JP6390731B2 - 溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法、平板試験片の製造方法、および平板試験片 - Google Patents

溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法、平板試験片の製造方法、および平板試験片 Download PDF

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Description

本発明は、溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法に関する。また、本発明は該疲労亀裂発生寿命評価試験法に用いて好適な、平板試験片の製造方法、および平板試験片に関する。特に、本発明は、造船、海洋構造物、橋梁、自動車などに用いられる鉄鋼材料の溶接部材の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法として好適である。
溶接による大型の鋼構造物が建造されて以来、疲労破壊は構造物の信頼性・健全性確保にとって最も重要な問題とされている。疲労破壊は鋼構造物に対して繰り返される負荷によって亀裂が発生・進展する現象であり、溶接構造物の損傷の多くが接合部周辺の疲労破壊に起因することが知られている。
溶接構造物の材料開発や溶接構造物に適用する溶接手法の開発および管理において、鉄鋼材料の溶接部材の耐疲労特性の評価は重要である。
従来、溶接継手における疲労亀裂発生には応力集中や引張残留応力が強く影響していると考えられており、これらの影響を低減するための技術が提案・開発されてきた(例えば、特許文献1参照。)。そして、更なる耐疲労破壊性能の向上を考える上では、母材および溶接部のミクロ組織制御がターゲットとなる。母材に関しては、疲労亀裂の伝播を抑制するという考えで耐疲労鋼の開発が行われている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、溶接継手での主要な疲労亀裂発生箇所となる溶接熱影響部の材料設計は、十分行われてこなかった。
溶接熱影響部の材料設計が十分に行われなかった原因は、実験による溶接熱影響部の疲労亀裂発生抵抗の評価が困難であったためである。従来の溶接構造物の耐疲労特性の評価は、実構造体を模擬した溶接継手を試験片とした疲労試験により行われている。溶接継手の耐疲労特性は溶接止端部の応力集中や溶接残留応力の影響を受けるため、溶接止端部形状や溶接実績の違いにより溶接継手の耐疲労特性がばらつく。すなわち、溶接止端部の応力集中や溶接残留応力、および鉄鋼材料のミクロ組織の影響が重畳した試験結果であるため、従来の溶接継手の疲労試験において鉄鋼材料のミクロ組織の影響因子を抽出して評価することは困難である。
疲労亀裂は繰返しの負荷が作用しているとき、最もすべり変形が活発に起こる結晶粒中で形成されることが知られている。鉄鋼材料の耐疲労特性を疲労亀裂の発生と伝播に分けて評価する場合、疲労亀裂の伝播に対する鉄鋼材料の特性は疲労亀裂伝播試験によって評価できる(例えば、非特許文献1参照。)。疲労亀裂の発生については、特許文献3で、鉄鋼材料に溶接熱履歴を与えこの熱履歴付与部に切欠を加工した小型試験片による溶接熱影響部の疲労破壊感受性評価試験法が提案されている。
しかしながら、上記文献の試験方法では疲労亀裂の発生する切欠部分には無数の結晶粒が存在しており、疲労試験中の疲労亀裂の発生源である結晶粒の特定が困難である。また、脆性破壊の破面と比べると、疲労破壊の破面は亀裂発生という初期段階の表面が亀裂の閉口によって潰されるため、破面観察から疲労破壊発生源の結晶粒を探すことも困難である。以上の理由により、疲労亀裂の発生した結晶粒がどういう状態であるために亀裂が形成されるかについての定量的な検討は十分に行われていない。
特許5599652 特許5050423 特開平7−103871号公報
一般社団法人 日本溶接協会「WES 1111」、2014年1月1日
