JP2019151587A - 抗プロパノイル化アミロイドβタンパク質抗体 - Google Patents
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Abstract
Description
アミロイドβ42の16位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβに対する反応性が、アミロイドβ42の28位のリジン又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたアミロイドβに対する反応性よりも高い抗体。
(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性が、配列番号5で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性よりも高い、(1)に記載の抗体。
(3)配列番号6で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性が、配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性よりも高い、(1)又は(2)に記載の抗体。
(4)アミロイドβ42の16位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβに対する反応性が、アミロイドβ42の16位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されていないアミロイドβに対する反応性よりも高い、(1)〜(3)のいずれかに記載の抗体。
(5)抗体であって、
アミロイドβ42の28位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβに対する反応性が、アミロイドβ42の16位のリジン又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたアミロイドβに対する反応性よりも高い、抗体。
(6)配列番号5で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性が、配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性よりも高い、(5)に記載の抗体。
(7)アミロイドβ42の28位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβに対する反応性が、アミロイドβ42の28位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されていないアミロイドβに対する反応性よりも高い、プロパノイル化されていないアミロイドβに対する反応性よりも高い、(5)又は(6)に記載の抗体。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の抗体を含む、神経変性疾患に関連する特徴付けを行うための試薬。
(9)アルツハイマー病に関連する特徴付けを行うための試薬である、(8)に記載の試薬。
(10)スクリーニング方法であって、
1又は2以上の被験化合物と、(1)〜(7)のいずれかに記載の抗体とを接触させる工程と、
前記1又は2以上の被験化合物と前記抗体との反応性を取得する工程と、
前記反応性に基づいて、前記1又は2以上の被験化合物のプロパノイル化アミロイドβと反応性を評価する工程と、
を備える、方法。
本明細書に開示される抗体は、アミロイドβの16位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβ(第1のアミロイドβ)に対する反応性が、アミロイドβの28位のリジン又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたアミロイドβ(第2のアミロイドβ)に対する反応性よりも高い抗体(以下、当該抗体を第1の抗体ともいう。)である。また、本明細書に開示される他の抗体は、アミロイドβの28位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβ(第2のアミロイドβ)に対する反応性が、アミロイドβの16位のリジン又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたアミロイドβ(第1のアミロイドβ)に対する反応性よりも高い抗体(以下、第2の抗体ともいう。)である。以下、これらの抗体について、順次説明する。
第1の抗体は、第1のアミロイドβに対する反応性が、第2のアミロイドβに対する反応性よりも高い抗体である。ここで、「第1のアミロイドβに対する反応性」とは、抗体が、アミロイドβの16位リジンがプロパノイル化されたアミロイドβと反応(典型的には結合)することを意味している。また、「第2のアミロイドβに対する反応性」とは、抗体が、アミロイドβの28位リジンがプロパノイル化されたアミロイドβと反応(典型的には結合)することを意味している。以下、同様である。
