JP2019174864A - 入力装置、入力装置の制御方法、及びコンピュータに入力装置の制御方法を実行させるプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】符号化駆動において検出信号の和の信号レベルを抑制できる入力装置を提供する。【解決手段】N本の駆動電極へ同時にN回印加される駆動信号の極性パターンをN行N列の極性パターン行列で表わした場合に、信号再生部320が、極性パターン行列の逆行列と合成検出信号行列との積に相当する演算により、N行1列の再生信号レベル行列を再生する。極性パターン行列は、全ての要素が「1」、「−1」又は「0」であり、かつ、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となる特性を持ったN行N列の所定の行列の一部を用いて作成された行列である。【選択図】図1
Description
本開示は、入力装置、入力装置の制御方法、及びコンピュータに入力装置の制御方法を実行させるプログラムに関するものである。
検出領域内の複数の検出位置において静電容量などの物理量を計測することにより、指などの操作体の近接状態を検出する入力装置がある。一例としての入力装置は、ある層に配設された平行な複数の駆動電極と、別の層に配設された平行な複数の検出電極とを備え、駆動電極と検出電極との交差位置を検出位置とする。
複数の検出位置の静電容量を取得するための駆動方法として符号化駆動がある。符号化駆動では、例えば、複数の駆動電極へ同時に正と負とのいずれかの極性の駆動信号が印加される。検出電極を介して出力される信号は、各検出位置における静電容量の検出信号の和(合成検出信号)となる。この合成検出信号が、駆動信号の極性のパターンを変えながら、検出位置の数(駆動電極の数)だけ繰り返し測定される。そして、得られた複数の合成検出信号と駆動信号の極性のパターンとを元に、各検出位置における静電容量が計算される。合成検出信号が複数の検出信号の和であるため、検出信号を1つずつ取得する一般的な駆動方法に比べて、検出信号に含まれるノイズの影響を低減できる。
符号化駆動では、複数回の測定で得られた合成検出信号の行列と、駆動信号の極性のパターンを表す駆動行列から導かれる逆行列との積を演算することで、個々の検出位置における静電容量が計算される。行列の積の演算は非常に負荷が大きいことから、駆動行列はなるべく演算が簡易となるように選択することが望ましい。そのため、上記の特許文献1〜4では、駆動行列としてアダマール行列やその変形の行列を用いる方法が検討されている。
また、符号化駆動では、1回の検出信号の測定において複数の駆動電極へ同時に印加される正の駆動信号の数と負の駆動信号の数とをなるべく近づけることが望ましい。これにより、合成検出信号(検出信号の和)のレベルが小さくなることから、合成検出信号を処理する回路において必要とされるダイナミックレンジが抑えられ、検出感度を高め易くなる。また、正の駆動信号の数と負の駆動信号の数とがバランスすることで、駆動信号による電界が相殺されて小さくなり、トータルの放射ノイズが低減する。そのため、駆動行列の選択にあたっては、複数の駆動電極へ同時に印加される正の駆動信号の数と負の駆動信号の数との差が小さくなるようにすることを考慮する必要がある。
そこで本開示は、物体の近接状態が検出される複数の検出位置における検出信号の和から元の検出信号を計算可能であり、検出信号の和の信号レベルを抑制できる入力装置、入力装置の制御方法及びコンピュータに入力装置の制御方法を実行させるプログラムを開示することを目的とする。
本開示の第1の側面は、複数の検出位置における物体の近接状態に応じた情報を入力する入力装置に関する。この第1の側面に係る入力装置は、N個の前記検出位置における物体の近接状態をそれぞれ検出し、前記N個の検出位置について前記検出の結果として得られるN個の検出信号の和に応じた合成検出信号を生成し、前記N個の検出位置の各々において、前記近接状態に応じた信号レベルを持つ前記検出信号の正負の極性を制御可能なセンサ部と、前記N個の検出信号に設定するN個の前記極性である極性パターンを互いに異ならせたN個の前記合成検出信号を生成するように前記センサ部を制御する制御部と、前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生する信号再生部とを有する。前記検出信号に設定する正又は負の前記極性を「1」又は「−1」で表わし、前記合成検出信号に加算しない前記検出信号に対して設定する前記極性を「0」で表し、前記N個の検出信号に設定する前記極性パターンを、それぞれ「1」、「−1」又は「0」の値を持ったN個の要素からなる1行N列の部分行列で表わし、かつ、前記N個の合成検出信号に対応するN個の前記極性パターンを、N個の前記部分行列からなるN行N列の極性パターン行列で表わした場合に、前記信号再生部は、前記極性パターン行列に対する逆行列と、前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号を要素とするN行1列の行列との乗算に相当する演算に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生する。前記極性パターン行列は、N行N列の修正行列、若しくは、前記修正行列に対して、少なくとも一部の行を交換する基本変形と少なくとも一部の列を交換する基本変形との少なくとも一方が施された行列である。前記修正行列は、第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列として(N−1)行(N−1)列の基本行列を含んでいる。前記基本行列は、N行N列の所定の行列における第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列と同一である。前記所定の行列は、全ての要素が「1」又は「−1」であり、かつ、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となる特性を持った行列である。前記修正行列の第2行目以降の全ての行は、N個の要素を加算した和がゼロである。前記修正行列の第1行目は、N個の要素を加算した和が非ゼロである。前記修正行列の第1行目は、前記所定の行列の第1行目に比べて、N個の要素を加算した和の絶対値が小さい。
上記第1の側面に係る入力装置によれば、全ての要素が「1」又は「−1」であり、かつ、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となる特性を持った前記所定の行列として、アダマール行列を用いることが可能となる。アダマール行列の場合、第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差がN又はそれに近い値となる。前記修正行列の場合、第1行目において行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、アダマール行列の第1行目よりも小さい。従って、前記極性パターン行列の極性パターンにより生成されるN個の前記検出信号において、「1」の前記検出信号の数と「−1」の前記検出信号の数との差が小さくなる。これにより、前記検出信号の極性が「1」と「−1」との一方に偏る場合に比べて、N個の前記検出信号から合成される前記合成検出信号のダイナミックレンジが小さくなる。前記合成検出信号のダイナミックレンジが小さくなると、合成検出信号を生成する回路において増幅率を高めやすくなるため、各検出位置において検出される微小な検出信号を高い感度で再生することが可能となる。また、「1」の前記検出信号の数と「−1」の前記検出信号の数との差が小さくなることにより、前記検出信号に起因して生じる放射ノイズが小さくなる。
好適に、前記基本行列は、各行の(N−1)個の要素を加算した和が全て「1」又は全て「−1」であってよく、各列の(N−1)個の要素を加算した和が全て「1」又は全て「−1」であってよく、任意の2つの行の内積が同一の値を持ってよく、任意の2つの列の内積が同一の値を持ってよい。
好適に、前記所定の行列は、シルベスター法によるアダマール行列又はペイリー法によるアダマール行列であってよい。
好適に、前記センサ部は、前記複数の検出位置に対応して設けられた複数の検出要素であって、物体の近接状態に応じた信号レベルを持ち、入力される駆動信号に応じて前記極性が「1」、「−1」又は「0」に設定される前記検出信号をそれぞれ発生する複数の検出要素と、前記制御部の制御に従って、前記複数の検出要素にそれぞれ前記駆動信号を供給する駆動部と、N個の前記検出要素が発生する前記N個の検出信号の和に応じた前記合成検出信号を生成する合成検出信号生成部とを含んでよい。
好適に、前記センサ部は、少なくとも1つの検出電極と、前記検出電極に交差する複数の駆動電極とを含んでよい。前記検出要素は、前記検出電極と前記駆動電極との交差部に形成され、物体の近接状態に応じて静電容量が変化するキャパシタであってよい。前記駆動部は、前記複数の駆動電極にそれぞれ前記駆動信号を供給してよい。1つの前記検出電極とN個の前記駆動電極との間には、前記N個の検出要素としてのN個の前記キャパシタが形成されてよい。前記合成検出信号生成部は、前記N個の駆動電極に供給されるN個の前記駆動信号に応じて前記検出電極に伝送される前記N個のキャパシタの電荷に基づいて、前記合成検出信号を生成してよい。
本開示の第2の側面に係る入力装置は、上記第1の側面に係る入力装置と同様に、前記センサ部と、前記制御部と、前記信号再生部とを有する。この第2の側面に係る入力装置において、前記修正行列の第2行目以降の全ての行は、第2列目から第N列目までの(N−1)個の要素を加算した和である部分合計値と第1列目の要素との差がゼロである。前記修正行列の第1行目は、前記部分合計値と第1列目の要素との差が非ゼロである。前記修正行列の各行は、前記所定の行列の第1行目に比べて、N個の要素を加算した和の絶対値が小さい。
上記第2の側面に係る入力装置においても、上記第1の側面に係る入力装置と同様に、前記極性パターン行列の極性パターンにより生成されるN個の前記検出信号において、「1」の前記検出信号の数と「−1」の前記検出信号の数との差が小さくなる。
本開示の第3の側面は、複数の検出位置における物体の近接状態に応じた情報を入力する入力装置の制御方法に関する。前記入力装置は、N個の前記検出位置における物体の近接状態をそれぞれ検出し、前記N個の検出位置について前記検出の結果として得られるN個の検出信号の和に応じた合成検出信号を生成し、前記N個の検出位置の各々において、前記近接状態に応じた信号レベルを持つ前記検出信号の正負の極性を制御可能なセンサ部を有する。前記制御方法は、前記N個の検出信号に設定するN個の前記極性である極性パターンを互いに異ならせたN個の前記合成検出信号を生成するように前記センサ部を制御することと、前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生することとを有する。前記検出信号に設定する正又は負の前記極性を「1」又は「−1」で表わし、前記合成検出信号に加算しない前記検出信号に対して設定する前記極性を「0」で表し、前記N個の検出信号に設定する前記極性パターンを、それぞれ「1」、「−1」又は「0」の値を持ったN個の要素からなる1行N列の部分行列で表わし、かつ、前記N個の合成検出信号に対応するN個の前記極性パターンを、N個の前記部分行列からなるN行N列の極性パターン行列で表わした場合に、前記信号レベルを再生することは、前記極性パターン行列に対する逆行列と、前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号を要素とするN行1列の行列との乗算に相当する演算に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生することを含む。前記極性パターン行列は、N行N列の修正行列、若しくは、前記修正行列に対して、少なくとも一部の行を交換する基本変形と少なくとも一部の列を交換する基本変形との少なくとも一方が施された行列である。前記修正行列は、第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列として(N−1)行(N−1)列の基本行列を含んでいる。前記基本行列は、N行N列の所定の行列における第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列と同一である。前記所定の行列は、全ての要素が「1」又は「−1」であり、かつ、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となる特性を持った行列である。前記修正行列の第2行目以降の全ての行は、N個の要素を加算した和がゼロである。前記修正行列の第1行目は、N個の要素を加算した和が非ゼロである。前記修正行列の第1行目は、前記所定の行列の第1行目に比べて、N個の要素を加算した和の絶対値が小さい。