本発明は、先述の背景に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、より精確に鉄鋼材料の溶接部材の疲労亀裂発生寿命を評価することができる溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法を提供することを目的とする。また、本発明は、該溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法に用いて好適な平板試験片の製造方法、および平板試験片を提供することを目的とする。
特許文献3の評価試験法において疲労亀裂発生源の結晶粒の特定が困難である理由の一つは、試験片の板厚が10mmであるため、溶接構造用鋼の結晶粒径に比べ板厚が大きいことである。例えば、板厚断面で疲労亀裂が発生する可能性のある結晶粒が1個に定まっていても板厚方向に結晶粒が100個並んでいれば、疲労亀裂が100個の結晶粒の内のどれから発生したかを特定できない。そこで、試験片の板厚を可能な限り薄くすれば疲労亀裂発生源の特定が可能になると本発明者らは考えた。
一方、疲労試験は、作業者が、手動で疲労試験機に試験片をセットし、荷重条件等を疲労試験機に入力して行う。その際、試験片が薄いと低荷重(例えば、作業者が試験片を取り扱っている際の荷重)でも座屈および変形が起こりやすく、試験の実施難度が上がってしまう。また、大きな荷重を想定した疲労試験の実施が困難となる。疲労試験を簡単に実施するために、試験片としては剛性を確保するべきだと考え、疲労亀裂を発生させる領域のみを減厚することを本発明者らは発想した。
そこで、試験片の形状は平板形状とし、さらに減厚部を設けることが有効である。丸棒状の試験片では、周方向にわたって疲労亀裂を発生する可能性のある結晶粒が分布し、疲労亀裂が発生した結晶粒を特定することが困難である。また、溶接熱履歴の再現においても、平板形状とした方が一度にたくさんの個数を処理可能となる。
次に、疲労試験において亀裂の発生を確認するには、従来作業者が常に立会い試験を監視し続ける必要がある。これに対し、疲労試験の様子や経過をマイクロスコープを用いて画像を周期的に記録することで、人的負荷の軽減が可能となる。
さらに、溶接止端部近傍等に存在する溶接熱影響部(HAZとも称する)の耐疲労特性を評価するには、母材に溶接熱履歴を再現するための熱処理を賦与する必要がある。そこで再現熱サイクル処理を実施し、溶接熱履歴を再現することを本発明者らは発想した。
以上の知見に基づき、さらに検討を重ねて本発明は完成された。本発明は、板厚方向の結晶粒の数を1〜2個にした所定の減厚部および所定の切欠部を有する平板試験片に繰り返し応力を負荷する疲労亀裂発生寿命評価試験法である。これにより、本発明においては、疲労亀裂発生におけるミクロ組織の影響を評価することができるため溶接止端部形状や溶接実績の違いにより疲労亀裂発生寿命に対する評価結果がばらつくことを低減し、また、疲労亀裂発生源の特定を容易にしている。加えて、本発明においては、疲労試験の実施および疲労亀裂の発生寿命の特定を容易にしている。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]平板試験片に繰返し応力を負荷する疲労試験であって、
前記平板試験片は、試験片の長さ方向中央が中心となる半円型の減厚部および切欠部を有し、
前記減厚部は、厚さが結晶粒径の1〜2倍であり、かつ、半径が前記平板試験片の幅の60%以下であり、
前記切欠部は、前記減厚部内に位置し、かつ、半径が前記平板試験片の幅の30%以下であり、
前記平板試験片に繰返し応力を負荷して疲労亀裂発生寿命を評価する、溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法。
[2]前記切欠部内において、前記平板試験片の幅が最も小さくなる点を切欠底部とし、
前記切欠底部を中心として半径0.5mm以上となる領域を観察し疲労亀裂の発生を疲労試験中に判別する、[1]に記載の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法。
