331,331と、縦板331,331間に亘って設けられた複数の床板332とによって構成される。これにより、Z軸方向に連続して棚が設けられる。なお、本実施形態の凍結保存装置300では、生物学的試料が収納されたエンベロープ8を凍結保存する。エンベロープ8は、Z軸方向に対して垂直に設けられたドロワー313の棚に一定の間隔をあけて収容されている。図15では、4つの棚にそれぞれ10個のエンベロープ8が直立して収容されている。エンベロープ8の位置および姿勢を規制するために、ドロワー313の棚には仕切板が設けられていることが好ましい。なお、仕切板の代わりにエンベロープ8を直立させる溝が設けられていてもよい。また、一対の縦板と直交する少なくとも一つの側面が開口しているため、エンベロープ8の出し入れが可能となっている。
図1及び図2に示すように、凍結保存容器302は、本実施形態の凍結保存装置300の下方に設けられている。凍結保存容器302は、ドロワー313を内部に収容し、凍結保存するための容器である。
図16は、本発明を適用した一実施形態である凍結保存装置300における凍結保存容器302を側面から見た断面模式図である。
図16に示すように、凍結保存容器302は、ステンレス鋼などからなる内槽321と外槽322とから形成される二重構造であり、内槽321と外槽322との間の空隙が真空である真空二重断熱容器である。したがって、内槽321の内部に液体窒素などの低温液化ガスを満たすことにより、内部を低温状態に保持することができる。例えば、内槽321の底部付近まで、具体的には後述のドロワーテーブル(回転テーブル)324の下まで液体窒素を満たすことにより、内槽321の内部の気相部を−150℃以下に保持することができる。
凍結保存容器302の上面には、2つの開口部323a,323bが設けられている。この開口部323a,323bを介して、凍結保存容器302の内部空間と作業空間303とが連通されている。
2つの開口部323a,323bは、後述のドロワーテーブル324の半径方向に互いに隣接するように設けられている。
各開口部323a,323bの開口面積は、ドロワー313を平面視した際の面積とほぼ同等となっている。このため、作業空間303においてドロワー313からエンベロープ8を搬送する際に、誤ってエンベロープ8が開口部323a,323bから凍結保存容器302内に落下することを防止することができる。
各開口部323a,323bは、当該開口部を閉塞するキャップ325が設置可能とされている。ここで、図16では、開口部323aにキャップ325が設けられて閉塞されており、開口部323bにはキャップ325が設けられていない場合を一例として説明する。各開口部323a,323bにそれぞれキャップ325を設けることにより、当該開口部が閉塞されるため、凍結保存容器302内の温度の上昇を抑制することができる。
キャップ325の材質としては、断熱性能の高いものであれば特に限定されないが、例えば、発泡ウレタン樹脂などが挙げられる。
キャップ325の上面には、把持部326が設けられている。この把持部326の形状は、キャップ325を各開口部323a,323bから着脱させる際に把持しやすいものであれば特に限定されるものではないが、後述するドロワー昇降装置304によって把持することが可能な形状が好ましい。ドロワー昇降装置304によって把持部326を把持することが可能であれば、ドロワー昇降装置304をZ軸方向に上昇および下降させることで、キャップ325を開口部323a,323bから自動で着脱させることができる。
図16および図17に示すように、凍結保存容器302内の底部には、ドロワー313を載置させるためのドロワーテーブル324が設けられている。このドロワーテーブル324は、凍結保存容器302の外側に設けられドロワーテーブル324の回転軸328に結合したモーター327により、回転軸328を中心として回転させることができるように構成されている。
また、図17に示すように、ドロワーテーブル324上には、回転軸328を中心とする任意の2つの同心円の各円周上に、複数のドロワー313をそれぞれ載置可能とされている。なお、平面視した際に、開口部323a,323bが上記同心円の各円周上となるように、各開口部と同心円とが位置合わせされている。
これにより、任意のドロワー313を取り出す際に、ドロワーテーブル324を回転させることにより、任意のドロワー313を開口部323aまたは開口部323bの真下に位置するように移動させることができる。
