JP2019156665A - シリコン量子ドットの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポーラスシリコンを原料としたレーザー照射法によるシリコンナノ粒子作製手法における、(1)高性能化(サイズ制御性・発光効率の改善)、(2)大量生産性の向上(作製収量の改善)、(3)低コスト化(レーザー照射原料作製コストの削減)を図る。【解決手段】結晶シリコンウエハーをフッ酸水溶液中に浸漬し、電気化学エッチング法を用いて、シリコン原子を局所的に溶出し、次々と表面から内部に向かってエッチングを行い、シリコンウエハー表面及び内部にナノメートルオーダーの微細孔形成によりシリコン量子ドットを高密度に含むポーラスシリコン層を作製し、シリコンウエハーからポーラスシリコンを分離してポーラスシリコンフレークを得て、得られたポーラスシリコンフレークを原料として有機溶媒中でレーザー照射又は、加熱を行い、量子ドットコロイド分散溶液を得る。【選択図】図3

Description

本発明は、シリコン量子ドットの製造方法に関するものである。
近年、LED、ディスプレイ、バイオイメージングなど向けの発光材料として半導体ナノ結晶粒子(量子ドット)が注目され、いくつかの企業(NN-LABS、Nanoco、 Nanosys、PlasmaChem社など)にて研究開発が進められている。半導体ナノ結晶は、例えばディスプレイ向けにはシート状にした状態で供給されるため、液中に分散したコロイドとして生産されることが多い。しかし、現在市販されている半導体量子ドットは、化合物系半導体であり、カドミウムや鉛などの有害な金属を含む場合が多く、環境に優しい材料をベースとしたものが必要とされている。また、原料の利用効率とプロセスエネルギー利用効率の向上も課題となっている。つまり、半導体量子ドット生産には、環境適合(カドミウム代替)性が高い材料を原料とした、高発光性能、低コスト、大量生成手法が求められている。
シリコンは、最も代表的な半導体で,現在のエレクトロニクス産業に必要不可欠な基盤材料である。しかし、シリコンは良好な電子材料ではあるが、間接遷移型半導体としての性質のため発光材料へと応用することは難しいと考えられてきた。しかし、1990年の多孔質構造のナノ結晶シリコン(直径数ナノメートル程度の単結晶)からの量子サイズ効果に起因した可視発光の報告(非特許文献1)以来、シリコンの発光材料への応用にむけた研究が活発に進められている。シリコンは地殻中に豊富に存在し安価であることから、可視発光を示すナノ結晶シリコンは、発光ダイオードに用いられるガリウム系化合物などの希少材料への代替として用いることが出来ると、社会的インパクトは大きい。また、近年、その発光波長制御性・発光効率の高さから、バイオイメージング用の蛍光ラベリングに、溶液分散性の高い化合物系半導体ナノ結晶粒子(量子ドット)を用いることが検討されている(非特許文献2)が、これらの化合物ナノ粒子にはカドミウムなどの生体に有害な材料が含まれている。これに対し、ナノ結晶シリコンは人体に無害であるので、これを量子ドット(溶液分散可能な粒子形状)化することで生体応用に好適となることが期待できる。
シリコン量子ドットの代表的な生成(製造)方法として、液相化学合成(非特許文献3)、化学エッチング法(特許文献1)などの化学的手法、イオン注入法(非特許文献4)、スパッタリング法(非特許文献5)などの物理的手法が挙げられる。量子ドットは量子サイズ効果に起因して、サイズに依存したバンドギャップと発光遷移確率(単位時間当たりの光の放出数)の変化(サイズが小さくなるほど、バンドギャップが大きくなり、発光遷移確率が増大)を示す。つまり、粒子サイズにより発光波長と発光効率を制御できる。また、粒子サイズだけでなく、表面修飾(終端状態)も量子ドットの発光物性(バンドギャップエネルギーと発光遷移確率)に大きな影響を与える。例えば、水素終端又は酸素終端量子ドットでは、擬似直接遷移化によって、発光遷移寿命(遷移確率の逆数)が数マイクロ秒から数百マイクロ秒となり、発光波長は橙から近赤外領域となる(非特許文献6)。一方、炭化水素基などの有機分子で終端された炭素終端量子ドットでは、電子状態が通常のシリコン結晶と較べて変化し、遷移確率が増大すること(非特許文献7)。そのため、発光デバイスの応用としては、炭素終端シリコン量子ドットが最も有望な系といえる。
