JP2019174208A - 試験片、試験片の製造方法、及び試験方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】材料のき裂発生寿命を評価できる試験片を提供する。【解決手段】試験片は、ねじり疲労試験用の試験片であって、一対のつかみ11,12と、一対のつかみ部11,12の間に形成された標点部13とを備える。一対のつかみ部11,12同士を結ぶ方向を軸方向yとし、軸方向yに垂直な方向の一つを幅方向xとし、軸方向y及び幅方向xの両方に対して垂直な方向を厚さ方向zとする。標点部13は、幅方向xの寸法が他の箇所よりも小さく形成されたノッチ部13Aを有する。標点部13は、軸方向yに垂直でかつノッチ部13Aを含む断面において、幅方向xの寸法が厚さ方向zの寸法よりも大きく、軸方向yをねじり軸としてねじり負荷を加えたときに厚さ方向zの一方側に生じる最大応力が、厚さ方向zの他方側に生じる最大応力の1.05倍以上となる形状を有する。【選択図】図1A

Description

本発明は、試験片、試験片の製造方法、及び試験方法に関し、より詳しくは、ねじり疲労試験に用いる試験片及びその製造方法、並びに当該試験片を用いた試験方法に関する。
構造部材として使用される材料に必要とされる特性として、疲労強度がある。特許第5503608号公報には、円筒形金属素材の疲労破壊評価方法が開示されている。
特許第5503608号公報
疲労寿命は一般的に、き裂発生寿命とき裂進展寿命の和であるとされている。このうち、き裂進展寿命はコンパクト・テンション試験片を用いたき裂進展試験等で評価が可能である。一方、き裂発生寿命については、明確な評価基準が存在しない。基礎研究として、逐次疲労試験を中断してカメラ観察又はレプリカ法による表面観察を繰り返し行う方法が報告されているが、工数が大きく実用的ではない。
本発明の目的は、材料のき裂発生寿命を評価できる試験片を提供することである。本発明の他の目的は、材料のき裂発生寿命を評価できる試験方法を提供することである。
本発明の一実施形態による試験片は、ねじり疲労試験用の試験片であって、一対のつかみ部と、前記一対のつかみ部の間に形成された標点部とを備える。前記一対のつかみ部同士を結ぶ方向を軸方向とし、前記軸方向に垂直な方向の一つを幅方向とし、前記軸方向及び前記幅方向の両方に対して垂直な方向を厚さ方向とする。前記標点部は、前記幅方向の寸法が他の箇所よりも小さく形成されたノッチ部を有する。前記標点部は、前記軸方向に垂直でかつ前記ノッチ部を含む断面において、前記幅方向の寸法が前記厚さ方向の寸法よりも大きく、前記軸方向をねじり軸としてねじり負荷を加えたときに前記厚さ方向の一方側に生じる最大応力が、前記厚さ方向の他方側に生じる最大応力の1.05倍以上となる形状を有する。
本発明の一実施形態による試験方法は、上記の試験片を用いた試験方法であって、前記ノッチ部の前記厚さ方向の一方側を観察しながら、前記標点部に繰り返しねじり負荷を加える工程を含む。
本発明によれば、材料のき裂発生寿命を評価することができる。
図1Aは、本発明の第1の実施形態による試験片の斜視図である。 図1Bは、図1Aの試験片を図1Aとは反対側から見た斜視図である。 図2は、図1AのII−II線に沿った断面図である。 図3は、ねじり疲労試験に用いる装置の一例を模式的に示す図である。 図4は、本発明の第2の実施形態による試験片の斜視図である。 図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。 図6は、図4の試験片の製造方法の一例を示す模式図である。 図7Aは、本発明の第3の実施形態による試験片の斜視図である。 図7Bは、図7Aの試験片を図7Aとは反対側から見た斜視図である。 図8は、図7Aの試験片の標点部の近傍を拡大して示す平面図である。 図9は、図8のIX−IX線に沿った断面図である。 図10Aは、有限要素法によって計算した応力分布を示す図である。 図10Bは、有限要素法によって計算した応力分布を示す図である。 