ところで、検知した距離及び方位には測定誤差が含まれるため、この測定誤差によって壁を侵入物として誤検知するおそれがある。そこで、特許文献1に記載のエリアセンサでは、複数回検知した距離の平均値に、想定される最大の測定誤差を加減算した領域を測定誤差領域としている。このため、特許文献1に記載のエリアセンサにより美術品等の静止物を監視した場合、静止物が偽物にすり替えられたとしても、偽物までの距離が測定誤差領域内であれば検知することができない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、静止物が移動させられたことを検知する精度を向上させることのできる静止物監視装置を提供することを主たる目的とする。
上記課題を解決するための第1の手段は、静止物を監視する静止物監視装置であって、
所定周期ごとに、レーザ光を前記静止物に投光し、前記レーザ光が物体で反射された反射光に基づいて、前記物体までの距離を検知する距離検知部と、
前記距離検知部により複数回である所定回検知された前記距離の分布の変化に基づいて、前記静止物が移動させられたことを検知する移動検知部と、
を備える。
上記構成によれば、距離検知部により、所定周期ごとに、レーザ光が静止物に投光され、レーザ光が物体で反射された反射光に基づいて、物体までの距離が検知される。検知された距離には測定誤差が含まれており、複数回検知された距離の分布は正規分布に従う。このため、従来は、検知された距離の変化があったとしても、正規分布において誤差とみなされる範囲内であれば、静止物が移動させられたことを検知することができない。
ここで、例えば美術品等の静止物が偽物にすり替えられた場合に、静止物までの距離と偽物までの距離との差が正規分布における誤差よりも小さかったとする。この場合であっても、複数回である所定回検知された距離の分布は、静止物が偽物にすり替えられる前後で変化する。距離の分布が変化したか否かは、静止物までの距離と偽物までの距離との差が正規分布における誤差よりも小さくても判定することができる。この点、移動検知部によって、距離検知部により複数回である所定回検知された距離の分布の変化に基づいて、静止物が移動させられたことが検知される。したがって、静止物が移動させられたことを検知する精度を向上させることができる。
具体的には、第2の手段では、前記移動検知部は、前記距離検知部により第1期間に前記所定回検知された前記距離のうち最も発生確率の高い距離と、前記距離検知部により前記第1期間よりも後の第2期間に前記所定回検知された前記距離のうち最も発生確率の高い距離とに基づいて、前記静止物が移動させられたことを検知する。
ここで、所定回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離の変化は、正規分布における誤差よりも小さい変化であっても判定することができる。したがって、第1期間に所定回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離(第1距離)と、第1期間よりも後の第2期間に所定回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離(第2距離)とに基づいて、静止物が移動させられたことを精度よく検知することができる。
なお、例えば上記第1距離と上記第2距離との差の絶対値が所定値よりも大きい場合に、静止物が移動させられたことを検知することができる。また、上記第1距離と上記第2距離との比が第1所定比(>1)よりも大きい場合や、上記第1距離と上記第2距離との比が第2所定比(<1)よりも小さい場合に、静止物が移動させられたことを検知することができる。
具体的には、第3の手段では、前記移動検知部は、前記距離検知部により前記所定回検知された前記距離のうち最も発生確率の高い距離と所定距離とに基づいて、前記静止物が移動させられたことを検知する。
ここで、静止物が正常である場合に、所定回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離を予め取得しておき、その距離を基準に判定値としての所定距離を設定しておくことができる。したがって、所定回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離と所定距離とに基づいて、静止物が移動させられたことを精度よく検知することができる。
上記所定距離として適切な距離は、距離検知部の構成や静止物の置かれた環境、ひいては測定誤差の大きさによって変化し得る。
この点、第4の手段では、前記移動検知部は、前記距離検知部により前記所定回検知された前記距離の標準偏差に基づいて、前記所定距離を設定する。このため、所定回検知された距離の標準偏差に基づくことで、検知された距離の実際の分布に応じて適切に所定距離を設定することができる。