第2の抗体は、第2のアミロイドβに対する反応性が、第1のアミロイドβに対する反応性よりも高い抗体である。ここで、「第2のアミロイドβに対する反応性」、「第1のアミロイドβに対する反応性」とは、既に説明したとおりである。
当業者であれば、上記の反応性を有する抗体を、当業者に周知の方法を適宜採用して作製することができるが、例えば、以下の方法により作製することができる。
抗原の作製の概要を、図2に示す。第1のプロパノイル化アミロイドβと特異的に結合する抗体(以下、単に、第1の抗体ともいう。)を作製するための抗原は、配列番号1で表されるアミノ酸配列における16位リジン(以下、16Lysともいう。)に用いるための予めプロパノイル化したリジンを準備しておき、かかるプロパノイル化リジンを用いて、例えば前後3〜8アミノ酸残基程度、典型的には5アミノ酸残基を含むアミノ酸配列のペプチドを合成する。なお、リジンのプロパノイル化は、例えば、以下のとおりに実施することができる。
第1の抗体及び第2の抗体を作製するための免疫用抗原(KLH複合体)を、それぞれ、適宜完全アジュバンドとともに、マウスなどの公知の抗体作製用動物に腹腔内投与などにより投与して、初回免疫を行い、その後、一定間隔で不完全アジュバンドとともに追加免疫を行う。適時に、動物から血液を採取し、その血清を一次抗体として使用し、BSA複合体である各種抗原を用いたELISA法等により、その抗体価を評価し、抗体価の十分な上昇を確認後、屠殺より3日前程度に最終免疫を行って、屠殺して脾臓を摘出する。なお、免疫に使用する動物は特に限定されないが、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ハムスター、マウス、ラット、モルモット、ニワトリ、ヒト抗体を産生するヒト以外の動物等はいずれも使用できる。
屠殺した動物の脾臓から得た脾臓細胞を調製し、その脾臓細胞と選択可能に特定遺伝子を欠損させたミエローマ細胞とを、ポリエチレングリコ−ル1500などを用いる公知の方法で融合させる。また不死化の方法としては、細胞融合以外の公知の方法を用いることもできる。例えば、エプスタイン・バールウイルス(Epstein-Barr virus)を用いたトランスフォーム法(D. Kozborら、Eur J Immunol, 14:23 (1984))により行うこともできる。
第1の抗体産生ハイブリドーマ細胞の培養上清から第1の抗体を取得できる。タンパク質の精製法を適宜用いることができるが、アフィニティークロマトグラフィーを用いることが便利である。同様にして、第2の抗体産生ハイブリドーマ細胞の培養上清から第2の抗体を得ることができる。
第1の抗体及び/又は第2の抗体を用いることにより、プロパノイル化されたアミロイドβをプロパノイル化修飾部位特異的に検出し、定量することができる。例えば、本明細書に開示されるプロパノイル化されたアミロイドβの検出方法(以下、単に、本検出方法ともいう。)は、アミロイドβの二つのリジン残基がそれぞれプロパノイル基で修飾されたアミロイドβを検出する工程を備えることができる。
本検出方法は、アミロイドβが存在する可能性のある生体由来の試料を、特に限定することなく、被験対象とすることができる。例えば、脳漿を含む脳脊髄液、血液、尿、涙液などの体液のほか、脳、眼などの各種神経細胞の存在する組織(切片)が挙げられる。特に、アルツハイマー病などのアミロイドβの蓄積、産生ないしは関与の可能性のある神経変性疾患に罹患した個体又は当該神経変性疾患モデル動物の上記被験対象とすることが好適である。また、鼻汁及び鼻粘膜も被験対象とすることができる。
本明細書に開示されるアルツハイマー病の診断に関連したアミロイドβの検出方法は、アルツハイマー病患者の脊髄液、血液、鼻汁及び鼻粘膜中のアミロイドβ42の16位のリジン又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化された第1のプロパノイル化アミロイドβと、アミロイドβ42の28位のリジン又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化された第2のプロパノイル化アミロイドβとのいずれか又は双方を、独立して検出する工程、を備えることができる。この方法によれば、アルツハイマー病の診断に関連してアミロイドβをプロパノイル化部位特異的に検出することで、アルツハイマー病の診断を補助することができる。
本明細書に開示されるスクリーニング方法は、1又は2以上の被験化合物と、第1の抗体及び/又は第2の抗体とを接触させる工程と、前記1又は2以上の被験化合物と前記抗体との反応性を取得する工程と、前記反応性に基づいて、前記1又は2以上の被験化合物のプロパノイル化アミロイドβと反応性を評価する工程と、を備えることができる。第1の抗体及び第2の抗体が、プロパノイル化アミロイドβとプロパノイル化修飾部位特異的に結合することから、この反応性を利用して、第1のプロパノイル化アミロイドβや第2のプロパノイル化アミロイドβに結合性を有する化合物をスクリーニングすることができる。すなわち、第1の抗体及び/又は第2の抗体と、可能性ある被験化合物とを競合させることにより、被験化合物の第1のプロパノイル化アミロイドβ及び/又は第2のプロパノイル化アミロイドβとの結合反応性を評価できる。この結合反応性を指標として、第1のプロパノイル化アミロイドβ及び/又は第2のプロパノイル化アミロイドβと特異的に結合する化合物を選定することができる。
