「a」、「an」、及び「the」などの単数形は、本出願の全体にわたり便宜上使用されるが、文脈または明確な記載によって別段の指示がある場合を除いて、単数形は複数形を含むことを意図すると理解されるべきである。更に、本明細書で言及されるすべての学術論文、特許、特許出願、刊行物などは、本出願において、その全体が本明細書に参考として組み込まれると理解されるべきである。すべての数値範囲は、数値の範囲内に各及びすべての数値点を含むと考えられるべきであり、各及びすべての数値点を個別に列挙するものとして解釈されるべきである。同一の構成要素または特性を目的とするすべての範囲の端点を含み、個別に組み合わせることができることを意図する。
「約」とは、実質的に同じ効果を有する、または基準値と実質的に同じ結果を提供するすべての値を含む。従って、用語「約」により包含される範囲は、その用語が使用される文脈、例えば、基準値が関連するパラメータに応じて変化する。従って、文脈に応じて、「約」とは、例えば、±15%、±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、または±1%未満を意味し得る。重要なことには、用語「約」に続く基準値の列挙はすべて、基準値単独の列挙であることも意図される。前述にかかわらず、本出願において、用語「約」は、曲線下面積(AUC、AUCt、及びAUC∞を含む)Cmax、Tmaxなどの薬物動態パラメータに関する特定の意味を有する。薬物動態パラメータの値に関連して使用される場合、用語「約」は、基準パラメータの85%〜115%を意味する。
本明細書で使用する場合、「含む(include)」という用語、及びその変化形は、リスト内の項目列挙が、本技術の材料、組成物、装置、及び方法において有用な場合もあるその他類似の項目を排除するものではないように、非限定的であることを意図する。同様に、「できる(can)」及び「してよい(may)」という用語、並びにその変化形は、実施形態が、ある種の要素もしくは特徴を含むことができる、または含んでよいという詳細説明が、それらの要素または特徴を含まない本技術のその他の実施形態を排除しないように、非限定的であることを意図する。「を含む(comprising)」というオープンエンド(open−ended)形式の用語は、including、containing、またはhavingなどの同義語として本明細書で使用され、本発明を記載かつ請求するが、本技術、またはそれらの実施形態は、別の方法として、列挙された構成要素「から成る(consisting of)」または「から本質的に成る(consisting essentially of)」などのより限定的な用語を使用して記載されてよい。
他に規定されない限り、本明細書のすべての専門用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されたものと類似のまたは同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法及び材料は本明細書に記載する。引用されたすべての刊行物、特許、及び特許公報は、本出願においてそれら全体が、本明細書に参考として組み込まれる。
癌細胞は、理論に束縛されるものではないが、DNA損傷、遺伝的不安定性、増殖因子シグナル伝達の異常、及びマトリックス相互作用の異常または欠如などの異常性を示し、そのいずれかは通常、内因性(ミトコンドリア)アポトーシス経路を介してアポトーシスを誘導する。しかしながら、これらのアポトーシスシグナルには応答せずに、癌細胞は生存する。多くの場合、そうすることで、これらの細胞は、慢性的なアポトーシスシグナルに対する選択された妨害に強く依存するようになる。この適応は、癌細胞に生存機構を提供するが、これらの適応によって、癌細胞を特定のアポトーシス誘導性療法の影響を受けやすくすることもできる。内因性アポトーシスによって細胞を死へとコミットさせる非常に重要な事象とは、ミトコンドリア外膜透過性(MOMP)及びエフェクターカスパーゼを活性化させる分子の放出である。多くの場合、MOMPは、内因性アポトーシス経路内において不可逆となるポイントである。BH3含有ペプチドの感作因子クラス、または低容量のBH3ペプチド活性化因子クラスでの細胞処理に対するミトコンドリア応答の測定によって、癌を「プライミング」すると内因性アポトーシス経路を介して死滅するか否か、もしそうであれば、アポトーシスはBcl−2抗アポトーシスタンパク質の、任意の特定の組み合わせに依存するか否かの決定が可能となる。
MOMPは、活性化因子BH3タンパク質、Bim及びBidが、結合状態で近接している場合に限り誘導される。この場合、次いでBim及びBidは、特定のBH3ペプチドによってヘテロ二量体から置換されて遊離し、Bax及びBakを活性化する。これが見られる場合、細胞は「プライミングされた」と呼ばれる。個別の選択的ペプチドで細胞を処理することにより、アポトーシスの妨害に関与する特定のBcl−2ファミリータンパク質を同定することができる。Noxaに対して高いアポトーシス応答を示す細胞は、Mcl−1プライミングであると言われるが、ペプチドBadに対する高い応答は、Bcl−xLまたはBcl−2がアポトーシスを妨害していることを示す。PumaBH3ペプチドへの応答は、全Bcl−2ファミリープライミングを反映する。このように、Mcl−1またはその他の抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質のいずれかに依存する細胞は、適切な治療をそれに応じて調整してよいように、容易に区別される。これらのペプチド、これらのペプチドの組み合わせ、またはペプチド及びBH3模倣薬化合物の組み合わせに対するミトコンドリアの応答の違いによって、抗アポトーシス性Bcl−2タンパク質を直接標的とする、または内因性アポトーシス経路の上流で機能する療法の使用を導き出す。
Bcl−2ファミリータンパク質は、MOMPの重要な調節物質である。それらの作用がリンパ性及びいくつかの固形腫瘍癌の発症と関連し、多くの癌において化学療法に対する耐性の重要なメディエーターであると考えられている。Bcl−2タンパク質は、生存促進性(抗アポトーシス性)メンバー及びアポトーシス促進性メンバー間での、異なるタンパク質−タンパク質相互作用によって調節される。これらの相互作用は、主にBH3(Bcl−2ホモロジードメイン3)媒介結合によって生じる。アポトーシス開始シグナル伝達は、大部分がミトコンドリアの上流で発生し、短くBH3のみを有するBcl−2ファミリーメンバーのミトコンドリアへの転位を引き起こし、MOMPを活性化または高感度化する。活性化因子であるBH3のみを有するタンパク質、Bim及びBidは、エフェクターであるアポトーシス促進性タンパク質Bax及びBakと結合して直接活性化させ、また抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質である、Bcl−2、Mcl−1、Bfl−1、Bcl−w及びBcl−xLとも結合して阻害する。感作因子であるBH3タンパク質、Bad、Bik、Noxa、Hrk、Bmf及びPumaは、抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質である、Bcl−2、Mcl−1、Bfl−1、Bcl−w及びBcl−xLとだけ結合し、それらの抗アポトーシス機能を妨害する。理論に束縛されるものではないが、各感作因子タンパク質は、特有の特異性プロファイルを有する。例えば、Noxa(A及びB)は、Mcl−1と高い親和性をもって結合し、BadはBcl−xL及びBcl−2と結合するがMcl−1とは非常に弱い結合にすぎず、Pumaは3つすべての標的と良く結合する。これらのタンパク質の抗アポトーシス機能とは、活性化因子BH3タンパク質Bim及びBidの解離である。感作因子ペプチドによるこれらの活性化因子の置換によって、Bax/Bak媒介アポトーシスをコミットメントする。これらの相互作用は、これらに限定されないが、恒常性、細胞死、アポトーシスへの感度、及びアポトーシスの妨害を含む、様々な結果を有することができる。
アポトーシスシグナル伝達が妨害される癌細胞を決定付ける特徴とは、ミトコンドリア表面上にBH3のみを有する活性化因子タンパク質が蓄積することであり、これらのタンパク質が抗アポトーシス性タンパク質によって解離される結果である。この蓄積及びそれらのエフェクター標的タンパク質との近接によって、「BH3プライミング」状態におけるBcl−2ファミリータンパク質の拮抗作用に対する感度の増加を説明する。
抗腫瘍療法における標的としてのBcl−2の値は、十分に確立されている。簡潔に述べると、理論に束縛されるものではないが、異常な表現型の結果として、癌細胞はアポトーシス経路内で妨害を始める。これらの妨害によって、癌細胞にいくつかの療法に対する両方の耐性を持たせ、驚くべきことに、いくつかの癌細胞はその他の療法に対して感受性を高める。Bcl−2は、細胞生存及び正常な細胞増殖を促進し、リンパ球、ニューロン、並びに基底上皮細胞及び骨髄内の造血前駆細胞などの自己複製細胞を含む多くの種類の細胞内に発現される。研究者たちは、Bcl−2ファミリー内のタンパク質がアポトーシスを調節し、腫瘍形成の重要なエフェクターであることを認識してきた(Reed, (2002) Nat Rev. Drug Discov. 1(2):111−21)。また、Mcl−1は、NHL、CLL、及び急性骨髄性白血病(AML)治療における標的であるとも報告されている(Derenne, et al. (2002) Blood, 100:: 194−99;Kitada, et al. (2004) J. Nat. Canc. Inst. 96: 642−43;Petlickovski, et al. (3018) Blood 105: 4820−28)。
多くの癌では、抗アポトーシス性Bcl−2タンパク質が、細胞増殖抑制またはアポトーシス誘導薬剤に対する腫瘍細胞の感受性を妨害するため、これらのタンパク質が抗腫瘍療法の標的となっていた。BH3模倣薬化合物は、Bcl−2ファミリータンパク質を阻害する、近年説明された小分子のクラスを含む(Bajwa, et al. (2013) Expert Opin Ther Pat. 2012 January ; 22(1): 37−55にて参照される)。これらの化合物は、Bcl−2ファミリータンパク質内のBH3媒介タンパク質/タンパク質相互作用を阻害することにより機能する。いくつかの研究では、BH3結合を妨害することによりBcl−2阻害剤として機能するBH3模倣薬小分子を記載している(Billard, (2013) Mol Cancer Ther. 12(9):1691−700にて参照される)。BH3模倣機能を有する化合物としては、HA−14−1(Wang, et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 7124−9)、アンチマイシン−A(Tzung, et al. (2001) Nat. Cell. Biol. 3: 183−191)、BH3I−1及びBH3I−2(Degterev, et al. (2001) Nat. Cell. Biol. 3: 173−82)、並びに7つの名称のない化合物(Enyedy, et al. (2001) J. Med Chem 44: 4313−24)、並びにテルフェニル誘導体シリーズ(Kutzki, et al. (2002) J. Am. Chem. Soc. 124: 11838−9)、並びに2つの新規分子クラス(Rosenberg, et al. (2004) Anal. Biochem. 328: 131−8)が挙げられる。選択的BH3模倣機能を有する化合物としては、Bcl−2選択的活性化(Ng (2014) Clin Adv Hematol Oncol. 12(4):224−9)−加えて、選択的Mcl−1活性化(Richard, et al. (2013) Bioorg Med Chem. 21(21):6642−9)が挙げられ、臨床開発の様々な段階にある。より最近では、BH3模倣化合物がマウス腫瘍モデルにおいて試験された(Oltersdorf, et al. (2005) Nature 435: 677−81)。
抗腫瘍治療としてBH3模倣薬化合物を使用するという有望性が認識されてきたが、今日まで、この方法によるいずれの抗癌剤の有効性についても、決定的な臨床報告は存在していない。Bcl−2ファミリータンパク質の薬理学的操作は、癌患者に対する治療効果を実現する実行可能なアプローチであるが、このファミリーを含むタンパク質ネットワークの複雑さによって、この展望は困難なものとなっている。従って、血液悪性腫瘍の治療に対する満たされない大きな医療ニーズにより、BH3模倣薬分子の緻密な作用を評価及び利用する新たなアプローチが、この治療クラスの開発において重要である。
本明細書に記載されたミトコンドリアプロファイリングアッセイは、ミトコンドリアのアポトーシス経路を介して作用する癌治療法の予測試験を提供する。ミトコンドリアプロファイリングでは、アポトーシス促進性のBH3のみを有するタンパク質に由来するペプチドを使用し、細胞内でMOMPが発生する程度を測定して、化学療法に応答してアポトーシスに至る細胞の可能性を測定する(US8,221,966、その全体が本明細書に参考として組み込まれる)。すべてではなく、いくつかの癌細胞では、薬剤誘導アポトーシスに至るよう「あらかじめ準備」されていて、ある種のBH3ペプチドに曝露することで誘導される。所与のBH3ペプチドへの曝露に続くミトコンドリアの脱分極は、アポトーシス促進の合図に対する細胞応答の素因の機能的バイオマーカーとして機能する(Pierceall et al. Mol. Cancer Ther. 12(2) 2940−9 (2013))。MOMPが発生するか否か、もしそうであれば、BH3ペプチドがアポトーシスの合図を出すかについての解析によって、細胞または試料の、特定の化学療法剤耐性または化学療法感受性の決定が可能となり、治療に応答する癌細胞の可能性に対する見通しを提供する。この技術により、血液癌を含む多数の癌に対する予測診断試験として、医療的実用性を実証した。
