JP2019166520A - バイオ医薬品精製システム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、分離膜モジュールを利用した連続システムにより、高回収率でバイオ医薬品を精製することを目的としている。【解決手段】タンパク質を含有する溶液からバイオ医薬品を得るための精製システムであり、少なくとも、8〜40nmの細孔径を有する分離膜aを内蔵する分離膜モジュールAと、2〜7nmの細孔径を有する分離膜bを内蔵する分離膜モジュールBが連続した精製システムであり、前記分離膜a、bの少なくともいずれかの表面にアミド基と直鎖または分岐状のアルキル基を有する親水性ポリマーが存在する、バイオ医薬品精製システム。【選択図】図1

Description

本発明は、バイオ医薬品精製システムに関する。
従来、抗体医薬品をはじめとするバイオ医薬品は、まず、バイオ医薬品を産生する細胞等を遠心分離により分離し、さらに、バイオ医薬品を選択的に吸着するプロテインカラムを用いて精製している。しかし、一般的に遠心分離の操作はバッチ式で行われ、連続式と比較して効率が悪い。また、プロテインカラムはバイオ医薬品を吸着するタンパク質が固定化されているため、カラムのコストが非常に高いのが現状である。さらに、バイオ医薬品とタンパク質の相互作用を利用しているため、医薬品の多量体や部分的に構造が欠けた欠損体もカラムに吸着してしまい取り除くことができない。
一方で、ある大きさの細孔径を有する分離膜を用いて目的物を精製する試みはこれまで多く検討されてきた。
特許文献1には、目的物よりも大きな細孔を有する分離膜と小さな分離膜とを有する分離膜装置が開示されている。
特許文献2には、細胞培養液の精密濾過により細胞を除去し、限外濾過により低分子物質を除去することによりタンパク質を得る方法が開示されている。
特許文献3には、異なる電気泳動分離膜を用いてアルブミンなどのタンパク質を分離する方法が開示されている。
特開平10−57476号公報 特開平8−9992号公報 特表2002−542163号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、血液浄化治療において、アルブミン(分子量約6.6万)の回収を目的として分離膜装置が設計されているため、例えば抗体医薬品であるイムノグロブリン(IgG;分子量約15万)の精製に適用することはできない。
特許文献2に記載の方法では、細胞(大きさ約数μm)と水分などの低分子物質の除去を目的に精製方法が設計されており、前述のバイオ医薬品の多量体や欠損体の除去については設計が不十分である。
特許文献3に記載の方法では、タンパク質の分離の際電位を付加する必要があり、スケールアップが困難となる場合がある。さらに、分離膜を用いてバイオ医薬品を精製する際は、医薬品の分離膜表面への付着を抑制しロスを防ぐ必要があるが、この点については一切触れられていない。
そこで本発明は、分離膜を用いて、バイオ医薬品を高回収率で精製する連続式のシステムを提供することを目的とする。
バイオ医薬品の精製において、その多量体や欠損体を除去するためには、目的とするバイオ医薬品よりも大きな細孔径を有する分離膜と小さな細孔径を有する分離膜が必要であるが、その設計がなされてこなかった。
また、従来のポリスルホンやポリフッ化ビニリデンからなる分離膜を用いた場合、バイオ医薬品が分離膜表面に付着してしまい回収率が低下してしまうという問題があった。
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を進めた結果、バイオ医薬品の多量体や欠損体を除去でき、かつバイオ医薬品の回収率の低下が抑制される、以下の精製システムを見出した。
(1)タンパク質を含有する溶液からバイオ医薬品を得るための精製システムであり、少なくとも、8〜40nmの細孔径を有する分離膜aを内蔵する分離膜モジュールAと、2〜7nmの細孔径を有する分離膜bを内蔵する分離膜モジュールBが連続した精製システムであり、前記分離膜a、bの少なくともいずれかの表面にアミド基と直鎖または分岐状のアルキル基を有する親水性ポリマーが存在する、バイオ医薬品精製システム。
(2)前記分離膜モジュールAの前に、さらに、0.1〜5μmの細孔径を有する分離膜cを内蔵する分離膜モジュールCを含む、前記(1)記載のバイオ医薬品精製システム。
(3)前記バイオ医薬品の回収率が70%以上である、前記(1)又は(2)記載のバイオ医薬品精製システム。
(4)前記親水性ポリマーが、カルボン酸ビニルエステルユニットを有する共重合体である、前記(1)〜(3)のいずれか一項記載のバイオ医薬品精製システム。
(5)前記バイオ医薬品が抗体医薬品である、前記(1)〜(4)のいずれか一項記載のバイオ医薬品精製システム。
本発明の精製システムは、バイオ医薬品を高回収率で精製することができる。
分離膜モジュールA(3)、B(4)、C(2)からなる連続式のバイオ医薬品の精製システムの一例の概略図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の精製システムは、タンパク質を含有する溶液からバイオ医薬品を得るための精製システムであり、少なくとも、8〜40nmの細孔径を有する分離膜Aと、2〜7nmの細孔径を有する分離膜Bが連続した精製システムであり、分離膜A、Bの少なくともいずれかの表面にアミド基と直鎖または分岐状のアルキル基を有する親水性ポリマーが存在する。
「バイオ医薬品」とは、細胞培養や遺伝子工学等のバイオテクノロジーを利用して生産されるペプチドやタンパク質を有効成分とする医薬品を意味し、例えば、インターフェロン、エリスロポエチン、モノクローナル抗体等が挙げられる。
「精製」とは、目的物質以外の特定の物質の、目的物質に対する相対的濃度を下げることを意味する。