具体的には、第5の手段では、前記移動検知部は、前記距離検知部により第1期間に前記所定回検知された前記距離において所定距離範囲から外れた距離の発生確率と、前記距離検知部により前記第1期間よりも後の第2期間に前記所定回検知された前記距離において前記所定距離範囲から外れた距離の発生確率とに基づいて、前記静止物が移動させられたことを検知する。
ここで、静止物までの距離が正規分布における誤差よりも小さい距離変化した場合であっても、所定回検知された距離において所定距離範囲から外れた距離の発生確率は大きく変化する。したがって、第1期間に所定回検知された距離において所定距離範囲から外れた距離の発生確率と、第1期間よりも後の第2期間に所定回検知された距離において所定距離範囲から外れた距離の発生確率とに基づいて、静止物が移動させられたことを精度よく検知することができる。
具体的には、第6の手段では、前記移動検知部は、前記距離検知部により前記所定回検知された前記距離において、所定距離範囲から外れた距離の発生確率と所定確率とに基づいて、前記静止物が移動させられたことを検知する。
ここで、静止物が正常である場合に、所定回検知された距離において、所定距離範囲から外れた距離の発生確率を予め取得しておき、その確率を基準として判定値としての所定確率を設定しておくことができる。したがって、所定回検知された距離において、所定距離範囲から外れた距離の発生確率と所定確率とに基づいて、静止物が移動させられたことを精度よく検知することができる。
上記所定距離範囲として適切な範囲は、距離検知部の構成や静止物の置かれた環境、ひいては測定誤差の大きさによって変化し得る。
この点、第7の手段では、前記移動検知部は、前記距離検知部により前記所定回検知された前記距離の平均値と標準偏差とに基づいて、前記所定距離範囲を設定する。このため、所定回検知された距離の平均値と標準偏差とに基づくことで、検知された距離の実際の分布に応じて適切に所定距離範囲を設定することができる。
具体的には、第8の手段では、前記移動検知部は、前記距離検知部により第1期間に前記所定回検知された前記距離における所定距離の発生確率と、前記距離検知部により前記第1期間よりも後の第2期間に前記所定回検知された前記距離における前記所定距離の発生確率とに基づいて、前記静止物が移動させられたことを検知する。
ここで、静止物までの距離が正規分布における誤差よりも小さい距離変化した場合であっても、所定回検知された距離における所定距離の発生確率は大きく変化する。したがって、第1期間に所定回検知された距離における所定距離の発生確率と、第1期間よりも後の第2期間に所定回検知された距離における所定距離の発生確率とに基づいて、静止物が移動させられたことを精度よく検知することができる。
具体的には、第9の手段では、前記移動検知部は、前記距離検知部により前記所定回検知された前記距離における所定距離の発生確率と所定確率とに基づいて、前記静止物が移動させられたことを検知する。
ここで、静止物が正常である場合に、所定回検知された距離における所定距離の発生確率を予め取得しておき、その確率を基準として判定値としての所定確率を設定しておくことができる。したがって、所定回検知された距離における所定距離の発生確率と所定確率とに基づいて、静止物が移動させられたことを精度よく検知することができる。
第10の手段では、前記移動検知部は、前記距離検知部により検知された前記距離が正常距離範囲から外れた場合に、前記静止物に異常が発生したことを検知する。
上記構成によれば、従来と同様に、距離検知部により検知された距離が正常距離範囲から外れた場合に、静止物に異常が発生したことが検知される。したがって、所定回検知された距離の分布の変化に基づく静止物の監視と、従来と同様の静止物の監視とを併せて実行することができる。
第11の手段では、前記距離検知部は、前記レーザ光が前記物体で反射された反射光の受光量を算出し、前記移動検知部は、前記距離検知部により算出された前記受光量の変化に基づいて、前記静止物に異常が発生したことを検知する。
上記構成によれば、レーザ光が物体で反射された反射光の受光量が算出され、算出された受光量の変化に基づいて、静止物が移動させられたことが検知される。したがって、所定回検知された距離の分布の変化に基づく静止物の監視と、反射光の受光量の変化に基づく静止物の監視とを併せて実行することができる。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、美術館において絵画(静止物)を監視する監視システムとして具現化している。
図1に示すように、監視システム10は、監視装置20、リトロリフレクタ30等を備えている。