本発明の方法は、腫瘍学療法並びに治療前及び治療中に使用される独自の併用診断試験の連携を含み、治療の有効性をモニタリングし、継続し得る治療への応答を予測する。この情報を使用して、所与の治療を継続する妥当性を決定し、次いで必要に応じて代替治療を導き出すことができる。
癌細胞が、初期治療時に応答するか否か、及び治療によって、治療に対するその応答性をシフトさせる方法で癌細胞を変化させているか否かを決定できる薬力学的マーカーとして、ミトコンドリアプロファイリング技術を使用する独自の方法を見出した。特に、本発明の方法は、ミトコンドリアのアポトーシス経路を介して作用する、腫瘍学療法の薬力学的マーカーを提供する。薬力学的マーカーは、治療前に取得したミトコンドリアプロファイル及び治療中のある時点で取得したミトコンドリアプロファイル間の測定結果のシフト、並びに治療に対する癌患者の応答の持続時間を予測する手段として、そのマーカーを使用することから構成される。
例えば、生存のためにBcl−2ファミリーの特定メンバーに特に依存する癌細胞が、ミトコンドリアプロファイリングアッセイによって同定され得る。これらの癌細胞は、特定の療法に感受性を有すると期待される。例えば、Bcl−2タンパク質に依存するが、Mcl−1タンパク質には依存しない癌細胞は、そのタンパク質を特異的に標的とする、Abbott社製ABT−199薬剤(a)などの薬剤に対して応答する。特定の治療に対する癌の感受性は、治療経過中の様々な時点でミトコンドリアプロファイルを実施することにより、治療中にモニタリングすることができる。例えば、治療経過中にミトコンドリアプロファイルがシフトして、異なるBH3ペプチド、例えばBcl−xl依存性に感受性を示す場合、次いでBcl−xl、例えばAbbott社製ABT−263薬剤(b)を標的とする薬剤へと治療法を変更するだろう。例えば、プロファイルシフトが、NOXAペプチドへの応答によって示されるように、Mcl−1タンパク質への依存性を示す場合、Mcl−1を標的とする薬剤、例えばEutropics社製EU−5148(E)が適切となるであろう。この情報によって、代謝経路の障害により細胞毒性を付与する作用のアポトーシス非依存性機構を有する、電子伝達系阻害剤、例えばロテノン、脱共役試薬、例えばジニトロフェノール、または酸化的リン酸化阻害剤、例えばオリゴマイシンなどの適切な薬剤の使用を導き出す。
いくつかの実施形態では、Noxa(AまたはB)に対して高いアポトーシス応答を示す細胞は、Mcl−1プライミングであるが、ペプチドBadに対する高い応答は、Bcl−xLまたはBcl−2がアポトーシスを妨害していることを示す。いくつかの実施形態では、Pumaは、全Bcl−2ファミリープライミングを反映する。このように、Mcl−1もしくはBcl−xLのいずれか、または両方のタンパク質、またはいくつかのBcl−2ファミリーメンバーに依存する細胞は、適切な治療をそれに応じて調整してよいように、容易に区別される。これらのペプチドに対するミトコンドリアの応答の違いによって、Mcl−1またはBcl−xLのいずれかに影響された内因性シグナル伝達を行う経路を介して作用すると知られている療法の使用を導き出す。Bcl−2阻害またはMcl−1阻害化合物の使用は、このような場合に示されてよい。いくつかの実施形態では、本発明の方法はまた、Mcl−1またはBcl−xLの上流のものを標的とする療法を示す、または療法の禁忌を示す。
更に、試験によって、ミトコンドリアのアポトーシス経路を介して直接的または間接的にアポトーシスを誘導する薬剤の任意のクラスに対するその感受性を、治療中にシフトさせる癌を同定することができる。これは、特徴的なミトコンドリアプロファイルが、特定の療法に相関すると示される場合に行われる。
本明細書で提案される方法は、癌、特に抗体分泌性骨髄形質細胞に由来する破壊性悪性腫瘍である、多発性骨髄腫(MM)の重篤さ及び重大さにより、特に重要である。アメリカ国立癌研究所(National Cancer Institute)の試算では、アメリカ国内に63,000人のMM患者がおり、年間の新規患者数はほぼ22,000人、及び年間死者数は約11,000人である。疾患の臨床経過にはかなりのばらつきがあり、予測は困難である。この疾患は依然として不治の病であり、再発は不可避、そして現在の療法では多くの場合深刻な毒性を引き起こす。低毒性の正確な標的療法によって、医師及び患者が、この致死的疾患の治療に利用できるレパートリーを大幅に強化させるだろう。
特定の薬剤に対するMM患者の応答を予測できる試験は、第1及び第2選択治療方法の有効性を改善するだろう。例えば、予後不良の患者を初期段階にて実験的治療へと導くことができる。MM疾患状態の評価に使用され、疾患の進行度を追跡する様々な臨床指標及び細胞遺伝学的マーカーが存在するが、療法を導き出すには正確さが不十分である。任意の所与の化学療法レジメンに対するMM患者の応答を予測する予後試験は存在せず、それゆえに疾患予測は、重要な満たされないニーズのままである。加えて、標準治療に応答する患者は、高頻度で再発する。再発を予測し、次の治療方針を導き出すことのできる試験は、非常に有用となるであろう。
過去の研究では、ミトコンドリアプロファイリングアッセイは、MM、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及びその他の癌を含む多数の癌における治療への応答を予測することを実証した。これらの研究では、ミトコンドリアプロファイリングは、患者に治療を施す前に実施され、試験結果は、観察された患者の応答及び患者の結果に相関する。しかしながら、本明細書の新規方法では、アッセイの実用性を拡張して、再発の予想に役立つ薬力学的マーカーを提供し、最適な投薬レジメン及び治療の選択肢を規定する手段を提供する。この方法は、治療前に取得したミトコンドリアプロファイル測定値と、治療開始後に取得した測定値を比較することによって、治療への応答時に生じるミトコンドリアプロファイルのシフトを測定する。本アプローチには、標的化作用を同定するための、初期治療段階での診断アッセイの利用、及び治療経過中の患者の応答を予測するための、治療期間全体にわたる診断アッセイの利用を含む。更に、本明細書の新規方法は、アポトーシスに至る細胞の素因及び治療に対する癌感受性のより正確な関連を可能にするミトコンドリアプロファイリングからの測定結果に対して、アルゴリズムの適用を用いる。
ミトコンドリアプロファイリング
癌治療法において重要な部分とは、薬剤及びその他の治療法に応答するミトコンドリア機能を理解し、検出し、制御することである。ミトコンドリア表面にて発生する事象によって、アポトーシス誘導性癌療法に応答する癌細胞の能力を決定する。従って、ミトコンドリアは、非癌細胞を維持しながら選択的に癌細胞を死滅させる方法を理解するための、重要なノードである。ミトコンドリアを評価して、抗アポトーシス性BCL−2ファミリーメンバーの選択的アンタゴニストである、感作因子BH3ペプチドの独自パネルを使用して細胞の状態を決定することができる。薬剤誘導アポトーシスに至る素因のあるミトコンドリアは、ミトコンドリア外膜透過性(MOMP)を阻止する抗アポトーシス性タンパク質機能に依存し、例えば、細胞が感作因子BH3ペプチドに曝露されると、MOMPの増加(JC−1色素の測定結果において、赤色から緑色放射になるシフトによって実証されるような)が観察される。
本発明は、アポトーシスに至る癌細胞の素因の決定を使用して、特定の治療に対する癌の感受性を明らかにする。これを行うことができる1つの方法とは、BH3のみを有するタンパク質のBH3ドメイン、または個々のBCL−2ファミリーメンバー、BCL−2、BCL−XL、BCL−w、MCL−1及びBFL−1に選択的に拮抗するこれらのペプチドの小分子模倣薬のBH3ドメインに由来するペプチドのパネルを使用することによる。抗アポトーシス性ファミリーメンバーは、各BH3ドメインに対するその親和性に基づいて互いに区別されてよい。例えば、BCL−XLは、HRK BH3に対するより高い親和性によって、BCL−2及びBCL−wと区別されてよい。対照的に、MCL−1は、BAD BH3とは結合しない(Opferman et al. 2003)。
細胞が、薬剤誘導アポトーシスに至るようあらかじめ準備されている場合(例えば、細胞が生存のためにBcl−2ポリペプチド作用に依存する)、アッセイを使用して、アポトーシスの妨害に関与する特異的Bcl−2タンパク質を同定することもできる。ミトコンドリアとの関連においてBcl−2タンパク質の機能を直接評価することにより、ミトコンドリアプロファイリングは、遺伝子マーカー及び疾患状態間の相関関係のみに依存する既存の診断技術と比較して、明らかに有利なアプローチを提供する。ミトコンドリアプロファイリングでは、BH3ドメインペプチド、例えば、表1に列挙したペプチドのパネルを使用する。表1に列挙したBH3ペプチドに加えて、BH3模倣薬もパネルに使用できる。例えば、Bcl−2及びBcl−xLを標的とするBH3模倣薬化合物(例えば、Abt−263)またはMcl−1を標的とするBH3模倣薬化合物(例えば、EU−51aa48)を使用してよい。抗アポトーシス性タンパク質BCL−2、BCL−XL、MCL−1、BFL−1及びBCL−wは各々、タンパク質のこのパネルとの特有の相互作用パターンを有する。以下で詳しく説明するように、ペプチドに対する細胞応答を、例えば、MOMPまたはシトクロムC放出の発生により測定する。
BH3パネルは、BH3ドメインまたはそれらの模倣薬の変異型を更に含むことができる。例えば、BH3ドメインペプチドは、(全体または一部に)配列NH2−XXXXXXIAXXLXXXGDXXXX−COOHまたはNH2−XXXXXXXXXXLXXXXDXXXX−COOHを含むペプチドを含むことができる。BH3ドメインは、配列番号:1〜14のいずれかのアミノ酸を少なくとも約5つ、約6つ、約7つ、約8つ、約9つ、約10、約15、または約20以上含むことができる。好ましい変異型は、1つ以上の予測非必須アミノ酸残基にて作製された保存的アミノ酸置換を有するようなものである。例えば、「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるものである。更なる実施形態では、BH3ドメインペプチドは、アポトーシスの活性化因子または感作因子である。好ましい実施形態では、BH3ドメインペプチドは、感作因子である。
各種実施形態では、BH3パネルは、1つ以上のBH3模倣薬を含む。本発明で使用してよいBH3模倣薬またはそれらの類似体としては、ゴシポール及びその類似体(例えば、Ideker et al. Genome Res. 2008)、ABT−199、ABT−737(例えば、Petros et al. Protein Sci. 2000)、ABT−263(例えば、Letai et al. Cancer Cell 2002)及びそれらの類似体(例えば、WO2005049593、US7,767,684、US7,906,505)、オバトクラックス(例えば、WO2004106328、WO2005117908、US7,425,553)、EU−5148、EU−5346、EU−4030、EU−51aa48(Eutropics社)、Mcl−1を選択的に阻害する化合物(例えば、WO2008131000、WO2008130970、Richard, et al. (2013) Bioorg Med Chem. 21(21):6642−9))、HA−14−1(例えば、Wang, et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 7124−9)、アンチマイシン−A(例えば、Tzung, et al. (2001) Nat. Cell. Biol. 3: 183−191)、BH3I−1及びBH3I−2(例えば、Degterev, et al. (2001) Nat. Cell. Biol. 3: 173−82)、テルフェニル誘導体(例えば、Kutzki, et al. (2002) J. Am. Chem. Soc. 124: 11838−9)、並びに選択的BH3模倣機能を有する化合物(例えば、Ng (2014) Clin Adv Hematol Oncol. 12(4):224−9)が挙げられるが、これらに限定されない。
各種実施形態では、本発明は、ミトコンドリアプロファイリングを含み、少なくとも2つ、または3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ、または9つ、または10以上のBH3ペプチド及び/またはBH3模倣薬を一度に評価する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、単一のBH3ペプチド評価とは対照的に、複数のBH3ペプチド解析を含む。いくつかの実施形態では、BH3ペプチド及び/またはBH3模倣薬のパネルを、単一の患者試料上でスクリーニングする。
