以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
第1実施形態では、車両の走行試験を効率よく行うことができる走行試験システム100を提供することを意図している。ここで、「車両の走行試験を効率よく行うことができる」とは、例えば、どのくらいの本数の走行データが有効であるのかをリアルタイムで把握することができることや、予備の走行データを計測するための車両の無駄な走行を低減すること、試験時間を短縮すること、試験走行後の車両の再走行を不要にすること等を意図している。
また、第1実施形態では、走行試験システム100が後記する計測装置10と後記する管理装置20との間で無線通信を行う構成になっている。その走行試験システム100は、以下の理由により、後記する走行試験路110の一部のみを無線通信範囲としている。
(1)第1の理由は、走行試験システム100を無線免許が必要な程に出力の強い無線装置を用いない構成にするためである。この点について、惰行試験では車両の移動距離が長いため、無線免許なしで利用できる程に出力の弱い無線装置を走行試験システム100に用いた場合に、通信距離が足りずに、通信が途切れてしまう可能性がある。そこで、出力の強い無線装置(例えば、後記する走行試験路110の全周のどこででも無線通信を行うことができる程に出力の強い無線装置)を走行試験システム100に用いることが検討された。しかしながら、この構成は、無線免許が必要となるため、システムの利便性が低下する。したがって、走行試験システム100は、無線免許が必要な程に出力の強い無線装置を用いない構成にすることが望ましい。
(2)第2の理由は、走行試験システム100を携帯電話回線を用いない構成にするためである。この点について、例えば、前記した第1の理由における「走行試験システム100を無線免許が必要な程に出力の強い無線装置を用いない構成にする」という要望を満たすために、携帯電話回線を走行試験システム100に用いることが検討された。この構成は、車両の移動距離が長くても、通信が途切れないようにすることができる。しかしながら、この構成は、携帯電話回線を利用するため、通信コストが増大することや、走行データが公衆の携帯電話回線を流れるため、走行データが漏洩する懸念がある。したがって、走行試験システム100は、携帯電話回線を用いない構成にすることが望ましい。
<走行試験システムの全体構成>
以下、図1を参照して、第1実施形態に係る走行試験システム100の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る走行試験システム100の全体構成を示す模式図である。図1は、走行試験システム100の全体構成が分かるように、走行試験システム100を構成する各構成要素のサイズをデフォルメして示している。
本実施形態に係る走行試験システム100は、環状に形成された走行試験路110(図1参照)を走行する車両101の走行データを計測するシステムである。ここでは、走行試験システム100が惰行試験における車両101の試験開始速度から試験終了速度まで減速に要した時間(減速時間)を走行データとして計測する場合を想定して説明する。
本実施形では、走行試験路110は、往路側直線部111と復路側直線部112とを有している。往路側直線部111は、走行試験路110の往路に設けられた直線部である。復路側直線部112は、走行試験路110の復路に設けられた直線部である。
図1に示すように、本実施形態に係る走行試験システム100は、計測装置10と、管理装置20と、気象観測装置30と、を備えている。
計測装置10は、車両101に搭載され、かつ、車両101の走行条件を車両101のドライバに報知するとともに、走行条件に従って走行された車両101の走行データを計測する装置である。
管理装置20は、車両101の外部(例えば、地上に建設された管理棟)に配置され、かつ、気象観測装置30によって計測された気象データを取得する装置である。
気象観測装置30は、車両101の外部(例えば、地上に建設されたウェザーセンタや管理棟)に配置され、かつ、走行試験路110の周囲の気象データを計測する装置である。
管理装置20は、無線通信機能を有しており、走行試験路110の一部(具体的には、復路側直線部112の終端付近から往路側直線部111の始端付近までの範囲)を無線通信範囲113としている。管理装置20と計測装置10は、例えば、通信範囲が半径100m程度の低出力型の無線通信機能しか有していない。また、管理装置20は、計測装置10だけでなく、気象観測装置30との間で無線通信を行うようにしてもよい。
<走行試験システムにおけるデータの流れ>
以下、図2を参照して、走行試験システム100におけるデータの流れについて説明する。図2は、走行試験システム100の構成とデータの流れを示す説明図である。
図2に示すように、走行試験システム100では、気象観測装置30から管理装置20に向けて、気象データD30が有線又は無線通信で送信される。気象データD30は、気象観測装置30によって走行試験路110の周囲で計測された各時刻における風速や風向、気温、気圧等のデータである。気象データD30には、計測時刻を表す時刻データが対応付けられている。
また、走行試験システム100では、計測装置10から管理装置20に向けて、走行データD10が無線通信で送信される。走行データD10は、今回の走行で計測装置10によって計測された各時刻における車両101の走行状況を表すデータ(本実施形態では、車両101の速度を表す速度データ)である。走行データD10には、計測時刻を表す時刻データが対応付けられている。
また、管理装置20は、惰行試験画面IM20a(図9参照)をディスプレイ28に表示する。惰行試験画面IM20aは、惰行試験の分析結果を表す画面である。
図9に示す例では、惰行試験画面IM20aは、往路と復路の1往復の計測を1セットとし、各速度範囲において往路側直線部111で計測された減速時間データ1A,2A,…と、各速度範囲において復路側直線部112で計測された減速時間データ1B,2B,…と、を含む構成になっている。また、図9に示す例では、惰行試験画面IM20aは、各速度範囲における走行データD10が所望の範囲内であるか否かを表す構成になっている。管理装置20の操作者は、惰行試験画面IM20aを見ることにより、どのくらいの本数の走行データD10が無効になっているのかをリアルタイムで把握することができる。
また、走行試験システム100では、管理装置20から計測装置10に向けて、指示データR20が無線通信で送信される。指示データR20は、車両101のドライバに次回の走行条件を示すデータである。計測装置10は、指示データR20を受信すると、指示された次回の走行における試験開始速度や試験終了速度等をドライバに報知する。
<計測装置の構成>
以下、図3を参照して、計測装置10の構成について説明する。図3は、計測装置10の構成を示すブロック図である。計測装置10は、車両101に搭載され、かつ、車両101の走行データD10(速度データ)を計測する専用装置として構成されている。
図3に示すように、計測装置10は、制御部11と、記憶部12と、GPS回路13と、リモコン送受信部14と、無線通信部16と、報知部17と、を備えている。
制御部11は、各種の演算を行う機能手段である。
記憶部12は、様々なプログラムやデータを記憶する記憶手段である。