本開示の第4の側面に係る入力装置の制御方法は、上記第3の側面に係る入力装置の制御方法と同様に、前記N個の検出信号に設定するN個の前記極性である極性パターンを互いに異ならせたN個の前記合成検出信号を生成するように前記センサ部を制御することと、前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生することとを有する。この第4の側面に係る入力装置の制御方法において、前記修正行列の第2行目以降の全ての行は、第2列目から第N列目までの(N−1)個の要素を加算した和である部分合計値と第1列目の要素との差がゼロである。前記修正行列の第1行目は、前記部分合計値と第1列目の要素との差が非ゼロである。前記修正行列の各行は、前記所定の行列の第1行目に比べて、N個の要素を加算した和の絶対値が小さい。
本開示の第5の側面は、上記第3の側面又は上記第4の側面に係る入力装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
本開示によれば、物体の近接状態が検出される複数の検出位置における検出信号の和から元の検出信号を計算可能であり、検出信号の和の信号レベルを抑制できるとともに、検出信号の和から元の検出信号の計算が可能な検出位置の数のバリエーションを増やすことができる。
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る入力装置について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る入力装置は、複数の検出位置における物体の近接状態に応じた情報を入力する装置であり、例えばタッチパッドやタッチパネルなどの入力装置に適用される。
以下、第1の実施形態に係る入力装置について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る入力装置は、複数の検出位置における物体の近接状態に応じた情報を入力する装置であり、例えばタッチパッドやタッチパネルなどの入力装置に適用される。
(入力装置の構成)
図1は、本実施形態に係る入力装置100の構成の一例を示す図である。図1に示す入力装置100は、センサ部200と、処理部300と、記憶部400と、インターフェース部500を有する。なお、本明細書において「近接」とは、近くにあることを意味しており、接触の有無を限定しない。
図1は、本実施形態に係る入力装置100の構成の一例を示す図である。図1に示す入力装置100は、センサ部200と、処理部300と、記憶部400と、インターフェース部500を有する。なお、本明細書において「近接」とは、近くにあることを意味しており、接触の有無を限定しない。
センサ部200は、複数の検出位置230における物体(指など)の近接状態をそれぞれ検出する。複数の検出位置230の各々において物体の近接状態の検出結果として得られる検出信号は、物体の近接状態に応じた信号レベルを持つとともに、正負の極性を持つ。センサ部200は、処理部300の後述する制御部310から与えられる極性パターンの情報に従って、個々の検出位置230において得られる検出信号の極性(正又は負)を制御することができる。
センサ部200は、それぞれN個(Nは4の倍数)の検出位置230を含んだL個の検出位置群235を持ち、全体としてN×L個の検出位置230を持つ。L個の検出位置群235は、後述するL個の検出電極ES1〜ESLに対応する。センサ部200は、L個の検出位置群235の各々について1つの合成検出信号aを生成する。合成検出信号aは、1つの検出位置群235に含まれるN個の検出位置230について得られるN個の検出信号の和に応じた信号である。
以下では、検出信号に設定する正の極性を「1」で表し、検出信号に設定する負の極性を「−1」で表し、合成検出信号aに加算しない検出信号に対して設定する極性を「0」で表す。また、センサ部200が1つの合成検出信号aを生成する際にN個の検出信号に設定するN個の極性を、「極性パターン」と呼ぶ。
図1の例において、センサ部200は、複数の検出位置230に対応して設けられた複数の検出要素240と、複数の検出要素240の各々に駆動信号vを供給する駆動部270と、検出位置群235ごとに合成検出信号aを生成する合成検出信号生成部250とを含む。
複数の検出要素240は、指などの物体の近接状態に応じた信号レベルを持ち、駆動部270から供給される駆動信号vに応じて極性が「1」、「−1」または「0」に設定される検出信号をそれぞれ発生する。
図1の例において、センサ部200は、複数の検出要素240が形成された電極部220を有する。電極部220は、L個の検出電極ES1〜ESL(以下、区別せずに検出電極ESと記す場合がある。)とN個の駆動電極ED1〜EDN(以下、区別せずに駆動電極EDと記す場合がある。)とを含む。個々の検出電極ESは、N個の駆動電極EDと交差する。L個の検出電極ESとN個の駆動電極EDとの各交差部には、物体の近接状態に応じて静電容量が変化するキャパシタが形成される。図1の例において、検出電極ESと駆動電極EDとの交差部の位置が検出位置230であり、この検出位置230において検出電極ESと駆動電極EDとの間に形成されるキャパシタが検出要素240である。図を簡潔にするため、図1では検出電極ES2と駆動電極ED2とが交差する位置にのみ、検出位置230及び検出要素240を示しているが、L個の検出電極ESとN個の駆動電極EDとが交差する全ての位置が検出位置230となり、各検出位置230にキャパシタとしての検出要素240が形成される。各検出要素240は、検出位置230の近傍における指などの物体との距離に応じて信号レベルが変化する検出信号を発生する。
検出要素240において発生する検出信号は、具体的には、検出要素240としてのキャパシタに蓄積される電荷である。1つの検出電極ESと1つの駆動電極EDとの間には、駆動部270によって所定の電圧振幅を持った駆動信号vが印加されるため、検出要素240としてのキャパシタにおいて駆動信号vに応じて充放電される電荷の量(検出信号の信号レベル)は、キャパシタの静電容量を表わす。また、検出要素240としてのキャパシタにおいて充放電される電荷の極性(検出信号の極性)は、駆動部270から駆動電極EDに供給される駆動信号vの電圧の極性に応じて制御される。
1つの検出電極ESとN個の駆動電極EDとの間に形成されるN個の検出位置230のグループが、上述した検出位置群235である。図を簡潔にするため、図1では検出電極ES2の検出位置群235のみを点線で示しているが、他の検出電極ESにも同様な検出位置群235が形成される。
なお、図1に示す電極部220の構成(検出電極ES1〜ESL、駆動電極ED1〜EDN)は一例であり、検出電極ES及び駆動電極EDの数や、形状、配置などはこの例で示すものに限定されない。例えば、図1において電極部220はL個の検出電極ESを備えているが、検出電極ESは1つのみでもよい。また、各検出電極ESにおける検出位置230の数は全て同一でなくてもよい。
駆動部270は、処理部300の制御部310の制御に従って、駆動電極ED1〜EDNへ同時に駆動信号v1〜vNを供給する。なお、図1において「v」に付された数字は、その駆動信号vが供給される駆動電極EDの符号の添え字を示す。
駆動部270は、処理部300の制御部310から入力される極性パターンの情報に基づいて、N個の駆動信号v1〜vNの極性をそれぞれ設定する。駆動信号vj(jは1からNまでの任意の整数を示す。)の極性は、具体的には、合成検出信号aを生成するタイミングにおいて、検出電極ESに対する駆動電極EDjの相対的な電圧が変化する方向によって規定される。例えば、駆動電極EDjと交差する検出位置230の検出信号の極性を「1」に設定する極性パターンの場合、駆動部270は、合成検出信号aを生成するタイミングにおいて、検出電極ESに対する駆動電極EDjの相対的な電圧を上昇させる駆動信号vjを供給する。逆に、当該検出信号の極性を「−1」に設定する極性パターンの場合、駆動部270は、合成検出信号aを生成するタイミングにおいて、検出電極ESに対する駆動電極EDjの相対的な電圧を低下させる駆動信号vjを供給する。これにより、当該検出信号の極性を「1」に設定する場合と「−1」に設定する場合とで、検出要素240(キャパシタ)へ蓄積される電荷の極性(すなわち検出信号の極性)が反転する。他方、当該検出信号の極性を「0」に設定する極性パターンの場合、駆動部270は、合成検出信号aを生成するタイミングにおいて、検出電極ESに対する駆動電極EDjの相対的な電圧を一定に保つ。これにより、合成検出信号aを生成するタイミングにおいて検出要素240(キャパシタ)へ蓄積される電荷がゼロとなる。
合成検出信号生成部250は、1つの検出位置群235に含まれるN個の検出要素240が発生するN個の検出信号の和に応じた信号を、1つの合成検出信号aとして生成する。図1の例において、合成検出信号生成部250は、それぞれ合成検出信号aを生成するL個の検出回路255−1〜255−L(以下、区別せずに検出回路255と記す場合がある。)を有する。L個の検出回路255−1〜255−Lは、L個の検出電極ES1〜ESLと一対一に接続される。検出回路255に付された1からLまでの数字は、接続される検出電極ESの符号の添え字を示す。
検出回路255は、N個の駆動電極EDに供給されるN個の駆動信号vに応じて検出電極ESに伝送されるN個のキャパシタ(検出要素240)の電荷に基づいて、合成検出信号aを生成する。例えば、検出回路255は、検出電極ESを通じて各検出要素240(キャパシタ)から転送される電荷(検出信号)の和に応じた合成検出信号を出力するチャージアンプと、チャージアンプから出力される合成検出信号をデジタル信号に変換して処理部300に出力するAD変換器を含む。なお、AD変換器はチャージアンプ毎に設けてもよいし、複数のチャージアンプの出力信号を1つのAD変換器においてそれぞれデジタル信号に変換してもよい。また、検出回路255は、図1の例に示すように1つの検出電極ESと接続してもよいし、マルチプレクサによって複数の検出電極ESと選択的に接続してもよい。
処理部300は、入力装置100の全体的な動作を制御する回路であり、例えば、記憶部400に格納されるプログラム410の命令コードに従って処理を行うコンピュータや、特定の機能を実現するロジック回路を含んで構成される。処理部300の処理は、その全てをコンピュータにおいてプログラムに基づいて実現してもよいし、その一部若しくは全部を専用のハードウェア(ロジック回路)で実現してもよい。
図1の例において、処理部300は、制御部310と、信号再生部320と、位置算出部330とを有する。
制御部310は、各検出位置群235においてN個の合成検出信号aを生成するように、センサ部200を制御する。すなわち、制御部310は、N個の検出信号の和である合成検出信号aを、検出信号と同じ数(N個)だけ生成する。制御部310は、N個の合成検出信号aを生成する場合、個々の合成検出信号aの極性パターンを互いに異ならせる。すなわち、N個の合成検出信号aの生成に用いるN個の極性パターンが全て異なる。後述するように、N個の合成検出信号aの生成に用いるN個の極性パターンは、「1」、「−1」、「0」を要素とするN行N列の極性パターン行列Dで表される。例えば制御部310は、予め記憶部400に格納された極性パターン行列Dに基づいて、N個の合成検出信号aを生成するようにセンサ部200を制御する。
信号再生部320は、検出回路255信号レベルを再生する。信号再生部320は、極性パターン行列Dを直接使用した処理によって、検出信号の信号レベルを再生してもよく、極性パターン行列Dを直接使用した処理から派生した別の処理によって、検出信号の信号レベルを再生してもよい。
位置算出部330は、信号再生部320によって再生された各検出位置230の検出信号に基づいて、物体(指など)が近接した操作面上の位置(座標)を計算する。例えば、位置算出部330は、各検出位置230の検出信号により表される二次元データを2値化して、物体が近接していることを示すデータが集合した領域を、個々の物体の近接領域として特定する。位置算出部330は、特定した物体の近接領域内における検出信号の分布から、操作面上において物体が近接した座標を計算する。