シリコン量子ドットの生成においては、通常、粒子サイズ及び、表面終端状態の両方の制御が重要である。表面状態については、特別な表面修飾を行わない場合、化学エッチング法では水素終端となり、炭素終端化処理が必要である(特許文献2)。イオン注入法・スパッタリング法でも、酸素終端となっているため、何らかの表面処理が必要である。液相合成法では、通常、粒子の生成後、表面終端処理を行うので、任意の表面状態の形成が可能(非特許文献8)である。しかし、この場合バルク原料から、サイズが制御された粒子の生成後に、表面終端処理が行われる。つまり、応用上重要な、炭素終端処理されたシリコン量子ドットの生成には、通常、粒子の生成→表面処理の2ステップの工程が必要である。
前記の一般的な製造方法に対して、炭素終端量子ドットを効率的に生成する方法として、白幡ら(特許文献3、特許文献4、非特許文献9)によって提案された有機溶媒中レーザー照射法が挙げられる。この手法では、不飽和結合をもつ有機溶媒(1-Octene等のアルケン、アルキン)中で、シリコン単結晶基板に高エネルギー密度のパルスレーザーを照射する。レーザー照射によって、シリコンが蒸発し、液相/気相界面で冷却されることによって、ナノ粒子が生成される。この時、生成されたナノ粒子の表面は活性状態にあるため、溶媒の不飽和結合と付加反応を生じ、シリコン表面に炭化水素基が終端される。この手法では、粒子の生成及び、表面修飾が同時に生じるため、通常の2ステップの工程に対して、1ステップの簡便な手法と言える。また、必要とする装置は、パルスレーザーのみであり、イオン注入法やスパッタリング法に較べて、高価で大規模な装置は必要ない。これらの利点のため、類似の手法による特許出願(特許文献5)も行われている。
しかし、前記のレーザー照射法は、非常に広いサイズ分布を持つナノ粒子が生成され、サイズ制御が難しく、発光波長の異なる粒子を生成するためには、生成した粒子の分散溶液を分級する必要がある。また、粒子生成に高エネルギー密度のレーザーが必要であるため、一般には集光レンズを用いてレーザー光を集光して用いる。そのため、照射面積は数ミリ程度以下であり、1プロセスあたりの生成量(生成収量)が非常に少ないことが問題である。
以上のレーザー照射プロセスによる炭素終端シリコン量子ドット作製の問題点の解決をはかるため、本発明者の一部他は、化学エッチング法により作製したナノ結晶シリコンの集合体である多孔質(ポーラス)シリコンを液中レーザー照射法のターゲット原料として用いた、シリコン量子ドット作製手法を創案した(特許文献6、非特許文献10)。この手法では、バルクシリコン原料を用いた通常のレーザー照射法に比べて、収量が一桁程度、増加することを実証した。この収量の改善は、ポーラスシリコンの特異な幾何学構造に起因した低熱伝導性・低熱容量に起因していると考えられている。また、化学エッチング条件を変化させることでポーラスシリコン原料のナノ構造体の制御を行い、生成される量子ドットの発光波長(サイズ)を変化させることができることを示した。さらには、照射プロセス中にフッ化水素などのシリコンに対して活性な材料を混入させることで、サイズの均一性や収量の増加も可能であることも実証した。
特開2009-91168号公報 特開2010-188497号公報 特開2013-095850号公報 特開2009-911682号公報 特開2012-167175号公報 特開2016-216579号公報
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しかし、実際の産業プロセスとしてみると、本発明者の一部他が先に創案した手法では、環境適合性、低コスト化、発光特性における高い性能、大量生産性においてまだ十分でない点があり、液中レーザー照射法により作製される環境適合性の高いシリコン量子ドットの作製手法のさらなる改善が求められる。具体的な課題としては、ポーラスシリコンを原料としたレーザー照射法によるシリコンナノ粒子作製手法における、(1)高性能化(サイズ制御性・発光効率の改善)、(2)大量生産性の向上(作製収量の改善)、(3)低コスト化(レーザー照射原料作製コストの削減)、が挙げられる。