アミロイドβには2つ(N末端より16番目(Lys16)と28番目(Lys28))のPRL化されうるリジン残基が存在したため、この2種のPRL化部位を個別に認識することができる抗体(16番目リジン残基のPRL化:mAbBST31、28番目リジン残基のPRL化:mAb3A11)を作製した。まずは、図2にも示ように、上段2種(PRL16−antigen、PRL28−antigen)に示すように、キャリアタンパク質(keyhole limpet hemocyanin(KLH)及びbovine serum albumin(BSA))に標的とするリジン残基周辺のアミノ酸5残基をもつペプチドを結合させることで、Lys16のPRL化を認識する抗体作製のための抗原(PRL16−antigen(KLH or BSA))及びLys28のPRL化を認識する抗体作製のための抗原(PRL28−antigen(KLH or BSA))を作製した。
実施例1で作製した抗原のうち、PRL16−antigen(KLH)あるいはPRL28−antigen(KLH)の2種の抗原をそれぞれ完全アジュバンド(Freund’s complete adjuvant, FCA)と共に、雌性BALB/cマウス(6週齢)に腹腔内投与し、初回免疫を行った。その後、隔週にて不完全アジュバンド(Freund’s incomplete adjuvant,FIA)と共に追加免疫を行った。具体的には以下のように実施した。
初回免疫は、PRL16−KLH(1mg/ml)あるいはPRL28−KLH(1mg/ml)150μl+リン酸緩衝生理食塩水(PBS)350 μl+FCA 500μlにてエマルジョン形成させ、200μl/匹にて腹腔内投与した。追加免疫は、初回免疫の2週間後より行った。PRL16−KLH(1mg/ml)あるいはPRL28−KLH(1mg/ml)150μl+PBS 350μl+FIA 500μlにてエマルジョン形成させ、200μl/匹にて隔週で腹腔内投与した。
Native BSA(1mg/ml)、PRL−BSA(1mg/ml)、Native16−BSA(1mg/ml)、LongPRL16−BSA(1mg/ml)、PRL16−BSA(1mg/ml)、PRL28−BSA(1mg/ml)をPBSにて0.5 μg/mlに希釈し、96wellプレートに100μl/wellずつ散布した。その後、4℃下で一晩、静置した。
(2)洗浄:0.05%Tween含有PBS(TPBS)200μl/wellにて3回洗浄した。
(3)Blocking:
粉末ブロックエースを超純水にて1%溶液を作製し、200μl/wellにて散布した。その後、37℃にて1時間、保温した。
(4)洗浄:TPBS200 μl/wellにて3回洗浄した。
(5)一次抗体:
抗体価を測定したい血清あるいは、ハイブリドーマ培養上清、精製抗体をTPBSにて1000倍希釈したものから、3倍ずつ段階希釈し、それぞれの希釈液を100μl/wellにて散布した。その後、37℃にて1時間、保温した。
(6)洗浄:TPBS200 μl/wellにて3回洗浄した。
(7)二次抗体:
Horseradish peroxidase(HRP)標識抗マウスIgG抗体をTPBSにて5000倍希釈し、100μl/wellにて散布した。その後、37℃にて1時間、保温した。
(8)洗浄:TPBS 200μl/wellにて3回洗浄した。
(9)発色及び測定:
3,3’,5,5’−Tetramethylbenzidine(TMB)発色溶液[1%TMB:40mMクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0):30%H2O2=50:5000:2の比率で混ぜた混合液]を100μl/wellずつ散布することで発色させた。10分間、室温下で発色させた後、1Nリン酸(100μl/well)にて停止させ、450nmにおける吸光度をプレートリーダーにて測定した。
次いで、各抗原を免疫したマウス血清中において、PRL16−BSA及びLongPRL16−BSAに対する抗体価を有するマウスからはPRL16−アミロイドβ抗体を、PRL28−BSAに対する抗体価を有するマウスからはPRL28−アミロイドβ抗体の樹立を行った。すなわち、半永続的に培養維持が可能なミエローマ細胞と各マウスから得られる脾臓細胞との融合を行うことで、抗体を半永続的に産生し続けることが可能なハイブリドーマ細胞を樹立した。具体的には以下のように実施した。
抗体産生ハイブリドーマ細胞の培養上清からプロテインGカラムを用いたアフィニティー精製により抗体を精製した。各抗体を精製後、タンパク質の定量を行い、抗体濃度として1mg/mlの濃度にて調製し、−30℃あるいは−80℃下で保存した。なお、アフィニティークロマトグラフィーは以下のようにペリスタポンプあるいは手動にて実施した。