監視装置20(静止物監視装置)は、前方の監視エリアをレーザ光で水平に走査する広角の測距レーダである。レーザ光には、例えば赤外線や、可視光、紫外線等を利用することができる。
図2に示すように、監視装置20は、投光部21、受光部22、距離算出部23、異常判定部24等を備えている。距離算出部23及び異常判定部24は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータにより構成されている。
投光部21は、投光部21を中心として、例えば0.25°(所定角度θ)間隔でレーザ光を所定高さの水平面に沿って投光する。すなわち、投光部21は、走査方向(水平方向)においてレーザ光の投光方向を所定角度θずつ変えて、レーザ光を投光する。これにより、投光部21は、レーザ光を絵画P1〜P4に投光する。
受光部22は、投光部21により投光されたレーザ光が物体で反射された反射光を受光し、反射光の受光量を検出する。受光部22は、投光部21によりレーザ光が投光される度に、反射光の受光量を検出する。
距離算出部23は、投光部21によりレーザ光が投光されてから、受光部22により反射光が受光されるまでの時間に基づいて、投光方向ごとに投光部21(監視装置20)から物体までの距離を算出する。なお、投光部21、受光部22、及び距離算出部23により、距離検知部が構成されている。すなわち、距離検知部は、所定周期ごとに、レーザ光を絵画P1〜P4に投光し、レーザ光が物体で反射された反射光に基づいて、物体までの距離を検知する。
ここで、上記構成では、電気ノイズ等に起因して上記時間に誤差が生じ、距離算出部23により算出される距離(測定距離)には測定誤差が含まれる。このため、絵画P1〜P4が静止している場合であっても、投光部21、受光部22、及び距離算出部23(以下、「距離検知部」という)により複数回測定(検知)される距離は正規分布に従って分布する。
例えば、絵画P4へ向かう1つの投光方向において、投光部21から絵画P4までの距離が30.0mであり、絵画P4が静止しているとする。その場合、その1つの投光方向において複数回測定される距離は、図3に示すように分布する。図3に示す例は、その1つの投光方向において、100回測定された距離の分布を示している。この例では、平均距離x1=30.0mであり、標準偏差σ=0.03m、3σ=0.09mになっている。平均距離x1±3σまでの区間は、29.91〜30.09mである。そして、平均距離x1の発生確率が最も高くなっている。
このように、距離検知部により測定される距離には測定誤差が含まれるため、測定距離が29.91〜30.09mの範囲は正常距離範囲に設定している。そして、異常判定部24(移動検知部)は、測定された距離が正常距離範囲から外れた場合に、絵画P4に異常が発生したと判定する(以下、「第1判定」という)。例えば、監視エリア内に侵入者が侵入し、測定された物体までの距離が正常距離範囲よりも短い距離になった場合に異常と判定される。このため、図1に示すように、監視装置20の監視エリアは、絵画P1〜P4や壁Wから正常距離範囲だけ離れた位置を外縁とするエリアになる。なお、異常判定部24は、絵画P1〜P4のいずれかに異常が発生したと判定した場合に、警報装置等を動作させる。
図4は、監視システム10の側面図である。同図に示すように、監視エリアは、所定高さに限られており、絵画P4の近傍(正常距離範囲)は監視エリア外になっている。このため、上記第1判定では、侵入者Iが匍匐前進で絵画P4に近づき、絵画P4を盗むことを検知できないおそれがある。
そこで、図1,4に示すように、壁Wにおいて、絵画P1〜P4の後には、それぞれリトロリフレクタ30が取り付けられている。リトロリフレクタ30(再帰反射器)は、板状に形成されており、入射したレーザ光を、入射方向に平行且つ反対の方向へと再帰反射する。各リトロリフレクタ30は、絵画P1〜P4の後側において、監視装置20からレーザ光が投光される位置に設置されている。
そして、異常判定部24は、受光部22により算出された反射光の受光量の変化に基づいて、絵画P1〜P4に異常が発生したことを検知する。例えば、異常判定部24は、絵画P4に投光されているレーザ光の反射光の受光量が、所定受光量よりも多くなった場合に、絵画P4に異常が発生したと判定する(以下、「第2判定」という)。所定受光量は、絵画P4で反射された反射光の受光量よりも多く、リトロリフレクタ30で反射された反射光の受光量よりも少なく設定されている。
図5に示すように、侵入者Iが絵画P4を壁Wから外すと、レーザ光がリトロリフレクタ30で反射される。このため、反射光の受光量が所定受光量よりも多くなり、異常判定部24により絵画P4に異常が発生したと判定される。