いくつかの実施形態では、ミトコンドリアプロファイリングは、1つ以上のペプチドまたはそれらの断片の使用を含み、そのペプチドは、BIM、BIM2A、BAD、BID、HRK、PUMA、NOXA、BMF、BIK、及びPUMA2Aのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアプロファイリングは、BIM、BIM2A、BAD、BID、HRK、PUMA、NOXA、BMF、BIK、及びPUMA2Aのうちの1つ以上、並びに2つのBcl−2タンパク質、例えば、U.S.8,168,755に記載されているような(その内容が全体として本明細書に参考として組み込まれる)、1番目のBcl−2タンパク質(例えば、Bim、Bid、Bad、Puma、Noxa、Bak、Hrk、Bax、またはMule)及び2番目のBcl−2タンパク質(例えば、Mcl−1、Bcl−2、Bcl−XL、Bfl−1またはBcl−w)間で形成される天然に存在するヘテロ二量体に対して指向される抗体の使用を含む。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアプロファイリングは、例えば、Verdine, et al.“Stapled Peptides for Intracellular Drug Targets” Methods in Enzymology, Volume 503 (Chap. 1)に記載されているような(その内容が全体として本明細書に参考として組み込まれる)、ステープルペプチド(例えば、タンパク質をより強固にして細胞を透過できるよう、炭化水素結合を用いて3Dアルファヘリックスタンパク質セグメントの合成を強化することによって生成されたペプチド)の使用を含む。
一実施形態では、ペプチドは、約0.1μM〜約200μMの濃度で使用する。いくつかの実施形態では、約0.1μM〜約150μM、または約0.1μM〜約100μM、または約0.1μM〜約50μM、または約0.1μM〜約10μM、または約0.1μM〜約5μM、約1μM〜約150μM、または約1μM〜約100μM、約1μM〜約50μM、約1μM〜約10μM、約1μM〜約5μM、または約10μM〜約100μMのペプチドを使用する。いくつかの実施形態では、約0.1μM、または約0.5μM、または約1.0μM、または約5μM、または約10μM、または約50μM、または約100μM、または約150μM、または約200μMの濃度のペプチドを使用する。
各種態様では、本発明は、細胞をBH3ドメインペプチドと接触させて、その細胞を治療薬と接触させる前後の両方でMOMPを検出することにより、治療薬に対する細胞の感受性を予測する方法を提供する。一実施形態では、ミトコンドリアプロファイリングは、患者の癌細胞または試料をBH3パネルにさらすこと、及び患者サンプルのミトコンドリアプロファイルを、試験用細胞または試料(例えば、癌を有していない個体、投薬を受けていない患者、または治療前の同一の患者からの)のプロファイルと比較することを含む。この方法は、患者または試験用サンプル間のBH3パネル測定結果を比較すること、及び特定の治療に対する感受性及び/または耐性についてのサンプルのミトコンドリアプロファイルにおける任意の差を相互に関連付けることを更に含んでよい。更なる実施形態では、アルゴリズムを患者及び試験用サンプル間の測定結果に適用し、アルゴリズムの結果を、特定の治療に対するサンプルの感受性及び/または耐性における任意の差と相互に関連付ける。あるいは、治療薬に対する細胞の感受性は、治療薬と接触させた後の癌細胞のミトコンドリアプロファイルを提供すること、及びそのミトコンドリアプロファイルと最初のプロファイルを比較することによって決定される。最初のミトコンドリアプロファイルと比較した、治療後の癌細胞におけるミトコンドリアプロファイルのシフトは、薬力学的マーカーを提供し、癌細胞の耐性または感受性を示して、治療への応答を予測する。
アポトーシスは、当該技術分野において周知の様々な手段、例えば、ミトコンドリア外膜透過性(MOMP)の消失を検出すること、またはシトクロムC放出を測定することによって検出される。ミトコンドリア外膜透過性の消失は、例えば、電位差色素JC−1またはジヒドロローダミンを使用して測定することができる。一実施形態では、治療薬は、化学療法剤である。
一実施形態では、アポトーシスに至る細胞の素因は、アポトーシスのマーカーである、ミトコンドリアからのシトクロムC放出量を測定することによって決定される。この放出量は、当該技術分野において周知の標準的技術を使用して測定することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. Inc. & John Wiley & Sons, Inc., Boston, MA, 1993を参照)。
一実施形態では、アポトーシスに至る細胞の素因は、細胞のミトコンドリア外膜透過性(MOMP)の量を測定することによって決定される。この測定は、Bogenberger et al.(Leukemia et al.(2014)、その全体が参考として本明細書に組み込まれる)に記載されるものを含む、当該技術分野において周知の標準的技術を使用して実施することができる。非限定的な例では、細胞は、ミトコンドリア染料(例えば、JC−1またはジヒドロローダミン123)及びジメチルスルホキシドまたはカルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)を加えたBH3ペプチドで透過処理及びインキュベートして、染色程度を測定する。
ミトコンドリアプロファイリングは、ミトコンドリアの脱分極(%プライミング)を誘導するアポトーシス促進性ペプチドの性質及び患者の分類(例えば、応答者/非応答者)を関連付けることを含む。その他の実施形態では、任意の特定のBH3ペプチド、模倣薬、またはそれらの組み合わせによるプライミング率に対するアルゴリズムの適用は、患者の分類(例えば、応答者/非応答者)と関連する。
このような方法に有用なミトコンドリアプロファイリング及び試薬は、U.S.7,868,133;8,221,966;及び8,168,755並びにUS2011/0130309(その内容が全体として本明細書に参考として組み込まれる)に記載されている。
一態様では、本発明は、癌を有する1つ以上の被検体から取得したBH3ペプチドに対するミトコンドリアの感受性のパターンを含むミトコンドリアプロファイルを提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、抗癌剤、化学療法、外科手術、アジュバント療法(例えば、外科手術前)、及びネオアジュバント療法(例えば、外科手術後)のうちの1つ以上を含むことができる癌治療法の有効性を予測する。別の実施形態では、癌治療法が、BH3模倣薬、エピジェネティック修飾剤、トポイソメラーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、及びキネシンスピンドルタンパク質安定剤のうちの1つ以上を含む。更に別の実施形態では、癌治療法は、プロテアソーム阻害剤;及び/または細胞周期制御の調節剤(非限定的例として、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤);及び/または細胞のエピジェネティック機構の調節剤(非限定的例として、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)(例えば、ボリノスタットもしくはエンチノスタットのうちの1つ以上)、アザシチジン、デシタビンのうちの1つ以上);及び/またはアントラサイクリンもしくはアントラセンジオン(非限定的例として、エピルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシンのうちの1つ以上);及び/または白金系製剤(非限定的例として、カルボプラチン、シスプラチン、及びオキサリプラチンのうちの1つ以上);シタラビンもしくはシタラビン系化学療法;BH3模倣薬(非限定的例として、BCL2、BCLXL、もしくはMCL1のうちの1つ以上);アポトーシスタンパク質;グルココルチコイド、ステロイド、モノクローナル抗体、抗体−薬物複合体、またはサリドマイド誘導体、並びにMCL1阻害剤を含む。
いくつかの実施形態では、ミトコンドリアプロファイリングは、患者の癌細胞を透過処理すること、並びに透過処理した細胞を1つ以上のBH3ドメインペプチド及び/または1つ以上の製剤と接触させる際に、ミトコンドリア膜電位の変化を決定または定量化することを含む。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアプロファイリングは、癌治療の前及び治療中の両方で実施される。これらの測定値は、本明細書に記載された臨床因子に加えて、様々な療法に対して患者の応答及び/または患者を区分するのに役立つ。
ある種の実施形態では、ミトコンドリアプライミングは、以下の式により定義される:
式中、AUCは、曲線下面積またはシグナル強度のいずれかを含み;DMSOは、ベースラインのネガティブコントロールを含み;CCCP(カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン)は、ミトコンドリアの電子伝達系における電子担体の正常な活性間に確立されたプロトン勾配の脱共役剤として機能することによるタンパク質合成のエフェクターを含み、それはベースラインのポジティブコントロールを含む。いくつかの実施形態では、曲線下面積は、ホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)により確立される。いくつかの実施形態では、時間は、約0〜約300分から約0〜約30分の間の時間にわたって生じる。いくつかの実施形態では、曲線下面積は、蛍光活性化細胞選別(FACS)により確立される。いくつかの実施形態では、シグナル強度は、約5分〜約300分の間に生じる単一時間点の測定値である。
いくつかの実施形態では、この方法は、患者の臨床因子の解析を含む。各種実施形態では、臨床因子は、年齢、細胞遺伝学的状態、パフォーマンス、組織学的サブクラス(histological subclass)、性別、及び疾患ステージのうちの1つ以上である。別の実施形態では、この方法は、変異状態、一塩基多型、定常状態のタンパク質レベル、及び動的タンパク質レベルから選択される追加バイオマーカーの測定を更に含み、試験に対する特異性及び/または感受性を更に追加することができる。別の実施形態では、この方法は、患者における臨床応答を予測することを更に含む。別の実施形態では、臨床応答は、少なくとも約1年、約2年、約3年、または約5年の無増悪生存/無再発生存である。
別の実施形態では、この方法は、ミトコンドリアプロファイリングアッセイ並びに細胞表面マーカーCD33、細胞表面マーカーCD34、FLT3変異状態、p53変異状態、MEK−1キナーゼのリン酸化状態、及びBcl−2の位置70におけるセリンのリン酸化のうちの1つ以上を測定すること;並びに化学療法による癌患者の治療の有効性を相互に関連付けることを含む。一実施形態では、癌患者は、AML患者である。別の実施形態では、癌患者は、MM患者である。
別の実施形態では、ミトコンドリアプロファイルは、治療経過中に実施される。更なる実施形態では、ミトコンドリアプロファイルは、治療前及び治療中の様々な時点で患者の細胞またはサンプルにて実施される。別の実施形態では、ミトコンドリアプロファイルは、治療中の様々な時点で患者の細胞またはサンプルにて実施される。一実施形態では、患者サンプルは、治療開始前(時間「0」)、次いで治療中または治療後の任意の適切な時点にて取得される。一実施形態では、患者におけるその後のミトコンドリアプロファイルを実施する決定は、患者が現在の一連の治療に対して応答しない場合に成される。別の実施形態では、その後のミトコンドリアプロファイルを実施する決定は、治療に対する患者の応答に依存することなく成される。
一態様では、ミトコンドリアプロファイルは、インビトロで実施される。更なる実施形態では、BH3はインビボで実施される。インビボミトコンドリアプロファイリングは、任意の適切な方法で、例えば、マウスなどのモデル生物に細胞を移植することにより実施されてよい。一実施形態では、マウスは、SCIDマウスである。一実施形態では、移植細胞は、発光マーカーを発現し、それによってインビボでの細胞の光学追跡を可能にする(例えば、Runnels et al. J. Biomed. Opt. 16(1) January 11(2011)を参照)。
一態様では、本発明は、ミトコンドリアプロファイリングの結果にアルゴリズムを適用すること、及び治療に対する細胞または試料の感受性を予測するために、ミトコンドリアプロファイルにおける応答のパターン及び/または程度を解析することを提供する。一実施形態では、ミトコンドリアプロファイルの評価に由来する一連のバイオマーカーアルゴリズムは、治療に対する蓋然的応答に従って患者を分類するために適用される。一実施形態では、アルゴリズムは、ミトコンドリアプロファイルにて測定されたような細胞応答(例えば、感受性または耐性)におけるシフトを予測するために適用される。一非限定的例では、BIM及びNOXA指標は、5−アザ応答の重要な決定要因である。(Bogenberger et al. Leukemia (2014)を参照、その内容が全体として本明細書に参考として組み込まれる)。
例示的な臨床決定
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、患者の評価、例えば、診断、予後、及び治療への応答の評価に有用である。各種態様では、本発明は、腫瘍または血液癌を評価することを含む。各種実施形態では、評価は、診断、予後、及び治療への応答から選択されてよい。
診断とは、例えば、癌などの起こり得る疾患または障害の決定または同定を試みるプロセスを指す。予後とは、例えば、癌などの疾患または障害の蓋然的結果を予測することを指す。全体的な予後としては、多くの場合予想される期間、機能、及び進行性の低下、間欠的発症、または急激で予測不能な発症などの疾患の経過説明が挙げられる。治療への応答とは、治療を受ける際の、患者の医学的結果の予測である。治療への応答は、非限定的例として、病理学的完全奏功、生存、及び無増悪生存、無増悪期間、再発可能性であり得る。