GPS回路13は、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)データを取得する回路であり、現在の時刻データと位置データを取得することができる。
リモコン送受信部14は、ドライバによって操作されるリモートコントローラ(図示せず)と通信する機能手段である。
無線通信部16は、他の装置(ここでは、管理装置20)との間での無線通信を行う機能手段である。
報知部17は、ドライバにアラーム等を報知する機能手段である。報知部17は、例えば、スピーカ17aと、ディスプレイ17bとで構成されている。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)で構成されている。本実施形態では、制御部11は、記憶部12に予め記憶された制御プログラムPr10を実行することにより、計時部11a、速度設定部11b、速度計測部11c、通信制御部11d、及び、報知制御部11eとして機能する。
計時部11aは、現在の時刻を計時する機能手段である。計時部11aは、GPS回路13で取得されるGPSデータから現在の時刻データを取得する。
速度設定部11bは、試験の走行条件(例えば、試験開始速度と試験終了速度等)を記憶部12に設定する機能手段である。
速度計測部11cは、車両101の速度データ(走行データD10)を計測する機能手段である。速度計測部11cは、GPS回路13で取得されるGPSデータに基づいて、位置データを取得して、位置データの時間的変化により車両101の速度データ(走行データD10)を計測する。ただし、速度計測部11cは、GPS衛星から発信されるGPS電波のドップラシフトを利用して車両101の速度データ(走行データD10)を算出(計測)するようにしてもよい。
通信制御部11dは、無線通信部16の動作を制御する機能手段である。
報知制御部11eは、報知部17の動作を制御する機能手段である。
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等で構成されている。記憶部12には、前記した制御プログラムPr10や、車両101の走行データD10(速度データ)等が記憶される。走行データD10(速度データ)は、計時部11aよって計時された時刻データが対応付けられている。
<管理装置の構成>
以下、図4を参照して、管理装置20の構成について説明する。図4は、管理装置20の構成を示すブロック図である。管理装置20は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバ等によって構成される。
図4に示すように、管理装置20は、制御部21と、記憶部22と、無線通信部26と、を備えている。
制御部21は、各種の演算を行う機能手段である。
記憶部22は、様々なプログラムやデータを記憶する記憶手段である。
無線通信部26は、他の装置(ここでは、計測装置10)との間での無線通信を行う機能手段である。無線通信部26は、図1に示すように、走行試験路110の一部(具体的には、復路側直線部112の終端付近から往路側直線部111の始端付近までの範囲)を無線通信範囲113としている。
制御部21は、CPUで構成されている。本実施形態では、制御部21は、記憶部22に予め記憶された制御プログラムPr20を実行することにより、気象データ取得部21a、走行データ取得部21b、有効性判定部21c、データ群判定部21d、及び、走行条件通知部21eとして機能する。
気象データ取得部21aは、気象観測装置30から気象データD30を取得する機能手段である。
走行データ取得部21bは、計測装置10から車両101の走行データD10を取得する機能手段である。
有効性判定部21cは、気象データD30に基づいて走行データD10の有効性を判定する機能手段である。
データ群判定部21dは、複数の走行データD10のある基準値(重心)からの差分を算出し、差分が所望の範囲内であるか否かを判定する機能手段である。
走行条件通知部21eは、次回の走行条件を決定して計測装置10に通知する機能手段である。
記憶部22は、ROMやRAM、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等で構成されている。記憶部22には、前記した制御プログラムPr20や、気象データD30、車両101の走行データD10(速度データ)等が記憶される。
<気象観測装置の構成>
以下、図5を参照して、気象観測装置30の構成について説明する。図5は、気象観測装置30の構成を示すブロック図である。気象観測装置30は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバ等によって構成される。
図5に示すように、気象観測装置30は、制御部31と、記憶部32と、GPS回路33と、通信部36と、を備えている。
制御部31は、各種の演算を行う機能手段である。
記憶部32は、様々なプログラムやデータを記憶する記憶手段である。
GPS回路33は、計測装置10のGPS回路13と同様の回路であり、GPS回路13と時刻が同期している。
通信部36は、他の装置(ここでは、管理装置20)との間での有線又は無線通信を行う機能手段である。
制御部31は、CPUで構成されている。本実施形態では、制御部31は、記憶部32に予め記憶された制御プログラムPr30を実行することにより、計時部31a、及び、気象観測部31bとして機能する。
計時部31aは、現在の時刻を計時する機能手段である。計時部31aは、GPS回路33で取得されるGPSデータから現在の時刻データを取得する。
気象観測部31bは、風速・風向センサSN、温度センサST、及び気圧センサSPの検出値に基づいて、風速や風向、気温、気圧等の気象データD30を計測する機能手段である。風速・風向センサSN、温度センサST、及び気圧センサSPは、走行試験路110の周囲に設置されており、気象観測装置30と通信可能に接続されている。
記憶部32は、ROMやRAM、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等で構成されている。記憶部32には、前記した制御プログラムPr30や、気象データD30等が記憶される。気象データD30は、計時部31aよって計時された時刻データが対応付けられている。
<走行試験システムの動作>
以下、図6から図8を参照して、走行試験システム100の動作について説明する。図6は、計測装置10の動作を示すフローチャートである。図7は、計測装置10の計測処理時の動作を示すフローチャートである。図8は、管理装置20の動作を示すフローチャートである。
ここでは、走行試験システム100が車両101の惰行試験を行う場合を想定して説明する。本実施形態では、惰行試験として、例えば、130km/h〜120km/h、120km/h〜110km/h、…、20km/h〜10km/hの各速度範囲を走行条件とする。そして、各走行条件において、往路側直線部111と復路側直線部112との双方で所定本数(例えば、3〜30セット)分の有効な走行データが計測されるまで、減速時間の計測が繰り返し行われるものとして説明する。
なお、各装置の動作は、各装置の記憶部に読み出し自在に予め格納されたプログラムによって規定されており、各装置の制御部によって実行される。また、装置間の通信は、受信側の装置が通信によって受信されたデータを記憶部に一旦格納し、その後に、データを記憶部から読み出すことによって行われる。また、各データは、記憶部に読み出し自在に一旦格納され、その後の処理を行う所定の構成要素に出力される。以下、これらの点については、情報処理では常套手段であるので、その詳細な説明を省略する。