図11は、有限要素法によって計算した応力分布を示す図である。 図12Aは、試験片の標点部のマイクロスコープ画像である。 図12Bは、試験片の標点部のマイクロスコープ画像である。 図12Cは、試験片の標点部のマイクロスコープ画像である。 図12Dは、試験片の標点部のマイクロスコープ画像である。 図12Eは、試験片の標点部のマイクロスコープ画像である。 図12Fは、試験片の標点部のマイクロスコープ画像である。 図13Aは、ひずみの分布を示す図である。 図13Bは、ひずみの分布を示す図である。 図13Cは、ひずみの分布を示す図である。 図13Dは、ひずみの分布を示す図である。 図13Eは、ひずみの分布を示す図である。 図13Fは、ひずみの分布を示す図である。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
[第1の実施形態]
[試験片の構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態による試験片1の斜視図である。図1Bは、試験片1を図1Aとは反対側から見た斜視図である。試験片1は、一対のつかみ部11及び12と、つかみ部11とつかみ部12との間に形成された標点部13とを備えている。試験片1は、全体的に板状の形状を有している。
試験片1は、評価対象となる材料から形成されている。評価対象となる材料は、これに限定されないが、典型的には金属材料であり、例えば鉄鋼材料である。
以下、つかみ部11とつかみ部12とを結ぶ方向(y方向)を軸方向と呼ぶ。また、軸方向と垂直な方向の一つを幅方向と呼び、軸方向及び幅方向の両方に対して垂直な方向を厚さ方向と呼ぶ。具体的には、軸方向と垂直な断面における試験片1の長辺に平行な方向(x方向)を幅方向とし、短辺に平行な方向(z方向)を厚さ方向とする。また、厚さ方向の一方側(z方向プラス側)を表側、他方側(z方向マイナス側)を裏側と呼ぶ。
試験片1は、ねじり疲労試験に用いる試験片である。後述するように、つかみ部11及び12の一方を固定し、他方を軸方向のまわりに回転させることで、標点部13にねじり負荷を加えることができる。
つかみ部11及び12は、軸方向に垂直な断面の面積が、標点部13よりも大きくなるように形成されている。つかみ部11及び12のそれぞれと標点部13とは、境界に応力が集中しないように、滑らかに連結されている。
標点部13は、軸方向の中央近傍に、幅方向の寸法が他の箇所よりも小さいノッチ部13Aを有している。具体的には、標点部13はノッチ部13Aにおいて、幅方向の両側にU字型のノッチ13aが形成されている。ノッチ13aは、境界に応力が集中しないように、曲率半径が大きく形成されていることが好ましい。一方、ノッチ13aの曲率半径を大きくすることでノッチ部13Aの長さ(軸方向の寸法をいう。以下同じ。)を大きくしすぎると、き裂発生箇所を特定することが難しくなる。ノッチ部13Aの長さは、例えば0.5〜5mmであり、好ましくは1〜3mmである。
試験片1は、裏側の面の幅方向両側の角が面取りされている。具体的には、つかみ部11の角11a、つかみ部12の角12a、及び標点部13の角13bのそれぞれがC面取りされている。C面取りとは、JIS B 0001機械製図の規定にしたがい、角度45°、一辺C[mm]で切削加工されたものをいう。
図2は、図1AのII−II線に沿った断面図である。図2の断面は、軸方向に垂直で、かつノッチ部13Aを含む断面である。標点部13は、図2の断面において、幅方向の寸法(以下、単に「幅」という。)wが、厚さ方向の寸法(以下、単に「厚さ」という。)tよりも大きい(w>t)。
厚さtは、好ましくは0.1mm以上である。厚さtが0.1mm未満であると、疲労試験を実施することが難しくなる。厚さtの上限は、好ましくは100mmである。幅wは、好ましくは厚さtの1.10倍以上(w≧1.10t)であり、より好ましくは厚さtの1.15倍以上(w≧1.15t)である。
