JP2019147143A - 酸化触媒、ハロゲン化芳香族化合物の酸化分解方法 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の酸化触媒は、下記式(1)で表わされるN−ヘテロ環状カルベン配位子を有するパラジウム(II)錯体(以下、「パラジウム(II)錯体」と略すこともある。)からなる。
本実施形態のハロゲン化芳香族化合物の酸化分解方法は、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解する方法であって、本実施形態の酸化触媒と犠牲酸化剤を含む水溶液に、ハロゲン化芳香族化合物を加え、それらの混合物を攪拌する工程を有する。
「N−ヘテロ環状カルベン配位子を有するパラジウム(II)錯体の合成」
下記式(3)で表わされる公知の配位子前駆体であるイミダゾリウム塩を用意した。このイミダゾリウム塩は、例えば、X.Zhang et al.,J.Organomet.Chem.2009,694(15),2359−2367.に記載された方法により合成されたものである。
その後、未反応の酸化銀を濾別し、得られた濾液に対して、ビスアセトニトリルパラジウム(II)をイミダゾリウム塩に対して1当量添加した。
その後、室温下、濾液を約10時間攪拌し、白色沈殿を含む黄色〜橙色の溶液Aを得た。
次いで、白色沈殿を濾別した後、溶液Aの溶媒を減圧しながら加熱して除去することにより、下記式(4)で表わされる錯体を得た。
攪拌を継続すると、塩化銀の白色沈殿が生じた。その白色沈殿を濾別し、得られた濾液(水溶液)に対して、大過剰量のヘキサフルオロリン酸カリウムまたは過塩素酸ナトリウムを添加して、白色固体を得た。
得られた白色固体を重水(D2O)に溶解した溶液について、1H−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)を測定した。結果を図1に示す。
図1において、5.87ppmのピークは図1に示すパラジウム(II)錯体の(3)の位置の4Hに由来する。また、図1において、7.54ppm−7.56ppmのピークは図1に示すパラジウム(II)錯体の(1)の位置の2Hに由来する。また、図1において、7.67ppm−7.71ppmのピークは図1に示すパラジウム(II)錯体の(6)の位置の2Hに由来する。また、図1において、7.85ppm−7.88ppmのピークは図1に示すパラジウム(II)錯体の(2)の位置の2Hに由来する。また、図1において、7.96ppm−7.98ppmのピークは図1に示すパラジウム(II)錯体の(4)の位置の2Hに由来する。また、図1において、8.19ppm−8.23ppmのピークは図1に示すパラジウム(II)錯体の(5)の位置の2Hに由来する。また、図1において、8.98ppm−8.99ppmのピークは図1に示すパラジウム(II)錯体の(7)の位置の2Hに由来する。
以上の測定結果から、得られた白色固体は、上記式(2)で表わされるパラジウム(II)錯体であることが確認された。
「ハロゲン化芳香族化合物の酸化分解」
生成物の1H−NMRスペクトル測定を行うために、溶媒としては、重水を用いた。
生成物を定量するために、内部標準物質として、4,4−ジメチル−4−シラペンタン−1−スルホン酸ナトリウム(Sodium 4,4−dimethyl−4−silapentane−1−sulfonate、DSS)を溶解させた重水溶液(以下、「定量溶液」と言う。)を調製した。
生成物の1H−NMRスペクトル測定を行う直前に、ハロゲン化芳香族化合物の酸化分解反応液400μLと定量溶液400μLとを混合し、この混合液を測定用溶液とする。このような測定用溶液を用いる理由は、内部標準物質が、犠牲酸化剤である、硫酸水素カリウム(KHSO4)、硫酸カリウム(K2SO4)およびペルオキシ一硫酸カリウム(KHSO5)の複塩化合物(KHSO4・K2SO4・2KHSO5、商品名:Oxone(登録商標)、デュポン社製)によって分解されることを防ぐためである。
反応容器としては、サンプル管瓶No.3を用いた。
磁気攪拌子を収容したサンプル管瓶No.3に、Oxone(登録商標)61.47mgを量り取り、さらに、重水(1000−x)μLを加え、犠牲酸化剤含有溶液を調製した。なお、xは、後述するパラジウム(II)錯体を含む水溶液(以下、「パラジウム錯体水溶液」と言う。)の体積(μL)を示す。
別途、次に示すようにパラジウム錯体水溶液を調製した。
反応容器として用いるサンプル管瓶とは異なるサンプル管瓶に、パラジウム(II)錯体を約1mg量り取り、さらに、重水を1mL加えて、重水にパラジウム(II)錯体を溶解させ、無色のパラジウム錯体水溶液を得た。
得られたパラジウム錯体水溶液xμLを、サンプル管瓶No.3内の犠牲酸化剤含有溶液に添加した。パラジウム錯体水溶液と犠牲酸化剤含有溶液の混合溶液におけるパラジウム(II)錯体の濃度は0.1mmol/L、Oxone(登録商標)の濃度は0.1mol/Lであった。
次いで、水浴中に蓋を閉めたサンプル管瓶No.3を浸漬し、遮光下、空気下にて、磁気攪拌子により、サンプル管瓶No.3内の混合溶液とo−ジクロロベンゼンの混合物を、25℃にて24時間、攪拌した。
攪拌終了後、上述の通り、o−ジクロロベンゼンの酸化分解反応液400μLと定量溶液400μLとを混合して測定用溶液を調製し、この測定用溶液を用いて生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。結果を図2に示す。
図2の結果から、8.3ppm付近にギ酸のホルミル基のプロトン由来のピークが観測された。
また、o−ジクロロベンゼン−D4の酸化分解反応液1mLを、重水の代わりに水を溶媒として調製し、この測定用溶液を用いて生成物の2H−NMRスペクトル測定を行った。結果を図3に示す。
