JP2019165745A - ポリマーベシクルを使用する遺伝子編集ツールを送達するための組成物および方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリマーベシクルを使用する遺伝子編集ツールを送達するための組成物および方法を提供すること。【解決手段】遺伝子改変のための組成物、およびその組成物を形成する方法。この組成物は、合成ポリマーベシクルと、合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムとを含み得る。遺伝子編集システムは、タンパク質構成成分と、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分とを含み得る。システムおよび方法は、合成ポリマーベシクルおよび合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムを含む組成物によって遺伝子改変を可能にする。【選択図】なし
Description
関連出願
本出願は、2015年7月2日に出願された米国仮特許出願第62/187,942号、2016年4月14日に出願された米国仮特許出願第62/322,346号、および2016年6月30日に出願された米国通常特許出願第15/199,021号に対する優先権の利益を主張し、これらの全ての出願はそれらの全体が本明細書により参照として援用される。
本出願は、2015年7月2日に出願された米国仮特許出願第62/187,942号、2016年4月14日に出願された米国仮特許出願第62/322,346号、および2016年6月30日に出願された米国通常特許出願第15/199,021号に対する優先権の利益を主張し、これらの全ての出願はそれらの全体が本明細書により参照として援用される。
背景
近年、配列特異的ヌクレアーゼの開発に基づいて、ゲノム編集技術の新時代が到来している。特に、かかるヌクレアーゼは、正確なゲノム位置にDNA二重鎖開裂(DSB:double strand break)を生じさせるために使用することができ、その後、細胞修復機構を利用してヌクレオチドおよび/または遺伝子をサイレンシングまたは置換する。核酸配列の標的編集は、遺伝子機能の研究にとって非常に有望なアプローチであり、またヒト遺伝性疾患の新しい治療法を提供する可能性を有する。
近年、配列特異的ヌクレアーゼの開発に基づいて、ゲノム編集技術の新時代が到来している。特に、かかるヌクレアーゼは、正確なゲノム位置にDNA二重鎖開裂(DSB:double strand break)を生じさせるために使用することができ、その後、細胞修復機構を利用してヌクレオチドおよび/または遺伝子をサイレンシングまたは置換する。核酸配列の標的編集は、遺伝子機能の研究にとって非常に有望なアプローチであり、またヒト遺伝性疾患の新しい治療法を提供する可能性を有する。
現在の遺伝子編集ツールとして、例えばRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼCas9が挙げられ、これはゲノム内の配列特異的DNA切断をもたらす。特異的ガイドRNAを提供することによりCas9および他の酵素を任意の配列に方向付け、制御されたDNA開裂を導入する可能性は、in vivoで様々な形でゲノムを潜在的に改変するための強力なツールを提供する。特に、DNA中の開裂は、非相同末端結合(NHEJ:non−homologous end joining)を介した切断部位でのDNA変異、またはDNA鋳型を使用して、相同組換え修復(HDR:homology−directed repair)を介した切断部位の周囲のDNAの置換をもたらし得る。HDR鋳型は、ヌクレアーゼが標的とするDNA配列に所望の遺伝子変化を供給するように設計することができる。
それゆえ、これらのツールは、例えば点変異を修正または誘導するためにネイティブDNAについてヌクレオチド塩基を除去、置換、または付加する可能性、およびフレームシフト変異を修正または誘導するためにヌクレオチド塩基を変化させる可能性を提供する。さらに、かかるツールは、1つまたは1つより多くの遺伝子の部分として複数のコドンを含有するDNA片を除去、挿入、または改変することができ得る。
現在、標的細胞に核酸を送達するための機構は、ウイルスベクターの使用を含む。しかしながら、ウイルスに基づく遺伝子送達は、毒性、DNAまたはRNAの凝集、ペイロードサイズ限界、ならびにコストおよび時間を含むラージスケール生成での困難を含む、制限を有する。
ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルスなど)および非ウイルスベクターの両方を使用した機能的DNAおよびRNAの送達において進展があった。例えば、野生型AAVは、ウイルスの明らかな病原性の欠落などのいくつかの特徴のために、遺伝子治療研究者の興味を多く引くものであった。また、それは非分裂細胞に感染することができ、宿主細胞ゲノム内のヒト第19染色体の特異的部位(AAVS1と呼ばれる)に安定的に組み込む能力を有する。この特徴のために、ランダム挿入および変異誘発の脅威を示し、ときにはがんの発症を伴うレトロウイルスよりも、野生型AAVはいくらか予測可能なものである。AAVに基づく遺伝子治療ベクターは、宿主細胞核においてエピソームのコンカテマーを形成する。非分裂細胞においては、これらのコンカテマーは、宿主細胞の寿命の間、無傷のままである。分裂細胞においては、エピソームDNAは宿主細胞DNAに伴って複製されないので、AAV DNAは細胞分裂を通して失われる。宿主ゲノムへのAAV DNAのランダム統合は検出可能であるが、非常に低い頻度でしか起こらない。また、AAVは非常に低い免疫原性しか示さず、外見上、中和抗体の発生に限定されており、一方でそれらは明らかに定義される細胞毒性応答を誘導しない。これらの特徴は、静止状態の細胞に感染する能力と共に、AAVがヒト遺伝子治療のためのベクターとしてアデノウイルスより優勢であることを示す。しかしながら、また、ウイルスベクター(AAVを含む)の使用は、いくつかの不利益、特にウイルスゲノムサイズの限定を伴う。例えば、AAVゲノムはたったの4.8キロベース(kb)であり、それゆえ様々な実施形態の多数の遺伝子編集ツールの単一媒体送達に使用することができない。
遺伝子編集ツールを送達するためのウイルスの使用のさらなる欠点として、分裂細胞のみを標的にすること、宿主ゲノムへのランダム挿入、複製のリスク、および宿主免疫反応の可能性、ならびに特に部位特異的遺伝子修正を達成するために必要とされる多数の様々な遺伝子編集ツールの組み込みを妨げるウイルスキャプシドにより課されるペイロードサイズの限定を挙げることができる。
一般的に、非ウイルスベクターは典型的に、製造するのが容易であり、免疫反応を生成しにくく、ウイルスベクターと比較して複製反応を生成しないが、既存の方法は概して、細胞への遺伝子材料のin vivo導入に効果的でなく、比較的低い遺伝子発現をもたらした。具体的には、いくつかの既存の非ウイルスシステムは、細胞へのタンパク質および/または核酸の形態の遺伝子編集ツールの送達について最近調査されている。かかるシステムは、広く「ナノカプセル」と分類することができ、ここでは遊離DNA/RNA/タンパク質のスラリーを、ポリマーペプチド;電荷に基づいて核酸と自己集合させるためにカチオン性両親媒性ポリマーで改変した「脂質に基づく媒体」(例えば、リポソーム、脂質に基づくナノ粒子など);および細胞内部移行を可能にする標的細胞により発現される特異的タンパク質への結合を介することを含む、核酸を標的にする「バイオコンジュゲート」(例えば、脂質、合成高分子など)で包む。これらの非ウイルスシステムの各々は、単一の送達媒体中に単一または多数の遺伝子編集ツールのいずれかを封入することについてそれ自体の1組の問題を提示する。例えば、ナノカプセルシステムでは、構造が非常に不安定であり、静脈内投与後にその内容物が脈管構造に漏れる場合がある。よって、有効な遺伝子編集に必要な十分な分量の材料構成成分の細胞内送達および放出を達成する性能はありそうにない。脂質に基づく媒体では、荷電した送達システムは、乏しい負荷容量および封入したペイロードの放出困難を示した。バイオコンジュゲートシステムでは、十分なサイズのベクターの使用は、核酸を血流/細胞質ゾル中のヌクレアーゼに直接曝露し、これはペイロードの断片化および破損を引き起こし、効率的な遺伝子編集を達成する能力を取り除く。
したがって、標的細胞に、小分子ガイドRNAなどの核酸、mRNAなどの核酸、および/またはラージDNAプラスミド、ならびにCas9などのタンパク質を送達するための有効な媒体が必要とされている。
要旨
システムおよび方法は、合成ポリマーベシクルおよび合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムを含む組成物によって遺伝子改変を可能にする。一部の実施形態では、遺伝子編集システムは、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分を含み得る。一部の実施形態では、遺伝子編集システムは、タンパク質構成成分をさらに含み得る。一部の実施形態では、タンパク質構成成分は、RNA指令型ヌクレアーゼを含み得、核酸構成成分は、標的配列に特異的なガイドリボ核酸(RNA)を含み得る。一部の実施形態では、核酸構成成分は、デオキシリボ核酸(DNA)修復鋳型をさらに含み得る。一部の実施形態では、RNA指令型ヌクレアーゼは、宿主細胞ゲノムで少なくとも1つの開裂を創出することができ、宿主細胞の修復プロセスは、外因性DNA修復鋳型に基づいて宿主細胞ゲノムの少なくとも1つのヌクレオチドの改変を誘発することができ、ここで少なくとも1つのヌクレオチドは、宿主細胞ゲノムの再ライゲーションに組み込まれる。
システムおよび方法は、合成ポリマーベシクルおよび合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムを含む組成物によって遺伝子改変を可能にする。一部の実施形態では、遺伝子編集システムは、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分を含み得る。一部の実施形態では、遺伝子編集システムは、タンパク質構成成分をさらに含み得る。一部の実施形態では、タンパク質構成成分は、RNA指令型ヌクレアーゼを含み得、核酸構成成分は、標的配列に特異的なガイドリボ核酸(RNA)を含み得る。一部の実施形態では、核酸構成成分は、デオキシリボ核酸(DNA)修復鋳型をさらに含み得る。一部の実施形態では、RNA指令型ヌクレアーゼは、宿主細胞ゲノムで少なくとも1つの開裂を創出することができ、宿主細胞の修復プロセスは、外因性DNA修復鋳型に基づいて宿主細胞ゲノムの少なくとも1つのヌクレオチドの改変を誘発することができ、ここで少なくとも1つのヌクレオチドは、宿主細胞ゲノムの再ライゲーションに組み込まれる。
一部の実施形態では、DNA修復プロセスは、RNA指令型ヌクレアーゼにより誘導された標的配列における二重鎖開裂のいずれかの側の領域に相同なDNA修復鋳型の領域に基づいて開始され得る。一部の実施形態では、遺伝子編集システムは、合成ポリマーベシクル中に、組成物の総重量に対して少なくとも3重量%の量で含まれ得る。
一部の実施形態では、タンパク質構成成分は、ネイティブ形態の酵素を含み得る。一部の実施形態では、タンパク質構成成分は、宿主細胞への送達後に酵素に翻訳されるメッセンジャーRNA(mRNA)分子を含み得る。一部の実施形態では、タンパク質構成成分は、酵素を発現するための1つまたは1つより多くの遺伝子をコードするデオキシリボ核酸(DNA)配列を含有する発現ベクターとしてであってもよい。一部の実施形態では、核酸構成成分は、ガイドリボ核酸(RNA)を発現するための1つまたは1つより多くの遺伝子をコードするDNA配列であってもよい。