≪計測装置の動作≫
まず、図6及び図7を参照して、計測装置10の動作について説明する。計測装置10は、例えば、車両101のドライバが電源スイッチ(図示せず)を押下することで動作を開始する。
図6に示すように、計測装置10の通信制御部11dは、管理装置20から初回の走行条件を示す指示データR20を受信する(ステップS110)。すると、計測装置10の速度設定部11bは、ステップS110で受信された指示データR20に基づいて、初回の試験開始速度と初回の試験終了速度とを惰行試験の初回の走行条件として特定する。そして、計測装置10の報知制御部11eは、報知部17を駆動する。これに応答して、報知部17は、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させるとともに、惰行試験の初回の走行条件をディスプレイ17bに表示する(ステップS115)。これにより、計測装置10は、惰行試験の初回の走行条件をドライバに報知する。
走行条件は、走行試験路110(図1参照)の往路側直線部111と復路側直線部112の双方で適用される。つまり、ドライバは、往路側直線部111と復路側直線部112のそれぞれで、試験開始速度以上に車両101を加速した後、車両101のギアをニュートラルにした状態で試験終了速度まで減速させる走行を行う。
ステップS115の後、計測装置10の通信制御部11dは、管理装置20から試験開始指示を受信する(ステップS120)。すると、計測装置10の報知制御部11eは、報知部17を駆動する。これに応答して、報知部17は、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させて、試験開始をドライバに報知する。これを聞いたドライバは、車両101の走行を開始する。
計測装置10の速度計測部11cは、車両101が往路側直線部111を走行する間に、往路計測を行い(ステップS125)、その後に、車両101が復路側直線部112を走行する間に、復路計測を行う(ステップS130)。ステップS125及びステップS130の処理は、例えば、図7に示すフローに沿って行われる。
図7は、計測装置10の往路と復路の計測処理を示すフローチャートである。
例えば、ドライバは、車両101の速度が計測装置10のディスプレイ17bに表示された試験開始速度以上になるように、車両101を加速させる。このとき、図7に示すように、計測装置10の制御部11は、車両101が往路側直線部111の終端又は復路側直線部112の終端に達したか否かを判定する(ステップS205)。ここで制御部11は、例えば車両101の走行位置、走行距離、ステアリング操作の有無等に基づき、終端に達したことを検知する。車両101の走行位置や走行距離は、GPS回路13によって計測することができる。ステアリング操作の有無は、例えば加速度センサ等によって計測することができる。
ステップS205の判定で、車両101が終端に達したと判断された場合(“Yes”の場合)に、制御部11は、ステップS210に進み、スピーカ17aにより終端検知を報知して(ステップS210)異常終了する。一方、ステップS205の判定で、車両101が終端に達していないと判断された場合(“No”の場合)に、制御部11は、速度計測部11cで計測した車両101の速度が試験開始速度を超過したか否かを判定する(ステップS215)。
ステップS215の判定で、車両101の速度が試験開始速度を超過していないと判断された場合(“No”の場合)に、制御部11は、ステップS205の判定に戻る。一方、ステップS215の判定で、車両101の速度が試験開始速度を超過したと判断された場合(“Yes”の場合)に、制御部11は、ステップS220に進む。
ステップS220において、計測装置10の報知制御部11eは、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させて、試験開始速度を超過した旨の報知を行う。この報知を聞いたドライバは、車両101のギアをニュートラルにして、惰性による走行を開始する。
計測装置10の制御部11は、車両101が往路側直線部111の終端又は復路側直線部112の終端に達したか否かを判定する(ステップS225)。
ステップS225の判定で、車両101が終端に達したと判断された場合(“Yes”の場合)に、制御部11は、ステップS210に進み、スピーカ17aにより終端検知を報知して(ステップS210)異常終了する。一方、ステップS225の判定で、車両101が終端に達していないと判断された場合(“No”の場合)に、制御部11は、速度計測部11cで計測した車両101の速度が試験開始速度以下に減速したか否かを判定する(ステップS230)。
ステップS230の判定で、車両101の速度が試験開始速度以下に減速していないと判断された場合(“No”の場合)に、制御部11は、ステップS225の判定に戻る。一方、ステップS230の判定で、車両101の速度が試験開始速度以下に減速したと判断された場合(“Yes”の場合)に、制御部11は、ステップS235に進む。
ステップS235において、計測装置10の報知制御部11eは、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させて、試験を開始した旨の報知を行う。さらに制御部11は、惰行試験における車両101の減速時間の計測を開始する(ステップS240)。
計測装置10の制御部11は、車両101が往路側直線部111の終端又は復路側直線部112の終端に達したか否かを判定する(ステップS245)。
ステップS245の判定で、車両101が終端に達したと判断された場合(“Yes”の場合)に、制御部11は、ステップS255に進み、惰行試験における車両101の減速時間の計測を終了する(ステップS255)。
ただし、車両101の速度が試験終了速度に減速する前に、車両101が直線部の終端に達する場合がある。この場合であっても、計測された減速時間のデータが有効な走行データD10として採用されることがある。この点については、後記する「試験終了速度に減速する前に車両が直線部の終端に達した場合の走行データの扱い」の章で説明する。
一方、ステップS245の判定で、車両101が終端に達していないと判断された場合(“No”の場合)に、制御部11は、速度計測部11cで計測した車両101の速度が試験終了速度以下に減速したか否かを判定する(ステップS250)。車両101の速度が試験終了速度以下に減速していないと判断された場合(“No”の場合)に、制御部11は、ステップS245の判定に戻る。ステップS250の判定で、車両101の速度が試験終了速度以下に減速したと判断された場合(“Yes”の場合)に、制御部11は、ステップS255に進み、惰行試験における車両101の減速時間の計測を終了する(ステップS255)。
ステップS255の後、計測装置10の報知制御部11eは、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させて、試験を終了した旨の報知を行い(ステップS260)、図7の計測処理を終了する。これによりドライバは、ギアをドライブに入れて、ステアリングを操作するタイミングを好適に知ることができる。
