JP2019157563A - 軽量建築材料 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の軽量建築材料の代表的な構造概略図を図1に示す。
本発明は、厚さ35〜300mmの耐火材料の層と、その少なくとも一方の面に設けられた厚さ1〜30mmの高剛性な繊維強化樹脂の層とから成る。
耐火材料の層の厚さは35〜300mmである。耐火材料の層の厚さが35mm未満であると曲げ剛性を担保することが難しくなることに加え、耐火性能を損なう。他方、耐火材料の層の厚さが300mmを超えると、建築の構造部材に取り付けて用いときに厚さや太さが大きくなることで建物の居住空間を狭めてしまう。
繊維強化樹脂に用いる繊維として、無機繊維または有機繊維を用いることができる。無機繊維としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維を用いることができる。有機繊維としては、例えばアラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、四フッ化エチレン繊維を挙げることができる。有機繊維は、ガラス転移温度が200℃以上である有機繊維が好ましい。
繊維強化樹脂に用いる樹脂としては熱硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂として、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂を用いることができる。
本発明において用いる繊維強化樹脂の層は、引抜成形で成形された熱硬化性樹脂の硬化物であることが好ましい。引抜成形は、繊維を一方向に引き揃え、金属製の口金より樹脂を含浸、固化しながら引き抜く成形方法である。断面形状は任意であり、口金の形状による。本発明においては板状または中空矩形状の口金を用いることができる。繊維強化樹脂の層における繊維と樹脂との体積の比率は繊維/樹脂として例えば50体積%/50体積%〜60体積%/40体積%である。
本発明における耐火材料は、30〜95重量%のセメント系材料と10〜50重量%の潜熱材料と5〜30重量%の中空ビーズ材料とから成る無機組成物および該無機組成物の全体積に対して0.01〜5体積%のアラミド繊維からなる。
以下、耐火材料を構成する成分について説明する。
本発明においてセメント系材料として水硬化性のセメントを用いることが施工性の観点から好ましい。水硬化性のセメントとして、ポルトランドセメントやそれを主材料とした混合セメント、特殊セメントのいずれも使用することができる。具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメントを用いることができる。なかでも、普通ポルトランドセメントが価格や取扱い性の観点から望ましい。
本発明において潜熱材料は、熱分解によって吸熱反応を示す材料である。この潜熱材料として、水酸化物金属塩、リン酸塩、石膏、鉱物を例示することができる。
本発明において中空ビーズ材料は、内部に空気層を含んだ微細な球体形状の材料であり、球体を構成する材料がガラスやセラミックなどから成る材料である。具体的には、工業材料を用いて生産されるガラスバルーンやセラミックバルーン、工業副産物を材料とするフライアッシュバルーン、天然物を材料とするシラスバルーンやパーライト発泡体を使用することができる。特に、低嵩比重、不燃性、高融点、低熱伝導率、無色かつ無害でありかつ有毒ガスの発生がなく低価格といった特徴を有するシラスバルーンは特に好ましい。中空ビーズ材料の耐火材料に占める割合は5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である。中空ビーズ材料の割合が5重量%未満であると耐火材料の断熱性が不足し十分な耐火性能が確保できない可能性があるほか軽量性も大きく損なわれる。他方、30重量%を超えると、耐火材料を混練した際の流動性が低下し、施工性が損なわれ、場合によっては耐火材料が固化しない可能性もある。
