JP2019167793A - 調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法 - Google Patents

調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019167793A
JP2019167793A JP2018058600A JP2018058600A JP2019167793A JP 2019167793 A JP2019167793 A JP 2019167793A JP 2018058600 A JP2018058600 A JP 2018058600A JP 2018058600 A JP2018058600 A JP 2018058600A JP 2019167793 A JP2019167793 A JP 2019167793A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sheet
sound
door
sound wave
articulation
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018058600A
Other languages
English (en)
Inventor
崇史 大隈
Takashi Okuma
崇史 大隈
二郎 濱田
Jiro Hamada
二郎 濱田
薫 山村
Kaoru Yamamura
薫 山村
一壽 藤本
Kazuhisa Fujimoto
一壽 藤本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Okuma Corp
Original Assignee
Okuma Corp
Okuma Machinery Works Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Okuma Corp, Okuma Machinery Works Ltd filed Critical Okuma Corp
Priority to JP2018058600A priority Critical patent/JP2019167793A/ja
Publication of JP2019167793A publication Critical patent/JP2019167793A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】設置された家具の扉等に調音機能を持たせることで、自然な見た目でありながら、室内空間の調音をすることができる調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法を提供する。【解決手段】調音扉1は、音波が透過可能な音波透過領域が形成された扉本体部2と、表裏を透過する音波を散乱させる第1シート31、および、第1シート31と所要間隔を空けて対向配置され、表裏を透過する音波を散乱させる第2シート32を有し、第1シート31および第2シート32を音波透過領域の全部または一部を塞ぐようにして扉本体部2に取り付けた構造である、調音部3とを備える。【選択図】図2

Description

本発明は、調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法に関する。更に詳しくは、設置された家具の扉等に調音(室内空間において音響を調整することをいう。以下同じ)機能を持たせることで、自然な見た目でありながら、室内空間の調音をすることができるものに関する。
近年、建設される住宅等において、室内の気密性の向上や壁材の変化による室内の音響環境が変化し、室内で音が聞き取りづらい障害(以下「音響障害」という)が生じている。音響障害としては、定在波、反響音の干渉(音の響き過ぎ)、フラッターエコー、ブーミング等が挙げられ、定在波等によってテレビや電話の音が聞き取りづらいか、聞き取れない程になることもある。
このような音響障害の対策として、下記特許文献1に記載された吸音パネルが提案されている。図9に示すこの吸音パネル9は、レゾネータ部材91の内部に中空部92を設けると共に、レゾネータ部材91の音源側の表面に、中空部92と連通する開口93を設けてなるレゾネータ式吸音パネルであり、レゾネータ部材91の音源側表面の少なくとも前述の開口93間に、音源方向に向けて突出する断面三角形状の凸部94を、前述の開口93の連設方向と平行に設けてなる構成である。この吸音パネル9によれば、室内で生じた反響音を吸音し、前述の音響障害を抑制することができる。
特開平11−13164号公報
ところで、吸音パネル9のようなこの種の吸音パネルは、室内の壁面に設置されるものであるが、通常の生活空間に設置した場合、壁面から突き出た(壁面に凹凸が生じる)態様になって、見た目があまり良くない。
また、吸音パネル9は、音響障害対策として充分な能力を有するが、一般住宅のリビング等の生活空間においては、音楽スタジオレベルの吸音能力は必ずしも要求されていない。このため、本発明者は、会話や電話の聞き取り、テレビ視聴等に問題が無い程度の環境を整えることができる簡易な器具または方法の潜在需要があるものと考えた。
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、設置された家具の扉等に調音機能を持たせることで、自然な見た目でありながら、室内空間の調音をすることができる調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために本発明の調音扉は、音波が透過可能な音波透過領域が形成された扉本体部と、表裏を透過する音波を散乱させる第1シート、および、第1シートと所要間隔を空けて対向配置され、表裏を透過する音波を散乱させる第2シートを有し、第1シートおよび第2シートを音波透過領域の全部または一部を塞ぐようにして扉本体部に取り付けた構造である、調音部とを備える。
ここで、本発明の調音扉は、扉本体部が調音部の被取り付け材となり、調音部の取り付けによって調音扉を構成することができる。そして、扉本体部は、形成された音波透過領域によって、入射する音波を透過させることができる。
なお、本明細書中でいう用語「調音」は、空間内において吸音が適切に行われることで、音の響きや反響を緩和する等して、音響を調える意味で使用している。また、本明細書中でいう用語「塞ぐ」は、「覆う」とも換言でき、音波透過領域について、音波を遮断しない(音波が通過できる)態様で塞ぐ(覆う)ことを意味している。
本明細書中でいう用語「音波透過領域」は、音波が透過ないし通過可能な領域であればよく、開口部のような実体が存在しない領域、および、開口部の内側領域に音波が透過可能な格子状のフレーム(実体)等を設けた領域の、いずれも含む意味で使用している。具体的な「音波透過領域」の態様としては、例えば、扉本体部が板状であるときは、板厚方向へ貫通して形成された開口部が挙げられ、また、扉本体部が枠状であるときは、枠で囲まれた内側領域、あるいは、枠が構成材の一部を成す想像上の扉の外形線の内側領域等が挙げられる。