「分離膜」とは、培養液等の処理する溶液に含まれる特定の物質を、物質の大きさにより除去する膜のことである。
「分離膜モジュール」とは、上記分離膜が内蔵されたデバイスのことである。
「細孔径」とは、分離膜が有する細孔の大きさを指し、本発明では、後述のとおり、デキストランを用いて決定される。ただし、細孔径が0.1μm以上であるときは、顕微鏡を用いて決定される。
「連続した」とは、上記分離膜モジュールから精製された溶液が排出される出口と次の分離膜モジュールの入口が繋がっていることを意味する。
本発明の精製システムでは、まず、8〜40nmの細孔径を有する分離膜aを内蔵する分離膜モジュールAを有する。これは、目的とするバイオ医薬品よりも大きな分子を除去するためである。すなわち、バイオ医薬品を含有する溶液を分離膜aに通液し、バイオ医薬品よりも大きな分子は膜を通過せず、それ以外の分子が膜を通過するので、通過した溶液を回収する。バイオ医薬品よりも大きな分子としては、上記バイオ医薬品の二量体や三量体等の多量体が挙げられる。上記バイオ医薬品が膜にトラップされすぎないようにする観点から、分離膜aの細孔径としては、8nm以上であり、9nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。また、多量体等の除去率を上げる観点から、分離膜aの細孔径としては、40nm以下であり、30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。
分離膜モジュールAへの被処理液の流し方としては、被処理液すべてを膜に通過させ、膜に残ったバイオ医薬品を洗浄により回収する全濾過法や、濾過をかけると同時に補液しながら被処理液を複数回、循環させ、バイオ医薬品を精製するクロスフロー法が挙げられるが、バイオ医薬品を被処理液に残存させず回収率を向上させる観点から全濾過法が好ましい。
なお、分離膜モジュールAは多段構成になっていてもよい。すなわち、複数本の分離膜モジュールAが配列し、前段のモジュールの濾液出口と後段モジュールとを連結し、処理液が多段のモジュールに順次送られ分離が繰り返し行われる。多段配列により、目的とするバイオ医薬品よりも大きな分子の除去率は向上するが、バイオ医薬品の回収率が低下することがあるので注意が必要である。
次に、本発明の精製システムでは、2〜7nmの細孔径を有する分離膜bを内蔵する分離膜モジュールBを有する。これは、目的とするバイオ医薬品よりも小さな分子を除去するためである。すなわち、上記分離膜aを通過した溶液(被処理液)を分離膜bに通液し、バイオ医薬品よりも小さな分子は膜を通過し、それ以外の分子が膜を通過しないので、通過しなかった溶液を回収する。バイオ医薬品よりも小さな分子としては、上記バイオ医薬品の欠損体や、医薬品の生成又は精製過程で生じた(陽イオンと陰イオン)からなる塩が挙げられる。上記欠損体等の除去率を挙げる観点から、分離膜bの細孔径としては、2nm以上であり、3nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましい。また、上記バイオ医薬品が膜から漏洩し過ぎないようにする観点から、分離膜bの細孔径としては、7nm以下であり、6nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。
分離膜モジュールBへの被処理液の流し方としては、被処理液すべてを膜に通過させ、膜に残ったバイオ医薬品を洗浄により回収する全濾過法や、濾過をかけると同時に補液しながら被処理液を複数回、循環させ、バイオ医薬品を精製するクロスフロー法が挙げられるが、バイオ医薬品を膜に残存させず回収率を向上させる観点からクロスフロー法が好ましい。
本発明の精製システムは、分離膜モジュールによるサイズを利用した精製システムであるため、分離膜モジュールAおよびBが連続した連続システムとすることができる。
分離膜a及びbの形態としては中空糸膜、平膜が挙げられるが、膜の表面積が大きくなり溶液処理量が多くなることから中空糸膜が好ましい。同様に、分離膜モジュールA及びBの形態としては、中空糸膜モジュール、平膜モジュールが挙げられるが、中空糸膜モジュールが好ましい。
中空糸膜モジュールの場合、溶液を分離膜の内側から外側に流しても、外側から内側に流してもよい。
本発明において、分離膜a、bの少なくともいずれかの表面にアミド基と直鎖または分岐状のアルキル基を有する親水性ポリマーが存在する。親水性ポリマーの存在により、目的のバイオ医薬品の分離膜への付着が抑制され、回収率低下を抑制できる。
「親水性ポリマー」とは、エタノールに可溶なポリマーのことを意味し、0.1g/mL以上溶解することが好ましい。
上記親水性ポリマーはアミド基を有する。アミド基はタンパク質への構造に影響を与えにくく、膜への付着を惹起しにくいためである。上記アミド基を有するポリマーのユニット(1成分)としては、N−ビニルアセトアミド誘導体ユニット、アクリルアミド誘導体ユニット、メタクリルアミド誘導体ユニット、ビニルピロリドンユニット、ビニルカプロラクタムユニット等が挙げられる。
ここで、「ユニット」とは、モノマーを重合して得られる単独重合体又は共重合体中の繰り返し単位を指す。例えば、カルボン酸ビニルエステルユニットとは、カルボン酸ビニルエステルモノマーを重合して得られる単独重合体中の繰り返し単位又はカルボン酸ビニルモノマーを共重合して得られる共重合体中のカルボン酸ビニルエステルモノマー由来の繰り返し単位を指す。
N−ビニルアセトアミド誘導体ユニットとは、ビニルアセトアミド構造(CH=CH−NH−CO−)を有するユニットのことであり、N−ビニルアセトアミド誘導体ユニットとしては、例えば、N−ビニルアセトアミドユニット、N−メチル−N−ビニルアセトアミドユニットが挙げられる。