図6に戻り、ステップS130の後、計測装置10は、復路の計測を完了しているとともに、車両101は、無線通信範囲113(図1参照)に進入した状態になっている。そこで、計測装置10の通信制御部11dは、管理装置20との通信確立用の通信確認メッセージを送信する(ステップS135)。そして、計測装置10の通信制御部11dは、管理装置20との通信が確立したか否かを判定する(ステップS140)。
ステップS140の判定で、管理装置20との通信が確立したと判定された場合(“Yes”の場合)に、計測装置10の通信制御部11dは、今回の1往復分の走行データD10を管理装置20に送信する(ステップS145)。
ステップS145の後、計測装置10の通信制御部11dは、管理装置20から次回の指示データR20を受信する(ステップS150)。
ステップS150で受信された指示データR20は、今回と同じ走行条件を次回の走行条件として指示する内容、今回とは異なる走行条件を次回の走行条件として指示する内容、及び、全ての試験の終了を指示する内容のいずれかになっている。
ステップS150の後、計測装置10の速度設定部11bは、ステップS150で受信された指示データR20で指示された内容を判定する(ステップS155)。
ステップS155の判定で、指示された内容が今回と同じ走行条件である場合に、制御部11は、ステップS125の処理に戻る。この場合に、ディスプレイ17bには、今回と同じ走行条件が表示され続ける。
また、ステップS155の判定で、指示された内容が今回とは異なる走行条件である場合に、計測装置10の速度設定部11bは、指示データR20に基づいて、次回の試験開始速度と次回の試験終了速度とを次回の走行条件として特定する。そして、計測装置10の報知制御部11eは、報知部17を駆動する。これに応答して、報知部17は、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させるとともに、ディスプレイ17bによる惰行試験の走行条件の表示を次回の走行条件に更新する(ステップS160)。これにより、計測装置10は、惰行試験の次回の走行条件をドライバに報知する。この後、制御部11は、ステップS125の処理に戻る。
また、ステップS155の判定で、指示された内容が全ての試験の終了である場合に、計測装置10の報知制御部11eは、報知部17を駆動する。これに応答して、報知部17は、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させるとともに、全ての試験の終了をディスプレイ17bに表示する(ステップS165)。これにより、計測装置10は、試験終了をドライバに報知する。これに応答して、ドライバは、車両101を停止し、計測装置10における一連のルーチンの処理が終了する。
≪管理装置の動作≫
次に、図8を参照して、管理装置20の動作について説明する。管理装置20は、例えば、管理装置20の操作者から試験(本実施形態では、惰行試験)の開始指示を受け付けることで動作を開始する。
図8に示すように、管理装置20の走行条件通知部21eは、記憶部22に予め記憶された制御プログラムPr20に従って、初回から最終回までの各走行条件を決定する。ここで、初回から最終回までの各走行条件とは、例えば、初回から最終回までの各試験開始速度や初回から最終回までの各試験終了速度等である。なお、最終回は、惰行試験における最も低速な速度での最後の走行である。
次に、管理装置20の走行条件通知部21eは、初回の走行条件を示す指示データR20を計測装置10に送信する(ステップS610)。ステップS610で送信される指示データR20は、初回の試験開始速度と初回の試験終了速度とを含む内容になっている。
ステップS610の後、管理装置20の走行条件通知部21eは、試験開始指示を計測装置10に送信する(ステップS615)。
ステップS615の後、管理装置20の気象データ取得部21aは、気象データD30の監視を開始する(ステップS620)。このとき、管理装置20の気象データ取得部21aは、気象観測装置30に、気象データD30の蓄積と管理装置20への気象データD30の送信とを指示する。これに応答して、気象観測装置30は、走行試験路110の周囲の風速や風向、気温、気圧等の気象データD30を風速・風向センサSNや、温度センサST、気圧センサSPで計測する。そして、気象観測装置30は、気象データD30を記憶部32に蓄積するとともに、気象データD30を時刻データと関連付けて管理装置20に送信する。管理装置20の気象データ取得部21aは、気象観測装置30から気象データD30を受信して、記憶部22への気象データD30の蓄積を開始する。気象データD30の監視は、ステップS675の判定で、全ての試験が終了した(“Yes”の場合)と判定されるまで、行われる。
ステップS620の後、管理装置20の走行データ取得部21bは、計測装置10から送信される通信確認メッセージの受信を待ち(ステップS625)、計測装置10との通信が確立したか否かを判定する(ステップS630)。通信の確立は、計測装置10から送信される通信確認メッセージを受信することによって行われる。
ステップS630の判定で、計測装置10との通信が確立していないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、ステップS625に戻る。
一方、ステップS630の判定で、計測装置10との通信が確立したと判定された場合(“Yes”の場合)に、管理装置20の走行データ取得部21bは、計測装置10から今回の1往復分の走行データD10を受信する(ステップS635)。管理装置20の走行データ取得部21bは、受信された今回の1往復分の走行データD10を記憶部22に記憶する。
ステップS635の後、管理装置20の有効性判定部21cは、記憶部22に蓄積された気象データD30に基づいて今回の走行データD10の有効性を判定する(ステップS645)。このとき、管理装置20の有効性判定部21cは、気象データD30に対応付けられた時刻データと今回の走行データD10に対応付けられた時刻データとをキーにして、走行データD10の計測時刻における気象データD30が所望の条件を満たすか否かを判定する。これにより、管理装置20の有効性判定部21cは、走行データD10の有効性を判定する。この判定は、往路で計測された走行データD10(往路側走行データ)と復路で計測された走行データD10(復路側走行データ)のそれぞれに対して行われる。
ここで、「所望の条件」とは、風速や、気温、気圧が所望の値であることや、風向が規定の方向であること等である。「所望の条件」は、例えば、日本国国土交通省によって告示された「道路運送車両の保安基準の細則を定める告示[2017.04.04] 別添42(軽・中量車排出ガスの計測方法)」(以下、「記載資料」と称する)によって規定されている。例えば、風については、直線部(往路側直線部111及び復路側直線部112)に平行な風速成分が平均5m/s以下で、かつ、直線部に垂直な風速成分が平均2m/s以下であることが、「所望の条件」となっている(前記記載資料の第14頁参照)。
なお、ステップS645の今回の走行データD10の有効性の判定について、前記した通り、車両101の速度が試験終了速度に減速する前に、車両101が直線部の終端に達する場合がある。この場合であっても、計測された減速時間のデータが有効な走行データD10として採用されることがある。この点については、後記する「試験終了速度に減速する前に車両が直線部の終端に達した場合の走行データの扱い」の章で説明する。