そして、調音部は、第1シートによって、第1シートの表裏を透過する音波を散乱させることができる。詳しくは、音源から調音扉に到達した音波は、第1シートの表から入射し、入射した音波は第1シートによって散乱する。つまり、第1シートは、第1シートの裏に透過した音波(以下「透過音波」という)を、透過前と比較して散乱した状態にすることができる。なお、「第1シート」および「第2シート」の説明において、用語「表」は音波が入射する側のシート面を意味し、用語「裏」は入射した音波が透過する側のシート面を意味する。
更に、調音部は、第1シートと第2シートが所要間隔を空けて対向配置された構造であり、第1シートと第2シートとの間には空隙が生じている。この空隙が存在することにより、第1シートにより散乱した音波は、第2シートに至るまで、進行が阻害されることなく、空隙内を通る。
更にまた、調音部は、第2シートによって、第2シートの表裏を透過する音波を散乱させることができる。詳しくは、第1シートからの透過音波は、第2シートの表から入射し、入射した音波は第2シートによって散乱する。つまり、第2シートは、第2シートの透過音波を、透過前と比較して更に散乱した状態にすることができる。
このように、調音部が有する第1シートと第2シートは、それぞれのシートで透過する音波を散乱させ、この結果、透過音波を、各シートに到達する前の音波よりも減衰(散乱減衰)させること、即ち、吸音することができる。第1シートにより散乱減衰した透過音波は、第2シートにより更に散乱減衰するので、つまり、第1シートの表に到達前の音波よりも、第2シートの裏に透過した音波は散乱減衰することになる。即ち、調音部は、第1シートと第2シートとが協働する構造となっている。
更にまた、調音部は、構成材としてシートを採用していることにより、板材等で構成した場合と比較して、調音扉全体の軽量化に寄与することができる。なお、第1シートと第2シートは、別々の2枚のシートで構成してもよいし、1枚の長尺シートをループ状とするか、あるいは折り曲げて、対向配置された各面が構成されるようにしてもよい。また、例えば、第1シートと第2シートの間、あるいは、第1シートまたは第2シートの外側に、別の第3シート等を設けることもできる。
本発明の調音扉は、例えば、室内に設けられた収納スペースや収納家具の扉口に取り付けられた場合、室内と収納スペース等を仕切って、内部を見えなくすることができる。また、仮に、音波が調音扉の後背側(例えば、調音扉を取り付けた収納スペース内等)で反射して再度調音部を透過したときは、更に散乱減衰が進んで、例えば一般の人の聴覚では認識できないほどの音にすることができる。
このように、本発明の調音扉によれば、取り付けた家具等に調音機能を付与することができ、室内空間の調音をすることができる。また、本発明の調音扉によれば、従来の壁面等に設けられていた吸音パネル等と比較して、自然な見た目であるため、利用者に違和感を与えない室内空間にすることができる。
また、第1シートおよび第2シートが、柔軟な繊維シートで構成されている場合は、繊維および繊維の間の隙間を通ることによって、表裏を透過する音波を散乱させることができる。
詳しくは、繊維シートは、隙間を通じて、表から入射した音波を透過させる。そして、繊維部分に当たった音波は、繊維の柔軟性によって振動エネルギーが吸収され、反射量が低減する。
このように、柔軟な繊維シートで構成された第1シートおよび第2シートによれば、透過前と比較して、通過音波が散乱減衰すると共に、吸音減衰するので、室内空間における調音効果を高めることができる。
そして、柔軟なシートであることにより、扉本体部へ取り付けの際に、例えば、枠体に回し掛けて取り付ける等の方法を選択することができる。加えて、一般的な材料であるため調達が容易で、製造コストを比較的安価に抑えることができる。なお、「繊維シート」は、編布、織布および不織布のいずれも含む意味で使用している。
また、第1シートの音波の透過率と、第2シートの音波の透過率とが、相違するように設定されている場合は、音波の透過率に基づく少なくとも2つの帯域の散乱減衰によって、室内空間の調音効果を更に高めることができる。
ところで、一般的に、各シートの音波の透過率が異なるときは、透過音波の周波数も異なる場合が多く、この知見を適用し、例えば、音響障害を起こす周波数帯域の音波を減衰させる音波透過率の繊維シートX、この繊維シートXが減衰させる周波数帯域と異なる周波数帯域で、音響障害を起こす周波数帯域の音波を減衰させる音波透過率の繊維シートYを適宜組み合わせることによって、室内空間の調音効果を更に高めることができる。
なお、例えば、前述したように、第1シートと第2シート以外に、別のシート等を取り付ける場合は、別のシート等の音波の透過率は、第1シートまたは第2シートのいずれとも相違してもよいし、第1シートまたは第2シートのいずれかと同じであってもよい。
上記の目的を達成するために本発明の室内収納部は、室内の壁面の一部に開口部が形成され、開口部を介して室内と接続した空間部と、開口部を閉じ、音波が透過可能な音波透過領域が形成された扉本体部と、表裏を透過する音波を散乱させる第1シート、および、第1シートと所要間隔を空けて対向配置され、表裏を透過する音波を散乱させる第2シートを含み、第1シートおよび第2シートを音波透過領域の全部または一部を塞ぐようにして扉本体部に取り付けた構造である調音部を有する調音扉とを備える。
ここで、本発明の室内収納部は、壁と一体化させる等して固定された、いわゆる造作家具であり、空間部の開口部が調音扉で閉じられていることで、室内収納部が設けられた室内空間の調音をすることができる。なお、室内収納部の例としては、造り付けの戸棚、クローゼットあるいは納戸等が挙げられる。
そして、扉本体部は、調音部と共に調音扉を構成し、この調音扉を空間部の開口部(扉口ともいう)を塞ぐように開口縁部に取り付けることによって、室内と空間部が仕切られ、内部を見えなくすることができる。また、扉本体部は、形成された音波透過領域によって、入射する音波を透過させることができる。
そして、調音部は、第1シートによって、第1シートの表裏を透過する音波を散乱させることができる。詳しくは、音源から調音扉に到達した音波は、第1シートの表から入射し、入射した音波は第1シートによって散乱する。つまり、第1シートは、透過音波を、透過前と比較して散乱した状態にすることができる。
更に、調音部は、第1シートと第2シートが所要間隔を空けて対向配置された構造であり、第1シートと第2シートとの間には空隙が生じている。この空隙が存在することにより、第1シートにより散乱した音波は、第2シートに至るまで、進行が阻害されることなく、空隙内を通る。