[3]前記切欠部内において、前記平板試験片の幅が最も小さくなる点を切欠底部とし、
前記切欠底部を中心として半径0.5mm以上となる領域を撮影手段を用いて撮影し、
撮影画像を周期的に保存し、疲労試験後に保存された前記撮影画像から疲労亀裂の発生を判別する、[1]に記載の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法。
[4]前記平板試験片の作製において、
平板状のブランクをAc変態点以上まで加熱し、その後平均冷却速度2〜300℃/秒で400℃以下まで冷却する熱処理工程の後において、前記ブランクに前記減厚部および前記切欠部を設ける、[1]〜[3]のいずれかに記載の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法。
[5]平板状のブランクをAc変態点以上まで加熱し、その後平均冷却速度2〜300℃/秒で400℃以下まで冷却する熱処理工程と、
前記ブランクの長さ方向中央を中心とした半円型であって、厚さが結晶粒径の1〜2倍であり、かつ、半径が前記ブランクの幅の60%以下である減厚部を設ける工程と、
前記減厚部内に位置し、前記ブランクの長さ方向中央を中心とした半円型であって、半径が前記ブランクの幅の30%以下である切欠部を設ける工程と、を有する平板試験片の製造方法。
[6]平板試験片であって、
前記平板試験片は、試験片の長さ方向中央が中心となる半円型の減厚部および切欠部を有し、
前記減厚部は、結晶粒がベイナイトであり、厚さが前記結晶粒の結晶粒径の1〜2倍であり、かつ、半径が前記平板試験片の幅の60%以下であり、
前記切欠部は、前記減厚部内に位置し、かつ、半径が前記平板試験片の幅の30%以下である、平板試験片。
本発明によれば、鉄鋼材料の溶接部材の疲労亀裂発生寿命について、疲労亀裂の発生におけるミクロ組織の影響を評価することができ、また、疲労亀裂発生源の結晶粒の特定が容易であるため、従来よりも精確な評価結果を得ることができる。また、本発明においては、剛性を確保している試験片を用いているため疲労試験を容易に実施することができる。さらに、従来の溶接継手の疲労試験片に比べて、本発明の平板試験片は軽量かつ小さい荷重で試験が可能であり、試験の人的負荷を軽減でき、疲労試験の効率を向上できる。
図1は実施例で使用した平板試験片を示す。 図2は実施例におけるマイクロスコープと平板試験片の設置状態を示す。 図3は本発明の平板試験片を説明するための概略図であり、平板試験片を上面側から見た平面概略図である。 図4は本発明の平板試験片を説明するための概略図であり、平板試験片を図3のXで示す側面側から見た概略図である。
以下、本発明の実施形態をその最良の形態も含めて説明する。
<平板試験片>
本発明の平板試験片は、平板形状の鉄鋼材料(以下、ブランクとも称する。)に対して所定の減厚部および所定の切欠部を備えるものである。この平板試験片は、その作製に際し溶接熱履歴を再現する再現熱サイクル試験を効率的に行うことができ、減厚部における疲労亀裂発生源の特定が容易である。
本発明で使用可能な平板試験片の一例を、図3および図4に示す。図3は、本発明の平板試験片を説明するための概略図であり、平板試験片を上面側から見た平面概略図である。図4は本発明の平板試験片を説明するための概略図であり、平板試験片を図3のXで示す側面側から見た概略図である。図3および図4に示す平板試験片1は、試験片の幅方向端位置かつ長さ方向中央位置を中心とした半円型の減厚部2および切欠部3を備える平面略長方形の形状である。切欠部3は減厚部2内に位置しているため、減厚部2は板幅方向に厚みを有する弧の形状となっている。平板試験片1の長さ方向両端部は試験機接合部6である。平板試験片1の形状は、使用する疲労試験機に合わせて適宜決定可能である。例えば、平板試験片1の長さは100〜200mmが好ましい。平板試験片1の幅は8〜20mmが好ましい。平板試験片1の厚さは2〜8mmが好ましい。