本発明は、本発明者の一部他が創案したポーラスシリコンを原料としたレーザー照射プロセスによるシリコン量子ドット生成プロセスの従来技術における上記問題点(1)の解決方法として、電気化学的な手法(陽極化成法)でシリコンウエハーから作製されるポーラスシリコンを原料として用いる。陽極化成法で作製されるポーラスシリコンは、純化学的手法で作製されるこれまでのポーラスシリコンに比べて、多孔質ナノ構造の制御性(多孔度、シリコンコアサイズ)が大幅に向上する。そのため、本発明は、この電気化学手法における高いナノ構造の制御性に起因して、ナノ結晶シリコン量子ドットの発光(サイズ)特性の制御性が大幅に向上し、シリコン量子ドットの高性能化(サイズ制御性・発光効率の改善)をさせることができるという特徴を持つ。さらに、従来の純化学的手法で作製されたポーラスシリコンは、不安定な化学エッチングにより多孔質層が形成されるため、ポーラスシリコン内に依然としてバルク層が含まれており、シリコン原料すべてをシリコン量子ドットに変換させることは困難であり、生成収率(生成コロイド量÷原料の比)が低い原因となっていた。一方、本発明における陽極化成により作製されるポーラスシリコン原料は、多孔質層のみで構成されているため、原料を高収量でシリコン量子ドットへと変換させることも可能であると考えられ、大幅な収率の改善が期待でき、上記問題点(2)の解決法となる。また、大面積ウエハーの陽極化成により一度のプロセスで大量のポーラスシリコン原料の準備が可能である。さらに、陽極化成法により作製したポーラスシリコン原料は、上記の多孔質層のみで構成されているという特徴から、純化学的手法で作製されたバルク層を含むポーラスシリコンに比べてもさらに際だった低熱伝導性・低熱容量を持つことが予想され、従来の液中パルスレーザー照射だけでない、発光ダイオードによる光照射、赤外線照射、ヒータ加熱などのより低コストな外部エネルギー付与により、シリコン量子ドットへの変換が可能であり、上記問題点(3)のレーザー照射プロセスのシリコン原材料コストと製作エネルギーの削減によるコストの大幅な削減が期待できる。
現在のところ、シリコンは無害で地殻中大量に含まれる原料である。これを利用したシリコン量子ドットの市販例はなく、これが上市すると市場に与えるインパクトは大きい。本技術は、電気化学エッチングとレーザー照射、または、ヒータ加熱という簡易な生成プロセスで生産可能であるため、製品の価格も大幅に下げることができる効果がある。現在市販されている化合物系半導体量子ドット(例えば、CdTe,粉末,粒径1.5nm等,PlasmaChem社)]は、約1,000円/mg程度で販売されている。一方、本発明で製造するシリコン量子ドットは無害で地殻中に大量に含まれるシリコンを利用するもので、原料コストも低い。
本発明によるシリコン量子ドットの予想製造コストの試算例は次の通りである。
(1)ポーラスシリコン作製プロセスのコスト 1.0円/mg
[内訳]
・原材料(単結晶シリコンウェハ基板)500円/プロセス(3.5g)
・化学エッチング用薬品(フッ酸、エタノール)3000円/プロセス
・電気化学エッチング用電力〜4円/プロセス(20円/kWh)
で、kgレベルの装置大型化も問題ない。
(2)-1レーザー照射プロセス コスト 8.1円/mg(将来的には1.0円を目指す。)
[内訳]
・有機溶媒 15円/プロセス(原料用100mg)
・パルスレーザー用消耗品コスト(フラッシュランプ)650円/プロセス(原料用100mg)
・シリコン量子ドット生成収率(量子ドット重量÷ポーラスシリコン重量) 0.85
・パルスレーザー電源電力 〜23円/プロセス
で、kgレベルの装置大型化も問題ない。
量産化に向けたレーザー照射装置大型化による価格低減と光源の半導体LD化などを検討することによって、さらなるランニングコスト低減も可能と考えられる。
(2)-2ヒータ加熱(300W)プロセス コスト 〜0.4円
[内訳]
・有機溶媒 15円/プロセス(原料用100mg)
・ヒータ電源コスト 〜20円/プロセス(原料用100mg)
・シリコン量子ドット生成収率(量子ドット÷ポーラスシリコン重量) 0.85
で、kgレベルの装置大型化も問題ない。
(3)合計 シリコン量子ドット作製コスト
[レーザー照射プロセスの場合]〜10円/mg(将来的には2.0円/mg程度を目指す)
[ヒータ加熱照射プロセスの場合]〜2.0円/mg
以上のように、本発明の量子ドット製造法では、市販されている技術開発レベルの化合物半導体量子ドットにくらべて、1/100〜1/1000の製造コスト削減効果があるといえる。さらには、生体および環境安全性が高く、様々な分野で利用可能でき、現在のシリコンテクノロジーとの親和性も高い。