更にまた、調音部は、第2シートによって、第2シートの表裏を透過する音波を散乱させることができる。詳しくは、第1シートからの透過音波は、第2シートの表から入射し、入射した音波は第2シートによって散乱する。つまり、第2シートは、第2シートの透過音波を、透過前と比較して更に散乱した状態にすることができる。
このように、調音部が有する第1シートと第2シートは、それぞれのシートで透過する音波を散乱させ、この結果、透過音波を、各シートに到達する前の音波よりも減衰(散乱減衰)させること、即ち、吸音することができる。第1シートにより散乱減衰した透過音波は、第2シートにより更に散乱減衰するので、つまり、第1シートの表に到達前の音波よりも、第2シートの裏に透過した音波は散乱減衰することになる。即ち、調音部は、第1シートと第2シートとが協働する構造となっている。また、調音部は、構成材としてシートを採用していることにより、板材等で構成した場合と比較して、調音扉全体の軽量化に寄与することができる。
そして、調音部を透過して調音扉の後背側に至った透過音波は、調音扉への到達前と比較して散乱減衰が進んでおり、仮に、音波が調音扉の後背側である空間部内で反射して再度調音部を透過したとしても、更に散乱減衰が進むため、例えば一般の人の聴覚では認識できないほどの音になる。
なお、前述の調音扉は、調音扉の後背方向のすぐ近くに壁面がある場合よりも、調音扉の後背方向にある程度の奥行きを持った空間がある方が、音波の反射の影響がないか、あるいは小さいので、調音部を透過した後の音波の散乱減衰が進む。そして、前述の空間部は、調音扉の後背側に位置する閉じられた空間であるため、いわゆる吸音パネルの空気室等と同等の作用効果を奏し、共鳴式の消音構造と同等の消音効果も期待できる。つまり、本発明の室内収納部は、調音扉と空間部とが協働して、設けられた室内に優れた調音効果をもたらすことができる。
加えて、前述の室内収納部内に、例えば衣服等の、音波を減衰させるものを収納している場合は、調音扉を透過した音波がこれら収納物によっても減衰し、設けられた室内に更に優れた調音効果をもたらすことができる。
このように、本発明の室内収納部によれば、扉部分に調音機能が付与されていることによって、室内空間の調音をすることができる。また、本発明の室内収納部に取り付けられた調音扉は、従来の壁面等に設けられていた吸音パネル等と比較して、自然な見た目であるため、利用者に違和感を与えない室内空間にすることができる。
上記の目的を達成するために本発明の収納家具は、開口部が形成された箱状の家具本体部と、開口部を閉じ、音波が透過可能な音波透過領域が形成された扉本体部と、表裏を透過する音波を散乱させる第1シート、および、第1シートと所要間隔を空けて対向配置され、表裏を透過する音波を散乱させる第2シートを含み、第1シートおよび第2シートを音波透過領域の全部または一部を塞ぐようにして扉本体部に取り付けた構造である調音部を有する調音扉とを備える。
ここで、本発明の収納家具は、家具本体の開口部が調音扉で閉じられていることで、自然な見た目のインテリアでありながら、設置された室内空間の調音をすることができる。なお、収納家具の例としては、サイドボード、リビングボード、ダイニングボード、ワードローブ、本棚、整理ダンス等の、主に移動可能なものが挙げられる。これらの収納家具は、前述の室内収納部と異なり据え付けではないので、室内空間に応じた自由なレイアウトや模様替え、室内環境に応じた設置数の増減を容易に行うことができる。
そして、前述の扉本体部は、調音部と共に調音扉を構成し、この調音扉を家具本体部の開口部(扉口ともいう)を塞ぐように開口縁部に取り付けることによって、室内と家具本体部が仕切られ、内部を見えなくすることができる。そして、扉本体部は、形成された音波透過領域によって、入射する音波を透過させることができる。
更に、調音部は、第1シートによって、第1シートの表裏を透過する音波を散乱させることができる。詳しくは、音源から調音扉に到達した音波は、第1シートの表から入射し、入射した音波は第1シートによって散乱する。つまり、第1シートは、透過音波を、透過前と比較して散乱した状態にすることができる。
更にまた、調音部は、第1シートと第2シートが所要間隔を空けて対向配置された構造であり、第1シートと第2シートとの間には空隙が生じている。この空隙が存在することにより、第1シートにより散乱した音波は、第2シートに至るまで、進行が阻害されることなく、空隙内を通る。
加えて、調音部は、第2シートによって、第2シートの表裏を透過する音波を散乱させることができる。詳しくは、第1シートからの透過音波は、第2シートの表から入射し、入射した音波は第2シートによって散乱する。つまり、第2シートは、第2シートの透過音波を、透過前と比較して更に散乱した状態にすることができる。
このように、調音部が有する第1シートと第2シートは、それぞれのシートで透過する音波を散乱させ、この結果、透過音波を、各シートに到達する前の音波よりも散乱減衰させること、即ち、吸音することができる。第1シートにより散乱減衰した透過音波は、第2シートにより更に散乱減衰するので、つまり、第1シートの表に到達前の音波よりも、第2シートの裏に透過した音波は散乱減衰することになる。即ち、調音部は、第1シートと第2シートとが協働する構造となっている。また、調音部は、構成材としてシートを採用していることにより、板材等で構成した場合と比較して、調音扉全体の軽量化に寄与することができる。
そして、調音部を透過して調音扉の後背側に至った透過音波は、調音扉への到達前と比較して散乱減衰が進んでおり、仮に、音波が調音扉の後背側である家具本体部内で反射して再度調音部を透過したとしても、更に散乱減衰が進むため、例えば一般の人の聴覚では認識できないほどの音になる。
なお、前述の調音扉は、調音扉の後背方向のすぐ近くに壁面がある場合よりも、調音扉の後背方向にある程度の奥行きを持った空間がある方が、音波の反射の影響がないか、あるいは小さいので、調音部を透過した後の音波の散乱減衰が進む。そして、前述の家具本体部は、調音扉の後背側に位置する閉じられた空間であるため、いわゆる吸音パネルの空気室等と同等の作用効果を奏し、共鳴式の消音構造と同等の消音効果も期待できる。つまり、本発明の収納家具は、調音扉と家具本体部とが協働して、設けられた室内に優れた調音効果をもたらすことができる。
加えて、前述の収納家具内に、例えば衣服等の、音波を減衰させるものを収納している場合は、調音扉を透過した音波がこれら収納物によっても減衰し、設けられた室内に更に優れた調音効果をもたらすことができる。
このように、本発明の収納家具によれば、扉部分に調音機能が付与されていることによって、室内空間の調音をすることができる。また、本発明の室内収納部に取り付けられた調音扉は、従来の壁面等に設けられていた吸音パネル等と比較して、自然な見た目であるため、利用者に違和感を与えない室内空間にすることができる。