機械的強度を高く維持するために、耐火材料は、上記のセメント系材料、潜熱材料および中空ビーズ材料とから成る無機組成物に対してアラミド繊維を含有させたものであることが好ましい。高い機械的強度を得るために、耐火材料の無機組成物100体積%に対するアラミド繊維の配合量は0.01〜5体積%である。アラミド繊維をこの範囲の配合量で用いることで、例えば300℃程度の高い温度環境でも高い機械的強度を示するとともに、製造時の流動性を確保することができる。
本発明における耐火材料の層は、比重が0.5〜2.0g/cm3である。比重が0.5g/cm3未満を満たすためには中空ビーズ以外の材料を極端に減らす必要があり、曲げ剛性を向上し得る材料にはならない。一方、2.0g/cm3を超えると軽量ではなくなるため、本発明の特徴を活かすことができない。
本発明の軽量建築材料は、化学的に接着剤によって建築構造材に固着することもできるが、ビスやボルト等を用いて物理的に固着することもできる。
本発明の軽量建築材料は、構造部材が軽量である一方で剛性が低く構造材だけでは耐火性能に劣る木造建築に用いられることが特に効果的である。
本発明の軽量建築材料は、曲げ剛性が1.5×107〜1.5×1011GPa・mm4、かつ単位面積あたりの重量が30〜450kg/m2である。
曲げ剛性が1.5×107GPa・mm4未満であると本発明の軽量建築材料を建築構造材に取り付けた際の補強効果が低くなり、曲げ剛性が1.5×1011GPa・mm4を超えるためには、繊維強化樹脂の層を厚くする必要があり、結果、重量が増加してしまい、本発明の特徴を活かすことができないばかりでなく、材料コストも高いものとなる。
単位面積あたりの重量が30kg/m2未満であると満たすためには中空ビーズ以外の材料を極端に減らす必要があり、曲げ剛性を向上し得る材料にはならず、単位面積あたりの重量が450kg/m2を超えると軽量ではなくなるため、本発明の特徴を活かすことができない。
(1)木造床構造
本発明の建築材料を固定する木造床構造として、幅300mm×長さ600mmの木造床構造(木造住宅の実寸大の1/3スケール)を製材ならびに合板(9mm厚)を用いて作成した。梁と柱、および梁同士はL字金具を用いてビス留め固定とした。
(2)振動抑制効果
試験体の中心を衝撃印加点し、インパルスハンマーで打撃し、衝撃印加点と試験体短辺までの距離の中心に設置した加速度計により振動データを取得した。このデータのフーリエ変換解析により、周波数63Hz(重量床衝撃音に相当する周波数)での機械インピーダンス値を算出し、衝撃音(dB)に変換した。なお、この値は低いほど遮音試験体への衝撃印加時の振動抑制効果が大きいことを示す。
(3)耐火性能
300mm×300mmの金枠にサンプルを水平に置き、サンプル下面をガスバーナーにて燃焼加熱した。サンプル上に厚さ25mmのスギ板を載せ、サンプル背面とスギ板の間の温度を熱電対により測定した。ガスバーナーによる加熱面付近の温度は、常温から燃焼を開始し、950℃まで上昇させた。加熱時間は60分間とした。サンプルには荷重をかけず、評価時の雰囲気は常温・常圧とした。耐火性能は60分後のサンプル背面温度で評価した。背面温度150℃未満を耐火性能「あり」、150℃以上を耐火性能「なし」と評価した。
<繊維強化樹脂の層>
幅15mm、長さ100mmの試験片を、繊維方向が長さ方向になるように切り出し、支点間距離80mmで中心点加力の3点曲げ試験により、破断点荷重を求めた。試験速度は5mm/minとした。得られた破断点荷重と荷重−たわみ曲線から、次式を用いて曲げ強度と曲げ弾性率を算出した。
曲げ強度=3×F×L/2×b×h2
F:破断荷重(N)
L:支点間距離(mm)
b:試験片の幅(mm)
h:試験片の厚さ(mm)
曲げ弾性率=L3×ΔF/4×b×h3×ΔS
ΔF:S’とS”の差
(ここで、S’=0.0005×L2/6×h、S” =0.0025×L2/6×h)
ΔS:S’とS”におけるたわみの差
<耐火材料の層>