平板試験片1は、長さ方向において径が最大となる半円型の減厚部2を備える。減厚部2の形状を半円型とすることで切欠底部5の特定が容易となり、疲労亀裂発生源の特定が容易となる。なお、平板の試験片に所定の減厚部2を設けることにより、疲労亀裂を発生させる領域を減厚しつつ試験片としては剛性を確保しているため、座屈や変形を抑制することができ、また、大きな荷重の疲労試験を行なうこともできるため、疲労試験を容易に実施することができる。
減厚部2は、外周の半径が平板試験片1の幅の60%以下である。減厚部2の半径が平板試験片1の幅の60%超となる場合、平板試験片1の取り扱い中に座屈が生じやすくなるという不具合がある。減厚部2の半径の下限は適宜選択可能である。例えば、平板試験片1の取り扱い中における座屈を抑制しつつ、十分な減厚部領域を確保する観点から、減厚部2の半径を平板試験片1の幅の40%以上とすることが好ましい。
減厚部2は、厚さが減厚部2の結晶粒の結晶粒径1〜2倍である。すなわち、減厚部2は、厚さが減厚部2の結晶粒の1〜2個分である。このように薄い減厚部2とすることで、疲労亀裂発生源の特定が容易となる。また、疲労亀裂の発生におけるミクロ組織の影響を評価できる。疲労亀裂の発生にはすべりの活動が影響していることが知られており、溶接熱影響部においてすべり面およびすべり方向はその場所に存在する結晶粒で決定される。したがって、板厚方向で1〜2個の結晶粒分を厚さとして確保すればよい。減厚部2は溶接熱履歴を再現するための熱処理が予め賦与されており、よって、平板試験片1はHAZにおける疲労亀裂発生寿命の評価に有用である。なお、本発明において、結晶粒径はナイタールエッチング後の観察により特定する。本発明では、観察される結晶粒のうち、最も大きいものを基準として、減厚部2の厚さを決定すればよい。すなわち、本発明では、減厚部2の、平板試験片1の板厚方向に平行な断面をナイタールエッチング後100倍から1000倍の光学顕微鏡等で観察し、観察される各結晶粒について最大径(最長方向の長さ)を求め、最も最大径が大きい結晶粒の最大径を、減厚部2の厚さの基準となる結晶粒の粒径とする。なお、減厚部2の厚さは一定である。
減厚部2には、減厚部2へと厚さが徐々に減少する傾斜部4が隣接していてもよい。よって、平板試験片1の作製において、様々な減厚法を採用可能となる。
平板試験片1は、長さ方向において径が最大となる半円型の切欠部3を備える。切欠部3において、平板試験片1の幅が最も小さくなる部位を切欠底部5とする。切欠部3の形状を半円型とすることで、平板試験片1の幅が最も小さくなる切欠底部5に応力が集中しやすくなり、疲労亀裂発生源の特定が容易となる。また、疲労亀裂の発生におけるミクロ組織の影響を容易に評価可能となる。本発明では、平板試験片1の減厚部2において疲労亀裂を発生させるため、切欠部3を減厚部2内に備える。
切欠部3は、半径が平板試験片1の幅の30%以下である。切欠部3の半径が平板試験片1の幅の30%超となる場合、切欠部3に対する応力集中が過剰となり疲労亀裂発生におけるミクロ組織の影響を評価できなくなる。切欠部3領域の下限は適宜選択可能である。切欠底部5近傍において疲労亀裂を発生させるような応力集中とする観点から、例えば、切欠部3の半径を平板試験片1の幅の20%以上とすることが好ましい。
減厚部2と切欠部3についてさらに説明する。減厚部2の半径は切欠部3の半径より大きい。好ましくは、減厚部2の半径は切欠部3の半径の2倍以上である。減厚部2と切欠部3は、図3に示すようにその中心が一致する。このようにすることで、切欠底部5近傍に広い減厚部2を確保できる。また、切欠底部5を中心に線対称で応力を与える観点から、切欠部3と減厚部2は、中心を同一とする互いに相似の半円型であることが好ましい。
平板試験片1に減厚部2および切欠部3を形成する方法は特に限定されない。即ち、平板試験片1の製造方法は適宜決定すればよい。例えば、平板形状のブランクに溶接熱履歴を再現する熱処理を施した後、減厚部2を設け、さらに切欠部3を設けて、平板試験片1を製造できる。