標点部13にねじり負荷が加わると、標点部13の表面のうち、ねじり軸に近い箇所ほど大きなせん断応力が発生する。本実施形態では、幅wが厚さtよりも大きいため、表裏の面の幅方向の中央で最大のせん断応力が発生する。すなわち、表側の面では図2の点P1に最大のせん断応力が発生し、裏側の面では点P2に最大のせん断応力が発生する。
標点部13は、図2の断面において、軸方向をねじり軸としてねじり負荷を加えたときに表側に生じる最大応力が、裏側に生じる最大応力の1.05倍以上となる形状を有する。すなわち、本実施形態では、点P1に発生するせん断応力の大きさが、点P2に発生するせん断応力の1.05倍以上である。
点P2に発生するせん断応力の大きさは、角13bの面取りの大きさによって調整することができる。具体的には、角13bを大きく面取りするほど、裏側の面に発生するせん断応力が分散し、点P2に発生するせん断応力を小さくすることができる。点P1及び点P2に発生するせん断応力の具体的な大きさは、標点部13の形状から、例えば有限要素法によって計算することができる。
[試験方法]
以下、本発明の一実施形態による試験方法を説明する。本実施形態による試験方法は、試験片1を用いた試験方法であって、ノッチ部13Aの表側を観察しながら、標点部13に繰り返しねじり負荷を加える工程を含む。
図3は、ねじり疲労試験に用いる装置の一例を模式的に示す図である。この装置は、一対のチャック91、モータ92、トルクセル93、制御部94、及びマイクロスコープ995を備えている。
試験片1は、一対のチャック91によって拘束される。試験片1の一方の端部はモータ92に接続され、他方の端部はトルクセル93に接続される。モータ92は、試験片1にねじり負荷を加える。トルクセル93は、試験片1に加わる実負荷を測定する。制御装置94は、モータ92を駆動するとともに、トルクセル93の出力を記録する。
マイクロスコープ95によって表側のノッチ部13Aを観察しながら、モータ92を回転させて試験片1の標点部13に繰り返しねじり負荷を加える。なおこの装置は、試験片1をモータ92の回転軸と垂直に配置することで、試験片1に曲げ応力を加えることもできる。また、試験片1をモータ92の回転軸に対して平行と垂直の中間の角度に配置することで、試験片1に曲げ応力とせん断応力の両方を加えることもできる。
[本実施形態の効果]
上述のとおり、標点部13にねじり負荷が加わると、標点部13の表面のうち、ねじり軸に近い箇所ほど大きなせん断応力が発生する。試験片1のように、幅方向の寸法が厚さ方向の寸法よりも大きい板状の試験片では、幅方向の中央に最大応力が発生する。そのため疲労き裂は、標点部13の幅方向の中央付近に発生する可能性が高い。
一方、標点部13の軸方向に垂直な断面の面積が一定の場合、軸方向には均一な応力分布が発生するため、疲労き裂が軸方向のどの位置に発生するかを予測することは困難である。また、標点部13の形状が表裏で対称な場合、疲労き裂が表側の面に発生するか裏側の面に発生するかを予測することは困難である。
本実施形態では、標点部13は、幅方向の寸法が他の箇所よりも小さく形成されたノッチ部13Aを有する。これによって、ノッチ部13Aの断面積が他の箇所の断面積よりも小さくなり、ノッチ部13Aの近傍でより大きな応力が発生する。そのため、疲労き裂は、ノッチ部13Aの近傍に発生しやすくなる。本実施形態ではさらに、標点部13は、図2の断面において、軸方向をねじり軸としてねじり負荷を加えたときに表側に生じる最大応力が、裏側に生じる最大応力の1.05倍以上となる形状を有する。そのため、疲労き裂は、ノッチ部13Aの表側に発生しやすくなる。
本実施形態では、疲労き裂が発生しやすいノッチ部13Aの表側を観察しながら、標点部13に繰り返しねじり負荷を加える。すなわち、通常の疲労試験では円筒の砂時計型試験片を用い、円周上に均一な応力を加えるのに対し、本実施形態では、意図的に応力が集中する箇所を作り、その箇所を観察しながらねじり疲労試験を実施する。これによって、材料のき裂発生寿命を評価することができる。
以上、本発明の第1の実施形態による試験片1、及び試験片1を用いた試験方法を説明した。本実施形態によれば、材料のき裂発生寿命を評価することができる。