記憶部400は、処理部300に含まれるコンピュータにおいて実行されるプログラム410の命令コードや、処理部300の処理過程において一時的に記憶される変数データ(合成検出信号生成部250において生成される合成検出信号aなど)、処理部300の処理に使用される定数データ(駆動部270に供給する極性パターン、検出信号の再生に使用する後述の逆行列のデータなど)を記憶する。記憶部400は、例えばROMやRAM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリなどを含んで構成される。
インターフェース部500は、入力装置100と他の制御装置(入力装置100を搭載する電子機器のコントロール用ICなど)との間でデータをやり取りするための回路である。処理部300は、記憶部400に記憶される情報(物体が近接した座標情報、近接した物体の数など)をインターフェース部500から図示しない制御装置へ出力する。また、インターフェース部500は、処理部300のコンピュータにおいて実行されるプログラム410を、光ディスクやUSBメモリなどの非一時的記録媒体やネットワーク上のサーバなどから取得して、記憶部400にロードしてもよい。
(動作)
次に、本実施形態に係る入力装置100における合成検出信号aの生成と検出信号の再生に係る動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
次に、本実施形態に係る入力装置100における合成検出信号aの生成と検出信号の再生に係る動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
ここでは理解を容易にするため、N個の合成検出信号aとN個の検出信号とN個の検出パターンとの関係を、行列によって表現する。N個の検出位置230に対応するN個の検出信号の信号レベルは、式1のように、N行1列の信号レベル行列Cで表される。
信号レベル行列Cは、N個の検出信号の信号レベルc1〜cNを要素とする。信号レベル行列Cの各要素の添え字は、N個の検出位置230を識別するために割り当てられた1からNまでの整数を示す。図1の例では、駆動電極EDjと検出電極ESとが交差した検出位置230において検出される検出信号の信号レベルが「cj」である。
N個の異なる極性パターンによって生成されるN個の合成検出信号aは、式2のように、N行1列の合成検出信号行列Aで表される。
合成検出信号行列Aは、N個の合成検出信号a1〜aNを要素とする。合成検出信号行列Aの各要素の添え字は、N個の極性パターンを識別するために割り当てられた1からNまでの整数を示す。一例において、N個の極性パターンに割り当てられた数字は、N個の合成検出信号a1〜aNを生成する順番と同じである。
合成検出信号行列Aの要素数は、信号レベル行列Cの要素数に等しい。すなわち、制御部310は、検出位置230と同数の異なる極性パターンを使用して、検出位置230と同数の合成検出信号aを生成するようにセンサ部200を制御する。
N個の異なる極性パターンを「D1」〜「DN」とし、1つの極性パターンDp(pは1からNまでの任意の整数を示す。)に含まれるN個の極性(「1」,「−1」又は「0」)を「dp1」〜「dpN」とすると、N個の極性パターンD1〜DNを指定する極性パターン行列Dは、式3のように表される。
式3において、N個の極性パターンD1〜DNは、それぞれ「1」、「−1」又は「0」の値を持ったN個の要素からなる1行N列の部分行列として表されている。また極性パターン行列Dは、N個の1行N列の部分行列(極性パターンD1〜DN)からなるN行N列の行列として表されている。
極性パターン行列Dにおける個々の行は、互いに異なるN個の極性パターンD1〜DNの1つを表す。1つの行に属するN個の極性は、1つの合成検出信号aを生成するためにN個の検出位置230の検出信号に対して設定される極性の集まり、すなわち、1つの極性パターンを表す。
極性パターン行列Dにおける個々の列は、検出位置群235に含まれるN個の検出位置230の1つに対応しており、図1の例では、N個の駆動電極EDの1つに対応する。極性パターン行列Dの1つの列に属する要素は、当該1つの列に対応する1つの検出位置230の検出信号に対して設定される極性を表しており、図1の例では、当該1つの列に対応する1つの駆動電極EDの駆動信号vに対して設定される極性を表す。
この極性パターン行列Dは、後述するように、特定の性質を持ったN行N列の所定の正方行列に基づいて作成された行列である。極性パターン行列Dは、個々の行(すなわち個々の極性パターン)において「1」の要素の数と「−1」の要素の数との差が小さくなるように作成される。
この極性パターン行列Dを用いると、信号レベル行列Cと合成検出信号行列Aとの関係は式4のように表される。
式4を成分で表すと、式5のように表される。
式5において、第p行目の極性パターンDpに基づく極性が各検出信号に設定された場合の合成検出信号apは、「dp1・c1+…+dpN・cN」である。この多項式における個々の項は、各検出位置230において検出される検出信号を表す。極性dpjが「1」又は「−1」である場合、極性dpjの絶対値は1であるため、検出信号「dpj・cj」の絶対値は信号レベルcjと等しい。すなわち、検出信号は、物体の近接状態が一定である限り(信号レベルcjが一定である限り)、センサ部200の制御によって極性を反転させても(極性dpjを「1」と「−1」との間で変更しても)、絶対値が変化しない信号であると仮定されている。
他方、極性dpjが「0」に設定された場合、検出信号「dpj・cj」はゼロになる。すなわち、極性dpjが「0」に設定された検出信号は、この検出信号が検出される検出位置230において物体の近接状態がどのようであっても(信号レベルcjがどのような値でも)、合成検出信号apに加算されないと仮定されている。
極性パターン行列Dは、各極性パターンにおいて「1」の要素数と「−1」の要素数との差が小さくなるように作成されていることから、駆動部270から出力される駆動信号vの極性(検出電極ESに対する駆動電極EDの相対的な電圧の変化方向)の偏りが小さい。これにより、駆動信号vの供給に伴ってN個の駆動電極EDから放射される輻射ノイズが抑制され易くなる。
また、極性パターンに含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が小さいことから、合成検出信号aの元となるN個の検出信号において極性の偏りが小さくなる。そのため、N個の検出信号に「1」の検出信号ばかりが含まれる場合や「−1」の検出信号ばかりが含まれる場合に比べて、合成検出信号aのダイナミックレンジが抑制され易くなる。従って、合成検出信号aが入力される合成検出信号生成部250の各検出回路255において感度(増幅率)を高め易くなり、各検出要素240において得られる微小な検出信号を高感度で再生し易くなる。
ここで図2のフローチャートを参照すると、制御部310は、ステップST100〜ST115において、異なるN個の極性パターンD1〜DNに対応したN個の合成検出信号a1〜aNを生成するように、極性パターン行列Dに基づいてセンサ部200を制御する。
まず、制御部310は、変数pに初期値として1を設定し(ST100)、極性パターン行列Dの第p行目の極性パターンDp(dp1〜dpN)、すなわち極性パターンD1(d11〜d1N)を選択する。制御部310は、選択した極性パターンDpにより極性が設定された駆動信号v1〜vNを駆動電極ED1〜EDNへ供給するように、駆動部270を制御する。また制御部310は、駆動信号v1〜vNの供給のタイミングに合わせて各検出電極ESの合成検出信号apを生成するように、合成検出信号生成部250の各検出回路255を制御する(ST105)。
次いで、制御部310は、変数pを1だけインクリメントし(ST110)、変数pがN以下であれば(ST115のNo)、ステップST105以降の処理を反復する。これにより、N個の合成検出信号a1〜aNを生成するまで、制御部310はステップST105の処理を繰り返す。
変数pがNより大きくなると(ST115のYes)、制御部310はステップST120へ移行する。制御部310は、各検出電極ESについて生成されたN個の合成検出信号a1〜aNに基づいて、各検出電極ESの検出信号の信号レベルc1〜cNを再生する。
式4に示すように、合成検出信号行列Aは、極性パターン行列Dと信号レベル行列Cとの積で表される。そのため信号レベル行列Cは、次の式6−1に示すように、極性パターン行列Dの逆行列D−1と合成検出信号行列Aとの積で表される。
ただし、後述するアダマール行列を用いて作成される極性パターン行列Dの逆行列D−1は、整数でない要素を含む場合がある。その場合、制御部310は、式6−2において示すように、各要素を整数に直すための適当な係数αが乗ぜられた行列(α・D)−1と合成検出信号行列Aとの積を演算してもよい。一例において、係数αはNである。各要素が整数の行列(α・D)−1を用いることで、行列の掛け算の処理に伴う負担が軽減される。
式6−1や式6−2において示すように、極性パターン行列Dに要求される条件として、逆行列が存在する正則な正方行列であることが挙げられる。
(アダマール行列)
次に、極性パターン行列Dの導出に用いられる所定の行列の一例として、アダマール行列を説明する。
次に、極性パターン行列Dの導出に用いられる所定の行列の一例として、アダマール行列を説明する。
アダマール行列は、以下の3つの条件を満たす正方行列である。
1.)全ての要素が1又は−1であること。
2.)次数がNの場合、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となること。
1.)全ての要素が1又は−1であること。
2.)次数がNの場合、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となること。
また、上記2.)から次の条件が導き出される。
2.1)各行が互いに直交関係にあること。
2.2)各列が互いに直交関係にあること。
2.1)各行が互いに直交関係にあること。
2.2)各列が互いに直交関係にあること。
N次のアダマール行列を「F」とし、その転置行列を「FT」とし、N次の単位行列を「IN」とすると、上記3.)の条件は式7で表される。
4次以上のアダマール行列が存在する次数は、4の倍数であることが知られている。シルベスター法により生成されるアダマール行列の次数は2の冪(4,8,16,32,…)であり、ペイリー法により生成されるアダマール行列の次数は、2の冪の他に12、20、24などがある。
図3A〜図3C及び図4A〜図4Bは、極性パターン行列の導出に用いられる所定の行列の例を示す図である。図3Aはシルベスター法により生成される8次のアダマール行列を示し、図3Bはペイリー法により生成される12次のアダマール行列を示し、図4Aはシルベスター法により生成される16次のアダマール行列を示す。
これらのアダマール行列の例から分かるように、アダマール行列は、対称行列若しくは反対称行列である。また、アダマール行列の第1行目は、「1」又は「−1」の一方へ大きく極性が偏っている。アダマール行列から極性パターン行列Dを導出する場合、この極性の偏りが小さくなるようにアダマール行列の第1行目を修正することが課題となる。
これらのアダマール行列の例から分かるように、アダマール行列は、対称行列若しくは反対称行列である。また、アダマール行列の第1行目は、「1」又は「−1」の一方へ大きく極性が偏っている。アダマール行列から極性パターン行列Dを導出する場合、この極性の偏りが小さくなるようにアダマール行列の第1行目を修正することが課題となる。
また、図3C及び図4Bは、他の所定の行列の例を示す。図3Cは14次の正方行列を示し、図4Bは18次の正行列を示す。極性パターン行列Dの導出に用いられる所定の行列は、図3C,図4Bに示すような正方行列でもよい。この正方行列は、第2行目から第N行目、かつ、第2列目から第N列目までの範囲の(N−1)行(N−1)列のブロック行列が巡回行列となっている。
これらの正方行列も、アダマール行列と同様に、対称行列若しくは反対称行列である。また、正方行列の第1行目は、アダマール行列と同様に、「1」又は「−1」の一方へ大きく極性が偏っている。この正方行列から極性パターン行列Dを導出する場合においても、極性の偏りが小さくなるように正方行列の第1行目を修正することが課題となる。
これらの正方行列も、アダマール行列と同様に、対称行列若しくは反対称行列である。また、正方行列の第1行目は、アダマール行列と同様に、「1」又は「−1」の一方へ大きく極性が偏っている。この正方行列から極性パターン行列Dを導出する場合においても、極性の偏りが小さくなるように正方行列の第1行目を修正することが課題となる。