一部の実施形態では、酵素およびガイドRNAを発現するための遺伝子をコードするDNA配列は、単一の発現ベクター上で提供することができる。一部の実施形態では、タンパク質構成成分は、宿主ゲノムのセグメントへの核酸構成成分の結合に基づいて宿主ゲノムを切断するように構成された酵素を含み得る。一部の実施形態では、酵素は、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)(CRISPR)関連タンパク質9(Cas9)である。一部の実施形態では、核酸構成成分は、少なくとも1つのトランスポゾンを含む発現ベクターを含み、タンパク質構成成分は、トランスポサーゼ剤を含む。一部の実施形態では、トランスポサーゼ剤は、ネイティブ酵素、宿主細胞への送達後に酵素に翻訳されるメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子、および酵素を発現するための1つまたは1つより多くの遺伝子をコードするデオキシリボ核酸(DNA)配列の1つであってもよい。一部の実施形態では、酵素を発現するための遺伝子をコードするDNA配列は、トランスポゾンを含む発現ベクター上で提供してもよい。
一部の実施形態では、合成ポリマーベシクルは、ポリ(エチレンオキシド)を含有する親水性ブロックと、疎水性ブロックとを含む、少なくとも1つのブロックコポリマーから発生させることができる。一部の実施形態では、疎水性ブロックは、脂肪族ポリ(無水物)、ポリ(核酸)、ポリ(エステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ペプチド)、ポリ(ホスファゼン)、および多(糖類)から選択することができる。一部の実施形態では、疎水性ブロックは、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PLGA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、またはポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)の1つまたは1つより多くを含み得る。
様々な実施形態における宿主細胞ゲノムを改変するためのシステムおよび方法は、ポリマーソーム中に、タンパク質構成成分および核酸構成成分を含む遺伝子編集システムを封入することと、封入された遺伝子編集システムを宿主細胞に送達することとを含み得る。一部の実施形態では、核酸構成成分は、宿主細胞内の標的核酸配列と相互作用するように構成されてもよい。一部の実施形態では、ポリマーソームは、宿主細胞内で遺伝子編集システムを選択的に放出するように構成される。
実施形態の方法はさらに、封入された遺伝子編集システムを含有する有効量の組成物を被験体に投与することにより、封入された遺伝子編集システムを宿主細胞に送達することを含み得る。一部の実施形態では、封入された遺伝子編集システムは、逐次飽和(progressive saturation)プロトコールを使用して調製することができる。
様々な実施形態における封入された遺伝子編集組成物の懸濁液を製造するシステムおよび方法は、ある分量のブロックコポリマーをある分量の低分子量ポリエチレングリコール(PEG)と熱ブレンド(thermally blending)して、PEG/ポリマー配合物を創出することと、遺伝子編集組成物溶液の一定分量をPEG/ポリマー配合物を含有する試料に添加することと、発生したポリマーソームが遺伝子編集組成物で逐次飽和されるように少なくとも1回の希釈ステップを行うこととを含み得る。一部の実施形態では、遺伝子編集組成物は、タンパク質構成成分と、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分とを含み得る。
一部の実施形態では、ブロックコポリマーは、両親媒性ジブロックコポリマーを含み得る。一部の実施形態では、両親媒性ジブロックコポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリ(ブタジエン)(PEO−b−PBD)を含み得る。一部の実施形態では、発生したポリマーソームは、遺伝子編集組成物に対して少なくとも50%の封入効率を有し得る。
様々な実施形態におけるシステムは、合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムを有する医薬組成物と、医薬組成物を静脈内に、吸入により、局所的に、経直腸的に、経膣的に、経皮的に、皮下に、腹腔内に、髄腔内に(intrathecally)、筋内に、
または経口で投与するための器具とを含むキットとして実行することができる。一部の実施形態では、遺伝子編集システムは、タンパク質構成成分と、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分とを含み得る。
または経口で投与するための器具とを含むキットとして実行することができる。一部の実施形態では、遺伝子編集システムは、タンパク質構成成分と、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分とを含み得る。
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の部分を構成し、例示的な実施形態を示し、様々な実施形態の説明と共に、本明細書中の特徴を説明する働きをする。
詳細な説明
遺伝子改変のための実施形態の組成物は、合成ポリマーベシクル、および合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムを含むように調製することができ、ここで遺伝子編集システムは、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分を含む。一実施形態では、また、遺伝子編集システムは、タンパク質構成成分を含み得る。一実施形態では、タンパク質構成成分は、リボ核酸(RNA)指令型ヌクレアーゼであってもよく、核酸構成成分は、標的配列に相補的なガイドRNAであってもよい。一実施形態では、また、核酸構成成分は、外因性デオキシリボ核酸(DNA)修復鋳型を含んでもよく、RNA指令型ヌクレアーゼは、標的配列に隣接する宿主細胞ゲノムで二重鎖開裂を創出するように構成されてもよい。一実施形態では、宿主細胞の修復プロセスは、宿主細胞ゲノムの再ライゲーション中に、外因性DNA修復鋳型に基づいて宿主細胞ゲノムの改変を誘発し得る。一実施形態では、DNA修復鋳型は、RNA指令型ヌクレアーゼにより誘導される二重鎖開裂に隣り合った宿主細胞ゲノムの領域に相同な末端領域を有し得る。一実施形態では、遺伝子編集システムは、合成ポリマーベシクル中に、組成物の総重量に対して少なくとも3重量%の量で含まれ得る。一実施形態では、タンパク質構成成分は、ネイティブ形態の酵素、または宿主細胞への送達後に酵素に翻訳されるように構成されたメッセンジャーRNA(mRNA)分子であってもよい。一実施形態では、タンパク質構成成分は、酵素をコードするデオキシリボ核酸(DNA)配列を含有する発現ベクターとして送達することができる。一実施形態では、核酸構成成分は、ガイドリボ核酸(RNA)をコードするDNA配列であってもよい。一実施形態では、酵素およびガイドRNAをコードするDNA配列は、単一の発現ベクター上で提供することができる。一実施形態では、タンパク質構成成分は、宿主ゲノムの相補的セグメントへの核酸構成成分の結合に基づいて宿主ゲノムを切断するように構成された酵素であってもよい。一実施形態では、酵素は、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連タンパク質9(Cas9)であってもよい。一実施形態では、核酸構成成分は、トランスポゾンを含む発現ベクターであってもよく、タンパク質構成成分は、トランスポサーゼであってもよい。一実施形態では、トランスポサーゼは、ネイティブ酵素、宿主細胞への送達後に酵素に翻訳されるように構成されたメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子、および酵素をコードするDNA配列の1つであってもよい。一実施形態では、DNA配列は、トランスポゾンを含む発現ベクター上で提供することができる。一実施形態では、合成ポリマーベシクルは、ポリ(エチレンオキシド)を有する親水性ブロックと、疎水性ブロックとを含む、少なくとも1つのブロックコポリマーから発生させることができる。一実施形態では、疎水性ブロックは、脂肪族ポリ(無水物)、ポリ(核酸)、ポリ(エステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ペプチド)、ポリ(ホスファゼン)、および多(糖類)から選択することができる。一実施形態では、疎水性ブロックは、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PLGA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、またはポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)の1つまたは1つより多くを含み得る。
遺伝子改変のための実施形態の組成物は、合成ポリマーベシクル、および合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムを含むように調製することができ、ここで遺伝子編集システムは、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分を含む。一実施形態では、また、遺伝子編集システムは、タンパク質構成成分を含み得る。一実施形態では、タンパク質構成成分は、リボ核酸(RNA)指令型ヌクレアーゼであってもよく、核酸構成成分は、標的配列に相補的なガイドRNAであってもよい。一実施形態では、また、核酸構成成分は、外因性デオキシリボ核酸(DNA)修復鋳型を含んでもよく、RNA指令型ヌクレアーゼは、標的配列に隣接する宿主細胞ゲノムで二重鎖開裂を創出するように構成されてもよい。一実施形態では、宿主細胞の修復プロセスは、宿主細胞ゲノムの再ライゲーション中に、外因性DNA修復鋳型に基づいて宿主細胞ゲノムの改変を誘発し得る。一実施形態では、DNA修復鋳型は、RNA指令型ヌクレアーゼにより誘導される二重鎖開裂に隣り合った宿主細胞ゲノムの領域に相同な末端領域を有し得る。一実施形態では、遺伝子編集システムは、合成ポリマーベシクル中に、組成物の総重量に対して少なくとも3重量%の量で含まれ得る。一実施形態では、タンパク質構成成分は、ネイティブ形態の酵素、または宿主細胞への送達後に酵素に翻訳されるように構成されたメッセンジャーRNA(mRNA)分子であってもよい。一実施形態では、タンパク質構成成分は、酵素をコードするデオキシリボ核酸(DNA)配列を含有する発現ベクターとして送達することができる。一実施形態では、核酸構成成分は、ガイドリボ核酸(RNA)をコードするDNA配列であってもよい。一実施形態では、酵素およびガイドRNAをコードするDNA配列は、単一の発現ベクター上で提供することができる。一実施形態では、タンパク質構成成分は、宿主ゲノムの相補的セグメントへの核酸構成成分の結合に基づいて宿主ゲノムを切断するように構成された酵素であってもよい。一実施形態では、酵素は、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連タンパク質9(Cas9)であってもよい。一実施形態では、核酸構成成分は、トランスポゾンを含む発現ベクターであってもよく、タンパク質構成成分は、トランスポサーゼであってもよい。一実施形態では、トランスポサーゼは、ネイティブ酵素、宿主細胞への送達後に酵素に翻訳されるように構成されたメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子、および酵素をコードするDNA配列の1つであってもよい。一実施形態では、DNA配列は、トランスポゾンを含む発現ベクター上で提供することができる。一実施形態では、合成ポリマーベシクルは、ポリ(エチレンオキシド)を有する親水性ブロックと、疎水性ブロックとを含む、少なくとも1つのブロックコポリマーから発生させることができる。一実施形態では、疎水性ブロックは、脂肪族ポリ(無水物)、ポリ(核酸)、ポリ(エステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ペプチド)、ポリ(ホスファゼン)、および多(糖類)から選択することができる。一実施形態では、疎水性ブロックは、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PLGA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、またはポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)の1つまたは1つより多くを含み得る。