アクリルアミド誘導体ユニットとは、アクリルアミド構造(CH=CH−CO−NH−)を有するユニットのことであり、アクリルアミド誘導体ユニットとしては、例えば、アクリルアミドユニット、N−メチルアクリルアミドユニット、N−イソプロピルアクリルアミドユニット、N−tert−ブチルアクリルアミドユニット、N−フェニルアクリルアミドユニットが挙げられる。
メタクリルアミド誘導体ユニットとは、メタクリルアミド構造(CH=C(CH)−CO−NH−)を有するユニットのことであり、メタクリルアミド誘導体ユニットとしては、例えば、メタクリルアミドユニット、N−イソプロピルメタクリルアミドユニット、N−フェニルメタクリルアミドユニットが挙げられる。
さらに、上記親水性ポリマーは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を有する。これは、直鎖状又は分岐状のアルキル基の存在により、親水性ポリマーの運動性は増し、タンパク質の付着が抑制されるためである。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖構造、イソプロピル基やtert−ブチル基のような分岐構造が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜7がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。
上記アルキル基の炭素数が少ないと親水性ポリマーの運動性が乏しく、タンパク質が付着しやすくなることがある。一方で、炭素数が多いと親水性ポリマーとタンパク質との疎水性相互作用が大きくなり、タンパク質が付着してしまうことがあるためである。
上記アルキル基は、親水性ポリマー内のアミド基を有するユニット内に存在してもよいし、アミド基を有するユニットと別のユニット内に存在し共重合されて親水性ポリマーを構成していてもよい。前者の例としては、ポリ(N−アルキル−N−ビニルアセトアミド)が挙げられ、後者の例としては、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
上記親水性ポリマーが共重合体の場合、ユニットの配列としては、ブロック共重合体、交互共重合体又はランダム共重合体等が挙げられる。これらのうち、共重合体全体で親水性・疎水性の分布が小さいという点から、交互共重合体又はランダム共重合体が好ましい。なかでも、合成が煩雑でないという点から、ランダム共重合体がより好ましい。なお、少なくともモノマー配列の一部が秩序無く並んだ共重合体はランダム共重合体とする。
上記親水性ポリマーは、市販のポリマーを利用してもよいし、公知の重合方法により合成してもよい。
本発明において、前記親水性ポリマーは、カルボン酸ビニルエステルユニット、アクリル酸エステルユニットおよび/またはメタクリル酸エステルユニットを有する共重合体であることが好ましい。
カルボン酸ビニルエステルユニットは、疎水性も親水性も強すぎず、タンパク質への刺激が少ないため好ましい。カルボン酸ビニルエステルユニットの例としては、プロパン酸ビニルユニット、ピバル酸ビニルユニット、デカン酸ビニルユニット、ポリメトキシ酢酸ビニルユニットが挙げられる。すなわち、親水性ポリマーは、アミド基を有するユニットと直鎖状又は分岐状のアルキル鎖を有するユニットとカルボン酸ビニルエステルユニットからなる共重合体、又は、アミド基と直鎖状又は分岐状のアルキル鎖を有するユニットとカルボン酸ビニルエステルユニットからなる共重合体、若しくは、アミド基を有するユニットと直鎖状又は分岐状のアルキル鎖を有するカルボン酸ビニルエステルユニットからなる共重合体が好ましい。このうち、合成が複雑にならないことから、アミド基を有するユニットと直鎖状又は分岐状のアルキル鎖を有するカルボン酸ビニルエステルユニットからなる共重合体が好ましい。例えば、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/プロパン酸ビニル共重合体が挙げられる。直鎖状又は分岐状のアルキル鎖を有するカルボン酸ビニルエステルユニットとしては、疎水性が高すぎないことから、プロパン酸ビニルエステルユニット(アルキル基の炭素数:2)、酪酸ビニルエステルユニット(アルキル基の炭素数:3)、ペンタン酸ビニルエステルユニット(アルキル基の炭素数:4)、ピバル酸ビニルエステルユニット(アルキル基の炭素数:4)、ヘキサン酸ビニルエステルユニット(アルキル基の炭素数:5)が特に好ましい。
上記共重合体は、例えば、アゾ系開始剤を用いたラジカル重合法に代表される連鎖重合法により合成できるが、合成法はこれに限られるものではない。
上記共重合体全体における上記カルボン酸ビニルエステルユニットのモル分率は、10%以上90%以下が好ましく、20%以上80%以下がより好ましい。上記モル分率が多すぎると、共重合体全体の疎水性が大きくなり、タンパク質が付着しやすくなる。一方で、上記モル分率が少なすぎると、共重合体全体の親水性が大きくなり、タンパク質の構造不安定化・変性が誘起され、付着に至ることがある。なお、上記モル分率の算出方法は、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定を行い、ピーク面積から算出する。ピーク同士が重なる等の理由でNMR測定による上記モル分率の算出ができない場合は、元素分析により上記モル分率を算出してもよい。