本明細書で使用する場合、「ネオアジュバント療法」という用語は、主要治療、通常外科手術を行う前に腫瘍を縮小させる第一段階として施される治療を指す。ネオアジュバント療法の例としては、化学療法、放射線療法、及びホルモン療法が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ネオアジュバント療法を含む患者の治療法を導く。例えば、特定の治療法に対して応答すると記録された患者が、ネオアジュバント療法としてそのような治療を受けてよい。いくつかの実施形態では、ネオアジュバント療法とは、外科手術前に癌患者に施される化学療法を意味する。いくつかの実施形態では、ネオアジュバント療法とは、外科手術前に癌患者に施される、本明細書に記載された剤を含む、剤を意味する。更に、本発明の方法は、非限定的例として、アポトーシスを促進させる方法で誘導及び/もしくは作用する治療法、または誘導及び/もしくは作用しない治療法として、ネオアジュバント療法の特性を導いてよい。一実施形態では、本発明の方法は、患者が特定の治療法に対して応答しない、または応答が弱いために、そのような患者がネオアジュバント療法としてそのような治療を受けなくともよいことを示す場合もある。従って、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、患者の蓋然的応答に従って、ネオアジュバント療法を施す、または控えるために提供する。このように、患者の生活の質、及び治療費を改善してよい。
本明細書で使用する場合、「アジュバント療法」という用語は、一次治療後に癌の再発リスクを減少させるために行われる追加的癌治療を指す。アジュバント療法としては、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、標的療法、または生物学的療法を挙げてよい。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、アジュバント療法を含む患者の治療法を導く。例えば、特定の治療法に対して応答すると記録された患者が、アジュバント療法としてそのような治療を受けてよい。更に、本発明の方法は、非限定的例として、アポトーシスを促進させる方法で誘導及び/もしくは作用する治療法、または誘導及び/もしくは作用しない治療法として、アジュバント療法の特性を導いてよい。一実施形態では、本発明の方法は、患者が特定の治療法に対して応答しない、または応答が弱いために、そのような患者がアジュバント療法としてそのような治療を受けなくともよいことを示す場合もある。従って、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、患者の蓋然的応答に従って、アジュバント療法を施す、または控えるために提供する。このように、患者の生活の質、及び治療費を改善してよい。
各種実施形態では、本発明の方法は、患者が特定の治療法を受けるか否かに関する臨床決定を導く。一実施形態では、本発明の方法は、ネオアジュバント及び/もしくはアジュバント化学療法への肯定的応答、またはネオアジュバント及び/もしくはアジュバント化学療法への非応答性を予測する。一実施形態では、本発明の方法は、アポトーシス促進剤もしくはアポトーシスを介して作用する剤及び/もしくはアポトーシスを介して作用しない剤への肯定的応答、またはアポトーシスエフェクター剤及び/もしくはアポトーシスを介して作用しない剤への非応答性を予測する。各種実施形態では、本発明は、例えば、どの種類の治療を施すべきか、または控えるべきかを含む、癌患者の治療法を導く。
一実施形態では、治療中の様々な時点で実施されたミトコンドリアプロファイルにて生成されたデータの比較によって、特定の治療法に対する癌感受性の変化を示すプロファイル測定結果の変化を示す。一実施形態では、特定の治療法に対する癌の感受性変化の決定を使用して、患者を再分類し、将来的な治療方針を導き出す。
一実施形態では、特定の治療法に対する患者癌細胞の感受性または耐性の決定を使用して、患者を治療または予後グループへと分類する。いくつかの非限定的例では、患者は、治癒、再発、不完全奏功、完全奏功、初期療法への不応、応答者、非応答者、高い応答可能性、または低い応答可能性として示されるグループに分類される。更なる実施形態では、ミトコンドリアプロファイリング及び患者分類の解析によって、治療、例えば、1つの製剤から別の製剤への切替、製剤投与量の変更、または種類の異なる治療の施術(例えば、外科手術、放射線、同種骨髄または幹細胞移植)などに関する臨床決定を導く。更なる実施形態では、臨床決定は、癌感受性の変化の解析、分類、並びに年齢及び/または細胞遺伝学的状態などの臨床因子の考察によって導き出される。各種実施形態では、癌治療法は、本明細書に記載の方法に基づいて施される、または控えられる。例示的な治療法としては、外科的切除、放射線療法(本明細書に記載されたような化合物の使用、または放射線増感剤との併用を含む)、化学療法、薬力学的療法、標的療法、免疫療法、並びに支持療法(例えば、鎮痛剤、利尿剤、抗利尿剤、抗ウイルス剤、抗生物質、栄養補助剤、貧血治療、血液凝固治療、骨治療、並びに精神及び心理学的治療)が挙げられる。
一実施形態では、本発明の方法は、一次治療、主要治療または初期治療後に、これらに限定しないが、個別の単独アジュバント療法を含むアジュバント療法を、患者が受けるか否かに関する臨床決定を導く。非限定的例として、アジュバント療法は、外科手術で検知可能な疾患をすべて除去するも、依然として潜在的疾患に起因する再発の統計的リスクがあるような手術後に通常施される追加の治療法であってよい。
例示的実施形態では、本発明の方法は、特定の治療法に応答する可能性を示す。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、アポトーシス促進剤、及び/またはアポトーシスを介して作用する剤、及び/または直接タンパク質を調節することにより促進されるアポトーシスを介して作用する剤に応答する可能性の高低を示す。各種実施形態では、例示的なアポトーシス促進剤、及び/またはアポトーシスを介して作用する剤、及び/または直接タンパク質を調節することにより促進されるアポトーシスを介して作用する剤としては、ABT−263(ナビトクラックス)、及びオバトクラックス、WEP、ボルテゾミブ、並びにカーフィルゾミブが挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、アポトーシスを介して作用しない剤及び/または直接タンパク質を調節することにより促進されるアポトーシスを介して作用しない剤に応答する可能性の高低を示す。各種実施形態では、アポトーシスを介して作用しない例示的な剤としては、キネシンスピンドルタンパク質阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、三酸化ヒ素(TRISENOX)、MEK阻害剤、ポマリドミド、アザシチジン、デシタビン、ボリノスタット、エンチノスタット、ジナシクリブ(dinaciclib)、ゲムツズマブ(gemtuzumab)、BTK阻害剤、PI3キナーゼデルタ阻害剤、レナリドミド、アントラサイクリン、シタラビン、メルファラン、Aky阻害剤、mTOR阻害剤が挙げられる。
例示的実施形態では、本発明の方法は、患者が癌治療のためにアポトーシス促進剤またはアポトーシスを介して作用する剤を受けるか否かを示す。別の例示的実施形態では、本発明の方法は、患者がアポトーシスを介して作用しない剤を受けるか否かを示す。
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載された治療法(剤を含む)のいずれかに対する癌患者の応答を予測するのに有用である。例示的実施形態では、本発明は、化学療法への癌患者の応答可能性を予測し、患者のミトコンドリアプロファイル、年齢プロファイル及び細胞遺伝学的因子の評価を含む。
例示的な治療法
例示的実施形態では、本発明は、治療剤を選択する。このような剤の例としては、抗癌剤、化学療法、外科手術、アジュバント療法、及びネオアジュバント療法のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、癌治療法は、BH3模倣薬、エピジェネティック修飾剤、トポイソメラーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、及びキネシンスピンドルタンパク質安定剤のうちの1つ以上である。別の実施形態では、癌治療法は、プロテアソーム阻害剤;及び/または細胞周期制御の調節剤(非限定的例として、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤);及び/または細胞のエピジェネティック機構の調節剤(非限定的例として、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)(例えば、ボリノスタットもしくはエンチノスタットのうちの1つ以上)、アザシチジン、デシタビンのうちの1つ以上);及び/またはアントラサイクリンもしくはアントラセンジオン(非限定的例として、エピルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシンのうちの1つ以上);及び/または白金系製剤(非限定的例として、カルボプラチン、シスプラチン、及びオキサリプラチンのうちの1つ以上);シタラビンもしくはシタラビン系化学療法;BH3模倣薬(非限定的例として、BCL2、BCLXL、MCL1、Abt−263、EU−51aa48、EU−5346、及びEU−5148のうちの1つ以上);グルココルチコイド、ステロイド、モノクローナル抗体、抗体−薬物複合体、サリドマイド誘 導体、並びにMCL1阻害剤である。
各種実施形態では、本発明は、これらに限定されないが、US2012−0225851及びWO2012/122370(その内容が全体として本明細書に参考として組み込まれる)に記載されるものを含む、癌治療法に関する。
各種実施形態では、本発明は、これらに限定されないが、チオテパ及びCYTOXANシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン並びにメチルメラミン;アセトゲニン(例えば、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(アドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(例えば、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンω1I(例えば、Angew, Chem. Intl. Ed. Engl., 33:183−186(1994)を参照)などの抗生物質;ダイネミシン(dynemicin)Aを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCINドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フォリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシン及びアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体(JHS Natural Products社、ユージーン、オレゴン州);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(例えば、T−2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOLパクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology社、プリンストン、ニュージャージー州)、ABRAXANE(Cremophorフリー)パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners社、シャンバーグ、イリノイ州)、及びTAXOTEREドセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer社、アントニー、フランス);クロラムブシル;GEMZARゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE、ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar、CPT−11)(5−FU及びロイコボリンと併用するイリノテカンの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチンの治療レジメン(FOLFOX)を含む、オキサリプラチン;ラパチニブ(Tykerb);細胞増殖を減少させるPKC−α、Raf、H−Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(Tarceva))及びVEGF−A阻害剤、dacogen、velcade、並びに薬剤として許容される塩、酸または上記いずれかの誘導体のうちの1つ以上を含む、癌治療法に関する。
例示的な検出方法