一実施形態では、宿主細胞ゲノムを改変する方法は、ポリマーソーム中に、遺伝子編集システムを封入することと、封入された遺伝子編集システムを宿主細胞に送達することとを含み得、ここでポリマーソームは、宿主細胞内で遺伝子編集システムを選択的に放出するように構成される。一実施形態では、遺伝子編集システムは、タンパク質構成成分と、宿主細胞内の標的核酸配列と相互作用するように構成された核酸構成成分とを含み得る。一実施形態では、封入された遺伝子編集システムの宿主細胞への送達は、封入された遺伝子編集システムを含有する有効量の組成物を被験体に投与することにより行うことができる。一実施形態では、封入された遺伝子編集システムは、逐次飽和プロトコールを使用して調製することができる。一実施形態では、封入された遺伝子編集組成物懸濁液の製造は、ある分量のブロックコポリマーをある分量の低分子量ポリエチレングリコール(PEG)と熱ブレンドして、PEG/ポリマー配合物を創出することと、遺伝子編集組成物溶液の一定分量をPEG/ポリマー配合物を含有する試料に添加することと、発生したポリマーソームが遺伝子編集組成物で逐次飽和されるように少なくとも1回の希釈ステップを行うこととを含み得る。一実施形態では、遺伝子編集組成物は、タンパク質構成成分と、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分とを含み得る。一実施形態では、ブロックコポリマーは、両親媒性ジブロックコポリマーであってもよい。一実施形態では、両親媒性ジブロックコポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリ(ブタジエン)(PEO−b−PBD)であってもよい。一実施形態では、発生したポリマーソームは、遺伝子編集組成物に対して少なくとも50%の封入効率を有する。
様々な実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。可能である場合は、同じまたは同様の部分について言及するために、図面全体を通して同じ参照番号を使用する。特定の実施例および実行についてなされた参照は、例示の目的のためであり、特許請求の範囲を限定することを意図しない。
明らかにするために別々の実施形態に関して本明細書で説明されるある特定の特徴は、また、単一の実施形態で組合せにて提供され得ることが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために単一の実施形態に関して説明される様々な特徴は、また、別々にまたは任意の下位の組合せで、提供することができる。さらに、範囲で示される値の参照は、その範囲内のありとあらゆる値を含む。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が明らかに別に規定しない限り、複数の指示物を含む。
「複数」という単語は、本明細書では、1つより多くを意味するために使用される。ある範囲の値が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値は別の実施形態を形成することが理解される。全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。
「被験体」および「患者」という用語は、ヒト患者を指すために本明細書で相互変換可能に使用されるが、「被験体」という用語は、また、任意の動物を指すこともある。様々な実施形態で、被験体は哺乳動物、非ヒト動物、イヌ、および/または脊椎動物であり得ることを理解するべきである。
「モノマー単位」という用語は、本明細書では、モノマーの1つとして、同じまたは同様の数の原子を含有するポリマー分子の単位を意味するために使用される。モノマー単位は、本明細書で使用される場合、単一の種類(同種)または様々な種類(異種)のものであってもよい。
「ポリマー」という用語は、接続されたモノマー分子を含む高分子の通常の意味に従って使用される。
「両親媒性」という用語は、本明細書では、極性(水溶性)群および疎水性(水不溶性)群の両方を含有する物質を意味するために使用される。
「有効量」という用語は、本明細書では、特定の生物学的結果、例えば、これらだけには限らないが、本明細書で開示、説明、または例示される生物学的結果を達成するために有効な、化合物、材料、または組成物の量を指すために使用される。かかる結果として、当技術分野で好適な任意の手段により決定される、本明細書で挙げる疾患状態のいずれかと関連付けられる症状の有効な低減が挙げられ得るが、これに限定されない。当業者に認識されるように、薬剤、例えばヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポサーゼ、リコンビナーゼ、ハイブリッドタンパク質、融合タンパク質、タンパク質ダイマー、タンパク質(またはタンパク質ダイマー)およびポリヌクレオチドの複合体、またはポリヌクレオチドの有効量は、例えば所望の生物学的応答;標的にされる特異的対立遺伝子、ゲノム、標的部位、細胞、または組織;および使用される薬剤などの様々な因子によって変動し得る。
「膜」という用語は、本明細書では、三次元空間内で二次元表面を画定し、したがって少なくとも局所的な意味で1つの空間を別の空間から分離する分子の空間的に明確な集合を意味するために使用される。
「活性剤」という用語は、本明細書では、それが導入された生物学的システムをはっきりと変えるか、またはこれに影響を及ぼす任意のタンパク質、ペプチド、糖、糖類、ヌクレオシド、無機化合物、脂質、核酸、小合成化学化合物、または有機化合物を指すために使用される。
「媒体」という用語は、本明細書では、固有の治療有益性を有しないが、細胞への送達の目的のために活性剤と組み合わされた場合、生成物の有効性および安全性を改善する利益ならびに患者の利便性および服薬遵守のために、これらだけには限らないが、活性剤のin vivo送達の機構または様式、その濃度、バイオアベイラビリティ、吸収、分布、および排除を含む、活性剤の特性の改変をもたらす剤を指すために使用される。
「担体」という用語は、本明細書では、薬物送達の目的のために薬学的活性剤を組み込むために使用される送達媒体を説明するために使用される。
「ホモポリマー」という用語は、本明細書では、1つのモノマー種のポリマーに由来するポリマーを指すために使用される。
「コポリマー」という用語は、本明細書では、1つのモノマーのみが使用されるホモポリマーとは対照的に、2つ(または2つより多く)のモノマー種のポリマーに由来するポリマーを指すために使用される。コポリマーは少なくとも2つの種の構成要素単位(また、構造単位)からなるので、コポリマーはこれらの単位がどのように鎖に沿って配置されるかに基づいて分類することができる。
「ブロックコポリマー」という用語は、本明細書では、共有結合により連結した2つまたは2つより多くのホモポリマーサブユニットを含み、ホモポリマーサブユニットの連合は、接合ブロックとして公知の中間非繰返しサブユニットを必要とし得る、コポリマーを指すために使用される。2つまたは3つの別個のブロックを有するブロックコポリマーは、本明細書では、それぞれ「ジブロックコポリマー」および「トリブロックコポリマー」と呼ばれる。
「負荷容量」という用語は、本明細書では、担体の総重量で割った担体内の特定の化合物の重量を指すために使用される。「封入効率」および「負荷効率」という用語は、本明細書では、封入前の溶液中の元の化合物の重量で割った、担体懸濁液内に封入され、および/または組み込まれた特定の化合物の重量(%として表される)を指すために相互変換可能に使用される。
「核酸」および「核酸構成成分」という用語は、本明細書では、核酸塩基および酸性部分を有する化合物、例えばヌクレオシド、ヌクレオチド、またはヌクレオチドのポリマーを指すために相互変換可能に使用される。典型的に、ポリマー核酸、例えば3つまたは3つより多くのヌクレオチドを含む核酸構成成分は直鎖分子であり、ここで隣接するヌクレオチドはホスホジエステルまたはホスホロチオエート連結を介して互いに連結される。一部の実施形態では、「核酸」は、個々の核酸残基(例えばヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)を指す。一部の実施形態では、「核酸」は、3つまたは3つより多くの個々のヌクレオチド残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を指す。本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのポリマー(例えば少なくとも3つのヌクレオチドのストリング)を指すために相互変換可能に使用することができる。一部の実施形態では、「核酸」は、RNAならびに一本鎖および/または二本鎖DNAを包含する。核酸は、例えばゲノム、転写産物、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、snRNA、プラスミド、コスミド、染色体、染色分体に関して天然であるか、または他の天然核酸構成成分であってもよい。他方で、核酸構成成分は、非天然分子、例えば組換えDNAもしくはRNA、人工染色体、遺伝子操作したゲノムもしくはその断片、または合成DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドであってもよく、または非天然ヌクレオチドもしくはヌクレオシドを含んでもよい。さらに、「核酸」、「DNA」、「RNA」という用語、および/または同様の用語は、核酸アナログ、例えばホスホロチオエート連結を含むホスホジエステル骨格以外を有するアナログを含む。
核酸は、天然源から精製してもよく、組換え発現系を使用して生成してもよく、任意選択で精製、化学合成などをしてもよい。適切な場合、例えば化学合成分子の場合、核酸は、ヌクレオシドアナログ、例えば化学修飾塩基または糖および骨格改変を有するアナログを含み得る。核酸配列は、別に示されない限り、5’〜3’方向で示される。一部の実施形態では、核酸は、天然ヌクレオシド(例えばアデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン);ヌクレオシドアナログ(例えば2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロピリミジン、3−メチルアデノシン、5−メチルシチジン、2−アミノアデノシン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−プロピニル−ウリジン、C5−プロピニル−シチジン、C5−メチルシチジン、2−アミノアデノシン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、および2−チオシチジン);化学修飾塩基;生物学的に改変した塩基(例えばメチル化塩基);挿入塩基(intercalated base);修飾糖(例えば2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース);および/または修飾ホスフェート基(例えばホスホロチオエートおよび5’−N−ホスホロアミダイト連結)であるか、またはこれらを含む。