また、アクリル酸エステルユニットの例としては、アクリル酸メチルユニット、アクリル酸ブチルユニット、アクリル酸オクチルユニットが挙げられる。直鎖状又は分岐状のアルキル鎖を有するアクリル酸エステルユニットとしては、疎水性が高すぎないことから、アクリル酸エチルユニット(アルキル基の炭素数:2)、アクリル酸プロピルユニット(アルキル基の炭素数:3)、アクリル酸イソプロピルユニット(アルキル基の炭素数:3)、アクリル酸ブチルユニット(アルキル基の炭素数:4)、アクリル酸ヘキシルユニット(アルキル基の炭素数:5)が特に好ましい。メタクリル酸エステルユニットの例としては、メタクリル酸メチルユニット、メタクリル酸ブチルユニット、メタクリル酸オクチルユニットが挙げられる。直鎖状又は分岐状のアルキル鎖を有するメタクリル酸エステルユニットとしては、疎水性が高すぎないことから、メタクリル酸エチルユニット(アルキル基の炭素数:2)、メタクリル酸プロピルユニット(アルキル基の炭素数:3)、メタクリル酸イソプロピルユニット(アルキル基の炭素数:3)、メタクリル酸ブチルユニット(アルキル基の炭素数:4)、メタクリル酸ヘキシルユニット(アルキル基の炭素数:5)が特に好ましい。
上記親水性ポリマーの重量平均分子量は、小さすぎると、分離膜の表面へ導入した際にタンパク質の付着が抑制されにくくなる場合があることから、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。一方、親水性ポリマーの重量平均分子量の上限については特に制限はないが、重量平均分子量が大きすぎると膜表面への導入効率が低下する場合があることから、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。なお、重量平均分子量は、後述のとおり、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。
上記親水性ポリマーは、分離膜a、b少なくともいずれか一方の表面に存在し、両方の膜表面に存在することが好ましい。分離膜aにおいては、分離膜の被処理液が接触する表面と膜を通過した処理済の溶液が接触する表面との両方に存在することが好ましい。これは、目的のバイオ医薬品が膜を通過するため、膜全体でバイオ医薬品の付着が抑制されるためである。一方で、分離膜bにおいては、被処理液が接触する表面と比較して、膜を通過した処理済の溶液が接触する表面の親水性ポリマー存在量は少ないことが好ましい。これは、目的とするバイオ医薬品は膜を通過せず、処理済の溶液側での付着の心配がないためである。分離膜bの処理能力を向上させる観点から、親水性ポリマーは、被処理液が接触する表面にのみ存在することが好ましい。
上記親水性ポリマーの分離膜への導入方法としては、親水性ポリマーを溶解した溶媒を分離膜表面に塗布し乾燥させる方法、放射線照射や熱処理による架橋固定化法、親水性ポリマー及び膜に反応性官能基を導入し結合させる化学固定化法が挙げられる。
上記親水性ポリマーは使用時に溶出するのを防ぐため、分離膜表面に導入後、放射線照射や熱処理を行い不溶化し、固定することが好ましい。上記放射線照射にはα線、β線、γ線、X線、紫外線又は電子線等を用いることができる。また、放射線を照射する際の架橋反応を抑制するため、抗酸化剤を用いてもよい。抗酸化剤とは、他の分子に電子を与えやすい性質を持つ物質のことを意味し、例えば、ビタミンC等の水溶性ビタミン類、ポリフェノール類又はメタノール、エタノール若しくはプロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの抗酸化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。抗酸化剤を上記医療用分離膜モジュールに用いる場合、安全性を考慮する必要があるため、エタノールやプロパノール等、毒性の低い抗酸化剤が好適に用いられる。
上記アミド基と直鎖または分岐状のアルキル基を有する親水性ポリマーの存在は、膜表面の飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)装置による組成分析やX線電子分光法(XPS)測定によって明らかにできる。
本発明の精製システムでは、分離膜モジュールAの前に、さらに、0.1〜5μmの細孔径を有する分離膜cを内蔵する分離膜モジュールCを含むことが好ましい。これは、溶液中に含まれる細胞や微生物を除去することを目的としている。分離膜aによっても除去可能であるが、細胞等数μmの大きさの物質は先に除いておいたほうが、膜の物理的な目詰まりを防止でき精製の効率がよい。分離膜cのバイオ医薬品を含んだ溶液の透過性をよくする観点から細孔径は0.1μm以上であり、0.2μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましい。一方で、細胞等を通過させない観点から5μm以下であり、4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
分離膜cの形態としては中空糸膜、平膜が挙げられるが、0.1〜5μmの細孔が存在しても強度を保つことができることから平膜が好ましいことがある。同様に、分離膜モジュールCの形態としては、中空糸膜モジュール、平膜モジュールが挙げられるが、平膜モジュールが好ましいことがある。
分離膜モジュールCへの被処理液の流し方としては、被処理液すべてを膜に通過させ、膜に残ったバイオ医薬品を洗浄により回収する全濾過法や、濾過をかけると同時に補液しながら被処理液を複数回、循環させ、バイオ医薬品を精製するクロスフロー法が挙げられるが、バイオ医薬品を被処理液に残存させず回収率を向上させる観点から全濾過法が好ましい。
分離膜cの表面においても、上記親水性ポリマーが存在することが好ましく、分離膜の被処理液が接触する表面と、分離膜を通過した処理済の溶液が接触する表面との両方に存在することがより好ましい。
バイオ医薬品は高価なため、回収率は高いほうが好ましい。回収率とは、回収された溶液に含まれるバイオ医薬品の量を元の溶液に含まれるバイオ医薬品の量で除した数値%である。本発明の精製システムにおいて、目的のバイオ医薬品の回収率は70%以上であることが好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。回収率の上限は100%である。
なお、本発明の精製システムの後に、最終精製のためのタンパク質吸着カラムやウイルス除去フィルターが適宜連結されていてもよい。