一実施形態では、アポトーシスに至る細胞の素因は、ミトコンドリア外膜透過性を測定すること、またはシトクロムC放出を検出することによって決定され、両方ともアポトーシスの特徴である。一実施形態では、アポトーシスに至る細胞の素因は、アポトーシスのマーカーである、ミトコンドリアからのシトクロムC放出量を測定することによって決定される。この放出量は、当該技術分野において周知の標準的技術を使用して測定することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. Inc. & John
Wiley & Sons, Inc., Boston, MA, 1993を参照)。
各種実施形態では、本発明の方法は、細胞の細胞遺伝学的状態を評価すること(例えば、タンパク質及び/または核酸の有無またはレベルを評価すること)を含む。各種実施形態では、本発明の方法は、ミトコンドリアプロファイリングの特異性及び/または感受性を高めることができるタンパク質及び/または核酸の有無またはレベルを評価することを含む。いくつかの実施形態では、評価は、患者の応答に対するマーカーである。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、免疫組織化学染色法、ウェスタンブロッティング、インセルウェスタン、免疫蛍光染色、ELISA、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)、生物発光、蛍光マーカー検出、または本明細書に記載される任意のその他方法もしくは当該技術分野において周知の方法のうちの1つ以上を使用する測定を含む。本発明の方法は、組織または体液に特異的かつ癌の状態を示すエピトープを同定するために、抗体を腫瘍試料(例えば、生検材料または組織もしくは体液)に接触させることを含んでよい。
一般に、体液または組織内の抗原上のエピトープを検出するために使用される2つの方法には、直接法及び間接法がある。直接法は、一段階染色を含み、体液または組織サンプル内の抗原に直接反応する標識抗体(例えば、FITC結合抗血清)を含んでよい。間接法は、体液または組織抗原に反応する非標識一次抗体、及び一次抗体に反応する標識二次抗体を含む。標識としては、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素を挙げることができる。これらのアッセイを実施する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Harlow et al.(Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1988)、Harlow et al.(Using Antibodies, A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1999)、Virella(Medical Immunology, 6th edition, Informa HealthCare, New York, 2007)、及びDiamandis et al.(Immunoassays, Academic
Press, Inc., New York, 1996)を参照のこと。これらのアッセイを実施するキットは、例えば、Clontech Laboratories社(マウンテンビュー、カリフォルニア州)から市販されている。
各種実施形態では、抗体としては、全抗体及び/または任意の抗原に結合する断片(例えば、抗原結合部分)及び/またはこれらの一本鎖(例えば、ジスルフィド結合によって相互に結合した少なくとも2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含む抗体、Fab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインから成る一価断片;F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド結合によって結合した2つのFab断片を含む二価断片;VH及びCH1ドメインから成るFd断片;抗体の片腕のVL及びVHドメインから成るFv断片など)が挙げられる。各種実施形態では、ポリクローナル及びモノクローナル抗体は、単離されたヒトもしくはヒト化抗体、またはそれらの機能的断片として有用である。
様々な種の標的に対する抗体の結合能を評価する標準的アッセイは、当該技術分野において周知であり、例えば、ELISA、ウェスタンブロット及びRIAが挙げられる。抗体の結合速度論(例えば、結合親和性)もまた、Biacore解析など、当該技術分野において周知の標準的アッセイによって評価することができる。
別の実施形態では、測定は、核酸の有無またはレベルを評価することを含む。当業者は、多数の方法を使用して、適切なマーカーのDNA/RNAレベルを検出または定量化できることを理解するであろう。
遺伝子発現は、例えば、これらに限定されないが、レポーター遺伝子アッセイ、ノーザンブロット、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、及び逆転写PCR(RT−PCR)を含む、低〜中程度のプレックス技術を使用して測定することができる。遺伝子発現はまた、例えば、これらに限定されないが、遺伝子発現連鎖解析(SAGE)、DNAマイクロアレイ、タイリングアレイ、RNAシーケンシング/全トランスクリプトームショットガンシーケンシング(whole transcriptome shotgun sequencing、WTSS)、ハイスループットシーケンシング、マルチプレックスPCR、multiplex ligation−dependent
probe amplification(MLPA)、ライゲーションによるDNAシーケンシング、及びLuminex/XMAPを含む、高程度のプレックス技術を使用しても測定することができる。当業者は、マイクロアレイなどのアレイ、RT−PCR(定量PCRを含む)、ヌクレアーゼプロテクションアッセイ及びノーザンブロット解析を含む多数の方法を使用して、サンプル内のバイオマーカーのRNA生成物レベルを検出または定量化できることを理解するであろう。
例示的な癌及び患者
いくつかの実施形態では、本発明は、癌治療法を決定する方法を提供し、及び/または患者の腫瘍試料または癌細胞試料を含む。癌または腫瘍とは、制御不能な細胞増殖、及び/または異常増殖した細胞の生存、及び/または身体器官及び組織の正常な機能を妨げるアポトーシスの阻害を指す。癌または腫瘍を有する被検体とは、被検体の体内に存在する客観的に測定可能な癌細胞を有する被検体である。良性及び悪性の癌、並びに休止腫瘍または微小転移も本発明に含まれる。原発巣から遊走して重要な器官に播種する癌は、最終的に影響を受けた器官の機能悪化により、被検体を死に至らしめ得る。
各種実施形態では、本発明は、前転移癌、または転移癌に当てはまる。転移とは、癌がその原発部位から体内のその他の場所へ広がることを指す。癌細胞は、原発腫瘍から分離してリンパ管及び血管に侵入し、血流を介して循環し、体内の他の部位にて正常な組織内に遠隔病巣を拡大(転移)させ得る。転移は、局所的または遠隔であり得る。転移は、原発腫瘍から分離して血流を介して移動し、遠隔部位にて留まる腫瘍細胞を条件とした、連鎖的プロセスである。新しい部位にて、細胞は血液供給を確立して成長し、生命を脅かす腫瘤を形成し得る。腫瘍細胞内の刺激分子及び抑制分子の両経路によって、この挙動を調節し、遠隔部位の腫瘍細胞及び宿主細胞間の相互作用もまた重要である。転移は、特定症状のモニタリングに加えて、磁気共鳴映像法(MRI)スキャン、コンピュータ断層撮影法(CT)スキャン、血球数及び血小板数測定、肝機能検査、胸部X線並びに骨スキャンの単独使用または併用によって、多くの場合検出される。
本明細書に記載の方法は、癌の予後、癌の診断、癌の治療、並びに/または悪性腫瘍及び増殖細胞の生存に伴う増殖障害の拡大、進行、及び/もしくは転移の診断、予後、治療、予防もしくは改善、またはアポトーシスの阻害に関するものである。いくつかの実施形態では、癌は血液癌であり、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、並びに非ホジキンリンパ腫(マントル細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍であり、非小細胞肺癌、卵巣癌、及び黒色腫を含むが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、本発明は、以下の癌のうち1つ以上に関する:急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連癌、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫(例えば、小児小脳性または大脳性)、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、悪性線維性組織球腫)、脳幹グリオーマ、脳癌、脳腫瘍(例えば、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性グリオーマ、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視経路及び視床下部グリオーマ)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患,結腸癌、皮膚t細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、胆嚢癌、胃体部(胃)癌、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば、頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、グリオーマ(例えば、脳幹、大脳星細胞腫、視経路及び視床下部)、胃カルチノイド、頭頸部癌、心臓癌、肝細胞(肝)癌、下咽頭癌、視床下部及び視経路グリオーマ、眼内黒色腫、膵島細胞癌(膵臓内分泌部)、腎癌(腎細胞癌)、喉頭癌、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞)、口唇及び口腔(oral cavity)癌、脂肪肉腫、肝癌、肺癌(例えば、非小細胞、小細胞)、リンパ腫(例えば、AIDS関連、バーキット、皮膚T細胞、ホジキン、非ホジキン、中枢神経系原発)、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性扁平上皮頸部癌、口腔(mouth)癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性(myelogenous)白血病、骨髄性(myeloid)白血病、骨髄性(myeloid)白血病、骨髄増殖性疾患、慢性、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔(oral)癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵臓癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭(pharyngeal)癌、褐色細胞腫、松果体星細胞腫及び/または胚細胞腫、松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、中枢神経系原発リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎癌)、腎盂及び尿管、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(例えば、ユーイングファミリー、カポジ、軟部、子宮)、セザリー症候群、皮膚癌(例えば、非黒色種、黒色種、メルケル細胞)、小細胞肺癌、小腸癌、軟部肉腫、扁平上皮細胞癌、扁平上皮頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、t細胞リンパ腫、睾丸癌、咽頭(throat)癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、絨毛腫瘍、尿管及び腎盂癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視経路及び視床下部グリオーマ、外陰癌,ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、並びにウイルムス腫瘍。
一実施形態では、癌は多発性骨髄腫(MM)である。一実施形態では、癌はAMLである。AMLは2番目に多い白血病であり、アメリカでは年間約13,000人が新たにAMLと診断され、年間死者数は9,000人である。定評のある療法が存在しているが、白血病患者の多くは予後が悪く、治療が成功する可能性は低い。AMLに対する現在の標準的治療は、誘導シトシンアラビノシド(ara−C)に、アントラサイクリン剤(例えば、ダウノルビシン、イダルビシンまたはミトキサントロンなど)を併用する。通常、この治療レジメンに続いて、高用量シタラビンの投与及び/または幹細胞移植を行う。これらの治療法は、若年患者における治療結果を改善した。急性前骨髄球性白血病の治療にも進展があり、オールトランスレチノイン酸(ATRA)または三酸化ヒ素を用いた標的療法によって、生存率が良くなった。しかしながら、AML症例の大半である、60歳超の患者集団では、依然として治療が不明確なままである。65〜85%の患者は、当初既存の治療法に応答するが、その応答した患者の65%が再発し、多くの患者が再発した疾患により亡くなる。少なくともこの理由で、そして上述の治療法は深刻な副作用を有する場合もあるので、本発明の予測試験によって、これらの訴えを緩和する治療法の使用を導くことができる。いくつかの実施形態では、本発明は、適切な患者を適切な治療法に合致させることにより、治療が成功する可能性を向上させる。更に、治療に対するAML患者の応答を予測する試験は現状存在しない。