ステップS645で、往路と復路の双方において今回の走行データD10が所望の条件を満たしていると判定された場合に、管理装置20の有効性判定部21cは、今回の走行データD10を有効なデータとして記憶部22に記憶する。
一方、ステップS645で、往路と復路のいずれか一方又は双方において今回の走行データD10が所望の条件を満たしていないと判定された場合に、管理装置20の有効性判定部21cは、今回の走行データD10を無効なデータとして記憶部22に記憶する。つまり、管理装置20の有効性判定部21cは、今回の走行データD10を除外データとして取り扱う。
管理装置20の有効性判定部21cは、例えば、前記した図9に示す惰行試験画面IM20aをディスプレイ28に表示することにより、ステップS645の判定結果を管理装置20の操作者に報知する。
ステップS645の後、管理装置20の走行条件通知部21eは、今回の走行条件における有効な走行データD10の数が所望の本数分であるか否かを判定する(ステップS650)。
ステップS650の判定で、今回の走行条件における有効な走行データD10の数が所望の本数分でないと判定された場合(“No”の場合)に、管理装置20の走行条件通知部21eは、今回と同一の走行条件を次回の走行条件として計測装置10に通知する(ステップS670)。この場合に、管理装置20の走行条件通知部21eは、今回と同一の試験開始速度と試験終了速度とを指定する指示データR20を計測装置10に送信する。ステップS670の後、処理は、ステップS625に戻る。
一方、ステップS650の判定で、今回の走行条件における有効な走行データD10の数が所望の本数分であると判定された場合(“Yes”の場合)に、管理装置20のデータ群判定部21dは、今回の走行条件における複数の走行データD10のある基準値(重心)からの差分を算出する(ステップS655)。差分算出用の計算式については後記する。
ステップS655の後、管理装置20のデータ群判定部21dは、前記した差分が所望の範囲内であるか否かを判定する(ステップS660)。
ステップS660の判定で、前記した差分が所望の範囲内でない(所望の範囲から外れている)と判定された場合(“No”の場合)に、処理は、ステップS665に進む。この場合に、管理装置20のデータ群判定部21dは、一番外れている走行データD10(最も差分が大きい走行データD10)を無効として、今回の走行条件における有効な走行データD10から除外する(ステップS665)。ステップS665の後、ステップS670において、管理装置20の走行条件通知部21eは、今回と同一の走行条件を次回の走行条件として計測装置10に通知する。ステップS670の後、処理は、ステップS625に戻る。
一方、ステップS660の判定で、前記した差分が所望の範囲内であると判定された場合(“Yes”の場合)に、管理装置20の走行条件通知部21eは、初回から最終回までの全ての試験が終了したか否かを判定する(ステップS675)。
ステップS675の判定で、全ての試験が終了していないと判定された場合(“No”の場合)に、管理装置20の走行条件通知部21eは、今回とは異なる走行条件を次回の走行条件として計測装置10に通知する(ステップS680)。この場合に、管理装置20の走行条件通知部21eは、今回とは異なる試験開始速度と試験終了速度とを指定する指示データR20を計測装置10に送信する。ステップS680の後、処理は、ステップS625に戻る。
一方、ステップS675の判定で、全ての試験が終了したと判定された場合(“Yes”の場合)に、管理装置20の走行条件通知部21eは、全ての試験終了指示を送信する(ステップS685)。これにより、管理装置20における一連のルーチンの処理が終了する。
<差分算出用の計算式>
以下に、差分算出用の計算式について説明する。差分算出用の計算式は、例えば、前記記載資料(日本国国土交通省によって告示された「道路運送車両の保安基準の細則を定める告示[2017.04.04] 別添42(軽・中量車排出ガスの計測方法)」)の第14頁〜第16頁に記載されたものがある。
前記記載資料によれば、差分算出用の計算式として、以下の式(1)が記載されている。
ここで、「ρ」は、統計的精度を表している。また、「h」は、nの関数としての係数を表している。「σ」は、(減速時間(s)の)標準偏差を表している。「n」は、計測値ペアの数を表している。「t」は、各指定速度における平均惰行時間(s)を表している。
車両101の走行抵抗は、惰行試験で計測された減速時間に基づいて、算出することができる。算出された車両101の走行抵抗は、例えば、シャーシダイナモメータのローラ上に車両101を載置して、車両101を走行させることによって、車両101の走行テストを行うテスト装置に設定される。その際に、算出された車両101の走行抵抗を基に標準大気状態(気温293K(20℃)、大気圧100.13kPa、無風状態)における目標走行抵抗値が算出され、その算出された目標走行抵抗値に相当する負荷がシャーシダイナモメータに設定される。
<試験終了速度に減速する前に車両が直線部の終端に達した場合の走行データの扱い>
以下に、試験終了速度に減速する前に車両が直線部の終端に達した場合の走行データの扱いについて説明する。
例えば、90km/h〜60km/hの速度範囲を走行条件とし、この速度範囲における減速時間を計測対象として、惰行試験を行うものとする。この場合において、60km/hのレンジの計測が完了せずに、車両101が直線部の終端に達することがある。例えば、減速時間を3セット(6本)計測した場合に、1本だけ60km/hのレンジの計測が完了しなかったとする。この場合に、走行試験システム100は、その1本分を含む1セットの走行データを無効にして、1セット分の減速時間を追加して計測する。その際に、走行試験システム100は、90km/hから70km/hまでのレンジで計測された走行データを採用し、次の走行条件を60km/hのレンジから減速時間の計測を始めるようにしてもよい。つまり、走行試験システム100は、1セット分の減速時間を追加して計測する際に、90km/h〜60km/hの全てのレンジで減速時間を計測するのではなく、不足している60km/hのレンジのみで減速時間を計測するようにしてもよい。したがって、試験終了速度に減速する前に車両が直線部の終端に達した場合であっても、計測された減速時間のデータが有効な走行データD10として採用されることがある。
<走行試験システムの主な特徴>
(1)走行試験システム100は、車両101に搭載され、かつ、車両101の走行条件を報知するとともに、走行条件における走行データD10(速度データ)を計測する計測装置10と、車両101の外部に配置され、かつ、気象データD30を取得する管理装置20と、を備えている。管理装置20は、無線通信部26と、走行データ取得部21bと、有効性判定部21cと、を有する構成になっている。無線通信部26は、走行試験路110の一部を無線通信範囲113とする。走行データ取得部21bは、車両101が無線通信範囲113を走行する間に、計測装置10から走行データD10を取得する。有効性判定部21cは、車両101が無線通信範囲113を走行する間に、気象データD30に基づいて走行データD10の有効性を判定する。
このような走行試験システム100は、予備の走行データD10を計測するための車両101の無駄な走行を低減することや、試験時間を短縮すること、試験走行後の車両101の再走行を不要にすることができる。そのため、走行試験システム100は、車両101の走行試験を効率よく行うことができる。