ここで、極性パターン行列Dの導出に用いられるN次の所定の行列Fにおけるi行k列の要素を「fik」とする。ただし、i、kは1からNまでの任意の整数をそれぞれ示す。この場合、所定の行列Fは式8のように表される。
式8における「F11」、「F12」、「F21」及び「F22」は、所定の行列Fを構成する4つのブロック行列を示す。ブロック行列F11、F12、F21及びF22は、それぞれ式9−1〜式9−4のように表される。
ブロック行列F11及びF12を合わせた行列が、所定の行列Fの第1行目を構成する。また、ブロック行列F11及びF21を合わせた行列が、所定の行列Fの第1列目を構成する。図3A〜図3C及び図4A〜図4Bに示す所定の行列Fの例において、ブロック行列F21は、行内の全要素が「1」である。ブロック行列F12は、行内の全要素が「1」であるか、又は、行内の全要素が「−1」である。また、ブロック行列F11は、「1」の要素f11のみを含む。
他方、ブロック行列F22は、所定の行列Fの第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列であり、(N−1)行(N−1)列の正方行列である。図3A〜図3C及び図4A〜図4Bに示す所定の行列の例において、ブロック行列F22は、各行における「1」の要素数と「−1」の要素数との差が全て1であり、各列における「1」の要素数と「−1」の要素数との差も全て1である。言い換えると、各行の(N−1)個の要素を加算した和が全て1又は全て−1であり、各列の(N−1)個の要素を加算した和も全て1又は全て−1である。所定の行列Fの2行目以降の各行において、「1」の要素数と「−1」の要素数との差は全てゼロ又は2となっている。所定の行列Fの2行目以降の各行は、第1行目に比べて極性の偏りが大幅に小さくなっている。
(修正行列Gの条件)
N行N列の所定の行列の一部を用いることにより極性パターン行列Dとして使用できるようした行列を、以下では修正行列と呼ぶ。N次の修正行列を「G」とし、修正行列Gにおけるp行j列の要素を「gpj」とすると、修正行列Gは式10のように表される。
N行N列の所定の行列の一部を用いることにより極性パターン行列Dとして使用できるようした行列を、以下では修正行列と呼ぶ。N次の修正行列を「G」とし、修正行列Gにおけるp行j列の要素を「gpj」とすると、修正行列Gは式10のように表される。
式10における「G11」、「G12」、「G21」及び「G22」は、修正行列Gを構成する4つのブロック行列を示す。ブロック行列G11、G12、G21及びG22は、それぞれ式11−1〜式11−4のように表される。
ブロック行列G11は、式11−1に示すように、修正行列Gの第1行目かつ第1列目の要素g11のみからなる行列である。ブロック行列G12は、式11−2に示すように、修正行列Gの第1行目における第2列目から第N列目までの範囲の行列である。ブロック行列G21は、式11−3に示すように、修正行列Gの第1列目における第2行目から第N行目までの範囲の行列である。ブロック行列G22は、式11−4に示すように、修正行列Gの第2行目から第N行目、かつ、第2列目から第N列目までの範囲の行列である。
ブロック行列G22は、(N−1)行(N−1)列の正方行列であり、式11−4において示すように、所定の行列Fのブロック行列F22(式9−4)と同一である。以下では、ブロック行列G22を「基本行列G22」と呼ぶ場合がある。
基本行列G22はブロック行列G22と同一であるため、既に説明したように、各行の(N−1)個の要素を加算した和が全て1又は全て−1であるとともに、各列の(N−1)個の要素を加算した和が全て1又は全て−1である。
また、基本行列G22は、その他の性質として、任意の2つの行の内積が同一の値を持つ。この行についての性質は、所定の行列Fの各行が互いに直交関係にあること(任意の2つの行の内積がゼロであること)、及び、ブロック行列G21の要素が全て同一の値を持つことより導かれる。
列についても同様であり、基本行列G22は、任意の2つの列の内積が同一の値を持つ。この列についての性質は、所定の行列Fの各列が互いに直交関係にあること、及び、ブロック行列G12の要素が全て同一の値(「1」又は「−1」)を持つことより導かれる。
列についても同様であり、基本行列G22は、任意の2つの列の内積が同一の値を持つ。この列についての性質は、所定の行列Fの各列が互いに直交関係にあること、及び、ブロック行列G12の要素が全て同一の値(「1」又は「−1」)を持つことより導かれる。
以上をまとめると、基本行列G22は次の4つの条件を満たしている。
A1.)各行の(N−1)個の要素を加算した和が全て「1」又は全て「−1」であること。
A2.)各列の(N−1)個の要素を加算した和が全て「1」又は全て「−1」であること。
A3.)任意の2つの行の内積が同一の値を持つこと。
A4.)任意の2つの列の内積が同一の値を持つこと。
A1.)各行の(N−1)個の要素を加算した和が全て「1」又は全て「−1」であること。
A2.)各列の(N−1)個の要素を加算した和が全て「1」又は全て「−1」であること。
A3.)任意の2つの行の内積が同一の値を持つこと。
A4.)任意の2つの列の内積が同一の値を持つこと。
更に第1の実施形態に係る入力装置において、修正行列Gは、上述した基本行列G22の条件の他に、次の2つの条件を全て満たしている。
B1.)修正行列Gの第2行目以降の全ての行は、N個の要素を加算した和がゼロであること。
B2.)修正行列Gの第1行目は、N個の要素を加算した和が非ゼロであること。
B1.)修正行列Gの第2行目以降の全ての行は、N個の要素を加算した和がゼロであること。
B2.)修正行列Gの第1行目は、N個の要素を加算した和が非ゼロであること。
上記B1.)〜B2.)の条件は、修正行列Gが正則であることに関連する条件である。
また修正行列Gは、これらの条件に加えて、N次のアダマール行列との比較に関連する次の条件も満たす。
C1.)修正行列Gの第1行目は、N次の所定の行列Fの第1行目に比べて、行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が小さいこと。
C1.)修正行列Gの第1行目は、N次の所定の行列Fの第1行目に比べて、行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が小さいこと。
本実施形態における極性パターン行列Dは、上述した条件を満たす修正行列Gと同じものか、若しくは、修正行列Gに対して行同士や列同士を交換する基本変形が1回以上施されたものである。すなわち、修正行列Gに対して、少なくとも一部の行を交換する基本変形と、少なくとも一部の列を交換する基本変形との少なくとも一方が施された行列は、本実施形態における極性パターン行列Dに含まれる。例えば、修正行列Gの各要素を行方向へ巡回的にシフトさせた行列や、修正行列Gの各要素を列方向へ巡回的にシフトさせた行列も、極性パターン行列Dに含まれる。
(修正行列Gの例)
ここで、本実施形態に係る入力装置における修正行列Gの具体例について説明する。
ここで、本実施形態に係る入力装置における修正行列Gの具体例について説明する。
図5A〜図5F及び図6A〜図6D(以下、図5A〜図6Dと記す。)は、8次の修正行列Gの一例を示す図である。これらの図における符号「b」、「e」は、ブロック行列G22を構成する個々の行ベクトルや個々の列ベクトルを示す。すなわち、「b」はブロック行列(基本行列)G22の行ベクトルを示し、「e」はブロック行列(基本行列)G22の列ベクトルを示す。他の図についても同様である。
図5A〜図6Dに示す修正行列Gは、何れも、8次のアダマール行列(図3A)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図5A〜図6Dに示す修正行列Gは、何れも、上記B1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第1列目の要素が「1」であり、第2列目から第N列目までの要素を加算した和が−1である。従って、修正行列Gの第2行目以降の全ての行は、行内のN個の要素を加算した和がゼロとなっており、修正行列Gは上記B1.)の条件を満たしている。
図5A〜図6Dに示す修正行列Gは、何れも、上記B2.)の条件を満たしている。例えば図5Aの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「1」であり、第2列目以降の要素を加算した和がゼロであり、第1行目の全要素を加算した和が1である。また、図5Fの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「0」であり、第2列目以降の要素を加算した和が−1であり、第1行目の全要素を加算した和が−1である。従って、修正行列Gは上記B2.)の条件を満たしている。
図5A〜図6Dに示す修正行列Gは、何れも、上記C1.)の条件を満たしている。例えば図5Aに示す修正行列Gを参照すると、第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が1である。8次のアダマール行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図3Aに示すように8である。従って、修正行列Gは上記C1.)の条件を満たしている。
図7A〜図7B、図8A〜図8B、図9A〜図9B、図10A〜図10B及び図11A〜図11B(以下、図7A〜図11Bと記す。)は、12次の修正行列Gの一例を示す図である。これらの図に示す修正行列Gは、何れも、12次のアダマール行列(図3B)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図7A〜図11Bに示す修正行列Gは、何れも、上記B1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第1列目の要素が「−1」であり、第2列目から第N列目までの要素を加算した和が1である。従って、修正行列Gの第2行目以降の全ての行は、行内のN個の要素を加算した和がゼロとなっており、修正行列Gは上記B1.)の条件を満たしている。
図7A〜図11Bに示す修正行列Gは、何れも、上記B2.)の条件を満たしている。例えば図8Aの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「1」であり、第2列目以降の要素を加算した和がゼロであり、第1行目の全要素を加算した和が1である。また、図9Aの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「0」であり、第2列目以降の要素を加算した和が−1であり、第1行目の全要素を加算した和が−1である。従って、修正行列Gは上記B2.)の条件を満たしている。
図7A〜図11Bに示す修正行列Gは、何れも、上記C1.)の条件を満たしている。例えば図8Aに示す修正行列Gを参照すると、第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が1である。12次のアダマール行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図3Bに示すように10である。従って、修正行列Gは上記C1.)の条件を満たしている。
図12A〜図12B、図13A〜図13B、図14A〜図14B、図15A〜図15B及び図16A〜図16B(以下、図12A〜図16Bと記す。)は、14次の修正行列Gの一例を示す図である。これらの図に示す修正行列Gは、何れも、14次の正方行列(図3C)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図12A〜図16Bに示す修正行列Gは、何れも、上記B1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第1列目の要素が「−1」であり、第2列目から第N列目までの要素を加算した和が1である。従って、修正行列Gの第2行目以降の全ての行は、行内のN個の要素を加算した和がゼロとなっており、修正行列Gは上記B1.)の条件を満たしている。