「被検体(subject)」という用語は、本明細書で使用する場合、他に規定されない限り、哺乳動物、例えばヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、またはサル、チンパンジー、もしくはヒヒなどの非ヒト霊長類である。「被検体(subject)」及び「患者(patient)」という用語は、同じ意味で使用される。
例示的な試料
いくつかの実施形態では、本発明は、生検材料または手術検体サンプルを含む、腫瘍試料の測定を含む。いくつかの実施形態では、試料は、凍結腫瘍組織試料、培養細胞、循環腫瘍細胞、及びホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織試料(例えば、抗体を用いたミトコンドリアプロファイリング用)から選択される。いくつかの実施形態では、生検材料は、ヒト生検材料である。各種実施形態では、生検材料は、凍結腫瘍組織試料、培養細胞、循環腫瘍細胞、及びホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織試料(例えば、抗体を用いたミトコンドリアプロファイリング用)のうちの任意の1つである。
いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、凍結腫瘍組織(凍結切片)試料などの生検サンプルであってよい。当該技術分野において周知のように、凍結切片にはクライオスタットを使用してよく、冷凍庫内部にはミクロトームを含む。手術検体を金属組織ディスク上に置き、次いでチャック内に固定して、約−20℃〜約−30℃まで急速凍結させる。試料は、例えば、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールから成るゲル様培地内に包埋する。凍結組織は、クライオスタットのミクロトーム部分で凍結したまま切断し、その切片を任意にスライドガラス上に取り上げて染色する。
いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、培養細胞などの生検サンプルであってよい。これらの細胞は、当該技術分野において周知である通常の細胞培養技術を使用して処理されてよい。これらの細胞は、循環腫瘍細胞であってよい。
いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織試料などの生検サンプルであってよい。当該技術分野において周知のように、生検試料は、ホルマリン(水とホルムアルデヒドの混合液)またはその他の液体と共に容器に入れて、保存してよい。組織サンプルを、熱いパラフィンワックスと共に、型に入れてよい。ワックスを冷却して、組織を保護する固形ブロックを形成する。包埋組織と共にこのパラフィンワックスブロックをミクロトーム上に配置し、組織を極めて薄いスライスに切り分ける。
ある種の実施形態では、腫瘍試料(または生検材料)は、100mg未満の組織を含み、またはある種の実施形態では、約50mg以下の組織を含む。腫瘍試料(または生検材料)は、約35mgの組織などの、約20mg〜約50mgの組織を含んでよい。
組織は、例えば、1つ以上(例えば、1、2、3、4、または5)の針生検(例えば、14ゲージの針またはその他の好適なサイズを使用して)として得てよい。いくつかの実施形態では、生検は穿刺吸引であり、細長い針を疑いのある領域に刺し、注射器を使用して、解析のために液体及び細胞を抜き取る。いくつかの実施形態では、生検はコア針生検であり、コア針生検中に刃先の付いた大きな針を使用して、疑わしい領域から円柱状の組織を抜き取る。いくつかの実施形態では、生検は真空補助下生検であり、吸引装置によって、針を通って抽出される液体及び細胞の量を増加させる。いくつかの実施形態では、生検は画像誘導下生検であり、針生検を例えば、X線、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)または超音波などの画像検査法と組み合わせる。その他の実施形態では、サンプルは、MAMMOTOME(登録商標)生検システムなどの装置によって得てよく、その装置は、乳房生検ではレーザー誘導下、真空補助下生検システムである。
ある種の実施形態では、試料は、ヒト腫瘍由来の細胞株である。ある種の実施形態にて、試料は、癌幹細胞である。その他の実施形態では、試料は、例えば、結腸直腸、乳房、前立腺、肺、膵臓、腎臓、または卵巣の原発腫瘍の生検材料などの、固形腫瘍の生検材料に由来する。
ある種の実施形態では、試料は上皮起源である。いくつかの実施形態では、上皮試料は、抗上皮細胞接着分子(EpCAM)または固体マトリックスもしくはビーズに結合したその他の上皮細胞結合抗体を用いた、生検サンプルからの選択により濃縮される。
ある種の実施形態では、試料は間葉起源である。いくつかの実施形態では、間葉試料は、神経細胞接着分子(N−CAM)もしくはニューロピリンまたは固体マトリックスもしくはビーズに結合したその他の間葉細胞結合抗体を用いた、生検サンプルからの選択により濃縮される。
ある種の実施形態では、試料は、例えば、本明細書に記載された癌のいずれかなどの非固形腫瘍の生検材料に由来する。特定の実施形態では、試料は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、及び非ホジキンリンパ腫を有する患者の生検材料に由来する。ある特定の実施形態では、試料は、固体マトリックスまたはビーズに結合した抗CD138抗体を用いた生検サンプルからの選択により濃縮される多発性骨髄腫細胞である。ある特定の実施形態では、試料は、CD45に対する抗体への結合により濃縮される急性骨髄性白血病細胞である。ある特定の実施形態では、試料は、非B細胞の枯渇により濃縮される慢性リンパ性白血病またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
いくつかの実施形態では、試料は、循環腫瘍細胞に由来する。
例示的な臨床因子及び追加バイオマーカー
いくつかの実施形態では、本発明は、臨床因子の評価を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、患者の応答を評価するために、ミトコンドリアプロファイリング及び/または臨床因子の評価を含む。いくつかの実施形態では、ミトコンドリアプロファイリング検査と組み合わせて患者の応答情報を提供する臨床因子が、アポトーシスと関連しない場合もある。いくつかの実施形態では、臨床因子は、アポトーシスの影響を受けない。
一実施形態では、臨床因子は、年齢、細胞遺伝学的状態、パフォーマンス、組織学的サブクラス(histological subclass)、性別、及び疾患ステージのうちの1つ以上である。
一実施形態では、臨床因子は年齢である。一実施形態では、患者の年齢プロファイルは、約10歳超、または約20歳超、または約30歳超、または約40歳超、または約50歳超、または約60歳超、または約70歳超、または約80歳超として分類される。
一実施形態では、臨床因子は細胞遺伝学的状態である。ウイルムス腫瘍及び網膜芽細胞腫などのいくつかの癌では、例えば、遺伝子欠失または不活性化は、腫瘍抑制因子に関連する染色体領域が通常欠失または変異するので、癌の進行の開始に関与する。例えば、欠失、逆位、及び転座は通常、グリオーマ、非小細胞肺癌、白血病、及び黒色腫では染色体領域9p21で検出される。理論に束縛されるものではないが、これらの染色体の変化によって、腫瘍抑制因子であるサイクリン依存性キナーゼ阻害因子2Aを不活性化させる場合もある。特定の遺伝子のこれらの欠失に加えて、染色体の大部分も欠損し得る。例えば、染色体1p及び16qは通常、固形腫瘍細胞において欠損している。遺伝子重複及び遺伝子コピー数の増加もまた癌に関与し、転写解析またはコピー数変化アレイで検出できる。例えば、染色体領域12q13−q14は、多くの肉腫において増幅されている。この染色体領域は、p53と呼ばれる腫瘍抑制因子と結合すると知られている、MDM2と呼ばれる結合タンパク質をコードする。MDM2が増幅されると、p53が細胞増殖を調節しようとするのを妨げ、腫瘍を形成させてしまう可能性がある。更に、ある種の乳癌では、ERBB2遺伝子の過剰発現及びコピー数増加に関連し、ヒト上皮成長因子受容体2をコードする。また、染色体1q及び3qなどの染色体数の増加も、癌発症リスクの増加と関連する。
細胞遺伝学的状態は、当該技術分野において周知の様々な方法で測定することができる。例えば、FISH、従来の核型分析、及び仮想核型分析(例えば、比較ゲノムハイブリダイゼーションアレイ、CGH及び一塩基多型アレイ)を使用してよい。例えば、FISHを使用して特定の座における染色体再構成を評価してよく、これらの現象は疾患発症リスクの状態に関連する。いくつかの実施形態では、細胞遺伝学的状態は、好ましい、中間、または好ましくない。
一実施形態では、臨床因子はパフォーマンスである。パフォーマンスステータスは、患者のパフォーマンスステータスをスコアリングする、当技術分野において周知である任意のシステム及び方法を使用して定量化できる。多くの場合、測定を使用して、患者が化学療法、投与量調節の調節を受けることができるか否かを決定し、緩和ケアの強度を決定する。カルノフスキースコア及びズブロドスコアを含む、様々なスコアリングシステムがある。類似のスコアリングシステムとしては、機能の全体的評定(Global Assessment of Functioning、GAF)スコアが挙げられ、これは精神医学の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical
Manual、DSM)の第5軸として組み込まれている。高パフォーマンスステータス(例えば、カルノフスキースコアリングシステムを使用して、少なくとも80%、または少なくとも70%)では、疾患状態の進行を妨げる、並びに化学療法及び/または放射線治療を受ける患者の能力を向上させる治療を示してよい。例えば、これらの実施形態では、患者は歩行可能かつ自己管理できる。その他の実施形態では、評価は、低パフォーマンスステータス(例えば、カルノフスキースコアリングシステムを使用して、50%未満、30%未満、または20%未満)の患者が、従来の放射線療法及び/または化学療法を許容できるようにすることを示している。これらの実施形態では、患者はほとんどベッドまたは椅子で過ごし、自己管理すら不可能である。
カルノフスキースコアは100から0までで、100が「完全に」健康、0は死である。スコアは、10間隔にて使用してよい:100%は正常、疾患の訴えはなく、徴候もない;90%は正常活動が可能だが、わずかに疾患の症状または徴候がある;80%は、正常活動であるがいくつか困難を伴い、いくつか症状または徴候がある;70%は、自己管理できるが正常活動または労働ができない;60%は時々介助が必要になるが、個人的に必要な活動はほとんどできる;50%は、多くの場合介助が必要であり、頻繁に診療が必要である;40%は、障害があり特別な治療及び介助が必要である;30%は、高度障害があり入院が必要であるが死の危険性はない;20%は、非常に重篤で緊急入院が必要であり、介護または治療が必要である;並びに10%は、瀕死の状態で、致死的疾患プロセスが急激に進行する。
パフォーマンスステータスのズブロドスコアリングシステムは、0、十分に活動的、制限なく発病前と同等に生活できる;1、身体的に激しい活動には制限があるが、歩行可能で軽労働または座業、例えば軽い家事、事務作業の労働を行うことができる;2、歩行可能ですべての自己管理ができるが、覚醒時間中の約50%超で労働活動ができない;3、限定された自己管理だけ可能であり、覚醒時間中の50%超をベッドまたは椅子で過ごす;4、完全に障害があり、自己管理が全くできず、終日ベッドまたは椅子で過ごす;5、死亡を含む。
一実施形態では、臨床因子は組織学的サブクラス(histological subclass)である。いくつかの実施形態では、腫瘍の組織学的サンプルは、Elston&Ellis, Histopathology 1991, 19:403−10に従ってグレード付けし、その内容が全体として本明細書に参考として組み込まれる。
一実施形態では、臨床因子は性別である。一実施形態では、性別は男性である。一実施形態では、性別は女性である。
一実施形態では、臨床因子は疾患ステージである。非限定的例として、全体的なステージの分類を使用すると、ステージI癌は、体内の1か所に限局している;ステージII癌は、局所的に進行していて、ステージIIIの癌も同様である。癌が、ステージIIまたはステージIIIとして示されるか否かは、癌の特定のタイプに依存し得る。一非限定的例のホジキン病では、ステージIIは、横隔膜の片側にのみ浸潤されたリンパ節を示すが、ステージIIIでは、横隔膜の上下に浸潤されたリンパ節を示す。従って、ステージII及びIIIの特定基準は、診断によって異なる。ステージIV癌は、多くの場合転移し、またはその他の器官もしくは全身へと広がっている。
いくつかの実施形態では、臨床因子は、血液疾患に対するフランス−アメリカ−イギリス(FAB)分類システムである(例えば、骨髄細胞形態異常(dysmyelopoiesis)の存在、並びに骨髄芽球及び赤芽球の定量化を示す)。一実施形態では、急性リンパ芽球性白血病のFABは、L1−L3、または急性骨髄性白血病のFABは、M0−M7である。
別の実施形態では、この方法は、変異状態、一塩基多型、定常状態のタンパク質レベル、及び動的タンパク質レベルから選択される追加バイオマーカーの測定を更に含む。別の実施形態では、この方法は、患者における臨床応答を予測することを更に含む。別の実施形態では、臨床応答は、約1年、約2年、約3年、または約5年の無増悪生存/無再発生存である。