上記の目的を達成するために本発明の調音部材は、表裏を透過する音波を散乱させる第1シート、および、第1シートと所要間隔を空けて対向配置され、表裏を透過する音波を散乱させる第2シートを有し、第1シートおよび第2シートを室内空間に設けられた構造物の開口部分の全部または一部を塞ぐように取り付け可能な構造である。
ここで、本発明の調音部材は、室内空間に設けられた構造物の開口部分に取り付けられた際に、自然な見た目でありながら、室内空間の調音をすることができる。
そして、調音部材は、第1シートによって、第1シートの表裏を透過する音波を散乱させることができる。詳しくは、音源から調音部材に到達した音波は、第1シートの表から入射し、入射した音波は第1シートによって散乱する。つまり、第1シートは、第1シートの透過音波を、透過前と比較して散乱した状態にすることができる。
更に、調音部材は、第1シートと第2シートが所要間隔を空けて対向配置された構造であり、第1シートと第2シートとの間には空隙が生じている。この空隙が存在することにより、第1シートにより散乱した音波は、第2シートに至るまで、進行が阻害されることなく、空隙内を通る。
更にまた、調音部材は、第2シートによって、第2シートの表裏を透過する音波を散乱させることができる。詳しくは、第1シートからの透過音波は、第2シートの表から入射し、入射した音波は第2シートによって散乱する。つまり、第2シートは、第2シートの透過音波を、透過前と比較して更に散乱した状態にすることができる。
このように、調音部材が有する第1シートと第2シートは、それぞれのシートで透過する音波を散乱させ、この結果、透過音波を、各シートに到達する前の音波よりも散乱減衰させること、即ち、吸音することができる第1シートにより散乱減衰した透過音波は、第2シートにより更に散乱減衰するので、つまり、第1シートの表に到達前の音波よりも、第2シートの裏に透過した音波は散乱減衰することになる。即ち、調音部材は、第1シートと第2シートとが協働する構造となっている。
なお、室内空間に設けられた構造物の開口部分の例としては、隣室との間あるいは間仕切りの壁に設けられた窓状の開口部、衝立などの仕切り材に設けられた開口部、柱と柱の間の壁面の凹んだ領域の開口部、柱と、柱が設けられた壁面に隣接する壁との間の凹んだ領域の開口部等が挙げられる。
このように、本発明の調音部材によれば、室内空間に設けられた構造物の開口部分に調音機能を付与することができ、室内空間の調音をすることができる。また、本発明の調音部材によれば、従来の壁面等に設けられていた吸音パネル等と比較して、自然な見た目であるため、利用者に違和感を与えない室内空間にすることができる。
上記の目的を達成するために本発明の室内空間の調音方法は、第1シート、および、第1シートと所要間隔を空けて対向配置された第2シートを有し、室内空間に設けられた構造物の開口部分の全部または一部を塞ぐように取り付けられた調音部材を使用し、第1シートが、表裏を透過する音波を散乱させる、第1ステップと、第2シートが、表裏を透過する音波を散乱させる、第2ステップとを備える。
ここで、音源から調音部材に到達した音波は、最初に第1シートに入射し、入射後に第1シートによって透過方向に散乱する。つまり、第1ステップを経ることによって、透過音波を、透過前と比較して散乱した状態にすることができる。
そして、第1シートにより散乱した音波が、第1シートと第2シートとの間に形成された空隙を透過する。このとき、第1シートにより散乱した音波は、第2シートに至るまで、進行が阻害されることなく、空隙内を通る。
更に、第1シートの透過音波は、第2シートに入射し、入射後に第2シートによって透過方向に散乱する。つまり、第2ステップを経ることによって、透過音波を、透過前と比較して更に散乱した状態にすることができる。
このように、本発明の室内空間の調音方法によれば、自然な見た目で配置された調音部材を使用して、室内空間の調音をすることができる。
本発明の調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法によれば、設置された家具の扉等に調音機能を持たせることで、自然な見た目でありながら、室内空間の調音をすることができる。
本発明の調音扉(第1実施形態)を示す正面図である。 図1に示す調音扉の構造を模式的に示し、一部拡大した縦方向断面図である。 本発明の調音扉の他の例(第2実施形態)を示す正面図である。 図3に示す調音扉の構造を模式的に示し、一部拡大した縦方向断面図である。 本発明の室内収納部(第3実施形態)を示しており、(a)は室内側である正面方向から見た斜視図、(b)は室内収納部の横断面方向の模式図、(c)は室内収納部の縦断面方向の模式図である。 本発明の収納家具(第4実施形態)を室内側である正面方向から見た斜視図である。 本発明の調音部材(第5実施形態)が適用された衝立を正面方向から見た斜視図である。 本発明の調音部を構成する繊維シートに関する試験データを示したグラフである。 特許文献1記載の吸音パネルを示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図1ないし図8を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。なお、以下の説明は、〔第1実施形態〕−〔第5実施形態〕の順序により行う。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。
〔第1実施形態〕
図1と図2を参照する。第1実施形態の調音扉1は、扉本体部2と調音部3により構成されている。
(扉本体部)
扉本体部2は、左右に配置された一対の縦枠21と、縦枠21の上下端に架け渡された一対の横枠22と、枠内に設けられた調音部2を掛止する一対の掛止部23を有している。各掛止部23は、縦枠21の上下端近傍に架け渡されており、縦枠21の長さ方向中間部方向に、横枠22と所定の間隔を空けて取り付けられている。
本実施形態において、縦枠21および横枠22は角材により形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、扉のサイズや全体に占める調音部の面積に応じて、板材等で形成してもよい。また、掛止部23は丸棒により形成されているが、これに限定するものではなく、例えば、端面形状が半円弧形の棒体や、角棒等であってもよい。
(調音部)
調音部3は、扉本体部2の枠内に設けられており、多数の通気部(図示省略)が形成された柔軟な繊維シートで形成されている。
調音部3は、長尺な繊維シートを各掛止部23に所定のテンションで緩まないように回し掛けて、正面側と背面側に、第1シート31と第2シート32が配置された態様となっており、各シートは扉本体2の厚み方向に所要の間隔で対向するように配置された構造である。そして、第1シート31と第2シート32の間には、掛止部23の直径と略同幅の空隙33が形成されている。以後の説明では、調音部3の表面(図1における正面側)を第1シート31として、調音部3の裏面を第2シート32として説明する。