「RNA誘導型ヌクレアーゼ」および「RNA誘導型エンドヌクレアーゼ」という用語は、本明細書で相互変換可能に使用され、切断の標的ではない1つまたは1つより多くのRNAと複合体を形成する(例えばこれと結合または会合する)ヌクレアーゼを指す。例のRNA誘導型ヌクレアーゼは、(CRISPR関連システム)Cas9エンドヌクレアーゼであるRNA誘導型ヌクレアーゼである。一部の実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼは、RNAとの複合体である場合、ヌクレアーゼ:RNA複合体と呼ばれることもある。典型的に、結合したRNA(複数可)は、ガイドRNAと呼ばれる。ガイドRNAは、2つもしくは2つより多くのRNAの複合体として、または単一のRNA分子として存在し得る。単一のRNA分子として存在するガイドRNAは単一ガイドRNA(sgRNA)と呼ばれることもあるが、「ガイドRNA」および「gRNA」という用語は、単一の分子または2つもしくは2つより多くの分子の複合体のいずれかとして存在するガイドRNAを指すために本明細書で相互変換可能に使用することができる。典型的に、単一のRNA種として存在するガイドRNAは、2つのドメイン:(1)標的核酸へのホモロジーを共有する(例えば、そして、標的へのCas9複合体の結合を指示する)ドメイン;および(2)Cas9タンパク質に結合するドメインを含む。一部の実施形態では、ドメイン(2)は、tracrRNAとして公知の配列に対応し、ステム−ループ構造を含む。例えば、一部の実施形態では、ドメイン(2)は、tracrRNAに相同である。ガイドRNAは、標的部位に相補的であり、標的部位へのヌクレアーゼ/RNA複合体の結合を媒介し、ヌクレアーゼ:RNA複合体の配列特異性を提供するヌクレオチド配列を含む。RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えばCas9)はDNA切断部位を標的にするためにRNA:DNAハイブリダイゼーションを使用するので、これらのタンパク質は、原理的に、ガイドRNAにより特定されるどんな配列も標的にすることができる。
「処置」、「処置する」、および「処置すること」という用語は、本明細書で説明する疾患もしくは障害の進行またはその1つもしくは1つより多くの症状を退行させ、緩和し、その発症を遅延させ、または阻害することを目的とした臨床的介入を指す。本明細書で使用される場合、「処置」、「処置する」、および「処置すること」という用語は、本明細書で説明する疾患もしくは障害の進行またはその1つもしくは1つより多くの症状を退行させ、緩和し、その発症を遅延させ、または阻害することを目的とした臨床的介入を指す。一部の実施形態では、処置は、1つもしくは1つより多くの症状が発現した後および/または疾患が診断された後に投与することができる。他の実施形態では、処置は、例えば疾患の症状の発症を防ぐか、もしくは遅延させるか、または疾患の発症もしくは進行を阻害するために、症状の非存在下で投与することができる。例えば、処置は、症状の発症前に(例えば症状歴に照らして、および/または遺伝的因子もしくは他の易罹患性因子に照らして)かかりやすい個体に投与することができる。また、処置は、症状が消散した後に、例えばそれらの再発を防ぐか、または遅延させるために継続することができる。
DNAにおける二重鎖開裂(DSB)の正確かつ効率的な修復は、細胞においてゲノム安定性を維持するために重要である。DNAへの構造的損傷は、いくつかの細胞内因子(例えばヌクレアーゼ、活性酸素種など)および外力(例えば電離放射線、紫外線(UV)照射など)のいずれかのために、ゲノム内でランダムかつ予測不能に起こり得る。特に、DNAにおける二重鎖開裂(DSB)の正確かつ効率的な修復は、ゲノム安定性を維持するために重要である。したがって、細胞は天然にいくつかのDNA修復機構を保有し、これは特異的部位で制御されたDSBを通してDNA配列を変えるために活用することができる。それゆえ、遺伝子改変ツールは、ゲノムにDSBを導入する、非特異的DNAヌクレアーゼを伴うプログラム可能な配列特異的DNA結合モジュールからなることができる。例えば、CRISPRは、ほとんどが細菌で発見され、短い直接反復を含有する座であり、外因性配列、例えばプラスミドおよびファージに対する抵抗性を与える、原核生物獲得免疫系の部分である。RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、原核生物の先天性免疫の構成成分であるCRISPR/CRISPR関連タンパク質9(Cas9)システムから適合されたプログラム可能な遺伝子工学ツールである。
真核生物細胞では、DSBの機構的修復は、主に2つの経路:非相同末端結合(NHEJ)および相同組換え修復(HDR)によって起こる。NHEJは、2つの末端の再ライゲーションで1個または数個のみの相補的塩基の整列を必要とするホモロジー独立経路である。HDRは、典型的にDSB修復のより正確な機構であり、DNA開裂を修復するためにより長いストレッチの配列ホモロジーを使用する。具体的には、様々なHDR経路は、相同性ドナー(例えば姉妹染色分体、プラスミド、オリゴヌクレオチド(すなわち、オリゴ−DNA)など)の使用により特徴付けられる。HDRでは、DSB修復は、開裂で5’末端DNA鎖を切除して、3’突出末端を創出することを含む。続いて、3’一本鎖DNA(すなわち、3’突出末端)は、相同DNA二重鎖に侵入し、1つの鎖に代わり、他方と対を形成して、ヘテロ二重鎖DNAおよび置換されたDNAの一本鎖の領域からなる置換ループ(Dループ)構造を創出する。最後に、組換え中間体は解離して、DNA修復を完了する。
修復を完了するための異なる解離を提供する2つの特定のHDR経路は、二重鎖切断修復(DSBR:double−strand break repair)および合成依存性単鎖アニーリング(SDSA:synthesis−dependent strand annealing)を含む。DSBR経路では、3’突出末端は、無傷の相同鋳型に侵入し、DNA修復合成のためのプライマーとして働く。D−ループは、侵入鎖の3’末端からの新規DNA合成の開始、またはヘリカーゼ活性により延長することができ、これにより、DSBの反対側の3’突出末端はアニーリングし得、したがって二重「ホリデー接合」(dHJ)中間体を形成し得る。あるいは、また、両方のDSB末端からの2つの独立した鎖侵入、続いて同時のDNA合成およびアニーリングは、dHJ中間体をもたらし得る。組換えが1つの末端に依存するか、両方が鎖侵入を受けるかについての実験的証拠は不明である。これらのdHJは、いくつかのHJレゾルバーゼの1つにより切断することができ、どちらの鎖対が切断されるかによって、非交叉(すなわち、同じ分子上の全て新しく合成された配列)または交叉(各分子上の新しい配列と古い配列との組合せ)結果を産出し得る。切断の代わりに、dHJは、「解離され」て、排他的に非交叉結果を産出し得る。
SDSA経路は保存的であり、排他的に非交叉事象をもたらす。SDSA経路では、SDSAにおける鎖侵入およびD−ループ形成に続いて、侵入鎖の新たに合成された部分は、鋳型から排され、他のDSB末端で非侵入鎖のプロセスされた末端に戻る。非侵入鎖の3’末端は、ギャップを満たすように伸長およびライゲーションされ、このようにしてSDSAを完了する。
ポリマーソームは、ナノメートルの寸法(直径50〜300nm)で形成され、細胞酸素担体としてのいくつかの好ましい特性を示す、合成ポリマーベシクルである。例えば、ポリマーソームは、自己集合を通して生成することができ、それらの水性核内に親水性化合物、例えばヘモグロビン(Hb)およびミオグロビン(Mb)を封入することができる、二層および複数層のベシクルのクラスに属する。さらに、ポリマーソームは、完全生分解性FDA承認構成成分から設計され、in vitroまたは急性in vivo毒性を示さない、いくつかの選択肢を提供する。
ポリマーソームは、リポソームおよび他のナノ粒子に基づく送達媒体に優るいくつかの優れた特性を示し、このため様々な分子の有効な担体である。例えば、それらの構成成分コポリマーブロックの構造によって、ポリマーソーム膜は、リポソームの膜(3〜4nm)より顕著に厚く(約9〜22nm)なることができ、そのため、リポソームより5〜50倍機械的に頑丈であり、少なくとも10倍透水性が低い。ポリマーソームの循環半減期は、1.2〜3.7kDaの範囲のポリ(エチレンオキシド)(PEO)ブラシを有するものでは、同様のサイズのポリ(エチレングリコール)に基づくリポソーム(PEGリポソーム)の循環半減期(約24〜48時間)と類似し、さらに混成構築ブロックとして様々なコポリマーを使用することにより具体的に合わせることができる。ポリマーソームは、ベシクルサイズおよびモルホロジーにおける任意の変化を受けることなく、in situで数ヵ月間、および十分に混合された準生理学的条件下の血漿中で数日間安定であることが示されている。それらは、最大60℃まで表面内熱転移を示さない。加えて、ドキソルビシンを封入した、PEO−b−PCLおよびポリ(エチレン−オキシド)−ブロック−ポリ(ブタジエン)−(PEO−b−PBD−)に基づくポリマーソーム配合物についての初期の動物研究は、急性または亜急性毒性を示さなかった。最後に、ポリマーソームの生成および保存は、経済的である。ポリマーソームは、製造後の費用のかかる精製プロセスを必要とすることなく、ラージスケールで容易に生成および保存することができる。
有望な生分解性ポリマーソーム封入タンパク質配合物は、これらだけには限らないが、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PLGA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、およびポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)を含む、PEGと化学的に同義の(本明細書で相互変換可能に使用される)親水性生体適合性ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(核酸)、ポリ(エステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ペプチド)、ポリ(ホスファゼン)、および多(糖類)からなるブロックコポリマーからなってもよい。100%PEG化表面からなるポリマーソームは、改善されたin vitro化学的安定性、増強されたin vivoバイオアベイラビリティ、および延長された血液循環半減期を有する。例えば、ポリマーソームの膜部分を構成する脂肪族ポリエステルは、生理学的条件下で、例えばヒト体内で、それらのエステル結合の加水分解により分解される。それらの生分解性の性質のために、脂肪族ポリエステルは、薬物送達デバイスにおける移植可能な生体材料、生体再吸収可能な縫合糸、癒着防止剤として、および組織工学による傷害修復のための足場としての使用について多くの注目を集めている。
様々な実施形態では、遺伝子編集に必要とされる分子(すなわち、遺伝子編集ツール)は、単一のポリマーソーム担体を使用して細胞に送達することができる。「遺伝子編集」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子によりコードされる生成物の機能を付加、破壊、または調節するための、ゲノムDNA内の核酸の挿入、欠失、または置換を指す。様々な遺伝子編集システムは、最低限、ゲノムDNAを切断して遺伝子機能を破壊または活性化する切断酵素(例えばヌクレアーゼまたはリコンビナーゼ)の導入を必要とする。さらに、新規または既存のヌクレオチド/核酸の挿入に関する遺伝子編集システムでは、挿入ツール(例えばDNA鋳型ベクター、トランスポゾン、またはレトロトランスポゾン)が、切断酵素(例えばヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、インテグラーゼ、またはトランスポサーゼ)に加えて細胞に送達されなければならない。リコンビナーゼのためのかかる挿入ツールの例として、DNAベクターが挙げられ得る。ヌクレアーゼについては、挿入ツールの例として、(新規合成ヌクレオチドを挿入するための)HDRのための鋳型DNAが挙げることができ;他の遺伝子編集システムは、インテグラーゼの送達に挿入ベクターが伴い、トランスポサーゼにトランスポゾン/レトロトランスポゾンが伴うことなどを必要とする。一部の実施形態では、切断酵素として使用され得るリコンビナーゼの例は、CREリコンビナーゼである。様々な実施形態では、挿入ツールで使用され得るインテグラーゼの例として、いくつかのウイルス(例えばAAV、ガンマレトロウイルス、レンチウイルスなど)のいずれかから取られたウイルスに基づく酵素が挙げられる。挿入ツールで使用され得るトランスポゾン/レトロトランスポゾンの例として、piggybac、sleeping beauty、L1などが挙げられる。