本発明において、バイオ医薬品は特に、抗体医薬品を対象にしている。「抗体」とは、特定の異物にある抗原に特異的に結合して、異物を生体内から除去する分子であり、具体的には、免疫グロブリンであり、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5種類に分類される。この中で、IgGは細胞や毒素と結合する能力が高く、血中にとどまる時間も長いため、特に有用である。「抗体医薬品」とは、抗体を利用した医薬品を指す。抗体医薬品は、がん細胞などの細胞表面の抗原を特異的に攻撃するため、高い治療効果と副作用の軽減が期待される。
本発明における分離膜の主原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスルホン系高分子、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル又はポリエステル等が挙げられる。ここで、「主原料」とは、分離膜全体に対して90重量%以上含まれる原料を意味する。このうち、ポリスルホン系高分子は、中空糸膜を形成させやすく、また、上記親水性ポリマーを導入しやすいため好適に用いられる。「ポリスルホン系高分子」とは、主鎖に芳香環、スルフォニル基及びエーテル基を有する高分子であり、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン等が挙げられる。
上記分離膜に用いることができるポリスルホン系高分子としては、例えば、ユーデルポリスルホンP−1700、P−3500(ソルベイ社製)、ウルトラゾーン(登録商標)S3010、S6010(BASF社製)、レーデル(登録商標)A(ソルベイ社製)又はウルトラゾーン(登録商標)E(BASF社製)等のポリスルホン系高分子が挙げられる。
上記分離膜モジュールを製造する方法としては、その用途により種々の方法があるが、その一態様としては、分離膜の製造工程と、当該分離膜をモジュールに組み込む工程とに分けることができる。
分離膜が中空糸膜の場合、例えば、次の方法がある。ポリスルホンとポリビニルピロリドン(重量比率20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい)をポリスルホンの良溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン又はジオキサン等が好ましい)及び貧溶媒(水、エタノール、メタノール又はグリセリン等が好ましい)の混合溶液に溶解させた原液(濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい)を二重環状口金から吐出する際に内側に注入液を流し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を減らすことも可能である。また、注入液組成としてはプロセス適性から原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%が好適に用いられ、60〜75重量%の水溶液がより好適に用いられる。
ここで、良溶媒とは、20℃において、対象とする高分子が10重量%以上溶解する溶媒のことを意味する。貧溶媒とは、20℃において、対象とする高分子が10重量%未満溶解する溶媒のことを意味する。
中空糸膜をモジュールに内蔵する方法としては、特に限定されないが、例えば、次の方法がある。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得る。
上記親水性ポリマーを溶解した水溶液をモジュール内の中空糸膜に通液させ、表面へ導入する場合、水溶液の高分子の濃度が小さすぎると十分な量の高分子が表面に導入されない。よって、上記水溶液中の高分子濃度は10ppm以上が好ましく、100ppm以上がより好ましく、300ppm以上がさらに好ましい。ただし、水溶液の高分子の濃度が大きすぎると、モジュールからの溶出物の増加が懸念されるため、上記水溶液中の親水性ポリマー濃度は100,000ppm以下が好ましく、10,000ppm以下がより好ましい。
なお、親水性ポリマーが水に所定の濃度溶解しない場合は、中空糸膜を溶解しない有機溶媒、又は、水と相溶し、かつ中空糸膜を溶解しない有機溶媒と水との混合溶媒に高分子を溶解させてもよい。上記有機溶媒又は混合溶媒に用いうる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール又はプロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<分離膜モジュールAの製造方法>
ポリスルホン(テイジンアモコ社製ユーデルP−3500)16重量部、ポリビニルピロリドン(BASF社製K30)6重量部をN,N−ジメチルアセトアミド77重量部、水1重量部に加え、90℃で14時間加熱溶解した。この製膜原液をオリフィス型二重円筒型口金より吐出し芯液としてN,N−ジメチルアセトアミド、水からなる溶液を吐出させ、乾式長350mmを通過した後、水100%、温度60℃の凝固浴に導き中空糸膜(分離膜a)を得た。細孔径を制御するため、芯液のN,N−ジメチルアセトアミド、水の重量部を適宜変更した。得られた中空糸膜は内径280μm、膜厚50μmであった。プラスチック管に中空糸膜を50本通し、両端を接着剤で固定した有効長100mmのプラスチック管ミニモジュールを作製した。上記親水性ポリマーを溶解した水溶液を、上記ミニモジュールの中空糸膜内側から外側に通液した。25kGyのγ線を照射して分離膜モジュールAとした。
<分離膜モジュールBの製造方法>
乾式長を450mm、凝固浴の温度を50℃とし、得られた中空糸膜(分離膜b)の内径が380μm、膜厚50μmであった点を除き、上記分離膜モジュールAの製造方法に従って、分離膜モジュールBを得た。