上述の実施形態では、つかみ部11及び12の形状が、標点部13と厚さが等しく、かつ標点部13よりも幅が広い形状である場合を説明した。しかし、つかみ部11及び12の形状は任意である。ただし、つかみ部11及び12は、標点部13よりも断面積が大きいことが好ましい。つかみ部11及び12は例えば、標点部13と幅が等しく、かつ標点部13よりも厚さが大きい形状であってもよい。
上述の実施形態では、標点部13の角13bだけでなく、つかみ部11の角11a及びつかみ部12の角12aも面取りされている場合を説明した。しかし、試験片1は、標点部13の角13bが面取りされていればよく、つかみ部11の角11a及びつかみ部12の角12aは面取りされていなくてもよい。より詳しくは、試験片1は、ノッチ部13Aの角だけが面取りされていればよい。
上述の実施形態では、標点部13の角13b等が、C面取りされている場合を説明した。しかし、面取りの形状は任意である。例えば、面取りの角度は45°以外であってもよい。また、面取りされた面が曲面であってもよい。
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態による試験片2の斜視図である。試験片2は、表側の面に溝13cが形成されている他は、試験片1(図1A)と同じ構成を有する。溝13cは、軸方向に平行に、つかみ部11及び12、並びに標点部13の全体にわたって形成されている。
図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。図5の断面は、軸方向に垂直で、かつノッチ部13Aを含む断面である。溝13cは、弓形の断面形状を有している。ここで弓形とは、円弧とその両端を結ぶ線分とで構成された形状をいう。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、表側の面では点P3に最大のせん断応力が発生し、裏側の面では点P4に最大のせん断応力が発生する。本実施形態においても、点P3に発生するせん断応力の大きさを、点P4に発生するせん断応力の1.05倍以上にする。
本実施形態では、溝13cにより、点P3に発生するせん断応力をより大きくすることができる。具体的には、溝13cの深さdを大きくするほど、点P3に発生するせん断応力を大きくすることができる。ここで溝13cの深さdは、溝13cが形成された面から溝13cの最深部までの距離を意味する。
溝13cの深さdは、溝13cの曲率半径ρの0.25%以上(d≧0.0025ρ)とすることが好ましい。一方、溝の深さdが大きすぎると、点P3の応力が大きくなりすぎ、実体の疲労特性を正しく評価できなくなるおそれがある。溝13cの深さdは、好ましくは溝13cの曲率半径ρ以下(ρ≧d)であり、かつ、標点部13の厚さtの25%以下(d≦0.25t)である。溝13cの深さdは、より好ましくは厚さtの10%以下(d≦0.10t)であり、さらに好ましくは厚さtの5%以下(d≦0.05t)である。
溝13cの幅bは、標点部13の幅wよりも小さい(b<w)ことが好ましい。溝13cの幅bが標点部13の幅w以上であると、意図した応力分布が得られなくなる。なお、溝13cの幅bは、2ρsin(arcsin((ρ−d)/ρ))としても求めることができる。
試験片2は、図6に示すように、内径2ρの鋼管Pから、鋼管Pの内面を含むように試験片を採取し、この試験片を成形して製造することもできる。この場合、試験片2の標点部13の厚さt(図5)は、鋼管Pの肉厚wtの10〜100%(0.1wt≦t≦wt)にすることが好ましい。
以上、本発明の第2の実施形態による試験片2を説明した。本実施形態においても、疲労き裂が発生しやすいノッチ部13Aの表側を観察しながら、標点部13に繰り返しねじり負荷を加えることで、材料のき裂発生寿命を評価することができる。また、図6を用いて説明したように、鋼管Pから試験片2を採取すれば、鋼管の内面を起点とした疲労破壊を再現した試験を実施することができる。
[第3の実施形態]