様々な実施形態では、切断酵素として使用され得るヌクレアーゼとして、Cas9、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN:transcription activator−like effector nuclease)、およびジンクフィンガーヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。また、Cas9が切断酵素である実施形態は、RNAの形態で、またはその後細胞内で転写されるDNAベクターの部分として細胞に送達され得るガイドRNAを必要とする。よって、HDRのためにヌクレアーゼおよびDNA鋳型を使用する遺伝子編集システムの例は、少なくとも2つの遺伝子編集ツール(すなわち、ヌクレアーゼおよびDNA鋳型)の同じ細胞への送達を必要とし、特異的ヌクレアーゼCas9については3つのツール(すなわち、Cas9、ガイドRNA、およびDNA鋳型)の送達を必要とする。別の例では、ヌクレアーゼ、およびトランスポサーゼを伴うトランスポゾンを使用する遺伝子編集システムは、少なくとも3つの遺伝子編集ツール(すなわち、ヌクレアーゼ、トランスポゾン、およびトランスポサーゼ)の同じ細胞への送達を必要とし、特異的ヌクレアーゼCas9については4つのツール(すなわち、Cas9、ガイドRNA、トランスポゾン、およびトランスポサーゼ)の送達を必要とする。
様々な実施形態では、2つまたは2つより多くの遺伝子編集ツールを必要とする遺伝子編集システムを含む、本明細書で説明する遺伝子編集システムは、単一のナノ粒子担体内に封入され得る。特に、1組の遺伝子編集ツールのポリマーソーム封入は、所望の遺伝子改変を行うために必要な全ての分子の細胞への効率的な送達を可能にし得る。
ポリマーソームに基づく送達システムは、材料についての実質的な融通性、ならびに大きなペイロード容量、in vivo安定性、およびナノ粒子ペイロードの標的化放出を提供する。例えば、ポリマーソームは、細胞エンドソーム内で遭遇するpHなどの、pH変化の結果としてその内容物を放出するように構成してもよい。
一例では、二重鎖DNAの部位特異的切断は、様々なポリマーソームを使用したRNA指令型ヌクレアーゼおよびガイドRNAの送達により可能にすることができる。様々な実施形態のRNA分子は、2つの非コードRNAエレメント:ネイティブDNA内の標的配列に相補的であり、これとヘテロ二量体化する20bpの独特な配列(スペーサー配列)を含有するCRISPR RNA(crRNA);および(2)トランス活性化crRNA(tracrRNA)からなり得る。crRNA:tracrRNA二重鎖は、crRNA上のスペーサーと標的DNA上の相補配列(プロトスペーサー)との間で相補的塩基対を形成し、DNA/RNA複合体を創出することにより、Cas9をゲノム内の標的DNAに方向付ける。Cas9タンパク質の標的特異性は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる、DNA/RNA複合体方向についてDNAの対向鎖内の特異的ヌクレオチド塩基の存在に依存する。例えば、Streptococcus pyogenesからのCas9 RNA誘導型ヌクレアーゼ、spCas9は、5’−NGG−3’PAMを必要とする。
RNA指令型ヌクレアーゼは、RNA/DNA複合体を認識し、標的配列内にDSBを創出する。DSBは、DNA/RNA複合体について対向鎖上のPAM配列から3塩基に位置する。すなわち、PAM配列(例えばNGG)は、3’方向では、プロトスペーサーに相補的な対向鎖上の領域に続く。
一部の実施形態では、ポリマーソームは、ネイティブタンパク質形態であり得るRNA指令型ヌクレアーゼを封入するために使用することができる。一部の実施形態では、RNA指令型ヌクレアーゼをコードするmRNAが代わりに封入されてもよく、一旦細胞内に入ると、アミノ酸に翻訳されて、酵素を形成する。
様々な実施形態は、ポリマーソームに封入されるDNAに基づくシステムであり得る。一部の実施形態では、RNA指令型ヌクレアーゼを発現する発現ベクターを、ポリマーソームに封入することができる。発現ベクターは、例えば、RNA指令型ヌクレアーゼをコードするDNAおよびプロモーター領域を含有するように構築されたプラスミドであってもよい。標的細胞内に入ると、RNA指令型ヌクレアーゼをコードするDNAは、転写および翻訳されて、酵素を創出し得る。一部の実施形態では、発現ベクターは、ガイドRNAおよびRNA指令型ヌクレアーゼを発現するように構築することができる。様々な実施形態では、また、HDR鋳型として働くための外因性DNAを封入することにより、HDRを遺伝子編集に利用することができる。すなわち、一部の実施形態では、ポリマーソームは、RNA誘導型ヌクレアーゼおよびガイドRNAに加えてDNA修復鋳型を封入することができる。修復鋳型は、遺伝子編集のための所望の配列、ならびに標的のすぐ上流および下流の追加の相同配列(左および右ホモロジーアームと呼ばれる)を含有し得る。各ホモロジーアームの長さおよび結合位置は、導入される変化のサイズに依存する。修復鋳型は、特定の適用によって、一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(ssODN)、二重鎖オリゴデオキシヌクレオチド(dsODN)、または二重鎖DNA(dsDNA)プラスミドであってもよい。例えば、ssDNA鋳型(例えばssODNまたはdsODN)は、小改変(例えば最大約50bpまたは単一の点変異)を導入するために使用することができる。様々な実施形態では、また、ssODNおよびdsODNは、意図される変異の両側に少なくとも40塩基対のホモロジーアームを含み得る。より大きなインサートのために、各々800bpまたはそれより大きいホモロジーアームを包含するdsDNAを使用することができる(例えば直鎖化されたプラスミドでまたはトランスポゾンとして)。
したがって、様々なガイドRNA分子は、特異性の高いDNA修復鋳型と共役したCas9を使用して、ほとんどどんな遺伝子でも変異、活性化、または抑制させるように設計することができる。
様々な実施形態では、RNA指令型ヌクレアーゼ(例えばCas9)および複数のガイドRNAを使用して、多重遺伝子編集適用を実現することができる。かかる適用は、大きなゲノム欠失、および/またはいくつかの遺伝子(例えば2〜7個の座)の同時改変を発生させるためのCas9の使用を含む。一部のシステムでは、複数のgRNAをクローニングすることにより、2〜7個の遺伝子座を標的にすることができる。
また、様々な実施形態のシステムは、ベクター、例えば人工的に構築したプラスミド上で提供されるトランスポゾンを使用して、DNAを標的細胞のゲノムに統合するように設計することができる。かかるシステムの適用は、新規遺伝子を導入して(すなわち、「ノックイン」して)挿入されたDNAを通して特定の機能を行うこと、または標的DNAにおける妨害を通して不適切に機能している変異した遺伝子を不活性化する(すなわち、「ノックアウト」する)ことを含み得る。
一部の実施形態では、DNAは、「カットアンドペースト」機構を介してベクターと染色体との間で直接転移されるトランスポゾンであってもよい。一部の実施形態では、トランスポゾンは、レトロトランスポゾン、すなわち、最初にRNA中間体に転写され、続いて逆転写によりDNAに転写され、転移されるDNAであってもよい。
様々な実施形態では、ポリマーソームは、トランスポゾンを含むベクター、および標的ゲノム内の特異的部位へのトランスポゾンの統合を触媒するトランスポサーゼを封入し得る。使用されるトランスポサーゼは、選択された特定のトランスポゾンに特異的であり、トランスポゾンの各々は、様々な実施形態での使用に望ましい特定の特性を有し得る。トランスポゾンの一例は、piggybacトランスポゾンであり、これはpiggybacトランスポサーゼにより標的ゲノムに転移される。具体的には、piggybacトランスポサーゼは、トランスポゾンの両末端上のトランスポゾン特異的末端逆位配列(ITR:inverted terminal repeat sequence)を認識し、ITR間の内容物をTTAA染色体部位に移行させる。piggybacトランスポゾンシステムは、ITR間に含まれ得る目的の遺伝子についてペイロード限界がない。トランスポゾンシステムの別の例は、sleepingbeautyトランスポゾンであり、これは、ITRを認識し、ITR間の内容物をTA染色体部位に移行させるsleepingbeautyトランスポサーゼにより標的ゲノムに転移される。様々な実施形態では、SBトランスポゾン媒介遺伝子移入、またはいくつかの同様のトランスポゾンのいずれかを使用する遺伝子移入は、治療用遺伝子の長期発現のために使用することができる。
本明細書で論じるRNA指令型ヌクレアーゼと同様に、ポリマーソームは、トランスポサーゼを、そのネイティブタンパク質で、標的細胞内で転写されてタンパク質になるmRNAとして、またはトランスポサーゼタンパク質を発現するDNAを含有する発現ベクターとして、封入することができる。例えば、トランスポサーゼをコードする遺伝子は、トランスポゾンそれ自体と同じベクター内で提供してもよく、異なるベクター上で提供してもよい。
様々な実施形態はさらに、標的細胞への送達のために、ポリマーソーム中にRNA指令型ヌクレアーゼ、1つまたは1つより多くのガイドRNA、およびトランスポゾンシステムを封入することを可能にし得る。かかるポリマーソームは、例えば疾患を引き起こす変異した遺伝子をその遺伝子の健康なコピーで置換するために使用することができ、遺伝子の健康なコピーは、ヌクレアーゼ活性により規定される特異的部位に挿入される。具体的には、挿入される1つまたは1つより多くの遺伝子を含み、トランスポサーゼによる認識のためにITRにより囲まれたトランスポゾンを創出してもよい。トランスポゾンおよびITRは、ITRの各末端上のホモロジーアームを含有するベクター上で提供することができる。トランスポゾンシステム(すなわち、トランスポゾンベクターおよび対応するトランスポサーゼ)は、RNA指令型ヌクレアーゼおよびガイドRNAと共に送達された場合、HDRで使用されるDNA修復鋳型の機能を提供し得る。すなわち、RNA誘導型ヌクレアーゼによる1つまたは1つより多くのDSBの創出後、HDRまたはNHEJを通して修復する代わりに、トランスポゾンを、ホモロジーアームに基づいて標的DNAに挿入することができる。一部の実施形態では、トランスポゾン挿入は、DSBにより発生した2つの末端の間で起こり得る。他の実施形態では、トランスポゾンは、標的DNA内の第1のDSBの1つのアームと第2のDSBの他のアームとの間に挿入され得る(すなわち、2つのDSBの間で配列を置換する)。
タンパク質および/または核酸を封入する様々なポリマーソーム配合物を様々な使用のために設計することができるが、各封入システムは、有効であるために共通の特徴を含み得る。例えば、核酸は、少なくとも50%の封入効率でポリマーソームに封入することができ、重量で最終ナノ粒子配合物の少なくとも10〜20重量%を占め得る。かかる最低限の重量割合および効率は、効率的なDNA切断を達成するのに十分な核酸の送達、および生成物が低コストで再現性よく発生し得ることを確実にする。別の例では、ポリマーソームは、安定であり、それでもポリマーソームが細胞内に取り込まれたら封入したペイロードの容易な放出を提供し、これによりエンドソームの再輸送を避け、核酸の放出を確実にするように設計することができる。さらに、様々な遺伝子治療システムで、ベクター(すなわち、トランスポゾン)は安定な発現を提供するように設計することができる。