しかしながら、図6に示すように、侵入者Iが絵画P4を偽物Dとすり替えた場合に、上記第2判定では、絵画P4が移動させられた(絵画P4に異常が発生した)ことを検知できないおそれがある。偽物Dで反射された反射光の受光量は、上記所定受光量よりも少なくなっている。
そこで、本実施形態では、異常判定部24(移動検知部)は、複数回である所定回測定(検知)された測定距離の分布の変化に基づいて、絵画P1〜P4が移動させられたことを検知する(以下、「第3判定」という)。
図7に示すように、例えば絵画P4が偽物Dにすり替えられた場合に、監視装置20から偽物Dまでの距離が距離x2になったとする。この場合、測定距離は、距離x2になる確率が最も高い。そして、距離x2は上記正常距離範囲であるため、上記第1判定では、絵画P4に異常が発生したことが検知されない。この場合に、測定距離が正常距離範囲(29.91〜〜30.09m)から外れる可能性は低く、上記第1,第2判定を行っても、絵画P4に異常が発生したことを検知できない状態が継続するおそれがある。
この場合であっても、例えば物体までの距離を100回(所定回)測定すれば、発生確率の最も高い距離x2を算出することができる。このため、異常判定部24は、第1期間に100回測定された距離のうち最も発生確率の高い距離x1(第1距離)と、第1期間よりも後の第2期間に100回測定された距離のうち最も発生確率の高い距離x2(第2距離)とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを検知する。第1期間としては、例えば監視システム10による絵画P4の監視を開始した直後の期間(正常時の期間)を採用することができる。また、第2期間としては、絵画P4の監視中において第1期間よりも後の任意の期間を採用することができる。
そして、異常判定部24は、距離x1と距離x2との差の絶対値が所定値よりも大きい場合に、絵画P4が移動させられたことを検知する。この所定値として、例えば正常時に100回測定した距離の標準偏差σを採用することができる。なお、所定値として、標準偏差σよりも小さい値、例えば0.8σや、0.5σ等を採用することもできる。
また、上記距離x1は正常時に予め取得しておくことができ、距離x1を基準に判定値としての所定距離を予め設定しておくこともできる。例えば、距離x1−標準偏差σを所定距離の下限値とし、距離x1+標準偏差σを所定距離の上限値とする。そして、異常判定部24は、距離x2が所定距離の下限値よりも短い場合、又は距離x2が所定距離の上限値よりも長い場合に、絵画P4が移動させられたことを検知する。すなわち、異常判定部24は、100回(所定回)測定された距離のうち最も発生確率の高い距離x2と所定距離とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを検知してもよい。要するに、異常判定部24は、所定回測定した測定距離の分布が変化したと判定した場合に、絵画P4に異常が発生したと判定する。そして、異常判定部24は、所定回測定された距離の標準偏差σに基づいて、上記所定距離を設定するとよい。
図8は、絵画監視処理の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、監視装置20により、所定の周期で繰り返し実行される。
まず、各投光方向において、レーザ光を投光し、レーザ光が物体で反射された反射光の受光量(反射光量)を算出する(S10)。各投光方向において、レーザ光が投光されてから反射光が受光されるまでの時間に基づいて、監視装置20から物体までの距離を測定する(S11)。測定回数を1回増加させる(S12)。なお、測定回数の初期値は0である。
続いて、各投光方向において、測定距離が正常距離範囲内であるか否か判定する(S13)。この判定において、いずれかの投光方向で、測定距離が正常距離範囲内でないと判定した場合(S13:NO)、異常が発生したと判定する(S19)。そして、この一連の処理を一旦終了する(END)。
一方、S13の判定において、いずれかの投光方向でも、測定距離が正常距離範囲内であると判定した場合(S13:YES)、各投光方向において、反射光の受光量(反射光量)が所定受光量(所定反射光量)よりも少ないか否か判定する(S14)。この判定において、いずれかの投光方向で、反射光の受光量が所定受光量よりも少なくないと判定した場合(S14:NO)、異常が発生したと判定する(S19)。そして、この一連の処理を一旦終了する(END)。
一方、S14の判定において、いずれの投光方向でも、反射光の受光量が所定受光量よりも少ないと判定した場合(S14:YES)、測定回数が100回(所定回)であるか否か判定する(S15)。この判定において、測定回数が100回でないと判定した場合(S15:NO)、正常である(異常が発生していない)と判定する(S18)。そして、この一連の処理を一旦終了する(END)。