図12A〜図16Bに示す修正行列Gは、何れも、上記B2.)の条件を満たしている。例えば図13Aの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「−1」であり、第2列目以降の要素を加算した和がゼロであり、第1行目の全要素を加算した和が−1である。また、図14Aの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「0」であり、第2列目以降の要素を加算した和が1であり、第1行目の全要素を加算した和が1である。従って、修正行列Gは上記B2.)の条件を満たしている。
図12A〜図16Bに示す修正行列Gは、何れも、上記C1.)の条件を満たしている。例えば図13Aに示す修正行列Gを参照すると、第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が1である。14次の正方行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図3Cに示すように12である。従って、修正行列Gは上記C1.)の条件を満たしている。
図17A〜図17B、図18A〜図18B、図19A〜図19B、図20A〜図20B及び図21A〜図21B(以下、図17A〜図21Bと記す。)は、16次の修正行列Gの一例を示す図である。これらの図に示す修正行列Gは、何れも、16次のアダマール行列(図4A)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図17A〜図21Bに示す修正行列Gは、何れも、上記B1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第1列目の要素が「1」であり、第2列目から第N列目までの要素を加算した和が−1である。従って、修正行列Gの第2行目以降の全ての行は、行内のN個の要素を加算した和がゼロとなっており、修正行列Gは上記B1.)の条件を満たしている。
図17A〜図21Bに示す修正行列Gは、何れも、上記B2.)の条件を満たしている。例えば図18Aの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「1」であり、第2列目以降の要素を加算した和がゼロであり、第1行目の全要素を加算した和が1である。また、図19Aの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「0」であり、第2列目以降の要素を加算した和が−1であり、第1行目の全要素を加算した和が−1である。従って、修正行列Gは上記B2.)の条件を満たしている。
図17A〜図21Bに示す修正行列Gは、何れも、上記C1.)の条件を満たしている。例えば図18Aに示す修正行列Gを参照すると、第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が1である。16次のアダマール行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図4Aに示すように16である。従って、修正行列Gは上記C1.)の条件を満たしている。
図22A〜図22B、図23A〜図23B、図24A〜図24B、図25A〜図25B及び図26A〜図26B(以下、図22A〜図26Bと記す。)は、18次の修正行列Gの一例を示す図である。これらの図に示す修正行列Gは、何れも、18次の正方行列(図4B)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図22A〜図26Bに示す修正行列Gは、何れも、上記B1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第1列目の要素が「−1」であり、第2列目から第N列目までの要素を加算した和が1である。従って、修正行列Gの第2行目以降の全ての行は、行内のN個の要素を加算した和がゼロとなっており、修正行列Gは上記B1.)の条件を満たしている。
図22A〜図26Bに示す修正行列Gは、何れも、上記B2.)の条件を満たしている。例えば図23Aの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「1」であり、第2列目以降の要素を加算した和がゼロであり、第1行目の全要素を加算した和が1である。また、図24Aの修正行列Gを見ると、第1行目において第1列目の要素が「0」であり、第2列目以降の要素を加算した和が−1であり、第1行目の全要素を加算した和が−1である。従って、修正行列Gは上記B2.)の条件を満たしている。
図22A〜図26Bに示す修正行列Gは、何れも、上記C1.)の条件を満たしている。例えば図23Aに示す修正行列Gを参照すると、第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が1である。18次の正方行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図4Bに示すように16である。従って、修正行列Gは上記C1.)の条件を満たしている。
次に、修正行列Gの正則性について説明する。
一般に正方行列は、任意の基本変形を施されても正則性の有無が変化しない。すなわち、1つの行に係数を乗じたものを他の1つの行に加算する行基本変形や、1つの列に係数を乗じたもの他の1つの列に加算する列基本変形を施されても、正方行列の正則性の有無は変化しない。また、正則でないN次の正方行列は、ランクがNより小さいため、適当な基本変形を施されることにより、全ての要素がゼロになる行や列が生じる。そこで、以下では、修正行列Gに対して行基本変形や列基本変形が施されることによって全要素がゼロとなる行や列が発生するか否かを考える。
(行基本変形)
まず、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる1以上の行を選択して適当な係数を乗じたものを、修正行列Gの第1行目に加算する行基本変形について考える。上記B2.)の条件により、修正行列Gの第1行目は、行内の全要素(N個)の和が非ゼロである。一方、上記B1.)の条件により、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる各行は、行内の全要素(N個)の和がゼロである。修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる行にどのような係数を乗じても、全要素(N個)の和がゼロであることは変わらない。そのため、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる1以上の行を選択して適当な係数を乗じたものを、修正行列Gの第1行目に加算しても、第1行目の全要素の和は常に非ゼロとなる。従って、この行基本変形では、修正行列Gの1以上の行において全要素がゼロになることはない。
まず、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる1以上の行を選択して適当な係数を乗じたものを、修正行列Gの第1行目に加算する行基本変形について考える。上記B2.)の条件により、修正行列Gの第1行目は、行内の全要素(N個)の和が非ゼロである。一方、上記B1.)の条件により、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる各行は、行内の全要素(N個)の和がゼロである。修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる行にどのような係数を乗じても、全要素(N個)の和がゼロであることは変わらない。そのため、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる1以上の行を選択して適当な係数を乗じたものを、修正行列Gの第1行目に加算しても、第1行目の全要素の和は常に非ゼロとなる。従って、この行基本変形では、修正行列Gの1以上の行において全要素がゼロになることはない。
次に、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に属する行のみを用いた行基本変形について考える。ここで、基本行列G22に含まれる(N−1)個の行ベクトルをそれぞれ「b1」、「b2」、…、「bN−1」とする。ただし「b」の添え字は行ベクトル同士を区別するための符号であり、行番号とは無関係である。また、上記A1.)の条件において基本行列G22の各行内の要素(N−1個)を加算した和を「q」とし、上記A2.)の条件において基本行列G22の各列内の要素(N−1個)を加算した和を「r」とし、上記A3.)の条件において基本行列G22の各行同士の内積を「s」とする。
基本行列G22の上記A2.)の条件から、次の式が導かれる。
基本行列G22の上記A2.)の条件から、次の式が導かれる。
基本行列G22に含まれる(N−1)個の行ベクトルb1〜bN−1にそれぞれ適当な係数(K1〜KN−2)を乗じたものを行ベクトルbN−1に加算する行基本変形によって、全ての要素がゼロになるものと仮定する。この場合、次の式が成立する。
式12と式13から、次の式が得られる。
式14の両辺について行ベクトルbN−1との内積を計算すると、上記A3.)の条件から、次の式が成立する。
他方、式14の両辺について行ベクトルb1との内積を計算すると、上記A3.)の条件から、次の式が成立する。
式15と式16から、次の式が得られる。
ここでN−1≠sとすると、式17から係数K1の値は1である。係数K2〜KN−2についても、同様な計算により、全て1であることが分かる。係数K1〜KN−2の値が全て1であるとすると、式12と式13の左辺が等しくなり、矛盾する。従って、式13の仮定は成立しない。すなわち、基本行列G22にどのような行基本変形が施されても、基本行列G22の1以上の行において全要素がゼロになることはない。従って、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に属する行のみを用いた行基本変形では、修正行列Gの1以上の行において全要素がゼロになることはない。
(列基本変形)
次に、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に属する列のみを用いた列基本変形について考える。ここで、基本行列G22に含まれる(N−1)個の列ベクトルをそれぞれ「e1」、「e2」、…、「eN−1」とする。ただし「e」の添え字は列ベクトル同士を区別するための符号であり、列番号とは無関係である。また、上記A4.)の条件において基本行列G22の各列同士の内積を「t」とする。
基本行列G22の上記A1.)の条件から、次の式が導かれる。
次に、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に属する列のみを用いた列基本変形について考える。ここで、基本行列G22に含まれる(N−1)個の列ベクトルをそれぞれ「e1」、「e2」、…、「eN−1」とする。ただし「e」の添え字は列ベクトル同士を区別するための符号であり、列番号とは無関係である。また、上記A4.)の条件において基本行列G22の各列同士の内積を「t」とする。
基本行列G22の上記A1.)の条件から、次の式が導かれる。
基本行列G22に含まれる(N−1)個の列ベクトルe1〜eN−1にそれぞれ適当な係数(L1〜LN−2)を乗じたものを列ベクトルeN−1に加算する列基本変形によって、全ての要素がゼロになるものと仮定する。この場合、次の式が成立する。
式18と式19から、次の式が得られる。
式20の両辺について列ベクトルeN−1との内積を計算すると、上記A4.)の条件から、次の式が成立する。
他方、式20の両辺について列ベクトルe1との内積を計算すると、上記A4.)の条件から、次の式が成立する。
式21と式22から、次の式が得られる。
ここでN−1≠tとすると、式23から係数L1の値は1である。係数L2〜LN−2についても、同様な計算により、全て1であることが分かる。係数L1〜LN−2の値が全て1であるとすると、式18と式19の左辺が等しくなり、矛盾する。従って、式19の仮定は成立しない。すなわち、基本行列G22にどのような列基本変形が施されても、基本行列G22の1以上の列において全要素がゼロになることはない。従って、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に属する列のみを用いた列基本変形では、修正行列Gの1以上の列において全要素がゼロになることはない。