年齢プロファイル及びパフォーマンスステータスなどの様々な臨床因子が、同定されてきた。これらに限定されないが、遺伝子MLL、AML/ETO、Flt3−ITD、NPM1(NPMc+)、CEBPα、IDH1、IDH2、RUNX1、ras、及びWT1の突然変異、並びにエピジェネティック修飾遺伝子TET2及びASXLの突然変異、並びに細胞シグナル伝達タンパク質プロファイルの変化を含む、細胞遺伝学的及び分子事象などの、診断において多数の静的測定もまた利用されている。
更に、いくつかの実施形態では、以下の臨床因子のうちの任意の1つが、本明細書に記載される方法において有用であってよい:性別;遺伝的危険因子;家族歴;既往歴;人種及び民族性;ある組織の特徴;様々な良性疾患(例えば、非増殖性病変);以前の胸部放射線;発癌物質への暴露など。
更に、いくつかの実施形態では、以下の臨床因子のうちの任意の1つが、本明細書に記載される方法において有用であってよい:細胞表面マーカーCD33、細胞表面マーカーCD34、FLT3変異状態、p53変異状態、MEK−1キナーゼのリン酸化状態、及びBcl−2の位置70におけるセリンのリン酸化のうちの1つ以上。
いくつかの実施形態では、臨床因子は、これらに限定されないが、インターロイキン−6を含むサイトカインの発現レベルである。いくつかの実施形態では、インターロイキン−6レベルは、患者の予後不良または患者の予後良好を含む、MM患者の応答可能性と相互に関連する。
別の実施形態では、この方法は、細胞表面マーカーCD33、細胞表面マーカーCD34、FLT3変異状態、p53変異状態、MEK−1キナーゼのリン酸化状態、及びBcl−2の位置70におけるセリンのリン酸化のうちの1つ以上を発現する細胞のミトコンドリアプロファイリングアッセイを測定すること;並びに化学療法による癌患者の治療の有効性を関連付けることを含む。
更に別の実施形態では、癌はAML及び/もしくはMMであって、臨床因子は、年齢プロファイル及び/もしくは細胞遺伝学的状態であり;または癌がAML及び/もしくはMMであって、癌治療法は、シタラビンもしくはシタラビン系化学療法及び/もしくはアザシチジンであり、または癌治療法が、シタラビンもしくはシタラビン系化学療法及び/もしくはアザシチジンであって、臨床因子は、年齢プロファイル及び/もしくは細胞遺伝学的状態であり、または癌治療法が、シタラビンもしくはシタラビン系化学療法及び/もしくはアザシチジンであり;癌がAML及び/もしくはMMであり;臨床因子が、年齢プロファイル及び/もしくは細胞遺伝学的状態である。
本発明は、腫瘍試料または癌細胞試料の評価を簡便化できるキットもまた提供する。本発明の典型的なキットは、例えば、BH3ペプチドを検出する1つ以上の剤を含む様々な試薬を含む。キットは更に、例えば、抗体などの様々な検出方法にて有用なものを含む、検出用試薬のうちの1つ以上を含んでよい。キットは更に、ウェルプレート、注射器などを含む、評価に必須の材料を含むことができる。キットは更に、記載された試薬の使用を指示するラベルまたは印刷された説明書を含むことができる。キットは更に、試験される治療法を含むことができる。
本発明は、以下の非限定的例によって更に例示する。
実施例1:ミトコンドリアプロファイリングアッセイ
ミトコンドリアプロファイリングアッセイは、感作因子または活性化因子BH3ドメインペプチドの使用に基づいて、癌細胞ミトコンドリアを調査する。BH3ペプチドの任意の1つ、または任意のクラスに対するミトコンドリア応答の特徴は、特定の抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質への依存性を示す。感作因子タンパク質に由来するペプチドは、インビトロでアポトーシスシグナル伝達を誘導することが可能で、各感作因子タンパク質は、特有の特異的プロファイルを有する(表2)。例えば、2つのペプチド(Noxa、Mule)は、Mcl−1のみと相互作用し、それゆえMcl−1依存性ミトコンドリアのみで透過を引き起こす。Bcl−2(及びBcl−xL)依存性ミトコンドリアは、BADペプチドに対して特有の感受性を示す。Pumaなどのその他のペプチドは、広範囲に親和性を示し、それらの作用によって細胞の「プライミング」またはBcl−2ファミリー依存性の全体的な指標を提供する。これらのペプチドは、薬理学的特性が極めて少ないためインビボでの効果が薄い薬剤であるが、細胞のBcl−2依存性を特徴付けるためのインビトロプローブとして、及び理想的なMcl−1阻害剤の挙動に対するポジティブコントロールとして優れている。
表2は、様々なBH3含有ペプチド及び模倣薬のBH3ドメイン結合パターンを示す。BH3ペプチド(縦列)及びそれらの同族タンパク質(横列)間の結合親和性(K
d、単位nM)を示す。
BH3含有ペプチドの感作因子クラスへの曝露に対するミトコンドリア応答の測定によって、癌を「プライミング」すると内因性アポトーシス経路を介して死滅するか否か、もしそうであれば、アポトーシスはBcl−2/Bcl−xLまたはMcl−1経路に依存するか否かの決定が可能となる。
プレートベースのアッセイ形式は感度が高く、必要な細胞数はわずかである(図1)。FACSベース形式は、最初の組織調製から容易に精製できない生検サンプルのために使用してよい。
別の適用では、この方法を使用して、3つのカテゴリーの各々を示すMM細胞を、SCIDマウスに移植し、次いで細胞培養における様な同一の一連の化合物で処理することができる。移植されたマウス内で観察された応答とミトコンドリアプロファイルの相関関係は、インビボでのミトコンドリアプロファイリングアッセイの予測値を示す。初期の研究では、ミトコンドリアプロファイル測定結果によって、Bcl−2制限化合物またはMcl−1活性化合物のインビトロでの有効性を予測することを示した。次いで、治療経過中のMM細胞のミトコンドリアプロファイルにおける変化を予測する。ミトコンドリアプロファイルの変化を検出することにより、ある治療法への薬剤耐性及びその他の治療法への感受性を予測し、今後の臨床的利用のためにアッセイの実用性を予告する。
示差的ミトコンドリアプロファイリングのワークフローは、図2で提供される。簡潔に述べると、患者からの細胞を上記の通りミトコンドリアプロファイリングを行って、次いでマウスに移植する。化学療法による処理中及び処理後、移植した癌細胞を、様々な時間間隔にて下顎採血によりマウスから採取し、次いでミトコンドリアプロファイリングを行う。異なる処理時間でのプロファイル間の差を使用して、標的活性及び更なる治療への応答可能性を評価する。
BH3アッセイ:ミトコンドリアプロファイリングアッセイは、3つのステップで実施した:(1)細胞調製及び計数、(2)細胞透過処理及びペプチド処理、及び(3)蛍光測定(図1)。細胞を、0.005%ジギトニンを用いてミトコンドリアローディングバッファー中に懸濁し、カチオン性色素JC−1(1μM)を添加して、100μMのBH3ドメインペプチド(Bim、Bad、Noxa、及びPuma)の1つで処理する。MOMPが、完全にミトコンドリア膜の脱分極(ΔΨm)状態となるのを、イオノフォアFCCP(p−トリフルオロメトキシカルボニルシアニドフェニルヒドラゾン)で細胞を処理することにより測定する。ペプチド(及びFCCP)添加によって、適切にプライミングされた細胞で膜電位が減少するため、TecanGeniosプレートリーダー上で384ウェルプレートにて、励起波長535nM及び放出波長590nmを使用してJC−1蛍光の減少として測定する。細胞を、化合物(例えば、EU−4030、EU−5148、またはABT−263)を加えた培養内で、0.01μM〜50μMまでの濃度にて48時間処理した。
表3及び表4は、ミトコンドリア脱分極の指標であるJC−1色素のシグナル強度を測定することにより決定した、様々な細胞株のプライミング率を示す。細胞株は、96ウェルプレートにて培養(サンプル当たり2x10
5)中で増殖させ、0.05μM〜50μMのEU−5148、ABT−263、またはオバトクラックスで48時間処理した。生存能力は、MTSアッセイを使用して測定した。IC50は、単位μMである。
図3は、BH3ペプチドへの曝露に対するミトコンドリア応答(MOMP)を示す。Mcl−1プライミング(NCI−H)、Bcl−2プライミング(DHL−6)、またはプライミング未処理(DHL−10)である細胞のミトコンドリアプロファイルは、Bax、Bak欠損細胞においてポジティブシグナル、Bimペプチド、またはFCCPのパーセンテージとして示される。このプライミング未処理のパターンも、機能的Bax/Bakを有する細胞内に見られる。
図4Aは、観察された細胞死滅の程度が、ミトコンドリアプロファイリングにより決定したその細胞株のMcl−1プライミングの程度と相互に関連することを示す。EU−5148は、処理したNSLC癌細胞株の多くにおいてMLN9708と同等の活性(48時間)を有する。
図4Bは、観察されたMcl−1BH3模倣薬EU5149に応答するMOMPの程度が、ミトコンドリアプロファイリングにより決定したその細胞株のMcl−1プライミングの程度と相互に関連する可能性があることを示す。細胞は、Praedicare Dxアッセイ用に調製し、EU−5148化合物は分析物として使用した。測定結果は、90分後のJC1シグナルのシフトである。
実施例2−Bcl−2及びMcl−2阻害剤並びに標準的化学療法のインビトロでの有効性とミトコンドリアプロファイリング分類との相関関係
骨髄腫細胞株は、先に記載した通りミトコンドリアプロファイリングアッセイによって試験する。細胞株は、ミトコンドリアプロファイリングにより決定された以下のカテゴリーに分類される:(a)主にMcl−1プライミング(b)主にBcl−2/Bcl−xLプライミングまたは(c)プライミング不十分。これらの分類の各々を表す細胞株は、先に記載した通り、レンチウイルス感染を使用してGFP及びルシフェラーゼ遺伝子を発現するよう遺伝子操作した。これらの細胞株は、単剤としてのABT−263、EU−4030、及びEU−5148、またはボルテゾミブとの併用に対する応答を試験する。応答及び非応答性細胞株は、処理前及び処理後(非応答性細胞株の場合)にミトコンドリアプロファイリングアッセイによってモニタリングする。
Bcl−2またはMcl−1標的療法に対する細胞死応答:患者から収集した癌細胞が、特定のミトコンドリアプロファイルを有することを決定し、Bcl−2標的治療化合物に対する応答を試験する。例えば、Mcl−1を標的とする化合物EU−5148は、ミトコンドリアプロファイリングアッセイにおいてNOXA BH3ペプチドに対するミトコンドリア応答により決定したような、Mcl−1プライミング細胞(Mcl−1 1780)内での選択的細胞死滅作用を有する。他方では、ABT−263化合物は、これらの細胞には効力がないが、Bcl−2プライミング細胞(Bcl−2 1863)には効力がある。癌細胞が2つ以上の抗アポトーシス性タンパク質によってプライミングされ得る場合も、パターンは、なお適切な治療標的の使用を指示する。
プライミング未処理と決定した細胞も多数の理由によりそのようであり得るが、Bcl−2タンパク質を直接標的とする療法、またはその他の機序によって内因性アポトーシスを誘導する療法に対してあまり応答しない。例えば、Bax−Bakタンパク質を欠損しているDHL−10細胞は、EU−5148、またはABT−263に対して応答しない。このことは、所与のそれらの作用機序であると期待される。しかしながら、オバトクラックスは、DHL−10細胞死滅に効力があり、その非標的化作用を示す;このこともまた、他に記載されている。ルシフェラーゼを発現する3つのMM細胞株は、Mcl−1(LPN3及びOPM−2)、Bcl−2(SKMM.1)、またはプライミング不十分(OPM1)として分類された。これらは、インビトロでの薬剤応答を試験し、異種移植に使用する。
実施例3−生物発光イメージングによるマウス内での腫瘍進行の検出
マウスに75mg/kgのD−ルシフェリンを注入し、麻酔をかけて、基質注入後10分間イメージングした。全体的な生体発光は、Living Imagesソフトウェアパッケージ(Caliper Life Sciences社)を用いて、マウス全体を包含する標準化対象領域を使用して決定した。
図5にて示すように、平均腫瘍量の減少が、ビヒクルのみでの処理と比較して、EU−5148、velcade、または2つの組み合わせで処理した後に観察された。OPM2/ルシフェラーゼ細胞をSCIDマウスへ移し、腫瘍量まで到達させた。異種移植マウスは、EU−5148(20mpk IV、3X/週)、velcade(1mpk IV、3X/週)、またはこれら処理の組み合わせで処理した。EU−5148処理の15日後、生物発光イメージングにより測定した際に、63%の平均腫瘍量減少を観察した。EU−5148とVelcadeとの併用処理では、同一の期間で92%の腫瘍細胞量が減少する結果である。
実施例4:インビボマウスモデルにおけるミトコンドリアプロファイル及びMM腫瘍細胞応答の相関関係
インビボマウスモデルにおいて、ミトコンドリアプロファイル並びに標的及び非標的治療に対する多発性骨髄腫(MM)腫瘍細胞応答間に相関関係が存在するか否かを決定するために、予備動物実験を実施する。生物発光イメージング(BLI)は、マウス内のルシフェラーゼ触媒シグナルを測定して、時間の経過に伴う個々の動物での腫瘍体積及び治療への応答における変化の経時的研究を可能にし、この方法を使用して、治療経過中の腫瘍体積の変化をモニタリングする。