一方、S15の判定において、測定回数が100回であると判定した場合(S15:YES)、測定回数を0にする(S16)。続いて、各投光方向において、100回測定した測定距離の分布が変化したか否か判定する(S17)。この判定は、上述した第3判定である。この判定において、いずれの投光方向でも、100回測定した測定距離の分布が変化していないと判定した場合(S17:NO)、正常であると判定する(S18)。そして、この一連の処理を一旦終了する(END)。
一方、S17の判定において、いずれかの投光方向で、100回測定した測定距離の分布が変化したと判定した場合(S17:YES)、異常が発生したと判定する(S19)。すなわち、絵画P1〜P4のいずれかが移動させられたと判定する。そして、この一連の処理を一旦終了する(END)。
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
・絵画P4が偽物Dにすり替えられた場合に、絵画P4までの距離と偽物Dまでの距離との差が正規分布における誤差3σよりも小さかったとする。この場合であっても、図7に示すように、100回(所定回)検知された距離の分布は、絵画P4が偽物Dにすり替えられる前後で変化する。距離の分布が変化したか否かは、絵画P4までの距離と偽物Dまでの距離との差が正規分布における誤差3σよりも小さくても判定することができる。この点、異常判定部24によって、距離検知部により100回検知された距離の分布の変化に基づいて、絵画P4が移動させられたことが検知される。したがって、絵画P4が移動させられたことを検知する精度を向上させることができる。
・100回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離x1,x2の変化は、正規分布における誤差3σよりも小さい変化であっても判定することができる。したがって、第1期間に100回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離x1(第1距離)と、第1期間よりも後の第2期間に100回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離x2(第2距離)とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを精度よく検知することができる。
・絵画P4が正常である場合に、100回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離x1を予め取得しておき、その距離x1を基準に判定値としての所定距離(距離x1±σ)を設定しておくことができる。したがって、100回検知された距離のうち最も発生確率の高い距離x2と所定距離とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを精度よく検知することができる。
・上記所定距離として適切な距離は、距離検知部の構成や絵画P4の置かれた環境、ひいては測定誤差3σの大きさによって変化し得る。この点、異常判定部24は、距離検知部により100回検知された距離の標準偏差σに基づいて、所定距離を設定する。このため、100回検知された距離の標準偏差σに基づくことで、検知された距離の実際の分布に応じて適切に所定距離を設定することができる。
・従来と同様に、距離検知部により検知された距離が正常距離範囲(距離x1±3σまでの範囲)から外れた場合に、絵画P4に異常が発生したことが検知される。したがって、100回検知された距離の分布の変化に基づく絵画P4の監視(第3判定)と、従来と同様の絵画P4の監視(第1判定)とを併せて実行することができる。
・レーザ光が物体で反射された反射光の受光量が算出され、算出された受光量の変化に基づいて、絵画P4が移動させられたことが検知される。したがって、100回検知された距離の分布の変化に基づく絵画P4の監視(第3判定)と、反射光の受光量の変化に基づく絵画P4の監視(第2判定)とを併せて実行することができる。
なお、第1実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
・異常判定部24は、距離x1と距離x2との比が第1所定比(>1)よりも大きい場合、又は距離x1と距離x2との比が第2所定比(<1)よりも小さい場合に、絵画P4が移動させられたことを検知してもよい。
(第2実施形態)