(2)有効性判定部21cは、走行データD10の計測時刻における気象データD30が所望の条件を満たすか否かを判定することで、走行データD10の有効性を判定する構成になっている。
このような走行試験システム100は、気象データD30に基づく走行データD10の有効性の判定を管理装置20で自動的に行うことができる。そのため、走行試験システム100は、従来技術において走行データの有効性の判定を行っていた人物(管理棟に配置された人物)の負担を軽減することができる。
(3)管理装置20は、車両101が無線通信範囲113を走行する間に、所定の走行条件における複数の走行データD10のある基準値(重心)からの差分が所望の範囲内である場合に、今回の走行条件とは異なる走行条件を、次回の走行条件として計測装置10に通知する走行条件通知部21eを有する構成になっている。
このような走行試験システム100は、次回の走行条件を管理装置20で自動的に決定して計測装置10に通知することができるため、予備の走行データD10を計測するための車両101の無駄な走行を低減することや、試験時間を短縮することができる。
(4)走行条件通知部21eは、所定の走行条件における複数の走行データD10のある基準値(重心)からの差分が所望の範囲から外れていた場合に、最も差分が大きい走行データD10を無効として、所定の走行条件における有効な走行データD10から除外し、今回の走行条件と同一の走行条件を、次回の走行条件として計測装置10に通知する構成になっている。
このような走行試験システム100は、所定の走行条件における有効な走行データD10が不足する場合に、今回の走行条件と同一の走行条件を、次回の走行条件として計測装置10に通知することができるため、予備の走行データD10を計測するための車両101の無駄な走行を低減することや、試験時間を短縮すること、試験走行後の車両の再走行を不要にすることができる。
(5)計測装置10は、速度計測部11cと、無線通信部16と、報知部17と、を備えている。速度計測部11cは、車両101を試験開始速度以上に加速した後、車両101のギアをニュートラルにした状態で試験終了速度まで減速させる惰行試験において車両101の速度データ(走行データD10)を計測する。無線通信部16は、速度データ(走行データD10)の有効性を管理装置20に判定させるために、車両101の外部に配置された管理装置20側に速度データ(走行データD10)を無線通信で送信する。無線通信部16は、車両101が無線通信範囲113を走行する間に、他の装置(ここでは、管理装置20)に速度データ(走行データD10)を送信するとともに、他の装置(ここでは、管理装置20)から次回の走行条件を受信して、報知部17に次回の走行条件を報知させる構成になっている。
このような計測装置10は、予備の走行データD10を計測するための車両101の無駄な走行を低減することや、試験時間を短縮すること、試験走行後の車両101の再走行を不要にすることができる。そのため、計測装置10は、車両101の走行試験を効率よく行うことができる。
(6)計測装置10の報知部17は、車両101の速度が試験開始速度を超えときに、試験開始速度超過の報知を行い、その後に、車両101の速度が減速して試験終了速度になったときに、試験終了の報知を行う構成になっている。
このような計測装置10は、好適な惰行試験が行えるように、ドライバに指示することができる。
(7)計測装置10の報知部17は、車両101が試験路の終端(往路側直線部111の終端と復路側直線部112の終端)に達したときにも、試験終了の報知を行う構成になっている。
このような計測装置10は、試験終了の報知(本報知)を行うことができる。
以上の通り、本実施形態に係る走行試験システム100によれば、車両101の走行試験を効率よく行うことができる。
[第2実施形態]
第2実施形態は、車両101が往路側直線部111と復路側直線部112で真っ直ぐに走行しているか否かを判定する機能を有する走行試験システム100Aを提供する。
以下、図10及び図11を参照して、第2実施形態に係る走行試験システム100Aの構成について説明する。図10は、第2実施形態に係る走行試験システム100Aの構成とデータの流れを示す説明図である。図11は、第2実施形態で用いる車両101の構成を示す概略図である。
図10に示すように、本実施形態に係る走行試験システム100Aは、第1実施形態に係る走行試験システム100(図2参照)と同様の部位を備え、さらに、カメラ102を備えている点、及び、計測装置10の代わりに、計測装置10Aを備えている点で相違している。
カメラ102は、走行試験路110の路面を撮影する撮像装置である。
計測装置10Aは、計測装置10と比較すると、撮像データD102に基づいて車両101の走行状況(惰行試験時においてカメラ102が走行ライン103(図14A参照)の上を通るように、車両101が走行しているか否かの状況)を特定する機能を有する点で相違している。
なお、管理装置20と気象観測装置30は、第1実施形態と同じ構成になっている。
図11に示すように、カメラ102は、車両101の中央かつ直下の走行試験路110の路面を撮影するように、撮影方向を下向きにして、車両101に取り付けられている。図11に示す例では、カメラ102は、車両101の略中央を前後方向に延びるように通る仮想的な線の上の位置に取り付けられている。ただし、カメラ102は、ドライバ席を基準にして、ドライバ席の略中央を前後方向に延びるように通る仮想的な線の上の位置に取り付けられるようしてもよい。車両101は、惰行試験時においてカメラ102が走行ライン103(図14A参照)の上を通るように、走行する。
図14Aは、カメラ102によって撮影された走行ライン103の動画像である撮像データD102から抽出された1フレームの原画像D102aを示している。走行ライン103は、惰行試験において車両101が走行するルートに沿って、所定幅で、走行試験路110の路面に形成されている。
図10に示すように、カメラ102は、撮像データD102を計測装置10Aに順次出力する。計測装置10Aは、カメラ102から出力された撮像データD102に対して、計時部11aによって計時された時刻データを対応付けて、蓄積撮像データとして記憶部12に蓄積する。撮像データD102に対応付けられた時刻データは、撮影時刻を表している。
計測装置10Aは、管理装置20との通信が確立する前に、蓄積撮像データの中から、走行データD10に対応する分の撮像データD102を抽出する。走行データD10に対応する分の撮像データD102は、ステップS125とステップS130とで試験開始速度から試験終了速度に車両101が減速するまでの間に撮影された往路側撮像データと復路側撮像データとの双方である。往路側撮像データと復路側撮像データは、前記した往路側走行データと復路測走行データと同じ試験開始時刻から試験終了時刻までのデータになっている。計測装置10Aは、走行データD10の送信時に、走行データD10に対応する分の撮像データD102を抽出すると、撮像データD102に基づいて車両101の走行状況を特定する。なお、「車両101の走行状況」の特定とは、カメラ102が走行ライン103(図14A参照)の上を通るように、車両101が走行しているか否かの状況を特定する処理を意味している。
計測装置10Aの他の動作は、第1実施形態の計測装置10の動作と同じである。
<計測装置の構成>
以下、図12を参照して、計測装置10Aの構成について説明する。図12は、計測装置10Aの構成を示すブロック図である。