幅20mm×厚さ20mm×長さ120mmの試験片を切り出し、支点間距離100mmで中心点加力の3点曲げ試験により、破断点荷重を求めた。試験速度は0.5mm/minとした。曲げ強度は上記式にて求め、曲げエネルギーは破断点の荷重と破断点におけるたわみの積によって求めた。
セメントスラブのような無垢材料の場合は、曲げ弾性率と断面2次モーメントの積により剛性を算出した。一方、軽量建築材料のような複合材料に関しては、繊維強化樹脂および耐火材料それぞれの材料において、曲げ弾性率と断面2次モーメントの積により剛性を算出し、それぞれの剛性を足し合わせることで繊維強化樹脂の層と耐火材料の層を複合化した軽量建築材料の曲げ剛性とした。
(6)単位面積あたり重量・比重
300mm×600mmのサンプル重量を測定し、単位面積あたり(g/m2)に換算した。また、耐火材料の層は厚さ70mmを踏まえ、比重(g/cm3)に換算した。
繊維強化樹脂として、炭素繊維強化ビニルエステル樹脂を用い、炭素繊維とビニルエステル樹脂(熱硬化性樹脂)の体積比率を55体積%/60体積%とした。繊維強化樹脂は引抜成形法により、板状断面(幅300mm、肉厚1mm)で引き抜き、幅300mm、肉厚1mmに成形し、長さ600mmに切断して板材の形状にした。この繊維強化樹脂の板材の曲げ弾性率は80GPaであった。
木造床構造の上面に木造床構造と同じ面積で厚さ70mmのセメントスラブを載せることで床を作成した。この床の振動抑制効果を測定した。重量・曲げ剛性・振動抑制効果の測定結果を表1に示す。また、同じ耐火材料を用いて耐火性能を測定したところ、60分間経過後の背面温度は115℃であった。耐火材料の背面にあるスギ板に炭化部分は確認できなかった。
繊維強化樹脂として、炭素繊維強化ビニルエステル樹脂を用い、炭素繊維とビニルエステル樹脂(熱硬化性樹脂)の体積比率を55体積%/60体積%とした。繊維強化樹脂は引抜成形により、板状断面(幅300mm、肉厚2mm)で引き抜き、幅300mm、肉厚2mmの板材の形状に成形し、長さ600mmに切断して板材の形状にした。この繊維強化樹脂の板材の曲げ弾性率は80GPaであった。
2 耐火材料の層
Claims (6)
- 建築物の構造部材の表面に設置して用いられる軽量建築材料であって、厚さ35〜300mmの耐火材料の層と、その少なくとも一方の面に設けられた厚さ1〜30mmの高剛性な繊維強化樹脂の層とから成り、曲げ剛性が1.5×107〜1.5×1011GPa・mm4、かつ単位面積あたりの重量が30〜450kg/m2であることを特徴とする、軽量建築材料。
- 繊維強化樹脂が、無機繊維または融点もしくはガラス転移温度が200℃以上である有機繊維を含有する熱硬化性樹脂の硬化物であり、曲げ弾性率50〜500GPaである、請求項1記載の軽量建築材料。
- 耐火材料が30〜95重量%のセメント系材料と10〜50重量%の潜熱材料と5〜30重量%の中空ビーズ材料とから成る無機組成物および該無機組成物の全体積に対して0.01〜5体積%のアラミド繊維からなる、請求項1または2に記載の軽量建築材料。
- セメント系材料がポルトランドセメントであり、潜熱材料が水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムからなる群から選ばれた1種類または2種類以上であり、中空ビーズ材料がシラスバルーンである、請求項3に記載の軽量建築材料。
- アラミド繊維がコポリパラフェニレン−3.4‘オキシジフェニレン−テレフタラミド繊維の繊維径5〜1000μmかつ繊維長1〜50mmのカットファイバーである、請求項3に記載の軽量建築材料。
- 耐火材料の比重が0.5〜2.0g/cm3、曲げ強度が1.0〜10.0MPaである請求項1乃至5のいずれかに記載の軽量建築材料。
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2018
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