本実施形態において、調音部3の構成材として繊維シートを採用しているが、これに限定するものではなく、例えば、多数の小孔からなる通気部が形成された合成樹脂製のシート等を採用することもできる。なお、シート部材として柔軟な繊維シートを採用したことにより、繊維自体が持つ柔軟性によって音波の振動を吸収し、前述の散乱減衰の作用に加え、吸収減衰の作用が相俟って、調音扉1の調音効果を更に高めている。
本実施形態において、調音部3の構成材は、通気量(cm/cm・S)が23以上116以下の繊維シートが好適に使用される。通気量が116を超える場合は、音波の通りが良くなり過ぎて(換言すると、素通し状態に近づいて)調音効果が低下する傾向があり、好ましくない。一方、通気量が23未満の場合は、音波の通りが良くないので(換言すると、抜けが悪くなって室内側へ反射する状態に近づくので)、この場合も調音効果が低下する傾向があり、好ましくない。
本実施形態において、調音部3は、長尺なシート部材を掛止部23に回し掛けて、第1シート31と第2シート32が形成された態様であるが、これに限定するものではなく、例えば、2枚のシート部材を掛止部の表裏両側に接着する態様で形成してもよい。
本実施形態において、第1シート31と第2シート32の間の距離は約30mmであるが、これに限定するものではなく、この距離は例えば20mm以上40mm以下であることが好ましい。20mm未満の場合、第1シートと第2シートの間の距離が近づきすぎて音波の散乱を促進する効果が弱まり、40mmを超える場合、音波の散乱を促進する効果は向上するが、扉本体部の厚みも増すため、扉としては適当なサイズではなくなる可能性があるためである。
(調音扉を用いた調音方法)
調音扉1の作用効果(即ち、調音方法)について説明する。
音源(例えば、テレビ等の音等、室内で生じたもの)から調音扉1に到達した音波は、最初に第1シート31の表から入射し、第1シート31の裏に透過する。この透過音波は、第1シート31によって、透過前と比較して散乱した状態となっている。つまり、第1シート31は、透過音波を、透過前と比較して散乱した状態にすることができる。加えて、第1シート31は、繊維部分に当たった音波が、繊維の柔軟性によって音響エネルギーが吸収され(換言すると、音波の振動が繊維の振動エネルギーに変換され、その結果、吸音され)、反射量が低減する。
第1シート31により散乱した音波は、空隙33を透過して第2シート32に至る。この空隙33の透過の際には、分散した音波の進行が邪魔されないため、更なる不規則方向への散乱が起きる。
空隙33を透過した音波は、第2シート32の表(空隙側)から入射し、第2シート31の裏に透過する。この透過音波は、第2シート32によって、透過前と比較して散乱した状態となっている。つまり、第2シート32も、透過音波を、透過前と比較して散乱した状態にすることができる。加えて、第2シート32も、繊維部分に当たった音波が、繊維の柔軟性によって音響エネルギーが吸収され、音源側へ音波が反射することを抑制する。
つまり、調音部3の第1シート31と第2シート32は、それぞれのシートで透過する音波を散乱させ、この結果、透過音波を、各シートに到達する前の音波よりも散乱減衰させること、即ち、吸音することができる。第1シート31により散乱減衰した透過音波は、第2シート32により更に散乱減衰するので、第1シート31の表に到達前の音波よりも、第2シート32の裏に透過した音波は散乱減衰することになる。即ち、調音部3は、第1シート31と第2シート32とが協働する構造となっている。
このように、調音扉1によれば、例えば、造り付けの家具、あるいは室内空間に置かれた家具の扉として使用した場合、この扉に調音機能を持たせることができ、これによって、室内空間の調音をすることができる。また、調音扉1によれば、従来の吸音パネル等と比較して、自然な見た目であるため、室内を見栄のする空間にすることができる。
〔第2実施形態〕
図3と図4を参照する。第2実施形態の調音扉1aは、扉本体部2aと複数の調音部3aにより構成されている。調音扉1aは、第1実施形態の調音扉1で1つだった調音部が、扉本体部2aの長手方向へ複数に分割配置された態様である。調音扉1で説明した部分との共通部分には同じ符号を付してその構造および作用の説明を省略し、相違する点のみを以下で説明する。
扉本体部2aは、左右に配置された一対の縦枠21と、縦枠21の上下端に架け渡された一対の横枠22と、枠内に設けられた各調音部3aを掛止する複数組(本実施形態では6組)の掛止部23a1、23a2を有している。
各掛止部23a1、23a2は、上下一対の棒体を各縦枠21の間に架け渡してなる。そして、上側に位置する掛止部23a1は、図4において扉本体部2aの背部側に配置され、下側に位置する掛止部23a2は、図4において扉本体部2aの前部側に配置されている。つまり、掛止部23a1、23a2は、掛着状態の調音部3aを、図4における縦枠21の長尺方向の中央線L1を挟んで、扉本体部2aの背部側から前部側へ下り傾斜するように掛止する。
なお、最上段に位置する組の掛止部23a1と、最下段に位置する組の掛止部23a2を除いて、上段組の掛止部23a2と下段組の掛止部23a1は、その軸心が横方向の水平軸線L2上に並ぶように配置されている(図4の一部拡大図参照)。
このような各掛止部23a1、23a2の配置構成により、各段の各調音部3aは、図3の正面視で、調音扉1aの長手方向(高さ方向)において、水平軸線L2上に生じる掛止部23a1と掛止部23a2の間の隙間が見えないように取り付けられる。これにより、少なくとも扉本体部2aの上方ないし正面の方向から入射する音波が、通気のために設けられた各調音部3aの間の隙間を素通りしない構成となっている。
また、各調音部3aは、調音扉1の調音部3と比べて、調音扉1aの長手方向に短いサイズであるため、調音扉1の製造時における調音部3の張設作業よりも弱いテンションで弛まないように取り付けることができるので、作業が容易であり、張設後に繊維シートが延びることを抑制することができる。そして、張設後の調音部3は、掛け回した繊維シートの長さが短いので、製造後の弛みが起きにくくなる。
〔第3実施形態〕
図5を参照する。図5に示す本発明の第3実施形態は、室内収納部4(クローゼット)である。室内収納部4は、室内側に向けて開口した空間部40と、この開口部分を閉じる調音扉1bとを備える。空間部40は、室内の壁面の一部に所定の奥行き(本実施形態では約60cm)を以て設けられ、洋服等の収納物Cを出し入れ可能に構成されている。
調音扉1bは、左右方向へ両開きで、かつ片側3枚構成の折り戸式の扉である。なお、折り戸を構成する扉は、調音部の段数を除いて前述の調音扉1aと同じ構造であるため、詳細な構造および作用の説明を省略する。