(2)0.02Mリン酸緩衝液(pH7.0)(PB)に置換し、20分、平衡化した。
(3)0.02M PBにて平衡化後、培養上清へとカラムを置換し、培養上清すべてをカラムに通した。
(4)培養上清をカラムに流し終えた後、0.02M PBにて20分、洗浄した。
(5)洗浄中に1.5mlのチューブ5本分に1M Tris水溶液を75μl加えておいた。
(6)0.02M PBにて洗浄後、0.1M Glysine/HCl(pH2.5)にて溶出した。溶出液は、上記1M Tris水溶液入り1.5mlチューブにそれぞれ1mlずつ回収した(合計5本分の画分として回収)。
(7)各画分のタンパク質含量をBCA assayにて測定し、抗体溶出画分を判別した。
(8)抗体溶出画分を回収し、4℃にてPBSに対して透析を2日間行い、1mg/mlに濃度を調製し、−30℃あるいは−80℃に保存した。
(1)間接ELISA法による検討
精製したモノクローナル抗体を使用して、各抗原に対する交差性を検証した。mAbBST31に関しては、native BSA、PRL−BSA、Native16−BSA、PRL16−BSA、LongPRL16−BSA、PRL28−BSAを使用し、mAb3A11に関しては、Native BSA、PRL−BSA、PRL16−BSA、PRL28−BSAを用いて、既述のELISA法プロトコールに従い行った。その結果、mAbBST31は、PRL16−BSAに加え、LongPRL16−BSAの2種に対してのみ交差することが認められ、さらにLongPRL16−BSAに対してより強く反応していることが認められた。そのため、よりアミノ酸残基の長く、アミロイドβのおおよそ半分の21残基を含有するLongPRL16−BSA(0.5μg/ml、100μl/well)を競合ELISAのCoating時の抗原として使用することにした。mAbBST31の抗体濃度としては、0.2μg/ml、50μl/wellにて用いることにした。mAb3A11においては、PRL28−BSAに対してのみ交差性が認められた。よって、Coating時の抗原としてはPRL28−BSA(0.5μg/ml、100μl/well)を使用し、mAb3A11の抗体の濃度として0.1μg/ml、50μl/wellにて競合ELISAに使用することにした。
作製した抗体の特異性を検証する実験として競合ELISAがある。競合ELISAは、抗体とプレート上にある抗原と、さらに競合物質とを共存させることで、抗体がプレート上の抗原と交差することを競合物質が阻害するかどうかで抗体とその競合物質との交差性を検討できる実験である。用いた各抗原と抗体の条件は、前述の通りであり、以下のELISA法プロトコールに従って行った。結果を図3及び図4に示す。
mAbBST31を使用した競合ELISAの場合:LongPRL16−BSA(0.5μg/ml、100μl/well)、
mAb3A11を使用した競合ELISAの場合:PRL28−BSA(0.5μg/ml、100μl/well)にて、96wellプレートに散布した。その後、4℃下で一晩、静置した。
(2)洗浄:TPBS200μl/wellにて3回洗浄した。
(3)Blocking:
粉末ブロックエースを超純水にて1%溶液を作製し、200 μl/wellにて散布した。その後、37℃にて1時間、保温した。
(4)洗浄:TPBS 200μl/wellにて3回洗浄した。
(5)一次抗体:以下に挙げるペプチドを、各抗体と同時に加えた。
mAbBST31:PRL16−peptide、PRL28−peptide、Long16−peptide、Native16−peptide(各抗原のキャリアタンパク質が結合していない遊離型のペプチド)を、500nMを上限としてTPBSにて3段階希釈したものを競合物質として50μl/wellにて加えた。
mAb3A11:PRL16−peptide、PRL28−peptideを、50nMを上限としてTPBSにて3段階希釈したものを競合物質として50μl/wellにて加えた。両者ともに、その後、4℃下で一晩、静置した。
(6)洗浄:TPBS 200μl/wellにて3回洗浄した。
(7)二次抗体:
Horseradish peroxidase(HRP)標識抗マウスIgG抗体をTPBSにて5000倍希釈し、100μl/wellにて散布した。その後、37℃にて1時間、保温した。
(8)洗浄:TPBS 200μl/wellにて3回洗浄した。
(9)発色及び測定:
3,3’,5,5’−Tetramethylbenzidine(TMB)発色溶液[1%TMB:40mMクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0):30%H2O2=50:5000:2の比率で混ぜた混合液]を100μl/wellずつ散布することで発色させた。20分間、室温下で発色させた後、1Nリン酸(100μl/well)にて停止させ、450nmにおける吸光度をプレートリーダーにて測定した。