本明細書で説明するポリマーソーム封入で提供される遺伝子編集ツールは、いくつかのin vivo適用に有利であり得る。例えば、実施形態の材料は、遺伝子の欠陥を切断または修復するために、様々な細胞種に送達することができる。かかる細胞として、肝細胞、肝内皮細胞、免疫細胞、ニューロンなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、実施形態のポリマーソームは、疾患を引き起こす欠陥のある遺伝子をサイレンシングするために、様々な細胞種に送達することができる(例えば、レーバー先天黒内障の根底にある変異をサイレンシングするための網膜細胞への送達)。
本明細書で説明するタンパク質および/または核酸のポリマーソーム封入および/または共封入を発生させるために、様々な方法を使用することができる。一部の実施形態では、独特な生物学的機能を有する核酸および/またはタンパク質を様々な分解性および非分解性ポリマーソームに封入および/または共封入するために、従来の封入技術、例えば薄膜再水和、直接水和、およびエレクトロフォーメーションを使用することができる。他の実施形態では、かかるタンパク質および/または核酸のポリマーソーム封入および/または共封入を調製するために、逐次飽和プロトコールを使用することができる。
具体的には、逐次飽和プロトコールは、等しい量のポリマー(例えば10mg)およびPEG(例えば10mg)を約95℃で約1時間加熱することを含む。試料混合物を遠心分離し、室温まで冷却してもよい。封入する生成物(例えばタンパク質および/または核酸を含有する遺伝子編集システム/組成物)の溶液は、例えば7.4pHのpHのポリブチレンスクシネート(PBS)中に調製してもよい。少量の溶液を最初に試料混合物に添加し(例えば10μL)、完全に混合し、続いて室温で約30分間超音波処理してもよい。試料をさらに、いくつかの希釈ステップで希釈してもよい。具体的には、各希釈ステップは、タンパク質および/または核酸を含有するある体積の溶液を添加し、続いて完全に混合し、室温で約30分間超音波処理することを含み得る。希釈ステップ後、得られた試料を、少なくとも1000kDa分子量のカットオフ膜を用いて、等張PBS中で約4℃にて少なくとも30時間透析してもよい。0.4重量%プロナーゼ溶液での処理によるタンパク質分解により、表面結合生成物を除去してもよい。様々な実施形態では、得られたポリマーソーム懸濁液の封入は、タンパク質分解の前後に測定してもよい。具体的には、タンパク質および/または核酸の濃度は、誘導結合プラズマ光学発光分光法(ICP−OES:inductively coupled plasma optical emission spectroscopy)、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS:inductively coupled plasma mass spectrometry)、マトリックス支援飛行時間型吸収質量分析(MALDI−TOF:matrix assisted absorption mass spectrometry time of flight)、原子吸光分析(AAS:atomic absorption spectroscopy)、および/または紫外可視吸収分光法を使用して測定することができる。
逐次飽和ステップは、ポリマーソーム内の遺伝子編集システムとしてタンパク質および/または核酸を封入することについて好ましい結果を提供し得る。すなわち、遺伝子編集組成物の負荷容量は、他の技術(例えば直接水和など)を使用するポリマーソーム封入と比較して顕著に改善され得る。特定の理論に束縛されるものではないが、かかる改善は、ポリマーソーム形成プロセスが初期希釈ステップ中に完了しないこと、およびさらなる封入がそれぞれの続くタンパク質溶液の添加と共に実現されることを示唆する。複数のリポソーム形成法からの様々なステップを最適化および組み合わせることにより、特定の逐次飽和プロトコールを、特定の遺伝子編集組成物(例えばタンパク質および/または核酸)およびポリマーソーム種のために開発してもよい。遺伝子編集システムの最終濃度、ポリマーソーム担体内で達成され得る相対的負荷レベル(すなわち、w/w% 組成物/ポリマー)、および遺伝子編集組成物封入効率に影響する因子を、体系的に評価してもよい。ポリマー分子量、遺伝子編集組成物の特性、緩衝溶液のpHおよび性質、正確なポリマー水和条件(すなわち、時間、温度、およびブレンド技術)、超音波処理ステップの回数および持続期間、ならびに凍結融解サイクルの付加または回避などの因子は全て、最終的なポリマーソームに封入される遺伝子編集システムの濃度および忠実度に影響を有し得る。
一部の実施形態では、各希釈ステップに使用される遺伝子編集組成物の濃度に基づいて達成され得る、封入効率と最終負荷容量(すなわち、組成物対ポリマーの重量割合)との間の直接的なトレードオフがあり得る。最終生成物がポリマーソーム送達媒体を利用する目的、すなわち、生化学的安定性を改善すること、循環半減期を増大させること、有害な副作用を最小限にすること、および関連するタンパク質の制御放出を達成することに適応することを保証するために、タンパク質および/または核酸の水性封入は、表面会合組成物に好ましい。広範囲の分子量およびサイズにわたり変動する様々な遺伝子編集組成物を使用して、様々な実施形態の技術を用いることができる。
モデルタンパク質およびモデル核酸の様々なポリマーソーム封入、ならびにかかるタンパク質および核酸の共封入の創出は、従来技術および逐次飽和を使用して創出することができる。例えば、ミオグロビン(Mb;Mw=約17kDa)は、治療的可能性を有する他の小タンパク質に匹敵するサイズおよび熱安定性(すなわち、60℃超で変性)を有するので、モデルタンパク質として使用した。また、ミオグロビンは、強い紫外線(UV)吸収を有し、これは、その鉄含有ヘム基の酸化還元状態により決定されるその機能状態の容易な特定を可能にする。かかる封入で使用され得る他のモデルタンパク質は、ウシ血清アルブミン(BSA;Mw=約66kDa)およびカタラーゼ(Mw=約250kDa)である。様々なサイズを有するモデルタンパク質の封入および共封入は、様々な実施形態で使用され得る機能的タンパク質のサイズの範囲を提供する。さらに、伸長因子1アルファ(EF1a)プロモーターを使用する緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現のための哺乳動物発現ベクターをコードするプラスミドDNA(すなわち、pEF−GFP DNA)などの、様々なDNAプラスミドを、ポリマーソーム封入のモデル核酸として使用することができる。pEF−GFP DNAは、約5000塩基対であり、約3283kDaの分子量を有する。
様々な実施形態は、PEG、および生分解性ポリマー(例えば生分解性ポリエステル、ポリ(アミド)、ポリ(ペプチド)、ポリ(核酸)など)である疎水性ブロックからなる、様々な両親媒性ポリマーのいずれかを使用して調製することができる。疎水性ブロックを形成し得る生分解性ポリマーの例として、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(メチルカプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシヘキサノエート(hdyroxyhexanoate))、ポリ(ヒドロキシオクタノエート(hydroxyoxtanoate))、およびポリ(トリメチレンカーボネート)が挙げられるが、これらに限定されない。
実験
実験
得られた粒子間の封入特性および形成技術を比較するために、様々なポリマーソーム配合物を使用することができる。例えば、PEO−b−PBDジブロックコポリマーは、完全にPEG化した表面を保有するポリマーソームを形成するために使用される。かかる表面は、非荷電かつ非分解性であり、ベシクル完全性を確実にし、不必要なタンパク質相互作用または改変を最小限にするために理想的なシステムを提供する。2つの異なる分子量のPEO−b−PBDジブロックコポリマー、「OB18」および「OB29」を用いて、それらが様々な最小サイズ、PEG長、および膜コア厚さのポリマーソームに関係するときの結果の一般化可能性を決定する。図1は、OB18およびOB29の様々な特性の比較を示す表を提供する。
比較および定量研究を以下のように行った。
材料
PEO(3900)−b−PBD(6500)(OB18)およびPEO(1300)−b−PBD(2500)(OB29)は、Polymer Source(Dorval、Quebec、Canada)から購入した。ウマ骨格筋Mb、ウシ血清アルブミン(BSA)、カタラーゼ(C)、ハイドロサルファイトナトリウム、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEG;Mn=約500)、Streptomyces griseusからのプロテアーゼ(「プロナーゼ」)、およびジクロロメタン(DCM)は、Sigma−Aldrich(St. Louis、USA)から購入した。透析チューブおよびバイアルは、Spectrum Laboratories(Rancho
Dominguez、USA)から購入した。従来使用のための他の化学物質は、Fisher Scientific(Suwanee、USA)から購入した。全ての化学物質は、別に示さない限り、試薬等級のものであった。
Dominguez、USA)から購入した。従来使用のための他の化学物質は、Fisher Scientific(Suwanee、USA)から購入した。全ての化学物質は、別に示さない限り、試薬等級のものであった。
動的光散乱(DLS:dynamic light scattering)装置であるDelsa(商標)Nano(Beckman Coulter、Indianapolis、USA)を使用して、粒子サイズを測定した。Genesys(商標)10S紫外可視分光光度計(Thermo Scientific、Suwanee、USA)を使用して光吸収分光法により、ミオグロビン濃度を決定した。マイクロビシンコニン酸(マイクロ−BCA)タンパク質アッセイキットを使用して、紫外可視分光光度法を利用して、および製造業者のプロトコール(Pierce Biotechnology,Inc、Rockford、IL、USA)に従うことにより、ポリマーソームに封入した懸濁液中のBSA濃度を測定した。Vista−PRO CCD ICP−OES(Varian、USA)を使用して、ポリマーソームに封入した懸濁液中のDNA濃度を決定した。
具体的には、DNA封入を定量するために、DNA試料を最初に白金(II)に基づく薬剤シスプラチンと反応させ、標準曲線を生成し、DNA濃度がどのように懸濁液中でDNA結合白金の量と相関するかを示した。かかる標準曲線は、DNA試料の連続希釈後、NanoDrop(商標)分光光度計(すなわち、紫外可視分光光度法)を使用してDNA濃度を、およびICP−OESにより白金濃度を測定することにより創出した。このようにして、界面活性剤Tween80の添加による、形成したポリマーソームの破壊、続くICP−OESによる白金濃度(およびそれゆえ懸濁液中のDNA濃度)の測定を通して、ポリマーソームに封入したDNA懸濁液の定量的研究におけるDNA量を計算した。このプロセスは、タンパク質およびDNAの両方について同じ測定技術(すなわち、紫外可視分光光度法)を使用することを避けたものであり、そうでなければ、正確な測定を妨害することとなる。
第1の比較モデルでは、ミオグロビン(Mb)およびpEF−GFP DNAを、逐次飽和法を使用してOB29内に共封入した。図2Aは、18時間のタンパク質分解前後のMbの封入量(μg/mL)を示し、タンパク質分解は、ポリマーソーム懸濁液から任意の非特異的結合(すなわち、表面関連)タンパク質を除去するために利用される技術である。最終ポリマーソーム中に封入されたMbの量を、紫外可視吸収分光法(分光光度法とも呼ばれる)を使用して定量した。