<分離膜モジュールCの製造方法>
中空糸膜モジュール(BioOptimal、旭化成メディカル社製)に、上記親水性ポリマーを溶解した水溶液を中空糸膜内側から外側に通液し、25kGyのγ線を照射して分離膜モジュールCとした。
<精製システムの構築>
バイオ医薬品原液槽(1)と分離膜モジュールC(2)の入口(2−1)を接続した。分離膜モジュールCの濾液出口(2−2)と分離膜モジュールA(3)の入口(3−1)をつないだ。分離膜モジュールAが多段配列している場合は、分離膜モジュールAの濾液出口と次の分離膜モジュールAの入口をつないだ。最後の分離膜モジュールA(3)の濾液出口(3−2)と分離膜モジュールB(4)の入口(4−1)をつないだ。分離膜モジュールBに被処理液の循環配管(4−2)、低分子量物質を除去するための濾過配管(4−3)、液を補充するための補液配管(4−4)をそれぞれ接続し、循環する配管の途中に回収槽(5)を設け、精製システムとした。
<評価方法>
(1)分離膜a、bの細孔径
分子量の異なるデキストラン(FULKA社製)8種類(分子量1,300、5,200、12,000、50,000、80,000、150,000、410,000、1,400,000)を各濃度が0.5mg/mLとなるように混合デキストラン水溶液を調製した。混合デキストラン溶液を分離膜モジュールにワンパスで流速3.0mL/minで流し、デキストラン溶液濾過側(F)から0.6mL/minで濾液を取り出しながら、濾過を1時間行った。その後、デキストラン水溶液出側(Bo)から流れ出るデキストラン水溶液の濃縮液とF側から流れ出る濾液を15分間採取した。また、このサンプリング開始5分後にデキストラン水溶液の原液をBi側から採取した。
これらのサンプリングしたデキストラン水溶液を、東ソー社製GPC(HLC−8220GPC)装置で同社製TSK−GEL(G3000PWXL)カラムを使用し、FLOW RATE1.0ml/min、カラム温度40℃での条件で処理し、その結果得られた示差屈折率からデキストランの重量平均分子量を求めた。ふるい係数は以下の式で求めた。
デキストランふるい係数(%)=(2×CF)×100/(CBi+CBo)
ここで、CF=濾液濃度、CBi=原液濃度、CBo=濃縮液濃度とした。
細孔径は、J.Brandrup,E.H.Immergut” Polymer Handbook”(1989)、112〜113頁 John Wiley & Sons,incを参考に、デキストランふるい係数(%)=0.1となる重量平均分子量Mw(0.9)を用いて、0.04456×(Mw(0.9)0.43821)で算出した。
(2)分離膜cの細孔径
凍結乾燥させた分離膜cの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(S−5500、株式会社日立ハイテクノロジー社製)を用いて倍率2000倍で観察し、画像をコンピュータに取り込んだ。細孔に円形フィッティングを行い、直径を算出し、細孔径とした。
(3)親水性ポリマーの重量平均分子量
水/メタノール=50/50(体積比)の0.1N LiNO溶液を調製し、GPC展開溶液とした。水溶性ポリマー1mg/mL溶液100μLを、東ソー社製(GMPWXL)カラムを接続した島津製作所社製、Prominence GPCシステムに注入した。流速0.5mL/minとし、測定時間は30分間であった。検出は示差屈折率計により行い、溶出時間15分付近にあらわれる親水性ポリマー由来のピークから、重量平均分子量を算出した。重量平均分子量は、十の位を四捨五入して算出した。検量線作成には、Agilent社製ポリエチレンオキシド標準サンプル(0.1kD〜1258kD)を用いた。
(4)カルボン酸ビニルエステルユニットのモル分率
カルボン酸ビニルエステルユニットを有する親水性ポリマー1mg/mLのクロロホルム−D、99.7%(和光純薬0.05V/V%TMS有)溶液をNMRサンプルチューブに入れ、NMR測定(超伝導FTNMREX−270:JEOL社製)を行った。温度は室温とし、積算回数は32回とした。この測定結果から、2.7〜4.3ppm間に認められるビニルピロリドンの窒素原子に隣接した炭素原子に結合したプロトン(3H)由来のピークとベースラインで囲まれた領域の面積:3APVPと、4.3〜5.2ppm間に認められるカルボン酸ビニルエステルのα位の炭素に結合したプロトン(1H)由来のピークとベースラインで囲まれた領域の面積:AVCから、AVC/(APVP+AVC)×100の値を算出し、カルボン酸ビニルエステルユニットのモル分率とした。なお、本方法はビニルピロリドンとカルボン酸ビニルエステルとの共重合体においてモル分率を測定する場合の例であり、他のモノマーの組み合わせからなる共重合体の場合は適宜、適切なプロトン由来のピークを選択してモル分率を求める。モル分率は、一の位を四捨五入して算出した。
(5)抗体精製モデル回収試験
IgG(ヒト血清由来、オリエンタル酵母工業)2.0g/LのTris−buffer溶液を調製し原液とした。上記原液を流速3mL/minで精製システムの分離膜モジュールC入口に投入した。分離膜モジュールAは2本多段配列させた。分離膜モジュールBでは、濾過流速0.6mL/min、Tris−buffer溶液の補液流速0.6mL/minで1時間循環した。Tris−buffer溶液で分離膜b内表面を洗浄し、その液を循環後のTris−buffer溶液に加え、回収液とした。IgGの回収率を(回収液に含まれるIgGの重量)/(はじめのTris−buffer溶液中に含まれるIgGの重量)×100%で算出した。IgGの重量は、ELISAキット(フナコシ社製)を用いてIgG濃度を測定し、液量の値をかけることにより算出した。
(6)デキストラン分画試験