biotinは、卵黄中から発見された低分子で、卵白中のavidinと強力な非共有結合を形成する性質を有する。そのため、このbiotinを抗体に複数結合させることで、biotin化された抗体に多くのavidinが結合させることができ、avidinを介した検出感度の増加が可能となる。よって、mAbBST31およびmAb3A11のbiotin標識を行った。なお、biotin標識の確認は、抗体の検出に用いるプローブをStreptavidin−HRP(BD Biosciences)を使用することで行った。
(2)mAbBST31およびmAb3A11を各々2mg(PBS溶液中)に対して上記のBiotin化試薬27μl添加した。
(3)氷上で2時間静置した。
(4)PBS1 Lに対してセロハン膜(Spectra/Por 7 Dialysis Membrane MWCO 10000、SPECTRUM LABORATORIES)を用いて2日間、透析を行った。
(5)BCA assayによりタンパク濃度を測定し、mAbBST31は0.8mg/ml、mAb3A11は0.5mg/mlに調製し、−30℃に保存した。
Biotin標識mAb3A11を基盤とした競合ELISAにより、PRL16-Aβの定量法を構築した。様々な条件検討の結果、以下のようなプロトコールを開発した。これにより作成した検量線を図5に示す。
なお、本定量法においては、96F MAXISORP BLACK MICROWELL、StartingBlockTM(PBS)Blocking Buffer(Thermo Fisher Scientific)及びPierceTM High Sensitivity Streptavidin−HRP(Pierce)、SuperSignal(登録商標)ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Fisher Scientific)を用いた。
(1)Coating(96wellプレートへの抗原の固相):
LongPRL16−BSA(1mg/ml)をPBSにて500000倍に希釈し、96F MAXI SORP BLACK MICROWELLの各wellに100μlずつ散布した。その後、4℃下にて一晩、静置した。
(2)洗浄:TPBS溶液200μl/wellにて5回洗浄した。
(3)Blocking:
StartingBlockTM(PBS)Blocking Bufferを200μl/wellにて散布し、室温にて30分間、静置した。
(4)洗浄:TPBS溶液200μl/wellにて5回洗浄した。
(5)競合反応:
・競合物質の調製(検量線作成用)
LongPRL16−Peptide
TPBSにて1000nMに調製し、これを上限として10倍ずつ段階希釈した。96wellには50μl/wellにて添加した。
・ヒト髄液は原液をそのまま50μl/wellにて添加した。
・一次抗体の調製
mAbBST31−biotin(0.8mg/mL)をTPBSにて50000倍に希釈して用いた。
以上の調製液を96wellプレートに加える際は、競合物質(LongPRL16−peptide)あるいはヒト髄液を先に添加し、その後に一次抗体を添加した。
以上の添加後、4℃下にて一晩、静置した。
(6)洗浄:TPBS溶液200μl/wellにて5回洗浄した。
(7)二次抗体:
PierceTM High Sensitivity Streptavidin−HRPをTPBSにて100000倍希釈し、100μl/wellにて散布した。
その後、37℃下にて1時間、保温した。
(8)洗浄:TPBS溶液200μl/wellにて5回洗浄した。
(9)化学発光:
SuperSignal(登録商標)ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrateを100μl/wellにて添加し、化学発光させ、添加後1分の発光強度をプレートリーダーにて測定した。
Biotin標識mAb3A11を基盤とした競合ELISAにより、PRL28−Aβの定量法を構築した。様々な条件検討の結果、以下のようなプロトコールを開発した。これにより作成した検量線を図6に示す。
なお、この定量法では、F96 CERT MAXISORP NUNC−IMMUNO PLATE、Block Ace Powder(DSファーマバイオメディカル株式会社)、PierceTM High Sensitivity Streptavidin−HRP(Pierce)を用いた。
PRL28−BSA(1mg/ml)をPBSにて8000倍に希釈し、96wellプレートに100μl/wellずつを散布した。その後、4℃下にて一晩、静置した。
(2)洗浄:TPBS溶液200μl/wellにて3回洗浄した。
(3)Blocking:
Block Ace powderを超純水にて1%溶液を作製し、200 μl/wellにて散布した。その後、37℃下にて1時間、保温した。
(4)洗浄:TPBS溶液200μl/wellにて3回洗浄した。
(5)競合反応:
・競合物質の調製(検量線作成用)
PRL28−Peptide
TPBSにて280nMに調製し、これを上限として3倍ずつ段階希釈した。96wellには50μl/wellにて添加した。
・ヒト髄液は原液をそのまま50μl/wellにて添加した。
・一次抗体の調製