BH3アッセイ:細胞株は、標準条件下で増殖させる。実験用の多発性骨髄腫細胞株としては、MM1S、OPM1、OPM2、NCI−H929、INA−6、RPMI−8226、U266B1、U266B2、及びいくつかその他のものが挙げられる。ミトコンドリアプロファイリングアッセイは、3つのステップで実施する:(1)細胞調製及び計数、(2)細胞透過処理及びペプチド処理、及び(3)蛍光測定(図1)。細胞を、0.005%ジギトニンを用いてミトコンドリアローディングバッファー中に懸濁し、カチオン性色素JC−1(1μM)を添加して、100μMのBH3ドメインペプチド(Bim、Bad、Noxa、及びPuma)の1つで処理する。MOMPが、完全にミトコンドリア膜の脱分極(ΔΨm)状態となるのを、イオノフォアFCCP(p−トリフルオロメトキシカルボニルシアニドフェニルヒドラゾン)で細胞を処理することにより測定する。ペプチド(及びFCCP)添加によって、適切にプライミングされた細胞で膜電位が減少するため、TecanGeniosプレートリーダー上で384ウェルプレートにて、励起波長535nM及び放出波長590nmを使用してJC−1蛍光の減少として測定する。
異種移植マウスは、BH3模倣薬化合物で処理してモニタリングする。次のカテゴリー:(a)Mcl−1プライミング、(b)Bcl−2プライミング、または(c)プライミング未処理を表す、ミトコンドリアプロファイリングを行ったLuc−GFP−puro遺伝子操作MM細胞株を使用して、Cg−Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)免疫不全マウスに移植する。これらの動物は、IL−2γ鎖の完全な欠如による重度適応及び先天性免疫不全を有し、様々な固形腫瘍及び血液悪性腫瘍の生着を成功させるために使用されてきた。
Luc−GFP−puro−MM細胞(Mcl−1プライミング、Bcl−2プライミング、またはプライミング未処理)を、40匹の7〜9週齢メスNSGマウスの尾静脈に注入し、腫瘍量を生物発光イメージングにより定量化する。疾患が定着したマウスは、対数的に増加する生物発光によって規定される。これらの疾患定着マウス(生着率〜80%と想定)は、無作為にEU5148、Velcade、併用、及びビヒクルのみのグループへと分類される。
実施例5:時間経過中のMM腫瘍応答とミトコンドリアプロファイリングの相関関係
多発性骨髄腫プロファイル:今日まで、14人の多発性骨髄腫または形質細胞性白血病患者からミトコンドリアプロファイルを入手してきた。患者から取得し、いくつかの異なるVelcade/ボルテゾミブ併用レジメンの1つで処理した各々のサンプルを試験した。表5に示したサンプルは、組織バンクから、または生検の数時間以内に配送された新鮮な骨髄から生存可能な状態で凍結されている。CD138細胞は、各組織タイプの各々に対して最適化された2つの同様の手順を使用して、どのソースからも精製する。凍結細胞のプロファイルは、精製直後に実施する。新鮮細胞のプロファイルは、直ちに、または生存可能な状態で凍結されたCD138陽性細胞で実施する。
ボルテゾミブ応答との相関関係:多発性骨髄腫に対するボルテゾミブ応答性の主な指標は、全体的にプライミングされた細胞状態である。この指標は、抗アポトーシス性Bcl−2ファミリーメンバーのすべてに拮抗する、PUMAペプチドに対するミトコンドリア応答によって示される。図6は、ミトコンドリアプロファイリングによって予測したVelcade併用療法に対する患者の応答を示す。CD138+細胞は、処理前に骨髄から収集した。PUMAペプチドへの応答は、「プライミングされた状態」の指標として測定した。処理前及び処理後のMタンパク質の測定における差は、患者の応答基準として使用される。PUMA応答値は、DMSOミトコンドリア応答及びFCCPミトコンドリア応答間の差のパーセンテージとして表される。
ボルテゾミブ治療に対する患者の応答は、治療経過にわたるMタンパク質変化における変化として測定する。Mタンパク質は骨髄腫活性の指標であり、疾患の重篤さの診断マーカーとして広く使用されている。患者のMタンパク質応答は、試験した患者グループ内で見られる最適応答のパーセンテージへ変換される。Mスパイク応答は、所与の治療期間にわたるMタンパク質の減少率として計算される。表5では、Mスパイク最大縦列は、治療開始時のMタンパク質レベルを示す。Mスパイク最小縦列は、治療終了時のMタンパク質レベルを示す。減少率は、以下の式を用いて計算される。
最適応答率を使用し、100%が最適応答、0%が最低応答とする固定スケールを基準としてデータを正規化する。最適応答率は、以下の式を用いて計算される。
図6にて示すように、Mスパイクの最適応答率及びMM患者のPUMA応答間に相関関係が存在する。
実施例6:治療時間の経過に伴うミトコンドリアプロファイルのシフト検出
Velcade系治療を行った患者から収集した癌細胞は、治療経過中の3つの時点(2010年10月、2011年1月、及び2011年5月)にてミトコンドリアプロファイリングを行った。プロファイルを使用して、治療中のCD−138陽性MM細胞のアポトーシス素因をモニタリングした。表6にて示すように、PUMAペプチドによって生成されたシグナルは、治療時間の経過中、安定したままであり、それは細胞が「プライミングされた状態」のままであったことを示していたので、治療を受け続けるよう指示した。時間の経過に伴うMスパイクの減少は、この治療方針が正しい方法であったことを示す。ここでPUMAシグナルの減少によって示されるようなプライミングの消失によって、医師がVelcadeを中止して、有効性についてBcl−2タンパク質への依存性が少ないDoxilサリドマイド、またはベンダムスチン治療などの細胞傷害性薬剤に切り換えるよう指示する。
同様の方法で、患者の治療は、ミトコンドリアプロファイリング測定結果のシフトによって導き出すことができる。例えば、生存のためにMcl−1依存性が増加したことを示す、より強力なNoxaシグナルへのシフトは、ボリノスタットmylotarg併用療法に対する感受性へのシフトと相互に関連する。AML標準治療(7+3)中の測定結果におけるこのシフトの発生は、治療をボリノスタットmylotargレジメンへと変更させる。同様に、Mcl−1に対して特異性を有する薬剤のBH3模倣薬クラスの使用が、Noxaペプチド測定結果へのシフトの場合に指示される。Bcl−2選択的ABT−199(添付参照)などの、Bcl−2標的模倣薬による治療中のこのようなシフトは、Il−6標的化抗体またはMcl−1標的BH3模倣薬を含む、Mcl−1を標的とする治療の選択肢を必要とする。
感受性変化との最適な相関をもたらすミトコンドリアプロファイル測定結果アルゴリズムは、異種移植マウスにおける前臨床研究及び臨床研究の両方で決定される。記載されたBH3ペプチドに加えて、個々の抗アポトーシス性タンパク質及びその組み合わせに対する広範囲な作用を含む一連のBH3模倣薬が、この目的のために使用される。
実施例7:併用療法
実行可能な新規MM治療法には、3つのカテゴリーのMM細胞株の各々を治療する薬剤の併用を含む。最近の研究では、Mcl−1に対するものを含むBH3模倣薬と、Velcade(登録商標)との併用が最も考え得る重要性を示している。Velcade(登録商標)は、タンパク質の正常なプロテアソーム分解を減少させることにより、Mcl−1を上方制御することを示してきた。Revlamid(登録商標)(レナリドミド)及びデキサメタゾンと併用するVelcade(登録商標)は、MM患者の治療に対する標準治療となっている。研究した治療法には、Mcl−1選択的化合物EU−5148と併用するVelcade(登録商標)の使用を含む。
治療中にMcl−1依存性プロファイルへとシフトする場合もあるBcl−2依存性MM細胞を移植した動物において、ABT−263の作用を促進させる、または場合により回復させるMcl−1阻害剤の能力もまた評価する。
実施例8:マルチマーカーの作用と細胞プライミングの相関関係
療法に対する患者応答への更なる見通しは、アポトーシス促進性及び抗アポトーシス性タンパク質のある種の組み合わせに拮抗する化合物への曝露から生じるMOMP応答を関連付けることにより作成する。例えば、Mcl−1拮抗化合物EU5148に応答するMOMPによって、その化合物に対する、またはその他のMcl−1障害治療法(例えば、抗Il−6抗体)に対する患者の応答を予測する。加えて、この化合物からの測定結果によって、Mcl−1タンパク質を直接的には障害しないその他の治療法に対する応答も予測する。例えば、ボリノスタット及びMylotarg(登録商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン)の併用療法は、Mcl−依存性であると予想されるAMLに対して施されてよい。
二重特異性を有する化合物、例えばMcl−1及びBfl−w(AP−1とも呼ばれる)の両方に拮抗する化合物も、患者の応答と相互に関連する。異なる所定の抗アポトーシス性結合領域を有する化合物に対する応答を使用して、当該技術分野において前述のBH3ペプチド障害によってもたらされた障害の組み合わせ領域を増加させる、抗アポトーシス性タンパク質障害の特有の組み合わせも提供する。
更に、所与のBH3ペプチドもしくは模倣薬の作用程度の解析、またはミトコンドリアプロファイリングにおけるペプチドもしくは模倣薬作用の異なる組み合わせの解析によって、単一のペプチドまたは模倣薬との有効性の相関関係よりも治療応答をより予想できる場合がある。アポトーシス促進性及び抗アポトーシス性BH3ペプチド作用の全体的なバランスを使用して、治療に対する患者の応答を予測してよい。
観察可能な障害領域の増加、及び適切なアルゴリズムの適用に伴い、個々の療法、または併用療法に対する患者の応答と相互に関連する特有のミトコンドリアプロファイルを見つける可能性が高まる。治療経過中における測定結果の特有/微細な変化をモニタリングする能力によって、治療の調整を導くための、薬力学的バイオマーカーの確立を可能にする。
実施例9:BH3模倣薬によるMOMPの示差的誘導
BH3模倣薬がMOMPを誘導し得るか否かを試験するために、2つの化合物、A及びBをミトコンドリアプロファイリングアッセイにおいて競合リガンドとして使用し、誘導をフローサイトメトリーによって測定した。細胞を洗浄して、Newmeyerバッファー中に再懸濁させて処理した。新規化合物処理剤は、ペプチドストック及び化合物をNewmeyerバッファーで希釈することにより調製し、薬剤滴定はバッファーで希釈する前にDMSO中にて最初に調製した。DMSO及びCCCPは、それぞれネガティブコントロール及びポジティブコントロールとして、Bim(0.1uM)、化合物A(1.0uM)、化合物A(0.1uM)、化合物A(0.01uM)、化合物B(1.0uM)、化合物B(0.1uM)、化合物B(0.01uM)、NOXA(100uM)、Puma(10uM)、HRK(100uM)、BAD(100uM)、及びBID(uM)と共にアッセイした。ジギトニン及びオリゴマイシンをすべてのチューブに添加し、続いてペプチド及び化合物希釈液を添加した。次いで細胞を添加し、細胞の透過処理をしてミトコンドリアの脱分極を起こすために、室温にて2時間15分インキュベートした。JC−1色素はNewmeyerバッファーで調製し、細胞に添加した;細胞のチューブの1つは、透過処理コントロールとしてヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。45分間JC−1でインキュベーションした後、細胞をBD FACSCanto II上で解析した。細胞は、4つの入れ子式ゲーティングパラメータに基づいてゲート設定した:1)透過処理(PI染色により決定した)、2)側方及び前方散乱(必ず単一細胞のみを解析するために)、3)AML芽細胞集団を、CD45中間型CD3及びCD20陰性として同定した、4)JC−1赤色染色。次いで、平均JC−1赤色蛍光を使用し、DMSO(ネガティブ)及びCCCP(ポジティブ)コントロールと比較して、%脱分極を計算した。
図7は、新規化合物によって生じたMOMPを検出するための、フローサイトメトリーベースのアッセイを示す。図7にて示すように、両方の化合物が、AML患者サンプルの芽細胞集団においてMOMPを誘導し、化合物AはABT263と同様の誘導を示した。
図8は、新規Mcl−1阻害化合物EU5148及びEU5346によって生じた、AML細胞株MOLM13におけるMOMPを検出するための、フローサイトメトリーベースのアッセイを示す。図8にて示すように、両方の化合物がMOMPを誘導し、Bcl−2及びBcl−xlと比較したMcl−1による相関的「プライミング」によって予想された通り、ABT263の誘導よりもわずかに活性が少なかった。
等価物
本明細書の詳細説明は、本発明の様々な態様及び実施形態を説明しているが、別段の指定がない限り、それらは制限することを意図していない。事実、本開示を読んだ当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行なうことのできる変形、変更、及び調整を想定し、それらすべては、別段の指定がない限り本発明の一部であると考慮されるべきである。従って、出願人は、本明細書に記載される発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることを想定する。
当業者は、日常的業務にすぎない実験を使用して、本明細書に具体的に記載された特定の実施形態に対する多数の等価物を認識、または確認することができる。このような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図している。
参照による引用
本明細書で参照したすべての特許及び刊行物は、その内容全体が参考として本明細書に組み込まれる。
本明細書で論じた刊行物は、本出願の出願日以前の開示のためにのみ提供される。本明細書では、本発明が、先行発明によってこのような刊行物の日付を早める権利がないと承認したとして解釈されるべきではない。