また、図16に示すように、ドロワーテーブル324上には、各ドロワー313を載置する位置に対応するように、上端部が広がったテーパ形状とされたドロワーガイド329が設けられている。ドロワーガイド329を設けることにより、各ドロワー313が所定の位置に載置されるように固定することができる。これにより、ドロワーテーブル324を回転させた際に、ドロワーテーブル324上で各ドロワー313の位置がずれることを防止することができる。また、ドロワーガイド329のテーパ部がドロワー313下降時の位置ずれを補正することができる。
各ドロワー313をドロワーテーブル324上に載置する際は、後述するドロワー昇降装置304によりドロワー313を上昇した場合に、開口している側面が第1のステージ305側を向くように載置する。
ドロワー313の上面には把持部333が設けられている。この把持部333の形状は、ドロワー313をZ軸方向に上昇および下降させることができるものであれば特に限定されるものではないが、後述するドロワー昇降装置304によって把持することが可能な形状が好ましい。ドロワー昇降装置304によって把持部333を把持することが可能であれば、ドロワー昇降装置304をZ軸方向に上昇および下降させることで、ドロワー313を開口部323a,323bから自動で入出庫させることができる。
作業空間303は、図1及び図2に示すように、凍結保存容器302の上方に設けられており、開口部323a,323bを介して凍結保存容器302と連通している。本実施形態の凍結保存装置300は筐体(図示略)に囲まれており、作業空間303は、凍結保存容器302内から蒸発した窒素ガスなどにより、凍結保存容器302から取り出したエンベロープ8等への霜付きを低減できるドライ環境(例えば、−20℃以下)に維持されている。凍結保存容器302の開口部323a,323bを含んだ作業空間を筐体で覆うことによって、ドロワー313や液体窒素に作業者が直接触れることによる凍傷や、開口部323a,323bから蒸発する窒素ガスによる酸欠の危険を解消できる。また、ドライ環境に筐体内を維持することにより、作業空間303内での結露などを防止することができる。
図18に示すように、ドロワー昇降装置304は、ドロワー313を把持するなどにより保持した状態で、開口部323a,323bのいずれか一方を介してドロワー313をZ軸方向に上昇および下降させるための部材であり、作業空間303内に設けられている。このドロワー昇降装置304は、支持レール341と、昇降装置駆動部342と、主軸部343と、フック344とによって構成されている。
支持レール341は、作業空間303の上方にX軸方向に亘って設けられている。この支持レール341には、昇降装置駆動部342が上記X軸方向に移動可能に取り付けられている。
昇降装置駆動部342には、主軸部343が垂下するように設けられている。また、主軸部343の下端には、フック344が設けられている。フック344の形状は、ドロワー313を把持することができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、鉤状とすることができる。これにより、ドロワー313の上部に設けられた把持部333を把持することができる。
このように構成されたドロワー昇降装置304によれば、支持レール341上をX軸方向に移動させることで、目的の試料が保管されたドロワー313の位置に対応する開口部323aおよび開口部323bのいずれかの上方にフック344を移動させることができる。
また、ドロワー昇降装置304を凍結保存容器302内に下降させてドロワー313の上部に設けられた把持部333を把持する際に、支持レール341上をX軸方向に移動させることでフック344の位置を容易に調整することができる。これにより、ドロワー昇降装置304が1本であっても、複数の開口部323a,323bからドロワー313を入出庫することができる。
また、昇降装置駆動部342を駆動させることにより、主軸部343を介してフック344をZ軸方向に上昇および下降させることができる。すなわち、ドロワー313を把持した状態で、開口部323a,323bのいずれかを介してドロワー313をZ軸方向に上昇および下降させることができる。これによりドロワー313を凍結保存容器302から入出庫させることができる。