mAb3A11−biotin(0.5mg/mL)をTPBSにて40000倍に希釈して用いた。
以上の調製液を96wellプレートに加える際は、競合物質(PRL28−peptide)あるいはヒト髄液を先に添加し、その後に一次抗体を添加した。
以上の添加後、4℃下にて一晩、静置した。
(6)洗浄:TPBS溶液200μl/wellにて3回洗浄した。
(7)二次抗体:
PierceTM High Sensitivity Streptavidin−HRPをTPBSにて20000倍希釈し、100μl/wellにて散布した。その後、37℃下にて1時間、保温した。
(8)洗浄:TPBS溶液200μl/wellにて3回洗浄した。
(9)発色及び測定:
TMB発色溶液[1%TMB:40mMクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0):30%H2O2=50:5000:2の比率で混ぜた混合液]を100μl/wellずつ散布することで発色させた。20分間、室温下で発色させた後、1Nリン酸(100μl/well)にて停止させ、450nmにおける吸光度をプレートリーダーにて測定した。
B:各濃度の競合物質存在下における吸光度
B0:競合物質が存在しないmAb3A11の吸光度(発色時における最大吸光度)
実施例5に記載したように、各修飾部位特異抗体を用いて定量可能なELISA法を開発した。この2種のプロトコールから作成した検量線を使用し、ヒト髄液中に含まれるAβの各PRL修飾部位の定量を行った。また、non AD患者(ADではない患者)とAD患者間での比較を行った。PRL16−Aβ及びPRL28−Aβの定量値を図7に示す。また、図8に、同じ髄液中におけるAβ40及び42の定量値の比較も示す。
Claims (10)
- 抗体であって、
アミロイドβ42の16位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβに対する反応性が、アミロイドβ42の28位のリジン又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたアミロイドβに対する反応性よりも高い抗体。 - 配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性が、配列番号5で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性よりも高い、請求項1に記載の抗体。
- 配列番号6で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性が、配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性よりも高い、請求項1又は2に記載の抗体。
- アミロイドβ42の16位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβに対する反応性が、アミロイドβ42の16位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されていないアミロイドβに対する反応性よりも高い、プロパノイル化されていないアミロイドβに対する反応性よりも高い、請求項1〜3のいずれかに記載の抗体。
- 抗体であって、
アミロイドβ42の28位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβに対する反応性が、アミロイドβ42の16位のリジン又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたアミロイドβに対する反応性よりも高い抗体。 - 配列番号5で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性が、配列番号4で表されるアミノ酸配列におけるリジンがプロパノイル化されたペプチドに対する反応性よりも高い、請求項5に記載の抗体。
- アミロイドβ42の28位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されたプロパノイル化アミロイドβに対する反応性がアミロイドβ42の28位のリジンが又は当該リジンに相当するリジンがプロパノイル化されていないアミロイドβに対する反応性よりも高い、請求項5又は6に記載の抗体。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の抗体を含む、神経変性疾患に関連する特徴付けを行うための試薬。
- アルツハイマー病に関連する特徴付けを行うための試薬である、請求項8に記載の試薬。
- スクリーニング方法であって、
1又は2以上の被験化合物と、請求項1〜7のいずれかに記載の抗体とを接触させる工程と、
前記1又は2以上の被験化合物と前記抗体との反応性を取得する工程と、
前記反応性に基づいて、前記1又は2以上の被験化合物のプロパノイル化アミロイドβと反応性を評価する工程と、
を備える、方法。
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