図3の結果から、8.3ppm付近にギ酸のホルミル基の重水素由来のピークが観測された。
したがって、o−ジクロロベンゼンの酸化分解によって、ギ酸が得られていることが確認された。
なお、触媒回転数とは、触媒であるパラジウム(II)錯体1分子が行う物質変換量のことである。
酸化剤効率は、生成物であるギ酸の濃度に3を掛けた値を、酸化剤として用いたOxone(登録商標)の濃度に4を掛けた値で割り、100倍して算出した。
なお、酸化剤効率とは、生成物の物質量に、原料から生成物へと変換するのに必要な電子数を掛け、酸化剤の濃度で割り、100倍した値である。
ハロゲン化芳香族化合物をクロロベンゼンとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
ハロゲン化芳香族化合物を4−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウムとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
ハロゲン化芳香族化合物をm−ジクロロベンゼンとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
ハロゲン化芳香族化合物をp−ジクロロベンゼンとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
ハロゲン化芳香族化合物を1,2,3−トリクロロベンゼンとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
ハロゲン化芳香族化合物を1,2,4−トリクロロベンゼンとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
ハロゲン化芳香族化合物を1,2,4,5−テトラクロロベンゼンとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
犠牲酸化剤としてペルオキソ二硫酸ナトリウムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
ハロゲン化芳香族化合物をフルオロベンゼンとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
ハロゲン化芳香族化合物をブロモベンゼンとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
芳香族化合物をベンゼンとしたこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、触媒回転数と酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例2と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例3と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていないことが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例4と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例5と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例6と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例7と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例8と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
犠牲酸化剤としてペルオキソ二硫酸ナトリウムを用いたこと以外は実施例9と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸が得られていることが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸は観測されないことが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸は観測されないことが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
パラジウム(II)錯体を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、芳香族化合物を酸化分解した。
また、実施例1と同様にして、生成物の1H−NMRスペクトル測定を行った。その結果、生成物としてギ酸は観測されないことが確認された。
また、実施例1と同様にして、酸化剤効率を測定した。結果を表1に示す。
一方、比較例1〜比較例11でも、生成物としてギ酸が得られているものの、実施例1〜実施例11と比較すると、パラジウム(II)錯体を用いている実施例1〜実施例11の方が、3倍〜68倍ほど効率がよくなっていることが確認された。
Claims (3)
- ハロゲン化芳香族化合物を酸化分解する方法であって、
請求項1に記載の酸化触媒と犠牲酸化剤を含む水溶液に、ハロゲン化芳香族化合物を加え、それらの混合物を攪拌する工程を有することを特徴とするハロゲン化芳香族化合物の酸化分解方法。 - 前記犠牲酸化剤は、硫酸水素カリウム、硫酸カリウムおよびペルオキシ一硫酸カリウムの複塩化合物であることを特徴とする請求項2に記載のハロゲン化芳香族化合物の酸化分解方法。
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