以下、図8のS17の処理(第3判定)を変更した第2実施形態について、図9を参照して説明する。その他については、第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図9に示すように、第1実施形態と同様に、絵画P4が偽物Dにすり替えられた場合に、監視装置20から偽物Dまでの距離が距離x2になったとする。
この場合、例えば物体までの距離を100回(所定回)測定すれば、所定距離範囲から外れた距離の発生確率を算出することができる。所定距離範囲としては、例えば上記距離x1±2σまでの範囲を採用することができる。すなわち、異常判定部24は、所定回検知された距離の平均値(距離x1)と標準偏差σとに基づいて、所定距離範囲を設定する。絵画P4が偽物Dにすり替えられる前後における所定距離範囲から外れた距離の発生確率Pr1,Pr2は、それぞれ領域Pr1の面積と領域Pr2の面積とに対応する。
異常判定部24は、第1期間に100回測定された距離において所定距離範囲から外れた距離の発生確率Pr1と、第1期間よりも後の第2期間に100回測定された距離において所定距離範囲から外れた距離の発生確率Pr2とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを検知する。具体的には、異常判定部24は、発生確率Pr1と発生確率Pr2との差の絶対値が所定値よりも大きい場合に、絵画P4が移動させられたことを検知する。
また、上記発生確率Pr1は正常時に予め取得しておくことができ、発生確率Pr1を基準に判定値としての所定確率を予め設定しておくこともできる。例えば、発生確率Pr1+所定値を所定確率とする。そして、異常判定部24は、発生確率Pr2が所定確率よりも高い場合に、絵画P4が移動させられたことを検知してもよい。すなわち、異常判定部24は、100回(所定回)測定された距離において、所定距離範囲から外れた距離の発生確率Pr2と所定確率とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを検知してもよい。
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
・絵画P4までの距離が正規分布における誤差3σよりも小さい距離変化した場合であっても、100回(所定回)検知された距離において所定距離範囲(距離x1±2σまでの範囲)から外れた距離の発生確率Pr1,Pr2は大きく変化する。したがって、第1期間に100回検知された距離において所定距離範囲から外れた距離の発生確率Pr1と、第1期間よりも後の第2期間に100回検知された距離において所定距離範囲から外れた距離の発生確率Pr2とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを精度よく検知することができる。
・絵画P4が正常である場合に、100回検知された距離において、所定距離範囲から外れた距離の発生確率Pr1を予め取得しておき、その確率を基準として判定値としての所定確率(発生確率Pr1+所定値)を設定しておくことができる。したがって、100回検知された距離において、所定距離範囲から外れた距離の発生確率Pr2と所定確率とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを精度よく検知することができる。
・上記所定距離範囲として適切な範囲は、距離検知部の構成や絵画P4の置かれた環境、ひいては測定誤差3σの大きさによって変化し得る。この点、異常判定部24は、距離検知部により100回検知された距離の平均値(距離x1)と標準偏差σとに基づいて、所定距離範囲を設定する。このため、100回検知された距離の平均値と標準偏差σとに基づくことで、検知された距離の実際の分布に応じて適切に所定距離範囲を設定することができる。
なお、第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
・異常判定部24は、上記距離x1−2σよりも短い距離の範囲、及び距離x1+2σよりも長い距離の範囲を、上記所定距離範囲の逆の範囲である逆範囲に設定する。そして、異常判定部24は、第1期間に100回検知された距離において逆範囲に入る距離の発生確率Pr1と、第1期間よりも後の第2期間に100回検知された距離において逆範囲に入る距離の発生確率Pr2とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを検知してもよい。上記構成も、第2実施形態と実質的に同一である。
・所定距離範囲として、上記距離x1±σまでの範囲等を採用することもできる。また、所定距離範囲として、上記距離x1から距離x1+2σまでの範囲等を採用することもできる。また、所定距離範囲を、例えば29.95〜30.05m等に予め設定しておくこともできる。