次に、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に含まれる1以上の列を選択して適当な係数を乗じたものを、修正行列Gの第1列目に加算する列基本変形について考える。上記B1.)の条件により、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる各行は、行内の全要素(N個)の和がゼロである。また、上記A1.)の条件により、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる各行において第2列目から第N列目までの要素(N−1個)を加算した和は、全て「q」(「1」又は「−1」)である。従って、修正行列Gの第1列目における第2列目から第N列目までの要素は、全て「−q」である。修正行列Gの第1列目における第2列目から第N列目までの要素を全てゼロにするためには、第2列目から第N列目までの要素が全て「q」となっている列ベクトルを修正行列Gの第1列目に加算する必要がある。
ここで、基本行列G22に含まれる(N−2)個の列ベクトルe1〜eN−2にそれぞれ適当な係数(M1〜MN−2)を乗じたものと列ベクトルeN−1とを加算した結果において、全ての要素が「u」になるものと仮定する。この場合、次の式が成立する。
式24と式18から、次の式が得られる。
式25の両辺について列ベクトルeN−1との内積を計算すると、上記A4.)の条件から、次の式が成立する。
他方、式25の両辺について列ベクトルe1との内積を計算すると、上記A4.)の条件から、次の式が成立する。
式26と式27から、次の式が得られる。
ここでN−1≠tとすると、式28から係数M1の値は1である。係数M2〜MN−2についても、同様な計算により、全て1であることが分かる。係数M1〜MN−2の値が全て1であるとすると、式24の左辺は式18の左辺と等しくなるため、u=qの関係が得られる。すなわち、基本行列G22の(N−1)個の列ベクトルe1〜eN−1は、式18に示す加算を行った場合にのみ、全ての要素が「q」となる。従って、修正行列Gの第1列目における第2列目から第N列目までの要素を全てゼロにする列基本変形は、修正行列Gの第2列目から第N列目までの各行をそのまま第1列目に加算する列基本変形のみである。他方、上記B2.)の条件により、修正行列Gの第1行目は、行内の全要素(N個)の和が非ゼロである。修正行列Gの第2列目から第N列目までの各行をそのまま第1列目に加算する列基本変形を行っても、修正行列Gの第1列目において第1行目の要素はゼロにならない。以上のことから、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に含まれる1以上の列を選択して適当な係数を乗じたものを、修正行列Gの第1列目に加算する列基本変形によって、修正行列Gの第1列目の全要素をゼロにすることができない。
以上説明したように、本実施形態によれば、全ての要素が「1」又は「−1」であり、かつ、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となる特性を持った所定の行列として、例えばアダマール行列を用いることが可能となる。N次のアダマール行列では、第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差がN若しくはそれに近い値となる。修正行列Gの場合、第1行目において行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が、アダマール行列の第1行目の(N−1)個よりも小さい。従って、極性パターン行列Dの各行の極性パターンにより生成されるN個の検出信号において、「1」の検出信号の数と「−1」の検出信号の数との差が小さくなる。これにより、検出信号の極性が「1」と「−1」との一方に偏る場合に比べて、個々の検出信号のダイナミックレンジを同一に保ちつつ、N個の検出信号から合成される合成検出信号a(検出信号の和)のダイナミックレンジが小さくなる。合成検出信号aのダイナミックレンジが小さくなると、合成検出信号aを生成する合成検出信号生成部250の検出回路255において増幅率を高めやすくなるため、各検出位置230において検出される微小な検出信号を高い感度で再生することが可能となる。また、「1」の検出信号の数と「−1」の検出信号の数との差が小さくなることにより、検出信号に起因して生じる放射ノイズを小さくすることができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る入力装置について説明する。第2の実施形態に係る入力装置は、第1の実施形態に係る入力装置に比べて修正行列Gの条件が異なるものであり、装置の構成(図1)や動作(図2)は概ね第1の実施形態に係る入力装置と同じである。
次に、第2の実施形態に係る入力装置について説明する。第2の実施形態に係る入力装置は、第1の実施形態に係る入力装置に比べて修正行列Gの条件が異なるものであり、装置の構成(図1)や動作(図2)は概ね第1の実施形態に係る入力装置と同じである。
(修正行列Gの条件)
本実施形態に係る入力装置における修正行列Gは、正則性に関連する条件として、上述したB1.)〜B2.)の条件の代わりに、次の2つの条件を全て満たしている。
D1.)修正行列Gの第2行目以降の全ての行は、第2列目から第N列目までの(N−1)個の要素を加算した和である部分合計値と第1列目の要素との差がゼロであること。
D2.)修正行列の第1行目は、部分合計値と第1列目の要素との差が非ゼロであること。
本実施形態に係る入力装置における修正行列Gは、正則性に関連する条件として、上述したB1.)〜B2.)の条件の代わりに、次の2つの条件を全て満たしている。
D1.)修正行列Gの第2行目以降の全ての行は、第2列目から第N列目までの(N−1)個の要素を加算した和である部分合計値と第1列目の要素との差がゼロであること。
D2.)修正行列の第1行目は、部分合計値と第1列目の要素との差が非ゼロであること。
また修正行列Gは、上記C1.)の条件に加えて、N次の所定の行列との比較に関連する次の条件も満たす。
E1.)修正行列Gの各行は、N次の所定の行列Fの第1行目に比べて、行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が小さいこと。
E1.)修正行列Gの各行は、N次の所定の行列Fの第1行目に比べて、行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が小さいこと。
なお、修正行列Gがブロック行列として基本行列G22を含むことについては、既に説明した第1の実施形態と同様である。
(修正行列Gの例)
図27A〜図27Dは、8次の修正行列Gの一例を示す図である。図27A〜図27Dに示す修正行列Gは、何れも、8次のアダマール行列(図3A)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図27A〜図27Dは、8次の修正行列Gの一例を示す図である。図27A〜図27Dに示す修正行列Gは、何れも、8次のアダマール行列(図3A)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図27A〜図27Dに示す修正行列Gは、何れも、上記D1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第2列目から第N列目までの要素の和(行ベクトルbの要素の和)が−1であるとともに、第1列目の要素も「−1」であり、両者の差はゼロであるため、修正行列Gは上記D1.)の条件を満たしている。
図27A〜図27Dに示す修正行列Gは、何れも、上記D2.)の条件を満たしている。例えば図27Aを見ると、第1行目において、第2列目から第N列目までの要素の和が−2である一方、第1列目の要素が「1」であり、両者の差は非ゼロであるため、修正行列Gは上記D2.)の条件を満たしている。
図27A〜図27Dに示す修正行列Gは、何れも、上記E1.)の条件を満たしている。例えば図27Aを見ると、修正行列Gの各行において行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は1又は2である。8次のアダマール行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図3Aに示すように8である。従って、修正行列Gは上記E1.)の条件を満たしている。
図28A〜図28B及び図29A〜図29B(以下、図28A〜図29Bと記す。)に示す修正行列Gは、12次の修正行列Gの一例を示す図である。これらの図に示す修正行列Gは、何れも、12次のアダマール行列(図3B)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図28A〜図29Bに示す修正行列Gは、何れも、上記D1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第2列目から第N列目までの要素の和(行ベクトルbの要素の和)が1であるとともに、第1列目の要素も「1」であり、両者の差はゼロであるため、修正行列Gは上記D1.)の条件を満たしている。
図28A〜図29Bに示す修正行列Gは、何れも、上記D2.)の条件を満たしている。例えば図28Aを見ると、第1行目において、第2列目から第N列目までの要素の和が−2である一方、第1列目の要素が「1」であり、両者の差は非ゼロであるため、修正行列Gは上記D2.)の条件を満たしている。
図28A〜図29Bに示す修正行列Gは、何れも、上記E1.)の条件を満たしている。例えば図28Aを見ると、修正行列Gの各行において行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は1又は2である。12次のアダマール行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図3Bに示すように10である。従って、修正行列Gは上記E1.)の条件を満たしている。
図30A〜図30B及び図31A〜図31B(以下、図30A〜図31Bと記す。)に示す修正行列Gは、14次の修正行列Gの一例を示す図である。これらの図に示す修正行列Gは、何れも、14次の正方行列(図3C)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図30A〜図31Bに示す修正行列Gは、何れも、上記D1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第2列目から第N列目までの要素の和(行ベクトルbの要素の和)が1であるとともに、第1列目の要素も「1」であり、両者の差はゼロであるため、修正行列Gは上記D1.)の条件を満たしている。
図30A〜図31Bに示す修正行列Gは、何れも、上記D2.)の条件を満たしている。例えば図30Aを見ると、第1行目において、第2列目から第N列目までの要素の和が−2である一方、第1列目の要素が「1」であり、両者の差は非ゼロであるため、修正行列Gは上記D2.)の条件を満たしている。
図30A〜図31Bに示す修正行列Gは、何れも、上記E1.)の条件を満たしている。例えば図30Aを見ると、修正行列Gの各行において行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は1又は2である。14次の正方行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図3Cに示すように12である。従って、修正行列Gは上記E1.)の条件を満たしている。
図32A〜図32B及び図33A〜図33B(以下、図32A〜図33Bと記す。)に示す修正行列Gは、16次の修正行列Gの一例を示す図である。これらの図に示す修正行列Gは、何れも、16次のアダマール行列(図4A)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図32A〜図33Bに示す修正行列Gは、何れも、上記D1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第2列目から第N列目までの要素の和(行ベクトルbの要素の和)が−1であるとともに、第1列目の要素も「−1」であり、両者の差はゼロであるため、修正行列Gは上記D1.)の条件を満たしている。
図32A〜図33Bに示す修正行列Gは、何れも、上記D2.)の条件を満たしている。例えば図32Aを見ると、第1行目において、第2列目から第N列目までの要素の和が−2である一方、第1列目の要素が「1」であり、両者の差は非ゼロであるため、修正行列Gは上記D2.)の条件を満たしている。