図7Aは、本発明の第3の実施形態による試験片3の斜視図である。図7Bは、試験片3を図7Aとは反対側から見た斜視図である。試験片3は、一対のつかみ部31及び32と、つかみ部31とつかみ部32との間に形成された標点部33とを備えている。試験片3は、全体的に、丸棒状の試験片の一方の面を研削して平らにした形状を有している。
第1の実施形態と同様に、軸方向(y方向)、幅方向(x方向)、及び厚さ方向(z方向)を定義し、厚さ方向の一方側(z方向プラス側)を表側と呼び、他方側(z方向マイナス側)を裏側と呼ぶ。試験片3は、表側に平らに形成された面を有している。
つかみ部31及び32は、軸方向に垂直な断面の面積が、標点部33よりも大きくなるように形成されている。つかみ部31及び32のそれぞれと標点部33とは、境界に応力が集中しないように、滑らかに連結されている。
図8は、試験片3の標点部33の近傍を拡大して示す平面図である。標点部33は、軸方向の中央近傍に、幅方向の寸法が他の箇所よりも小さいノッチ部33Aを有している。具体的には、標点部33はノッチ部33Aにおいて、平らに形成された面を除く外周面にノッチ33aが形成されている(図9も参照)。ノッチ33aは、境界に応力が集中しないように、曲率半径が大きく形成されていることが好ましい。一方、ノッチ33aの曲率半径を大きくすることでノッチ部33Aの長さを大きくしすぎると、き裂発生箇所を特定することが難しくなる。ノッチ部33Aの長さは、例えば0.5〜5mmであり、好ましくは1〜3mmである。
図9は、図8のIX−IX線に沿った断面図である。図9の断面は、軸方向に垂直で、かつノッチ部33Aを含む断面である。標点部33は、図9の断面において、幅wが厚さtよりも大きい(w>t)。
標点部33にねじり負荷が加わると、表側の面では点P5に最大のせん断応力が発生し、裏側の面では点P6に最大のせん断応力が発生する。標点部33は、図9の断面において、軸方向をねじり軸としてねじり負荷を加えたときに表側に生じる最大応力が、裏側に生じる最大応力の1.05倍以上となる形状を有する。すなわち、本実施形態では、点P5に発生するせん断応力の大きさが、点P6に発生するせん断応力の1.05倍以上である。
点P5に発生するせん断応力と点P6で発生するせん断応力の比は、幅wと厚さtとの比によって調整することができる。具体的には、w/tを大きくすると、点P5及び点P6の両方とも応力は増加するが、点P5の方がより大きく増加する。そのため、w/tを大きくするほど、点P5に発生するせん断応力の点P6で発生するせん断応力に対する比を大きくすることができる。点P5及び点P6に発生するせん断応力の具体的な大きさは、標点部33の形状から、例えば有限要素法によって計算することができる。
以上、本発明の第3の実施形態による試験片3を説明した。本実施形態においても、疲労き裂が発生しやすいノッチ部33Aの表側を観察しながら、標点部33に繰り返しねじり負荷を加えることで、材料のき裂発生寿命を評価することができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
[計算例1]
有限要素法によって、第2の実施形態による試験片2(図4)の解析を行った。解析に用いた試験片は全長を60mm、標点部13の長さを9.5mmとした。さらに、ノッチ部13Aの長さを2mm、ノッチ13aの曲率半径を2.6mm、最大深さを0.2mmとした。さらに、ノッチ部13Aの幅w(図5)を3.1mm、厚さt(図5)を2mm、溝13cの曲率半径ρ(図5)を8.75mm、深さd(図5)を0.1mmとし、角11a、12a、及び13bにそれぞれにC=1mmのC面取りを施した。材料のヤング率を206000MPaに設定し、1.699N・mのトルクを付与してせん断応力の分布を計算した。結果を図10A及び図10Bに示す。
図10A及び図10Bに示すように、ノッチ部13Aの表側の面に最大応力(711MPa)が生じており、これは裏側の面の最大応力(661MPa)の約1.08倍であった。このことから、裏側の面を面取りすることで、表側に生じる最大応力を裏側に生じる最大応力の1.05倍以上にできていることを確認した。