室内収納部4は、造作家具であり、空間部40の開口部分を塞ぐように調音扉1bが取り付けられた構造である。なお、調音扉1bは、室内の壁面と略面一に取り付けられており、すっきりとしていて邪魔にならないように構成されている。つまり、従来の吸音パネルのように壁面から室内へ張り出さないので、自然な見た目で、利用者に違和感を与えない室内空間となっている。
調音部3bを透過して扉の後背側に至った透過音波は、調音部3bへの到達前と比較して散乱減衰および吸収減衰が進んでおり、仮に、空間部40の内壁で反射した音波が再度調音部3bを透過したとしても、散乱減衰および吸収減衰が更に進み、室内では、一般の人の聴覚では認識できないほどの音に調音することができる。
このように、室内収納部4は、扉の後背方向にある程度の奥行きを持った空間を有する態様であるので、調音部3bを透過した後の音波の散乱減衰および吸収減衰が進み、調音機能が更に向上している。加えて、室内収納部4が備える空間部40は、いわゆる吸音パネルの空気室等と同等の作用効果を奏し、共鳴式の消音構造と同等の消音効果も期待できる。つまり、室内収納部4は、調音扉3bと空間部40とが協働して、設けられた室内に優れた調音効果をもたらすことができる。更に、室内収納部4内に音波を減衰させる収納物C(洋服等の繊維製品)が収納されているときは、調音扉1bを透過した音波が洋服等によっても減衰し、設けられた室内に更に優れた調音効果をもたらすことができる。
〔第4実施形態〕
図6を参照する。図6に示す本発明の第4実施形態は、収納家具5(ワードローブ)である。収納家具5は、収納物を出し入れ可能な開口部が形成された箱状の家具本体部50と、開口部に複数取り付けられた調音扉1cとを備える。調音扉1cは、左右方向へ両開きの扉である。なお、調音扉1cは、調音部の段数を除いて各々前述の調音扉1aと同じ構造であるため、詳細な構造および作用の説明を省略する。
収納家具5は、自然な見た目のインテリアでありながら、家具本体部50に取り付けられた調音扉1cによって、設置された室内空間の調音をすることができる。そして、収納家具5は、前述の室内収納部4と異なり造作家具(据え付け)ではないので、室内空間に応じた自由なレイアウトや模様替え、室内環境に応じた設置数の増減を容易に行うことができる。
調音部3cを透過して扉の後背側に至った透過音波は、調音部3cへの到達前と比較して散乱減衰および吸収減衰が進んでおり、家具本体部50の内壁で反射した音波が再度調音部3cを透過したとしても、散乱減衰および吸収減衰が更に進み、室内では、一般の人の聴覚では認識できないほどの音に調音される。
このように、収納家具5は、扉の後背方向にある程度の奥行きを持った空間である家具本体部50を備える態様であるので、調音部3cを透過した後の音波の散乱減衰および吸収減衰が進み、調音機能が更に向上している。加えて、収納家具5が備える家具本体部50は、いわゆる吸音パネルの空気室等と同等の作用効果を奏し、共鳴式の消音構造と同等の消音効果も期待できる。つまり、収納家具5は、調音扉3cと家具本体部50とが協働して、設置された室内に優れた調音効果をもたらすことができる。更に、収納家具5内に音波を減衰させる収納物C(洋服等の繊維製品)が収納されているときは、調音扉1cを透過した音波が洋服等によっても減衰し、設置された室内に更に優れた調音効果をもたらすことができる。
〔第5実施形態〕
図7を参照する。図7に示す本発明の第5実施形態は、調音部材30を適用した衝立(パーティション)6である。衝立6は、中央の大部分が開口した方形の衝立枠体25と、開口の全部を塞いで配置された調音部材30とを備える。なお、調音部材30は、調音部の段数を除いて前述の調音扉1aの調音部3aと同じ構造であるため、詳細な構造および作用の説明を省略する。
衝立6は、その後背が見えないように覆い隠す本来の作用効果に加え、調音部材30の作用効果により、設置された室内空間の調音をすることができる。つまり、衝立6は、自然な見た目のインテリアでありながら、設置された室内空間の調音をすることができるものである。
調音部材30を透過して扉の後背側に至った透過音波は、調音部材30への到達前と比較して散乱減衰および吸収減衰が進んでおり、仮に、音波が調音部材30の後背側の壁等で反射して再度調音部材30を透過したとしても、更に散乱減衰および吸収減衰が進むため、一般の人の聴覚では認識できないほどの音になる。
なお、衝立6は、後背方向にある程度の奥行きを持った空間がある方が、透過後の音波の散乱減衰および吸収減衰が進んで調音機能が向上するので、衝立6の後方の壁面からある程度の距離をおいて設置することが好ましい。
〔調音部または調音部材に関する考察〕
また、前述の調音部または調音部材は、第1シートを構成する繊維シートの音波の透過率と、第2シートを構成する繊維シートの音波の透過率とが、相違するように設定されていてもよい。
第1シートと第2シートの音波の透過率が同じである場合、1種類のシートの使用で足りるため、製造時の材料調達に無駄が少なくて済む点で好ましい。また、調音扉1のように掛止部に回し掛けて取り付ける構造の場合は、1枚のシートを回し掛けるだけでよく、作業工程が少なくて済む点でも好ましい。
第1シートと第2シートの音波の透過率が各々異なる場合、各シートの特性に応じて異なる周波数の音波を散乱させて減衰させることができ、同じ音波の透過率のシートが二枚である場合よりも、室内空間の調音効果が更に向上する。
本発明でいう音波は空気が振動して伝わるものである。このため、本発明者は、音波の透過率の大小がシートの通気量に関係していると考え、比較的通気量が多い繊維シートA(通気量(cm/cm・S)が116)と、比較的通気量が少ない繊維シートB(通気量(cm/cm・S)が23)とを使用し、
(a)繊維シートAが二枚の組み合わせ
(b)繊維シートBが二枚の組み合わせ
(c)繊維シートAを前面側に、繊維シートBを後背側に配置した組み合わせ
(d)繊維シートBを前面側に、繊維シートAを後背側に配置した組み合わせ
により、吸音率測定試験を行った。試験結果は図9に示す通りである。
本発明の目的とする「調音」においては、室内空間の調音効果を高めるために、音波の透過率に基づく、少なくとも可聴域のできるだけ広い帯域の散乱減衰を図るのが好ましい。以下の試験では、この確認のため、音波の透過率が同じ繊維シートを2枚使用した場合と、音波の透過率が互いに異なる二枚の繊維シートを適宜組み合わせて使用した場合について、それぞれ吸音率を測定し、比較した。なお、本発明が改善の目的とする「調音」は、その効果あるいは程度等を直接数値化できるものではないため、本試験においては、その代替として吸音率を測定し、その変化の比較を、調音効果の比較として考察したものである。
<試験条件>
測定方法:垂直入射吸音率測定システムを使用し、試験体を測定管に挿入し測定した。