図32A〜図33Bに示す修正行列Gは、何れも、上記E1.)の条件を満たしている。例えば図32Aを見ると、修正行列Gの各行において行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は1又は2である。16次のアダマール行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図4Aに示すように16である。従って、修正行列Gは上記E1.)の条件を満たしている。
図34A〜図34B及び図35A〜図35B(以下、図34A〜図35Bと記す。)に示す修正行列Gは、18次の修正行列Gの一例を示す図である。これらの図に示す修正行列Gは、何れも、18次の正方行列(図4B)におけるブロック行列F22と同一の基本行列G22を含んでいる。
図34A〜図35Bに示す修正行列Gは、何れも、上記D1.)の条件を満たしている。これらの修正行列Gを見ると、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第2列目から第N列目までの要素の和(行ベクトルbの要素の和)が1であるとともに、第1列目の要素も「1」であり、両者の差はゼロであるため、修正行列Gは上記D1.)の条件を満たしている。
図34A〜図35Bに示す修正行列Gは、何れも、上記D2.)の条件を満たしている。例えば図34Aを見ると、第1行目において、第2列目から第N列目までの要素の和が−2である一方、第1列目の要素が「1」であり、両者の差は非ゼロであるため、修正行列Gは上記D2.)の条件を満たしている。
図34A〜図35Bに示す修正行列Gは、何れも、上記E1.)の条件を満たしている。例えば図34Aを見ると、修正行列Gの各行において行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は1又は2である。18次の正方行列Fの第1行目に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差は、図4Bに示すように16である。従って、修正行列Gは上記E1.)の条件を満たしている。
次に、修正行列Gの正則性について説明する。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、修正行列Gに対して行基本変形や列基本変形が施されることによって全要素がゼロとなる行や列が発生するか否かを考える。
(行基本変形)
まず、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に属する行のみを用いた行基本変形について考える。既に説明したように、基本行列G22に対してどのような行基本変形が施されても、基本行列G22の1以上の行において全要素がゼロになることはない。従って、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に属する行のみを用いた行基本変形では、修正行列Gの1以上の行において全要素がゼロになることはない。
まず、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に属する行のみを用いた行基本変形について考える。既に説明したように、基本行列G22に対してどのような行基本変形が施されても、基本行列G22の1以上の行において全要素がゼロになることはない。従って、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に属する行のみを用いた行基本変形では、修正行列Gの1以上の行において全要素がゼロになることはない。
次に、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる1以上の行を選択して適当な係数を乗じたものを、修正行列Gの第1行目に加算する行基本変形について考える。上記D1.)の条件により、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第2列目から第N列目までの要素の和(部分合計値)と、第1列目の要素とが等しい値を持っている。従って、修正行列Gの第2行目〜第N行目の範囲に含まれる1以上の行にどのような係数を乗じて第1行目に加算しても、第1行目における第2列目から第N列目までの要素の和(部分合計値)の変化分と、第1行目における第1列目の要素の変化分とが等しくなる。他方、上記D2.)の条件により、修正行列Gの第1行目において、第2列目から第N列目までの要素の和(部分合計値)と、第1列目の要素とが異なる値を持つことから、両者の変化分が等しい場合、両者は常に異なる値を持つ。従って、この行基本変形では、修正行列Gの1以上の行において全要素がゼロになることはない。
(列基本変形)
次に、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に属する列のみを用いた列基本変形について考える。既に説明したように、基本行列G22に対してどのような列基本変形が施されても、基本行列G22の1以上の列において全要素がゼロになることはない。従って、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に属する列のみを用いた列基本変形では、修正行列Gの1以上の列において全要素がゼロになることはない。
次に、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に属する列のみを用いた列基本変形について考える。既に説明したように、基本行列G22に対してどのような列基本変形が施されても、基本行列G22の1以上の列において全要素がゼロになることはない。従って、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に属する列のみを用いた列基本変形では、修正行列Gの1以上の列において全要素がゼロになることはない。
次に、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に含まれる1以上の列を選択して適当な係数を乗じたものを、修正行列Gの第1列目に加算する列基本変形について考える。上記D1.)の条件により、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第2列目から第N列目までの要素の和(部分合計値)と、第1列目の要素とが等しい値を持っている。また、上記A1.)の条件により、修正行列Gの第2行目以降の各行において、第2列目から第N列目までの要素の和(部分合計値)は全て「q」(「1」又は「−1」)である。従って、修正行列Gの第1列目における第2行目から第N行目までの要素は、全て「q」である。修正行列Gの第1列目における第2行目から第N行目までの要素を全てゼロにするためには、第2列目から第N列目までの要素が全て「q」となっている列ベクトルを修正行列Gの第1列目から減算する必要がある。
既に説明したように、基本行列G22の(N−1)個の列ベクトルe1〜eN−1は、式18に示す加算を行った場合にのみ、全ての要素が「q」となる。従って、修正行列Gの第1列目における第2行目から第N行目までの要素を全てゼロにする列基本変形は、修正行列Gの第2列目から第N列目までの各列をそのまま第1列目から減算する列基本変形のみである。他方、上記D2.)の条件により、修正行列Gの第1行目において、第2列目から第N列目までの要素の和(部分合計値)と、第1列目の要素とが異なる値を持つことから、修正行列Gの第2列目から第N列目までの各行をそのまま第1列目から減算する列基本変形を行っても、修正行列Gの第1列目において第1行目の要素はゼロにならない。以上のことから、修正行列Gの第2列目〜第N列目の範囲に含まれる1以上の列を選択して適当な係数を乗じたものを、修正行列Gの第1列目に加算する列基本変形によって、修正行列Gの第1列目の全要素をゼロにすることができない。
以上説明したように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様なN行N列の修正行列Gが用いられるため、極性パターンにおける「1」の極性の数と「−1」の極性の数との差が小さくなる。従って、第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
本発明は上述した実施形態には限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
例えば、上述した実施形態では、物体の近接状態に応じて静電容量が変化する検出要素240(キャパシタ)の電荷を合成し、合成検出信号aとして出力する静電容量方式のセンサ部200が用いられているが、本発明はこの例に限定されない。すなわち、本発明は、物体の近接状態に応じて物理量が変化する様々な方式の検出要素を備えた入力装置に適用可能である。
100…入力装置、200…センサ部、220…電極部、230…検出位置、235…検出位置群、240…検出要素、250…合成検出信号生成部、255…検出回路、270…駆動部、ES…検出電極、ED…駆動電極、300…処理部、310…制御部、320…信号再生部、330…位置算出部、400…記憶部、410…プログラム、500…インターフェース部、F…アダマール行列、D…極性パターン行列、G…修正行列、G22…基本行列
Claims (9)
- 複数の検出位置における物体の近接状態に応じた情報を入力する入力装置であって、
N個の前記検出位置における物体の近接状態をそれぞれ検出し、前記N個の検出位置について前記検出の結果として得られるN個の検出信号の和に応じた合成検出信号を生成し、前記N個の検出位置の各々において、前記近接状態に応じた信号レベルを持つ前記検出信号の正負の極性を制御可能なセンサ部と、
前記N個の検出信号に設定するN個の前記極性である極性パターンを互いに異ならせたN個の前記合成検出信号を生成するように前記センサ部を制御する制御部と、
前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生する信号再生部とを有し、
前記検出信号に設定する正又は負の前記極性を「1」又は「−1」で表わし、
前記合成検出信号に加算しない前記検出信号に対して設定する前記極性を「0」で表し、
前記N個の検出信号に設定する前記極性パターンを、それぞれ「1」、「−1」又は「0」の値を持ったN個の要素からなる1行N列の部分行列で表わし、かつ、
前記N個の合成検出信号に対応するN個の前記極性パターンを、N個の前記部分行列からなるN行N列の極性パターン行列で表わした場合に、
前記信号再生部は、前記極性パターン行列に対する逆行列と、前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号を要素とするN行1列の行列との乗算に相当する演算に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生し、
前記極性パターン行列は、N行N列の修正行列、若しくは、前記修正行列に対して、少なくとも一部の行を交換する基本変形と少なくとも一部の列を交換する基本変形との少なくとも一方が施された行列であり、
前記修正行列は、第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列として(N−1)行(N−1)列の基本行列を含んでおり、
前記基本行列は、N行N列の所定の行列における第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列と同一であり、
前記所定の行列は、全ての要素が「1」又は「−1」であり、かつ、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となる特性を持った行列であり、
前記修正行列の第2行目以降の全ての行は、N個の要素を加算した和がゼロであり、
前記修正行列の第1行目は、N個の要素を加算した和が非ゼロであり、
前記修正行列の第1行目は、前記所定の行列の第1行目に比べて、行内に含まれる「1」の要素数と「−1」の要素数との差が小さい、
入力装置。 - 複数の検出位置における物体の近接状態に応じた情報を入力する入力装置であって、
N個の前記検出位置における物体の近接状態をそれぞれ検出し、前記N個の検出位置について前記検出の結果として得られるN個の検出信号の和に応じた合成検出信号を生成し、前記N個の検出位置の各々において、前記近接状態に応じた信号レベルを持つ前記検出信号の正負の極性を制御可能なセンサ部と、
前記N個の検出信号に設定するN個の前記極性である極性パターンを互いに異ならせたN個の前記合成検出信号を生成するように前記センサ部を制御する制御部と、