図12に示すように、本実施形態に係る計測装置10Aは、第1実施形態の計測装置10(図3参照)と同様の部位を備え、さらに、カメラ102と接続されている点、制御部11に撮像データ取得部11fと画像処理部11gを有している点、及び、記憶部12に撮像データD102を記憶する点で相違している。
本実施形態において、計測装置10Aの撮像データ取得部11fは、カメラ102から撮像データD102を取得して、計時部11aによって計時された時刻データを撮像データD102に対応付けて蓄積撮像データとして記憶部12に蓄積する。また、計測装置10Aの画像処理部11gは、記憶部12に記憶された今回の1往復分の撮像データD102(蓄積撮像データ)に対して画像処理を行って車両101の走行時のずれ量を算出する。そして、画像処理部11gは、算出された車両101の走行時のずれ量から車両101の走行状況を特定する。
≪計測装置の動作≫
以下、図13を参照して、本実施形態に係る計測装置10Aの動作について説明する。図13は、計測装置10Aの動作を示すフローチャートである。
図13に示すように、本実施形態に係る計測装置10Aの動作は、第1実施形態の計測装置10の動作(図6参照)と比較すると、ステップS130とステップS135との間で、ステップS132の処理を行う点で相違している。
ステップS132では、例えば、図14Aから図14Cに示すように、計測装置10Aの画像処理部11gが撮像データD102を処理する。図14Aから図14Cは、それぞれ、撮像データD102に基づく走行データD10の有効性判定の説明図である。図14Aは、撮像データD102から抽出された1フレームの原画像D102aを示している。図14Bは、原画像D102aを2値化処理した2値化画像D102bを示している。図14Cは、2値化画像D102bからノイズデータを除去したノイズ除去画像D102cを示している。
図14Aに示すように、走行試験路110の路面には、所定幅の走行ライン103が形成されている。図14Aに示す例では、走行試験路110の路面は黒色になっており、走行ライン103は白色になっている。
図14Bに示すように、計測装置10Aの画像処理部11gは、図14Aの原画像D102aを2値化処理することによって、白と黒との濃淡差が強調された2値化画像D102bを取得する。
図14Cに示すように、計測装置10Aの画像処理部11gは、図14Bの2値化画像D102bからノイズデータを除去することによって、走行ライン103と走行試験路110の路面との境界が明確化されたノイズ除去画像D102cを取得する。
計測装置10Aの画像処理部11gは、ノイズ除去画像D102cを取得すると、画像のエッジを検出する。例えば、画像処理部11gは、黒色から白色に変化する「左側エッジのピクセル座標(L1)」と白色から黒色に変化する「右側エッジのピクセル座標(L2)」とをノイズ除去画像D102cの左端から検索する。そして、画像処理部11gは、全行について、「左側エッジのピクセル座標」と「右側エッジのピクセル座標」との平均値((L1+L2)/2)を算出する。算出された平均値((L1+L2)/2)は、惰行試験時における車両101の実際の走行位置を表している。
ここで、事前に、走行ライン103の中心位置のピクセル座標(C1)が計測装置10Aに設定されているものとする。走行ライン103の中心位置のピクセル座標(C1)は、走行ライン103の中心位置の上にカメラ102を配置した状態で撮影された撮像データにおける左側エッジと右側エッジとの中間位置の座標である。
走行ライン103の中心位置の上をカメラ102が通るように車両101が走行している場合に、前記した「左側エッジのピクセル座標」と「右側エッジのピクセル座標」との平均値((L1+L2)/2)は、走行ライン103の中心位置のピクセル座標(C1)と同じになる。しかしながら、車両101がズレて走行している場合に、前記した「左側エッジのピクセル座標」と「右側エッジのピクセル座標」との平均値((L1+L2)/2)は、走行ライン103の中心位置のピクセル座標(C1)から変動する。つまり、車両101がズレて走行している場合に、前記した「左側エッジのピクセル座標」と「右側エッジのピクセル座標」との平均値((L1+L2)/2)と走行ライン103の中心位置のピクセル座標(C1)の差分が車両101の走行のズレ量となる。
ここで、車両101の走行のズレ量を「z」とすると、車両101の走行のズレ量zは、以下の式(2)で表すことができる。
また、ここで、車両101の走行のズレ量zに対する許容値を「T」とする。車両101の走行のズレ量zが許容値T以下の場合(すなわち、「z≦T」の場合)に、計測装置10Aの画像処理部11gは、走行データD10が有効であると判定する。この場合に、計測装置10Aの通信制御部11dは、撮像データD102に基づく有効性判定結果が有効であることを示すデータを走行データD10に付加して、管理装置20に送信する。一方、車両101の走行のズレ量zが許容値Tより大きい場合(すなわち、「z>T」の場合)に、計測装置10Aの画像処理部11gは、走行データD10が無効であると判定する。この場合に、計測装置10Aの通信制御部11dは、撮像データD102に基づく有効性判定結果が無効であることを示すデータを走行データD10に付加して、管理装置20に送信する。
このような計測装置10Aは、車両101が真っ直ぐに走行せずに走行ライン103の上から許容値Tを超えてズレて走行してしまった場合に、ステップS132で有効性判定部21cがそれを検知する。そして、計測装置10Aは、その回の走行データD10を無効なデータとして管理装置20に送信することにより、管理装置20で自動的に除外させることができる。
以上の通り、本実施形態に係る走行試験システム100Aによれば、第1実施形態に係る走行試験システム100と同様に、車両101の走行試験を効率よく行うことができる。
しかも、本実施形態に係る走行試験システム100Aによれば、車両101が真っ直ぐに走行せずに走行ライン103の上から許容値Tを超えてズレて走行してしまった場合に、その回の走行データD10を無効なデータとして自動的に除外することができる。そのため、第1実施形態に係る走行試験システム100よりもさらに車両101の走行試験を効率よく行うことができる。
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、ある構成要素に他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に変更したりすることができる。また、本発明は、一部の構成要素を削除することもできる。
また、例えば、前記した第2実施形態では、計測装置10Aに設けられた画像処理部11gが、撮像データD102の画像処理を行って車両101の走行時のずれ量を算出して、算出された車両101の走行時のずれ量から車両101の走行状況を特定している。しかしながら、車両101の走行状況の特定は、管理装置20で行うようにしてもよい。このような構成は、計測装置10Aでなく管理装置20に画像処理部11gを設けて、計測装置10Aから管理装置20に撮像データD102を送信することで実現できる。
また、例えば、図15に示す計測装置10Bのように、走行データD10が有効であるか否かの判定処理や、走行データD10の差分が所望の範囲内であるか否かの判定処理、次回の走行条件の決定処理は、車両101側で行うようにしてもよい。図15は、変形例に係る計測装置10Bの構成を示すブロック図である。