図2Bは、第1の比較モデルにおけるタンパク質対ポリマーの平均最終重量割合(すなわち、w/w% Mb/ポリマー)としての、平均負荷容量を、タンパク質分解前後で示す。図2Cは、第1の比較モデルを使用して発生させたナノスケールのポリマーソーム中のDNAの平均封入量(μg/mL)を、タンパク質分解前後で示す。図2C中の封入量は、Tween80でのベシクル破壊後の溶液中のDNA結合白金を測定するためにICP−OESを使用して、定量した。図2Dは、得られたポリマーソーム中のDNA対ポリマーの平均最終重量割合(すなわち、w/w% DNA/ポリマー)としての、平均負荷容量を、タンパク質分解前後で示す。図2Eは、水性腔内にMbおよびDNAの両方を含有し、第1の比較モデルで発生させたポリマーソームの平均サイズ(すなわち、流体力学直径)を示す。示されるように、Mbについて約1〜1.5mg/mLの封入量(全て、ポリマーソームの水性腔内に含有されていた)が、第1の比較モデルを使用して達成され、最終ポリマーソーム組成物の約3〜4重量%に対応した。さらに、DNAについての分析は、第1の比較モデルを使用して達成され、最終ポリマーソーム組成物の約0.15重量%に対応し、最終ポリマーソームは直径約200nmのサイズを示した。
第2の比較モデルでは、MbおよびpEF−GFP DNAを、薄膜水和法を使用してOB29に基づくポリマーソーム中に共封入した。薄膜水和および直接水和は、水溶性種をポリマーソームの水性腔内に封入するための従来手順であり、様々な出版物(例えばO'Neilら、A Novel Method for the Encapsulation of Biomolecules into Polymersomes via Direct Hydration、Langmuir、2009年25巻(16号)、9025
〜9029頁)で説明されている。
〜9029頁)で説明されている。
図3Aは、第2の比較モデルを使用して発生させたナノ粒子内のMbの封入量(μg/mL)を、18時間のタンパク質分解前後で示す。封入量は、紫外可視吸収分光法を使用して定量した。
図3Bは、同じナノスケールベシクル構築物内にMbおよびDNAの両方を封入し、第2の比較モデルで発生させたポリマーソームについてのタンパク質対ポリマーの平均最終重量割合(すなわち、w/w% Mb/ポリマー)としての、平均負荷容量を、タンパク質分解前後で示す。図3Cは、このポリマーソーム中のDNAの平均封入量(μg/mL)を、タンパク質分解前後で示す。図3C中の封入量は、DNA結合白金のICP−OESを使用して定量した。図3Dは、第2の比較モデルで発生させたポリマーソーム中のDNA対ポリマーの平均最終重量割合(すなわち、w/w% DNA/ポリマー)としての、平均負荷容量を、タンパク質分解前後で示す。図3Eは、同じナノスケールベシクル構築物内にMbおよびDNAの両方を封入したポリマーソームの平均サイズ(すなわち、直径)を示す。示されるように、Mbについての約80μg/mLの封入が、第2の比較モデルを使用して達成され、最終ポリマーソーム配合物中の約10重量%のタンパク質に対応した。さらに、DNAについての約12μg/mLの封入が、第2の比較モデルを使用して達成され、最終ポリマーソーム配合物の約0.18重量%に対応した。第2の比較モデルを使用して発生させ、同じナノスケールベシクル構築物内にMbおよびDNAの両方を封入した最終ポリマーソーム配合物は、直径約730nmの平均粒子サイズを有することが分かった。
第3の比較モデルでは、BSAおよびpEF−GFP DNAを、逐次飽和技術を使用してOB29に基づくポリマーソーム中に共封入した。図4Aは、得られたポリマーソーム中のBSAの平均封入量(μg/mL)を、18時間のタンパク質分解前後で示す。封入されたタンパク質の量は、マイクロ−BCAアッセイを使用して定量した。
図4Bは、第3の比較モデルで発生させたポリマーソーム中のタンパク質対ポリマーの平均最終重量割合(すなわち、w/w% BSA/ポリマー)としての、平均負荷容量を、タンパク質分解前後で示す。図4Cは、このポリマーソーム中のDNAの平均封入量(μg/mL)を、タンパク質分解前後で示す。図4C中の封入量は、DNA結合白金のICP−OESを使用して定量した。図4Dは、第3の比較モデルで発生させたポリマーソーム中のDNA対ポリマーの最終重量割合(すなわち、w/w% DNA/ポリマー)としての、平均負荷容量を、タンパク質分解前後で示す。図4Eは、同じナノスケールベシクル構築物内にBSAおよびDNAの両方を封入したポリマーソームの平均サイズ(すなわち、直径)を示す。示されるように、BSAについての約1〜1.5mg/mLの封入が、第3の比較モデルを使用して達成され、最終ポリマーソーム配合物の約3〜4重量%に対応した。さらに、DNAについての約50μg/mLの封入が、第3の比較モデルを使用して達成され、最終ポリマーソーム配合物の約0.15重量%に対応した。同じナノスケールベシクル構築物内にBSAおよびDNAの両方を封入したポリマーソームは、第3の比較モデルで発生させた場合、直径約200nmのサイズを有した。
図2E、3E、および4Eで示される結果を図1中のナノ粒子サイズと比較することにより示されるように、最終ポリマーソームは、逐次飽和技術を使用したタンパク質(MbまたはBSAのいずれか)と核酸(pEF−GFP DNA)との共封入により、顕著に大きくならなかった。しかしながら、薄膜水和を使用して発生させた場合、同じナノスケールベシクル構築物内にタンパク質および核酸の両方を封入した最終ポリマーソームのサイズは、よりもっと大きかった。
同じプロトコールを使用したさらなるポリマーソーム封入は、他の非分解性ポリマー(例えばOB18)から製造されるポリマーソーム、および様々な分解性ポリマーから製造されるポリマーソームを使用して、比較モデルとして開発されており、継続して開発されている。かかる分解性ポリマーの例として、PEO(5000)−b−PCL(16300)(「P2350−EOCL」);PEO(2000)−b−PMCL(11900)(「OCL」);PEO(2000)−b−PMCL(8300)(「OMCL」);PEO(1100)−b−PTMC(5100)(「OTMC」);およびPEO(2000)−b−PTMC/PCL(11200)(「OTCL」)が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリマーソームに封入したRNA指令型ヌクレアーゼの例の実施形態を、Streptococcus pyogenesに由来するCas9タンパク質を使用して調製した。具体的には、4−ヒドロキシ安息香酸エステルポリ(ブタジエン2500−b−エチレンオキシド1300)(「OB29−Bz」)の非分解性ポリマーを、逐次飽和プロトコールを使用してCas9タンパク質(粉末、250μg/バイアル)を封入するために使用し、逐次飽和プロトコールでは、試料を室温で30時間透析した(MWカットオフ=100kDa)。図5Aは、得られたポリマーソーム中のCas9タンパク質の平均封入量(μg/mL)を、タンパク質分解前後で示す。封入は、マイクロ−BCAアッセイを使用して定量した。図5Bは、得られたポリマーソーム中のCas9タンパク質の平均封入効率(%EE)を、タンパク質分解前後で示す。図5Cは、この例の実施形態で発生させたポリマーソーム中のタンパク質対ポリマーの平均最終重量割合(すなわち、w/w% Cas9タンパク質/ポリマー)としての、平均負荷容量を、タンパク質分解前後で示す。示されるように、Cas9タンパク質についての約3mg/mLの封入が、この例の実施形態で達成され、最終ポリマーソーム配合物の約3〜4重量%に対応した。Cas9タンパク質の封入効率は、約65%であった。
第4の比較モデルでは、Cas9タンパク質およびpEF−GFP DNAを、逐次飽和技術を使用してOB29−Bz中に共封入した。図6Aは、第4の比較モデルで発生させたポリマーソーム中に封入されたCas9タンパク質の平均量(μg/mL)を示す。封入量は、マイクロ−BCAアッセイにより定量した。図6Bは、ポリマーソーム中のタンパク質対ポリマーの平均最終重量割合(すなわち、w/w% Cas9タンパク質/ポリマー)としての、平均負荷容量を、タンパク質分解前後で示す。
図6Cは、第4の比較モデルで発生させたナノ粒子中に封入したDNAの平均量(μg/mL)を、タンパク質分解前後で示す。図6C中の封入量は、DNA結合白金のICP−OESを使用して定量した。図6Dは、得られたポリマーソーム中のDNA対ポリマーの平均最終重量割合(すなわち、w/w% DNA/ポリマー)としての、平均負荷容量を、タンパク質分解前後で示す。図6Eは、第4の比較モデルで発生させた最終ポリマーソームの平均サイズ(すなわち、直径)を示す。示されるように、Cas9タンパク質についての約1mg/mLの封入が、第4の比較モデルを使用して達成され、最終ポリマーソーム配合物の約3重量%に対応した。さらに、約50μg/mLの封入が、第4の比較モデルを使用してDNAについて達成され、同じナノスケールベシクル構築物内にCas9タンパク質およびDNAの両方を封入した最終ポリマーソーム配合物の約0.15重量%に対応した。これらのポリマーソームは、直径約220nmであった。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
遺伝子改変のための組成物であって、
合成ポリマーベシクルと、
前記合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムであって、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分を含む遺伝子編集システムと
を含む組成物。
(項目2)
前記遺伝子編集システムが、タンパク質構成成分をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記タンパク質構成成分が、リボ核酸(RNA)指令型ヌクレアーゼを含み、
前記核酸構成成分が、前記標的配列に相補的なガイドRNAを含む、
項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記核酸構成成分が、外因性デオキシリボ核酸(DNA)修復鋳型をさらに含み、
前記RNA指令型ヌクレアーゼが、前記標的配列に隣接する前記宿主細胞ゲノムで二重鎖開裂を創出するように構成され、
前記宿主細胞内の修復プロセスが、前記宿主細胞ゲノムの再ライゲーション中に、前記外因性DNA修復鋳型に基づいて前記宿主細胞ゲノムの改変を誘発する、
項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記DNA修復鋳型が、前記RNA指令型ヌクレアーゼにより誘導された前記二重鎖開裂に隣り合った前記宿主細胞ゲノムの領域に相同な末端領域を含む、項目4に記載の組成物。
(項目6)
前記遺伝子編集システムが、前記組成物の総重量に対して少なくとも3重量%の量で、前記合成ポリマーベシクル中に含まれる、項目1に記載の組成物。
(項目7)
タンパク質構成成分が、ネイティブ形態の酵素、または前記宿主細胞への送達後に酵素に翻訳されるように構成されたメッセンジャーRNA(mRNA)分子を含む、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記タンパク質構成成分が、酵素をコードするデオキシリボ核酸(DNA)配列を含有する発現ベクターとして送達される、項目2に記載の組成物。
(項目9)
前記核酸構成成分が、ガイドリボ核酸(RNA)をコードするDNA配列を含む、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記酵素および前記ガイドRNAをコードする前記DNA配列が、単一の発現ベクター上で提供される、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記タンパク質構成成分が、前記宿主ゲノムの相補的セグメントへの前記核酸構成成分の結合に基づいて前記宿主ゲノムを切断するように構成された酵素を含む、項目2に記載の組成物。
(項目12)
前記酵素が、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連タンパク質9(Cas9)を含む、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記核酸構成成分が、トランスポゾンを含む発現ベクターを含み、
前記タンパク質構成成分が、トランスポサーゼを含む、
項目2に記載の組成物。
(項目14)
前記トランスポサーゼが、
ネイティブ酵素、