前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生する信号再生部とを有し、
前記検出信号に設定する正又は負の前記極性を「1」又は「−1」で表わし、
前記合成検出信号に加算しない前記検出信号に対して設定する前記極性を「0」で表し、
前記N個の検出信号に設定する前記極性パターンを、それぞれ「1」、「−1」又は「0」の値を持ったN個の要素からなる1行N列の部分行列で表わし、かつ、
前記N個の合成検出信号に対応するN個の前記極性パターンを、N個の前記部分行列からなるN行N列の極性パターン行列で表わした場合に、
前記信号再生部は、前記極性パターン行列に対する逆行列と、前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号を要素とするN行1列の行列との乗算に相当する演算に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生し、
前記極性パターン行列は、N行N列の修正行列、若しくは、前記修正行列に対して、少なくとも一部の行を交換する基本変形と少なくとも一部の列を交換する基本変形との少なくとも一方が施された行列であり、
前記修正行列は、第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列として(N−1)行(N−1)列の基本行列を含んでおり、
前記基本行列は、N行N列の所定の行列における第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列と同一であり、
前記所定の行列は、全ての要素が「1」又は「−1」であり、かつ、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となる特性を持った行列であり、
前記修正行列の第2行目以降の全ての行は、第2列目から第N列目までの(N−1)個の要素を加算した和である部分合計値と第1列目の要素との差がゼロであり、
前記修正行列の第1行目は、前記部分合計値と第1列目の要素との差が非ゼロであり、
前記修正行列の各行は、前記所定の行列の第1行目に比べて、N個の要素を加算した和の絶対値が小さい、
入力装置。 - 前記基本行列は、
各行の(N−1)個の要素を加算した和が全て「1」又は全て「−1」であり、
各列の(N−1)個の要素を加算した和が全て「1」又は全て「−1」であり、
任意の2つの行の内積が同一の値を持ち、
任意の2つの列の内積が同一の値を持つ、
請求項1又は請求項2に記載の入力装置。 - 前記所定の行列は、シルベスター法によるアダマール行列又はペイリー法によるアダマール行列である、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の入力装置。 - 前記センサ部は、
前記複数の検出位置に対応して設けられた複数の検出要素であって、物体の近接状態に応じた信号レベルを持ち、入力される駆動信号に応じて前記極性が「1」、「−1」又は「0」に設定される前記検出信号をそれぞれ発生する複数の検出要素と、
前記制御部の制御に従って、前記複数の検出要素にそれぞれ前記駆動信号を供給する駆動部と、
N個の前記検出要素が発生する前記N個の検出信号の和に応じた前記合成検出信号を生成する合成検出信号生成部とを含む、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の入力装置。 - 前記センサ部は、
少なくとも1つの検出電極と、
前記検出電極に交差する複数の駆動電極とを含み、
前記検出要素は、前記検出電極と前記駆動電極との交差部に形成され、物体の近接状態に応じて静電容量が変化するキャパシタであり、
前記駆動部は、前記複数の駆動電極にそれぞれ前記駆動信号を供給し、
1つの前記検出電極とN個の前記駆動電極との間には、前記N個の検出要素としてのN個の前記キャパシタが形成されており、
前記合成検出信号生成部は、前記N個の駆動電極に供給されるN個の前記駆動信号に応じて前記検出電極に伝送される前記N個のキャパシタの電荷に基づいて、前記合成検出信号を生成する、
請求項5に記載の入力装置。 - 複数の検出位置における物体の近接状態に応じた情報を入力する入力装置の制御方法であって、
前記入力装置が、N個の前記検出位置における物体の近接状態をそれぞれ検出し、前記N個の検出位置について前記検出の結果として得られるN個の検出信号の和に応じた合成検出信号を生成し、前記N個の検出位置の各々において、前記近接状態に応じた信号レベルを持つ前記検出信号の正負の極性を制御可能なセンサ部を有し、
前記制御方法が、
前記N個の検出信号に設定するN個の前記極性である極性パターンを互いに異ならせたN個の前記合成検出信号を生成するように前記センサ部を制御することと、
前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生することとを有し、
前記検出信号に設定する正又は負の前記極性を「1」又は「−1」で表わし、
前記合成検出信号に加算しない前記検出信号に対して設定する前記極性を「0」で表し、
前記N個の検出信号に設定する前記極性パターンを、それぞれ「1」、「−1」又は「0」の値を持ったN個の要素からなる1行N列の部分行列で表わし、かつ、
前記N個の合成検出信号に対応するN個の前記極性パターンを、N個の前記部分行列からなるN行N列の極性パターン行列で表わした場合に、
前記信号レベルを再生することは、前記極性パターン行列に対する逆行列と、前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号を要素とするN行1列の行列との乗算に相当する演算に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生することを含み、
前記極性パターン行列は、N行N列の修正行列、若しくは、前記修正行列に対して、少なくとも一部の行を交換する基本変形と少なくとも一部の列を交換する基本変形との少なくとも一方が施された行列であり、
前記修正行列は、第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列として(N−1)行(N−1)列の基本行列を含んでおり、
前記基本行列は、N行N列の所定の行列における第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列と同一であり、
前記所定の行列は、全ての要素が「1」又は「−1」であり、かつ、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となる特性を持った行列であり、
前記修正行列の第2行目以降の全ての行は、N個の要素を加算した和がゼロであり、
前記修正行列の第1行目は、N個の要素を加算した和が非ゼロであり、
前記修正行列の第1行目は、前記所定の行列の第1行目に比べて、N個の要素を加算した和の絶対値が小さい、
入力装置の制御方法。 - 複数の検出位置における物体の近接状態に応じた情報を入力する入力装置の制御方法であって、
前記入力装置が、N個の前記検出位置における物体の近接状態をそれぞれ検出し、前記N個の検出位置について前記検出の結果として得られるN個の検出信号の和に応じた合成検出信号を生成し、前記N個の検出位置の各々において、前記近接状態に応じた信号レベルを持つ前記検出信号の正負の極性を制御可能なセンサ部を有し、
前記制御方法が、
前記N個の検出信号に設定するN個の前記極性である極性パターンを互いに異ならせたN個の前記合成検出信号を生成するように前記センサ部を制御することと、
前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生することとを有し、
前記検出信号に設定する正又は負の前記極性を「1」又は「−1」で表わし、
前記合成検出信号に加算しない前記検出信号に対して設定する前記極性を「0」で表し、
前記N個の検出信号に設定する前記極性パターンを、それぞれ「1」、「−1」又は「0」の値を持ったN個の要素からなる1行N列の部分行列で表わし、かつ、
前記N個の合成検出信号に対応するN個の前記極性パターンを、N個の前記部分行列からなるN行N列の極性パターン行列で表わした場合に、
前記信号レベルを再生することは、前記極性パターン行列に対する逆行列と、前記センサ部が生成した前記N個の合成検出信号を要素とするN行1列の行列との乗算に相当する演算に基づいて、前記N個の検出信号の信号レベルを再生することを含み、
前記極性パターン行列は、N行N列の修正行列、若しくは、前記修正行列に対して、少なくとも一部の行を交換する基本変形と少なくとも一部の列を交換する基本変形との少なくとも一方が施された行列であり、
前記修正行列は、第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列として(N−1)行(N−1)列の基本行列を含んでおり、
前記基本行列は、N行N列の所定の行列における第2列目から第N列目まで、かつ、第2行目から第N行目までの範囲のブロック行列と同一であり、
前記所定の行列は、全ての要素が「1」又は「−1」であり、かつ、自身の転置行列との積が単位行列のN倍の行列となる特性を持った行列であり、
前記修正行列の第2行目以降の全ての行は、第2列目から第N列目までの(N−1)個の要素を加算した和である部分合計値と第1列目の要素との差がゼロであり、
前記修正行列の第1行目は、前記部分合計値と第1列目の要素との差が非ゼロであり、
前記修正行列の各行は、前記所定の行列の第1行目に比べて、N個の要素を加算した和の絶対値が小さい、
入力装置の制御方法。 - 請求項7又は請求項8に記載の入力装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018058962A JP2019174864A (ja) | 2018-03-26 | 2018-03-26 | 入力装置、入力装置の制御方法、及びコンピュータに入力装置の制御方法を実行させるプログラム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018058962A JP2019174864A (ja) | 2018-03-26 | 2018-03-26 | 入力装置、入力装置の制御方法、及びコンピュータに入力装置の制御方法を実行させるプログラム |
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JP2018058962A Pending JP2019174864A (ja) | 2018-03-26 | 2018-03-26 | 入力装置、入力装置の制御方法、及びコンピュータに入力装置の制御方法を実行させるプログラム |
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JP (1) | JP2019174864A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11604533B2 (en) | 2020-01-08 | 2023-03-14 | Alps Alpine Co., Ltd. | Input device, control method for controlling input device, and recording medium in which program for causing computer to perform control method for controlling input device |
-
2018
- 2018-03-26 JP JP2018058962A patent/JP2019174864A/ja active Pending
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US11604533B2 (en) | 2020-01-08 | 2023-03-14 | Alps Alpine Co., Ltd. | Input device, control method for controlling input device, and recording medium in which program for causing computer to perform control method for controlling input device |
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