図15に示す例では、変形例に係る計測装置10Bは、第2実施形態に係る計測装置10A(図12参照)と比較すると、制御部11に気象データ取得部11hと有効性判定部11iとデータ群判定部11jと走行条件決定部11kとを有する点で相違している。
気象データ取得部11hは、管理装置20から気象データD30を取得する機能手段である。
有効性判定部11iは、有効性判定部21c(図4参照)と同様に、気象データD30に基づいて走行データD10の有効性を判定する機能手段である。
データ群判定部11jは、データ群判定部21d(図4参照)と同様に、複数の走行データD10のある基準値(重心)からの差分を算出し、差分が所望の範囲内であるか否かを判定する機能手段である。
走行条件決定部11kは、走行条件通知部21e(図4参照)と同様に、次回の走行条件を決定する機能手段である。走行条件決定部11kは、走行条件通知部21eと同様に、惰行試験の初回から最終回までの走行条件を決定する。車両101は、決定された初回から最終回までの走行条件の各速度範囲で繰り返し走行する。その際に、走行条件決定部11kは、今回の走行条件で取得された複数の走行データD10の重心からの差分が所望の範囲内である場合に、今回の走行条件とは異なる走行条件を、次回の走行条件として決定する。なお、走行条件決定部11kは、走行条件通知部21eと異なり、決定した次回の走行条件を他の装置に送信する機能は有していない。
変形例に係る計測装置10Bは、例えば、図16A及び図16Bに示すフローに沿って動作する。図16A及び図16Bは、計測装置10Bの動作を示すフローチャートである。
図16A及び図16Bに示す例では、変形例に係る計測装置10Bの動作は、第2実施形態に係る計測装置10Aの動作(図13参照)と比較すると、以下の点で相違している。
(1)ステップS110とステップS115の処理の代わりに、図16Aに示すステップS110aとステップS115aの処理を行う点。
(2)ステップS145の処理が削除されている点。
(3)ステップS140の後に、ステップS150aの処理を行い、その後に図16Bに示すステップS645aからステップS687の処理を行う点。
前記した図16Aに示すステップS110aにおいて、走行条件決定部11kは、記憶部12に予め記憶された制御プログラムPr10に従って、惰行試験の初回から最終回までの走行条件を決定する。
ステップS110aの後、ステップS115aにおいて、報知制御部11eは、報知部17を駆動する。これに応答して、報知部17は、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させるとともに、ステップS110aで決定された惰行試験の初回から最終回までの走行条件のうち、初回の走行条件をディスプレイ17bに表示する。
前記した図16Bに示すステップS645aからステップS687の処理のうち、ステップS682,S687以外の処理は、管理装置20の図8に示すステップS645からステップS680の処理に類似した処理である。
前記したステップS150a(図16A参照)において、車両101が無線通信範囲113(図1参照)を走行する間に、気象データ取得部11hは、管理装置20から気象データD30を取得して記憶部12に蓄積する。このとき取得される気象データD30には、気象観測装置30の計時部31aによって計時された時刻データが対応付けられている。
図16Bに示すように、ステップS150aの後、有効性判定部11iは、記憶部12に蓄積された気象データD30に基づいて往路と復路の双方において今回の走行データD10の有効性を判定する(ステップS645a)。
ステップS645aで、往路と復路の双方において今回の走行データD10が所望の条件を満たしていると判定された場合に、有効性判定部11iは、今回の走行データD10を有効なデータとして記憶部12に記憶する。
一方、ステップS645aで、往路と復路のいずれか一方又は双方において今回の走行データD10が所望の条件を満たしていないと判定された場合に、有効性判定部11iは、今回の走行データD10を無効なデータとして記憶部12に記憶する。つまり、有効性判定部11iは、今回の走行データD10を除外データとして取り扱う。
ステップS645aの後、走行条件決定部11kは、今回の走行条件における有効な走行データD10の数が所望の本数分であるか否かを判定する(ステップS650a)。
ステップS650aの判定で、今回の走行条件における有効な走行データD10の数が所望の本数分でないと判定された場合(“No”の場合)に、走行条件決定部11kは、今回と同一の走行条件を次回の走行条件として決定する(ステップS670a)。この場合に、ディスプレイ17bには、今回と同じ走行条件が表示され続ける。ステップS670aの後、処理は、ステップS125(図16A参照)に戻る。
一方、ステップS650aの判定で、今回の走行条件における有効な走行データD10の数が所望の本数分であると判定された場合(“Yes”の場合)に、データ群判定部11jは、今回の走行条件における複数の走行データD10のある基準値(重心)からの差分を算出する(ステップS655a)。
ステップS655aの後、データ群判定部11jは、前記した差分が所望の範囲内であるか否かを判定する(ステップS660a)。
ステップS660aの判定で、前記した差分が所望の範囲内でない(所望の範囲から外れている)と判定された場合(“No”の場合)に、処理は、ステップS665aに進む。この場合に、データ群判定部11jは、一番外れている走行データD10(最も差分が大きい走行データD10)を無効として、今回の走行条件における有効な走行データD10から除外する(ステップS665a)。ステップS665aの後、ステップS670aにおいて、走行条件決定部11kは、今回と同一の走行条件を次回の走行条件として決定する。ステップS670aの後、処理は、ステップS125(図16A参照)に戻る。
一方、ステップS660aの判定で、前記した差分が所望の範囲内であると判定された場合(“Yes”の場合)に、走行条件決定部11kは、初回から最終回までの全ての試験が終了したか否かを判定する(ステップS675a)。
ステップS675aの判定で、全ての試験が終了していないと判定された場合(“No”の場合)に、走行条件決定部11kは、今回とは異なる走行条件を次回の走行条件として決定する(ステップS680a)。この場合に、報知制御部11eは、報知部17を駆動する。これに応答して、報知部17は、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させるとともに、ディスプレイ17bによる惰行試験の走行条件の表示を次回の走行条件に更新する(ステップS682)。ステップS682aの後、処理は、ステップS125(図16A参照)に戻る。
一方、ステップS675aの判定で、全ての試験が終了したと判定された場合(“Yes”の場合)に、走行条件決定部11kは、全ての試験終了を決定し、報知制御部11eは、報知部17を駆動する。これに応答して、報知部17は、スピーカ17aによりアラーム音を鳴動させるとともに、全ての試験の終了をディスプレイ17bに表示する(ステップS687)。これにより、計測装置10Bは、試験終了をドライバに報知する。これに応答して、ドライバは、車両101を停止し、計測装置10Bにおける一連のルーチンの処理が終了する。
このように、計測装置10Bに各機能手段を実現させることでも、車両101の走行試験を効率よく行うことができる。