分子量の異なるデキストラン(FULKA社製)8種類(分子量1,300、5,200、12,000、50,000、80,000、150,000、410,000、1,400,000)各濃度が0.5mg/mLとなるように調製した混合デキストラン水溶液(原液)を精製システムに投入した。通液方法は、(5)抗体精製モデル回収試験の方法に従った。原液と回収液の分子量分布を比較し、原液における分子量150,000(抗体相当)、分子量50,000(抗体の欠損体相当)、分子量300,000(抗体の多量体相当)のピーク強度をT(15−A)、T(5−A)、T(30−A)とし、回収液における分子量150,000(抗体相当)、分子量50,000(抗体の欠損体相当)、分子量300,000(抗体の多量体相当)のピーク強度をT(15−B)、T(5−B)、T(30−B)として、下記式で表される低分子量除去率、高分子量除去率を算出した。
低分子量除去率(%)={T(5−B)/T(15−B)}/{T(5−A)/T(15−A)}×100
高分子量除去率(%)={T(30−B)/T(15−B)}/{T(30−A)/T(15−A)}×100 。
(7)タンパク質分画試験
IgG(ヒト血清由来、オリエンタル酵母工業)1.3g/L、および低分子量のモデル化合物としてトリプシンインヒビター0.3g/LのTris−buffer溶液を調製し原液とした。原液を精製システムに投入した。通液方法は、(5)抗体精製モデル回収試験の方法に従った。回収液中のIgGの濃度C(IgG)は、ELISAキット(フナコシ社製)を用いて測定した。トリプシンインヒビターの濃度C(Trip)は、回収液中の総タンパク濃度C(TP)を、A/G−Bテストワコー(和光純薬社製)を用いて測定し、C(Trip)=C(TP)−C(IgG)から算出した。
(実施例1)
分離膜モジュールAの製造方法において、芯液をN,N−ジメチルアセトアミド72重量部、水28重量部とした。また、分離膜モジュールBの製造方法において、芯液をN,N−ジメチルアセトアミド65重量部、水35重量部とした。さらに、親水性ポリマーとして、ビニルピロリドン/プロパン酸ビニルランダム共重合体(プロパン酸ビニルユニットのモル分率40%、重量平均分子量72,500)を用いて、精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は8.5nm、分離膜bの細孔径は4nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は88%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は63%、高分子量除去率は78%であった。
(実施例2)
親水性ポリマーをビニルピロリドン/酢酸ビニルランダム共重合体(酢酸ビニルユニットのモル分率40%、重量平均分子量29,500)とした以外は、実施例1と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は10nm、分離膜bの細孔径は5nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は79%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は65%、高分子量除去率は75%であった。
(実施例3)
分離膜モジュールAの製造方法において、芯液をN,N−ジメチルアセトアミド74重量部、水26重量部としたこと以外は、実施例1と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は15nm、分離膜bの細孔径は4nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は88%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は63%、高分子量除去率は61%であった。
また、タンパク質分画試験を実施したところ、C(IgG)は0.94g/L(回収率72%)、C(Trip)は0.04g/L(除去率87%)であり、高いIgG回収性と低分子除去性を両立していることがわかった。
(実施例4)
親水性ポリマーをビニルピロリドン/吉相酸ビニルランダム共重合体(吉相酸ビニルユニットのモル分率40%、重量平均分子量14,300)とした以外は、実施例1と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は8nm、分離膜bの細孔径は4nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は81%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は60%、高分子量除去率は64%であった。
(実施例5)
親水性ポリマーをN−メチル−N−ビニルアセトアミド/ピバル酸ビニルランダム共重合体(ピバル酸ビニルユニットのモル分率50%、重量平均分子量17,700)とした以外は、実施例1と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は8nm、分離膜bの細孔径は3.5nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は91%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は64%、高分子量除去率は79%であった。
(実施例6)
親水性ポリマーをN−イソプロピルアクリルアミド/アクリル酸エチルランダム共重合体(アクリル酸エチルユニットのモル分率50%、重量平均分子量3,300)とした以外は、実施例1と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は9nm、分離膜bの細孔径は4.5nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は85%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は62%、高分子量除去率は75%であった。