平板試験片1の減厚部2の板厚を結晶粒1〜2個分とするためには、ブランクに対して片面ずつ切削およびバフ研磨を行い、減厚部2を作製しその表面を平滑化することが好ましい。その後、放電加工によって減厚部2に切欠部3を形成し、エッチング溶液に漬込んで放電加工で生じた凹凸を平滑化すれば、平板試験片1作製工程に起因する応力集中の影響を低減でき、精度良く疲労亀裂発生寿命を評価できる。
熱処理後の平板試験片1を用いて疲労試験を行うことで、HAZにおける疲労亀裂発生寿命の評価を行える。ブランクの熱処理の条件は、想定される溶接条件に鑑みて適宜選択可能である。例えば、平板状のブランクをAc変態点以上まで加熱した後、さらに平均冷却速度2〜300℃/秒で400℃以下まで冷却する熱処理工程を行った後において疲労試験を行うことで、HAZにおける疲労亀裂発生寿命の評価を行える。なお、平均冷却速度は、((冷却開始時の温度−冷却終了後の温度)/冷却時間)で求められる。また、ブランクをAc変態点以上まで加熱した後、さらに平均冷却速度50〜100℃/秒で400℃以下まで冷却すると、Ac変態点以上まで加熱された結晶粒は粗大なベイナイト組織に変態し、より好適な溶接熱影響部の再現となる。即ち、このようにして製造した平板試験片は、減厚部2および切欠部3を有し、かつ減厚部2はベイナイト結晶粒を有している。
<疲労試験>
本発明においては、上述の平板試験片1を使用して繰返し応力を負荷する疲労試験を行うことで、疲労亀裂発生寿命を評価できる。即ち、本発明の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法は、上述の平板試験片1に繰返し応力を負荷して疲労亀裂発生寿命を評価する試験法である。
本発明の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法を行なう疲労試験機は、上記平板試験片1を使用できることを条件に、適宜選択可能である。疲労試験は、通常、室温かつ大気圧下で行う。但し、海水腐食環境を模擬した疲労試験としてもよいし、低温にて疲労試験を行ってもよい。
上記平板試験片1を使用する疲労試験では切欠底部5に応力が集中しやすくなるので、切欠底部5を中心としてその近傍を観察し、疲労亀裂の発生を判断することが好ましい。観察領域は、切欠底部5を中心として少なくとも半径0.5mmの範囲とすることが好ましい。観察領域は、これより大きくなってもよい。
上記平板試験片1を使用する疲労試験では、マイクロスコープを併用して疲労試験の経過を観察することが好ましい。マイクロスコープで平板試験片1の観察を行い、疲労亀裂の発生を疲労試験中に判別してもよい。また、マイクロスコープで平板試験片1の画像を周期的に撮影、保存し、疲労試験後において保存された撮影画像から疲労亀裂の発生を判別してもよい。このように、疲労試験の様子や経過をマイクロスコープを用いて画像を周期的に記録することで、人的負荷の軽減が可能となる。
疲労試験の観察においては、上記マイクロスコープの他、適宜の撮影手段を用いてもよい。例えば、拡大撮像が可能なカメラを利用してもよい。
先に述べたように、ミクロ組織起因の影響以外の影響(引張残留応力・応力集中)が重畳しているためミクロ組織因子の抽出評価が困難であることと、疲労亀裂が発生する可能性のある結晶粒の数が膨大であるため結晶粒相互作用による影響が複雑になることが、従来の耐疲労特性評価試験方法の課題であった。
これに対し、本発明の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法によれば、上記の通り、これらの課題を解決することができるため、より精確に鉄鋼材料の溶接部材の疲労亀裂発生寿命を評価することができる。そして、本発明の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法によって特定された疲労亀裂発生起点である結晶粒は、与えられた繰返し負荷に対して最も弱い状態にあった結晶粒と考えられる。したがって、本発明の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法による結果をフィードバックすることによって、疲労亀裂発生寿命を向上させるミクロ組織を設計することが可能である。