さらに、昇降装置駆動部342の駆動を停止することにより、フック344をZ軸方向の任意の高さに維持することができる。すなわち、ドロワー313を把持した状態で、ドロワー313を任意の高さに維持することができる。
図3及び図19に示すように、作業空間303の下方に、第1のX軸レール351がX軸方向に亘って設けられている。第1のステージ305は、上記第1のX軸レール351に取り付けられており、X軸方向に移動可能とされている。そのため、第1のステージ305は、平面視した際に、開口部323aおよび開口部323bのそれぞれに隣接する位置に移動することができる(特に、図3を参照)。
第1のステージ305が、平面視した際に、開口部323a,323bのいずれかに隣接していることにより、ドロワー313から任意の高さに収納された所望のエンベロープ8を取り出す際、ドロワー313全体を凍結保存容器302から出庫させる必要がなくなる。これにより、所望のエンベロープ8が収納されている収納空間の底面と第1のステージ305とが同じ高さとなるまでドロワー313を上昇させることにより、後述する第2の押圧装置308(第2のアーム)によって、所望のエンベロープ8のみを第1のステージ305上に取り出すことができる。したがって、目的の試料以外の試料が昇温するのを抑えることができる。さらに、ドロワー313の全体を引き上げる必要がないため、装置の高さ方向を小型化することができる。
図19に示すように、第1のステージ305は、載置面305Aを有しており、この載置面305Aにエンベロープホルダ10を載置可能である。
また、図12に示すように、載置面305Aの一部に開口部352が設けられている。開口部352は、載置面305Aの中央部分を貫通する円形部352Aと、円形部352Aと連通し、X軸方向に延在するスリット部352Bとを有する。
また、図3及び図19に示すように、作業空間303の下方であって、開口部323a,323bを挟んで第1のX軸レール351の反対側に、第2のX軸レール354がX軸方向に亘って設けられている。第2のステージ306は、上記第2のX軸レール354に取り付けられており、X軸方向に移動可能とされている。そのため、第2のステージ306は、平面視した際に、開口部323aおよび開口部323bのそれぞれに隣接する位置に移動することができる(特に、図3を参照)。
第1のステージ305および第2のステージ306は、上述したようにX軸方向に移動可能であり、一対となってX軸方向に移動可能である。これにより、例えば、図19に示すように、開口部323aからドロワー313を入出庫する際に、第1のステージ305、開口部323a、および第2のステージ306が、この順に隣接して並ぶことができる。なお、第1のステージ305及び第2のステージ306は、一対で同時に動くだけでなく、個々に動作することも可能である。
第1の押圧装置307は、第1のステージ305上に載置させられたエンベロープホルダ10に収納されているエンベロープ8をドロワー313側へ押圧することで、エンベロープ8をドロワー313に収納するための部材である。図3に示すように、第1の押圧装置307,307は、第1のステージ305を挟んで開口部323a,323bと対向する側にそれぞれ設けられている。この第1の押圧装置307は、図19に示すように、第1の支持部356と、第1の押圧部357とによって構成されている。
第1の支持部356は、先端がY軸方向に移動可能に取り付けられている。
第1の押圧部357は、第1の支持部356の先端に設けられている。さらに、第1の押圧部357には、複数本の押圧アーム157…が設けられている。なお、図3及び図19に示すように、本実施形態の凍結保存装置300では、第1の押圧装置307は、エンベロープホルダ10内に収納されるエンベロープ8の数と対応するように、10本の押圧アーム157がそれぞれ設けられている。この第1の押圧部357に設けられた複数本の押圧アーム157により、エンベロープホルダ10内に収納された各エンベロープ8をY軸方向に押圧することができる。
このように構成された第1の押圧装置307によれば、第1のステージ305上に載置されたエンベロープホルダ10内に収納された各エンベロープ8をドロワー313側へ押圧することで、各エンベロープ8をドロワー313に収納することができる。