前記宿主細胞への送達後に前記酵素に翻訳されるように構成されたメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子、および
前記酵素をコードするデオキシリボ核酸(DNA)配列
の1つである、項目13に記載の組成物。
(項目15)
前記DNA配列が、前記トランスポゾンを含む前記発現ベクター上で提供される、項目14に記載の組成物。
(項目16)
前記合成ポリマーベシクルが、
ポリ(エチレンオキシド)を含む親水性ブロックと
疎水性ブロックと
を含む少なくとも1つのブロックコポリマーから生成される、項目1に記載の組成物。
(項目17)
前記疎水性ブロックが、脂肪族ポリ(無水物)、ポリ(核酸)、ポリ(エステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ペプチド)、ポリ(ホスファゼン)、および多(糖類)から選択される、項目15に記載の組成物。
(項目18)
前記疎水性ブロックが、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PLGA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、またはポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)の1つまたは1つより多くを含む、項目15に記載の組成物。
(項目19)
宿主細胞ゲノムを改変する方法であって、
ポリマーソーム中に、
タンパク質構成成分、および
前記宿主細胞内の標的核酸配列と相互作用するように構成された核酸構成成分
を含む遺伝子編集システムを封入することと、
前記封入された遺伝子編集システムを前記宿主細胞に送達することと
を含み、
前記ポリマーソームが、前記宿主細胞内で前記遺伝子編集システムを選択的に放出するように構成される、方法。
(項目20)
前記封入された遺伝子編集システムを前記宿主細胞に送達することが、前記封入された遺伝子編集システムを含有する有効量の組成物を被験体に投与することを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記封入された遺伝子編集システムが、逐次飽和プロトコールを使用して調製される、項目19に記載の方法。
(項目22)
封入された遺伝子編集組成物の懸濁液を製造する方法であって、
ある分量のブロックコポリマーをある分量の低分子量ポリエチレングリコール(PEG)と熱ブレンドして、PEG/ポリマー配合物を創出することと、
前記遺伝子編集組成物の溶液の一定分量を、前記PEG/ポリマー配合物を含有する試料に添加することと、
生成されたポリマーソームが、前記遺伝子編集組成物で逐次飽和されるように少なくとも1回の希釈ステップを行うことと
を含み、
前記遺伝子編集組成物が、
タンパク質構成成分、および
宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分
を含む、方法。
(項目23)
前記ブロックコポリマーが、両親媒性ジブロックコポリマーを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記両親媒性ジブロックコポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリ(ブタジエン)(PEO−b−PBD)を含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記生成されたポリマーソームが、前記遺伝子編集組成物に対して少なくとも50%の封入効率を有する、項目22に記載の方法。
(項目26)
キットであって、
合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムを含む医薬組成物であって、前記遺伝子編集システムが、
タンパク質構成成分、および
宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分
を含む、医薬組成物と、
前記医薬組成物を静脈内に、吸入により、局所的に、経直腸的に、経膣的に、経皮的に、皮下に、腹腔内に、髄腔内に、筋内に、または経口で投与するための器具と
を含むキット。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
遺伝子改変のための組成物であって、
合成ポリマーベシクルと、
前記合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムであって、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分を含む遺伝子編集システムと
を含む組成物。
(項目2)
前記遺伝子編集システムが、タンパク質構成成分をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記タンパク質構成成分が、リボ核酸(RNA)指令型ヌクレアーゼを含み、
前記核酸構成成分が、前記標的配列に相補的なガイドRNAを含む、
項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記核酸構成成分が、外因性デオキシリボ核酸(DNA)修復鋳型をさらに含み、
前記RNA指令型ヌクレアーゼが、前記標的配列に隣接する前記宿主細胞ゲノムで二重鎖開裂を創出するように構成され、
前記宿主細胞内の修復プロセスが、前記宿主細胞ゲノムの再ライゲーション中に、前記外因性DNA修復鋳型に基づいて前記宿主細胞ゲノムの改変を誘発する、
項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記DNA修復鋳型が、前記RNA指令型ヌクレアーゼにより誘導された前記二重鎖開裂に隣り合った前記宿主細胞ゲノムの領域に相同な末端領域を含む、項目4に記載の組成物。
(項目6)
前記遺伝子編集システムが、前記組成物の総重量に対して少なくとも3重量%の量で、前記合成ポリマーベシクル中に含まれる、項目1に記載の組成物。
(項目7)
タンパク質構成成分が、ネイティブ形態の酵素、または前記宿主細胞への送達後に酵素に翻訳されるように構成されたメッセンジャーRNA(mRNA)分子を含む、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記タンパク質構成成分が、酵素をコードするデオキシリボ核酸(DNA)配列を含有する発現ベクターとして送達される、項目2に記載の組成物。
(項目9)
前記核酸構成成分が、ガイドリボ核酸(RNA)をコードするDNA配列を含む、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記酵素および前記ガイドRNAをコードする前記DNA配列が、単一の発現ベクター上で提供される、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記タンパク質構成成分が、前記宿主ゲノムの相補的セグメントへの前記核酸構成成分の結合に基づいて前記宿主ゲノムを切断するように構成された酵素を含む、項目2に記載の組成物。
(項目12)
前記酵素が、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)関連タンパク質9(Cas9)を含む、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記核酸構成成分が、トランスポゾンを含む発現ベクターを含み、
前記タンパク質構成成分が、トランスポサーゼを含む、
項目2に記載の組成物。
(項目14)
前記トランスポサーゼが、
ネイティブ酵素、
前記宿主細胞への送達後に前記酵素に翻訳されるように構成されたメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子、および
前記酵素をコードするデオキシリボ核酸(DNA)配列
の1つである、項目13に記載の組成物。
(項目15)
前記DNA配列が、前記トランスポゾンを含む前記発現ベクター上で提供される、項目14に記載の組成物。
(項目16)
前記合成ポリマーベシクルが、
ポリ(エチレンオキシド)を含む親水性ブロックと
疎水性ブロックと
を含む少なくとも1つのブロックコポリマーから生成される、項目1に記載の組成物。
(項目17)
前記疎水性ブロックが、脂肪族ポリ(無水物)、ポリ(核酸)、ポリ(エステル)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ペプチド)、ポリ(ホスファゼン)、および多(糖類)から選択される、項目15に記載の組成物。
(項目18)
前記疎水性ブロックが、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PLGA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、またはポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)の1つまたは1つより多くを含む、項目15に記載の組成物。
(項目19)
宿主細胞ゲノムを改変する方法であって、
ポリマーソーム中に、
タンパク質構成成分、および
前記宿主細胞内の標的核酸配列と相互作用するように構成された核酸構成成分
を含む遺伝子編集システムを封入することと、
前記封入された遺伝子編集システムを前記宿主細胞に送達することと
を含み、
前記ポリマーソームが、前記宿主細胞内で前記遺伝子編集システムを選択的に放出するように構成される、方法。
(項目20)
前記封入された遺伝子編集システムを前記宿主細胞に送達することが、前記封入された遺伝子編集システムを含有する有効量の組成物を被験体に投与することを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記封入された遺伝子編集システムが、逐次飽和プロトコールを使用して調製される、項目19に記載の方法。
(項目22)
封入された遺伝子編集組成物の懸濁液を製造する方法であって、
ある分量のブロックコポリマーをある分量の低分子量ポリエチレングリコール(PEG)と熱ブレンドして、PEG/ポリマー配合物を創出することと、
前記遺伝子編集組成物の溶液の一定分量を、前記PEG/ポリマー配合物を含有する試料に添加することと、
生成されたポリマーソームが、前記遺伝子編集組成物で逐次飽和されるように少なくとも1回の希釈ステップを行うことと
を含み、
前記遺伝子編集組成物が、
タンパク質構成成分、および
宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分
を含む、方法。
(項目23)
前記ブロックコポリマーが、両親媒性ジブロックコポリマーを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記両親媒性ジブロックコポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリ(ブタジエン)(PEO−b−PBD)を含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記生成されたポリマーソームが、前記遺伝子編集組成物に対して少なくとも50%の封入効率を有する、項目22に記載の方法。
(項目26)
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合成ポリマーベシクル中に封入された遺伝子編集システムを含む医薬組成物であって、前記遺伝子編集システムが、
タンパク質構成成分、および
宿主細胞ゲノム内の標的配列と相互作用するように構成された核酸構成成分
を含む、医薬組成物と、
前記医薬組成物を静脈内に、吸入により、局所的に、経直腸的に、経膣的に、経皮的に、皮下に、腹腔内に、髄腔内に、筋内に、または経口で投与するための器具と
を含むキット。
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- 本明細書に記載の発明。
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