試験体:内径100mmの塩化ビニール円筒に間隔を空けて前述の2枚の繊維シートAまたは繊維シートBを上記(a)〜(d)の各態様で張ると共に、音波の透過方向での反射を抑制する吸音体を配置して、試験体内での透過音波の反響を抑制している。
(a)と(b)の試験結果を比較したところ、低音域(63−200ヘルツ)では音波を吸音する(減衰させる)機能性において繊維シートBが優位であるが、中音域の350ヘルツを超えた辺りで逆転して、繊維シートAが優位となることが判明した。(c)と(d)の試験結果を比較したところ概ね拮抗していることが判明した。そして、(c)と(d)の計測値は、100−250ヘルツおよび450−1600ヘルツの帯域において、(a)と(b)の各々の計測値の間に収まることが判明した。
(試験結果の考察1)
(a)と(b)の試験結果について検討を行った。繊維シートAが二枚の組み合わせの場合、繊維シートBよりも低音域の吸音性は劣るが、中音域(350ヘルツあたり)に至ると繊維シートAの吸音性が優位となる。そして、繊維シートBが二枚の組み合わせの場合、繊維シートAよりも低音域(100−350ヘルツ)の吸音性が優位である。つまり、同じ通気量の繊維シート二枚の組み合わせである場合、選択した繊維シートの属性により、吸音可能な音域がほぼ決定されることになる。
(試験結果の考察2−1)
(c)と(d)の試験結果について検討を行った。(c)と(d)の計測値が、100−250ヘルツおよび450−1600ヘルツの帯域において、(a)と(b)の各々の計測値の間に収まることから、繊維シートAと繊維シートBを組み合わせの場合の方が、低音域ないし中音域における吸音のバランスが良いことが判明した。
つまり、本発明が、極端な「吸音」や「消音」といった効果を得ることを目的とせず、室内空間における音を生活に支障がでない程度の環境に整える「調音」を目的とすることを鑑みれば、調音部または調音部材を構成するシートは、第1シートと第2シートが各々異なる通気量である方が、調音効果を向上してより好ましいといえる。
(試験結果の考察2−2)
(c)と(d)の試験結果について更に検討を行った。前述の通り、調音部または調音部材を構成するシートは、第1シートと第2シートが各々異なる通気量である方がより好ましく、いずれの配置パターンであってもよいが、試験結果を鑑みると、63−1600ヘルツ中で相互比較の結果がより良かった(d)の配置パターンであることが更に好ましいといえる。
前述の各実施形態において、調音部または調音部材は、取着対象である扉本体部等に形成された開口部(開口)の概ね全部を塞いで配置されているが、これに限定するものではなく、例えば、開口部の一部を塞ぐ態様で配置されていてもよい。
また、現在、日本社会は高齢化が進んでおり、高齢者は今後増え続けることとなる。そして、高齢者の特性として、比較的自宅に居る時間の長いこと、可聴域が狭まる(いわゆる耳が遠くなる)ことが挙げられる。前述のした住宅における音響障害は、若年者のみならず、前述の特性を有する高齢者にとっても大きな問題である。即ち、本発明は、前述の目的のほか、本項で述べた高齢者の生活環境改善も目的としており、本発明の作用効果によって、高齢者の生活環境改善を達成することもできる。
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。また、第一、第二などの言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
1、1a、1b、1c 調音扉
2、2a 扉本体部
21 縦枠
22 横枠
23、23a1、23a2 掛止部
25 衝立枠体
3、3a、3b、3c 調音部
30 調音部材
31、31a 第1シート
32、32a 第2シート
33、33a 空隙
L1 中央線
L2 水平軸線
4 室内収納部
40 空間部
5 収納家具
50 家具本体部
6 衝立
C 収納物
9 吸音パネル
91 レゾネータ部材
92 中空部
93 開口
94 凸部

Claims (7)

  1. 音波が透過可能な音波透過領域が形成された扉本体部と、
    表裏を透過する音波を散乱させる第1シート、および、該第1シートと所要間隔を空けて対向配置され、表裏を透過する音波を散乱させる第2シートを有し、前記第1シートおよび前記第2シートを前記音波透過領域の全部または一部を塞ぐようにして前記扉本体部に取り付けた構造である、調音部とを備える
    調音扉。
  2. 前記第1シートおよび前記第2シートが、柔軟な繊維シートで構成されている
    請求項1に記載の調音扉。
  3. 前記第1シートの音波の透過率と、前記第2シートの音波の透過率とが、相違するように設定されている
    請求項1または請求項2に記載の調音扉。
  4. 室内の壁面の一部に開口部が形成され、該開口部を介して室内と接続した空間部と、
    前記開口部を閉じ、音波が透過可能な音波透過領域が形成された扉本体部と、表裏を透過する音波を散乱させる第1シート、および、該第1シートと所要間隔を空けて対向配置され、表裏を透過する音波を散乱させる第2シートを含み、前記第1シートおよび前記第2シートを前記音波透過領域の全部または一部を塞ぐようにして前記扉本体部に取り付けた構造である調音部を有する調音扉とを備える
    室内収納部。
  5. 開口部が形成された箱状の家具本体部と、
    前記開口部を閉じ、音波が透過可能な音波透過領域が形成された扉本体部と、表裏を透過する音波を散乱させる第1シート、および、該第1シートと所要間隔を空けて対向配置され、表裏を透過する音波を散乱させる第2シートを含み、前記第1シートおよび前記第2シートを前記音波透過領域の全部または一部を塞ぐようにして前記扉本体部に取り付けた構造である調音部を有する調音扉とを備える
    収納家具。
  6. 表裏を透過する音波を散乱させる第1シート、および、該第1シートと所要間隔を空けて対向配置され、表裏を透過する音波を散乱させる第2シートを有し、前記第1シートおよび前記第2シートを室内空間に設けられた構造物の開口部分の全部または一部を塞ぐように取り付け可能な構造である
    調音部材。
  7. 第1シート、および、該第1シートと所要間隔を空けて対向配置された第2シートを有し、室内空間に設けられた構造物の開口部分の全部または一部を塞ぐように取り付けられた調音部材を使用し、
    前記第1シートが、表裏を透過する音波を散乱させる、第1ステップと、
    前記第2シートが、表裏を透過する音波を散乱させる、第2ステップとを備える
    室内空間の調音方法。