[計算例2]
有限要素法によって、第3の実施形態による試験片3(図7A)の解析を行った。解析に用いた試験片は全長を60mm、標点部33の長さを2.5mmとした。さらに、ノッチ部33Aの長さを2mm、ノッチ33aの曲率半径を2.65mm、最大深さを0.2mmとした。ノッチ部33Aの幅w(図9)を2.1mm、厚さt(図9)を1.85mmとした。材料のヤング率を206000MPaに設定し、0.5N・mのトルクを付与してせん断応力の分布を計算した。結果を図11に示す。
図11に示すように、ノッチ部33Aの表側の面に最大応力(371MPa)が生じており、これは裏側の面の最大応力(350MPa)の1.06倍であった。このことから、表側を平らにした円形形状の断面とすることで、表側に生じる最大応力を裏側に生じる最大応力の1.05倍以上にできていることを確認した。
[実観察試験]
次に、上記計算例1の解析モデルと同じ形状・寸法の試験片を実際に作製し、ノッチ部の表側を観察しながら、試験片1が破断するまで標点部に繰り返しねじり負荷を加えた。図12A〜図12Fはそれぞれ、応力比R=−1、せん断応力振幅τa=550MPa加えた時の繰り返し数Nが0(試験前)、9900、18900、29700、31500、及び39600のときの標点部のマイクロスコープ画像である。破断繰り返し数は4.77×10回であった。
図13A〜図13Fは、マイクロスコープ画像を画像処理することによって得られたひずみ分布である。図中、明るい部分ほど、ひずみの大きい部分であることを示す。図13A〜図13Fに示すとおり、き裂発生に至る前から徐々にひずみが大きくなっており、これらの箇所に微小き裂が発生していることを確認した。
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
1,2,3 試験片
11,12,31,32 つかみ部
11a,12a,31a,32a 角
13,33 標点部
13A,33A ノッチ部
13a,33a ノッチ
13b 角
13c 溝

Claims (6)

  1. ねじり疲労試験用の試験片であって、
    一対のつかみ部と、
    前記一対のつかみ部の間に形成された標点部とを備え、
    前記一対のつかみ部同士を結ぶ方向を軸方向とし、前記軸方向に垂直な方向の一つを幅方向とし、前記軸方向及び前記幅方向の両方に対して垂直な方向を厚さ方向とし、
    前記標点部は、前記幅方向の寸法が他の箇所よりも小さく形成されたノッチ部を有し、
    前記標点部は、前記軸方向に垂直でかつ前記ノッチ部を含む断面において、前記幅方向の寸法が前記厚さ方向の寸法よりも大きく、前記軸方向をねじり軸としてねじり負荷を加えたときに前記厚さ方向の一方側に生じる最大応力が、前記厚さ方向の他方側に生じる最大応力の1.05倍以上となる形状を有する、試験片。
  2. 請求項1に記載の試験片であって、
    前記断面の形状は、前記厚さ方向の他方側の面を面取りした矩形形状である、試験片。
  3. 請求項2に記載の試験片であって、
    前記厚さ方向の一方側の面に、軸方向に垂直な断面の形状が弓形の溝が形成されている、試験片。
  4. 請求項1に記載の試験片であって、
    前記断面の形状は、前記厚さ方向の一方側を平らにした円形形状である、試験片。
  5. 請求項3に記載の試験片の製造方法であって、
    鋼管から前記鋼管の内面を含むように前記試験片を採取する工程を含む、製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の試験片を用いた試験方法であって、
    前記ノッチ部の前記厚さ方向の一方側を観察しながら、前記標点部に繰り返しねじり負荷を加える工程を含む、試験方法。
JP2018060759A 2018-03-27 2018-03-27 試験片、試験片の製造方法、及び試験方法 Active JP7003790B2 (ja)

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