(比較例1)
親水性ポリマーを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は12nm、分離膜bの細孔径は5nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は55%と実施例1〜6と比較して低かった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は67%、高分子量除去率は73%であった。
(比較例2)
分離膜モジュールAの製造方法において、芯液をN,N−ジメチルアセトアミド65重量部、水35重量部としたこと以外は、実施例2と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は4nm、分離膜bの細孔径は4nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は2%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は55%、高分子量除去率は10%であった。回収率が低いのは、分離膜aの細孔径が小さく、IgGが膜を通過できなかったためである。
(比較例3)
分離膜モジュールBの製造方法において、芯液をN,N−ジメチルアセトアミド72重量部、水28重量部としたこと以外は、実施例1と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は8.5nm、分離膜bの細孔径は8.5nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は3%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は12%、高分子量除去率は40%であった。回収率が低いのは、分離膜bの細孔径が大きく、IgGが低分子量物質とともに膜を通過してしまったためである。
(比較例4)
分離膜モジュールBの製造方法において、芯液をN,N−ジメチルアセトアミド59重量部、水41重量部としたこと以外は、実施例1と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は8.5nm、分離膜bの細孔径は1nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は88%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は19%、高分子量除去率は78%であった。分離膜bの細孔径が小さく、低分子量の除去が不十分となった。
(比較例5)
分離膜モジュールAの製造方法において、芯液をN,N−ジメチルアセトアミド80重量部、水20重量部としたこと以外は、実施例2と同様に精製システムを構築した。分離膜aの細孔径は41nm、分離膜bの細孔径は5nm、分離膜cの細孔径は0.4μmであった。
抗体精製モデル回収試験を実施したところ、回収率は89%であった。また、デキストラン分画試験を実施したところ、低分子量除去率は55%、高分子量除去率は10%であった。回収率が低いのは、分離膜aの細孔径が小さく、IgGが膜を通過できなかったためである。
実施例1〜6及び比較例1〜5について、表1にまとめた。
Figure 2019166520
本発明の精製システムは、分離膜表面に親水性ポリマーが存在しており、異なる複数の分離膜モジュールからなる連続したシステムであり、抗体等の目的物の多量体や欠損体が除去でき、かつ、目的物の付着を抑制できるため、バイオ医薬品の精製システムとして好適に用いることができる。
1 バイオ医薬品原液槽
2 分離膜モジュールC
2−1 分離膜モジュールCの入口
2−2 分離膜モジュールCの濾液出口
3 分離膜モジュールA
3−1 分離膜モジュールAの入口
3−2 分離膜モジュールAの濾液出口
4 分離膜モジュールB
4−1 分離膜モジュールBの入口
4−2 循環配管
4−3 濾過配管
4−4 補液配管
5 回収槽

Claims (5)

  1. タンパク質を含有する溶液からバイオ医薬品を得るための精製システムであり、少なくとも、
    8〜40nmの細孔径を有する分離膜aを内蔵する分離膜モジュールAと、
    2〜7nmの細孔径を有する分離膜bを内蔵する分離膜モジュールBが連続した精製システムであり、
    上記分離膜a、bの少なくともいずれかの表面にアミド基と直鎖または分岐状のアルキル基を有する親水性ポリマーが存在する、バイオ医薬品精製システム。
  2. 上記分離膜モジュールAの前に、さらに、0.1〜5μmの細孔径を有する分離膜cを内蔵する分離膜モジュールCを含む、請求項1記載のバイオ医薬品精製システム。
  3. 上記バイオ医薬品の回収率が70%以上である、請求項1又は2記載のバイオ医薬品精製システム。
  4. 上記親水性ポリマーが、カルボン酸ビニルエステルユニットを有する共重合体である、請求項1〜3のいずれか一項記載のバイオ医薬品精製システム。
  5. 上記バイオ医薬品が抗体医薬品である、請求項1〜4のいずれか一項記載のバイオ医薬品精製システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022202603A1 (ja) * 2021-03-26 2022-09-29 東レ株式会社 多孔質吸着材料、およびそれを用いたバイオ医薬品精製用分離カラム、ならびに、バイオ医薬品の製造方法

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