JP2018058600A 2018-03-26 2018-03-26 調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法 Pending JP2019167793A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018058600A JP2019167793A (ja) 2018-03-26 2018-03-26 調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018058600A JP2019167793A (ja) 2018-03-26 2018-03-26 調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019167793A true JP2019167793A (ja) 2019-10-03

Family

ID=68108163

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018058600A Pending JP2019167793A (ja) 2018-03-26 2018-03-26 調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019167793A (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0587192U (ja) * 1992-04-28 1993-11-22 サンセイ理工株式会社 防音襖
JP2016089502A (ja) * 2014-11-06 2016-05-23 中井産業株式会社 障子
WO2017170337A1 (ja) * 2016-03-29 2017-10-05 富士フイルム株式会社 防音構造、開口構造、筒状構造、窓部材および仕切り部材

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0587192U (ja) * 1992-04-28 1993-11-22 サンセイ理工株式会社 防音襖
JP2016089502A (ja) * 2014-11-06 2016-05-23 中井産業株式会社 障子
WO2017170337A1 (ja) * 2016-03-29 2017-10-05 富士フイルム株式会社 防音構造、開口構造、筒状構造、窓部材および仕切り部材

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9218800B2 (en) Sound transmission material, sound control plane structure including building use using the sound transmission material, windscreen for microphone, protective grille, sound transmission projection screen, and speaker
US20090277715A1 (en) Furniture system for influencing the acoustics of a room
DE19506511C2 (de) Plattenresonator
US9613609B2 (en) Sound-absorbing panel and associated manufacturing method
Virjonen et al. Speech privacy between neighboring workstations in an open office-a laboratory study
Rindel Open plan office acoustics–a multidimensional optimization problem
JP2011043553A (ja) 吸音体
JP2019167793A (ja) 調音扉、収納室、収納家具、調音部材、および、室内空間の調音方法
JPH0764565A (ja) 音響調整パネル
GB2565033A (en) Acoustic resonators
JP5396683B2 (ja) 音響面材配置システム
Keranen et al. Characterization of acoustics in open offices-four case studies
CN214402251U (zh) 一种帘式吸音尖劈结构
WO2015015214A1 (en) Fibres
EP2333181B1 (de) Akustische Komponente zum Beeinflussen von Schall in einem Raum
EP3519643B1 (de) Schallschutzhaube für musiker und büroangestellte
Larm et al. Acoustics in open-plan offices-A laboratory study
JP2011058188A (ja) 音響室
Wintzell Acoustic Textiles: the case of wall panels in home environment
Campbell et al. Optimising the acoustic design for multi-purpose rooms used for a variety of speech communication activities
Davies The effects of seating on the acoustics of auditoria
Almahdi et al. In situ test: acoustic performance of eco-absorber panel based albizia wood and sugar palm fiber on meeting room in UNS Inn Hotel
CN106851489A (zh) 在小房间摆放多声道音箱的方法
Kumar et al. Mitigating the toilet flush noise: A psychometric analysis of noise assessment and design of labyrinthine acoustic Meta-absorber for noise mitigation
Oyekola et al. Evaluation and optimization of acoustics of a multipurpose room to improve speech intelligibility

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200930

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210615

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20211202