第2の押圧装置308は、ドロワー昇降装置304により第1のステージ305と隣接する高さに維持されるドロワー313内に収納されたエンベロープ8を、第1のステージ305側へ押圧することで、エンベロープ8を第1のステージ305上に載置されたエンベロープホルダ10内に移動させる部材である。第2の押圧装置308は、第2のステージ306上に設けられている。この第2の押圧装置308は、図19に示すように、移動テーブル358と、第2の押圧部359とによって構成されている。
移動テーブル358は、第2のステージ306上でX軸方向に移動可能に設けられている。また、第2の押圧部359は、移動テーブル358上でY軸方向に移動可能に取り付けられている。さらに、第2の押圧部359の先端には、1本の押圧アーム159が設けられている。
上記第2の押圧装置308が第2のステージ306上でX軸方向に移動し、第2の押圧部359が移動テーブル358上でY軸方向に移動することにより、第2の押圧部359の先端に設けられた押圧アーム159が、第1のステージ305と隣接する高さに位置するドロワー313内の特定のエンベロープ8を第1のステージ305側へ押圧する。これにより、押圧されたエンベロープ8をドロワー313から第1のステージ305上に載置されたエンベロープホルダ10内に収納することができる。なお、押圧アーム159は、一つのエンベロープ8を押し出すことができる大きさであることが好ましい。
なお、本実施形態では、押圧アーム159が1本である構成を一例として説明したが、複数本設けることも可能である。この場合、複数のエンベロープ8を同時に押し出すことができる。
上述したように、第1の押圧装置307,307の第1の押圧部357には、それぞれ複数本の押圧アーム157…が設けられている。これにより、エンベロープ8がエンベロープホルダ10のどの部分に収容されていても、その位置を考慮することなく、第1の押圧部357をドロワー313に向かって押し出すことでエンベロープホルダ10内のエンベロープ8をドロワー313に収容することができる。また、エンベロープホルダ10内にエンベロープ8が複数ある場合であっても、ドロワー313に一度に収容できる。
なお、本実施形態の凍結保存装置300では、第1の押圧装置307が開口部323a,323bに対向するように2つ設けられている構成を一例として説明したが、第1の押圧装置307は、第2の押圧装置308と同様に、一つのみ具備することもできる。その場合、第1の押圧装置307はX軸方向に移動できる。
図20に示すように、第1および第2のドロワーガイド155および255が、ドロワー313が移動するZ軸方向に上下に位置して設けられている。このように、Z軸方向に沿って二か所にガイドを設けることにより、ドロワー313が昇降する際、ドロワー313の位置ずれを規制することができ、したがって、ドロワー313の昇降をより正確な場所により正確な姿勢で行うことができる。
第1のドロワーガイド155は、ドロワー昇降装置304の一部である支持レール341に設けられていることが好ましい。これにより、ドロワー313を引き上げる際、特にドロワー313の上部の位置ずれを規制できる。
第2のドロワーガイド255は、第1のドロワーガイド155よりも下方に設けられている。これにより、ドロワー313を引き上げる際、特にドロワー313の下部の位置ずれを規制できる。第2のドロワーガイド255は、第2のステージ306に取り付けられている。
図21に示すように、第1および第2のドロワーガイド155および255は、平面視した際にドロワー313の周囲を囲むように設けられている。これにより、X軸およびY軸方向の二方向における位置ずれを規制できる。また、ドロワー313の形状が四角柱であれば、第1および第2のドロワーガイド155および255の形状は、四角の枠形であることが好ましい。
図3に示すように、本実施形態の凍結保存装置300には、作業空間303を覆う筐体に、取り出し口362が設けられている。また、取り出し口362として、自動扉を用いるとともに、この自動扉に連動して第1のステージ305をX軸上に動かし、自動スライド扉としてもよい。この場合、作業者は筐体内に手を入れることなく凍結保存装置300内外にエンベロープホルダ10を搬送することができる。
入出力装置(操作パネル)及び制御装置52としては、上述した実施形態に係る予備凍結装置200と共通して用いることができる。
作業者は、入出力装置を操作して、制御装置52に指示を出すことにより、エンベロープ8を取り出しおよび収納するための様々な操作をすることができる。例えば、作業者が、在庫情報から取り出す試料を選択し、エンベロープ8の取出しを指示することで、自動で所望のエンベロープ8が収納されたエンベロープホルダ10を取り出し口362の外側まで移動させることができる。また、入出力装置が備える記憶部において、凍結保存装置300において管理されるエンベロープ8の情報を記憶することもできる。