例えば、本発明の試験法によって特定された疲労亀裂発生起点である結晶粒のミクロ組織が生成しない熱履歴となる溶接条件で溶接することにより、疲労亀裂発生寿命を向上させることが可能となる。また、溶接熱影響部の疲労特性に優れた鋼材の開発においても重要な指針を与えることもできる。このように、本発明の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法は、溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命を向上させるためのミクロ組織設計に適用できる技術であり、これからの研究開発にとって重要な役割を果たすことができる。
以下、本発明を、実施例に基づいて具体的に説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されない。
図1は発明例である鋼製の平板試験片(No.C)を示す。この平板試験片の外形は長さ120mm、幅10mm、板厚3mmである。この平板試験片は幅方向端位置かつ長さ方向中央位置を中心とした半円型の減厚部および切欠部を備え、減厚部および切欠部は試験片の長さ方向において径が最大である。減厚部は半径4mmであり、切欠部は半径2mmである。この平板試験片の製造に際し、ブランクに後述の熱処理を施した場合は、結晶粒径は100〜200μmであるため、減厚部の板厚は200μmとした。切欠部の形成に関して、減厚部に放電加工で切欠きを形成した後、エッチング溶液である10vol%ナイタール液に試験片を1時間漬込み、切欠き加工面の凹凸の削除を行って切欠部を形成した。
ブランクへの熱処理は以下のとおりである。即ち、溶接継手における疲労亀裂の発生領域として知られる粗大結晶粒域を作製するために、ブランクの最高加熱温度を1400℃とした。最高加熱温度に到達後、その温度で1秒保持し、冷却速度60℃/秒で400℃まで冷却した。これは荷重非伝達型十字溶接継手の溶接後の冷却速度を寺崎らによって提案されている推定式(日本溶接学会論文集、第6巻、第2号、1988年)を用いて、その熱履歴を再現するように設定したものである。
他方、上記熱処理を行っていないブランクに、上記と同様の減厚部および切欠部を形成した平板試験片(No.E)も準備した。
図2に平板試験片を用いた疲労試験の実施態様を示す。疲労試験は荷重制御で行い、最大作用公称応力115MPa、応力比R=0.1、周波数は2Hzとした。また、疲労亀裂発生を確認するためにマイクロスコープを用いて切欠底部周辺を観察した。観察は倍率150倍とし、240サイクルごとに写真を撮影して行った。試験終了タイミングはマイクロスコープによって疲労亀裂が確認された時点とした。
撮影されたマイクロスコープの画像から何サイクルで疲労亀裂が発生したかを決定した。表1は疲労試験によって得られた疲労亀裂発生寿命(単位はサイクル)を示す。溶接を模擬した熱処理を行ったNo.Cは疲労亀裂発生寿命が約13万サイクルであった。疲労亀裂は、結晶粒径200μmのベイナイト結晶粒から発生した。一方、熱処理を行わなかったNo.Eは疲労亀裂発生寿命が約44万サイクルであった。疲労亀裂は、結晶粒径数十μmのフェライトの結晶粒から発生した。本発明の平板試験片を使用した疲労試験によって、溶接によるミクロ組織変化が材料の耐疲労特性を大幅に減少させていることが示された。また、この平板試験片を使用した疲労試験によって、疲労亀裂の発生に対するミクロ組織の影響を定量評価可能であることが示された。
この結果は、従来の溶接継手の疲労試験では求めることができない。本発明の平板試験片を使用した疲労試験である本発明の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法は、溶接熱履歴、すなわち溶接条件を変えた場合の疲労亀裂発生寿命を評価することが可能であると言える。
本疲労試験の結果、切欠底部を中心として少なくとも半径0.5mmの範囲内で疲労亀裂が発生したことを確認した。また、疲労試験中の観察および撮影されたマイクロスコープの画像から疲労亀裂発生源となった結晶粒の疲労亀裂発生寿命を決定することができた。