・異常判定部24は、発生確率Pr1と発生確率Pr2との比が第3所定比(>1)よりも大きい場合、又は発生確率Pr1と発生確率Pr2との比が第4所定比(<1)よりも小さい場合に、絵画P4が移動させられたことを検知してもよい。
(第3実施形態)
以下、図8のS17の処理(第3判定)を変更した第3実施形態について、図10を参照して説明する。その他については、第1実施形態と同一である。第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図10に示すように、第1実施形態と同様に、絵画P4が偽物Dにすり替えられた場合に、監視装置20から偽物Dまでの距離が距離x2になったとする。
この場合、例えば物体までの距離を100回(所定回)測定すれば、所定距離(一定距離)の発生確率を算出することができる。所定距離としては、例えば上記距離x1を採用することができる。このため、異常判定部24は、第1期間に100回測定された距離における距離x1(所定距離)の発生確率Pr3と、第1期間よりも後の第2期間に100回測定された距離における距離x1(所定距離)の発生確率Pr4とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを検知する。具体的には、異常判定部24は、発生確率Pr3と発生確率Pr4との差の絶対値が所定値よりも大きい場合に、絵画P4が移動させられたことを検知する。
また、上記発生確率Pr3は正常時に予め取得しておくことができ、発生確率Pr3を基準に判定値としての所定確率を予め設定しておくこともできる。例えば、発生確率Pr3−所定値を所定確率とする。そして、異常判定部24は、発生確率Pr4が所定確率よりも低い場合に、絵画P4が移動させられたことを検知してもよい。すなわち、異常判定部24は、100回(所定回)測定された距離における所定距離の発生確率Pr4と所定確率とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを検知してもよい。
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。なお、ここでは、第1実施形態と異なる利点のみを述べる。
・絵画P4までの距離が正規分布における誤差3σよりも小さい距離変化した場合であっても、100回(所定回)検知された距離における所定距離(距離x1)の発生確率Pr3,Pr4は大きく変化する。したがって、第1期間に100回検知された距離における所定距離の発生確率Pr3と、第1期間よりも後の第2期間に100回検知された距離における所定距離の発生確率Pr4とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを精度よく検知することができる。
・絵画P4が正常である場合に、100回検知された距離における所定距離の発生確率Pr3を予め取得しておき、その確率を基準として所定確率(発生確率Pr3−所定値)を設定しておくことができる。したがって、100回検知された距離における所定距離の発生確率Pr4と所定確率とに基づいて、絵画P4が移動させられたことを精度よく検知することができる。
なお、第3実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
・所定距離としては、上記距離x1に限らず、距離x1+σや、距離x1−σ、距離x1+2σ、距離x1−2σ等を採用することもできる。また、所定距離を、例えば30.0m、29.95m、30.05m等に予め設定しておくこともできる。
・異常判定部24は、発生確率Pr3と発生確率Pr4との比が第5所定比(>1)よりも大きい場合、又は発生確率Pr3と発生確率Pr4との比が第6所定比(<1)よりも小さい場合に、絵画P4が移動させられたことを検知してもよい。
また、上記各実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
・図8のS15の処理における測定回数(所定回)は、100回に限らず、50回や、200回等であってもよい。
・絵画P4が偽物Dにすり替えられる際に、監視装置20から偽物Dまでの距離が一時的に距離x1からずれた場合も、監視装置20は絵画P4が移動させられたことを検知することができる。
・第1判定及び第2判定の一方のみを行ってもよいし、第1判定及び第2判定の双方を省略してもよい。なお、第2判定を省略する場合は、リトロリフレクタ30を省略することができる。
・監視装置20は、走査型レーザレーダに限らず、一定の方向にレーザ光を投光するレーザレーダであってもよい。その場合は、各監視装置20により、各絵画P1〜P4を監視すればよい。
・監視システム10が監視する対象の美術品(静止物)は、絵画P1〜P4に限らず、版画や、彫刻等であってもよい。