また、制御装置52には、ドロワー昇降装置304、第1のステージ305、第2のステージ306、第1の押圧装置307、第2の押圧装置308などへ動作を指示する制御プログラムが組み込まれている。これにより、例えば、第2の押圧装置308によりエンベロープ8を第1のステージ305上に載置されたエンベロープホルダ10に収納した後に、ドロワー昇降装置304によりドロワー313を下降させ、凍結保存容器302内に移動させるといった動作指示をすることができる。これにより、ドロワー313内に収納された他の試料が昇温するのを抑制することができる。
次に、上述した凍結保存装置300を用いて、開口部323bを介してドロワー313を出庫し、所望のエンベロープ8を取り出す方法について説明する。
先ず、作業者が入出力装置(図示略)を操作して、制御装置52に所望のエンベロープ8の取出しを指示する。これにより、所望のエンベロープ8が収納されている収納空間の底面と第1のステージ305とが同じ高さとなるまで、開口部323bを介して、ドロワー313を上昇させる。この時、第1および第2のドロワーガイド155および255が、ドロワー313が移動するZ軸方向に上下に設けられているため、ドロワー313を所定位置に、かつ所定の姿勢で移動させることができる。
次に、第2の押圧装置308の押圧アーム159がX軸方向に移動し、所望のエンベロープ8に相対する。次いで、押圧アーム159が所望のエンベロープ8をY軸方向へ押圧することで、所望のエンベロープ8のみをドロワー313から第1のステージ305上のエンベロープホルダ10へ移動させる。以上の動作により、エンベロープホルダ10上に所望のエンベロープ8が載置される。
次に、エンベロープ8が載せられたエンベロープホルダ10を載置した第1のステージ305をX軸方向に移動させ、作業空間303を覆う筐体の取り出し口362の外側まで移動させる。この際、上述したエンベロープホルダ保持機構400を連動させることにより、エンベロープホルダ10をエンベロープホルダ保持機構400の支持部454上に保持する。この場合、作業者は凍結保存装置300の筐体内に手を入れることなくエンベロープ8を取り出すことができる。以上の動作により、所望のエンベロープ8の取り出し動作が完了する。
以下、エンベロープ8を凍結保存装置300に収容する方法を説明する。
先ず、エンベロープホルダ保持機構400の支持部454上にエンベロープホルダ10を保持する。次いで作業者は、エンベロープホルダ10の指定場所にエンベロープ8を収容する。この指定場所は、入出力装置が入出庫状況に基づいて指示する。次いで、入出力装置(図示略)を操作して、第1のステージ305をX軸方向に移動させ、エンベロープホルダ10をエンベロープホルダ保持機構400から第1のステージ305に受け渡した後、取り出し口362から凍結保存装置300内に第1のステージ305を搬入する。
次に、エンベロープホルダ10を載置する第1のステージ305をX軸方向に移動させ、開口部323bに隣接させる。この時、第1のステージ305と、収容すべきドロワーの棚の底面とが同じ高さになるように、ドロワー313は移動している。
次いで、第1の押圧装置307の押圧アーム157をY軸方向に移動させ、エンベロープホルダ10に収納されているエンベロープ8に突き当てる。その後、さらにエンベロープ8を押し出し、エンベロープ8の全体がドロワー313に収容されたら、動きを停止させる。これによりエンベロープ8をドロワー313に収容させる。
この際、第1の押圧装置307は、複数の押圧アーム157を有するため、エンベロープ8がエンベロープホルダ10のどこに収容されていても、1回の押し出しにて確実にドロワーに収容できる。また、複数のエンベロープ8であっても1回の押し出しにて収容できる。その後、ドロワー313は、凍結保存容器302に収容される。