本発明によるポーラスシリコンの作製プロセスフローを示す図である。 (a)は各種ポーラスシリコンフレークの発光スペクトルを示す図、(b)は各種シリコン量子ドットコロイド分散液の発光スペクトルを示す図である。 シリコン量子ドットコロイドの作製プロセスフローを示す図である。 有機溶媒中のポーラスシリコンフレークを示す図である。 有機溶媒中のポーラスシリコンフレークへの紫外レーザー照射プロセスを示す図である。 有機溶媒中のポーラスシリコンフレークへのヒータ加熱プロセスを示す図である。 レーザー光照射プロセスにより作製したシリコンコロイド分散液を示す図である。 ヒータ加熱プロセスにより作製したシリコンコロイド分散液を示す図である。 生成されたコロイド粒子が直径数ナノメートルのシリコン単結晶量子ドットであることを示す高分解能透過型顕微鏡像を示す図である。 アルキル基終端が形成されたことを示すフーリエ変換赤外分光測定による表面結合の解析結果を示す図である。 良好なアルキル基終端が形成されたことを示す発光減衰速度の減少を示す図である。
本発明を適用した具体的な実施例として、現状、電気化学エッチング法により作製した種々の多孔質度を持つポーラスシリコン原料に対してレーザー照射を行い、高い発光量子効率を持つシリコン量子ドットの製造を行った。詳細は下記の通りである。
ターゲット原料であるポーラスシリコンは、図1に示すプロセスフローのようにフッ酸水溶液(HF+H2O+エタノール)中での標準的な電気化学エッチング法を用いて、シリコンウエハー表面にポーラスシリコンを作製した。この電気化学エッチングでは、陽極酸化によりシリコン原子が局所的に溶出され、次々と表面から内部に向かってエッチング反応が進む。その結果、シリコンウエハー表面及び内部にナノメートルオーダーの微細孔が形成され、シリコン量子ドットを高密度に含むポーラスシリコン層が作製される。エッチング終了後、液中でのレーザー照射プロセスのために、ウエハーからポーラスシリコンを分離し、ミリメートルからマイクロメートルオーダーのポーラスシリコン片・粉末(フレーク)を得る。
上記のポーラスシリコンフレーク作製の電気化学エッチングでは、印加電流密度、基板の抵抗率等により、容易に多孔度(ポーラス層の全体積のうち空間が占める割合)や、多孔質層を形成するシリコンナノ結晶コアのサイズを変化させることができる。現状での実施例として、多孔度= 〜70%, 〜77%, 〜80%, 〜90%の試料を準備した。これらの多孔質シリコンウエハーは異なるサイズのシリコンナノ結晶コア層を有するため、それぞれ異なる発光スペクトル・発光効率を持つ。図2(a)にポーラスシリコンフレークの発光スペクトルの測定結果を示す。図中のブロードな発光バンドは、量子サイズ効果により高エネルギーシフトした、バンドギャップの間接遷移端からの擬似直接遷移による電子-正孔対再結合によるものである。図より、発光スペクトルピーク位置、ピーク幅が異なることがわかる。ここで、多孔度70%のポーラスシリコンフレーク試料は、ほとんど発光を示さないためプロットしていない。これらの発光特性の違いは、ポーラスシリコンフレークの多孔質層を形成するシリコンナノ結晶コアのサイズ分布が変化し、量子サイズ効果によるバンドギャップエネルギーが変化したためと考えられる。多孔度70%の試料では、コアサイズが大きく、量子閉じ込め効果に起因する効率的な疑似直接遷移による発光再結合が生じないために、発光を示さなかったと考えられる。
続いて、図3のプロセスフローのように、図1のプロセスで得たポーラスシリコンフレークに有機溶媒中でレーザー照射又は、ホットプレートによるヒータ加熱を行う。具体的には、まずポーラスシリコンフレークを不飽和炭化水素有機溶媒である1-decene又は、1-octene 3ml中にポーラスシリコンフレークを分散させ、HF 0.1mlを添加させる(図4)。今回は10mgのポーラスシリコンフレークを原料とした。そして、図5、図6のように、マグネットスターラーで撹拌しながら、紫外パルスレーザー光(波長:266 nm、5 ns pulse、15 Hz)又は、ホットプレートによるヒータ加熱(ヒータ加熱条件300 W、35℃)を行う。パルスレーザー光のエネルギーは、約1 mJ/pulse(0.5 J/cm2)、加熱温度は35℃とした。照射後、若干の沈殿物(1 mg程度)を形成するので、これを遠心分離器 で取り除き、黄色の量子ドットコロイド分散溶液を得る(図7、図8)。ここで得られたコロイドの重量を測定したところ9 mgであった。そこで、本実施例での生成収率(量子ドット重量÷原料の重量)は85%であることがわかる。この値は、本発明者の一部他が先に提案した発明(特許文献6)での生成プロセスの収率(1%以下)にくらべ格段に向上しており、期待していた生成収量の大幅な改善を確認できた。