上記No.Cと同様の条件である平板試験片(No.A、BおよびD)で疲労試験を実施した。その結果、疲労亀裂発生の寿命が約13万サイクルから19万サイクルの範囲内に収まっていた。なお、No.Aは、疲労亀裂は、結晶粒径100μmのベイナイト結晶粒から発生した。No.Bは、疲労亀裂は、結晶粒径160μmのベイナイト結晶粒から発生した。No.Dは、疲労亀裂は、結晶粒径185μmのベイナイト結晶粒から発生した。
以上の結果は疲労亀裂発生源の結晶粒の疲労特性を反映した結果であり、疲労亀裂の発生に対するミクロ組織の影響を定量評価可能であることが示された。
1 平板試験片
2 減厚部
3 切欠部
4 傾斜部
5 切欠底部
6 試験機接合部

Claims (6)

  1. 平板試験片に繰返し応力を負荷する疲労試験であって、
    前記平板試験片は、試験片の長さ方向中央が中心となる半円型の減厚部および切欠部を有し、
    前記減厚部は、厚さが結晶粒径の1〜2倍であり、かつ、半径が前記平板試験片の幅の60%以下であり、
    前記切欠部は、前記減厚部内に位置し、かつ、半径が前記平板試験片の幅の30%以下であり、
    前記平板試験片に繰返し応力を負荷して疲労亀裂発生寿命を評価する、溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法。
  2. 前記切欠部内において、前記平板試験片の幅が最も小さくなる点を切欠底部とし、
    前記切欠底部を中心として半径0.5mm以上となる領域を観察し疲労亀裂の発生を疲労試験中に判別する、請求項1に記載の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法。
  3. 前記切欠部内において、前記平板試験片の幅が最も小さくなる点を切欠底部とし、
    前記切欠底部を中心として半径0.5mm以上となる領域を撮影手段を用いて撮影し、
    撮影画像を周期的に保存し、疲労試験後に保存された前記撮影画像から疲労亀裂の発生を判別する、請求項1に記載の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法。
  4. 前記平板試験片の作製において、
    平板状のブランクをAc変態点以上まで加熱し、その後平均冷却速度2〜300℃/秒で400℃以下まで冷却する熱処理工程の後において、前記ブランクに前記減厚部および前記切欠部を設ける、請求項1〜3のいずれかに記載の溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法。
  5. 平板状のブランクをAc変態点以上まで加熱し、その後平均冷却速度2〜300℃/秒で400℃以下まで冷却する熱処理工程と、
    前記ブランクの長さ方向中央を中心とした半円型であって、厚さが結晶粒径の1〜2倍であり、かつ、半径が前記ブランクの幅の60%以下である減厚部を設ける工程と、
    前記減厚部内に位置し、前記ブランクの長さ方向中央を中心とした半円型であって、半径が前記ブランクの幅の30%以下である切欠部を設ける工程と、を有する平板試験片の製造方法。
  6. 平板試験片であって、
    前記平板試験片は、試験片の長さ方向中央が中心となる半円型の減厚部および切欠部を有し、
    前記減厚部は、結晶粒がベイナイトであり、厚さが前記結晶粒の結晶粒径の1〜2倍であり、かつ、半径が前記平板試験片の幅の60%以下であり、
    前記切欠部は、前記減厚部内に位置し、かつ、半径が前記平板試験片の幅の30%以下である、平板試験片。
JP2017039974A 2016-03-18 2017-03-03 溶接熱影響部の疲労亀裂発生寿命評価試験法、平板試験片の製造方法、および平板試験片 Active JP6390731B2 (ja)

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