本実施形態の凍結保存装置300によれば、エンベロープ8を鉛直方向に並べて数段に収納するドロワー313を内部に収容するとともに、作業空間303と連通する開口部323a,323bが上面に設けられた凍結保存容器302と、ドロワー313を把持した状態で、開口部323a,323bを介してドロワー313を鉛直方向に上昇および下降させるとともに、ドロワー313を任意の高さに維持するドロワー昇降装置304と、凍結保存容器302の上方であって、平面視した際に開口部323a,323bに隣接するように設けられるとともに、エンベロープ8を収容できるエンベロープホルダ10を載置した第1のステージ305と、エンベロープ8を押圧して第1のステージ305上のエンベロープホルダ10に移動させる第2の押圧装置308とを備える構成となっている。
このように、平面視した際に開口部323a,323bに隣接するように第1のステージ305が設けられているため、ドロワー昇降装置304によって目的のエンベロープ8を凍結保存容器302から取り出す際に、ドロワー313の全体を凍結保存容器302から引き上げることなく、目的のエンベロープ8のみを第2の押圧装置308によって第1のステージ305上に載置されたエンベロープホルダ10に取り出すことができる。したがって、目的のエンベロープ8を自動で取り出すことができ、かつ、目的のエンベロープ8以外が昇温することを抑えることができる。
また、本実施形態の凍結保存装置300によれば、少なくとも、ドロワー昇降装置304と、第2の押圧装置308とを制御する構成となっている。そのため、第2の押圧装置308によりエンベロープ8を第1のステージ305上のエンベロープホルダ10に載置した後に、ドロワー昇降装置304によりドロワー313を下降させ、凍結保存容器302内に収容させる一連の操作を自動で行うことができる。これにより、目的のエンベロープ8以外が昇温することをさらに抑えることができる。
また、本実施形態の凍結保存装置300によれば、第1および第2のドロワーガイド155および255が、ドロワー313が昇降するZ軸方向の上下に2か所設けられている。このため、X軸およびY軸方向におけるドロワー313の位置ずれを規制することができる。本発明においては、ドロワー313の棚に複数載置されたエンベロープ8の中の所定のエンベロープ8のみを取り出すため、エンベロープ8の位置について高い精度が求められる。第1および第2のドロワーガイド155および255が設けられていると、X軸およびY軸方向におけるドロワー313の位置ずれをより規制することができるため好ましい。さらに、第1および第2のドロワーガイド155および255がZ軸方向における上下に設けられていると、ドロワー313を昇降させる際に生じる可能性がある傾きや揺れも規制できるため好ましい。
また、本実施形態の凍結保存装置300によれば、第1の押圧部357は複数の押圧アーム157を有し、第2の押圧部359は1本の押圧アーム159を具備する。押圧アーム159は、第2のステージ306上をX軸方向に移動し、所望のエンベロープ8のみを第1のステージ305方向に押し出すことができる。ドロワー313には、複数収容されるエンベロープ8の収納空間が、エンベロープホルダ10の収納空間と対応する幅となるように設けられている。また、エンベロープホルダ10は、その収納空間と、ドロワー313の収納空間とがY軸方向で一致するように配置される。このため、押圧アーム159をY軸方向に押し出すことでドロワー313に収容されたエンベロープ8を第1のステージ305上のエンベロープホルダ10に収容できる。
以上、本実施形態の凍結保存装置300について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述した凍結保存装置300では、ドロワー313が凍結保存容器302内で同心円状に2段にわたり並べられ、2つの開口部323a,323bを備える例について説明したが、この実施形態に限られるものではない。例えば、ドロワー313が凍結保存容器302内で1つの任意の円状に並べられ、開口部が1つであってもよいし、ドロワー313が凍結保存容器302内で3つ以上の任意の同心円状に並べられ、開口部が3つ以上であってもよい。
また、上述した実施形態の凍結保存装置300では、ドロワー313には、複数のエンベロープ8が収納される収納空間が設けられている構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、ドロワー313には、エンベロープホルダ10をZ軸方向に並べて収納するための棚が設けられていてもよい。この場合、第1の押圧装置307は、第1の支持部356と、第1の押圧部357とによって構成され、複数の押圧アーム157は不要となる。また、第2の押圧装置308は、第2の押圧部359によって構成され、一本の押圧アーム159は不要となる。