ここで、レーザー照射プロセスにおいて、紫外波長(266nm)を用いる理由は、シリコン量子ドットの表面に1-octeneとの光化学反応によってアルキル基を終端させるためである。Si-C結合エネルギーは3.83eV(323nm)であり(非特許文献8)、効率的にSiの表面と炭素分子で終端されるためには、323nm以下の波長のレーザー光が適している。そこで、本実施例では、本発明者の一部等が先に提案した発明(特許文献6)と同様266nmのNd:YAGレーザーの4倍波のパルスレーザーを使用した。一方、ヒータ加熱プロセスでは、熱化学反応によるアルキル基表面終端(非特許文献8)が行われる。
図2(b)に各種多孔度の異なるポーラスシリコンフレーク原料(77〜90%)から作製したシリコン量子ドットコロイド分散液の発光スペクトルの測定結果を示す。図から発光スペクトルは原料を変えることで、変化していることがわかる。また、70%原料を用いた場合は発光を呈するコロイド分散液は得られなかった。ここで、発光ピーク波長の多孔度に対する依存性は、ポーラスシリコンフレークとSi粒子の両方で同様の傾向を示している。以上のことから、シリコン量子ドットのサイズ分布はポーラスシリコンのシリコンコア結晶のサイズ分布を反映しており、量子ドットは、レーザー照射、または、ヒータ加熱によるシリコンコアの粉砕によって生成されたことが示唆されている。また、生成されたコロイド粒子は、図9に示すように直径数ナノメートルのシリコン単結晶量子ドットであることが、高分解能透過型顕微鏡測定からも確認できた。以上のように本実施例において、期待していた出発原料であるポーラスシリコンフレークのエッチング条件による発光色制御が容易に可能であることが示された。
また多孔度80%のポーラスシリコンフレークから作製したシリコン量子ドットの発光の絶対量子効率は〜30%であった。この値は出発材料であるポーラスシリコンフレークの量子効率(〜1%)に比べて、大幅に改善しており、良好なアルキル基終端がされたことを示している。この良好なアルキル基終端の形成は、フーリエ変換赤外分光光度計の表面結合の解析(図10)及び、発光減衰曲線における減衰速度の減少(図11)からも確認できた。
以上の実施例結果と、本発明者の一部他が先に提案した発明(特許文献6)や従来のレーザー照射プロセス(特許文献2、非特許文献9)との比較結果を表1に示す。表から、本発明は通常のレーザー照射プロセスや、本発明者の一部他が先に提案した発明(特許文献6)に比べて、生成収率、発光波長制御性において格段に優れたプロセスであることがわかる。

Claims (3)

  1. 結晶シリコンウエハーをフッ酸水溶液中に浸漬し、電気化学エッチング法を用いて陽極酸化により、フッ酸水溶液に含まれるHFにより表面から内部に向かってエッチングを施してナノメートルオーダーの多孔質層からなるポーラスシリコン層を作製し、液中でシリコンウエハーからポーラスシリコン層を分離してポーラスシリコンフレークを得て、得られたポーラスシリコンフレークを原料として有機溶媒中でレーザー照射又は、加熱、もしくはそれらを組み合わせた方法を行い、量子ドットコロイド分散溶液を得ることを特徴とするシリコン量子ドットの製造方法。
  2. ポーラスシリコンフレーク作製の電気化学エッチングで、印加電流密度又は、シリコンウエハーの導電型と抵抗率又は、暗状態を含む外部光照射条件を制御することにより、多孔度又は、シリコンナノ結晶コアのサイズを変化させ、発光波長又は、発光効率を制御させることを特徴とする請求項1に記載のシリコン量子ドットの製造方法。
  3. ポーラスシリコンフレークを原料として、有機溶媒中でLEDを活用した可視又は、赤外光源、遠赤外光源や熱源、もしくはそれらを組み合わせた外部エネルギー付与を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコン量子ドットの製造方法。
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